説明

組織横断輸送を強化するペプチドとその同定法および使用法

【課題】ヒト又は動物の組織を通る活性物質輸送を可能にし、又は促進するペプチドを同定する方法に関する。
【解決手段】無作為ファージ・ライブラリー又は予備選択ファージ・ライブラリー由来の所定量のファージをin vivoまたはin situで胃腸管中などの動物の部位に投与する。所定の時間に、輸送されるファージを選択するために、組織関門を横断して輸送されるファージを、投与部位とは組織関門で隔離されている回収部位で回収する。この輸送されたファージを宿主内で増幅する。この事項を(直前のサイクルで生成された輸送されたファージを使用して)所定の回数繰り返し、投与部位から回収部位に輸送されうるファージを含む選択されたファージ・ライブラリーを得る。選択されたファージ・ライブラリー中のファージによりコードされる少なくとも1つのペプチドの配列を決定し、ヒト又は動物の組織を通る活性物質の輸送を可能にし又は促進するペプチドを同定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、薬物、高分子、または生分解性のナノ粒子やミクロ粒子などの粒子のヒトまたは動物の組織を通る輸送を可能にするペプチド配列の同定に関する。また、本発明は特に胃腸管(GIT)の内腔側に沿って並ぶ上皮細胞などの組織を通るバクテリオファージの送達を強化するペプチド配列の同一性を決定するためのスクリーニング、アッセイにおけるファージ・ディスブレイ・ライブラリーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
胃腸管の内腔側に沿って並ぶ上皮細胞は、経口投与後の薬物送達の主たる関門である。とはいえ、薬物送達および輸送の促進に利用しうる輸送経路で認知されているものには、経細胞輸送、傍細胞輸送、担体仲介輸送、トランスサイトーシス輸送の4経路がある。従来の薬物、ペプチド、タンパク質、高分子またはナノ/ミクロ粒子系が上記の経路の一つと「相互作用」を行なう能力から、胃腸管から胃腸管の下に横たわる血行への薬物や粒子送達の強化がもたらされる。
【0003】
受容体仲介経路、担体仲介輸送経路、或いはトランスサイトーシス輸送経路の場合には、いくつか「取込み」のシグナルが確認されている。このようなシグナルとしては、特に葉酸受容体と相互作用を行なう葉酸、マンノース受容体と相互作用を行なうマンノースおよびセチルマンノシド、内因子(Intrinsic Factor)と相互作用を行なうコバラミンなどがある。このほか、YSKV、FpHL、YRGV、YQTI、TEQF、TEVM、TSAF、YTRFなどのロイシンとチロシンをベースにしたペプチド選択モチーフ、即ち内在化配列が存在し、これらは原形質膜からエンドソームへのタンパク質の取込みまたはターゲティングを促進する。ファージ・ディスプレイ・ライブラリーのスクリーニングは、受容体または結合部位と特異的に結合するペプチドを同定するために特異的な膜受容体または結合部位を用いて行なうことが可能である。ペプチドまたはタンパク質の特定のモチーフまたはドメインには特異的な膜受容体と相互作用を行ないうる能力があるが、この相互作用に続いてタンパク質−受容体複合体の細胞内取込みが起こり、この能力は、このようなモチーフを薬物送達の促進に応用できる可能性があることに対する証拠となろう。しかしながら、ペプチドまたはペプチド・モチーフが胃腸管の上皮部位の頂端側に表出する部位などの特異的な受容体部位または担体部位と相互作用を行なう能力によりペプチドまたはペプチド・モチーフを同定することは、ペプチドの同一性決定が可能にならないか、或いは同一性決定の最も有効な方法ではない可能性がある。
【0004】
また、受容体をベースとしていない、特定リガンド検出用のアッセイ法も使用されてきた。例えば、Fong等の論文(Drug Development Research 33:64-70 (1994))には、細胞の機能を変化させるペプチドをファージ・ディスプレイ・ライブラリーを含む全細胞の走査によって同定する戦略が開示されている。しかしながら、この方法はファージ・ディスプレイ・ライブラリーのスクリーニングに無処置の組織や極性培養細胞ではなく全細胞を使用するものであるから、主な機能として極性細胞層横断輸送への作用を含む配列に関する情報は提供しない。
【0005】
さらに、Stevenson等の論文(pHarmaceutical Res.12(9),S94(1995))はジペプチドおよびトリペプチドの透過性に関する情報を得るための合成トリペプチド組合せライブラリーのスクリーニングにCaco-2単層培養物を使用することを開示している。有用ではあるが、この技術は開示されたジペプチドおよびトリペプチドが薬物、特に薬物充填ナノ/ミクロ粒子製剤の送達を強化する能力を評価するものではない。
【0006】
以上のように、薬物充填ナノ/ミクロ粒子を含む薬物のヒトまたは動物の組織関門横断輸送にとって特に効果的なペプチド配列を決定する方法に対しては需要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の概要
本発明は、ヒトまたは動物の組織を通る活性物質輸送を可能にする、或いはそれを促進するペプチドを同定する方法を提供する。無作為ファージ・ライブラリー由来の所定量のファージをin vitro、in vivoまたはin situ、極性組織培養細胞中のいずれかで組織試料の第一の側、好ましくは頂端側にプレーティングもしくは接触させる。組織の第二の側、即ち第一の側の反対側、好ましくは側底側に輸送されたファージを所定の時間に回収して被輸送ファージを選択する。被輸送ファージを宿主中で増幅し、(直前のサイクルで得られた被輸送ファージを使用して)この事象サイクルを0回から6回などの所定の回数反復して行ない、第一の側から第二の側へ輸送が可能なファージを含む選択ファージ・ライブラリーが得られる。最後に、ヒトまたは動物の組織を通る活性物質輸送を可能にする、或いは促進するペプチドを同定するために選択ファージ・ライブラリー中のファージにコードされた、少なくとも一つの無作為ペプチドの配列を決定する。被輸送ファージは、活性物質有効搭載機(ファージ)を同伴した輸送体ペプチド(上記のファージにコードされた、少なくとも一つのランダムペプチド)の組合せであって、組織を通過する活性物質の輸送が輸送体ペプチドにより促進されるものと見ることができる。以上のことから、選択ファージ・ライブラリー中のファージにコードされた無作為ペプチドは、特定組織を通過する、薬物封入ナノ/ミクロ粒子などの他の活性物質の輸送を促進する可能性が予想される。
【0008】
組織試料は、十二指腸、空腸、回腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、骨盤結腸、血管系に沿って並ぶ血管内皮細胞、血液脳関門を形成する血管内皮細胞、肺胞細胞、肝臓、腎臓、骨髄、眼の網膜細胞組織、または神経の各組織から得たものであることが好ましい。組織試料は、in vitro、in vivoのいずれのものでもよい。組織試料は、単離したラット結腸または小腸結節または開ループ/閉ループ動物モデル系に見られる胃腸管の内腔側に沿って並ぶ上皮細胞などの胃腸管の内腔側に沿って並ぶ上皮細胞を含むことがより好ましい。その他の好ましい組織試料は心臓、脾臓、膵臓、胸腺および脳組織などである。
【0009】
極性組織細胞培養試料は、胃腸管上皮細胞、肺胞細胞、血液脳関門の血管内皮細胞または血管平滑筋細胞であることが好ましい。極性組織細胞培養試料は、極性Caco-2細胞培養物またはT-84細胞培養物であることがより好ましい。
【0010】
活性物質は、薬物またはナノ/ミクロ粒子であることが好ましい。活性物質は、ナノ/ミクロ粒子表面にペプチドを直接連結したり連結成分を介して連結するなど、物理的に吸着、被覆、共有結合した生分解ナノ/ミクロ粒子などの薬物封入・薬物充填ナノ/ミクロ粒子であることがより好ましい。別法として、ペプチドでナノ/ミクロ粒子自体を形成したり、ペプチドを活性成分と直接結合させることもできる。このような結合体としては、修飾遺伝子が組換え融合タンパク質をコードするように上記のペプチドをコードするDNA配列を治療ペプチドまたは治療タンパク質をコードする遺伝子もしくはcDNAと読み枠内で融合した融合タンパク質であって「ターゲティング」ペプチドが治療ペプチドまたは治療タンパク質と融合され、「ターゲティング」ペプチドが胃腸管からの融合タンパク質の吸着を増大させるものなどがある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の実施の形態
驚くべきことに、本発明は胃腸管上皮層、肺胞細胞、血液脳関門の内皮細胞、血管平滑筋細胞、血管内皮細胞、腎上皮細胞、パイエル板のM細胞、肝細胞などを含むがこれらに限定されないヒトまたは動物の組織を横断する薬物などの活性物質の送達または輸送の促進が可能なペプチドを同定する方法を開示する。さらに、送達システム、例えばナノ粒子、ミクロ粒子、リポソーム、ミセルなどの外部をこれらの「帰巣」ペプチドで被覆するか、それらと連結させるか、それらで形成して特定組織を横断する封入薬物の標的化送達を可能にすることもできる。また、融合タンパク質をin vivoもしくはinvitroで合成することによってペプチドを読取り枠内で治療ペプチドまたは治療タンパク質と融合させ、治療ペプチドまたは治療タンパク質の組織横断的な送達または輸送をペプチドが強化するようにさせることも可能である。
【0012】
本明細書に使用するヒトまたは動物の「組織」の語は、十二指腸、空腸、回腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、骨盤結腸、血管系に沿って並ぶ血管内皮細胞、血液脳関門を形成する血管内皮細胞、肺胞細胞、肝臓、腎臓、骨髄、心臓、脾臓、膵臓、胸腺、脳、脊髄、神経組織、眼の綱膜組織などの各組織を含むがこれらに限定されない。
【0013】
本明細書に使用する「極性組織培養細胞」の語は、培養すると極性細胞層を形成する細胞を表し、胃腸管上皮細胞、肺胞細胞、血液脳関門の内皮細胞、血管平滑筋細胞または、その他の、組織培養に際して極性化するか、形態学的特徴または(位相学的)構造を帯びるか、またはin vivoでその細胞型に特異的な付属器を獲得するあらゆる細胞を含むがこれらに限定されない。
【0014】
本明細書に使用する「活性物質」の語は、ヒトまたは動物の体内で生体反応の惹起が可能なあらゆる薬物または抗原、或いはあらゆる薬物、抗原を充填もしくは封入したナノ粒子、ミクロ粒子、リポソーム、ミセルの製剤を含むがこれらに限定されない。薬物、抗原を充填もしくは封入した製剤の例としては、活性物質を生分解ナノ/ミクロ粒子などのナノ/ミクロ粒子中に封入または充填したものであって、直接連結するか連結成分を介して連結するなど、ペプチドをナノ/ミクロ粒子表面に吸着、被覆、共有結合したものが含まれる。これらに加えてペプチドにナノ/ミクロ粒子自体を形成させることができるか、生分解ナノ/ミクロ粒子または薬物を充填もしくは封入したナノ/ミクロ粒子の作製に使用する一つまたは複数のポリマーにペプチドを共有結合させることができるか、またはペプチドを活性物質と直接結合させることができる。このような活性物質への結合体としては、修飾遺伝子が組換え融合タンパク質をコードするように上記のペプチドをコードするDNA配列を遺伝子と、或いは治療ペプチドまたは治療タンパク質をコードするcDNAと読み枠内で融合した融合タンパク質などが含まれる。
【0015】
