説明

組成物及び注入方法

【課題】水中不分離抵抗性に優れるヒドロゲル組成物の提供。
【解決手段】有機チタン化合物とポリビニルアルコールと水を含有するA材と必要に応じてカルシウムアルミネート化合物とカルシウムアルミノシリケート化合物と水を含有するB材を含有する組成物。有機チタン化合物中のチタンとポリビニルアルコール水溶液中の水酸基とのモル比が0.05〜0.4である組成物。該組成物を地下構造物周囲に注入することを特徴とする補修方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に土木・建築分野の漏水箇所において使用される組成物及びそれを使用した地盤補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地下構造物の周囲を弾性組成物で改質することにより、地震による地下構造物の被害を軽減する技術が検討されている。弾性組成物としてポリビニルアルコールを用いたヒドロゲル組成物が検討されている(特許文献1、2、3)。水溶性チタン化合物として有機チタンペルオキソ化合物やその製法が開示されている(特許文献4,5)。
【0003】
【特許文献1】特開平06−207071号公報
【特許文献2】特開平05−117003号公報
【特許文献3】特開2005−162984号公報
【特許文献4】特開2000−159786号公報
【特許文献5】特開2004−43353号公報
【0004】
有機チタン化合物とポリビニルアルコールを含有する弾性組成物が開示されている(特許文献6,7)。
【特許文献6】特開2007−31662号公報
【0005】
【特許文献7】特開2007−177212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの材料は、ゲル化前は液状であるため充填性が高い特徴を有する。
湧水箇所や漏水箇所などの水流がある箇所でも、水中不分離性に優れる組成物が求められていた。例えば、ゲル組成物が溶解せず、有機物の溶出量が水質基準より低く、充填性が高い組成物が求められていた。
【0007】
本発明者は、鋭意努力を重ね、種々の実験検討を通して、水中不分離抵抗性に優れる組成物を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、下記(1)と(2)を含有する組成物であり、
(1)有機チタン化合物とポリビニルアルコールと水を含有するA材
(2)カルシウムアルミノシリケート化合物と水を含有するB材
下記(1)と(2)を含有する組成物であり、
(1)有機チタン化合物とポリビニルアルコールと水を含有するA材
(2)カルシウムアルミネート化合物とカルシウムアルミノシリケート化合物と水を含有するB材
下記(1)と(2)を含有する組成物であり、
(1)有機チタン化合物とポリビニルアルコールと水を含有するA材
(2)カルシウムアルミネート化合物とカルシウムアルミノシリケート化合物と凝結遅延剤と水を含有するB材
(1−1)A材に含まれる有機チタン化合物中のチタンと(1−2)ポリビニルアルコール水溶液中の水酸基とのモル比が0.05〜0.4である該組成物であり、B材が、カルシウムアルミネート化合物100質量部、カルシウムアルミノシリケート化合物0.1〜60質量部、凝結遅延剤0.1〜10質量部、水を含有する該組成物であり、該組成物からなるヒドロゲル組成物であり、
下記(1)と(2)を混合し、注入する注入工法であり、
(1)有機チタン化合物とポリビニルアルコールと水を含有するA材
(2)カルシウムアルミノシリケート化合物と水を含有するB材
下記(1)と(2)を混合し、注入する注入工法であり、
(1)有機チタン化合物とポリビニルアルコールと水を含有するA材
(2)カルシウムアルミネート化合物とカルシウムアルミノシリケート化合物と水を含有するB材
下記(1)と(2)を混合し、注入する注入工法であり、
(1)有機チタン化合物とポリビニルアルコールと水を含有するA材
(2)カルシウムアルミネート化合物とカルシウムアルミノシリケート化合物と凝結遅延剤と水を含有するB材
