組換えライノウイルスベクター
本発明は、インフルエンザウイルス免疫原のような免疫原の送達において使用され得るライノウイルスベクター、ならびに対応する組成物および方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
インフルエンザの大流行は、世界中の人々がほとんどまたは全く免疫を有していない新しいインフルエンザウイルス亜型が出現した時に起こる。20世紀の間、インフルエンザの大流行は、世界中で、数百万人の死亡、社会的混乱、および深刻な経済的損失を引き起こした。インフルエンザの専門家は、再び大流行が起こる可能性は高いが、それがいつであるかは未知であるということで一致している。大流行が襲った時点での世界的な準備体制のレベルが、公衆衛生および疾患の経済的影響を決定するであろう。現時点で、世界保健機構(WHO)は、世界的に、少なくとも数億人の外来患者の受診、2500万人を超える入院、および数百万人の死亡が、極めて短い期間内に起こるであろう推定している。これらの懸念は、多数のアジア諸国の家禽においてトリH5N1ウイルスが家畜流行レベルに達し、次いでヨーロッパおよびアフリカへと蔓延した2003年に注目された。幸い、ヒトへの伝播は現在までのところ限定的であるが、2006年9月14日に報告されたように、246例の感染が立証され、それらは144例の死因となった高い死亡率に関連していた(世界保健機構(WHO)ウェブサイト)。
【0002】
従来のインフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルス血球凝集素タンパク質(HA)に対する中和抗体応答を誘発するように設計されている。HAタンパク質は常に抗原連続変異を起こしているため、予想される流布ウイルス株に適合するよう、毎年、ワクチン組成を変化させなければならない。大流行株の単離および同定、ならびに適切なワクチンの構築および製造には長い時間が必要とされることから、大流行に直面した場合には、そのようなワクチンアプローチは受け入れられない。インフルエンザ大流行の抑制または防止のためのより効果的なアプローチは、最近同定された高度に保存されたインフルエンザウイルス免疫決定基に対する防御免疫を誘発することができる「ユニバーサル」ワクチンの開発を企図する。そのようなワクチンは、全てのA型インフルエンザウイルス株に対する広範囲の防御を提供するはずである。さらに、そのようなワクチンは、年間を通して製造され、備蓄され、かつ/または年間を通して投与され得る。血球凝集素(HA)のタンパク質分解切断部位周辺の19〜25アミノ酸配列は、保存されたA型インフルエンザウイルスエピトープである(Bianchi et al.,J.Virol.79:7380-7388,2005;Mundy et al.,Science 303:1870-1873,2004)。成熟型インフルエンザウイルスHAは、2個のサブユニットHA1およびHA2から構成され、それらは、タンパク質分解切断により前駆体HA0に由来する(Chen et al.,Cell 95:409-417,1998;Skehel et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.72:93-97,1975)。結晶学的データ(Gamblin et al.,Science 303:1838-1842,2004;Stevens et al.,Science 303:1866-1870,2004)に基づき、切断部位は、引き伸ばされた溶媒に露出したループを形成していることが決定された。切断により、新たに形成されたHA2のN末端が融合ペプチドのホストとなり、それが、ウイルス膜と細胞膜との融合を媒介する。HA0切断は、ウイルスの感染性(Klenk et al.,Virology 68:426-439,1975;Klenk et al.,Virology 68:426-439,1975)および病原性(Klenk et al.,Trends Microbiol.2:39-43,1994;Steinhauer,Virology 258:1-20,1999)にとって不可欠である。機能的制約のため、そのエピトープは著しくよく保存されており、従って、広範囲の交差防御応答を誘発することができる(Bianchi et al.,J.Virol.79:7380-7388,2005)。
【0003】
髄膜炎菌(Neisseria meningitides)の外膜タンパク質複合体にコンジュゲートされたB型インフルエンザウイルスのHA0ペプチドは、Balb/cマウスにおいて防御免疫応答を誘発する(Bianchi et al.,J.Virol.79:7380-7388,2005)。ヒトおよびトリのA型インフルエンザおよびB型インフルエンザのHA0配列のアラインメントは、以下に示される。この領域の保存性は、700以上のインドネシアおよびベトナムのヒトおよびトリのA型インフルエンザウイルス株の研究において確認された(Smith et al.,Virology 350:258-268,2006)。いくつかの変異が観察されたが、それらは、大部分が(下記アラインメント中、矢印により示される)切断部位より上流に存在した(Smith et al.,Virology 350:258-268,2006)。B型インフルエンザのHA0ペプチドの系統的なアラニンスキャニング変異誘発は、3個の残基、R6、F9、およびF15(アラインメント中、四角で囲まれている)が、3種のHA0特異的防御モノクローナル抗体の結合にとって最も重大な残基であることを解明した(Bianchi et al.,J.Virol.79:7380-7388,2005)。これらの残基は、全てのトリおよびヒトのA型インフルエンザ株およびB型インフルエンザ株(下記;SEQ ID NO:1〜8)の間で保存されている。
【0004】
インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質M2は、ワクチン開発のための効果的な標的として役立つことが証明されている(DeFilette et al.,Virology 337: 149-161,2005)。M2は、A型インフルエンザウイルスの97アミノ酸の膜貫通タンパク質である(Lamb et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 78:4170-4174,1981;Lamb et al.,Cell 40:627-633,1985)。成熟型タンパク質は、pHにより誘導可能なイオンチャンネル活性を有する(Pinto et al.,Cell 69:517-528,1992;Sugrue et al.,Virology 180:617-624,1991)ホモ四量体を形成する(Holsinger et al.,Virology 183:32-43,1991;Sugrue et al.,Virology 180:617-624,1991)。M2四量体は、感染細胞の形質膜に高密度に発現され、成熟ウイルス粒子の膜にも低い頻度で組み入れられる(Takeda et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100:14610-14617,2003;Zebedee et al.,J.Virol.62:2762-2772,1998)。M2のN末端24アミノ酸外部ドメイン(M2e)は、A型インフルエンザウイルスの間で高度に保存されている(Fiers et al.,Virus Res.103:173-176,2004)。M2eの高い保存度は、最も保存されたウイルスタンパク質であるM1との遺伝的関係に起因する拘束(Ito et al.,J.Virol.65:5491-5498,1991)および自然感染の際のM2e特異的抗体の欠如(Black et al.,J.Gen.Virol.74 (Pt 1):143-146,1993)によって説明され得る。
【0005】
NCBIインフルエンザデータベースからの配列を使用して得られた以下のアライメントに示されるように、トリH5N1インフルエンザウイルスM2eは、典型的なヒトのH1型、H2型、およびH3型のウイルスに見い出されるコンセンサス配列に向かって進化しているようであり、このことは、「ヒト」インフルエンザM2eエピトープを使用して、新たなトリウイルスからの防御を含む、広範囲の防御が可能であるかもしれないことを示唆している(下記、SEQ ID NO:9〜12)。
【0006】
H5N1 M2eのH1N1 M2e配列に向けての進化の現象は、インドネシアおよびベトナムにおいてヒトおよびトリから単離された800のH5H1株の配列の分析に基づき、最近報告された(Smith et al.,Virology 350:258-268,2006)。進化したトリM2eペプチドEVETPTRN(SEQ ID NO:13)は、抗ヒトM2eモノクローナル抗体(Mab)(Liu et al.,Microbes.Infect.7:171-177,2005)によって効率的に認識されたが、その「先祖」であるEVETLTRN(SEQ ID NO:14)は認識されなかった。いくつかの「トリインフルエンザ様」変化が、ヒトM2e特異的モノクローナル抗体によって提供される防御の有効性を減少させることが以前に示されているため、このことは重要である。興味深いことに、M2eにおけるいくつかの「トリインフルエンザ様」アミノ酸変化は、マウスにおけるヒトH1N1ウイルスの病原性を減少させた(Zharikova et al.,J.Virol.79:6644-6654,2005)。
【0007】
WHOは、「カナダでH7N3が、アジアでH5N1が、家禽において流行した2004年のケースと同様に、異なる国で、異なる脅威レベルで、大流行の可能性を有する事象が同時に発生する」可能性を強調している。以下のアラインメントに示されるように、M2e H7N7は、H5N1の「ヒト化」バリアントとアミノ酸1個が異なるに過ぎない。H7N7亜型は、種間で伝播可能である能力を示しており(Koopmans et al.,Lancet 363:587-593,2004)、ヒトにとって致死的であり得る(Fouchier et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 101:1356-1361,2004)。他の株(H9N2)も、家禽に感染し、ヒトへと蔓延し得ることが示された(Cameron et al.,Virology 278:36-41,2000;Li et al.,J.Virol.77:6988-6994,2003;Wong et al.,Chest 129:156-168,2006)(下記、SEQ ID NO:9および15〜18)。
【0008】
M2eに基づく組換えタンパク質ワクチンは、同種および異種両方のA型インフルエンザウイルスのチャレンジに対して防御免疫応答を誘発することが示されている(Fiers et al.,Virus Res.103:173-176,2004;Slepushkin et al.,Vaccine 13:1399-1402,1995)。キーホールリンペットヘモシアニンおよび髄膜炎菌外膜タンパク質にコンジュゲートされたM2eペプチドを使用した、より最近の研究は、マウスのみならず、フェレットおよびアカゲザルにおいても良好な免疫応答を例証した(Fan et al.,Vaccine 22:2993-3003,2004)。リポソームM2eワクチンによるH1型、H5型、H6型、およびH9型のA型インフルエンザウイルスに対する防御が、マウスにおいて証明された(Fan et al.,Vaccine 22:2993-3003,2004)。
【0009】
インフルエンザ免疫原のための効果的な送達系は、大流行ワクチンのようなインフルエンザウイルス感染に対するワクチンの開発にとって重要である。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、インフルエンザウイルスHA0免疫原を含むライノウイルスベクター(生存型(live)または不活化)を提供する。ヒトライノウイルス14(HRV14)のような、そのようなベクターは、ヒトにおいて非病原性であり得る。HA0配列に加え、ライノウイルスベクターは、任意で、一つまたは複数のM2eペプチドを含んでいてもよい。これらのペプチド(HA0および/またはM2e)は、例えば、中和免疫原(Neutralizing Immunogen)I(NimI)、中和免疫原II(NimII)(アミノ酸158とアミノ酸160の間)、中和免疫原III(NimIII)、および中和免疫原IV(NimIV)からなる群より選択される中和免疫原の部位、またはこれらの部位のうちの複数に挿入され得る。さらに、任意で、ペプチドの一方または両方の末端にリンカー配列が隣接していてもよい。
【0011】
本発明は、本明細書に記載されたライノウイルスベクターと、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む薬学的組成物または免疫学的組成物も提供する。任意で、そのような組成物は、一つもしくは複数のアジュバントおよび/または一つもしくは複数の付加的な活性成分(例えば、HA0配列および/もしくはM2e配列と融合したB型肝炎コアタンパク質、ならびに/またはHA0ペプチドを含むライノウイルスベクターおよびM2eペプチドを含むライノウイルスベクター)を含んでいてもよい。
【0012】
本明細書に記載されたような薬学的組成物が対象に投与される、対象(例えば、ヒト対象)におけるインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘導する方法も、本発明に含まれる。対象は、インフルエンザウイルス感染を有していないが、該感染を発症するリスクを有していてもよいし、または対象は、インフルエンザウイルス感染を有していてもよい。組成物は、例えば、鼻腔内経路によって投与され得る。本発明には、本明細書に記載されたような免疫応答を誘導する方法における本明細書に記載されたベクターおよび組成物の使用、ならびに本明細書に記載されたもののような使用のための、薬の調製におけるベクターおよび組成物の使用も含まれる。
【0013】
本発明は、本明細書に記載されたようなライノウイルスベクターを、薬学的に許容される担体または希釈剤(および、任意で、本明細書に記載されたような付加的な成分)と混合する工程を含む、本明細書に記載されたような薬学的組成物を作成する方法も提供する。
【0014】
さらに、本発明は、本明細書に記載されたライノウイルスベクターのゲノムをコードするか、または該ゲノムに相当する核酸分子(DNAまたはRNAの形態)を提供する。
【0015】
本発明には、本明細書に記載されたような一つまたは複数の挿入されたインフルエンザウイルスHA0免疫原を含むNimIIペプチドがさらに含まれる。
【0016】
本発明は、一つまたは複数のインフルエンザウイルスHA0免疫原(および、任意で、M2e免疫原のようなその他の免疫原)を含むライノウイルスベクター(例えば、HRV14ベクター)を生成する方法を提供する。これらの方法は、以下の工程を含む:(i)挿入されたインフルエンザウイルスHA0免疫原配列を含有している感染性cDNAクローンに基づく組換えライノウイルスベクターのライブラリーを生成する工程;および(ii)(a)継代の際に挿入された配列を維持し、かつ(b)挿入された配列に対する抗体によって中和される組換えウイルスを、ライブラリーから選択する工程。これらの方法において、挿入されたインフルエンザ免疫原配列は、NimI、NimII、NimIII、およびNimIVからなる群より選択される位置に挿入され得る。さらに、任意で、挿入された配列の一方または両方の末端にランダムリンカー配列が隣接していてもよい。
【0017】
HeLa細胞またはMRC-5細胞のような細胞においてベクターを継代する工程を含む、本明細書に記載されたようなライノウイルスベクターを培養する方法も、本発明に含まれる。
【0018】
さらに、本発明には、本明細書に記載されるような一つまたは複数の免疫原を含む、本明細書に記載されるようなライノウイルスベクターが含まれる。
【0019】
本発明はいくつかの利点を提供する。例えば、本発明の生存型ベクターの場合、HA0のような免疫原を送達するためのそのような生存型ベクター系の使用は、以下のものを含む利点を提供する:(i)わずか1回のワクチン投与により極めて強力かつ持続性の抗体応答を誘発する能力、および(ii)サブユニットワクチンまたは不活化ワクチンと比較して、より大きい製造規模拡大可能性(即ち、より低いコストによるより多くの用量)。従って、大流行の情況において、生ワクチンによれば、より多くの人々を比較的短い期間に免疫感作することができる。さらに、本発明のHRVベクターは鼻腔内送達され、全身免疫応答および粘膜免疫応答の両方をもたらすことができる。HRV14は、非病原性であり、ヒト集団において希にしか観察されず(Andries et al.,J.Virol.64:1117-1123,1990;Lee et al.,Virus Genes 9:177-181,1995)、従って、ワクチンレシピエントにおける既存の抗ベクター免疫の確率は低いため、HRV14の使用は付加的な利点を提供する。さらに、ヒトに感染するために必要とされるHRVの量は極めて小さく(1組織培養感染用量(TCID50)(Savolainen-Kopra,"Molecular Epidemiology of Human Rhinoviruses," Publications of the National Public Health Institute 2/2006,Helsinki,Finland,2006)、このことは、HRVに基づくワクチンの製造の費用効果にとって好都合な特色である。
【0020】
本発明のその他の特色および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】HRV14のウイルス粒子(上パネル)およびゲノム(下パネル)の概略図である。ヒトライノウイルス14(HRV14)カプシドは、偽T=3(P=3)正20面体対称性を示し、ウイルスタンパク質VP1、VP2、VP3、およびVP4の60コピーからなり、VP4がRNA-カプシド界面にある(Rossmann et al.,Nature 317:145-153,1985)。VP1〜3タンパク質は、細胞受容体である細胞内接着分子1(ICAM-1)の受容体結合部位を含有するキャニオンを形成する(Colonno et al.,J.Virol.63:36-42,1989)。三つの主要な中和免疫原性(Nim)部位、NimI(AB)、NimII、およびNimIIIが、中和抗体の結合部位として、キャニオンの縁の表面に同定された(Sherry et al.,J.Virol.57:246-257,1986)。HRV14粒子の再構築は、NimI特異的mAb17(タンパク質データバンクデータベース#1RVF)を含むHRV14結晶構造に基づき、キメラ(Chimera)プログラムにおいて作出された。
【図2A】以下のように示されている。(A)本研究において作出されたHRV14-M2e構築物(SEQ ID NO:19〜21)。HRV14 cDNAクローンの誘導体であるプラスミドpWR1が、M2e挿入変異体の構築のために使用された。
【図2B】(B)HRV14-NimII-XXX17AAウイルスライブラリー(Arnold et al.,J.Mol.Biol.177:417-430,1984)およびHRV14-NimII-XXX23AAウイルスライブラリー(Arnold et al.,US 2006/0088549 A1)、ならびにpWR1に由来する野生型HRV14によって産生されたプラーク。構築物#1は、本文に記述されるように、そして付加的なデータ(図3および4)によって支持されるように、プラークを生じず、このことから、ランダムリンカー戦略が、HRVにおいて新規エピトープを操作するための効果的な手段であることが示された。
【図2C】パネル(C)は、本発明に係るHRV14-M2e(17AA)構築物、HRV14-HA0(19AA)構築物、およびHRV14-M2e16HA012構築物(SEQ ID NO:22〜24)を示す。
【図3】異なるHRV14-M2e構築物におけるM2eインサートの安定性を示す。インサート含有断片を、プライマー対P1-up100Fw、VP1-dwn200Rv(緑色)、または14FAflII-1730Rv(赤色)を用いてRT-PCR増幅したところ、それぞれ、「PCR B」DNA断片(緑色)または「PCR A」DNA断片(赤色)が得られた。これらの断片をXhoIによって消化した。2代目、3代目、および4代目のHRV14-M2eキメラ、ならびに4代目のHRV14-NimII-XXX17AAウイルスライブラリーおよびHRV14-NimII-XXX17AAウイルスライブラリーに関するアガロースゲル電気泳動の結果が示される。二つの切断された断片(矢印で示されている)は、インサート含有ウイルスを表す。
【図4】NimII部位内の23アミノ酸M2eインサートによるHRV14の受容体結合ドメインの可能性のある立体干渉を示す。リンカーを含まないインサートは、図中に示されるように、NimIIから外側に伸び、キャニオンの反対側(即ち、NimI部位)にほぼ到達する。その障壁は、キャニオン内への受容体入り口を効果的に遮断することができる。N末端リンカーは、インサートの位置を変化させ(方向は矢印によって示される)、キャニオンへの進入路を開く。HRV14-NimII-M2e(23アミノ酸)のVP1〜VP4サブユニットのこの分子モデルは、Accelrys Discovery Studio(Accelrys Software,Inc)において作出された。これは、利用可能な構造データおよびモデリングソフトウェアにより、HRV14において新規エピトープを操作することが可能であることを例示している。
【図5】抗M2e Mab 14C2(Abcam,Inc;カタログ#ab5416)による、HRV14、HRV14-NimII-XXX23AAライブラリー、およびHRV14-NimII-XXX17AAライブラリーのプラーク減少中和試験(PRNT)を示す。結果は、両ライブラリーが効率的に中和されるが、ベクターウイルス(HRV14)は中和されないことを証明している。両ライブラリーの純度(WT混入の欠如)も、これらの結果から明白である。
【図6】チャレンジ前の免疫感作されたマウスにおけるM2e特異的IgG抗体応答(プールされた試料)を示す。終点力価(ET)が、該当する群の名称の後に示される。対応する免疫感作の時間が括弧内に示される(d0は0日目を表し、d21は21日目を表す)。
【図7】チャレンジ前の免疫感作されたマウスにおけるHRV14特異的IgG抗体応答(プールされた試料)を示す。(A)HRV14-M2e(17AA)ウイルスの1回投与、2回投与、または3回投与によって免疫感作された群;(B)親HRV14ウイルスの1回投与または2回投与によって免疫感作された群。
【図8】免疫感作されたマウスの個々のM2e特異的IgG抗体応答を示す。
【図9】表4に記載されるように免疫感作されたマウスにおけるM2e特異的抗体アイソタイプIgG1およびIgG2aを示す:(A)IgG1 ELISA(群毎にプールされた試料);(B)IgG2a ELISA(群毎にプールされた試料);(C)図AおよびBに関する名称;(D)群4(赤;第一および第三のデータセット)および群7(緑;第二および第四のデータセット)のマウス(表4参照)の個々の血清試料(2,700倍希釈)中のM2e特異的なIgG1(丸)およびIgG2a(菱形)のレベル。
【図10】表4に記載されるように免疫感作されたマウスにおけるIgG2bアイソタイプのM2e特異的抗体を示す。(A)M2eペプチドによるELISA(群毎にプールされた試料);(B)M2e特異的ペプチドに対するELISAにおいて試験された群4(赤)および群7(緑)のマウス(表1参照)の個々の血清試料(2,700倍希釈)。
【図11】表4に記載されるように免疫感作されたマウスにおけるIgG1アイソタイプ、IgG2aアイソタイプ、およびIgG2bアイソタイプのM2e特異的抗体を示す(上パネル)。
【図12】PR8 A型インフルエンザ株によるチャレンジ後28日目の全ての群の生存率を示す。
【図13】PR8 A型インフルエンザ株によるチャレンジ後28日目の全ての群の罹患率(図13A);群4(図13B)および群7(図13C)の個々の体重を示す。
【図14A】チャレンジ前の免疫感作されたマウスにおけるM2e特異的IgG抗体応答を示す(群に関しては、表5を参照のこと)。
【図14B】チャレンジ前の免疫感作されたマウスにおけるM2e特異的IgG抗体応答を示す(群に関しては、表5を参照のこと)。
【図14C】チャレンジ前の免疫感作されたマウスにおけるM2e特異的IgG抗体応答を示す(群に関しては、表5を参照のこと)。
【図14D】チャレンジ前の免疫感作されたマウスにおけるM2e特異的IgG抗体応答を示す(群に関しては、表5を参照のこと)。
【図14E】HA0特異的IgG抗体応答(E)(プールされた試料)を示す(群に関しては、表5を参照のこと)。
【図15】PR8 A型インフルエンザ株による致死的チャレンジ後21日間の全ての群の罹患率(B;体重の割合)および死亡率(A;生存率(%))を示す。
【図16】マウス抗HRV14-NimIVHRV6血清によるHRV14およびHRV6のプラーク減少中和試験(PRNT)の結果を示す。これらのデータは、HRV14カプシドのバックグラウンドにおけるNimIVHRV6の免疫優性の証拠として役立ち、外来エピトープの挿入のための新規部位を示唆している。
【図17】HRV14のビリオンタンパク質内の挿入部位の概略図である。M2eまたはHA0は、NimI、NimII、NimIII、およびNimIVの示された位置に導入される。XXXM2eは本明細書に記載されたM2eライブラリー(SEQ ID NO:25〜28)を意味する。
【図18】ヒトライノウイルス14(HRV14)に関する配列情報を提供する。コードされたアミノ酸配列(SEQ ID NO:30)は、示された核酸配列(SEQ ID NO:29)のヌクレオチド629〜7168の翻訳により入手される。
【図19】プラスミドマップ、ならびにHRV14のNimII部位へ挿入された19アミノ酸HA配列(SEQ ID NO:77)およびCMVHRV14MGM19aaHAGQの完全配列(SEQ ID NO:78)に関する配列情報を提供する。
【図20】プラスミドマップ、ならびにHRV14-M2e17aaのP1領域アミノ酸配列(SEQ ID NO:79)およびNimII HRV14内のM2e17aaのプラスミド配列(SEQ ID NO:80)に関する配列情報を提供する。
【図21】プラスミドマップ、ならびにM2e 23アミノ酸(変異型)配列(SEQ ID NO:81)、HRV14-M2e23aaのP1領域アミノ酸配列(SEQ ID NO:82)、およびNimII HRV14内のM2e23aaのプラスミド配列(SEQ ID NO:83)に関する配列情報を提供する。
【図22】プラスミドマップ、ならびにHRV14-M2e16aa-HA012aaのP1領域アミノ酸配列(SEQ ID NO:84)およびNimII HRV14内のHA012-M2e16のプラスミド配列(SEQ ID NO:85)に関する配列情報を提供する。
【図23】構築物マップ、ならびにHRV14-M2e(17AA)キメラのVP4-VP1(構造領域)(SEQ ID NO:86)およびHRV14-M2e(23AA)キメラのVP4-VP1(構造領域)(SEQ ID NO:87)に関する配列情報を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
本発明は、インフルエンザウイルス決定基の効率的な送達および提示のための、ヒトライノウイルス(HRV)のベクターとしての使用に基づく、ユニバーサル(大流行)インフルエンザワクチンを提供する。以下にさらに記載されるように、インフルエンザウイルス血球凝集素(HA)のタンパク質分解切断部位(HA0)およびインフルエンザウイルスマトリックスタンパク質2の細胞外ドメイン(M2e)が、本発明に係るユニバーサルインフルエンザ(A型インフルエンザ)ワクチンに含まれ得る二つのエピトープである。従って、本発明のワクチンは、一つまたは複数のHA0に基づく免疫原を含有しているベクターを含み、任意で、M2eに基づく免疫原と組み合わせて使用されてもよく、その際、M2eに基づく免疫原は、HA0に基づく免疫原と同一の組成物に含まれていてもよいし、HA0に基づく免疫原に(直接もしくは間接的に、例えば、リンカーにより)連結されていてもよいし、またはHA0に基づく免疫原とは別の組成物に含まれていてもよい。本発明のワクチン組成物は、インフルエンザ大流行の状況を含む、インフルエンザウイルス感染を防止するかまたは処置する方法において使用され得る。以下にさらに記載されるように、本発明には、その他の免疫原を含む本明細書に記載されるようなベクターも含まれる。本発明のベクター、ワクチン、組成物、および方法を、以下にさらに説明する。
