説明

組成物

【課題】分散安定性と画像特性の両立、更にはメディア上で均一な膜構造を形成するための組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも、下記一般式(1)記載のモノマーを重合して得られる単位構造を含有する疎水性ブロックセグメント及び親水性ブロックセグメントを具有するブロックポリマー化合物と、水性溶媒とを含有することを特徴とする組成物。


上記式中、R1乃至R6は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜50の直鎖状若しくは分岐状の有機基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造の新規ブロックポリマーを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
疎水性物質を水性溶媒中に分散させる方法としては、疎水性物質を表面処理する自己分散タイプと、両親媒性樹脂を非水溶性材料の周りに付着させる樹脂分散タイプとがある。このうち、樹脂分散タイプに用いられる分散樹脂は、水性溶媒用分散材として数多くの分野、特にインク組成物としての検討が行なわれている(特許文献1〜3)。近年、この分散樹脂により印刷メディア上での画像の耐光性や耐ガス性向上等を行う報告が行なわれている。しかし、現在までに画像性能と分散性能の両方とも十分満足する結果が得られていない。この原因としては、前述の画像特性を向上させるにはポリマー構造を剛直にする必要性がある一方で、剛直構造のポリマーはその構造から疎水性が高くなるため分散安定性が低下することが挙げられる。すなわち、画像性能と分散性能の両立には、ポリマー構造の剛直性と分散安定性の二律背反する性能の両立が不可欠であるためと考えられている。
【特許文献1】特開2004−352819号公報
【特許文献2】特開2005−281691号公報
【特許文献3】特表2005−532470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この現象を解決する目的で、我々は市販されている公知のポリマー化合物を分散材として使用し、画像性能と分散性能の両立に関する検討を行った。しかし、我々が検討に使用したポリマー化合物では分散性能とメディア上での画像特性との高いレベルでの両立は困難であった。
【0004】
また、分散性能と画像特性との両立をポリマーアロイや添加剤等で実現することも考えられるが、印刷画像や分散体の均一性からの要望により、この両立を単一のポリマー化合物で実現することが市場で望まれている。しかし、上記の検討結果のように、現在市場で強い要望のある画像性能と分散性能の両立を単一のポリマーで行うことは事実上困難であった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、分散安定性と画像特性の両立、更にはメディア上で均一な膜構造を形成するための組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも、下記一般式(1)記載のモノマーを重合して得られる単位構造を含有する疎水性ブロックセグメント及び親水性ブロックセグメントを具有する両親媒性ブロックポリマー化合物と、水性溶媒とを含有することを特徴とする組成物である。
【0007】
【化1】

【0008】
上記式中、R1乃至R6は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜50の直鎖状若しくは分岐状の有機基を表す。
【0009】
前記親水性ブロックセグメントのみからなるホモポリマーのガラス転移温度が、70℃以下であることが好ましい。前記親水性ブロックセグメントとしては、例えば、ポリアルケニルエーテルの主鎖骨格を有するものとすることができる。
【0010】
上記組成物において、前記両親媒性ブロックポリマー化合物は、前記水性溶媒中で、コア部が前記疎水性ブロックセグメント、シェル部が前記親水性ブロックセグメントとなるミセル構造を形成していることが好ましい。疎水性物質をさらに含有する組成物においては、該疎水性物質が前記ミセル構造に内包されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、優れた画像特性と優れた分散安定性を両立し、更にはメディア上で均一な膜を形成することでさらに優れた画像特性を発揮する組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の組成物は、少なくとも、下記一般式(1)記載のモノマーを重合して得られる単位構造を含有する疎水性ブロックセグメント及び親水性ブロックセグメントを具有する両親媒性ブロックポリマー化合物と、水性溶媒とを含有する。
【0014】
【化2】

【0015】
上記式中、R1乃至R6は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜50の直鎖状若しくは分岐状の有機基を表す。好ましい直鎖状若しくは分岐状の有機基の構造としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロピロキシ基、イソプロピロキシ基、ノルマルブトキシ基、イソブトキシ基、ターシャリーブトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等のアリール基;トリメチルシリル基等のアルキルシリル基などが挙げられる。市販されている主なモノマー構造としては以下の構造が挙げられるが、本発明記載のモノマー構造はこれらのモノマー構造に限定されるものではない。
