説明

組換えタンパク質をインビボ生産するための、非常に豊富な転写産物の標的化トランススプライシング

本発明は、高発現されるプレmRNAを標的としかつ目的のタンパク質またはポリペプチドのコード配列を含むRNAトランススプライシングを介して、新規の核酸分子を作製する方法および組成物を提供する。本発明の組成物は、豊富に発現される標的前駆体メッセンジャーRNA分子(標的プレmRNA)と相互作用しかつトランススプライシング反応に介在して、目的のタンパク質またはポリペプチドをコードすることができる新規のキメラRNA分子(キメラRNA)の作製をもたらすように設計された、プレトランススプライシング分子(PTM)を含んでなる。本発明は、目的のタンパク質またはポリペプチドをコードしかつその産生をもたらすキメラRNA分子のin vivo産生を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関係出願
本出願は、米国特許出願第60/617,324号(2004年10月8日出願)の優先権を主張し、同出願の開示は本明細書に参照によりその全てが組み入れられる。本出願はまた、
米国特許出願第11/141,447号(2005年5月31日出願)、米国特許出願第11/041,155号(2005年1月21日出願)、および対応するPCT出願第US/05/02392号(2005年1月21日出願)の優先権も主張し、同出願の開示は本明細書に参照によりその全てが組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、豊富に発現される前駆体メッセンジャーRNA分子(標的プレmRNA)を標的としかつ目的のタンパク質またはポリペプチドのコード配列を含有するRNAのトランススプライシングを介して、新規の核酸分子を作製する方法および組成物を提供する。本発明の組成物が含有するプレトランススプライシング分子(pre-trans-splicing molecule;PTM)は、標的プレmRNAと相互作用しかつトランススプライシング反応に介在し、目的のタンパク質またはポリペプチドのコード配列をコードすることができる新規のキメラ分子(キメラRNA)の作製をもたらすように設計されている。特に、標的プレmRNAはアルブミンまたはカゼインプレmRNAである。本発明の目的は、治療、診断または産業的に重要でありうる目的のタンパク質またはポリペプチドをコードする配列を含むキメラRNA分子の宿主動物におけるin vivo生産を開発して、それからタンパク質を大量に回収することである。本発明はまた、目的のタンパク質またはポリペプチドを大規模で生産する方法も提供する。
【0003】
本発明の組成物はさらに、本発明のPTMを発現することができる組換えベクターシステムおよび上記PTMを発現する細胞を含む。本発明の方法は、PTMの一部分が標的プレmRNAの一部分にトランススプライスされて本発明のタンパク質またはポリペプチドを発現しうるキメラRNA分子を生成する条件のもとで、本発明のPTMを標的プレmRNAと接触させるステップを包含する。
【背景技術】
【0004】
大規模な組換えタンパク質の生産
組換えタンパク質生産技法により、機能および構造分析、産業用途、薬物設計、診断、治療、およびワクチンに用いる大量のタンパク質の作製が行われている。哺乳動物および昆虫発現系が、生物学的に活性な組換えタンパク質を短期間に高収率で生産するために用いられている。特定条件下で培養される細胞を含有するバイオリアクターは組換えタンパク質の大規模生産に成果を挙げてきた。
【0005】
トランスジェニック乳牛およびトランスジェニックヤギは、組換えタンパク質の大量供給源としてバイオリアクターの代わりとなるものである。目的の組換えタンパク質をこれらのトランスジェニック動物の乳中に発現させ、これを回収し、そして目的の組換えタンパク質を収穫することができる。ウシは1年間に9000リットルを超える乳を生産することができ、その乳中に大量のタンパク質を生産することができるので、バイオリアクターで作製される量に匹敵する。ウシは、細胞培養で経済的に生産できない複雑なタンパク質を発現することができる。高価な治療用タンパク質の大規模生産を、フレキシブルなスケールアップおよび著しく低い資本費とリスクで行うことも可能である。ウシはまた、組換えタンパク質またはポリペプチドの安全かつ継続的な供給源でもある。かかる方法は、いずれか他の方法によっては効率的に生産できない複雑なまたはユニークな分子の製造を可能にする。
【0006】
ヤギも、治療用タンパク質の大規模生産が可能である宿主動物である(Baldassarreら、「State of the art in the production of transgenic goats.」 Reprod Fertil Dev. 2004、16:465-70)。ヤギは、様々なタンパク質をその乳中に発現することが示されていて、それには、とりわけ、ヒト成長ホルモン、インスリン、クモの糸、抗トロンビンIII、組織プラスミノーゲンアクチベーター、およびα1-アンチトリプシンが含まれる。Genzyme Transgenics社は、例えば、14種を超えるタンパク質をトランスジェニックヤギにおいて1g/L乳を超える量で発現させている(Rathin C. Das, 「Production of therapeutic proteins from transgenic animals」, BioBusiness, February 2001, pp.60-64)。
【0007】
RNAスプライシング
染色体中のDNA配列は、コード領域(エキソン)を含みかつ一般に介在非コード領域(イントロン)も含むプレmRNA中に転写される。イントロンは、シススプライシングと呼ばれる正確なプロセスでプレmRNAから除かれる(Chowら, 1977, Cell 12:1-8;およびBerget, S.M.ら, 1977, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74:3171-3175)。スプライシングはいくつかの小核のリボ核タンパク質粒子(snRNP)と多数のタンパク質因子との配位相互作用として起こり、その場合、これらは集合してスプライセオソームとして知られる酵素複合体を生成する(Mooreら, 1993, in 「The RNA World」, R.F. GestlandおよびJ.F. Atkins編 (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.);Kramer, 1996, Annu. Rev. Biochem., 65:367-404;StaleyおよびGuthrie, 1998, Cell 92:315-326)。
【0008】
ほとんどの場合、スプライシング反応は同じプレmRNA分子内で起こり、これはシススプライシングと呼ばれる。2つの独立した転写されたプレmRNA間のスプライシングはトランススプライシングと呼ばれる(図1参照)。トランススプライシングはトリパノソーマ属で最初に発見され(SuttonおよびBoothroyd, 1986, Cell 47:527;Murphyら, 1986, Cell 47:517)、次に線形動物(KrauseおよびHirsh, 1987, Cell 49:753)、扁形動物(Rajkovicら, 1990, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA, 87:8879;Davisら, 1995, J. Biol. Chem. 270:21813)および植物ミトコンドリア(Malekら, 1997, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 94:553)で発見された。寄生虫(Trypanosoma brucei)では、全てのmRNAがトランススプライシングによりそれらの5'末端にスプライスリーダー(SL)RNAを獲得する。5'リーダー配列はまた、線虫(Caenorhabditis elegans)のいくつかの遺伝子へもトランススプライスされる。この機構は単一共通配列を多くの異なる転写物へ付加するのに適している。
【0009】
スプライスリーダー・トランススプライシングの機構は、従来のシススプライシングの機構とほぼ同じであって、2つのリン酸基転移反応を介して進行する。最初の反応で、2'-5'ホスホジエステル結合が形成して「Y」型の分岐中間体を生じ、これはシススプライシングにおける投縄型中間体と同じである。第2の反応であるエキソン連結反応は通常のシススプライシングの場合のように進行する。さらに、トランススプライシング反応を触媒する3'スプライス部位の配列とsnRNPのいくつかはシススプライシングに関与するそれらの対応物と非常によく似ている。
【0010】
トランススプライシングはまた、1つのプレmRNAのイントロンが第2のプレmRNAのイントロンと相互作用して、2つの通常のプレmRNAの間のスプライス部位の組換えを促進するという異なるプロセスも意味する。このタイプのトランススプライシングは、トランスジェニックマウスにおける、内因性定常領域と連結したヒト免疫グロブリン可変領域配列をコードする転写物を説明するために仮定された(Shimizuら, 1989, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 86:8020)。さらに、c-mybプレRNAのトランススプライシングが実証されており(Vellard, M.ら, Proc. Nat'l. Acad. Sci., 1992 89:2511-2515)、そしてさらに最近、お互いにトランススプライスされたクローンSV40からのRNA転写物が培養細胞および核抽出物中に検出された(Eulら, 1995, EMBO. J. 14:3226)。しかし、哺乳動物プレmRNAの天然トランススプライシングは稀な事象であると考えられる(Flouriot G.ら, 2002 J. Biol. Chem;Finta, C.ら, 2002 J. Biol Chem 277:5882-5890)。
【0011】
In vitroトランススプライシングがスプライシングの機構を試験するためのモデル系としていくつかのグループにより利用されてきた(Konarska & Sharp, 1985, Cell 46:165-171;Solnick, 1985, Cell 42:157;ChiaraおよびReed, 1995, Nature 375:510;PasmanおよびGarcia-Blanco, 1996, Nucleic Acids Res. 24:1638)。お互いに塩基対合し得るRNA間では適当に効率的なトランススプライシング(類似したシススプライシングの30%)が達成されるものの、塩基対合により係留されていないRNAのスプライシングは10倍だけさらに減少した。他のin vitroトランス−スプライシング反応として、基質間の明らかなRNA-RNA相互作用を必要としないものがChiara & Reed(1995, Nature 375:510), Bruzik J.P. & Maniatis, T.(1992, Nature 360:692)ならびにBruzik J.P.およびManiatis, T.,(1995, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 92:7056-7059)により観察された。これらの反応は比較的低い頻度で起こり、特殊なエレメント、例えば下流5'スプライシング部位またはエキソンのスプライシングエンハンサーを必要とする。
【0012】
複数のタンパク質が前駆体mRNAと結合して次いでRNAを正しく切断しかつ接合することに関わるスプライシング機構に加えて、第3の機構はイントロン自体によるRNAの切断および連結に関わり、それ故に触媒RNA分子またはリボザイムと呼ばれる。個々の「ハイブリダイゼーション」領域をリボザイム中に遺伝子操作で作ることにより、特定のRNA分子に対するリボザイムの切断活性が標的化される。標的RNAとハイブリダイズすると、リボザイムの触媒領域は標的を切断する。かかるリボザイム活性は、外来の異常なRNAの産生により特徴づけられるヒト疾患の治療のためなどに、標的RNAをin vivo不活性化または切断するのに有用でありうることが示唆されている。かかる場合には、小RNA分子を標的RNAとハイブリダイズするように設計して、標的RNAとの結合により標的RNAの翻訳を阻害させるかまたはヌクレアーゼの活性化を介してRNAの破壊を起こさせる。アンチセンスRNAの使用も、特定のRNAを標的化しかつ破壊する代替的な機構として提案されている。
【0013】
テトラヒメナ(Tetrahymena)のグループIリボザイムを用いて、標的化トランススプライシングが大腸菌(E. coli)(Sullenger B.A.およびCech. T.R., 1994, Nature 341:619-622)、マウス繊維芽細胞(Jones, J.T.ら, 1996, Nature Medicine 2:643-648)、ヒト繊維芽細胞(Phylacton, L.A.ら Nature Genetics 18:378-381)およびヒト赤血球前駆体(Lanら, 1998, Science 280:1593-1596)において実証された。RNAを改変する臨床関連技法の総括については、SullengerおよびGilboa, 2002 Nature 418:252-8を参照されたい。本発明は、標的とするmRNAのコード配列を再プログラムまたは改変するための、自然の哺乳動物スプライシング機構、すなわち、スプライセオソームが介在する標的化トランス−スプライシングに関する。
【0014】
米国特許第6,083,702号、第6,013,487号および第6,280,978号は、標的前駆体mRNAと接触させることによりトランス−スプライシング反応に介在して新規のキメラRNAを作製するための、PTMの使用を記載している。本明細書に引用された全ての参考文献は、本明細書に参照によりその全てが援用される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、豊富に発現される前駆体メッセンジャーRNA分子(標的プレmRNA)を標的としかつ目的のタンパク質またはポリペプチドのコード配列を含有するRNAトランススプライシングを介して、新規の核酸分子を作製する方法および組成物を提供する。本発明の組成物は、豊富に発現される標的プレmRNAと相互作用しかつトランススプライシング反応に介在して、目的のタンパク質またはポリペプチドをコードすることができる新規のキメラRNA分子(キメラRNA)の作製をもたらすように設計された、プレ-トランススプライシング分子(PTM)を含んでなる。豊富に発現される標的プレmRNAは、アルブミン、カゼイン、ミオシンおよびフィブロイン(アルブミンが好ましい)をコードするものから選択される。本発明の目的は、治療、診断または工業上重要な目的のタンパク質またはポリペプチドをコードする配列を含むキメラRNA分子の、ポリペプチドまたはタンパク質を大量に回収できる宿主動物におけるin vivo生産を開発することである。
【0016】
本発明の組成物はさらに、本発明のPTMを発現することができる組換えベクター系および上記PTMを発現する細胞を含む。本発明の方法は、PTMの一部分が標的プレmRNAの一部分にトランス−スプライシングされて、目的のタンパク質またはポリペプチドを発現しうるキメラRNA分子を生成する条件下で、本発明のPTMを標的プレmRNAと接触させることを包含する。
【0017】
本発明は、目的のタンパク質またはポリペプチドを大規模に大量生産する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、スプライセオソーム(spliceosome)が介在するトランススプライシング用に設計されたプレ-トランススプライシング分子(PTM)を含んでなる新規の組成物、および目的のタンパク質またはポリペプチドをコードする配列を含む新規のキメラRNA分子を作製するための、上記分子の使用に関する。PTMは目的のタンパク質またはポリペプチドを大規模に生産するために利用される。本発明の方法は、治療、診断または工業上重要でありうる目的のタンパク質またはポリペプチドの大規模生産を提供する。さらなる実施形態においては、本発明を用いて、例えば、細胞培養でキメラRNAを生産しかつ翻訳することにより、in vitroで目的のタンパク質またはポリペプチドを生産することができる。
【0019】
スプライセオソームが介在するトランススプライシングに使用する本発明のPTMは、(i)標的プレmRNAと特異的に結合するように設計された1以上の標的結合ドメイン、(ii)3'スプライスアクセプター部位および/または5'スプライスドナー部位を含む3'スプライス領域;および(iii)目的のタンパク質またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。PTMはさらにブランチポイント、ピリミジントラクトおよびスプライス部位と標的結合ドメインを分離する1以上のスペーサー領域を含んでもよい(図2参照)。
【0020】
本発明の方法は、本発明のPTMを、PTMの一部分が標的プレmRNAの一部分へトランススプライシングされて目的のタンパク質またはポリペプチドをコードする配列を含む新規キメラRNA分子を生成する条件下で、豊富に発現される標的プレmRNAと接触させるステップを包含する(図3を参照)。
【0021】
豊富に発現されるプレmRNAとしては、アルブミンをコードするRNAを一次標的として選択することができる、その理由はこれが豊富に発現されるプレmRNAであるからである。しかしまた、豊富に発現される他の転写物(即ち、転写産物)、例えば、限定されるものでないが、ヒトおよび他の動物の乳に豊富に発現される乳房組織中のカゼイン転写物を選択してもよい。さらなる豊富に発現される転写物としては、ミオシン(筋肉細胞中の)およびフィブロインをコードする転写物が挙げられる。
【0022】
アルブミンプレmRNAを選んでもよく、その理由は、アルブミンの血清濃度が十分に高い、すなわち45〜50mg/mlの範囲にあるからである(図4を参照)。例えば、抗体配列をアルブミンプレmRNAへトランススプライシングすると、血液中に発現される免疫グロブリン分子が高濃度になりうる。アルブミンプレmRNA標的の中程度の5%変換であってもなお、血液中で有意に高い抗体濃度、すなわち、治療濃度の産生をもたらしうる。
【0023】
本発明は、目的のタンパク質またはポリペプチドを大規模に大量生産する方法であって、哺乳動物に本発明のPTMを投与するステップ、PTMの一部分が豊富に発現される標的プレmRNAの一部分にトランススプライシングされて目的のタンパク質またはポリペプチドを発現するキメラRNA分子を生成する条件下で、PTMの一部分を標的プレmRNAと接触させるステップ、哺乳動物から体液を採集するステップ、およびその体液を処理して目的のタンパク質またはポリペプチドを得るステップを含んでなる、上記方法を提供する。
【0024】
プレ-トランススプライシング分子の構造
本発明は、標的化トランススプライシングを介して新規キメラ核酸分子を作製するのに使用する組成物を提供する。本発明のPTMは、(i)PTMの標的プレmRNAとの結合を標的化する1以上の標的結合ドメイン、(ii)3'スプライスアクセプター部位および/または5'スプライスドナー部位を含む3'スプライス領域;ならびに(iii)目的のタンパク質またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0025】
