説明

組成物、並びに該組成物から形成される光学補償フィルム

【課題】波長分散制御可能な組成物及びそれを用いた光学補償フィルムを提供する。
【解決手段】例えば、フェニル基の1,3,5位にアリール基置換オキサジアゾール基で置換された化合物、その一例として、


を少なくとも1種含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組成物、並びに該組成物から形成される光学補償フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶テレビの需要が増加するにつれ、応答速度の速さに特徴を持つOCBモード(あるいはベンドモード)に注目が集まっている。このOCBモードは広い視角特性と良好な色味の視野角依存性、締まりのある黒表示を得るために、原理的に光学補償フィルムで液晶セルの位相差を補償する必要がある。従って、セルの波長分散に合わせて光学補償フィルムに用いられる特にディスコティック液晶性化合物の波長分散性を制御することが極めて重要であると言える。例えば、特許文献1及び2には、光学補償フィルムの波長分散特性を改良することが開示されている。しかしながらこれらの文献には光学補償フィルムと液晶セルに使用する各々の材料自身の光学特性を改良する技術が開示されているが、良好な黒表示と色味やコントラストの視野角依存性にはなお改良の余地があった。加えて、液晶セルはそれぞれのモードで波長分散が異なり、さまざまなモードに対応すべくディスコティック液晶性化合物の波長分散を自由に制御する方法が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】特開平8−101381号公報
【特許文献2】特開平9−329785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上記課題を解決することを目的としたものであって、波長分散を自由に制御できる組成物を提供することを課題とする。
特に、液晶セル(例えば、OCBモード)においてコントラストの改善及び黒表示時の視角方向に依存した色づきの軽減液晶のため、液晶セルと光学補償フィルムの波長分散を制御するための、組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題を解決する手段は以下の通りである。
(1)一般式(DI)で表される化合物を少なくとも1種と、一般式(DII)で表される化合物を少なくとも1種とを含む組成物。
一般式(DI)
【化1】

(一般式(DI)中、Y11、Y12及びY13は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に下記一般式(DI−A)または下記一般式(DI−B)を表す;
一般式(DI−A)
【化2】

(一般式(DI−A)中、L1は、単結合または二価の連結基を表す。A11及びA12は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し、X1は、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表す。R1は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基、またはシリル基を表す。)
一般式(DI−B)
【化3】

(一般式(DI−B)中、L2は、単結合または二価の連結基を表す。A21及びA22は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し、X2は、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表す。R2は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基、またはシリル基を表す。)
一般式(DII)
【化4】

(一般式(DII)中、Y21、Y22及びY23は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に下記一般式(DII−C)を表す;
一般式(DII−C)
【化5】

(一般式(DII−C)中、L3は、単結合または二価の連結基を表す。A31及びA32は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し、X3は、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表す。R3は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基、またはシリル基を表す。)
(2)一般式(DI)中のY11、Y12及びY13、ならびに、一般式(DII)中のY21、Y22及びY23は、いずれも、メチンである、(1)に記載の組成物。
(3)一般式(DI−A)中のA11及びA12、一般式(DI−B)中のA21及びA22、一般式(DII−C)中のA31及びA32が、いずれも窒素原子である、(1)または(2)に記載の組成物。
(4)一般式(DI−A)中のR1、一般式(DI−B)中のR2、一般式(DII−C)中のR3が重合性エチレン性不飽和基または開環重合性基を含む、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の組成物を用いてなる光学補償フィルム。
(6)(5)に記載の光学補償フィルムを含む、液晶表示装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明の組成物により、液晶のコントラスト及び黒表示の色づき改善に重要な波長分散を自由に制御することが可能になった。特に、本発明の組成物は、光学補償フィルムの波長分散の制御に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
なお、本明細書において、「45゜」あるいは「平行」とは、厳密な角度±5゜未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との誤差は、4゜未満であることが好ましく、3゜未満であることがより好ましい。
【0008】
また、本明細書において「分子対称軸」とは、分子が回転対称軸を有する場合は該対称軸をいうが、厳密な意味で分子が回転対称性であることを要求するものではない。一般的には、分子対称軸は、ディスコティック化合物では、円盤面の中心を貫く円盤面に対して垂直な軸と一致し、また棒状化合物では分子の長軸と一致する。
【0009】
本発明の組成物は、一般式(DI)で表される化合物を少なくとも1種と、一般式(DII)で表される化合物を少なくとも1種とを含む。ここで、一般式(DI)で表される化合物と一般式(DII)で表される化合物は、波長分散性の異なる化合物である。
まず、一般式(DI)で表される化合物について詳細に説明する。
【0010】
一般式(DI)
【化6】

【0011】
一般式(DI)中、Y11、Y12及びY13は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表す。
【0012】
11、Y12及びY13がメチンの場合、メチンの水素原子は置換基で置き換わってもよい。メチンが有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子及びシアノ基が好ましい例として挙げられる。これらの置換基の中では、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子等)及びシアノ基がさらに好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12アルコキシカルボニル基、炭素数2〜12のアシルオキシ基、ハロゲン原子及びシアノ基がより好ましい。
11、Y12及びY13は、いずれもメチンであることがより好ましく、メチンは無置換であることがさらに好ましい。
【0013】
11、R12及びR13は、それぞれ独立に下記一般式(DI−A)または下記一般式(DI−B)を表す。R11、R12及びR13は、同一であることが好ましい。
【0014】
一般式(DI−A)
【化7】

