説明

組織付着・強化のための装置、組織強化のための装置、組織を付着させ強化する方法、ならびに組織を強化する方法

組織付着・強化のための方法及び装置と、組織強化のための方法及び装置を開示する。一実施形態において、前記装置はエネルギーアプリケータとバイオポリマーアプリケータとを含み、エネルギーアプリケータはエネルギーを付与するよう構成され、これにより対象組織内に熱が発生して水分が蒸発し組織は乾燥し、且つコラーゲンとエラスチンのうちの少なくとも一方は変性し部分がともに付着し、バイオポリマーアプリケータは発生した熱を受けるよう構成され、これによりバイオポリマー材は固体状態から融解状態に変化し、且つ乾燥組織にはバイオポリマーが充満し、対象組織の部分は強化され、気密封止される。別の実施形態において、前記方法はエネルギーアプリケータにより組織表面にエネルギーを付与することと、エネルギーアプリケータに連結する収容部に配置されたバイオポリマーアプリケータにより組織表面の中にバイオポリマー材を塗布することと、を含む。他の実施形態も開示する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、デイヴィド・エー・シェクター(David A.Schechter)により2007年5月22日に提出された「ポリマー補強材を備えた無線周波組織溶接機」に関する米国仮特許出願第60/939,602号の利益を主張するものであり、本特許出願は参照により開示に含まれる。
従来、エネルギー方式の組織溶接にはレーザ、超音波、無線周波(RF)エネルギー、直接熱焼灼技術が使われてきた。細い血管の封止・結紮にあたってはRF組織溶接やその他のエネルギー方式技術が実用化されている。例えばマサチューセッツ州マンスフィールドのCovidien社製結紮装置LigaSure(TM)、カリフォルニア州レッドウッドシティのSurgRx(R)社製結紮装置EnSeal(R)、Gyrus Group PLC社(日本、東京、Olympus)製装置PKS Seal(TM)、カリフォルニア州サニーベールのStarion Instruments社製結紮装置Starion(TM)等を挙げることができる。これらの装置は血管結紮専用であるが、外科医はこれまで胸部手術や一般外科手術で肺、腸等の大きな組織構造の溶接にあたって、有用な血管封止技術の利用を試みてきた。
【0002】
大きな組織構造に対する現在利用できる血管封止技術では、溶接強度が不十分かほぼ限界で、これがその血管封止技術を採用する上での主な制約となっている。現在の血管封止技術では対象組織の中にRFエネルギーを送り、順に対象組織をその場で加熱する。電流、電圧及び電力はフィードバック変数(インピーダンス、時間、温度、位相、電流、電力、電圧等)に基づく閉ループ制御アルゴリズムで調整できる。対向層の組織を融合するメカニズムではコラーゲンとエラスチンのタンパク質変性を利用し、組織を圧縮することでタンパク質鎖を絡み合わせる。作用を受けた組織は熱損傷を受け、生育不能となる。熱傷に対する急性炎症反応はごく僅かであり、創傷治癒の増殖期(すなわち、線維芽細胞とコラーゲンの沈着)は2週間から4週間続くと考えられているが、作用を受けた組織の強度は7日以内に天然組織に匹敵するものとなる。
【0003】
RFエネルギー組織封止装置には、配線と電極による設計の柔軟性により、大きな機械式縫合装置に比べて装置全体のサイズを縮小することができるという大きな利点がある。これにより、さらに低侵襲手術の可能性が広がる。小児肺切除や一部の複雑な成人胸部手術では、小型内視鏡装置の必要性から、多くの外科医は現行のRF血管封止技術を利用している。(例えば非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5を参照されたい。)
【0004】
切片が小さければ肺組織の溶接強度は申し分なく、従来の方法(外科用ステープラ等)に匹敵する。Tirabassiらの研究ではRFエネルギー(Ligasure(TM)結紮装置)あるいは内視鏡ステープラ(Endo−GIAステープラ装置)を使って肺生検部位が作られた。7日後の豚生存モデルで両生検部位の破裂強度は正常肺組織以上であった(それぞれ84cm HOと88cm HO)。楔状生検切片の平均サイズはそれぞれ0.87gと0.78gであった。大きな肺切除(例えば1.5グラム以上)の研究でRF血管封止溶接強度が大幅に減少することはSantiniらによって実証されている(表1参照)。
【0005】
【表1】

【0006】
小児胸部手術に採用されても、RF方式組織溶接が広い範囲の切除に通常使われることはなく、標準的な成人胸部手術での実用には限りがある。殆どの肺切除では引き続きステープリングが行われている。サイズ、剛性、合併症及びコストの面で明らかに不利ではあるが、ステープリングであれば成人においての締め付け、分離及び閉鎖を同時に行える。しかしながら、生体吸収性ポリマーによる溶接の強化により広い範囲の切除において溶接強度と漏れ抵抗を向上させることが望ましい。現在、創縫合、組織工学のスカフォルド、薬物送達システム、心血管外科、整形外科、口腔外科、腸外科及び美容皮膚科学の分野で生体吸収性ポリマーの利用と研究がなされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Albanese CT, Rothenberg SS. Experience with 144 consecutive pediatric thoracoscopic lobectomies.(144の連続小児胸腔鏡肺葉切除の経験)J Laparoendosc Adv Surg Tech A. 2007 Jun;17(3):339-41. PMID: 17570785
【非特許文献2】Rothenberg, SS., Thoracoscopy in infants and children: the state of the art.(乳児・小児胸腔鏡検査:最新技術)J Pediatr Surg. 2005 Feb;40(2):303-6. PMID: 15750919
【非特許文献3】Shigemura N, Akashi A, Nakagiri T. New operative method for a giant bulla: sutureless and stapleless thoracoscopic surgery using the Ligasure system.(巨大気腫性嚢胞のための新しい手術法:Ligasureシステムを用いたスーチャーレス・ステープルレス胸腔鏡手術)Eur J Cardiothorac Surg. 2002 Oct;22(4):646-8. PMID: 12297194