本発明のPTMはまた、次の特徴の少なくとも1つを含んでもよい:(a)標的イントロンの3'または5'スプライスシグナルに密接したイントロン配列を標的化する結合ドメイン、(b)ミニイントロン、ならびに(c)ISAR(イントロンスプライシングアクチベーターおよびリプレッサー)コンセンサス結合部位。本発明のPTMはさらにRNAスプライス部位を標的結合ドメインから分離する1以上のスペーサー領域を含んでもよい。
【0026】
PTMの一般設計、構築および遺伝子工学、ならびにスプライセオソームが介在する細胞内トランススプライシング反応を首尾よく媒介するPTMの能力の実証は、米国特許第6,083,702号、第6,013,487号および第6,280,978号、ならびに米国特許出願第09/756,095号、第09/756,096号、第09/756,097号、第09/838,858号、第10/076,248号および第09/941,492号に詳しく記載されていて、それらの開示は参照によりその全文が本明細書に援用される。
【0027】
PTMの標的結合ドメインは、PTMに標的プレmRNAとの結合アフィニティを付与する。本明細書に使用される標的結合ドメインは、結合の特異性を付与して標的プレmRNAをPTMの直ぐ近くの場所に固着させるいずれかの分子、すなわち、ヌクレオチド、タンパク質、化合物などとして定義され、それによって、核のスプライセオソームプロセシング機構は合成PTMの一部分をアルブミンプレmRNAの一部分にトランススプライシングできるようになる。
【0028】
PTMの標的結合ドメインは、標的プレmRNAの標的化領域と相補的かつアンチセンス方向である複数の結合ドメインを含有しうる。その標的結合ドメインは数千個までのヌクレオチドを含みうる。本発明の好ましい実施形態においては、その結合ドメインは少なくとも10〜30個でかつ数百個以上のヌクレオチドを含みうる。PTMの特異性は、標的結合ドメインの長さを増加することにより有意に増加させることができる。例えば、標的結合ドメインは数百個以上のヌクレオチドを含みうる。絶対的な相補性は好ましいが、必要でない。本明細書で使用される、RNAの一部分との配列「相補性」は、標的プレmRNAとハイブリダイズして安定な二重鎖を形成しうるのに十分な相補性を有する配列を意味する。ハイブリダイズする能力は、相補性の程度と核酸の長さの両方に依存しうる(例えば、Sambrookら, 1989, 「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkを参照)。一般に、ハイブリダイズする核酸が長いほど、それが含有するRNAとの塩基ミスマッチは多いが、それでも安定な二重鎖を形成しうる。当業者は、ハイブリダイズした複合体の安定性を決定する標準手順を用いることにより、二重鎖の許容されるミスマッチの程度または長さを確認することができる。
【0029】
特定の実施形態においては、PTMの結合ドメインは標的プレmRNA中の特定の配列を標的化して、標的プレmRNAから誘導される配列の数を低減する。例えば、標的プレmRNAのイントロン配列を標的化すると、キメラRNA分子中の標的プレmRNA由来の配列の数が最も少なくなる。
【0030】
結合はまた、他の機構、例えば、三重らせん形成、アプタマー相互作用、抗体相互作用またはタンパク質/核酸相互作用(その場合、PTMは、特定のRNA結合タンパク質、すなわち、特定の標的プレmRNAと結合したタンパク質を認識するように遺伝子操作で作製される)などを介して達成することができる。
【0031】
本発明による豊富に発現される標的プレmRNAはいずれの豊富な転写物であってもよい(例えば、図5を参照)。好ましくは、標的プレmRNAはアルブミンまたはカゼインプレmRNAである。しかし、標的は同様に植物中の豊富な転写物、例えばクロロフィルII結合タンパク質であってもよい。
【0032】
本発明の特定の実施形態においては、標的結合ドメインは、apoA-1、apoB、またはアルブミン標的プレmRNAの配列と相補的かつアンチセンス方向であり、PTMをトランススプライシングの標的に対して接近した近位に保持する。例えば、標的結合ドメインは、結合の特異性を付与して、apoA-1、またはapoB、またはアルブミンプレmRNAをPTMに接近した場所に固着させる分子、すなわち、ヌクレオチド、タンパク質、化合物、などと定義することができ、それによって、核のスプライセオソームプロセシング機構はPTMの一部分をapoA-1、apoB、またはアルブミン標的プレmRNAの一部分にトランススプライシングすることができる(例えば、図6を参照)。
【0033】
本発明の他の特定の実施形態においては、標的結合ドメインは、α(s1)カゼイン、α(s2)カゼイン、βカゼインまたはκカゼイン標的プレmRNAの配列と相補的かつアンチセンス方向であり、PTMをトランススプライシングの標的に対して接近した近位に保持する。例えば、標的結合ドメインは、結合の特異性を付与して、α(s1)カゼイン、α(s2)カゼイン、βカゼインまたはκカゼイン標的プレmRNAをPTMに接近した場所に固着させる分子、すなわち、ヌクレオチド、タンパク質、化合物、などと定義することができ、それによって、核のスプライセオソームプロセシング機構はPTMの一部分をα(s1)カゼイン、α(s2)カゼイン、βカゼインまたはκカゼイン標的プレmRNAの一部分にトランススプライシングすることができる。
【0034】
PTM分子はまた、3'スプライスアクセプターAG部位および/または5'スプライスドナー部位を含む3'スプライス領域も含有する。3'スプライス領域はさらに、ブランチポイントおよびポリピリミジントラクトを含んでもよい。RNAスプライシングに用いられる5'スプライスドナー部位および3'スプライス領域に対するコンセンサス配列は当技術分野で周知である(Mooreら, 1993, The RNA World, Cold Spring Harbor Laboratory Press, p.303-358を参照)。さらに、5'ドナースプライス部位および3'スプライス領域として機能する能力を維持する改変コンセンサス配列を本発明の実施において使用することができる。概要を述べると、5'スプライス部位コンセンサス配列はAG/GURAGU(ここで、A=アデノシン、U=ウラシル、G=グアニン、C=シトシン、R=プリン、および/=スプライス部位)(配列番号1)である。3'スプライス部位は3つの別々の配列エレメント:ブランチポイントまたはブランチ部位、ポリピリミジントラクトおよび3'コンセンサス配列(YAG)から成る。哺乳動物中のブランチポイントコンセンサス配列はYNYURAC(Y=ピリミジン;N=いずれかのヌクレオチド)(配列番号2)である。下線を引いたAはブランチ形成部位である。ポリピリミジントラクトはブランチポイントとスプライス部位アクセプターとの間に位置し、色々なブランチポイント利用と3'スプライス部位認識にとって重要である。最近、ジヌクレオチドAUで始まりかつジヌクレオチドACで終わるプレmRNAイントロンが同定され、U12イントロンと呼ばれている。U12イントロン配列、ならびにスプライスアクセプター/ドナー配列として機能するいずれかの配列もまた、本発明のPTMを作製するために使用することができる。
【0035】
RNAスプライス部位を標的結合ドメインから分離する1以上のスペーサー領域もPTM中に含まれうる。スペーサー領域を、(i)いずれかの非スプライスPTMの翻訳をブロックするように機能しうる停止コドンおよび/または(ii)標的プレmRNAへのトランススプライシングを促進する配列などの特徴を含むように設計することもできる。
【0036】
目的のタンパク質またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列も本発明のPTMに含まれる。本発明のPTMは、標的プレmRNAへトランススプライシングされると、機能性の目的のタンパク質またはポリペプチドをコードすることができるキメラRNAを形成しうるエキソン配列を含有してもよい。PTMを遺伝子操作して、様々な組換えタンパク質またはポリペプチドのエキソン配列を含有させることができる。目的のタンパク質またはポリペプチドは、サイトカイン、成長因子、例えばエポゲン、インスリン、ヒト成長因子、ホルモン、酵素および抗体ポリペプチドからなる群より選択することができる。さらに、コードされる目的のタンパク質またはポリペプチドは、商業的に生産するのが高価である治療用タンパク質、例えば、ApoA1またはApoA1ミラノ変異体であってもよい。
【0037】
本発明のPTMを遺伝子操作して、単一エキソン配列、複数のエキソン配列、あるいは、目的の抗原をコードするエキソン配列の完全なセットを含有させることができる。PTMに用いられる配列の数と同一性は、トランススプライシング反応のタイプ、すなわち、起こりうる5'エキソン置換、3'エキソン置換または内部エキソン置換に依存しうる(図7を参照)。
【0038】
本発明のある実施形態においては、非特異的トランススプライシングを防止する「安全性」もスペーサー、結合ドメイン、またはPTMのいたるところに組み込まれる。これはPTMの3'および/または5'スプライス部位のエレメントを比較的弱い相補性によりカバーして非特異的トランススプライシングを防止するPTMの領域である。PTMは、PTMの結合/標的化部分がハイブリダイゼーションすると、3'および/または5'スプライス部位のカバーが外されて完全に活性化するように設計される。
【0039】
かかる「安全性」配列は、1以上のシス配列の相補性伸長部(または核酸の第2の、別の鎖でありうる)を含み、これはPTMブランチポイント、ピリミジントラクト、3'スプライス部位および/または5'スプライス部位(スプライシングエレメント)の片側または両側と結合するか、またはスプライシングエレメント自体の部分と結合しうる。この「安全性」結合は、スプライシングエレメントが活性になるのを防止する(すなわち、U2 snRNPまたは他のスプライシング因子がPTMスプライス部位認識エレメントと結合することをブロックする)。「安全性」の結合は、PTMの標的結合領域の標的プレmRNAとの結合により破壊され、こうしてPTMスプライシングエレメントを曝しかつ活性化しうる(それらが標的プレmRNAへのトランススプライシングに利用しうるようにする)。
【0040】
ステム-ループ構造を形成することができるヌクレオチド配列も本発明のPTMに含まれうる。
【0041】
本発明はさらに、PTMのコード領域を遺伝子操作してミニイントロンを含有させたPTM分子を提供する。ミニイントロンのPTMのコード配列中への挿入は、エキソンの解像度を増加しかつPTMドナー部位の認識を促進するように設計される。PTMのコード領域中に挿入されるミニイントロン配列としては、小さい天然のイントロン、あるいは、合成ミニイントロンを含む任意のイントロン配列が挙げられ、それには、5'コンセンサスドナー部位、ならびにブランチポイント、3'スプライス部位およびいくつかの場合にはピリミジントラクトを含む3'コンセンサス配列が含まれる。
【0042】
ミニイントロン配列は好ましくはほぼ60〜150ヌクレオチドの長さであるが、もっと長いミニイントロン配列も使用することができる。本発明のある好ましい実施形態においては、ミニイントロンは内因性イントロンの5'および3'端末を含む。本発明の好ましい実施形態においては、5'イントロン断片はほぼ20ヌクレオチドの長さでありかつ3'端末はほぼ40ヌクレオチドの長さである。
【0043】
本発明の特定の実施形態においては、次の配列を含む528ヌクレオチドのイントロンを利用することができる。該イントロン構築物の配列は次の通りである:
5'断片配列:(配列番号3)
Gtagttcttttgttcttcactattaagaacttaatttggtgtccatgtctctttttttttctagtttgtagtgctggaaggtatttttggagaaattcttacatgagcattaggagaatgtatgggtgtagtgtcttgtataatagaaattgttccactgataatttactctagttttttatttcctcatattattttcagtggctttttcttccacatctttatattttgcaccacattcaacactgtagcggccgc.
3'断片配列:(配列番号4)
Ccaactatctgaatcatgtgccccttctctgtgaacctctatcataatacttgtcacactgtattgtaattgtctcttttactttcccttgtatcttttgtgcatagcagagtacctgaaacaggaagtattttaaatattttgaatcaaatgagttaatagaatctttacaaataagaatatacacttctgcttaggatgataattggaggcaagtgaatcctgagcgtgatttgataatgacctaataatgatgggttttatttccag.
さらに本発明の他の特定の実施形態においては、コンセンサスISAR配列が本発明のPTM中に含まれる(Jonesら, NAR 29:3557-3565)。タンパク質はISARスプライシングアクチベーターおよびリプレッサーコンセンサス配列と結合し、この配列はU1SnRNPによる5'スプライス部位認識に必要であるウリジン-リッチ領域を含む。18ヌクレオチドISARコンセンサス配列は次の配列を含む:GGGCUGAUUUUUCCAUGU(配列番号5)。本発明のPTM中に挿入されるとき、ISARコンセンサス配列はイントロン配列の5'ドナー部位の密接した近位のPTMの構造中に挿入される。本発明のある実施形態においては、ISAR配列は5'ドナー部位から100ヌクレオチド内に挿入される。本発明の好ましい実施形態においては、ISAR配列は5'ドナー部位から50ヌクレオチド内に挿入される。本発明のさらに好ましい実施形態においては、ISAR配列は5'ドナー部位から20ヌクレオチド内に挿入される。
【0044】
本発明の組成物はさらに、遺伝子操作によってシス作用性リボザイム配列を含ませたPTMを含む。かかる配列を含ませるのは、トランススプライシングの非存在のもとでのPTM翻訳を低下させたりまたは特定の長さもしくは定義された端末をもつPTMを産生するために設計される。PTM中に挿入しうるリボザイム配列としては、シス作用性(自己切断性)RNAスプライシング反応に介在することができる任意の配列が挙げられる。かかるリボザイムとしては、限定されるものでないが、ハンマーヘッド、ヘアピンおよび肝炎デルタウイルスリボザイムが挙げられる(Chowら 1994, J Biol Chem 269:25856-64を参照)。
【0045】
本発明のある実施形態においては、スプライシングエンハンサー、例えば、エキソンスプライシングエンハンサーと呼ばれる配列も合成PTMの構造に含まれうる。トランス作用性スプライシング因子、すなわち、セリン/アルギニン-リッチ(SR)タンパク質はかかるエキソンスプライシングエンハンサーと相互作用してスプライシングをモジュレートすることが示されている(Tackeら, 1999, Curr. Opin. Cell Biol. 11:358-362;Tianら, 2001, J. Biological Chemistry 276:33833-33839;Fu, 1995, RNA 1:663-680を参照)。核局在化シグナルもPTM分子中に含まれうる(DingwellおよびLaskey、1986、Ann .Rev. Cell Biol. 2:367-390;DingwellおよびLaskey、1991、Trends in Biochem. Sci. 16:478-481)。かかる核局在化シグナルを用いて、トランススプライシングが起こる核中への合成PTMの輸送を促進することができる。
【0046】
さらなる特徴、例えば、RNA発現/安定性を改変するポリアデニル化シグナル、またはスプライシングを促進する5'スプライス配列、さらなる結合領域、「安全性」-自己相補性領域、さらなるスプライス部位、または分子の安定性をモジュレートしかつ分解を防止する保護基をPTM分子に加えることができる。停止コドンをPTM構造中に含ませて無スプライスPTMの翻訳を阻止してもよい。エレメント、例えば、3'ヘアピン構造、環状RNA、ヌクレオチド塩基修飾、または合成類似体をPTM中に組み込んで、核局在化およびスプライセオソーム組込み、ならびに細胞内安定性を促進または助長することができる。
【0047】
トランススプライシングの結果として産生する目的のタンパク質またはポリペプチドの採集を容易にするために、配列タグをPTM中に組み込んでもよい。タグは、キメラRNA分子の目的産物である発現されたタンパク質またはポリペプチドのアフィニティ精製を促進する。
【0048】
PTMをさらに遺伝子操作して、発現されたキメラRNA分子のタンパク質生成物から成熟した生物学的に活性な目的のタンパク質またはポリペプチドの単離を容易にする切断部位を組み込ませることができる。
【0049】
分泌シグナル伝達配列を組み込んで発現された目的のタンパク質またはポリペプチドの分泌を増加させることができる。
【0050】
スプライセオソームが介在するトランススプライシング反応用に設計された上記PTM分子に加えて、核酸分子も、リボザイムが介在する(グループIおよびグループII)またはtRNAエンドヌクレアーゼが介在するトランススプライシング反応用に設計することができる。
【0051】
特異的PTMをin vitroで合成する時(合成PTM)、かかるPTMを塩基部分、糖部分、またはリン酸主鎖において修飾し、例えば、分子の安定性、標的mRNAとのハイブリダイゼーション、細胞中への輸送などを改善することができる。例えば、全電荷を低下させるPTMの修飾により、分子の細胞取込みを促進することができる。さらに、ヌクレアーゼまたは化学的分解に対する感受性を低下させるように修飾を施すことができる。核酸分子を、他の分子、例えばペプチド(例えば、in vivoで宿主細胞レセプターを標的化するために)、または細胞膜(例えば、Letsingerら, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6553-6556;Lemaitreら, 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. 84:648-652;PCT公開公報W0 88/09810、1988年12月15日)または血液脳関門(例えば、PCT公開公報W0 89/10134、1988年4月25日を参照)を横切る輸送を容易にする薬剤、ハイブリダイゼーションをトリガーする切断剤(例えば、Krolら, 1988, BioTechniques 6:958-976を参照)またはインターカレーション剤(例えば、Zon, 1988, Pharm. Res. 5:539-549)と結合するように合成してもよい。この目的では、核酸分子を他の分子、例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーションがトリガーする架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーションがトリガーする切断剤などと結合させてもよい。
【0052】
ある特定の事例においては、アルブミン起源のアミノ酸を切断して精製された生物学的に活性な目的のタンパク質を得ることが必要である。これは、遺伝子操作によって、例えばアルブミン起源の部分と目的の組換えタンパク質との間の接合部にプロテアーゼ部位を設けるなどの標準の方法により達成することができる。1つの例はTEVプロテアーゼである。他の方法はペプチドを例えば、カルモジュリン結合ドメインを用いて標識する方法である。これらの方法は、目的のタンパク質中のこれらのアミノ酸だけを得て、アルブミンまたは他の標的由来のアミノ酸を得ないために広く利用されている。
【0053】
