説明

組換えタンパク質の産生の増進のための核酸コンストラクトおよび発現ベクターならびに組換えタンパク質の大量生産方法

【課題】 組換えポリペプチド/タンパク質の産生を増進するための核酸コンストラクトおよび発現ベクター、ならびに組換えポリペプチド/タンパク質の大量生産のための方法を提供すること。
【解決手段】 チオレドキシンをコードする第一の核酸配列およびヘモグロビンをコードする第二の核酸配列を宿主細胞にクローニングし、それによって形成された組換え宿主細胞の選択された遺伝子産物の産生能力を増進し、該組換え宿主細胞の該遺伝子産物の過剰発現による細胞内ストレスの軽減を補助する、組換えポリペプチド/タンパク質の産生を増進するための核酸コンストラクトおよび発現ベクター、ならびに組換えポリペプチド/タンパク質の大量生産のための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオレドキシンをコードする第一の核酸配列およびヘモグロビンをコードする第二の核酸配列を宿主細胞にクローニングし、それによって形成された組換え宿主細胞の選択された遺伝子産物の産生能力を増進させ、組換え宿主細胞の該遺伝子産物の過剰発現による細胞内ストレスの軽減を補助する、組換えポリペプチド/タンパク質の産生の増進のための核酸コンストラクトおよび発現ベクターならびに組換えポリペプチド/タンパク質の大量生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「組換えポリペプチド/タンパク質の産生」はバイオテクノロジー分野における非常に重要な遺伝子操作技術である。基本原理は、所望の遺伝子産物(例えば、工業用途および農業用途の酵素、治療用途のタンパク質、インターフェロン、インターロイキン、ホルモン、成長ホルモン、抗原性ポリペプチド、抗体)を発現することが出来る標的遺伝子の好適なベクターへのクローニング、つづいてその結果得られた組換えベクターのコンピテント宿主細胞への移入を含む。こうして形成された組換え宿主細胞は好適な培地で好適な培養条件で培養すればよく、標的遺伝子の発現を適宜の時間に誘導して所望の遺伝子産物の大量生産という目的を達成することが出来る。
【0003】
今日まで、組換えポリペプチド/タンパク質の産生において、大腸菌細胞がもっとも広く使用されているもっとも有効な宿主細胞であり、様々なタイプのプラスミドベクターをこの細菌種から開発することが出来る。かかるプラスミドベクターとしては例えば、高コピー数プラスミド(例えば、ColE1)、中コピー数プラスミド(例えば、p15A)、低コピー数プラスミド(例えば、pSC101)および温度によってコピー数を制御するプラスミド(例えば、R1)(非特許文献1)が挙げられる。こうして開発及び構築されたプラスミドベクターは一般に誘導可能な人工プロモーターを有する。標的遺伝子を人工プロモーターの下流にクローニングすると、標的遺伝子の発現の制御という目的が達成できる。
【0004】
一般に、もっともよく使用されている人工プロモーターとしては、lac、trp、tac、trc、araBAD、λPRPL、およびT7プロモーターが挙げられ、これらのプロモーターはイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)、ラクトース、アラビノースの添加、温度変化などによって誘導することが出来る(非特許文献1)。一方、クローニングされた標的遺伝子はベクターが構成的プロモーターを含む場合はベクターに直接クローニングすればよい。かかる標的遺伝子を組換えベクターの構築に用いる場合、通常、誘導方法によって組換えポリペプチド/タンパク質の産生を誘発する必要はない。
【0005】
組換えポリペプチド/タンパク質の産生のための標的遺伝子のプラスミドベクターへのクローニングのために用いる方法に関係なく、クローニングされた標的遺伝子を含む組換えプラスミドベクターは宿主細胞に移入されなければならず、そうして形成された形質転換宿主細胞は組換えポリペプチド/タンパク質の産生工場として働く。しかし、不安定性の原因となる多くの因子が存在し、したがって形質転換宿主細胞に含まれていたプラスミドベクターが脱落してしまうことがある。かかる因子としては、例えば、培地の構成成分、宿主細胞の培養条件、プラスミドおよび宿主細胞自体の特徴、発現したポリペプチド/タンパク質産物による毒性などが挙げられる。したがって、プラスミドベクターの安定性の問題に鑑み、細胞の染色体への標的遺伝子の挿入のための、相同組換え、およびバクテリオファージを介する付着、トランスポゾンを介する遺伝子転移の利用などが考慮されうる(非特許文献2)。
【0006】
現在のバイオテクノロジー分野における既存の知識および技術によると、理論的には、様々な生物学的起源由来のほとんどすべての遺伝子を大腸菌細胞内で発現させることが出来、関連する操作手順もよく開発されてきた。しかし、かかる操作手順を工業用途に用いようとする場合、解決しなければならない多くの問題が生じる。例えば、形質転換細菌細胞は組換えポリペプチド/タンパク質を過剰生産するように誘導されるとしばしばかなりの代謝的負荷を受ける。いわゆる「代謝的負荷」とは、形質転換宿主細胞の増殖が該細胞内での組換えポリペプチド/タンパク質の大量生産によって遅延し、その結果該細胞内でストレス応答がトリガーされる状況をいう(非特許文献3)。その結果、大量の熱ショックタンパク質が細胞内で産生され、産生された組換えポリペプチド/タンパク質の分解およびタンパク分解性の攻撃が導かれる(非特許文献4)。熱ショックタンパク質の産生の結果、細胞の増殖の遅延も起こり得(非特許文献5)、あるいは細胞rRNAの損傷が起こり、リボゾーム破壊および細胞死が起こることもあり得る(非特許文献6)。
【0007】
形質転換宿主細胞によって過剰生産された組換えポリペプチド/タンパク質は、それが宿主細胞の代謝的成長に関係するか、あるいはそれが毒性を有するかにかかわらず、形質転換宿主細胞におけるストレス応答を誘導しやすいということは注目に値する。それゆえ、組換えポリペプチド/タンパク質の大量生産の目的を達成することは非常に難しい。
【0008】
バイオテクノロジー産業における競争力のためには組換えポリペプチド/タンパク質の産生は必須であるため、どのようにして上記問題を克服し、組換えポリペプチド/タンパク質の高産生という目的を達成するかは、バイオテクノロジー産業における研究と開発の非常に重要な課題である。
【0009】
一方、好気的に生育する細胞培養への酸素の十分な供給の維持は、様々なバイオプロセスにおける重要な問題である。
【0010】
ビトレオシラ(Vitreoscilla)細菌は酸素の少ない環境でも生育することが出来る好気性糸状菌の一群である。この属の細菌の低酸素条件下の生育により、ホモダイマー可溶性ヘムタンパク質(サブユニット MW 15,775)の合成が数倍誘導される。該ヘムタンパク質は後に細菌ヘモグロビンであることが判明し、これは真核生物のヘモグロビンに対して顕著なスペクトル(非特許文献7)、構造(非特許文献8)、および動力学(非特許文献9)ホモロジーを有する(特許文献1を参照)。
【0011】
C. Khoslaらの以前の研究において、ビトレオシラ種のヘモグロビン遺伝子が大腸菌細胞にクローニングされ、発現されており(非特許文献10)、低酸素条件下での発酵培養工程におけるビトレオシラヘモグロビン遺伝子を有する組換え大腸菌細胞の増殖特性は、例えば、より速い増殖、全細胞重量の増加など、野生型大腸菌細胞と比べて顕著に増進していた(非特許文献11)。
【0012】
C. Khoslaらに付与された米国特許第5049493号(特許文献2)は、タンパク質をコードする構造遺伝子およびDNA 配列の転写/翻訳の外的制御による選択的調節を行うのに有用な遺伝子プロモーター/レギュレーターを含むビトレオシラヘモグロビンのヌクレオチド配列、かかるヌクレオチド配列を含む細胞の増殖特性の増進および細胞の様々なタンパク質および代謝産物の産生の向上に有用なプラスミドベクターを開示する。ビトレオシラヘモグロビンは、酸素が十分な、また少ない即ち低酸素レベルである環境における好気性生物の増殖および産物の合成特性を増進させることが出来る。
【0013】
文献にはさらに、低酸素条件下での発酵培養工程において、ビトレオシラヘモグロビンを産生する組換え大腸菌細胞は、細胞自体によって産生されるタンパク質の量を有効に増加させることが出来(非特許文献12)、組換えα-アミラーゼの産生を有効に増加させることが出来る(非特許文献13)ことが報告されている。さらに、枯草菌細胞およびチャイニーズハムスター卵巣細胞を低酸素条件下での宿主細胞として用いた場合、そのなかにビトレオシラヘモグロビンを含む組換え細胞は同様に比較的多量の組換えタンパク質を産生することが出来る(非特許文献14; 非特許文献15)。
【0014】
興味深いことに、野生型株と比較して、ビトレオシラヘモグロビンを産生する組換え大腸菌細胞におけるNAD(P)Hの産生速度は2.4分の1に減少する。この結果は、ビトレオシラヘモグロビンを産生する組換え細胞は酸化型状態にあることを示す(非特許文献16)。
【0015】
一般に、正常の細胞の生理的条件下では、大腸菌細胞は還元型状態にある。それゆえ、細胞質に位置するタンパク質はジスルフィド結合を容易には形成しない。しかし、現在では、関与する反応サイクルにおいてジスルフィド結合を形成することが出来る2つの細胞内酵素、例えば、リボヌクレオシドレダクターゼおよび酸化的応答転写因子(OxyR)があることが知られている。かかるタンパク質ジスルフィド結合は、細胞内のチオレドキシンおよびグルタチオン/グルタレドキシンに媒介される反応経路において一過性に形成される(非特許文献17; 非特許文献18)。大腸菌におけるチオレドキシンの過剰発現は細胞内の還元型状態を促進できることが報告されており、還元型状態は産生される真核生物のタンパク質の可溶性に貢献する(非特許文献19; 非特許文献20)。
【0016】
特許文献3は、油体に関連する組換えタンパク質の産生方法を開示する。組換えタンパク質は第一および/または第二の組換えポリペプチド、多量体- タンパク質-複合体、ヘテロ多量体-タンパク質-複合体、多量体- 融合-タンパク質、ヘテロ-多量体-融合-タンパク質、免疫グロブリン- ポリペプチド-鎖、レドックス-融合-ポリペプチドおよび/またはチオレドキシン-関連タンパク質であってよく、そこで第一の組換えポリペプチドはチオレドキシンであり、第二の組換えポリペプチドはチオレドキシン-レダクターゼである。
【0017】
しかし、本出願人らの知る限り、現在のバイオテクノロジー分野に存在する技術を用いて組換えタンパク質の大量生産という目的を達成するのはいまだに困難である。それゆえ、当該技術分野において組換えポリペプチド/タンパク質の産生を向上させるための新たな技術の開発が望まれている。
【特許文献1】米国特許第5049493号明細書
【特許文献2】米国特許第5049493号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0167524号明細書
【非特許文献1】S.C. Makrides et al. (1996)、Microbiol. Rev.、60:512-538
【非特許文献2】A. Haldimann et al. (2001)、J Bacteriol.、183: 6384-6393
【非特許文献3】T. Schweder et al. (2002)、Appl. Microbiol. Biotechnol.、58:330-337
【非特許文献4】H. Bahl et al. (1987)、Gene Dev.、1:57-64
【非特許文献5】C.G. Kurland et al. (1996)、Mol. Microbiol.、21:1-4
【非特許文献6】H. Dong et al. (1995)、J. Bacteriol.、177:1497-1504
【非特許文献7】Webster et al. (1974)、Journal of Biological Chemistry 249:4257-4260
【非特許文献8】Wakabayashi et al. (1986)、Nature、322:481-483
【非特許文献9】Orii et al. (1986)、Journal of Biological Chemistry 261:2978-2986
【非特許文献10】C. Khosla and J.E. Bailey (1988)、Mol. Gen. Genet.、214:158-161
【非特許文献11】C. Khosla and J.E. Bailey (1988)、Nature、331:633-635
【非特許文献12】C. Khosla et al. (1990)、Bio/Technology、8:849-853
【非特許文献13】M. Khosravi et al. (1990)、Plasmide、24:190-194
【非特許文献14】P.T. Kallio and J.E.Bailey (1996)、Biotechnol. Prog.、12:31-39
【非特許文献15】G.J. Pendse and J.E. Bailey (1994)、Biotehnol. Bioeng.、44:1367-1370
【非特許文献16】P.S. Tsai et al. (1995)、Biotechnol Bioeng.、49: 347-354
【非特許文献17】A. Aberg et al. (1989)、J Biol. Chem.、264:12249-12252
【非特許文献18】M. Zheng et al. (1998)、Science、279:1718- 1721
【非特許文献19】E.R. LaVallie et al. (1993)、Bio/Technology、11:187-193
【非特許文献20】T. Yasukawa et al. (1995)、J Biol Chem.、270:25328-25331
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
所望の組換えタンパク質の過剰発現を形質転換宿主細胞において行う場合、形質転換宿主細胞においていわゆるストレス応答が誘導されるか、または代謝的負荷が誘導される可能性があり、そのため、形質転換宿主細胞が組換えタンパク質を過剰生産することができなくなってしまう。それゆえ、本出願人らは組換えタンパク質の大量生産の目的を達成するための有効かつ一般的な解決方法を提供することを試みた。
【課題を解決するための手段】
【0019】
第1の態様によると、本発明は、以下の工程を含む組換え宿主細胞における選択された遺伝子産物の産生を増進させる方法を提供する:
(a)宿主細胞に、選択された遺伝子産物をコードする遺伝子配列、チオレドキシンをコードする第一の核酸配列、およびヘモグロビンをコードする第二の核酸配列をクローニングし、組換え宿主細胞を形成する工程;
(b)工程(a)で形成された組換え宿主細胞を好適な培地で培養し、該遺伝子配列を発現させる工程;および、
(c)発現した遺伝子産物を収集する工程。
【0020】
第二の態様によると、本発明は、選択された遺伝子産物をコードする遺伝子配列、チオレドキシンをコードする第一の核酸配列、およびヘモグロビンをコードする第二の核酸配列を含む、選択された遺伝子産物を発現することが出来る組換え宿主細胞を提供する。
