説明

組換え毒素フラグメント

【課題】クロストリジウム菌毒素の生成および取扱いに伴う問題を克服または少なくとも改善すること。
【解決手段】第1ドメインおよび第2ドメインを含む一本鎖ポリペプチドが提供される。第1ドメインは、エキソサイトーシスに必須の1以上の小胞または形質膜結合タンパク質を切断し得るクロストリジウム菌神経毒素軽鎖またはそのフラグメントもしくは改変体であり;そして第2ドメインは、ポリペプチドを細胞にトランスロケートする、第1ドメイン自体の溶解性と比較してポリペプチドの溶解性を増加させる、またはその両方であり得るクロストリジウム菌神経毒素重鎖H部分またはそのフラグメントもしくは改変体、および別のペプチド上に存在する分子クランプペプチド相補配列と非共有結合性の結合を形成する分子クランプペプチド配列であり、それによって第2ドメインを別のペプチドにカップリングさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換え毒素フラグメント、これらのフラグメントをコードするDNA、ならびにワクチンにおけるおよびインビトロおよびインビボ目的でのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
クロストリジウム菌神経毒素は、神経細胞におけるカルシウム依存的神経伝達物質分泌の強力なインヒビターである。これらは、現在、神経伝達物質分泌の小胞ドッキングおよび膜融合事象の中心にある、VAMP、シンタキシン、またはSNAP-25の3つの小胞または前シナプス膜結合タンパク質うちの少なくとも1つの特異的なタンパク質内分解切断によってこの活性を媒介すると考えられている。破傷風菌神経毒素およびボツリヌス菌神経毒素の神経細胞ターゲティングは、レセプター媒介事象であると考えられ、その後、毒素は、インターナライズされ、そして続いて適切な細胞内コンパートメントに移り、そこでエンドペプチダーゼ活性を発揮する。
【0003】
クロストリジウム菌神経毒素は、レセプター結合およびトランスロケーションH鎖(HC、約100kDa)にジスルフィド結合した触媒L鎖(LC、約50kDa)の共通の構成物を有する。HCポリペプチドは、2つの異なる機能的ドメインのすべてまたは一部を含むと考えられる。Hドメインと命名したHCのカルボキシ末端半分(約50kDa)は、標的ニューロンにおける細胞表面レセプターへの神経毒素の高親和性の神経特異的結合に関連し、一方、Hドメインと命名したアミノ末端半分(約50kDa)は、神経毒素の少なくともいくつかの部分の細胞膜を横切るトランスロケーションを媒介すると考えられ、そのためLCの機能的活性が標的細胞内で発現される。Hドメインはまた、低pH条件下で、脂質膜においてイオン透過性チャネルを形成する特性を有し、そしてこれは、いくつかの様式で、そのトランスロケーション機能に関連し得る。
【0004】
ボツリヌス菌神経毒素A型(BoNT/A)については、Hについてはアミノ酸残基872〜1296、Hについてはアミノ酸残基449〜871、およびLCについては残基1〜448内に、これらのドメインがあると考えられる。トリプシンでの消化は、BoNT/AのHドメインを効果的に分解して、LHと命名された非毒性フラグメントを生成し、これはもはやニューロンに結合および侵入し得ない(図1)。このように生成されたLHフラグメントもまた、親のホロ毒素および単離されたLCの両方と比較して増強された溶解性の特性を有する。
【0005】
したがって、神経毒素分子内のドメインの機能的定義を、以下のように提供することができる:
(A)クロストリジウム菌神経毒素軽鎖:
エキソサイトーシス過程に関連する小胞および/または形質膜結合タンパク質に高い基質特異性を示す、メタロプロテアーゼ。特に、これは、SNAP-25、VAMP(シナプトブレビン/セルブレビン)、およびシンタキシンの1つ以上を切断する。
【0006】
(B)クロストリジウム菌神経毒素重鎖Hドメイン:
重鎖の一部であって、これは、軽鎖活性の機能的発現が標的細胞内で起きるように、神経毒素分子のこの一部のトランスロケーションを可能にする。
【0007】
結合ドメインを介して神経毒素がその特異的細胞表面レセプターへ結合した後、標的細胞へのエンドペプチダーゼ活性のトランスロケーションの原因となるドメイン。
【0008】
低pH条件下で脂質膜においてイオン透過性孔の形成の原因となるドメイン。
【0009】
軽鎖単独の溶解性と比較して、ポリペプチド全体の溶解性を増加させる原因となるドメイン。
【0010】
(C)クロストリジウム菌神経毒素重鎖Hドメイン:
細胞への毒素のインターナリゼーションの前の、クロストリジウム菌毒素の中毒作用に関連する細胞表面レセプターへの天然のホロ毒素の結合の原因である重鎖の一部。
【0011】
これらの毒素に対する細胞認識マーカーの同一性は、現在理解されておらず、そして特異的レセプター種は未だ同定されていないが、Kozakiらは、シナプトタグミンがボツリヌス菌神経毒素B型に対するレセプターであり得ることを報告している。神経毒素のそれぞれが異なるレセプターを有するようである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
毒素アッセイのための陽性コントロールを有すること、クロストリジウム菌毒素ワクチンを開発すること、およびクロストリジウム菌毒素の所望の特性を組み込む治療剤を開発することが所望される。
【0013】
しかし、その極端な毒性のため、天然の毒素の取り扱いは危険である。
【0014】
本発明は、クロストリジウム菌毒素の生成および取り扱いに関連する問題を克服または少なくとも改善するために探求される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、第1ドメインおよび第2ドメインを含む一本鎖ポリペプチドを提供し、該ポリペプチドは、
該第1ドメインが、クロストリジウム菌神経毒素軽鎖またはそのフラグメントもしくは改変体であり、該第1ドメインが、エキソサイトーシスに必須の1以上の小胞または形質膜結合タンパク質を切断することが可能であり;そして
該第2ドメインが、以下であり:
(i)クロストリジウム菌神経毒素重鎖H部分またはそのフラグメントもしくは改変体であり、該第2ドメインが、
(a)該ポリペプチドを細胞にトランスロケートし、または
(b)該第1ドメイン自体の溶解性と比較して該ポリペプチドの溶解性を増加させ、または
(c)該ポリペプチドを細胞にトランスロケートしそして該第1ドメイン自体の溶解性と比較して該ポリペプチドの溶解性を増加させる両方が可能であり;および
(ii)分子クランプペプチド配列であり、該分子クランプペプチド配列が、別のペプチド上に存在する分子クランプペプチド相補配列と非共有結合を形成し、それによって該第2ドメインを該別のペプチドにカップリングさせ、
そして該第2ドメインが、Hと命名されたクロストリジウム菌神経毒素重鎖の機能的C末端部分を欠き、それによって該ポリペプチドが、天然のクロストリジウム菌神経毒素が結合する天然の細胞表面レセプターである細胞表面レセプターに結合できなくなる。
【0016】
1つの実施態様では、上記第2ドメインの分子クランプペプチド配列は、該第2ドメインのC末端に位置している。
【0017】
1つの実施態様では、上記分子クランプペプチド配列の相補対は、ロイシンジッパー、多イオン性ペプチド、ブドウ球菌のプロテインAの合成IgG結合ドメイン、および/またはインテインの自己切断配列から選択される。
【0018】
1つの実施態様では、上記一本鎖ポリペプチドは、配列番号60、62、64、66、68、116、118、120、および122から選択される配列を含む。
【0019】
1つの実施態様では、上記一本鎖ポリペプチドは、タンパク質分解酵素による切断部位を含み、該切断部位は、上記第1ドメインと上記第2ドメインとの間のタンパク質分解切断を可能とする。
【0020】
さらなる実施態様では、上記切断部位は、天然のクロストリジウム菌神経毒素に存在しない。
【0021】
さらなる実施態様では、上記切断部位は、上記第1ドメインおよび上記第2ドメインのタンパク質分解切断を可能にし、そしてそのように切断される場合、該第1ドメインは、該タンパク質分解切断前の前記ポリペプチドが示す1以上の小胞または形質膜結合タンパク質を切断する酵素活性よりも大きい酵素活性を示す。
【0022】
1つの実施態様では、上記第2ドメインは、Hと命名されたクロストリジウム菌神経毒素重鎖のC末端部分を欠く。
【0023】
1つの実施態様では、上記別のペプチドは、上記ポリペプチドを細胞に結合する第3ドメインを含み、該結合が、該第3ドメインの細胞への直接の結合によって、あるいは細胞に結合する1または複数のリガンドへの該第3ドメインの結合によって行われ、該別のペプチドは、上記分子クランプペプチド配列の相補対によって、上記一本鎖ポリペプチドの上記第2ドメインに、非共有結合で結合されている。
【0024】
さらなる実施態様では、上記第3ドメインは、上記ポリペプチドを免疫グロブリンに結合するためのものであり、好ましくは上記第3ドメインは、ブドウ球菌のプロテインAのドメインbに由来するタンデムリピート合成IgG結合ドメインであり、または上記第3ドメインは、細胞表面レセプターに結合するアミノ酸配列を含み、または上記第3ドメインは、インスリン様増殖因子1(IGF−1)である。
【0025】
1つの実施態様では、上記一本鎖ポリペプチドは、アフィニティーマトリクスに結合する精製タグをさらに含み、それによって該マトリクスを用いる前記ポリペプチドの精製を容易にする。
【0026】
本発明はまた、上記ポリペプチドをコードする、核酸を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ボツリヌス菌神経毒素A型(BoNT/A)のドメイン構造の模式図を示す。
【図2】LH423/Aと命名した本発明の実施態様についての遺伝子のアセンブリの模式図を示す。
【図3】インビトロペプチド切断アッセイにおいて、天然の毒素、トリプシンで生成した「天然の」LH/A、およびLH423/A(QE,N26K,A27Y)と命名した本発明の実施態様の活性を比較するグラフである。
【図4】天然の毒素の公表された配列の最初の33アミノ酸と本発明の実施態様との比較である。
【図5】L/423/Aと命名された本発明の実施態様の転位領域を示し、H配列のN末端の4つのアミノ酸の挿入を示す;Eco 47 III制限エンドヌクレアーゼ切断部位によってコードされるアミノ酸に印をつけ、そしてH配列はALN...で始まる。
【図6】LFXa/3423/Aと命名された本発明の実施態様の転位領域を示し、L鎖のC末端の第Xa因子切断部位の挿入、およびH配列のN末端にコードされる3つの付加アミノ酸を示す;切断活性化したHのN末端アミノ酸はシステインである。
【図7】融合タンパク質であるLFXa/3423/A−IGF−1と命名された本発明の実施態様のアミノ酸配列のC末端部分を示す;IGF−1配列はG882位で始まる。
【図8】融合タンパク質であるLFXa/3423/A−CtxA14と命名された本発明の実施態様のアミノ酸配列のC末端部分を示す;C末端CtxA配列はQ882位で始まる。
【図9】融合タンパク質であるLFXa/3423/A−ZZと命名された本発明の実施態様のアミノ酸配列のC末端部分を示す;C末端ZZ配列は、ジェネナーゼ認識部位(下線)のすぐ後のA890位で始まる。
【図10】本発明のポリペプチドの操作の模式図を示す;アフィニティー精製ペプチド(この場合はGST)のN末端付加およびIg結合ドメインのC末端付加を有するLH423/Aを示す;プロテアーゼ切断部位R1、R2、およびR3は、ドメインの選択的酵素分離を可能にする。
【図11】本発明のポリペプチドの操作の模式図を示す;プロテアーゼ切断部位R1、R2、およびR3ならびにC末端融合ペプチド配列の特定の例を示す。
【図12】本発明のポリペプチドのトリプシン感受性活性化領域を示す。
【図13】大腸菌から発現した組換えLH107/Bのウエスタンブロット分析を示す;パネルAは、抗BoNT/B抗血清でプローブした;レーン1、分子量標準;レーン2および3、天然のBoNT/B;レーン4、免疫精製したLH107/B;パネルBは、抗T7ペプチドタグ抗血清でプローブした;レーン1、分子量標準;レーン2および3、陽性コントロールの大腸菌T7発現;レーン4、免疫精製したLH107/B。
【図14】本発明の融合タンパク質を示し、この融合タンパク質は、精製タグ(TAG)と第1ドメイン(L鎖)との間に2つの異なるタンパク質分解切断部位(E1およびE2)を含み、そして第1ドメイン(L鎖)と第2ドメイン(H)との間に二重のタンパク質分解切断部位(E2)を含む。E2プロテアーゼの使用により、2つの所定のE2切断部位での同時切断が生じて、第1および第2ドメインを含む二本鎖ポリペプチド分子を残すが、E1プロテアーゼの使用により、単一の所定のE1切断部位での切断が生じて、第1および第2ドメインを含む単一のポリペプチド鎖分子が残る。
【図15】第1および第2ドメイン(例えば、LH)を含むポリペプチドと、第3ドメイン(例えば、リガンド)を含む第2分子とを一緒に融合するための分子クランピング技術の使用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
したがって、本発明は、第1および第2ドメインを含むポリペプチドを提供し、該第1ドメインは、神経エキソサイトーシスに必須の1以上の小胞または形質膜結合タンパク質を切断するように適合され、そして該第2ドメインは、(i)該ポリペプチドを細胞にトランスロケートするように、または(ii)該第1ドメイン自体の溶解性と比較して該ポリペプチドの溶解性を増加させるように、または(iii)該ポリペプチドを細胞にトランスロケートしそして該第1ドメイン自体の溶解性と比較して該ポリペプチドの溶解性を増加させる両方に適合され、該ポリペプチドは、クロストリジウム菌神経毒素を含まず、そしてタンパク質分解作用によって毒素に変換され得るあらゆるクロストリジウム菌神経毒素前駆体を含まない。したがって、本発明は、クロストリジウム菌毒素軽鎖に等価なドメインおよびクロストリジウム菌毒素重鎖のHの機能的局面を提供するドメインを含むが、クロストリジウム菌毒素Hドメインの機能的局面を欠く、一本鎖ポリペプチドを提供し得る。
【0029】
好適な実施態様では、本発明は、第1および第2ドメインを含む一本鎖ポリペプチドを提供し、
該第1ドメインは、クロストリジウム菌神経毒素軽鎖またはそのフラグメントもしくは改変体であり、ここで該第1ドメインは、エキソサイトーシスに必須の1以上の小胞または形質膜結合タンパク質を切断し得;そして
該第2ドメインは、クロストリジウム菌神経毒素重鎖H部分またはそのフラグメントもしくは改変体であり、ここで該第2ドメインは、(i)該ポリペプチドを細胞にトランスロケートし、または(ii)該第1ドメイン自体の溶解性と比較して該ポリペプチドの溶解性を増加させ、または(iii)該ポリペプチドを細胞にトランスロケートしそして該第1ドメイン自体の溶解性と比較して該ポリペプチドの溶解性を増加させる両方が可能であり;そして該第2ドメインは、Hと命名されたクロストリジウム菌神経毒素重鎖の機能的C末端部分を欠き、それによって該ポリペプチドが、天然のクロストリジウム菌神経毒素が結合する天然の細胞表面レセプターである細胞表面レセプターに結合できなくなる。
【0030】
上記の好適な実施態様では、第1ドメインは、特定の切断機能の存在の必要条件によって認定される。この切断機能は、軽鎖(L鎖)成分が一本鎖ポリペプチド分子自体の一部である場合に存在し得る。あるいは、切断機能は、一本鎖ポリペプチド分子に実質的に潜在し得、そして第1ドメインと第2ドメインとの間の一本鎖ポリペプチドのタンパク質分解切断によって活性化されて、例えば、一緒にジスルフィド結合した第1および第2ドメインを含む二本鎖ポリペプチド分子を形成し得る。
【0031】
第1ドメインは、クロストリジウム菌神経毒素軽鎖(L鎖)に基づき、そしてこれらの成分が必要な切断機能を有する限り、該L鎖のフラグメントおよび改変体の両方を包含する。改変体の例は、1以上のアミノ酸残基が天然のクロストリジウム菌L鎖配列に関して変更されているL鎖(またはそのフラグメント)である。1つの実施態様では、改変は、1以上の保存的アミノ酸置換を包含し得る。他の改変は、天然のクロストリジウム菌L鎖配列に関して1以上のアミノ酸残基の除去または付加を包含し得る。しかし、あらゆるこのようなフラグメントまたは改変体は、前述の切断機能を保持しなければならない。
【0032】
クロストリジウム菌神経毒素の構造は、本発明の前に周知である−例えば、Kurazonoら(1992) J. Biol. Chem., 267, 21, 14721-14729頁を参照のこと。特に、Kurazonoの文献は、クロストリジウム菌神経毒素L鎖の切断活性(例えば、タンパク質分解酵素活性)に必要とされる最小ドメインを記載している。同様の議論は、Poulainら(1989) Eur. J. Biochem., 185, 197-203頁、Zhouら(1995), 34, 15175-15181頁、およびBlausteinら(1987), 226, 1号, 115-120頁により提供されている。
【0033】
例として、Kurazonoら(1992)の14726頁の表IIは、多くのL鎖欠失変異体を例示している(アミノ末端およびカルボキシ末端の両方のL鎖欠失変異体が例示されている)。問題のL鎖成分が必要な切断活性を有するならば、このような変異体は、例えば、類似アミノ酸欠失または保存的アミノ酸置換を含む他のL鎖変異体とともに、本発明の第1ドメインの定義に包含される。
【0034】
本出願の前に、多くの従来の簡単なアッセイが利用可能であり、所定のL鎖(または等価のL鎖成分)が必要な切断活性を有するかどうかを、当業者が日常的に確認できた。これらのアッセイは、機能的L鎖が、神経エキソサイトーシスに関連する特異的な小胞または形質膜結合タンパク質(例えば、シナプロブレビン、シンタキシン、SNAP-25)のペプチド切断を行う本来の能力に基づき、そしてこのタンパク質分解反応の切断された産物の存在についての簡単なテストである。
【0035】
例えば、間に合わせのアッセイでは、SNAP-25(またはシナプトブレビン、またはシンタキシン)は、テストするL鎖(または等価のL鎖成分)とともにチャレンジされ、次いでSDS-PAGEペプチド分離技法によって分析され得る。SNAP-25(または神経分泌機構の他の成分)の切断された産物に対応する分子量を有するペプチドの(例えば、銀染色による)その後の検出は、必要な切断活性を有するL鎖(または等価のL鎖成分)の存在を示す。
【0036】
代替のアッセイでは、SNAP-25(または異なる神経エキソサイトーシス分子)は、テストするL鎖(または等価のL鎖成分)とともにチャレンジされ、そして切断産物は、本願の出願人であるMicrobiological Research Authorityの名義でPCT/GB95/01279(すなわち、WO95/33850)に記載されるように、抗体検出に供される。より詳細には、SNAP-25の切断を検出するための特異的抗体が用いられ、この抗体は、切断されたSNAP-25を認識するが切断されていないSNAP-25を認識しない。抗体によって切断された産物の同定は、必要な切断活性を有するL鎖(または等価のL鎖成分)の存在を確認する。例として、このような方法は、これもまたMicrobiological Research Authorityの名義のPCT/GB96/00916(すなわち、WO96/33273)の実施例2および3に記載されている。
【0037】
本発明の好適な実施態様では、第2ドメインは、2つの機能、すなわち(i)トランスロケーションおよび/または(ii)第1ドメインの増加した溶解性、の1つまたは両方を提供する能力によって認定される。
【0038】
第2ドメインは、クロストリジウム菌神経毒素のH部分に基づき、この部分は、文献に広く記載されそして特徴付けられている。特定の記載がKurazonoら(1992)になされており、そこでは、クロストリジウム菌神経毒素重鎖の構造が、そのHおよびH部分と関連する機能とともに議論されている[例えば、Kurazonoら(1992)の14722頁の図1の下の図を参照のこと]。より詳細には、Hドメインは、小胞のエンドソーム膜を横切ってクロストリジウム菌L鎖をトランスロケートするように機能するクロストリジウム菌神経毒素のドメインであり、そしてクロストリジウム菌神経毒素のHドメインと同義である[Poulain, B.ら(1989)の197頁の左下欄および脚部;Blaustein, R.ら(1987)の図1;およびShone, C.ら(1987), Eur. J. Biochem., 167, 175-180頁の178〜179頁にまたがる文を参照のこと]。
【0039】
