説明

組成物

本発明は、粒子状固体、有機媒質および/もしくは水、ならびに式(1)の化合物およびその塩を含む組成物を提供する。ここでRおよびR’は、独立してHもしくはC1−30の必要に応じて置換されたヒドロカルビルであるか;またはRがHもしくはC1−30の必要に応じて置換されたヒドロカルビルであり、R’がR’’C=O(アシル基)であり;R’’は、水素、アルキルもしくは必要に応じて置換されたアルキルもしくはアリールもしくは必要に応じて置換されたアリールであり;Yは、C2−4−アルキレンオキシであり;Tは、C2−4アルキレンであり;Aは、二塩基酸もしくはその無水物の残基であり;Zは、ポリアミンおよび/もしくはポリイミンの残基である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2004年12月21日に出願された仮出願番号60/637,937にしたがって、出願される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、粒子状固体、有機媒質、および分散剤を含む組成物、ならびにインク、ミルベース、プラスチック、および塗料におけるそれらの使用に関連している。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
多くの調合物(例えば、インク、塗料、ミルベース、およびプラスチックの材料)は、有機媒質中に粒子状固体を均一に分布させるために、有用な分散剤を必要とする。有機媒質は極性有機媒質から非極性有機媒質へと多様であり得る。ゆえに、粒子状固体を極性および非極性の両方の有機媒質中に分散させ得る分散剤が求められている。
【0004】
特許文献1は、ポリ(低級アルキレン)イミンと反応させた少なくとも8個の炭素原子を有するヒドロキシカルボン酸から誘導されたポリエステルを含む分散剤を開示する。これらの分散剤は、非極性媒質(例えば、脂肪族溶媒およびプラスチック)中で有用である。
【0005】
特許文献2は、ポリ(低級アルキレン)イミンと反応させたε−カプロラクトンから誘導されたポリエステルを含む分散剤を開示する。これらの分散剤は、より極性の媒質(例えば、ケトンおよびエステル)中で有用である。
【0006】
特許文献3は、二塩基酸無水物、ポリオキシアルキレンモノアミン、および1343までの数平均分子量を有するヒドロカルビルポリアミンの反応生成物を含むモーター燃料組成物を開示する。
【特許文献1】米国特許第4,224,212号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第208041号明細書
【特許文献3】米国特許第4,865,621号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
特定の分散剤が、ある範囲の有機媒質(特に水を含む極性有機媒質)中に粒子状固体を分散する優れた能力を示すことが見出された。ゆえに、本発明によれば、粒子状固体、有機媒質および/もしくは水、ならびに式(1)の化合物およびその塩を含む組成物が提供される:
【0008】
【化3】

ここで、
RおよびR’は、独立してHもしくはC1−30の必要に応じて置換されたヒドロカルビルであるか;またはRがHもしくはC1−30の必要に応じて置換されたヒドロカルビルであり、R’がR’’C=O(アシル基)であり;
R’’は、水素、アルキルもしくは必要に応じて置換されたアルキルもしくはアリールもしくは必要に応じて置換されたアリールであり;
Yは、C2−4−アルキレンオキシであり;
Tは、C2−4アルキレンであり;
Aは、二塩基酸もしくはその無水物の残基であり;
Zは、ポリアミンおよび/もしくはポリイミンの残基であり;
Wは、酸化物、尿素、または二塩基酸もしくはその無水物、あるいはそれらの混合物の残基であり;
xは、2〜90であり;
vは、基RR’N−T−O−(Y)−T−NH−A−を有しない、Zにおいて使用可能なアミノ基および/もしくはイミノ基の最大数を表し(すなわち、vがZの不飽和の原子価の数である)、0−vは0〜vを意味する。
【0009】
Zはポリアミンおよび/もしくはポリイミンの残基であるので、Zに結合した典型的に2つより多くの基RR’N−T−O−(Y)−T−NH−A−が存在し、これらは同じであっても異なっていてもよい。
【0010】
Wが二塩基酸の残基である特定の場合において、粒子状固体、有機媒質、ならびに式(1a)の化合物およびその塩を含む組成物が提供される:
【0011】
【化4】