【0016】
【化3】

【0017】
また、本発明に用いられるモノマー(シクロペンタジエン又はその誘導体)の重合によって得られるポリマーの単位構造の同定は詳細に行なわれていないが、推測される具体的単位構造を以下に示す。なお、本発明に記載される単位構造は以下の構造に限定されるものではない。
【0018】
【化4】

【0019】
【化5】

【0020】
本発明で用いられる両親媒性ブロックポリマー化合物の一実施形態では、水性溶媒中で、親水性ブロックセグメントが外側(シェル部)、疎水性ブロックセグメントが内側(コア部)となるコア−シェル型のミセル構造を形成する。組成物中に疎水性物質が共存する場合は、疎水性物質を内包した分散体を形成することができる。そして、疎水性ブロックセグメントが形成する剛直なコア部と、親水性ブロックセグメントが形成する柔軟で高い運動性を有するシェル部を具有するスフィアとなることで、本発明に記載される所望の特性が最大に得られると考えられる。
【0021】
具体的な応用例としては、近赤外線反射材料、酸化触媒、脱臭・抗菌、助熱、排煙脱塩、ダイオキシン抑制、除虫効果、液晶パネルのバックライト用光散乱剤、蛍光材料、光導電材料、フィラー等が挙げられる。更には、紫外線防止、吸着効果等の化粧品への応用、医薬、塗料、トナー、インク、印刷物または基盤に対するオーバーコート液等が挙げられる。高い分散性能と画像性能を両立できるため、インクまたはインクジェット用オーバーコート液として好適に使用できる。なお、本発明の組成物の使用方法は上記応用例に限定されるものではない。
【0022】
本発明で述べるブロックポリマー化合物とは、異なる複数種のブロックセグメント構造がポリマー鎖上で連結した共重合体をいい、ブロック共重合体、ブロックコポリマーとも呼ばれるものを指す。
【0023】
両親媒性とは親媒性と疎媒性の両方の性質を持つことを表しており、両親媒性ブロックポリマー化合物は、親媒性と疎媒性のブロックセグメントをそれぞれ少なくとも一つ以上有するポリマー化合物である。前記の親媒性とは、用いられる主たる溶媒に対して親和性が大きいという性質を表しており、疎媒性とは溶媒に対して親和性が小さい性質である。本発明において、主溶媒は水性溶媒であることから、本発明で用いられる両親媒性ブロックポリマー化合物は、親水性と疎水性のブロックセグメントをそれぞれ少なくとも一つ以上有する。
【0024】
本発明で用いられる両親媒性ブロックポリマー化合物の各ブロックセグメントの構成としては、単一のモノマー由来の繰り返し単位からなるものでもよく、複数のモノマー由来の繰り返し単位を有する構造でもよい。複数のモノマー由来の繰り返し単位を有するブロックセグメントの例としては、ランダム共重合体や徐々に組成比が変化する傾斜型共重合体がある。
【0025】
本発明で用いられる両新媒性ブロックポリマー化合物のブロック構造の形としては、次のような例が挙げられる。ABというジブロックポリマー、両端のブロックセグメントが同じABAトリブロックポリマー、ABCというそれぞれのブロックセグメントが異なるトリブロックポリマーが挙げられる。また、トリブロック構造に他のポリマーユニットが結合したものも本発明には含まれる。例えば、ABCDという4つの異なるブロックセグメントを持つものや、ABCAという形のもの、更にはそれ以上の個数のブロックセグメントを持つブロックポリマーも本発明に含有される。
【0026】
シクロペンタジエン又はその誘導体の重合方法は、例えばカチオン重合法で行うことができる。逐次的にモノマーを添加することで簡便にブロックポリマーを合成可能であることから、リビングカチオン重合法で行うことが好ましい。シクロペンタジエンの重合は、例えば、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.39,398−407(2001)記載の方法に従って行うことができる。
【0027】
本発明で用いられる両親媒性ブロックポリマー化合物が具有する親水性ブロックセグメントは、親水性であれば特に限定されない。親水性ブロックセグメントの主鎖骨格としては、例えば、ポリアルケニルエーテル骨格、ポリスチレン骨格、ポリアクリル酸骨格、ポリメタクリル酸骨格、ポリアクリロニトリル骨格、ポリメタクリロニトリル骨格、ポリアミド骨格、ポリイミド骨格、ポリエステル骨格、ポリウレタン骨格、ポリカーボネート骨格、ポリエーテル骨格、ポリエーテルスルホン酸骨格、ポリ塩化ビニル骨格等が挙げられるが、こられに限定されない。柔らかい主鎖骨格となることから、ポリアルケニルエーテルの主鎖骨格を形成することが好ましい。
【0028】
ポリアルケニルエーテルの主鎖骨格としては、下記一般式(I)記載の単位構造を有することが好ましい。
【0029】
【化6】

【0030】
上記式中、Aはポリアルケニル基を表す。Bは水素原子又は−(CH(X1)−CH(X2)−O)p−X3、−(CH2m−(O)n−X3若しくはそれらのメチレン基の少なくとも一つがカルボニル基または芳香環構造で置換された構造を表す。pは1から18の整数、mは1から36の整数、nは0または1である。X1及びX2はそれぞれ独立に水素原子若しくは−CH3である。X3は水素原子、炭素数1から5までの直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、又はCOO−を表す。
【0031】
この親水性ブロックセグメントのみからなるホモポリマーのガラス転移温度は、70℃以下であることが好ましい。
【0032】