本発明の第2ドメインの定義は、これらの成分が必要な(i)トランスロケーションおよび/または(ii)改善された溶解性機能を提供する限り、クロストリジウム菌神経毒素のH部分のフラグメントおよび改変体を包含する。改変体の例は、1以上のアミノ酸残基が天然のクロストリジウム菌Hドメイン配列に関して変更されているH部分(またはそのフラグメント)である。1つの実施態様では、改変は、1以上の保存的アミノ酸置換を包含し得る。他の改変は、天然のクロストリジウム菌H配列に関する1以上のアミノ酸残基の除去または付加を包含し得る。しかし、あらゆるこのようなフラグメントまたは改変体は、上述の(i)トランスロケーションおよび/または(ii)改善された溶解性機能を提供しなければならない。
【0040】
(i)トランスロケーションおよび(ii)改善された溶解性機能を、ここでより詳細に説明する。
【0041】
本出願の前に、多くの従来の簡単なアッセイが利用可能であり、特定のクロストリジウム菌神経毒素H部分(または等価のH成分)が必要なトランスロケーション機能を有するかどうかを、当業者が日常的に確認できた。これに関して、Shoneら(1987)およびBlausteinら(1987)に記載されるアッセイに対して特定の記載がなされており、ここで議論する。
【0042】
これらの文献は、クロストリジウム菌神経毒素のトランスロケーション機能の研究を記載し、そしてこの神経毒素がチャネルを形成する能力が、トランスロケーション機能の存在に関連することを証明している。
【0043】
Shoneら(1987)は、リン酸カリウム緩衝液(pH7.2)および放射標識したNADを充填した人工リポソームを用いるアッセイを記載している。したがって、クロストリジウム菌神経毒素のテストするH部分(または等価のH鎖成分)が必要なトランスロケーション機能を有するかどうかを確認するために、人工リポソームは、テストするH部分とともにチャレンジされる。リポソームからのKおよびNADの放出は、チャネル形成活性、したがって、トランスロケーション機能の存在の指標である。
【0044】
代替のアッセイが、Blausteinら(1987)に記載されており、ここでは、平面のリン脂質二層膜を用いてチャネル形成活性についてテストされている。膜のいずれかの側の塩溶液は、シス側はpH4.7または5.5およびトランス側はpH7.4の異なるpHに緩衝化されている。したがって、クロストリジウム菌神経毒素のH部分(または等価のH鎖成分)が必要なトランスロケーション機能を有するかどうかを確認するために、テストするH部分は、膜のシス側に添加されて、膜を横切る電流をモニターするために、電位固定条件下で電気測定が行われる(116〜118頁の2.2段落を参照のこと)。所望のトランスロケーション活性の存在は、チャネルターンオンの定常速度によって確認される(118頁の3段落を参照のこと)。
【0045】
ここで第2の重鎖機能、すなわち(ii)第1ドメインの増加した溶解性に話を変える。クロストリジウム菌神経毒素L鎖分子の調製に関連する従来の問題は、このL鎖分子が、一般的に溶解性に乏しい特徴を有することである。したがって、本発明の1つの実施態様では、第2ドメイン(クロストリジウム菌神経毒素のH部分に基づく)のL鎖への融合は、L鎖の溶解性を増加させる。同様に、第2ドメインのL鎖等価分子(例えば、L鎖のフラグメントまたは改変体)への付加は、L鎖等価分子の溶解性を増加させる。
【0046】
本出願の前に、多くの従来の簡単なアッセイが利用可能であり、特定のクロストリジウム菌神経毒素H部分(または等価のH成分)がL鎖(または等価のL鎖成分)の溶解性を増加させるために必要な能力を有するかどうかを、当業者が日常的に確認できた。溶解性を評価するための最も普通の方法は、遠心分離の使用、次いで一連のタンパク質決定方法による。例えば、発現したクロストリジウム菌エンドペプチダーゼを含む溶解した大腸菌細胞を、25,000×gで15分間遠心分離して細胞破砕物をペレットにし、そしてタンパク質材料を凝集させる。上清(可溶性タンパク質を含む)の除去後、細胞破砕物は、(乏しい溶解性のタンパク質を可溶化するために)SDS含有試料緩衝液中で再構成されて、SDS-PAGEによって2つの画分が分析され得る。電気泳動したタンパク質のクーマシーブルー染色、次いで関連のタンパク質バンドのデンシトメトリー分析は、発現したタンパク質の溶解性の半定量分析を容易にする。
【0047】
本発明の好適な実施態様によれば、一本鎖ポリペプチド分子のさらなる必要条件は、第2ドメインがHと命名されたクロストリジウム菌神経毒素重鎖の機能的C末端部分を欠くことであり、それによって、このポリペプチドが、天然のクロストリジウム菌神経毒素が結合する天然の細胞表面レセプターである細胞表面レセプターに結合できなくなる。この必要条件は、ここでより詳細に議論され、そして本明細書を通して結合できないというときは、天然のクロストリジウム菌神経毒素と比較した場合に、実質的に結合できないまたは結合能力が減少していると解釈されるべきである。
【0048】
例えば、上記の文献およびその他には、天然のクロストリジウム菌神経毒素が、毒素重鎖のHドメインおよび標的細胞上の特異的レセプターに関連する結合相互作用によって、特異的標的細胞に結合することが十分に論じられている。
【0049】
しかし、天然の神経毒素とは逆に、本発明の好適な実施態様の一本鎖ポリペプチド分子は、天然のクロストリジウム菌神経毒素の機能的Hドメインを欠く。したがって、本発明の好適な一本鎖ポリペプチド分子は、天然のクロストリジウム菌神経毒素によってターゲティングされる特異的レセプターに結合できない。
【0050】
本出願の前に、多くの従来の簡単なアッセイが利用可能であり、特定のクロストリジウム菌神経毒素H部分(または等価のH成分)が天然のクロストリジウム菌神経毒素の結合能力を欠くかどうかを、当業者が日常的に確認できた。これに関して、Shoneら(1985) Eur. J. Biochem., 151(1), 75-82頁、ならびにBlackおよびDolly(1986) J. Cell. Biol., 103, 521-534頁に記載されるアッセイに対して特定の記載がなされている。基本的なShoneら(1985)の方法は、破傷風菌毒素の結合能力を評価するために、近年、Suttonら(2001), 493, 45-49頁に報告されている。
【0051】
これらの文献は、クロストリジウム菌神経毒素のH鎖のその標的細胞である運動ニューロンへの結合を評価するための簡単な方法を記載している。したがって、これらの方法は、H鎖に対する改変により運動ニューロンに対するH鎖の天然の結合親和性がなくなるかまたは減少するかどうかを日常的に決定するための手段を提供する。この方法は、ここでより詳細に議論される。
【0052】
Shoneら(1985)の方法は、競合結合アッセイに基づき、そこでは、テストする神経毒素H鎖フラグメントが、精製ラット大脳皮質シナプトソーム(すなわち、天然の毒素標的細胞)に結合する能力において、放射標識した天然の神経毒素と比較される。H機能(すなわち、結合能力)の減少は、テストするH鎖フラグメントが、シナプトソームへの結合に対して、標識された未処理の毒素と競合する能力が減少することによって証明される(76頁1欄51行目〜2欄5行目を参照のこと)。
【0053】
Suttonら(2001)は、放射標識した未処理の破傷風菌神経毒素(TeNT)および非標識の部位特異的(TeNT)変異体を用いる類似の競合結合実験を行った。上記のように、アッセイにおける陽性の結果は、変異体フラグメントが、シナプトソームへの結合に対して、標識されたTeNTと競合する能力がないことによって証明される。
【0054】
代替のアプローチは、BlackおよびDolly(1986)によって記載され、この方法は、電子顕微鏡オートラジオグラフィーを用いて、インビボおよびインビトロの両方で、脊椎動物神経筋接合部での放射標識されたクロストリジウム菌神経毒素の結合を可視的に評価する。したがって、このアッセイは、テストするHドメイン(または等価のH成分)が機能的Hドメインを欠くかどうかを確認するための簡単な可視方法を示す。
【0055】
機能的Hドメインを欠く第2ドメインが調製され得る多くの方法がある。これに関して、Hドメインの不活性化は、アミノ酸レベルで(例えば、誘導体化用化学品、またはタンパク質分解酵素の使用によって)、または核酸レベルで(例えば、部位特異的変異誘発、ヌクレオチド挿入または欠失または改変の使用によって、あるいは短縮型核酸の使用によって)達成され得る。
【0056】
例えば、Hドメインの除去または改変に適切な従来の誘導体化用化学品またはタンパク質分解剤を選択することは、当業者には日常的である。標準的な誘導体化用化学品またはタンパク質分解剤は当該技術分野で容易に利用可能であり、そしてこの化学/薬剤が、上記のような多くの簡単なテストのいずれか1つを行うことによって、天然の結合親和性が減少または除去されたHドメインを提供することを確認することは、当業者には日常的である。
【0057】
従来の誘導体化用化学品としては、以下のいずれか1つが挙げられ得、これは、非網羅的な例のリストを形成する:
(1)無水物、より詳細にはマレイン酸無水物のような、チロシン誘導体化用化学品;
(2)ビス-ジアゾ化o-トリジン、およびジアゾ化p-アミノベンゾイルビオシチンのような、ジアゾニウムに基づく誘導体化用化学品;
(3)EDC(1-エチル1-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸);
(4)テトラニトロメタン続いて亜ジチオン酸ナトリウムでの二重の処理のような、イソシアネートに基づく誘導体化用化学品;および
(5)クロラミン-T(N-クロロトルエンスルホンアミド)またはIODO-GEN(1,3,4,6-テトラクロロ-3a,ba-ジフェニルグリコウリル)のような、ヨウ素化誘導体化用化学品。
【0058】
従来のタンパク質分解剤としては、以下のいずれか1つが挙げられ得、これは、非網羅的な例のリストを形成する:
(1)トリプシン[Shoneら(1985)に示される];
(2)プロリンエンドペプチダーゼ;
(3)lysCプロテイナーゼ;
(4)キモトリプシン;
(5)サーモリシン;および
(6)argCプロテイナーゼ。
【0059】
あるいは、従来の核酸変異誘発方法が用いられて、機能的Hドメインを欠く第2ドメインをコードする改変された核酸配列を生成し得る。例えば、Kurazonoら(1992)に記載されるような変異誘発方法が用いられ得る。DNAの変異誘発のための一連のシステムが利用可能であり、これは、Kunkel T.(1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488-492頁;Taylor, J. W.ら(1985) Nucleic Acids Res. 13, 8749-8764頁 (1995);ならびに、Deng G.およびNickeloff J. A.(1992) Anal. Biochem., 200, 81-88頁に記載のDNA操作技法に基づく。
【0060】
本発明のすべての一般的な局面によれば、本発明のポリペプチドは、可溶性であり得るが、天然の毒素のトランスロケーション機能を欠く−これは、毒素によるチャレンジに対して個体をワクチン接種するまたはワクチン接種を補助するための免疫源を提供することに使用される。以下の実施例に記載される本発明の特定の実施態様では、LH423/Aと命名されたポリペプチドは、神経毒素A型に対する中和抗体を惹起した。したがって、本発明のポリペプチドは、同様に、比較的不溶性であり得るが、天然の毒素のトランスロケーション機能を保持する−これは、溶解性が、1以上の他の成分によって、ポリペプチドと1以上の他の成分とからなる組成物に付与される場合に使用される。
【0061】
本発明のポリペプチドの第1ドメインは、エキソサイトーシスの特異的な細胞プロセスに必須の1以上の小胞または形質膜結合タンパク質を切断し、そしてこれらのタンパク質の切断により、代表的には、非細胞傷害様式で、エキソサイトーシスが阻害される。影響を受けた1または複数の細胞は、特定のタイプまたはサブグループに制限されないが、神経および非神経の両方の細胞を包含し得る。クロストリジウム菌神経毒素がエキソサイトーシスを阻害する活性は、実際、Aplysia(アメフラシ)、Drosophila(ショウジョウバエ)、および哺乳動物の神経細胞のような多様な細胞を包含する、関連の細胞表面レセプターを発現する真核生物細胞に、ほとんど普遍的に観察されており、そして第1ドメインの活性は、対応する範囲の細胞を含むように理解されるべきである。
【0062】
本発明のポリペプチドは、組換え核酸、好ましくはDNAの発現によって得られ得、そして一本鎖ポリペプチドであり、言い換えると、別々の軽鎖および重鎖ドメインに切断されていない。したがって、ポリペプチドは、組換え技法を用いて便利におよび大量に入手可能である。
【0063】
本発明のポリペプチドにおいて、この第1ドメインは、好ましくは、クロストリジウム菌毒素軽鎖またはクロストリジウム菌毒素軽鎖のフラグメントもしくは改変体を含む。フラグメントは、エキソサイトーシスに必須の小胞または形質膜結合タンパク質を切断する能力を実質的に保持する限り、必要に応じて、軽鎖のN末端またはC末端フラグメントであり、あるいは内部フラグメントである。クロストリジウム菌毒素の軽鎖の活性に必要な最小ドメインは、J. Biol. Chem., 267巻, 21号, 1992年7月, 14721-14729頁に記載されている。改変体は、軽鎖またはフラグメントとは異なるペプチド配列を有するが、これもまた小胞または形質膜結合タンパク質を切断し得る。便利には、軽鎖またはそのフラグメントの挿入、欠失、および/または置換によって得られる。以下の記載の本発明の実施態様では、改変体配列は、(i)クロストリジウム菌毒素軽鎖またはフラグメントに対するN末端伸長、(ii)少なくとも1つのアミノ酸の変更によって改変されたクロストリジウム菌毒素軽鎖またはフラグメント、(iii)クロストリジウム菌毒素軽鎖またはフラグメントに対するC末端伸長、または(iv)(i)〜(iii)の2以上の組み合わせを含む。
【0064】
第1ドメインは、好適には、SNAP-25、シナプトブレビン/VAMP、およびシンタキシンの1以上から選択される基質に特異的なエンドペプチダーゼ活性を示す。クロストリジウム菌毒素は、好適には、ボツリヌス菌毒素または破傷風菌毒素である。
【0065】
以下の実施例に記載の本発明の1つの実施態様では、毒素軽鎖および毒素重鎖の部分は、ボツリヌス菌毒素A型由来である。以下の実施例に記載の本発明のさらなる実施態様では、毒素軽鎖および毒素重鎖の部分は、ボツリヌス菌毒素B型由来である。ポリペプチドは、必要に応じて、1つの毒素型の軽鎖またはフラグメントまたは改変体および他の毒素型の重鎖またはフラグメントまたは改変体を含む。
【0066】
本発明のポリペプチドでは、第2ドメインは、好適には、クロストリジウム菌毒素重鎖H部分またはクロストリジウム菌毒素重鎖H部分のフラグメントもしくは改変体を含む。フラグメントは、Hドメインの機能を保持する限り、必要に応じて、N末端またはC末端または内部フラグメントである。その機能の原因であるH内の領域の教示は、例えば、Biochemistry 1995, 34, 15175-15181頁およびEur. J. Biochem, 1989, 185, 197-203頁に提供される。改変体は、Hドメインまたはフラグメントとは異なる配列を有するが、これもまたHドメインの機能を保持する。便利には、Hドメインまたはそのフラグメントの挿入、欠失、および/または置換によって得られる。以下に記載の本発明の実施態様では、これは、(i)Hドメインまたはフラグメントに対するN末端伸長、(ii)Hドメインまたはフラグメントに対するC末端伸長、(iii)少なくとも1つのアミノ酸の変更によるHドメインまたはフラグメントへの改変、または(iv)(i)〜(iii)の2以上の組み合わせを含む。クロストリジウム菌毒素は、好適には、ボツリヌス菌毒素または破傷風菌毒素である。
【0067】
本発明はまた、クロストリジウム菌神経毒素軽鎖およびクロストリジウム菌神経毒素重鎖のN末端フラグメントを含むポリペプチドを提供し、このフラグメントは、好適には、ボツリヌス菌毒素A型の重鎖のN末端アミノ酸の少なくとも423個、ボツリヌス菌毒素B型の重鎖のN末端アミノ酸の少なくとも417個、または他の型のクロストリジウム菌毒素の重鎖のN末端アミノ酸の等価の数を含み、そのため、このフラグメントは、相同アミノ酸残基の等価のアラインメントを有する。
【0068】
したがって、本発明のこれらのポリペプチドは、例えば、ジスルフィド架橋によって複合分子に連結された、2以上のポリペプチドから構成されない。代わりに、これらのポリペプチドは一本鎖であり、そして活性がないか、またはそれらの活性が神経毒素エンドペプチダーゼ活性のインビトロアッセイで顕著に減少している。
【0069】
さらに、ポリペプチドは、トリプシンのようなタンパク質分解剤の作用によってエンドペプチダーゼ活性を示す形態に変換されやすくてもよい。このように、毒素軽鎖のエンドペプチダーゼ活性を制御することが可能である。
【0070】
本発明のさらなる実施態様では、ポリペプチドは、改変されたアミノ酸配列を含み、そのため、(a)ポリペプチドのLC成分とH成分との間にプロテアーゼ感受性領域がない、または(b)プロテアーゼ感受性領域が特定のプロテアーゼに特異的である。この後者の実施態様は、特定の環境または細胞において軽鎖のエンドペプチダーゼ活性を活性化することが所望される場合に使用される。しかし、一般的には、本発明のポリペプチドは、投与前に活性化される。
【0071】
より一般的には、タンパク質分解切断部位は、一本鎖ポリペプチド分子の任意の2つのドメイン間に導入され得る。
【0072】
例えば、切断部位は、第1ドメインと第2ドメインとの間に導入され得、そのため、その切断は、一本鎖ポリペプチド分子を二本鎖ポリペプチド構造に変換し、ここで、第1および第2ドメインは、ジスルフィド結合によって一緒に連結される。このような分子の特定の実施例は、本出願の配列番号11〜18に提供され、そこでは、第Xa因子切断部位が、第1ドメイン(L鎖)と第2ドメイン(H)との間に導入されている。
【0073】
固有の切断部位を有する一連のペプチド配列は、本発明のポリペプチドの1以上のドメイン間の接合部への挿入に利用可能である。例えば、第1ドメイン(L鎖)と第2ドメイン(H)との間の切断部位の挿入により、タンパク質分解切断可能である一本鎖ポリペプチド鎖分子が二本鎖ポリペプチドを形成し得、ここで第1および第2ドメインは、第1および第2ドメイン間のジスルフィド結合によって一緒に保持される。タンパク質分解切断は、インビトロでは使用前に、またはインビボでは細胞内タンパク質分解作用による細胞特異的活性化によって行われ得る。
【0074】
あるいは(またはさらに)、切断部位は、第2ドメインと第3ドメインとの間、または精製タグと本発明のポリペプチドとの間に導入され得る。本発明の第3ドメインおよび精製タグ局面は、以下でより詳細に論ずる。
【0075】
LCドメインとHドメインとの間の接合部への一連の切断部位の便利な挿入を容易にするために、将来のクローン開発のためのテンプレートとして用いられ得る発現クローンを調製することが好ましい。このようなテンプレートは、配列番号103に示され、ここでLH/BをコードするDNAは、独特の制限酵素部位を組み込むように標準的な変異誘発技法によって改変されている。接合部に新しい切断部位を導入することは、新しい切断部位をコードする新規なオリゴヌクレオチドの簡単な挿入を必要とする。
【0076】
適切な切断部位としては、表1に記載のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
【表1】

【0078】
いくつかの場合、ある切断部位および対応するタンパク質分解酵素(例えば、プレシション、トロンビン)の使用は、ポリペプチド上の短いN末端伸長を切断部位のC末端位置に残す(表1で例示のプロテアーゼについて下向き矢印の切断パターンを参照のこと)。
【0079】
ペプチド配列は、任意の2つのドメイン間に導入されて、より後の段階でのドメインの特異的切断を容易にし得る。このアプローチは、精製タグを含む融合タンパク質からの精製タグ(例えば、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン域(His6))の切断および遊離のための独特の発現系に通常用いられる。これに関して、精製タグは、好適には、問題のポリペプチドのNまたはC末端に融合される。
【0080】
切断部位の選択は、遊離されたポリペプチドのN末端(またはC末端)の正確な性質との関係を有し得る。これを示すために、このような独特の系で産生された同一のLH/Bフラグメントを、配列番号88、94、96、および98に記載し、ここで、LH/B配列へのN末端伸長は、それぞれISEFGS、GS、SPGARGS、およびAMADIGSである。LH/Cフラグメントの場合、配列番号126、128、および130は、N末端配列VPEFGSSRVDH、ISEFGSSRVDH、およびVPEFGSSRVDHを記載し、それに続いて、それぞれエンテロキナーゼ、ジェネナーゼ、および第Xa因子による融合タグからのLH/Cフラグメントを遊離する。これらの伸長ペプチド配列のそれぞれは、本発明の改変体L鎖配列の一例である。同様に、精製タグが第2ドメインのC末端に融合されるべき場合、得られる切断されたポリペプチド(すなわち、融合タンパク質マイナス精製タグ)は、C末端伸長アミノ酸を含む。これらの伸長ペプチドのそれぞれは、本発明の改変体H部分の一例を提供する。
