説明

組織再生用器具

本発明は、物理的な力を受ける生体組織のための足場を少なくとも一つ配置する手段を有し、患者の体内で用いられる組織再生用器具であって、上記手段は、互いに可動に配置された第一部材および第二部材を備え、第一部材が少なくとも一つの第一受体を支持するとともに、第二部材が少なくとも一つの第二受体を支持し、これら第一受体と第二受体とが協働して足場を保持するものに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理的な力を受ける生体組織のための足場を少なくとも一つ配置する手段を有し、患者の体内で用いられる組織再生用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2006/109137号公報には、患者の組織再生のための方法が示されており、この方法は、代用の生体組織のための足場を準備する段階と、代用の生体組織による形成を誘発できる足場に細胞を被覆および/または接種する段階とを含む。足場は、患者の体内に移植されるものであり、成長させる代用の生体組織を有する足場は、十分な生体組織が形成されて、代用の生体組織による血管再生が起こった時に、摘出される。足場、代用の生体組織、および血液供給は、代用の生体組織が要求する場所に、移植または置き換えられる。そして、もし適用できるなら、代用の生体組織における血液供給の少なくとも一部が、代用位置の近くの局所的な血管へ再接続される。この局所的な血管への再接続は、例えば、骨には適応するが、軟骨には適応しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/109137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、患者の体内で用いられて生体組織の再生を促進し得る器具であって、物理的な力、特に多様な物理的な力を受ける生体組織のための足場が配置された器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのため、本発明に係る器具は、別記請求項で明示する特徴を有する。
【0006】
本発明の第一の点では、組織再生用器具が、物理的な力を受ける生体組織のための足場を配置する手段を有し、上記手段は、互いに可動に配置された第一部材および第二部材を備え、第一部材が少なくとも一つの第一受体を支持するとともに、第二部材が少なくとも一つの第二受体を支持し、これら第一受体と第二受体とが協働して足場を保持するものであるという特徴を有する。
【0007】
疑義を避けるためにも、上記受体は、上記器具から分離可能な部分として形成され得るだけでなく、上記器具に一体として形成され得る部分であることが、本発明から外れない範囲で認められる。
【0008】
足場は、関連する生体組織の成長に適するとともに、上記器具に適合するように設計可能である。実際に、異なった型の足場が、異なった種類の生体組織を同一の器具で同時に成長させるために、使用され得る。
【0009】
上記受体が互いに向き合う開口頂部を有し、第一受体と第二受体との組み合わせにより、足場を保持するための制限された領域または空間が定められることが好ましい。
【0010】
上記器具は、上述したように、多様な物理的な力を受ける生体組織のための足場を有し得る。上記物理的な力は、ある意味で、上記器具を特に骨や軟骨の成長に適したものにする。
【0011】
患者の体内で作用する体からの力を役立たせるために、そして、望ましい多様な物理的な力を足場に発生させるために、第一部材および第二部材が、患者の体の異なる部分を直接的または間接的に接合するように配置されていることが好ましい。
【0012】
本発明に係る組織再生器具のさらに望ましい特徴は、受体が金網型の壁を備える箱体として形成されていることである。金網型の壁によると、発育中の生体組織が、移植環境に接することができる。この移植環境は、栄養の拡散/移動と、足場の中または上で生体組織の成長に要求される血管壁の内部成長とを許容するものである。
【0013】
本発明者は、本発明に係る器具を具体化するのに適した方法として、次について想到した。それは、第一部材および第二部材が棒体であり、これら棒体が連結部および他の棒体からなる一群から選択された構成部材で互いに接続されているということである。
【0014】
これは、第一部材および第二部材が、棒体にて構成された枠に用いられ、この枠が、棒体が連結する位置にコーナ部を含み、コーナ部がヒンジ連結として作用することにより、枠におけるコーナ部以外と比べてコーナ部で厚みが減少する、という特徴を有する本発明に係る器具の実現を可能にする。
【0015】
第一部材および第二部材の互いの移動を制限する規制部材を備えることが、さらに望ましい。
【0016】