ここで、
RおよびR’は、独立してHもしくはC1−30の必要に応じて置換されたヒドロカルビルであるか;またはRがHもしくはC1−30の必要に応じて置換されたヒドロカルビルであり得、R’がR’’C=O(アシル基)であり;
R’’は、水素、アルキルもしくは必要に応じて置換されたアルキルもしくはアリールもしくは必要に応じて置換されたアリールであり;
Yは、C2−4−アルキレンオキシであり;
Tは、C2−4アルキレンであり;
Aは、二塩基酸もしくはその無水物の残基であり;
Zは、ポリアミンおよび/もしくはポリイミンの残基であり;
xは、2〜90であり;
AおよびAは、独立して二塩基酸もしくは無水物の残基であり、これは同じであっても異なっていてもよく;そして
pは0〜200である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明は、上記に述べた組成物を提供する。
【0013】
一つの実施形態において、Rはアリール、アラルキル、アルカリール、シクロアルキルもしくはアルキルを含むヒドロカルビルであり、これは直鎖状もしくは分枝状であり得る。一つの実施形態において、Rはアルキル(必要に応じて分枝状のアルキル(C1−30、C1−20、C1-6もしくはC1−4アルキルが挙げられる))である。一つの実施形態において、Rはメチルである。
【0014】
Rが置換ヒドロカルビルである場合、この置換基はC1−10−アルコキシ、カルボニル、スルホニル、カルバモイル、スルファモイル、ハロゲン、ニトリル、ウレイド、ヒドロキシル、ウレタンもしくはエステル(すなわち、−COO−もしくは−OCO−)であり得る。一つの実施形態において、Rは非置換である。
【0015】
一つの実施形態において、Rはアリール(ナフチルもしくはフェニルが挙げられる)である。一つの実施形態において、Rはアラルキル(2−フェニルエチルもしくはベンジルが挙げられる)である。一つの実施形態において、Rはアルカリール(オクチルフェニルもしくはノニルフェニルが挙げられる)である。一つの実施形態において、Rはシクロアルキル(C3−8−シクロアルキル(例えば、シクロプロピルもしくはシクロヘキシル)が挙げられる)である。
【0016】
YがC3−4アルキレンオキシであって、(Y)で表される鎖がエチレンオキシ(−CHCHO−)を含む場合、(Y)の構造は、ランダムもしくはブロックであり得る。(Y)で表される鎖は、たった1つのタイプのC2−4アルキレンオキシ反復単位を含んでもよく、または2つ以上の異なるC2−4アルキレンオキシ反復単位を含んでもよい。(Y)で表される鎖が2つ以上の異なるC2−4アルキレンオキシ反復単位を含む場合、(Y)の構造は、ランダムもしくはブロックであり得る。
【0017】
一つの実施形態において、YはC3−4アルキレンオキシ基、−CHCHCHCHO−もしくは−CHCH(CH)CHO−もしくは−CHCH(CH)O−である。別の実施形態において、Yは−CHCHCH(CH)O−もしくは−CH−CH(CH−CH)−O−である。
【0018】
YがC3−4アルキレンオキシである場合、(Y)で表される鎖は95%まで、75%まで、もしくは50%までのエチレンオキシ反復単位を含み得る。(Y)が50%よりも多くの、特に75%よりも多くのエチレンオキシ反復単位を含む分散剤は、水性媒質(必要に応じて極性有機液体を含む)に対してより適切である。
【0019】
YがC3−4アルキレンオキシであって、(Y)で表される鎖がエチレンオキシ(−CHCHO−)を含む場合、(Y)の構造は、ランダムもしくはブロックであり得る。
【0020】
一つの実施形態において、式(1)内のYは−CHCH(CH)O−であり、(Y)で表される鎖は75%までのエチレンオキシ反復単位を含み得る。
【0021】
一つの実施形態において、TはC3−4アルキレンもしくは−CHCH(CH)−である。一つの実施形態において、Yが−CHCH(CH)O−である場合、Tは−CHCH(CH)−もしくは−CHCHCH−である。
【0022】
一つの実施形態において、基RR’N−T−O−(Y)−T−NH−はポリアルキレンオキシドジアミンの残基である。このタイプの化合物は、JeffamineTMDもしくはEDシリーズのジアミンとしてHuntsman Corporationから市販されている。JeffamineTMジアミンの特定の例は、D−230(3,0,230)、D−400(6,0,400)、D−2000(33,0,2000)、D−4000(68,0,4000)、ED−600(3.6,9,600)、ED−900(2.5,15.5,900)およびED2003(6,39,2000)である。丸括弧中の数字は、それぞれ、プロピレンオキシド、エチレンオキシドのおおよその反復単位および数平均分子量である。
【0023】
Zがポリアミンの残基である場合、それはポリビニルアミンもしくはポリアリルアミンを含む。様々な分子量のポリアリルアミンおよびポリ(N−アルキル)アリルアミンは、日東紡績から市販されている。様々な分子量のポリビニルアミンは三菱化成から入手可能である。
【0024】
Zがポリイミンの残基である場合、それはポリ(C2−6アルキレンイミン)および特にポリエチレンイミン(PEI)を含む。このポリイミンは直鎖状もしくは特に分枝状であり得る。直鎖状のポリエチレンイミンは、ポリ(N−アシル)アルキレンイミンの加水分解によって(例えば、Macromolecules、1972、Vol5、4470頁中にTakeo Saegusa等によって述べられているように)調製され得る。様々な分子量の分枝状のポリエチレンイミンは、BASFおよび日本触媒から市販されている。ポリプロピレンイミンデンドリマーは、DSM Fine Chemicalsから市販されており、ポリ(アミドアミン)デンドリマーは、「Starburst」デンドリマーとしてAldrich Chemical Companyから入手可能である。
【0025】
ポリアミン混合物の他の有用なタイプは、「ポリアミンボトム」としばしば呼ばれるものを残基として残す、上記で述べたポリアミン混合物のストリッピングから生じるものである。一般的に、アルキレンポリアミンボトムは、約200℃未満の温度で沸騰する物質を2%未満、通常1%(重量%)未満で有すると特徴づけられ得る。Dow Chemical Company of Freeport、Texasから得られる「E−100」と名づけられたこのようなエチレンポリアミンボトムの典型的なサンプルは、15.6℃で1.0168の比重、33.15重量%の窒素、および40℃で121センチストークスの粘性を有する。このようなサンプルのガスクロマトグラフィー分析は、約0.93%の「Light Ends」(最も可能性が高いのはDETA)、0.72%のTETA、21.74%のテトラエチレンペンタミン、ならびに76.61%以上のペンタエチレンヘキサミンを含む(重量%)。これらのアルキレンポリアミンボトムとしては、環式縮合生成物(例えば、ピペラジンおよびジエチレントリアミンもしくはトリエチレンテトラアミンの高級類似体)が挙げられる。
【0026】
一つの実施形態において、ポリアミンもしくはポリイミンの数平均分子量は、300〜650,000、500〜600,000、600〜200,000、1,200〜100,000もしくは1500〜70,000である。ポリエチレンイミンの場合、一つの実施形態において、数平均分子量は1200以上であり、1800以上であり、もしくは3,000以上である。
【0027】
AおよびAで表される二塩基酸の残基は、式HOOC−B’−COOHの任意の二塩基酸もしくはその無水物から誘導され得、ここでB’は直接結合もしくは1〜20個の炭素原子を含む2価の有機部分である。B’は、芳香族、ヘテロ芳香族、脂環式もしくは脂肪族であり得、これらは、必要に応じて置換され得る。B’が2個以上の炭素原子を有する脂肪族である場合、それは直鎖状でも分枝状でも、飽和でも不飽和でもよい。一つの実施形態において、B’は不飽和である。別の実施形態において、B’は12個以下の炭素原子を含み、別の実施形態においては8個以下の炭素原子を含む。
【0028】
B’が芳香族である場合、それはフェニレンを含み、B’が脂環式である場合、それはシクロヘキシレンを含み、Bが脂肪族である場合、それはアルキレンを含む。一つの実施形態において、この二塩基酸はテレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、トリメリト酸、C1−20−アルケニルもしくはアルキルコハク酸である。一つの実施形態において、この二塩基酸は、マレイン酸、マロン酸、コハク酸もしくはフタル酸から誘導される。この二塩基酸が無水物から誘導される場合、適切な例は無水グルタル酸、無水コハク酸および無水フタル酸から誘導される。
【0029】
二塩基酸もしくはその無水物の混合物が使用され得る。ゆえに、Aは1つまたは1つより多くの異なる二塩基酸もしくは無水物の残基であり得る。一つの実施形態において、Aは単一の二塩基酸もしくは無水物の残基である。同様に、Aは1つまたは1つより多くの異なる二塩基酸もしくは無水物の残基であり得る。一つの実施形態において、Aは単一の二塩基酸もしくは無水物の残基である。一つの実施形態において、AおよびAの両方が同じ二塩基酸もしくは無水物の残基である。一つの実施形態において、Aおよび/もしくはAは無水コハク酸の残基である。
【0030】
Wが酸化物の残基である場合、基RR’N−T−O−(Y)−T−NH−A−を有しない、Zにおける任意のアミノ基またはイミノ基は、酸素(空気を含む)もしくは過酸化物(例えば、過酸化水素もしくは過硫酸アンモニウム)との反応により、N−酸化物に換えられ得る。
【0031】
同様に、Wが尿素の残基である場合、Zにおける尿素と反応する遊離のアミノ基および/もしくはイミノ基の数は、基RR’N−T−O−(Y)−T−NH−A−を有しないアミノ基もしくはイミノ基の最大数までの広い範囲にわたって多様であり得る。
【0032】
Wが二塩基酸もしくは無水物の残基である一つの実施形態において、基RR’N−T−O−(Y)−T−NH−A−を有しない、Zにおける遊離のアミノ基もしくはイミノ基の大部分は、Aで表される二塩基酸もしくは無水物と反応する。一つの実施形態において、Wは酸化物の残基であるか、尿素の残基であるか、あるいは二塩基酸もしくは無水物の残基である。
【0033】
ゆえに、式1a内のpがゼロとは異なる場合、基RR’N−T−O−(Y)−T−NH−A−を有しない、Zにおけるアミン基/イミン基の大部分は、残基−A−OHを有する。
【0034】
一つの実施形態において、Zで表されるポリアミンもしくはポリイミンは2つ以上の基RR’N−T−O−(Y)−T−NH−A−を有し、これらは同じであっても異なっていてもよい。このタイプの分散剤は都合よく式(2)で表され得る:
【0035】
【化5】