【非特許文献4】Shigemura N, Akashi A, Nakagiri T, Ohta M, Matsuda H. A new tissue-sealing technique using the Ligasure system for nonanatomical pulmonary resection: preliminary results of sutureless and stepleless thoracoscopic surgery.(Ligasureシステムを用いた非解剖学的肺切除のための新しい組織封止法:スーチャーレス・ステープルレス胸腔鏡手術の暫定結果)Ann Thorac Surg. 2004 Apr;77(4):1415-8; discussion 1419. PMID: 15063276
【非特許文献5】Tirabassi MV, Banever GT, Tashjian DB, Moriarty KP. Quantitation of lung sealing in the survival swine model.(生存豚モデルにおける肺封止定量) J Pediatr Surg. 2004 Mar;39(3):387-90. PMID: 15017557
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在、エネルギー方式の組織溶接は低侵襲手術を可能にする最前線にある。ある種の手術においては既存のRF血管封止技術の限界を超えている。溶接強度が大幅に向上すれば広い範囲の切除が可能となり、外科用ステープルの必要性が全くなくなる可能性もある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態においては組織付着・強化のための装置が提供され、該装置は、第1の組織接触面の近くに配置されたエネルギーアプリケータと、第2の組織接触面に配置されたバイオポリマーアプリケータと、を備え、エネルギーアプリケータは、対象組織内に熱を発生させるため一定量のエネルギーを付与するよう構成され、これにより対象組織から細胞内・細胞外水分が蒸発し組織は乾燥し、且つ対象組織の中でコラーゲンとエラスチンとのうちの少なくとも一方は変性し対象組織の部分がともに付着し、バイオポリマーアプリケータは、対象組織に付与されたエネルギーによって発生する熱を受けるため、対象組織に近い場所でバイオポリマー材を収容するよう構成され、これによりバイオポリマー材は固体状態から融解状態に相を変化させ、且つ乾燥組織にはバイオポリマーが充満し対象組織が互いに付着した部分は強化され、バイオポリマーが冷えて固体状態に戻ることにより気密封止される。
【0010】
別の実施形態においては組織強化のための装置が提供され、該装置は、第1の組織接触面の近くに配置されたエネルギーアプリケータと、第2の組織接触面に配置されたバイオポリマーアプリケータと、を備え、エネルギーアプリケータは、対象組織内に熱を発生させるため一定量のエネルギーを付与するよう構成され、これにより対象組織から細胞内・細胞外水分が蒸発して組織は乾燥し、バイオポリマーアプリケータは、対象組織に付与されたエネルギーによって発生する熱を受けるため、対象組織に近い場所でバイオポリマー材を収容するよう構成され、これによりバイオポリマー材は固体状態から融解状態に相を変化させ、且つ乾燥組織にはバイオポリマーが充満し、バイオポリマーが冷えて固体状態に戻ることにより止血壁が提供される。
【0011】
更に別の実施形態においては組織を付着させ強化する方法が提供され、該方法は、エネルギーアプリケータにより組織表面の近くにエネルギーを付与することと、エネルギーアプリケータに連結する収容部に配置されたバイオポリマーアプリケータにより組織表面の中にバイオポリマー材を塗布することと、を含み、エネルギーの付与は、組織表面内に一定量の熱を発生させるよう構成され、これにより対象組織から細胞内・細胞外水分が蒸発して組織は乾燥し、且つ組織表面の中でコラーゲンとエラスチンとのうちの少なくとも一方は変性し組織表面の部分が互いに付着し、バイオポリマー材の塗布は、対象組織に付与されたエネルギーによって発生する熱を受けるため、組織表面に近い場所でバイオポリマー材を収容することを含み、これによりバイオポリマー材は固体状態から融解状態に相を変化させ、且つ乾燥組織にはバイオポリマーが充満し対象組織が互いに付着した部分は強化され、バイオポリマーが冷えて固体状態に戻ることにより気密封止される。
【0012】
更に別の実施形態においては組織を強化する方法が提供され、該方法は、エネルギーアプリケータにより組織表面の近くにエネルギーを付与することと、エネルギーアプリケータに連結する収容部に配置されたバイオポリマーアプリケータにより対象組織の中にバイオポリマー材を塗布することと、を含み、エネルギーの付与は、対象組織内に一定量の熱を発生させるよう構成され、これにより対象組織から細胞内・細胞外水分が蒸発して組織は乾燥し、バイオポリマー材の塗布は、対象組織に付与されたエネルギーによって発生する熱を受けるため、対象組織に近い場所でバイオポリマー材を収容することを含み、これによりバイオポリマー材は固体状態から融解状態に相を変化させ、且つ乾燥組織にはバイオポリマーが充満し、バイオポリマーが冷えて固体状態に戻ることにより止血壁が提供される。
【0013】
他の実施形態も開示される。
【0014】
以下の記載では、本開示の一部を構成し、本発明の特定の実施形態が例示されている添付の図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できるよう十分詳細に記載されており、他の実施形態を使用できることや本発明の範囲を逸脱することなく構造および他の変更をなし得ることは理解できよう。従って、本開示は限定的な意味で解釈すべきではない。本開示は、本発明の全ての実施形態を逐語的に記載したものでも、全ての実施形態に必須である本発明の特徴の列挙でもない。
【0015】
本出願には複数の実施形態が記述されているが、それらは単に例示を目的として示したに過ぎない。記載された実施形態は、決して限定を意図するものではない。本発明は、この開示から容易に明らかであるように多数の実施形態に広く適用可能である。当業者であれば、本発明が様々な修正および変更により実施可能であることは理解できよう。本発明の特定の特徴は、1つまたはそれ以上の特定の実施形態または図面を参照して説明できるが、このような特徴は、それらを記述するために参照した1つまたはそれ以上の特定の実施形態または図面における使用に限定されないことを理解されたい。
【0016】
用語「ある実施形態」「実施形態」「複数の実施形態」「該実施形態」「該複数の実施形態」「一実施形態」「いくつかの実施形態」及び「一実施形態」は、特段の記載がない限り「本発明の1つ以上の実施形態(ただし全実施形態ではない)」ことを意味する。
【0017】
用語「有する」「備える」ならびにそれらの用語の変形は、特段の記載がない限りは「〜を含むが、〜に限定されない」ことを意味する。
【0018】
用語「〜からなる」と、その用語の変形は、特段の記載がない限り「〜を含み〜に限定される」ことを意味する。
【0019】
項目の列挙は、項目の一部又は全部が相互排他的であることを意味するものではない。項目の列挙は、特段の記載がない限り、項目の一部又は全部によって何かが集合的に網羅されていることを意味するものではない。項目の列挙は、列挙された順序で項目が配列されることを意味するものではない。