本明細書に使用する「薬物」の語は、あらゆる薬剤活性物質を含むがこれらに限定されない。代表的な薬物としては、ペプチドまたはタンパク質、ホルモン、鎮痛薬、抗片頭痛薬、抗凝固薬、鎮吐薬、心血管薬、降圧薬、麻薬拮抗薬、キレート薬、抗狭心症薬、化学療法薬、鎮静薬、抗腫瘍薬、プロスタグランジン、および抗利尿薬などがあるが、これらに限定されない。典型的な薬物としては、インスリン、カルシトニン、カルシトニン遺伝子調節タンパク質、心房性ナトリウム利尿タンパク質、コロニー形成刺激因子、ベータセロン、エリスロポエチン(EPO)、α、β、γインターフェロンなどのインターフェロン、ソマトロピン、ソマトトロピン、ソマトスタチン、インスリン様成長因子(ソマトメジン)、黄体形成ホルモン放出因子(LHRH)、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、オキシトシン、エストラジオール、成長ホルモン、酢酸ロイプロリド、第VIII因子、インターロイキン2などのインターロイキン、およびそれらの類似体などのペプチド、タンパク質またはホルモン;フェンタニール、スフェンタニル、ブトルファノール、ブプレノルフィン、レボルファノール、モルヒネ、ヒドロモルホン、ヒドロコドン、オキシモルホン、メタドン、リドカイン、ブピバカイン、ジクロフェナク、ナプロキセン、パベリン、およびそれらの類似体などの鎮痛薬;スマトリプタン、麦角アルカロイド、およびそれらの類似体などの抗片頭痛薬;ヘパリン、ヒルジン、およびそれらの類似体などの抗凝固薬;スコポラミン、オンダンセトロン、ドンペリドン、メトクロプラミド、およびそれらの類似体などの鎮吐薬:ジルチアゼム、クロニジン、ニフェジピン、ベラパミル、イソソルビド−5−モノニトレート、有機ニトレート類、心臓障害の治療に使用する薬物、およびそれらの類似体などの心血管薬、降圧薬および血管拡張薬;ベンゾジアゼビン系、フェノチアジン系、およびそれらの類似体などの鎮静薬;ナルトレキソン、ナロキソン、およびそれらの類似体などの麻薬拮抗薬;デフェロキサミンおよびそれらの類似体などのキレート薬;デスモブレシン、バソプレシン、およびそれらの類似体などの抗利尿薬;ニトログリセリンおよびそれらの類似体などの抗狭心症薬;5−フルオロウラシル、ブレオマイシン、およびそれらの類似体などの抗腫瘍薬;プロスタグランジンおよびそれらの類似体;ビンクリスチンおよびそれらの類似体などの化学療法薬などが含まれる。また、代表的な薬物としては、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、遺伝子、遺伝子補正ハイブリッド・オリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー・オリゴヌクレオチド、三重らせん形成オリゴヌクレオチド、シグナル・トランスダクション経路阻害薬、チロシンキナーゼ阻害薬、DNA修飾薬などもある。また、本明細書に使用する「薬物」の語は、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、シンドビスウイルスなどの遺伝子送達用ウイルス系、リポソーム、陽イオン脂質、デンドリマー、造影剤、酵素を含む遺伝子送達および遺伝子治療のシステムなどを含むが、これらに限定されない。
【0016】
本明細書に使用する「予備選択ファージ・ライブラリー」の語は、ファージ・ディスプレイ・ライブラリーの亜集団から成るライブラリーを表す。この亜集団は、標的分子と特異的に結合するファージの亜集団の選択を可能にするためにタンパク質、受容体、酵素、イオンチャンネル、キナーゼ、成長因子または成長因子受容体などの標的分子に対して最初にスクリーニングを行なうことにより形成される。別法として、この亜集団は、in situまたはin vivoのいずれかで標的細胞、標的細胞型、標的組織、標的組織関門と特異的に結合するファージの亜集団か、標的細胞、標的細胞型、標的組織、標的組織関門と結合し、および/またはそれを横断して輸送されるファージの亜集団のいずれかの選択を可能にするために、標的細胞、標的細胞型、標的組織型、胃腸管、血液脳関門、その他の組織または組織関門に対してスクリーニングを行なうことによっても形成されうる。また、予備選択ファージ・ライブラリーまたは選択ファージの亜集団は、標的分子、標的細胞、標的組織に対して再スクリーニングし、in situまたはin vivoのいずれかで標的分子、標的細胞、標的組織、標的組織関門と結合するファージの亜集団か、標的細胞、標的組織、標的組織関門と結合し、および/またはそれを横断して輸送されるファージの亜集団の選択をさらに可能にすることもできる。このような再スクリーニングをそれぞれの連続的な「予備選択ファージ・ライブラリー」について0回から30回反復し、さらに予備選択されたファージ・ライブラリーを生成させることができる。
【0017】
本明細書に使用する「ヒトまたは動物の組織」の語は、ヒト組織を明確に含む動物組織を表す。
fdなどの大腸菌糸状パクテリオファージにコードされた吸着タンパク質であるpIIIおよびpVIIIのNH2−末端アミノ酸配列は、DNA組換え技術により改変して、所定の長さの無作為ペプチド配列のライブラリーを含ませうることが従来から明らかにされている(Cwirla等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:6378-6382(1990))。従って、可変のpIIIまたはpVIIIタンパク質をコードする改変ファージfd配列のDNAライブラリーを大腸菌内部に構築し、増殖させることが可能である。
【0018】
本発明は、培養モデル系、in vitro、in situ、in vivoのいずれかの組織試料の頂端側から側底側へ、または側底側から頂端側へのいずれかのバクテリオファージ送達を強化するペプチド配列を決定するための、無作為スクリーニング法のファージ・ディスプレイ・ライブラリー、或いはファージ・ディスプレイ・ライブラリーからの予備選択ファージ・ライブラリーまたは亜集団などのファージ・ディスプレイ・ライブラリーの使用を開示する。頂端側から側底側へ(例えば消化管側から血液側へ)の送達を強化するペプチドは、同方向の活性物質送達強化に使用しうる。側底側から頂端側への送達を強化するペプチドに対してはその逆のことが言える。例えば側底側にプレーティングすると、静脈内、皮下、経皮、或いは眼の経路により投与した抗原に対する粘膜の免疫反応冗進に有用なペプチドが決定されうる。
【0019】
ライブラリーにコードされた無作為ペプチド配列の大きさはいかなる大きさでもよい。ライブラリーは線状ペプチドをコードするように設計しうる。別法として、2またはそれ以上の固定位置にシステイン残基を含ませて環状ペプチドをコードするようにライブラリーを設計することも可能である。さらに下で検討するが、好ましいバクテリオファージfd(例えばライブラリーL3.6、L3.15、L8.15由来のものなど)はおよそ7nm×500〜900nmの大きさの糸状ファージである。このファージは、その表面に主としてファージ粒子につきコピー数が3〜5の遺伝子IIIタンパク質とコピー数がおよそ2,500の遺伝子VIIIタンパク質の2種類のタンパク質を発現する。このファージ・ディスプレイ系では、遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIをコードする遺伝子のいずれか一方が修飾を受けて6量体、15量体、30量体などの特定の長さの無作為ペプチド配列をコードし発現するようになる。さらに、例えば無作為15量体配列をコードする多コピー数の挿入DNAは、15量体より長い無作為ペプチド配列の産生を促進しうる。各ライブラリーは106〜109以上の無作為ペプチド配列に相当する。このように、ファージ・ライブラリーはナノ粒子を特定の長さの様々なペプチドで被覆したナノ粒子混合物をシミュレートすることができる。
【0020】
ファージ・ディスプレイ・ライブラリー構築中に一つ以上の挿入DNA(もしくはDNAライブラリーまたは挿入DNAの内部制限部位における切断により生じうる部分挿入DNA)が遺伝子IIIまたは遺伝子VIII中のクローニング部位でクローン化され、こうして得られるベクター・クローン中に多重挿入DNAが得られる可能性がある。挿入DNAが遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIの読取り枠に関して同一枠内にあること、および/またはin vivoで翻訳中に起きるリボゾーム性のフレームシフトプロセスを起こしやすいまたは感受性であり、次いで遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIの翻訳読取り枠に関して挿入DNAの読取り枠を回復しうる内部DNA配列をクローンが含むこと、および/または挿入DNAにコードされるmRNAが遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIと同一枠内にあり、内部翻訳の停止コドンまたは終止コドンを含まないこと、および/または内部に翻訳の停止コドンまたは終止コドンがいずれも大腸菌内部でSupEサプレッサーによりGLNコドンとしてデコードされるTAGコドンなどのin vivoの翻訳サプレッサー分子によって読取りコドンとして読み取られることを条件として、複数の挿入DNAまたはそれらの誘導体を含むこのようなクローンは、多重挿入DNAが存在することにより予想したペプチドより長いペプチドをコードする能力を有する。
【0021】
3重(または多重)挿入DNAにコードされたペプチドは、より長く、および/または多様なペプチドをコードする能力がある。このような比較的長いペプチドは、15量体ペプチドなどの比較的短いペプチドとは対照的に、2次構造および3次構造をとる能力がより高い。多重または3重挿入DNAを含むファージにコードされた規定の2次構造および/または3次構造をとるペプチドの能力は、次に選択または選別の過程の間に無作為ファージ・ディスプレイ・ライブラリから上記の種類のファージが選択されることを引き起こす。
【0022】
上皮細胞では別の輸送機序が働く。輸送機序の中には担体を媒体とするものがあり、それによって担体または受容体がリガンドと結合して結合したリガンドを上皮細胞内部へ、或いは上皮細胞を通過して輸送する。他の輸送系はトランスサイトーシスによって機能し、それにより担体または受容体部位がリガンドと結合しうる。担体−リガンド複合体は、エンドサイトーシスにより取り込まれることによってリガンド(または薬物)を細胞内部へ、または細胞を通過して送達する。本発明によると、このような活性担体またはトランスサイトーシス輸送系と結合しで薬物送達を促進する特定のペプチド配列を見つけ出すことができる。しかしながら、本発明は、一つの受容体一担体系に焦点を合わせるのではなく、上皮細胞など、組織中にあっで不確定の、または未知の受容体−担体部位と相互作用するペプチド配列を同定するための盲検/無作為/予備選択スクリーニング法の使用を開示し、極性培養細胞またはモデル組織系の頂端側から側底側へのバクテリオファージの送達を促進する。これらのペプチド配列はバクテリオファージの送達を促進しうるため、薬物および微粒子系の輸送に役立つと思われ、特に、薬物を充填もしくは封入したナノ/ミクロ粒子系或いは融合タンパク質の表面をこのペプチド配列で被覆し、それによってペプチドを治療ペプチド/タンパク質と融合した場合は、同粒子系の輸送に役立つと思われる。さらに、本発明によると培養細胞または組織における経細胞のまたは傍細胞の輸送経路または機序などを認識し、これらの輸送経路による送達を促進する、特定のペプチド配列を見つけ出すことができる。
【0023】
簡単に述べると、in vitroでの関連のスクリーニング法は、無作為ファージ・ライブラリーまたは予備選択ファージ・ライブラリー由来の所定量のファージをヒトまたは動物の組織試料と、もしくは極性組織培養細胞の第一の側と接触させる段階と、組織試料または組織培養物の反対側へ輸送されるファージを回収して輸送されたファージを選択する段階と、輸送されたファージを宿主の中で増幅する段階と、そして輸送されたファージにコードされる少なくとも一つの無作為ペプチドを同定してヒトまたは動物の組織を通過する活性物質の輸送を可能にする、或いは促進するペプチドを同定する段階とを含む。必要があれば接触、回収、増幅の段階は前回のサイクルで得られた輸送されたファージを用いて所定の回数反復しうる。例えばCaco-2細胞やT-84細胞などの極性組織細胞培養試料或いは単離ラット結腸切片などの組織抽出物を用いて、ファージを培養細胞または組織切片の頂端側にプレーティングしうる。その後、どの時点でもよいが通常は1時間ないし24時間後に、側底側培地を無菌的に回収し、F1因子をコードする雄性大腸菌などの宿主に再感染させて子ファージを作成するために使用する。サイクル1で選択されたファージを培養細胞または組織切片の頂端側に塗布し、側底側培地中のファージを再び収集し、力価測定を行ない、増幅しうる。このサイクルを反復すると頂端側から側底側へ輸送される能力のあるファージの濃縮が可能となり、このためサイクル数が増えるにつれて側底側培地中に出現するファージの収率(%)が高くなる。このサイクルを0回から30回、好ましくは3回から20回反復した後、精製、選択、増幅したファージのpIIIまたはpVIIIタンパク質のNH2末端領域をコードするDNA配列を決定すると、培養系または組織系の頂端側から側底側への輸送の利点を確実にする改変ファージのアミノ酸配列の推定が可能になる。