ここで
X−−Xは、ポリアミンおよび/もしくはポリイミンを表し;
Qは、鎖RR’N−T−O−(Y)−T−NH−A−を表し;そして
qは、2〜2000である。
【0036】
一つの実施形態において、Zで表されるポリアミンもしくはポリイミンは2つ以上の異なるポリマー鎖を有し、それは式2aで表される:
【0037】
【化6】

ここで
X−−XおよびQは本明細書中の上記で定義したとおりであり;
は、式R−G−(B)−のポリエステル鎖および/もしくはポリアミド鎖を表し;
は、水素もしくはC1−50の必要に応じて置換されたヒドロカルビルであり;
Gは、二価の結合もしくはカルボニルであり;
Bは、1つ以上のアミノカルボン酸、1つ以上のヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸の1つ以上のラクトン、もしくはそれらの混合物の残基であり;
qおよびsはゼロより大きい正の整数であり;
mは、2〜2000の正の整数であり;そして
q+sは2〜2000である。
【0038】
一つの実施形態において、Gはカルボニルであり、そしてR−G−はC1−50の必要に応じて置換されたヒドロカルビルカルボン酸、特にC1−50の必要に応じて置換された脂肪酸の残基であり、ここでこの脂肪族基は飽和でも不飽和でもよく、直鎖状でも分枝状でもよい。
【0039】
一つの実施形態において、本明細書中の上記でRに関して開示した通りの、Rは30個以下の炭素原子を含む。
【0040】
−CO−は、直鎖状でも分枝状でもよく、飽和でも不飽和でもよい、必要に応じて置換されたカルボン酸(例えば、メトキシ−酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ラウリン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、2−エチル酪酸、2−エチルヘキサン酸、2−ブチルオクタン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−オクチルデカン酸、および2−デシルテトラデカン酸)の残基でもあり得る。このタイプの分枝状のアルキルカルボン酸はまた、Isocarb(例えばCondea GmbH)という商用名で入手可能であり、特定の例はIsocarbTM12、16、20、28、32、34Tおよび36である。
【0041】
が置換された場合、この置換基は1つ以上のエーテル基でもよく、または2つ以上のエーテル基でもよい。ゆえに、R−CO−はAkypoTMカルボン酸(例えばKao Chem GmbH)の残基であり得る。特定の例は、Akypo LF1、Akypo LF2、Akypo RLM 25、 Akypo RLM 45 CA、Akypo RO 20 VGおよびAkypo RO 50 VGである。
【0042】
Bを獲得し得るアミノカルボン酸としては、アミノ−C2−20−アルク(エン)イレンカルボン酸もしくはアミノC1−20−アルキレンカルボン酸が挙げられる。一つの実施形態において、このアルク(エン)イレン基は12個以下の炭素原子を含む。特定の例は、11−アミノウンデカン酸、6−アミノカプロン酸、4−アミノ酪酸、β−アラニンもしくはサルコシンである。
【0043】
Bを誘導し得るヒドロキシカルボン酸としては、ヒドロキシ−C2−20−アルケニレンカルボン酸もしくはヒドロキシ−C1−20アルキレンカルボン酸が挙げられる。適切なヒドロキシカルボン酸の特定の例は、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、5−ヒドロキシ吉草酸、12−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシデカン酸、4−ヒドロキシデカン酸、10−ヒドロキシウンデカン酸、乳酸もしくはグリコール酸である。
【0044】
Bはラクトン(例えば、β−プロピオラクトン、必要に応じてC1−6アルキル置換されたε−カプロラクトン、および必要に応じてC1−6アルキル置換されたδ−バレロラクトン)からも誘導され得る。特定の例は、ε−カプロラクトンならびに7−メチル−、3−メチル−、5−メチル−、6−メチル−、4−メチル−、5−テトラ−ブチル−、4,4,6−トリメチル−および4,6,6−トリメチル−ε−カプロラクトンおよびδ−バレロラクトンである。
【0045】
一つの実施形態において、qとsとの比率は6:1〜1:6である。
【0046】
本明細書中の上記で示した通り、分散剤は塩の形態で存在し得る。分散剤がカルボン酸基を含む場合、この塩はアルカリ金属(例えば、リチウム、カリウムもしくはナトリウム)の塩であり得る。あるいは、この塩はアンモニア、アミンもしくは第4級アンモニウムカチオンを用いて形成され得る。アミンの例は、メチルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミンおよびオクタデシルアミンである。この第4級アンモニウムカチオンは、第4級アンモニウムカチオンもしくはベンザルコニウムカチオンであり得る。この第4級アンモニウムカチオンは、6〜20個の炭素原子を含むアルキル基を1つもしくは2つ含み得る。第4級アンモニウムカチオンの例は、テトラエチルアンモニウム、N−オクタデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウム;N,N−ジドデシル−N,N−ジメチルアンモニウム、N−ベンジル−N,N,N−トリメチルアンモニウムおよびN−ベンジル−N−オクタデシル−N,N−ジメチルアンモニウムカチオンである。
【0047】
一つの実施形態において、カルボン酸基を含む分散剤は、遊離酸の形態である。
【0048】
vがゼロである式1の分散剤は、着色した酸の塩の形態であり得る。この着色した酸は、任意のアニオン性染料(例えば、平均して1分子当り0.5〜3個のスルホン酸基を含む、スルホン化もしくはカルボキシル化された銅フタロシアニンもしくはニッケルフタロシアニン、またはスルホン酸基および/もしくはカルボン酸基を含むジスアゾ染料)であり得る。
【0049】
vがゼロである場合、基RR’N−T−O−(Y)−T−NH−A−を有しない、Zにおけるいくつかのアミン基/イミン基は、酸もしくは4級化剤(quaternising agent)との反応により置換アンモニウム基に換えられ得る。この目的に適切な試薬としては、鉱酸および強酸(例えば、塩酸、酢酸、スルホン酸、アルキルスルホン酸、硫酸水素アルキルもしくはアリールスルホン酸)が挙げられる。4級化剤としては、硫酸ジメチル、塩化ベンジル、ハロゲン化メチル(例えば、塩素、臭素およびヨウ素)およびプロパン(もしくはブタン)スルトンが挙げられる。
【0050】
式Iの化合物は、当該分野には公知の任意の方法により作製され得る。一つの実施形態において、この化合物は、式(3)の化合物と二塩基酸もしくはその無水物ならびにポリアミンおよび/もしくはポリイミンならびに必要に応じて第二の二塩基酸もしくはその無水物との反応によって調製される。
【0051】
【化7】