【0023】
HRVベクター
本発明のベクターは、非病原性血清型ヒトライノウイルス14(HRV14)のようなヒトライノウイルスに基づく。HRV14ウイルス粒子およびゲノム構造は、ウイルス構造タンパク質(VP1、VP2、VP3、およびVP4)、非構造タンパク質(P2-A、P2-B、P-2C、P3-A、3B(VPg)、3C、および3D)、ならびにHRV14内の主要な中和免疫原性(neutralizing immunogenic)部位(Nim:NimI、NimII、NimIII、およびNimIV)の位置を示す図1に概略的に例示される。
【0024】
本発明において使用され得るHRV14の分子クローンの一例は、pWR3.26(アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection):ATCC(登録商標)番号:VRMC-7(商標))である。このクローンは、以下にさらに詳細に記載され、Lee et al.,J.Virology 67(4):2110-2122,1993によっても記載されている(SEQ ID NO:29および30も参照のこと)。HRV14の付加的な起源も、本発明において使用され得る(例えば、ATCCアクセッション番号VR284;GenBankアクセッション番号L05355(1993年6月11日)およびK02121(2001年1月2日)ならびにそれらの他の掲載版;Stanway et al.,Nucleic Acids Res.12(20):7859-7875,1984;およびCallahan et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.82(3):732-736,1985も参照のこと)。HRV14に加えて、その他のヒトライノウイルス血清型も本発明において使用され得る。当技術分野において公知であるように、100を超えるそのような血清型が存在し、そのうちの任意のものが、例えば、HRV14の場合と同一の様式で、感染性クローンの誘導により使用され得る。従って、本明細書においてはHRV14に関して記載されるが、本発明は、その他のライノウイルス血清型にも、それらのバリアント(例えば、ウイルスの特性に実質的に影響を与えないかまたは弱毒化を提供する、天然に存在するまたは人工的な配列の差違を含むバリアント;ならびに1個または複数個(例えば、1〜100個、2〜75個、5〜50個、または10〜35個)の保存的アミノ酸置換を含むバリアント)にも当てはまる。
【0025】
以下にさらに記載されるように、抗原配列は、異なる部位で、本発明に係るHRVベクターへ挿入され得る。一例において、配列は、HRV14のような血清型のNimII部位へ挿入される。NimII(中和免疫原II)は、VP1のアミノ酸210、およびVP2のアミノ酸156、158、159、161、および162を含むHRV14内の免疫優性領域である(Savolainen-Kopra,"Molecular Epidemiology of Human Rhinoviruses," Publications of the National Public Health Institute 2/2006,Helsinki,Finland,2006)。下記の具体例において、配列は、VP2のアミノ酸158とアミノ酸160の間、またはアミノ酸158とアミノ酸162の間に挿入される。挿入は、NimII部位内のその他の部位でも同様になされ得る。例えば、挿入は、VP2の156位、158位、159位、161位、もしくは162位のいずれか、またはVP1の210位、またはそれらの組み合わせにおいてなされ得る。他に示されない限り、本明細書における挿入の位置に関する言及は、一般に、示されたアミノ酸のカルボキシ末端への挿入を示し、本明細書に記載されるような欠失と併せてなされてもよい。
【0026】
単独で、または他の部位(例えば、NimII部位)における挿入と組み合わせて、挿入がなされ得る付加的な部位には、NimI(AおよびB)、NimIII、ならびにNimIVが含まれる。従って、挿入は、例えば、VP1の91位および/もしくは95位(NimIA)、VP1の83位、85位、138位、および/もしくは139位(NimIB)、ならびに/またはVP1の287位(NimIII)でなされ得る(例えば、図17参照)。NimIVは、VP1のカルボキシル末端領域、HRV14 VP1のアミノ酸274〜289を表す以下の配列:
を含む領域にある。挿入は、このNimIV部位またはその他のHRV血清型の対応する領域においてなされてもよい。この領域内の任意のアミノ酸の間の挿入が本発明に含まれる。従って、本発明には、例えば、アミノ酸274とアミノ酸275;アミノ酸275とアミノ酸276;アミノ酸276とアミノ酸277;アミノ酸277とアミノ酸278;アミノ酸278とアミノ酸279;アミノ酸279とアミノ酸280;アミノ酸280とアミノ酸281;アミノ酸281とアミノ酸282;アミノ酸282とアミノ酸283;アミノ酸283とアミノ酸284;アミノ酸284とアミノ酸285;アミノ酸285とアミノ酸286;アミノ酸286とアミノ酸287;アミノ酸287とアミノ酸288;およびアミノ酸288とアミノ酸289の間の挿入が含まれる。これらの挿入に加えて、本発明には、この領域内の1個または複数個(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個)のアミノ酸が欠失する挿入が含まれる。従って、例えば、本発明には、アミノ酸274とアミノ酸276;アミノ酸275とアミノ酸277;アミノ酸276とアミノ酸278;アミノ酸277とアミノ酸279;アミノ酸278とアミノ酸280;アミノ酸279とアミノ酸281;アミノ酸280とアミノ酸282;アミノ酸281とアミノ酸283;アミノ酸282とアミノ酸284;アミノ酸283とアミノ酸285;アミノ酸284とアミノ酸286;アミノ酸285とアミノ酸287;アミノ酸286とアミノ酸288;アミノ酸287とアミノ酸289;アミノ酸288とアミノ酸290;およびアミノ酸289とアミノ酸291の間の挿入が含まれる。挿入は、さらに、示されたアミノ酸の片側または両側の、例えば、1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸の欠失の代わりになされてもよい。
【0027】
本発明のベクターは、HRV14のNimIIへの挿入を含むベクターに関して以下に例示される、分子生物学の標準的な方法を使用して、作成される。さらに、以下にさらに記述されるように、本発明のベクターは、生存型ウイルスの形態で投与されてもよいし、または当業者に公知の方法を使用して、例えば、ホルマリン不活化もしくは紫外線処理により、投与前に不活化されてもよい。
【0028】
任意で、ベクターは、HRVベクター配列と、挿入されたインフルエンザ配列の間に、アミノ末端および/またはカルボキシル末端に、リンカー配列を含んでいてもよい。これらのリンカー配列は、挿入された配列が、免疫応答を誘導し得る様式で、挿入されたエピトープを提示し得るようにする柔軟性を、挿入された配列に提供するために使用され得る。そのようなリンカー配列の例は以下に提供される。特定のインサートと共に使用されるリンカー配列の同定は、例えば、本明細書に記載されるような本発明のライブラリースクリーニング法によって実施され得る。簡単に説明すると、この方法においては、効果的なリンカー配列の同定のために望まれる領域に様々な長さのランダム配列を有するライブラリーを構築する。ライブラリーから生成されたウイルスを、効果的なリンカーを同定するため、生存性および挿入された配列の免疫原性に関して試験する。
【0029】
本発明のウイルスは、例えば、細胞培養物における継代のような、標準的な方法を使用して増殖させられ得る。例えば、ウイルスは、MRC-5細胞またはHeLa細胞のような細胞において増殖させられ、そこから精製され得る。
【0030】
異種ペプチド
本発明のウイルスベクターは、予防的または治療的な関心対象の任意のペプチド、タンパク質、またはその他のアミノ酸に基づく免疫原を送達するために使用され得る。例えば、本発明のベクターは、HRVタンパク質へ挿入された任意のタンパク質に基づく抗原に対する免疫応答の誘導(予防的または治療的)において使用され得る。本明細書において使用されるような予防および防止には、本発明のベクターへ挿入されたペプチドまたはタンパク質が由来する病原体に感染していない対象への本発明の免疫原性組成物の投与が含まれる。そのような対象への本発明の組成物の投与は、そのような対象が、投与の後に、病原体に感染した場合に、症候性感染の発症を防止するかまたは実質的に防止することができる。従って、投与は、対象の免疫系が、例えば、症候性の段階への感染の進行を防止するかまたは実質的に防止することを可能にし得る。治療的投与には、挿入されたペプチドまたはタンパク質が由来する病原体に既に感染している対象への投与が含まれる。そのような対象は、感染の症候を示していてもよい。これらの用語は、腫瘍関連抗原に関しても同様に適用可能である。例えば、予防的または防止的な投与は、腫瘍を有していない(または腫瘍を有すると診断されていない)患者において実施され得、そのような投与は、対象において発達する腫瘍に対抗するよう免疫応答を誘導することができる。腫瘍関連抗原の投与を含む治療的処置は、腫瘍を有すると既に診断された患者において実施され得る。
【0031】
本発明のベクターは、各々、挿入された配列の単一のエピトープを含んでいてもよい。または、複数のエピトープが、単一の部位において(例えば、異なるエピトープが、下記実施例に記載されるようなポリグリシンアミノ酸ストレッチまたは1個のアミノ酸のようなフレキシブルリンカーにより任意で分離されていてもよい、ポリトープ(polytope)として)、異なる部位(例えば、異なるNim部位)において、またはそれらの任意の組み合わせにおいて、ベクターへ挿入されていてもよい。異なるエピトープは、単一の種、株、もしくは血清型の病原体(もしくはその他の起源)に由来してもよいし、または異なる種、株、血清型、および/もしくは属に由来してもよい。ベクターは、複数のペプチドを含んでいてもよく、例えば、本明細書にリストされるようなペプチドの複数のコピーまたは本明細書にリストされたもののようなペプチドの組み合わせを含んでいてもよい。例として、ベクターは、HA0配列およびM2e配列、またはヒトおよびトリのHA0ペプチドおよび/またはM2eペプチド(および/またはそれらのコンセンサス配列;および/または本明細書に記載されたもののようなその他のペプチド)を含むことができる。
【0032】
本発明において使用され得る免疫原は、例えば、ウイルス、細菌、および寄生虫のような感染因子に由来し得る。そのような感染因子の具体例は、ヒトに感染するもの(例えば、A株、B株、およびC株)のみならず、トリインフルエンザウイルスも含む、インフルエンザウイルスである。インフルエンザウイルス由来の免疫原の例には、血球凝集素(HA;例えば、H1〜H16のいずれか、またはそれらのサブユニット)(HA0またはHAサブユニットHA1およびHA2)、M2(例えば、M2e)、ノイラミニダーゼ(NA;例えば、N1〜N9のいずれか)、M1、核タンパク質(NP)、ならびにBタンパク質に由来するものが含まれる。
【0033】
本発明のベクターに含まれ得る配列の例は、血球凝集素前駆体タンパク質切断部位(HA0)を含むインフルエンザウイルスペプチド(A/H1株に関しては
、A/H3株に関しては
、B型インフルエンザ株に関しては
)である。そのようなペプチドの二つの具体例には、
が含まれる。
【0034】
その他の例において、HA0に基づくワクチンは、付加的な免疫原配列(例えば、インフルエンザウイルスM2e配列)を含むか、または付加的な免疫原(例えば、インフルエンザウイルスM2e)と共に投与される。そのような配列の例は、本明細書全体および表6〜9に提供される。そのような配列の具体例には、以下のものが含まれる:
。本発明において使用され得る付加的なM2e配列には、B型インフルエンザのBM2タンパク質の細胞外ドメインに由来する配列(コンセンサスMLEPFQ;SEQ ID NO:38)、およびH5N1トリインフルエンザに由来するM2eペプチド
が含まれる。以下は、本発明において使用され得る、組み合わせられたHA0配列およびM2e配列の一例である:
。
【0035】
複数の免疫原を含むワクチンの場合、複数の免疫原は、本発明のHRVに基づくベクターのような、同一であるかまたは異なる送達媒体に含まれ得る。本発明のベクターは、本明細書に記載されるようなB型肝炎コアに基づくベクター(例えば、米国特許第7,361,352号も参照のこと)のようなその他の型のベクター、および/またはサブユニットワクチンと組み合わせて投与されてもよい。
【0036】
インフルエンザにおいて保存されているペプチドのその他の例は、HA0に基づくワクチンと組み合わせて本発明において使用され得、B型インフルエンザにおいて保存されているNBeペプチド(コンセンサス配列
)を含む。本発明において使用され得るインフルエンザペプチド、およびそのようなペプチドが(例えば、断片化および/またはアナログの作出により)由来し得るタンパク質のさらなる例は、US 2002/0165176、US 2003/0175290、US 2004/0055024、US 2004/0116664、US 2004/0219170、US 2004/0223976、US 2005/0042229、US 2005/0003349、US 2005/0009008、US 2005/0186621、米国特許第4,752,473号、米国特許第5,374,717号、米国特許第6,169,175号、米国特許第6,720,409号、米国特許第6,750,325号、米国特許第6,872,395号、WO 93/15763、WO 94/06468、WO 94/17826、WO 96/10631、WO 99/07839、WO 99/58658、WO 02/14478、WO 2003/102165、WO 2004/053091、WO 2005/055957、および表6〜9(ならびにその中に引用された参照)(これらの内容は参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている。さらに、インフルエンザの保存された免疫学的/防御的なT細胞エピトープおよびB細胞エピトープは、公に入手可能なデータベースから選ばれてもよい(例えば、Bui et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.104:246-251,2007、および補足の表を参照のこと)。本発明は、オンラインIEDBリソースからのペプチド、例えば、Bui et al.(前記)に記載された保存されたB細胞エピトープおよびT細胞エピトープを含むインフルエンザウイルスエピトープも利用することができる。
【0037】
寄生虫(例えば、マラリア)、その他の病原性ウイルス(例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV;例えば、gag)、およびC型肝炎ウイルス(HCV))、ならびに細菌(例えば、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、およびピロリ菌(Helicobacter pylori))に由来するエピトープのような、その他のヒト/動物病原体に由来する防御エピトープも、本発明のHA0に基づくワクチンと組み合わせられてもよいし、または本発明のベクターを使用してHA0に基づくペプチドの非存在下で投与されてもよい。これらおよびその他の病原体の様々な適切なエピトープは、当技術分野において公知である。例えば、HPV16ウイルスのL2タンパク質のアミノ酸1〜88、アミノ酸1〜200、またはアミノ酸17〜36(WO 2006/083984 A1;
)
を含むペプチドのような、異なるHPV遺伝子型から防御する広範囲交差中和抗体を誘導するパピローマウイルスL2タンパク質由来の交差防御性エピトープ/ペプチドが、例えば、使用され得る。本発明において使用され得る付加的な病原体ならびにこれらの病原体に由来する免疫原およびエピトープの例は、WO 2004/053091、WO 03/102165、WO 02/14478、およびUS 2003/0185854(これらの内容は、参照により本明細書に組み入れられる)に提供されている。
【0038】
免疫原が入手され得る病原体の付加的な例は、下記表1にリストされ、そのような免疫原の具体例には、表2にリストされたものが含まれる。さらに、本発明のベクターへ挿入され得るエピトープの具体例は、表3に提供される。表3に示されるように、本発明のベクターにおいて使用されるエピトープは、B細胞エピトープ(即ち、中和エピトープ)またはT細胞エピトープ(即ち、Tヘルパー細胞および細胞障害性T細胞に特異的なエピトープ)であり得る。
【0039】
本発明のベクターは、病原体由来抗原に加えて免疫原を送達するために使用され得る。例えば、ベクターは、癌に対する免疫治療法において使用するための腫瘍関連抗原を送達するために使用され得る。多数の腫瘍関連抗原が当技術分野において公知であり、本発明に従って投与され得る。癌(および対応する腫瘍関連抗原)の例は、以下の通りである:黒色腫(NY-ESO-1タンパク質(特に、アミノ酸157位〜165位に位置するCTLエピトープ)、CAMEL、MART1、gp100、チロシン関連タンパク質TRP1および2、ならびにMUC1);腺癌(ErbB2タンパク質);結腸直腸癌(17-1A、791Tgp72、および癌胎児性抗原);前立腺癌(PSA1およびPSA3)。熱ショックタンパク質(hsp110)も、そのような免疫原として使用され得る。
【0040】
本発明のもう一つの例において、免疫応答が望まれるアレルギー誘導抗原のエピトープをコードする外因性配列が使用されてもよい。さらに、本発明のベクターは、ベクターが投与される対象における特定の細胞(例えば、リガンドの受容体を含む細胞)へ、抗原のようなペプチドを送達するため、ベクターをターゲティングするために使用されるリガンドを含んでいてもよい。
【0041】
本発明のベクターに免疫原として含まれ得る病原体、腫瘍、およびアレルゲンに関連するペプチドのさらなる例およびそれらの起源は、以下のように記載される。これらのペプチド免疫原は、相互に、かつ/または本明細書に記載されたその他のペプチド(例えば、本明細書に記載されたもののようなHA0および/もしくはM2eに関連する配列)と組み合わせて使用されてもよい。本発明には、これらのベクターを含む組成物が含まれ、免疫原に対する免疫応答を誘導するためにベクターを使用する方法も含まれる。従って、例えば、上記の免疫原に加えて、本明細書に記載されたベクターは、例えば、dsDNAウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、1型単純ヘルペス、2型単純ヘルペス、8型ヒト単純ヘルペスウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ポックスウイルス);ssDNAウイルス(例えば、パルボウイルス、パピローマウイルス(例えば、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、E8、BPV1、BPV2、BPV3、BPV4、BPV5、およびBPV6(In Papillomavirus and Human Cancer,edited by H.Pfister(CRC Press,Inc.1990));Lancaster et al.,Cancer Metast.Rev.pp.6653-6664,1987;Pfister et al.,Adv.Cancer Res.48:113-147,1987));dsRNAウイルス(例えば、レオウイルス);(+)ssRNAウイルス(例えば、ピコルナウイルス、コクサッキーウイルス、A型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、トガウイルス、風疹ウイルス、フラビウイルス、C型肝炎ウイルス、黄熱ウイルス、デング熱ウイルス、ウエストナイルウイルス);(-)ssRNAウイルス(例えば、オルソミクソウイルス、インフルエンザウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、ラブドウイルス、狂犬病ウイルス);ssRNA-RTウイルス(例えば、レトロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV));ならびにdsDNA-RTウイルス(例えば、ヘパドナウイルス、B型肝炎)を含む、一つまたは複数のウイルスに由来するか、またはそれらに対する免疫応答を指図する、一つまたは複数の免疫原(例えば、ウイルス標的抗原)を含んでいてもよい。免疫原は、上にリストされていないが、当業者に入手可能なその他のウイルスに由来するものであってもよい。
【0042】
HIVに関して、免疫原は任意のHIV単離物から選択され得る。当技術分野において周知であるように、HIV単離物は、現在、別々の遺伝学的亜型へ分類されている。HIV-1は少なくとも10の亜型(A、B、C、D、E、F、G、H、J、およびK)を含むことが公知である。HIV-2は少なくとも5の亜型(A、B、C、D、およびE)を含むことが公知である。亜型Bは、世界的な男性同性愛者および静脈注射薬使用者におけるHIV大流行に関連している。大部分のHIV-1免疫原、実験室順応単離物、試薬、およびマッピングされたエピトープは、亜型Bに属する。新たなHIV感染の発生率が高い区域である、サハラ砂漠以南のアフリカ、インド、および中国においては、HIV-1亜型Bは、感染のごく一部のみを占め、亜型HIV-1Cが最も一般的な感染亜型であるようである。従って、ある種の態様において、HIV-1亜型Bおよび/またはCに由来する免疫原を選択することが望ましいかもしれない。単一の免疫学的組成物の中に複数のHIV亜型(例えば、HIV-1亜型BおよびC、HIV-2亜型AおよびB、またはHIV-1亜型とHIV-2亜型の組み合わせ)に由来する免疫原を含めることが望ましいかもしれない。適当なHIV免疫原には、例えば、ENV、GAG、POL、NEFが含まれ、それらのバリアント、誘導体、および融合タンパク質も含まれる。
【0043】
免疫原は、例えば、バチルス(Bacillus)種(例えば、バチルス・アントラシス(anthracis))、ボルデテラ(Bordetella)種(例えば、百日咳菌(Bordetella pertussis))、ボレリア(Borrelia)種(例えば、ライム病菌(Borrelia burgdorferi))、ブルセラ(Brucella)種(例えば、ブルセラ・アボルタス(abortus)、ブルセラ・カニス(canis)、ブルセラ・メリテンシス(melitensis)、およびブルセラ・スイス(suis))、カンピロバクター(Campylobacter)種(例えば、ジェジュニ菌(Campylobacter jejuni))、クラミジア(Chlamydia)種(例えば、クラミジア・ニューモニエ(pneumoniae)、クラミジア・シタッシ(psittaci)、クラミジア・トラコマチス(trachomatis))、クロストリジウム種(例えば、クロストリジウム・ボツリヌム(botulinum)、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・パーフリンゲンス(perfringens)、クロストリジウム・テタニ(tetani))、コリネバクテリウム(Corynebacterium)種(例えば、コリネバクテリウム・ジフテリエ(diptheriae))、腸球菌(Enterococcus)種(例えば、フェカリス菌(Enterococcus faecalis)、フェシウム菌(Enterococcus faecum))、エスケリキア(Escherichia)種(例えば、大腸菌(Escherichia coli))、フランシセラ(Francisella)種(例えば、フランシセラ・ツラレンシス(tularensis))、ヘモフィルス(Haemophilus)種(例えば、ヘモフィルス・インフルエンザ(influenza))、ヘリコバクター(Helicobacter)種(例えば、ピロリ菌)、レジオネラ(Legionella)種(例えば、レジオネラ・ニューモフィラ(pneumophila))、レプトスピラ(Leptospira)種(例えば、レプトスピラ・インターロガンス(interrogans))、リステリア(Listeria)種(例えば、リステリア・モノサイトゲネス(monocytogenes))、ミコバクテリウム(Mycobacterium)種(例えば、ミコバクテリウム・レプレ(leprae)、結核菌)、マイコプラズマ(Mycoplasma)種(例えば、マイコプラズマ・ニューモニエ、ナイセリア(Neisseria)種(例えば、ナイセリア・ゴノレア(gonorrhea)、髄膜炎菌)、シュードモナス(Pseudomonas)種(例えば、シュードモナス・アエルギノサ(aeruginosa))、リケッチア(Rickettsia)種(例えば、リケッチア・リケッチー(rickettsii))、サルモネラ(Salmonella)種(例えば、チフス菌(typhi)、ネズミチフス菌(Salmonella typhinurium))、シゲラ(Shigella)種(例えば、シゲラ・ソネイ(sonnei))、ブドウ球菌(Staphylococcus)種(例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・サプロフィティクス(saprophyticus)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(例えば、米国特許第7,473,762号)))、連鎖球菌(Streptococcus)種(例えば、ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyrogenes))、トレポネーマ(Treponema)種(例えば、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum))、ビブリオ(Vibrio)種(例えば、コレラ菌(Vibrio cholerae))、ならびにエルシニア(Yersinia)種(ペスト菌(Yersinia pestis))を含む、一つまたは複数の細菌種に由来するか、またはそれらに対する免疫応答を指図するもの(例えば、細菌標的抗原)であってもよい。免疫原は、上にリストされていないが、当業者に入手可能なその他の細菌種に由来するか、またはそれらに対する免疫応答を指図するものであってもよい。
【0044】