【0024】
上に示したin vitroスクリーニング法同様、in vivoでの関連のスクリーニング法は無作為ファージ・ライブラリーまたは予備選択ファージ・ライブラリー由来の所定量のファージをin vivoで組織関門の第一の側と接触させる段階と、組織関門の反対側へ輸送されるファージを回収して輸送されたファージを選択する段階と、輸送されたファージを宿主の中で増幅する段階と、そして輸送されたファージによってコードされる少なくとも一つの無作為ペプチドを同定してヒトまたは動物の組織を通過する活性物質の輸送を可能にする、或いは促進するペプチドを同定する段階とを含む。必要があれば、接触、回収、増幅の段階は前回のサイクルで得られた輸送されたファージを用いて所定の回数だけ反復しうる。例えばファージ・ディスプレイ・ライブラリはポリエチレングリコール沈殿法、あるいはショ糖密度勾配法、CsCl密度勾配遠心法のいずれかなどにより精製しうる。次いで、精製したライブラリーをTBSまたはPBS緩衝液などに再懸濁し、例えば閉ループモデルまたは開ループモデルなどを使用して十二指腸、空腸、回腸、結腸その他のin vivoの動物部位に注入するなどの、組織関門の片側に導入する。注入後、門脈循環および/または体循環試料などの組織関門を横断して存在する体液試料を0から90分後、および/または2から6時間後またはそれ以上などの所定の時間に採取する。ファージの存在を確認するために、採取試料(例えば血液など)の一部を使用して大腸菌などの宿主に直接感染させる。残った試料を大腸菌と37℃で終夜インキュベーションするなど、インキュベーションする。培養物中に存在する増幅したファージについて個別的に塩基配列決定を行なってファージにコードされるペプチドの同一性を決定してもよく、或いは一層濃縮する必要があればこのファージをPEG沈殿させ、PBSに再懸濁し、さらにPEG沈殿させるか別の動物閉/開GITループモデル系への投与に直接使用した後に、門脈循環および/または体循環試料の採取、次いでこのような循環系に輸送されたファージの増幅を行なってもよい。このように、必要に応じ増幅ファージの反復投与によって行なうファージ・ディスプレイ・ライブラリの動物胃腸管への投与によると、この動物の胃腸管から門脈循環および/または体循環への輸送が可能になる。
【0025】
必要があれば動物モデルの組織関門(例えばGITなど)へのファージ・ディスプレイ・ライブラリ投与後、上記手順の終了時に組織関門の対応領域を回収しうる。この回収組織はプロテアーゼインヒビターを含むPBSなどの適当な緩衝液中で繰り返し洗浄し、プロテアーゼインヒビターを含むPBSなどの中でホモジナイズしうる。ホモジネートは大腸菌などの宿主の感染に使用することができ、組織関門(例えば腸組織など)にしっかりと結合するファージの増幅を可能にする。別法として、回復した組織を適当なPBS緩衝液中でホモジナイズし、繰り返し洗浄し、最終組織ホモジネート中に存在するファージを大腸菌で増幅させうる。この方法によると、組織関門(例えば腸組織など)にしっかりと結合するファージか、または組織関門細胞(例えば腸組織の上皮細胞など)に取り込まれるファージのいずれかの増幅(およびそれに続く関連ペプチドの同定)が可能になる。この、組織と結合するファージまたは組織に取り込まれるファージの選択法は、反復しうる。
【0026】
次に、選択されたファージによってコードされ、上記の手順で得られ、上記ファージの遺伝子III、または遺伝子VIIIのいずれか適当な遺伝子のDNA塩基配列決定後に同定される、対応するペプチド配列を合成する。モデル細胞培養物または(結腸などの)分離組織系を横断して合成ペプチド自体を結合し、それを輸送させると、個々の各ペプチドの輸送特性を直接評価しうる。さらに、選択したペプチド配列を他のペプチドまたはタンパク質と融合させると、モデル系を横断するこのようなキメラタンパク質またはキメラペプチドの輸送を直接評価することができる。このようなキメラタンパク質またはペプチドはin vitroでまたは従来の組換え技術のいずれかで合成しうるが、それによって輸送ペプチドをコードするcDNAおよび薬物ペプチドまたは薬物タンパク質をコードするcDNAとが同一枠内で互いに連結し、そして発現ベクター中でクローン化し、このことにより次に、原核細胞であれ真核細胞であれトランスジェニック動物であれトランスジェニック植物であれ、所望の宿主での発現が可能になろ。例えば、pIIIタンパク質の改変NH2末端領域をコードするcDNAを、選択されたタンパク質分子(例えばカルシトニン、インスリン、インターフェロン、インターロイキン、サイトカイン、EPO、コロニー刺激因子等)をコードする遺伝子またはcDNA中にサブクローニングし、これらの改変遺伝子、改変cDNAを大腸菌、または適当なホ乳類細胞、またはトランスジェニック動物、またはトランスジェニック植物などで発現しうる.発現した組換えタンパク質を精製して、そのヒト組織または動物組織を横断する経細胞輸送、担体仲介輸送、トランスサイトーシス輸送、および/または傍細胞輸送を検証しうる。さらに、輸送ペプチドはナノ微粒子またはミクロ微粒子の各薬物送達ビヒクル表面の被覆に使用しうる。このような被覆は、ペプチドの微粒子系表面への直接吸着により、または別法として、直接または連結成分媒介のいずれかにより、成いはナノ微粒子またはミクロ微粒子の各薬物送達ビヒクル作製に使用するポリマーへのペプチドの共有結合後にこのようなペプチドーポリマー結合体をナノ微粒子またはミクロ微粒子の各薬物送達ビヒクル作製に使用することにより、ペプチドの微粒子系表面への共有結合することによって行ないうる。
【0027】
ファージ・ディスプレイ・ライブラリーの性状および調製
本明細書中でL3.6、L3.15およびL8.15の記号で表す3つのファージ・ディスプレイ・ライブラリーはミズーリ大学コロンビア校のジョージP.スミス教授から入手した。各ライブラリーは親ベクター「fd−tet」由来のfUSE5ベクターの中にある。L3.6ライブラリーでは、fdパクテリオファージの遺伝子IIIによって無作為6量体ライブラリーが発現され、得られたpIIIタンパク質の5コピーのすべてに表される。増幅した形質導入体クローン数は3.7×1011であり、ファージDNAの大きさは9225塩基である。L3.15ライブラリーでは、fdバクテリオファージの遺伝子IIIによって無作為15量体ライブラリーが発現され、得られたpIIIタンパク質の5コピーのすべてに表される。増幅した形質導入体クローン数は1次増幅が3.2×1011、2次増幅が12.1x1012であり、ファージDNAの大きさは9252塩基である。L8.15ライブラリーでは、ベクターが同一ゲノムに二つの遺伝子VIIIを有し、一方は野生型であり、他方は外来残基を表す。無作為15量体ライブラリーはfdバクテリオファージの二つの遺伝子VIIIの一つにより発現され、得られた組換えpVIIIタンパク質の最大およそ300コピーに表される。このベクターはf88.4と呼ばれ、外来15量体がpVIIIタンパク質の最大およそ300コピーに表される。増幅した形質導入体クローン数は2.2×1012であり、ファージDNAの大きさは9273塩基である。
【0028】
30量体ファージ・ディスプレイ・ライブラリーのX30はサイモン・フレーザー大学のジャミーS.スコット博士から入手した。X30ファージ・ディスプレイ・ライブラリーは30残基の大きさの無作為ペプチド配列をコードする。テトラサイクリン耐性遺伝子を保有し、野生型遺伝子と合成遺伝子の二つのpVIII遺伝子を有するf88.4ベクター中で、このライブラリーを構築した。f88.4ライブラリーは、f88.4ベクターの合成pVIII遺伝子中にクローン化される種々の挿入配列を有する。
【0029】
D38およびDC43は、遺伝子IIIがそれぞれ38および43残基の大きさの無作為ペプチドをコードする無作為ファージ・ディスプレイ・ライブラリーである。これらのライブラリーはMcConnell等の論文Molecular Diversity 1:154-176(1995)、1995年9月21日出願の米国特許出願第310192号、1995年6月7日出願の米国特許出願第488161号および国際出願第96/09411号に記載され、これらの参考文献を参照により本明細中に引用する。
【0030】
大腸菌宿主K91Kan株で各バクテリオファージ・ライブラリーの大量調製を行なった。カナマイシン(最終濃度100μg)と共にしたLBブロス(酵母エキス(Gibco)1g、トリプトン(Gibco)2g、NaCl1g、蒸留水200ml)20mlを入れた50mlの無菌試験管にK91Kanの単一コロニーを接種し、37℃で200rpmで撹拌しながら対数増殖期の中ごろ(600nmでOD0.45)まで増殖させた。この細胞を穏やかに振盪(100rpm、37℃)しながら5分間インキュベートして、剪断されたF絨毛を再生させた。この細胞を室温で2200rpm、10分間遠心分離してペレットとし、上清を取り除き、80mMのNaCl20mlに細胞を穏やかに再懸濁し、45分間穏やかに振盪した(100rpm、37℃)。この細胞について再度遠心分離を行い、細胞ペレットを1mlの冷NAP緩衝液(NaCl(5M原液)1.6ml、NH4H2PO4(0.5M原液、pH7.0)10ml、蒸留水88.4ml)に穏やかに再懸濁した。細胞は4℃に保存して3〜5日間感染性を保持した。
【0031】
1次ライブラリーは、テリフィックブロス(terrific broth)100mlを入れた1リットルのフラスコ2個にK91Kan細胞(LB+100μg/mlカナマイシンで増殖)の終夜培養物を接種することにより増幅した。1:10希釈液のOD600が0.2になるまでこの細胞培養物を37℃、200rpmでインキュベートした後、37℃、200rpmでさらに5分間インキュベートして剪断されたF絨毛を再生させた。各フラスコに1次ライブラリー10μlを添加して低速振盪を15分間継続した。予め暖めておいた1lのLB+0.2μg/mlテトラサイクリンを入れた2リットルのフラスコに各培養物を注入し、200rpmで35分間振盪した。20mg/mlテトラサイクリン1mlを添加し、各フラスコから試料7μlを取り出した。フラスコをインキュベーターに移し、終夜振盪を継続した。各培養物の種々の系列希釈液(10-4、10-6、10-8、10-10希釈液)200μlをLB+40μg/mlテトラサイクリンおよび100μg/mlカナマイシン平板に塗布し、終夜インキュベートし、コロニーを計数した。
【0032】
培養物を500ml容の遠心管2本に等分割して5,000rpmで4℃、10分間遠心分離することによりファージの大量精製を達成した。上清を新しい遠心管に移し、8,000rpmで4℃、10分間再び遠心分離した。最終清澄化上清を新しい遠心管に注入し、正味体積を記録した。0.15倍容量のPEG/NaCl(PEG8000−100g、NaCl−116.9g、蒸留水475ml)を添加し、反転(×100回)により遠心管を穏やかに混合し、氷上に4時間以上(または4℃で終夜)保存した。8,000rpmで4℃、40分間遠心分離後、上清をデカントし、再び短時間遠心分離し、残った上清をピペット操作で除いた。TBS(トリスHCl(pH7.5)−0.60g、NaCl−0.88g、蒸留水−100ml)10mlを添加し、遠心管を37℃、200rpmで30分間インキュベートしてペレットを溶解した。遠心管を短時間遠心分離し、両方の遠心管から溶液を1本のオークリッジ管に移し、10〜15,000rpm、4℃で10分間遠心分離し、上清を新しい遠心管に取り出した。0.15倍容量のPEG/NaClを添加し、ファージを氷上で1時間沈殿させた。TBS10ml添加から手順を反復した。秤量した30ml容のベックマンポリアロマー管にCsCl4.83gを入れ、管を再度秤量した後、ファージ溶液を添加した。正味重量10.75g(総体積12mlの31%(w/w)CsCl溶液、密度1.3g/ml)となるようにTBSを添加した。31:69(w/w比)の比が重要である。超遠心機で20,000rpm、4℃で48時間遠心分離後、上方から可視光源で管を照らし、ファージバンドを同定した。