ここで、R、R’、Y、Tおよびxは、本明細書中の上記で述べた通りである。
【0052】
一つの実施形態において、式(3)の化合物は、40〜150℃、もしくは60〜100℃の温度で第一の二塩基酸もしくは無水物と反応される。この反応は典型的に不活性雰囲気下で行なう。この不活性雰囲気は、周期表の任意の不活性ガスによって提供され得るが、窒素が通常使用される。
【0053】
ポリアミンおよび/もしくはポリイミンとの反応は、一つの実施形態においては、100〜200℃の温度で行なわれる。このような条件の下、この反応の結果、塩形態のみよりはむしろアミド形態と塩形態との混合物が得られる。
【0054】
必要に応じた第二の二塩基酸もしくはその無水物を含む反応は、典型的に第一の二塩基酸もしくはその無水物を使用する際に利用した条件と同様の条件を使用して行なわれる。
【0055】
第一および第二の二塩基酸もしくはその無水物を含む反応は、反応物に対しては不活性の有機希釈剤の存在下で行なわれ得る。同様に、式3の化合物と二塩基酸もしくはその無水物ならびにポリアミンおよび/もしくはポリイミンとの間の反応も、有機希釈剤の存在下で行なわれ得る。一つの実施形態において、この有機希釈剤は反応物にとっての溶媒である。この有機希釈剤は、芳香族であってもよく、または脂肪族でもよく、これらはハロゲン化誘導体を含む。例は、トルエン、クロロベンゼン、ヘプタンおよび石油エーテル留出物である。典型的に、この反応は有機希釈剤の無い状態で行なわれる。
【0056】
Wが酸化物の残基である場合、基RR’N−T−O−(Y)−T−NH−A−を有しない、Zにおけるアミノ基および/もしくはイミン基の数は広い範囲にわたって多様であり得る。このような分散剤は、遊離のアミノ基および/もしくはイミノ基を含む分散剤と、酸化する化合物(例えば、酸素(もしくは空気))もしくは過酸化物(例えば、過酸化水素もしくは過硫酸アンモニウム)との反応により、容易に調製される。同様に、Wが尿素の残基である場合、このような分散剤は、基RR’N−T−O−(Y)−T−NH−A−を有しない、Zにおける任意の遊離のアミノ基および/もしくはイミノ基と尿素との反応によっても容易に調製され得る。この反応は、一つの実施形態において、不活性雰囲気下で、80℃と140℃との間の温度で行なわれる。
【0057】
一つの実施形態において、RおよびR’は水素であって、ゆえに、式1の化合物上にNH−部分を形成する。このNH−部分は、アルキル化剤(例えば、ハロゲン化メチル)、アシル化剤(例えば、無水酢酸もしくは塩化アセチル)、エステル、エポキシド、(メタ)アクリレートもしくはラクトン(例えば、β−プロピオラクトン、必要に応じてC1−6−アルキル置換されたε−カプロラクトン、および必要に応じてC1−6−アルキル置換されたδ−バレロラクトン)とさらに反応し得る。適切なラクトンの特定の例としては、ε−カプロラクトンならびに7−メチル−、3−メチル−、5−メチル−、6−メチル−、4−メチル−、5−テトラ−ブチル−、4,4,6−トリメチル−および4,6,6−トリメチル−ε−カプロラクトンおよびδ−バレロラクトンが挙げられる。一つの実施形態において、このNH−部分は、50℃〜150℃の範囲内の温度でさらに反応され得る。
【0058】
Wが二塩基酸もしくはその無水物の残基である特定の場合には、基RR’N−T−O−(Y)−T−NH−A−を有しない、Zにおけるアミノ基および/もしくはイミノ基の大部分は、二塩基酸もしくは無水物と反応される。
【0059】
組成物中に存在する粒子状固体は、有機媒質中に充分に不溶性である、任意の無機もしくは有機の固体物質であり得る。一つの実施形態において、この粒子状固体は顔料である。
【0060】
適切な固体の例は、溶剤インク用の顔料;塗料およびプラスチックの材料用の顔料、エキステンダーおよび充填剤;分散染料;溶剤染浴、インクおよび他の溶剤応用系用の蛍光発光剤および繊維助剤;オイルベースおよび逆のエマルジョンの掘削泥水用の固体;ドライクリーニングの液体中のごみおよび固体粒子;粒子状の陶器材料;磁性材料および磁性記録媒体;複合材料用の繊維(例えば、ガラス、鋼、炭素およびホウ素)、ならびに有機媒質中の分散物として適用される、殺生物剤、農薬および医薬である。
【0061】
一つの実施形態において、この固体は、例えば、Third Edition of the Colour Index(1971)、ならびにその後のその改訂版およびその付録内で、「Pigments」の表題のチャプターのもとに記載されている認知されたクラスの顔料のうちのいずれかからの有機顔料である。有機顔料の例は、アゾ、ジスアゾ、縮合アゾ、チオインジゴ、インダントロン、イソインダントロン、アンタントロン(anthanthrone)、アントラキノン、イソジベンゾアントロン(isodibenzanthrone)、トリフェンジオキサジン(triphendioxazine)、キナクリドンならびにフタロシアニンのシリーズ、特に銅フタロシアニンおよびその核ハロゲン化された誘導体、またならびに酸性染料、塩基性染料および媒染染料のレーキからの顔料である。カーボンブラックは、厳密には無機物であるが、その分散特性においては、むしろ有機顔料のように挙動する。一つの実施形態において、この有機顔料は、フタロシアニン、特に銅フタロシアニン、モノアゾ、ジアゾ、インダントロン、アントラントロン(anthranthrones)、キナクリドン、およびカーボンブラックである。
【0062】
無機の固体としては、エキステンダーおよび充填剤(例えば、タルク、カオリン、シリカ、バリタおよびチョーク);粒子状の陶器材料(例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ケイ素アルミニウムとチタン酸金属との混合物);粒子状の磁性材料(例えば、遷移金属(特に鉄およびクロム)の磁性酸化物(例えば、ガンマ−Fe、Fe、およびコバルトドーピングした酸化鉄)、酸化カルシウム、フェライト、特にバリウムフェライト);ならびに金属粒子、特に金属鉄、金属ニッケル、金属コバルト、金属銅およびそれらの合金が挙げられる。
【0063】
他の有用な固体材料としては、農薬(例えば、殺真菌剤、フルトリアフェン(Flutriafen)、カルベンダジム、クロロタロニルおよびマンコゼブ)が挙げられる。
【0064】
本発明の組成物中に存在する有機媒質は、一つの実施形態においては、プラスチック材料であり、別の実施形態においては有機液体である。この有機液体は、非極性もしくは極性の有機液体であり得るが、極性有機液体が典型的に使用される。有機液体に関して、用語「極性」によって、Journal of Paint Technology、Vol.38、1996、269ページ内のCrowleyらによる論文「A Three Dimensional Approach to Solubility」に記載されている通り、有機液体が中程度〜強い結合を形成可能であることが意味される。このような有機液体は、上記に述べた論文で定義されたように一般的に5以上の水素結合数を有する。