好ましい実施形態では、その器具は、器具と患者の体の部分とを相互に接続するバネのような緩衝部材を備えることが好ましい。この実施形態では、緩衝部材が過剰な力に対する安全装置として作用する。その緩衝部材は、予荷重が与えられたものでもよい。
【0017】
以下、本発明に係る器具の実施例を示す図面を参照して、本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】〜
【図6】本発明の6つの異なる実施形態に係る器具を示す模式的な図である。
【図7】規制部材および安全用のバネを備えた本発明の実施形態に係る器具を示す図である。
【図8】図1に示した本発明の実施形態に係る器具を、患者の体内で骨に接続した状態を示す図である。
【図9】(a)は第一の実物大の実施形態を示し、(b)はその実施形態の図で図1に示したものである。
【図10】(a)は本発明の器具に係る第二の実物大の実施形態を示し、(b)はその実施形態の図である。
【図11】本発明に係る器具から分離した単一の受体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
これらの図面のいずれにおいても、同一の部材は同一の符号により示される。
【0020】
まず、図1〜6において、本発明に係る器具をそれぞれ符号1で示す。
【0021】
組織再生用器具1は、物理的な力を受ける生体組織のための足場を配置する手段を有している。これら手段は、第一受体4を支持する第一部材2と、第二受体5を支持する第二部材3とを備え、これら第一部材2と第二部材3とが互いに可動に配置されている。この可動性は、第一受体4と第二受体5との中に含まれた足場に力を与えようとするものである。このため、受体4,5は、互いに向き合う開口頂部6,7を有し、両受体4,5が足場を保持するための制限された領域または空間を互いに定める。しかし、受体4,5は、多くの異なった形状を取ることができる。説明のために、受体4,5の実施例を、本発明の器具の他の部分から分離して図11に示す。
【0022】
第一部材2と第二部材3との互いの可動性は、次の現象を引き起こす。それは、第一受体および第二受体4,5の組み合わせに含まれる足場が、第一部材2と第二部材3との多様な移動性によって、多様な物理的な力を受けることである。
【0023】
第一受体4と第二受体5との可能性ある多様な移動性は、直接的に器具の構造にリンクしている。もし、器具1は、第一の先端9が固定されるとともに、第一の先端9から離れた先端10に荷重Fが負荷されるならば、図1に示すように、上記受体4,5間で線形の移動Aが本質的に発生し、これは、図2および図3に示すように、横の移動Bと結合する可能性がある。または、図4,5および6に示す場合は、回転移動Cが発生する。
【0024】
図1〜6全てに示すように、器具は、次の構成を備えることにより具体化される。つまり、器具は、棒体2,3として理解される第一部材と第二部材とを有し、棒体2,3は、連結部9,10,11,12や他の棒体13,14で互いに連結されている。このようにして、棒体2,3,13,14にて構成された枠1に用いられる第一部材2および第二部材3と、この枠1に含まれるのであり棒体が連結する位置にあるコーナ部9,10,11,12とを具体化することができる。コーナ部9,10,11,12がヒンジ連結として作用することにより、枠1におけるコーナ部以外と比べてコーナ部9,10,11,12で厚みが減少する。これは、明確に図9(a)および図10(a)に示すことができる。それぞれの図は、図9(b)(図1と同一)および図10(b)に示す模式的な図を、それぞれ実物大で示すものである。
【0025】
図7は、第一受体4と第二受体5との組み合わせと、これらと同一の受体4’,5’とを有する本発明に係る器具1を示す。この実施形態では、第一の一組の受体4,5と、第二の一組の受体4’,5’とは、位置が異なっており、またそれぞれ第一部材2および第二部材3との接続位置が異なっている。これら異なった位置によると、受体4,5および受体4’,5’には、器具1の一つの先端10に荷重Fが負荷された時に、異なる移動を行う。これはまた、第一の一組の受体4,5に含まれる足場と比べて、第二の一組の受体4’,5’に含まれる足場には、異なる物理的な力が働く。このように働く異なった力は、受体4,5および受体4’,5’で成長する生体組織の種類に依存することが望ましい。
【0026】
さらに図7を参照すると、器具1には、第一部材2および第二部材3の互いの移動を制限する規制部材17が組み込まれている。図7はさらに、器具1に装着された状態で安全装置として作用するとともに、バネ18として具体化される緩衝部材を示す(以下の図8についての説明も参照)。
【0027】