【0021】
第三の態様によると、本発明は、上記方法を実施し、上記組換え宿主細胞を形成するための、チオレドキシンをコードする第一の核酸配列およびヘモグロビンをコードする第二の核酸配列を含む核酸コンストラクトを提供する。本発明はまた、該核酸コンストラクトを担持するベクターを提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明による技術を用いて組換えタンパク質を産生する形質転換宿主細胞の性質、例えば、タンパク質産生を増加させる能力、タンパク質毒性に抵抗する能力、細胞内で産生されたタンパク質を分解から保護する能力、そして細胞におけるリボゾームの完全性の維持能力、を向上させることが出来る。
【0023】
本発明によると、好気条件下での形質転換宿主細胞による組換えタンパク質の産生効率を増進することができ、発酵培養時間を効果的に短縮することが出来、そして形質転換宿主細胞をより高い細胞密度で培養することが出来る。
【0024】
さらに、本発明の実施は特定の宿主細胞の使用に限定されない。実際、本発明は様々な宿主細胞、例えば、細菌、酵母、真菌、植物細胞、昆虫細胞、哺乳類細胞等に適用することが出来、様々な種類のタンパク質の形成に利用することが出来る。かかるタンパク質としては、細胞質または周辺質に存在するタンパク質、細胞膜に存在するタンパク質または細胞外タンパク質、および工業および農業、食品産業、環境産業、水産養殖および畜産業に使用される酵素、特に医療用タンパク質およびペプチド、例えば、インターフェロン、ヒトおよび動物ホルモン、免疫原性抗原および抗体が挙げられる。
【0025】
本発明のその他の特徴および利点は以下の好適な態様の詳細な説明および添付の図面を参照することにより明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
バイオテクノロジー分野に存在する問題を考慮して、組換えタンパク質の高産生という目的を達成するために、本出願人らはそれに対する解決手段は2つの側面から探ることが出来ると考える:1つは細胞の増殖を保証する、即ち増殖した細胞の細胞密度を効率的に上昇させることであり、もう1つは、組換え宿主細胞によって産生される組換えタンパク質の収量を効率的に上昇させることである。
【0027】
チオレドキシン遺伝子とビトレオシラヘモグロビン遺伝子とは組換えタンパク質の産生の目的で宿主細胞を形質転換するのに独立に用いられていたが、今日までこれら2つの遺伝子を組み合わせて用いた場合の形質転換宿主細胞への効果を教示または示唆する刊行物や特許文献は本出願人らの知るところではない。
【0028】
本出願人らは研究および試験により、チオレドキシン遺伝子とビトレオシラヘモグロビン遺伝子をともに宿主細胞に移入すると、形成される形質転換宿主細胞は以下の効果を有するようになることを見いだした:産生された組換えタンパク質が分解されることに対して保護する効果; 細胞におけるタンパク質の大量生産による代謝的負荷によりもたられる有害作用を誘発することなく細胞の増殖を増進させる効果;そして、産生される組換えタンパク質の収率を上昇させる効果。得られた実験結果から判断して、このアプローチは実際、上述の組換えタンパク質の大量生産にともなう問題を有効に解決することが出来、バイオテクノロジー産業に対する非常に重要な貢献であろう。
【0029】
したがって、本発明は以下の工程を含む組換え宿主細胞における選択された遺伝子産物の産生を増進させる方法を提供する:
(a) 宿主細胞に選択された遺伝子産物をコードする遺伝子配列、チオレドキシンをコードする第一の核酸配列、およびヘモグロビンをコードする第二の核酸配列をクローニングし、組換え宿主細胞を形成する工程;
(b) 工程(a)で形成された組換え宿主細胞を好適な培地で培養し、該遺伝子配列を発現させる工程;および、
(c)発現した遺伝子産物を収集する工程。
【0030】
本明細書において用いる「核酸」および「核酸配列」という語は、一本鎖または二本鎖形態におけるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド配列を意味し、天然の既知のヌクレオチドまたは人工の化学的疑似体からなる。本明細書において用いる「核酸」という語は、「遺伝子」、「cDNA」、「mRNA」、「オリゴ-ヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」などの語と互換的に用いられる。
【0031】
特に断りのない限り、核酸配列は、本明細書に記載される特定の配列に加えてその相補的配列およびその保存的アナログ、例えば、縮重コドン置換を有する相同的配列なども含む。具体的には、縮重コドン置換は、例えば、核酸配列における1または複数の選択されたコドンの第三位置の、その他のヌクレオチド残基によるヌクレオチド残基置換によって作ることが出来る。
【0032】
核酸操作技術、例えば、配列における突然変異の作成、サブクローニング、標識、プロービング、配列決定、ハイブリダイゼーションなどは科学文献および特許文献に詳細に説明されている。例えば、Sambrook J、Russell DW (2001) Molecular Cloning: a Laboratory Manual、3rd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York; Current Protocols in Molecular Biology、Ausubel ed.、John Wiley & Sons、Inc.、New York (1997); Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology: Hybridization With Nucleic Acid Probes、Part I、Theory and Nucleic Acid Preparation、Tijssen ed.、Elsevier、N.Y. (1993)を参照されたい。
【0033】
本明細書において用いる「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という語は互換的に用いられ、アミノ酸残基から形成されるポリマーを意味し、ここで1または複数のアミノ酸残基が天然のアミノ酸または人工の化学的疑似体である。
【0034】
本明細書において用いる「細胞」、「宿主細胞」、「形質転換宿主細胞」および「組換え宿主細胞」という語は互換的に用いられ、特定の個々の細胞だけでなく、継代された子孫またはその潜在的子孫も含む。次世代にて形成される継代された子孫には突然変異または環境的影響による特定の遺伝的変化も含まれ、それゆえ、事実上継代された子孫の起源である親細胞と完全に同一でなくてもよい。しかし、継代された細胞は本明細書において用いるこれらの語に含まれる。
【0035】
本発明による方法の工程(a)において用いる宿主細胞は、原核細胞でも真核細胞でもよく、非形質転換/形質移入細胞でも、少なくとも1つのその他の組換え核酸配列によって形質転換/形質移入された細胞でもよい。
【0036】
本発明における使用に好適な原核細胞には、これらに限定されないが、以下から由来する細胞が含まれる 細菌、例えば、大腸菌、枯草菌、乳酸菌(Lactobacillus sp.)、ストレプトマイセス(Streptomyces sp.)、およびチフス菌;ラン藻;放線菌など。
【0037】
本発明における使用に好適な真核細胞としては例えば、真菌細胞、原生動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞およびヒト細胞が挙げられる。好適な真菌細胞の例は酵母細胞、例えば、出芽酵母またはピチア・パストリス(Pichia pastoris)の細胞である。好適な植物細胞は裸子植物または被子植物由来の細胞であり、好ましくは単子葉植物および双子葉植物、特に作物であり、これら植物の根、シュート、葉または分裂組織由来であって、プロトプラストまたはカルスの形態で培養されているものである。好適な昆虫細胞の例は、ショウジョウバエS2細胞、スポドプテラ・フジペルダ(Spodoptera frugiperda)由来のSf21細胞およびSf9細胞である。好適な動物細胞は培養細胞でも生体内の細胞であってもよく、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳類由来であり、かかる動物の器官/組織、例えば、腎臓、肝臓、肺、卵巣、乳房、皮膚、骨格および血液由来のものである。動物細胞の代表例としては、CHO、COS、BHK、HEK-293、Hela、NIH3T3、VERO、MDCK、MOLT-4、Jurkat、K562、HepG2などが含まれる。
【0038】
DNA 組換え技術を実施するのに好適な宿主細胞のための好適な培地および培養条件はバイオテクノロジー分野で周知である。例えば、宿主細胞は発酵バイオリアクター、振盪フラスコ、試験管、マイクロタイタープレートまたはペトリ皿にて培養すればよく、宿主細胞の培養は該細胞の生育に好適な条件下で行うとよい。条件としては培養温度、培地のpH値、培養物の溶解酸素濃度が挙げられる。
【0039】
本発明の好適な態様において、工程(a)は宿主細胞において発現可能なベクターへの遺伝子配列、第一の核酸配列および第二の核酸配列のクローニング、宿主細胞へのそうして形成された組換えベクターの移入によって行われる。
【0040】
本発明の別の好適な態様において、工程(a)は宿主細胞において発現可能なベクターへの遺伝子配列、第一の核酸配列および第二の核酸配列のそれぞれのクローニング、宿主細胞へのそうして形成されたそれぞれの組換えベクターの共移入によって行われる。
【0041】
本発明のさらに好適な態様において工程(a)は以下のサブ工程によって行われる:
(i)宿主細胞において発現可能であり、第一の核酸配列および第二の核酸配列を含む第一の組換えベクターを構築する工程;
(ii)宿主細胞において発現可能であり、遺伝子配列を含む第二の組換えベクターを構築する工程;および、
(iii)第一の組換えベクターおよび第二の組換えベクターを宿主細胞に移入する工程。
【0042】
本発明の好適な態様において、サブ工程(i)において構築される第一の組換えベクターはさらに、第一の核酸配列および第二の核酸配列の発現を制御するための誘導可能なプロモーター配列を含む。
【0043】
本発明の別の好適な態様において、サブ工程(i)において構築される第一の組換えベクターはさらに第一の核酸配列の発現を制御するための第一の誘導可能なプロモーター配列および第二の核酸配列の発現を制御するための第二の誘導可能なプロモーター配列を含み、ここで第一のプロモーター配列と第二のプロモーター配列は互いに異なるものである。
【0044】
本明細書において用いる「プロモーター配列」という語は一般にDNA ポリマーに存在する遺伝子の上流に位置するDNA 配列であって、該遺伝子のmRNAへの転写の開始部位を提供するものを意味する。本発明における使用に好適なプロモーター配列はウイルス、バクテリオファージ、原核細胞または真核細胞のいずれの由来のものであってもよく、構成的プロモーターでも誘導可能なプロモーターでもよい。
【0045】
本発明によると、選択された遺伝子産物をコードする遺伝子配列、チオレドキシンをコードする第一の核酸、およびヘモグロビンをコードする第二の核酸は独立にかつ作動可能にプロモーター、特に誘導可能なプロモーターに連結しているとよい。
【0046】
本明細書において用いる「作動可能に連結」という語は、第一の配列が第二の配列に十分に近くに配置され、第一の配列が第二の配列あるいは第二の配列の制御下の領域に影響を及ぼしうることを意味する。例えば、プロモーター配列は遺伝子配列に作動可能に連結していてよく、遺伝子配列の発現がプロモーター配列の制御下にあるように、通常、遺伝子配列の5’末端に位置する。さらに転写の促進におけるプロモーター配列の能力を増進させるために、調節配列をプロモーター配列に作動可能に連結してもよい。かかる場合において、調節配列は一般にプロモーター配列の5’末端に位置する。
【0047】
本発明における使用に好適なプロモーター配列は、好ましくは以下のいずれかの由来のものである:ウイルス、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞およびヒト細胞。例えば、細菌細胞において有用なプロモーターにはこれらに限定されないが、tac プロモーター、T7 プロモーター、T7 A1 プロモーター、lac プロモーター、trp プロモーター、trc プロモーター、araBAD プロモーター、およびλPRPL プロモーターが含まれる。植物細胞において有用なプロモーターは例えば、35S CaMV プロモーター、アクチンプロモーター、ユビキチンプロモーターなどである。哺乳類細胞における使用に好適な調節要素には、CMV-HSV チミジンキナーゼプロモーター、SV40、RSV-プロモーター、CMV エンハンサー、またはSV40 エンハンサーが含まれる。
【0048】
本発明の好適な態様において、チオレドキシンをコードする第一の核酸配列とヘモグロビンをコードする第二の核酸は第一のベクターにクローニングされ、一方、選択された遺伝子産物をコードする遺伝子配列は第二のベクターにクローニングされる。第一のベクターおよび第二のベクターはそれぞれ第一の核酸配列と第二の核酸の発現、および該遺伝子配列の発現を制御するための誘導可能なプロモーター配列を有する。
【0049】
本発明の好適な態様において、第一の組換えベクターにクローニングされる第一の核酸と第二の核酸の発現は同じプロモーター、例えば、tac プロモーター、T7 プロモーター、T7 A1 プロモーター、lac プロモーター、trp プロモーター、trc プロモーター、araBAD プロモーター、またはλPRPLプロモーター、そして好ましくはtac プロモーターに制御される。
【0050】
本発明の好適な態様において、第一の核酸配列および第二の核酸配列はチオレドキシンとヘモグロビンから形成される融合タンパク質をインフレームにコードするように構築される。
【0051】
別の好適な態様において、第一の核酸配列と第二の核酸は第一の組換えベクターにクローニングされ、これら2つの核酸配列は異なるプロモーターによって発現制御され、プロモーターは以下からなる群から独立に選択される:tac プロモーター、T7 プロモーター、T7 A1 プロモーター、lac プロモーター、trp プロモーター、trc プロモーター、araBAD プロモーター、およびλPRPL プロモーター。より好適な態様において、第一の組換えベクターは第一の核酸配列の発現制御のためにtac プロモーターを含み、第二の核酸配列の発現制御のためにT7 A1 プロモーターを含む。
【0052】
本発明における使用に好適なベクターには遺伝子操作技術において広く用いられているものが含まれ、例えば、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ウイルス、またはレトロウイルスなどが挙げられる。
【0053】