一般式(DI−A)中、L1は、単結合または二価の連結基である。L1が二価の連結基の場合、−O−、−S−、−C(=O)−、−NR7−、−CH=CH−、−C≡C−、二価の環状基およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R7は炭素数が1〜7のアルキル基または水素原子であり、炭素数1〜4のアルキル基または水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0015】
1で表される二価の環状基とは、少なくとも1種類の環状構造を有する二価の連結基である。二価の環状基中の環は5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがより好ましく、6員環であることがさらに好ましい。二価の環状基中の環は、単環であってもよいし、縮合環であってもよい。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。また、二価の環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環および複素環のいずれでもよい。芳香族環の例には、ベンゼン環およびナフタレン環が含まれる。脂肪族環の例には、シクロヘキサン環が含まれる。複素環の例には、ピリジン環およびピリミジン環が含まれる。環状基は、芳香族環および複素環が好ましい。
【0016】
1で表される二価の環状基のうち、ベンゼン環を有する二価の環状基としては、1,4−フェニレンが好ましい。ナフタレン環を有する二価の環状基としては、ナフタレン−1,5−ジイルおよびナフタレン−2,6−ジイルが好ましい。シクロヘキサン環を有する二価の環状基としては1,4−シクロへキシレンであることが好ましい。ピリジン環を有する二価の環状基としてはピリジン−2,5−ジイルが好ましい。ピリミジン環を有する二価の環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイルが好ましい。
【0017】
1で表される二価の環状基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数1〜16のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素数1〜16のアルコキシ基、炭素数2〜16のアシル基、炭素数1〜16のアルキルチオ基、炭素数2〜16のアシルオキシ基、炭素数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素数2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。
【0018】
1としては、単結合、*−O−CO−、*−CO−O−、*−CH=CH−、*−C≡C−、*−二価の環状基−、*−O−CO−二価の環状基−、*−CO−O−二価の環状基−、*−CH=CH−二価の環状基−、*−C≡C−二価の環状基−、*−二価の環状基−O−CO−、*−二価の環状基−CO−O−、*−二価の環状基−CH=CH−、*−二価の環状基−C≡C−が好ましく、単結合、*−CH=CH−、*−C≡C−がより好ましく、単結合がさらに好ましい。*は一般式(DI)中のY11、Y12およびY13を含む6員環に結合する位置を表す。
【0019】
一般式(DI−A)中、R1は、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換または無置換のアミノ基(例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アルキルスルホニルアミノ基(例えば、メタンスルホニルアミノ基が挙げられる)、アリールスルホニルアミノ基(例えば、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N−メチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(例えば、無置換のカルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、アルキルスルホニル基(例えば、メシル基などが挙げられる)、アリールスルホニル基(例えば、トシル基などが挙げられる)、アルキルスルフィニル基(例えば、メタンスルフィニル基などが挙げられる)、アリールスルフィニル基(例えば、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(例えば、無置換のウレイド基、3−メチルウレイド基、3−フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)を表す。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。
【0020】
1は、それぞれ独立に下記一般式(IIIA)で表されるものが更に好ましい。
【0021】
一般式(IIIA) −L3A−Q3A
【0022】
3Aは重合性基または水素原子である。本発明の組成物を光学補償フィルムのような位相差の大きさが熱により変化しないものが好ましい光学フィルムに用いる場合には、Q3Aは重合性基であることが好ましい。重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。言い換えると、重合性基は、付加重合反応または縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。以下に重合性基の例を示す。
【0023】
【化8】

【0024】
上記中、q1〜q10が好ましく、q1〜q8がより好ましい。
さらに、重合性基は付加重合反応が可能な官能基であることが特に好ましい。そのような重合性基としては、重合性エチレン性不飽和基または開環重合性基が好ましい。
【0025】
重合性エチレン性不飽和基の例としては、下記の式(M−1)〜(M−6)が挙げられる。
【0026】
【化9】