本発明で用いられる両親媒性ブロックポリマー化合物が具有する疎水性ブロックセグメントと親水性ブロックセグメントとの平均重合度比は、5:95〜95:5の範囲が好ましく、10:90〜90:10の範囲がより好ましい。
【0033】
また、本発明で用いられる両親媒性ブロックポリマー化合物の数平均分子量(Mn)は、200以上10000000以下であることが好ましく、1000以上1000000以下がより好ましい。10000000を越えると高分子鎖内、高分子鎖間の絡まりあいが多くなりすぎ、溶剤に分散しにくかったりする。200未満である場合、分子量が小さく高分子としての立体効果が出にくかったりする場合がある。各ブロックセグメントの好ましい平均重合度は3以上10000以下である。さらに好ましくは5以上5000以下である。更に好ましくは10以上4000以下である。
【0034】
本発明で用いられる両親媒性ブロックポリマー化合物の合成手法として、親水性ブロックセグメントとなるポリアルケニルエーテルの主鎖骨格の形成手法について述べる。前途のポリアルケニルエーテルの主鎖骨格を形成するモノマーの重合は、カチオン重合で行うことができる。開始剤としては、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、過塩素酸等のプロトン酸;BF3、AlCl3、TiCl4、SnCl4、FeCl3、RAlCl2、R1.5AlCl1.5(Rはアルキルを示す)等のルイス酸とカチオン源(カチオン源としてはプロトン酸や水、アルコール、ビニルエーテルとスルホン酸の付加体など)の組み合わせ;が例として挙げられる。これらの開始剤を重合性化合物(モノマー)と共存させることにより重合反応が進行し、ブロックポリマー化合物における親水性ブロックセグメントを合成することができる。
【0035】
本発明に更に好ましく用いられる重合方法について説明する。ポリビニルエーテル構造を含むポリマーの合成法は多数報告されている(例えば特開平11−080221号公報)。中でも、青島らによるカチオンリビング重合による方法が代表的である(ポリマーブレタン誌 15巻、1986年 417頁、特開平11−322942号公報、特開平11−322866号公報)。カチオンリビング重合でポリマー合成を行うことにより、ホモポリマー、2成分以上のモノマーからなる共重合体、更にはブロックポリマー、グラフトポリマー、グラジュエーションポリマー等のポリマーを、長さ(分子量)を正確に揃えて合成することができる。また、他にHI/I2系、HCl/SnCl4系等でリビング重合を行うこともできる。
【0036】
なお、本発明で用いる両親媒性ブロックポリマー化合物の合成手法は上記例に限定されるものではない。
【0037】
本発明の組成物において、両親媒性ブロックポリマー化合物の含有量は、0.1質量%以上90質量%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、1質量%以上80質量%以下である。
【0038】
[疎水性物質]
次に本発明で用いられる疎水性物質について詳細に説明する。
【0039】
本発明の組成物に含まれる疎水性物質とは、水に対して不溶な物質である。水に対して不溶とは、水に溶解、あるいは安定分散しない性質のことである。具体的にいうと、水に対する溶解度が1g/L以下であること、あるいは水に対して安定な分散体を形成しないことを表す。
【0040】
本発明で用いられる疎水性物質としては、例えば顔料、金属粒子、有機微粒子、無機微粒子、磁性体粒子、有機半導体、導電性材料、光学材料、非線形光学材料などといった疎水性の機能性物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本発明で用いられる疎水性物質は、好ましくは顔料または染料等の色材であり、より好ましくは顔料である。なお、本発明に記載の色材とは、有機または無機の有色の化合物と定義でき、好ましくは水又は油性分に対して不溶な化合物が好ましい。具体的な例としては、近赤外線反射材料、酸化触媒、脱臭・抗菌、助熱、排煙脱塩、ダイオキシン抑制、除虫効果、液晶パネルのバックライト用光散乱剤、蛍光材料、光導電材料等が挙げられる。更には、紫外線防止、吸着効果等の化粧品への応用、塗料、トナー、インクといった応用例が挙げられる。
【0042】
無機色材の具体例としては、コバルトブルー、セルシアンブルー、コバルトバイオレット、コバルトグリーン、ジンクホワイト、チタニウムホワイト、ライトレッド、クロムオキサイドグリーン、マルスブラック等の酸化物顔料;ビリジャン、イェローオーカー、アルミナホワイト等の水酸化物顔料;ウルトラマリーン、タルク、ホワイトカーボン等のケイ酸塩顔料;金粉、銀粉、ブロンズ粉等の金属粉;カーボンブラック等が挙げられる。有機色材の具体例としては、βナフトール系アゾ化合物、ナフトールAS系アゾ化合物、モノアゾ型あるいはジスアゾ型アセト酢酸アリリド系アゾ化合物、ピラゾン系アゾ化合物、縮合系アゾ顔料等のアゾ系化合物の他、フタロシアニン系化合物、サブフタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、キナクリドン系化合物、イソインドリン系化合物、イソインドリノン系化合物、スレン系化合物、ペリレン系化合物、ぺリノン系化合物、チオインジゴ系化合物、ジオキサジン化合物、キノフタロン系化合物、ジケトピロロピロール系化合物、あるいは新規に合成した化合物が挙げられる。ただし、本発明に使用される色材は上記に限定されるものではない。
【0043】
以下にインク組成物として使用する場合の顔料の具体例を示す。
【0044】