【0065】
適切な極性有機液体の例は、アミン、エーテル(特に低級アルキルエーテル)、有機酸、エステル、ケトン、グリコール、アルコールおよびアミドである。このような中程度に、強く水素結合する液体の非常に多くの特定の例は、Ibert Mellanによる表題「Compatibility and Solubility」(1968年にNoyes Development Corporationより刊行)の本の39〜40ページのTable2.14中に挙げられており、これらの液体は、本明細書中で使用される極性有機液体という用語の範囲内に入る。
【0066】
一つの実施形態において、極性有機液体は、ジアルキルケトン、アルカンカルボン酸のアルキルエステルおよびアルカノールであり、特に合計6個までおよび6個を含む炭素原子を含むような液体である。この極性有機液体の例としては、ジアルキルケトンおよびシクロアルキルケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジ−イソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−イソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルn−アミルケトンおよびシクロヘキサノン);アルキルエステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ギ酸エチル、プロピオン酸メチル、メトキシプロピルアセテートおよび酪酸エチル);グリコールならびにグリコールエステルおよびグリコールエーテル(例えば、エチレングリコール、2−エトキシエタノール、3−メトキシプロピルプロパノール、3−エトキシプロピルプロパノール、2−ブトキシエチルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、3−エトキシプロピルアセテートおよび2−エトキシエチルアセテート);アルカノール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールおよびイソブタノール)、ならびにジアルキルおよび環状のエーテル(例えばジエチルエーテルおよびテトラヒドロフラン)が挙げられる。一つの実施形態において、溶媒はアルカノール、アルカンカルボン酸およびアルカンカルボン酸のエステルである。
【0067】
極性有機液体として使用され得る有機液体の例は、フィルム形成樹脂(例えば、インク、塗料およびチップ(塗料およびインクのような多種の適用において使用するためのもの)の調製に適切なもの)である。このような樹脂の例としては、ポリアミド(例えば、VersamidTMおよびWolfamideTM)ならびにセルロースエーテル(例えば、エチルセルロースおよびエチルヒドロキシエチルセルロース)、ニトロセルロースおよび酢酸酪酸セルロース樹脂(これらの混合物を含む)が挙げられる。塗料樹脂の例としては、短油アルキド/メラミン−ホルムアルデヒド、ポリエステル/メラミン−ホルムアルデヒド、熱硬化性アクリル/メラミン−ホルムアルデヒド、長油アルキド、ポリエーテルポリオールおよびマルチ−メディア樹脂(例えば、アクリル系および尿素/アルデヒド)が挙げられる。
【0068】
この有機液体はポリオール、すなわち、2つ以上のヒドロキシ基を含む有機液体であり得る。一つの実施形態において、ポリオールはアルファ−オメガジオールもしくはアルファ−オメガジオールエトキシレートを含む。
【0069】
一つの実施形態において、非極性有機液体は、脂肪族基、芳香族基もしくはその混合物を含む化合物である。この非極性有機液体としては、非ハロゲン化芳香族炭化水素(例えば、トルエンおよびキシレン)、ハロゲン化芳香族炭化水素(例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン)、非ハロゲン化脂肪族炭化水素(例えば、6個以上の炭素原子を含む、直鎖状の脂肪族炭化水素および分枝状の脂肪族炭化水素(完全に飽和のものおよび部分的に飽和のものの両方))、ハロゲン化脂肪族炭化水素(例えば、ジクロロメタン、四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエタン)および天然の非極性有機物(例えば、植物油、ひまわり油、アマニ油、テルペンおよびグリセリド)が挙げられる。
【0070】
一つの実施形態において、この有機液体は、総有機液体を基準として少なくとも0.1重量%もしくは1%またはそれより多くの極性有機液体を含む。
【0071】
この有機液体は必要に応じてさらに水を含む。一つの実施形態において、この有機液体は水を含まない。
【0072】
この有機液体が水を含む場合、一つの実施形態において、存在する水の量は、有機液体の量を基準として70重量%以下、50重量%以下、または40重量%以下である。
【0073】
プラスチック材料は熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂であり得る。本発明において有用な熱硬化性樹脂としては、熱した際、触媒作用を受けた際、もしくはUV放射を受けた際に化学反応を受けて相対的に不融性となる樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂内の典型的な反応としては、酸化もしくは不飽和二重結合、エポキシ/アミン、エポキシ/カルボニル、エポキシ/ヒドロキシル、ポリイソシアネート/ヒドロキシ、アミノ樹脂/ヒドロキシ部分、フリーラジカル反応またはポリアクリレート、カチオン重合もしくはエポキシ樹脂およびビニルエーテル、縮合またはシラノールなどに関係する反応が挙げられる。
【0074】
