説明

組立式陳列装置

【課題】横連結材を用いたり、背板に特別な加工を施したりすることなく、背板の側端部を、背板支持部材の内側面に、安価かつ簡単な手段で容易に取り付けうるようにする。
【解決手段】左右1対の側板1の内側面に、背板5の側端部が嵌合可能な上方及び内方に開口する凹溝9を設け、側板1の上端部における凹溝9の前後の縁部に、上方に開口する前後1対の係止溝10を設け、背板5の両側端部を左右の凹溝9に嵌合させるとともに、背板5の上端部の両側部に取付けた背板取付具11における前方及び後方を向く前後1対の垂直係止片15を、前後の係止溝10に上方より落とし込んで係合させることにより、左右の側板1の対向面間に背板5を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背板を、上下方向を向く左右1対の側板または支柱等の背板支持部材の対向面間に取付けてなる、例えば書籍等の組立式陳列装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような組立式陳列装置においては、左右の側板や支柱の上端部間に横連結材を横架し、この横連結材により、背板の上端部を固定するようにしたもの(例えば特許文献1、2参照)や、左右の側板(側面パネル)の上端部の対向面に、上方に開口する係止孔を備える係止具を取付け、この両係止具の係止孔に、背板(背面パネル)の上端両側部に設けた下向きの係止片を嵌合して、背板の上端部を固定するようにしたもの(例えば特許文献3参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−135940号公報
【特許文献2】特開2005−192765号公報
【特許文献3】特開2008−148761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び2に記載されている陳列装置のように、背板の上端部を横連結材により固定するようにすると、陳列装置の左右幅、すなわち背板の左右寸法に対応して、長さの異なる横連結材を複数製作してこれを在庫しておく必要があるので、コスト高となるとともに、部品の管理も煩雑となる。
特許文献3に記載の陳列装置は、横連結材が不要となるので、コスト的に有利である。しかし、背板の上端部に、係止片を設けるための折曲加工を施す必要があるため、製造コストが増大するとともに、通常の平板状の背板を使用することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、横連結材を用いたり、背板に特別な加工を施したりすることなく、背板を、左右1対の背板支持部材の対向面間に、安価かつ簡単な手段で容易に取り付けうるようにした組立式陳列装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題は、次の各項のようにして解決される。
(1)背板を、上下方向を向く左右1対の背板支持部材の対向面間に取付けてなる組立式陳列装置において、前記左右いずれかの背板支持部材の内側面に、前記背板の側端部が嵌合可能な上方及び内方に開口する上下方向の凹溝を設け、前記背板支持部材の上端部における前記凹溝の前後の縁部に、上方に開口する前後1対の係止溝を、前記凹溝と連通するように設け、前記背板の側端部を前記凹溝に嵌合させるとともに、前記背板の側端部に取付けた背板取付具における前方及び後方を向く前後1対の垂直係止片を、前記前後の係止溝に上方より落とし込んで係合させることにより、背板支持部材の対向面間に背板を取り付ける。
【0007】
このような構成とすると、背板の側端部を、背板支持部材の内側面に、背板取付具を用いて取り付けているので、従来のように、左右寸法の長い横連結材を使用したり、陳列装置の左右幅に対応して、異なる長さの横連結材を用意したりする必要がなく、コスト低減が図れる。
また、横連結材を使用せず、かつ背板取付具も外部に大きく露呈しないので、背板の上端部の見栄えが向上する。
さらに、背板の側端部に背板取付具を取付け、その前後の垂直係止片を、背板支持部材の上端部における凹溝の前後の縁部に設けた前後1対の係止溝に、上方より落とし込んで係合させるだけの簡単な作業で、背板の側端部を背板支持部材の内側面に取り付けうるため、組立てが容易であり、かつ背板に特別な加工を施す必要もないので、安価に実施することができる。
【0008】