【0033】
ファージバンド−上層バンド、およそ5mm、微か、青色、非綿状
PEG−下層バンド、幅が狭い、筋状、綿状、不透明、白色
液をファージバンドの2mm上まで吸い取り、無菌太口トランスファー用ピペットを用いてファージバンドを採取し、26ml容のポリカーボネート製遠心管に入れた。TBSを遠心管の肩まで満たし、混合し、60Tiローター中で50,000rpm、4℃、4時間遠心分離した(反復)。ペレットをで穏やかにボルテックスして10mlのTBSに溶解し、冷所で終夜軟化させ、再びボルテックスした(反復)。次いでペレットをボルテックスしてTBSに溶解し(元の培養物1リットル分を2mlに)、4℃で終夜軟化させ、再びボルテックスした。遠心管を短時間遠心分離し、溶液を管底に集め、1.5ml容の微量遠心管に移した。アジ化ナトリウム(0.02%)を添加し、溶液を70℃に20分間加熱して残存微生物を殺菌してもよい。微量遠心分離を1分間行なって溶液を清澄化した後、上清を無菌微量遠心管に移し、4℃で保存した。1;100希釈液200μlを240〜320nm走査して物理的粒子の濃度を測定し、貧栄養培養したK91Kan細胞10μlで10-8希釈液10μlの力価を測定した。感染液200μlをLB(+40μg/mlテトラサイクリンおよび100μg/mlカナマイシン)に塗布し、37℃で24時間インキュベートし、コロニーを計数してファージ原液の感染価の力価を測定した。
【0034】
Caco-2細胞、T-84細胞の培養
最初にCaco-2細胞(ATCC名:CCL248、72歳男性の結腸癌の肺転移巣由来)およびT-84細胞(ATCC名:HTB37:72歳白人男性の原発結腸腫瘍から分離)を密集するまで25cm2フラスコで培養した。T-84細胞は2mMグルタミン、15mM HEPES、10%ウシ胎子血清(FCS)、1%MEM非必須アミノ酸、50U/mlペニシリンおよび50μg/mlストレプトマイシンを含むDMEM:ハムF12培地(1:1)で増殖させた。Caco-2細胞は10%FCS、1%MEM非必須アミノ酸、50U/mlペニシリンおよび50μg/mlストレプトマイシンを含むDMEM+グルタマックス−1(glutamax-1)で増殖させた。細胞は全て95%O2/'5%CO2中37℃でインキュベートした。細胞が密集した時点でスナップウェルの播種に使用した。
【0035】
T-84細胞に対するスナップウェル播種の要点は次の通りである(12mmの各スナップウェルには1x106個細胞/1.0ml培地の濃度を要するが、T-84の100%密集フラスコはおよそ8×106個細胞を含み、スナップウェル8個の播種に足りる)。フラスコをトリプシン処理し、細胞塊や気泡が存在しないように注意しながら細胞を再懸濁した。組織培養培地2.6mTをウェルの底に入れ、0.1mlをフィルターに乗せ、37℃のインキュベーターに10分間入れた。ウェルの底に落とさないように注意しながら細胞懸濁液1.5mlを各フィルターに添加した。フィルターをインキュベーターに戻し、24時間後に調べた。EVOMチョップスティック式上皮電位計(WPT)を用いて細胞の適したTERを常時モニターした。Caco-2細胞の場合、Caco-2細胞の播種の要点はスナップウェル当たり細胞数を1x106個の代わりに5×105個とした点を除きT-84細胞と同様である。
【0036】
それ以降のスナップウェル上の細胞の維持および栄養補給は以下の通りである。ウェルに栄養補給する際は、まず培地をスナップウェルの側底側から除く。フィルターに触れないように注意しながらピペットで単層から培地を除いた後、増殖培地1mlを頂端側に添加し、2mlを側底側に注入した。プレート上のウェルの外側にこぼれた焙地をチェックし、必要に応じアルコールで湿した綿棒でふき取った。スナップウェルに播種した後、細胞に毎日栄養を与え、21〜30日間スナッブウェルで培養し、その間に細胞は自発分化し、極性化した。
【0037】
無処置のラット結腸粘膜組織
ラットを(一酸化炭素で)屠殺し、腹腔を切開し、結腸を捜し当て、取り出し、1倍ハンクス・バランス化塩類緩衝液(HBSS、Gibco BRL、Cat# 14065031)中で洗浄した。管状切片を腸間膜縁に沿って切開して平たく四角い組織片とした。次いで平滑筋層をブラント切開で除去しておよそ2.5cm2の上皮組織片を残した。
【0038】
並列式スウィータナ・グラス(SG)拡散チャンバーに分離したラット結腸粘膜をセットした。S−Gチャンバーにセットしたラット結腸粘膜を結腸組織頂端側から側底側へのファージ輸送の分析に使用した。
【0039】
並列式チャンバーの平衡化
水浴を37℃に平衡化した。チャンバーにHBSS緩衝液(下記参照)を満たし、電極のスイッチを入れた。入力オフセット調節つまみをゼロに調整した。読取り値がずっとゼロに保たれていることを確認しながら、この系をおよそ20分間平衡化した。電極のスイッチを切り、HBSS溶液を除いた。ラット結腸上皮シートを含むフィルターを装置にセットし、HBSS緩衝液10mlを各側に同時に添加した。95%O2/5%CO2で組織を酸素化し、この系を少なくとも30分間平衡化した。電極のスイッチを入れ、つまみを電圧固定と電流にセットした。電圧を調整して電流をおよそ2〜3μA変化させた。次いで8分ごとに電圧が印可されるようにタイマーをセットし、対応する偏向電流を用いてオームの関係式(R=V/I)によってTERを計算した。記録はファージ添加の少なくとも10分間前に開始した。
【0040】
Caco-2細胞でのfd由来ファージの酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)
96穴組織培養プレート中で密集するまでCaco-2細胞(100μl)を増殖させた(2×105細胞/ウェルをDMEM/グルタマックス+1%ペニシリン/ストレプトマイシン、1%MEMおよび10%FCS含有増殖培地で2日間増殖)。2日間増殖後、10%ホルムアルデヒド(ホルムアルデヒド(38%):蒸留水=1:3(v/v))100μlを密集Caco-2細胞単層に添加した後、室温で15分間インキュベーションを行なった。プレートを上下逆にして細かく振ることによりマイクロタイター・ウェル内容物を取り除き、DPBS(ダルベッコのPBS)でウェルを3回洗浄した。各ウェルを0.1%フェニルヒドラジン−DPBS(フェニルヒドラジンの0.1%DPBS溶液)200μlで満たし、37℃で1時間インキュベートした。次いでプレートを上下逆にして細かく振ることによりマイクロタイター・ウェル内容物を取り除き、DPBSでウェルを3回洗浄した。各ウェルにBSAの0.5%DPBS溶液200μlを添加した後、室温で1時間インキュベーションを行なった。次いで各ウェルを1%BPT(DPBS中、1%BSA、0.05%トウィーン20溶液)で3回洗浄した。
【0041】
ウェルにファージ試料(1%BPTに懸濁、100μl)(1010pfu/mlのファージ原液もしくはその1:25または1:100希釈液)を添加した後、室温で2時間インキュベーションを行なった。ブレートを上下逆にして細かく振ることによりマイクロタイター・ウェル内容物を取り除き、1%BPTでウェルを5回洗浄した。各ウェルに西洋わさびべルオキシダーゼ(HRP)−抗M13結合体(HRP/抗M13結合体:ヒツジ抗M13TgGと結合した西洋わさびペルオキシダーゼ;1%BPT溶液中、1:5000作用希釈、ファルマシア27-9402-01)100μlを添加した後、室温で1時間インキュベーションを行なった。再びプレートを上下逆にして細かく振ることによりマイクロタイター・ウェル内容物を取り除き、1%BPTでウェルを5回洗浄した。各ウェルにTMB基質溶液(3,3',5',5−テトラメチルベンジジン、マイクロウェル・ペルオキシダーゼ・サブストレート・システム(Kirkegaard & Perry Laboratories CN 50-76-00)、等量のTMBペルオキシダーゼ基質Aとペルオキシダーゼ溶液Bを使用直前にガラス容器内で混合することにより調製)200μlを添加した後、室温で20〜60分間インキュベーションを行なった。しかる後、マイクロタイタープレートリーダーで650nmにおける吸光度を読み取った。
【0042】
腸組織の処理
本明細書中で記載したin vivoでの態様で使用するために、ファージ・ディスプレイ・ライブラリーをPEG沈殿法もしくはショ糖またはCsCl密度勾配遠心法などにより精製する。ファージ・ディスブレイ・ライブラリーをPBS(またはTBS)緩衝液に再懸濁し、閉(または開)動物ループモデル(ラット、ウサギその他の種)の空腸、回腸、結腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、骨盤結腸などのin vivoの動物部位に注入する。ファージ・ディスプレイ・ライブラリーを動物モデルの胃腸管に投与し、所定の時間(0分、15分、30分、45分、60分など、最長6時間まで)に門脈および/または体血液試料を採取し、或いは閉(または開)動物ループモデルに投与したファージ・ディスプレイ・ライブラリーを所定の時間インキュベートした後で、ファージ・ディスプレイ・ライブラリーに暴露した、或いはそれと共にインキュベートしたGIT管の対応領域を実験終了時に回収しうる。回収した腸組織をプロテアーゼインヒビターを含むPBSなどの適当な緩衝液で繰り返し洗浄した後、洗浄した組織をプロテアーゼインヒビターを含むPBS中でホモジナイズし、ホモジネートを大腸菌の感染に使用して、腸組織にしっかりと結合しうるファージの増幅を可能にする。別法として、回収した腸組織を適当なPBS緩衝液中でホモジナイズし、繰り返し洗浄し、最終組織ホモジネート中に存在するファージを大腸菌内で増幅することができる。後者の方法によると、腸組織にしっかりと結合するファージかまたは腸組織細胞に取り込まれるファージのいずれかの増幅も可能である。
【0043】
細胞関門横断能力が強化されたファージの選択
A.ファージ・ディスプレイ集団による組織培養細胞単層(スナップウェル・モデル)の処理
ラミナーフローキャビネット中で、ファージ溶液100μlに抗生物質を含まない増殖培地(各細胞株の完全推奨培地だが抗生物質は添加しないもの)900μlを微量遠心管中で混合した。同じ実験を2回行い、ファージを含まない対照処理を含めた。細胞の焙養令と継代数に注意しながら、各スナップウェルについてTERを測定した。期待通りのTERを有する推奨培養令の無処置の単層だけを使用した。スナップウェル内の側底側培地を抗生物質を含まない培地と交換し、頂端側培地を除去した。細胞の頂端側にファージ溶液と対照溶液を添加し、スナップウェル培養物を通常通りインキュベートした。各回収時間(例えばファージ添加後1、5、24時間後)に側底側から培地を採取し、2ml容の無菌ねじ口管に入れて4℃で保存した。側底側培地採取毎に、焙地を抗生物質を含まない新鮮培地と交換した。実験終了時にTERを測定し、通常通り単層をビルコン(Vircon)殺菌剤で処理した。
【0044】
大腸菌K91Kanの貧栄養培養細胞を調製して、(上記の増殖培地)中のファージをTBS/ゼラチンで系列希釈することにより、ファージの力価測定を行なった。貧栄養培養細胞10μlと系列希釈ファージ溶液10μlを1.5ml容の微量遠心管内で混合した。このファージを室温で10分間感染させた。通常、次の希釈倍率を使用する。
【0045】
【表1】