顔料は、有機顔料および無機顔料のいずれでもよく、インク組成物に用いられる顔料は、好ましくは黒色顔料、またはシアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料である。なお、上記に記した以外の色顔料、無色または淡色の顔料、または金属光沢顔料等を使用してもよい。また、本発明において、市販の顔料を用いても良いし、あるいは新規に合成した顔料を用いても良い。
【0045】
以下に、黒、シアン、マゼンタ、イエローにおいて、市販されている顔料を例示する。
【0046】
黒色の顔料としては、Raven1060、(コロンビアン・カーボン社製商品名)、MOGUL−L、(キャボット社製商品名)、Color Black FW1(デグッサ社製商品名)、MA100(三菱化学社製商品名)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0047】
シアン色の顔料としては、C.I.Pigment Blue−15:3、C.I.Pigment Blue−15:4、C.I.Pigment Blue−16、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
マゼンタ色の顔料としては、C.I.Pigment Red−122、C.I.Pigment Red−123、C.I.Pigment Red−146、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
イエローの顔料としては、C.I.Pigment Yellow−74、C.I.Pigment Yellow−128、C.I.Pigment Yellow−129、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
また、本発明の組成物では、水に自己分散可能な顔料も使用できる。水分散可能な顔料としては、顔料表面にポリマーを吸着させた立体障害効果を利用したものと、静電気的反発力を利用したものとがある。市販品としては、CAB−0−JET200、CAB−0−JET300(以上キャボット社製商品名)、Microjet Black CW−1(オリエント化学社製商品名)等が挙げられる。
【0051】
本発明で用いられる顔料は、組成物の全重量に対して、0.1〜50質量%が好ましい。顔料の量が、0.1質量%以上であれば、好ましい画像濃度が得られ、50質量%以下であれば、好ましい分散が得られる。更に好ましい範囲としては0.5〜30質量%の範囲である。
【0052】
また、本発明では染料を併用しても良い。
【0053】
なお、上述は疎水性物質が存在する例で示したが、ミセル内に疎水性物質を有さない形態についても本願発明は包含するものである。この場合には、コーティング剤や、グロスオプティマイザーなどの用途として有効である。
【0054】
[他の成分]
本発明に含有される両親媒性ブロックポリマー化合物、疎水性物質以外の他の成分について詳しく説明する。他の成分には、有機溶剤、水性溶媒、添加剤等が含まれる。
【0055】
[有機溶剤]
炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アミド系溶剤等の非水性溶剤が挙げられる。
【0056】
[水性溶媒]
本発明の組成物は、水性溶媒を含有する。水性溶媒としては、水または水性溶剤を挙げることができる。水としては、金属イオン等を除去したイオン交換水、純水、超純水が好ましい。水性溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロビレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、置換ピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒;等を用いることができる。また、水性分散物の記録媒体上での乾燥を速めることを目的として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の一価アルコール類を用いることもできる。
【0057】
本発明において、上記、有機溶剤および水性溶媒の合計の含有量は、組成物の全重量に対して、20〜95質量%の範囲で用いるのが好ましい。更に好ましくは30〜90質量%の範囲である。
【0058】
[添加剤]
本発明では、必要に応じて、種々の添加剤、助剤等を添加することができる。添加剤の一つとして、顔料を溶媒中で安定に分散させる分散安定剤がある。本発明は、両親媒性ブロックポリマー化合物により、顔料のような疎水性物質を分散させる機能を有しているが、分散が不十分である場合には、他の分散安定剤を添加してもよい。
【0059】
他の分散安定剤として、親水性疎水性両部を持つ樹脂あるいは界面活性剤を使用することが可能である。親水性疎水性両部を持つ樹脂としては、例えば、親水性モノマーと疎水性モノマーの共重合体が挙げられる。
【0060】
親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、または前記カルボン酸モノエステル類、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート等が挙げられる。疎水性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類等が挙げられる。共重合体は、ランダム、ブロック、およびグラフト共重合体等の様々な構成のものが使用できる。もちろん、親水性、疎水性モノマーとも、前記に示したものに限定されない。
【0061】