免疫原は、例えば、鉤虫(Ancylostoma)種(例えば、ズビニ鉤虫(A.duodenale))、アニサキス(Anisakis)種、回虫(Ascaris lumbricoides)、大腸バランチジウム(Balantidium coli)、条虫(Cestoda)種、トコジラミ(Cimicidae)種、肝吸虫(Clonorchis sinensis)、槍形吸虫(Dicrocoelium dendriticum)、ディクロコエリウム・ホスペス(Dicrocoelium hospes)、ジフィロボスリウム・ラツム(Diphyllobothrium latum)、ドラクンクルス(Dracunculus)種、包虫(Echinococcus)種(例えば、単包条虫(E.granulosus)、多包条虫(E.multilocularis))、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、蟯虫(Enterobius vermicularis)、ファスキオラ(Fasciola)種(例えば、肝蛭(F.hepatica)、F.マグナ(magna)、F.ギガンティカ(gigantica)、F.ジャクソニ(jacksoni))、ファシオロプシス・バスキ(Fasciolopsis buski)、ジアルジア(Giardia)種(ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia))、顎口虫(Gnathostoma)種、膜様条虫(Hymenolepis)種(例えば、小型条虫(H.nana)、縮小条虫(H.diminuta))、リーシュマニア(Leishmania)種、ロア糸状虫(Loa loa)、メトルキス(Metorchis)種(M.コンジャンクツス(conjunctus)、M.アルビダス(albidus))、アメリカ鉤虫(Necator americanus)、エストロイデア(Oestroidea)種(例えば、ウマバエ(botfly))、オンコセルシデ(Onchocercidae)種、肝吸虫(Opisthorchis)種(例えば、タイ肝吸虫(O.viverrini)、ネコ肝吸虫(O.felineus)、O.グアヤキレンシス(guayaquilensis)、およびO.ノベルカ(noverca))、マラリア原虫(Plasmodium)種(例えば、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum))、プロトファスキオラ・ロバスタ(Protofasciola robusta)、パラファスシオロプシス・ファスシモルフェ(Parafasciolopsis fasciomorphae)、ウエステルマン肺吸虫(Paragonimus westermani)、住血吸虫(Schistosoma)種(例えば、マンソン住血吸虫(S.mansoni)、日本住血吸虫(S.japonicum)、S.メコンギ(mekongi)、ビルハルツ住血吸虫(S.haematobium))、スピロメトラ・エリナセイエウロパエイ(Spirometra erinaceieuropaei)、糞線虫(Strongyloides stercoralis)、条虫(Taenia)種(例えば、無鉤条虫(T.saginata)、有鉤条虫(T.solium))、トキソカラ(Toxocara)種(例えば、イヌ回虫(canis)、ネコ回虫(T.cati))、トキソプラズマ(Toxoplasma)種(例えば、トキソプラズマ原虫(T.gondii))、トリコビルハルジア・レゲンティ(Trichobilharzia regenti)、旋毛虫(Trichinella spiralis)、鞭虫(Trichuris trichiura)、ツツガムシ(Trombiculidae)種、トリパノソーマ(Trypanosoma)種、ツンガ・ペネトランス(Tunga penetrans)、ならびに/またはバンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti)を含む、一つまたは複数の寄生生物(種)に由来するか、またはそれらに対する免疫応答を指図するもの(例えば、寄生虫標的抗原)であってもよい。免疫原は、上にリストされていないが、当業者に入手可能なその他の寄生生物に由来するか、またはそれらに対する免疫応答を指図するものであってもよい。
【0045】
免疫原は、腫瘍標的抗原に由来するか、またはそれらに対する免疫応答を指図するもの(例えば、腫瘍標的抗原)であってもよい。腫瘍標的抗原(TA)という用語には、癌細胞が抗原の起源である腫瘍関連抗原(TAA)および腫瘍特異抗原(TSA)の両方が含まれ得る。TAは、正常細胞に観察されるより多量に腫瘍細胞の表面に発現される抗原、または胎児発生の間に正常細胞に発現される抗原であり得る。TSAは、典型的には、腫瘍細胞に独特であって、正常細胞には発現されない抗原である。TAは、典型的には、発現パターン、機能、または遺伝学的起源により、以下の五つのカテゴリーへ分類される:癌・精巣(CT)抗原(即ち、MAGE、NY-ESO-1);メラニン形成細胞分化抗原(例えば、Melan A/MART-1、チロシナーゼ、gp100);変異抗原(例えば、MUM-1、p53、CDK-4);過剰発現された「自己」抗原(例えば、HER-2/neu、p53);およびウイルス抗原(例えば、HPV、EBV)。適当なTAには、例えば、gp100(Cox et al.,Science 264:716-719,1994)、MART-1/Melan A(Kawakami et al.,J.Exp.Med.,180:347-352,1994)、gp75(TRP-1)(Wang et al.,J.Exp.Med.,186:1131-1140,1996)、チロシナーゼ(Wolfel et al.,Eur.J.Immunol.,24:759-764,1994)、NY-ESO-1(WO 98/14464;WO 99/18206)、黒色腫プロテオグリカン(Hellstrom et al.,J.Immunol.,130:1467-1472,1983)、MAGEファミリー抗原(例えば、MAGE-1、2、3、4、6、および12;Van der Bruggen et al.,Science 254:1643-1647,1991;米国特許第6,235,525号)、BAGEファミリー抗原(Boel et al.,Immunity 2:167-175,1995)、GAGEファミリー抗原(例えば、GAGE-1、GAGE-2;Van den Eynde et al.,J.Exp.Med.182:689-698,1995;米国特許第6,013,765号)、RAGEファミリー抗原(例えば、RAGE-1;Gaugler et al.,Immunogenetics 44:323-330,1996;米国特許第5,939,526号)、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ-V(Guilloux et al.,J.Exp.Med.183:1173-1183,1996)、p15(Robbins et al.,J.lmmunol.154:5944-5950,1995)、β-カテニン(Robbins et al.,J.Exp.Med.,183:1185-1192,1996)、MUM-1(Coulie et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:7976-7980,1995)、サイクリン依存性キナーゼ-4(CDK4)(Wolfel et al.,Science 269:1281-1284,1995)、p21-ras(Fossum et al.,Int.J.Cancer 56:40-45,1994)、BCR-abl(Bocchia et al.,Blood 85:2680-2684,1995)、p53(Theobald et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:11993-11997,1995)、p185 HER2/neu(erb-B1;Fisk et al.,J.Exp.Med.,181:2109-2117,1995)、表皮増殖因子受容体(EGFR)(Harris et al.,Breast Cancer Res.Treat,29:1-2,1994)、癌胎児性抗原(CEA)(Kwong et al.,J.Natl.Cancer Inst.,85:982-990,1995、米国特許第5,756,103号;第5,274,087号;第5,571,710号;第6,071,716号;第5,698,530号;第6,045,802号;EP 263933;EP 346710;およびEP 784483);癌関連変異型ムチン(例えば、MUC-1遺伝子産物;Jerome et al.,J.Immunol.,151:1654-1662,1993);EBVのEBNA遺伝子産物(例えば、EBNA-1;Rickinson et al.,Cancer Surveys 13:53-80,1992);ヒトパピローマウイルスのE7タンパク質、E6タンパク質(Ressing et al.,J.Immunol.154:5934-5943,1995);前立腺特異抗原(PSA;Xue et al.,The Prostate 30:73-78,1997);前立腺特異膜抗原(PSMA;Israeli et al.,Cancer Res.54:1807-1811,1994);イディオタイプエピトープまたは抗原、例えば、免疫グロブリンイディオタイプまたはT細胞受容体イディオタイプ(Chen et al.,J.Immunol.153:4775-4787,1994));KSA(米国特許第5,348,887号)、キネシン2(Dietz,et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.275(3):731-738,2000)、HIP-55、TGFβ-1抗アポトーシス因子(Toomey et al.,Br.J.Biomed.Sci.58(3):177-183,2001)、腫瘍タンパク質D52(Bryne et al.,Genomics 35:523-532,1996)、H1FT、NY-BR-1(WO 01/47959)、NY-BR-62、NY-BR-75、NY-BR-85、NY-BR-87、およびNY-BR-96(Scanlan,M.Serologic and Bioinformatic Approaches to the Identification of Human Tumor Antigens,in Cancer Vaccines 2000,Cancer Research Institute,New York,NY)、ならびに/または膵臓癌抗原(例えば、米国特許第7,473,531号のSEQ ID NO:1〜288)が含まれる。免疫原は、上にリストされていないが、当業者に入手可能なその他のTAに由来するか、またはそれらに対する免疫応答を指図するものであってもよい。
【0046】
本発明のベクターへ挿入されるペプチドまたはタンパク質のサイズは、当業者により適切であると決定され得るような長さ、例えば、3〜1,000アミノ酸、例えば、5〜500アミノ酸、10〜100アミノ酸、20〜55アミノ酸、25〜45アミノ酸、または35〜40アミノ酸の範囲であり得る。従って、例えば、7〜45アミノ酸、10〜40アミノ酸、12〜30アミノ酸、および15〜25アミノ酸の範囲の長さのペプチドが、本発明において使用され得る。本発明のベクターに含まれるペプチドは、本明細書に明記され言及されたような完全配列を含んでいてもよいし、または所望の免疫応答を誘導することができる1個もしくは複数個のエピトープを含む断片であってもよい。そのような断片には、例えば、これらペプチドの内部からの2〜50アミノ酸、3〜40アミノ酸、4〜30アミノ酸、5〜25アミノ酸、または6〜20アミノ酸の断片が含まれ得る。さらに、ペプチドは、一方または両方の末端に、例えば、1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、11〜20アミノ酸等による配列の短縮または伸長(例えば、付加的/反復的な免疫優性/ヘルパーエピトープの挿入)、例えば、天然に存在する連続配列(例えば、インフルエンザウイルス(またはその他の起源)のゲノムにおいてペプチドが連続している配列)、または合成リンカー配列(以下も参照のこと)を含んでいてもよい。従って、ペプチドは、一方または両方の末端に、例えば、1〜25アミノ酸、2〜20アミノ酸、3〜15アミノ酸、4〜10アミノ酸、または4〜8アミノ酸の配列を含むことができる。具体例として、ペプチドは、アミノ末端および/またはカルボキシル末端に1〜3アミノ酸のリンカー配列を含むことができる。ペプチドまたはタンパク質の短縮は、例えば、公知の構造/免疫学的ドメイン内の、またはドメイン間の、免疫学的に重要でない配列もしくは干渉する配列を除去することができ;または望まれないドメイン全体を欠失させてもよく;そのような修飾は、21〜30アミノ酸、31〜50アミノ酸、51〜100アミノ酸、101〜400アミノ酸等の範囲内にあり得る。範囲には、例えば、20〜400アミノ酸、30〜100アミノ酸、および50〜100アミノ酸も含まれる。さらに、配列は、ペプチドの内部および/または一方もしくは両方の末端に、例えば、1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、またはそれ以上(例えば、1〜50アミノ酸、3〜40アミノ酸、5〜30アミノ酸、8〜25アミノ酸、10〜20アミノ酸、または12〜15アミノ酸)の欠失または置換を含んでいてもよい。上に示された配列のそのような可能なペプチド断片は、全て、本発明に含まれる。従って、本明細書にリストされ言及された具体的なペプチド配列(およびそれらの短縮および伸長)に加えて、本発明は、配列のアナログも含む。そのようなアナログは、例えば、参照配列と少なくとも80%、90%、95%、もしくは99%同一である配列、またはそれらの断片を含む。同一率の決定は、例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group(University of Wisconsin Biotechnology Center,1710 University Avenue,Madison,WI 53705)、BLAST、またはPILEUP/PRETTYBOXプログラムのような、標準的な方法およびソフトウェアを使用して実施され得る。これらのソフトウェアプログラムは、様々な置換、欠失、またはその他の修飾に同一度を割り当てることにより、同一であるかまたは類似している配列をマッチさせる。アナログは、様々な例において保存的アミノ酸置換を含むことができる。保存的置換には、典型的には、以下の群の内部での置換が含まれる:グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、およびロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、およびグルタミン;セリンおよびトレオニン;リジンおよびアルギニン;ならびにフェニルアラニンおよびチロシン。
【0047】
本明細書に記載された断片およびアナログは、本明細書に記載されたもののような、標準的な免疫学的アッセイおよび動物モデル系において免疫原性に関して試験され得る。
【0048】
投与
免疫感作法において使用される場合、本発明のベクターは、例えば、インフルエンザウイルスのような特定の病原体による感染のリスクを有する成人または子供において第一の予防剤として投与され得る。ベクターは、ペプチド抗原が由来する病原体(またはその他の起源)に対する免疫応答を刺激することにより、感染対象を処置するための第二の薬剤として使用されてもよい。癌に対する免疫感作に関して、ワクチンは、癌を発症するリスクを有する対象、または既に癌を有している対象に投与され得る。ヒト対象に加えて、本発明の方法は、非ヒト動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、およびトリ(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、またはガチョウ)のような家畜、ならびにイヌ、ネコ、およびトリを含む飼育動物)への投与を含むことができる。
【0049】
免疫感作適用のため、任意で、当業者に公知のアジュバントが使用されてもよい。アジュバントは投与経路に基づき選択される。鼻腔内投与の場合、キチン微粒子(CMP)が使用され得る(Asahi-Ozaki et al.,Microbes and Infection 8:2706-2714,2006;Ozdemir et al.,Clinical and Experimental Allergy 36:960-968,2006;Strong et al.,Clinical and Experimental Allergy 32:1794-1800,2002)。粘膜経路(例えば、鼻腔内経路または経口経路)を介した投与において使用するのに適しているその他のアジュバントには、大腸菌の易熱性毒素(LT)またはその変異誘導体が含まれる。不活化ウイルスの場合、例えば、アルミニウム化合物(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、もしくはヒドロキシリン酸アルミニウム化合物)、リポソーム製剤、QS21のような合成アジュバント、ムラミルジペプチド、モノホスホリルリピドA、またはポリホスファジンを含む非経口アジュバントが使用され得る。
【0050】
さらに、アジュバント活性を有するサイトカインをコードする遺伝子が、ベクターに挿入されてもよい。従って、GM-CSF、IL-2、IL-12、IL-13、またはIL-5のようなサイトカインをコードする遺伝子が、増強された免疫応答をもたらすワクチンを作製するため、または免疫を細胞応答、体液応答、または粘膜応答に向けてより特異的にモジュレートするため、外来抗原遺伝子と共に挿入され得る。または、サイトカインは、周知の手段(例えば、直接接種、裸のDNA、ウイルスベクター等)によって、組換えワクチンウイルスとは別に、同時にまたは連続的に送達されてもよい。
【0051】
本発明のウイルスは、他の免疫感作アプローチと組み合わせて使用されてもよい。例えば、ウイルスは、同一であるかまたは異なる抗原を含むサブユニットワクチンと組み合わせて投与され得る。本発明の組み合わせ法は、本発明のウイルスの、他の型の抗原(またはその他の抗原)との共投与を含んでいてもよい。例えば、肝炎コアタンパク質または完全なもしくは部分的な不活化ウイルスを含むサブユニット型または送達媒体が使用され得る。一つのそのような例において、大腸菌において作製された表面上にM2eペプチドを含有しているB型肝炎コア粒子が使用され得る(HBc-M2e;Fiers et al.,Virus Res.103:173-176,2004;WO 2005/055957;US 2003/0138769 A1;US 2004/0146524 A1;US 2007/0036826 A1)
【0052】
もう一つのそのような例において、HA0ペプチドを含有しているB型肝炎コア粒子が使用される。そのような粒子を作成するために使用され得るB型肝炎コア配列には、全長配列のみならず、短縮型配列(例えば、例えば、アミノ酸149位、150位、163位、または164位で短縮された、カルボキシ末端短縮型配列;例えば、米国特許第7,361,352号参照)。インフルエンザウイルス配列は、HBc配列の内部、またはHBc配列のいずれかの末端に挿入され得る。例えば、配列は、HBcのおよそアミノ酸75位〜83位に存在する、HBcの主要免疫優性領域(MIR)へ挿入され得る。MIR領域への挿入は、この領域内のアミノ酸の間(例えば、75〜76、76〜77、77〜78、78〜79、79〜80、80〜81、81〜82、または82〜83)であってもよいし、またはこの領域内の(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、または7個のアミノ酸の)欠失の代わりに存在してもよい(例えば、HBc配列のアミノ酸78とアミノ酸82の間へのB型インフルエンザウイルス配列の挿入)。もう一つの例において、挿入は、HBcタンパク質のアミノ末端でなされる。
【0053】
または、本発明のベクターは、初回刺激-追加刺激戦略において、(サブユニットアプローチまたはHBcアプローチのような)他のアプローチと組み合わせて使用されてもよく、その際には、本発明のベクターもしくは他のアプローチが初回刺激として使用され、続いて、他方のアプローチが追加刺激として使用されるか、またはその逆が行われる。さらに、本発明には、初回刺激剤としても追加刺激剤としても本発明のベクターを利用する初回刺激-追加刺激法が含まれる。従って、そのような方法は、本発明に係るベクターの初回投与を、初回投与の1週間以上、1ヶ月以上、または1年以上後に行われ得る、1回または複数回(例えば、1回、2回、3回、または4回)の追加投与と共に含むことができる。
【0054】
本発明のベクターは、標準的な方法を使用して、生ワクチン、弱毒化生ワクチン、または不活化ワクチンとして対象に投与され得る。生ワクチンは、例えば、当業者に公知の方法を使用して、鼻腔内投与され得る(例えば、Grunberg et al.,Am.J.Respir.Crit.Car.Med.156:609-616,1997参照)。鼻腔内投与の場合、ベクターは、点鼻薬の形態で、またはエアロゾル化もしくは噴霧された製剤の吸入により投与され得る。ウイルスは、凍結乾燥形態であってもよいし、または生理食塩水もしくは水のような生理学的に適合性の溶液もしくは緩衝液に溶解していてもよい。調製および製剤化の標準的な方法は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences(18th edition),ed.A.Gennaro,1990,Mack Publishing Company,Easton,PAに記載されたようにして使用され得る。さらに、適切な投薬量および計画の決定は、当業者によって容易に決定され得る。適切な投薬量および計画は、当業者によって容易に決定され得る。一例として、用量範囲は、例えば、1回当たり103〜108pfuであり得るが、1 TCID50のように低くてもよい。ワクチンは、有利には、単回投与で投与され得るが、上述のように、当業者によって必要であると決定された場合には、追加刺激が実施されてもよい。不活化ワクチンに関しては、ウイルスは、例えば、ホルマリンまたはUV処理により不活化され、任意で、適切なアジュバント(例えば、キチンまたは変異型LT;上記参照)と共に、(例えば、不活化前に決定されたような)1回当たり約108pfuで鼻腔内投与され得る。もう一つの例において、不活化ワクチンは、任意で、適切なアジュバント(例えば、水酸化アルミニウムのようなアルミニウムアジュバント)と共に、非経口経路によって、例えば、皮下投与によって投与されてもよい。そのようなアプローチにおいては、複数回(例えば、2〜3回)投与することが有利であるかもしれない。
【0055】
本発明は、以下の実験例に、一部分、基づく。
【実施例】
【0056】
実験例
I.HRV14-NimII-M2eキメラの構築
本発明者らは、HRV14 NimII-M2e組換えウイルスを構築した。ウイルスは、抗M2eモノクローナル抗体が組換えウイルスの感染性を中和し得ることによって証明されるように、ビリオン表面上にM2eを発現することが示されている。
【0057】
三つの型のHRV14-M2e構築物を作出した(図2A)。
1.VP2のアミノ酸159とアミノ酸160の間(NimII部位)に挿入されたM2eの23アミノ酸を保持しているHRV14-NimII-23AA;
2.HRV14-NimII-XXX23AAライブラリー。この構築物のセット(プラスミドライブラリー)は、ペプチドに融合した3アミノ酸ランダム化N末端リンカーの存在を除き、第1の構築物に類似していた。このランダム化リンカーは、リンカーアミノ酸をコードする9個のランダム化ヌクレオチドを含有している5'(直接)プライマーを使用して、M2e配列により生成された;
3.HRV14-NimII-XXX17AAライブラリー。このライブラリーは、M2eの最初の17アミノ酸のみを含有している、短縮されたM2eペプチドを含有していることを除き、第1のものと同一の方式で生成された。
【0058】
HRV14感染性クローンへのクローニングを容易にするため、本発明者らは、pWR3.26感染性クローン(Lee et al.,J.Virol.67:2110-2122,1993)のpUCプラスミド骨格をpEtベクター(Novagen)のものに交換することにより修飾し、プラスミドpWR1(図2)を生成した。ウイルスライブラリー#2および#3のプラーク形態学は、HRV14親のものと異なっていた(図2B)。ライブラリーのプラークサイズは野生型に類似しているようであったが、プラークは不透明であった。構築物#1はトランスフェクションによりプラークを形成しなかった。
【0059】
構築されたウイルスの遺伝学的安定性をモニタリングするため、本発明者らは、サイレント変異誘発によりM2e配列の中央にXhoI切断部位を組み入れた。変異型M2e遺伝子を含有しているウイルスから入手されたRT-PCR断片は、XhoIにより切断されるが、野生型HRV14から作製された対応するDNA産物は未消化のままであった(図3)。HRV14-NimII-23AAキメラ構築物(#1)は、生存可能であるが、かなり不安定なウイルスをもたらした。図3に示されるように、「PCR A」断片の二つのXhoI消化産物は、2代目にのみ検出可能であり、その後の代においては検出可能でなかった。反対に、ライブラリー(#2)および(#3)は、M2eインサートを安定的に維持し:H1 HeLa細胞における4代目のウイルスライブラリーから入手された断片「PCR B」は、XhoIによって完全に消化された(図3)。構築物#1の不安定性は、挿入されたペプチドによる受容体結合ドメインの立体的干渉によるのかもしれず(図4)、それは、構築物#2および#3のように、縮重リンカーが提供された場合、軽減され得た。ランダム化N末端リンカーが、受容体結合ドメインを含有しているキャニオンからペプチドを遠ざけるよう向けなおし、受容体への効率的なウイルス結合を可能にしたのかもしれない(図4)。
【0060】
本発明者らは、抗M2eモノクローナル抗体(14C2 MAb,Abcam,Inc.カタログ#ab5416)を使用して、ウイルスライブラリーによる中和研究を実施した。ウイルス中和は、ライブラリーの純度(即ち、野生型HRV14の欠如)を証明するためのツールとしても使用され得る。プラーク減少中和試験(PRNT)は、両ライブラリーに対するMab 14C2の著しく高い特異性および中和能を証明した(図5)。
【0061】
両ライブラリーは、抗M2e Mabによる中和に著しく感受性であることが示されたが(図5)、対照ウイルス(pWR1)は、モノクローナル抗体の10倍という最低希釈率ですら中和されなかった。両ライブラリーに関する50パーセント中和は、抗体のおよそ2,000,000倍希釈率で観察された(14C2のストック濃度は1mg/mlであった)。そのような効率的な組換えウイルスの中和は、HRV14のNimIIに提示されたM2eペプチドが、抗体によって容易に認識可能な、適切なコンフォメーションにあることを示した。
【0062】
II.安定的なHRV14-NimII-M2e組換え体の同定
H1 HeLa細胞における4回の継代の後、各ライブラリーからの六つの個々のクローンをプラーク精製し、さらに4回継代した後、保持されているインサートを配列決定することにより特徴決定した。各ライブラリーは、一つの優性かつ安定的に複製するウイルスクローンを与えた。HRV14-NimII-XXX23AAライブラリーから単離された全てのウイルスが、N末端リンカーとしてGHTを含む、同一のインサート配列
を有し、HRV14-NimII-XXX17AAライブラリーからのウイルスは、全て、N末端リンカーとしてQPAを含む、同一の配列
を示した。23アミノ酸インサートを保持している全ての生存可能クローンが、アミノ酸7位(M2e外来インサート中の4位)にチロシンからリジンへの置換を有していた。17アミノ酸インサートを保持しているクローンは、全て、野生型M2e配列を含有していた。これらの結果は、遺伝学的に安定的な組換えHRV-M2eウイルスが単離され得ることを示している。さらなるインビボ研究において、A型インフルエンザのPR8株に対する防御を提供するHRV14-M2e(17AA)の可能性を、腹腔内投与経路を使用して評価した。
【0063】
III.HRV14-M2e組換え体およびHRV14-HA0組換え体によるインビボ研究
A.インビボ実験#1:腹腔内免疫感作
1.実験設計
9週齢雌Balb/cマウス(各群8匹)を、500μl容量の、アジュバント(水酸化アルミニウム)100μgと混合された、5.0×106pfuのショ糖精製されたHRV14-M2e(17AA;表4の注(4)参照)、1.3×107pfuの親HRV14、または陰性対照としてのモック(PBS)の腹腔内投与により、0日目に初回刺激し、次いで、21日目に追加刺激した。対照として、M2eの3コピーを保持している組換えB型肝炎コア粒子(本明細書中、HBc-3XM2e VLPとも呼ばれる)を使用した。後者は、初回刺激/追加刺激のため、単独で、またはHRV14-M2eもしくはHRV14と組み合わせて使用された(表4)。防御を証明するため、全てのマウスを、35日目に4 LD50のインフルエンザA/PR/8/34(H1N1)ウイルスによるチャレンジに供した。罹患率および死亡率を21日間モニタリングした。保持されたペプチドに対する血清抗体に関して試験するため、マウスから、接種前に採血し(基線)、33日目に再び採血した。血清中のM2e特異的抗体の力価を、合成M2eペプチドによりコーティングされたマイクロタイタープレートにおいて実施された確立されたELISAにより決定した。M2e特異的な全IgG、Ig2a、およびIg2bの力価を決定した。
【0064】
2.結果
a.免疫原性
i.免疫感作された動物における全IgG
M2e特異的抗体の力価を、プールされた血清試料(図6)および個々の動物試料(図7)を使用して各群について測定した。プールされた試料による結果(図6)は、17アミノ酸M2e配列を保持している組換えHRV14による初回刺激、およびB型肝炎コア-M2e組換えウイルス様粒子(VLP)による追加刺激が、B型肝炎ウイルスコア-M2e VLPの2回投与(10μg/回)と同レベルの抗体を誘発することを示した(終点力価(ET)=218,700)。B型肝炎ウイルスコア-M2e VLPによる追加刺激は、HRV14-M2e(17AA)(群4;ET=218,700)により初回刺激された時、HRV14ベクター(群6;ET=2,700)より約100倍高いM2e特異的応答を誘発した。従って、HRV14-M2eの初回刺激効果は、M2eインサートにのみ依存し、ベクターには依存しない。
