説明

組立コンクリートパネルの塗装構造及び組立コンクリートパネルの塗装方法

【課題】 隣り合う分割パネル部材の間に生じる継目を隠して一体感を持たせることができ、見栄えを損なうことがなく、しかも施工が簡単な組立コンクリートパネルの塗装技術の提供。
【解決手段】 複数の分割パネル部材60,60を継ぎ合わせて1つのパネルに組み立てるようにした組立コンクリートパネル6を塗装の対象とした塗装構造であり、屈曲可能な基材の表面に形成された離型面20に塗料を塗布して塗膜層10を形成させ、この塗膜層を乾燥させて離型面から剥離させることにより得られる化粧用塗膜シート1が用いられ、化粧用塗膜シートと同一材料の塗料によって前記各分割パネル部材の表面が塗装され、前記化粧用塗膜シートが隣り合う分割パネル部材に跨る状態で分割パネル部材同士の継目61の上に接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の分割パネル部材を継ぎ合わせて1つのパネルに組み立てられ、擁壁用ブロックで構築されるコンクリート擁壁や現場打ちされたコンクリート擁壁の壁面に取り付けるようにした組立コンクリートパネルを塗装の対象とした塗装構造及び塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1枚の単体で形成されたコンクリートパネルについては、その面積を広く形成すると、必然的に重量が非常に重くなり、施工に多大の手間と労力が必要になるという問題があった。
【0003】
そこで、コンクリート壁面に取り付けられる複数の分割パネル部材を備え、これらの分割パネル部材を継ぎ合わせて1つのパネルに組み立てるようにした組立コンクリートパネルが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
このような、組立コンクリートパネルにあっては、これをコンクリート壁面に取り付けると、隣り合う分割パネル部材の間に継目が生じ、この継目が外観的に目立つことによる体裁の悪さがあるという問題がある。
例えば、組立コンクリートパネルを擬石状に形成してその表面に御影石調の塗装を施したとしても、隣り合う分割パネル部材の間に生じた継目によって一体感が欠損し、見栄えが低下してしまうという問題があった。
【特許文献1】 特開2004−162435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、複数の分割パネル部材を継ぎ合わせたものでありながら、隣り合う分割パネル部材の間に生じる継目を隠して一体感を持たせることができ、見栄えを損なうことがなく、しかも施工が簡単な組立コンクリートパネルの塗装構造及び組立コンクリートパネルの塗装方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明(請求項1)の組立コンクリートパネルの塗装構造は、
コンクリート壁面に取り付けられる複数の分割パネル部材を備え、これらの分割パネル部材を継ぎ合わせて1つのパネルに組み立てるようにした組立コンクリートパネルを塗装の対象とした塗装構造であって、
屈曲可能な基材の表面に形成された離型面に塗料を塗布して塗膜層を形成させ、この塗膜層を乾燥させて離型面から剥離させることにより得られる化粧用塗膜シートが用いられ、
この化粧用塗膜シートと同一材料の塗料によって前記各分割パネル部材の表面が塗装され、
かつ前記化粧用塗膜シートが隣り合う分割パネル部材に跨る状態で分割パネル部材同士の継目の上に接着されている構成とした。
【0007】
又、本発明(請求項2)の組立コンクリートパネルの塗装方法は、
コンクリート壁面に取り付けられる複数の分割パネル部材を備え、これらの分割パネル部材を継ぎ合わせて1つのパネルに組み立てるようにした組立コンクリートパネルを塗装の対象とした塗装方法であって、
前記複数の分割パネル部材と、表面が離型面に形成された屈曲可能な基材とを並べて配置させて、これらを同一材料の塗料によって同時に塗装することで、各分割パネル部材の表面を塗装すると共に、前記基材の離型面上に塗膜層を形成させ、
前記基材の離型面から塗膜層を剥離することで得られる化粧用塗膜シートを、隣り合う分割パネル部材に跨る状態で分割パネル部材同士の継目の上に接着させる構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、化粧用塗膜シートを用いた点に特徴がある。