本発明における使用に好適なベクターにはその他の発現制御要素、例えば、転写開始部位、転写終結部位、リボゾーム結合部位、RNA スプライシング部位、ポリアデニル化部位、翻訳終結部位等を含めてもよい。本発明における使用に好適なベクターはさらなる調節要素、例えば、転写/翻訳エンハンサー配列および好適な条件下でのベクターのスクリーニングを可能とする少なくとも1つのマーカー遺伝子またはレポーター遺伝子を含んでいてもよい。本発明における使用に好適なマーカー遺伝子には、例えば、真核細胞培養に有用なジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子およびG418またはネオマイシン耐性遺伝子および大腸菌およびその他の細菌培養に有用なアンピシリン、ストレプトマイシン、テトラサイクリンまたはカナマイシン耐性遺伝子が挙げられる。本発明における使用に好適なベクターはさらに分泌シグナルをコードする核酸配列を含んでいてもよい。かかる配列は当業者に周知である。
【0054】
本明細書において用いる「発現ベクター」という語は、本発明による第一の核酸配列、第二の核酸配列、および遺伝子配列を宿主細胞においてインビトロまたはインビボで、構成的または誘導的に発現させることが出来るあらゆるらゆる組換え発現系を意味する。発現ベクターは直鎖状または環状形態のいずれの発現系であってもよく、エピソームとして残る発現系も宿主細胞ゲノムに組み込まれる発現系も含まれる。発現系は自己複製能を有していても有さなくてもよく、宿主細胞において一過性発現しかひきおこさないものであってもよい。
【0055】
本発明によると、「形質転換」という語は、かかる語が、外来核酸分子の選択された宿主細胞への導入という意味で用いられる場合、「形質移入」という語と互換的に用いられる。当該技術分野で公知の技術にしたがって、核酸分子(例えば、組換え DNA コンストラクトまたは組換えベクター)は選択された宿主細胞に様々な技術、例えば、リン酸カルシウム- または塩化カルシウム-媒介形質移入、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、パーティクルガン、リポソーム-媒介形質移入、細菌性バクテリオファージを用いた形質移入、レトロウイルスまたはその他のウイルス (例えば、ワクシニアウイルスまたは昆虫細胞のバキュロウイルス)を用いた形質導入、プロトプラスト融合、アグロバクテリウム-媒介形質転換、またはその他の方法によって導入することが出来る。
【0056】
用いるベクターおよび宿主細胞系に応じて、本発明により産生される組換え遺伝子産物(タンパク質)は、組換え細胞内に残ってもよく、培地に分泌されてもよく、周辺質に分泌されてもよく、あるいは細胞膜の外側表面に保持されてもよい。本発明による方法により産生された組換え遺伝子産物(タンパク質)は、様々な標準的タンパク質精製技術により精製するとよい。タンパク質精製技術には、これらに限定されないが、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過、電気泳動、逆相クロマトグラフィー、等電点電気泳動などが含まれる。本発明の方法により産生された組換え遺伝子産物(タンパク質)は好ましくは「実質的に純粋な」形態で回収される。本明細書において用いる、「実質的に純粋な」という語は、精製されたタンパク質を市販品として使用するのに有効であるような、精製されたタンパク質の純度を意味する。
【0057】
本発明によると、第一の核酸配列はチオレドキシンをコードする以下のいずれかの細胞の遺伝子由来である; 細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、およびヒト細胞。本発明の好適な態様において、第一の核酸配列は大腸菌のチオレドキシン遺伝子(trxA)由来である。
【0058】
本発明によると、第二の核酸配列は、ヘモグロビンまたはヘム-含有酸素キャリアタンパク質をコードする以下のいずれかの細胞の遺伝子由来である:細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、およびヒト細胞。本発明の好適な態様において、第二の核酸配列はビトレオシラ種のヘモグロビン遺伝子(vgb)由来である。
【0059】
本発明による方法を用いて、同種ポリペプチドまたは異種ポリペプチドを産生することができる。本発明の好適な態様において、本発明の方法により産生される遺伝子産物は以下からなる群から選択される: 酵素、例えば、β-ガラクトシダーゼ、エステラーゼおよびアスパルターゼ;医療用ポリペプチド、例えば、インターフェロン、インターロイキン、動物またはヒトホルモン; 抗原決定基;および抗体。好ましくは、遺伝子産物は以下の何れか由来の抗原決定基である: 病原性ウイルス、細菌またはその他の微生物、寄生虫または腫瘍細胞。
【0060】
本発明はまた、チオレドキシンをコードする第一の核酸配列、およびヘモグロビンをコードする第二の核酸配列を含む核酸コンストラクトを提供する。
【0061】
本発明の好適な態様において、核酸コンストラクトはさらに第一の核酸配列および第二の核酸配列の発現を制御するための誘導可能なプロモーター配列を含んでいてもよい。好ましくは、プロモーター配列は以下のいずれか由来である:ウイルス、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、およびヒト細胞。本発明によると、プロモーター配列は、tac プロモーター、T7 プロモーター、T7 A1 プロモーター、lac プロモーター、trp プロモーター、trc プロモーター、araBAD プロモーター およびλPRPL プロモーターからなる群から選択されるのがよく、好ましくは tac プロモーターである。
【0062】
本発明の好適な態様によると、第一の核酸配列および第二の核酸配列はチオレドキシンとヘモグロビンとから形成される融合タンパク質をコードするように連結される。
【0063】
本発明の好適な態様において、核酸コンストラクトはさらに第一の核酸配列の発現を制御するための第一の誘導可能なプロモーター配列および第二の核酸配列の発現を制御するための第二の誘導可能なプロモーター配列を含んでいてもよく、ここで、第一及び第二のプロモーター配列は互いに異なるものである。
【0064】
好ましくは、第一のプロモーター配列と第二のプロモーター配列は独立に以下由来のものである:ウイルス;細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞およびヒト細胞。本発明によると、第一のプロモーター配列および第二のプロモーター配列は独立に以下からなる群から選択される;tac プロモーター、T7 プロモーター、T7 A1 プロモーター、trp プロモーター、lac プロモーター、trc プロモーター、araBAD プロモーター、およびλPRPL プロモーター。本発明の好適な態様によると、第一のプロモーター配列はtac プロモーターであり、第二のプロモーター配列はT7 A1 プロモーターである。
【0065】
本発明はまた、上記核酸コンストラクトを含むベクターも提供する。本発明によると、ベクターはさらに以下の少なくとも1つを含んでいてもよい:マーカー遺伝子、レポーター遺伝子、抗生物質-耐性遺伝子、エンハンサー配列、選択された遺伝子産物をコードする遺伝子、ポリアデニル化部位、および調節配列。
【0066】
本発明はまた、選択された遺伝子産物を発現することが出来る組換え宿主細胞も提供し、該細胞は、選択された遺伝子産物をコードする遺伝子配列、チオレドキシンをコードする第一の核酸配列、およびヘモグロビンをコードする第二の核酸配列を含む。
【0067】
本発明の好適な態様において、遺伝子配列、第一の核酸配列および第二の核酸配列は共に宿主細胞において発現可能なベクターに担持される。本発明の別の好適な態様において、遺伝子配列、第一の核酸配列および第二の核酸配列は別々に宿主細胞において発現可能なベクターに担持される。本発明の更に別の好適な態様において、第一の核酸配列および第二の核酸配列は共に宿主細胞において発現可能な第一のベクターに担持され、遺伝子配列は宿主細胞において発現可能な第二のベクターに担持される。
【0068】
本発明によると、第一のベクターはさらに第一の核酸配列および第二の核酸配列の発現を制御するための誘導可能なプロモーター配列を含んでいてもよい。プロモーター配列は以下のいずれかの由来のものがよい:ウイルス、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、およびヒト細胞。好ましくは、プロモーター配列は、tac プロモーター、T7 プロモーター、T7 A1 プロモーター、lac プロモーター、trp プロモーター、trc プロモーター、araBAD プロモーターおよびλPRPL プロモーターからなる群から選択され、好ましくは tac プロモーターである。
【0069】
本発明の好適な態様において、組換え宿主細胞の中における第一の核酸配列および第二の核酸配列はチオレドキシンとヘモグロビンとから形成される融合タンパク質をコードするよう連結される。
【0070】
本発明の好適な態様において、組換え宿主細胞の中における第一のベクターはさらに第一の核酸配列の発現を制御するための第一の誘導可能なプロモーター配列および第二の核酸配列の発現を制御するための第二の誘導可能なプロモーター配列を含んでいてもよく、ここで、第一および第二のプロモーター配列は互いに異なるものである。
【0071】
本発明によると、第一のプロモーター配列および第二のプロモーターは独立に以下のいずれか由来である:ウイルス、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、およびヒト細胞。好ましくは、第一のプロモーター配列および第二のプロモーター配列は独立に、tac プロモーター、T7 プロモーター、T7 A1 プロモーター、lac プロモーター、trp プロモーター、trc プロモーター、araBAD プロモーター、およびλPRPL プロモーターからなる群から選択される。本発明の好適な態様において、第一のプロモーター配列はtac プロモーターであり、第二のプロモーターはT7 A1 プロモーターである。
【0072】
本発明によると、組換え宿主細胞の中における第一のベクターはさらにマーカー遺伝子、レポーター遺伝子、抗生物質-耐性遺伝子、エンハンサー配列、ポリアデニル化部位、または調節配列を含んでいてもよい。
【0073】
本発明の好適な態様において、第一の核酸配列および第二の核酸配列は宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれる。
【0074】
本発明による組換え宿主細胞は、選択された同種または異種ポリペプチドを産生することができる。本発明の好適な態様において、組換え宿主細胞は以下からなる群から選択される遺伝子産物を産生する: 酵素、例えば、β-ガラクトシダーゼ、エステラーゼ、およびアスパルターゼ;医療用ポリペプチド、例えば、インターフェロン、インターロイキン、動物またはヒトホルモン; 抗原決定基または抗体。好ましくは、遺伝子産物は以下のいずれか由来の抗原決定基である:病原性ウイルス、細菌またはその他の微生物、寄生虫および腫瘍細胞。
【0075】
本発明によると、組換え宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、およびヒト細胞からなる群から選択される。本発明の好適な態様において、組換え宿主細胞は大腸菌細胞である。
【0076】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明する。しかし、以下の実施例は単に例示の目的であり、本発明を限定する意図のものではないことを理解されたい。
【実施例】
【0077】
一般的実験方法および材料:
本発明において用いるDNAクローニングの実験方法及び関連技術、例えば、制限酵素によるDNA切断反応、T4 DNAリガーゼによるDNAライゲーション、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、アガロースゲル電気泳動、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (SDS-PAGE)、ウェスタンブロッティングおよびプラスミド形質転換等に関して、当該技術分野において広く知られているテキストを参照されたい:Sambrook J、Russell DW (2001) Molecular Cloning: a Laboratory Manual、3rd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York。かかる技術は専門知識と経験に基づいて当業者によって容易に実施できる。例えば、以下に記載する実施例において、塩化カルシウム-処理されたコンピテント細胞を用いてプラスミド形質転換を行った。さらに、細胞密度は波長550 nm において分光光度計 (V530、Jasco)を用いて測定し、得られた吸光度をOD550として記録した。タンパク質濃度分析はタンパク質アッセイ試薬 (BioRad Co.)を用いて行い、画像解析機 (GAS9000、UVItec)を用いて電気泳動ゲル上のタンパク質含量を測定した。
【0078】
染色体、プラスミドおよびDNA断片はそれぞれ以下の市販の精製キットを用いて精製した:Wizard(登録商標)ゲノムDNA精製キット(Promega Co.)、QIAprep(登録商標)Spin Miniprep キット(Qiagen Co.)および NucleoSpin(登録商標)核酸精製キット(Clontech Co.)。
【0079】
制限酵素、T4 DNA リガーゼ、およびPfu DNA ポリメラーゼはすべて、New England Biolabsから購入した。ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)に用いたプライマーは、Mission Biotech Co. (Taipei、Taiwan、R.O.C.)によって合成した。ビトレオシラヘモグロビン検出用一次抗体はAbnova Taiwan Co. (Taipei、Taiwan、R.O.C.)によって調製した。チオレドキシン検出用の一次抗体および二次抗体(即ち、セイヨウワサビペルオキシダーゼ-結合ヤギ抗-ウサギIgG)およびその他の化学物質は、Sigma Chemical Coから購入した。
【0080】
(実施例1)
ビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子(vgb)およびチオレドキシン構造遺伝子(trxA)を含有する発現プラスミドの構築
実験材料:
大腸菌株 XL1-Blue (Stratagene Co.)をDNAクローニングプロセスにおける中間細胞として用いた。細菌細胞を37℃でLuria-Bertani (LB)培地(Miller、J.H. (1972)、Experiments in Molecular Genetics、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY)で培養した。その後、形質転換大腸菌細胞を抗生物質を追加した培地で培養した。培地中に用いた抗生物質の量は、ストレプトマイシン15 μg/mL 、 アンピシリン50μg/mLであった。