【0027】
式(M−3)、(M−4)中、Rは水素原子またはアルキル基を表す。Rとしては、水素原子またはメチル基が好ましい。
上記(M−1)〜(M−6)のなかでも、(M−1)または(M−2)が好ましく、(M−1)が最も好ましい。
【0028】
開環重合性基として好ましいのは、環状エーテル基であり、中でもエポキシ基またはオキセタニル基がより好ましい。
【0029】
一般式(IIIA)中、L3Aは二価の連結基である。L3Aは、−O−、−S−、−C(=O)−、−NR7−、二価の鎖状基、二価の環状基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R7は炭素数が1〜7のアルキル基または水素原子であり、炭素数1〜4のアルキル基または水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0030】
3Aで表される二価の鎖状基は、アルキレン基(置換アルキレン基を含む)、アルケニレン基(置換アルケニレン基を含む)、アルキニレン基(置換アルキニレン基を含む)をいう。なかでも、アルキレン基またはアルケニレン基が好ましく、無置換のアルキレン基または無置換のアルケニレン基がさらに好ましい。
【0031】
3Aで表される二価の鎖状基としてのアルキレン基は、分岐を有していてもよい。アルキレン基の炭素数は1〜16であることが好ましく、2〜14であることがより好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。置換アルキレン基の場合、置換基の例としてはハロゲン原子が含まれる。
【0032】
3Aで表される二価の鎖状基としてのアルケニレン基は、主鎖中に置換または無置換のアルキレン基を有してもよく、分岐を有していてもよい。アルケニレン基の炭素数は2〜16であることが好ましく、2〜14であることがより好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。置換アルケニレン基の場合、置換基の例としてはハロゲン原子が含まれる。
【0033】
3Aで表される二価の鎖状基としてのアルキニレン基は、主鎖中に置換または無置換のアルキレン基を有してもよく、アルキニレン基の炭素数は2〜16であることが好ましく、2〜14であることがより好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。置換アルキニレン基の場合、置換基の例としてはハロゲン原子が含まれる。
【0034】
3Aで表される二価の鎖状基の具体例としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、2−ブテニレン基および2−ブチニレン基などが挙げられる。
【0035】
3Aで表される二価の環状基とは、少なくとも1種類の環状構造を有する二価の連結基である。二価の環状基は5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがより好ましく、6員環であることがさらに好ましい。環状基に含まれる環は、単環であっても縮合環であってもよい。また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。ただし、脂肪族環よりも、芳香族環および複素環が好ましい。芳香族環の例には、ベンゼン環およびナフタレン環が含まれる。脂肪族環の例には、シクロヘキサン環が含まれる。複素環の例には、ピリジン環およびピリミジン環が含まれる。
【0036】
3Aで表される二価の環状基のうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレンおよび1,3−フェニレンが好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,3−ジイル、ナフタレン−1,4−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−1,6−ジイル、ナフタレン−1,7−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイルが好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレンであることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイルが好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイルが好ましい。
【0037】
3Aで表される二価の環状基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数1〜16のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素数1〜16のアルコキシ基、炭素数2〜16のアシル基、炭素数1〜16のアルキルチオ基、炭素数2〜16のアシルオキシ基、炭素数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素数2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。
【0038】
1は、下記一般式(IVA)で表されるものがさらに好ましい。
【0039】
一般式(IVA)
−L4A1−二価の環状基−L4A2−Q4A
【0040】
4Aは、一般式(IIIA)のQ3Aの定義と同様である。
4A1は単結合または二価の連結基である。L4A1が二価の連結基の場合、−O−、−S−、−C(=O)−、−NR7−、−CH=CH−、−C≡C−、およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R7は炭素数が1〜7のアルキル基または水素原子であり、炭素数1〜4のアルキル基または水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0041】
4A1は単結合、および、−O−CO−、−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−が好ましく、単結合がさらに好ましい。
【0042】
一般式(IVA)中の二価の環状基は、一般式(IIIA)中の二価の環状基の定義と同様であり、好ましい範囲も同義である。
【0043】
一般式(IVA)中、L4A2は、一般式(IIIA)のL3Aの定義と同様であり、好ましい範囲も同義である。
4A2で表される二価の連結基の例を以下に示す。ここで、右側が一般式(IVA)中の二価の環状基に、左側がQ4Aに結合する。
【0044】
L−1:−二価の鎖状基−O−二価の環状基−
L−2:−二価の鎖状基−O−二価の環状基−CO−O−
L−3:−二価の鎖状基−O−二価の環状基−O−CO−
L−4:−二価の鎖状基−O−二価の環状基−CO−NR7
L−5:−二価の鎖状基−O−二価の環状基−二価の鎖状基―
L−6:−二価の鎖状基−O−二価の環状基−二価の鎖状基―CO−O−
L−7:−二価の鎖状基−O−二価の環状基−二価の鎖状基―O−CO−
L−8:−二価の鎖状基−O−CO−二価の環状基−
L−9:−二価の鎖状基−O−CO−二価の環状基−CO−O−
L−10:−二価の鎖状基−O−CO−二価の環状基−O−CO−
L−11:−二価の鎖状基−O−CO−二価の環状基−CO−NR7
L−12:−二価の鎖状基−O−CO−二価の環状基−二価の鎖状基―
L−13:−二価の鎖状基−O−CO−二価の環状基−二価の鎖状基―CO−O−
L−14:−二価の鎖状基−O−CO−二価の環状基−二価の鎖状基―O−CO−
L−15:−二価の鎖状基−CO−O−二価の環状基−
L−16:−二価の鎖状基−CO−O−二価の環状基−CO−O−
L−17:−二価の鎖状基−CO−O−二価の環状基−O−CO−
L−18:−二価の鎖状基−CO−O−二価の環状基−CO−NR7
L−19:−二価の鎖状基−CO−O−二価の環状基−二価の鎖状基―
L−20:−二価の鎖状基−CO−O−二価の環状基−二価の鎖状基―CO−O−
L−21:−二価の鎖状基−CO−O−二価の環状基−二価の鎖状基―O−CO−
L−22:−二価の鎖状基−O−CO−O−二価の環状基−
L−23:−二価の鎖状基−O−CO−O−二価の環状基−CO−O−
L−24:−二価の鎖状基−O−CO−O−二価の環状基−O−CO−
L−25:−二価の鎖状基−O−CO−O−二価の環状基−CO−NR7
L−26:−二価の鎖状基−O−CO−O−二価の環状基−二価の鎖状基―
L−27:−二価の鎖状基−O−CO−O−二価の環状基−二価の鎖状基―CO−O−
L−28:−二価の鎖状基−O−CO−O−二価の環状基−二価の鎖状基―O−CO−
L−29:−二価の鎖状基−
L−30:−二価の鎖状基−O−
L−31:−二価の鎖状基−CO−O−
L−32:−二価の鎖状基−O−CO−
L−33:−二価の鎖状基−CO−NR7
L−34:−二価の鎖状基−O−二価の鎖状基−
L−35:−二価の鎖状基−O−二価の鎖状基−O−
L−36:−二価の鎖状基−O−二価の鎖状基−CO−O−
L−37:−二価の鎖状基−O−二価の鎖状基−O−CO−
L−39:−二価の鎖状基−O−CO−O−
【0045】
上記のうち、L−2、L−3、L−9、L−10、L−16、L−17、L−23、L−24、L−30、L−31、L−32、L−35、L−36、L−37、L−39が好ましい。
【0046】
1は、下記一般式(VA)で表されるものがよりさらに好ましい。
【0047】
一般式(VA)
【化10】