【0081】
いくつかの場合、例えば、精製タグと本発明のポリペプチドとの間の特異的部位での切断は、所望よりも低い効率であり得る。この潜在的な問題に対して、本出願人は、2つの特定の方法で独特のベクターを改変し、この改変は、独立してまたは互いに組み合わせて用いられ得る。この改変は本発明のポリペプチドまたは融合タンパク質における任意の2つのドメイン間の切断部位に適用され得るが、以下の議論は、精製タグ−第1ドメイン切断事象を簡単に説明する。
【0082】
第1に、DNAは、さらなるペプチドスペーサー配列を含むように改変され、これは、必要に応じて、精製タグとポリペプチドとの接合部に1以上の追加の切断部位を示し得る。このアプローチからの全長の発現したポリペプチドの例は、配列番号86、90、および92に示される。このようなアプローチにより、目的のポリペプチドが効率的に切断および遊離している。任意のポリペプチド内切断部位(例えば、第1ドメインと第2ドメインとの間)の存在および性質に依存して、融合タンパク質からの精製タグの切断は、第1ドメインと第2ドメインとの間のタンパク質分解切断と同時に起こり得る。あるいは、精製タグの遊離は、第1ドメインと第2ドメインとの間でのタンパク質分解切断を生じることなく起こり得る。これらの2つの切断スキームを、図14に示す。
【0083】
選択した切断酵素に依存して、この方策により、ポリペプチドのN末端(またはC末端)への短いアミノ酸伸長が生じ得る。例えば、配列番号92の場合、発現した産物のエンテロキナーゼでの切断により、第1ドメイン−第2ドメイン接合部(すなわち、L鎖−H接合部)での単一のジスルフィド結合によってカップリングした2つのポリペプチドを生じ、これは、未処理の第Xa因子部位に類似の短いN末端ペプチド伸長およびポリリンカー配列(IEGRISEFGS)による短いN末端伸長を有する。
【0084】
第2に、自己スプライシングするインテイン配列をコードするDNAが用いられ得、このインテインは、pHおよび/または温度制御下で自己スプライシングするように誘導され得る。インテイン配列(配列番号110に、ポリペプチド配列ISEFRESGAISGDSLISLASTGKRVSIKDLLDEKDFEIWAINEQTMKLESAKVSRVFCTGKKLVYILKTRLGRTIKATANHRFLTIDGWKRLDELSLKEHIALPRKLESSSLQLSPEIEKLSQSDIYWDSIVSITETGVEEVFDLTVPGPHNFVANDIIVHNとして示される)は、示されたポリペプチド(例えば、精製タグ−LH/B)の自己切断を容易にして、精製タグを含まない一本鎖ポリペプチド分子を得る。したがって、このプロセスは、最初の発現産物のプロテアーゼでの処理を必要とせず、そして得られたポリペプチド(すなわち、L鎖−第Xa因子活性化部位−H)は、このアプローチが適用され得る方法を簡単に例示する。
【0085】
以下の実施例に記載される本発明のさらなる実施態様によれば、クロストリジウム菌毒素重鎖のHと命名された部分を欠くポリペプチドが提供される。天然に産生される毒素で見られるこの部分は、毒素のインターナリゼーションの前の細胞表面レセプターへの毒素の結合の原因である。したがって、この特定の実施態様は、例えば、タンパク質分解酵素の作用によって活性な毒素に変換され得ないように適合される。したがって、本発明はまた、クロストリジウム菌毒素軽鎖およびクロストリジウム菌毒素重鎖のフラグメントを含むポリペプチドを提供し、このフラグメントは、クロストリジウム菌毒素の中毒作用に関連する細胞表面レセプターに結合できず、そしてこのようなポリペプチドが、クロストリジウム菌毒素重鎖のHと命名された未処理部分を欠くことが好ましい。
【0086】
本発明のさらなる実施態様では、クロストリジウム菌毒素軽鎖およびクロストリジウム菌毒素重鎖のHと命名された部分を含むポリペプチドを含む組成物が提供され、ここで、この組成物は、クロストリジウム菌毒素を含まず、そしてタンパク質分解酵素の作用によってクロストリジウム菌毒素に変換され得るあらゆるクロストリジウム菌毒素前駆体を含まない。これらの組成物の例としては、ボツリヌス菌毒素A、B、C、D、E、F、およびG型の毒素軽鎖配列およびH配列を含む組成物が挙げられる。
【0087】
本発明のポリペプチドは、第3ドメイン(例えば、所望の細胞にターゲティングするためのリガンド)に結合またはこれを含むように便利に適合される。ポリペプチドは、必要に応じて、例えば、免疫グロブリンに結合する配列を含む。適切な配列は、ブドウ球菌のプロテインAのドメインBに由来するタンデムリピートの合成IgG結合ドメインである。次いで、免疫グロブリン特異性の選択は、ポリペプチド−免疫グロブリン複合体に対する標的を決定する。あるいは、ポリペプチドは、細胞表面レセプターに結合する非クロストリジウム菌配列、特定の細胞タイプ上の特異的レセプターに結合するインスリン様増殖因子1(IGF−1)を含む適切な配列、およびコレラトキシンBサブユニットに結合してGM1ガングリオシドに結合し得るコレラトキシンAサブユニットのカルボキシ末端由来の14アミノ酸残基配列を含む。したがって、本発明のポリペプチドは、必要に応じて、ポリペプチドの細胞への結合のために適合された第3ドメインをさらに含む。
【0088】
好適な実施態様では、第3ドメインは、標的細胞上のレセプターに結合し、このレセプターは、エンドソームプロセシングを受けやすい。
【0089】
本発明の第2の局面によれば、(a)上記のような本発明のポリペプチドと(b)クロマトグラフィーマトリクスへの結合のために適合された第2のポリペプチド(精製タグとしても公知である)との融合物を含む融合タンパク質が提供され、そのため、このクロマトグラフィーマトリクスを用いて融合タンパク質の精製が可能である。第2のポリペプチドがグルタチオンSepharoseのようなアフィニティーマトリクスに結合するように適合されることは便利であり、細胞抽出物または上清のような不純なソースから融合タンパク質を迅速に分離および精製することが可能である。
【0090】
1つの可能性のある第2の精製ポリペプチドは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)であり、そして他は、当業者に明らかであり、従来の技法に従ってクロマトグラフィーカラムでの精製を可能にするように選択される。
【0091】
本発明の他の実施態様によれば、スペーサー配列が、一本鎖ポリペプチド分子の2以上のドメイン間に導入され得る。例えば、スペーサー配列は、本発明のポリペプチド分子の第2ドメインと第3ドメインとの間に導入され得る。あるいは(またはさらに)、スペーサー配列は、精製タグと本発明のポリペプチドとの間に、あるいは第1ドメインと第2ドメインとの間に導入され得る。スペーサー配列は、タンパク質分解切断部位を含み得る。
【0092】
より詳細には、第2ドメイン−第3ドメイン接合部への特異的ペプチド配列の挿入は、第3ドメイン(例えば、リガンド)と第2ドメイン(例えば、H)との間隔をあける目的で行われ得る。このアプローチは、第3ドメインと特異的結合標的との効率的な相互作用を容易にし、および/またはポリペプチドのフォールディング特徴を改善し得る。スペーサーペプチドの例を、表2に提供する。
【0093】
【表2】

【0094】
好適な実施態様では、スペーサー配列は、第1ドメインと第2ドメインとの間に導入され得る。例えば、新規な一本鎖ポリペプチドハイブリッド第1ドメイン−第2ドメイン融合物の調製に有利である特徴を組み込む種々の第1ドメイン(例えば、L鎖)発現構築物が調製されている。このような発現カセットを、配列番号69、71、73、75、77、および113に例示する。
【0095】
上記のカセットは、天然のクロストリジウム菌神経毒素のL鎖のC末端とHドメインのN末端との間の領域に存在する天然のリンカー配列を利用する。より詳細には、L鎖およびHドメインを一緒にカップリングするために用いる天然のリンカー配列の各末端にシステインがあり、次いで一本鎖ポリペプチド分子をタンパク質分解切断して、二本鎖カウンターパートとする。これらのシステイン基は、上記のカセット中に保存される。したがって、リンカー配列のいずれかの末端にシステインアミノ酸を維持することによって、および必要に応じて特異的タンパク質分解部位を組み込んで天然の配列を置換することによって、第1ドメインと第2ドメインとの間で特異的に切断可能な特性を有する種々の構築物が調製されている。
【0096】
例えば、H/Bのような目的の配列を配列番号69に記載の配列に融合することによって、ジスルフィド結合形成を容易にする特異的リンカー領域によって連結されるL鎖/A−H/B新規ハイブリッドを日常的に調製することが可能である。したがって、発現された融合タンパク質は、第1ドメイン(L鎖)と第2ドメイン(H)との間のタンパク質分解切断に適切である。必要に応じてこの切断部位を含む同じリンカーは、本発明のポリペプチドまたは融合タンパク質の他のドメインを一緒に連結するために使用され得る。
【0097】
本発明のさらなる実施態様では、分子クランプは、本発明のポリペプチドまたは融合タンパク質の2以上のドメインとともにクランピングするために用いられ得る。分子クランプは、上記のスペーサー配列の特定のサブセットとみなされ得る。
【0098】
より詳細には、分子クランピング(指示カップリングとしても公知である)は、非共有タンパク質−タンパク質相互作用を容易にする特異的相補ペプチド配列の使用によって2以上のポリペプチドドメインを一緒に連結する方法である。
【0099】
このようなペプチド配列の例としては、ロイシンジッパー(junおよびfos)、多イオン性ペプチド(例えば、ポリグルタミン酸およびそのポリアルギニン対)、およびブドウ球菌のプロテインAの合成IgG結合ドメインが挙げられる。
【0100】
第1および第2ドメイン(例えば、LH)を含むポリペプチドが調製され、分子クランピング配列が2つの方法によって第2(例えば、H)ドメインのC末端に融合されている。
【0101】
第1に、分子クランプをコードするDNAは、LHコード配列に存在する停止コドンを除去した後、LHポリペプチドをコードするDNAに直接ライゲートされている。LH配列の3’へのクランプ配列をコードする重複オリゴヌクレオチドおよび3’停止コドンの挿入によって、発現カセットが生成されている。このような配列の例を、配列番号63に示し、ここでfos(LTDTLQAETDQLEDEKSALQTEIANLLKEKEKLEFILAAH)として公知の分子クランプをコードするDNA配列は、LH/Aポリペプチドをコードする核酸分子の3’に導入されており、この分子はまた、第1ドメイン(L鎖)と第2ドメイン(H)とのコード領域間にエンテロキナーゼ切断部位をコードする核酸配列を有する。
【0102】
第2に、部位特異的組換えを利用して、短いペプチドGly-GlyによってHドメインから離れたLHポリペプチドの3’にクランプ配列を組み込んでいる(例えば、以下に記載のGATEWAYシステムを参照のこと)。HのC末端からクランプ配列を離すためのこのペプチドの使用を、配列番号117/118に示す。
【0103】
いくつかの実施態様では、システイン側鎖をクランプペプチドに組み込んで、クランプに渡したジスルフィド結合の形成を容易にすることが好ましいことであり得、そしてこうして、例えば、第2ドメイン(H)と第3ドメイン(例えば、リガンド)との間に共有結合を作成する。システインコドンのクランプ配列への組み込みは、標準的技法によって行われ、配列番号59/60、61/62、117/118、および119/120に示すタイプの配列が得られている。
【0104】
適切なLHポリペプチドの調製への分子クランピングの応用についての模式図を図15に示す。
【0105】
第3ドメイン(例えば、リガンド)への部位特異的カップリングに適切な第1および第2ドメインを含む全長ポリペプチドの発現のためのさらなる代替法は、第2ドメイン(例えば、H)の3’にインテインの自己切断配列を組み込むことである。配列番号67/68は、このような1つの構築物を示し、第1ドメイン(例えば、L鎖)と第2ドメイン(例えば、H)との間にエンテロキナーゼ切断部位を有するLH/Aは、C末端にCys残基、次いでインテイン配列を有するように発現される。自己切断後、次いで、例えば、Bruickら, Chem. Biol. (1996), 49-56頁に記載のように、第3ドメインへの特異的カップリング反応に関与し得る反応性チオエステルが形成される。このようなポリペプチドは、他に異種最終産物を生じ得るランダム誘導体化およびランダムカップリングに関する問題を生じることなく、第3ドメイン(例えば、目的のリガンド)への部位特異的化学カップリングを容易にする。
【0106】
本出願の全体の開示から当業者に明らかなように、第1および第2ドメインは、任意のクロストリジウム菌神経毒素ソース由来のL鎖およびH鎖成分を用い得る。ボツリヌス菌ソースが好適であり得るが、破傷風菌ソースは等しい適用可能性を有する。これに関して、Eisel,U.ら(1986) EMBO J. 5 (10), 2495-2502頁および受入図書番号X04436によって本出願前に公開されているように、破傷風菌神経毒素(TeNT)の全配列は、参照が容易なように、配列番号140/141として本出願に含まれている。
【0107】
この点の説明を補助するために、いくつかのTeNTに基づくポリペプチドが本発明に従って調製されており、そして配列番号143を参照すると、これはEEDIDV879のC末端配列を有するLHポリペプチドである。配列番号147も参照すると、これはEEDIDVILKKSTIL887のC末端配列を有するLHポリペプチドである。これらのLH配列の両方とも「天然の」TeNT LH配列を代表し、これらはL鎖とHドメインとの間に特異的切断部位が導入されていない。したがって、配列番号145は、本発明のTeNTポリペプチドを示し、ここではL鎖とHドメインとの間の天然のTeNTリンカー領域が、特異的エンテロキナーゼ切断配列を含むポリペプチドで置換されている。
【0108】
任意の2つのドメイン(例えば、L鎖とHドメイン、またはL鎖と精製タグ)間に特異的切断部位およびスペーサー/クランピング配列を導入するための本明細書に記載の一般的なアプローチが、本発明のTeNT含有ポリペプチド分子の調製に日常的に適用可能であることもまた理解される。
【0109】
本発明の第3の局面は、クロストリジウム菌毒素の誘導体を含む組成物を提供し、この誘導体は、クロストリジウム菌毒素のエンドペプチダーゼ活性の少なくとも10%を保持し、この誘導体は、さらに、細胞表面レセプターに結合する能力がないためインビボで非毒性であり、そしてこの組成物は、毒素またはさらなる毒素誘導体のようなインビボで毒性であるあらゆる成分を含まない。誘導体の活性は、好適には、天然の毒素の活性に近づき、したがって、好適には少なくとも30%および最も好適には天然の毒素の少なくとも60%である。組成物の全体のエンドペプチダーゼ活性はまた、当然、存在する誘導体の量によって決定される。
【0110】
天然に産生されるクロストリジウム菌毒素を処理してHドメインを除去することは公知であるが、この処理は調製物の毒性を全体的に除去せず、代わりにいくつかの残存毒素活性が残ったままである。したがって、この方法で処理された天然の毒素は、未だ完全に安全ではない。ポリペプチドの純粋なソースの処理によって誘導体化された本発明の組成物は、有利には、毒性がなく、そして毒素アッセイにおける陽性コントロールとして、クロストリジウム菌毒素に対するワクチンとして、または組成物中に残存毒性がないことが必須である他の目的のために、便利に使用され得る。
【0111】
本発明は、組換え手段によって本発明のポリペプチドおよび融合タンパク質の産生を可能にする。
【0112】
本発明の第4の局面は、上記の本発明のいずれかの局面のポリペプチドまたは融合タンパク質をコードする核酸を提供する。
【0113】
本発明のこの局面の1つの実施態様では、ポリペプチドまたは融合タンパク質をコードするために提供されるDNA配列は、天然のクロストリジウム菌配列に由来しないが、天然に予め存在しない人工的に誘導体化した配列である。
【0114】
以下で詳細に記載する特異的DNA(配列番号1)は、ボツリヌス菌毒素A型の残基1〜871をコードするヌクレオチドを含むポリペプチドまたは融合タンパク質をコードする。このポリペプチドは、軽鎖ドメインおよびボツリヌス菌毒素A型重鎖のアミノ末端部分の最初の423アミノ酸残基を含む。この組換え産物は、LH423/Aと命名されている(配列番号2)。
【0115】
本発明のこの局面の第2の実施態様では、ポリペプチドまたは融合タンパク質をコードするDNA配列は、天然のクロストリジウム菌配列に由来するが、天然には見られないポリペプチドまたは融合タンパク質をコードする。
【0116】
以下で詳細に記載する特異的DNA(配列番号19)は、ポリペプチドまたは融合タンパク質をコードし、そしてボツリヌス菌毒素B型の残基1〜1171をコードするヌクレオチドを含む。このポリペプチドは、軽鎖ドメインおよびボツリヌス菌B型重鎖のアミノ末端タンパク質の最初の728アミノ酸残基を含む。この組換え産物は、LH728/Bと命名されている(配列番号20)。
【0117】
したがって、本発明はまた、本発明の第3の局面のDNAを宿主細胞中で発現させる工程を含む、ポリペプチドの製造方法を提供する。宿主細胞は、適切には、軽毒素鎖と重毒素鎖とを分離するように本発明のポリペプチドまたは融合タンパク質を切断できず;例えば、非クロストリジウム菌宿主である。
【0118】
本発明はさらに、ポリペプチドの製造方法を提供し、この方法は、上記の融合タンパク質をコードするDNAを宿主細胞中で発現させる工程、該融合タンパク質を保持するように適合したクロマトグラフィーカラムを通して溶出する工程、該融合タンパク質を置換するように適合したリガンドを該クロマトグラフィーカラムを通して溶出させる工程、および該融合タンパク質を回収する工程によって該融合タンパク質を精製することを含む。したがって、実質的に純粋な融合タンパク質の生成が可能になる。同様に、第2のポリペプチドは、同じタイプのクロマトグラフィーカラムを用いて便利に除去され得るので、融合タンパク質は、容易に切断されて、これもまた実質的に純粋な形態で、本発明のポリペプチドを得る。
【0119】
二本鎖の天然の毒素に由来するLH/Aは、重鎖のC末端の1/2であるHドメインを除去するために、トリプシンでの広範囲の消化を必要とする。このドメインの喪失により、宿主標的細胞との相互作用を抑制することによって、インビボで毒素が効果的に不活性化される。しかし、残存毒性活性があり、これは、A型神経毒素の夾雑しているトリプシン非感受性形態を示し得る。
【0120】
逆に、本発明の組換え調製物は、慎重に定義された遺伝子コード配列の産物であり、そして全長毒素タンパク質によって夾雑され得ない。さらに、大腸菌からおよび他の組換え発現宿主から回収された産物は、不活性な一本鎖ペプチドであり、あるいは発現宿主がプロセシングされた活性なポリペプチドを産生するならば、これは毒素ではない。現在のインビトロペプチド切断アッセイによって評価されるようなLH423/Aのエンドペプチダーゼ活性は、トリプシンによる残基430と454との間の組換え分子の活性化に全体的に依存的である。これらの2つの残基間を切断する他のタンパク質分解酵素はまた、一般的に、組換え分子の活性化に適切である。トリプシンは、アルギニンのC末端側またはリジンのC末端側のペプチド結合を切断し、そしてこれらの残基は430〜454領域で見出されそして露出しているので適切である(図12を参照のこと)。
【0121】
本発明の組換えポリペプチドは、関連の基質を発現する細胞にターゲティングするための可能性のある治療剤であるが、ボツリヌス中毒を起こすことに関連しない。神経伝達物質の分泌が不適切であるかまたは所望でない場合、あるいは神経細胞が神経伝達物質以外の物質の調節された分泌に関して活動過多である場合が、その例であり得る。このような例において、天然の毒素のHドメインの機能は、例えば、細胞レセプターリガンドおよび/またはトランスロケーションドメインを提供する代替のターゲティング配列に置換され得る。
【0122】
本発明の組換えポリペプチドの1つの適用は、WO-A-94/21300に開示されるような、治療分子の合成のための試薬成分である。組換え産物はまた、例えば、EP-A-0763131に開示されるような食料品または環境のいずれかにおける機能的ボツリヌス菌または破傷風菌神経毒素の検出のためのインビトロアッセイの評価および開発のための非毒性標準としての適用が見出される。
【0123】
さらなる選択肢は、本発明のポリペプチドのC末端への、タンパク質および非タンパク質の両方の起源のターゲティングリガンドへの特異的化学結合を可能にするペプチド配列の付加である。
【0124】
なおさらなる実施態様では、代わりのターゲティングリガンドが、本発明のポリペプチドのN末端に付加される。組換えLH誘導体は、推定トリプシン感受性領域のLCのC末端でおよび完全タンパク質産物の最もC末端でもまた、操作された特異的プロテアーゼ切断部位を有するように指定されている。これらの部位は、組換え産物の活性化特異性を増強し、そのため、二本鎖種は、トリプシンの使用よりも予測可能な性質のタンパク質分解切断によってのみ活性され得る。