【0081】
ビトレオシラ種(マレー(Murray)株番号. 389)をDr. Webster (Department of Biology、Illinois Institute of Technology、Chicago、USA)から譲り受けた。細菌細胞を30℃で1.5% イーストエクストラクト、1.5% ペプトン、および0.02% 酢酸ナトリウムを含有する培地で培養した。
【0082】
A. ビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子(vgb)を担持する組換えプラスミドpGB-VHbの構築
T7 A1 プロモーターの制御下にビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子(vgb)を担持する組換えプラスミドpGB-VHb を以下のように構築した:
【0083】
以下の2つのプライマーをビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子(vgb) のヌクレオチド配列に基づいて合成した(Khosla C、Bailey JE. (1988)、Mol Gen Genet.、214:158-161):
フォワードプライマー
5’-aagggatccatgttagaccagcaaacc-3’(配列番号1)リバースプライマー
5’-atagtcgacccaagttttggcaacagc-3’(配列番号2)
【0084】
上記2つのプライマーは制限酵素 BamHIまたはSalI の切断部位を有するようそれぞれ設計した(下線部参照)。
【0085】
ビトレオシラ染色体をWizard(登録商標)ゲノムDNA精製キットを用いて精製し、上記2つのプライマーを用いるPCR 反応のテンプレートとして用い、ビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子(vgb)を含むDNA断片 (0.55 kb)を増幅した。その後、増幅したDNA断片をNucleoSpin(登録商標)核酸精製キットを用いて精製した後、制限酵素 BamHI/SalIを用いて切断した。その結果得られた切断産物をBamHI/SalIで切断したプラスミドpUHE21-2に組み込み(図1に示す。このプラスミドはDr. Bujard、Heidelbrg University、Germanyから譲り受けたものであり、アンピシリン耐性遺伝子、pMB1 複製起点、T7 A1 プロモーター、制限酵素 ScaIの切断部位およびマルチクローニングサイトを含む)、「pUHE-VHb」と称されるプラスミドを得た。
【0086】
その後、リボゾーム結合部位およびビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子(vgb)を有するDNA断片をプラスミドpUHE-VHbから制限酵素 EcoRI/HindIIIを用いて切り出し、その後、EcoRI/HindIIIで切断したプラスミドpA199A-2にライゲーションして(図2に示す。このプラスミドは、アンピシリン耐性遺伝子、pMB1 複製起点、lacI 遺伝子、T7 A1 プロモーターおよびマルチクローニングサイトを含む)(Y.-P. Chao et al. (2003)、Biotechnol Prog. 19: 1076-1080)、「pA1A2-VHb」と称されるプラスミドを得た。
【0087】
最後に、lacI 遺伝子、T7 A1 プロモーターおよびビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子(vgb) を含むDNA断片を制限酵素 NruI/HindIIIを用いてプラスミドpA1A2-VHbから切り出し、その後SmaI/HindIIIで切断したプラスミドpGB2に組込み(図3に示す。このプラスミドは、ストレプトマイシン耐性遺伝子、pSC101 複製起点およびマルチクローニングサイトを含む)(G. Churchward et al. (1984)、Gene、31:165-171)、「pGB-VHb」と称され、図4に示す構造を有するプラスミドを得た。
【0088】
プラスミドpGB-VHbをMission Biotech Co. (Taipei、Taiwan、R.O.C.)による配列決定分析にかけた結果、T7 A1 プロモーターの核酸配列とビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子(vgb)の核酸配列がプラスミドpGB-VHbに含まれていることが確認された。
【0089】
B. チオレドキシン構造遺伝子(trxA)を担持する組換えプラスミドpGB-Trxの構築
【0090】
tac プロモーターの制御下にチオレドキシン構造遺伝子(trxA)を担持するプラスミドpGB-Trxを以下のようにして構築した:
【0091】
以下の2つのプライマーをチオレドキシン構造遺伝子(trxA)のヌクレオチド配列に基づいて合成した(C. J. Lim et al. (1985)、J Bacteriol.、163:311-316):
フォワードプライマー
5’-ccgaattcaaccacacctatggtgtatgc-3’(配列番号3)
リバースプライマー
5’-ggggatccgctgcaaggcgattaag-3’(配列番号4)。
【0092】
上記2つのプライマーはそれぞれ制限酵素 EcoRIまたはBamHI (下線部参照)の切断部位を含むように設計した。
【0093】
プラスミドpTrx (Invitrogen Co.)をQIAprep(登録商標)Spin Miniprep キットを用いて精製し、上記2つのプライマーを用いるPCR 反応のテンプレートとして用い、チオレドキシン構造遺伝子(trxA)を含むDNA断片 (0.58 kb)を増幅した。
【0094】
その後、増幅したDNA断片をNucleoSpin(登録商標)核酸精製キットを用いて精製し、次いで制限酵素EcoRI/BamHIで切断した。その結果得られた切断産物をEcoRI/BamHIで切断したプラスミドpJF118EHに組込み (図5に示す。このプラスミドは、アンピシリン耐性遺伝子、pBR322 複製起点、lacIq 遺伝子、tac プロモーター、およびマルチクローニングサイトを含む)(J.P. Furste et al. (1986)、Gene、48:119-131)、「pJF-Trx」と称されるプラスミドを得た。
【0095】
最後に、lacIq 遺伝子、tac プロモーターおよびチオレドキシン構造遺伝子(trxA)を含むDNA断片をプラスミドpJF-Trxから制限酵素NruI/HindIIIを用いて切り出し、次いでSmaI/HindIII で切断したプラスミドpGB2に組込み、「pGB-Trx」と称され、図6に示す構造を有するプラスミドを得た。
【0096】
プラスミドpGB-TrxをMission Biotech Co. (Taipei、Taiwan、R.O.C.)によって行う配列決定分析にかけ、tac プロモーターのヌクレオチド配列およびチオレドキシン構造遺伝子(trxA)のヌクレオチド配列がプラスミドpGB-Trxに含まれていることを確認した。
【0097】
C. ビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子(vgb)と融合したチオレドキシン構造遺伝子(trxA)を担持する組換えプラスミドpGB-TV1の構築
tac プロモーターの制御下にビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子(vgb)と融合したチオレドキシン構造遺伝子(trxA)を担持するプラスミドpGB-TV1を以下のようにして構築した:
【0098】
ビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子(vgb)を含むDNA断片を上記工程Aにて得たプラスミドpUHE-VHbから制限酵素BamHI/HindIIIを用いて切り出し、BamHI/HindIIIで切断したプラスミドpKF3 (Takara Shuzo Co.)に組込み、「pKF-VHb」と称されるプラスミドを得た。
【0099】
次いで、ビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子(vgb)を含むDNA断片をプラスミドpKF-VHbから制限酵素BamHI/SacIを用いて切り出し、次いでBamHI/SacIで切断したプラスミドpBluescript II-SK (Stratagene Co.)に組込み、「pBlue-VHb」と称されるプラスミドを得た。
【0100】
その後、全長ビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子(vgb)を含むDNA断片をプラスミドpBlue-VHbから制限酵素SmaI/PstIを用いて切り出し、次いでSmaI/PstIで切断したプラスミドpJF-TrxFus (図7に示すように、アンピシリン耐性遺伝子、pBR322 複製起点、lacIq 遺伝子、tac プロモーター、制限酵素 NruIの切断部位およびマルチクローニングサイト、ならびにtac プロモーターの下流に位置する終止コドンを有さないチオレドキシン構造遺伝子を含む)(Y.-P. Chao et al. (2000)、Appl. Microbiol. Biotechnol.、54: 348-353)に組込み、「pJF-Trx/VHb」と称されるプラスミドを得た。
【0101】
最後に、lacIq 遺伝子、tac プロモーター、およびビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子(vgb)に融合したチオレドキシン構造遺伝子(trxA)を含むDNA断片をプラスミドpJF-Trx/VHbから制限酵素NruI/HindIIIを用いて切り出し、SmaI/HindIII で切断したプラスミドpGB2に組込み、「pGB-TV1」と称され、図8に示す構造を有するプラスミドを得た。
【0102】
プラスミドpGB-TV1をMission Biotech Co. (Taipei、Taiwan、R.O.C.)によって行う配列決定分析にかけた結果、tac プロモーターの核酸配列およびビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子(vgb)に融合したチオレドキシン構造遺伝子(trxA)から構成される核酸配列がプラスミドpGB-TV1に含まれていることが確認された。
【0103】
D. チオレドキシン構造遺伝子(trxA)およびビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子(vgb)を担持する組換えプラスミドpGB-TV2の構築
それぞれT7 A1 プロモーターおよびtac プロモーターの制御下にビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子(vgb)およびチオレドキシン構造遺伝子(trxA)を担持するプラスミドpGB-TV2を以下のようにして構築した:
【0104】
T7 A1 プロモーターおよび全長ビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子(vgb)を含むDNA断片を上記工程A において得たプラスミドpUHE-VHbから制限酵素 ScaI/HindIIIを用いて切り出し、lacIq 遺伝子、tac プロモーターおよび全長チオレドキシン構造遺伝子(trxA) を含むDNA断片を上記工程Bで得たプラスミドpJF-Trxから制限酵素NruI/BamHIを用いて切り出した。次いで、これら2つのDNA断片をBamHI/HindIII で切断したプラスミドpGB2に組込み、「pGB-TV2」と称され、図9に示す構造を有するプラスミドを得た。
【0105】
プラスミドpGB-TV2をMission Biotech Co. (Taipei、Taiwan、R.O.C.)によって行う配列決定分析にかけた結果、こうして得られたプラスミドは図9に示すベクター構造を有することが確認された。図9において、ビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子(vgb)がT7 A1 プロモーターの下流に位置し、チオレドキシン構造遺伝子(trxA)がtac プロモーターの下流に位置する。
【0106】
(実施例2)
チオレドキシン、ビトレオシラヘモグロビン、およびチオレドキシンとビトレオシラヘモグロビンとの融合タンパク質の産生
前述の「一般的実験方法」の節に記載のプラスミド形質転換方法にしたがって、大腸菌株 BL21(DE3)(Novagen Co.) の細菌細胞を実施例1において得た4つの組換えプラスミド、pGB-VHb、pGB-Trx、pGB-TV1およびpGB-TV2でそれぞれ形質転換し、4つの組換え大腸菌株BL21(DE3)/pGB-VHb、BL21(DE3)/pGB-Trx、BL21(DE3)/pGB-TV1 および BL21(DE3)/ pGB-TV2をそれぞれ得た。
【0107】
上記組換え株のコロニーを別々に固体アガープレートから選抜し、15μg/mLのストレプトマイシンを含有する5 mLのLB 培地に接種し、37℃で一晩培養した。その後、一晩培養した様々な組換え株の細胞をそれぞれ20 mLのLB 培地 (15 μg/mLのストレプトマイシン含有)を含む250-mL フラスコに接種した。初期細胞密度が0.05 (OD550)に達すると、新たに接種した細菌培養物を37℃の一定温度に設定し、回転速度250 rpmの振盪インキュベーターで培養した。細胞密度が約0.3 (OD550)に達すると、様々な濃度のIPTGを異なる組換え株の個々の細菌培養物に添加し、培養されている組換え大腸菌細胞の組換えタンパク質産物の産生を誘導した。
【0108】
誘導剤の添加の4時間後、細菌細胞を遠心分離によって回収し、フレンチプレス(Thermo Spectronic、NY) で破砕し、次いで冷却(freeze)遠心機を用いて分離した。その後、回収した上清をタンパク質アッセイ試薬 (BioRad Co.)を用いたタンパク質分析にかけ、そのタンパク質濃度を測定し、ウェスタンブロッティングによる免疫検出を行って産生された組換えタンパク質の収量を測定した。
【0109】
ウェスタンブロッティングは前述の「一般的実験方法」の節に記載にしたがって行った。収集したサンプル (それぞれ20μgのタンパク質を含む)を順に15% ポリアクリルアミドゲルにローディングして電気泳動にかけた。電気泳動後、ゲル上で分離したタンパク質をElectrophoretic Transfer Cell (BioRad)を用いて定電流300 mA で3時間、ニトロセルロースメンブレンにトランスファーした。こうしてトランスファーされたニトロセルロースメンブレンを室温で3時間の一次抗体を用いた結合処理にかけ、次いで1% ゼラチンを含有するリンスバッファーを用いて2回すすいだ。次いで、ニトロセルロースメンブレンを二次抗体を含む溶液に浸漬し、室温で1時間振盪し、1% ゼラチンを含有するリンスバッファーを用いて2回すすいだ。その後、ニトロセルロースメンブレンを9 mgの4-クロロ-1-ナフトールを含有する現像溶液に着色したバンドが現れるまで浸漬した。ニトロセルロースメンブレンを取り出し、脱イオン水で洗浄して着色-現像反応を停止した。