細胞内安定性および半減期を増加する手段として、核酸分子に対する様々な他の周知の修飾を導入することができる。可能な修飾としては、限定されるものでないが、リボヌクレオチドの隣接配列の、核酸分子の5'および/または3'端末への付加が挙げられる。安定性の増加が所望されるいくつかの状況では、2'-O-メチル化などの修飾されたヌクレオシド間結合を有する核酸が好ましい。修飾されたヌクレオシド間結合を含有する核酸は、当技術分野で周知の試薬と方法を用いて合成することができる(Uhlmannら, 1990, Chem. Rev. 90:543-584;Schneiderら, 1990, Tetrahedron Lett. 31:335およびそれらの引用文献を参照)。
【0054】
本発明のPTMは、細胞内のその安定性を増加させる方法で修飾されていることが好ましい。RNA分子は細胞リボヌクレアーゼによる切断に感受性があるので、競合性インヒビターとして、RNA結合配列の作用を模倣するがヌクレアーゼ切断に対する感受性の低い化学修飾されたオリゴヌクレオチド(またはオリゴヌクレオチドの組み合わせ)を用いることが好ましい。さらに、ヌクレアーゼ分解を防止するために、合成PTMを高い安定性を有するヌクレアーゼ耐性環状分子として作ることができる(Puttarajuら, 1995, Nucleic Acids Symposium Series No. 33:49-51;Puttarajuら, 1993, Nucleic Acid Research 21:4253-4258)。他の修飾、例えば、結合を促進する、細胞取込みを促進する、動力学を改善する、または他の所望の特徴を改善する修飾が必要なこともありうる。
【0055】
合成PTMの構造に対してなしうる修飾としては、限定されるものでないが、次を使用する主鎖修飾が挙げられる:
(i)ホスホロチオアート(XまたはYまたはWまたはZ=S、あるいは、Oとしての残部との2以上の任意の組み合わせ)。例えばY=S(Stein, C. A.ら, 1988, Nucleic Acids Res., 16:3209-3221)、X=S(Cosstick, R.ら, 1989, Tetrahedron Letters, 30, 4693-4696)、YおよびZ=S(Brill, W. K.-D.ら, 1989, J. Amer. Chem. Soc., 111:2321-2322);(ii)ホスホン酸メチル。例えばZ=メチル(Miller, P. S.ら, 1980, J. Biol. Chem., 255:9659-9665);(iii)ホスホロアミダイト(Z=N-(アルキル)2、例えばアルキルはメチル、エチル、ブチル、Z=モルホリンまたはピペラジン)(Agrawal, S.ら, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:7079-7083)(XまたはW=NH)(Mag, M.ら, 1988, Nucleic Acids Res., 16:3525-3543);(iv)リン酸トリエステル(Z=O-アルキル、例えばアルキルはメチル、エチル、他)(Miller, P. S.ら, 1982, Biochemistry, 21:5468-5474);および(v)リン非含有連鎖(例えばカルバメート、アセトアミデート、アセテート)(Gait, M. J.ら, 1974, J. Chem. Soc. Perkin I, 1684-1686;Gait, M. J.ら, 1979, J. Chem. Soc. Perkin I, 1389-1394)。
【0056】
さらに、糖修飾を本発明のPTMに組み込むことができる。かかる修飾としては、次の使用が挙げられる:(i)2'-リボヌクレオシド(R=H);(ii)2'-O-メチル化ヌクレオシド(R=OMe)(Sproat, B. S.ら, 1989, Nucleic Acids Res., 17:3373-3386);および(iii)2'-フルオロ-2'-リボキシヌクレオシド(R=F)(Krug, A.ら, 1989, Nucleosides and Nucleotides, 8:1473-1483)。
【0057】
さらに、PTMになしうる塩基修飾としては、限定されるものでないが、次の使用が挙げられる:(i)5-位置で置換された(例えばメチル、ブロモ、フルオロ他)またはカルボニル基をアミノ基と置換した(Piccirilli, J. A.ら, 1990, Nature, 343:33-37)ピリミジン誘導体;(ii)特異的窒素原子を欠く(例えば、7-デアザアデニン、ヒポキサンチン)または8-位置が官能化された(例えば、8-アジドアデニン、8-ブロモアデニン)プリン誘導体(総括はJones, A. S., 1979, Int. J. Biolog. Macromolecules, 1:194-207を参照)。
【0058】
さらに、PTMは反応性官能基、例えば:(i)ソラレン(Miller, P. S.ら, 1988, Nucleic Acids Res., Special Pub. No. 20, 113-114)、フェナントロリン(Sun, J-S.ら, 1988, Biochemistry, 27:6039-6045)、マスタード(Vlassov, V. V.ら, 1988, Gene, 72:313-322)(共試薬の必要なまたは不必要な不可逆性架橋剤);(ii)アクリジン(インターカレーション剤)(Helene, C.ら, 1985, Biochimie, 67:777-783);(iii)チオール誘導体(タンパク質との可逆性ジスルフィド生成)(Connolly, B. A.,およびNewman, P. C., 1989, Nucleic Acids Res., 17:4957-4974);(iv)アルデヒド(シッフ塩基の生成);(v)アジド、ブロモ基(UV架橋);または(vi)エリプチシン(光分解性架橋)(Perrouault, L.ら, 1990, Nature, 344:358-360)と共有結合していてもよい。
【0059】
本発明のある実施形態においては、糖とヌクレオシド間の連鎖(すなわちヌクレオチド単位の主鎖)を新規の基により置換したオリゴヌクレオチド模倣物を使用することができる。例えば、天然オリゴヌクレオチドより高いアフィニティでDNAおよびRNAと結合することが示されているかかるオリゴヌクレオチド模倣物は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる(総括については、Uhlmann、E. 1998、Biol. Chem. 379:1045-52を参照)。従って、PNAを合成PTM中に組み込んで、標的プレmRNAに対するそれらの安定性および/または結合アフィニティを増加させることができる。
【0060】
本発明の他の実施形態においては、PTMは親油基または細胞による取込みを改善できる試薬と共有結合していてもよい。例えば、PTM分子は、次の基または試薬と共有結合していてもよい:(i)コレステロール(Letsinger, R. L.ら, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:6553-6556);(ii)ポリアミン(Lemaitre, M.ら, 1987, Proc. Natl. Acad. Sci, USA, 84:648-652);PTMを細胞に送達する効率を改善する他の可溶性ポリマー(例えばポリエチレングリコール)。さらに、上記の同定された修飾の組合わせを利用して安定性およびPTMの標的細胞中への送達を増加させてもよい。本発明のPTMを、標的細胞内で新規キメラRNAを産生するように設計した方法で使用することもできる。
【0061】
本発明の方法は、当業者が利用するいずれの形態であってもよいPTM、例えば本発明のPTMに対応するRNA分子、またはDNAベクター(RNA分子に転写される)を標的細胞へ送達する方法を含むものであり、その場合、上記PTMは標的プレmRNAと結合しかつトランススプライシング反応に介在して、目的のタンパク質またはポリペプチドを発現するキメラmRNAの生成をもたらす。
【0062】
トランススプライシング分子の合成
本発明の核酸分子はRNAもしくはDNAまたは誘導体もしくはそれらの修飾されたバージョンであって、一本鎖または二本鎖であってよい。核酸は、PTM分子、リボザイムまたはt-RNAエンドヌクレアーゼに基づく核酸分子、またはPTM分子、リボザイムまたはt-RNAエンドヌクレアーゼに基づく核酸分子をコードする核酸分子であって、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオシドから構成されようとも、またリン酸ジエステル連鎖または修飾された連鎖から構成されようとも、上記核酸分子を意味する。用語「核酸」はまた、具体的には、5種の生物に存在する塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシンおよびウラシル)以外の塩基から構成される核酸も含む。さらに、本発明のPTMは、PTMの安定性を増強するように設計されたDNA/RNA、RNA/タンパク質またはDNA/RNA/タンパク質キメラ分子も含みうる。
【0063】
本発明のPTMは核酸分子を合成するための当技術分野で公知の任意の方法により調製してもよい。例えば、市販される試薬および合成機を用いて当技術分野で周知の方法により化学的に核酸を合成することができる(例えば、Gait, 1985, Oligonucleotide Snthesis: A Practical Approach, IRL Press, Oxford, Englandを参照)
あるいは、合成PTMは目的のPTMをコードするDNA配列のin vitro転写により作製することができる。かかるDNA配列を様々なベクター中へ、好適なRNAポリメラーゼプロモーター、例えばT7、SP6、またはT3ポリメラーゼプロモーターの下流に組み込むことができる。コンセンサスRNAポリメラーゼプロモーター配列としては次が挙げられる:
T7: TAATACGACTCACTATAGGGAGA(配列番号6)
SP6:ATTTAGGTGACACTATAGAAGNG(配列番号7)
T3: AATTAACCCTCACTAAAGGGAGA(配列番号8)。
【0064】
下線部の塩基は転写中にRNAに組み込まれる第1塩基である。下線は効率的な転写に必要な最小配列を示す。
【0065】
RNAは、SPS65およびBluescript(Promega Corporation, Madison, WI)などのプラスミドを用いるin vitro転写を介して、高収率で産生させることができる。さらに、Q-β増幅などのRNA増幅法を利用して目的のPTMを産生させることができる。
【0066】
PTMは当技術分野で周知のいずれかの好適な手段により精製することができる。例えば、PTMをゲル濾過、アフィニティまたは抗体相互作用、逆相クロマトグラフィまたはゲル電気泳動により精製してもよい。勿論当業者は、精製法が精製すべき核酸のサイズ、電荷および形状に部分的に依存しうることを理解している。
【0067】
本発明のPTMは、化学的、in vitro、またはin vivoのいずれで合成しようとも、修飾または置換されたヌクレオチドの存在のもとでPTMの安定性、標的プレmRNAへの取込みまたは結合を増加するように合成することができる。さらに、PTMの合成後に、PTMをペプチド、化学剤、抗体、または核酸分子を用いて修飾して、例えば、PTM分子の物理的性質を増強することができる。かかる修飾は当業者には周知である。
【0068】
PTMをコードする核酸分子を利用する場合には、当技術分野で公知のクローニング技法を用いて核酸分子の発現ベクター中へのクローニングを行うことができる。利用しうる組換えDNA技法の技術分野で公知の方法は、Ausubelら(編), 1993, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY;およびKriegler, 1990, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NYに記載されている。
【0069】
目的のPTMをコードするDNAを、DNAの複製を大規模で提供しかつPTMの転写を指令するために必要なエレメントを含有する様々な宿主ベクター系中に遺伝子組換えすることができる。かかる構築物を用いて患者の標的細胞にトランスフェクトすることと、内因的に発現されるプレmRNA標的と相補的な塩基対を生成するのに十分な量のPTMの転写が得られ、それによって複合した核酸分子間のトランススプライシング反応を促進することができる。例えば、細胞により取込まれてPTM分子の転写を指令するように、ベクターをin vivoで導入することができる。かかるベクターは、転写されて所望のRNA、すなわち、PTMを産生し得る限り、エピソームのまま残ってもまたは染色体に組み込まれてもよい。かかるベクターは、当技術分野で標準の組換えDNA技法により構築することができる。
【0070】
目的のPTMをコードするベクターは、哺乳動物細胞における複製および発現のに使用されるプラスミド、ウイルス性、または当技術分野で公知の他のベクターであってもよい。PTMをコードする配列の発現を、哺乳動物、好ましくはヒトの細胞において作用することが当技術分野で公知のいずれのプロモーター/エンハンサー配列により調節してもよい。かかるプロモーター/エンハンサーは誘導性または構成的であってもよい。かかるプロモーターとしては、限定されるものでないが、次が挙げられる:SV40初期プロモーター領域(Benoist, C.およびChambon, P. 1981, Nature 290:304-310)、ラウス肉腫ウイルスの3'長末端反復配列中に含有されるプロモーター(Yamamotoら, 1980, Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら, 1982, Nature 296:39-42)、ウイルスのCMVプロモーター、ヒト絨毛性ゴナドトロピン-βプロモーター(Hollenbergら, 1994, Mol. Cell. Endocrinology 106:111-119)など。
【0071】
いずれのタイプのプラスミド、コスミド、YACまたはウイルスベクターを用いて、組織部位中に直接導入しうる組換えDNA構築物を調製してもよい。あるいは、所望の標的細胞に選択的に感染するウイルスベクターを用いてもよい。本発明の実施に用いるベクターとしてはいずれかの真核生物の発現ベクター、限定されるものでないが、ウイルス発現ベクター、例えばレトロウイルス、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスのクラス由来のウイルス発現ベクターが挙げられる。
【0072】
いくつもの選択系を利用してもよく、限定されるものでないが、tk-、hgprt-またはaprt-欠損細胞における、それぞれ、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼおよびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼタンパク質の発現に対する選択が挙げられる。また、抗代謝性耐性を選択の基礎として、ジヒドロ葉酸トランスフェラーゼ(dhfr)(メトトレキセート耐性を付与する);キサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)(ミコフェノール酸耐性を付与する);ネオマイシン(ネオ)(アミノグリコシドG-418耐性を付与する);およびハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(ハイグロ)(ハイグロマイシン耐性を付与する)を用いることができる。本発明のある好ましい実施形態においては、細胞培養を低い比のベクター対細胞にて形質転換し、いずれの細胞においても単一ベクター、または限られた数のベクターだけが存在しうるようにする。
【0073】
トランススプライシング分子の使用と投与
本発明の組成物および方法は、目的のタンパク質またはポリペプチドを発現する配列を含有する新規キメラRNA分子を作製するように設計される。具体的には、二重トランススプライシング反応、3'エキソン置換および/または5'エキソン置換を含んでなるスプライセオソームが介在する標的化したトランススプライシングを用いて、かかるキメラRNAを作製することができる。さらにリボザイムまたはt-RNAが介在する標的化トランススプライシング反応を利用してキメラRNAを形成することができる。本発明の目的のタンパク質またはポリペプチドを発現する配列を含有するキメラRNA分子は翻訳されて目的のタンパク質またはポリペプチドを含むタンパク質産物を作製する。好ましくは、目的のタンパク質またはポリペプチドは、大規模な量で宿主哺乳動物の体液中に生産される。
【0074】
様々な送達系が公知であり、本発明の組成物を細胞中に導入するのに利用することができ、上記送達系としては、例えば、リポソーム内封入、微小粒子、マイクロカプセル、組成物を発現することができる組換え細胞、レセプターが介在するエンドサイトーシス(例えば、WuおよびWu、1987、J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照)、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスまたは他のベクターの一部分としての核酸の構築、DNAの注入、エレクトロポレーション、リン酸カルシウムが介在するトランスフェクションなどが挙げられる。
【0075】
1以上のPTMおよび送達系は、通常の投与方法、例えば静脈内または門脈内注入により哺乳動物に投与することができる産物を構成しうる。本発明の特定の実施形態においては、キメラRNA分子を循環全体に分布させうるが、豊富に発現される標的プレmRNAを発現する特定の細胞、例えば肝細胞、アルブミン合成部位、乳房上皮、カゼイン合成部位および筋肉細胞、ミオシン合成部位において活性でありうる。PTMはそのRNA型、すなわち、豊富に発現される標的プレmRNA中の標的化配列と結合するPTMの結合ドメインにおいて作用しうる。トランススプライシング後に、PTMのコードドメインは標的の規定された配列に挿入またはトランススプライシングされ、目的のタンパク質またはポリペプチドを含む産物を発現するキメラmRNAを生じる。
【0076】
アルブミン遺伝子は肝臓中に高度に発現されて、豊富な標的プレmRNAを与える。アルブミンを標的化することにより、発現される目的のタンパク質産物の血清濃度を、生理学的、生物学的に増加したレベルまたは治療レベルで発現させることができる。アルブミンは大きい哺乳動物、例えばウシにおいて、45〜50mg/mlのオーダーの血清濃度を有する。中度のトランススプライシング効率5%が得られれば、大量の発現される目的のタンパク質産物をin vivoで生産することができる。アルブミンの血漿濃度45mg/mlと中度のトランススプライシング効率5%を基準にすると、産物2.5mg/mlが作製される。目的のタンパク質またはポリペプチドを含有する産物は一般に、動物血清中に2〜5mg/mlで存在する。より高いスプライシング反応の効率では、組換えタンパク質の収率はさらに高くなりうる。これらの収率は、PTMを使用して大規模な量の組換えタンパク質およびポリペプチドを作製するという考えを支持する。
【0077】
カゼインペプチドの標的プレmRNAとして使用はまた、組換えタンパク質およびポリペプチドを大規模に生産する目的の達成を実現可能にする。カゼインタンパク質は乳タンパク質の80%を超える。発現されたキメラRNA分子のタンパク質産物は分泌され、哺乳動物、例えばウシから得られる乳より収穫することができる。
【0078】