【0020】
用語「ある(a)(an)」及び「その(the)」は、特段の記載がない限り「1つ以上」であることを意味する。
【0021】
本特許出願に記載された項目の見出しと本特許出願の表題は便宜上のものにすぎず、開示内容を制限するものと解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】組織付着・強化用装置又は組織強化専用装置の種々の例示的実施形態を示す図である。
【図2A】組織付着・強化用装置又は組織強化専用装置の種々の例示的実施形態を示す図である。
【図2B】組織付着・強化用装置又は組織強化専用装置の種々の例示的実施形態を示す図である。
【図2C】組織付着・強化用装置又は組織強化専用装置の種々の例示的実施形態を示す図である。
【図3】組織付着・強化用装置又は組織強化専用装置の種々の例示的実施形態を示す図である。
【図4】組織付着・強化用装置又は組織強化専用装置の種々の例示的実施形態を示す図である。
【図5】組織付着・強化用装置又は組織強化専用装置の種々の例示的実施形態を示す図である。
【図6】組織付着・強化用装置又は組織強化専用装置の種々の例示的実施形態を示す図である。
【図7】組織付着・強化用装置又は組織強化専用装置の種々の例示的実施形態を示す図である。
【図8】組織付着・強化用装置又は組織強化専用装置の種々の例示的実施形態を示す図である。
【図9】組織強化装置を使用し、バイオポリマー材により強化され分断された部分を有する組織を示す図である。
【図10】組織付着・強化のため無線周波エネルギー源を有する装置の概略図である。
【図11】一電極構成を示す図である。
【図12】組織に選択的に圧力を加える種々の締め付け機構を示す図である。
【図13】組織に選択的に圧力を加える種々の締め付け機構を示す図である。
【図14】組織に選択的に圧力を加える種々の締め付け機構を示す図である。
【図15】組織に選択的に圧力を加える種々の締め付け機構を示す図である。
【図16】無線周波エネルギー源による組織付着・強化のための顎部エフェクタの実施形態を示す図である。
【図17】無線周波エネルギー源による組織付着・強化のための顎部エフェクタの実施形態を示す図である。
【図18】無線周波エネルギー源による組織付着・強化のための顎部エフェクタの実施形態を示す図である。
【図19】無線周波エネルギー源による組織付着・強化のための顎部エフェクタの実施形態を示す図である。
【図20】無線周波エネルギー源による組織付着・強化のための顎部エフェクタの実施形態を示す図である。
【図21】無線周波エネルギー源による組織付着・強化のための顎部エフェクタの実施形態を示す図である。
【図22】無線周波エネルギー源による組織付着・強化のための顎部エフェクタの実施形態を示す図である。
【図23】無線周波エネルギー源による組織付着・強化のための顎部エフェクタの実施形態を示す図である。
【図24】無線周波エネルギー源による組織付着・強化のための顎部エフェクタの実施形態を示す図である。
【図25】組織強化のため、ならびに肝臓等の組織の切除で近接露出組織実質に止血壁を作るため、エネルギーアプリケータとバイオポリマーアプリケータとを有する種々の装置を示す図である。
【図26】組織強化のため、ならびに肝臓等の組織の切除で近接露出組織実質に止血壁を作るため、エネルギーアプリケータとバイオポリマーアプリケータとを有する種々の装置を示す図である。
【図27】組織強化のため、ならびに肝臓等の組織の切除で近接露出組織実質に止血壁を作るため、エネルギーアプリケータとバイオポリマーアプリケータとを有する種々の装置を示す図である。
【図28】組織強化のため、ならびに肝臓等の組織の切除で近接露出組織実質に止血壁を作るため、エネルギーアプリケータとバイオポリマーアプリケータとを有する種々の装置を示す図である。
【図29】組織強化のため、ならびに肝臓等の組織の切除で近接露出組織実質に止血壁を作るため、エネルギーアプリケータとバイオポリマーアプリケータとを有する種々の装置を示す図である。
【図30】組織強化のため、ならびに肝臓等の組織の切除で近接露出組織実質に止血壁を作るため、エネルギーアプリケータとバイオポリマーアプリケータとを有する種々の装置を示す図である。
【図31】組織強化のため、ならびに肝臓等の組織の切除で近接露出組織実質に止血壁を作るため、エネルギーアプリケータとバイオポリマーアプリケータとを有する種々の装置を示す図である。
【図32】組織強化のため、ならびに肝臓等の組織の切除で近接露出組織実質に止血壁を作るため、エネルギーアプリケータとバイオポリマーアプリケータとを有する種々の装置を示す図である。
【図33】エネルギーを付与し、且つ組織の中にバイオポリマー材を塗布する例示的方法を示す図である。
【図34】エネルギーを付与し、且つ組織の中にバイオポリマー材を塗布する例示的方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
例示的な実施形態を図面に示す。
【0024】
一実施形態では、低分子量の生体吸収性ポリマーを熱的に変性したコラーゲンとエラスチンに誘導し、且つこれに浸透させることで、溶接強度を増すことができる。低分子量ポリマーを注入し、熱処理された組織を構造的に強化できれば、外科的手術の幅を広げる可能性がある。低分子量ポリマーを組織に効率良く注入することで、組織の構造的剛性を向上させ、止血壁を提供し、あるいはグラフトとメッシュを物理的に付着させることができる。低分子量ポリマー注入には尿失禁患者における括約筋支配の向上、肝臓切除における血液損失の低減、ソムノプラスティにおける口蓋垂の剛性化、あるいはヘルニアメッシュ固定法の向上といった用途があるほか、膨化が求められる美容整形外科にも数多く応用できる。
【0025】
図1から図8を参照すると、組織102の付着・強化装置100が示されている。装置100は、第1の組織接触面102Aの近くに配置されたエネルギーアプリケータ104を含んでもよい。エネルギーアプリケータ104は、対象組織102内に熱を発生させるため一定量のエネルギーを付与するよう構成でき、これにより対象組織102から細胞内・細胞外水分が蒸発し、組織は乾燥する。装置100は一実施形態において、対象組織102内のコラーゲンとエラスチンのうちの少なくとも一方を変性させ、対象組織の部分をともに付着させるためのエネルギーを付与できる。付与エネルギーは一実施形態において、コラーゲンを変性させるよう構成される。付与エネルギーは一実施形態において、コラーゲンとエラスチンの両方を変性させるよう構成される。
【0026】