この化粧用塗膜シートは、屈曲可能な基材の表面に形成された離型面に塗料を塗布して塗膜層を形成させ、この塗膜層を乾燥させて離型面から剥離させることにより得られるものである。
このように、化粧用塗膜シートは塗料の塗膜層を乾燥させたシート状であるため、持ち運びが楽であり、しかも任意の形状で任意の部位に簡単に貼ることができて、塗装したと同様の仕上がりを得ることができる。
【0009】
本発明の塗装構造では、組立コンクリートパネルを構成する各分割パネル部材の表面が化粧用塗膜シートと同一材料の塗料によって塗装され、かつ化粧用塗膜シートが隣り合う分割パネル部材に跨る状態で分割パネル部材同士の継目の上に接着されている。
従って、化粧用塗膜シートで継目を隠して一体感を持たせることができ、見栄えを損なうことがない。
特に、化粧用塗膜シートが組立コンクリートパネルの塗装面と同化するため、化粧用塗膜シート自体の存在が目立つことがない。
又、化粧用塗膜シートを隣り合う分割パネル部材に跨る状態で分割パネル部材同士の継目の上に接着させればよいため、簡単に施工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の塗装構造に使用する化粧用塗膜シートの実施例を示す斜視図である。
この化粧用塗膜シート1は、屈曲可能な基材の表面が離型面20に形成された剥離シート2を用い、この剥離シート2の離型面20に塗料を塗布して塗膜層10を形成させ、この塗膜層10を乾燥させて離型面20から剥離させることで化粧用塗膜シート1が形成される。
【0011】
前記剥離シート2は、柔軟性や弾力性によって屈曲可能な基材の表面が滑沢な離型面20に形成されたもので、基材しては、紙、合成樹脂、金属等を用いることができる。
【0012】
又、塗膜層10は、前記剥離シート2の離型面20上に塗料を吹き付け等により塗装させたのち乾燥させたもので、この塗膜層10を剥離シート2の離型面20から剥離させたものが化粧用塗膜シート1になる。
【0013】
この化粧用塗膜シート1は、塗料による塗膜層10であるため柔軟性を有しており、その原料となる塗料としては、例えば、アクリル系樹脂塗料(例えば、大日精化工業株式会社製:ローンコート、サンデーフェイス、ダイスコート等)、その他の樹脂塗料等を用いることができる。
【0014】
この実施例の塗膜層10は、まず、剥離シート2の離型面20上に透明コート塗料を塗布して第1塗膜層10aを形成させ、この上に白色塗料をまばら状に塗布してまばら塗膜層10bを形成させ、その上から黒色塗料をベタ状に塗布して第2塗膜層10cを形成させたものである。
このように形成させると、白色塗料によるまばら塗膜層10bのまばら空間に黒色塗料による第2塗膜層10cが入り込んで、白色塗料と黒色塗料が混在したまだら模様(御影石調模様)を形成させることができる。
そして、このまだら模様は、透明な第1塗膜層10aによって覆われた状態になるため、この第1塗膜層10aを通してまだら模様を剥離面11に現わすことができるし、まだら模様を第1塗膜層10aによって保護することができる。
【0015】
化粧用塗膜シート1を使用するに際しては、塗膜層10を剥離シート2から剥がすことによって、この塗膜層10を化粧用塗膜シート1として剥離シート2から分離させ、この化粧用塗膜シート1を、後述する分割パネル部材60,60同士の継目61の上にに貼り付けるものである。
【0016】
次に、図2は本発明の組立コンクリートパネルの塗装構造の実施例を示す斜視図である。
【0017】
図において、5は大型のL形擁壁用ブロックで、底板部50と前面板部51とでL形に形成され、前面板部51の正面がコンクリート壁面52に形成されている。
【0018】
前記コンクリート壁面52上には、擬石状に形成された数個(実施例では6個)の組立コンクリートパネル6が若干の目地幅7を保持して取り付けられている。
この組立コンクリートパネル6は、複数(実施例では2個)の分割パネル部材60,60を備え、これらの分割パネル部材60,60を継ぎ合わせることで、1つの組立コンクリートパネル6に形成される。
なお、前記各分割パネル部材60,60は、ボルトや接着剤等によってコンクリート壁面52に取り付けられている。
なお、分割パネル部材60,60の継ぎ合わせ縁をギザギサ縁に形成させると、継目61が目立つのを抑制させることができる。
【0019】
前記組立コンクリートパネル6は、その表面が御影石調に塗装されており、そして、前記した化粧用塗膜シート1を、隣り合う分割パネル部材60,60に跨る状態で分割パネル部材60,60同士の継目61の上にボンドによって接着させている。