【0046】
0.2μg/mlテトラサイクリンを含むLB培地1mlをファージ/K91Kan細胞混合物に添加し、37℃で30分間インキュベートした。ファージ/K91Kan細胞混合物200μlを40μg/mlテトラザイクリンおよび100μg/mlカナマイシンを含むLB寒天平板上に塗布し、37℃で終夜増殖させた。10-2希釈(990μl中に10μl)については、平板上のコロニー200個は1×107TU/mlに相当する。
【0047】
このように、側底側培地に存在するファージの力価を推定し、頂端側に添加したファージ数を知ることにより、頂端側から側底側培地に輸送されたファージ収率(%)を推定することができる。
【0048】
ファージ溶液(3時点の全部から回収されたもの(3×2ml=6ml)をオークリッジ管にプールする)1ml当たり150μlのPEG/NaClを添加することにより、側底増殖培地中に存在する選択されたファージを増幅した。2〜3分間連続反転することにより溶液を十分混合し、4℃に少なくとも4時間保存した。沈殿したファージをベックマンJ2−MC調製超遠心機で10,000g(8,500rpm、ベックマン、JA17ローター使用)、15分間遠心分離した。上清を取り除き、同様に5分間再び遠心分離した。室温で5分間静置してボルテックスする(15分間静置して再度ボルテックスすることにより反復する)ことによりTBS100μlにペレットを再懸濁した。懸濁したファージ溶液をオークリッジ管に入れ、貧栄養培養した大腸菌K91Kan細胞100μlを添加した。ファージ/細胞溶液を穏やかに混合し、室温に30分間静置した。予め暖めたテトラサイクリン(0.2μg/ml)およびカナマイシン(100μg/ml)を含むLB培地20mlを添加し、200rpm、37℃で30分間インキュベートした。培地にテトラサイクリン原液(40mg/ml)10μlを添加し、管を終夜インキュベートした。終夜培養物をベックマンJ2−MC調製超遠心機で3440g(5,000rpm、ベックマンJA17ローター使用)、15分間遠心分離した。上清を清浄な(好ましくは無菌の)オークリッジ管に入れ、13800g(10,000rpm)で10分間再び遠心分離した。上清を3mlのPEG/NaClを含む清浄な(好ましくは無菌の)オークリッジ管に入れ、2〜3分間の連続反転により混合した。4℃で少なくとも4時間保存した後、管をベックマンJ2−MC調製超遠心機で13800g(10,000rpm、ベックマンJA17ローター使用)、15分間遠心分離した。上清を取り除き、上と同様に10,000rpmで5分間再度遠心分離した。マイクロピペットでなるべく多くの上清を取り除き、室温で5分間静置し、ボルテックスすることによりTBS1mlにペレットを再懸濁した。再懸濁物を15分間静置し、再びボルテックスした。ファージ溶液を1.5ml容の微量遠心管に移し、再びボルテックスした。この溶液を微量遠心機で13,000rpm、30秒間遠心分離し、上清を150μlのPEG/NaClを含む新しい1.5ml容の微量遠心管に移した。遠心管を2〜3分間反転させて混合し、4℃に少なくとも1時間保存した。続いて遠心管を微量遠心機で13,000rpmで10分間遠心分離し、上清を取り除き、5分間再度遠心分離した。室温で5分間静置してボルテックスすることによりペレットを100μlのTBSに再懸濁した。再懸濁物を15分間静置し、再びボルテックスした。この再懸濁物はサイクル1で選択したファージに相当する。1μlを採取し、およそ109TU存在することを確認するための力価測定に使用した。
【0049】
このファージ溶液は、側底側培地中に輸送されたファージを用いて上記の手順を反復することにより、培養T-84細胞および培養Caco-2細胞での別の選択段階へ進む準備が整った。そこで、サイクル1から選択されたファージをスナップウェルで増殖中のCaco-2細胞またはT-84細胞の頂端側に再び添加する。通常、スナップウェルで増殖中の細胞の頂端側には各サイクルで同じ力価のファージを適用する。各サイクル終了時に各時間の側底側焙地に存在するファージの力価を測定し、これらの輸送されたファージを細胞を通じて再増幅、再循環させる。従って、サイクルを重ねるにつれて側底側培地中に出現するファージの収率(%)は上昇する。サイクル5終了時には、バクテリオファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質生成物により表示された無作為ペプチド配列により焙養細胞の頂端側から側底側へ選択的に輸送されたファージか選択されている。
【0050】
B.ファージ・ディスプレイ集団による無処置のラット結腸粘膜組織の処理
ひとたびラット結腸組織が上記のように調製されると、電極のスイッチを切った後で、HBSS緩衝溶液中のおよそ1×1011ファージを結腸組織の消化管側に塗布した。続いて指定の時間に、設定を電圧および増幅に変更し、系を接地し、結腸組織の消化管側と血液側の培地を両方とも同時に取り除き、血液側の焙地を4℃に保存した。消化管側に存在する元の培地をS−Gチャンバーにセットした結腸組織の消化管側に移し替えた。同時に、新鮮なHBSS緩衝焙地を血液側に添加し、組織を95%O2/5%CO2中で酸素化した。再び電極のスイッチを入れ、つまみを電圧固定および電流に設定した。電圧を調整して電流がおよそ2〜3μAとなるように変えた。次いで8分毎に電圧を印可するようにタイマーをセットし、対応する偏向電流を用いてオームの関係式(R=V/I)によってTERを計算した。
【0051】
ラット結腸横断転移後ファージの力価測定を行ない、以下のように増幅した(ファージ試料の力価測定は増幅の前後に行なった)。マイクロタイタープレートでファージの系列希釈液(2μlファージ+18μlTBS/ゼラチン)を行い、必要な希釈液10μlを1.5ml容のマイクロチューブに移した。各マイクロチューブに貧栄養培養したK91Kan細胞10μlを添加し、穏やかに混合し、室温で10分間インキュベートした。LB+0.2μg/mlテトラサイクリン990μlを添加し、マイクロチューブを37℃で30分間インキュベートした。培養物200μlをLB(40μg/mlテトラサイクリン+100μg/mlカナマイシン)寒天平板に塗布し、37℃で終夜インキュベートし、コロニーを計数した。
【0052】
オークリッジ管内で150μlのPEG/NaClをファージ溶液(即ちチャンバーからの頂端側または側底側HBSS緩衝液)1mlに添加し、反転(100回)により混合し、そして4℃で4時間インキュベートすることによりファージを増幅した。管を10,000gで15分間遠心分離し(JA17ローター、8,500rpm)、上清をデカントし、5分間再遠心分離した。上清を取り除き、ペレットをTBS100μlに再懸濁した(室温に5分間静置し、ボルテックスし、室温に15分間静置し、再びボルテックスする)。力価測定用に試料5μlを取っておいた。貧栄養培養したK91Kan細胞100μlをファージ溶液95μlに加え、穏やかに混合し、室温で30分間インキュベートした。予め暖めておいたLB+0.2μg/mlテトラサイクリン20mlを添加し、管を37℃、200rpmで30分間インキュベートした。テトラサイクリン(40mg/ml原液)10μlおよびカナマイシン(最終濃度100μg/ml)を添加し、管を37℃、200rpmで終夜インキュベートした。次いでこの管を3440g(JA17ローター、5,000rpm)で15分間遠心分離し、上清を新しいオークリッジ管に加え、13,800g(JA17ローター、10,000rpm)で遠心分離した。上清を3mlのPEG/NaClを含む新しいオークリッジ管に移し、反転(100回)により混合し、そして4℃で4時間インキュベートした。次いで管を13,800gで遠心分離し、上清をデカントし、13,800gで5分間再遠心分離した。ペレットを100μlのTBSに再懸濁した(室温に5分間静置し、ボルテックス・ミキサーで撹拌し、室温に15分間静置し、そして再びボルテックスする)。ファージ溶液を150μlのPEG/NaClを含むマイクロチューブに移し、反転(×100回)により混合し、そして4℃で1時間インキュベートした。管を1分間微量遠心分離し、上清を取り除き、再び微量遠心分離した。上清を取り除き、ペレットを100μlのTBSに再懸濁した(室温に5分間静置し、ボルテックスし、室温に15分間静置し、そして再びボルテックスする)。ファージの2μlを力価測定用に取りわけ、残りを4℃に保存した。
【0053】
このファージ溶液は、側底側培地中に輸送されたファージを用いて上記の手順を反復することにより、S−Gにセットしたラット結腸組織での別の選択段階へ進む準備が整った。そこで、サイクル1から選択されたファージをS−Gにセットしたラット結腸組織の頂端側または側底側に再び添加する。通常、組織の消化管側には各サイクルで同じ力価のファージを添加する。各サイクル終了時に各時間の側底側培地(血液側)に存在するファージの力価を測定し、そしてこれらの輸送されたファージを結腸組織を通じて再増幅、および再循環させる。従って、サイクルを重ねるにつれて側底側焙地中に出現するファージの収率(%)は上昇する。サイクル5または6終了時には、パクテリオファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質生成物により表示された無作為ペプチド配列により、結腸組織の頂端側あるいは消化管側から血液側あるいは側底側へ選択的に輸送されるファージか選択されている。
【0054】
C.ファージ・ディスプレイ集団によるin vivo動物組織関門の処理
精製したファージ・ディスプレイ・ライブラリー(無作為または予備選択)をPBS緩衝液で500μlに希釈し、閉(または開)腸ルーブモデル(例えばラット、ウサギその他の種)に注入した。注入時および注入後の各時間に、門脈循環または体循環試料を採取した。採取した血液の一部を大腸菌と共にインキュベートした後、ファージのプラーク、導入単位、ファージがテトラサイクリンなどの抗生物質への耐性をコードするコロニーのためのプレーティングをすることができる。採取した血液試料の残り(最高150μl)を大腸菌250μlおよびLB培地5mlまたはその他の適当な増殖培地と共にインキュベートする。振盪培養器で37℃でインキュベートすることにより大腸菌培養物を終夜インキュベートする。その他の時間(15分、30分、45分、60分など、最長6時間まで)に採取した血液試料を同様に処理して、これらの時間に門脈循環または体循環に存在するファージを大腸菌内で増幅できるようにする。増幅後、増幅されたファージをPEG沈殿法により回収し、PBS緩衝液またはTBS緩衝液に再懸濁する。さらに、PEG沈殿前後の増幅されたファージの力価を測定する。増幅しPEG沈殿したファージを既知のファージ力価(通常108から1010ファージまたはプラーク形成単位/ml)に希釈し、動物閉(または開)ループモデルのGITに注入する。種々の時間に門脈循環および/または体循環から血液試料を採取し、血液試料に輸送されたファージを上記1回目のサイクルと同様に大腸菌内で増幅する。続いてファージをPEG沈殿し、再懸濁し、力価測定し、希釈し、そして動物閉(または開)ループモデルのGITに注入する。ファージを注入し、その後に門脈循環および/または体循環血液試料を採取し、これら血液試料に輸送されたファージを増幅するこの手順は、例えば10回まで反復することができ、GITから門脈循環および/または体循環へ選択的に輸送されるファージの選択を可能にする。
【実施例】
【0055】
実施例1.Caco-2細胞でのファージ収率(%)
上記の手順に従い、Caco-2細胞を用いてライブラリーL3.6、L3.15、L8.15およびfUSE2(対照)をスクリーニングした。サイクル毎の収率(%)(1時間、5時間、24時間および全収率)およびサイクルについての経上皮抵抗性の変化を測定した。Caco-2細胞のTER測定値は224〜449Ω/cm2の範囲に留まった。細胞培養物の側底側のファージ収率は頂端側に添加したファージに対する百分率として報告する。連続6回のスクリーニングサイクルを行ない、側底緩衝液の1時間、5時間、および24時間試料を採取した。サイクル1〜6でサイクル毎に得られたファージの収率(%)を表1にまとめた。使用可能な収率は通常4回目のサイクルから得られた。
【0056】
実施例2.T-84細胞でのファージ収率(%)
上記の手順に従い、T-84細胞を用いてライブラリーL3.6、L3.15、L8.15およびfUSE2(対照)をスクリーニングした。サイクル毎の収率(%)(1時間、5時間、24時間および合計収率)およびサイクルについての経上皮抵抗性の変化を測定した。T-84細胞のTER測定値は224〜449Ω/cm2の範囲に留まった。細胞培養物の側底側のファージ収率は頂端側に添加したファージに対する百分率として報告する。連続4回のスクリーニングサイクルを行ない、側底緩衝液の1時間、5時間、および24時間試料を採取した。サイクル1〜4でサイクル毎に得られたファージの収率(%)を表2にまとめた。使用可能な収率は通常4回目のサイクルから得られた。
【0057】
実施例3.分離結腸断片でのファージ収率(%)
上記の手順に従い、分離ラット結腸を用いてライブラリーL3.6、L3.15、L8.15を含むファージ混合物をスクリーニングした。組織試料の側底側のファージ収率は頂端側に添加したファージに対する百分率として報告する。連続6回のスクリーニングサイクルを行ない、側底緩衝液の1時間試料4検体を採取した。表3に分離結腸断片でのファージ収率(%)を報告する。
【0058】
表1.Caco-2細胞でのファージ収率(%)
【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
表2.T-84細胞でのファージ収率(%)
【0064】
【表6】