【0048】
一般式(VA)中、A13、A14、A15、A16及びA17は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表す。
13、A14、A15、A16及びA17は、それらのうち、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、すべてメチンであることがより好ましい。さらに、メチンは無置換であることが好ましい。
13、A14、A15、A16又はA17がメチンの場合の置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数2〜16のアルケニル基、炭素数2〜16のアルキニル基、炭素数1〜16のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素数1〜16のアルコキシ基、炭素数2〜16のアシル基、炭素数1〜16のアルキルチオ基、炭素数2〜16のアシルオキシ基、炭素数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素数2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基及び炭素数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン原子で置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲン原子で置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
【0049】
5A1は、A14、A15またはA16の部位で環に連結することが好ましい。
【0050】
一般式(VA)中のL5A1はそれぞれ独立して、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−又は−C≡C−を表す。好ましくは、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−であり、より好ましくは、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−である。上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数2〜6のアシルオキシ基、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素数2〜6のアルキル基で置換されたカルバモイル基及び炭素数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0051】
一般式(VA)中のL5A2はそれぞれ独立して、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−及び−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。ここで、−NH−、−CH2−、−CH=CH−の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数2〜6のアシルオキシ基、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素数2〜6のアルキル基で置換されたカルバモイル基及び炭素数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0052】
5A2はそれぞれ独立して、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−及び−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれ、かつ炭素数1〜20である二価の連結基であることが好ましい。尚、該二価の連結基の炭素数は、炭素数2〜14がより好ましく、−CH2−を1〜16個有することがさらに好ましく、−CH2−を2〜12個有することが特に好ましい。
【0053】
一般式(VA)中のQ5Aの定義と好ましい例は、一般式(IIIA)のQ3Aと同様である。
一般式(DI−B)
【化11】

【0054】
一般式(DI−B)中のL2の定義と好ましい例は、一般式(DI−A)のL1と同様である。
一般式(DI−B)中のA21、A22およびX2の定義と好ましい例は、それぞれ、一般式(DI−A)中のA11、A12およびX1と同様である。
一般式(DI−B)中のR2の定義と好ましい例は、一般式(DI−A)のR1と同様である。
【0055】
2は、下記一般式(IIIB)で表されるものがより好ましい。
【0056】
一般式(IIIB) −L3B−Q3B
【0057】
一般式(IIIB)中のL3Bの定義と好ましい例は、一般式(IIIA)のL3Aと同様である。
一般式(IIIB)中のQ3Bの定義と好ましい例は、一般式(IIIA)のQ3Aと同様である。
【0058】
2は、下記一般式(IVB)で表されるものがさらに好ましい。
【0059】
一般式(IVB)
−L4B1−二価の環状基−L4B2−Q4B
【0060】
一般式(IVB)中のL4B1の定義と好ましい例は、一般式(IVA)のL4A1の定義と同様である。
一般式(IVB)中の二価の環状基の定義と好ましい例は、一般式(IVA)の二価の環状基の定義と同様である。
一般式(IVB)中のL4B2の定義と好ましい例は、一般式(IVA)のL4A2の定義と同様である。
一般式(IVB)中のQ4Bの定義と好ましい例は、一般式(IIIA)のQ3Aの定義と同様である。
【0061】
2は、下記一般式(VB)で表されるものがよりさらに好ましい。
【0062】
一般式(VB)
【化12】

【0063】
一般式(VB)中のA23、A24、A25、A26及びA27の定義と好ましい例は、一般式(VA)のA13、A14、A15、A16及びA17の定義と同様である。
一般式(VB)中のL5B1の定義と好ましい例は、一般式(VA)のL5A1の定義と同様である。
一般式(VB)中のL5B2の定義と好ましい例は、一般式(VA)のL5A2の定義と同様である。
一般式(VB)中のQ5Bの定義と好ましい例は、一般式(IIIA)のQ3Aと同様である。
【0064】
次に一般式(DII)で表される化合物について詳細に説明する。
【0065】
一般式(DII)
【化13】

一般式(DII)中のY21、Y22及びY23の定義と好ましい例は、一般式(DI)中のY11、Y12及びY13と同様である。
21、R22及びR23は、それぞれ独立に下記一般式(DI−B)を表す。R21、R22及びR23は、同一であることが好ましい。
【0066】
一般式(DII−C)
【化14】

一般式(DII−C)中のL3の定義と好ましい例は、一般式(DI−A)のL1と同様である。
一般式(DII−C)中のA31、A32およびX3の定義と好ましい例は、それぞれ、一般式(DI−A)中のA11、A12およびX1と同様である。
一般式(DII−C)中のR3の定義と好ましい例は、一般式(DI−A)のR1と同様である。
【0067】
3は、下記一般式(IIIC)で表されるものがより好ましい。
【0068】
一般式(IIIC) −L3C−Q3C
【0069】
一般式(IIIC)中のL3Cの定義と好ましい例は、一般式(IIIA)のL3Aと同様である。
一般式(IIIC)中のQ3Cの定義と好ましい例は、一般式(IIIA)のQ3Aと同様である。
【0070】
3は、下記一般式(IVC)で表されるものがさらに好ましい。
【0071】
一般式(IVC)
−L4C1−二価の環状基−L4C2−Q4C
【0072】
一般式(IVC)中のL4C1の定義と好ましい例は、一般式(IVA)のL4A1の定義と同様である。
一般式(IVC)中の二価の環状基の定義と好ましい例は、一般式(IVA)の二価の環状基の定義と同様である。
一般式(IVC)中のL4C2の定義と好ましい例は、一般式(IVA)のL4A2の定義と同様である。
一般式(IVC)中のQ4Cの定義と好ましい例は、一般式(IIIA)のQ3Aの定義と同様である。
【0073】
3は、下記一般式(VC)で表されるものがよりさらに好ましい。
【0074】
一般式(VC)
【化15】