PTMの宿主中への送達は直接(その場合、宿主を直接PTMまたは核酸分子をコードするPTMに曝す)であってもよく、または間接(その場合、宿主細胞を最初にPTMまたはPTMをコードする核酸分子によりin vitroで形質転換し、次いで宿主中に移植する)であってもよい。これらの2方式の手法は、それぞれin vivoまたはex vivo遺伝子送達として公知である。
【0079】
特定の実施形態においては、核酸を直接in vivo投与し、そこで発現させてPTMを産生させる。これは当技術分野で公知の多数の方法のいずれかにより実施することができ、例えば、上記核酸を適当な核酸発現ベクターの一部分として構築してそれを細胞内に投与する方法、例えば、欠陥のあるまたは弱毒化したレトロウイルスまたはその他のウイルスベクターを用いる感染による方法(米国特許第4,980,286号を参照)、または裸のDNAの直接注入による方法、または微小粒子ボンバードメント(例えば、遺伝子銃;Biolistic、Dupont, Bio-Rad)、または脂質もしくは細胞表面レセプターもしくトランスフェクト剤を用いるコーティング、リポソーム内封入、微小粒子、またはマイクロカプセルの使用による方法、または上記核酸を、核に進入することが公知のペプチドと連結して投与する方法、上記核酸をレセプターが介在するエンドサイトーシスに関わるリガンドと連結して投与する方法(例えば、WuおよびWu, 1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照)がある。
【0080】
特定の実施形態においては、PTMを含有するウイルスベクターを用いることができる。例えば、レトロウイルスウイルスベクターを用いてもよく、その場合、このレトロウイルスウイルスベクターはウイルスゲノムのパッケージングおよび宿主細胞DNAへの組込みに必要でないレトロウイルス配列を欠失するように改変してしておく(Millerら、1993、Meth. Enzymol. 217:581-599を参照)。レトロウイルスベクターにはレンチウイルスベクターも含まれる。あるいは、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスベクターを細胞または組織への遺伝子送達用に利用することができる(アデノウイルスに基づく遺伝子送達の総括については、KozarskyおよびWilson、1993、Current Opinion in Genetics and Development 3:499-503を参照)。
【0081】
本発明のある好ましい実施形態においては、アデノ随伴ウイルスベクターを用いてPTMをコードし得る核酸分子を送達することができる。ベクターは、所望の発現レベルに応じて、選択したプロモーターおよび/またはエンハンサーエレメントをベクター中に挿入できるように設計される。
【0082】
細胞中への遺伝子送達についての他の手法は、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウムが介在するトランスフェクション、またはウイルス感染などの方法により、遺伝子を組織培養中の細胞に導入することに関わる。通常、導入の方法は細胞への選択マーカーの導入を含む。次いで細胞を選択環境下に置いて、導入された遺伝子を取込んで発現しているこれらの細胞を単離する。得られる組換え細胞を哺乳動物に当技術分野で公知の様々な方法により送達することができる。ある好ましい実施形態においては、遺伝子送達用に利用される細胞は宿主の細胞にとって自己である。
【0083】
本発明はまた、目的のタンパク質またはポリペプチドを産生するために有効な量のPTMまたはPTMをコードする核酸および許容される担体を含む組成物も提供する。特定の実施形態においては、担体は製薬担体であり、用語「製薬上許容される」は、連邦または州政府の規制当局ににより承認されているかまたは米国薬局方、または動物における、およびさらに特にヒトにおける使用について一般的に認知されているその他の薬局方に記載されていることを意味する。用語「担体」は、治療薬と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを意味する。好適な製薬担体の例は、E.W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical sciences」に記載されている。
【0084】
従って、当技術分野で標準の多数の方法を使用することができ、それらの方法には、限定されるものでないが、キメラmRNAの存在を検出および/または可視化することにより、キメラmRNA発現の生成を検出するハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンアッセイ、ドットブロット、in situハイブリダイゼーション、および逆転写PCR他)他が含まれる。
【0085】
特定の実施形態においては、本発明の組成物を局所的に投与することができる。これは、例えば、限定されるものでないが、手術中の局所注入、例えば手術後の創傷包帯と連結した、注入による、カテーテルを使う、坐剤を使う、または植込錠(この植込錠は多孔質、非多孔質、またはゼラチン状材料であって、シアラスチック膜などの膜、または繊維を含む)を使う局所施用である。その他の除放性薬物送達系、例えばナノ粒子、マトリックス、例えば除放性ポリマー、およびハイドロゲルを用いてもよい。
【0086】
PTMは、組換えタンパク質またはポリペプチドをコードする配列を含有するキメラRNA分子の所望の量を産生するのに有効な量だけ投与されるだろう。PTMの有効な投与量は、生物学的半減期、バイオアベイラビリティ(即ち、生物利用能)および毒性などのパラメーターに関わる当業者に周知の方法によって、決定することができる。本発明の組成物の量は、標準の臨床技法により決定することができる。かかる技法には、目的のタンパク質またはポリペプチドのレベルが達成されているかを確認するためのサンプルの分析が含まれる。さらに、in vitroアッセイを任意に用いて最適な投与範囲を確認するのを助けることができる。
【0087】
本発明はまた、本発明の組成物の1以上の成分で満たした1以上の容器を含むパックまたはキットも提供し、かかる容器には製品の製造、使用または販売を規制する政府当局により規定された様式の通知が付されていて、この通知は哺乳動物における使用または販売のための製造についての当局による認可を表す。
【0088】
本発明はさらに、目的のタンパク質またはポリペプチドの大規模な大量生産の方法であって、哺乳動物への本発明のPTMを投与するステップ、PTMの一部分が標的プレmRNAの一部分にトランススプライシングされて目的のタンパク質またはポリペプチドを発現するキメラRNA分子を生成する条件のもとで、PTMと豊富に発現される標的プレmRNAとを接触させるステップ、哺乳動物から体液を採集するステップ、および体液を処理して目的のタンパク質またはポリペプチドを得るステップを含んでなる上記方法を提供する。本発明はまた、無脊椎動物、例えば絹生産に関わる非常に豊かな転写物を発現するカイコにおいて使用することもできる。
【0089】
様々な哺乳動物が大規模バルク生産用の宿主として適当である。それらには反芻動物、例えばウシ、ヤギ、シカ、ヒツジ、キリン、およびラクダが含まれる。これらの動物は家畜化されていて、乳および多量の血清を産生する。ウシが好ましい。
【0090】
目的のタンパク質またはポリペプチドは、哺乳動物中のその存在が免疫応答をトリガーしない限り、大量に生産することができる。かかる影響を最小限にするために、哺乳動物を当業者に周知の様々な免疫抑制技法を用いて処理することができる。
【0091】
本発明のある実施形態においては、発現されたタンパク質産物は哺乳動物の血清中で循環していることがわかっている。あるいは、発現されたタンパク質産物は哺乳動物の乳中に存在する。
【0092】
血清については、血液を哺乳動物から採集し、遠心分離して血清を残りの細胞成分から分離する。タンパク質を濃縮して標準の方法により精製することができる。同様な濃縮/精製手順を乳などの他の物質に利用することができる。
【0093】
目的のタンパク質またはポリペプチドの分離は、当業者に周知の様々なタンパク質精製技法を用いて実施することができる。例えば、Scopes, R. K., 「Protein Purification Principles and Practices」, 第2版. (Springer-Verlag, 1987)、「Methods in Enzymology」 (S. Colowick and No. Kaplan, 編, Academic Press, Inc.)、Sambrookら, 「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」, 第2版, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989、「Handbook of Experimental Immunology」, Vols. I-IV(D. M. WeirおよびC. C. Blackwell, 編, 1986, Blackwell Scientific Publications);House, 「Modern Synthetic Reactions」, 第2版, Benjamin/Cummings, Menlo Park, Calif., 1972を参照。
【0094】
以下の実施例は本発明を例示することを意味するものであって、本発明の範囲を限定することを意図しないしまたはそう解釈してはならない。
【実施例】
【0095】
実施例1:in vivoでトランススプライスされたアルブミン-HPV-16抗E7 一本鎖抗体(mAlb-HPV-16抗E7 scFv)cDNA
図8に示したアルブミン標的化計画を、16型ヒトパピローマウイルス(HPV-16)抗E7 一本鎖抗体のin vivo産生について評価した。この概念はHPV-16抗E7 scFv 配列のアルブミンプレmRNA標的への標的化トランススプライシングに関わる。アルブミンを標的として選んだ理由は、肝臓内のその高い発現は、豊富なトランススプライシング標的としての高アルブミンプレmRNA濃度を与えるからである。本研究は、HPV-16抗E7 scFvのin vivo発現、分泌および機能に与えるアルブミン配列の効果を評価した。
【0096】
マウスアルブミン-HPV-16抗E7 scFv(mAlb-HPV16抗E7 scFv)ポジティブ対照cDNA(図9)を構築して最終トランススプライスされた産物を模倣し、そしてCos-7およびHepa1-6(マウス肝細胞腫細胞)細胞中の発現、プロセシングおよび分泌について試験した。トランススプライスされたcDNA発現プラスミドは、長い合成相補的オリゴヌクレオチドおよびアルブミンをコードするエキソン1とHPV-16抗E7 scFv配列から成るPCR産物を用いて構築した。マウスアルブミンエキソン1のコード配列は、次の長いオリゴヌクレオチド、
フォワードプライマー(配列番号9):gctagcATGAAGTGGGTAACCTTTCTCCTCCTCCTCTTCGTCTCCGGCTCTGCTTTTTCCAGGGGTGTGTTTCGCCGAGAAGCAC[AGGTCCAACTGCAGGAGTCAGGGgctgagc]、および
リバースプライマー(配列番号10):[gctcagCCCCTGACTCCTGCAGTTGGACC]TGTGCTTCTCGGCGAAACACACCCCTGGAAAAAGCAGAGCCGGAGACGAAGAGGAGGAGGAGAAAGGTTACCCACTTCATgctagc
を用いて組み立てた(小文字のヌクレオチドは、クローニングに使用するNheIおよびBlpI制限酵素切断部位を含み;下線を引いたヌクレオチドはマウスアルブミンエキソン1配列を含み、その中で大部分はシグナルペプチドをコードし;そして[ ]で囲ったヌクレオチドは部分的HPV-16抗E7 scFv配列を含む)。
【0097】
HPV-16抗E7 scFvコード配列は、cDNAクローンおよび次のプライマー、
Sca1(5'-gctagcATGGCCCAGGTCCAACTGCAGG)(配列番号11)およびSca5(5'-aagctt[TCA] CTTGTCGTCATCGTCTTTGTAGTCCCGTTTTATTTCCGCTTGGTCCCAGC)(配列番号12)を用いてPCR増幅した(小文字のヌクレオチド、クローニング用のNheIおよびHindIII制限酵素切断部位;[ ]で囲ったヌクレオチド、停止コドン;ならびに下線を引いたヌクレオチド、FLAGタグ)。PCR産物をBlpIおよびHindIII制限酵素を用いて消化した。得られる産物をアニーリングしたオリゴ断片と最初にライゲートし、次いでpcDNA3.1発現ベクター(Invitrogen)中にライゲートした。PTMカセット配列の真正性は配列決定により確証した(図10)。
【0098】
実施例2:Hepa1-6およびCos-7細胞におけるアルブミン-HPV-16抗E7 scFv抗体の産生、発現および分泌
アルブミンエキソン1配列(7ヌクレオチド)のHPV-16抗E7scFvの発現およびプロセシングに与える効果を、トランススプライスされたcDNAプラスミドならびに対照プラスミド(FLAGタグ無しのトランススプライスされたcDNAに類似)をマウス肝細胞腫、Hepa1-6およびCos-7細胞中にトランスフェクトすることにより評価した。トランスフェクション後48時間に、培地を採集し、FLAGアフィニティカラム(Sigma、Cat#FLAGIPT-1)を通過させて、ウェスタンブロットによりHPV-16抗E7 scFvの発現について抗FLAGM2モノクローナル(Sigma、Cat#F3165)抗体を用いて分析した。
【0099】
本アルブミントランススプライシング計画はキメラmRNAおよびタンパク質の産生をもたらす。最終トランススプライシング産物はアルブミン標的mRNA由来の7ヌクレオチドまたは2アミノ酸を含有する。ヒト施用については、免疫反応を防止するために最終生成物中のアルブミン配列を除去することが所望される。図11に図解した1つの例示の計画においては、タンパク質をin vivoで発現するために利用されている「Furin」様エンドペプチダーゼ(またはプロタンパク質コンバターゼ)切断部位をPTMがコードするように遺伝子操作する(Fuller RS, Brake AJ, Thorner J, Science, 246: 482-486, 1989;Bresnahan PA, Leduc R, Thomas L, Thorner J, Gibson HL, Brake AJ, Barr PJ, Thomas G., J Cell Biol. 111:2851-2859, 1990;van de Ven WJ, Voorberg J, Fontijn R, Pannekoek H, van den Ouweland AM, van Duijnhoven HL, Roebroek AJ, Siezen RJ, Mol Biol Rep. 14:265-75, 1990;Duckert P, Brunak S, Blom N. Protein Eng Design & Selection. 17:107-112, 2004)。他の例においては、PTMを、タンパク質自身の自然の分泌シグナル、すなわち「プレ-プロ」シグナル(もしそれがあれば)を含むように設計しうる。この計画は、野生型タンパク質と類似した作用の部位へ最終トランススプライスされたタンパク質の認識、プロセシングおよび分泌を促進する内因性自然細胞機構の利点を生かすように設計される。例えば、PTMのアルブミンプレmRNA標的へのトランススプライシングは、粗面小胞体におけるシグナルペプチド切断に加えて他の細胞コンパートメントにおけるいくつかの翻訳後修飾を経て、最終的にエンドペプチダーゼ切断を受け、そして成熟した全てプロセシングされた生物学的活性のある野生型と同じタンパク質の放出をもたらすキメラmRNAおよびプレ-プロ-タンパク質を産生する(図12)。
【0100】
cDNA発現プラスミドを用いてトランスフェクトした細胞由来の上清または全細胞ライセートからの全タンパク質ほぼ10μgを12% SDS-PAGE上で分析し、ナイロン膜上に移し、そして抗FLAG抗体を用いて調べた。ウェスタンの結果は、Hepa1-6およびCos-7細胞の両方において、FLAG-標識したcDNA発現プラスミドを用いてトランスフェクトした細胞中で、成熟タンパク質について予測されたサイズ30kDaのHPV-16抗E7 scFvが産生することを実証した(図13レーン3および6、左パネル)。他方、模倣物においておよびFLAGタグのないcDNA構築物を受給した細胞において、かかる産物は検出されなかった(図13レーン1-2および5-6、左パネル)。さらに、細胞ライセート中にタンパク質は検出されず(図13)、大部分のタンパク質が正常にプロセシングされて分泌されたことを示した。
【0101】
実施例3:トランススプライスされたアルブミンHPV-16抗E7 scFvタンパク質は機能的に活性である
アルブミン配列のHPV-16抗E7scFv機能に与える効果を、子宮頚癌細胞におけるHPV-16 E7発現をダウンレギュレートする能力により評価した。HPV-16 E7 腫瘍性タンパク質ポジティブである子宮頚癌細胞、SiHa、(ATCC # HTB-35)をmAlb-HPV-16抗E7 scFvc DNA発現プラスミドを用いてトランスフェクトした。E7腫瘍性タンパク質を発現しない整合する対照細胞、C-33A(ATCC # HTB-31)もmAlb-HPV-16抗E7 scFv cDNA発現プラスミドを用いてトランスフェクトした。細胞を5日間増殖し、相対的な生存細胞数を比色(MTT)アッセイにより測定した。
【0102】
HPV-16ポジティブ子宮頚癌細胞、SiHaの場合、mAlb-HPV-16抗E7 scFvは、C-33A HPV-ネガティブ細胞におけるほぼ<10%抑制と比較して、細胞増殖を〜75%だけ抑制し、これによってトランススプライスされたアルブミンHPV-16抗E7 scFv抗体の機能性を実証した(図14)。これらの結果は、最終トランススプライシング産物中のアルブミン配列がHPV-16抗E7 scFv機能に対して大きな有害効果を与えないことを確証しただけでなく、本発明の組成物が機能性抗体ポリペプチドおよび/または治療タンパク質のin vivo産生に対して有効である証拠も提供する。
【0103】
原理証明の研究に用いたHPV-16抗E7 scFvPTM発現カセットの構造を図15Aに図解する。PTMカセットを構成するのは、マウスアルブミンイントロン1と相補的な279nt結合ドメインを含むトランススプライシングドメイン(TSD)、24ヌクレオチドスペーサー領域、コンセンサス酵母ブランチポイント(BP)などの強い3'スプライスエレメント、最適化されたポリピリミジントラクト、スプライスアクセプター部位(CAGジヌクレオチド)、および続くHPV-16抗E7 scFv用のコード配列(図13)の大部分である。PTMカセットはまた、トランススプライスされたタンパク質の検出を支援するためのウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルとFLAGタグも含有する。全カセットをサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(Invitrogen)を含有するpcDNA3.1ベクター主鎖中にクローニングした。加えて、ベクター主鎖をさらにベクターアンピシリン遺伝子とPTM3'スプライス部位との間の機能未知のシススプライシングを低減するために、Maz4(転写一時停止部位)配列を含むように改変した。
【0104】