さらに図1から図8を参照すると、一実施形態においては第2の組織接触面102Bにバイオポリマーアプリケータ106を配置できる。一実施形態において、面102Aと面102Bは同一空間に延伸してもよい。別の実施形態において、面102Aと面102Bは、装置の一部分、例えばエンドエフェクタにて、互いに近接してもよい。面102Aと面102Bは一実施形態において、装置の別々の部分に、例えば対向する顎部分に、設置できる。バイオポリマーアプリケータ106は、対象組織102に近い場所でバイオポリマー材108を収容するよう構成できる。これにより、バイオポリマー材108は対象組織102に付与されたエネルギーによって発生する熱を受け、固体状態から融解状態に相を変化させる。また、バイオポリマー材108が乾燥した組織に充満することで対象組織102が互いに付着した部分は強化され、バイオポリマー材108が冷えて固体状態に戻ることにより気密封止される。
【0027】
熱が組織102の中で発生すると、顎部内面又は組織接触領域内に位置する多孔板106の中へ熱伝達される。多孔板106の孔にはバイオポリマー108が埋め込まれる。多孔板が加熱されるにつれバイオポリマーは固体状態から融解状態に変化し、毛管現象により対象組織102の中に引き込まれる、もしくは運ばれる。融解された低粘性生体吸収性ポリマー108が変性したコラーゲン及びエラスチン間の隙間に充満することにより溶接は強化され、ポリマーが冷えることにより気密封止される。
【0028】
エネルギーアプリケータ106は様々なタイプのエネルギーを提供するよう構成できる。一実施形態において、エネルギーアプリケータ106は無線周波アプリケータである。別の実施形態において、エネルギーアプリケータ106は超音波アプリケータである。エネルギーアプリケータ106は一実施形態においてレーザアプリケータである。一実施形態において、エネルギーアプリケータ106はマイクロ波アプリケータである。別種のエネルギーを放出するようエネルギーアプリケータ106を構成することもできる。
【0029】
再度図2を参照すると、バイオポリマーアプリケータ106は1つ以上の多孔板106を含んでもよい。多孔板106は通常、200℃を上回る温度まで熱的に安定するものを設ける。多孔板106は一実施形態において高温熱可塑性物質である。例えば、高温熱可塑性物質はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であってもよい。多孔板106は別の実施形態において多孔質セラミックである。多孔板106は一実施形態において多孔質金属である。多孔板106の多孔質金属は、無線周波エネルギーを用いるエネルギーアプリケータ104の電極として構成できる。多孔板106は代替実施形態において、無線周波エネルギーを用いるエネルギーアプリケータ104の電極として金属面を含んでもよい。記号(+)及び(−)は単なる参考であり、双極エネルギー供給モードを図示するものである。別の実施形態においては、エネルギーアプリケータ104はこれとは別のエネルギー供給モードを使用できる。
【0030】
図1を参照すると、バイオポリマーアプリケータ106は一実施形態において多孔板106内に埋め込まれたバイオポリマー材108の近くに貯留部110を含んでもよい。貯留部110には追加のバイオポリマー材108を収容できる。貯留部110は温度調節部112を含んでもよく、この温度調節部は、固体状態から融解状態に至るバイオポリマー材108の相変化を制御するよう構成できる。貯留部110は、バイオポリマーアプリケータ106へ連結する内視鏡軸の条長沿いに管(図8)を含んでもよい。
【0031】
別の実施形態では、多孔板106とポリマー貯留部110の温度調節(加熱あるいは冷却)を別々に行うことができる。融解状態から固体状態に、あるいは固体状態から融解状態に、バイオポリマー材108の物理的状態を制御できる。
【0032】
一例示的実施形態において、温度調節部112は、バイオポリマー材の直接加熱により固体状態から融解状態に至るバイオポリマー材108の相変化を制御するため、抵抗素子を含んでもよい。温度調節部112は別の実施形態において、バイオポリマー材108の温度調節のため気体熱交換システムと液体熱交換システムとのうちの少なくとも一方を含んでもよい。代替的に、温度調節部112はバイオポリマー材の温度調節のため熱電冷却システムを含んでもよい。更に別の実施形態において、温度調節部112はバイオポリマー材の温度調節のため直接冷却システムを含んでもよい。任意に、直接冷却システムはバイオポリマー材108の温度調節のため生理食塩水注入部を含んでもよい。
【0033】
ハンドセット部分に位置する貯留部110は温度調節が可能で、ポリマーやポリマーカートリッジを再度装填せずとも融解バイオポリマー材108を組織接触面102Bへ供給できる。このため多数の連続付与が可能となる。
【0034】
貯留部110は一実施形態において、多孔板106にわたってバイオポリマー材108を能動的に注入するよう構成できる。一実施形態においてはバイオポリマーカートリッジからバイオポリマー材108を供給できる。貯留部110は、バイオポリマーカートリッジを受け入れバイオポリマーアプリケータ106へバイオポリマー材108を供給するよう構成できる。
【0035】
バイオポリマー材108は様々な特性を有してもよい。例えばバイオポリマー材108は一実施形態において非導電性である。バイオポリマー材108はポリカプロラクトン(PCL)を含んでもよい。バイオポリマー材108はポリカプロラクトン(PCL)共重合体であってもよい。バイオポリマー材108は一実施形態において、3000MW未満の分子量と、約37℃から200℃の溶融温度と、約1000センチポアズ(cps)未満の溶融粘度とを含みただしこれらに限定されない、1つ以上の特性を有するものを選択してもよい。代替的に、バイオポリマー材108は約60℃のガラス転移温度を有してもよい。例えばポリカプロラクトン(PCL)は研究が十分になされた生体吸収性脂肪族ポリエステルで、共重合により得られる幅広い物理化学的特性を有する。ポリカプロラクトン(PCL)はガラス転移温度の低い(約60℃)半結晶性ポリマーである。ポリカプロラクトン(PCL)は種々の生体吸収性ポリマーの中でも比較的疎水性であって、分解速度が非常に遅い。バイオポリマー材108は別の実施形態において、非生体吸収性の熱可塑性物質又はパラフィンワックスであってもよい。この熱可塑性物質又はワックス材は、37℃から200℃の溶融温度と1000センチポアズ未満の溶融粘度を有するものを選択してもよい。
【0036】
バイオポリマー材108は生体吸収性染料を含んでもよい。生体吸収性染料を含むバイオポリマー材108が対象組織102に吸収されると、吸収されたことが視覚的にわかる。一実施形態において、生体吸収性染料108はメチレンブルーである。
【0037】
第1の組織接触面102Aと第2の組織接触面102Bは互いに近接してもよい。代替的に、第1の組織接触面102Aと第2の組織接触面102Bは互いに距離をおいて設置してもよい。例えば、エネルギーアプリケータ104の第1の組織接触面102Aと第2の組織接触面102Bを一組の顎部114にそれぞれ配置してもよい。第1の組織接触面102Aと第2の組織接触面102Bは、一組の顎部114の一方の顎部114A又は114Bにて互いに近接してもよい。顎部114を含む装置100については、図1の参照文字Mにより相対的な動きの一例が示されている。第1の組織接触面102Aと第2の組織接触面102Bは、一組の顎部114の対向する顎部114A、114にて互いに距離をおいて設置してもよい。