【0125】
天然のBoNT/Aから酵素的に生成されたLHは、効率的な免疫源であり、したがってあらゆる全長神経毒素と全体的に分離した組換え形態は、ワクチン成分を示す。組換え産物は、上記の領域のいずれかを支持する所定のタンパク質改変を生成するための基本的な試薬として用いられ得る。
【0126】
組換え構築物は、これらが公表されたドメイン中の翻訳されたDNA配列にまたは詳細には配列番号2および配列番号20に関連するので、それらのアミノ酸配列長および軽鎖(L鎖、L)および重鎖(H鎖、H)内容に基づいて区別される呼称が割り当てられている。「LH」の名称は「/X」が続き、ここで「X」は、対応するクロストリジウム菌毒素血清型またはクラス、例えば、ボツリヌス菌神経毒素A型については「A」あるいは破傷風菌毒素については「TeTx」を示す。天然の毒素ポリペプチドに由来する配列改変体は、標準形式では括弧で示され、すなわち、残基の位置の番号は、天然の配列の残基が前に付きそして改変体の残基が終わりに付けられる。
【0127】
下付きの数字の接頭辞は、翻訳された配列に対するアミノ末端(N末端)伸張、あるいは負の場合は欠失を示す。同様に、下付きの数字の接尾辞は、カルボキシ末端(C末端)伸長あるいは負の数字が用いられる場合は欠失を示す。プロテアーゼ切断部位のような特異的な配列インサートは、略語を用いて示され、例えば、第Xa因子はFXaに略されている。L鎖C末端接尾辞およびH鎖N末端接頭辞は、「/」によって分離されて、L鎖とH鎖との間の予測接合部を示す。操作されたリガンド配列についての略語は、翻訳産物における位置に対応するクロストリジウム菌L鎖またはH鎖の前または後に付けられる。
【0128】
この用法を以下に示す、
LH423/A = 配列番号2、L鎖全体およびボツリヌス菌神経毒素A型のH鎖の423アミノ酸を含む;
LH423/A = この分子の改変体、L鎖のN末端への2アミノ酸伸長を含む;
/2423/A = さらなる改変体、この分子は、L鎖およびH鎖の両方のN末端における2アミノ酸伸長を含む;
FXa/2423/A = さらなる改変体、L鎖のN末端への2アミノ酸伸長、L鎖のC末端での第Xa因子切断配列を含み、第Xa因子での分子の切断後に、H鎖成分に2アミノ酸N末端伸長が残る;および
FXa/2423/A−IGF−1 = この分子の改変体、H鎖へのさらなるC末端伸長を有し、この例では、インスリン様増殖因子1(IGF−1)配列である。
【0129】
本発明を実施するために必要とされる基本的分子生物学技法は、本出願の優先日以前に当該技術分野で容易に利用可能であり、そしてこのように、当業者には日常的である。
【0130】
本出願の実施例1は、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を調製するための従来の制限エンドヌクレアーゼ依存的切断およびライゲーション方法論を説明する。
【0131】
実施例4以降は、DNAの制限エンドヌクレアーゼ依存的切断およびライゲーションの伝統的方法を必要としない組換えDNA分子を操作するための、多くの代替の従来の方法を説明する。1つのこのような方法は、Invitrogen, Inc.の部位特異的組換えGATEWAY(登録商標)クローニングシステムであり、これは、λファージベースの部位特異的組換えを用いる[Landy, A. (1989) Ann. Rev. Biochem. 58, 913-949頁]。この方法は、ここでは少しだけより詳細に記載される。
【0132】
標準的制限エンドヌクレアーゼ消化、またはポリメラーゼ連鎖反応技法を用いて、第1および第2ドメイン(例えば、BoNT LH分子)をコードするDNA配列は、侵入ベクター中にクローニングされ得る。GATEWAY(登録商標)マニュアルに記載のように、必要なatt部位組換え配列に隣接する正確なコード配列の生成については多くの選択肢がある。
【0133】
例えば、1つの経路は、一般的なポリリンカーを侵入ベクター中に挿入することであり、ここで、挿入されたDNAは、ポリリンカー配列によって分離された2つのatt部位を含む。このアプローチは、使用者が定義した制限エンドヌクレアーゼ部位で、種々のフラグメントを侵入ベクター中に挿入することを容易にする。
【0134】
第2の経路は、目的のDNAの増幅のために使用されるプライマーにatt部位を挿入することである。このアプローチでは、増幅されたフラグメントのDNA配列は、5’および3’末端で適切なatt部位を含むように改変される。
【0135】
LH/C(配列番号135)、停止コドンを含まずにリガンドへの直接融合を容易にするLH/C(配列番号136)、および適切な第2または第3ドメインとの組み合わせを容易にし得るL鎖/C配列(配列番号134)についての侵入ベクターの例が提供される。
【0136】
改変された侵入ベクター(目的のDNAを含む)と選択した仕向ベクターとの組み合わせによって、発現クローンが生成される。仕向ベクターは、代表的には、目的の挿入されたDNAの転写を容易にし、そして適切な宿主細胞に導入される場合にタンパク質の発現を容易にするための必要な情報を提供する。
【0137】
仕向ベクターは、N末端および/またはC末端融合タグおよび/または追加のタンパク質ドメインの発現を確実にするように調製され得る。非伝達性ベクター骨格においてMBPタグ付けしたタンパク質の発現のための新規の操作された仕向ベクターの例を、配列番号137に示す。この特定の実施態様では、配列番号137で同定される仕向ベクターとともに目的の配列を有する侵入ベクターの組換えにより、大腸菌発現のための発現ベクターが得られる。
【0138】
発現クローンを調製するための侵入ベクターと仕向ベクターとの組み合わせにより、改変された配列を有する発現されたタンパク質が得られる。配列番号30および124に示す実施例では、TSLYKKAGFのペプチド配列が、精製タグを除去するための切断後に、エンドペプチダーゼのN末端で見られるべきである。このペプチド配列は、att部位を形成しそしてこのように構築および発現されるすべてのクローンの特徴であるDNAによってコードされる。
【0139】
att部位配列が、特異的プロテアーゼ切断部位をコードするDNA(例えば、表1から)を侵入クローンのatt部位の3’に挿入するように改変され得ることが理解される。
【0140】
任意のポリペプチド(例えば、LHフラグメント)の正確なN末端が、エンドペプチダーゼDNAが侵入ベクターおよびその関連の5’att部位に導入される方法に依存して変化することも理解される。配列番号29/30および123/124は、適切な場合である。配列番号30のN末端伸長はTSLYKKAGFGSであるが、配列番号124のN末端伸長はITSLYKKAGFGSLDHである。これらのアミノ酸伸長含有ドメインは、本発明の第1/第2ドメイン改変体のさらなる例を提供する。
【0141】
本発明の文脈内で、以下の定義を留意すべきである。
【0142】
用語ポリペプチド「フラグメント」とは、問題のポリペプチド「フラグメント」が、好適には参照の配列番号のポリペプチド配列の少なくとも50%の長さであることを意味する。したがって、参照の配列番号のポリペプチドが、例えば500アミノ酸残基を有するアミノ酸配列であるならば、対応する「フラグメント」は、少なくとも250アミノ酸残基を有するアミノ酸配列である。より好適な実施態様では、「フラグメント」は、参照の配列番号のポリペプチドの、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも85%、特に好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%の長さである。
【0143】
ポリペプチド「フラグメント」は、好適には、参照の配列番号のポリペプチド配列のエピトープを含み、これは、抗体交差反応性によって確認され得る。ポリペプチド「フラグメント」は、好適には、エキソサイトーシスに必須の1以上の小胞または形質膜結合タンパク質を切断し得る第1ドメインを含む。
【0144】
用語「改変体」とは、参照の配列番号のポリペプチドと、少なくとも70、好ましくは少なくとも80、より好ましくは少なくとも90パーセントのアミノ酸配列相同性を有するポリペプチドまたはポリペプチド「フラグメント」を意味する。「改変体」の例は、アミノ酸の1以上のアナログ(例えば、非天然アミノ酸)または置換された連結を含むポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントである。用語「相同性」および「同一性」は、本明細書では同義とみなされる。
【0145】
配列比較については、代表的には、1つの配列(例えば、参照の配列番号ポリペプチド)が参照配列として用いられ、これに対して「改変体」配列が比較され得る。配列比較アルゴリズムを用いる場合、「改変体」および参照配列はコンピュータに入力され、次の座標が指定され、そして必要ならば、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照の配列番号のポリペプチド配列に対する「改変体」配列についての配列同一性の割合を算出する。
【0146】
比較のための配列の最適アラインメントは、例えば、SmithおよびWaterman[Adv. Appl. Math. 2: 484 (1981)]の局所相同性アラインメントアルゴリズムによって、NeedlemanおよびWunsch[J. Mol. Biol. 48: 443 (1970)]のアルゴリズムによって、PearsonおよびLipman[Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85: 2444 (1988)]の類似性方法についての検索によって、これらのアルゴリズム(GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA - Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, Wis. 53705)のコンピュータ実行によって、または目視検査によって行われ得る[Current Protocols;Molecular Biology,F.M. Ausbelら編,Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc.およびJohn Wiley & Sons, Inc. (1995 Supplement) Ausbubelを参照のこと]。
【0147】
配列類似性のパーセントを決定するために適切なアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズム[Altschul (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410頁;およびthe National Center for Biotechnology Informationの「http://www.ncbi.nlm.nih.gov/」を参照のこと]である。
【0148】
好ましい相同性比較において、同一性は、少なくとも50アミノ酸残基長、より好ましくは少なくとも100アミノ酸残基長、特に好ましくは少なくとも150アミノ酸残基長、および最も好ましくは少なくとも200アミノ酸残基長である配列の領域にわたり存在する。あるいは、同一性は、例えば、「改変体」ポリペプチドの配列全体にわたって存在する。
【0149】
本発明で使用される場合、用語DNA「フラグメント」は、用語ポリペプチド「フラグメント」(上述)と一致して解釈されるべきであり、そして問題のDNA「フラグメント」が、好ましくは参照の配列番号のDNA配列の少なくとも50%の長さであることを意味する。したがって、参照の配列番号のDNA配列が、例えば、500ヌクレオチド残基を有する核酸配列であるならば、対応する「フラグメント」は、少なくとも250ヌクレオチド残基を有する核酸配列である。より好適な実施態様では、「フラグメント」は、参照の配列番号のDNA配列の、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも85%、特に好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%の長さである。
【0150】
用語DNA「改変体」とは、参照のDNA配列(またはそのフラグメント)と実質的な相同性または実質的な類似性を有するDNA配列を意味する。核酸またはそのフラグメントは、他の核酸(またはその相補鎖)と(適切なヌクレオチド挿入または欠失とともに)最適にアラインされる場合に、ヌクレオチド塩基の少なくとも約60%、通常は少なくとも約70%、より通常には少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、およびより好ましくはヌクレオチド塩基の少なくとも約95%〜98%でヌクレオチド配列同一性があるならば、他に対して「実質的に相同」(または「実質的に類似」)である。相同性決定は、ペプチドについて上述のように行われる。
【0151】
あるいは、DNA「改変体」は、選択的ハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし得る場合、参照の配列番号のDNA配列のコード配列(またはそのフラグメント)と実質的に相同(または実質的に類似)である。ハイブリダイゼーションの選択性は、ハイブリダイゼーションが生じる場合に存在し、全体的に特異性がない場合よりも実質的により選択的である。代表的には、少なくとも約50ヌクレオチドの長さにわたって少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約75%、および最も好ましくは少なくとも約90%の相同性がある場合に、選択的ハイブリダイゼーションが生じる。Kanehisa (1984) Nuc. Acids Res. 12: 203-213を参照のこと。上記のように、相同性比較の長さは、より長い長さにわたるものであり得、そしてある実施態様では、しばしば、少なくとも約100ヌクレオチド、通常は少なくとも約150ヌクレオチド、より通常には少なくとも約200ヌクレオチド、代表的には少なくとも約250ヌクレオチド、より代表的には少なくとも約300ヌクレオチド、および好ましくは少なくとも約350以上のヌクレオチドの長さにわたる。あるいは、同一性は、例えば、「改変体」DNA配列の配列全体にわたって存在する。
【0152】
核酸ハイブリダイゼーションが、塩基組成、相補鎖の長さ、およびハイブリダイズしている核酸間のヌクレオチド塩基ミスマッチの数に加えて、塩濃度(例えば、NaCl)、温度、または有機溶媒のような条件によって影響を受けることは、当業者には容易に理解される。好ましくは、ストリンジェントな温度条件が用いられ、そして一般的には30℃超える、代表的には37℃を超える、および好ましくは45℃を超える温度を含む。ストリンジェントな塩条件は、普通には1000mM未満、代表的には500mM未満、および好ましくは200mM未満である。pHは、代表的には7.0〜8.3である。しかし、パラメータの組み合わせは、任意の単一のパラメータの基準よりも非常に重要である。例えば、WetmurおよびDavidson (1968) J. Mol. Biol. 31: 349-370を参照のこと。
【0153】
上記の用語DNA「フラグメント」および「改変体」は、互いに共通して、得られるペプチド産物が、好ましくは、対応する参照の配列番号のポリペプチドと実質的に同じである交差反応性抗原性特性を有する。好ましくは、本発明の上記DNA「フラグメント」および「改変体」実施態様のポリペプチド産物のすべては、参照の配列番号のポリペプチドにも結合する抗体と結合する。
【0154】
以下は、本発明の特定の実施態様の説明であり、図面によって説明される。
【0155】
本出願に付随する配列表は、以下の配列を含む。
【0156】
配列番号 配列
1 LH423/AをコードするDNA。
【0157】
2 LH423/A。
【0158】
23LH423/A(QE,N26K,A27Y)をコードするDNA、そのN末端部分を図4に示す。
【0159】
23LH423/A(QE,N26K,A27Y)。
【0160】
LH423/A(QE,N26K,A27Y)をコードするDNA、そのN末端部分を図4に示す。
【0161】
LH423/A(QE,N26K,A27Y)。
【0162】
7 Binzらの天然のBoNT/AをコードするDNA。
【0163】
8 Binzらの天然のBoNT/A。
【0164】
9 L/4423/AをコードするDNA。
【0165】
10 L/4423/A。
【0166】
11 LFXa423/AをコードするDNA。
【0167】
12 LFXa423/A。
【0168】
13 LFXa423/A−IGF−1をコードするDNA。
【0169】
14 LFXa423/A−IGF−1。
【0170】
15 LFXa423/A−CtxA14をコードするDNA。
【0171】
16 LFXa423/A−CtxA14。
【0172】
17 LFXa/3423/A−ZZをコードするDNA。
【0173】
18 LFXa/3423/A−ZZ。
【0174】
19 LH728/BをコードするDNA。
【0175】
20 LH728/B。
【0176】
21 LH417/BをコードするDNA。
【0177】
22 LH417/B。
【0178】
23 LH107/BをコードするDNA。
【0179】
24 LH107/B。
【0180】
25 LH423/A(QE,N26K,A27Y)をコードするDNA。
【0181】
26 LH423/A(QE,N26K,A27Y)。
【0182】
27 LH417/BをコードするDNA、ここで、最初の274塩基は大腸菌コドンバイアスを有するように改変される。
【0183】
28 LH417/BをコードするDNA、ここで、天然のBoNT/B配列の塩基691〜1641は、天然のBoNT/Bポリペプチドのアミノ酸残基231〜547をコードする縮重DNAによって置換されている。
【0184】
29 Gateway適合仕向ベクターから発現されるLH/AをコードするDNA。LH/Aは、LC−H接合部にエンテロキナーゼ活性化部位、およびLH/A配列の5’末端に11アミノ酸のatt部位ペプチド伸長を組み込む。
【0185】
30 配列番号29の発現によって産生されるLH/A、このポリペプチドは、LC−H接合部にエンテロキナーゼ活性化部位、およびLH/A配列の5’末端に11アミノ酸のatt部位ペプチド伸長を組み込んでいる。
【0186】
31 LC−H接合部にエンテロキナーゼ活性化部位を有するLH/AをコードするDNA。
【0187】
32 配列番号31の発現によって産生されるLH/A、このポリペプチドは、LC−H接合部にエンテロキナーゼ活性化部位を有する。
【0188】
33 LC−H接合部に第Xa因子プロテアーゼ活性化部位を有するLH/AをコードするDNA。
【0189】
34 配列番号33の発現によって産生されるLH/A、このポリペプチドは、LC−H接合部に第Xa因子プロテアーゼ活性化部位を有する。
【0190】
35 LC−H接合部にプレシションプロテアーゼ活性化部位を有するLH/AをコードするDNA。
【0191】
36 配列番号35の発現によって産生されるLH/A、このポリペプチドは、LC−H接合部にプレシションプロテアーゼ活性化部位を有する。
【0192】
37 LC−H接合部にトロンビンプロテアーゼ活性化部位を有するLH/AをコードするDNA。
【0193】
38 配列番号37の発現によって産生されるLH/A、このポリペプチドは、LC−H接合部にトロンビンプロテアーゼ活性化部位を有する。
【0194】
39 LH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物をコードするDNA、ここで、LC−H接合部は、特異的プロテアーゼ切断部位を組み込まず、そしてリガンドは、(GGGGS)スペーサーによってHドメインから離れている。
【0195】
40 配列番号39の発現によって産生されるLH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物、ここで、LC−H接合部は、特異的プロテアーゼ切断部位を組み込まず、そしてリガンドは、(GGGGS)スペーサーによってHドメインから離れている。
【0196】
41 LH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物をコードするDNA、ここで、LC−H接合部は、特異的プロテアーゼ切断部位を組み込まず、そしてリガンドは、ヘリカルスペーサーによってHドメインから離れている。
【0197】
42 配列番号41の発現によって産生されるLH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物、ここで、LC−H接合部は、特異的プロテアーゼ切断部位を組み込まず、そしてリガンドは、ヘリカルスペーサーによってHドメインから離れている。