【0065】
Arnoldら(US 2006/0088549 A1)による想定に基づくと、免疫感作用量の109pfuのHRV14は、およそ10μgのタンパク質に相当する。本発明者らは、組換えHRV-M2eウイルスの1免疫感作用量が10ngのタンパク質を表すと概算した。分子量の差および組換えB型肝炎コア粒子内のサブユニットの多重度を考慮に入れ、本発明者らは、HBc-M2eの1免疫感作用量が、HRV-M2eよりおよそ10,000倍多いM2eタンパク質を含有していると推測した。HRVベクターを使用した比較可能な抗体レベルは、おそらく、より安価な作製方法論を使用した、より免疫原性の提示系を支持する。
【0066】
M2e抗体のレベルは、HRV14-M2e(17AA)の投与回数に反比例した。実際、HRV14-M2e(17AA)ウイルスの3回投与(群1)が、最低のM2e特異的応答(ET=2.700)を誘発し、2回投与計画が、10倍高い応答を誘発し(群2;ET=24,300)、1回投与計画は2回投与より3倍高い応答を誘発した(群5;ET=72,900)。この相関が抗ベクター免疫によるか否かを確証するため、本発明者らは、HRV14ベクターに対する全ての群の免疫応答を別々に試験した(図7)。HRV14-M2e(17AA)の三つの型の投与(1回、2回、または3回)は、全て、比較可能なレベルのHRV14特異的応答(ET=72,900)を示した(図7A)。これは、抗ベクター免疫がM2eに対する免疫応答の減少の理由であることを否定し、1回投与が十分であり得ることを示唆している。
【0067】
個々の血清試料のM2e特異的ELISA分析(図8)は、プールされた試料により示されたのと同一の群内差を検出した:二つの血清希釈率(300倍および2,700倍)で示されたように、群4および7の個々のマウスの平均抗体レベルは、研究されたその他の群よりも有意に高かった。
【0068】
ii.免疫感作された動物における抗体のIgG2a亜型、IgG2b亜型、およびIgG1亜型
M2eにより予防接種されたマウスにおける優性のM2特異的抗体アイソタイプは、IgG2bであり、いくらかはIgG2aであることが示された(Jegerlehner et al.,J.Immunol.172(9):5598-5605,2004)。これらの二つのアイソタイプは、M2e依存性防御の主要な機序であると考えられている抗体依存性細胞障害性(ADCC)の最も重要なメディエーターであることがマウスにおいて示されている(Denkers et al.,J.Immunol.135:2183,1985)。この研究において、本発明者らは、プールされた群毎の試料および個々の血清試料を、IgG1アイソタイプ、IgG2aアイソタイプ、およびIgG2bアイソタイプの力価に関して試験した。
【0069】
群4(HRV14-M2e(17AA)による初回刺激/B型肝炎ウイルスコア-M2e VLPによる追加刺激)および群7(B型肝炎ウイルスコア-M2e VLPによる初回刺激/追加刺激)は、その他の群の中で最も高いIgG1抗体およびIgG2a抗体の力価を示した(図9)。IgG1力価は、群4より群7において有意に高く(図9Aおよび9D)、IgG2a力価は群4においてより高く(図9Bおよび9D)、群7の動物のIgG2b力価は群4よりも高かった(図10)。免疫感作されたマウスにおけるIgG2aアイソタイプのM2e特異的抗体は図11に示される。
【0070】
b.罹患率および死亡率
マウスを、PR8株によるチャレンジの後、28日間、罹患率および死亡率に関してモニタリングした。図12に示されるように、群4は、研究された全ての他の群と比較して最も高い生存率(80%)を示し、群7は、陰性対照(PBS)との有意な差を示さなかった。群4は罹患率でも最も優れており:体重変化が全ての他の群より有意に軽度であった(図13A、B)。
【0071】
従って、HRV14-M2e(17AA)ウイルスは、マウスにおいて高度に免疫原性であり、かつ防御性である。それは、伝統的な組換えタンパク質計画および初回刺激-追加刺激計画における二つの組み合わせと比較可能である。後者は、単独の組換えタンパク質とは有意に異なる免疫応答を示し:組換えB型肝炎ウイルスコア-M2e VLPの2回投与は優性IgG1抗体亜型を誘発し、HRV14-M2e(17AA)による初回刺激およびB型肝炎ウイルスコア-M2e VLPによる追加刺激は、ADCCにとって重要であることが示されているIgG2aを優性アイソタイプとして生成した。さらに、後者の群は、全ての他の群と比べて最も高い防御を示した。
【0072】
HRVはマウスにおいて複製しないため、このモデルにおけるHRV-M2e組換え体の接種は、適当な非経口アジュバントを用いて実施され、不活化ワクチンによる免疫感作を模倣することに注意することは重要である。ヒトにおいては二つのオプションが使用され得る:生組換えHRV14-M2eウイルスワクチン、および/または水酸化アルミニウムのような認可された非経口アジュバント(上記も参照のこと)と共投与される不活化(例えば、ホルマリン不活化)ワクチン。
【0073】
B.インビボ実験#2。鼻腔内免疫感作
1.免疫感作のために使用されたウイルス
このインビボ研究においては、単一インサートバリアントHRV14-M2e(17AA)、HRV14-HA0(19AA)、またはそれらの混合物、ならびに二重インサート構築物HRV14-M2e(16AA)-HA0(12AA)の、A型インフルエンザのPR8株による致死的チャレンジに対する防御を提供する可能性を、鼻腔内投与経路を使用して評価した。HRV14-M2e(17AA)配列は上記の通りである。HRV14-HA0(19AA)は、VP2のアミノ酸159とアミノ酸160の間(NimII部位)に挿入されたNimII内のインサート
を含有している。このインサートは、1個の変異型アミノ酸(置換R8Q)を除き、A型インフルエンザのHA0配列と同一であった。後者の構築物は、隣接リンカーを有していない(図2C)。3番目の構築物は、修飾されたNimII部位に
のインサート配列を保持していた。後者のインサート配列は、M2e配列の16アミノ酸(下線)、およびインフルエンザA/H3のHA0配列の12アミノ酸(太字)から構成されている。これらの二つの配列は1アミノ酸リンカー(E)により分離されている。この3番目の構築物の挿入部位(NimII)は修飾されていた:VP2の3アミノ酸160〜162がプロリンに交換されていた(図2C)。ウイルス増殖は、HRV14と比較可能であり、連続9代にわたりインサートを安定的に維持することが示された。
【0074】
2.実験設計
この動物実験の目的は、アジュバントと共に、またはアジュバントなしで、鼻腔内に与えられた組換えライノウイルスキメラの1回投与が、HBc-3XM2e VLPの2回投与と比較可能な防御免疫応答をインフルエンザA/PR/8/34(H1N1)株による致死的チャレンジに対して誘発するか否かを調べることであった。
【0075】
実験設計は表5に示される。簡単に説明すると、9週齢雌Balb/cマウス(各群10匹)を、0日目に、HBc-M2e VLP(群1および2)、HRV14-M2e(17AA)(群3および4)、HRV14(群5)、HRV14-HA0(19AA)(群6)、HRV14-M2e(17AA)と混合されたHRV14-HA0(19AA)(群7および8)、またはPBS対照(群9)、またはHRV14-M2e(16AA)-HA0(12AA)のいずれかにより鼻腔内投与により免疫感作した。群1、3、5、6、7、および13には、5μgの大腸菌易熱性毒素(LT)アジュバントと共に投与し、群2、4、および8には、アジュバントなしで投与した(表5)。投与容量は50μlであった。21日目に、群1および2を、50μl投与容量で、LTアジュバントと共に10μg HBc-3XM2eを鼻腔内投与することにより追加刺激した。
【0076】
もう一つのアジュバント(キチン)をバリデートするため、マウスを、50μl投与容量で、25μgのキチンと混合されたHBc-M2e VLP(群10)、HRV14-M2e(17AA)(群11)、またはHRV14(群12)のいずれかにより鼻腔内経路を介して免疫感作した。21日目に、群10を、50μl投与容量で、同アジュバントと共に10μg HBc-3XM2eを鼻腔内投与することにより追加刺激した。
【0077】
防御を証明するため、35日目に、全てのマウスを、4 LD50のインフルエンザA/PR/8/34(H1N1)ウイルスによるチャレンジに供した。罹患率および死亡率を21日間モニタリングした。保持されたペプチドに対する血清抗体に関して試験するため、マウスから接種前に採血し(基線)、33日目に再び採血した。血清中のM2e特異的抗体およびHA0特異的抗体の力価を、合成のM2eペプチドおよびHA0ペプチドによりコーティングされたマイクロタイタープレートにおいて実施された確立されたELISAにより決定した。M2e特異的な全IgG、Ig2a、およびIg2bの力価を決定した。
【0078】
3.結果
a.免疫原性
i.M2e特異的抗体およびHA0特異的抗体の力価
抗体M2eの力価を、プールされた血清試料を使用して、各群に関して測定した(図14A〜D)。17アミノ酸M2eペプチドを保持している組換えHRV14の1回投与は、B型肝炎ウイルスコア-M2e組換えVLP(10ug/回)の2回投与と比較可能なレベルの全IgGを誘発した(HBc-M2eおよびHRV14-M2e(17AA)に関する終点力価(ET)は、それぞれ、218,700および72,900であった(図14A))。アジュバント(LT)は、HBcに基づくワクチンおよびHRVに基づくワクチンの両方により提供された防御において重要な役割を果たし:LTなしの群における免疫応答はLT群より平均して10倍低かった。キチンアジュバント群は、100〜1000倍超低いM2e応答を示した。HRV14-M2eウイルス負荷量の半減(群7)は、全IgG力価に対する3倍減少効果を有していた(群7;ET=24,300、それに対して群3は72,900)。
【0079】
HRV14-M2eの1回投与は、2番目に高いレベルのIgG2aを生成した(図14C;ET=72,900、それに対してHBc-M2eは218.700)。最も高力価のIgG2b(図14B)およびIgG1(図14D)は、B型肝炎コア-M2e VLPの2回投与に関して証明された。
【0080】
個々の血清試料を使用して、群6、7、および13に関して、抗体HA0力価を測定した(図14E)。終点力価の幾何平均は、群6(LTと共にHRV14-HA0(19AA))に関しては4750、群7(LTと共にHRV14-HA0(19AA)とHRV14-M2e(17AA)の混合物)に関しては1440、群13(LTと共にHRV14-M2e(16AA)-HA0(12AA))に関しては9200であった。群13における最も高いHA0応答は、A/H3の野生型HA0配列の存在により説明され得る。一方、群6および7における組換えキメラは、HA0切断部位の変異バージョン(R8Q)を保持していた。HA0の8位のアルギニン残基は、防御にとって重大であることが以前に示されており、防御モノクローナル抗体の三つの結合部位のうちの一つであることも証明されている(Bianchi et al.,J.Virol.79:7380-7388,2005)。群7および13のプールされた試料のM2eに対する力価は、群13におけるM2e応答が低かったことを強調するため、図14Eの四角で囲まれた区域に示される(ET=2700;群5;アジュバントなしのHRV14-M2eのET=7,200と比較せよ)。これは、HRV14-M2e(16AA)-HA0(12AA)キメラ内のM2eエピトープが、恐らくウイルス表面上への露出が不十分であったため、免疫原性ではなかったことを示していた。従って、このバリアントの高い免疫原性/防御(下記参照)は、M2eエピトープではなくHA0に起因するはずである。
【0081】
b.罹患率および死亡率
マウスを、PR8株による致死的チャレンジの後、21日間、罹患率に関してモニタリングした(図15B)。HRV14-M2e(群3)またはHRV14-M2e(16AA)-HA0(12AA)(群13)のいずれかの1回投与は、HBc-M2e VLPの2回投与(群1)と比較可能な疾患からの防御を提供した。これらの群の全てのマウスが、致死的チャレンジを生き延びた(図15A)。これらの二つの群(上記参照)の間の免疫原性の差を考慮に入れると、これらの二つの群における防御は、異なるエピトープ:群3(HRV14-M2e)に関してはM2e、群13(HRV14-M2e(16AA)-HA0(12AA))に関してはHA0により提供されることが強く示唆され得る。
【0082】
変異型HA0切断部位を保持しているHRV14の1回投与(群6)は、対照HRV14群5において生き延びた2匹のマウスに類似した、高い罹患率を示した。これは、より低い(75%)生存率と相関する。HRV14-M2e(17AA)ウイルスとHRV14-HA0(19AA)ウイルスの混合物の1回投与(群7)は、HRV14-M2e(17AA)群よりわずかに高い罹患率を示し、それは免疫感作用量中のウイルス負荷量の半減と相関していた(図15B)。しかしながら、群7の全てのマウスが、致死インフルエンザチャレンジから100%防御された。HRV14-HA0(19AA)の倍増(群6)は、上述のように、75%の生存率をもたらしたため、後者の防御はHA0エピトープではなくM2eに起因するはずである。
【0083】
アジュバントは防御において重要な役割を果たした:「アジュバントなし」群の全てのマウスが、チャレンジ後9〜10日目に死亡した(図15A)。LTはキチンより良好な防御を提供し:HRV14-M2e(17AA)+キチン(群11)の全てのマウスが死亡し、HRV-3XM2e VLP+キチンの2回投与(群10)は80%の防御をもたらした(図15A)。
【0084】
従って、本発明者らは、HA0またはM2eのユニバーサル防御エピトープのいずれかを保持しているHRV14組換えキメラの1回投与が、鼻腔内経路を介して投与された時、致死A型インフルエンザチャレンジに対する100%の防御を提供することを証明した。この防御は、同一経路を介したHBc-3XM2e VLPの2回投与により提供されるものと比較可能であった。
【0085】
IV.インフルエンザマウスチャレンジモデル
ワクチン候補の防御効力は、適切なウイルス株を使用したマウスインフルエンザチャレンジモデルにおいて試験され得る。本明細書に記載された研究において使用されたプロトタイプインフルエンザチャレンジ株は、マウス順応株A/PR/8/34(H1N1)である。このウイルスは、アメリカンタイプカルチャーコレクション(カタログ番号VR-1469、ロット番号2013488)から入手され、Balb/cマウスにおける連続継代によりインビボ増殖に順応させられた。マウス継代のため、ウイルスを鼻腔内接種し、肺組織ホモジネートを3日後に調製した。ホモジネートを、5代にわたり、さらなるマウスにおいて盲検継代した。付加的な継代を、チャレンジストックとして役立つ肺ホモジネートのアリコートを調製するために使用した。
【0086】
マウスのチャレンジのため、ウイルスを50μLの容量で鼻腔内送達する。咽頭反射を阻害し、ウイルスが肺へと通過できるようにするため、接種の間、マウスに麻酔をかける。致死用量のウイルスに感染したマウスは、急速に体重が減少し、接種の7〜9日後に大部分が死亡する。成体Balb/cマウスにおけるマウス順応A/PR/8/34ウイルスの中央致死用量(LD50)は、7.5プラーク形成単位(pfu)と決定された。典型的な防御実験に関する結果は、図16に示される。10匹のマウスの群を、水酸化アルミニウムアジュバントにより偽免疫感作するか、または水酸化アルミニウムと混合された10μgのインフルエンザM2eペプチド免疫原により免疫感作した。免疫原は、M2eペプチドを発現するB型肝炎コアタンパク質VLPからなっていた。マウスを、3週間隔で2回免疫感作し、4週間後、4 LD50のマウス順応A/PR/8/34ウイルスにより鼻腔内チャレンジした。偽免疫感作された群のマウスは、全て、チャレンジ後10日目までに死亡したが、免疫感作された群においては1匹しか死亡しなかったた。体重減少は、両方の群においてチャレンジ後に起こったが、偽免疫感作された群において、より大きかった。
【0087】
その他のインフルエンザウイルス株を、マウス肺において増殖するよう同様に順応させてもよい。いくつかの場合、株は、インビボ順応なしで使用されてもよいし、または連続肺継代の後ですら十分に病原性にならなくてもよい。この場合には、罹患率および死亡率を測定するのではなく、肺および鼻甲介組織におけるウイルス複製を測定することができる。組織をチャレンジ後3日目に採集し、1mlの組織培養培地において超音波処理により破壊し、プラークアッセイまたはTCID50アッセイによりウイルス濃度に関して滴定する。
【0088】
上記のチャレンジモデルに加え、本発明は、Bartlett et al.,Nature Medicine 14(2):199-204,2008により記載されたもののような動物モデル系の使用も含む。一例において、本発明は、Bartlettにより記載された方法に従って生成され得るマウス-ヒト細胞間接着分子-1(ICAM-1)キメラを発現するBALB/cマウスのようなマウスを利用することができる。当技術分野において公知であるように、ICAM-1は、マウスICAM-1には結合しないヒトライノウイルスの90%の細胞受容体である。Bartlettにより教示されるように、ヒトライノウイルスは、トランスジェニックマウスの環境において、ヒトICAM-1のライノウイルス結合細胞外ドメイン1および2を含むキメラに結合する。これは、本明細書に記載されたもののような生存型ライノウイルスベクターの研究のための有用な系を提供する。従って、本発明は、そのようなマウスモデルにおけるワクチン候補のスクリーニングおよび試験を含む。
【0089】
(表1)エピトープ/抗原/ペプチドが由来し得る病原体の例のリスト
【0090】
(表2)リストされたウイルスに由来する選択抗原の例
【0091】
(表3)リストされたウイルス/抗原に由来するB細胞エピトープおよびT細胞エピトープの例
【0092】
(表4)免疫感作群(腹腔内研究)
表4に関する注:
(1)HBc-M2eは、23AA M2-eペプチドの3コピーを保持しているB型肝炎コア抗原(HBc)に基づく;用量=各マウス10μg。
(2)HBcAgは「裸の」HBc抗原である;HBc-M2eのための担体対照として使用された;用量=各マウス10μg。
(3)HRV14はpWR3.26感染性クローン(ATCC)から作製された「野生型」HRV14である;HRV14-M2e(17AA)のための担体対照として使用された。
(4)HRV14M2e(17AA)は、VP2のアミノ酸159とアミノ酸160の間(NimII部位)にQPASLLTEVETPIRNEWGSR(SEQ ID NO:43)配列を保持しているHRV14ウイルスである。このインサートの最初の3アミノ酸(QPA)は、既に記載されたように、HRV14M2eXXX(17AA)ライブラリーから選択された独特のリンカーを表す。
(5)アジュバント−全ての免疫感作においてミョウバンが使用された。
(6)全ての群が腹腔内投与により免疫感作された。
【0093】
(表5)免疫感作群(鼻腔内研究)
表5に関する注:
(1)HBc-M2eは、23AA M2-eペプチドの3コピーを保持しているB型肝炎コア抗原(HBc)に基づく;用量=各マウス10μg。
(2)HRV14はpWR3.26感染性クローン(ATCC)から作製された「野生型」HRV14である;HRV14-M2e(17AA)のための担体対照として使用された。
(3)HRV14M2e(17AA)は、VP2のアミノ酸159とアミノ酸160の間(NimII部位)にQPASLLTEVETPIRNEWGSR(SEQ ID NO:43)配列を保持しているHRV14ウイルスである。このインサートの最初の3アミノ酸(QPA)は、既に記載されたように、HRV14M2eXXX(17AA)ライブラリーから選択された独特のリンカーを表す。
(4)HRV14-HA0(11AA)は、VP2のアミノ酸159とアミノ酸160の間(NimII部位)に挿入されたNimII内のインサートGIFGAIAGFIE(SEQ ID NO:71)を含有している。この構築物は隣接リンカーを有していない。
(5)アジュバント−全ての免疫感作においてミョウバンが使用された;LT=大腸菌易熱性毒素。
(6)全ての群が鼻腔内投与により免疫感作された。
(7)群3、4、5、および6は、1回当たり108pfuの対応するウイルスにより免疫感作された;群8は、各ウイルス、1回当たり5×107pfuのHRV14-M2e(17AA)とHRV14-HA0の混合物により免疫感作された。
【0094】
(表6)ヒトA型インフルエンザ株のM2タンパク質の細胞外部分
1 この表中の全ての配列が、特記しない限り、SEQ ID NO:36に相当する。
2 SEQ ID NO:72
3 SEQ ID NO:73
4 SEQ ID NO:74
5 SEQ ID NO:75
【0095】
(表7)A型インフルエンザウイルスの核タンパク質のCTLエピトープ
【0096】
(表8)A型インフルエンザウイルスの核タンパク質のTヘルパーエピトープ
【0097】
(表9)A型インフルエンザウイルスのその他のウイルスタンパク質のT細胞エピトープ
【0098】
表7〜9に関する参照
【0099】
その他の態様
本明細書に引用された全ての刊行物および特許は、あたかも個々の刊行物または特許が各々参照により組み入れられると特別に個々に示されたかのごとく、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書における「a」および「the」のような単数形の使用は、前後関係がそうでないことを示さない限り、対応する複数形の指示を排除しない。本発明は、理解の明瞭化の目的のため、例示および例によりある程度詳細に記載されたが、本発明の教示を考慮すれば、ある種の変化および修飾が、添付の特許請求の範囲の本旨または範囲から逸脱することなく、なされ得ることは、当業者には容易に明白であろう。
【0100】
その他の態様は、以下の特許請求の範囲に含まれる。
【背景技術】
【0001】
発明の背景
インフルエンザの大流行は、世界中の人々がほとんどまたは全く免疫を有していない新しいインフルエンザウイルス亜型が出現した時に起こる。20世紀の間、インフルエンザの大流行は、世界中で、数百万人の死亡、社会的混乱、および深刻な経済的損失を引き起こした。インフルエンザの専門家は、再び大流行が起こる可能性は高いが、それがいつであるかは未知であるということで一致している。大流行が襲った時点での世界的な準備体制のレベルが、公衆衛生および疾患の経済的影響を決定するであろう。現時点で、世界保健機構(WHO)は、世界的に、少なくとも数億人の外来患者の受診、2500万人を超える入院、および数百万人の死亡が、極めて短い期間内に起こるであろう推定している。これらの懸念は、多数のアジア諸国の家禽においてトリH5N1ウイルスが家畜流行レベルに達し、次いでヨーロッパおよびアフリカへと蔓延した2003年に注目された。幸い、ヒトへの伝播は現在までのところ限定的であるが、2006年9月14日に報告されたように、246例の感染が立証され、それらは144例の死因となった高い死亡率に関連していた(世界保健機構(WHO)ウェブサイト)。
【0002】
従来のインフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルス血球凝集素タンパク質(HA)に対する中和抗体応答を誘発するように設計されている。HAタンパク質は常に抗原連続変異を起こしているため、予想される流布ウイルス株に適合するよう、毎年、ワクチン組成を変化させなければならない。大流行株の単離および同定、ならびに適切なワクチンの構築および製造には長い時間が必要とされることから、大流行に直面した場合には、そのようなワクチンアプローチは受け入れられない。インフルエンザ大流行の抑制または防止のためのより効果的なアプローチは、最近同定された高度に保存されたインフルエンザウイルス免疫決定基に対する防御免疫を誘発することができる「ユニバーサル」ワクチンの開発を企図する。そのようなワクチンは、全てのA型インフルエンザウイルス株に対する広範囲の防御を提供するはずである。さらに、そのようなワクチンは、年間を通して製造され、備蓄され、かつ/または年間を通して投与され得る。血球凝集素(HA)のタンパク質分解切断部位周辺の19〜25アミノ酸配列は、保存されたA型インフルエンザウイルスエピトープである(Bianchi et al.,J.Virol.79:7380-7388,2005;Mundy et al.,Science 303:1870-1873,2004)。成熟型インフルエンザウイルスHAは、2個のサブユニットHA1およびHA2から構成され、それらは、タンパク質分解切断により前駆体HA0に由来する(Chen et al.,Cell 95:409-417,1998;Skehel et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.72:93-97,1975)。結晶学的データ(Gamblin et al.,Science 303:1838-1842,2004;Stevens et al.,Science 303:1866-1870,2004)に基づき、切断部位は、引き伸ばされた溶媒に露出したループを形成していることが決定された。切断により、新たに形成されたHA2のN末端が融合ペプチドのホストとなり、それが、ウイルス膜と細胞膜との融合を媒介する。HA0切断は、ウイルスの感染性(Klenk et al.,Virology 68:426-439,1975;Klenk et al.,Virology 68:426-439,1975)および病原性(Klenk et al.,Trends Microbiol.2:39-43,1994;Steinhauer,Virology 258:1-20,1999)にとって不可欠である。機能的制約のため、そのエピトープは著しくよく保存されており、従って、広範囲の交差防御応答を誘発することができる(Bianchi et al.,J.Virol.79:7380-7388,2005)。
【0003】
髄膜炎菌(Neisseria meningitides)の外膜タンパク質複合体にコンジュゲートされたB型インフルエンザウイルスのHA0ペプチドは、Balb/cマウスにおいて防御免疫応答を誘発する(Bianchi et al.,J.Virol.79:7380-7388,2005)。ヒトおよびトリのA型インフルエンザおよびB型インフルエンザのHA0配列のアラインメントは、以下に示される。この領域の保存性は、700以上のインドネシアおよびベトナムのヒトおよびトリのA型インフルエンザウイルス株の研究において確認された(Smith et al.,Virology 350:258-268,2006)。いくつかの変異が観察されたが、それらは、大部分が(下記アラインメント中、矢印により示される)切断部位より上流に存在した(Smith et al.,Virology 350:258-268,2006)。B型インフルエンザのHA0ペプチドの系統的なアラニンスキャニング変異誘発は、3個の残基、R6、F9、およびF15(アラインメント中、四角で囲まれている)が、3種のHA0特異的防御モノクローナル抗体の結合にとって最も重大な残基であることを解明した(Bianchi et al.,J.Virol.79:7380-7388,2005)。これらの残基は、全てのトリおよびヒトのA型インフルエンザ株およびB型インフルエンザ株(下記;SEQ ID NO:1〜8)の間で保存されている。
【0004】
インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質M2は、ワクチン開発のための効果的な標的として役立つことが証明されている(DeFilette et al.,Virology 337: 149-161,2005)。M2は、A型インフルエンザウイルスの97アミノ酸の膜貫通タンパク質である(Lamb et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 78:4170-4174,1981;Lamb et al.,Cell 40:627-633,1985)。成熟型タンパク質は、pHにより誘導可能なイオンチャンネル活性を有する(Pinto et al.,Cell 69:517-528,1992;Sugrue et al.,Virology 180:617-624,1991)ホモ四量体を形成する(Holsinger et al.,Virology 183:32-43,1991;Sugrue et al.,Virology 180:617-624,1991)。M2四量体は、感染細胞の形質膜に高密度に発現され、成熟ウイルス粒子の膜にも低い頻度で組み入れられる(Takeda et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100:14610-14617,2003;Zebedee et al.,J.Virol.62:2762-2772,1998)。M2のN末端24アミノ酸外部ドメイン(M2e)は、A型インフルエンザウイルスの間で高度に保存されている(Fiers et al.,Virus Res.103:173-176,2004)。M2eの高い保存度は、最も保存されたウイルスタンパク質であるM1との遺伝的関係に起因する拘束(Ito et al.,J.Virol.65:5491-5498,1991)および自然感染の際のM2e特異的抗体の欠如(Black et al.,J.Gen.Virol.74 (Pt 1):143-146,1993)によって説明され得る。
【0005】
NCBIインフルエンザデータベースからの配列を使用して得られた以下のアライメントに示されるように、トリH5N1インフルエンザウイルスM2eは、典型的なヒトのH1型、H2型、およびH3型のウイルスに見い出されるコンセンサス配列に向かって進化しているようであり、このことは、「ヒト」インフルエンザM2eエピトープを使用して、新たなトリウイルスからの防御を含む、広範囲の防御が可能であるかもしれないことを示唆している(下記、SEQ ID NO:9〜12)。
【0006】
H5N1 M2eのH1N1 M2e配列に向けての進化の現象は、インドネシアおよびベトナムにおいてヒトおよびトリから単離された800のH5H1株の配列の分析に基づき、最近報告された(Smith et al.,Virology 350:258-268,2006)。進化したトリM2eペプチドEVETPTRN(SEQ ID NO:13)は、抗ヒトM2eモノクローナル抗体(Mab)(Liu et al.,Microbes.Infect.7:171-177,2005)によって効率的に認識されたが、その「先祖」であるEVETLTRN(SEQ ID NO:14)は認識されなかった。いくつかの「トリインフルエンザ様」変化が、ヒトM2e特異的モノクローナル抗体によって提供される防御の有効性を減少させることが以前に示されているため、このことは重要である。興味深いことに、M2eにおけるいくつかの「トリインフルエンザ様」アミノ酸変化は、マウスにおけるヒトH1N1ウイルスの病原性を減少させた(Zharikova et al.,J.Virol.79:6644-6654,2005)。
【0007】
WHOは、「カナダでH7N3が、アジアでH5N1が、家禽において流行した2004年のケースと同様に、異なる国で、異なる脅威レベルで、大流行の可能性を有する事象が同時に発生する」可能性を強調している。以下のアラインメントに示されるように、M2e H7N7は、H5N1の「ヒト化」バリアントとアミノ酸1個が異なるに過ぎない。H7N7亜型は、種間で伝播可能である能力を示しており(Koopmans et al.,Lancet 363:587-593,2004)、ヒトにとって致死的であり得る(Fouchier et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 101:1356-1361,2004)。他の株(H9N2)も、家禽に感染し、ヒトへと蔓延し得ることが示された(Cameron et al.,Virology 278:36-41,2000;Li et al.,J.Virol.77:6988-6994,2003;Wong et al.,Chest 129:156-168,2006)(下記、SEQ ID NO:9および15〜18)。
【0008】
M2eに基づく組換えタンパク質ワクチンは、同種および異種両方のA型インフルエンザウイルスのチャレンジに対して防御免疫応答を誘発することが示されている(Fiers et al.,Virus Res.103:173-176,2004;Slepushkin et al.,Vaccine 13:1399-1402,1995)。キーホールリンペットヘモシアニンおよび髄膜炎菌外膜タンパク質にコンジュゲートされたM2eペプチドを使用した、より最近の研究は、マウスのみならず、フェレットおよびアカゲザルにおいても良好な免疫応答を例証した(Fan et al.,Vaccine 22:2993-3003,2004)。リポソームM2eワクチンによるH1型、H5型、H6型、およびH9型のA型インフルエンザウイルスに対する防御が、マウスにおいて証明された(Fan et al.,Vaccine 22:2993-3003,2004)。
【0009】
インフルエンザ免疫原のための効果的な送達系は、大流行ワクチンのようなインフルエンザウイルス感染に対するワクチンの開発にとって重要である。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、インフルエンザウイルスHA0免疫原を含むライノウイルスベクター(生存型(live)または不活化)を提供する。ヒトライノウイルス14(HRV14)のような、そのようなベクターは、ヒトにおいて非病原性であり得る。HA0配列に加え、ライノウイルスベクターは、任意で、一つまたは複数のM2eペプチドを含んでいてもよい。これらのペプチド(HA0および/またはM2e)は、例えば、中和免疫原(Neutralizing Immunogen)I(NimI)、中和免疫原II(NimII)(アミノ酸158とアミノ酸160の間)、中和免疫原III(NimIII)、および中和免疫原IV(NimIV)からなる群より選択される中和免疫原の部位、またはこれらの部位のうちの複数に挿入され得る。さらに、任意で、ペプチドの一方または両方の末端にリンカー配列が隣接していてもよい。
【0011】
本発明は、本明細書に記載されたライノウイルスベクターと、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む薬学的組成物または免疫学的組成物も提供する。任意で、そのような組成物は、一つもしくは複数のアジュバントおよび/または一つもしくは複数の付加的な活性成分(例えば、HA0配列および/もしくはM2e配列と融合したB型肝炎コアタンパク質、ならびに/またはHA0ペプチドを含むライノウイルスベクターおよびM2eペプチドを含むライノウイルスベクター)を含んでいてもよい。
【0012】
本明細書に記載されたような薬学的組成物が対象に投与される、対象(例えば、ヒト対象)におけるインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘導する方法も、本発明に含まれる。対象は、インフルエンザウイルス感染を有していないが、該感染を発症するリスクを有していてもよいし、または対象は、インフルエンザウイルス感染を有していてもよい。組成物は、例えば、鼻腔内経路によって投与され得る。本発明には、本明細書に記載されたような免疫応答を誘導する方法における本明細書に記載されたベクターおよび組成物の使用、ならびに本明細書に記載されたもののような使用のための、薬の調製におけるベクターおよび組成物の使用も含まれる。
【0013】
本発明は、本明細書に記載されたようなライノウイルスベクターを、薬学的に許容される担体または希釈剤(および、任意で、本明細書に記載されたような付加的な成分)と混合する工程を含む、本明細書に記載されたような薬学的組成物を作成する方法も提供する。
【0014】
さらに、本発明は、本明細書に記載されたライノウイルスベクターのゲノムをコードするか、または該ゲノムに相当する核酸分子(DNAまたはRNAの形態)を提供する。
【0015】
本発明には、本明細書に記載されたような一つまたは複数の挿入されたインフルエンザウイルスHA0免疫原を含むNimIIペプチドがさらに含まれる。
【0016】
本発明は、一つまたは複数のインフルエンザウイルスHA0免疫原(および、任意で、M2e免疫原のようなその他の免疫原)を含むライノウイルスベクター(例えば、HRV14ベクター)を生成する方法を提供する。これらの方法は、以下の工程を含む:(i)挿入されたインフルエンザウイルスHA0免疫原配列を含有している感染性cDNAクローンに基づく組換えライノウイルスベクターのライブラリーを生成する工程;および(ii)(a)継代の際に挿入された配列を維持し、かつ(b)挿入された配列に対する抗体によって中和される組換えウイルスを、ライブラリーから選択する工程。これらの方法において、挿入されたインフルエンザ免疫原配列は、NimI、NimII、NimIII、およびNimIVからなる群より選択される位置に挿入され得る。さらに、任意で、挿入された配列の一方または両方の末端にランダムリンカー配列が隣接していてもよい。
【0017】
HeLa細胞またはMRC-5細胞のような細胞においてベクターを継代する工程を含む、本明細書に記載されたようなライノウイルスベクターを培養する方法も、本発明に含まれる。
【0018】
さらに、本発明には、本明細書に記載されるような一つまたは複数の免疫原を含む、本明細書に記載されるようなライノウイルスベクターが含まれる。
【0019】
本発明はいくつかの利点を提供する。例えば、本発明の生存型ベクターの場合、HA0のような免疫原を送達するためのそのような生存型ベクター系の使用は、以下のものを含む利点を提供する:(i)わずか1回のワクチン投与により極めて強力かつ持続性の抗体応答を誘発する能力、および(ii)サブユニットワクチンまたは不活化ワクチンと比較して、より大きい製造規模拡大可能性(即ち、より低いコストによるより多くの用量)。従って、大流行の情況において、生ワクチンによれば、より多くの人々を比較的短い期間に免疫感作することができる。さらに、本発明のHRVベクターは鼻腔内送達され、全身免疫応答および粘膜免疫応答の両方をもたらすことができる。HRV14は、非病原性であり、ヒト集団において希にしか観察されず(Andries et al.,J.Virol.64:1117-1123,1990;Lee et al.,Virus Genes 9:177-181,1995)、従って、ワクチンレシピエントにおける既存の抗ベクター免疫の確率は低いため、HRV14の使用は付加的な利点を提供する。さらに、ヒトに感染するために必要とされるHRVの量は極めて小さく(1組織培養感染用量(TCID50)(Savolainen-Kopra,"Molecular Epidemiology of Human Rhinoviruses," Publications of the National Public Health Institute 2/2006,Helsinki,Finland,2006)、このことは、HRVに基づくワクチンの製造の費用効果にとって好都合な特色である。
【0020】
本発明のその他の特色および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】HRV14のウイルス粒子(上パネル)およびゲノム(下パネル)の概略図である。ヒトライノウイルス14(HRV14)カプシドは、偽T=3(P=3)正20面体対称性を示し、ウイルスタンパク質VP1、VP2、VP3、およびVP4の60コピーからなり、VP4がRNA-カプシド界面にある(Rossmann et al.,Nature 317:145-153,1985)。VP1〜3タンパク質は、細胞受容体である細胞内接着分子1(ICAM-1)の受容体結合部位を含有するキャニオンを形成する(Colonno et al.,J.Virol.63:36-42,1989)。三つの主要な中和免疫原性(Nim)部位、NimI(AB)、NimII、およびNimIIIが、中和抗体の結合部位として、キャニオンの縁の表面に同定された(Sherry et al.,J.Virol.57:246-257,1986)。HRV14粒子の再構築は、NimI特異的mAb17(タンパク質データバンクデータベース#1RVF)を含むHRV14結晶構造に基づき、キメラ(Chimera)プログラムにおいて作出された。
【図2A】以下のように示されている。(A)本研究において作出されたHRV14-M2e構築物(SEQ ID NO:19〜21)。HRV14 cDNAクローンの誘導体であるプラスミドpWR1が、M2e挿入変異体の構築のために使用された。
【図2B】(B)HRV14-NimII-XXX17AAウイルスライブラリー(Arnold et al.,J.Mol.Biol.177:417-430,1984)およびHRV14-NimII-XXX23AAウイルスライブラリー(Arnold et al.,US 2006/0088549 A1)、ならびにpWR1に由来する野生型HRV14によって産生されたプラーク。構築物#1は、本文に記述されるように、そして付加的なデータ(図3および4)によって支持されるように、プラークを生じず、このことから、ランダムリンカー戦略が、HRVにおいて新規エピトープを操作するための効果的な手段であることが示された。
【図2C】パネル(C)は、本発明に係るHRV14-M2e(17AA)構築物、HRV14-HA0(19AA)構築物、およびHRV14-M2e16HA012構築物(SEQ ID NO:22〜24)を示す。
【図3】異なるHRV14-M2e構築物におけるM2eインサートの安定性を示す。インサート含有断片を、プライマー対P1-up100Fw、VP1-dwn200Rv(緑色)、または14FAflII-1730Rv(赤色)を用いてRT-PCR増幅したところ、それぞれ、「PCR B」DNA断片(緑色)または「PCR A」DNA断片(赤色)が得られた。これらの断片をXhoIによって消化した。2代目、3代目、および4代目のHRV14-M2eキメラ、ならびに4代目のHRV14-NimII-XXX17AAウイルスライブラリーおよびHRV14-NimII-XXX17AAウイルスライブラリーに関するアガロースゲル電気泳動の結果が示される。二つの切断された断片(矢印で示されている)は、インサート含有ウイルスを表す。
【図4】NimII部位内の23アミノ酸M2eインサートによるHRV14の受容体結合ドメインの可能性のある立体干渉を示す。リンカーを含まないインサートは、図中に示されるように、NimIIから外側に伸び、キャニオンの反対側(即ち、NimI部位)にほぼ到達する。その障壁は、キャニオン内への受容体入り口を効果的に遮断することができる。N末端リンカーは、インサートの位置を変化させ(方向は矢印によって示される)、キャニオンへの進入路を開く。HRV14-NimII-M2e(23アミノ酸)のVP1〜VP4サブユニットのこの分子モデルは、Accelrys Discovery Studio(Accelrys Software,Inc)において作出された。これは、利用可能な構造データおよびモデリングソフトウェアにより、HRV14において新規エピトープを操作することが可能であることを例示している。
【図5】抗M2e Mab 14C2(Abcam,Inc;カタログ#ab5416)による、HRV14、HRV14-NimII-XXX23AAライブラリー、およびHRV14-NimII-XXX17AAライブラリーのプラーク減少中和試験(PRNT)を示す。結果は、両ライブラリーが効率的に中和されるが、ベクターウイルス(HRV14)は中和されないことを証明している。両ライブラリーの純度(WT混入の欠如)も、これらの結果から明白である。
【図6】チャレンジ前の免疫感作されたマウスにおけるM2e特異的IgG抗体応答(プールされた試料)を示す。終点力価(ET)が、該当する群の名称の後に示される。対応する免疫感作の時間が括弧内に示される(d0は0日目を表し、d21は21日目を表す)。
【図7】チャレンジ前の免疫感作されたマウスにおけるHRV14特異的IgG抗体応答(プールされた試料)を示す。(A)HRV14-M2e(17AA)ウイルスの1回投与、2回投与、または3回投与によって免疫感作された群;(B)親HRV14ウイルスの1回投与または2回投与によって免疫感作された群。
【図8】免疫感作されたマウスの個々のM2e特異的IgG抗体応答を示す。
【図9】表4に記載されるように免疫感作されたマウスにおけるM2e特異的抗体アイソタイプIgG1およびIgG2aを示す:(A)IgG1 ELISA(群毎にプールされた試料);(B)IgG2a ELISA(群毎にプールされた試料);(C)図AおよびBに関する名称;(D)群4(赤;第一および第三のデータセット)および群7(緑;第二および第四のデータセット)のマウス(表4参照)の個々の血清試料(2,700倍希釈)中のM2e特異的なIgG1(丸)およびIgG2a(菱形)のレベル。
【図10】表4に記載されるように免疫感作されたマウスにおけるIgG2bアイソタイプのM2e特異的抗体を示す。(A)M2eペプチドによるELISA(群毎にプールされた試料);(B)M2e特異的ペプチドに対するELISAにおいて試験された群4(赤)および群7(緑)のマウス(表1参照)の個々の血清試料(2,700倍希釈)。
【図11】表4に記載されるように免疫感作されたマウスにおけるIgG1アイソタイプ、IgG2aアイソタイプ、およびIgG2bアイソタイプのM2e特異的抗体を示す(上パネル)。
【図12】PR8 A型インフルエンザ株によるチャレンジ後28日目の全ての群の生存率を示す。
【図13】PR8 A型インフルエンザ株によるチャレンジ後28日目の全ての群の罹患率(図13A);群4(図13B)および群7(図13C)の個々の体重を示す。
【図14A】チャレンジ前の免疫感作されたマウスにおけるM2e特異的IgG抗体応答を示す(群に関しては、表5を参照のこと)。
【図14B】チャレンジ前の免疫感作されたマウスにおけるM2e特異的IgG抗体応答を示す(群に関しては、表5を参照のこと)。
【図14C】チャレンジ前の免疫感作されたマウスにおけるM2e特異的IgG抗体応答を示す(群に関しては、表5を参照のこと)。
【図14D】チャレンジ前の免疫感作されたマウスにおけるM2e特異的IgG抗体応答を示す(群に関しては、表5を参照のこと)。
【図14E】HA0特異的IgG抗体応答(E)(プールされた試料)を示す(群に関しては、表5を参照のこと)。
【図15】PR8 A型インフルエンザ株による致死的チャレンジ後21日間の全ての群の罹患率(B;体重の割合)および死亡率(A;生存率(%))を示す。
【図16】マウス抗HRV14-NimIVHRV6血清によるHRV14およびHRV6のプラーク減少中和試験(PRNT)の結果を示す。これらのデータは、HRV14カプシドのバックグラウンドにおけるNimIVHRV6の免疫優性の証拠として役立ち、外来エピトープの挿入のための新規部位を示唆している。
【図17】HRV14のビリオンタンパク質内の挿入部位の概略図である。M2eまたはHA0は、NimI、NimII、NimIII、およびNimIVの示された位置に導入される。XXXM2eは本明細書に記載されたM2eライブラリー(SEQ ID NO:25〜28)を意味する。
【図18】ヒトライノウイルス14(HRV14)に関する配列情報を提供する。コードされたアミノ酸配列(SEQ ID NO:30)は、示された核酸配列(SEQ ID NO:29)のヌクレオチド629〜7168の翻訳により入手される。
【図19】プラスミドマップ、ならびにHRV14のNimII部位へ挿入された19アミノ酸HA配列(SEQ ID NO:77)およびCMVHRV14MGM19aaHAGQの完全配列(SEQ ID NO:78)に関する配列情報を提供する。
【図20】プラスミドマップ、ならびにHRV14-M2e17aaのP1領域アミノ酸配列(SEQ ID NO:79)およびNimII HRV14内のM2e17aaのプラスミド配列(SEQ ID NO:80)に関する配列情報を提供する。
【図21】プラスミドマップ、ならびにM2e 23アミノ酸(変異型)配列(SEQ ID NO:81)、HRV14-M2e23aaのP1領域アミノ酸配列(SEQ ID NO:82)、およびNimII HRV14内のM2e23aaのプラスミド配列(SEQ ID NO:83)に関する配列情報を提供する。
【図22】プラスミドマップ、ならびにHRV14-M2e16aa-HA012aaのP1領域アミノ酸配列(SEQ ID NO:84)およびNimII HRV14内のHA012-M2e16のプラスミド配列(SEQ ID NO:85)に関する配列情報を提供する。
【図23】構築物マップ、ならびにHRV14-M2e(17AA)キメラのVP4-VP1(構造領域)(SEQ ID NO:86)およびHRV14-M2e(23AA)キメラのVP4-VP1(構造領域)(SEQ ID NO:87)に関する配列情報を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
本発明は、インフルエンザウイルス決定基の効率的な送達および提示のための、ヒトライノウイルス(HRV)のベクターとしての使用に基づく、ユニバーサル(大流行)インフルエンザワクチンを提供する。以下にさらに記載されるように、インフルエンザウイルス血球凝集素(HA)のタンパク質分解切断部位(HA0)およびインフルエンザウイルスマトリックスタンパク質2の細胞外ドメイン(M2e)が、本発明に係るユニバーサルインフルエンザ(A型インフルエンザ)ワクチンに含まれ得る二つのエピトープである。従って、本発明のワクチンは、一つまたは複数のHA0に基づく免疫原を含有しているベクターを含み、任意で、M2eに基づく免疫原と組み合わせて使用されてもよく、その際、M2eに基づく免疫原は、HA0に基づく免疫原と同一の組成物に含まれていてもよいし、HA0に基づく免疫原に(直接もしくは間接的に、例えば、リンカーにより)連結されていてもよいし、またはHA0に基づく免疫原とは別の組成物に含まれていてもよい。本発明のワクチン組成物は、インフルエンザ大流行の状況を含む、インフルエンザウイルス感染を防止するかまたは処置する方法において使用され得る。以下にさらに記載されるように、本発明には、その他の免疫原を含む本明細書に記載されるようなベクターも含まれる。本発明のベクター、ワクチン、組成物、および方法を、以下にさらに説明する。
【0023】
HRVベクター
本発明のベクターは、非病原性血清型ヒトライノウイルス14(HRV14)のようなヒトライノウイルスに基づく。HRV14ウイルス粒子およびゲノム構造は、ウイルス構造タンパク質(VP1、VP2、VP3、およびVP4)、非構造タンパク質(P2-A、P2-B、P-2C、P3-A、3B(VPg)、3C、および3D)、ならびにHRV14内の主要な中和免疫原性(neutralizing immunogenic)部位(Nim:NimI、NimII、NimIII、およびNimIV)の位置を示す図1に概略的に例示される。
【0024】
本発明において使用され得るHRV14の分子クローンの一例は、pWR3.26(アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection):ATCC(登録商標)番号:VRMC-7(商標))である。このクローンは、以下にさらに詳細に記載され、Lee et al.,J.Virology 67(4):2110-2122,1993によっても記載されている(SEQ ID NO:29および30も参照のこと)。HRV14の付加的な起源も、本発明において使用され得る(例えば、ATCCアクセッション番号VR284;GenBankアクセッション番号L05355(1993年6月11日)およびK02121(2001年1月2日)ならびにそれらの他の掲載版;Stanway et al.,Nucleic Acids Res.12(20):7859-7875,1984;およびCallahan et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.82(3):732-736,1985も参照のこと)。HRV14に加えて、その他のヒトライノウイルス血清型も本発明において使用され得る。当技術分野において公知であるように、100を超えるそのような血清型が存在し、そのうちの任意のものが、例えば、HRV14の場合と同一の様式で、感染性クローンの誘導により使用され得る。従って、本明細書においてはHRV14に関して記載されるが、本発明は、その他のライノウイルス血清型にも、それらのバリアント(例えば、ウイルスの特性に実質的に影響を与えないかまたは弱毒化を提供する、天然に存在するまたは人工的な配列の差違を含むバリアント;ならびに1個または複数個(例えば、1〜100個、2〜75個、5〜50個、または10〜35個)の保存的アミノ酸置換を含むバリアント)にも当てはまる。
【0025】
以下にさらに記載されるように、抗原配列は、異なる部位で、本発明に係るHRVベクターへ挿入され得る。一例において、配列は、HRV14のような血清型のNimII部位へ挿入される。NimII(中和免疫原II)は、VP1のアミノ酸210、およびVP2のアミノ酸156、158、159、161、および162を含むHRV14内の免疫優性領域である(Savolainen-Kopra,"Molecular Epidemiology of Human Rhinoviruses," Publications of the National Public Health Institute 2/2006,Helsinki,Finland,2006)。下記の具体例において、配列は、VP2のアミノ酸158とアミノ酸160の間、またはアミノ酸158とアミノ酸162の間に挿入される。挿入は、NimII部位内のその他の部位でも同様になされ得る。例えば、挿入は、VP2の156位、158位、159位、161位、もしくは162位のいずれか、またはVP1の210位、またはそれらの組み合わせにおいてなされ得る。他に示されない限り、本明細書における挿入の位置に関する言及は、一般に、示されたアミノ酸のカルボキシ末端への挿入を示し、本明細書に記載されるような欠失と併せてなされてもよい。
【0026】
単独で、または他の部位(例えば、NimII部位)における挿入と組み合わせて、挿入がなされ得る付加的な部位には、NimI(AおよびB)、NimIII、ならびにNimIVが含まれる。従って、挿入は、例えば、VP1の91位および/もしくは95位(NimIA)、VP1の83位、85位、138位、および/もしくは139位(NimIB)、ならびに/またはVP1の287位(NimIII)でなされ得る(例えば、図17参照)。NimIVは、VP1のカルボキシル末端領域、HRV14 VP1のアミノ酸274〜289を表す以下の配列:
を含む領域にある。挿入は、このNimIV部位またはその他のHRV血清型の対応する領域においてなされてもよい。この領域内の任意のアミノ酸の間の挿入が本発明に含まれる。従って、本発明には、例えば、アミノ酸274とアミノ酸275;アミノ酸275とアミノ酸276;アミノ酸276とアミノ酸277;アミノ酸277とアミノ酸278;アミノ酸278とアミノ酸279;アミノ酸279とアミノ酸280;アミノ酸280とアミノ酸281;アミノ酸281とアミノ酸282;アミノ酸282とアミノ酸283;アミノ酸283とアミノ酸284;アミノ酸284とアミノ酸285;アミノ酸285とアミノ酸286;アミノ酸286とアミノ酸287;アミノ酸287とアミノ酸288;およびアミノ酸288とアミノ酸289の間の挿入が含まれる。これらの挿入に加えて、本発明には、この領域内の1個または複数個(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個)のアミノ酸が欠失する挿入が含まれる。従って、例えば、本発明には、アミノ酸274とアミノ酸276;アミノ酸275とアミノ酸277;アミノ酸276とアミノ酸278;アミノ酸277とアミノ酸279;アミノ酸278とアミノ酸280;アミノ酸279とアミノ酸281;アミノ酸280とアミノ酸282;アミノ酸281とアミノ酸283;アミノ酸282とアミノ酸284;アミノ酸283とアミノ酸285;アミノ酸284とアミノ酸286;アミノ酸285とアミノ酸287;アミノ酸286とアミノ酸288;アミノ酸287とアミノ酸289;アミノ酸288とアミノ酸290;およびアミノ酸289とアミノ酸291の間の挿入が含まれる。挿入は、さらに、示されたアミノ酸の片側または両側の、例えば、1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸の欠失の代わりになされてもよい。
【0027】