【0075】
一般式(VC)中のA33、A34、A35、A36及びA37の定義と好ましい例は、一般式(VA)のA13、A14、A15、A16及びA17の定義と同様である。
一般式(VC)中のL5C1の定義と好ましい例は、一般式(VA)のL5A1の定義と同様である。
一般式(VC)中のL5C2の定義と好ましい例は、一般式(VA)のL5A2の定義と同様である。
一般式(VC)中のQ5Cの定義と好ましい例は、一般式(IIIA)のQ3Aと同様である。
【0076】
以下に、一般式(DI)で表される化合物または一般式(DII)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、例示化合物中、「Me」はメチル基を表す。
【0077】
【化16】

【0078】
【化17】

【0079】
【化18】

【0080】
【化19】

【0081】
【化20】

【0082】
【化21】

【0083】
【化22】

【0084】
【化23】

【0085】
【化24】

【0086】
【化25】

【0087】
【化26】

【0088】
【化27】

【0089】
【化28】

【0090】
【化29】

【0091】
【化30】

【0092】
【化31】

【0093】
【化32】

【0094】
【化33】

【0095】
【化34】

【0096】
【化35】

【0097】
【化36】

【0098】
【化37】

【0099】
【化38】

【0100】
【化39】

【0101】
【化40】

【0102】
【化41】

【0103】
【化42】

【0104】
【化43】

【0105】
【化44】

【0106】
【化45】

【0107】
【化46】

【0108】
【化47】

【0109】
【化48】

【0110】
【化49】

【0111】
【化50】

【0112】
【化51】

【0113】
【化52】

【0114】
【化53】

【0115】
【化54】

【0116】
【化55】

【0117】
【化56】

【0118】
【化57】

【0119】
【化58】

【0120】
【化59】

【0121】
【化60】

【0122】
【化61】

【0123】
【化62】

【0124】
【化63】

【0125】
【化64】

【0126】
【化65】

【0127】
【化66】

【0128】
【化67】

【0129】
【化68】

【0130】
【化69】

【0131】
【化70】

【0132】
【化71】

【0133】
【化72】

【0134】
【化73】

【0135】
【化74】

【0136】
【化75】

【0137】
【化76】

【0138】
【化77】

【0139】
【化78】

【0140】
【化79】

【0141】
【化80】

【0142】
【化81】

【0143】
本発明の組成物を光学補償フィルムの製造用いる場合について説明する。本発明の組成物を光学補償フィルムの製造に用いる場合、例えば、支持体上に配向膜を設け、該配向膜上に、本発明の組成物を用いてなる光学異方性層を形成することが考えられる。以下、本発明の組成物を光学異方性層の形成に用いる場合の、本発明の組成物の好ましい態様について説明する。
【0144】
本発明の組成物は良好なモノドメイン性を示す液晶相を発現することが望ましい。モノドメイン性が悪い場合には、得られる構造がポリドメインとなり、ドメイン同士の境界に配向欠陥が生じ、光を散乱するようになる。良好なモノドメイン性を示すと、位相差板が高い光透過率を有しやすくなる。
【0145】
本発明の組成物が発現する液晶相としては、カラムナー相及びディスコティックネマチック相(ND相)を挙げることができる。これらの液晶相の中では、良好なモノドメイン性を示すディスコティックネマチック相(ND相)が最も好ましい。
【0146】
本発明の組成物は、液晶相を20℃〜300℃の範囲で発現することが好ましい。さらに好ましくは40℃〜280℃であり、最も好ましくは60℃〜250℃である。ここで20℃〜300℃で液晶相を発現するとは、液晶温度範囲が20℃をまたぐ場合(具体的に例えば、10℃〜22℃)や、300℃をまたぐ場合(具体的に例えば、298℃〜310℃)も含む。40℃〜280℃と60℃〜250℃に関しても同様である。
【0147】
本発明の組成物中に含まれる一般式(DI)で表される化合物および一般式(DII)で表される化合物の含有量は、所望の光学性能により異なるが、例えば、波長分散値を上げる場合には、一般式(DII)で表される化合物の含有量を増大させる、或いは波長分散値を下げる場合には、一般式(DI)で表される化合物の含有量を増大させる、といった制御を適宜行うことができる。
【0148】
本発明で用いる一般式(DI)で表される化合物および一般式(DII)で表される化合物の分子は、それぞれ、配向状態に固定されているのが好ましい。これらの化合物の分子対称軸の、セルロースアシレートフィルム側の界面における配向平均方向は、該セルロースアシレートフィルムの面内の遅相軸との交差角が略45度である。
【0149】
一般式(DI)で表される化合物および一般式(DII)で表される化合物の分子対称軸の配向平均方向は、一般にこれらの化合物の種類や配向膜の材料を選択することにより、また、ラビング処理方法を選択することにより、調整することができる。本発明では、例えば、光学異方性層を形成するための配向膜をラビング処理によって作製する場合は、支持体となるポリマーフィルム(好ましくはセルロースアシレートフィルム)の遅相軸に対して45°の方向にラビング処理することで、一般式(DI)で表される化合物および一般式(DII)で表される化合物の分子対称軸の、少なくとも支持体界面における配向平均方向が、支持体の遅相軸に対して45°である光学異方性層を形成することができる。例えば、本発明の組成物を用いて作製する光学補償フィルムの支持体として、遅相軸が長手方向と平行なセルロースアシレートフィルム等の長尺状のポリマーフィルムを用いると連続的に作製できる。
【0150】
また、一般式(DI)で表される化合物および一般式(DII)で表される化合物の表面側(空気側)の分子対称軸の配向平均方向について、空気界面側のこれらの化合物の分子対称軸の配向平均方向は、セルロースアシレートフィルム等の支持体の遅相軸に対して略45°であるのが好ましく、42〜48°であるのがより好ましく、43〜47°であるのがさらに好ましい。空気界面側のこれらの化合物の分子対称軸の配向平均方向は、一般に、これらの化合物又はこれらの化合物と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。これらの化合物と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマ−及びポリマーなどを挙げることができる。分子対称軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、これらの化合物と添加剤との選択により調整できる。特に界面活性剤に関しては、上述の塗布液の表面張力制御と両立することが好ましい。
【0151】