(2)上記(1)項において、背板取付具は、背板支持部材の凹溝と背板の側端部に嵌合可能な平面視内向きコ字状の嵌合部を備え、この嵌合部の前後の内縁に、前後1対の垂直係止片を連設したものとし、前記嵌合部を背板の側端部に嵌合してねじ止めすることにより、背板取付具を背板の側端部に取付ける。
【0009】
このような構成とすると、背板取付具を、簡単に位置決めして背板の側端部に固定しうるとともに、背板取付具の前後方向の曲げ強度が大きくなり、かつ、嵌合部により背板の側端部が補強されるので、背板の側端部を、背板支持部材の内側面に安定よく取付けることができる。
【0010】
(3)上記(1)または(2)項において、前後の垂直係止片の少なくともいずれか一方を、背板支持部材にねじにより固定する。
【0011】
このような構成とすると、背板取付具及び背板が、上下方向にがたつくのが防止される。
【0012】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、背板支持部材が、金属製の内パネルと、内部に上方に開口する空間が形成されるようにして、前記内パネルに接合された金属製の外パネルとを備え、前記内パネルに凹溝と係止溝を設ける。
【0013】
このような構成とすると、内パネルをプレス等により折曲するだけで、凹溝を背板支持部材の内側面に容易に設けることができ、また、内パネルにおける凹溝形成部の上端部を切り欠くだけで、係止溝を簡単に設けることができる。
【0014】
(5)上記(4)項において、背板支持部材の上端面を、カバーにより覆うとともに、このカバーの下面より垂下する下向片を、開口内において内パネルの外側面に当接させて、前記下向片と、背板取付具における前後の垂直係止片の少なくともいずれか一方とを、ねじにより内パネルに固定する。
【0015】
このような構成とすると、背板支持部材の上端の開口面が、カバーにより体裁よく覆われるとともに、カバーと背板取付具とを、上下方向にがたつかないように、ねじにより内パネルに容易に共締めすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、横連結材を用いたり、背板に特別な加工を施したりすることなく、背板を、左右1対の背板支持部材の対向面間に、安価かつ簡単な手段で容易に取り付けうるようにした組立式陳列装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の組立式陳列装置の正面図である。
【図2】同じく、上端部の拡大分解斜視図である。
【図3】同じく、側板への背板取付後の拡大斜視図である。
【図4】図1のIV−IV線拡大横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の書籍陳列用の組立式陳列装置の正面図、図2は、その上部の拡大分解斜視図で、この陳列装置は、背板支持部材である左右1対の側板1、1と、両側板1、1の後部寄り(以下、図2の左手前左方を前として説明する)の下端部の対向面同士を連結している横連結杆2と、両側板1、1の対向面に高さ調節可能に係止された上下複数の棚板3と、同じく、両側板1、1の後部寄りの対向面により両側端部が保持され、かつ下端が横連結杆2の上面の凹溝4により受支された背板5とを備えている。
【0019】
左右の側板1、1は、金属薄板よりなる内パネル1aと外パネル1bとからなり、それらの前後の端部を、内部に上方に開口する空間6が形成されるように折曲して重合させ、かつ互いに重合する部分の複数箇所をスポット溶接により接合して形成されている。
【0020】
背板5は、金属薄板よりなる前面パネル5aと後面パネル5bとからなり、それらの周縁部を、内部に空間が形成されるようにスポット溶接により接合して形成されている。背板5の内部空間には、図4に示すように、平面視コ字状断面をなす上下方向の左右複数の補強板7が固着され、厚さ方向の強度を大としてある。
【0021】
左右の内パネル1aの前後部には、棚板3支持用の支持金具(図示略)を係止するための係止孔8が、上下方向に一定間隔おきに多数列設されている。
また、両内パネル1a、1aの後端部の内面には、その部分を外側方に向かって平面視コ字状に折曲することにより、上下両方向と内側方に開口する上下方向の凹溝9、9が、内パネル1aの全長に亘って形成されている。この凹溝9には、背板5の両側端部と、その上端部に取付けられる後記する背板取付具11のコ字状の嵌合部14とが嵌合されるようになっている。
【0022】