【0038】
バイオポリマーアプリケータ106は第3の組織接触面102Cを含んでもよい。一実施形態において、第2の組織接触面102Bは第1の多孔板106Aを含んでもよく、第3の組織接触面102Cは第2の多孔板106Bを含んでもよい。第2の組織接触面102Bと第3の組織接触面102Cは、一組の顎部114の対向する顎部114A、114Bにて互いに距離をおいて設置してもよい。
【0039】
図2Aから図2Cに示すように、多孔板106は一実施形態において非導電性であってもよく、少なくとも一方の把持顎部の組織接触面102Aにこれを設置してもよい。図2Aに示すように、把持顎部114は組織圧縮力を付与できる。多孔板106は加熱された対象組織に直接接触し、バイオポリマー108内に熱を伝導する経路を提供する。電極104は、電流(図2Aの参照文字Iを参照)が顎部114Aの全幅又は全長にわたって横方向に(平行に)流れるよう構成できる。そのためには、同じ組織接触面あるいは対向する組織接触面にて、把持顎部114の全幅又は全長に沿って電極を互いにオフセットする。オフセットとは、一方の顎部に位置する電極が、相手方の顎部に位置する電位又は極性の異なる電極に、幾何学的に、あるいは直接的に、向き合わないようにする電極構成として定義される。片方の顎部面だけに電極がある場合でもオフセット構成は可能であり、この場合は電位の異なる電極が相隔てられ、電流は締め付けられた組織に対し概ね平坦に流れる(図3)。加えて、オフセット構成は複数の電極セットを含んでもよい(図4)。図2Bに示すように、顎部114の間には熱104Hが発生する。図2Cには組織102に運ばれたバイオポリマー108が示されている。
【0040】
図16から図20を参照すると、電極104は一実施形態においてオフセットされ、内側の電極と外側のu字形リングとして構成される。内側電極104と外側電極104は、締め付けられた組織104の面に対し互いの直線距離が常に一定となるよう配置される。外側電極104は少なくとも1つの組織接触面に設置され、内側電極104は、組織接触面のうちの少なくとも一方に設置される(図18から図20)。内側及び外側電極104は、同じ組織接触面と多孔板106に対応する対向組織接触面とに配置することもできる。これにより設計が簡素化され製造が容易になるが、内側及び外側電極は機能的に対向面に位置し、多孔板は一方又は両方の組織接触面に位置する。
【0041】
多孔板106は別の実施形態において導電性であって、少なくとも一方の把持顎部の組織接触面に設置される。これは両顎部に設置することもでき、多孔板106電極はそれぞれ反対の極性を有する(図7)。電流は多孔板106の中を伝わり、組織102に至る。図6に示すように、一実施形態においては顎部114A、114Bのいずれか一方のみに導電性多孔板106があればよい。
【0042】
把持顎部114は圧力制御により対象組織102を締め付けることができる。顎部114A、114Bは組織に過度のダメージを与えることなく配置及び組織操作を可能にするため、低い圧力又は弱い力で組織を把持し接近させ(例えば1kgf/cm未満)、組織溶接にあたっては高い圧力による締め付けが可能である(例えば約5〜10kgf/cm)。代替的に、初めは低圧力設定値でエネルギーを付与し、作動中に高圧力設定値に推移するよう把持機構を設計することもできる。高圧力によってエラスチン線維は早期に引き裂かれ、組織溶接は弱まるため、この方法により組織溶接へのエラスチン導入を向上させることができる。
【0043】
図12〜図15を参照すると、一組の顎部114と機能的に連結する圧力制御部が示されている。圧力制御部116は位置118における低圧力設定と位置120における高圧力設定とを含んでもよい(図15)。低圧力設定は、組織に過度のダメージを与えることなく組織を把持し接近させるため、顎部114A、114Bから少量の圧力を加えるよう構成できる。高圧力設定は、エネルギーアプリケータ104とバイオポリマーアプリケータ106とによる溶接にあたって組織を締め付けるため、顎部114A、114Bから多量の圧力を加えるよう構成できる。例えば圧力制御部116は、位置118における高圧力設定にて、エネルギーアプリケータ104の初期作動中の初期設定値を含んでもよい。圧力制御部はまた、エネルギーアプリケータ104の初期作動後に、位置120にて、最大設定値まで漸増する圧力を提供してもよい。
【0044】
バイオポリマーアプリケータ106は一実施形態において、溶接を構造的に強化するため、熱溶接された組織の中にバイオポリマー108を受動的に供給する供給機構を提供する。対象組織102を接近させ締め付けることのできる2つの対向する顎部114A、114Bを設けることができる。対象組織102の中には双極無線周波エネルギーを通し、局所的に加熱することができる。対象組織102から細胞内・細胞外水分を蒸発させ、コラーゲンとエラスチンが変性するまでエネルギーを付与できる。この凝固壊死は、変性したコラーゲン線維とエラスチン線維の緩い絡み合いと説明できる。
【0045】
組織102の中で発生する熱は、顎部114内面に位置する多孔板106あるいは別の組織接触領域102B、102Cの中へ熱伝達される。多孔板106の孔にはバイオポリマー108が埋め込まれる。多孔板が加熱されるにつれバイオポリマー108は固体状態から融解状態に変化し、毛管現象により対象組織102の中に引き込まれる、もしくは運ばれる。融解された低粘性生体吸収性ポリマーが変性したコラーゲン及びエラスチン間の隙間に充満することで溶接は強化され、ポリマーが冷えることにより気密封止される。
【0046】
図21〜図24の例示的実施形態に示すように、対象組織102を分割するナイフ124を設けることができる。顎部114A、114Bのうちの少なくとも一方にナイフ溝126を形成してナイフ124を収容でき、ナイフはナイフ溝126から延伸する。ナイフ124は一実施形態において、エネルギーアプリケータ104の無線周波アプリケータの電極部分である。
【0047】
装置100は様々な手術用にそれぞれ異なる構成で提供できる。一実施形態においては肝臓切除用として、あるいは実体のある臓器切除用として、エネルギーアプリケータ104とバイオポリマーアプリケータ106を構成できる。実質組織は、蝶番で連結された一対の顎部を閉じて組織を物理的に分割する機構による粉砕手法か鈍的切開により分割できる。エネルギーアプリケータとバイオポリマーアプリケータは、顎部の側面に構成され、装置の近くで露出した実質組織へバイオポリマーを供給し、止血壁を作る。図25から図28に示すように、装置100には肝臓切除や実体のある臓器切除で組織又は実質130と係合するよう、蝶番部分128、エネルギーアプリケータ及びバイオポリマーアプリケータを設けることができる。図29から図31は、エネルギーアプリケータ104とバイオポリマーアプリケータ106とを含む装置100の一実施形態を示す。図32に示すように、エネルギーアプリケータ104とバイオポリマーアプリケータ106は、環状又はリング形でバイオポリマーを加熱し供給するよう構成できる。これは特に、尿失禁患者で括約筋支配を向上させたり、ソムノプラスティで口蓋垂に剛性を与える等、組織の環状又はリング形部に構造的剛性を与えることが望まれる手術において有用である。