一般式(DI)で表される化合物および一般式(DII)で表される化合物と共に使用する可塑剤、界面活性剤及び重合性モノマ−は、これらの化合物と相溶性を有し、これらの化合物の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。重合性モノマ−(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基を有する化合物)が好ましい。重合性モノマーの添加量は、一般式(DI)で表される化合物および一般式(DII)で表される化合物に対して、一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が4以上の重合性モノマ−を混合して用いると、配向膜と光学異方性層との間の密着性を高めることができる。
【0152】
一般式(DI)で表される化合物および一般式(DII)で表される化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
【0153】
本発明の組成物により形成される光学異方性層は、少なくとも面内光学異方性を有することが好ましい。該光学異方性層の、面内レターデーション(Re)は3〜300nmであるのが好ましく、5〜200nmであるのがより好ましく、10〜100nmであるのがさらに好ましい。該光学異方性層の厚さ方向のレターデーション(Rth)は、20〜400nmであるのが好ましく、50〜200nmであるのがより好ましい。また、該光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがより好ましく、1〜10μmであることがさらに好ましい。
【0154】
(配向膜)
本発明の光学補償フィルムは、支持体と光学異方性層との間に配向膜を有していることが好ましい。また、光学異方性層を作製する際にのみ配向膜を使用し、配向膜上に光学異方性層を作製した後に、該光学異方性層のみを支持体上に転写してもよい。すなわち、本発明の光学補償フィルムは、配向膜を有することを必須の要件とするものではない。
本発明において、前記配向膜は、架橋されたポリマーからなる層であるのが好ましい。配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーであっても、架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。上記配向膜は、官能基を有するポリマーあるいはポリマーに官能基を導入したものを、光、熱またはpH変化等により、ポリマー間で反応させて形成する;又は、反応活性の高い化合物である架橋剤を用いてポリマー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、ポリマー間を架橋することにより形成する;ことができる。
【0155】
架橋されたポリマーからなる配向膜は、通常、上記ポリマー又はポリマーと架橋剤との混合物を含む塗布液を、支持体上に塗布した後、加熱等を行なうことにより形成することができる。
後述のラビング工程において、配向膜の発塵を抑制するために、架橋度を上げておくことが好ましい。前記塗布液中に添加する架橋剤の量(Mb)に対して、架橋後に残存している架橋剤の量(Ma)の比率(Ma/Mb)を1から引いた値(1−(Ma/Mb))を架橋度と定義した場合、架橋度は50%〜100%が好ましく、65%〜100%がより好ましく、75%〜100%がさらに好ましい。
【0156】
本発明において、前記配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。勿論双方の機能を有するポリマーを使用することもできる。上記ポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレ−ト、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコ−ル及び変性ポリビニルアルコ−ル、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロ−ス、ゼラチン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリカーボネート等のポリマー及びシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリ(N−メチロ−ルアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロ−ス、ゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーであり、さらにゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが好ましく、特にポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。
支持体となるセルロースアシレートフィルム等の表面に、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールを直接塗設する場合、親水性の下塗り層を設けるか、もしくは、特開2002−116323号公報に記載の鹸化処理を施す方法が好ましく使用される。
【0157】
上記ポリマーの中で、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールが好ましい。
ポリビニルアルコールとしては、例えば、鹸化度70〜100%のものが挙げられ、鹸化度80〜100%のものが好ましく、鹸化度82〜98%のものがより好ましい。重合度としては、100〜3000のも範囲が好ましい。
変性ポリビニルアルコールとしては、共重合変性したもの(変性基として、例えば、COONa、Si(OX)3、N(CH33・Cl、C919COO、SO3Na、C1225等が導入される)、連鎖移動により変性したもの(変性基として、例えば、COONa、SH、SC1225等が導入されている)、ブロック重合による変性をしたもの(変性基として、例えば、COOH、CONH2、COOR、C65等が導入される)等のポリビニルアルコールの変性物を挙げることができる。重合度としては、100〜3000の範囲が好ましい。これらの中で、鹸化度80〜100%の未変性もしくは変性ポリビニルアルコールが好ましく、より好ましくは鹸化度85〜95%の未変性ないしアルキルチオ変性ポリビニルアルコールである。
【0158】
配向膜に用いる変性ポリビニルアルコールとして、式(6)で表わされる化合物とポリビニルアルコールとの反応物が好ましい。
【0159】
式(6)
【化82】

【0160】
式(6)中、R1dは無置換のアルキル基、又はアクリロリル基、メタクリロイル基もしくはエポキシ基で置換されたアルキル基を表わし、Wはハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基を表わし、X1dは活性エステル、酸無水物又は酸ハロゲン化物を形成するために必要な原子群を表わし、lは0又は1を表わし、nは0〜4の整数を表わす。
【0161】
また、配向膜に用いる変性ポリビニルアルコールとして、式(7)で表わされる化合物とポリビニルアルコールとの反応物も好ましい。
【0162】
式(7)
【化83】