界面活性剤としては、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両イオン性活性剤を用いることができる。アニオン性活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル等が挙げられる。非イオン性活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコン系等が挙げられる。カチオン性活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等が挙げられる。両イオン性活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、ホスファジルコリン等が挙げられる。なお、界面活性剤についても同様、前記に限定されるものではない。
【0062】
その他の添加剤としては、例えばインクとしての用途の場合、pH調整剤、浸透剤、防黴剤、キレート化剤、消泡剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤等も添加することができる。pH調整剤は、インクの安定化と記録装置中のインクの配管との安定性を得るために使用する。浸透剤は、記録媒体へのインクの浸透を早め、見掛けの乾燥を早くする。防黴剤は、インク内での黴の発生を防止する。キレート化剤は、インク中の金属イオンを封鎖し、ノズル部での金属の析出やインク中で不溶解性物の析出等を防止する。消泡剤は、記録液の循環、移動、あるいは記録液製造時の泡の発生を防止する。
【0063】
更に、本発明では、高分子微粒子を添加しても良い。本発明の高分子微粒子とは、堅牢性、発色性、光沢性、ブロンズ抑制、ブリード抑制等の機能を発現することを目的として添加する化合物であり、具体的には、エマルジョン微粒子、高分子界面活性剤等が挙げられる。
【0064】
エマルジョン微粒子及び高分子界面活性剤を構成する樹脂成分としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルアミド系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられ、またこれらの樹脂の混合系を用いてもよい。これらの樹脂成分の中でより好ましくは、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸−ハーフエステル共重合体等が挙げられる。
【0065】
このような樹脂エマルジョンは、種々の特性を満足するように合成して用いてもよいが、市販品を使用してもよい。なお、高分子微粒子についても同様、前記に限定されるものではない。
【0066】
本発明の組成物は水性組成物である。水性組成物とは主溶媒が水性溶媒、好ましくは水である組成物のことである。本発明の組成物は、インク組成物であることが好ましい。より好ましくはインクジェット用組成物である。インクジェット用組成物とは、後述するインクジェット法を用いるインク吐出方法により吐出し得る組成物のことである。
【0067】
一般的に、インクジェット用組成物は、インク組成物に比べて粘度や分散微粒子の大きさ、保存安定性などの、組成物特性の条件が厳しい場合がある。インクジェット法による吐出方法では、微細ノズルを通して組成物の吐出を行うため、特に組成物の粘度が低いこと、組成物中の微粒子の大きさは小さく、更に保存安定性が優れていることが好ましい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、「−b−」はブロックポリマーであることを示す記号であり、「−r−」はランダムポリマーであることを示す記号である。また、各段階での化合物の同定は、NMRおよびGPCを用いて行った。
【0069】
(合成例1)
<ジブロックポリマー・ポリ[CPD−b−VEEtPhCOOH]の合成>
Aブロック:シクロペンタジエン(CPD)
Bブロック:4−(2−ビニロキシ)エトキシ安息香酸(VEEtPhCOOH)
Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.39,398−407(2001)記載の重合法に従い、ジブロックポリマー・ポリ[CPD−b−VEEtPhCOOH]を合成した。
【0070】
すなわち、窒素雰囲気下、開始剤として2−アセトキシエチルビニルエーテルの塩酸付加体(AcOVE−HCl)、ルイス酸として四塩化スズ(SnCl4)、AブロックモノマーとしてCPD、及び溶媒としてジクロロメタンを用いた。そして、−78℃にてAブロックの重合を行った。
【0071】
次いで、Bブロック成分として、4−(2−ビニロキシ)エトキシ安息香酸エチルVEEtPhCOOEtのジクロロメタン溶液を添加して、重合を続行した。重合反応の停止は、系内に0.3質量%のアンモニア/メタノール水溶液を加えて行った。反応混合物溶液をジクロロメタンにて希釈し、0.6mol/L塩酸で3回、次いで蒸留水で3回洗浄した。得られた有機相をエバポレーターで濃縮・乾固し真空乾燥させたものを、セルロースの半透膜を用いてメタノール溶媒中透析を繰り返し行い、モノマー性化合物を除去し、ジブロックポリマー・ポリ[CPD−b−VEEtPhCOOEt]を得た。得られたポリ[CPD−b−VEEtPhCOOEt]は、Mn=7500、Mw/Mn=1.38であり、平均重合度比はA:B=100:20であった。なお、Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である。
【0072】