上記の機能性PTMと同一であるがアクセプター部位に点突然変異(CAG>CAT)を有するスプライス変異体(スプライシング能力の無い変異体)も構築した(図15Aおよび15B)。スプライス変異体をネガティブ対照として用いた。in vitroにおける原理証明の研究のために、エキソン1、イントロン1およびエキソン2から成るマウスアルブミンミニ遺伝子標的プレmRNAを用いた。プレmRNA標的の模式図を図15Cに図解する。
【0105】
PTMが介在するトランススプライシングおよびマウスアルブミン-HPV-16抗E7 scFvキメラmRNAの産生を、Hepa1-6細胞をマウスアルブミンミニ遺伝子標的プラスミドならびにHPV-16抗E7 scFv PTM(機能性PTM)を用いてまたはスプライス変異体(スプライス無能PTM)を用いて同時トランスフェクトすることおよび模倣トランスフェクションにより評価した。これらの細胞から単離した全RNAをRT-PCRによりマウスアルブミンエキソン1(AlbA1TSF2:ACCTTTCTCCTCCTCCTCTTCGT)(配列番号13)およびHPV-16抗E7scFvPTM(sca3:AGTAAGCAAACCAGTAGCCGTC)(配列番号14)特異的プライマー(図15Aおよび15Cに示したプライマー結合部位)を用いて分析した。これらのプライマーは標的と機能性PTMの両方を受給した細胞においてのみ予想404bp産物を産生し(図16、レーン1)、これはcDNA対照(図16、レーン2)およびプラスミドDNA(図16、レーン6)で観察された類似サイズバンドと同時移動した。スプライス変異体でトランスフェクトした細胞(図16、レーン3)または模倣トランスフェクション(図16、レーン4)ではRT-PCR産物が検出されなかった。PCR産物を精製して直接配列決定し、これらの細胞中のPTMおよび標的プレmRNAの予想スプライス部位に対する正確なトランススプライシングを確認した(図16、下側パネル)。従って、以上の結果は本発明の方法を用いて効率的なHPV-16抗E7 scFvのin vitroトランススプライシングを提供できることを確立した。
【0106】
実施例4:マウスにおける、内因性マウスアルブミンプレmRNA標的へのin vivoトランススプライシングおよびHPV-16抗E7scFvの産生
PTMの内因性マウスアルブミン標的へのトランススプライシングおよびHPV-16抗E7 scFvタンパク質の産生を実証するために、次の実験を実施した。100μgのmAlb-HPV16抗E7 97C2(PTM単独)、70μgのPTM+35μgのミニ遺伝子標的(プレmRNA濃度を増加させるための追加標的プラスミド)またはトランススプライスされたmRNAを模倣する100μgの対照cDNA(mAlb-HPV16抗E7 scFv)プラスミドを、正常なC57BL/6マウスに尾静脈を経由して水圧をかけて注入した。血清サンプルを8、16および24時間の時点に採取してウェスタンブロットにより分析した。ほぼ25〜100μl血清を、FLAGアフィニティカラムを通過させ、次いでサンプルを12%SDS-PAGEで分離し、ニトロセルロース膜上に移し、そして抗FLAGM2モノクローナル抗体を用いて調べた。タンパク質を、化学発光キット(Invitrogen、Cat# WB7103)を用いて可視化した。
【0107】
ウェスタンブロット結果は、cDNA対照発現プラスミドによる注入後、早くも8時間にマウスの循環中にHPV-16抗E7 scFvの出現を示し(図17A、レーン3および4)、そのレベルは24時間に有意に低下した(図17A、レーン7および8)。効率的なトランススプライシングおよび予想30kDa HPV16抗E7 scFvの産生は、標的とPTMの両方を受給したマウスにおいても検出された(図17B、レーン3〜5、左パネル)。他方、模倣処置したマウスにおいてかかるバンドは検出されなかった(図17B、レーン1〜2、左パネル)。最後に、PTM(内因性標的を標的化する)だけを受容したマウスも30kDa HPV16抗E7 scFvの存在を示した(図17C、レーン1〜2)。これらの結果は明らかに、(a)マウスアルブミンPTMのマウスアルブミン標的プレmRNAへの有効かつ正確なトランススプライシング、(b)トランススプライシングを介するHPV16抗E7 scFvの産生を示す。さらに、以上の結果は、治療抗体ポリペプチドおよびそのフラグメントのin vivo生産をするための本発明の標的化計画をさらに確証するものである。
【0108】
実施例5:二重鎖抗体生産
いくつかの実施形態においては、本発明のPTMカセットを改変して軽鎖と重鎖の両方を含有する抗体を産生させることができる。図18に図解したビシストロンPTMカセットは、図15Aに示したHPV-16 E7 scFv PTMと類似するが、ただし、このカセットは一本鎖抗体配列のコーディングドメインの後に、口蹄疫ウイルス(FMDV)由来の2A自己切断オリゴペプチド(Fangら, Nature Biotechnol, 23: 584, 2005、本開示は本明細書に参照により援用される)または脳心筋炎ウイルス(ECMV)内部リボソーム侵入部位(IRES)(Martienz-Salas, Curr Opin Biotechnol, 10:458, 1999、本開示は本明細書に参照により援用される)配列、それに続く、第2鎖の高レベルの翻訳を誘導するための全長コード配列を含有しうることである。第2トランスジーンを発現するための2Aオリゴペプチドおよび/またはIRES配列の使用は公知である(Fangら, Nature Biotechnol, 23: 584, 2005;Martienz-Salas, Curr Opin Biotechnol, 10:458, 1999)。さらに、一本鎖および第2鎖(別のPTM)をコードするPTMも、二重鎖抗体を作製するために利用することができる。
【0109】
実施例6:ヒト-アポリポタンパク質(APO A-1)の発現
アルブミン-ヒトAPO A-1融合タンパク質
本研究が行われたのは、循環器病(CHD)を患うまたはそのリスクを有する個人に対する治療として、ヒトApoA-1タンパク質、高密度リポタンパク質(HDL)の主成分または他の変異体を産生させかつその後のHDL濃度を増加させるアルブミン標的化計画(図19)を評価するためであった。アルブミンを標的として選択した理論的根拠は、肝臓におけるアルブミン発現が高いからである。高濃度のアルブミンプレmRNAはトランススプライシングのための豊富な標的を与える。本概念は、野生型ヒトApoA-1またはApoA-1類似体の、アルブミンプレmRNA標的への標的化トランススプライシングに関わり;その目的はApoA-1発現を増加させることにある。本研究はアルブミン配列の、ヒトApoA-1タンパク質の発現、分泌および機能に与える効果を評価する。
【0110】
融合体(アルブミン-Apo A-1)の機能をin vivoで評価した。アルブミン-ヒト Apo A-1 cDNA対照のヒトおよびマウスバージョン(図20)を構築し、最終トランススプライスされた産物を293細胞および肝細胞腫細胞(HepG2)における発現、プロセシングおよび機能について模倣した。融合cDNA構築物を、長い相補性オリゴヌクレオチドならびにアルブミンエキソン1およびヒトApoA-1エキソン3および4から成るPCR産物を用いて構築した。概要を説明すると、マウスおよびヒトアルブミンエキソン1のコード配列を、次の長いオリゴを用いて組み立てた:
マウスAlbフォワードプライマー(配列番号15):ATGAAGTGGGTAACCTTTCTCCTCCTCCTCTTCGTCTCCGGCTCTGCTTTTTCCAGGGGTGTGTTTCGCCGAGAAGCACCC、
リバースプライマー(配列番号16):GGGTGCTTCTCGGCGAAACACACCCCTGGAAAAAGCAGAGCCGGAGACGAAGAGGAGGAGGAGAAAGGTTACCCACTTCATG、
およびヒトAlbフォワードプライマー(配列番号17):ATGAAGTGGGTAACCTTTATTTCCCTTCTTTTTCTCTTTAGCTCGGCTTATTCCAGGGGTGTGTTTCGTCGAGATGCACCC、
リバースプライマー(配列番号18): GGGTGCATCTCGACGAAACACACCCCTGGAATAAGCCGAGCTAAAGAGAAAAAGAAGGGAAATAAAGGTTACCCACTTCATG。
【0111】
下線を引いたヌクレオチドはアルブミンエキソン1配列の終点を示し、そしてフォワードプライマーの3'末端における2つの“C”はヒトApo A-1と重複する。
【0112】
ヒトApoA-1コード配列を、cDNAクローン(ATCC:クローン# MGC-1249)ならびにプライマー:Apo23(配列番号19)(5'-CCCCAGAGCCCCTGGGATCGAGTG)およびApo5(配列番号20)(5'-CTAGAAGCTTCCCACTTTGGAAACGTTTATTCTGAGCACCGG)を用いてPCR増幅した。PCR産物を5'末端において平滑化し、次いでHindIII(下線で示した)制限酵素を用いて消化した。得られる産物を最初にマウスまたはヒトアルブミンエキソン1とライゲートし、次いでpcDNA3.1発現ベクター(Invitrogen)中にクローニングした。野生型ヒトApoA-1を作製するためにpcDNA3.1中にシグナルペプチドを含むヒトApoA-1の全コード配列を含有する発現プラスミド、および位置173(R173C)にArgのCysへの置換を有するミラノ変異体発現プラスミドもポジティブ対照として構築した。最終構築物は配列決定により確認した。
【0113】
293細胞における、アルブミンApo A-1融合タンパク質の生産、発現および分泌
アルブミンエキソン1配列の、ヒトApoA-1タンパク質の発現およびプロセシングに与える効果を、ヒトおよびマウス融合cDNAプラスミドならびにネガティブ(欠失突然変異体)およびポジティブ対照cDNA(野生型Apo A-1)を293細胞中にトランスフェクトすることにより評価した。トランスフェクション後、細胞を無血清DMEMを用いて2回リンス洗いし、そして無血清Advanced DMEM培地(Invitrogen)を用いてインキュベートした。トランスフェクションから48時間後に、培地を回収し、濃縮し、ヒトApo A-1タンパク質の発現について分析した。
【0114】
ゲルをクーマシーブルー染色すると、マウスとヒトの両方の融合cDNAは予想された〜28kDaタンパク質バンドを産生し、これらは野生型Apo A-1のバンドと同時移動して293細胞における都合の良い発現、プロセシングおよび分泌を実証した(図21、レーン2〜3、6〜7)。さらに、これらのデータはまた、発現のレベルが野生型Apo A-1のそれと類似することも示し(図21、レーン 4、8)、アルブミン配列がヒトApo A-1発現およびプロセシングに対して有害な影響を与えないことを示した。他方、模倣およびシグナルペプチドに2ヌクレオチド欠失のあるマウス融合cDNAを受給した細胞においては、かかるバンドが検出されなかった(図21、レーン1および5)。
【0115】
SDSゲル中に観察されたバンドのヒトApo A-1としての同一性を、ウェスタン分析によりモノクローナルヒトApoA-1抗体(Biodesign、Cat. # H45625)を用いて確認した。融合cDNA構築物、野生型Apo A-1およびミラノ変異体を用いてトランスフェクトした細胞由来の上清または全細胞ライセートからのほぼ〜5〜10μg全タンパク質を12%SDSゲルで分析し、ナイロン膜上に移し、そしてヒト抗Apo A-1抗体とインキュベートした。ウェスタンの結果は成熟タンパク質に予想される28kDaの見かけの分子量をもつヒトApo A-1タンパク質の産生を確認した。ウェスタンのデータはまた、293細胞において、正常なプロセシングおよび分泌を示す細胞ライセートと比較して、上清中に融合体または野生型Apo A-1からの成熟ヒトApo A-1タンパク質の>90%が存在することを示した(図22、レーン1および2を3と比較すること)。類似の結果はまた、融合cDNA構築物を用いてトランスフェクトした肝細胞腫(HepG2)細胞についても観察された。
【0116】
アルブミンAPO A-1融合タンパク質は機能的に活性である
アルブミン配列のヒトApo A-1機能に与える効果を、ATP-結合カセット輸送体タンパク質(ABC1)が介在する細胞コレステロールのApo A-1アクセプターへの移動を測定することにより評価した。放射性標識した細胞コレステロールの無脂質ヒトApo A-1への放出を定量し、そして融合タンパク質を用いて得た流出値を野生型Apo A-1およびネガティブ対照サンプルから得た値と比較した。対照HeLa細胞およびABC1プラスミドを用いて安定してトランスフェクトしたHeLa細胞をコンフルエント近くまで増殖した。次いで細胞に1μCi/ml 3Hコレステロールを供給した。24時間の平衡化の後、細胞を3回無血清培地を用いて洗浄し、融合タンパク質を含有する培地(融合cDNA構築物を用いてトランスフェクトし、Apo A-1タンパク質濃度について規準化した293細胞からの上清)の連続希釈液またはポジティブ対照として10μg/野生型ApoA-1タンパク質を用いてインキュベートした。細胞を18時間流出させた。流出期間後、培地を採集し、次いで培地のアリコートを液体シンチレーションカウンターによりカウントした。イソプロパノールを用いて一晩抽出した後に、細胞画分中の残留カウントを測定した。%流出を、流出培地中のカウントを培地+細胞画分中のカウントの和により除すことにより計算した。DMEM/BSA培地をブランクとして用いて、流出培地中のアクセプターの存在のもとで得た放射能カウントから差引いた。
【0117】
融合タンパク質(マウスとヒト融合タンパク質)について観察されたABC1が介在する流出の量は野生型Apo A-1のものと類似していた(図23)。流出データはまた、融合タンパク質について観察された絶対流出活性が、試験した濃度範囲にわたる野生型Apo A-1タンパク質に匹敵するかまたはそれより僅かに優れており、最終トランススプライスされた生成物中のアルブミン配列がApo A-1機能に大きい有害な効果は与えないことも実証した。これらの結果は、機能的な生物活性のあるタンパク質のin vivo産生に対する、本発明の組成物の有効性について強い証拠を提供する。
【0118】
実施例7:アルブミン標的用の最適結合ドメインを単離するための高処理スクリーニング
マウスアルブミンプレmRNA標的用の最適結合ドメインを同定するための高処理スクリーニング(HCS)を、先に記載の方法(米国特許出願第10/693,192号、2003年10月24日出願)(図24A)に様々な改変を加えて実施した(図24B)。
【0119】
プレmRNA標的の高処理スクリーニング
ヌクレオチド114から877までの全763bpを含むマウスアルブミンイントロン1およびエキソン2(参照配列NC_000071)(図25)を、ゲノムDNAおよびプライマーmAlb15(配列番号21)(5'-CTAGGGATCCGTTTTATGTTTTTTCATCTCTG)およびmAlb8(配列番号22)(5'-CTAGGCGGCCGCAGGCCTTTGAAATGTTGTTCTCC)を用いてPCR増幅した。次いでPCR産物をBamHIおよびNotI(下線で示した)を用いて消化し、既存のHCS標的プラスミド中にクローニングしてpc5'zsG-mIn1-Ex2プラスミドを作製した(図26)。緑色蛍光タンパク質(GFP)(Clontech社のzsGreen)をコードする配列の5'半分とカップリングしたマウスアルブミン遺伝子のイントロン1およびエキソン2を発現する安定な細胞を、293細胞において、標的プラスミドをトランスフェクトし次いでハイグロマイシン選択を行うことにより確立した。選択の2週間後に、ハイグロマイシン耐性クローンをプールしてRT-PCRにより特徴付けし、そしてHCSに用いた。
【0120】
マウスアルブミンPTM結合ドメインライブラリー
イントロン1およびエキソン2を含むマウスアルブミン配列を、ゲノムDNAおよび上記プライマーを用いてPCR増幅し、BamHIとNotIを用いて消化し、そしてライゲートして大きいコンカタマー化断片(〜10kb)を作製した。このステップを導入してBD複雑度を増加させた。コンカタマー化DNAを次いでソニケーションにより小片に断片化し、3%アガロースゲルで分画した。50〜250ヌクレオチドの範囲の断片サイズをゲル精製し、末端をクレノウ酵素を用いて修復し、そして前記PTMカセット中にクローニングした(米国特許出願第10/693,192号(2003年10月24日出願))(図27)。
【0121】
ライブラリーコロニーのPCR分析は>87%の組換え効率を示し、そして50〜250ntの様々なサイズのBDをもつ>106個の独立したクローンからなる複雑なライブラリーを産生した(図28)。一次ライブラリーを細菌中で増幅し、HCSによる最適なBDをスクリーニングするために用いた。
【0122】
PTM選択計画
前記のFACSに基づくPTM選択計画(米国特許出願第号10/693,192(2003年10月24日出願)に従い、mAlb結合ドメイン(BD)ライブラリーを、5'zsG-mIn1-Ex2プレmRNA標的を発現する試験細胞を用いて、試験した(図24Bを参照)。
【0123】
概要を説明すると、第1日目に、COS-7細胞をまいて、5'zsG-mIn1-Ex2標的プラスミドによりLipo2000試薬を用いてトランスフェクトした。第2日目に、〜106個の独立したPTMクローンを送達して、5'zsG-mIn1-Ex2プレmRNAをプロトプラストとして発現する細胞を調べた。図29に図解したように、24時間後、FACSにより選別し、そして高GFPと均整のとれたRFPを発現する細胞を2画分、すなわち高緑色(HG)および低緑色(LG)画分を、前記の単一画分の代わりに採集した。採集した細胞からのPTMをHIRT DNA抽出により救出し、次いでEcoR V消化して最終HIRT DNA調製物中の標的プラスミド汚染を低減した。LGとHG画分からのほぼ40個の結合ドメインを含有するPTMを最初に平行トランスフェクションにより試験した。これらのPTMのトランススプライシング効率をFACS分析により試験した。
【0124】
予想した通り、HG画分からのPTMにおける%GFPポジティブ(GFP+)細胞と平均GFP蛍光は、LG画分と比較して、2:1の比でより高かった(図29)。
【0125】
HG画分からの100個以上の、BDを含有するクローンを単離し、平行トランスフェクションにより試験して、その結果を図30にまとめた。GFP平均蛍光を個々のPTMのトランススプライシング効率を評価する指標として用いた。GFP平均蛍光に基づくと、HCSから選択したPTMの大部分のトランススプライシング効率は、合理的に設計したモデルPTMと類似するかまたはそれより若干高かった(図30)。しかし、モデルPTMと比較して相当高い(1.5〜2倍)トランススプライシング能を有するPTMがいくつか存在した。本スクリーニングにおいて、優れたPTMとその他との比は1:20であった。
【0126】
このステップから、トップ20のPTMを選択して、平行トランスフェクションによるさらなる特徴付けを行い、続いて逆転写(RT)リアルタイム定量PCR(RT-qPCR)を用いて特異的トランススプライシングについて分子分析を行い、その結果を図31にまとめた。全RNAを単離し、RT-qPCRによりトランススプライシングの効率を測定した。標的とPTM特異的プライマーを用いて、特異的トランススプライシングを測定し、そして全スプライシングは前記5'zsGエキソンに特異的なプライマーを用いて測定した。qPCRまたはGFP平均蛍光値に基づいて、トランススプライシングの効率については、合理的に設計したモデルPTMと比較して、平均蛍光値のほぼ5〜10倍の強化(規準化後)がHCSから選択したPTMを用いて検出された(図31)。強化ライブラリー(LGおよびHGサンプル)についての同様の結果、すなわちトランススプライシング効率の強化は、従来のスクリーニングと一致する出発ライブラリーと比較しても観察された。