本発明のベクターは、HRV14のNimIIへの挿入を含むベクターに関して以下に例示される、分子生物学の標準的な方法を使用して、作成される。さらに、以下にさらに記述されるように、本発明のベクターは、生存型ウイルスの形態で投与されてもよいし、または当業者に公知の方法を使用して、例えば、ホルマリン不活化もしくは紫外線処理により、投与前に不活化されてもよい。
【0028】
任意で、ベクターは、HRVベクター配列と、挿入されたインフルエンザ配列の間に、アミノ末端および/またはカルボキシル末端に、リンカー配列を含んでいてもよい。これらのリンカー配列は、挿入された配列が、免疫応答を誘導し得る様式で、挿入されたエピトープを提示し得るようにする柔軟性を、挿入された配列に提供するために使用され得る。そのようなリンカー配列の例は以下に提供される。特定のインサートと共に使用されるリンカー配列の同定は、例えば、本明細書に記載されるような本発明のライブラリースクリーニング法によって実施され得る。簡単に説明すると、この方法においては、効果的なリンカー配列の同定のために望まれる領域に様々な長さのランダム配列を有するライブラリーを構築する。ライブラリーから生成されたウイルスを、効果的なリンカーを同定するため、生存性および挿入された配列の免疫原性に関して試験する。
【0029】
本発明のウイルスは、例えば、細胞培養物における継代のような、標準的な方法を使用して増殖させられ得る。例えば、ウイルスは、MRC-5細胞またはHeLa細胞のような細胞において増殖させられ、そこから精製され得る。
【0030】
異種ペプチド
本発明のウイルスベクターは、予防的または治療的な関心対象の任意のペプチド、タンパク質、またはその他のアミノ酸に基づく免疫原を送達するために使用され得る。例えば、本発明のベクターは、HRVタンパク質へ挿入された任意のタンパク質に基づく抗原に対する免疫応答の誘導(予防的または治療的)において使用され得る。本明細書において使用されるような予防および防止には、本発明のベクターへ挿入されたペプチドまたはタンパク質が由来する病原体に感染していない対象への本発明の免疫原性組成物の投与が含まれる。そのような対象への本発明の組成物の投与は、そのような対象が、投与の後に、病原体に感染した場合に、症候性感染の発症を防止するかまたは実質的に防止することができる。従って、投与は、対象の免疫系が、例えば、症候性の段階への感染の進行を防止するかまたは実質的に防止することを可能にし得る。治療的投与には、挿入されたペプチドまたはタンパク質が由来する病原体に既に感染している対象への投与が含まれる。そのような対象は、感染の症候を示していてもよい。これらの用語は、腫瘍関連抗原に関しても同様に適用可能である。例えば、予防的または防止的な投与は、腫瘍を有していない(または腫瘍を有すると診断されていない)患者において実施され得、そのような投与は、対象において発達する腫瘍に対抗するよう免疫応答を誘導することができる。腫瘍関連抗原の投与を含む治療的処置は、腫瘍を有すると既に診断された患者において実施され得る。
【0031】
本発明のベクターは、各々、挿入された配列の単一のエピトープを含んでいてもよい。または、複数のエピトープが、単一の部位において(例えば、異なるエピトープが、下記実施例に記載されるようなポリグリシンアミノ酸ストレッチまたは1個のアミノ酸のようなフレキシブルリンカーにより任意で分離されていてもよい、ポリトープ(polytope)として)、異なる部位(例えば、異なるNim部位)において、またはそれらの任意の組み合わせにおいて、ベクターへ挿入されていてもよい。異なるエピトープは、単一の種、株、もしくは血清型の病原体(もしくはその他の起源)に由来してもよいし、または異なる種、株、血清型、および/もしくは属に由来してもよい。ベクターは、複数のペプチドを含んでいてもよく、例えば、本明細書にリストされるようなペプチドの複数のコピーまたは本明細書にリストされたもののようなペプチドの組み合わせを含んでいてもよい。例として、ベクターは、HA0配列およびM2e配列、またはヒトおよびトリのHA0ペプチドおよび/またはM2eペプチド(および/またはそれらのコンセンサス配列;および/または本明細書に記載されたもののようなその他のペプチド)を含むことができる。
【0032】
本発明において使用され得る免疫原は、例えば、ウイルス、細菌、および寄生虫のような感染因子に由来し得る。そのような感染因子の具体例は、ヒトに感染するもの(例えば、A株、B株、およびC株)のみならず、トリインフルエンザウイルスも含む、インフルエンザウイルスである。インフルエンザウイルス由来の免疫原の例には、血球凝集素(HA;例えば、H1〜H16のいずれか、またはそれらのサブユニット)(HA0またはHAサブユニットHA1およびHA2)、M2(例えば、M2e)、ノイラミニダーゼ(NA;例えば、N1〜N9のいずれか)、M1、核タンパク質(NP)、ならびにBタンパク質に由来するものが含まれる。
【0033】
本発明のベクターに含まれ得る配列の例は、血球凝集素前駆体タンパク質切断部位(HA0)を含むインフルエンザウイルスペプチド(A/H1株に関しては
、A/H3株に関しては
、B型インフルエンザ株に関しては
)である。そのようなペプチドの二つの具体例には、
が含まれる。
【0034】
その他の例において、HA0に基づくワクチンは、付加的な免疫原配列(例えば、インフルエンザウイルスM2e配列)を含むか、または付加的な免疫原(例えば、インフルエンザウイルスM2e)と共に投与される。そのような配列の例は、本明細書全体および表6〜9に提供される。そのような配列の具体例には、以下のものが含まれる:
。本発明において使用され得る付加的なM2e配列には、B型インフルエンザのBM2タンパク質の細胞外ドメインに由来する配列(コンセンサスMLEPFQ;SEQ ID NO:38)、およびH5N1トリインフルエンザに由来するM2eペプチド
が含まれる。以下は、本発明において使用され得る、組み合わせられたHA0配列およびM2e配列の一例である:
。
【0035】
複数の免疫原を含むワクチンの場合、複数の免疫原は、本発明のHRVに基づくベクターのような、同一であるかまたは異なる送達媒体に含まれ得る。本発明のベクターは、本明細書に記載されるようなB型肝炎コアに基づくベクター(例えば、米国特許第7,361,352号も参照のこと)のようなその他の型のベクター、および/またはサブユニットワクチンと組み合わせて投与されてもよい。
【0036】
インフルエンザにおいて保存されているペプチドのその他の例は、HA0に基づくワクチンと組み合わせて本発明において使用され得、B型インフルエンザにおいて保存されているNBeペプチド(コンセンサス配列
)を含む。本発明において使用され得るインフルエンザペプチド、およびそのようなペプチドが(例えば、断片化および/またはアナログの作出により)由来し得るタンパク質のさらなる例は、US 2002/0165176、US 2003/0175290、US 2004/0055024、US 2004/0116664、US 2004/0219170、US 2004/0223976、US 2005/0042229、US 2005/0003349、US 2005/0009008、US 2005/0186621、米国特許第4,752,473号、米国特許第5,374,717号、米国特許第6,169,175号、米国特許第6,720,409号、米国特許第6,750,325号、米国特許第6,872,395号、WO 93/15763、WO 94/06468、WO 94/17826、WO 96/10631、WO 99/07839、WO 99/58658、WO 02/14478、WO 2003/102165、WO 2004/053091、WO 2005/055957、および表6〜9(ならびにその中に引用された参照)(これらの内容は参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている。さらに、インフルエンザの保存された免疫学的/防御的なT細胞エピトープおよびB細胞エピトープは、公に入手可能なデータベースから選ばれてもよい(例えば、Bui et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.104:246-251,2007、および補足の表を参照のこと)。本発明は、オンラインIEDBリソースからのペプチド、例えば、Bui et al.(前記)に記載された保存されたB細胞エピトープおよびT細胞エピトープを含むインフルエンザウイルスエピトープも利用することができる。
【0037】
寄生虫(例えば、マラリア)、その他の病原性ウイルス(例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV;例えば、gag)、およびC型肝炎ウイルス(HCV))、ならびに細菌(例えば、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、およびピロリ菌(Helicobacter pylori))に由来するエピトープのような、その他のヒト/動物病原体に由来する防御エピトープも、本発明のHA0に基づくワクチンと組み合わせられてもよいし、または本発明のベクターを使用してHA0に基づくペプチドの非存在下で投与されてもよい。これらおよびその他の病原体の様々な適切なエピトープは、当技術分野において公知である。例えば、HPV16ウイルスのL2タンパク質のアミノ酸1〜88、アミノ酸1〜200、またはアミノ酸17〜36(WO 2006/083984 A1;
)
を含むペプチドのような、異なるHPV遺伝子型から防御する広範囲交差中和抗体を誘導するパピローマウイルスL2タンパク質由来の交差防御性エピトープ/ペプチドが、例えば、使用され得る。本発明において使用され得る付加的な病原体ならびにこれらの病原体に由来する免疫原およびエピトープの例は、WO 2004/053091、WO 03/102165、WO 02/14478、およびUS 2003/0185854(これらの内容は、参照により本明細書に組み入れられる)に提供されている。
【0038】
免疫原が入手され得る病原体の付加的な例は、下記表1にリストされ、そのような免疫原の具体例には、表2にリストされたものが含まれる。さらに、本発明のベクターへ挿入され得るエピトープの具体例は、表3に提供される。表3に示されるように、本発明のベクターにおいて使用されるエピトープは、B細胞エピトープ(即ち、中和エピトープ)またはT細胞エピトープ(即ち、Tヘルパー細胞および細胞障害性T細胞に特異的なエピトープ)であり得る。
【0039】
本発明のベクターは、病原体由来抗原に加えて免疫原を送達するために使用され得る。例えば、ベクターは、癌に対する免疫治療法において使用するための腫瘍関連抗原を送達するために使用され得る。多数の腫瘍関連抗原が当技術分野において公知であり、本発明に従って投与され得る。癌(および対応する腫瘍関連抗原)の例は、以下の通りである:黒色腫(NY-ESO-1タンパク質(特に、アミノ酸157位〜165位に位置するCTLエピトープ)、CAMEL、MART1、gp100、チロシン関連タンパク質TRP1および2、ならびにMUC1);腺癌(ErbB2タンパク質);結腸直腸癌(17-1A、791Tgp72、および癌胎児性抗原);前立腺癌(PSA1およびPSA3)。熱ショックタンパク質(hsp110)も、そのような免疫原として使用され得る。
【0040】
本発明のもう一つの例において、免疫応答が望まれるアレルギー誘導抗原のエピトープをコードする外因性配列が使用されてもよい。さらに、本発明のベクターは、ベクターが投与される対象における特定の細胞(例えば、リガンドの受容体を含む細胞)へ、抗原のようなペプチドを送達するため、ベクターをターゲティングするために使用されるリガンドを含んでいてもよい。
【0041】
本発明のベクターに免疫原として含まれ得る病原体、腫瘍、およびアレルゲンに関連するペプチドのさらなる例およびそれらの起源は、以下のように記載される。これらのペプチド免疫原は、相互に、かつ/または本明細書に記載されたその他のペプチド(例えば、本明細書に記載されたもののようなHA0および/もしくはM2eに関連する配列)と組み合わせて使用されてもよい。本発明には、これらのベクターを含む組成物が含まれ、免疫原に対する免疫応答を誘導するためにベクターを使用する方法も含まれる。従って、例えば、上記の免疫原に加えて、本明細書に記載されたベクターは、例えば、dsDNAウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、1型単純ヘルペス、2型単純ヘルペス、8型ヒト単純ヘルペスウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ポックスウイルス);ssDNAウイルス(例えば、パルボウイルス、パピローマウイルス(例えば、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、E8、BPV1、BPV2、BPV3、BPV4、BPV5、およびBPV6(In Papillomavirus and Human Cancer,edited by H.Pfister(CRC Press,Inc.1990));Lancaster et al.,Cancer Metast.Rev.pp.6653-6664,1987;Pfister et al.,Adv.Cancer Res.48:113-147,1987));dsRNAウイルス(例えば、レオウイルス);(+)ssRNAウイルス(例えば、ピコルナウイルス、コクサッキーウイルス、A型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、トガウイルス、風疹ウイルス、フラビウイルス、C型肝炎ウイルス、黄熱ウイルス、デング熱ウイルス、ウエストナイルウイルス);(-)ssRNAウイルス(例えば、オルソミクソウイルス、インフルエンザウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、ラブドウイルス、狂犬病ウイルス);ssRNA-RTウイルス(例えば、レトロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV));ならびにdsDNA-RTウイルス(例えば、ヘパドナウイルス、B型肝炎)を含む、一つまたは複数のウイルスに由来するか、またはそれらに対する免疫応答を指図する、一つまたは複数の免疫原(例えば、ウイルス標的抗原)を含んでいてもよい。免疫原は、上にリストされていないが、当業者に入手可能なその他のウイルスに由来するものであってもよい。
【0042】
HIVに関して、免疫原は任意のHIV単離物から選択され得る。当技術分野において周知であるように、HIV単離物は、現在、別々の遺伝学的亜型へ分類されている。HIV-1は少なくとも10の亜型(A、B、C、D、E、F、G、H、J、およびK)を含むことが公知である。HIV-2は少なくとも5の亜型(A、B、C、D、およびE)を含むことが公知である。亜型Bは、世界的な男性同性愛者および静脈注射薬使用者におけるHIV大流行に関連している。大部分のHIV-1免疫原、実験室順応単離物、試薬、およびマッピングされたエピトープは、亜型Bに属する。新たなHIV感染の発生率が高い区域である、サハラ砂漠以南のアフリカ、インド、および中国においては、HIV-1亜型Bは、感染のごく一部のみを占め、亜型HIV-1Cが最も一般的な感染亜型であるようである。従って、ある種の態様において、HIV-1亜型Bおよび/またはCに由来する免疫原を選択することが望ましいかもしれない。単一の免疫学的組成物の中に複数のHIV亜型(例えば、HIV-1亜型BおよびC、HIV-2亜型AおよびB、またはHIV-1亜型とHIV-2亜型の組み合わせ)に由来する免疫原を含めることが望ましいかもしれない。適当なHIV免疫原には、例えば、ENV、GAG、POL、NEFが含まれ、それらのバリアント、誘導体、および融合タンパク質も含まれる。
【0043】
免疫原は、例えば、バチルス(Bacillus)種(例えば、バチルス・アントラシス(anthracis))、ボルデテラ(Bordetella)種(例えば、百日咳菌(Bordetella pertussis))、ボレリア(Borrelia)種(例えば、ライム病菌(Borrelia burgdorferi))、ブルセラ(Brucella)種(例えば、ブルセラ・アボルタス(abortus)、ブルセラ・カニス(canis)、ブルセラ・メリテンシス(melitensis)、およびブルセラ・スイス(suis))、カンピロバクター(Campylobacter)種(例えば、ジェジュニ菌(Campylobacter jejuni))、クラミジア(Chlamydia)種(例えば、クラミジア・ニューモニエ(pneumoniae)、クラミジア・シタッシ(psittaci)、クラミジア・トラコマチス(trachomatis))、クロストリジウム種(例えば、クロストリジウム・ボツリヌム(botulinum)、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・パーフリンゲンス(perfringens)、クロストリジウム・テタニ(tetani))、コリネバクテリウム(Corynebacterium)種(例えば、コリネバクテリウム・ジフテリエ(diptheriae))、腸球菌(Enterococcus)種(例えば、フェカリス菌(Enterococcus faecalis)、フェシウム菌(Enterococcus faecum))、エスケリキア(Escherichia)種(例えば、大腸菌(Escherichia coli))、フランシセラ(Francisella)種(例えば、フランシセラ・ツラレンシス(tularensis))、ヘモフィルス(Haemophilus)種(例えば、ヘモフィルス・インフルエンザ(influenza))、ヘリコバクター(Helicobacter)種(例えば、ピロリ菌)、レジオネラ(Legionella)種(例えば、レジオネラ・ニューモフィラ(pneumophila))、レプトスピラ(Leptospira)種(例えば、レプトスピラ・インターロガンス(interrogans))、リステリア(Listeria)種(例えば、リステリア・モノサイトゲネス(monocytogenes))、ミコバクテリウム(Mycobacterium)種(例えば、ミコバクテリウム・レプレ(leprae)、結核菌)、マイコプラズマ(Mycoplasma)種(例えば、マイコプラズマ・ニューモニエ、ナイセリア(Neisseria)種(例えば、ナイセリア・ゴノレア(gonorrhea)、髄膜炎菌)、シュードモナス(Pseudomonas)種(例えば、シュードモナス・アエルギノサ(aeruginosa))、リケッチア(Rickettsia)種(例えば、リケッチア・リケッチー(rickettsii))、サルモネラ(Salmonella)種(例えば、チフス菌(typhi)、ネズミチフス菌(Salmonella typhinurium))、シゲラ(Shigella)種(例えば、シゲラ・ソネイ(sonnei))、ブドウ球菌(Staphylococcus)種(例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・サプロフィティクス(saprophyticus)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(例えば、米国特許第7,473,762号)))、連鎖球菌(Streptococcus)種(例えば、ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyrogenes))、トレポネーマ(Treponema)種(例えば、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum))、ビブリオ(Vibrio)種(例えば、コレラ菌(Vibrio cholerae))、ならびにエルシニア(Yersinia)種(ペスト菌(Yersinia pestis))を含む、一つまたは複数の細菌種に由来するか、またはそれらに対する免疫応答を指図するもの(例えば、細菌標的抗原)であってもよい。免疫原は、上にリストされていないが、当業者に入手可能なその他の細菌種に由来するか、またはそれらに対する免疫応答を指図するものであってもよい。
【0044】
免疫原は、例えば、鉤虫(Ancylostoma)種(例えば、ズビニ鉤虫(A.duodenale))、アニサキス(Anisakis)種、回虫(Ascaris lumbricoides)、大腸バランチジウム(Balantidium coli)、条虫(Cestoda)種、トコジラミ(Cimicidae)種、肝吸虫(Clonorchis sinensis)、槍形吸虫(Dicrocoelium dendriticum)、ディクロコエリウム・ホスペス(Dicrocoelium hospes)、ジフィロボスリウム・ラツム(Diphyllobothrium latum)、ドラクンクルス(Dracunculus)種、包虫(Echinococcus)種(例えば、単包条虫(E.granulosus)、多包条虫(E.multilocularis))、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、蟯虫(Enterobius vermicularis)、ファスキオラ(Fasciola)種(例えば、肝蛭(F.hepatica)、F.マグナ(magna)、F.ギガンティカ(gigantica)、F.ジャクソニ(jacksoni))、ファシオロプシス・バスキ(Fasciolopsis buski)、ジアルジア(Giardia)種(ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia))、顎口虫(Gnathostoma)種、膜様条虫(Hymenolepis)種(例えば、小型条虫(H.nana)、縮小条虫(H.diminuta))、リーシュマニア(Leishmania)種、ロア糸状虫(Loa loa)、メトルキス(Metorchis)種(M.コンジャンクツス(conjunctus)、M.アルビダス(albidus))、アメリカ鉤虫(Necator americanus)、エストロイデア(Oestroidea)種(例えば、ウマバエ(botfly))、オンコセルシデ(Onchocercidae)種、肝吸虫(Opisthorchis)種(例えば、タイ肝吸虫(O.viverrini)、ネコ肝吸虫(O.felineus)、O.グアヤキレンシス(guayaquilensis)、およびO.ノベルカ(noverca))、マラリア原虫(Plasmodium)種(例えば、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum))、プロトファスキオラ・ロバスタ(Protofasciola robusta)、パラファスシオロプシス・ファスシモルフェ(Parafasciolopsis fasciomorphae)、ウエステルマン肺吸虫(Paragonimus westermani)、住血吸虫(Schistosoma)種(例えば、マンソン住血吸虫(S.mansoni)、日本住血吸虫(S.japonicum)、S.メコンギ(mekongi)、ビルハルツ住血吸虫(S.haematobium))、スピロメトラ・エリナセイエウロパエイ(Spirometra erinaceieuropaei)、糞線虫(Strongyloides stercoralis)、条虫(Taenia)種(例えば、無鉤条虫(T.saginata)、有鉤条虫(T.solium))、トキソカラ(Toxocara)種(例えば、イヌ回虫(canis)、ネコ回虫(T.cati))、トキソプラズマ(Toxoplasma)種(例えば、トキソプラズマ原虫(T.gondii))、トリコビルハルジア・レゲンティ(Trichobilharzia regenti)、旋毛虫(Trichinella spiralis)、鞭虫(Trichuris trichiura)、ツツガムシ(Trombiculidae)種、トリパノソーマ(Trypanosoma)種、ツンガ・ペネトランス(Tunga penetrans)、ならびに/またはバンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti)を含む、一つまたは複数の寄生生物(種)に由来するか、またはそれらに対する免疫応答を指図するもの(例えば、寄生虫標的抗原)であってもよい。免疫原は、上にリストされていないが、当業者に入手可能なその他の寄生生物に由来するか、またはそれらに対する免疫応答を指図するものであってもよい。
【0045】
免疫原は、腫瘍標的抗原に由来するか、またはそれらに対する免疫応答を指図するもの(例えば、腫瘍標的抗原)であってもよい。腫瘍標的抗原(TA)という用語には、癌細胞が抗原の起源である腫瘍関連抗原(TAA)および腫瘍特異抗原(TSA)の両方が含まれ得る。TAは、正常細胞に観察されるより多量に腫瘍細胞の表面に発現される抗原、または胎児発生の間に正常細胞に発現される抗原であり得る。TSAは、典型的には、腫瘍細胞に独特であって、正常細胞には発現されない抗原である。TAは、典型的には、発現パターン、機能、または遺伝学的起源により、以下の五つのカテゴリーへ分類される:癌・精巣(CT)抗原(即ち、MAGE、NY-ESO-1);メラニン形成細胞分化抗原(例えば、Melan A/MART-1、チロシナーゼ、gp100);変異抗原(例えば、MUM-1、p53、CDK-4);過剰発現された「自己」抗原(例えば、HER-2/neu、p53);およびウイルス抗原(例えば、HPV、EBV)。適当なTAには、例えば、gp100(Cox et al.,Science 264:716-719,1994)、MART-1/Melan A(Kawakami et al.,J.Exp.Med.,180:347-352,1994)、gp75(TRP-1)(Wang et al.,J.Exp.Med.,186:1131-1140,1996)、チロシナーゼ(Wolfel et al.,Eur.J.Immunol.,24:759-764,1994)、NY-ESO-1(WO 98/14464;WO 99/18206)、黒色腫プロテオグリカン(Hellstrom et al.,J.Immunol.,130:1467-1472,1983)、MAGEファミリー抗原(例えば、MAGE-1、2、3、4、6、および12;Van der Bruggen et al.,Science 254:1643-1647,1991;米国特許第6,235,525号)、BAGEファミリー抗原(Boel et al.,Immunity 2:167-175,1995)、GAGEファミリー抗原(例えば、GAGE-1、GAGE-2;Van den Eynde et al.,J.Exp.Med.182:689-698,1995;米国特許第6,013,765号)、RAGEファミリー抗原(例えば、RAGE-1;Gaugler et al.,Immunogenetics 44:323-330,1996;米国特許第5,939,526号)、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ-V(Guilloux et al.,J.Exp.Med.183:1173-1183,1996)、p15(Robbins et al.,J.lmmunol.154:5944-5950,1995)、β-カテニン(Robbins et al.,J.Exp.Med.,183:1185-1192,1996)、MUM-1(Coulie et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:7976-7980,1995)、サイクリン依存性キナーゼ-4(CDK4)(Wolfel et al.,Science 269:1281-1284,1995)、p21-ras(Fossum et al.,Int.J.Cancer 56:40-45,1994)、BCR-abl(Bocchia et al.,Blood 85:2680-2684,1995)、p53(Theobald et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:11993-11997,1995)、p185 HER2/neu(erb-B1;Fisk et al.,J.Exp.Med.,181:2109-2117,1995)、表皮増殖因子受容体(EGFR)(Harris et al.,Breast Cancer Res.Treat,29:1-2,1994)、癌胎児性抗原(CEA)(Kwong et al.,J.Natl.Cancer Inst.,85:982-990,1995、米国特許第5,756,103号;第5,274,087号;第5,571,710号;第6,071,716号;第5,698,530号;第6,045,802号;EP 263933;EP 346710;およびEP 784483);癌関連変異型ムチン(例えば、MUC-1遺伝子産物;Jerome et al.,J.Immunol.,151:1654-1662,1993);EBVのEBNA遺伝子産物(例えば、EBNA-1;Rickinson et al.,Cancer Surveys 13:53-80,1992);ヒトパピローマウイルスのE7タンパク質、E6タンパク質(Ressing et al.,J.Immunol.154:5934-5943,1995);前立腺特異抗原(PSA;Xue et al.,The Prostate 30:73-78,1997);前立腺特異膜抗原(PSMA;Israeli et al.,Cancer Res.54:1807-1811,1994);イディオタイプエピトープまたは抗原、例えば、免疫グロブリンイディオタイプまたはT細胞受容体イディオタイプ(Chen et al.,J.Immunol.153:4775-4787,1994));KSA(米国特許第5,348,887号)、キネシン2(Dietz,et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.275(3):731-738,2000)、HIP-55、TGFβ-1抗アポトーシス因子(Toomey et al.,Br.J.Biomed.Sci.58(3):177-183,2001)、腫瘍タンパク質D52(Bryne et al.,Genomics 35:523-532,1996)、H1FT、NY-BR-1(WO 01/47959)、NY-BR-62、NY-BR-75、NY-BR-85、NY-BR-87、およびNY-BR-96(Scanlan,M.Serologic and Bioinformatic Approaches to the Identification of Human Tumor Antigens,in Cancer Vaccines 2000,Cancer Research Institute,New York,NY)、ならびに/または膵臓癌抗原(例えば、米国特許第7,473,531号のSEQ ID NO:1〜288)が含まれる。免疫原は、上にリストされていないが、当業者に入手可能なその他のTAに由来するか、またはそれらに対する免疫応答を指図するものであってもよい。