該組成物を地下構造物周囲に注入する補修方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物は、水中不分離抵抗性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
なお、本発明で使用する部、%は、特に規定しない限り質量基準である。
【0011】
本発明で使用するポリビニルアルコール(以下、PVAと略記)は、完全ケン化型PVA、部分ケン化型PVAをはじめとして、水酸基を有し実質的に水溶性を保持しているものであればよい。アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、アクリルアミドなどを付加した各種変性PVAを用いることもできる。本発明で使用するPVAの平均重合度は、500〜3000が好ましく、1000〜2000がより好ましい。PVAの鹸化度は80mol%以上のものが好ましく、90mol%以上がより好ましい。PVAの重合度や鹸化度が前記範囲外の場合には、ヒドロゲル組成物がゲル化した後の物理的強度、弾力性、耐水性に影響する場合がある。
【0012】
PVAを予め水溶液として使用する際、PVA水溶液中の固形分濃度は、5〜15質量%が好ましく、8〜12質量%がより好ましい。5質量%未満ではヒドロゲル組成物が硬化し弾性が不足する場合があり、15質量%を超えると水溶液の安定性が悪くなり、さらにヒドロゲル組成物から溶出する有機物の濃度が高くなる場合がある。
【0013】
本発明で使用する有機チタン化合物は、水酸基やカルボキシル基と反応するもの(架橋剤)であれば利用することができる。中でも、水溶性の有機チタン化合物を用いることが好ましい。
【0014】
水溶性の有機チタン化合物の中では、チタンアルコキシドにヒドロキシカルボン酸である乳酸を反応させたチタンラクテートや、チタンアルコキシドにβ−ジケトンであるアセチルアセトンを反応させたチタンアセチルアセトネート、チタンアルコキシドにアルカノールアミンであるトリエタノールアミンを反応させたチタントリエタノールアルミネート、チタンアルコキシドにジカルボン酸であるシュウ酸を反応させたシュウ酸チタンなどを含むものが増粘作用の観点から好ましい。特に、水溶液の安定性に優れるチタンラクテートが好ましい。
【0015】
本発明で使用する有機チタン化合物は液状でも粉末状でも使用できる。液状のほうがPVA水溶液との混合性に優れる。有機チタン化合物の水溶液のチタン濃度は1.0〜10.0質量%が好ましく、4.0〜7.0質量%がより好ましい。1.0質量%未満では、十分な架橋が得られず強度発現性が得られない場合がある。10.0質量%を超えると水溶液が安定しない場合がある。
【0016】
有機チタン化合物の水溶液のpHは2以上が好ましく、4以上がより好ましい。2未満では強酸となり施工時の安全性に課題があり、ゲル化時間が遅くなり、水中不分離抵抗性に劣る場合がある。
【0017】
本発明で使用する有機チタン化合物とPVAの混合割合は、以下の通りである。有機チタン化合物中のチタンとポリビニルアルコール水溶液中の水酸基とのモル比(以下、Ti/OHモル比という)が0.05〜0.4が好ましく、0.08〜0.25がより好ましい。0.05未満ではゲル組成物が膨潤し長期安定性に劣る場合がある。0.4を超えるとゲル組成物の強度が高くなりすぎて弾性が損なわれる場合がある。
【0018】
本発明で使用するカルシウムアルミノシリケート化合物は、CaOとAlとSiOを主成分とする非晶質物質である。CaO/Alモル比が1.5〜3.0で、SiO含有量が2.0〜5.0質量%の組成を有するものが好ましい。
カルシウムアルミノシリケート化合物は、CaO/Alモル比が2.0〜2.5がより好ましい。1.5未満ではゲル化に時間を要し、充分な水中不分離性が得られない場合がある。3.0を超えると充分な流動性や可使時間が得られない場合がある。
【0019】
SiO含有量が2.0%未満では十分な流動性や可使時間が得られない場合がある。5.0%を超えるとゲル化に時間を要し、充分な水中不分離性が得られない場合がある。