【0110】
図10は、ビトレオシラヘモグロビンに対する一次抗体を用いたIPTG-誘導組換え大腸菌株 BL21(DE3)/pGB-VHb によって産生されたビトレオシラヘモグロビンの免疫検出を示すウェスタンブロットであり、ここで、レーン1:タンパク質標準 (ProSieve(登録商標) Color Protein Marker、Cambrex BioScience); レーン2: IPTG誘導無しの株のタンパク質サンプル;レーン3: 30 μMのIPTGで誘導された株のタンパク質サンプル; レーン4: 100μMのIPTGで誘導された株のタンパク質サンプル; レーン5:500μMのIPTGで誘導された株のタンパク質サンプル;であり、矢印はビトレオシラヘモグロビンの位置を示す。
【0111】
図11はチオレドキシンに対する一次抗体を用いたIPTG-誘導組換え大腸菌株 BL21(DE3)/pGB-Trxによって産生されたチオレドキシンの免疫検出を示すウェスタンブロットであり、ここで、レーン1:タンパク質標準 (ProSieve(登録商標)Color Protein Marker、Cambrex BioScience); レーン2: IPTG誘導無しの株のタンパク質サンプル;レーン3:30 μMのIPTGで誘導された株のタンパク質サンプル;レーン4:100μMのIPTGで誘導された株のタンパク質サンプル;レーン5:500μMのIPTGで誘導された株のタンパク質サンプル; であり、矢印はチオレドキシンの位置を示す。
【0112】
図12はチオレドキシンに対する一次抗体を用いたIPTG-誘導組換え大腸菌株 BL21(DE3)/pGB-TV1によって産生されるチオレドキシンとビトレオシラヘモグロビンとの融合タンパク質の免疫検出を示すウェスタンブロットであり、ここで、レーン1:タンパク質標準 (ProSieve(登録商標) Color Protein Marker、Cambrex BioScience); レーン2: IPTG誘導無しの株のタンパク質サンプル; レーン3: 30 μMのIPTGで誘導された株のタンパク質サンプル; レーン4: 100μMのIPTGで誘導された株のタンパク質サンプル; レーン5: 500μMのIPTGで誘導された株のタンパク質サンプル;であり、矢印はチオレドキシンとビトレオシラヘモグロビンとの融合タンパク質の位置を示す。
【0113】
図13はチオレドキシンに対する一次抗体を用いた、IPTG-誘導組換え大腸菌株 BL21(DE3)/pGB-TV2によって産生されたチオレドキシンの免疫検出を示すウェスタンブロットであり、ここで、レーン1:タンパク質標準 (ProSieve(登録商標) Color Protein Marker、Cambrex BioScience); レーン2: IPTG誘導無しの株のタンパク質サンプル; レーン3: 30 μMのIPTGで誘導された株のタンパク質サンプル; レーン4: 100μMのIPTGで誘導された株のタンパク質サンプル; レーン5: 500μMのIPTGで誘導された株のタンパク質サンプル;であり、矢印はチオレドキシンの位置を示す。
【0114】
図14はビトレオシラヘモグロビンに対する一次抗体を用いたIPTG-誘導組換え大腸菌株 BL21(DE3)/pGB-TV2によって産生されたビトレオシラヘモグロビンの免疫検出を示すウェスタンブロットであり、ここで、レーン1:タンパク質標準 (ProSieve(登録商標) Color Protein Marker、Cambrex BioScience); レーン2:IPTG誘導無しの株のタンパク質サンプル; レーン3:30 μMのIPTGで誘導された株のタンパク質サンプル; レーン4: 100μMのIPTGで誘導された株のタンパク質サンプル; レーン5: 500μMのIPTGで誘導された株のタンパク質サンプル;であり、矢印はビトレオシラヘモグロビンの位置を示す。
【0115】
図10-14から、組換えタンパク質の産生はIPTGで誘導しなかった組換え株においては検出できないということが理解される。誘導のためのIPTGの添加後、組換え株は組換えタンパク質を産生するよう誘導され、産生されたタンパク質の量は、誘導剤の量の増加にともなって増加する。かかる結果は本発明によって形質転換された組換え大腸菌株がチオレドキシン、ビトレオシラヘモグロビン、またはチオレドキシンとビトレオシラヘモグロビンとの融合タンパク質を産生することが出来ることを示す。さらに、これら組換え大腸菌株によって産生された組換えタンパク質の収量はIPTG 濃度を変えることによって制御することが出来る。
【0116】
(実施例3)
異種タンパク質-ヒトインターフェロンα2の産生における形質転換大腸菌細胞の使用
T7 プロモーターの制御下にヒトインターフェロンα2構造遺伝子を担持するプラスミドpET-IFNを以下のようにして構築した:
【0117】
以下の2つのプライマーをヒトインターフェロンα2構造遺伝子のヌクレオチド配列に基づいて合成した(E. Austruy et al. (1998)、Cancer Gene Ther.、5:247-256):
フォワードプライマー
5’-tgctctcatatgttg atctgcctcaaac-3’(配列番号5)
リバースプライマー
5’-cgtgctcgag ttattattccttacttcttaaac-3’(配列番号6)
【0118】
上記2つのプライマーはそれぞれ制限酵素 NdeIまたは XhoI (下線部参照)の切断部位を有するように設計した。
【0119】
プラスミドpET22b(+)(Novagen Co.)由来であって、ヒトインターフェロンα2 遺伝子を担持するプラスミドpIFN2A (the National Health Institute のProfessor Hsu Ju Anより譲り受けた)をQIAprep(登録商標) Spin Miniprep キットを用いて精製し、上記2つのプライマーを用いたPCR 反応におけるテンプレートとして使用し、ヒトインターフェロンα2構造遺伝子(INFα2)を含むDNA断片を増幅した。
【0120】
その後、増幅したDNA断片をNucleoSpin(登録商標)核酸精製キットで精製し、次いで制限酵素NdeI/XhoIで切断した。その結果得られた切断産物をプラスミドpET22b (Novagen Co.)に組込み、「pET-IFN」と称され、図15 に示す構造を有するプラスミドを得た。
【0121】
前述の「一般的実験方法」の節に記載のプラスミド形質転換方法にしたがって、大腸菌株 Rosetta(DE3)(Novagen Co.)の細菌細胞をプラスミドpET-IFNと共にそれぞれプラスミド、pGB2、pGB-VHb、pGB-TrxおよびpGB-TV1で形質転換し、4つの組換え大腸菌株、即ち、 Rosetta(DE3)/pET-IFN/pGB2、Rosetta(DE3)/pET-IFN/pGB-VHb、Rosetta(DE3)/pET-IFN/pGB-TrxおよびRosetta(DE3)/pET-IFN/pGB-TV1をそれぞれ得た。これら組換え株を実施例2に記載の方法に実質的にしたがって培養したが、ただし、培地に前述の「一般的実験方法」に記載の量のストレプトマイシンとアンピシリンの両方を添加した。
【0122】
細胞密度が約 0.3 (OD550)に達すると、新たに接種した細菌培養物に500μMのIPTGを添加して培養中の組換え大腸菌細胞による組換えタンパク質産物の産生を誘導した。細菌細胞がほぼ初期定常増殖期の段階に達すると(誘導剤の添加の6 時間後)、細菌細胞を遠心分離により回収し、産生された組換えタンパク質の量をタンパク質電気泳動 (即ち、ドデシル硫酸ナトリウム- ポリアクリルアミドゲル電気泳動、SDS-PAGE)により測定した。
【0123】
SDS-PAGEは前述の「一般的実験方法」の節の記載にしたがって行った。収集した細胞を沸騰水で3分間煮沸し、次いで冷却遠心機で分離した。回収した上清をタンパク質アッセイ試薬 (BioRad Co.)を用いたタンパク質分析にかけ、そのタンパク質濃度を測定した。収集した上清 (20μgのタンパク質を含有)のサンプルを順に電気泳動のために15% ポリアクリルアミドゲルにローディングし、次いで画像解析機 (GAS9000、UVItec)を用いて検出して、電気泳動ゲル上のタンパク質含量を定量した。得られた実験結果を表1に示す。
【0124】
【表1】

【0125】
発酵の最後に、ヒトインターフェロンα2を産生するよう誘導しなかったコントロール株 Rosetta(DE3)/pET-IFN/pGB2の細胞密度は4.0 (OD550)に達した。しかしヒトインターフェロンα2の産生誘導のためにIPTGを添加するとコントロール株、即ちビトレオシラヘモグロビンもチオレドキシンも産生しない株 Rosetta(DE3)/pET-IFN/pGB2 の増殖はただちに抑制された。この細胞増殖抑制現象は、ヒトインターフェロンα2を産生するよう誘導されたビトレオシラヘモグロビン-産生株 Rosetta(DE3)/pET-IFN/pGB-VHb においても起こった。最後に、これら2つの株の細胞密度はそれぞれ1.54 (OD550)および1.36 (OD550)に達した。
【0126】
しかし、IPTGによる誘導後、チオレドキシン-産生株 Rosetta(DE3)/pET-IFN/pGB-Trx とチオレドキシンとビトレオシラヘモグロビンとの融合タンパク質を産生する株 Rosetta(DE3)/pET-IFN/pGB-TV1はともにヒトインターフェロンα2を産生するよう誘導されたコントロール株 Rosetta(DE3)/pET-IFN/pGB2と比較して70%の増殖の上昇を示し、それらの最終細胞密度はおよそ2.65 (OD550)に達した。
【0127】
さらに図16のタンパク質電気泳動図は、ビトレオシラヘモグロビンもチオレドキシンも産生しないコントロール株 Rosetta(DE3)/pET-IFN/pGB2と比較して、ビトレオシラヘモグロビン-産生株 Rosetta(DE3)/pET-IFN/pGB-VHbによって産生されるヒトインターフェロンα2の収量は53%減少し、チオレドキシン-産生株 (Rosetta(DE3)/pET-IFN/pGB-Trx) によって産生されるヒトインターフェロンα2の収量も同様に35%減少した。一方、チオレドキシンとビトレオシラヘモグロビンとの融合タンパク質を産生する株 Rosetta(DE3)/pET-IFN/pGB-TV1においては産生されたヒトインターフェロンα2の収量はコントロール株に匹敵するものであった。コントロール株と比較して、チオレドキシン-産生株 Rosetta(DE3)/pET-IFN/pGB-Trx によって産生されたヒトインターフェロンα2の量は減少していた。観察されたこの株によって産生されるヒトインターフェロンα2の量の減少は、そのより良好な細胞増殖の原因である可能性がある。
【0128】
結論として、ヒトインターフェロンα2を産生するようにIPTGで誘導されなかったコントロール株 (Rosetta(DE3)/pET-IFN/pGB2)と比較して、誘導されたコントロール株の増殖はかなり抑制された。しかし、誘導されたコントロール株と比較して、チオレドキシンとビトレオシラヘモグロビンとの融合タンパク質を産生する株 (Rosetta(DE3)/pET-IFN/pGB-TV1)は、同量のヒトインターフェロンα2を産生することができ、その細胞密度は70%上昇した。これはビトレオシラヘモグロビン遺伝子と融合したチオレドキシン遺伝子を担持するベクターは、それによって形質転換された宿主細胞に組換えタンパク質産物、例えばヒトインターフェロンの過剰発現に起因する毒作用を軽減する能力を与えるようになることを示す。
【0129】
(実施例4)
異種タンパク質 - シュードモナス・シトロネロリス(Pseudomonas citronellolis)エステラーゼの産生における形質転換大腸菌細胞の使用
本出願人らの以前の研究において、シュードモナス・シトロネロリス・エステラーゼ遺伝子の発現を制御するためにT7 プロモーターを含有するプラスミドpET-estII (図17) が調製されている(Y.P. Chao et al. (2003)、Res. Microbiol.、154:521-526)。
【0130】
前述の「一般的実験方法」の節に記載のプラスミド形質転換方法にしたがって、大腸菌株 BL21(DE3)の細菌細胞をそれぞれプラスミドpET-estIIと共にプラスミド、pGB2、pGB-VHb、pGB-Trx、pGB-TV1、および pGB-TV2で形質転換し、5つの組換え大腸菌株、即ち、 BL21(DE3)/pET-estII/pGB2、BL21(DE3)/pET-estII/pGB-VHb、BL21(DE3)/pET-estII/pGB-Trx、BL21(DE3)/pET-estII/pGB-TV1およびBL21(DE3)/pET-estII/pGB-TV2をそれぞれ得た。
【0131】
実施例3に記載の方法にしたがってこれら組換え株の培養を行った。細胞密度が約 0.3 (OD550)に達すると、新たに接種した細菌培養物に300μMのIPTGを添加し、培養中の組換え大腸菌細胞による組換えタンパク質産物の産生を誘導した。誘導剤の添加の6 時間後(即ち、発酵9 時間)、細菌細胞を遠心分離によって回収し産生されたエステラーゼの活性に関する検出を行った。
【0132】
シュードモナス・シトロネロリス・エステラーゼの活性の検出は本出願人らの以前の論文に報告されている方法に基づいて行った(Y.P. Chao et al. (2003)、Res. Microbiol.、154:521-526)。実質的には、回収した細菌細胞を高圧ホモジナイザー(フレンチプレス、USA)を用いて破砕し、冷却遠心機を用いて分離した。回収した上清をタンパク質アッセイ試薬 (BioRad Co.)を用いたタンパク質分析にかけ、そのタンパク質濃度を測定した。400μLの反応溶液 (100 mM リン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.4)、0.1% アラビアゴムおよび0.4% Triton X-100含有)に、6 μLの細胞上清と10 mMのパラ−ニトロフェノールアセテートを添加した。反応は室温で行い、反応生成物の収量を経時的に記録した。記録は反応混合物の波長410 nmでの吸光度を検出することにより行い、それに基づいて、この酵素の比活性 (U/mg)を算出した。酵素活性単位 (U)は、1分あたり1 μmoleの生成物の遊離を触媒する酵素量として規定した。得られた実験結果を表2に示す。
【0133】
【表2】

【0134】
この実験から発酵の最後において、エステラーゼを産生するよう誘導されなかったコントロール株 BL21(DE3)/pET-estII/pGB2の細胞密度は5.2 (OD550)に達したということが理解される。しかし、IPTGによるエステラーゼ産生の誘導後、コントロール株、即ち、ビトレオシラヘモグロビンもチオレドキシンも産生しない株 BL21(DE3)/pET-estII/pGB2の増殖は直ちに抑制された。この細胞増殖抑制現象はエステラーゼを産生するよう誘導された際に、ビトレオシラヘモグロビン-産生株 BL21(DE3)/pET-estII/pGB-VHbにおいても起こった。最後に、これら2つの株の細胞密度はそれぞれ1.7 (OD550)にしか達さなかった。