【0127】
トランススプライシング効率と特異性に対するBD方向および配列位置の効果も分析した。出発PTMライブラリーからのランダムなクローンの配列を、強化ライブラリー、すなわち、1回強化後に選択されたPTMと比較した。
【0128】
出発ライブラリーからのPTMの配列分析は、BDのほぼ51%が正(アンチセンス)方向にあり、一方49%が不正方向にあることを示した。BDサイズは40ntから336ntまで変化し、そしてmAlbBDライブラリーの複雑度を表す良い分布であることも示した。対照的に、強化ライブラリーから選択したPTMの配列分析は、予想通り、正方向のBDの増加(88%)を示し、平均BD長さは出発ライブラリーより有意に高く、この結果はより長いBDがより効率的であることを実証する先の研究(Puttarajuら, 2001)と一致した。
【0129】
実施例8:細胞内のヒトアポリポタンパク質Apo A-lのトランススプライシング
ヒトアポリポタンパク質(Apo A-l)PTM
理論的根拠を証明するために本実施例で使用したヒトアポリポタンパク質A1(Apo A-1)PTMの詳しい構造を図32に掲げた。PTMカセットは、リード結合ドメイン(BD)をクローニングするためのユニークな制限酵素切断部位、NheIおよびSacIIを含むトランススプライシングドメイン(TSD)、24ヌクレオチドスペーサー領域、コンセンサス酵母ブランチポイント(BP)を含む強い3'スプライス部位、伸長ポリピリミジントラクト(19ヌクレオチド長さ)、スプライスアクセプター部位(CAGジヌクレオチド)、続いて、野生型ヒトApo A-1 mRNAの大部分をコードする配列すなわち118 ntから842ntまでのコード配列(参照配列NM_000039および図34に示した配列)から成る。PTMカセットはまた、トランススプライスされたメッセージの安定性を強化するためのSV40ポリアデニル化部位およびウッドチャック肝炎転写後制御エレメント(WPRE)も含有する。全カセットを、サイトメガロウイルスプロモーター(Invitrogen)を含有するpcDNA3.1ベクター主鎖中にクローニングする。さらに、このベクター主鎖をさらに、ベクターアンピシリン遺伝子とPTM 3'スプライス部位の間の機能未知のシススプライシングを低減するために、Maz4(転写一時停止部位)配列を含むように改変した。機能研究のために用いたPTM、mAlbPTM97C2およびmAlbPTM158は、279bpおよび149bpのBD配列をPTMカセット中のNheIとSacII部位の間にクローニングすることにより作製し、そして配列決定により確認した。
【0130】
マウスアルブミンミニ遺伝子標的プレmRNA
in vitroでのApo A-1機能を実証するために、エキソン1、イントロン1およびエキソン2から成るマウスアルブミンミニ遺伝子標的を用いた。プレmRNA 標的の模式図を図33に示す。マウスアルブミン配位体は参照配列NC_000071に記載した通りである。マウスアルブミンEx1-In1-Ex2プレmRNA標的(mAlbEx1-In1-Ex2)は次の通り構築した。ヌクレオチド1から877に対応する877bp断片を、次のマウスゲノムDNAとプライマー:mAlb-Ex1F(配列番号23)(5'- ctagGCTAGCACCTTTCCTATCAACCCCACTAGC)およびmAlb8(配列番号24)(5'- ctagGCGGCCGCAGGCCTTTGAAATGTTGTTCTCC)を用いてPCR増幅した。これらのプライマーは断片の端末にユニークな制限酵素切断部位(下線で示した)を含有する。PCR産物をNheIおよびNotIを用いて消化し、Flip-In T-Rex系(Invitrogen)で使用するように設計された誘導性発現ベクターpcDNA5/FRT/TO中にクローニングした。最終構築物(pcDNATOfrt-mAlbEx1-In1-Ex2)は次の特徴的な配列を含有する:安定な細胞株を確立するための、CMVプロモーター、Tetオペレーター、SV40ポリアデニル化部位およびハイグロマイシン選択マーカー。
【0131】
アルブミン標的を発現する安定な細胞株の作製
上記の標的プラスミドを用いて、エキソン1、イントロン1およびエキソン2から成るマウスアルブミンミニ遺伝子標的を発現する安定な標的細胞株を作製した。標的プラスミド(pcDNATOfrt-mAlbEx1-In1-Ex2)を用いてトランスフェクトされた細胞からの全RNAのRT-PCRによる分析は、予想されるシススプライスされた産物を産生するが、アルブミンタンパク質を産生しないことを示した。マウスアルブミンミニ遺伝子標的プレmRNAのスプライシングパターンを確認した上で、Flip-In T-Rex 293細胞の安定な細胞株を、標的プラスミドをトランスフェクトした後にハイグロマイシン選択を行うことにより確立した。ほぼ2週間の選択後、ハイグロマイシン耐性クローンをプールし、使用までハイグロマイシン中に維持した。
【0132】
ヒトApo A-l PTMの効率的トランススプライシング
HCSから選択したヒトApoA-1 PTMは、安定な細胞においてマウスアルブミンプレmRNAへの効率的かつ正確なトランススプライシングを示す。マウスアルブミン-ヒトApoA-1キメラmRNAのPTMが介在するトランススプライシングおよび産生を、安定な細胞を、mAlbPTM97C2およびmAlbPTM158、ならびにTSDを欠くスプライス変異体(スプライシング無能PTM)および模倣トランスフェクションを用いてトランスフェクトすることにより評価した。これらの細胞から単離された全RNAを、RT-PCRにより、マウスアルブミン標的およびヒトApoA-1 PTM特異的プライマーを用いて分析した。これらのプライマーは、機能性PTMを受給した細胞においてのみ、予想される390bp産物を産生した(図35、レーン2〜4および6)。かかる産物は、スプライス変異体によりトランスフェクトされた細胞においてまたは模倣トランスフェクションにおいては検出されなかった(図35、レーン1および5)。PCR産物を精製して直接、配列決定して、予想されるPTMのスプライス部位および安定な細胞中の標的プレmRNAへの正確なトランススプライシングを確認した(図35)。
【0133】
リアルタイム定量的RT-PCRを用いて、PTMによりキメラmRNAへ変換されたマウスアルブミンプレmRNA転写物の画分を定量した。リアルタイムqPCR用のプライマーは、標的エキソン1とトランススプライスされたmRNAとの区別するように設計した。前記のプロトコルを用いて、mAlbPTM97C2およびmAlbPTM158のトランススプライシング効率を定量した。
【0134】
マウスアルブミン特異的PTM97C2および158はそれぞれ5.6%および3.45%のトランススプライシング効率を示した。これらのデータは安定な細胞中のマウスアルブミンミニ遺伝子標的プレmRNAとPTMとの間のロバストなトランススプライシングを確証した。
【0135】
全長タンパク質のトランススプライシングと産生
PTMが介在するトランススプライシングを、安定な細胞中で全長マウスアルブミン-ヒトApo A-1融合タンパク質を産生する能力について評価した。概要を説明すると、マウスアルブミンミニ遺伝子プレmRNAを発現する試験細胞にポジティブ対照としてmAlbPTM(97C2および158)、ヒトアルブミン-Apo A-1融合体を、そしてネガティブ対照としてスプライス接合部に点突然変異(G>T)を有するスプライス突然変異体をトランスフェクトした。細胞を5時間後に無血清培地を用いて洗浄し、そしてAdvanced DMEM無血清培地を用いてインキュベートした。48時間後、培地を採集し、濃縮し、そしてウェスタンブロットにより分析した。全長ヒトApoA-1タンパク質の産生を、上記の抗ヒトApoA-1抗体を用いて実証した。
【0136】
マウスアルブミンエキソン1とPTMとの間の正確なトランススプライシングは、28kDaアルブミン-ヒトApoA-1融合タンパク質をもたらしうる。トランススプライシングが介在する全長成熟ヒトApoA-1タンパク質の産生は、機能性PTMを用いてトランスフェクトした細胞(97C2および158)において明白であるが(図36、レーン2〜3)、対照、すなわちスプライス変異体を用いてトランスフェクトした細胞または模倣においてはそうでなく(図36、レーン4〜5)、そしてまた、cDNA対照プラスミドを用いて産生したアルブミン-ApoA-1融合タンパク質と共移動した(図36、レーン1〜3)。これらの研究は再び、マウスアルブミンエキソン1とヒトApoA-1PTMとの間の正確なトランススプライシングが行われて、安定な細胞中で融合アルブミン-ヒトApoA-1タンパク質の産生をもたらすことを確証した。
【0137】
実施例9:内因性マウスアルブミンプレmRNAへのトランススプライシング
マウスにおけるプレmRNA
高処理スクリーニング(HCS)から選択されたリードPTMの効力をin vivoで評価した。50μgのmAlbPTM97C2(PTM単独)または20μgのマウスアルブミン-ミニ遺伝子標的+30μgのmAlbPTM97C2プラスミドをjet-PEI-Gal(Q-Biogen)試薬と混合し、そして尾静脈を経由して正常なC57BL/6マウスに注入した。肝臓と血清サンプルを24時間および48時間の時点に採集した。全mRNAおよびポリA mRNAを単離し、RT-PCRによりマウスアルブミンエキソン1特異的プライマーおよびヒトApoA-1 PTM特異的プライマーを用いて分析した。
【0138】
トランススプライシングが、1ラウンドで、ミニ遺伝子標的+PTMプラスミドの両方を受給したマウス、ならびにPTM単独を受給したマウスにおいて検出された(図37、レーン3、8および9)。それぞれのポジティブRT-PCR産物を精製して配列決定し、マウスアルブミンエキソン1のヒトApoA-1コード配列への予想されたスプライス部位における正確なトランススプライシング(図37、下段パネル)を実証した。これらの結果は、マウスにおけるPTMと内因性アルブミンプレmRNA標的との間の正確なトランススプライシングを実証しかつさらにin vivoでのアルブミン標的化計画を確証した。
【0139】
図38は、ヒトアルブミン配列を標的化することによりApoA1発現を増加させる計画を記載する。図39は、最終トランススプライスされた産物中のアルブミン配列を除去する、すなわち、アルブミン配列をもたない野生型ヒトApoA1と同一であるトランススプライスされた産物を産生するための様々な手法を記載する。
【0140】
例えば、このアルブミントランススプライシング計画はキメラmRNAおよびタンパク質の産生をもたらす。最終トランススプライスされた産物はアルブミン標的mRNA由来の7ヌクレオチドまたは2アミノ酸を含有する。ヒトに施用するには、最終生成物中のアルブミン配列を除去して免疫反応を防止することが所望されうる。図40に図解した1つの計画例においては、PTMを、in vivoでタンパク質を発現するために利用されいる「フリン(Furin)」様エンドペプチダーゼ(またはプロ-タンパク質コンバターゼ)切断部位をコードするように遺伝子操作しうる(Fuller RS、Brake AJ、Thorner J、Science、246: 482-486、1989;Bresnahan PA、Leduc R、Thomas L、Thorner J、Gibson HL、Brake AJ、Barr PJ、Thomas G.、J Cell Biol. 111:2851-2859、1990;van de Ven WJ、Voorberg J、Fontijn R、Pannekoek H、van den Ouweland AM、van Duijnhoven HL、Roebroek AJ、Siezen RJ、Mol Biol Rep. 14:265-75、1990;Duckert P、Brunak S、Blom N. Protein Eng Design & Selection. 17:107-112、2004)。他の例においては、PTMを、タンパク質自身の自然分泌シグナル、すなわち、「プレ-プロ」シグナル(もしそれを有すれば)を含むように設計しうる。この計画は、野生型タンパク質と類似した、作用部位に対する最終トランススプライスされたタンパク質の認識、プロセシングおよび分泌を促進する内因性の自然細胞機構の利点を生かすように設計された。例えば、PTMのアルブミンプレmRNA標的へのトランススプライシングは、キメラmRNAおよびプレ-プロ-タンパク質を産生し、これらは粗面小胞体でのシグナルペプチド切断に加えて、他の細胞コンパートメントにおけるいくつかの転写後修飾、最終的に、エンドペプチダーゼ切断を受けて、野生型と同一である、成熟した、全てプロセシングされた生物学的に活性なタンパク質の放出をもたらす(図41)。
【0141】
実施例10:非常に豊富な転写物へのトランススプライシングによる、組換えタンパク質のin vitroおよびin vivo産生
アルブミンプレmRNAへのトランススプライシングの結果としてのin vivo タンパク質生産の3例を実証した。第1はヒトApoA-Iの産生である。これらの研究はマウスにおいてヒトApoA-Iが産生したことを示し、その立証は、遺伝子発現および分泌(図42)、ウェスタンブロット分析によるApoA-Iの同定(図43)、ならびにコレステロール流出アッセイにより確認された機能性(図44)により行われた。さらに適確に説明すれば、このヒトApoA-Iのin vivo生産は3つの別の実験でHDLの増加をもたらし、それぞれの実験はHDLを20〜25mgだけ増加させた(図45)。
【0142】
第2の例としては、一本鎖抗体の遺伝子配列をPTM中にコードしてプラスミドにより送達した。これらの研究では、ヒトパピローマウイルス(HPV)のE7に対して産生する一本鎖モノクローナル抗体を利用した。結果は、この抗体が発現されかつ分泌されることを示した(図49)。さらに、このin vivo トランススプライスされた産物は、HPV-感染細胞の増殖を阻害するのに有効であった(図50)。この研究は、Wang-Johanningらの結果(Cancer Research 58:1893-1900, 1998)を効果的に再現した。これらの結果は、Bakkerら(J. Mol. Ther. 10:411-416, 2004)が総括したように、モノクローナル抗体商業化:生産費および血漿中の抗体の治療レベル、3〜30ug/mlのオーダーの達成の挑戦に関わるものである。
【0143】
第3の例においては、マウスアルブミンのイントロン1を標的化しかつマウス第VIII因子をコードする図46に示したPTMを第VIII因子ノックアウトマウスに静脈内投与した。これらのマウスは本質的に血漿中の第VIII因子が0レベルを有する。最初の研究の結果は図47に示され、第VIII因子の有意な産生を実証する。無接種の対照ならびにスプライシングに欠陥のあったPTMを受容した動物は第VIII因子を示さなかった(図47を参照)。次の研究において、動物にアルブミンミニ遺伝子標的と第VIII因子をコードするPTMの両方を接種したが、これらの動物は第VIII因子の有意な血漿レベルを実証した(図48)。対照として、第VIII因子ミニ遺伝子を用いた。アルブミンプレmRNAの使用は第VIII因子標的より有意に優れていた。
【0144】
さらにマウス第VIII因子プレmRNAおよびマウスアルブミンプレmRNAの相対的レベルを測定した。結果を図51に示し、アルブミンプレmRNAのレベルが第VIII因子転写物より270倍以上豊富であることを示し、非常に豊富な転写物へのトランススプライシングの有効性を実証した。これらの3つの研究のそれぞれにおいて、PTMは同じ結合ドメイン、マウスアルブミンの結合ドメインを利用した。PTMは3つのそれぞのコードドメイン:ヒトApo A-I、マウス第VIII因子およびHPVに対する一本鎖モノクローナル抗体を利用した。一本鎖モノクローナル抗体をコードするPTMは、マウスアルブミンプレmRNAの正確なヌクレオチド配列に特異的にトランススプライシングすることも示された(図52)。また、ヒトApoA-Iをコードする同じ結合ドメインも、標的の同じヌクレオチド中に特異的にトランススプライシングすることが別個に示された(図示していない)。
【0145】
このデータは、非常に豊富なプレmRNAを標的化するPTMは、有意かつ治療のレベルの組換えタンパク質をin vitroおよびin vivoで産生することができ、そして、第VIII因子の場合に示されたように、相同性標的へのトランススプライシングより有意に高いタンパク質の血漿レベルを産生できることを実証する。
【0146】
実施例11:ヒトapoAIのマウスアルブミンプレmRNAへのin vitroトランススプライシング:産物の機能性
ヒトapoAIのマウスアルブミンプレmRNAへのトランススプライシングを介して産生したヒトapoAIタンパク質の機能をin vitroで評価した。これは、ATP結合カセット輸送体タンパク質(ABC1)が介在する細胞コレステロールのapoAIアクセプターへの輸送を測定することにより評価した。放射性標識した細胞コレステロールの無脂質ヒトapoAIへの放出を定量し、そしてトランススプライスされたタンパク質について得た流出値を野生型ヒトapoAIタンパク質のそれと比較した。ヒト胎児腎臓細胞(HEK293)に、apoAI天然3'UTR+ウシ成長ホルモンポリAシグナル(BGHpA);またはWPRE 3'UTR+SV40ポリAシグナル(SV40 pA)のいずれか、ならびにマウスアルブミンミニ遺伝子標的を含有するマウスアルブミンPTM(mAlbPTM97C2)をトランスフェクトした(図53)。トランスフェクションから48時間後に、上清を採集し、濃縮し、そしてコレステロール流出を試験した。ABC1プラスミドをトランスフェクトしたHeLa細胞およびHeLa対照細胞をコンフルエント近くまで増殖した。次いで細胞に1μCi/ml 3Hコレステロールを供給した。24時間平衡化した後に、細胞を洗浄し、そしてトランススプライスされたヒトapoAIタンパク質を含有する培地(PTM+標的またはトランススプライシングを模倣するcDNA対照プラスミドを用いてトランスフェクトしたHEK293細胞由来の上清)を用いて、または、ポジティブ対照として色々な濃度(2.5μg、5μg、または10μg)の野生型精製apoAIタンパク質を用いてインキュベートした。次いで細胞を18時間、流出させる。流出期間の後、培地を採集し、次いでアリコートを液体シンチレーションカウンターによりカウントした。細胞画分中の残留カウントを、イソプロパノールにより一晩抽出した後に測定した。%流出を、流出培地中のカウントを培地+細胞画分中のカウントの和により除すことによって計算した。DMEM/BSA培地をブランクとして用い、流出培地中のアクセプターの存在のもとで得た放射能カウントから差し引いた。図54に示した通り、トランススプライスされたタンパク質を用いて観察されたABC1-が介在する流出の量はバックグラウンドより有意に高くかつ対照DNAプラスミドから産生された野生型apoAIのそれと類似した。上記の結果は、(a)トランススプライシングを介して産生したヒトApoAlタンパク質は機能性があること、および(b)最終トランススプライスされたRNA中のアルブミン配列による、apoAI機能に対する有害な効果は存在しないことを示す。
【0147】
RNAレベルのトランススプライシング効率をリアルタイムRT-PCR(qRT-PCR)により定量し、その結果を図55に示した。qRT-PCR結果に基づくと、両方のPTM、すなわち、apoAI天然3'UTR+ウシ成長ホルモン(BGH)ポリAシグナルによるPTM(新PTM)およびWPRE 3'UTR+SV40 pAシグナルによるPTM(旧PTM)は、RNAレベルで類似したトランススプライシング効率を示したことは明白である。トランススプライシングの精度をRT-PCR産物の直接配列決定により確認した。