受体4,5は模式的にのみ図示する。また、発育中の生体組織が移植環境に接し得ることを許容するために、これら受体が金網型の壁を備える箱体として具体化されることが望ましい。上記移植環境は、栄養の拡散/移動と、足場の中または上で生体組織の成長に要求される血管壁の内部成長とを許容するものである。
【0028】
図8は、図1および図9(b)に示した器具1が、患者の体内に配置されて、上記患者の体の部分15および16に接続されたときの実施形態を、模式的に示す。
【0029】
模式図として図8に明確に示すように、患者の骨15,16の移動は、器具1に伝達される多様な力F’を引き起こし、この力F’は結果として、上記器具1のそれぞれ受体4,5で定められる領域8に保持された足場への物理的な力に変化する。過荷重に対する保護のために、器具1は、体15,16の一部15を接続するバネ18として具体化される緩衝部材を備える。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的な力を受ける生体組織のための足場を少なくとも一つ配置する手段(2,3)を有し、患者の体内で用いられる組織再生用器具(1)であって、
上記手段(2,3)は、互いに可動に配置された第一部材(2)および第二部材(3)を備え、
第一部材(2)が少なくとも一つの第一受体(4,4’)を支持するとともに、第二部材(3)が少なくとも一つの第二受体(5,5’)を支持し、これら第一受体と第二受体(4,5;4’,5’)とが協働して足場を保持するものであることを特徴とする組織再生用器具。
【請求項2】
第一受体と第二受体(4,5;4’,5’)とが互いに向き合う開口頂部(6,7)を有し、
これら第一受体と第二受体(4,5;4’,5’)との組み合わせにより、足場を保持するための制限された領域または空間(8)が定められることを特徴とする請求項1に記載の組織再生用器具。
【請求項3】
第一部材(2)および第二部材(3)が、患者の体の異なる部分(15,16)を接合するように配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の組織再生用器具。
【請求項4】
第一受体および第二受体(4,5;4’,5’)が、金網型の壁を備える箱体として形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の組織再生用器具。
【請求項5】
第一部材(2)および第二部材(3)が棒体(2,3)であり、これら棒体が連結部(9,10,11,12)および他の棒体(13,14)からなる一群から選択された構成部材で互いに接続されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の組織再生用器具。
【請求項6】
第一部材(2)および第二部材(3)が、棒体(2,3,13,14)にて構成された枠(1)に用いられ、
この枠(1)が、棒体が連結する位置にコーナ部(9,10,11,12)を含み、
コーナ部がヒンジ連結として作用することにより、枠におけるコーナ部以外と比べてコーナ部で厚みが減少するものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の組織再生用器具。
【請求項7】
第一部材(2)および第二部材(3)の互いの移動を制限する規制部材(17)を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の組織再生用器具。
【請求項8】
器具(1)と患者の体の部分(15)とを相互に接続する緩衝部材であるバネ(18)を備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の組織再生用器具。
【請求項9】
成長条件を有利に変化させるため、異なる位置で第一部材(2)および第二部材(3)に支持される二またはそれ以上の第一受体および第二受体(4,5;4’,5’)の組み合わせを有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の組織再生用器具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−523266(P2012−523266A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504642(P2012−504642)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050188
【国際公開番号】WO2010/117275
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(500292149)テクニッシェ ユニヴァージテート デルフト (14)
【Fターム(参考)】