【0065】
【表7】

【0066】
【表8】

【0067】
【表9】

【0068】
表3.分離結腸断片でのファージ収率(%)
【0069】
【表10】

【0070】
【表11】

【0071】
実施例4.結腸組織断片の被輸送ファージ由来ペプチド配列の同定
遺伝子VIIIのDNAシークエンシング・プライマーELN71(SEQ ID NO:1)または遺伝子IIIのDNAシークエンシング・プライマーELN77a(SEQ ID NO:17)のいずれか一方と35S−dATPとシークエナーゼ バージョン2.0(Sequenase version 2.0)DNAシークエンシング・キット(アマシャムライフサイエンス、英国)を使用して、ラット結腸断片を用いたスクリーニングの6回目のサイクルから無作為に選択されたファージのクローン36個(実施例3および表3に示したもの)の塩基配列決定を行なった。サイクル1からサイクル6へ進むと、遺伝子IIIとは反対に、遺伝子VIIIにコードされる無作為ペプチドによるファージ選択に偏りがあるが、これはおそらく遺伝子IIIにコードされるペプチドがファージ粒子につきコピー数3〜5存在するのに対して、合成遺伝子VIIIにコードされるペプチドはファージ粒子につきコピー数約300存在するためであろう。この比較的高い発現レベルから給合価効果がもたらされ、組織試料中の受容体部位/経路との相互作用が起きる可能性が高まる。
【0072】
かなりの数のクローン/DNA配列が一度以上存在し、ある種の優先的選択が示唆される。このように、サイクル6由来のこの36クローン試料からSEQ ID NO:2(9クローンのクラス−存在比25%)、SEQ ID NO:3(5クローンのクラス−存在比13.
9%)、SEQ ID NO:4(3クローンのクラス−存在比8.3%)が決定された。これらのクラスは全て3重挿入DNAからなる。個々の分離配列をSEQ ID NO:5からSEQ ID NO:9(3重挿入DNA)およびSEQ ID NO:10(単一挿入DNA)に示す。
【0073】
これらのクラス中の反復性無作為ペプチド配列に基づいて、2種類の合成オリゴヌクレオチドを構築し、一連のオリゴヌクレオチド・ハイブリダイゼーション反応における結腸スクリーニング・サイクル1〜6を提供するファージ集団のスクリーニングに使用して、これらのファージおよび対応するペプチドがスクリーニングの過程で選択されたかどうかを判定した。このように、オリゴヌクレオチドELN93およびELN94はそれらのファージクローン中のそれぞれSEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:3の部分コード領域に相当する。スクリーニング・サイクル毎の反応性出現率を下記表4にまとめた。表4に提供したデータから、サイクル1からサイクル6まで進行するオリゴヌクレオチドELN93およびELN94とハイブリダイゼーションするファージの逐次の選択が存在するように見える。プローブの反応性はファージ集団毎にスクリーニングされた総コロニー数の百分率として表す。対照として、非選択の出発ライブラリー(L3.6、L3.15およびL8.15)も含めた。
【0074】
表4.ファージ集団(結腸スクリーニング・サイクル1〜6および非選択ライブラリーL3.6、L3.15およびL8.15)のオリゴヌクレオチドELN93およびELN94とのハイブリダイゼーション
【0075】
【表12】