【0148】
実施例12:ヒトapoAIのマウスアルブミンプレmRNAへのin vivoトランススプライシング
内因性マウスアルブミンプレmRNA標的へのトランススプライシングは、マウスにおいてヒトapoAIタンパク質およびHDLを産生することが示されている。特に、高処理スクリーニング(HCS)から選択したリードPTMの効力を検証するため、および、PTMの内因性マウスアルブミン標的へのトランススプライシングとその後のヒトapoAIタンパク質の産生を実証するために、次の実験を実施した。mAlbPTM97C2(PTM単独)50μg;PTM 30μg+ミニ遺伝子標的15μg(プレmRNA濃度を増加するためのさらなる標的プラスミド);またはトランススプライスされたmRNAを模倣する対照cDNAプラスミド20μgを、水圧をかけて尾静脈を経由して正常なC57BL/6マウスに注入した。肝臓と血清サンプルを8、16、24および48時間の時点に採集した。全mRNAおよびポリA mRNAを単離し、そして終点RT-PCRにより、マウスアルブミンエキソン1特異的プライマー(配列番号25)(ACCTTTCTCCTCCTCCTCTTCGT)およびヒトapoAIPTM特異的プライマー(配列番号26)(ACATAGTCTCTGCCGCTGTCTTT)を用いて分析した。図56Aに示したように、トランススプライスされたキメラmRNAの存在は、cDNA対照プラスミドを注入した14匹のマウスのうち11匹のマウスにおいて検出され、プラスミドDNAの良い送達を示した。次に、内因性マウスアルブミンプレmRNA標的へのPTMトランススプライシングを、上記の標的およびPTM特異的プライマーを用いて評価した。マウスアルブミン標的プレmRNAとPTMとの間のトランススプライシングは、1μgの全RNAと25サイクルの増幅を用いて、1回のPCRで容易に検出された。ミニ遺伝子標的とPTMプラスミドの両方を受給したマウス由来の全てのサンプルは、トランススプライシングに対してポジティブであった(図56B)。対照的に、PTM単独を受給した13マウスのうち10マウスがトランススプライシングに対してポジティブであった(図56C)。各ポジティブRT-PCR産物を精製して配列決定し、ヒトapoAIコード配列のマウスアルブミンエキソン1への予想スプライス部位における正確なトランススプライシングを実証した。これらの結果は、マウスにおけるPTMと内因性
アルブミンプレmRNA標的との間の正確なトランススプライシングを実証しかつさらに治療タンパク質をin vivoで産生させるアルブミン標的化計画を確証する。
【0149】
さらに、マウスにおいてヒトapoAIタンパク質を産生するための、内因性マウスアルブミンプレmRNA標的への正確なトランススプライシングを実証した。血清サンプルを、PTM単独、PTM+標的およびヒトapoAIタンパク質を産生するためのcDNAを注入したマウスから採集してウェスタンブロットにより試験した。ほぼ20〜50μlの血清をProteoPrepTMBlueアフィニティカラム(Sigma-Aldrich、製品コードPROT BA)を通過させた。このステップを導入して、血清中のタンパク質の70%以上を占めるアルブミンおよびIgGを除去し、そしてサンプル負荷を増加して低存在量のタンパク質をより良く可視化した。12%SDS-PAGEにより分離されたサンプルをニトロセルロース膜に移し、そしてヒト特異的apoAIモノクローナル抗体を用いて調べた(Biodesign International、Cat # H45625M)。タンパク質は化学発光キット(Invitrogen、Cat# WB7103)により可視化した。ウェスタン ブロットの結果は、cDNA対照プラスミドを注入したマウスにおいて、ヒトapoAIタンパク質が注入後、早くも16時間で出現することを示した。このグループで、14サンプルのうち7サンプルがヒトapoAIタンパク質に対してポジティブであった(図57A)。標的およびPTMを受給したマウスにおいては、6サンプルのうち5サンプルがヒトapoAIタンパク質に対してポジティブであった。PTM(内因性標的を標的化する)だけを受容したマウスにおいては、10サンプルのうち4サンプルがヒトapoAIタンパク質に対してポジティブであった。これらの結果は、ヒトapoAI配列の内因性マウスアルブミンエキソン1への正確なトランススプライシングがヒトapoAIタンパク質の産生に導くことを実証した(図57B)。
【0150】
実施例13:ヒトApoAIタンパク質を発現させるためのミニサークルベクターDNAのin vivoトランススプライシング
ミニサークルはin vivoでの遺伝子発現のサイレンシングに関係する細菌性DNA配列を欠くDNAベクターである。例えば、Chen ZY, He CY, Ehrhardt A, Kay MA. (2003) 「DNA vectors devoid of bacterial DNA result in persistent and high-level transgene expression in vivo」, Mol Ther. 8:495-500;Chen ZY, He CY, Meuse L, Kay MA. (2004) 「Silencing of episomal transgene expression by plasmid bacterial DNA elements in vivo」, Gene Ther. 11:856-864を参照されたい。本開示は本明細書に参照により援用される。
【0151】
ミニサークルを、mAlb PTM97C2発現カセットをミニサークルベクター中にクローニングすることによって試験した。50〜75μgのmAlbPTM97C2(機能性PTM)、mAlbPTM97C2-スプライス変異体(欠陥PTM)または対照cDNA(トランススプライスされたmRNAを模倣する)を、ミニサークルの形態で尾静脈経由で正常C57BL/6マウスに水圧をかけて注入した。肝臓および血清サンプルを48時間から4週間にわたる時点において採集した。qRT-PCRによるマウスアルブミンエキソン1特異的フォワードプライマーおよびヒトapoAI特異的リバースプライマーを用いたRNA分析は、マウスアルブミンPTMの内因性マウスアルブミンプレmRNA標的へのトランススプライシングを確証した。表1に示した通り、スプライス変異体PTMを用いて得た結果は模倣グループで観察されたバックグラウンドに類似した。トランススプライスされたmRNAの存在は、注入後4週間において容易に検出され、ミニサークルが非ウイルスPTM送達系として使用できることを示した。
【0152】
PTMをコードするミニサークルを注入したマウスからの血清サンプルのウェスタンブロット分析は、トランススプライシングを介するヒトapoAIタンパク質の産生を立証した。血清サンプル10〜50μlを、ヒト特異的apoAI抗体を用いて免疫沈降させた。溶出後、サンプルを濃縮し、12%SDS-PAGEで分析し、そして免疫沈降に用いたのと同じ抗体(ヒト特異的apoAI抗体)を用いて調べた。ブロットをECLキット(Invitrogen、Cat # WB7104)を用いて現像した。ウェスタン結果は、明らかに、ポジティブ対照精製apoAIタンパク質と共移動する28kDaタンパク質バンドの存在を示した(図58A)。ヒトapoAIタンパク質の存在もまた、4週間における血清サンプル中に検出された(図58B)。これらの結果は、マウスにおける、PTMの内因性マウスアルブミンプレmRNA標的中へのトランススプライシングを介するヒトapoAIタンパク質の産生を立証するだけでなく、非ウイルスPTM送達系としてのミニサークローンの効用も実証する。
【表1】

【0153】
実施例14:ヒトApoAI PTMのマウスアルブミンプレmRNAへのin vivoトランススプライシングは高密度リポタンパク質(HDL)を増加する。
本研究の主な目的の1つは、トランススプライシングを介するヒトapoAIタンパク質の産生はin vivoでのHDL増加に寄与するかどうかを確認することにある。これを試験するために、マウスに、マウスアルブミンPTM(PTM単独)および対照cDNAプラスミド(トランススプライスされたmRNAを模倣する)を上記のように注入した。血清サンプルを色々な時点において(48時間から4週間にわたって)採集し、全HDL-コレステロールを硫酸デキストラン沈降法により測定し、そしてその結果を対照と比較した。具体的には、血清12μlを硫酸デキストラン沈降試薬4μl+生理食塩水30μlと混合し、そして室温にて10分間後、30分間(4℃)12,000rpmにて遠心分離した。清澄な上清(40μl)を生理食塩水169μlと混合し、そして全コレステロールをFPLCを用いて測定した。対照グループ中の基線全コレステロールの平均値はほぼ60mg/dLであった。48時間の時点に、全HDL-コレステロールのほぼ25%増加が、トランススプライスされたmRNAと同じmRNAを発現する対照cDNAグループにおいて観察された。対照的に48時間において、PTMグループでは有意な増加が観察されなかった。しかし、図59に示されるように、1、2および4週間の時点に採集された血清サンプル中には、全HDL-コレステロールの有意な増加(25-50%)が、PTM単独を用いて処理したマウスにおいて、またcDNAを用いて処理したマウスにおいても観察された。従って、この適用において得られた結果は、明確に、(a)マウスアルブミンPTMのマウスアルブミン標的プレmRNAへの良好かつ正確なトランススプライシングの成功、(b)トランススプライシングを介するヒトapoAIタンパク質の産生、そして最も重要なこととして、(c)マウスにおけるトランススプライシングを介するヒトapoAIタンパク質の産生は、基線を超えるHDLレベルの有意な(25〜50%)増加に導くことを示す。HDL血液レベルの増加は心血管性疾患のリスクの低減と関連がある。多数の報文は「HDLコレステロールレベルの1mgの増加は、心血管性リスクを2〜3%だけ低減しうる」ことを示している(Castelli WP. 「Cholesterol and lipids in the risk of c
oronary artery disease」 - the Framingham Study. Can J Cardiol 1988;4 [Suppl A]:5-10A;Third Report of the National Cholesterol Education Program [NCEP] 「Expert Panel on Detection, Evaluation and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults」 [Adult Treatment Panel III]. Final Report. Bethesda [Md]: National Cholesterol Education Program, National Heart, Lung, and Blood Institute, National Institutes of Health; September 2002. NIH Publication 02-5215. Brewer BH, 2004, Am Heart J, 148, S14-S18;Brewer BH, 2004, N Engl J Med, 350, 1491-1494)。
【0154】
本発明はまた、本発明の組成物の1以上の成分を詰めた1以上の容器を含んでなるパックまたはキットも提供する。上記パックまたはキットは、製薬または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府当局により規定された様式の、ヒトに投与するための製造、使用または販売の当局による認可を示す通知書を含んでもよい。
【0155】
本発明は本明細書に記載の特定の実施形態または実施例によりその範囲を制限されるものでない。実際、本明細書に記載に加えて、以上の明細書および添付図面から本発明の様々な変更が当業者には明らかであろう。かかる変更は特許請求の範囲内に包含されると考えられる。様々な参考文献が本明細書に引用されているが、これらの開示は全て本明細書に参照によりその全てが取り込まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】シス対トランススプライシング反応の模式図を示す。
【図2】プレ-トランススプライシング分子(PTM)の模式図を示す。
【図3】標的5'スプライス部位とPTM3'スプライス部位の間のトランススプライシング反応および3'エキソン置換の模式図を示す。
【図4】アルブミン転写物を標的プレmRNAとして選択する理論的根拠を示す。
【図5】ヒト血漿の成分を示す。
【図6】アルブミン標的プレmRNAへのトランススプライシングを示す。
【図7】種々のトランススプライシング反応の模式図を示す。(a)標的5'スプライス部位とPTMの3'スプライス部位の間のトランススプライシング反応、(b)標的3'スプライス部位とPTMの5'スプライス部位の間のトランススプライシング反応、および(c)二重トランススプライシング反応による内部エキソンの置換であって、その場合、PTMは3'と5'スプライス部位を保持する。BD、結合ドメイン;BP、ブランチポイント配列;PPT、ポリピリミジントラクト;およびss、スプライス部位。
【図8】トランススプライシングが介在するHPV-16 E7の一本鎖抗体作製計画に応用した本発明を示す。
【図9】マウスアルブミンエキソン1‐HPV16抗E7scFv cDNAの模式図を示す。
【図10】トランススプライスされたマウスアルブミン-HPV16抗E7 scFv mRNAのヌクレオチド配列を示す。
【図11】さらなるエンドペプチダーゼ切断部位を含有するPTMの模式図を示す。PTM構造は、さらなるエンドペプチダーゼ切断部位または自然の「プロ」ペプチド配列を有することを除くとscFv PTMに類似している。
【図12】最終生成物中のアルブミン配列を除去するためのトランススプライシング計画の模式図を示す。Ex1、アルブミンのエキソン1;CS、さらなる切断部位。
【図13】Hepa1-6細胞中のHPV16抗E7 scFvの産生を表すSDSゲルを示す。マウスアルブミン-HPV16抗E7 scFv cDNA(トランススプライスされたmRNAと同一)をHepa1-6およびCos-7細胞中にトランスフェクトした。トランスフェクション後48時間に上清と細胞ライセートを調製し、抗FLAG M2 モノクローナル抗体を用いてウェスタンブロットにより分析した。矢印は、予想される〜30kDaマウスアルブミン-HPV16抗E7 scFvを示す。
【図14】トランススプライスされたmAlb-HPV16抗E7 scFvが細胞中で機能することを示す。HPV-ポジティブ子宮頚癌細胞、SiHa、または整合するHPV-ネガティブ細胞を、mAlb-HPV16抗E7 scFv発現cDNAプラスミドを用いてトランスフェクトした。細胞を5日間増殖し、MTTアッセイを用いて細胞生存について試験した。
【図15】in vitro POP研究に使用した、HPV16抗E7 scFv PTM(A)、スプライス変異体(B)およびマウスアルブミンのミニ遺伝子標的(C)の模式図を示す。PTMカセットは、マウスアルブミン・イントロン1特異的結合ドメイン(BD)を含むトランススプライシングドメイン、短いスペーサー、コンセンサス配列ブランチポイント(BP)、最適化ポリピリミジントラクト(PPT)、3'アクセプター部位(CAG)、と続くHPV16抗E7 scFv配列のコード配列の大部分から成る。PTM発現はCMVプロモーターにより駆動される。3'末端において、PTMはまた、FLAGエピトープと続くウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(BGH pA)も含有する。スプライス変異体は機能性PTMを同一であるが、アクセプター部位(CAG>CAT)に点突然変異を有する。ss、3'スプライス部位;矢印はトランススプライシングアッセイに用いたプライマーを示す。
【図16】細胞における、HPV16抗E7 scFv PTMのマウスアルブミン・エキソン1への正確なトランススプライシングを示す。
【図17A】mAlb-HPV16抗E7 scFv cDNAを注入したマウスからの血清サンプルのウェスタンブロット分析を示す。25μl血清をFLAGアフィニティカラムを通過させ、ウェスタンブロットにより抗FLAG M2モノクローナル抗体を用いて分析した。
【図17B−C】HPV16抗E7 scFv PTMを単独で注入したマウスからの血清サンプルのウェスタンブロット分析を示す。50〜100μl血清をFLAGアフィニティカラムを通過させ、ウェスタンブロットにより抗FLAG M2モノクローナル抗体を用いて分析した。
【図18】全抗体の産生のためのビシストロンPTMの模式図を示し、PTMカセットは結合ドメイン、短スペーサー、BP、PPTを含むトランススプライスドメイン(TSD)、全軽鎖に対するコード配列、口蹄疫ウイルス(FMDV)由来の2A自己プロセシングペプチドまたは脳心筋炎(ECMV)内部リボソーム侵入部位(IRES)、続いて重鎖の全長コード配列が含まれる。略語:BD、結合ドメイン;BP、ブランチポイント;PPT、ポリピリミジントラクト;3'ss、スプライス部位。
【図19】ヒトApoA-1の、アルブミン標的プレmRNAへの標的化トランススプライシングの模式図を示す。
【図20】ヒトおよびマウスアルブミン-ヒトApoA-I cDNA構築物(試験構築物)、点(欠失)突然変異体をもつ類似構築物(ネガティブ対照)、ならびに野生型ヒトApoA-Iおよびミラノ変異体(ポジティブ対照)の模式図を示す。未熟終結を生じる点変異(欠失)を指示している。ウェスタンブロットで全長タンパク質は検出されなかった。
【図21】293細胞中のヒトApoA-1発現を示すSDSである。
【図22】293細胞中の成熟ヒトApoA-Iタンパク質の発現と分泌を示すウェスタンブロットである。レーン1、マウスAlb-hAI;レーン2、ヒトAlb-hAI;レーン3、野生型ApoA-Iおよびレーン4、ミラノ変異体。上段パネル、上清中のタンパク質および下段パネル、細胞ライセート中のタンパク質。
【図23】機能性ヒトApoA-1タンパク質の発現を実証する293細胞中のコレステロール流出。
【図24A】FACSに基づくPTM選択計画の模式図である。
【図24B】高処理スクリーニング(HCS)プロトコルの比較である。
【図25】5'GFP-Albln1Ex2プレmRNA標的配列。in vitro研究用の5'GFP-Albln1Ex2遺伝子のヌクレオチド配列。イタリックで表した配列はGFP蛍光タンパク質に対するコード配列の第1ハーフ、続いてヒトアルブミン・イントロン1およびエキソン2配列(下線部)を示す。「/」は5'および3'のスプライス接合部を示す。
【図26】HCSに用いられるプレmRNA標的の模式図である(SD、スプライスドナー部位;SA、スプライスアクセプター部位。点線は標的シススプライシングを示す)。
【図27】HCSに用いられるPTMカセットの模式図である。PTMカセットは、可変BD、短スペーサー、BP、PPTを含むトランススプライスドメイン(TSD)、zsGに対するコード配列の3'ハーフ、IRES、続いて第2レポーターDsRedExpressに対する全長コード配列から成る。略語:3'zsG、zs緑色蛍光タンパク質コード配列の3'ハーフ;IRES、内部リボソーム侵入部位、BD、結合ドメイン;BP、ブランチポイント;PPT、ポリピリミジントラクト;SA、スプライスアクセプター部位.