【0163】
式(7)中、X2dは活性エステル、酸無水物又は酸ハロゲン化物を形成するために必要な原子群を表わし、mは2〜24の整数を表わす。
【0164】
式(6)及び式(7)により表される化合物と反応させるために用いられるポリビニルアルコ−ルとしては、上記変性されていないポリビニルアルコール及び上記共重合変性したもの、即ち連鎖移動により変性したもの、ブロック重合による変性をしたもの等のポリビニルアルコールの変性物を挙げることができる。上記特定の変性ポリビニルアルコールの好ましい例としては、特開平8−338913号公報に詳しく記載されている。
配向膜にポリビニルアルコール等の親水性ポリマーを使用する場合、硬膜度の観点から、含水率を制御することが好ましい。含水率は、0.4%〜2.5%であることが好ましく、0.6%〜1.6%であることがより好ましい。含水率は、市販のカールフィッシャー法の水分率測定器で測定することができる。
なお、配向膜は、10μm以下の膜厚のものが好ましい。
【実施例】
【0165】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0166】
[合成例1]
[D−338の合成]
下記スキームに従って合成した。
【0167】
【化84】

【0168】
(D−338Aの合成)
3−シアノ安息香酸クロライド2.5gをテトラヒドロフラン(THF)20mlに溶解させ、6−クロロ−1−ヘキサノール1.3ml、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)3.0mlを添加後、室温で1時間撹拌した。反応液に水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を減圧濃縮した。残渣をメタノール(MeOH)100mlに溶解させ、50%ヒドロキシルアミン溶液2.8mlを添加後、40℃で1時間撹拌した。冷却後、反応液に水を加え、析出した結晶を濾別、乾燥し、D−338Aを3.4g得た。
【0169】
(D−338Bの合成)
3.4gのD−338Aをジメチルアセトアミド10mlに溶解させ、ピリジン1.2ml、トリメシン酸クロライド1.2gを添加後、120℃で1時間撹拌した。冷却後、メタノールを添加し、析出した結晶を濾取、乾燥し、D−338Bを3.9g得た。
【0170】
(D−338の合成)
3.9gのD−338Bをジメチルアセトアミド(DMAc)50mlに溶解させ、炭酸カリウム3.7g、ヨウ化ナトリウム2.0g、アクリル酸1.9mlを添加後、100℃で3時間撹拌した。反応液に水を加え、析出した結晶をろ過により濾取した。カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、D−338を1.2g得た。得られたD−338のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0171】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
1.55(12H、m)
1.75−1.90(12H、m)
4.20(6H、t)
4.40(6H、t)
5.80(3H、dd)
6.10(3H、dd)
6.40(3H、dd)
7.65(3H、t)
8.25(3H、d)
8.45(3H、d)
8.90(3H、s)
9.30(3H、s)
【0172】
得られたD−338の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって行ったところ、温度を上げていき83℃付近で結晶相からディスコティックネマチック液晶相に変わり、130℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D−338は83〜130℃の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分かった。
【0173】
[合成例2]
[D−268の合成]
下記スキームに従って合成した。
【化85】

【0174】
(D−698Aの合成)
イソフタロイルクロライド10.0gと6−クロロ−1−ヘキサノール7.4gをTHF70mlに溶解させて−10℃に冷却後、トリエチルアミン11.3mlを添加し、室温で1時間撹拌した。別のフラスコにヒドラジン1水和物49.3gをTHF140mlに溶解させ、−40℃に冷却した後、前記反応液を滴下した。室温で1時間攪拌し、反応液に水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、D−698Aを6.0g得た。
【0175】
(D−698Bの合成)
5.6gのD−698AをTHF50mlにトリエチルアミン2.9ml、トリメシン酸クロライド1.7gを添加後、室温で1時間撹拌した。溶解させ、反応液に水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を減圧濃縮し、D−698Bを6.6g得た。
【0176】
(D−698Cの合成)
6.6gのD−698Bとトリフェニルホスフィン6.4gを塩化メチレン110mlに溶解させ、四臭化炭素8.1g、トリエチルアミン6.7mlを添加後、40℃で1時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、D−698Cを3.8g得た。
【0177】
(D−698の合成)
3.6gのD−698Cをジメチルアセトアミド(DMAc)50mlに溶解させ、炭酸カリウム6.0g、ヨウ化カリウム3.6g、アクリル酸1.5mlを添加後、90℃で3時間撹拌した。反応液に水を加え、析出した結晶をろ過により濾取した。カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、D−698を2.8g得た。得られたD−698のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0178】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
1.50(12H、m)
1.75−1.90(12H、m)
4.20(6H、t)
4.45(6H、t)
5.80(3H、dd)
6.10(3H、dd)
6.40(3H、dd)
7.70(3H、t)
8.30(3H、d)
8.45(3H、d)
8.90(3H、s)
9.10(3H、s)
【0179】
得られたD−698の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって行ったところ、温度を上げていき124℃付近でカラムナー相から等方性液体相に変わった。次に124℃から徐々に温度を下げていくと120℃付近でディスコティックネマチック相に変化した。すなわち、D−698は、降温時にディスコティックネマチック相を呈することが分かった。
【0180】
[参考例1]
ガラス基板上に、PVA−203(クラレ(株)製)の水溶液を塗布し、100℃で3分乾燥させた。PVA−203の厚みは、0.5μmであった。このPVA−203薄膜を設けた基板上に下記塗布液をスピンコートし、110℃の恒温槽中に入れ、5分後に600mJの紫外線を照射して配向状態を固定した。室温まで放冷後、偏光顕微鏡でその配向状態を観察すると、ディスコティック化合物が欠陥なくホメオトロピック配向していることが分かった。塗布層の厚みは、3.0μmであった。
【0181】
(塗布液)
・前記化合物 D−338 100質量部
・下記空気界面配向制御剤 V−(1) 0.2質量部
・イルガキュア907(長瀬産業(株)) 3.0質量部
・ジエチルチオキサントン 1.0質量部
・メチルエチルケトン 250質量部
【0182】
【化86】