両内パネル1aにおける凹溝9が形成された部分の上端部には、凹溝9形成部の内方の前後の角部付近を切り欠くことにより、前後両方向と上方に開口する縦長スリット状の前後1対の係止溝10、10が、凹溝9と連通するように対向状に形成されている。
【0023】
背板5の上端部の両側部は、左右対称形をなす左右1対の金属製の背板取付具11、11により、両側板1、1の対向面に、次のようにして取り付けられている。
左右の背板取付具11、11は、垂直片12とその前後の端縁より内側方に直角に折曲された側片13、13とからなる平面視内向きコ字状の嵌合部14と、両側片13の内方の端縁より前方及び後方に直角に折曲された、上下寸法が嵌合部14の上下寸法よりも長寸をなす前後1対の下向きフック状の垂直係止片15、15とからなっている。嵌合部14の左右寸法は、側板1における内パネル1aの凹溝9の深さよりも若干短寸で、かつ同じく前後寸法は、凹溝9内と背板5の側端部とにがたなく嵌合可能な寸法とされている。
【0024】
図2に示すように、左右の側板1、1の上端開口部には、カバー16、16(右方のカバーは図示略)が上方より取付けられるようになっている。このカバー16は、開口面を覆いうる大きさの前後方向に細長い平板状の閉塞板17と、その前後の両端部下面に固着された、側板1の空間6内に嵌合される正面視下向きコ字状の嵌合片18、18とからなり、両嵌合片18における左右の下向片18a、18aの内側のものには、めねじ孔19が形成されている。
【0025】
左右の側板1、1間に背板5を取付けるには、まず背板5の上端部の左右両側部に、背板取付具11のコ字状の嵌合部14を、上方または外側方より嵌合し、垂直片12に穿設された通孔20より挿入した止めねじ21を、背板5の上端部側面に設けためねじ孔22(図4参照)に螺合することにより、左右の背板取付具11を、背板5の上端部の左右両側部に固定する。
【0026】
ついで、図3及び図4に示すように、背板5の両側端部と左右の背板取付具11の嵌合部14とを、嵌合部14の前後の垂直係止片15、15が側板1の空間6内において、内パネル1aの外側面と摺接するようにして、凹溝9に上方より嵌合させながら、前後の側片13、13の内端部を、内パネル1aにおける凹溝9の上端部の前後1対の係止溝10、10に、その下端まで上方より落とし込んで係合させる。これにより、背板5は、その両側部が内パネル1aの凹溝9により保持されるようにして、左右の側板1、1間に取り付けられる。取付後においては、背板取付具11に背板5の自重が加わっているので、背板取付具11が係止溝10より上方に簡単に抜け外れる恐れはない。
【0027】
背板5を取付けたのち、カバー16の前後の嵌合片18を側板1の空間6に嵌合し、背板取付具11の後部の垂直係止片15に設けた通孔23、及びそれと整合するように内パネル1aの後上部に設けた通孔23に内方より挿入した止めねじ24を、前部側の嵌合片18における内方の下向片18aのめねじ孔19に螺合することにより、カバー16の後部の嵌合片18と背板取付具11とを共締めする。これにより、側板1に対し、背板取付具11及び背板5が上下方向にがたつくのが確実に防止される。なお、カバー16を装着しないときには、前後いずれか一方または両方の垂直係止片15にめねじ孔を設け、このめねじ孔に止めねじ24を螺合して、背板取付具11を背板5に固定するようにしてもよい。
【0028】
図2に示すように、カバー16の前部の嵌合片18は、その内方の下向片18aのめねじ孔19に、内パネル1aの前上部に設けた通孔23より挿入した止めねじ24を螺合することにより、内パネル1aに固定されている。
【0029】
以上説明したように、上記実施形態の組立式陳列装置においては、背板5を、左右の側板1、1の対向面間に、左右1対の背板取付具11、11を用いて取り付けているので、従来のように、左右寸法の長い横連結材を使用したり、陳列装置の左右幅に対応して、異なる長さの横連結材を用意したりする必要がなく、コスト低減が図れる。
【0030】
また、横連結材が不要であるとともに、背板取付具11の嵌合部14は、内パネル1aの凹溝9に嵌合され、背板取付具11が外部に大きく露呈しないので、背板5の上端部の見栄えが向上する。
【0031】
さらに、背板5の上端部の左右両側部に、背板取付具11のコ字状をなす嵌合部14をねじ止めし、前後の垂直係止片15、15を、側板1の内パネル1aの凹溝9の上端部の係止溝10、10に、上方より落とし込んで係合させるだけの簡単な作業で、背板5を左右の側板1、1の対向面間に取り付けうるため、組立てが容易であり、かつ背板5に特別な加工を施す必要もないので、安価に実施することができる。