ここで得られたジブロックポリマーをジメチルフォルムアミドと水酸化ナトリウム水混合溶液中で加水分解することで、Bブロック中のVEEtPhCOOEtユニットのエチルエステル部分が加水分解され、ナトリウム塩化されたジブロックポリマーを得た。さらに、水分散液中で0.1Nの塩酸で中和して、ナトリウム塩化された4−(2−ビニロキシ)エトキシ安息香酸がフリーのカルボン酸になったジブロックポリマー・ポリ[CPD−b−VEEtPhCOOH]を得た。
【0073】
また、該当する親水セグメントからなるホモポリマーのガラス転移温度を示差走査熱量分析装置(商品名:EXSTAR6000、セイコーインスツルメンツ株式会社製)で測定したところ70℃以下であった。
【0074】
(合成例2)
<ジブロックポリマー・ポリ[CPD−b−(MOEOVE−r−VEEtPhCOOH)]の合成>
Aブロック:シクロペンタジエン(CPD)
Bブロック:ジエチレングリコールメチルビニルエーテルと4−(2−ビニロキシ)エトキシ安息香酸(MOEOVE−r−VEEtPhCOOH)
合成例1におけるBブロック成分のモノマーである4−(2−ビニロキシ)エトキシ安息香酸エチルVEEtPhCOOEtと共に、ジエチレングリコールメチルビニルエーテル(MOEOVE)を加えた。このこと以外は合成例1と同様の合成条件で、ジブロックポリマー・ポリ[CPD−b−(MOEOVE−r−VEEtPhCOOEt)]の合成を行った。得られたポリ[CPD−b−(MOEOVE−r−VEEtPhCOOEt)]は、Mn=9500、Mw/Mn=1.39であり、平均重合度比はA:B=100:36であった。また、Bブロック中のMOEOVEとVEEtPhCOOEtの平均重合度比は20:16であった。
【0075】
ここで得られたジブロックポリマーをジメチルフォルムアミドと水酸化ナトリウム水混合溶液中で加水分解することで、Bブロック中のVEEtPhCOOEtユニットのエチルエステル部分が加水分解され、ナトリウム塩化されたジブロックポリマーを得た。さらに、水分散液中で0.1Nの塩酸で中和して、ナトリウム塩化された4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸がフリーのカルボン酸になったジブロックポリマー・ポリ[CPD−b−(MOEOVE−r−VEEtPhCOOH)]を得た。
【0076】
また、該当する親水セグメントからなるホモポリマーのガラス転移温度を示差走査熱量分析装置(商品名:EXSTAR6000、セイコーインスツルメンツ株式会社製)で測定したところ70℃以下であった。
【0077】
(合成例3)
<トリブロックポリマー・ポリ[CPD−b−MOEOVE−b−VEEtPhCOOH]の合成>
Aブロック:シクロペンタジエン(CPD)
Bブロック:ジエチレングリコールメチルビニルエーテル(MOEOVE)
Cブロック:4−(2−ビニロキシ)エトキシ安息香酸(VEEtPhCOOH)
合成例1におけるBブロック成分のモノマーである4−(2−ビニロキシ)エトキシ安息香酸エチルVEEtPhCOOEtの代わりに、ジエチレングリコールメチルビニルエーテル(MOEOVE)を加えた。このこと以外は合成例1と同様の手法により、Aブロック及びBブロックの重合を行った。GPCおよびNMRを用いるモニタリングによって、Bブロックの重合の完了を確認した後、4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸エチルをCブロック成分として添加して、重合を続行した。その他は合成例1と同様の合成条件で、トリブロックポリマー・ポリ[CPD−b−MOEOVE−b−VEEtPhCOOEt]の合成を行った。得られたポリ[CPD−b−MOEOVE−b−VEEtPhCOOEt]は、Mn=9600、Mw/Mn=1.39であり、平均重合度比はA:B:C=100:20:15であった。
【0078】
ここで得られたトリブロックポリマーをジメチルフォルムアミドと水酸化ナトリウム水混合溶液中で加水分解することで、Cブロック中のVEEtPhCOOEtユニットのエチルエステル部分が加水分解され、ナトリウム塩化されたトリブロックポリマーを得た。さらに、水分散液中で0.1Nの塩酸で中和して、ナトリウム塩化された4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸がフリーのカルボン酸になったトリブロックポリマー・ポリ[CPD−b−MOEOVE−b−VEEtPhCOOH]を得た。
【0079】
また、該当する親水セグメントからなるホモポリマーのガラス転移温度を示差走査熱量分析装置(商品名:EXSTAR6000、セイコーインスツルメンツ株式会社製)で測定したところ70℃以下であった。
【0080】
(合成例4)
<ジブロックポリマー・ポリ[MPCB−b−VEEtPhCOOH]の合成>
Aブロック:(5,5−ジメチル−4−フェニル−1,3―シクロペンタジエン−1−イル)ベンゼン(MPCB)
Bブロック:4−(2−ビニロキシ)エトキシ安息香酸(VEEtPhCOOH)
合成例1におけるAブロック成分のモノマーであるシクロペンタジエン(CPD)の代わりに、(5,5−ジメチル−4−フェニル−1,3―シクロペンタジエン−1−イル)ベンゼン(MPCB)を加えた。このこと以外は、合成例1と同様の手法により、Aブロックの重合を行った。GPCおよびNMRを用いるモニタリングによって、Aブロックの重合の完了を確認した後、4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸エチルをBブロック成分として添加して、重合を続行した。その他は合成例1と同様の合成条件で、ジブロックポリマー・ポリ[MPCB−b−VEEtPhCOOEt]の合成を行った。得られたポリ[MPCB−b−VEEtPhCOOEt]は、Mn=16000、Mw/Mn=1.48であり、平均重合度比はA:B=100:20であった。