【0020】
カルシウムアルミノシリケート化合物を得る方法としては、例えば、CaO原料とAl原料とSiO原料を電気炉などにより熱処理して得る方法が挙げられる。CaO原料としては、石灰石や貝殻などの炭酸カルシウム、消石灰などの水酸化カルシウム、生石灰などの酸化カルシウムなどが挙げられる。Al原料としては、ボーキサイトやアルミ残灰と呼ばれる産業副産物、アルミ粉などが挙げられる。SiO原料としては、ケイ石や粘土質、各種産業から副生するシリカ質物質などが挙げられる。
【0021】
カルシウムアルミノシリケート化合物を工業的に得る場合、不純物を含むことがある。例えば、Fe、MgO、TiO、ZrO、MnO、NaO、KO、LiO、S、P、およびFなどが挙げられる。これらの不純物の存在は、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲では特に問題とはならない。これらの不純物の合計が10%以下だと特に問題とはならない。
【0022】
カルシウムアルミノシリケート化合物の粉末度は、特に限定されるものではない。ブレーン比表面積で3000〜9000cm/gが好ましく、4000〜8000cm/gがより好ましい。3000cm2/g未満ではゲル体の強度が充分でない場合がある。9000cm/gを超えると流動性や可使時間の確保が困難になる場合がある。
【0023】
さらに、本発明においては、カルシウムアルミネート化合物を使用することにより、ゲル化時間を短縮し、有機物の溶出量を最小限に抑え、ヒドロゲル組成物の水中不分離性を効果的に向上する。
【0024】
本発明で使用するカルシウムアルミネート化合物は、石灰石や石灰や消石灰などのカルシウム原料、ボーキサイトやアルミ残灰などのアルミニウム原料を所定の割合で配合し、熱処理した後、粉砕したものである。
【0025】
熱処理温度は、1200〜2000℃が好ましく、1400〜1600℃がより好ましい。1200℃未満では所定の化合物が得られない場合がある。2000℃を超えると不経済になる場合がある。焼成中の雰囲気は酸化雰囲気でも還元雰囲気でも構わない。焼成設備はロータリーキルンや電気炉などが使用することができる。
【0026】
原料としては、主成分であるCaO、Alの他に、SiO、Fe、MgO、TiO、P、NaO、KO、フッ素、塩素、重金属類などの不純物を含む場合がある。これらの不純物の合計が10%以下だと特に問題とはならない。
【0027】
本発明で使用するカルシウムアルミネート化合物のCaO/Alモル比は、0.4〜1.5が好ましい。0.4未満ではヒドロゲル組成物の圧縮強度が低くなる場合がある。1.5を超えるとヒドロゲル組成物の弾力性が低下する場合がある。なお、本発明で使用するヒドロゲル組成物は、カルシウムアルミネート化合物を添加してゲル化させると、アルカリ性を呈する。
【0028】
カルシウムアルミネート化合物の粉末度は、ブレーン比表面積で1500〜8000cm/gが好ましく、3000〜6000cm/gがより好ましい。1500cm/g未満では充分な強度が得られない場合がある。8000cm/gを超えると反応性が高くなるため、充分な可使時間を確保できない場合がある。
【0029】
カルシウムアルミネート化合物とカルシウムアルミノシリケート化合物を併用した場合、カルシウムアルミノシリケート化合物の使用量は、カルシウムアルミネート化合物100質量部に対し、0.1〜30質量部が好ましく、0.3〜10質量部がより好ましい。0.1質量部未満ではセメントスラリーが瞬結する場合がある。30質量部を超えると不経済である場合がある。
【0030】
カルシウムアルミネート化合物のガラス化率は、特に限定されるものではない。カルシウムアルミネート化合物は、結晶質でも非晶質でも使用することができる。結晶質のカルシウムアルミネート化合物としては、3CaO・Al、12CaO・7Al、CaO・Al、3CaO・5Al、CaO・2Al、CaO・6Alなどが挙げられる。これらのうち2種以上を併用することもできる。
【0031】