【0046】
本発明のベクターへ挿入されるペプチドまたはタンパク質のサイズは、当業者により適切であると決定され得るような長さ、例えば、3〜1,000アミノ酸、例えば、5〜500アミノ酸、10〜100アミノ酸、20〜55アミノ酸、25〜45アミノ酸、または35〜40アミノ酸の範囲であり得る。従って、例えば、7〜45アミノ酸、10〜40アミノ酸、12〜30アミノ酸、および15〜25アミノ酸の範囲の長さのペプチドが、本発明において使用され得る。本発明のベクターに含まれるペプチドは、本明細書に明記され言及されたような完全配列を含んでいてもよいし、または所望の免疫応答を誘導することができる1個もしくは複数個のエピトープを含む断片であってもよい。そのような断片には、例えば、これらペプチドの内部からの2〜50アミノ酸、3〜40アミノ酸、4〜30アミノ酸、5〜25アミノ酸、または6〜20アミノ酸の断片が含まれ得る。さらに、ペプチドは、一方または両方の末端に、例えば、1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、11〜20アミノ酸等による配列の短縮または伸長(例えば、付加的/反復的な免疫優性/ヘルパーエピトープの挿入)、例えば、天然に存在する連続配列(例えば、インフルエンザウイルス(またはその他の起源)のゲノムにおいてペプチドが連続している配列)、または合成リンカー配列(以下も参照のこと)を含んでいてもよい。従って、ペプチドは、一方または両方の末端に、例えば、1〜25アミノ酸、2〜20アミノ酸、3〜15アミノ酸、4〜10アミノ酸、または4〜8アミノ酸の配列を含むことができる。具体例として、ペプチドは、アミノ末端および/またはカルボキシル末端に1〜3アミノ酸のリンカー配列を含むことができる。ペプチドまたはタンパク質の短縮は、例えば、公知の構造/免疫学的ドメイン内の、またはドメイン間の、免疫学的に重要でない配列もしくは干渉する配列を除去することができ;または望まれないドメイン全体を欠失させてもよく;そのような修飾は、21〜30アミノ酸、31〜50アミノ酸、51〜100アミノ酸、101〜400アミノ酸等の範囲内にあり得る。範囲には、例えば、20〜400アミノ酸、30〜100アミノ酸、および50〜100アミノ酸も含まれる。さらに、配列は、ペプチドの内部および/または一方もしくは両方の末端に、例えば、1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、またはそれ以上(例えば、1〜50アミノ酸、3〜40アミノ酸、5〜30アミノ酸、8〜25アミノ酸、10〜20アミノ酸、または12〜15アミノ酸)の欠失または置換を含んでいてもよい。上に示された配列のそのような可能なペプチド断片は、全て、本発明に含まれる。従って、本明細書にリストされ言及された具体的なペプチド配列(およびそれらの短縮および伸長)に加えて、本発明は、配列のアナログも含む。そのようなアナログは、例えば、参照配列と少なくとも80%、90%、95%、もしくは99%同一である配列、またはそれらの断片を含む。同一率の決定は、例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group(University of Wisconsin Biotechnology Center,1710 University Avenue,Madison,WI 53705)、BLAST、またはPILEUP/PRETTYBOXプログラムのような、標準的な方法およびソフトウェアを使用して実施され得る。これらのソフトウェアプログラムは、様々な置換、欠失、またはその他の修飾に同一度を割り当てることにより、同一であるかまたは類似している配列をマッチさせる。アナログは、様々な例において保存的アミノ酸置換を含むことができる。保存的置換には、典型的には、以下の群の内部での置換が含まれる:グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、およびロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、およびグルタミン;セリンおよびトレオニン;リジンおよびアルギニン;ならびにフェニルアラニンおよびチロシン。
【0047】
本明細書に記載された断片およびアナログは、本明細書に記載されたもののような、標準的な免疫学的アッセイおよび動物モデル系において免疫原性に関して試験され得る。
【0048】
投与
免疫感作法において使用される場合、本発明のベクターは、例えば、インフルエンザウイルスのような特定の病原体による感染のリスクを有する成人または子供において第一の予防剤として投与され得る。ベクターは、ペプチド抗原が由来する病原体(またはその他の起源)に対する免疫応答を刺激することにより、感染対象を処置するための第二の薬剤として使用されてもよい。癌に対する免疫感作に関して、ワクチンは、癌を発症するリスクを有する対象、または既に癌を有している対象に投与され得る。ヒト対象に加えて、本発明の方法は、非ヒト動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、およびトリ(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、またはガチョウ)のような家畜、ならびにイヌ、ネコ、およびトリを含む飼育動物)への投与を含むことができる。
【0049】
免疫感作適用のため、任意で、当業者に公知のアジュバントが使用されてもよい。アジュバントは投与経路に基づき選択される。鼻腔内投与の場合、キチン微粒子(CMP)が使用され得る(Asahi-Ozaki et al.,Microbes and Infection 8:2706-2714,2006;Ozdemir et al.,Clinical and Experimental Allergy 36:960-968,2006;Strong et al.,Clinical and Experimental Allergy 32:1794-1800,2002)。粘膜経路(例えば、鼻腔内経路または経口経路)を介した投与において使用するのに適しているその他のアジュバントには、大腸菌の易熱性毒素(LT)またはその変異誘導体が含まれる。不活化ウイルスの場合、例えば、アルミニウム化合物(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、もしくはヒドロキシリン酸アルミニウム化合物)、リポソーム製剤、QS21のような合成アジュバント、ムラミルジペプチド、モノホスホリルリピドA、またはポリホスファジンを含む非経口アジュバントが使用され得る。
【0050】
さらに、アジュバント活性を有するサイトカインをコードする遺伝子が、ベクターに挿入されてもよい。従って、GM-CSF、IL-2、IL-12、IL-13、またはIL-5のようなサイトカインをコードする遺伝子が、増強された免疫応答をもたらすワクチンを作製するため、または免疫を細胞応答、体液応答、または粘膜応答に向けてより特異的にモジュレートするため、外来抗原遺伝子と共に挿入され得る。または、サイトカインは、周知の手段(例えば、直接接種、裸のDNA、ウイルスベクター等)によって、組換えワクチンウイルスとは別に、同時にまたは連続的に送達されてもよい。
【0051】
本発明のウイルスは、他の免疫感作アプローチと組み合わせて使用されてもよい。例えば、ウイルスは、同一であるかまたは異なる抗原を含むサブユニットワクチンと組み合わせて投与され得る。本発明の組み合わせ法は、本発明のウイルスの、他の型の抗原(またはその他の抗原)との共投与を含んでいてもよい。例えば、肝炎コアタンパク質または完全なもしくは部分的な不活化ウイルスを含むサブユニット型または送達媒体が使用され得る。一つのそのような例において、大腸菌において作製された表面上にM2eペプチドを含有しているB型肝炎コア粒子が使用され得る(HBc-M2e;Fiers et al.,Virus Res.103:173-176,2004;WO 2005/055957;US 2003/0138769 A1;US 2004/0146524 A1;US 2007/0036826 A1)
【0052】
もう一つのそのような例において、HA0ペプチドを含有しているB型肝炎コア粒子が使用される。そのような粒子を作成するために使用され得るB型肝炎コア配列には、全長配列のみならず、短縮型配列(例えば、例えば、アミノ酸149位、150位、163位、または164位で短縮された、カルボキシ末端短縮型配列;例えば、米国特許第7,361,352号参照)。インフルエンザウイルス配列は、HBc配列の内部、またはHBc配列のいずれかの末端に挿入され得る。例えば、配列は、HBcのおよそアミノ酸75位〜83位に存在する、HBcの主要免疫優性領域(MIR)へ挿入され得る。MIR領域への挿入は、この領域内のアミノ酸の間(例えば、75〜76、76〜77、77〜78、78〜79、79〜80、80〜81、81〜82、または82〜83)であってもよいし、またはこの領域内の(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、または7個のアミノ酸の)欠失の代わりに存在してもよい(例えば、HBc配列のアミノ酸78とアミノ酸82の間へのB型インフルエンザウイルス配列の挿入)。もう一つの例において、挿入は、HBcタンパク質のアミノ末端でなされる。
【0053】
または、本発明のベクターは、初回刺激-追加刺激戦略において、(サブユニットアプローチまたはHBcアプローチのような)他のアプローチと組み合わせて使用されてもよく、その際には、本発明のベクターもしくは他のアプローチが初回刺激として使用され、続いて、他方のアプローチが追加刺激として使用されるか、またはその逆が行われる。さらに、本発明には、初回刺激剤としても追加刺激剤としても本発明のベクターを利用する初回刺激-追加刺激法が含まれる。従って、そのような方法は、本発明に係るベクターの初回投与を、初回投与の1週間以上、1ヶ月以上、または1年以上後に行われ得る、1回または複数回(例えば、1回、2回、3回、または4回)の追加投与と共に含むことができる。
【0054】
本発明のベクターは、標準的な方法を使用して、生ワクチン、弱毒化生ワクチン、または不活化ワクチンとして対象に投与され得る。生ワクチンは、例えば、当業者に公知の方法を使用して、鼻腔内投与され得る(例えば、Grunberg et al.,Am.J.Respir.Crit.Car.Med.156:609-616,1997参照)。鼻腔内投与の場合、ベクターは、点鼻薬の形態で、またはエアロゾル化もしくは噴霧された製剤の吸入により投与され得る。ウイルスは、凍結乾燥形態であってもよいし、または生理食塩水もしくは水のような生理学的に適合性の溶液もしくは緩衝液に溶解していてもよい。調製および製剤化の標準的な方法は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences(18th edition),ed.A.Gennaro,1990,Mack Publishing Company,Easton,PAに記載されたようにして使用され得る。さらに、適切な投薬量および計画の決定は、当業者によって容易に決定され得る。適切な投薬量および計画は、当業者によって容易に決定され得る。一例として、用量範囲は、例えば、1回当たり103〜108pfuであり得るが、1 TCID50のように低くてもよい。ワクチンは、有利には、単回投与で投与され得るが、上述のように、当業者によって必要であると決定された場合には、追加刺激が実施されてもよい。不活化ワクチンに関しては、ウイルスは、例えば、ホルマリンまたはUV処理により不活化され、任意で、適切なアジュバント(例えば、キチンまたは変異型LT;上記参照)と共に、(例えば、不活化前に決定されたような)1回当たり約108pfuで鼻腔内投与され得る。もう一つの例において、不活化ワクチンは、任意で、適切なアジュバント(例えば、水酸化アルミニウムのようなアルミニウムアジュバント)と共に、非経口経路によって、例えば、皮下投与によって投与されてもよい。そのようなアプローチにおいては、複数回(例えば、2〜3回)投与することが有利であるかもしれない。
【0055】
本発明は、以下の実験例に、一部分、基づく。
【実施例】
【0056】
実験例
I.HRV14-NimII-M2eキメラの構築
本発明者らは、HRV14 NimII-M2e組換えウイルスを構築した。ウイルスは、抗M2eモノクローナル抗体が組換えウイルスの感染性を中和し得ることによって証明されるように、ビリオン表面上にM2eを発現することが示されている。
【0057】
三つの型のHRV14-M2e構築物を作出した(図2A)。
1.VP2のアミノ酸159とアミノ酸160の間(NimII部位)に挿入されたM2eの23アミノ酸を保持しているHRV14-NimII-23AA;
2.HRV14-NimII-XXX23AAライブラリー。この構築物のセット(プラスミドライブラリー)は、ペプチドに融合した3アミノ酸ランダム化N末端リンカーの存在を除き、第1の構築物に類似していた。このランダム化リンカーは、リンカーアミノ酸をコードする9個のランダム化ヌクレオチドを含有している5'(直接)プライマーを使用して、M2e配列により生成された;
3.HRV14-NimII-XXX17AAライブラリー。このライブラリーは、M2eの最初の17アミノ酸のみを含有している、短縮されたM2eペプチドを含有していることを除き、第1のものと同一の方式で生成された。
【0058】
HRV14感染性クローンへのクローニングを容易にするため、本発明者らは、pWR3.26感染性クローン(Lee et al.,J.Virol.67:2110-2122,1993)のpUCプラスミド骨格をpEtベクター(Novagen)のものに交換することにより修飾し、プラスミドpWR1(図2)を生成した。ウイルスライブラリー#2および#3のプラーク形態学は、HRV14親のものと異なっていた(図2B)。ライブラリーのプラークサイズは野生型に類似しているようであったが、プラークは不透明であった。構築物#1はトランスフェクションによりプラークを形成しなかった。
【0059】
構築されたウイルスの遺伝学的安定性をモニタリングするため、本発明者らは、サイレント変異誘発によりM2e配列の中央にXhoI切断部位を組み入れた。変異型M2e遺伝子を含有しているウイルスから入手されたRT-PCR断片は、XhoIにより切断されるが、野生型HRV14から作製された対応するDNA産物は未消化のままであった(図3)。HRV14-NimII-23AAキメラ構築物(#1)は、生存可能であるが、かなり不安定なウイルスをもたらした。図3に示されるように、「PCR A」断片の二つのXhoI消化産物は、2代目にのみ検出可能であり、その後の代においては検出可能でなかった。反対に、ライブラリー(#2)および(#3)は、M2eインサートを安定的に維持し:H1 HeLa細胞における4代目のウイルスライブラリーから入手された断片「PCR B」は、XhoIによって完全に消化された(図3)。構築物#1の不安定性は、挿入されたペプチドによる受容体結合ドメインの立体的干渉によるのかもしれず(図4)、それは、構築物#2および#3のように、縮重リンカーが提供された場合、軽減され得た。ランダム化N末端リンカーが、受容体結合ドメインを含有しているキャニオンからペプチドを遠ざけるよう向けなおし、受容体への効率的なウイルス結合を可能にしたのかもしれない(図4)。
【0060】
本発明者らは、抗M2eモノクローナル抗体(14C2 MAb,Abcam,Inc.カタログ#ab5416)を使用して、ウイルスライブラリーによる中和研究を実施した。ウイルス中和は、ライブラリーの純度(即ち、野生型HRV14の欠如)を証明するためのツールとしても使用され得る。プラーク減少中和試験(PRNT)は、両ライブラリーに対するMab 14C2の著しく高い特異性および中和能を証明した(図5)。
【0061】
両ライブラリーは、抗M2e Mabによる中和に著しく感受性であることが示されたが(図5)、対照ウイルス(pWR1)は、モノクローナル抗体の10倍という最低希釈率ですら中和されなかった。両ライブラリーに関する50パーセント中和は、抗体のおよそ2,000,000倍希釈率で観察された(14C2のストック濃度は1mg/mlであった)。そのような効率的な組換えウイルスの中和は、HRV14のNimIIに提示されたM2eペプチドが、抗体によって容易に認識可能な、適切なコンフォメーションにあることを示した。
【0062】
II.安定的なHRV14-NimII-M2e組換え体の同定
H1 HeLa細胞における4回の継代の後、各ライブラリーからの六つの個々のクローンをプラーク精製し、さらに4回継代した後、保持されているインサートを配列決定することにより特徴決定した。各ライブラリーは、一つの優性かつ安定的に複製するウイルスクローンを与えた。HRV14-NimII-XXX23AAライブラリーから単離された全てのウイルスが、N末端リンカーとしてGHTを含む、同一のインサート配列
を有し、HRV14-NimII-XXX17AAライブラリーからのウイルスは、全て、N末端リンカーとしてQPAを含む、同一の配列
を示した。23アミノ酸インサートを保持している全ての生存可能クローンが、アミノ酸7位(M2e外来インサート中の4位)にチロシンからリジンへの置換を有していた。17アミノ酸インサートを保持しているクローンは、全て、野生型M2e配列を含有していた。これらの結果は、遺伝学的に安定的な組換えHRV-M2eウイルスが単離され得ることを示している。さらなるインビボ研究において、A型インフルエンザのPR8株に対する防御を提供するHRV14-M2e(17AA)の可能性を、腹腔内投与経路を使用して評価した。
【0063】
III.HRV14-M2e組換え体およびHRV14-HA0組換え体によるインビボ研究
A.インビボ実験#1:腹腔内免疫感作
1.実験設計
9週齢雌Balb/cマウス(各群8匹)を、500μl容量の、アジュバント(水酸化アルミニウム)100μgと混合された、5.0×106pfuのショ糖精製されたHRV14-M2e(17AA;表4の注(4)参照)、1.3×107pfuの親HRV14、または陰性対照としてのモック(PBS)の腹腔内投与により、0日目に初回刺激し、次いで、21日目に追加刺激した。対照として、M2eの3コピーを保持している組換えB型肝炎コア粒子(本明細書中、HBc-3XM2e VLPとも呼ばれる)を使用した。後者は、初回刺激/追加刺激のため、単独で、またはHRV14-M2eもしくはHRV14と組み合わせて使用された(表4)。防御を証明するため、全てのマウスを、35日目に4 LD50のインフルエンザA/PR/8/34(H1N1)ウイルスによるチャレンジに供した。罹患率および死亡率を21日間モニタリングした。保持されたペプチドに対する血清抗体に関して試験するため、マウスから、接種前に採血し(基線)、33日目に再び採血した。血清中のM2e特異的抗体の力価を、合成M2eペプチドによりコーティングされたマイクロタイタープレートにおいて実施された確立されたELISAにより決定した。M2e特異的な全IgG、Ig2a、およびIg2bの力価を決定した。
【0064】
2.結果
a.免疫原性
i.免疫感作された動物における全IgG
M2e特異的抗体の力価を、プールされた血清試料(図6)および個々の動物試料(図7)を使用して各群について測定した。プールされた試料による結果(図6)は、17アミノ酸M2e配列を保持している組換えHRV14による初回刺激、およびB型肝炎コア-M2e組換えウイルス様粒子(VLP)による追加刺激が、B型肝炎ウイルスコア-M2e VLPの2回投与(10μg/回)と同レベルの抗体を誘発することを示した(終点力価(ET)=218,700)。B型肝炎ウイルスコア-M2e VLPによる追加刺激は、HRV14-M2e(17AA)(群4;ET=218,700)により初回刺激された時、HRV14ベクター(群6;ET=2,700)より約100倍高いM2e特異的応答を誘発した。従って、HRV14-M2eの初回刺激効果は、M2eインサートにのみ依存し、ベクターには依存しない。
【0065】
Arnoldら(US 2006/0088549 A1)による想定に基づくと、免疫感作用量の109pfuのHRV14は、およそ10μgのタンパク質に相当する。本発明者らは、組換えHRV-M2eウイルスの1免疫感作用量が10ngのタンパク質を表すと概算した。分子量の差および組換えB型肝炎コア粒子内のサブユニットの多重度を考慮に入れ、本発明者らは、HBc-M2eの1免疫感作用量が、HRV-M2eよりおよそ10,000倍多いM2eタンパク質を含有していると推測した。HRVベクターを使用した比較可能な抗体レベルは、おそらく、より安価な作製方法論を使用した、より免疫原性の提示系を支持する。
【0066】
M2e抗体のレベルは、HRV14-M2e(17AA)の投与回数に反比例した。実際、HRV14-M2e(17AA)ウイルスの3回投与(群1)が、最低のM2e特異的応答(ET=2.700)を誘発し、2回投与計画が、10倍高い応答を誘発し(群2;ET=24,300)、1回投与計画は2回投与より3倍高い応答を誘発した(群5;ET=72,900)。この相関が抗ベクター免疫によるか否かを確証するため、本発明者らは、HRV14ベクターに対する全ての群の免疫応答を別々に試験した(図7)。HRV14-M2e(17AA)の三つの型の投与(1回、2回、または3回)は、全て、比較可能なレベルのHRV14特異的応答(ET=72,900)を示した(図7A)。これは、抗ベクター免疫がM2eに対する免疫応答の減少の理由であることを否定し、1回投与が十分であり得ることを示唆している。
【0067】
個々の血清試料のM2e特異的ELISA分析(図8)は、プールされた試料により示されたのと同一の群内差を検出した:二つの血清希釈率(300倍および2,700倍)で示されたように、群4および7の個々のマウスの平均抗体レベルは、研究されたその他の群よりも有意に高かった。
【0068】
ii.免疫感作された動物における抗体のIgG2a亜型、IgG2b亜型、およびIgG1亜型
M2eにより予防接種されたマウスにおける優性のM2特異的抗体アイソタイプは、IgG2bであり、いくらかはIgG2aであることが示された(Jegerlehner et al.,J.Immunol.172(9):5598-5605,2004)。これらの二つのアイソタイプは、M2e依存性防御の主要な機序であると考えられている抗体依存性細胞障害性(ADCC)の最も重要なメディエーターであることがマウスにおいて示されている(Denkers et al.,J.Immunol.135:2183,1985)。この研究において、本発明者らは、プールされた群毎の試料および個々の血清試料を、IgG1アイソタイプ、IgG2aアイソタイプ、およびIgG2bアイソタイプの力価に関して試験した。
【0069】
群4(HRV14-M2e(17AA)による初回刺激/B型肝炎ウイルスコア-M2e VLPによる追加刺激)および群7(B型肝炎ウイルスコア-M2e VLPによる初回刺激/追加刺激)は、その他の群の中で最も高いIgG1抗体およびIgG2a抗体の力価を示した(図9)。IgG1力価は、群4より群7において有意に高く(図9Aおよび9D)、IgG2a力価は群4においてより高く(図9Bおよび9D)、群7の動物のIgG2b力価は群4よりも高かった(図10)。免疫感作されたマウスにおけるIgG2aアイソタイプのM2e特異的抗体は図11に示される。
【0070】
b.罹患率および死亡率
マウスを、PR8株によるチャレンジの後、28日間、罹患率および死亡率に関してモニタリングした。図12に示されるように、群4は、研究された全ての他の群と比較して最も高い生存率(80%)を示し、群7は、陰性対照(PBS)との有意な差を示さなかった。群4は罹患率でも最も優れており:体重変化が全ての他の群より有意に軽度であった(図13A、B)。
【0071】
従って、HRV14-M2e(17AA)ウイルスは、マウスにおいて高度に免疫原性であり、かつ防御性である。それは、伝統的な組換えタンパク質計画および初回刺激-追加刺激計画における二つの組み合わせと比較可能である。後者は、単独の組換えタンパク質とは有意に異なる免疫応答を示し:組換えB型肝炎ウイルスコア-M2e VLPの2回投与は優性IgG1抗体亜型を誘発し、HRV14-M2e(17AA)による初回刺激およびB型肝炎ウイルスコア-M2e VLPによる追加刺激は、ADCCにとって重要であることが示されているIgG2aを優性アイソタイプとして生成した。さらに、後者の群は、全ての他の群と比べて最も高い防御を示した。
【0072】
HRVはマウスにおいて複製しないため、このモデルにおけるHRV-M2e組換え体の接種は、適当な非経口アジュバントを用いて実施され、不活化ワクチンによる免疫感作を模倣することに注意することは重要である。ヒトにおいては二つのオプションが使用され得る:生組換えHRV14-M2eウイルスワクチン、および/または水酸化アルミニウムのような認可された非経口アジュバント(上記も参照のこと)と共投与される不活化(例えば、ホルマリン不活化)ワクチン。
【0073】
B.インビボ実験#2。鼻腔内免疫感作
1.免疫感作のために使用されたウイルス
このインビボ研究においては、単一インサートバリアントHRV14-M2e(17AA)、HRV14-HA0(19AA)、またはそれらの混合物、ならびに二重インサート構築物HRV14-M2e(16AA)-HA0(12AA)の、A型インフルエンザのPR8株による致死的チャレンジに対する防御を提供する可能性を、鼻腔内投与経路を使用して評価した。HRV14-M2e(17AA)配列は上記の通りである。HRV14-HA0(19AA)は、VP2のアミノ酸159とアミノ酸160の間(NimII部位)に挿入されたNimII内のインサート
を含有している。このインサートは、1個の変異型アミノ酸(置換R8Q)を除き、A型インフルエンザのHA0配列と同一であった。後者の構築物は、隣接リンカーを有していない(図2C)。3番目の構築物は、修飾されたNimII部位に
のインサート配列を保持していた。後者のインサート配列は、M2e配列の16アミノ酸(下線)、およびインフルエンザA/H3のHA0配列の12アミノ酸(太字)から構成されている。これらの二つの配列は1アミノ酸リンカー(E)により分離されている。この3番目の構築物の挿入部位(NimII)は修飾されていた:VP2の3アミノ酸160〜162がプロリンに交換されていた(図2C)。ウイルス増殖は、HRV14と比較可能であり、連続9代にわたりインサートを安定的に維持することが示された。