【0198】
43 LH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物をコードするDNA、ここで、LC−H接合部は、特異的エンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位を組み込み、そしてリガンドは、(GGGGS)スペーサーによってHドメインから離れている。
【0199】
44 配列番号43の発現によって産生されるLH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物、ここで、LC−H接合部は、特異的エンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位を組み込み、そしてリガンドは、(GGGGS)スペーサーによってHドメインから離れている。
【0200】
45 LH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物をコードするDNA、ここで、LC−H接合部は、特異的エンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位を組み込み、そしてリガンドは、ヘリカルスペーサーによってHドメインから離れている。
【0201】
46 配列番号45の発現によって産生されるLH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物、ここで、LC−H接合部は、特異的エンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位を組み込み、そしてリガンドは、ヘリカルスペーサーによってHドメインから離れている。
【0202】
47 LH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物をコードするDNA、ここで、LC−H接合部は、特異的トロンビンプロテアーゼ活性化部位を組み込み、そしてリガンドは、ヘリカルスペーサーによってHドメインから離れている。
【0203】
48 配列番号47の発現によって産生されるLH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物、ここで、LC−H接合部は、特異的トロンビンプロテアーゼ活性化部位を組み込み、そしてリガンドは、ヘリカルスペーサーによってHドメインから離れている。
【0204】
49 LH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物をコードするDNA、ここで、LC−H接合部は、特異的トロンビンプロテアーゼ活性化部位を組み込み、そしてリガンドは、(GGGGS)スペーサーによってHドメインから離れている。
【0205】
50 配列番号49の発現によって産生されるLH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物、ここで、LC−H接合部は、特異的トロンビンプロテアーゼ活性化部位を組み込み、そしてリガンドは、(GGGGS)スペーサーによってHドメインから離れている。
【0206】
51 LH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物をコードするDNA、ここで、LC−H接合部は、特異的プレシションプロテアーゼ活性化部位を組み込み、そしてリガンドは、ヘリカルスペーサーによってHドメインから離れている。
【0207】
52 配列番号51の発現によって産生されるLH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物、ここで、LC−H接合部は、特異的プレシションプロテアーゼ活性化部位を組み込み、そしてリガンドは、ヘリカルスペーサーによってHドメインから離れている。
【0208】
53 LH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物をコードするDNA、ここで、LC−H接合部は、特異的プレシションプロテアーゼ活性化部位を組み込み、そしてリガンドは、(GGGGS)スペーサーによってHドメインから離れている。
【0209】
54 配列番号53の発現によって産生されるLH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物、ここで、LC−H接合部は、特異的プレシションプロテアーゼ活性化部位を組み込み、そしてリガンドは、(GGGGS)スペーサーによってHドメインから離れている。
【0210】
55 LH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物をコードするDNA、ここで、LC−H接合部は、特異的第Xa因子プロテアーゼ活性化部位を組み込み、そしてリガンドは、ヘリカルスペーサーによってHドメインから離れている。
【0211】
56 配列番号55の発現によって産生されるLH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物、ここで、LC−H接合部は、特異的第Xa因子プロテアーゼ活性化部位を組み込み、そしてリガンドは、ヘリカルスペーサーによってHドメインから離れている。
【0212】
57 LH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物をコードするDNA、ここで、LC−H接合部は、特異的第Xa因子プロテアーゼ活性化部位を組み込み、そしてリガンドは、(GGGGS)スペーサーによってHドメインから離れている。
【0213】
58 配列番号57の発現によって産生されるLH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物、ここで、LC−H接合部は、特異的第Xa因子プロテアーゼ活性化部位を組み込み、そしてリガンドは、(GGGGS)スペーサーによってHドメインから離れている。
【0214】
59 LC−H接合部にエンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位、および1対のCys残基によって結合したC末端fosリガンドを組み込んでいるLH/AをコードするDNA。
【0215】
60 配列番号59の発現によって産生されるLH/A、このポリペプチドは、LC−H接合部にエンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位、および1対のCys残基によって結合したC末端fosリガンドを組み込んでいる。
【0216】
61 LC−H接合部にエンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位、および1対のCys残基によって結合したC末端(Glu)ペプチドを組み込んでいるLH/AをコードするDNA。
【0217】
62 配列番号61の発現によって産生されるLH/A、このポリペプチドは、LC−H接合部にエンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位、および1対のCys残基によって結合したC末端(Glu)ペプチドを組み込んでいる。
【0218】
63 LC−H接合部にエンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位、およびC末端fosリガンドを組み込んでいるLH/AをコードするDNA。
【0219】
64 配列番号63の発現によって産生されるLH/A、このポリペプチドは、LC−H接合部にエンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位、およびC末端fosリガンドを組み込んでいる。
【0220】
65 LC−H接合部にエンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位、およびC末端(Glu)ペプチドを組み込んでいるLH/AをコードするDNA。
【0221】
66 配列番号65の発現によって産生されるLH/A、このポリペプチドは、LC−H接合部にエンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位、およびC末端(Glu)ペプチドを組み込んでいる。
【0222】
67 LC−H接合部にエンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位、および化学的指示カップリングにおける使用のためのチオエステル形成を容易にするためにC末端自己切断可能なインテインポリペプチドを組み込んでいるLH/AをコードするDNA。
【0223】
68 配列番号67の発現によって産生されるLH/A、このポリペプチドは、LC−H接合部にエンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位、および化学的指示カップリングにおける使用のためのチオエステル形成を容易にするためにC末端自己切断可能なインテインポリペプチドを組み込んでいる。
【0224】
69 停止コドンがなく、Hドメインの最初の6アミノ酸を組み込むリンカーペプチド、およびエンテロキナーゼ切断部位を有するLC/AをコードするDNA。
【0225】
70 配列番号69の発現によって産生されるLC/A、このポリペプチドは、停止コドンがなく、Hドメインの最初の6アミノ酸を組み込むリンカーペプチド、およびエンテロキナーゼ切断部位を有する。
【0226】
71 停止コドンを含まず、Hドメインの最初の6アミノ酸を組み込むリンカーペプチド、および第Xa因子切断部位を有するLC/AをコードするDNA。
【0227】
72 配列番号71の発現によって産生されるLC/A、このポリペプチドは、停止コドンを含まず、Hドメインの最初の6アミノ酸を組み込むリンカーペプチド、および第Xa因子切断部位を有する。
【0228】
73 停止コドンを含まず、Hドメインの最初の6アミノ酸を組み込む天然のLC−H配列を示すリンカーペプチドを有するLC/AをコードするDNA。
【0229】
74 配列番号73の発現によって産生されるLC/A、このポリペプチドは、停止コドンを含まず、Hドメインの最初の6アミノ酸を組み込む天然のLC−H配列を示すリンカーペプチドを有する。
【0230】
75 停止コドンを含まず、Hドメインの最初の6アミノ酸を組み込むリンカーペプチド、およびプレシション切断部位を有するLC/AをコードするDNA。
【0231】
76 配列番号75の発現によって産生されるLC/A、このポリペプチドは、停止コドンを含まず、Hドメインの最初の6アミノ酸を組み込むリンカーペプチド、およびプレシション切断部位を有する。
【0232】
77 停止コドンを含まず、Hドメインの最初の6アミノ酸を組み込むリンカーペプチド、およびトロンビン切断部位を有するLC/AをコードするDNA。
【0233】
78 配列番号77の発現によって産生されるLC/A、このポリペプチドは、停止コドンを含まず、Hドメインの最初の6アミノ酸を組み込むリンカーペプチド、およびトロンビン切断部位を有する。
【0234】
79 LC−H接合部(LCおよびHドメインのCys残基間に11アミノ酸がある)にエンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位、および6アミノ酸N末端伸長を組み込んでいるLH/BをコードするDNA。
【0235】
80 配列番号79の発現によって産生されるLH/B、このポリペプチドは、LC−H接合部(LCおよびHドメインのCys残基間に11アミノ酸がある)にエンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位、および6アミノ酸N末端伸長を組み込んでいる。
【0236】
81 LC−H接合部(LCおよびHドメインのCys残基間に20アミノ酸がある)にエンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位、および6アミノ酸N末端伸長を組み込んでいるLH/BをコードするDNA。
【0237】
82 配列番号81の発現によって産生されるLH/B、このポリペプチドは、LC−H接合部(LCおよびHドメインのCys残基間に20アミノ酸がある)にエンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位、および6アミノ酸N末端伸長を組み込んでいる。
【0238】
83 LC−H接合部に第Xa因子プロテアーゼ活性化部位、およびインテイン自己切断ポリペプチドに切断から生じる11アミノ酸N末端伸長を組み込んでいるLH/BをコードするDNA。
【0239】
84 配列番号83の発現によって産生されるLH/B、このポリペプチドは、LC−H接合部に第Xa因子プロテアーゼ活性化部位、およびインテイン自己切断ポリペプチドに切断から生じる11アミノ酸N末端伸長を組み込んでいる。
【0240】
85 LC−H接合部に第Xa因子プロテアーゼ活性化部位、およびTEVプロテアーゼ切断部位に切断(精製タグからLH/Bを遊離することを含む)から生じる11アミノ酸N末端伸長(第Xa因子プロテアーゼ切断部位を保持する)を組み込んでいるLH/BをコードするDNA。
【0241】
86 配列番号85の発現によって産生されるLH/B、このポリペプチドは、LC−H接合部に第Xa因子プロテアーゼ活性化部位、およびTEVプロテアーゼ切断部位に切断(精製タグからLH/Bを遊離することを含む)から生じる11アミノ酸N末端伸長(第Xa因子プロテアーゼ切断部位を保持する)を組み込んでいる。
【0242】
87 LC−H接合部に第Xa因子プロテアーゼ活性化部位、および6アミノ酸N末端伸長を組み込んでいるLH/BをコードするDNA。
【0243】
88 配列番号87の発現によって産生されるLH/B、このポリペプチドは、LC−H接合部に第Xa因子プロテアーゼ活性化部位、および6アミノ酸N末端伸長を組み込んでいる。
【0244】
89 LC−H接合部に第Xa因子プロテアーゼ活性化部位、および第Xa因子プロテアーゼ切断部位に切断(精製タグからLH/Bを遊離することを含む)から生じる11アミノ酸N末端伸長(エンテロキナーゼプロテアーゼ切断部位を保持する)を組み込んでいるLH/BをコードするDNA。
【0245】
90 配列番号89の発現によって産生されるLH/B、このポリペプチドは、LC−H接合部に第Xa因子プロテアーゼ活性化部位、および第Xa因子プロテアーゼ切断部位に切断(精製タグからLH/Bを遊離することを含む)から生じる11アミノ酸N末端伸長(エンテロキナーゼプロテアーゼ切断部位を保持する)を組み込んでいる。
【0246】
91 LC−H接合部に第Xa因子プロテアーゼ活性化部位、およびエンテロキナーゼプロテアーゼ切断部位に切断(精製タグからLH/Bを遊離することを含む)から生じる10アミノ酸N末端伸長(第Xa因子プロテアーゼ切断部位を保持する)を組み込んでいるLH/BをコードするDNA。
【0247】
92 配列番号91の発現によって産生されるLH/B、このポリペプチドは、LC−H接合部に第Xa因子プロテアーゼ活性化部位、およびエンテロキナーゼプロテアーゼ切断部位に切断(精製タグからLH/Bを遊離することを含む)から生じる10アミノ酸N末端伸長(第Xa因子プロテアーゼ切断部位を保持する)を組み込んでいる。
【0248】
93 LC−H接合部に第Xa因子プロテアーゼ活性化部位、および2アミノ酸(Gly-Ser)N末端伸長を組み込んでいるLH/BをコードするDNAであり、pGEX-4T-2で発現される。
【0249】
94 配列番号93の発現によって産生されるLH/B、このポリペプチドは、LC−H接合部に第Xa因子プロテアーゼ活性化部位、および2アミノ酸(Gly-Ser)N末端伸長を組み込んでおり、pGEX-4T-2で発現される。
【0250】
95 LC−H接合部に第Xa因子プロテアーゼ活性化部位、および7アミノ酸(Ser-Pro-Gly-Ala-Arg-Gly-Ser)N末端伸長を組み込んでいるLH/BをコードするDNAであり、pET-43aで発現される。
【0251】
96 配列番号95の発現によって産生されるLH/B、このポリペプチドは、LC−H接合部に第Xa因子プロテアーゼ活性化部位、および7アミノ酸(Ser-Pro-Gly-Ala-Arg-Gly-Ser)N末端伸長を組み込んでおり、pET-43aで発現される。
【0252】
97 LC−H接合部に第Xa因子プロテアーゼ活性化部位、および7アミノ酸(Ala-Met-Ala-Glu-Ile-Gly-Ser)N末端伸長を組み込んでいるLH/BをコードするDNAであり、pET-32aで発現される。
【0253】
98 配列番号97の発現によって産生されるLH/B、このポリペプチドは、LC−H接合部に第Xa因子プロテアーゼ活性化部位、および7アミノ酸(Ala-Met-Ala-Asp-Ile-Gly-Ser)N末端伸長を組み込んでおり、pET-32aで発現される。
【0254】
99 LC−H接合部にトロンビンプロテアーゼ活性化部位、および6アミノ酸(Ile-Ser-Glu-Phe-Gly-Ser)N末端伸長を組み込んでいるLH/BをコードするDNAであり、pMAL-c2で発現される。
【0255】
100 配列番号99の発現によって産生されるLH/B、このポリペプチドは、LC−H接合部にトロンビンプロテアーゼ活性化部位、および6アミノ酸(Ile-Ser-Glu-Phe-Gly-Ser)N末端伸長を組み込んでおり、pMAL-c2で発現される。
【0256】
101 LC−H接合部にTEVプロテアーゼ活性化部位、および6アミノ酸(Ile-Ser-Glu-Phe-Gly-Ser)N末端伸長を組み込んでいるLH/BをコードするDNAであり、pMAL-c2で発現される。
【0257】
102 配列番号101の発現によって産生されるLH/B、このポリペプチドは、LC−H接合部にTEVプロテアーゼ活性化部位、および6アミノ酸(Ile-Ser-Glu-Phe-Gly-Ser)N末端伸長を組み込んでおり、pMAL-c2で発現される。
【0258】
103 LC−H接合部に第Xa因子プロテアーゼ活性化部位、および6アミノ酸(Ile-Ser-Glu-Phe-Gly-Ser)N末端伸長を組み込んでいるLH/BをコードするDNAであり、pMAL-c2で発現される。DNAは、LC−H接合部に新規のリンカー配列の組み込みのためのMfeIおよびAvrII制限酵素部位を組み込む。
【0259】
104 配列番号103の発現によって産生されるLH/B、このポリペプチドは、LC−H接合部に第Xa因子プロテアーゼ活性化部位、および6アミノ酸(Ile-Ser-Glu-Phe-Gly-Ser)N末端伸長を組み込んでおり、pMAL-c2で発現される。
【0260】
105 LC−H接合部(LCおよびHドメインのCys残基間に20アミノ酸がある)にエンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位、および6アミノ酸(Ile-Ser-Glu-Phe-Gly-Ser)N末端伸長を組み込んでいるLH/BをコードするDNA。ArvII制限部位は欠失されている。
【0261】
106 配列番号105の発現によって産生されるLH/B、このポリペプチドは、LC−H接合部(LCおよびHドメインのCys残基間に20アミノ酸がある)にエンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位、および6アミノ酸(Ile-Ser-Glu-Phe-Gly-Ser)N末端伸長を組み込んでいる。
【0262】
107 LC−H接合部(LCおよびHドメインのCys残基間に20アミノ酸がある)にエンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位、および6アミノ酸(Ile-Ser-Glu-Phe-Gly-Ser)N末端伸長を組み込んでいるLH/BをコードするDNA。
【0263】
108 配列番号107の発現によって産生されるLH/B、このポリペプチドは、LC−H接合部(LCおよびHドメインのCys残基間に20アミノ酸がある)にエンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位、および6アミノ酸(Ile-Ser-Glu-Phe-Gly-Ser)N末端伸長を組み込んでいる。
【0264】
109 マルトース結合タンパク質−第Xa因子−インテイン−LC/B−第Xa因子−H発現構築物をコードするDNA。
【0265】
110 配列番号109の発現によって産生されるMBP−LH/B、このポリペプチドは、MBP精製タグの除去を容易にするための自己切断可能なインテイン配列、およびLC−H接合部に第Xa因子プロテアーゼ活性化部位を組み込んでいる。
【0266】