ヒドロキシ官能性を含むポリマー(しばしばポリオール)は、熱硬化系においてアミノ樹脂もしくはポリイソシアネートと架橋させるために広く使用される。このポリオールとしては、アクリルポリオール、アルキドポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリウレタンポリオールが挙げられる。典型的なアミノ樹脂としては、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂およびグリコールウリルホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。ポリイソシアネートは、2つ以上のイソシアネート基を含む樹脂である(単量体の脂肪族ジイソシアネート、単量体の芳香族ジイソシアネートの両方およびそれらのポリマーが挙げられる)。典型的な脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび水素化したジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。典型的な芳香族イソシアネートとしては、トルエンジイソシアネートおよびビフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
【0075】
一つの実施形態において、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリスチレン系(polystyrenics)、ポリ(メタ)アクリレート、セルロースおよびセルロース誘導体が挙げられる。上記の組成物は、多数の方法で調製され得るが、融解混合および乾燥固体ブレンディングが典型的な方法である。
【0076】
望むのであれば、この組成物は他の成分(例えば、樹脂(これらはもはや有機媒質を構成しない)、結合剤、流動化剤、沈殿防止剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、レオロジー調整剤、レベリング剤、光沢調整剤および防腐剤)を含み得る。
【0077】
この組成物は典型的に1〜95重量%の粒子状固体を含んでおり、正確な量はこの固体の性質に依存し、この量はこの固体の性質、ならびにこの固体およびこの極性有機液体の相対密度に依存する。例えば、この固体が有機物質である組成物(例えば、有機顔料)は、一つの実施形態においては、15〜60重量%の固体を含み、一方、この固体が無機物質である組成物(例えば、無機顔料、充填剤もしくはエキステンダー)は、一つの実施形態においては、組成物の総重量を基準として40〜90重量%の固体を含む。
【0078】
この組成物は、分散物を調製するための公知の従来の方法のいずれかで調製され得る。ゆえに、この固体、有機媒質および分散剤は、任意の順序で混合され得て、その後この混合物は、この固体の粒子を適切なサイズにするために、分散物が形成されるまで機械的処理(例えば、ボールミル、ビーズミル、レキミルもしくはプラスチックミル)にかけられ得る。あるいは、この固体は、その粒子サイズを減じるために、独立して、または有機媒質もしくは分散剤のいずれかと混合して処理され得、その後他の成分(単数もしくは複数)が加えられ、この混合物は攪拌され、組成物が得られる。
【0079】
本発明の組成物は、液体分散物に特に適している。一つの実施形態において、この分散組成物は;
a) 0.5〜30部の粒子状固体;
b) 0.5〜30部の式(1)の化合物;および
c) 40〜99部の有機液体;
を含み、ここですべての部は重量によるものであって、量(a)+(b)+(c)=100である。
【0080】
一つの実施形態において、成分a)は、0.5〜30部の顔料を含み、このような分散物は液体インク、塗料およびミルベースとして有用である。
【0081】
組成物が、粒子状固体および式(1)の分散剤を乾燥形態で含む必要がある場合、この有機液体は典型的に揮発性であり、その結果、これは単純な分離方法(例えば、蒸発)によって、粒子状固体から容易に除去され得る。一つの実施形態において、この組成物は有機液体を含む。
【0082】
この乾燥組成物が式(1)の分散剤および粒子状固体から本質的になる場合、これは典型的に、粒子状固体の重量を基準として少なくとも0.2%、少なくとも0.5%もしくは少なくとも1.0%の式(1)の分散剤を含む。一つの実施形態において、この乾燥組成物は、粒子状固体の重量を基準として100重量%以下、50重量%以下、20重量%以下もしくは10重量%以下の式(1)の分散剤を含む。
【0083】
本明細書中の上記で開示したように、本発明の組成物はミルベースを調製するのに適しており、ここで、有機液体中で式(1)の化合物およびその塩の存在下で粒子状固体は粉砕される。
【0084】
ゆえに、本発明のなおさらなる局面によれば、粒子状固体、有機液体ならびに式(1)の化合物およびその塩を含むミルベースが提供される。
【0085】
典型的に、このミルベースは、ミルベースの総重量を基準として20〜70重量%の粒子状固体を含む。一つの実施形態において、この粒子状固体はミルベースの10重量%以下もしくは20重量%以下である。このようなミルベースは、粉砕する前または後のいずれかに加えられる結合剤を必要に応じて含み得る。
【0086】
この結合剤は、組成物を有機液体の揮発に結びつけ得る高分子物質である。
【0087】
結合剤は高分子物質であり、高分子物質としては、天然物質および合成物質が挙げられる。一つの実施形態において、結合剤としては、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン系(polystyrenics)、ポリエステル、ポリウレタン、アルキド、多糖類(例えば、セルロース)および天然タンパク質(例えば、カゼイン)が挙げられる。一つの実施形態において、この結合剤は組成物中に、粒子状固体の量を基準にして100%よりも多く、200%よりも多く、300%よりも多く、もしくは400%よりも多く存在する。
【0088】
ミルベース中の必要に応じた結合剤の量は、広い範囲にわたって多様であり得るが、典型的には、ミルベースの連続相/液体相の10重量%以上、およびしばしば20重量%以上である。一つの実施形態において、結合剤の量は、ミルベースの連続相/液体相の50重量%以下もしくは40重量%以下である。
【0089】
ミルベース中の分散剤の量は、粒子状固体の量に依存するが、典型的には、ミルベースの0.5〜5重量%である。
【0090】
本発明の組成物から作製される分散物およびミルベースは、コーティングおよび塗料(特に、ハイソリッド塗料);インク(特に、フレキソ印刷インク、グラビアインクおよびスクリーンインク);非水性セラミックプロセス(特に、テープコーティングプロセス、ドクターブレードプロセス、押出成形および射出成形タイプのプロセス);複合材、化粧品、接着剤およびプラスチック材料における使用に特に適している。
【0091】
ゆえに、本発明のさらなる局面によれば、粒子状固体、有機液体、結合剤ならびに式(1)の化合物およびその塩を含む、塗料もしくはインクが提供される。
【0092】
本明細書の上記で述べたように、式(1)の分散剤の多くが新規である。
【0093】
ゆえに、本発明のさらなる局面によれば、式(4)の化合物およびその塩が提供される:
【0094】
【化8】