【0135】
しかし、IPTGによる誘導後、チオレドキシン-産生株 BL21(DE3)/pET-estII/pGB-Trx、ビトレオシラヘモグロビンとチオレドキシンの両方を産生する株 BL21(DE3)/pET-estII/pGB-TV2 およびチオレドキシンとビトレオシラヘモグロビンとの融合タンパク質を産生する株 BL21(DE3)/pET-estII/pGB-TV1はすべて、エステラーゼを産生するよう誘導されたコントロール株 BL21(DE3)/pET-estII/pGB2と比較して110-150%の増殖の増加を示し、それらの最終細胞密度は、4.2 (OD550)、3.5 (OD550)および3.7 (OD550)にそれぞれ達した。
【0136】
表2に示す酵素産生結果から、IPTG 誘導後、ビトレオシラヘモグロビンもチオレドキシンも産生しないコントロール株 BL21(DE3)/pET-estII/pGB2ではエステラーゼ比活性が15.5 U/mgに達し、ビトレオシラヘモグロビンを産生した株 BL21(DE3)/pET-estII/pGB-VHbでは、エステラーゼ比活性が11.5 U/mgに達したということが理解される。ビトレオシラヘモグロビンとチオレドキシンを産生した株 BL21(DE3)/pET-estII/pGB-TV2 またはチオレドキシンとビトレオシラヘモグロビンとの融合タンパク質を産生する株 BL21(DE3)/pET-estII/pGB-TV1については、そのエステラーゼ比活性はそれぞれ15.5 U/mgおよび15 U/mgに達し、両方の値はIPTG 誘導後のコントロール株 BL21(DE3)/pET-estII/pGB2に匹敵する。
【0137】
コントロール株と比較して、チオレドキシン-産生株 BL21(DE3)/pET-estII/pGB-Trxのエステラーゼ産生は60%減少した(酵素比活性 は 6 U/mgにしか達さなかった)。観察されたこの株によって産生されたエステラーゼ量の減少は、そのよりよい細胞増殖の原因である可能性がある。
【0138】
結論として、エステラーゼを産生するよう誘導されていないコントロール株 BL21(DE3)/pET-estII/pGB2と比較して、誘導したコントロール株の増殖はかなり抑制された。しかし、誘導したコントロール株と比較して、ビトレオシラヘモグロビンとチオレドキシンの両方を産生する株 BL21(DE3)/pET-estII/pGB-TV2 またはチオレドキシンとビトレオシラヘモグロビンとの融合タンパク質を産生する株 BL21(DE3)/pET-estII/pGB-TV1は同程度の量のエステラーゼを産生することができ、それらの細胞密度は110%以上増加した。これは、ビトレオシラヘモグロビンとチオレドキシンの両方の産生またはチオレドキシンとビトレオシラヘモグロビンとの融合タンパク質の産生により、形質転換組換え宿主細胞に、組換えタンパク質産物、例えば、シュードモナス・シトロネロリス・エステラーゼの過剰発現に起因する毒作用を軽減する能力が付与されることを示す。
【0139】
(実施例5)
同種タンパク質-アスパルターゼの産生における形質転換大腸菌細胞の使用
T7A1 プロモーターの制御下に大腸菌アスパルターゼ遺伝子を担持するプラスミドpA1-AspAを以下のようにして構築した:
【0140】
以下の2つのプライマーをアスパルターゼ遺伝子のヌクレオチド配列に基づいて合成した(S.A. Woods et al. (1986)、Biochem J.、237:547-557):
フォワードプライマー
5’-cacaggatccacaacattcgtatcgaag-3’(配列番号7)
リバースプライマー
5’-acgagtcgacttcgctttcatcagtatag-3’(配列番号8)
【0141】
上記2つのプライマーはそれぞれ制限酵素 BamHIまたはSalI (下線部参照)の切断部位を有するように設計した。
【0142】
野生型大腸菌株 VJS632 (University of California、Davis、CA、USA のDr. Stewart、から譲り受けた)の細菌細胞の染色体を Wizard(登録商標)ゲノムDNA精製キットを用いて精製し、次いで上記2つのプライマーを用いるPCR 反応においてテンプレートとして使用し、アスパルターゼ遺伝子(aspA)を含むDNA断片を増幅した。
【0143】
その後、増幅したDNA断片を NucleoSpin(登録商標)核酸精製キットを用いて精製し、制限酵素BamHI/SalIで切断した。その結果得られた切断産物をプラスミドpA199A-2に組込み、「pA1-AspA」と称され、図18に示す構造を有するプラスミドを得た。
【0144】
前述の「一般的実験方法」の節に記載のプラスミド形質転換方法にしたがって、大腸菌株 VJS632の細菌細胞をプラスミドpA1-AspAとともにそれぞれプラスミド、pGB2、pGB-VHb、pGB-Trx、pGB-TV1および pGB-TV2で形質転換し、5つの組換え大腸菌株、即ち、VJS632/pA1-AspA/pGB2、VJS632/pA1-AspA/pGB-VHb、VJS632/pA1-AspA/pGB-Trx、VJS632/pA1-AspA/pGB-TV1 およびVJS632/pA1-AspA/pGB-TV2をそれぞれ得た。
【0145】
組換え株の培養は実施例3に記載の方法にしたがって行ったが、ただし、以下の組成を含む培地を使用した: Na2HPO4 (6 g/L)、KH2PO4 (3 g/L)、NaCl (0.5 g/L)、NH4Cl (1 g/L)、MgSO4・7H2O (1 mM)、CaCl2 (0.1 mM)、グルコース(0.4%)、そしてストレプトマイシン (10 μg/mL)およびアンピシリン(15 μg/mL)。細胞密度が約 0.3 (OD550)に達すると、新たに接種した細菌培養物に1000 μMのIPTGを添加して、培養中の組換え大腸菌細胞による組換えタンパク質産物の産生を誘導した。培養過程で、細菌培養物を経時的ににサンプリングし、細胞密度を測定した。細菌細胞を培養の7 時間および20 時間後にそれぞれ遠心分離して回収し、組換えタンパク質の収量および酵素活性に関する検出を行った。
【0146】
タンパク質電気泳動(SDS-PAGE)を実施例3に記載の方法にしたがって行い、収集した細菌細胞サンプルの上清サンプル(20 μgのタンパク質を含有)を順に10% ポリアクリルアミドゲルにローディングして電気泳動を行った。大腸菌アスパルターゼの活性を本出願人の以前の論文に記載の方法に基づいて測定した (Y.-P. Chao et al. (2000)、Enzyme Microb Technol、27:19-25)。実質的には、0.05 mgのタンパク質を1 mLの100 mM アスパラギン酸、100 mM Tris バッファー (pH 8.4)および5 mM MgSO4を含有する反応溶液に添加した。室温で 10分間の反応後、反応生成物 (フマル酸)を以下の条件でHPLCで分析した: カラム、Rezex ROA カラム (Phenomenex Co.); 移動相、0.005 N 硫酸; 流速、0.5 mL/分;そして吸光度の検出は波長210 nmにて行った。酵素比活性(U/mg)を検出した吸光度に基づいて計算し、酵素活性単位 (U)を1分あたり1μmoleの生成物の遊離を触媒する酵素の量として規定した。得られた実験結果を表3に示す。
【0147】
【表3】

【0148】
図19の上側パネルによると7時間発酵後、アスパルターゼを産生するよう誘導されたすべての組換え株は相当量のアスパルターゼを生成することが出来、酵素比活性は約 20 U/mgに達した(表3参照)。図19の下側パネルによると、20時間発酵後、ビトレオシラヘモグロビンもチオレドキシンも産生しないコントロール株 VJS632/pA1-AspA/pGB2 によって産生されるアスパルターゼの酵素活性、ビトレオシラヘモグロビンを産生する株 VJS632/pA1-AspA/pGB-VHb によって産生されるアスパルターゼの酵素活性および、チオレドキシンを産生する株 VJS632/pA1-AspA/pGB-Trx によって産生されるアスパルターゼの酵素活性は3.7 U/mg、6.1 U/mg および12.5 U/mgのみであり、それぞれ81%、71% そして37%低下していた。上記株によって産生されるアスパルターゼの量がかなり減少したことは、図19に示すタンパク質電気泳動結果からも観察される。
【0149】
一方、ビトレオシラヘモグロビンとチオレドキシンの両方を産生する株 VJS632/pA1-AspA/pGB-TV2またはチオレドキシンとビトレオシラヘモグロビンとの融合タンパク質を産生する株 VJS632/pA1-AspA/pGB-TV1については、産生されるアスパルターゼの量は低下しておらず(図19下側パネル参照)、酵素比活性は約 20 U/mg (表3)に維持された。
【0150】
結論として、ビトレオシラヘモグロビンとチオレドキシンの産生またはチオレドキシンとビトレオシラヘモグロビンとの融合タンパク質の産生により、形質転換組換え宿主細胞に、産生される組換えタンパク質産物(例えば、アスパルターゼ)を保護および安定化する能力が付与され、それによって組換えタンパク質産物が、組換え宿主細胞に存在するプロテアーゼの有害な分解作用を受けないよう保証される。
【0151】
(実施例6)
同種タンパク質β-ガラクトシダーゼの産生における形質転換大腸菌細胞の使用
T7 プロモーターの制御下にβ-ガラクトシダーゼ遺伝子を担持するプラスミドpET20-Zを以下のようにして構築した:
【0152】
以下の2つのプライマーをβ-ガラクトシダーゼ遺伝子のヌクレオチド配列に基づいて合成した(A. Kalnins et al. (1983)、EMBO J. 2; 593-597):
フォワードプライマー
5’-tatgcatatgaggatccattcactggccgtc-3’(配列番号17)
リバースプライマー
5’-cggaagcttttatttttgacaccagacc-3’(配列番号18)
【0153】
上記2つのプライマーはそれぞれ制限酵素 NdeIまたはXhoI (下線部参照)の切断部位を有するように設計した。
【0154】
大腸菌株 BL21(DE3)の細菌細胞の染色体をWizard(登録商標)ゲノムDNA 精製キットを用いて精製し、ついで上記2つのプライマーを用いるPCR 反応においてテンプレートとして使用し、β-ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)を含有するDNA断片を増幅した。
【0155】
その後、増幅したDNA断片をNucleoSpin(登録商標)核酸精製キットを用いて精製し、次いで制限酵素NdeI/XhoIで切断した。その結果得られた切断産物を同じ制限酵素で前処理したプラスミドpET22bに組込み、「pET20-Z」と称され、図20に示す構造を有するプラスミドを得た。
【0156】
前述の「一般的実験方法」の節に記載のプラスミド形質転換方法にしたがって、大腸菌株 BL21(DE3)の細菌細胞をそれぞれプラスミドpET20-Zとともにプラスミド、pGB2、pGB-VHb、pGB-Trx、pGB-TV1およびpGB-TV2で形質転換し、5つの組換え大腸菌株、即ち、BL21(DE3)/pET20-Z/pGB2、BL21(DE3)/pET20-Z/pGB-VHb、BL21(DE3)/pET20-Z/pGB-Trx、BL21(DE3)/pET20-Z/pGB-TV1 およびBL21(DE3)/pET20-Z/pGB-TV2をそれぞれ得た。
【0157】
組換え株の培養は実施例5に記載の方法にしたがって行った。
【0158】
細胞密度が約 0.3 (OD550)に達すると、新たに接種した細菌培養物に300μMのIPTGを添加して、培養中の組換え大腸菌細胞による組換えタンパク質産物の産生を誘導した。培養経過において、細菌培養物を経時的にサンプリングして細胞密度を測定した。細菌細胞は培養の11 時間後に遠心分離により回収し、次いで産生されたβ-ガラクトシダーゼの酵素活性についての検出を行った。
【0159】
大腸菌β-ガラクトシダーゼの活性の検出はMiller JH (1972) Experiments in Molecular Genetics. Cold Spring Harbor、NY: Cold Spring Harbor Laboratoryに記載の方法にしたがって行った。
【0160】
実質的には、細菌培養物のアリコット(0.1 mL)を経時的にサンプリングし、独立に0.9 mL Z バッファー 溶液 (16.1 g/L Na2HPO4・7H2O、5.5 g/L NaH2PO4・H2O、0.75 g/L KCl、0.246 g/L MgSO4・7H2O、2.7 mL β-メルカプトエタノール)と混合し、終容量を1 mLに維持した。その後、10μLのトルエンを添加した。細菌細胞をボルテックスを用いて破砕し、冷却遠心機によって分離して上清を収集した。
【0161】
収集した各上清にo-ニトロフェニル-β-D-チオガラクトシド (4 mμg/mL)を含む0.2 mLの反応溶液を添加した。反応は室温で5分間行い、次いで0.5 mL Na2CO3 (1 M)を添加して反応を終了させた。反応生成物の産生は波長420 nmでの吸光度の検出によって測定した。β-ガラクトシダーゼの比酵素活性単位は Miller 単位として規定した。得られた実験結果を表4に示す。
【0162】
【表4】

【0163】
発酵の最後に、β-ガラクトシダーゼを産生するよう誘導されなかったコントロール株 (即ち、ビトレオシラヘモグロビンもチオレドキシンも産生しない株 BL21(DE3)/pET20-Z/pGB2)は細胞密度3.2 (OD550)に達した。しかしβ-ガラクトシダーゼを産生するようIPTG を添加して誘導すると、コントロール株およびビトレオシラヘモグロビンを産生する株 BL21(DE3)/pET20-Z/pGB-VHbの増殖は直ちに抑制され、それらの最終細胞密度は培養の最後に0.7-0.9 (OD550)にしか達さなかった。誘導したコントロール株と比較して、チオレドキシンを産生する株 BL21(DE3)/pET20-Z/pGB-Trx およびチオレドキシンとビトレオシラヘモグロビンとの融合タンパク質を産生する株 (BL21(DE3)/pET20-Z/pGB-TV1)の最終細胞密度は発酵の最後に2.3-2.5 (OD550)であることが示され、細胞密度が230-260%増加した。ビトレオシラヘモグロビンとチオレドキシンの両方を産生する株 BL21(DE3)/pET20-Z/pGB-TV2の細胞密度も1.7 (OD550)に達し、細胞密度は140%増加した。
【0164】