111 LC−H接合部(LCおよびHドメインのCys残基間に11アミノ酸がある)にエンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位、およびベクターのatt部位適合に由来する11アミノ酸(Thr-Ser-Leu-Tyr-Lys-Lys-Ala-Gly-Phe-Gly-Ser)N末端伸長を組み込んでいるLH/BをコードするDNA。この構築物は、フラグメントとリガンドとの直接融合を容易にするためにC末端停止コドンが除去されている。
【0267】
112 配列番号111の発現によって産生されるLH/B、このポリペプチドは、LC−H接合部(LCおよびHドメインのCys残基間に11アミノ酸がある)にエンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位、およびベクターのatt部位適合に由来する11アミノ酸(Thr-Ser-Leu-Tyr-Lys-Lys-Ala-Gly-Phe-Gly-Ser)N末端伸長を組み込んでいる。
【0268】
113 停止コドンを含まず、Hドメインの最初の6アミノ酸を組み込むリンカーペプチド、およびCys残基によって結合したエンテロキナーゼプロテアーゼ切断部位を有するLC/BをコードするDNA。
【0269】
114 配列番号113の発現によって産生されるLC/B、このポリペプチドは、停止コドンを含まず、Hドメインの最初の6アミノ酸を組み込むリンカーペプチド、およびCys残基によって結合したエンテロキナーゼプロテアーゼ切断部位を有する。
【0270】
115 LC−H接合部に第Xa因子切断部位、ベクターのatt部位適合に由来する11アミノ酸(Thr-Ser-Leu-Tyr-Lys-Lys-Ala-Gly-Phe-Gly-Ser)N末端伸長、および分子クランピングを容易にするためのC末端(Glu)ペプチドを組み込んでいるLH/CをコードするDNA。
【0271】
116 配列番号115の発現によって産生されるLH/C、このポリペプチドは、LC−H接合部に第Xa因子切断部位、ベクターのatt部位適合に由来する11アミノ酸(Thr-Ser-Leu-Tyr-Lys-Lys-Ala-Gly-Phe-Gly-Ser)N末端伸長、および分子クランピングを容易にするためのC末端(Glu)ペプチドを組み込んでいる。
【0272】
117 LC−H接合部に第Xa因子切断部位、ベクターのatt部位適合に由来する11アミノ酸(Thr-Ser-Leu-Tyr-Lys-Lys-Ala-Gly-Phe-Gly-Ser)N末端伸長、および分子クランピングを容易にするために1対のCys残基によって結合されたC末端fosリガンドを組み込んでいるLH/CをコードするDNA。
【0273】
118 配列番号117の発現によって産生されるLH/C、このポリペプチドは、LC−H接合部に第Xa因子切断部位、ベクターのatt部位適合に由来する11アミノ酸(Thr-Ser-Leu-Tyr-Lys-Lys-Ala-Gly-Phe-Gly-Ser)N末端伸長、および分子クランピングを容易にするために1対のCys残基によって結合されたC末端fosリガンドを組み込んでいる。
【0274】
119 LC−H接合部に第Xa因子切断部位、ベクターのatt部位適合に由来する11アミノ酸(Thr-Ser-Leu-Tyr-Lys-Lys-Ala-Gly-Phe-Gly-Ser)N末端伸長、および分子クランピングを容易にするために1対のCys残基によって結合されたC末端(Glu)ペプチドを組み込んでいるLH/CをコードするDNA。
【0275】
120 配列番号119の発現によって産生されるLH/C、このポリペプチドは、LC−H接合部に第Xa因子切断部位、ベクターのatt部位適合に由来する11アミノ酸(Thr-Ser-Leu-Tyr-Lys-Lys-Ala-Gly-Phe-Gly-Ser)N末端伸長、および分子クランピングを容易にするために1対のCys残基によって結合されたC末端(Glu)ペプチドを組み込んでいる。
【0276】
121 LC−H接合部に第Xa因子切断部位、ベクターのatt部位適合に由来する11アミノ酸(Thr-Ser-Leu-Tyr-Lys-Lys-Ala-Gly-Phe-Gly-Ser)N末端伸長、および分子クランピングを容易にするためのC末端fosリガンドを組み込んでいるLH/CをコードするDNA。
【0277】
122 配列番号121の発現によって産生されるLH/C、このポリペプチドは、LC−H接合部に第Xa因子切断部位、ベクターのatt部位適合に由来する11アミノ酸(Thr-Ser-Leu-Tyr-Lys-Lys-Ala-Gly-Phe-Gly-Ser)N末端伸長、および分子クランピングを容易にするためのC末端fosリガンドを組み込んでいる。
【0278】
123 LC−H接合部に第Xa因子切断部位、およびベクターのatt部位適合に由来する15アミノ酸(Ile-Thr-Ser-Leu-Tyr-Lys-Lys-Ala-Gly-Phe-Gly-Ser-Leu-Asp-His)N末端伸長を組み込んでいるLH/CをコードするDNA。
【0279】
124 配列番号123の発現によって産生されるLH/C、このポリペプチドは、LC−H接合部に第Xa因子切断部位、およびベクターのatt部位適合に由来する15アミノ酸(Ile-Thr-Ser-Leu-Tyr-Lys-Lys-Ala-Gly-Phe-Gly-Ser-Leu-Asp-His)N末端伸長を組み込んでいる。
【0280】
125 LC−H接合部に第Xa因子切断部位、およびエンテロキナーゼでのタンパク質の切断後に誘導される11アミノ酸(Val-Pro-Glu-Phe-Gly-Ser-Ser-Arg-Val-Asp-His)N末端伸長を組み込んでいるLH/CをコードするDNA。
【0281】
126 配列番号125の発現によって産生されるLH/C、このポリペプチドは、LC−H接合部に第Xa因子切断部位、およびN末端MBP精製タグを遊離させるためにエンテロキナーゼでのタンパク質の切断後に誘導される11アミノ酸(Val-Pro-Glu-Phe-Gly-Ser-Ser-Arg-Val-Asp-His)N末端伸長を組み込んでいる。
【0282】
127 LC−H接合部に第Xa因子切断部位、およびジェネナーゼでのタンパク質の切断後に誘導される10アミノ酸(Val-Glu-Phe-Gly-Ser-Ser-Arg-Val-Asp-His)N末端伸長を組み込んでいるLH/CをコードするDNA。
【0283】
128 配列番号127の発現によって産生されるLH/C、このポリペプチドは、LC−H接合部に第Xa因子切断部位、およびN末端MBP精製タグを遊離させるためにジェネナーゼでのタンパク質の切断後に誘導される10アミノ酸(Val-Glu-Phe-Gly-Ser-Ser-Arg-Val-Asp-His)N末端伸長を組み込んでいる。
【0284】
129 LC−H接合部に第Xa因子切断部位、および第Xa因子でのタンパク質の切断後に誘導される11アミノ酸(Ile-Ser-Glu-Phe-Gly-Ser-Ser-Arg-Val-Asp-His)N末端伸長を組み込んでいるLH/CをコードするDNA。
【0285】
130 配列番号129の発現によって産生されるLH/C、このポリペプチドは、LC−H接合部に第Xa因子切断部位、および第Xa因子でのタンパク質の切断後に誘導される11アミノ酸(Ile-Ser-Glu-Phe-Gly-Ser-Ser-Arg-Val-Asp-His)N末端伸長を組み込んでいる。
【0286】
131 LC−H接合部に第Xa因子切断部位、ベクターのatt部位適合に由来する15アミノ酸(Ile-Thr-Ser-Leu-Tyr-Lys-Lys-Ala-Gly-Phe-Gly-Ser-Leu-Asp-His)N末端伸長および21アミノ酸(Leu-Gln-Thr-Leu-Asp-Asp-Pro-Ala-Phe-Leu-Tyr-Lys-Val-Val-Ile-Phe-Gln-Asn-Ser-Asp-Pro)C末端伸長を組み込んでいるLH/CをコードするDNA。クローンは、HドメインのC末端上へのリガンドの融合を容易にするために停止コドンを有さない。
【0287】
132 配列番号131の発現によって産生されるLH/C、このポリペプチドは、LC−H接合部に第Xa因子切断部位、ベクターのatt部位適合に由来する15アミノ酸(Ile-Thr-Ser-Leu-Tyr-Lys-Lys-Ala-Gly-Phe-Gly-Ser-Leu-Asp-His)N末端伸長および21アミノ酸(Leu-Gln-Thr-Leu-Asp-Asp-Pro-Ala-Phe-Leu-Tyr-Lys-Val-Val-Ile-Phe-Gln-Asn-Ser-Asp-Pro)C末端伸長を組み込んでいる。クローンは、HドメインのC末端上へのリガンドの融合を容易にするために停止コドンを有さない。
【0288】
133 LC−H接合部に第Xa因子切断部位、ベクターのatt部位適合に由来するN末端伸長およびC末端伸長を組み込んでいるLH/CをコードするDNA。クローンは、HドメインのC末端上へのリガンドの融合を容易にするために停止コドンを有さない。
【0289】
134 Gateway部位特異的組換えクローニングシステムにおける使用のためのpENTRY2で調製される場合のLC/CをコードするDNA。LC/Cは、組換えによるLC−H融合物の生成を容易にするために停止コドンを有さない。
【0290】
135 Gateway部位特異的組換えクローニングシステムにおける使用のためのpENTRY2で調製される場合のLH/CをコードするDNA。LH/Cは、停止コドンを有し、したがって適切な仕向ベクターへの組み込みのための正確な形式である。
【0291】
136 Gateway部位特異的組換えクローニングシステムにおける使用のためのpENTRY2で調製される場合のLH/CをコードするDNA。LH/Cは、組換えによるLH/C−リガンド融合物の生成を容易にするために停止コドンを有さない。
【0292】
137 侵入ベクター由来のエンドペプチダーゼフラグメントを挿入するために適切な仕向ベクターであるように改変されたpMTLベクターのDNA配列。ベクターは、pMAL-c2XへのGatewayベクター変換カセットリーディングフレームAの挿入によって構築された。発現カセット(ptacプロモーター、雄遺伝子、Gatewayカセット、およびポリリンカー)は、続いてpMTLにクローニングされた。
【0293】
138 LH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物をコードするDNA、ここで、LC−H接合部は、特異的エンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位を組み込み、そしてリガンドは、RNアーゼAループ由来のペプチド配列によってHドメインから離れている。
【0294】
139 配列番号138の発現によって産生されるLH/A−リガンド(Erythrina cristagalliレクチン)融合物、ここで、LC−H接合部は、特異的エンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位を組み込み、そしてリガンドは、RNアーゼAループ由来のペプチド配列によってHドメインから離れている。
【0295】
140 破傷風菌毒素をコードするDNA。
【0296】
141 配列番号140の発現によって産生される破傷風菌毒素、このポリペプチドは、LC、H、およびHドメインを組み込んでいる。
【0297】
142 破傷風菌毒素のLHをコードするDNA、ここで、クローンの3’末端は、配列....Glu-Glu-Asp-Ile-Asp-Val-停止コドンをコードし、残基Val879で終わる。
【0298】
143 配列番号142の発現によって産生される破傷風菌毒素のLH、このポリペプチドは、配列....Glu-Glu-Asp-Ile-Asp-Val-停止コドンで終わり、残基Val879で終わる。
【0299】
144 破傷風菌毒素のLHをコードするDNA、ここで、クローンの3’末端は、配列番号142のような配列....Glu-Glu-Asp-Ile-Asp-Val-停止コドンをコードする。クローンはまた、LCおよびHドメインの接合部に特異的エンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位を組み込む。
【0300】
145 配列番号144の発現によって産生される破傷風菌毒素のLH、このポリペプチドは、配列番号143のような配列....Glu-Glu-Asp-Ile-Asp-Val-停止コドンで終わる。タンパク質はまた、LCおよびHドメインの接合部に特異的エンテロキナーゼプロテアーゼ活性化部位を組み込む。
【0301】
146 破傷風菌毒素のLHをコードするDNA、ここで、クローンの3’末端は、配列....Glu-Glu-Asp-Ile-Asp-Val-Ile-Leu-Lys-Lys-Ser-Thr-Ile-Leu-停止コドンをコードし、残基Leu887で終わる。
【0302】
147 配列番号146の発現によって産生される破傷風菌毒素のLH、このポリペプチドは、配列....Glu-Glu-Asp-Ile-Asp-Val-Ile-Leu-Lys-Lys-Ser-Thr-Ile-Leu-停止コドンで終わり、残基Leu887で終わる。
【0303】
148 LH423/A(QE)をコードするDNA。
【0304】
149 LH423/A(QE)、これは、BoNT/AのL鎖、およびBoNT/AのH鎖のN末端の423アミノ酸残基を含む一本鎖ポリペプチドである。このポリペプチドは、GST精製タグからの切断により生成し、そして精製タグからのL鎖のタンパク質分解切断から生じるL鎖のN末端における2アミノ酸伸長(GS)を有する。このポリペプチドは、天然の血清型AのL鎖におけるQと比較して2位に改変アミノ酸残基Eを有する。
【0305】
150 LH423/A(QE)をコードするDNA、ここで、DNAは大腸菌コドンバイアスを有する。
【0306】
151 LH423/A(QE)、これは、配列番号149と等価である。
【0307】
152 LH423/A(QE)をコードするDNA、ここで、DNAは大腸菌コドンバイアスを有する。
【0308】
153 LH423/A(QE)、これは、配列番号151と等価であるが、L鎖へのいずれのN末端伸長も含まない。
【0309】
154 LH423/A(QE)をコードするDNA。
【0310】
155 LH423/A(QE)、これは、配列番号149と等価であるが、L鎖へのいずれのN末端伸長も含まない。
【0311】
156 FXa423/A(QE)をコードするDNA。
【0312】
157 FXa423/A(QE)、これは、配列番号151と等価であり、そして第Xa因子切断部位がポリペプチドのL鎖成分とH鎖成分との間に導入されている。
【0313】
158 LH423/A(QE)−6HisをコードするDNA。
【0314】
159 LH423/A(QE)−6His、これは、天然のLH分子であり、そしてC末端ポリHis精製タグを含む。
【0315】
160 FXa423/A(QE)FXa−6HisをコードするDNA。
【0316】
161 FXa423/A(QE)FXa−6His、これは、配列番号157と等価であり、そしてポリHis精製タグの除去を容易にするために第Xa因子切断部位を含む。
【0317】
162 LH423/A(QE,H227Y)をコードするDNA。
【0318】
163 LH423/A(QE,H227Y)、これは、配列番号149と等価であり、そしてポリペプチドは、天然の血清型AのL鎖におけるHと比較して227位に改変アミノ酸残基Yを有する。
【0319】
164 LH423/A(QE,H227Y)をコードするDNA、ここで、DNAは大腸菌コドンバイアスを有する。
【0320】
165 LH423/A(QE,H227Y)、これは、配列番号163と等価である。
【0321】
166 LH423/A(QE,E224Q)をコードするDNA、ここで、DNAは大腸菌コドンバイアスを有する。
【0322】
167 LH423/A(QE,E224Q)、これは、配列番号151と等価であり、そしてポリペプチドは、天然の血清型AのL鎖におけるEと比較して224位に改変アミノ酸残基Qを有する。
【0323】
168 LH423/A(QE,E224Q,H227Y)をコードするDNA、ここで、DNAは大腸菌コドンバイアスを有する。
【0324】
169 LH423/A(QE,E224Q,H227Y)、これは、配列番号167と等価であり、そしてポリペプチドは、天然の血清型AのL鎖におけるHと比較して227位に改変アミノ酸残基Yを有する。
【0325】
170 LFXa/H417/BをコードするDNA。
【0326】
171 LFXa/H417/B、これは、BoNT/BのL鎖、およびBoNT/BのH鎖のN末端の417アミノ酸残基を含む一本鎖ポリペプチドであり、第Xa因子切断部位がL鎖とH鎖との間に存在する。
【0327】
172 LFXa/H417/BをコードするDNA。
【0328】
173 LFXa/H417/B、これは、BoNT/BのL鎖、およびBoNT/BのH鎖のN末端の417アミノ酸残基を含む一本鎖ポリペプチドであり、第Xa因子切断部位がL鎖とH鎖との間に存在する。
【0329】
174 LFXa/H417/BをコードするDNA。
【0330】
175 LFXa/H417/B、これは、配列番号173と等価であり、改変されたリンカー配列が、配列番号173に対してL鎖とH鎖との間に存在する。
【実施例】
【0331】
実施例1
2616塩基対の二本鎖遺伝子配列(配列番号1)を、合成DNA、染色体DNA、およびポリメラーゼ連鎖反応で生成したDNAの組み合わせから組み立てた(図2)。この遺伝子は、軽鎖全体(LC、448アミノ酸)およびボツリヌス菌神経毒素A型の重鎖(H)のアミノ末端の423残基に対応する871アミノ酸残基のポリペプチドをコードする。この組換え産物を、LH423/Aフラグメントと命名する(配列番号2)。
【0332】
組換え産物の構築
最初の918塩基対の組換え遺伝子を、短いオリゴヌクレオチドの連結によって合成して、大腸菌コドンバイアスを有するコード配列を生成した。この領域における両方のDNA鎖を、短い重複オリゴヌクレオチドとして完全合成し、リン酸化し、アニールし、そしてライゲートして、独特のKpnI制限部位を有する完全合成領域末端を生成した。LH423/Aコード配列の残りを、Clostridium botulinum由来のトータル染色体DNAからPCR増幅し、そして遺伝子の合成部分にアニールした。
【0333】
次いで、内部PCR増幅産物配列を欠失させ、そしてC. botulinum染色体起源のクローン由来の天然の完全に配列決定された領域と置換して、最終遺伝子構築物を生成した。最終組成は、合成DNA(塩基1〜913)、ポリメラーゼ増幅したDNA(塩基914〜1138および1976〜2616)、およびC. botulinum染色体起源である残り(塩基1139〜1975)である。次いで、組み立てた遺伝子を完全に配列決定し、そして発現分析用の種々の大腸菌プラスミドベクターにクローニングした。
【0334】
組換え遺伝子の発現およびタンパク質産物の回収
DNAを、99,951ダルトンの推定分子量の可溶性一本鎖ポリペプチドを産生する単一の核酸転写物として、大腸菌で発現させる。遺伝子は、現在は、Schistosoma japonicumのグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)の市販の利用可能なコード配列への融合物として大腸菌で発現されるが、pEZZ18、pTrc99、pFLAG、またはpMALシリーズのような広い範囲の組換え遺伝子発現ベクターのいずれも、グラム陽性桿菌、酵母P. pastorisのような他の真核生物または原核生物宿主において、あるいは昆虫または哺乳動物細胞において、適切な条件下での発現と等しく効果的であり得る。
【0335】
現在は、発現構築物を有する大腸菌を、細胞密度(バイオマス)が600nmで0.4〜0.6の吸光度を有し、そして細胞が対数増殖中期になるまで、Luria-Bertaniブロス(Lブロス、pH7.0、10g/lのバクトトリプトン、5g/lのバクトイーストエキストラクト、および10g/lの塩化ナトリウムを含む)中で37℃にて増殖させる。次いで、遺伝子の発現を、0.5mMの最終濃度のイソプロピルチオ-β-ガラクトシダーゼ(IPTG)の添加によって誘導する。組換え遺伝子発現は、25℃の低い温度にて90分間行う。次いで、細胞を遠心分離によって回収し、10 mM Na2HPO4、0.5 M NaCl、10 mM EGTA、0.25% Tween、pH 7.0を含む緩衝液に再懸濁し、次いで−20℃で凍結する。組換えタンパク質の抽出については、細胞を超音波処理によって破砕する。次いで、細胞抽出物を、遠心分離によって破砕物を取り除き、そして可溶性組換え融合タンパク質(GST−LH423/A)を含む澄明になった上清液を、精製するまで−20℃で保存する。組換え体物質の割合は、超音波処理によって放出されることがなく、これはおそらく不溶性または封入体形成を反映する。現在、発明者らは、分析のためにこの物質を抽出しないが、所望であれば、これは、当業者に公知の方法を用いて容易に達成され得る。