【0081】
ここで得られたジブロックポリマーをジメチルフォルムアミドと水酸化ナトリウム水混合溶液中で加水分解することで、Bブロック中のVEEtPhCOOEtユニットのエチルエステル部分が加水分解され、ナトリウム塩化されたジブロックポリマーを得た。さらに、水分散液中で0.1Nの塩酸で中和して、ナトリウム塩化された4−(2−ビニロキシ)エトキシ安息香酸がフリーのカルボン酸になったジブロックポリマー・ポリ[MPCB−b−VEEtPhCOOH]を得た。
【0082】
また、該当する親水セグメントからなるホモポリマーのガラス転移温度を示差走査熱量分析装置(商品名:EXSTAR6000、セイコーインスツルメンツ株式会社製)で測定したところ70℃以下であった。
【0083】
(実施例1)
合成例1で合成したジブロックポリマー・ポリ[CPD−b−VEEtPhCOOH]5質量部を100質量部のテトラヒドロフランに溶解し、蒸留水400質量部を用いて水相へ変換した。これに0.1N水酸化ナトリウム水溶液を0.1mL加え、さらに超音波ホモジナイザーで10分間分散した後、減圧蒸留によりテトラヒドロフランを除去することにより、ポリマー分散組成物を得た。
【0084】
以上の方法で得られたポリマー分散組成物の分散粒子の平均粒径dおよび分散度指数μ/G2を動的光散乱装置(商品名:DLS−7000、大塚電子株式会社製)を用いて測定した。pHを変えないため、同濃度の水酸化ナトリウム水溶液で100倍に薄めて測定した。その結果、平均粒径は55nm、分散度指数μ/G2は0.12であり、ジブロックポリマー・ポリ[CPD−b−VEEtPhCOOH]は水中で均一に分散していることが確認された。
【0085】
(実施例2)
合成例2で合成したジブロックポリマー・ポリ[CPD−b−(MOEOVE−r−VEEtPhCOOH)]を用いたこと以外は実施例1と同様の手法により、ポリマー分散組成物を得た。
【0086】
また、得られたポリマー分散組成物の分散粒子の平均粒径dおよび分散度指数μ/G2を実施例1と同様の手法により測定した。その結果、平均粒径は57nm、分散度指数μ/G2 は0.11であり、ジブロックポリマー・ポリ[CPD−b−(MOEOVE−r−VEEtPhCOOH)]は水中で均一に分散していることが確認された。
【0087】
(実施例3)
合成例3で合成したトリブロックポリマー・ポリ[CPD−b−MOEOVE−b−VEEtPhCOOH]を用いたこと以外は実施例1と同様の手法により、ポリマー分散組成物を得た。
【0088】
また、得られたポリマー分散組成物の分散粒子の平均粒径dおよび分散度指数μ/G2を実施例1と同様の手法により測定した。その結果、平均粒径は61nm、分散度指数μ/G2は0.12であり、トリブロックポリマー・ポリ[CPD−b−MOEOVE−b−VEEtPhCOOH]は水中で均一に分散していることが確認された。
【0089】
(実施例4)
合成例4で合成したジブロックポリマー・ポリ[MPCB−b−VEEtPhCOOH]を用いたこと以外は実施例1と同様の手法により、ポリマー分散組成物を得た。
【0090】
また、得られたポリマー分散組成物の分散粒子の平均粒径dおよび分散度指数μ/G2を実施例1と同様の手法により測定した。その結果、平均粒径は66nm、分散度指数μ/G2は0.15であり、ジブロックポリマー・ポリ[MPCB−b−VEEtPhCOOH]は水中で均一に分散していることが確認された。
【0091】
(実施例5)
カーボンブラック(商品名:M880、キャボット社製)5質量部と、合成例1で合成したジブロックポリマー・ポリ[CPD−b−VEEtPhCOOH]5質量部を100質量部のテトラヒドロフランに溶解し、蒸留水400質量部を用いて水相へ変換した。これに0.1N水酸化ナトリウム水溶液を0.1mL加え、さらに超音波ホモジナイザーで10分間分散した後、減圧蒸留によりテトラヒドロフランを除去することにより、カーボンブラック分散組成物を得た。
【0092】
以上の方法で得られたカーボンブラック分散組成物の分散粒子の平均粒径dおよび分散度指数μ/G2を実施例1と同様の手法により測定した。その結果、平均粒径は90nm、分散度指数μ/G2は0.16であり、ジブロックポリマー・ポリ[CPD−b−VEEtPhCOOH]は水中で均一に分散していることが確認された。
【0093】
更に得られたカーボンブラック分散組成物に関して、カーボンブラックがブロックポリマーの形成しているコア部に存在していることを、クライオトランスファーによるEF−TEM観察を利用して確認した。
【0094】
(実施例6)
合成例2で合成したジブロックポリマー・ポリ[CPD−b−(MOEOVE−r−VEEtPhCOOH)]を用いたこと以外は実施例5と同様の手法により、カーボンブラック分散組成物を得た。
【0095】
また、得られたカーボンブラック分散組成物の分散粒子の平均粒径dおよび分散度指数μ/G2を実施例1と同様の手法により測定した。その結果、平均粒径は94nm、分散度指数μ/G2は0.15であり、ジブロックポリマー・ポリ[CPD−b−(MOEOVE−r−VEEtPhCOOH)]は水中で均一に分散していることが確認された。
【0096】
更に得られたカーボンブラック分散組成物に関して、カーボンブラックがブロックポリマーの形成しているコア部に存在していることを、クライオトランスファーによるEF−TEM観察を利用して確認した。
【0097】
(実施例7)
合成例3で合成したトリブロックポリマー・ポリ[CPD−b−MOEOVE−b−VEEtPhCOOH]を用いたこと以外は実施例5と同様の手法により、カーボンブラック分散組成物を得た。