一方、表4に示す酵素比活性に関するタンパク質産生結果から観察されるように、IPTG 誘導後、コントロール株 BL21(DE3)/pET20-Z/pGB2はβ-ガラクトシダーゼを約 56,000 Miller 単位産生することができ、ビトレオシラヘモグロビンを産生する株BL21(DE3)/pET20-Z/pGB-VHbはβ-ガラクトシダーゼを約 51,000 Miller 単位産生することができた。しかし、ビトレオシラヘモグロビンとチオレドキシンの両方を産生する株 BL21(DE3)/pET20-Z/pGB-TV2はβ-ガラクトシダーゼを約 97,000 Miller 単位産生することができ、チオレドキシンとビトレオシラヘモグロビンとの融合タンパク質を産生する株 BL21(DE3)/pET20-Z/pGB-TV1はβ-ガラクトシダーゼを約 83,000 Miller 単位産生することができ、誘導したコントロール株 (BL21(DE3)/pET20-Z/pGB2)と比較してβ-ガラクトシダーゼ産生は50-70増加していた。
【0165】
一方、チオレドキシンを産生する株 BL21(DE3)/pET20-Z/pGB-Trxはβ-ガラクトシダーゼを40,000 Miller 単位しか産生することができず、誘導したコントロール株 (BL21(DE3)/pET20-Z/pGB2)と比較してβ-ガラクトシダーゼ産生は約 30%減少していた。観察されたこの株により産生されるβ-ガラクトシダーゼの量の減少はよりよい細胞増殖の原因である可能性がある。
【0166】
結論として、ビトレオシラヘモグロビンとチオレドキシンの両方が産生されるか、チオレドキシンとビトレオシラヘモグロビンとの融合タンパク質が産生されるかにかかわらず、形質転換宿主細胞はβ-ガラクトシダーゼ産生を増加させる能力を付与され、良好に増殖するようになる。H. Dong et al. (1995)、J. Bacteriol. 177:1497-1504による報告によれば、β-ガラクトシダーゼの過剰発現によって大腸菌細胞のリボゾーム分解が導かれ、それによって細胞増殖がかなり抑制される。それゆえ、ビトレオシラヘモグロビンとチオレドキシンの両方を産生する形質転換株またはチオレドキシンとビトレオシラヘモグロビンとの融合タンパク質を産生する形質転換株はタンパク質の過剰発現による細胞リボゾームの分解を遅延させる能力を有するということが示唆される。
【0167】
本明細書において引用したすべての特許及び文献はその内容全体が引用により本出願に含まれる。矛盾がある場合、定義を含む本明細書の記載が優先する。
【0168】
本発明は上記具体的態様に参照して記載したが、多数の改変および改良が、本発明の精神と範囲を逸脱することなく可能であることが明らかである。それゆえ本発明は特許請求の範囲により示されることによってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】図1は、以下を含むプラスミドpUHE21-2の構築を示す: プラスミドpMB1の複製起点、pMB1 ori; T7 A1 プロモーター、PA1; アンピシリン耐性遺伝子、Apr; 制限酵素 ScaIの切断部位、ScaI;およびマルチクローニングサイト(MCS)、MCSに含まれるリボゾーム結合部位 (RBS)および制限酵素切断部位はMCSフレームボックス内に示される;
【図2】図2は、以下を含むプラスミドpA199A-2の構築を示す: プラスミドpMB1の複製起点、pMB1 ori; T7 A1 プロモーター、PA1; lacリプレッサータンパク質遺伝子、lacI; rrnB 遺伝子転写終結部位、rrnBT1T2;アンピシリン耐性遺伝子、Apr; 制限酵素 NruI切断部位、NruI;およびマルチクローニングサイト (MCS)、MCSに含まれるリボゾーム結合部位 (RBS)および制限酵素切断部位はMCSフレームボックス内に示される;
【図3】図3は以下を含むプラスミドpGB2の構築を示す: プラスミドpSC101の複製起点 、pSC101 ori; スペクチノマイシン/ストレプトマイシン耐性遺伝子、Spcr/Strr;およびマルチクローニングサイト (MCS)、MCSに含まれる制限酵素切断部位はMCSフレームボックス内に示される;
【図4】図4は以下を含むプラスミドpGB-VHbの構築を示す: プラスミドpSC101の複製起点 、pSC101 ori;ビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子、vgb; T7 A1プロモーター、PA1; lacリプレッサータンパク質遺伝子、lacI; およびスペクチノマイシン/ストレプトマイシン耐性遺伝子、Spcr/Strr;
【図5】図5は、以下を含むプラスミドpJF118EHの構築を示す: プラスミドpBR322の複製起点、pBR322 ori; tac プロモーター、Ptac; lacリプレッサータンパク質遺伝子、lacIq; rrnB 遺伝子転写終結部位、rrnBT1T2; 制限酵素 NruIの切断部位、NruI; アンピシリン耐性遺伝子、Apr;およびマルチクローニングサイト (MCS)、MCSに含まれる制限酵素切断部位はMCSフレームボックス内に示される;
【図6】図6は以下を含むプラスミドpGB-Trxの構築を示す: プラスミドpSC101の複製起点、pSC101 ori; チオレドキシン構造遺伝子、trxA; tac プロモーター、Ptac; lacリプレッサータンパク質遺伝子、lacIq;およびスペクチノマイシン/ストレプトマイシン耐性遺伝子、Spcr/Strr;
【図7】図7は以下を含むプラスミドpJF-TrxFusの構築を示す: プラスミドpBR322の複製起点、pBR322 ori; tac プロモーター、 Ptac; チオレドキシン構造遺伝子(終止コドンを除く)、trxA; lacリプレッサータンパク質遺伝子、lacIq; 制限酵素 NruIの切断部位、NruI; rrnB 遺伝子転写終結部位、rrnBT1T2; アンピシリン耐性遺伝子、Apr;およびマルチクローニングサイト (MCS)、MCSに含まれる制限酵素切断部位はMCSフレームボックス内に示される;
【図8】図8は以下を含むプラスミドpGB-TV1の構築を示す: プラスミドpSC101の複製起点、pSC101 ori;チオレドキシン構造遺伝子、trxA;ビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子、vgb; tac プロモーター、Ptac; lacリプレッサータンパク質遺伝子、lacIq;およびスペクチノマイシン/ストレプトマイシン耐性遺伝子、Spcr/Strr;
【図9】図9は以下を含むプラスミドpGB-TV2の構築を示す: プラスミドpSC101の複製起点、pSC101 ori;チオレドキシン構造遺伝子、trxA;ビトレオシラヘモグロビン構造遺伝子、vgb; tac プロモーター、Ptac; T7 A1 プロモーター、PA1; lacリプレッサータンパク質遺伝子、lacIq;および、スペクチノマイシン/ストレプトマイシン耐性遺伝子、Spcr/Strr;
【図10】図10は、ビトレオシラヘモグロビンに対する一次抗体を用いたIPTG-誘導組換え大腸菌株BL21(DE3)/pGB-VHbによって産生されるビトレオシラヘモグロビンの免疫検出を示すウェスタンブロットである。レーン1 タンパク質標準(ProSieve(登録商標) Color Protein Marker、Cambrex BioScience); レーン2: IPTG 誘導なしでの株のタンパク質サンプル;レーン3: 30 μM IPTGで誘導された株のタンパク質サンプル;レーン4: 100 μM IPTGで誘導された株のタンパク質サンプル;レーン5: 500 μM IPTGで誘導された株のタンパク質サンプル;矢印はビトレオシラヘモグロビンの位置を示す;
【図11】図11は、チオレドキシンに対する一次抗体を用いたIPTG-誘導組換え大腸菌株 BL21(DE3)/pGB-Trxによって産生されるチオレドキシンの免疫検出を示すウェスタンブロットである。レーン1:タンパク質標準 (ProSieve(登録商標) Color Protein Marker、Cambrex BioScience); レーン2: IPTG 誘導なしでの株のタンパク質サンプル; レーン3: 30 μM IPTGで誘導された株のタンパク質サンプル; レーン4: 100 μM IPTGで誘導された株のタンパク質サンプル;レーン5: 500 μM IPTGで誘導された株のタンパク質サンプル;矢印はチオレドキシンの位置を示す;
【図12】図12は、チオレドキシンに対する一次抗体を用いたIPTG-誘導組換え大腸菌株 BL21(DE3)/pGB-TV1によって産生されるチオレドキシンとビトレオシラヘモグロビンとの融合タンパク質の免疫検出を示すウェスタンブロットである。レーン1:タンパク質標準 (ProSieve(登録商標) Color Protein Marker、Cambrex BioScience); レーン2: IPTG 誘導なしでの株のタンパク質サンプル; レーン3: 30 μM IPTGで誘導された株のタンパク質サンプル; レーン4: 100 μM IPTGで誘導された株のタンパク質サンプル;レーン5: 500 μM IPTGで誘導された株のタンパク質サンプル;矢印はチオレドキシンとビトレオシラヘモグロビンとの融合タンパク質の位置を示す;
【図13】図13は、チオレドキシンに対する一次抗体を用いたIPTG-誘導組換え大腸菌株 BL21(DE3)/pGB-TV2によって産生されたチオレドキシンの免疫検出を示すウェスタンブロットである。レーン1: タンパク質標準 (ProSieve(登録商標)Color Protein Marker、Cambrex BioScience); レーン2: IPTG 誘導なしでの株のタンパク質サンプル; レーン3: 30 μM IPTGで誘導された株のタンパク質サンプル; レーン4: 100 μM IPTGで誘導された株のタンパク質サンプル;レーン5: 500 μM IPTGで誘導された株のタンパク質サンプル;矢印はチオレドキシンの位置を示す;
【図14】図14は、ビトレオシラヘモグロビンに対する一次抗体を用いたIPTG-誘導組換え大腸菌株 BL21(DE3)/pGB-TV2によって産生されたビトレオシラヘモグロビンの免疫検出を示すウェスタンブロットである。レーン1: タンパク質標準 (ProSieve(登録商標)Color Protein Marker、Cambrex BioScience); レーン2: IPTG 誘導なしでの株のタンパク質サンプル; レーン3: 30 μM IPTGで誘導された株のタンパク質サンプル; レーン4: 100 μM IPTGで誘導された株のタンパク質サンプル;レーン5: 500 μM IPTGで誘導された株のタンパク質サンプル;矢印はビトレオシラヘモグロビンの位置を示す;
【図15】図15は以下を含むプラスミドpET-IFNの構築を示す: pBR322 複製起点、ori; f1 複製起点、f1 ori; ヒトインターフェロンα2遺伝子、IFNα2; T7 プロモーター、T7; 制限酵素 NdeIの切断部位、NdeI;制限酵素 XhoIの切断部位、XhoI; lacリプレッサータンパク質遺伝子、lacI;およびアンピシリン耐性遺伝子、Apr;
【図16】図16はタンパク質電気泳動図を示す。レーン1: タンパク質標準 (MBI Fermentas); レーン2: IPTG 誘導なしのコントロール株 (Rosetta(DE3)/pET-IFN/pGB2)のタンパク質サンプル; レーン3:IPTG 誘導したコントロール株 (Rosetta(DE3)/pET-IFN/pGB2) のタンパク質サンプル; レーン4: 誘導後のビトレオシラヘモグロビンを産生した株 (Rosetta(DE3)/pET-IFN/pGB-VHb)のタンパク質サンプル; レーン5: 誘導後のチオレドキシンを産生した株 (Rosetta(DE3)/pET-IFN/pGB-Trx)のタンパク質サンプル;およびレーン 6:誘導後のチオレドキシンとビトレオシラヘモグロビンとの融合タンパク質を産生した株 (Rosetta(DE3)/pET-IFN/pGB-TV1)のタンパク質サンプル;
【図17】図17は以下を含むプラスミドpET-estIIの構築を示す: pBR322の複製起点、ori; f1 複製起点、f1 ori; シュードモナス・シトロネロリスのエステラーゼ遺伝子、estA; T7 プロモーター、T7; 制限酵素 BamHIの切断部位、BamHI; 制限酵素 XhoIの切断部位、XhoI; lacリプレッサータンパク質遺伝子、lacI;およびアンピシリン耐性遺伝子、Apr;
【図18】図18は、以下を含むプラスミドpA1-AspA の構築を示す: pMB1の複製起点、pMB1 ori; アスパルターゼ遺伝子、aspA; 制限酵素 BamHIの切断部位、BamHI; 制限酵素 SalIの切断部位、SalI; rrnB 遺伝子転写終結部位、rrnBT1T2; T7 A1 プロモーター、PA1; Lacリプレッサータンパク質遺伝子、lacI;およびアンピシリン耐性遺伝子、Apr;
【図19】図19は、7 時間(上側パネル)および20 時間 (下側パネル)の発酵培養後のアスパルターゼを産生するように誘導された組換え株によるタンパク質の産生を示すタンパク質電気泳動図である。レーン1: タンパク質標準 (MBI Fermentas); レーン2: ビトレオシラヘモグロビンもチオレドキシンも産生しないコントロール株 (VJS632/pA1-AspA/pGB2)のタンパク質サンプル; レーン3: ビトレオシラヘモグロビンを産生した株 (VJS632/pA1-AspA/pGB-VHb)のタンパク質サンプル;レーン4: チオレドキシンを産生した株 (VJS632/pA1-AspA/pGB-Trx)のタンパク質サンプル; レーン5: ビトレオシラヘモグロビンとチオレドキシンの両方を産生した株 (VJS632/pA1-AspA/pGB-TV2)のタンパク質サンプル; レーン 6: チオレドキシンとビトレオシラヘモグロビンとの融合タンパク質を産生した株 (VJS632/pA1-AspA/pGB-TV1)のタンパク質サンプル;矢印はアスパルターゼの位置を示す;
【図20】図20は以下を含むプラスミドpET20-Zの構築を示す: pBR322の複製起点、ori ; f1 複製起点、f1 ori;β-ガラクトシダーゼ 構造遺伝子、lacZ; T7 プロモーター、T7; 制限酵素 NdeIの切断部位、NdeI; 制限酵素 HindIIIの切断部位、HindIII; およびアンピシリン耐性遺伝子、Apr
【配列表フリーテキスト】
【0170】
配列番号1;ビストレオシラ(Vistreoscilla)ヘモグロビン遺伝子の人工フォワードプライマー
【0171】
配列番号2;ビトレオシラヘモグロビン遺伝子の人工リバースプライマー
【0172】
配列番号3;大腸菌チオレドキシン遺伝子の人工フォワードプライマー
<
【0173】
配列番号4;大腸菌チオレドキシン遺伝子の人工リバースプライマー
【0174】
配列番号5;ヒトインターフェロンα2遺伝子の人工プライマー
【0175】
配列番号6;ヒトインターフェロンα2遺伝子の人工リバースプライマー
【0176】
配列番号7;アスパルターゼ遺伝子の人工フォワードプライマー
【0177】