【0336】
組換えGST−LH423/Aを、市販の調製されたアフィニティーマトリクスであるグルタチオンSepharose上への吸着、次いで還元型グルタチオンでの溶出によって精製する。次いで、GSTアフィニティー精製マーカーをタンパク質分解切断およびグルタチオンSepharoseへの再吸着によって除去し;組換えLH423/Aを非吸着材料中に回収する。
【0337】
構築物改変体
この分子の改変体であるLH423/A(QE,N26K,A27Y)(配列番号26)を、産生した。ここでは、LH423/Aの軽鎖内で3つのアミノ酸残基が改変されており、BonT/Aの軽鎖の公表されたアミノ酸配列とは異なる軽鎖配列を含むポリペプチドを産生する。
【0338】
発現させた遺伝子配列および精製した対応する産物のさらに2つの改変体は、BoNT/Aの推定の天然のL鎖と比較して23アミノ酸N末端伸長を有する23LH423/A(QE,N26K,A27Y)(配列番号4)、および2アミノ酸N末端伸長を有するLH423/A(QE,N26K,A27Y)(配列番号6)である(図4)。
【0339】
さらに他の改変体では、配列番号1に記載の遺伝子配列のヌクレオチド1344と1345との間にEco 47 III制限部位を含む遺伝子が産生されている。この改変は、天然の神経毒素において重鎖と軽鎖との界面を示す遺伝子中の位置に制限部位を提供し、そして当業者に公知の標準的な制限酵素方法論を用いてこの点に挿入する能力を提供する。多くの制限部位のいずれか1つがこのように用いられ得、そしてEco 47 III挿入が単にこのアプローチの例示であることはまた、当業者に自明である。同様に、記載の方法での制限部位の挿入が本発明のいずれの遺伝子においても行われ得ることは、当業者に自明である。記載された遺伝子は、発現された場合、ポリペプチドL/4423/A(配列番号10)をコードし、これは、天然のBoNT/Aの重鎖のアミノ末端に等価の位置でLH423/Aのアミノ酸448と449との間に追加の4アミノ酸を含む。
【0340】
遺伝子の改変体を発現させたLFXa/3423/A(配列番号12)では、特異的タンパク質分解切断部位を、軽鎖ドメインのカルボキシ末端に、詳細にはL/4423/Aの残基448の後に組み込んだ。組み込まれた切断部位は、第Xa因子プロテアーゼ用であり、そして配列番号1の改変によってコードされた。他の特定のプロテアーゼについての切断部位が同様に組み込まれ、そして必要とされる切断部位をコードするあらゆる遺伝子配列が用いられ得ることは、当業者に明らかである。所定のプロテアーゼ部位をコードするためのこの方法での遺伝子配列の改変は、本発明のあらゆる遺伝子において行われ得る。
【0341】
FXa/3423/Aの改変体を構築し、ここでは、第3ドメインがポリペプチドのカルボキシ末端に存在し、これはポリペプチドに特異的結合活性を組み込む。
【0342】
記載した特定の例は以下のとおりである:
(1)LFXa/3423/A−IGF−1(配列番号14)、ここでは、カルボキシ末端ドメインは、インスリン様増殖因子1(IGF−1)と等価の配列を有し、そして高い親和性でインスリン様増殖因子レセプターと結合し得る;
(2)LFXa/3423/A−CtxA14(配列番号16)、ここでは、カルボキシ末端ドメインは、コレラトキシンのAサブユニット(CtxA)のカルボキシ末端由来の14アミノ酸と等価の配列を有し、そしてそれによってコレラトキシンBサブユニットペンタマーと相互作用し得る;および
(3)LFXa/3423/A−ZZ(配列番号18)、ここでは、カルボキシ末端ドメインは、タンデム繰り返し合成IgG結合ドメインである。この改変体もまた、本発明に適用可能な他の改変を例示し、すなわち、クロストリジウム菌重鎖配列の末端と結合リガンドをコードする配列との間に位置するプロテアーゼ切断部位をコードする配列の遺伝子に包含される。詳細には、この例では、ジェネナーゼ切断部位をコードするヌクレオチド2650〜2666に配列が挿入される。この遺伝子の発現は、H機能を提供するドメインと結合ドメインとの間の界面に所望のプロテアーゼ感受性を有するポリペプチドを産生する。このような改変は、関連のプロテアーゼでのポリペプチドの処理によるC末端結合ドメインの選択的除去を可能にする。
【0343】
このような多くの結合ドメインのいずれか1つが、本発明のポリペプチド配列に組み込まれ得、そして上記の例がこの概念を単に例示するだけであることは明らかである。同様に、このような結合ドメインは、本発明の基礎であるポリペプチド配列のいずれにも組み込まれ得る。さらに、このような結合ドメインが、本発明のポリペプチド分子内の任意の適切な位置に組み込まれ得ることに留意すべきである。
【0344】
したがって、本発明のさらなる実施態様を、所望の位置に所望の制限エンドヌクレアーゼ部位をさらに含む本発明のDNAによって、および所望の位置に所望のプロテアーゼ切断部位をさらに含む本発明のポリペプチドによって説明する。
【0345】
制限エンドヌクレアーゼ部位は、本発明のポリペプチドを発現させるための発現ベクターの製造におけるDNAのさらなる操作を容易にするように導入され得;これは、DNAの製造における先の工程の結果として導入され得;これは、公知配列の挿入、置換、または欠失による改変によって導入され得る。DNAの改変の結果、アミノ酸配列は変化しなくてもよく、またはアミノ酸配列が変化して、例えば、所望のプロテアーゼ切断部位の導入を生じてもよく、いすれにせよ、ポリペプチドは、本発明に必要とされる特性を有する第1および第2ドメインを保持する。
【0346】
図10は、発現産物の模式図であり、本実施例に記載の特徴を例示する。詳細には、ボツリヌス菌神経毒素A型の軽鎖に等価のドメインおよびボツリヌス菌神経毒素A型の重鎖のHドメインに等価のドメインを組み込んでいる一本鎖ポリペプチドを示し、N末端伸長は、アフィニティー精製ドメイン、すなわちGSTを提供し、そしてC末端伸長は、リガンド結合ドメイン、すなわちIgG結合ドメインを提供している。ポリペプチドのドメインは、図面に例示するようにドメインの選択的酵素分離を可能にする特異的プロテアーゼ切断部位によって空間的に離されている。この概念は、図11により詳細に記載され、ここでは、種々のプロテアーゼ感受性が例示の目的で定義されている。
【0347】
産物活性のアッセイ
ボツリヌス菌神経毒素A型のLCは、シナプス小胞結合タンパク質SNAP-25に対して亜鉛依存的エンドペプチダーゼ活性を発揮し、これは、特異的な様式で1つのペプチド結合を切断する。LH423/A(QE,N26K,A27Y)(配列番号6)は、天然の毒素と同じ条件下でインビトロで合成SNAP-25基質を切断する(図3)。したがって、天然の配列に対するLH423/A(QE,N26K,A27Y)のポリペプチド配列のおよび最小の機能的LCドメイン内での改変は、LCドメインの機能的活性を抑制しない。
【0348】
この活性は、一本鎖ポリペプチド産物をジスルフィド結合した二本鎖種に変換するための組換えGST−LH423/A(QE,N26K,A27Y)のタンパク質分解改変に依存的である。これは、現在は、タンパク質分解酵素のトリプシンを用いて行われる。組換え産物(100〜600μg/ml)を、140 mM NaCl、2.7 mM KCl、10 mM Na2HPO4、1.8 mM KH2PO4、pH 7.3を含む溶液中で、トリプシン(10μg/ml)とともに37℃にて10〜50分間インキュベートする。反応を、100倍モル過剰のトリプシンインヒビターの添加によって停止する。トリプシンによる活性化は、ジスルフィド結合した二本鎖種を生成し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびポリクローナル抗ボツリヌス菌神経毒素A型抗血清を用いるイムノブロッティング分析によって決定される。
【0349】
LH423/Aは、トリプシンの存在下でより安定であり、そして23LH423/Aよりもインビトロペプチド切断アッセイにおいてより活性である。しかし、両方の改変体とも、インビトロペプチド切断アッセイにおいては完全に機能的である。これは、組換え体分子が、N末端アミノ酸伸長に耐性があり、そしてこれは、当業者に明らかなように、他の化学または有機部分へ広げられ得ることを示す。
【0350】
実施例2
本発明のさらなる例示として、ボツリヌス菌神経毒素B型の軽鎖全体に対応し、そして重鎖のアミノ末端由来の残基の数を変化させているポリペプチドをコードする多くの遺伝子配列が組み立てられている。この開示の例示において、組み立てられた遺伝子配列は、染色体DNAおよびポリメラーゼ連鎖反応で生成したDNAの組み合わせから得られ、したがって天然の遺伝子の等価の領域のヌクレオチド配列を有し、そのためこの開示の物質が天然ならびに合成の遺伝子配列に基づき得るという原理を例示する。
【0351】
本実施例に関連する遺伝子配列を、Sambrook J、Fritsch E F、およびManiatis T (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第2版)、Ford N、Nolan C、Ferguson M、およびOckler M (編), Cold Spring Harbor Laboratory Press、New Yorkに詳述されるおよび当業者に公知の方法論を用いて、すべて組み立てて発現させた。
【0352】
神経毒素B型の軽鎖全体(443アミノ酸)および重鎖のアミノ末端由来の728残基に対応する1171アミノ酸のポリペプチドをコードする遺伝子を構築した。この遺伝子の発現は、ポリペプチドLH728/B(配列番号20)を産生し、これは、全長BoNT/Bの特異的神経結合活性がない。
【0353】
改変体ポリペプチドLH417/B(配列番号22)をコードする遺伝子も組み立てた。これは、天然のLH/Aにおける重鎖フラグメントのC末端の配列とのアミノ酸相同性によって等価なアミノ酸配列をそのカルボキシ末端に有する。
【0354】
改変体ポリペプチドLH107/B(配列番号24)をコードする遺伝子も組み立てた。これは、発現したポリペプチドの溶解性を維持するために十分なBoNT/Bの重鎖のアミノ末端由来の短い配列をそのカルボキシ末端に発現する。
【0355】
構築物改変体
配列番号21に示す遺伝子の最初の274塩基のコード配列の改変体を産生した。これは、非天然ヌクレオチド配列であるが、天然のポリペプチドをコードする。
【0356】
2つの二本鎖、すなわち268塩基対および951塩基対の遺伝子配列を、重複プライマーPCR方策を用いて生成した。大腸菌コドン使用バイアスを有するように、これらの配列のヌクレオチドバイアスを設計した。
【0357】
第1の配列については、ボツリヌス菌毒素B型についての天然の配列の最初の(5’)268ヌクレオチドを示す6個のオリゴヌクレオチドを合成した。第2の配列については、ボツリヌス菌毒素B型についての天然の配列の内部配列のヌクレオチド691〜1641を示す23個のオリゴヌクレオチドを合成した。これらのオリゴヌクレオチドは、57〜73ヌクレオチドの長さの範囲であった。重複領域である17〜20ヌクレオチドを設計して、52〜56℃の範囲の融点を得た。さらに、合成産物の末端制限エンドヌクレアーゼ部位を構築して、天然の配列の正確な対応領域へのこれらの産物の挿入を容易にした。268bpの5’合成配列は、元の最初の268塩基の代わりに、配列番号21に示す遺伝子に組み込まれている(そして配列番号27に示される)。同様に、配列は、実施例の他の遺伝子に挿入され得る。
【0358】
配列番号21のヌクレオチド691〜1641に等価であり、そして非天然のコドン使用を用いるが天然のポリペプチド配列をコードする他の改変体配列が、内部合成配列を用いて構築されている。この配列(配列番号28)は、実施例の遺伝子のいずれかにおける等価のコード配列の代わりに、単独でまたは他の改変体配列と組み合わせて組み込まれ得る。
【0359】
実施例3
本発明の有用性の例は、非毒性かつ有効な免疫源としてである。組換え体である一本鎖物質の非毒性の性質を、GST−LH423/Aのマウスへの腹腔内投与によって証明した。ポリペプチドを、上記のように調製しそして精製した。最終調製物中の免疫反応性物質の量を、天然のLH/A上のコンホメーション依存的エピトープに対して反応性であるモノクローナル抗体(BA11)を用いる酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定した。組換え体物質を、リン酸緩衝化生理食塩液(PBS;NaCl 8 g/l、KCl 0.2 g/l、Na2HPO4 1.15 g/l、KH2PO4 0.2 g/l、pH 7.4)中で連続希釈し、0.5ml容量を1群4匹からなる3群のマウスに注射し、各群のマウスは、それぞれ10、5、および1マイクログラムの物質を投与された。マウスを4日間観察し、そして死亡は見られなかった。
【0360】
免疫接種については、フロイント完全アジュバント(初回注射のみ)またはフロイント不完全アジュバントを用いる1.0ml容量の油中水型エマルジョン(1:1 容量:容量)中の20μgのGST−LH423/Aを、モルモットに2箇所の背部皮下注射によって投与した。10日間隔で3回注射し(1日目、10日目、および20日目)、そして30日目に抗血清を採取した。抗血清は、天然のボツリヌス菌神経毒素A型およびその誘導体であるLH/Aに対して免疫反応性であることが、ELISAによって示された。1:2000希釈でボツリヌス菌神経毒素反応性である抗血清を、マウスでの中和効率の評価に用いた。中和アッセイについては、0.1mlの抗血清を、2.5mlのゼラチンリン酸緩衝液(GPB;Na2HPO4無水物 10 g/l、ゼラチン(Difco) 2 g/l、pH 6.5〜6.6)に希釈し、これは0.5μg(5×10-6g)〜5ピコグラム(5×10-12g)の希釈範囲を含んでいた。0.5mlアリコートをマウスに腹腔内注射し、そして4日間にわたって死亡を記録した。結果を表3および表4に示す。0.5mlの1:40希釈した抗GST−LH423/A抗血清が、5pg〜50ngの範囲のボツリヌス菌神経毒素での腹腔内チャレンジに対してマウスを防御し得ることが明らかに示され得る(1〜10,000マウスLD50;1マウスLD50=5pg)。
【0361】
【表3】

【0362】
【表4】

【0363】
実施例4−大腸菌における組換え体LH107/Bの発現
ボツリヌス菌神経毒素A型以外の血清型のクロストリジウム菌神経毒素のLHをコードする核酸の発現の例示として、ポリペプチドLH107/B(配列番号24)をコードする核酸配列(配列番号23)を、市販の入手可能なプラスミドpET28a(Novogen, Madison, WI, USA)に挿入した。この核酸を、N末端T7融合ペプチドとの融合タンパク質として、1mMでのIPTG誘導下で37℃にて90分間、E. coli BL21 (DE3)(New England BioLabs, Beverley, MA, USA)中で発現させた。培養物を回収し、そして組換えタンパク質を、LH423/Aについての既述のように抽出した。
【0364】
組換えタンパク質を回収し、そしてT7タグ精製キット(New England BioLabs, Beverley, MA, USA)を用いる固定化抗T7ペプチドモノクローナル抗体への免疫アフィニティー吸着によって細菌ペーストライセートから精製した。精製した組換えタンパク質をグラジエント(4〜20%)変性SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(Novex, San Diego, CA, USA)およびポリクローナル抗ボツリヌス菌神経毒素型抗血清または抗T7抗血清を用いるウエスタンブロッティングによって分析した。ウエスタンブロッティング試薬はNovexから購入し、免疫染色したタンパク質を、Amershamから購入した増強化学発光システム(ECL)を用いて可視化した。抗T7抗体および抗ボツリヌス菌神経毒素B型抗血清に反応性の組換え産物の発現を、図13に示す。
【0365】
組換え体産物は可溶性であり、そしてエンドペプチダーゼ活性の原因である軽鎖の一部を保持していた。
【0366】
したがって、本発明は、特に、免疫源として、酵素標準として、およびWO-A-94/21300に記載される分子の合成のための成分として有用な、組換えポリペプチドを提供する。
【0367】
実施例5:LHCの発現および精製
天然のクロストリジウム菌神経毒素遺伝子由来のLHC DNAフラグメントを、SalI-PstIフラグメントとして、発現ベクターpMal-c2x(New England Biolabs)中にサブクローニングした。遺伝子フラグメントおよびMBP融合タンパク質からタンパク質分解プロセシング後に生成されるタンパク質産物を、配列番号129/130に定義する。pETベクター(Novagen)、pGEXベクター(Pharmacia)、またはpQEベクター(Qiagen)のような他の市販の入手可能な発現系も、遺伝子フラグメントの発現に適切である。
【0368】
発現クローンを、コドンATA、AGA、およびCTAについてのtRNA遺伝子を有するpACYCプラスミドを含む宿主株AD494(Novagen)にトランスファーした(例えば、NovagenからのRosetta株として市販で入手可能)。これらのコドンは大腸菌でめったに使用されないが、神経毒素をコードするクロストリジウム菌遺伝子では頻繁に使用されるので、これらのtRNA遺伝子の含有は、発現レベルを顕著に上昇させる。当業者は、この効果が、LH/Cに限定されず、すべての天然のクロストリジウム菌LHフラグメントに広く適用可能であることを認識する。同様の効果を、HMS174(Novagen)およびTB1(NEB)を含む他の宿主株で観察し、そして広範な他の宿主がこれらのフラグメントの発現に適切であった。
【0369】
AD494 (pACYC tRNA) pMalc2x LHN/Cの発現培養物を、35μg/ml クロラムフェニコール、100μg/ml アンピシリン、1μM ZnCl2、および0.5% (w/v)グルコースを含むTerrific Broth中で増殖し、一晩培養物を、新鮮な培地で1:100に希釈し、0.6〜1のOD600になるまで37℃にて約3時間増殖させた。培養物を、1mM IPTGで誘導し、そして30℃にて3〜4時間増殖させた。他の発現系は、抗生物質をカナマイシンに変更したこと以外は同様の条件を用いた。細胞を、カラム緩衝液(20 mM Hepes 125 mM NaCl 1mM ZnCl2 pH 7.2)中での超音波処理または適切なデタージェント処理(例えば、Bugduster試薬;Novagen)のいずれかによって溶解し、そして細胞破砕物を遠心分離によってペレットにした。上清タンパク質をカラム緩衝液で平衡化したアミロース樹脂カラムにロードし、そしてタンパク質を、10mMマルトースを含むカラム緩衝液を用いる1段階溶出によって溶出した。
【0370】
本実施例に用いたMBP−LH/C構築物は、MBPとLHドメインとの間に位置する第Xa因子部位を有し、そしてLドメインとHドメインとの間にも第Xa因子部位を有して、二本鎖LH形態の形成を可能にする。融合タグを除去するためにおよびこの場合にはLHフラグメントを活性化するために、アミロースカラムから溶出したタンパク質を、50μgの精製した融合タンパク質当たり1ユニットのプロテアーゼ活性の濃度の(製造業者、例えば、NEBによって概説されるように)第Xa因子で、25℃にて約20時間処理する。次いで、タンパク質を20 mM Hepes pH 7.2で1:5希釈し、そしてQ-sepharose fast flowカラムにロードし、このカラムを洗浄し、そしてタンパク質を20 mM Hepes緩衝液中の25〜500mM NaClの直線グラジエントを用いて溶出する。遊離のLHフラグメントを、約50mM NaClで溶出し、そして非切断融合タンパク質および遊離のMBPを、より高濃度のNaClで溶出する。
【0371】
当業者は、MBPタグの除去のための部位がジェネナーゼであるpMal-c2gのような別の発現ベクターについて、2つのその後のプロテアーゼ切断反応が、融合パートナーの除去(ジェネナーゼ切断)およびその後のLHの活性化(第Xa因子消化)に必要とされることを認識する。これらの切断反応は、同時に、あるいは夾雑タンパク質を除去するための中間イオン交換精製とともに行われ得る。精製/活性化のこのモデルの例は、以下で同定される。これらの考察は、配列情報に詳述した天然または合成の活性化部位について、およびすべての血清型のLHフラグメントについて、等しく有効である。
【0372】
実施例6 LH/Fの発現および精製
天然のBoNT/F遺伝子由来のLHフラグメントをPCRによって改変して、BamHIおよびHindIII、または他の適切な部位を、5’および3’末端にそれぞれ組み込んだ。遺伝子フラグメントを、pET28にクローニングして、N末端His精製タグを有するリーディングフレームを維持した。発現クローンを、実施例5に概説するようなpACYC tRNAプラスミドと、T7ポリメラーゼ遺伝子を有するDE3リソーゲンとを有する宿主株にトランスファーした。適切な宿主株としては、適切な遺伝子エレメントを有するJM109、AD494、HMS174、TB1 TG1、またはBL21が挙げられる。例えば、HMS174 (DE3) pACYC tRNA pET28a LHN/Fを、発現および精製に用いた。