【図28】マウスアルブミン結合ドメイン(BD)ライブラリーのクローニング効率および多様性を示すPCR分析。
【図29】高処理スクリーニング(HCS)法を示す。
【図30】マウスアルブミン標的に対するHCSから選択したPTMのトランススプライシング効率を示す。
【図31】HCSから選択した様々なPTMのトランススプライシング効率およびGFP蛍光を示す棒グラフである。
【図32】in vitro研究の理論的根拠の証明に用いた、ヒトApoA-1PTM発現カセットを示す模式図である。
【図33】マウス・アルブミンミニ遺伝子プレmRNA標的の模式図を示す。
【図34】野生型ApoA-1のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す。
【図35】mAlbPTMの、安定な細胞中のアルブミン・エキソン1へのトランススプライシングを示す。
【図36】トランススプライスされたヒトApoA-1タンパク質のウェスタンブロット分析を示す。
【図37】マウスにおける内因性アルブミンエキソン1へのPTMが介在するトランススプライシングを示す。
【図38】ApoA1発現を増加させるための、ヒトアルブミン標的化計画を説明する模式図を示す。
【図39】トランススプライスされた最終生成物中のアルブミン配列を除去する計画を示す。
【図40】アルブミン-ヒトApoA-I cDNA、トランススプライスされたmRNA、旧および新PTMおよび本発明によって利用しうる標的を示す(NCE、非コードエキソン;hAI、ヒト Apo A-IおよびEx、エキソン)。
【図41】最終生成物中のアルブミン配列を除去するトランススプライシング計画の模式図を示す。Ex1、アルブミンのエキソン1;CS、さらなる切断部位。
【図42】マウスおよびヒトAlb-hApoA1がトランススプライスされたタンパク質のウェスタン分析を示す。
【図43】ウェスタンブロット分析によるApoA-Iの同定を示す。
【図44】コレステロール流出アッセイにより測定したApoA-Iの機能性を示す。
【図45】マウスにおけるヒトHDLの長期生産のための、プラスミドに基づく送達系の利用を実証する。
【図46】アルブミン・エキソン1へのトランススプライシングを介する、分泌されるFVIIIの作製を示す。
【図47】無接種対照ならびにスプライシングに欠陥のあるPTMを受容した動物は第VIII因子を現さないことを示す。
【図48】アルブミンミニ遺伝子標的と第VIII因子をコードするPTMとの両方が接種された動物は有意な血漿レベルの第VIII因子を現すことを示す。
【図49】ヒトパピローマウイルス(HPV)E7に対する一本鎖モノクローナル抗体の利用を示す。
【図50】トランススプライスされた生成物がHPV-感染細胞の増殖を阻害するのに有効であったことを示す。
【図51】非常に豊富に存在する転写物へのトランススプライシングの妥当性を実証する。
【図52】一本鎖モノクローナル抗体をコードするPTMは、マウスアルブミンプレmRNAの正確なヌクレオチド配列へ特異的にトランススプライスすることを示す。
【図53】マウスアルブミン-ヒトapoAI(mAlb-hapoAI)cDNA、トランススプライスされたmRNA、旧および新PTMおよび標的の模式図を示す。NCE、非コードエキソン;hAI、ヒトapoAI;およびEx、エキソン。
【図54】標的とPTMプラスミドの間のトランススプライシングは293細胞内に機能性タンパク質を産生することを示す。293細胞を種々の濃度のmAlb-hapoAI cDNAまたはPTM+標的プラスミドを用いてトランスフェクトした。トランスフェクション後48時間に、培地を採集し、処理し、そして上記のように活性(流出ポテンシャル)について試験した。
【図55】293細胞における旧および新PTMのトランススプライシング効率を示す。293細胞を種々の濃度のPTM+標的プラスミドを用いてトランスフェクトした。トランスフェクション後48時間に、全RNAを単離し、そしてトランススプライシング効率をqRT-PCRにより特異的プライマーを用いて定量した。
【図56A−B】マウスmAlb-hapoAI mRNAの存在を示すRT-PCR結果(A)及びマウス中のトランススプライスされたmRNAの存在を示すRT-PCR結果(B)である。
【図56C】ヒトapoAI PTMの、マウス中の内因性マウスアルブミンプレmRNAへのトランススプライシングを示すRT-PCR結果である。MC、ミニサークル;PL、プラスミドDNA;RT、逆転写;そして+/-はRT+反応およびRT-反応。
【図57A】mAlb-hApoAI cDNAを注入したマウスからの血清サンプルのウェスタンブロット分析である。20μl血清をProto-Blueカラムを通過させ(アルブミン+IgGを枯渇させるために)、そしてウェスタンブロットによりヒトapoAI特異的抗体を用いて分析した。MC、ミニサークル;およびPL、プラスミドDNA RT。
【図57B】PTM単独およびPTM+標的プラスミドを注入したマウスからの血清サンプルのウェスタンブロット分析である。20〜50μl血清をProto-Blueカラムを通過させ(アルブミン+IgGを枯渇させるために)、そしてウェスタンブロットによりヒトapoAI特異的抗体を用いて分析した。MC、ミニサークル;およびPL、プラスミドDNA。
【図58A】PTMプラスミドを注入したマウスからの血清サンプルのウェスタンブロット分析である。50μl血清を免疫沈降させ、そしてウェスタンブロットによりヒトapoAI特異的抗体を用いて分析した。矢印は28kDaヒトapoAIタンパク質を示す。
【図58B】cDNAプラスミドを注入したマウスからの血清サンプルのウェスタンブロット分析である。10μl血清を免疫沈降させ、そしてウェスタンブロットによりヒトapoAI特異的抗体を用いて分析した。
【図59】PTMおよびmAlb-hapoAI cDNAプラスミドを注入したマウスからの血清サンプルのHDL分析である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的のタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸分子を含む細胞であって、
上記核酸分子は、
上記目的のタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸分子と細胞内で豊富に発現される標的プレmRNAとの結合を標的とする1以上の標的結合ドメイン;
スプライス領域;
上記スプライス領域を上記標的結合ドメインから分離するスペーサー領域;および
上記標的プレmRNAへトランススプライシングされる目的のタンパク質またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
を含んでなり、そして
上記核酸分子は細胞内の核スプライシング成分により認識される上記細胞。
【請求項2】
豊富に発現される標的プレmRNAがアルブミン、カゼイン、ミオシンおよびフィブロインをコードするプレmRNAからなる群より選択される、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
豊富に発現される標的プレmRNAがアルブミンをコードする、請求項1に記載の細胞。
【請求項4】
豊富に発現される標的プレmRNAがカゼインをコードする、請求項1に記載の細胞。
【請求項5】
豊富に発現される標的プレmRNAが腫瘍特異的または腫瘍関連転写物を含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項6】
豊富に発現される標的プレmRNAが微生物または自己抗原関連転写物を含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項7】
豊富に発現される標的プレmRNAがウイルスまたは酵母関連転写物を含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項8】
目的のタンパク質またはポリペプチドがサイトカイン、成長因子、インスリン、ホルモン、酵素および抗体ポリペプチドからなる群より選択される、請求項1に記載の細胞。
【請求項9】
目的のタンパク質またはポリペプチドがApoA1およびApoA1ミラノ変異体からなる群より選択される、請求項1に記載の細胞。
【請求項10】
目的のタンパク質またはポリペプチドが一本鎖抗体ポリペプチドを含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項11】
目的のタンパク質またはポリペプチドが第VIII因子タンパク質を含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項12】
目的のタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸分子であって、
上記核酸分子は、
上記目的のタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸分子と細胞内で豊富に発現される標的プレmRNAとの結合を標的とする1以上の標的結合ドメイン;
スプライス領域;
上記スプライス領域を上記標的結合ドメインから分離するスペーサー領域;および
上記標的プレmRNAへトランススプライシングされる目的のタンパク質またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
を含んでなり、そして
上記核酸分子は細胞内の核スプライシング成分により認識される上記核酸分子。
【請求項13】
豊富に発現される標的プレmRNAがアルブミン、カゼイン、ミオシンおよびフィブロインをコードするプレmRNAからなる群より選択される、請求項12に記載の核酸分子。
【請求項14】
豊富に発現される標的プレmRNAがアルブミンをコードする、請求項12に記載の核酸分子。
【請求項15】
豊富に発現される標的プレmRNAがカゼインをコードする、請求項12に記載の核酸分子。
【請求項16】
豊富に発現される標的プレmRNAが腫瘍特異的または腫瘍関連転写物を含む、請求項12に記載の核酸分子。
【請求項17】
豊富に発現される標的プレmRNAが微生物または自己抗原関連転写物を含む、請求項12に記載の核酸分子。
【請求項18】
豊富に発現される標的プレmRNAがウイルスまたは酵母関連転写物を含む、請求項12に記載の核酸分子。
【請求項19】
目的のタンパク質またはポリペプチドがサイトカイン、成長因子、インスリン、ホルモン、酵素および抗体ポリペプチドからなる群より選択される、請求項12に記載の核酸分子。
【請求項20】
目的のタンパク質またはポリペプチドがApoA1およびApoA1ミラノ変異体からなる群より選択される、請求項12に記載の核酸分子。
【請求項21】
目的のタンパク質またはポリペプチドが一本鎖抗体ポリペプチドを含む、請求項12に記載の核酸分子。
【請求項22】
目的のタンパク質またはポリペプチドが第VIII因子タンパク質を含む、請求項12に記載の核酸分子。
【請求項23】
目的のタンパク質またはポリペプチドをコードするキメラRNA分子を細胞内で産生する方法であって、
細胞内で豊富に発現される標的プレmRNAを、目的のタンパク質またはポリペプチドをコードしかつ核スプライシング成分により認識される核酸分子と接触させるステップを含んでなり、
上記核酸分子は、
上記目的のタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸分子と上記細胞内で豊富に発現される標的プレmRNAとの結合を標的とする1以上の標的結合ドメイン;
スプライス領域;
上記スプライス領域を上記標的結合ドメインから分離するスペーサー領域;および
上記標的プレmRNAへトランススプライシングされるヌクレオチド配列;
を含んでなり、
上記核酸分子は細胞内で核スプライシング成分により認識される上記方法。
【請求項24】
豊富に発現される標的プレmRNAがアルブミン、カゼイン、ミオシンおよびフィブロインをコードするプレmRNAからなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
豊富に発現される標的プレmRNAがアルブミンをコードする、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
豊富に発現される標的プレmRNAがカゼインをコードする、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
豊富に発現される標的プレmRNAが腫瘍特異的または腫瘍関連転写物を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
豊富に発現される標的プレmRNAが微生物または自己抗原関連転写物を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
豊富に発現される標的プレmRNAがウイルスまたは酵母関連転写物を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
目的のタンパク質またはポリペプチドがサイトカイン、成長因子、インスリン、ホルモン、酵素および抗体ポリペプチドからなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
目的のタンパク質またはポリペプチドがApoA1およびApoA1ミラノ変異体からなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
目的のタンパク質またはポリペプチドが一本鎖抗体ポリペプチドを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
目的のタンパク質またはポリペプチドが第VIII因子タンパク質を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
目的のタンパク質またはポリペプチドを細胞内で産生する方法であって、
細胞内で豊富に発現される標的プレmRNAを核酸分子と接触させて目的のタンパク質またはポリペプチドをコードするキメラRNA分子を産生するステップを含んでなり、
上記核酸分子は、
上記目的のタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸分子と上記細胞内で豊富に発現される標的プレmRNAとの結合を標的とする1以上の標的結合ドメイン;
スプライス領域;
上記スプライス領域を標的結合ドメインから分離するスペーサー領域;および
上記標的プレmRNAへトランススプライシングされるヌクレオチド配列;
を含んでなり、
上記核酸分子は細胞内で核スプライシング成分により認識され、そして
キメラRNA分子は細胞により翻訳されて目的のタンパク質またはポリペプチドを産生する上記方法。
【請求項35】
豊富に発現される標的プレmRNAがアルブミン、カゼイン、ミオシンおよびフィブロインをコードするプレmRNAからなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
豊富に発現される標的プレmRNAがアルブミンをコードする、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
豊富に発現される標的プレmRNAがカゼインをコードする、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
豊富に発現される標的プレmRNAが腫瘍特異的または腫瘍関連転写物を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
豊富に発現される標的プレmRNAが微生物または自己抗原関連転写物を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
豊富に発現される標的プレmRNAがウイルスまたは酵母関連転写物を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
目的のタンパク質またはポリペプチドがサイトカイン、成長因子、インスリン、ホルモン、酵素および抗体ポリペプチドからなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
目的のタンパク質またはポリペプチドがApoA1およびApoA1ミラノ変異体からなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
目的のタンパク質またはポリペプチドが一本鎖抗体ポリペプチドを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
目的のタンパク質またはポリペプチドが第VIII因子タンパク質を含む、請求項34に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B−C】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56A−B】
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【図56C】
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【図57A】
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【図57B】
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【図58A】
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【図58B】
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【図59】
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【公表番号】特表2008−515441(P2008−515441A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535892(P2007−535892)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/036424
【国際公開番号】WO2006/042232
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(508009998)バークシス コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】