【0183】
[実施例1]
上記参考例1のPVA−203薄膜を設けた基板上に下記塗布液をスピンコートし、110℃の恒温槽中に入れ、5分後に600mJの紫外線を照射して配向状態を固定した。室温まで放冷後、偏光顕微鏡でその配向状態を観察すると、ディスコティック化合物が欠陥なくホメオトロピック配向していることが分かった。塗布層の厚みは、3.0μmであった。
【0184】
(塗布液)
・前記化合物 D−338 75質量部
・前記化合物 D−698 25質量部
・上記空気界面配向制御剤 V−(1) 0.2質量部
・イルガキュア907(長瀬産業(株)) 3.0質量部
・ジエチルチオキサントン 1.0質量部
・メチルエチルケトン 250質量部
【0185】
[実施例2]
上記参考例1のPVA−203薄膜を設けた基板上に下記塗布液をスピンコートし、110℃の恒温槽中に入れ、5分後に600mJの紫外線を照射して配向状態を固定した。室温まで放冷後、偏光顕微鏡でその配向状態を観察すると、ディスコティック化合物が欠陥なくホメオトロピック配向していることが分かった。塗布層の厚みは、3.0μmであった。
【0186】
(塗布液)
・前記化合物 D−338 50質量部
・前記化合物 D−698 50質量部
・上記空気界面配向制御剤 V−(1) 0.2質量部
・イルガキュア907(長瀬産業(株)) 3.0質量部
・ジエチルチオキサントン 1.0質量部
・メチルエチルケトン 250質量部
【0187】
[実施例3]
上記参考例1のPVA−203薄膜を設けた基板上に下記塗布液をスピンコートし、110℃の恒温槽中に入れ、5分後に600mJの紫外線を照射して配向状態を固定した。室温まで放冷後、偏光顕微鏡でその配向状態を観察すると、ディスコティック化合物が欠陥なくホメオトロピック配向していることが分かった。塗布層の厚みは、3.0μmであった。
【0188】
(塗布液)
・前記化合物 D−338 25質量部
・前記化合物 D−698 75質量部
・上記空気界面配向制御剤 V−(1) 0.2質量部
・イルガキュア907(長瀬産業(株)) 3.0質量部
・ジエチルチオキサントン 1.0質量部
・メチルエチルケトン 250質量部
【0189】
[参考例2]
上記参考例1のPVA−203薄膜を設けた基板上に下記塗布液をスピンコートし、110℃の恒温槽中に入れ、5分後に600mJの紫外線を照射して配向状態を固定した。室温まで放冷後、偏光顕微鏡でその配向状態を観察すると、ディスコティック化合物が欠陥なくホメオトロピック配向していることが分かった。塗布層の厚みは、3.0μmであった。
【0190】
(塗布液)
・前記化合物 D−698 100質量部
・上記空気界面配向制御剤 V−(1) 0.2質量部
・イルガキュア907(長瀬産業(株)) 3.0質量部
・ジエチルチオキサントン 1.0質量部
・メチルエチルケトン 250質量部
【0191】
[波長分散値の比較]
実施例1〜4、参考例1、2で得られたPVA−203薄膜と塗布層からなる膜の波長分散値(Re(448nm)/Re(548nm)は、KOBRA(王子計測機器(株)製)を用いて、斜め40°から448nmおよび548nmのレターデーションを測定することで求めた。
結果を下記表1に示す。
【0192】
【表1】

【0193】
上記表1に示した結果から、波長分散の互いに異なる化合物を2種類以上混合することにより波長分散制御が可能であることを明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(DI)で表される化合物を少なくとも1種と、一般式(DII)で表される化合物を少なくとも1種とを含む組成物。
一般式(DI)
【化1】

(一般式(DI)中、Y11、Y12及びY13は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に下記一般式(DI−A)または下記一般式(DI−B)を表す;
一般式(DI−A)
【化2】

(一般式(DI−A)中、L1は、単結合または二価の連結基を表す。A11及びA12は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し、X1は、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表す。R1は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基、またはシリル基を表す。)
一般式(DI−B)
【化3】

(一般式(DI−B)中、L2は、単結合または二価の連結基を表す。A21及びA22は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し、X2は、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表す。R2は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基、またはシリル基を表す。)
一般式(DII)
【化4】

(一般式(DII)中、Y21、Y22及びY23は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に下記一般式(DII−C)を表す;
一般式(DII−C)
【化5】

(一般式(DII−C)中、L3は、単結合または二価の連結基を表す。A31及びA32は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し、X3は、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表す。R3は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基、またはシリル基を表す。)
【請求項2】
一般式(DI)中のY11、Y12及びY13、ならびに、一般式(DII)中のY21、Y22及びY23は、いずれも、メチンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
一般式(DI−A)中のA11及びA12、一般式(DI−B)中のA21及びA22、一般式(DII−C)中のA31及びA32が、いずれも窒素原子である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
一般式(DI−A)中のR1、一般式(DI−B)中のR2、一般式(DII−C)中のR3が重合性エチレン性不飽和基または開環重合性基を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物を用いてなる光学補償フィルム。
【請求項6】
請求項5に記載の光学補償フィルムを含む、液晶表示装置。

【公開番号】特開2007−246672(P2007−246672A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71626(P2006−71626)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】