ここで、R、R’、Y、T、A、Z、A、x、(Y)および塩は本明細書の上記で定義した通りであり、rは1〜200である。
【0095】
一つの実施形態において、式(4)の化合物およびその塩が提供され、ここで、R、R’、T、A、Z、A、x、塩およびrは本明細書の上記で定義した通りであり、YはC3−4−アルキレンオキシであり、(Y)で表される鎖は、75%までの数のエチレンオキシ反復単位を含み得る。
【0096】
本発明のなおさらなる局面によれば、式(1)の化合物およびその塩が提供され、ここで、Zは1200以上の数平均分子量を有するポリアミンおよび/もしくはポリイミンであり、vはゼロである。
【0097】
一つの実施形態において、式(1)の化合物およびその塩が提供され、ここで、YはC3−4−アルキレンオキシであり、(Y)で表される鎖は、75%までの数のエチレンオキシ反復単位を含み得、そしてZは1200以上の数平均分子量を有するポリアミンおよび/もしくはポリイミンである。
【0098】
本発明のなおさらなる局面によれば、式5の化合物が提供される:
【0099】
【化9】

ここで、R、R’、Y、T、A、Z、x、およびvは本明細書の上記で定義した通りであり、Wは酸化物もしくは尿素の残基である。
【0100】
一つの実施形態において、この化合物は、ジアミン、ポリアミンおよび/もしくはポリイミンと二塩基酸もしくはその無水物との反応から獲得され得る/獲得される。したがって、当業者は、化合物は、式1、1a、4および5からの生成物の混合物を含み得ることを理解する。さらに、化合物は、1つ以上の未反応アミンを有する部分、1つ以上のカルボン酸もしくは無水物の官能基、あるいは1つ以上のアミド官能基を含み得る。本発明は、本明細書中で述べたように、ジアミン、ポリアミンおよび/もしくはポリイミンと二塩基酸もしくはその無水物との反応から獲得し得る任意の化合物をさらに含む。
【0101】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明され、ここで、量に関するすべての表示は、そうでないと示されていない限り、重量部による。
【実施例】
【0102】
(実施例1 1:1 Jeffamine D2000:無水コハク酸)
Jeffamine D2000(400g 200mmol、例えばHuntsman)および無水コハク酸(20g 200mmol、例えばAldrich)を80℃で18時間、窒素雰囲気下で攪拌し、粘性の黄色の液体(418g)を得た。IRは無水物基の存在を示さず、カルボニルアミドの存在を示した(1659cm−1)。この混合物の酸価は、26.3mg KOH/gと測定され、塩基当量は2026と測定される。これが中間体1である。
【0103】
ポリエチレンイミン SP030(3.1g 1mmol、例えば日本触媒 MW 3000)を、攪拌した中間体1(40g 19mmol)に、80℃で窒素雰囲気下で加える。15分後、全混合物を、120℃で6時間、窒素雰囲気下で攪拌し、粘性の琥珀色のゴム状物質(41g)を得る。この混合物の酸価は、16mg KOH/gと測定される。これが分散剤1である。
【0104】
上記の反応を、種々のMWのポリエチレンイミンを使用して繰り返す。
【0105】
(実施例2 13:1(1:1:1 Jeffamine D2000:無水コハク酸:無水酢酸):ポリエチレンイミン SP200)
無水酢酸(2.13g 20.9mmol、例えばFisher)を、攪拌した中間体1(40g 19mmol)に、80℃で窒素雰囲気下で加える。全混合物を、80℃で6時間、窒素雰囲気下で攪拌し、薄い黄色の液体を得る。この混合物の酸価は、26.6mg KOH/gと測定され、アミン基の反応の完了を示す塩基当量値はない。IRは無水物基の存在を示さず、カルボニルアミドの存在を示した(1649cm−1)。これが中間体2である。
【0106】
ポリエチレンイミン SP200(3.1g 0.03mmol、例えば日本触媒 MW 10000)を、攪拌した中間体2(40g 19mmol)に、80℃で窒素雰囲気下で加える。15分後、全混合物を、120℃で6時間、窒素雰囲気下で攪拌し、粘性の琥珀色のゴム状物質(42g)を得る。この混合物の酸価は15.8mg KOH/gと測定される。これが分散剤2である。
【0107】
(実施例3〜36)
分散剤3〜36を、分散剤1および/もしくは2のいずれかのプロセスと同様のプロセスで、調製する。分散剤3〜36を調製するために使用される化学物質を表1(a)〜表1(c)に示す。分散剤31〜34を、以下の通りのさらなる反応によって調製する:
分散剤2(16g)をトルエン(16g)中で、80℃で窒素雰囲気下で緩やかに攪拌し、無水コハク酸(0.87g、例えばAldrich)を加える。この混合物を、80℃で、2時間もしくはIRによって無水物が検出されなくなるまで、攪拌する。オレンジ色の溶液(32g)が得られる。これが分散剤31である。
【0108】
分散剤12(20g)および尿素(0.65g 例えばAldrich)を、120℃で24時間、窒素雰囲気下で一緒に攪拌する。茶色の粘性の液体(20g)が得られる。これが分散剤32である。
【0109】
分散剤11(20g)および35wt%の水性の過酸化水素溶液(1.06g 例えばFisher)を、この過酸化物が実質的に反応するまで(デンプン−ヨウ素紙を使用したときの陰性の結果によって確認される)、80℃で窒素雰囲気下で一緒に攪拌する。茶色の粘性液体(20g)が得られる。これが分散剤33である。
【0110】
分散剤21(16g)および硫酸ジメチル(DMS)(0.16g 例えばAldrich)を、このDMSが実質的に反応するまで(ブロモクレゾールグリーン指示薬を使用したときの陰性の結果によって確認される)、90℃で窒素雰囲気下で一緒に攪拌する。薄い黄色の粘性液体(16g)が得られる。これが分散剤34である。
【0111】
【表1a】