【0020】
施工方法は、分割パネル部材60,60と、前記剥離シート2を並べて配置させ、これらを同一材料の塗料によって同時に御影石調に塗装することで、各分割パネル部材60,60の表面を御影石調に塗装すると同時に、前記剥離シート2の離型面20上に御影石調の塗膜層10を形成させる。
【0021】
この場合、剥離シート2は帯状に形成され、その側縁は、図示するように直線縁でもよいが、ギザギザ側縁に形成して、塗膜層10である化粧用塗膜シート1の側縁をギザギザ側縁に形成させれば、化粧用塗膜シート1の目立ちを抑制できる。
【0022】
このようにして塗装した分割パネル部材60,60を継ぎ合わせながらL形擁壁用ブロック5のコンクリート壁面52に取り付けて擬石状の組立コンクリートパネル6を組み立てていく。
【0023】
そして、隣り合う分割パネル部材60,60に跨る状態で分割パネル部材60,60同士の継目61の上にボンドによって化粧用塗膜シート1を接着させ、最後に、透明保護剤を塗布させるものである。
【0024】
この場合、化粧用塗膜シート1の貼り付けに際し、塗膜層10を剥離シート2から剥がす前において、剥離シート2を付けたままで塗膜層10の外面(非剥離面12)にボンドを塗布して継目61の上に貼り付け、その後に剥離シート2を剥がすようにしている。
これにより、化粧用塗膜シート1の貼り施工を簡単にさせながら、剥離面11を外面にして化粧用塗膜シート1を貼り付けることができる。
【0025】
なお、本発明において、組立コンクリートパネルを構成する分割パネル部材の数、塗装の色彩や模様、表面形状等は適宜事項であり、化粧用塗膜シートの色彩や模様は、組立コンクリートパネルの色彩や模様と同一にする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】 本発明の塗装構造に使用する化粧用塗膜シートの実施例を示す斜視図である。
【図2】 本発明の組立コンクリートパネルの塗装構造の実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 化粧用塗膜シート
10 塗膜層
10a 第1塗膜層
10b まばら塗膜層
10c 第2塗膜層
11 剥離面
12 非剥離面
2 剥離シート
20 離型面
5 L形擁壁用ブロック
50 底板部
51 前面板部
52 コンクリート壁面
6 組立コンクリートパネル
60 分割パネル部材
61 継目
7 目地幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート壁面に取り付けられる複数の分割パネル部材を備え、これらの分割パネル部材を継ぎ合わせて1つのパネルに組み立てるようにした組立コンクリートパネルを塗装の対象とした塗装構造であって、
屈曲可能な基材の表面に形成された離型面に塗料を塗布して塗膜層を形成させ、この塗膜層を乾燥させて離型面から剥離させることにより得られる化粧用塗膜シートが用いられ、
この化粧用塗膜シートと同一材料の塗料によって前記各分割パネル部材の表面が塗装され、
かつ前記化粧用塗膜シートが隣り合う分割パネル部材に跨る状態で分割パネル部材同士の継目の上に接着されていることを特徴とする組立コンクリートパネルの塗装構造。
【請求項2】
コンクリート壁面に取り付けられる複数の分割パネル部材を備え、これらの分割パネル部材を継ぎ合わせて1つのパネルに組み立てるようにした組立コンクリートパネルを塗装の対象とした塗装方法であって、
前記複数の分割パネル部材と、表面が離型面に形成された屈曲可能な基材とを並べて配置させて、これらを同一材料の塗料によって同時に塗装することで、各分割パネル部材の表面を塗装すると共に、前記基材の離型面上に塗膜層を形成させ、
前記基材の離型面から塗膜層を剥離することで得られる化粧用塗膜シートを、隣り合う分割パネル部材に跨る状態で分割パネル部材同士の継目の上に接着させることを特徴とする組立コンクリートパネルの塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−187690(P2006−187690A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−382920(P2004−382920)
【出願日】平成16年12月30日(2004.12.30)
【出願人】(391032864)
【Fターム(参考)】