本発明では、次に示すX線回折リートベルト法により、ガラス化率の測定を行った。粉砕した試料に酸化アルミニウムや酸化マグネシウムなどの内部標準物質を所定量添加した。めのう乳鉢で充分混合したのち、粉末X線回折測定を実施した。測定結果を定量ソフトで解析し、ガラス化率を求めた。定量ソフトは、Sietronics社の「SIROQUANT」を用いた。
【0032】
さらに、本発明においては、凝結遅延剤を使用することにより、ゲル化時間を調整し、有機物の溶出量を最小限に抑え、ヒドロゲル組成物の水中不分離性を効果的に向上する。
【0033】
本発明で使用する凝結遅延剤は、オキシカルボン酸類、糖類、高分子有機酸類、燐酸類、ケイフッ化物などが挙げられる。セメントスラリーのpHに影響を及ぼさない観点から、糖類が好ましい。糖類の中では、ショ糖が好ましい。
【0034】
凝結遅延剤使用量は、カルシウムアルミネート化合物100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、0.3〜5質量部がより好ましい。0.1質量部未満ではセメントスラリーが瞬結する場合がある。10質量部を超えると有機物の溶出量が多くなり、凝結遅延効果が劣る場合がある。
【0035】
B材として、カルシウムアルミネート化合物、カルシウムアルミノシリケート化合物、凝結遅延剤、水を混合する際は、施工性を向上する観点から、B材を事前にスラリー化するとよい。スラリー化することにより、均一なゲル組成物を形成し、架橋割合が増大し、漏水箇所でも溶解しにくいヒドロゲル組成物を得ることができる。
【0036】
B材をスラリー化するための水量は、水粉体比で、15〜100質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。ここで、粉体とは、カルシウムアルミノシリケート化合物、カルシウムアルミネート化合物、および凝結遅延剤をいう。15質量%未満ではセメントスラリーが瞬結する場合がある。100質量%を超えると架橋割合が減少し、ヒドロゲル組成物の弾性が不十分になる場合がある。
【0037】
有機チタン化合物とポリビニルアルコールを含有するA材と、カルシウムアルミノシリケート化合物、カルシウムアルミネート化合物、凝結遅延剤、水を含有するB材を含有するヒドロゲル組成物を調製する場合、A材とB材の合計100質量部中、B材は5〜50質量部が好ましく、10〜40質量部がより好ましい。5質量部未満では水中不分離抵抗性が低下し、さらにゲル組成物が膨潤し長期安定性に劣る場合がある。50質量部を超えると強度が高くなりすぎて弾力性が損なわれる場合がある。
【0038】
本発明で使用するヒドロゲル組成物は、水酸基やカルボキシル基を有する架橋剤を、本発明の効果を損なわない範囲で併用することができる。架橋剤としては、脂肪族アルデヒド類、芳香族アルデヒド類、トリメチロールメラミンなどのメチロール基を有する化合物、ホウ砂やホウ酸などのホウ素化合物、Zr、Alなどが有機物質と結合した金属アルコキシド類、イソシアネート基を有する化合物などを使用することもできる。
【0039】
本発明で使用するヒドロゲル組成物は、硬化体の強度や弾性率、密度をコントロールする目的で、フィラーを使用することができる。フィラーとしては、無機系や有機系のものが使用することができる。無機系としては、珪石、石灰石などの骨材、ベントナイトなどの粘土鉱物、ゼオライトなどのイオン交換体などが挙げられる。有機系材料としては、ビニロン繊維、アクリル繊維、炭素繊維などの繊維状物質、イオン交換樹脂などが挙げられる。これらを本発明の目的を阻害しない範囲で使用することができる。
【0040】
本発明で使用するヒドロゲル組成物の混合装置としては、既存のいかなる装置も使用することができる。例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、ナウタミキサなどが挙げられる。
【0041】