【0112】
【表1b】

【0113】
【表1c】

(実施例37)
Jeffamine D2000(400g 200mmol、例えばHuntsman)および無水コハク酸(30g 300mmol、例えばAldrich)を80℃で18時間、窒素雰囲気下で攪拌する。これが中間体3である。
【0114】
無水酢酸(1.06g 10.4mmol、例えばFisher)を、攪拌した中間体3(40g 19mmol)に、80℃で窒素雰囲気下で加える。全混合物を、80℃で6時間、窒素雰囲気下で攪拌する。これが中間体4である。
【0115】
ポリエチレンイミン SP075(5.7g 0.76mmol、例えば日本触媒 MW 7500)を、攪拌した中間体4(40g 19mmol)に、80℃で窒素雰囲気下で加える。15分後、全混合物を、120℃で6時間、窒素雰囲気下で攪拌する。これが分散剤37である。
【0116】
(ミルベースの調製)
マゼンタミルベースのシリーズを、分散剤1〜40を利用して調製した。これらのミルベースを、分散剤1もしくは2(0.65g)を、7.55gの溶媒混合物(4:1の比のMPA:ブタノール(MPA=メトキシプロピルアセテート))中に溶解することにより、調製した。ガラスビーズ(3mm、17部)およびMonolite Rubine 3B(例えばHeubach 2.0部)を加え、この混合物を、水平振盪機で16時間振盪した。比較例を、分散剤のない状態で調製する。その後、A〜E(良い〜悪い)の任意スケールを使用して、得られた分散物を流動性に関して評価した。得られた結果を表2に示す。
【0117】
【表2】

表2の脚注:コントロール1は、米国特許第4,645,611号中に述べられているようにラウリン酸によって末端キャップされ、ポリエチレンイミンと反応されたポリカプロラクトンである。コントロール2は、米国特許第6,197,877号の実施例1であり;コントロール3は分散剤を使用しない。
【0118】
表2は、本発明の分散剤が、非常に異なる極性の有機媒質と一緒になって良好な流動性を与えることを示す。
【0119】
上記で述べたそれぞれの文書は、本明細書中に参考として援用される。実施例中を除いて、もしくはそうでないと明白に示されていない限り、物質の量、反応の条件、分子量、炭素原子の数などを特定する本明細書における全ての数値量は、用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。そうでないと示されていない限り、本明細書中で述べているそれぞれの化学物質もしくは組成物は、異性体、副産物、誘導体、およびコマーシャルグレードの物質中に存在していると通常理解されているような他の物質を含み得る、コマーシャルグレードの物質であると解釈されるべきである。しかしながら、それぞれの化学成分の量は、そうでないと示されていない限り、通常市販の物質に存在し得るあらゆる溶媒もしくは希釈オイルを除いて示される。本明細書中で説明する量、範囲および比の上限および下限は、独立して組み合わされ得ると理解されるべきである。同様に、本発明のそれぞれの要素に対する範囲および量は、任意の他の要素に対する範囲もしくは量と共に使用され得る。本明細書中で使用される場合、「から本質的になる」という表現は、検討中の組成物の根本的および新規の特徴に重大に影響をおよぼさない物質の含有を許容する。
【0120】
本発明は、その好ましい実施形態に関して説明されてきたが、本明細書を読むことで、これらの種々の変更が当業者には明白になることは理解されるべきである。ゆえに、本明細書中に開示した本発明は、添付の特許請求の範囲内に入るような変更を包含することが意図されていることは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状固体、有機媒質および/もしくは水、ならびに式(1)の化合物:
【化1】

およびその塩を含む組成物であって、
ここで、
RおよびR’は、独立してHもしくはC1−30の必要に応じて置換されたヒドロカルビルであるか;またはRがHもしくはC1−30の必要に応じて置換されたヒドロカルビルであり、R’がR’’C=O(アシル基)であり;
R’’は、水素、アルキルもしくは必要に応じて置換されたアルキルもしくはアリールもしくは必要に応じて置換されたアリールであり;
Yは、C2−4−アルキレンオキシであり;
Tは、C2−4アルキレンであり;
Aは、二塩基酸もしくはその無水物の残基であり;
Zは、ポリアミンおよび/もしくはポリイミンの残基であり;
Wは、酸化物、尿素、または二塩基酸もしくはその無水物、あるいはそれらの混合物の残基であり;
xは、2〜90であり;
vは、基RR’N−T−O−(Y)−T−NH−A−を有しない、Zにおいて使用可能なアミノ基および/もしくはイミノ基の最大数を表し、そして0−vは0〜vを意味する、
組成物。
【請求項2】
粒子状固体、有機媒質、ならびに式(1a)の化合物:
【化2】

およびその塩を含む組成物であって、
ここで、
RおよびR’は、独立してHもしくはC1−30の必要に応じて置換されたヒドロカルビルであるか;またはRがHもしくはC1−30の必要に応じて置換されたヒドロカルビルであり、R’がR’’C=O(アシル基)であり;
R’’は、水素、アルキルもしくは必要に応じて置換されたアルキルもしくはアリールもしくは必要に応じて置換されたアリールであり;
Yは、C2−4−アルキレンオキシであり;
Tは、C2−4アルキレンであり;
Aは、二塩基酸もしくはその無水物の残基であり;
Zは、ポリアミンおよび/もしくはポリイミンの残基であり;
xは、2〜90であり;
AおよびAは、独立して二塩基酸もしくは無水物の残基であり、これらは同じであっても異なっていてもよく;そして
pは0〜200である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
YがC3−4−アルキレンオキシであって、(Y)で表される鎖が75%までの数のエチレンオキシ反復単位を含み得る、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
Aが、マレイン酸、マロン酸、コハク酸およびフタル酸、無水グルタル酸、無水コハク酸および無水フタル酸からなる群から独立して誘導される残基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
A’が、マレイン酸、マロン酸、コハク酸およびフタル酸、無水グルタル酸、無水コハク酸および無水フタル酸からなる群から独立して誘導される残基である、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
Zで表される基がポリエチレンイミンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記有機媒質が有機液体もしくはプラスチック材料である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記有機液体が、総有機液体を基準として少なくとも0.1重量%の極性有機液体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記粒子状固体が顔料である、請求項1に記載の組成物。

【公表番号】特表2008−524384(P2008−524384A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546736(P2007−546736)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/043924
【国際公開番号】WO2006/068812
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(506347528)ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド (74)
【Fターム(参考)】