【0076】
それぞれ実施例1、表1および実施例2、表2に示したCaco-2スクリーニング・サイクル1〜6とT-84スクリーニング・サイクル1〜4を示すファージ集団についてもオリゴヌクレオチド・ブローブELN93およびELN94との反応性を調べた。Caco-2細胞およびT-84細胞におけるスクリーニング・サイクル毎の反応性出現は表5(ELN93)および表6(ELN94)中の結腸組織での反応性に匹敵する。これらの表中、プローブの反応性はファージ集団毎にスクリーニングされた総コロニー数の百分率として表す。ELN93を用いてCaco-2細胞選択クローン中にいくらか反応性が検出された。達成された全体的な反応性は実質的に低いとはいえ、ファージ・ライブラリーL3.15Bについて観察されたサイクル1から6へ進行中のELN93反応ファージの逐次の選択は、以前、結腸選択ファージについて観察された反応性のパターンと相関した。Caco-2細胞とT-84細胞選択クローンの両方でELN94反応性が確認された。Caco-2細胞選択ライブラリーL3.6B、L3.15BおよびL8.15B並びにT-84選択ライブラリーL3.15Aについてサイクル1から6へ増大する反応性が観察された。サイクル5のCaco-2細胞選択ライブラリーL3.6BおよびL8.15B(それぞれ33.3%および42.3%)は、結腸A選択ファージのもの(46.0%)と驚くほどよく似ていた。
【0077】
表5.ファージ集団のオリゴヌクレオチドELN93とのハイブリダイゼーション 表5a.Caco-2スクリーニング・サイクル1〜6、結腸スクリーニング・サイクル1〜6およびT-84スクリーニング・サイクル1〜6 表5b.非選択ライブラリーL3.6、L3.15およびL8.15
【0078】
【表13】

【0079】
【表14】

【0080】
表6.ファージ集団のオリゴヌクレオチドELN94とのハイブリダイゼーション
表6a.Caco-2スクリーニング・サイクル1〜6、結腸スクリーニング・サイクル1〜6およびT-84スクリーニング・サイクル1〜6
表6b.非選択ライブラリーL3.6、L3.15およびL8.15
【0081】
【表15】

【0082】
【表16】

【0083】
実施例5.Caco-2組織試料横断被輸送ファージ由来ペプチド配列の同定
上記同様、Caco-2細胞のスナップウェルを調製し、上に示した方法に従いCaco-2細胞を用いてX30ライブラリーのスクリーニングを行なった。図1に、スナップウェルで増殖した極性Caco-2細胞の側底側培地中のサイクル1、2、3および4におけるファージ収率(頂端側培地から側底側培地へ輸送されたファージ、%)をまとめた。各サイクルともファージを頂端側培地への添加から1時間後と24時間後の両方に側底側培地の試料採取を行なった。従って、サイクル1の最初のファージ・ライブラリー添加から1時間後に側底側培地を回収し、新鮮な側底側培地と交換した。続いて最初のファージ・ライブラリー添加から24時間後に側底側培地を回収した。各場合とも(1時間および24時間側底側培地試料)、大腸菌K91Kan株の各側底側培地試料の力価測定を行なうことにより、存在するファージを定量した。1時間および24時間の試料回収時点に採取した側底側培地の残りを合わせ、存在するファージをPEG沈殿させ、沈殿したファージを100μlのTBSに再懸濁し、大腸菌K91Kanを感染するために使用して、それにより前に概説したように側底側培地に存在するファージの増幅を可能にした。増幅後、増幅されたファージの力価測定を行ない、PEG沈殿させ、TBSに再懸濁し、そして力価測定を行なった。このファージ懸濁液は、前に概説したように、側底側培地中に輸送されたファージを用いて上記の手順を反復することにより、次のCaco-2細胞での別の選択段階へ進む準備が整った。サイクル1から4へ進むと、スナップウェルで増殖したCaco-2細胞の頂端側培地から側底側焙地へ輸送されたファージが19.2倍濃縮された。
【0084】
図2に固定Caco-2細胞と結合した100種類の分離ファージの相対結合度をまとめた。スナップウェルで増殖した培養Caco-2細胞のサイクル4選択(頂端側培地から側底側培地への輸送)からX30ライブラリー由来の100種類の各ファージが得られた。ELISA分析のため、上記同様96穴組織培養プレートでCaco-2細胞を密集になるまで増殖させた後、上記と同様に10%ホルムアルデヒド中で固定した。ELISA分析はHRP−抗−M 13結合体を用いて行なった。この図中、各分離ファージの結合は「最弱」から「最強」の結合ファージが左から右へ提示されるように配置もしくは提示してある(分離ファージ数の順ではない)。陰性対照ファージ(M13mp18)の結合と未処理固定Caco-2細胞で得られた吸光度の読みをそれぞれ図3の最右端に示す。
【0085】
図3に、上記と同様にファージの結合をELISA分析でモニターしながら上位10個の結合物、即ちクローン32、34、39、40、53、80、84、97、98、および100の、固定Caco-2細胞への結合、並びに陰性対照ファージM13mp18の固定Caco-2細胞への結合をまとめた。結合の検討はファージ原液(〜1010pfu/ml)または希釈ファージ試料(各場合で1:25および1:100希釈)を用いて2回行なった。対照として、ファージ無添加の固定Caco-2細胞を用いて得られた吸光度の読みを、図3の右側に示した。図4は、ファージ無添加の固定Caco-2細胞のみを用いて得られたバックグラウンド吸光度の読みを、示したファージ・クローン試料および陰性対照ファージM13mp18と共にインキュベートした固定Caco-2細胞を用いて得られた吸光度の読みから差し引いた点を除いて、本質的に図3と同じ物である。各クローンに使用したファージ原液の正確な力価は表7に示した。
【0086】
表7.上位10個の結合物のファージ原液試料力価
【0087】
【表17】

【0088】
図5は、ファージ原液試料(〜1010pfu/ml)またはそのファージを1:25および1:100希釈したものを使用したファージ・クローン39、97、および100および陰性対照ファージM13mp18の固定Caco-2細胞との結合のグラフ表示である。ファージ結合実験とそれに続くELISA分析は前の概説同様に行なった。このデータによると、ファージ・クローン39、97、および100は用量反応的に結合し、ファージの1:25または1:100のいずれかの希釈後に得られたELTSA吸光度の読みは低下した。対照的に陰性対照ファージM13mp18は用量反応的に結合せず、ファージ原液、1:25または1:100のいずれかの希釈ファージを用いて得られた吸光度の読みは、比例していた。
【0089】
上位10個の結合物、即ちクローン32、34、39、40、53、80、84、97、98、および100は上で概説した手順を用いて塩基配列決定を行なった。これらの配列のうち8個はDNA配列SEQ ID NO:11およびペプチド配列SEQ ID NO:12を示すクローン97と同一であった。残る2個のクローン(53および100)は、それぞれ別個の分離物であるDNA SEQ ID NO:13および15と、対応するペプチド配列SEQ ID NO 14および16を生成した。これらのフラグメントにより、ヒトまたは動物の組織を通る活性物質の輸送を可能または容易になるかについては、当業者なら必要以上の実験を行なわないでも判定できるであろう。実施例4の結果に基づき、これらのフラグメントは少なくとも6個のアミノ酸残基からなることが予想される。
【0090】
実施例6.ラット内腔から門脈循環および体循環へのファージ輸送
この検討では、無作為ファージ・ディスプレイ・ライブラリー由来のファージ並びに対照ファージをラット胃腸管(in situラット閉ループモデル)内腔に注入した。実験期間にわたって体循環または門脈循環のいずれかから採血し、大腸菌で血液試料の力価測定を行なうことによって、循環内へ輸送されたファージ数を測定した。
【0091】
この検討で用いたファージ・ディスプレイ・ライブラリーは、遺伝子IIIがそれぞれ無作為38量体および43量体をコードするD38およびDC43であった。陰性対照として、同一のファージM13mp18であって遺伝子IIIが「無作為」ペプチド配列をコードしないものを使用した。ライブラリー・ファージD38およびDC43は両方とも互いに混合して大腸菌から調製し、PBSに対して透析し、PEG/NaClを用いて沈殿させ、そしてPBS緩衝液に再懸濁した。同様にしてM13mp18対照を処理した。各ファージ試料の力価を測定し、ラット閉ループモデルへの注入前にほぼ同じ力価までファージ試料をPBSで希釈した。
【0092】
体循環から試料採取するため、およそ15cmのウィスターラット十二指腸を結紮し(閉ループモデル)、ファージ溶液およそ0.5mlを閉ループに注入し、種々の時間に尾静脈から採血した(0.4ml)。使用した採取時間(分)は0、15、30、45、60、90、120、180、240、および300分である。門脈循環から試料採取するため、門脈静脈にカテーテルを導入し、およそ15cmの十二指腸を結紮し(閉ループモデル)、ファージ溶液0.5mlを閉ループに注入し、そして種々の時間に門脈静脈カテーテルから採血した。門脈採血は微妙であるため、可能な場合は採血時間を15、30、45、および60分に限定した。各動物に注入したファージ量は次の通りである。
【0093】
【表18】