本発明で使用するヒドロゲル組成物を用いた地盤補修方法としては、例えば、トンネルおよび下水管などの地下構造物周囲の空洞や土壌中に注入する方法が挙げられる。例えば、空洞や漏水が見られるコンクリート壁やコンクリート床版にドリルで穴を開け、注入プラグをセットした後、本発明で使用するヒドロゲル組成物を各種ポンプで注入し、空洞部を充填し、コンクリート背部や下部に遮水や免震に優れた弾性体を形成する方法が挙げられる。地上から空洞部や構造物周囲に注入管を挿入して、各種注入ポンプを用いて注入する方法も挙げられる。
【0042】
以下、実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0043】
「実験例1」
表1に示す割合のPVA水溶液とチタン水溶液をTi/OHモル比で0.15になるよう混合したA材65質量部と、表1に示す割合のカルシウムアルミノシリケート化合物とカルシウムアルミネート化合物と凝結遅延剤を水粉体比50質量%に調整したB材35質量部を混合し、ヒドロゲル組成物を調製した。調製前のB材の凝結始発時間の測定、ヒドロゲル組成物の水中不分離抵抗性試験を行った。結果を表1に示した。
【0044】
「使用材料」
PVA水溶液:電気化学工業社製、商品名「K17」、重合度1700、鹸化度98.7mol%を水道水に加えて80℃に加温し、固形分濃度10%のPVA水溶液を調製した。
チタン水溶液:チタンラクテート、マツモトファインケミカル社製、商品名「TC−325」、水溶液中のチタン濃度5.5質量%、水溶液のpH4.1
カルシウムアルミネート化合物:試作品。カルシウム原料(石灰石)とアルミニウム原料(ボーキサイト)を所定の割合で配合し、電気炉にて1500℃で熱処理した後、急冷し、粉砕したもの。CaO29%、Al65%、SiO3%、TiO3%、CaO/Alモル比0.8、ガラス化率30%、ブレーン比表面積5000cm/g、密度3.05g/cm
カルシウムアルミノシリケート化合物:試作品、CaO50%、Al40%、SiO4%、その他6%、CaO/Alモル比1.2、ガラス化率80%、ブレーン比表面積6000cm/g、密度3.05g/cm
凝結遅延剤:スクロース(ショ糖)、一級試薬
水:水道水
【0045】
「試験方法」
B材のスラリー凝結始発時間:水粉体比50%のスラリーを調製してから、JIS A 6202に基づき凝結が始発するまでの時間を、貫入針で測定し、B材のスラリー凝結始発時間とした。
水中不分離抵抗性試験(目視観察):純水を張った透明の水槽に、A材、B材を15秒混合攪拌した。攪拌して得られたヒドロゲル組成物を瞬時に投入し、水槽内の水の濁度を目視観察した。なお、水槽内の水量はヒドロゲル組成物の100倍量とした。水槽の大きさは30cm×50cm×30cmのものを使用した。
水中不分離抵抗性試験(TOC):水中不分離抵抗性確認後の上澄み液を採取して全有機炭素濃度を、島津製作所社製、全有機炭素分析計、TOC−VCSHにて測定した。なお、サンプルは、ヒドロゲル組成物を純粋に浸漬してから3分後に採取した。
【0046】
【表1】

【0047】
表1より以下のことが判った。カルシウムアルミノシリケート化合物を適量使用することにより、凝結始発時間が短くなり、水槽中でも濁りがなく、全有機炭素濃度が小さいという、効果が得られた。凝結遅延剤を適量使用することにより、同様の効果が得られた。
【0048】
「実験例2」
表2に示す割合のPVA水溶液とチタン水溶液をTi/OHモル比で混合したA材65質量部と、表1に示す割合のカルシウムアルミネート化合物とカルシウムアルミノシリケート化合物と凝結遅延剤を水粉体比50質量%に調製したB材35質量部を混合し、ヒドロゲル組成物を調製した。ヒドロゲル組成物の復元率、長さ変化率を測定した。結果を表1に示した。
【0049】
「試験方法」
復元率:弾性を試験した。ヒドロゲル組成物を5×5×5cmの型枠に流し込み、材齢1日で脱型し、市販の耐圧試験機を用いて上部から1cm裁荷した後、除荷した。除荷後の供試体の高さ(xcm)を測定し、復元率を測定した。復元率は[1−(5−x)]×100(%)で算出し、弾性の指標とした。