【0048】
内側電極は遠位で展開する。組織を分割するため、内側電極の遠位端にはナイフの刃を取り付けることができる。エネルギーは内側電極が遠位で展開する過程で供給できるほか、内側電極が完全に展開した後に供給できる。この電気構成はWapplerらが米国特許第2,031,682号で初めて記載したものである。展開可能ナイフ/電極について記載した特許はこのほかに第6,652,521号と第7,087,054号がある。
【0049】
エネルギーアプリケータ104は別の実施形態において、第1の組織接触面102Aの近くに配置され、対象組織102内に熱を発生させるため一定量のエネルギーを付与するよう構成できる。この熱によって対象組織102から細胞内・細胞外水分が蒸発し、組織は乾燥する。バイオポリマーアプリケータ106は第2の組織接触面102Bに配置できる。バイオポリマーアプリケータ106は、対象組織102に近い場所でバイオポリマー材108を収容するよう構成できる。発生した熱によりバイオポリマー材108は固体状態から融解状態に相を変化させる。バイオポリマー材108は乾燥組織に充満し、バイオポリマー材108が冷えて固体状態に戻ることにより止血壁が提供される。止血壁を作る、あるいは周囲の天然組織に構造的剛性を与える場合は、直接的な組織圧縮は必要ない。電極またはエネルギー源を、乾燥を引き起こす対象組織に接触させるだけでよい。融解したバイオポリマー材108を供給するため、多孔板は引き続き対象組織102に近接し、これに接触する。
【0050】
図33を参照すると、組織を付着させ強化する方法200が提供されている。方法200は、エネルギーアプリケータにより組織表面の近くにエネルギーを付与すること205を含んでもよい。エネルギーの付与は、組織表面内に一定量の熱を発生させるよう構成できる。この熱によって対象組織から細胞内・細胞外水分が蒸発し、組織は乾燥する。また、この熱によって組織表面内のコラーゲンとエラスチンが変性し、組織表面の部分が互いに付着する。方法200は更に、エネルギーアプリケータに連結する収容部に配置されたバイオポリマーアプリケータにより、組織表面の中にバイオポリマー材を塗布すること210を含んでもよい。バイオポリマー材の塗布は、対象組織に付与されたエネルギーによって発生する熱を受けるため、組織表面に近い場所にバイオポリマー材を収容することを含んでもよい。この熱によってバイオポリマー材は固体状態から融解状態に相を変化させる。また、この熱によって乾燥組織にバイオポリマーが充満し、組織部分の付着部分は強化され、バイオポリマーが冷えて固体状態に戻ることにより気密封止される。
【0051】
図34を参照すると、組織を強化する方法300が提示されている。方法300は、エネルギーアプリケータにより組織表面の近くにエネルギーを付与すること305を含んでもよい。エネルギーの付与は、対象組織内に一定量の熱を発生させるよう構成できる。この熱によって対象組織から細胞内・細胞外水分が蒸発し、組織は乾燥する。方法300は更に、エネルギーアプリケータに連結する収容部に配置されたバイオポリマーアプリケータにより対象組織の中にバイオポリマー材を塗布すること310を含んでもよい。バイオポリマーの塗布は、対象組織に付与されたエネルギーによって発生する熱を受けるため、対象組織に近い場所にバイオポリマー材を収容することを含んでもよい。この熱によってバイオポリマー材は固体状態から融解状態に相を変化させる。バイオポリマーは乾燥組織に充満し、バイオポリマーが冷えて固体状態に戻ることにより止血壁が提供される。
【0052】
本発明は1つまたはそれ以上の好ましい実施形態を参照して説明し、その実施形態については本発明を完全に開示することを目的として詳細に説明したが、それらの実施形態は例示に過ぎず、本発明を限定したり全ての側面を網羅するよう列挙したりすることを意図したものではない。さらに、本発明の精神および原理から逸脱することなく様々な変更を詳細になし得ることは、当業者には明らかであろう。
【符号の説明】
【0053】
100 装置
102 組織
102A 第1の組織接触面
102B 第2の組織接触面
102C 第3の組織接触面
104 エネルギーアプリケータ
106 バイオポリマーアプリケータ、多孔板
108 バイオポリマー材
110 貯留部
112 温度調節部
114 把持顎部
114A、114B 顎部
116 圧力制御部
118、120 位置
124 ナイフ
126 ナイフ溝
128 蝶番部分
130 実質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織付着及び強化のための装置であって、前記装置は、
第1の組織接触面の近くに配置されたエネルギーアプリケータと、
第2の組織接触面に配置されたバイオポリマーアプリケータと、を備え、
前記エネルギーアプリケータは、対象組織内に熱を発生させるため一定量のエネルギーを付与するよう構成され、これにより前記対象組織から細胞内・細胞外水分が蒸発し組織は乾燥し、且つ前記対象組織の中でコラーゲンとエラスチンとのうちの少なくとも一方は変性し前記対象組織の部分がともに付着し、
前記バイオポリマーアプリケータは、前記対象組織に付与された前記エネルギーによって発生する前記熱を受けるため、前記対象組織に近い場所でバイオポリマー材を収容するよう構成され、これにより前記バイオポリマー材は固体状態から融解状態に相を変化させ、且つ前記乾燥組織には前記バイオポリマーが充満し前記対象組織が互いに付着した前記部分は強化され、前記バイオポリマーが冷えて前記固体状態に戻ることにより気密封止されること、
を特徴とする装置。
【請求項2】