【0074】
2.実験設計
この動物実験の目的は、アジュバントと共に、またはアジュバントなしで、鼻腔内に与えられた組換えライノウイルスキメラの1回投与が、HBc-3XM2e VLPの2回投与と比較可能な防御免疫応答をインフルエンザA/PR/8/34(H1N1)株による致死的チャレンジに対して誘発するか否かを調べることであった。
【0075】
実験設計は表5に示される。簡単に説明すると、9週齢雌Balb/cマウス(各群10匹)を、0日目に、HBc-M2e VLP(群1および2)、HRV14-M2e(17AA)(群3および4)、HRV14(群5)、HRV14-HA0(19AA)(群6)、HRV14-M2e(17AA)と混合されたHRV14-HA0(19AA)(群7および8)、またはPBS対照(群9)、またはHRV14-M2e(16AA)-HA0(12AA)のいずれかにより鼻腔内投与により免疫感作した。群1、3、5、6、7、および13には、5μgの大腸菌易熱性毒素(LT)アジュバントと共に投与し、群2、4、および8には、アジュバントなしで投与した(表5)。投与容量は50μlであった。21日目に、群1および2を、50μl投与容量で、LTアジュバントと共に10μg HBc-3XM2eを鼻腔内投与することにより追加刺激した。
【0076】
もう一つのアジュバント(キチン)をバリデートするため、マウスを、50μl投与容量で、25μgのキチンと混合されたHBc-M2e VLP(群10)、HRV14-M2e(17AA)(群11)、またはHRV14(群12)のいずれかにより鼻腔内経路を介して免疫感作した。21日目に、群10を、50μl投与容量で、同アジュバントと共に10μg HBc-3XM2eを鼻腔内投与することにより追加刺激した。
【0077】
防御を証明するため、35日目に、全てのマウスを、4 LD50のインフルエンザA/PR/8/34(H1N1)ウイルスによるチャレンジに供した。罹患率および死亡率を21日間モニタリングした。保持されたペプチドに対する血清抗体に関して試験するため、マウスから接種前に採血し(基線)、33日目に再び採血した。血清中のM2e特異的抗体およびHA0特異的抗体の力価を、合成のM2eペプチドおよびHA0ペプチドによりコーティングされたマイクロタイタープレートにおいて実施された確立されたELISAにより決定した。M2e特異的な全IgG、Ig2a、およびIg2bの力価を決定した。
【0078】
3.結果
a.免疫原性
i.M2e特異的抗体およびHA0特異的抗体の力価
抗体M2eの力価を、プールされた血清試料を使用して、各群に関して測定した(図14A〜D)。17アミノ酸M2eペプチドを保持している組換えHRV14の1回投与は、B型肝炎ウイルスコア-M2e組換えVLP(10ug/回)の2回投与と比較可能なレベルの全IgGを誘発した(HBc-M2eおよびHRV14-M2e(17AA)に関する終点力価(ET)は、それぞれ、218,700および72,900であった(図14A))。アジュバント(LT)は、HBcに基づくワクチンおよびHRVに基づくワクチンの両方により提供された防御において重要な役割を果たし:LTなしの群における免疫応答はLT群より平均して10倍低かった。キチンアジュバント群は、100〜1000倍超低いM2e応答を示した。HRV14-M2eウイルス負荷量の半減(群7)は、全IgG力価に対する3倍減少効果を有していた(群7;ET=24,300、それに対して群3は72,900)。
【0079】
HRV14-M2eの1回投与は、2番目に高いレベルのIgG2aを生成した(図14C;ET=72,900、それに対してHBc-M2eは218.700)。最も高力価のIgG2b(図14B)およびIgG1(図14D)は、B型肝炎コア-M2e VLPの2回投与に関して証明された。
【0080】
個々の血清試料を使用して、群6、7、および13に関して、抗体HA0力価を測定した(図14E)。終点力価の幾何平均は、群6(LTと共にHRV14-HA0(19AA))に関しては4750、群7(LTと共にHRV14-HA0(19AA)とHRV14-M2e(17AA)の混合物)に関しては1440、群13(LTと共にHRV14-M2e(16AA)-HA0(12AA))に関しては9200であった。群13における最も高いHA0応答は、A/H3の野生型HA0配列の存在により説明され得る。一方、群6および7における組換えキメラは、HA0切断部位の変異バージョン(R8Q)を保持していた。HA0の8位のアルギニン残基は、防御にとって重大であることが以前に示されており、防御モノクローナル抗体の三つの結合部位のうちの一つであることも証明されている(Bianchi et al.,J.Virol.79:7380-7388,2005)。群7および13のプールされた試料のM2eに対する力価は、群13におけるM2e応答が低かったことを強調するため、図14Eの四角で囲まれた区域に示される(ET=2700;群5;アジュバントなしのHRV14-M2eのET=7,200と比較せよ)。これは、HRV14-M2e(16AA)-HA0(12AA)キメラ内のM2eエピトープが、恐らくウイルス表面上への露出が不十分であったため、免疫原性ではなかったことを示していた。従って、このバリアントの高い免疫原性/防御(下記参照)は、M2eエピトープではなくHA0に起因するはずである。
【0081】
b.罹患率および死亡率
マウスを、PR8株による致死的チャレンジの後、21日間、罹患率に関してモニタリングした(図15B)。HRV14-M2e(群3)またはHRV14-M2e(16AA)-HA0(12AA)(群13)のいずれかの1回投与は、HBc-M2e VLPの2回投与(群1)と比較可能な疾患からの防御を提供した。これらの群の全てのマウスが、致死的チャレンジを生き延びた(図15A)。これらの二つの群(上記参照)の間の免疫原性の差を考慮に入れると、これらの二つの群における防御は、異なるエピトープ:群3(HRV14-M2e)に関してはM2e、群13(HRV14-M2e(16AA)-HA0(12AA))に関してはHA0により提供されることが強く示唆され得る。
【0082】
変異型HA0切断部位を保持しているHRV14の1回投与(群6)は、対照HRV14群5において生き延びた2匹のマウスに類似した、高い罹患率を示した。これは、より低い(75%)生存率と相関する。HRV14-M2e(17AA)ウイルスとHRV14-HA0(19AA)ウイルスの混合物の1回投与(群7)は、HRV14-M2e(17AA)群よりわずかに高い罹患率を示し、それは免疫感作用量中のウイルス負荷量の半減と相関していた(図15B)。しかしながら、群7の全てのマウスが、致死インフルエンザチャレンジから100%防御された。HRV14-HA0(19AA)の倍増(群6)は、上述のように、75%の生存率をもたらしたため、後者の防御はHA0エピトープではなくM2eに起因するはずである。
【0083】
アジュバントは防御において重要な役割を果たした:「アジュバントなし」群の全てのマウスが、チャレンジ後9〜10日目に死亡した(図15A)。LTはキチンより良好な防御を提供し:HRV14-M2e(17AA)+キチン(群11)の全てのマウスが死亡し、HRV-3XM2e VLP+キチンの2回投与(群10)は80%の防御をもたらした(図15A)。
【0084】
従って、本発明者らは、HA0またはM2eのユニバーサル防御エピトープのいずれかを保持しているHRV14組換えキメラの1回投与が、鼻腔内経路を介して投与された時、致死A型インフルエンザチャレンジに対する100%の防御を提供することを証明した。この防御は、同一経路を介したHBc-3XM2e VLPの2回投与により提供されるものと比較可能であった。
【0085】
IV.インフルエンザマウスチャレンジモデル
ワクチン候補の防御効力は、適切なウイルス株を使用したマウスインフルエンザチャレンジモデルにおいて試験され得る。本明細書に記載された研究において使用されたプロトタイプインフルエンザチャレンジ株は、マウス順応株A/PR/8/34(H1N1)である。このウイルスは、アメリカンタイプカルチャーコレクション(カタログ番号VR-1469、ロット番号2013488)から入手され、Balb/cマウスにおける連続継代によりインビボ増殖に順応させられた。マウス継代のため、ウイルスを鼻腔内接種し、肺組織ホモジネートを3日後に調製した。ホモジネートを、5代にわたり、さらなるマウスにおいて盲検継代した。付加的な継代を、チャレンジストックとして役立つ肺ホモジネートのアリコートを調製するために使用した。
【0086】
マウスのチャレンジのため、ウイルスを50μLの容量で鼻腔内送達する。咽頭反射を阻害し、ウイルスが肺へと通過できるようにするため、接種の間、マウスに麻酔をかける。致死用量のウイルスに感染したマウスは、急速に体重が減少し、接種の7〜9日後に大部分が死亡する。成体Balb/cマウスにおけるマウス順応A/PR/8/34ウイルスの中央致死用量(LD50)は、7.5プラーク形成単位(pfu)と決定された。典型的な防御実験に関する結果は、図16に示される。10匹のマウスの群を、水酸化アルミニウムアジュバントにより偽免疫感作するか、または水酸化アルミニウムと混合された10μgのインフルエンザM2eペプチド免疫原により免疫感作した。免疫原は、M2eペプチドを発現するB型肝炎コアタンパク質VLPからなっていた。マウスを、3週間隔で2回免疫感作し、4週間後、4 LD50のマウス順応A/PR/8/34ウイルスにより鼻腔内チャレンジした。偽免疫感作された群のマウスは、全て、チャレンジ後10日目までに死亡したが、免疫感作された群においては1匹しか死亡しなかったた。体重減少は、両方の群においてチャレンジ後に起こったが、偽免疫感作された群において、より大きかった。
【0087】
その他のインフルエンザウイルス株を、マウス肺において増殖するよう同様に順応させてもよい。いくつかの場合、株は、インビボ順応なしで使用されてもよいし、または連続肺継代の後ですら十分に病原性にならなくてもよい。この場合には、罹患率および死亡率を測定するのではなく、肺および鼻甲介組織におけるウイルス複製を測定することができる。組織をチャレンジ後3日目に採集し、1mlの組織培養培地において超音波処理により破壊し、プラークアッセイまたはTCID50アッセイによりウイルス濃度に関して滴定する。
【0088】
上記のチャレンジモデルに加え、本発明は、Bartlett et al.,Nature Medicine 14(2):199-204,2008により記載されたもののような動物モデル系の使用も含む。一例において、本発明は、Bartlettにより記載された方法に従って生成され得るマウス-ヒト細胞間接着分子-1(ICAM-1)キメラを発現するBALB/cマウスのようなマウスを利用することができる。当技術分野において公知であるように、ICAM-1は、マウスICAM-1には結合しないヒトライノウイルスの90%の細胞受容体である。Bartlettにより教示されるように、ヒトライノウイルスは、トランスジェニックマウスの環境において、ヒトICAM-1のライノウイルス結合細胞外ドメイン1および2を含むキメラに結合する。これは、本明細書に記載されたもののような生存型ライノウイルスベクターの研究のための有用な系を提供する。従って、本発明は、そのようなマウスモデルにおけるワクチン候補のスクリーニングおよび試験を含む。
【0089】
(表1)エピトープ/抗原/ペプチドが由来し得る病原体の例のリスト
【0090】
(表2)リストされたウイルスに由来する選択抗原の例
【0091】
(表3)リストされたウイルス/抗原に由来するB細胞エピトープおよびT細胞エピトープの例
【0092】
(表4)免疫感作群(腹腔内研究)
表4に関する注:
(1)HBc-M2eは、23AA M2-eペプチドの3コピーを保持しているB型肝炎コア抗原(HBc)に基づく;用量=各マウス10μg。
(2)HBcAgは「裸の」HBc抗原である;HBc-M2eのための担体対照として使用された;用量=各マウス10μg。
(3)HRV14はpWR3.26感染性クローン(ATCC)から作製された「野生型」HRV14である;HRV14-M2e(17AA)のための担体対照として使用された。
(4)HRV14M2e(17AA)は、VP2のアミノ酸159とアミノ酸160の間(NimII部位)にQPASLLTEVETPIRNEWGSR(SEQ ID NO:43)配列を保持しているHRV14ウイルスである。このインサートの最初の3アミノ酸(QPA)は、既に記載されたように、HRV14M2eXXX(17AA)ライブラリーから選択された独特のリンカーを表す。
(5)アジュバント−全ての免疫感作においてミョウバンが使用された。
(6)全ての群が腹腔内投与により免疫感作された。
【0093】
(表5)免疫感作群(鼻腔内研究)
表5に関する注:
(1)HBc-M2eは、23AA M2-eペプチドの3コピーを保持しているB型肝炎コア抗原(HBc)に基づく;用量=各マウス10μg。
(2)HRV14はpWR3.26感染性クローン(ATCC)から作製された「野生型」HRV14である;HRV14-M2e(17AA)のための担体対照として使用された。
(3)HRV14M2e(17AA)は、VP2のアミノ酸159とアミノ酸160の間(NimII部位)にQPASLLTEVETPIRNEWGSR(SEQ ID NO:43)配列を保持しているHRV14ウイルスである。このインサートの最初の3アミノ酸(QPA)は、既に記載されたように、HRV14M2eXXX(17AA)ライブラリーから選択された独特のリンカーを表す。
(4)HRV14-HA0(11AA)は、VP2のアミノ酸159とアミノ酸160の間(NimII部位)に挿入されたNimII内のインサートGIFGAIAGFIE(SEQ ID NO:71)を含有している。この構築物は隣接リンカーを有していない。
(5)アジュバント−全ての免疫感作においてミョウバンが使用された;LT=大腸菌易熱性毒素。
(6)全ての群が鼻腔内投与により免疫感作された。
(7)群3、4、5、および6は、1回当たり108pfuの対応するウイルスにより免疫感作された;群8は、各ウイルス、1回当たり5×107pfuのHRV14-M2e(17AA)とHRV14-HA0の混合物により免疫感作された。
【0094】
(表6)ヒトA型インフルエンザ株のM2タンパク質の細胞外部分
1 この表中の全ての配列が、特記しない限り、SEQ ID NO:36に相当する。
2 SEQ ID NO:72
3 SEQ ID NO:73
4 SEQ ID NO:74
5 SEQ ID NO:75
【0095】
(表7)A型インフルエンザウイルスの核タンパク質のCTLエピトープ
【0096】
(表8)A型インフルエンザウイルスの核タンパク質のTヘルパーエピトープ
【0097】
(表9)A型インフルエンザウイルスのその他のウイルスタンパク質のT細胞エピトープ
【0098】
表7〜9に関する参照
【0099】
その他の態様
本明細書に引用された全ての刊行物および特許は、あたかも個々の刊行物または特許が各々参照により組み入れられると特別に個々に示されたかのごとく、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書における「a」および「the」のような単数形の使用は、前後関係がそうでないことを示さない限り、対応する複数形の指示を排除しない。本発明は、理解の明瞭化の目的のため、例示および例によりある程度詳細に記載されたが、本発明の教示を考慮すれば、ある種の変化および修飾が、添付の特許請求の範囲の本旨または範囲から逸脱することなく、なされ得ることは、当業者には容易に明白であろう。
【0100】
その他の態様は、以下の特許請求の範囲に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフルエンザウイルスHA0抗原を含むライノウイルスベクター。
【請求項2】
ヒトにおいて病原性でない、請求項1記載のライノウイルスベクター。
【請求項3】
ヒトライノウイルス14(HRV14)である、請求項2記載のライノウイルスベクター。
【請求項4】
M2eペプチドをさらに含む、請求項1〜3いずれか一項記載のライノウイルスベクター。
【請求項5】
インフルエンザウイルスHA0抗原が、中和免疫原(Neutralizing Immunogen)I(NimI)、中和免疫原II(NimII)、中和免疫原III(NimIII)、および中和免疫原IV(NimIV)からなる群より選択される中和免疫原の部位、またはこれらの部位のうちの複数に挿入されている、請求項1〜4いずれか一項記載のライノウイルスベクター。
【請求項6】
インフルエンザウイルスHA0抗原が、中和免疫原II(NimII)の部位に挿入されている、請求項5記載のライノウイルスベクター。
【請求項7】
インフルエンザウイルスHA0抗原が、NimIIのアミノ酸158とアミノ酸160の間に挿入されている、請求項6記載のライノウイルスベクター。
【請求項8】
インフルエンザウイルスHA0抗原の一方または両方の末端にリンカー配列が隣接している、請求項1〜7いずれか一項記載のライノウイルスベクター。
【請求項9】
生存型(live)である、請求項1〜8いずれか一項記載のライノウイルスベクター。
【請求項10】
不活化されている、請求項1〜8いずれか一項記載のライノウイルスベクター。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか一項記載のライノウイルスベクターと、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項12】
アジュバントをさらに含む、請求項11記載の薬学的組成物。
【請求項13】
一つまたは複数の付加的な活性成分をさらに含む、請求項11または12いずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項14】
M2e配列および/またはHA0配列と融合したB型肝炎コアタンパク質をさらに含む、請求項11〜13いずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項15】
HA0ペプチドを含むライノウイルスベクターと、M2eペプチドを含むライノウイルスベクターとを含む、請求項11〜14いずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項16】
請求項11〜15いずれか一項記載の薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、対象におけるインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘導する方法。
【請求項17】
対象が、インフルエンザウイルス感染を有していないが、該感染を発症するリスクを有している、請求項16記載の方法。
【請求項18】
対象が、インフルエンザウイルス感染を有している、請求項16記載の方法。
【請求項19】
組成物が対象に鼻腔内投与される、請求項16〜18いずれか一項記載の方法。
【請求項20】
対象がヒトである、請求項16〜19いずれか一項記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜10いずれか一項記載のライノウイルスベクターと、薬学的に許容される担体または希釈剤とを混合する工程を含む、薬学的組成物を作成する方法。
【請求項22】
請求項1〜10いずれか一項記載のライノウイルスベクターのゲノムをコードするか、または該ゲノムに相当する核酸分子。
【請求項23】
挿入されたインフルエンザウイルスHA0抗原を含む、NimIIペプチド。
【請求項24】
以下の工程を含む、インフルエンザウイルスHA0抗原を含むライノウイルスベクターを生成する方法:
(i)挿入されたインフルエンザウイルスHA0抗原配列を含む感染性cDNAクローンに基づく組換えライノウイルスベクターのライブラリーを生成する工程;および
(ii)(a)継代の際に挿入された配列を維持し、かつ(b)挿入された配列に対する抗体によって中和される組換えウイルスを、ライブラリーから選択する工程。
【請求項25】
ライノウイルスベクターがヒトライノウイルス14(HRV14)である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
挿入されたインフルエンザ抗原配列が、NimI、NimII、NimIII、およびNimIVからなる群より選択される位置に挿入されている、請求項24または25いずれか一項記載の方法。
【請求項27】
インフルエンザウイルスM2e配列の挿入をさらに含む、請求項24〜26いずれか一項記載の方法。
【請求項28】
挿入されたインフルエンザウイルスHA0抗原配列の一方または両方の末端にランダムリンカー配列が隣接している、請求項24〜27いずれか一項記載の方法。
【請求項29】
HeLa細胞またはMRC-5細胞においてベクターを継代する工程を含む、インフルエンザウイルスHA0抗原を含むライノウイルスベクターを培養する方法。
【請求項30】
本明細書に記載されるような免疫原を含む、本明細書に記載されるようなライノウイルスベクター。
【請求項1】
インフルエンザウイルスHA0抗原を含むライノウイルスベクター。
【請求項2】
ヒトにおいて病原性でない、請求項1記載のライノウイルスベクター。
【請求項3】
ヒトライノウイルス14(HRV14)である、請求項2記載のライノウイルスベクター。
【請求項4】
M2eペプチドをさらに含む、請求項1〜3いずれか一項記載のライノウイルスベクター。
【請求項5】
インフルエンザウイルスHA0抗原が、中和免疫原(Neutralizing Immunogen)I(NimI)、中和免疫原II(NimII)、中和免疫原III(NimIII)、および中和免疫原IV(NimIV)からなる群より選択される中和免疫原の部位、またはこれらの部位のうちの複数に挿入されている、請求項1〜4いずれか一項記載のライノウイルスベクター。
【請求項6】
インフルエンザウイルスHA0抗原が、中和免疫原II(NimII)の部位に挿入されている、請求項5記載のライノウイルスベクター。
【請求項7】
インフルエンザウイルスHA0抗原が、NimIIのアミノ酸158とアミノ酸160の間に挿入されている、請求項6記載のライノウイルスベクター。
【請求項8】
インフルエンザウイルスHA0抗原の一方または両方の末端にリンカー配列が隣接している、請求項1〜7いずれか一項記載のライノウイルスベクター。
【請求項9】
生存型(live)である、請求項1〜8いずれか一項記載のライノウイルスベクター。
【請求項10】
不活化されている、請求項1〜8いずれか一項記載のライノウイルスベクター。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか一項記載のライノウイルスベクターと、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項12】
アジュバントをさらに含む、請求項11記載の薬学的組成物。
【請求項13】
一つまたは複数の付加的な活性成分をさらに含む、請求項11または12いずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項14】
M2e配列および/またはHA0配列と融合したB型肝炎コアタンパク質をさらに含む、請求項11〜13いずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項15】
HA0ペプチドを含むライノウイルスベクターと、M2eペプチドを含むライノウイルスベクターとを含む、請求項11〜14いずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項16】
請求項11〜15いずれか一項記載の薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、対象におけるインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘導する方法。
【請求項17】
対象が、インフルエンザウイルス感染を有していないが、該感染を発症するリスクを有している、請求項16記載の方法。
【請求項18】
対象が、インフルエンザウイルス感染を有している、請求項16記載の方法。
【請求項19】
組成物が対象に鼻腔内投与される、請求項16〜18いずれか一項記載の方法。
【請求項20】
対象がヒトである、請求項16〜19いずれか一項記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜10いずれか一項記載のライノウイルスベクターと、薬学的に許容される担体または希釈剤とを混合する工程を含む、薬学的組成物を作成する方法。
【請求項22】
請求項1〜10いずれか一項記載のライノウイルスベクターのゲノムをコードするか、または該ゲノムに相当する核酸分子。
【請求項23】
挿入されたインフルエンザウイルスHA0抗原を含む、NimIIペプチド。
【請求項24】
以下の工程を含む、インフルエンザウイルスHA0抗原を含むライノウイルスベクターを生成する方法:
(i)挿入されたインフルエンザウイルスHA0抗原配列を含む感染性cDNAクローンに基づく組換えライノウイルスベクターのライブラリーを生成する工程;および
(ii)(a)継代の際に挿入された配列を維持し、かつ(b)挿入された配列に対する抗体によって中和される組換えウイルスを、ライブラリーから選択する工程。
【請求項25】
ライノウイルスベクターがヒトライノウイルス14(HRV14)である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
挿入されたインフルエンザ抗原配列が、NimI、NimII、NimIII、およびNimIVからなる群より選択される位置に挿入されている、請求項24または25いずれか一項記載の方法。
【請求項27】
インフルエンザウイルスM2e配列の挿入をさらに含む、請求項24〜26いずれか一項記載の方法。
【請求項28】
挿入されたインフルエンザウイルスHA0抗原配列の一方または両方の末端にランダムリンカー配列が隣接している、請求項24〜27いずれか一項記載の方法。
【請求項29】
HeLa細胞またはMRC-5細胞においてベクターを継代する工程を含む、インフルエンザウイルスHA0抗原を含むライノウイルスベクターを培養する方法。
【請求項30】
本明細書に記載されるような免疫原を含む、本明細書に記載されるようなライノウイルスベクター。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18−1】
【図18−2】
【図18−3】
【図19−1】
【図19−2】
【図19−3】
【図19−4】
【図20−1】
【図20−2】
【図20−3】
【図20−4】
【図21−1】
【図21−2】
【図21−3】
【図21−4】
【図22−1】
【図22−2】
【図22−3】
【図22−4】
【図23−1】
【図23−2】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18−1】
【図18−2】
【図18−3】
【図19−1】
【図19−2】
【図19−3】
【図19−4】
【図20−1】
【図20−2】
【図20−3】
【図20−4】
【図21−1】
【図21−2】
【図21−3】
【図21−4】
【図22−1】
【図22−2】
【図22−3】
【図22−4】
【図23−1】
【図23−2】
【公表番号】特表2011−517408(P2011−517408A)
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501841(P2011−501841)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/001941
【国際公開番号】WO2009/120380
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(503389389)サノフィ パスツール バイオロジクス カンパニー (17)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/001941
【国際公開番号】WO2009/120380
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(503389389)サノフィ パスツール バイオロジクス カンパニー (17)
【Fターム(参考)】
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