【0373】
HMS174 (DE3) pACYC tRNA pET28a LHN/Fの発現培養物を、35μg/ml クロラムフェニコール、35μg/mlカナマイシン、1μM ZnCl2、および0.5% (w/v)グルコースを含むTerrific Broth中で、OD600が2.0になるまで30℃にて増殖し、そして培養物を500μM IPTGで誘導し、25℃にて2時間増殖して、遠心分離によって回収した。細胞を、超音波処理またはデタージェント溶解によって20 mM Hepes 500 mM NaCl pH 7.4中で溶解し、そして可溶性タンパク質画分を、CuSO4をロードした金属キレートカラム(例えば、IMAC HiTrapカラム Amersham-Pharmacia)上にロードした。タンパク質を、イミダゾールの直線グラジエントを用いて溶出し、His LH/Fを50〜250mMのイミダゾールで溶出した。
【0374】
Hisタグを、本質的に実施例5に記載のようにトロンビンでの処理によって除去した。遊離したLHフラグメントを、実施例5に記載のQ-sepharoseカラムでのイオン交換を用いて精製した。
【0375】
実施例7 LHTeNTの発現および精製
天然のLHTeNT遺伝子フラグメントを改変して、天然のリンカー領域を配列番号144/145に示すようにエンテロキナーゼ切断可能リンカーと置換しそして5’末端(BamHI)および3’末端(HindIII)にクローニング部位を組み込んだ。このフラグメントを、pMAL c2xにサブクローニングし、そして実施例5に記載のようにHMS174 (pACYC tRNA)中で発現させた。溶出ピークの位置が、遊離のMBPが遊離のLHのピークの前に溶出するように逆転したこと以外は、アミロース樹脂カラムでの最初の精製、融合タグを除去するための第Xa因子での切断、およびイオン交換精製もまた、実施例5に記載のように行った。
【0376】
実施例8 Gateway適合した発現ベクターからのLH/Cの発現
LHCフラグメントを、SalI-PstIとしてGateway侵入ベクターにクローニングした。2つのバージョンを作成し、3’PstI部位内に停止コドンを有してこの位置でタンパク質を停止させた(LHC STOP;配列番号123/124)か、あるいは停止コドンがなくC末端融合パートナーを有するフラグメントの発現を可能にした(LHC NS;配列番号131/132)。侵入ベクターを、仕向ベクターと組換えて、N末端MBPタグを有するフラグメントの発現を可能にした。組換えは、標準的プロトコルに従って行った(Invitrogen Gateway発現マニュアル)。
【0377】
AD494 (pACYC tRNA) pMTL-malE-GW LHNC STOP株からの融合タンパク質の発現、およびその精製を、実施例5に記載のように行った。追加のN末端配列の付加は、全体の発現および精製に顕著な変化を起こさなかった。第Xa因子切断後の最終産物は、上記のようにジスルフィド結合した二本鎖フラグメントであった。
【0378】
追加のC末端ドメインを有するフラグメントの発現のために、LHC NS侵入ベクターを付加部位の後かつ適切なフレーム内に付加配列を有する仕向ベクターと組換えた。完全融合物を生成するための組換えを容易にするために必要な特性を有するatt部位に隣接するLH/CフラグメントをコードするDNAの配列を、配列番号133に記載する。例えば、仕向ベクターpMTL-malE-GW-att-IGFを、ヒトIGFのコード配列をXbaI-HindIIIフラグメントとして適切な部位にサブクローニングすることによって生成した。このベクターへのLH/C NSフラグメントの組換えにより、pMTL-malE-GW-LHNC-att-IGFを得た。
【0379】
このクローンを、上記のように発現しそして精製した。C末端IGFドメインの結合特性を利用するさらなる精製方法も、所望であれば使用され得る。
【0380】
当業者は、同様のアプローチがBoNT/Cまたは他の血清型のいずれかに由来する他のLHフラグメントに使用され得ることを認識する。同様に、他のC末端精製タグまたはリガンドが、上記のIGFについてと同様に仕向ベクターに組み込まれ得る。
【0381】
実施例9 Gateway適合した発現ベクター由来のLHTeNTの発現
実施例7に記載のLHTeNT BamHI-HindIIIフラグメントを、適切なリーディングフレームを維持するために侵入ベクターにサブクローニングした。侵入ベクターを、BamHI部位に直接隣接する第Xa因子部位を組み込むように設計し、そのため切断によって、BamHI部位によってコードされるGlySer残基で始まるタンパク質を得た。侵入ベクターを、N末端6-Hisタグを有する市販の入手可能な仕向ベクター(例えば、pDEST17;Invitrogen)と組換えた。得られたクローンpDEST17 LHNTeNTを、実施例6に記載のように、宿主HMS174 (pACYC tRNA)株中で発現させた。融合タンパク質の精製も、実施例5に記載のとおりであり、N末端Hisタグを第Xa因子処理で除去し、次いで第Xa因子をQ-sepharoseカラムで除去した。
【0382】
実施例10 fos/junまたはGlu/Arg分子クランプによるLH/Bフラグメントとリガンドとの指示カップリング
配列番号115/116、117/118、119/120、および121/122に記載の型のLH/Cクローンを、実施例5に既述のように発現および精製した。次いで、精製した活性化LH/Cタンパク質を、相補クランプパートナー(配列番号117/118および121/122についてはjunタグ付けリガンド;配列番号115/116および119/120についてはポリアルギニンタグ付けリガンド)でタグ付けした当モル量のリガンドと混合した。タンパク質を穏やかに混合して結合を促進し、次いで精製して、結合したリガンド−エンドペプチダーゼフラグメントを単離した。
【0383】
実施例11 酸/塩基分子クランプによるLHTeNTフラグメントとリガンドとの指示カップリング
配列番号142/143、144/145、および146/147に記載の型のLHTeNTクローンを改変して、酸/塩基ロイシンジッパークランピングシステムの1成分を組み込んだ。実施例5に既述のようにタグ付けしたタンパク質の発現および精製後、タグ付けしたリガンドとの結合を、本質的に実施例10に記載のように行った。
【0384】
実施例12 二本鎖フラグメントを得るための、トロンビンプロテアーゼプロセシング部位を有するLH/Bの活性化
配列番号99/100のように、LドメインとHドメインとの間のリンカーにトロンビン部位を有するLH/Bを、本質的に実施例5に記載のようにpMAL c2xから発現させた。精製したLH/Bフラグメントを、1mgタンパク質当たり1ユニットのトロンビンとともに25℃にて20時間インキュベートした。実施例5に記載のようにQ-sepharoseカラムでのさらなる精製によって、二本鎖LHをトロンビンと分離した。
【0385】
実施例13 二本鎖フラグメントを得るための、エンテロキナーゼプロセシング部位を有するLHTeNTの活性化
活性化した二本鎖LHを調製するために、精製したタンパク質(例えば、配列番号144/145から得られる)を、50μgの精製タンパク質当たり1酵素ユニットの濃度のエンテロキナーゼで、25℃にて20時間処理した。次いで、活性化した二本鎖LHを、(実施例5に記載のように)第Xa因子切断後の精製に用いたのと同一条件下でQ-sepharoseカラムでのイオン交換によって、あるいは、エンテロキナーゼに特異的に結合して除去するための20 mM Hepes 100 mM NaCl pH 7.2中で平衡化したベンズアミジンセファロースカラムを用いて、エンテロキナーゼから精製した。
【0386】
本発明によれば、以下が提供される。
【0387】
1.第1および第2ドメインを含む一本鎖ポリペプチドであって:
該第1ドメインが、クロストリジウム菌神経毒素軽鎖またはそのフラグメントもしくは改変体であり、該第1ドメインが、エキソサイトーシスに必須の1以上の小胞または形質膜結合タンパク質を切断することが可能であり;そして
該第2ドメインが、クロストリジウム菌神経毒素重鎖H部分またはそのフラグメントもしくは改変体であり、該第2ドメインが、(i)該ポリペプチドを細胞にトランスロケートし、または(ii)該第1ドメイン自体の溶解性と比較して該ポリペプチドの溶解性を増加させ、または(iii)該ポリペプチドを細胞にトランスロケートしそして該第1ドメイン自体の溶解性と比較して該ポリペプチドの溶解性を増加させる両方が可能であり;そして該第2ドメインが、Hと命名されたクロストリジウム菌神経毒素重鎖の機能的C末端部分を欠き、それによって該ポリペプチドが、天然のクロストリジウム菌神経毒素が結合する天然の細胞表面レセプターである細胞表面レセプターに結合できなくなり;そして該一本鎖ポリペプチドが、以下からなる群より選択される配列を含む、ポリペプチド:
(I)配列番号30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、139、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、および175;または
(II)エキソサイトーシスに必須の1以上の小胞または形質膜結合タンパク質を切断し得る第1ドメインを有する(I)のフラグメントまたは改変体。
【0388】
2.前記クロストリジウム菌毒素重鎖が、ボツリヌス菌神経毒素重鎖である、項1に記載のポリペプチド。
【0389】
3.前記クロストリジウム菌毒素重鎖が、破傷風菌神経毒素重鎖である、項1に記載のポリペプチド。
【0390】
4.前記第1ドメインが、SNAP-25、シナプトブレビン/VAMP、およびシンタキシンの1以上から選択される基質に特異的なエンドペプチダーゼ活性を示す、項1から3のいずれかに記載のポリペプチド。
【0391】
5.前記第2ドメインが、クロストリジウム菌毒素重鎖H部分である、項1から4のいずれかに記載のポリペプチド。
【0392】
6.前記クロストリジウム菌神経毒素重鎖が、ボツリヌス菌神経毒素A型鎖である、項1に記載のポリペプチド。
【0393】
7.前記第2ドメインが、ボツリヌス菌毒素A型重鎖の423個のN末端アミノ酸を含む、項1に記載のポリペプチド。
【0394】
8.前記クロストリジウム菌神経毒素重鎖が、ボツリヌス菌神経毒素B型鎖である、項1に記載のポリペプチド。
【0395】
9.前記第2ドメインが、ボツリヌス菌毒素B型重鎖の107個のN末端アミノ酸を含む、項1に記載のポリペプチド。
【0396】
10.前記第2ドメインが、ボツリヌス菌毒素B型重鎖の417個のN末端アミノ酸を含む、項1に記載のポリペプチド。
【0397】
11.前記第2ドメインが、破傷風菌重鎖の422個のN末端アミノ酸を含む、項1に記載のポリペプチド。
【0398】
12.前記第2ドメインが、クロストリジウム菌神経毒素重鎖の100個のN末端アミノ酸を含む、項1に記載のポリペプチド。
【0399】
13.タンパク質分解酵素によって切断される部位を含む、項1に記載のポリペプチド。
【0400】
14.前記切断部位が、天然のクロストリジウム菌神経毒素に存在しない、項13に記載のポリペプチド。
【0401】
15.前記切断部位が、前記第1および第2ドメインのタンパク質分解切断を可能にする、項13または14に記載のポリペプチド。
【0402】
16.前記切断部位が、前記第1および第2ドメインのタンパク質分解切断を可能にし、そしてそのように切断される場合、該第1ドメインが、該タンパク質分解切断前の前記ポリペプチドが示す1以上の小胞または形質膜結合タンパク質を切断する酵素活性よりも大きい酵素活性を示す、項13から15のいずれかに記載のポリペプチド。
【0403】
17.項1に記載のペプチドをコードする第2の核酸配列内に、前記切断部位をコードする第1の核酸配列を提供することによって得られ得る、項13から16のいずれかに記載のポリペプチド。
【0404】
18.前記第2ドメインが、Hと命名されたクロストリジウム菌神経毒素重鎖のC末端部分を欠く、項1から17のいずれかに記載のポリペプチド。
【0405】
19.前記ポリペプチドを細胞に結合する第3ドメインをさらに含む、項1から18のいずれかに記載のポリペプチドであって、該結合が、第3ドメインの細胞への直接的な結合によって、あるいは細胞に結合する1または複数のリガンドへの第3ドメインの結合によって行われる、ポリペプチド。
【0406】
20.前記第3ドメインが、前記ポリペプチドを免疫グロブリンに結合するためのものである、項19に記載のポリペプチド。
【0407】
21.前記第3ドメインが、ブドウ球菌のプロテインAのドメインbに由来するタンデムリピート合成IgG結合ドメインである、項20に記載のポリペプチド。
【0408】
22.前記第3ドメインが、細胞表面レセプターに結合するアミノ酸配列を含む、項19に記載のポリペプチド。
【0409】
23.前記第3ドメインが、インスリン様増殖因子1(IGF−1)である、項22に記載のポリペプチド。
【0410】
24.前記第1ドメインと前記第2ドメインとの間にスペーサー分子を含む、項1から23のいずれかに記載のポリペプチド。
【0411】
25.前記第2ドメインと前記第3ドメインとの間にスペーサー分子を含む、項19から23のいずれかに記載のポリペプチド。
【0412】
26.アフィニティーマトリクスに結合する精製タグをさらに含み、それによって該マトリクスを用いる前記ポリペプチドの精製を容易にする、項1から25のいずれかに記載のポリペプチド。
【0413】
27.前記精製タグと前記ポリペプチドとの間にスペーサー分子を含む、項26に記載のポリペプチド。
【0414】
28.前記精製タグが、グルタチオンセファロースのアフィニティーマトリクスに結合する、項26または27に記載のポリペプチド。
【0415】
29.第1のプロテアーゼ切断部位が、項1から23のいずれかに記載のポリペプチドと前記精製タグとの間に組み込まれ、該プロテアーゼ切断部位が、該精製タグからの該ポリペプチドのタンパク質分解分離を可能にする、項26から28のいずれかに記載のポリペプチド。
【0416】
30.第2のプロテアーゼ切断部位が、項1から23のいずれかに記載のポリペプチドの前記第1ドメインと前記第2ドメインとの間に組み込まれ、該プロテアーゼ切断部位が、該第1ドメインと該第2ドメインとのタンパク質分解切断を可能にする、項26から29のいずれかに記載のポリペプチド。
【0417】
31.項1から30のいずれかに記載のポリペプチドをコードする、核酸。
【0418】
32.前記核酸が、クロストリジウム菌神経毒素のHと命名された部分をコードするヌクレオチドを欠く、項31に記載の核酸。
【0419】
33.ボツリヌス菌毒素A型重鎖Hドメインの残基1から423をコードするヌクレオチドを含む、項31または32に記載の核酸。
【0420】
34.ボツリヌス菌毒素B型重鎖Hドメインの残基1から417をコードするヌクレオチドを含む、項31または32に記載の核酸。
【0421】
35.タンパク質分解切断部位をコードするヌクレオチドを含む、項31から34のいずれかに記載の核酸。
【0422】
36.前記タンパク質分解切断部位が、天然のクロストリジウム菌神経毒素に存在しない、項35に記載の核酸。
【0423】
37.前記タンパク質分解切断部位が、前記ポリペプチドの前記第1ドメインと前記第2ドメインとの間に位置する、項36に記載の核酸。
【0424】
38.項29に記載の核酸配列内に前記切断部位をコードする核酸配列を提供することによって得られ得る、項36または37に記載の核酸。
【0425】
39.配列番号69、71、73、75、77、113、134、またはそれらのフラグメントもしくは改変体からなる群より選択される、核酸配列。
【0426】
40.配列番号70、72、74、76、78、114、またはそれらのフラグメントもしくは改変体からなる群より選択される、一本鎖ポリペプチド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ドメインおよび第2ドメインを含む一本鎖ポリペプチドであって:
該第1ドメインが、クロストリジウム菌神経毒素軽鎖またはそのフラグメントもしくは改変体であり、該第1ドメインが、エキソサイトーシスに必須の1以上の小胞または形質膜結合タンパク質を切断することが可能であり;そして
該第2ドメインが、以下であり:
(i)クロストリジウム菌神経毒素重鎖H部分またはそのフラグメントもしくは改変体であり、該第2ドメインが、
(a)該ポリペプチドを細胞にトランスロケートし、または
(b)該第1ドメイン自体の溶解性と比較して該ポリペプチドの溶解性を増加させ、または
(c)該ポリペプチドを細胞にトランスロケートしそして該第1ドメイン自体の溶解性と比較して該ポリペプチドの溶解性を増加させる両方が可能であり;および
(ii)分子クランプペプチド配列であり、該分子クランプペプチド配列が、別のペプチド上に存在する分子クランプペプチド相補配列と非共有結合を形成し、それによって該第2ドメインを該別のペプチドにカップリングさせ、
そして該第2ドメインが、Hと命名されたクロストリジウム菌神経毒素重鎖の機能的C末端部分を欠き、それによって該ポリペプチドが、天然のクロストリジウム菌神経毒素が結合する天然の細胞表面レセプターである細胞表面レセプターに結合できなくなる、
ポリペプチド。
【請求項2】
前記第2ドメインの分子クランプペプチド配列が、該第2ドメインのC末端に位置している、請求項1に記載の一本鎖ポリペプチド。
【請求項3】
前記分子クランプペプチド配列の相補対が、ロイシンジッパー、多イオン性ペプチド、ブドウ球菌のプロテインAの合成IgG結合ドメイン、および/またはインテインの自己切断配列から選択される、請求項1または2に記載の一本鎖ポリペプチド。
【請求項4】
前記一本鎖ポリペプチドが、配列番号60、62、64、66、68、116、118、120、および122から選択される配列を含む、請求項1から3のいずれかに記載の一本鎖ポリペプチド。
【請求項5】
タンパク質分解酵素による切断部位を含み、該切断部位が、前記第1ドメインと前記第2ドメインとの間のタンパク質分解切断を可能とする、請求項1に記載の一本鎖ポリペプチド。
【請求項6】
前記切断部位が、天然のクロストリジウム菌神経毒素に存在しない、請求項5に記載の一本鎖ポリペプチド。
【請求項7】
前記切断部位が、前記第1ドメインおよび前記第2ドメインのタンパク質分解切断を可能にし、そしてそのように切断される場合、該第1ドメインが、該タンパク質分解切断前の前記ポリペプチドが示す1以上の小胞または形質膜結合タンパク質を切断する酵素活性よりも大きい酵素活性を示す、請求項5または6に記載の一本鎖ポリペプチド。
【請求項8】
前記第2ドメインが、Hと命名されたクロストリジウム菌神経毒素重鎖のC末端部分を欠く、請求項1から7のいずれかに記載の一本鎖ポリペプチド。
【請求項9】
前記別のペプチドが、前記ポリペプチドを細胞に結合する第3ドメインを含み、該結合が、該第3ドメインの細胞への直接の結合によって、あるいは細胞に結合する1または複数のリガンドへの該第3ドメインの結合によって行われ、該別のペプチドが、前記分子クランプペプチド配列の相補対によって、前記一本鎖ポリペプチドの前記第2ドメインに、非共有結合で結合されている、請求項1から8のいずれかに記載の一本鎖ポリペプチド。
【請求項10】
前記第3ドメインが、前記ポリペプチドを免疫グロブリンに結合するためのものであり、好ましくは前記第3ドメインが、ブドウ球菌のプロテインAのドメインbに由来するタンデムリピート合成IgG結合ドメインであり、または前記第3ドメインが、細胞表面レセプターに結合するアミノ酸配列を含み、または前記第3ドメインが、インスリン様増殖因子1(IGF−1)である、請求項9に記載の一本鎖ポリペプチド。
【請求項11】
アフィニティーマトリクスに結合する精製タグをさらに含み、それによって該マトリクスを用いる前記ポリペプチドの精製を容易にする、請求項1から10のいずれかに記載の一本鎖ポリペプチド。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載のポリペプチドをコードする、核酸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−45377(P2011−45377A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229133(P2010−229133)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【分割の表示】特願2004−535633(P2004−535633)の分割
【原出願日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【出願人】(308037845)
【Fターム(参考)】