前記エネルギーアプリケータが無線周波アプリケータであること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記エネルギーアプリケータが超音波アプリケータであること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記エネルギーアプリケータがレーザアプリケータであること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記エネルギーアプリケータがマイクロ波アプリケータであること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記バイオポリマーアプリケータが多孔板を含むこと、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記多孔板が200℃を上回る温度まで熱的に安定していること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記多孔板が高温熱可塑性物質であること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記高温熱可塑性物質がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であること、を特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記多孔板が多孔質セラミックであること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記多孔板が多孔質金属であること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記多孔板が無線周波エネルギーを用いる前記エネルギーアプリケータの電極であること、を特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記多孔板が金属面を含み、前記多孔板が無線周波エネルギーを用いる前記エネルギーアプリケータの電極であること、を特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項14】
前記バイオポリマーアプリケータが前記多孔板内に埋め込まれた前記バイオポリマー材を含むこと、を特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項15】
前記バイオポリマーアプリケータが前記多孔板内に埋め込まれた前記バイオポリマー材の近くに貯留部を含み、前記貯留部が追加の前記バイオポリマー材を収容すること、を特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項16】
前記固体状態から前記融解状態に至る前記バイオポリマー材の前記相変化を制御するため、前記貯留部が温度調節部を含むこと、を特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記バイオポリマー材の直接加熱により前記固体状態から前記融解状態に至る前記バイオポリマー材の前記相変化を制御するため、前記温度調節部が抵抗素子を含むこと、を特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記バイオポリマー材の温度調節により前記固体状態から前記融解状態に至る前記バイオポリマー材の前記相変化を制御するため、前記温度調節部が気体熱交換システムと液体熱交換システムとのうちの少なくとも一方を含むこと、
を特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記バイオポリマー材の温度調節により前記固体状態から前記融解状態に至る前記バイオポリマー材の前記相変化を制御するため、前記温度調節部が熱電冷却システムを含むこと、を特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項20】
前記バイオポリマー材の温度調節により前記固体状態から前記融解状態に至る前記バイオポリマー材の前記相変化を制御するため、前記温度調節部が直接冷却システムを含むこと、を特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項21】
前記バイオポリマー材の温度調節により前記固体状態から前記融解状態に至る前記バイオポリマー材の前記相変化を制御するため、前記直接冷却システムが生理食塩水注入部を含むこと、を特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記貯留部が、前記バイオポリマーアプリケータへ連結する内視鏡軸の条長沿いに管を含むこと、を特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項23】
前記貯留部が、前記多孔板にわたって前記バイオポリマー材を能動的に注入するよう構成されること、を特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項24】
前記バイオポリマー材を供給するバイオポリマーカートリッジを更に備え、前記貯留部は、前記バイオポリマーカートリッジを受け入れ、前記バイオポリマーアプリケータへ前記バイオポリマー材を供給するよう構成されること、
を特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項25】
前記対象組織に前記バイオポリマーが受動的に運ばれるよう前記多孔板が構成されること、を特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項26】
前記バイオポリマー材が非導電性であること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項27】
前記バイオポリマー材がポリカプロラクトン(PCL)であること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項28】
前記バイオポリマー材がポリカプロラクトン(PCL)共重合体であること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項29】
前記バイオポリマー材が、3000MW未満の分子量と、約37℃から200℃の溶融温度と、約1000センチポアズ(cps)未満の溶融粘度とを有すること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項30】
前記バイオポリマー材が約60℃のガラス転移温度を有すること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項31】
前記バイオポリマー材が前記対象組織に吸収されたことを視覚的に伝えるため、前記バイオポリマー材が生体吸収性染料を有すること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項32】
前記生体吸収性染料がメチレンブルーであること、を特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記第1の組織接触面と前記第2の組織接触面が互いに近接すること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項34】
前記第1の組織接触面と前記第2の組織接触面が互いに距離をおいて設置されること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項35】
前記エネルギーアプリケータの前記第1の組織接触面が一組の顎部に配置され、前記バイオポリマーアプリケータの前記第2の組織接触面が一組の顎部に配置されること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項36】