配列番号8;アスパルターゼ遺伝子の人工リバースプライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む組換え宿主細胞における選択された遺伝子産物の産生を増進させる方法:
(a)宿主細胞に、選択された遺伝子産物をコードする遺伝子配列、チオレドキシンをコードする第一の核酸配列、およびヘモグロビンをコードする第二の核酸配列をクローニングし、組換え宿主細胞を形成する工程;
(b) 工程(a)で形成された組換え宿主細胞を好適な培地で培養し、該遺伝子配列を発現させる工程;および、
(c) 発現した遺伝子産物を収集する工程。
【請求項2】
工程(a)を、該遺伝子配列、該第一の核酸配列および該第二の核酸配列をともに該宿主細胞において発現可能なベクターにクローニングし、そうして形成された組換えベクターを宿主細胞に移入することにより行う請求項1の方法。
【請求項3】
工程(a)を、該遺伝子配列、該第一の核酸配列および該第二の核酸配列を別々に該宿主細胞において発現可能なベクターにクローニングし、そうして形成された組換えベクターを宿主細胞に移入することにより行う請求項1の方法。
【請求項4】
工程(a)を以下のサブ工程によって行う請求項1の方法:
(i) 宿主細胞において発現可能であり、第一の核酸配列および第二の核酸配列を含む第一の組換えベクターを構築する工程;
(ii) 宿主細胞において発現可能であり、遺伝子配列を含む第二の組換えベクターを構築する工程; および、
(iii) 第一の組換えベクターおよび第二の組換えベクターを宿主細胞に移入する工程。
【請求項5】
サブ工程(i)から構築される該第一の組換えベクターがさらに、該第一の核酸配列と該第二の核酸配列の発現を制御するための誘導可能なプロモーター配列を含む、請求項4の方法。
【請求項6】
サブ工程(i)から構築される該第一の組換えベクターに含まれる該プロモーター配列が以下のいずれか由来である請求項5の方法:ウイルス、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、およびヒト細胞。
【請求項7】
サブ工程(i)から構築される該第一の組換えベクターに含まれる該プロモーター配列がtac プロモーター、T7 プロモーター、T7 A1 プロモーター、lac プロモーター、trp プロモーター、trc プロモーター、araBAD プロモーター、およびλPRPL プロモーターからなる群から選択される請求項6の方法。
【請求項8】
サブ工程(i)から構築される該第一の組換えベクターに含まれるプロモーター配列がtac プロモーターである請求項7の方法。
【請求項9】
サブ工程(i)から構築される該第一の組換えベクターにおいて、該第一の核酸配列および該第二の核酸配列がチオレドキシンとヘモグロビンとから形成される融合タンパク質をコードするように連結している請求項4の方法。
【請求項10】
サブ工程(i)から構築される該第一の組換えベクターがさらに、該第一の核酸配列の発現を制御するための誘導可能な第一のプロモーター配列および該第二の核酸配列の発現を制御するための誘導可能な第二のプロモーター配列を含み、該第一のプロモーター配列と該第二のプロモーター配列が互いに異なっている請求項4の方法。
【請求項11】
サブ工程(i)から構築される該第一の組換えベクターにおいて、該第一のプロモーター配列および該第二のプロモーター配列が独立に以下のいずれか由来である請求項10の方法:ウイルス、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、およびヒト細胞。
【請求項12】
サブ工程(i)から構築される該第一の組換えベクターにおいて、該第一のプロモーター配列および該第二のプロモーター配列が独立にtac プロモーター、T7 プロモーター、T7 A1 プロモーター、lac プロモーター、trp プロモーター、trc プロモーター、araBAD プロモーター、およびλPRPL プロモーターからなる群から選択される請求項11の方法。
【請求項13】
サブ工程(i)から構築される該第一の組換えベクターにおいて、該第一のプロモーター配列がtac プロモーターであり、該第二のプロモーターがT7 A1 プロモーターである、請求項11の方法。
【請求項14】
サブ工程(i)から構築される該第一の組換えベクターがさらに以下の少なくとも1つを含む請求項4の方法:マーカー遺伝子、レポーター遺伝子、抗生物質-耐性遺伝子、エンハンサー配列、ポリアデニル化部位、および調節配列。
【請求項15】
工程(a)に用いる該第一の核酸配列が以下のいずれかの細胞のチオレドキシン遺伝子由来である請求項4の方法:細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、およびヒト細胞。
【請求項16】
工程(a)に用いる該第一の核酸配列が大腸菌のチオレドキシン遺伝子(trxA)由来である請求項15の方法。
【請求項17】
工程(a)に用いる該第二の核酸配列が以下のいずれかの細胞のヘモグロビン遺伝子由来である請求項1の方法:細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、動物細胞、およびヒト細胞。
【請求項18】
工程(a)に用いる該第二の核酸配列がビトレオシラ種のヘモグロビン遺伝子(vgb)由来である請求項17の方法。
【請求項19】
該選択された遺伝子産物が同種ポリペプチドまたは異種ポリペプチドである、請求項1の方法。
【請求項20】
該選択された遺伝子産物が酵素、医療用ポリペプチド、抗原決定基、または抗体である、請求項19の方法。
【請求項21】
該選択された遺伝子産物がインターフェロン、β-ガラクトシダーゼ、エステラーゼおよびアスパルターゼからなる群から選択される請求項20の方法。
【請求項22】
工程(a)に用いる宿主細胞が細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞、植物細胞、動物細胞、およびヒト細胞からなる群から選択される請求項1の方法。
【請求項23】
工程(a)に用いる宿主細胞が大腸菌細胞である請求項22の方法。
【請求項24】
チオレドキシンをコードする第一の核酸配列およびヘモグロビンをコードする第二の核酸配列を含む核酸コンストラクト。
【請求項25】
さらに該第一の核酸配列および該第二の核酸配列の発現を制御するための誘導可能なプロモーター配列を含む請求項24の核酸コンストラクト。
【請求項26】
該プロモーター配列が以下の何れか由来である請求項25の核酸コンストラクト: ウイルス、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、およびヒト細胞。
【請求項27】
該プロモーター配列がtac プロモーター、T7 プロモーター、T7 A1 プロモーター、lac プロモーター、trp プロモーター、trc プロモーター、araBAD プロモーター、およびλPRPL プロモーターからなる群から選択される請求項26の核酸コンストラクト。
【請求項28】
該プロモーター配列がtac プロモーターである請求項26の核酸コンストラクト。
【請求項29】
該第一の核酸配列と該第二の核酸配列がチオレドキシンとヘモグロビンとから形成される融合タンパク質をコードするように連結している請求項25の核酸コンストラクト。
【請求項30】
さらに該第一の核酸配列の発現を制御するための誘導可能な第一のプロモーター配列および該第二の核酸配列の発現を制御するための誘導可能な第二のプロモーター配列を含み、該第一のプロモーター配列と該第二のプロモーター配列が互いに異なっている請求項24の核酸コンストラクト。
【請求項31】
該第一のプロモーター配列と該第二のプロモーター配列が独立に以下の何れか由来である請求項30の核酸コンストラクト: ウイルス、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、およびヒト細胞。
【請求項32】
該第一のプロモーター配列と該第二のプロモーター配列が独立にtac プロモーター、T7 プロモーター、T7 A1 プロモーター、lac プロモーター、trp プロモーター、trc プロモーター、araBAD プロモーター、およびλPRPL プロモーターからなる群から選択される請求項31の核酸コンストラクト。
【請求項33】
該第一のプロモーター配列が tac プロモーターであり、該第二のプロモーター配列が T7 A1 プロモーターである、請求項31の核酸コンストラクト。
【請求項34】
該第一の核酸配列が以下の何れかの細胞のチオレドキシン遺伝子由来である請求項24の核酸コンストラクト:細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、およびヒト細胞。
【請求項35】
該第一の核酸配列が大腸菌のチオレドキシン遺伝子(trxA)由来である請求項34の核酸コンストラクト。
【請求項36】
該第二の核酸配列が以下の何れかの細胞のヘモグロビン遺伝子由来である請求項24の核酸コンストラクト:細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、動物細胞、およびヒト細胞。
【請求項37】
該第二の核酸配列がビトレオシラ種のヘモグロビン遺伝子(vgb)由来である請求項34の核酸コンストラクト。
【請求項38】
請求項24の核酸コンストラクトを含むベクター。
【請求項39】
さらに以下の少なくとも1つを含む請求項38のベクター:マーカー遺伝子、レポーター遺伝子、抗生物質-耐性遺伝子、エンハンサー配列、選択された遺伝子産物をコードする遺伝子、ポリアデニル化部位、および調節配列。
【請求項40】
選択された遺伝子産物をコードする遺伝子配列、チオレドキシンをコードする第一の核酸配列、およびヘモグロビンをコードする第二の核酸配列を含む、選択された遺伝子産物を発現することが出来る組換え宿主細胞。
【請求項41】
該遺伝子配列、該第一の核酸配列および該第二の核酸配列が該宿主細胞において発現可能なベクターに共に担持される請求項40の組換え宿主細胞。
【請求項42】
該遺伝子配列、該第一の核酸配列および該第二の核酸配列が該宿主細胞において発現可能なベクターに別々に担持される請求項40の組換え宿主細胞。
【請求項43】
該第一の核酸配列および該第二の核酸配列が該宿主細胞において発現可能な第一のベクターに担持され、該遺伝子配列が該宿主細胞において発現可能な第二のベクターに担持される請求項40の組換え宿主細胞。
【請求項44】
該第一のベクターがさらに該第一の核酸配列および該第二の核酸配列の発現を制御するための誘導可能なプロモーター配列を含む請求項43の組換え宿主細胞。
【請求項45】
該プロモーター配列が以下のいずれか由来である請求項44の組換え宿主細胞: ウイルス、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、およびヒト細胞。
【請求項46】
該プロモーター配列がtac プロモーター、T7 プロモーター、T7 A1 プロモーター、lac プロモーター、trp プロモーター、trc プロモーター、araBAD プロモーター、およびλPRPL プロモーターからなる群から選択される請求項45の組換え宿主細胞。
【請求項47】
該プロモーター配列がtac プロモーターである請求項46の組換え宿主細胞。
【請求項48】
該第一の核酸配列と該第二の核酸配列がチオレドキシンとヘモグロビンとから形成される融合タンパク質をコードするよう連結されている請求項43の組換え宿主細胞。
【請求項49】
該第一のベクターがさらに該第一の核酸配列の発現を制御するための誘導可能な第一のプロモーター配列、および該第二の核酸配列の発現を制御するための誘導可能な第二のプロモーター配列を含み、該第一のプロモーター配列と該第二のプロモーター配列が互いに異なっている請求項43の組換え宿主細胞。
【請求項50】
該第一のプロモーター配列および該第二のプロモーターが独立に以下の何れか由来である請求項49の組換え宿主細胞: ウイルス、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、およびヒト細胞。
【請求項51】
該第一のプロモーター配列および該第二のプロモーター配列が独立にtac プロモーター、T7 プロモーター、T7 A1 プロモーター、lac プロモーター、trp プロモーター、trc プロモーター、araBAD プロモーター、およびλPRPL プロモーターからなる群から選択される請求項50の組換え宿主細胞。
【請求項52】
該第一のプロモーター配列がtac プロモーターであり、該第二のプロモーターがT7 A1 プロモーターである請求項51の組換え宿主細胞。
【請求項53】
該第一の核酸配列が以下の何れかの細胞のチオレドキシン遺伝子由来である請求項40の組換え宿主細胞: 細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、およびヒト細胞。
【請求項54】
該第一の核酸配列が大腸菌のチオレドキシン遺伝子(trxA)由来である請求項53の組換え宿主細胞。
【請求項55】
該第二の核酸配列が以下の何れかの細胞のヘモグロビン遺伝子由来である請求項40の組換え宿主細胞: 細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、動物細胞、およびヒト細胞。
【請求項56】
該第二の核酸配列がビトレオシラ種のヘモグロビン遺伝子(vgb)由来である請求項55の組換え宿主細胞。
【請求項57】
該第一のベクターがさらにマーカー遺伝子、レポーター遺伝子、抗生物質-耐性遺伝子、エンハンサー配列、ポリアデニル化部位、および調節配列の少なくとも1つを含む請求項43の組換え宿主細胞。
【請求項58】
該第一の核酸配列および該第二の核酸配列が該宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれる請求項40の組換え宿主細胞。
【請求項59】
該選択された遺伝子産物が同種ポリペプチドまたは異種ポリペプチドである請求項40の組換え宿主細胞。
【請求項60】
該選択された遺伝子産物が酵素、医療用ポリペプチド、抗原決定基または抗体である請求項40の組換え宿主細胞。
【請求項61】
該選択された遺伝子産物がインターフェロン、β-ガラクトシダーゼ、エステラーゼ、およびアスパルターゼからなる群から選択される請求項40の組換え宿主細胞。
【請求項62】
細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、およびヒト細胞からなる群から選択される請求項40の組換え宿主細胞。
【請求項63】
大腸菌細胞である請求項62の組換え宿主細胞。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−6312(P2006−6312A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−12603(P2005−12603)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(504117165)私立逢甲大學 (5)
【出願人】(505024811)行政院農業委員會台中區農業改良場 (2)
【Fターム(参考)】