【0032】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
上記実施形態では、背板取付具11を、背板5の側端部に嵌合される平面視コ字状をなす嵌合部14における両側片13の内縁に、前後1対の垂直係止片15、15を連設したものとしてあるが、例えば、背板取付具を、前後対称をなす平面視L字状の前後1対の背板取付具よりなるものとし、これらを、背板5の左右両側部における上端部の前後両面にねじ止めしたものや、背板取付具を、両係止溝10に係合可能な1枚の垂直係止片よりなるものとし、これを、背板5の左右両側部に設けたスリット状の凹溝内に、前後両方向に突出するように固着したものとすることもある。
【0033】
また、上記実施形態では、前後の係止溝10を、内パネル1aにおける凹溝9形成部の内端部に設けたが、凹溝形成部の左右方向の中間部の対向面に設けることもある。
【0034】
さらに、上記実施形態では、背板5の両側端部を、左右1対の背板取付具11、11をもって、左右の側板1、1の対向面に取付けてあるが、背板5の左右いずれか一方を、背板取付具11により一方の側板1の内側面に取付け、他方の側端部は、別の固定手段により、他方の側板1の内面に取付けるようにすることもある。
【0035】
上記実施形態では、背板支持部材を側板としたが、支柱であってもよい。
また、背板5は、所定の厚さの木製パネル等により形成したものであってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 側板(背板支持部材)
1a内パネル
1b外パネル
2 横連結杆
3 棚板
4 凹溝
5 背板
5a前面パネル
5b後面パネル
6 空間
7 補強板
8 係止孔
9 凹溝
10 係止溝
11 背板取付具
12 垂直片
13 側片
14 嵌合部
15 垂直係止片
16 カバー
17 閉塞板
18 嵌合片
18a下向片
19 めねじ孔
20 通孔
21 止めねじ
22 めねじ孔
23 通孔
24 止めねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背板を、上下方向を向く左右1対の背板支持部材の対向面間に取付けてなる組立式陳列装置において、
前記左右いずれかの背板支持部材の内側面に、前記背板の側端部が嵌合可能な上方及び内方に開口する上下方向の凹溝を設け、前記背板支持部材の上端部における前記凹溝の前後の縁部に、上方に開口する前後1対の係止溝を、前記凹溝と連通するように設け、前記背板の側端部を前記凹溝に嵌合させるとともに、前記背板の側端部に取付けた背板取付具における前方及び後方を向く前後1対の垂直係止片を、前記前後の係止溝に上方より落とし込んで係合させることにより、背板支持部材の対向面間に背板を取り付けたことを特徴とする組立式陳列装置。
【請求項2】
背板取付具は、背板支持部材の凹溝と背板の側端部に嵌合可能な平面視内向きコ字状の嵌合部を備え、この嵌合部の前後の内縁に、前後1対の垂直係止片を連設したものとし、前記嵌合部を背板の側端部に嵌合してねじ止めすることにより、背板取付具を背板の側端部に取付けてなる請求項1記載の組立式陳列装置。
【請求項3】
前後の垂直係止片の少なくともいずれか一方を、背板支持部材にねじにより固定してなる請求項1または2記載の組立式陳列装置。
【請求項4】
背板支持部材が、金属製の内パネルと、内部に上方に開口する空間が形成されるようにして、前記内パネルに接合された金属製の外パネルとを備え、前記内パネルに凹溝と係止溝を設けてなる請求項1〜3のいずれかに記載の組立式陳列装置。
【請求項5】
背板支持部材の上端面を、カバーにより覆うとともに、このカバーの下面より垂下する下向片を、開口内において内パネルの外側面に当接させて、前記下向片と、背板取付具における前後の垂直係止片の少なくともいずれか一方とを、ねじにより内パネルに固定してなる請求項4記載の組立式陳列装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−206291(P2011−206291A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77296(P2010−77296)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】