前記第1の組織接触面と前記第2の組織接触面が、前記一組の顎部のうちの一方の顎部にて互いに近接すること、を特徴とする請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記第1の組織接触面と前記第2の組織接触面が、前記一組の顎部の対向する顎部にて互いに距離をおいて設置されること、を特徴とする請求項35に記載の装置。
【請求項38】
前記バイオポリマーアプリケータが第3の組織接触面を含み、前記第2の組織接触面が第1の多孔板を含み、前記第3の組織接触面が第2の多孔板を含むこと、を特徴とする請求項35に記載の装置。
【請求項39】
前記第2の組織接触面と前記第3の組織接触面が、前記一組の顎部の対向する顎部にて互いに距離をおいて設置されること、を特徴とする請求項38に記載の装置。
【請求項40】
前記一組の顎部と機能的に連結する圧力制御部を更に備え、前記圧力制御部は低圧力設定と高圧力設定とを有し、前記組織に過度のダメージを与えることなく組織を把持し接近させるため、前記顎部から少量の圧力を加えるよう前記低圧力設定が構成され、前記エネルギーアプリケータと前記バイオポリマーアプリケータとによる溶接にあたって前記組織を締め付けるため、前記顎部から多量の圧力を加えるよう前記高圧力設定が構成されること、
を特徴とする請求項35に記載の装置。
【請求項41】
前記高圧力設定の前記圧力制御部が、前記エネルギーアプリケータの初期作動中に初期設定値を有し、前記圧力制御部が、前記エネルギーアプリケータの初期作動後に最大設定値まで漸増する圧力を有すること、を特徴とする請求項40に記載の装置。
【請求項42】
前記対象組織の分割のためナイフを更に備えること、を特徴とする請求項35に記載の装置。
【請求項43】
前記顎部のうち、前記ナイフを収容するナイフ溝を形成する少なくとも1つの顎部を更に備え、前記ナイフが前記ナイフ溝から延伸すること、を特徴とする請求項42に記載の装置。
【請求項44】
前記ナイフが、前記エネルギーアプリケータの無線周波アプリケータの展開可能電極部分に取り付けられること、を特徴とする請求項42に記載の装置。
【請求項45】
前記エネルギーアプリケータは無線周波アプリケータであって、前記顎部間を横方向に電流が流れるよう電極が構成されること、を特徴とする請求項35に記載の装置。
【請求項46】
前記エネルギーアプリケータと前記バイオポリマーアプリケータが肺切除用に構成されること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項47】
前記エネルギーアプリケータと前記バイオポリマーアプリケータが組織標本を除去する生検装置として構成され、前記バイオポリマーアプリケータが、バイオポリマーにより前記組織標本を強化するよう構成されること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項48】
前記エネルギーアプリケータと前記バイオポリマーアプリケータが尿失禁治療装置として構成されること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項49】
前記エネルギーアプリケータと前記バイオポリマーアプリケータがソムノプラスティ装置として構成されること、を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項50】
組織強化のための装置であって、前記装置は、
第1の組織接触面の近くに配置されたエネルギーアプリケータと、
第2の組織接触面に配置されたバイオポリマーアプリケータと、を備え、
前記エネルギーアプリケータは、対象組織内に熱を発生させるため一定量のエネルギーを付与するよう構成され、これにより前記対象組織から細胞内・細胞外水分が蒸発して組織は乾燥し、
前記バイオポリマーアプリケータは、前記対象組織に付与された前記エネルギーによって発生する前記熱を受けるため、前記対象組織に近い場所でバイオポリマー材を収容するよう構成され、これにより前記バイオポリマー材は固体状態から融解状態に相を変化させ、且つ前記乾燥組織には前記バイオポリマーが充満し、前記バイオポリマーが冷えて前記固体状態に戻ることにより止血壁が提供されること、
を特徴とする装置。
【請求項51】
組織を付着させ強化する方法であって、前記方法は、
エネルギーアプリケータにより組織表面の近くにエネルギーを付与することと、
前記エネルギーアプリケータに連結する収容部に配置されたバイオポリマーアプリケータにより組織表面の中にバイオポリマー材を塗布することと、を含み、
前記エネルギーの前記付与は、前記組織表面内に一定量の熱を発生させるよう構成され、これにより前記対象組織から細胞内・細胞外水分が蒸発して組織は乾燥し、且つ前記組織表面の中でコラーゲンとエラスチンとのうちの少なくとも一方は変性し前記組織表面の部分が互いに付着し、
前記バイオポリマー材の前記塗布は、前記対象組織に付与された前記エネルギーによって発生する前記熱を受けるため、前記組織表面に近い場所で前記バイオポリマー材を収容することを含み、これにより前記バイオポリマー材は固体状態から融解状態に相を変化させ、且つ前記乾燥組織には前記バイオポリマーが充満し前記対象組織が互いに付着した前記部分は強化され、前記バイオポリマーが冷えて前記固体状態に戻ることにより気密封止されること、
を特徴とする方法。
【請求項52】
組織を付着させ強化する方法であって、前記方法は、
エネルギーアプリケータにより組織表面の近くにエネルギーを付与することと、
前記エネルギーアプリケータに連結する収容部に配置されたバイオポリマーアプリケータにより前記対象組織の中にバイオポリマー材を塗布することと、を含み、
前記エネルギーの前記付与は、前記対象組織内に一定量の熱を発生させるよう構成され、これにより前記対象組織から細胞内・細胞外水分が蒸発して組織は乾燥し、
前記前記バイオポリマー材の前記塗布は、前記対象組織に付与された前記エネルギーによって発生する前記熱を受けるため、前記対象組織に近い場所で前記バイオポリマー材を収容することを含み、これにより前記バイオポリマー材は固体状態から融解状態に相を変化させ、且つ前記乾燥組織には前記バイオポリマーが充満し、前記バイオポリマーが冷えて前記固体状態に戻ることにより止血壁が提供されること、
を特徴とする方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公表番号】特表2010−527704(P2010−527704A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509502(P2010−509502)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/064248
【国際公開番号】WO2008/147773
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(509309352)
【Fターム(参考)】