長さ変化率:ヒドロゲル組成物を5×5×5cmの型枠に流し込み、材齢1日で脱型し、これを基準とした。脱型後のヒドロゲル組成物を組成物表面積の10倍量の水に浸漬させ、浸漬後1週間後の長さ変化率を測定した。
【0050】
【表2】

【0051】
表2より以下のことが判った。Ti/OHモル比を適量にすることにより、弾性が大きく、膨張が小さいという、効果が得られた。
【0052】
「実験例3」
PVA水溶液とチタン水溶液をTi/OHモル比0.15で混合したA材と、カルシウムアルミネート化合物100とカルシウムアルミノシリケート化合物1.0質量部と凝結遅延剤1.0質量部を水粉体比50質量%に調製したB材を、表3に示す割合で混合し、ヒドロゲル組成物を調製した。ヒドロゲル組成物の水中不分離抵抗性、弾力性、長さ変化率を測定した。結果を表3に示した。
【0053】
【表3】

【0054】
表3より以下のことが判った。A材とB材を適量使用することにより、水槽中でも濁りがなく、全有機炭素濃度が小さく、弾性が大きく、膨張が小さいという、効果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明で使用するヒドロゲル組成物は、ゲル化速度を調整するものである。本発明で使用するヒドロゲル組成物は、均一なゲル組成物を形成するものである。本発明で使用するヒドロゲル組成物は、湧水箇所や漏水箇所でも水中不分離抵抗性に優れ、水中に溶解しないことから、充填性が高い。本発明で使用するヒドロゲル組成物は、高範囲に地下構造物周囲に注入でき、有機物溶出量を下げることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)と(2)を含有する組成物。
(1)有機チタン化合物とポリビニルアルコールと水を含有するA材
(2)カルシウムアルミノシリケート化合物と水を含有するB材
【請求項2】
下記(1)と(2)を含有する組成物。
(1)有機チタン化合物とポリビニルアルコールと水を含有するA材
(2)カルシウムアルミネート化合物とカルシウムアルミノシリケート化合物と水を含有するB材
【請求項3】
下記(1)と(2)を含有する組成物。
(1)有機チタン化合物とポリビニルアルコールと水を含有するA材
(2)カルシウムアルミネート化合物とカルシウムアルミノシリケート化合物と凝結遅延剤と水を含有するB材
【請求項4】
(1−1)A材に含まれる有機チタン化合物中のチタンと(1−2)ポリビニルアルコール水溶液中の水酸基とのモル比が0.05〜0.4である請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
B材が、カルシウムアルミネート化合物100質量部、カルシウムアルミノシリケート化合物0.1〜60質量部、凝結遅延剤0.1〜10質量部、水を含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物からなるヒドロゲル組成物。
【請求項7】
下記(1)と(2)を混合し、注入する注入工法。
(1)有機チタン化合物とポリビニルアルコールと水を含有するA材
(2)カルシウムアルミノシリケート化合物と水を含有するB材
【請求項8】
下記(1)と(2)を混合し、注入する注入工法。
(1)有機チタン化合物とポリビニルアルコールと水を含有するA材
(2)カルシウムアルミネート化合物とカルシウムアルミノシリケート化合物と水を含有するB材
【請求項9】
下記(1)と(2)を混合し、注入する注入工法。
(1)有機チタン化合物とポリビニルアルコールと水を含有するA材
(2)カルシウムアルミネート化合物とカルシウムアルミノシリケート化合物と凝結遅延剤と水を含有するB材
【請求項10】
請求項1〜5項のいずれか1項記載の組成物を地下構造物周囲に注入する補修方法。

【公開番号】特開2009−209293(P2009−209293A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55135(P2008−55135)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】