【0098】
また、得られたカーボンブラック分散組成物の分散粒子の平均粒径dおよび分散度指数μ/G2を実施例1と同様の手法により測定した。その結果、平均粒径は94nm、分散度指数μ/G2は0.15であり、トリブロックポリマー・ポリ[CPD−b−MOEOVE−b−VEEtPhCOOH]は水中で均一に分散していることが確認された。
【0099】
更に得られたカーボンブラック分散組成物に関して、カーボンブラックがブロックポリマーの形成しているコア部に存在していることを、クライオトランスファーによるEF−TEM観察を利用して確認した。
【0100】
(実施例8)
合成例4で合成したジブロックポリマー・ポリ[MPCB−b−VEEtPhCOOH]を用いたこと以外は実施例5と同様の手法により、カーボンブラック分散組成物を得た。
【0101】
また、得られたカーボンブラック分散組成物の分散粒子の平均粒径dおよび分散度指数μ/G2を実施例1と同様の手法により測定した。その結果、平均粒径は96nm、分散度指数μ/G2は0.16であり、ジブロックポリマー・ポリ[MPCB−b−VEEtPhCOOH]は水中で均一に分散していることが確認された。
【0102】
更に得られたカーボンブラック分散組成物に関して、カーボンブラックがブロックポリマーの形成しているコア部に存在していることを、クライオトランスファーによるEF−TEM観察を利用して確認した。
【0103】
(ろ過性評価)
カーボンブラック含有分散体が水中において凝集することなく安定して分散していることを、以下のようなろ過性評価を用いて確認した。すなわち、実施例5から実施例8で得られた各カーボンブラック分散組成物をそれぞれ20mLずつとり、メンブランフィルター(ミリポア社製、商品名:AP20)を用いて加圧ろ過した。その結果、いずれのカーボンブラック分散組成物を用いた場合においても目詰まりなくろ過でき、安定に分散していることが確認できた。
【0104】
(ポリマー膜硬さ評価)
得られたブロックポリマーが十分な硬さであることを以下の方法を用いて確認した。すなわち、実施例1から実施例4で得られた各ポリマー分散組成物をそれぞれ5mLずつとり、ガラス基板上に滴下後、130℃に加熱することより、それぞれポリマー膜を得た。ガラス基板上のポリマー膜を室温まで徐冷後、爪で擦ったところ、いずれのポリマー膜に関しても傷は観察されず、十分な硬さであることが確認された。
【0105】
更に合成例1および合成例2で得られるブロックポリマーのポリマー膜に関し、マルテンス硬度を、インデンテーション試験(商品名:フィッシャースコープH−100、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を用いて測定した。その結果、マルテンス硬さは合成例1、合成例2、いずれのブロックポリマー化合物に関しても150N/mm2以上であり、十分な硬さであった。
【0106】
以上より、本発明の実施例におけるブロックポリマーは十分な硬さを有しており、かつ水性溶媒中において安定に分散することが可能であることが確認された。
【0107】
(ポリマー膜の均一性評価)
上記のポリマー膜硬さ評価で得られたポリマー膜の均一性を以下の方法を用いて確認した。すなわち、合成例3で得られるブロックポリマーのポリマー膜に関し、原子間力顕微鏡(商品名:SPA−500、セイコーインスツル株式会社製)を用いて測定した。その結果、ブロックポリマー膜には粒状感のない、ほぼ均一のポリマー膜が観察された。
【0108】
以上に示すように本発明の組成物はろ過詰まりなく安定に分散し、また本発明に記載される組成物により作製される膜は高い強度をもち、さらにメディア上で均一な膜を形成することができるため、特にすぐれた画像特性と分散性の両立ができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、下記一般式(1)記載のモノマーを重合して得られる単位構造を含有する疎水性ブロックセグメント及び親水性ブロックセグメントを具有する両親媒性ブロックポリマー化合物と、水性溶媒とを含有することを特徴とする組成物。
【化1】

上記式中、R1乃至R6は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜50の直鎖状若しくは分岐状の有機基を表す。
【請求項2】
前記親水性ブロックセグメントのみからなるホモポリマーのガラス転移温度が、70℃以下であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記親水性ブロックセグメントが、ポリアルケニルエーテルの主鎖骨格を有することを特徴とする請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
前記両親媒性ブロックポリマー化合物は、前記水性溶媒中で、コア部が前記疎水性ブロックセグメント、シェル部が前記親水性ブロックセグメントとなるミセル構造を形成していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の組成物。
【請求項5】
疎水性物質をさらに含有し、該疎水性物質が前記ミセル構造に内包されていることを特徴とする請求項4記載の組成物。

【公開番号】特開2008−50506(P2008−50506A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−229693(P2006−229693)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】