【0094】
推定輸送ファージ数は各動物への注入量の差を考慮にいれて(0.5mlを標準量として)調整した。
体循環への輸送を調べるため、動物R1、R2およびR3に対照ファージM13mp18を投与し、動物R4、R5、R6およびR7に被検ファージD38/DC43混合物を投与した。門脈循環への輸送を調べるため、動物R8、R9およびR10に対照ファージM13mp18を投与し、動物R11、R12、R13およびR14に被検ファージD38/DC43混合物を投与した。動物R15には、1日目に体循環から採取後に大腸菌で増幅し、PEG沈殿させ、そしてPBSに再懸濁した動物R4〜R7(表8参照)由来の混合ファージ試料を与えた。後に分析したところ、このファージの力価は動物R8〜R14に用いた他のファージと比べて100倍高いことが分かった。そのため、この知見に基づき表9の動物R15のファージ力価は他のラットのものにあわせたものとした。
【0095】
各モデル系で各時間におよそ0.4mlを採血した。採取した血液(体循環)30μlを100μlの調製した大腸菌株K91Kanと混合し、37℃で30分間インキュベートし、そしてLB平板上にトップ・アガロース(Top Agarose)を用いてプラーク形成のためにプレーティングした。種々の陰性対照を力価測定実験でインキュベートした。翌日、プラーク形成単位(pfu)数を測定した。同様に、採取した血液(門脈)30μlおよびその系列希釈液(1:100、1:1000)を100μlの調製した大腸菌株K91Kanと混合し、37℃で30分間インキュベートし、そしてLB平板上にトップ・アガロースを用いてプラーク形成のためにプレーティングした。翌日、プラーク形成単位(pfu)数を測定した。
【0096】
さらに、各時間に採取した血液(体循環および門脈循環)300μlを5mlの調製した大腸菌株K91Kanと共に5mMのMgCl2/MgSO4を含む改変増殖培地中で振盪しながら37℃で終夜インキュベートした(ファージの増幅を可能にするため)。試料を遠心分離し、細胞ペレットを廃棄した。ファージ上清試料を採取し、TBS緩衝液で系列希釈し(10-2、10-4、10-6、10-8)、増幅ファージ試料中に存在するpfu数を測定するため、プラーク用にプレーティングした。
【0097】
さらに、被検動物#R4〜R7から得られた「増幅」上清から一定量のファージを採取し(各時間の試料を使用)、混合し、そして2時間PEG沈殿させた。沈殿したファージをPBS緩衝液に再懸濁し、動物#R15の閉ループモデルに注入した後、門脈試料採取を行なった。
【0098】
閉ループモデルから体循環へ輸送されたファージ数を表8に提示した。閉ループモデルから門脈循環へ輸送されたファージ数を表9に提示した。これらの数は投与ファージの差および投与体積の差について補正したものである。明らかなように、体循環試料よりも門脈循環試料の方に多くのファージが存在し、このことは肝臓またはRESのクリアランスおよび/または体循環におけるファージの不安定性を示唆する。さらに、GITから門脈循環へのファージ取込みは極めて迅速であり、15分以内にかなりの数のファージが検出される。門脈試料採取実験から得られた結果によると、D38/DC43ライブラリー由来ファージの取込み速度は対照ファージのものより速いことも示唆される。従って、無作為ペプチド配列をコードするファージのGITから門脈循環への選択的取込みが存在しうる。動物R13、R14およびR15の場合、限定された時間枠内(それぞれ30、45、および15分)に力価を測定した血液試料へ輸送されたファージの割合(%)はそれぞれ0.13%、1.1%および0.013%と推定される。
【0099】
表8.閉ループモデルから体循環へ輸送されたファージ数
【0100】
【表19】

【0101】
動物R1、R2およびR3には対照ファージM13mp18を投与した。
動物R4、R5、R6およびR7には被検ファージD38/DC43混合物を投与した。
表9.閉ループモデルから門脈循環へ輸送されたファージ数
【0102】
【表20】

【0103】
動物R8、R9およびR10には対照ファージM13mp18を投与した
動物R11、R12、R13およびR14には被検ファージD38/DC43混合物を投与した。
動物R15*には、1日目に体循環から採取後に大腸菌増幅、PEG沈殿、そしてPBS再懸濁した動物R4〜R7(表8参照)由来の混合ファージ試料を与えた。後に分析したところ、このファージの力価は動物R8〜R14に用いた他のファージと比べて100倍高いことが分かった。そのためこの知見に基づき表9のラットR15のファージ力価は、他の動物のものとあわせたものとした。
【0104】
以上の検討から、血液へ輸送されたファージの大腸菌内での力価の測定が示すように、対照ファージとD38/DC43ファージは両方とも実験時間にわたってGIT管腔から門脈循環および体循環へ輸送されることが明らかになる。対応する対照ファージ試料よりも多くのファージが、被検ファージ試料から門脈循環へ輸送される。さらに、被検ファージの門脈循環への輸送速度は対照ファージの速度を実際に上回っているようである。別の動物(R4〜R7)の体循環中に出現したD38/DC43ライブラリー由来のファージをプールし、大腸菌内で増幅し、沈殿させ、そしてGIT管腔に再び添加した後、門脈循環で採血し、そして大腸菌で力価測定した。これらの被選択ファージはGIT管腔から門脈循環へも輸送される。このin situループモデルは、GITから循環内へのファージおよび粒子の輸送を促進するペプチド配列を同定する場合の魅力的なスクリーニング・モデルの代表例でありうる。
【0105】
このスクリーニング・モデル系を使用して、現在、かなりの数の予備選択ファージ・ライブラリーが存在する。これらは動物R4〜R7由来の一流路体循環ファージ・ライブラリー、動物R11〜R14由来の一流路門脈循環ファージ・ライブラリーおよび動物R15油来の二流路迅速輸送体循環−門脈循環ファージ・ライブラリーSP−2である。
【0106】
実施例7.予備選択ファージ・ライブラリー由来ファージのラット体腔から門脈循環および体循環への輸送
GITの中にある4種類の別個の受容体または結合部位を用いて無作為ファージ・ディスプレイ・ライブラリーD38およびDC43をスクリーニングすることにより、予め選択したファージをプールすることによってGI-D、GI-S、GI-HおよびGI-Pの4つの予備選択ファージ・ライブラリーを構築する。上記実施例7同様、これらの予備選択ファージ・ライブラリーを陰性対照ファージM13mp18と共にラット閉ループモデル(予備選択ファージ・ライブラリー毎に動物6匹)に注入し、実験期間の間は門脈静脈を介して門脈循環から採血し、実験終了時に尾静脈から体循環血試料を採取し、そして閉ループから腸組織領域を採取する。
【0107】
特にGITにある各受容体または結合部位に向けてin vitroで選択したファージを上記と同様にして大腸菌で増幅し、PEG沈殿させ、TBSに再懸濁し、そして大腸菌でプラーク形成することにより各ファージ試料の力価を測定した。続いて同数の各受容体部位用の各ファージ(8×108個)を陰性対照ファージM13mp18と共に予備選択ファージ・ライブラリー中にプールし、各予備選択ファージ・ライブラリーをライブラリー毎に6匹のウィスターラットに投与した(ラット1〜6 GI-D、ラット7〜12 GI-S、ラット13〜18 GI-P、そしてラット19〜24 GI-H)。上記のin situループモデルを用いて、予備選択ファージ・ライブラリー溶液0.5mlを十二指腸/空腸の結紮部に注入した。0、15、30、45および60分後に門脈静脈からヘパリンを入れた管に採血した。実験終了時に体循環から血液試料を採取した。同様にしてファージ注入に用いた十二指腸/空腸部分を実験終了時に採取した。
【0108】
採取した門脈血(原液および10-2、10-4、10-6希釈液)30μlを大腸菌K91Kan細胞(終夜焙養)30μlに添加し、37℃で10分間インキュベートした。続いてトップ・アガロース3mlを添加し、試料をプラーク形成のためにプレーティングした。採取した門脈血100μlを100μlの大腸菌K91Kanに添加した。次いでLB培地5mlを加え、試料を回転式微生物インキュベーターに入れ37℃で終夜インキュベートした。遠心分離により大腸菌を取り除き、増幅ファージ上清試料を直接力価測定するか、PEG沈殿させ、TBSに再懸濁して力価測定した。増幅ファージを力価測定した後、動物の各組由来のファージを含む試料を合わせ、各試料の力価を同じ力価に調整し、そしてプラーク形成のためLB寒天平板(22cm2角型プレート)にプレーティングした。12,000または24,000個のファージをプラーク形成のためプレーティングした。
【0109】
採取した体循環血(原液および10-2、10-4、10-6希釈液)30μlを大腸菌K91Kan細胞に添加し、37℃で10分間インキュベートした。次いでトップ・アガロース3mlを添加し、試料をプラーク形成のためにプレーティングした。採取した体循環血100μlを100μlの大腸菌K91Kanに添加し、37℃で10分間インキュベートした。次いでLB培地5mlを加え、試料を回転式微生物インキュベーターに入れ37℃で終夜インキュベートした。遠心分離により大腸菌を取り除き、増幅ファージ上清試料を直接力価測定するか、またはPEG沈殿させ、TBSに再懸濁して力価測定した。増幅ファージを力価測定した後、ラット各組由来のファージを含む試料を合わせ、各試料の力価を同じ力価に調整し、そしてプラーク形成のためLB寒天平板(22cm2角型プレート)にプレーティングした。12,000または24,000個のファージをプラーク形成のためプレーティングした。
【0110】
各閉ループに使用した腸組織部分を切り出した。この組織を小切片に細切した後、プロテアーゼインヒビターを含むPBS中で3回洗浄し、そしてウルトラトレックス(Ultra T−horex)ホモジナイザーでホモジナイズした(試料TNT-D)別法として、同じ組織(プロテアーゼインヒビターを添加したPBS中)をウルトラトレックスホモジナイザーでホモジナイズし、プロテアーゼインヒビターを含むPBS中で3回洗浄し、そしてプロテアーゼインヒビターを含むPBSに再懸濁した(試料INT-G)。各場合とも、組織ホモジネートの系列希釈液(原液および10-2、10-4、10-6希釈液)を大腸菌で力価測定した。また、組織ホモジネートの一部(100μl)を100μlの大腸菌K91Kanに添加し、37℃で10分間インキュベートした後、LB培地5mlを添加し、回転式微生物インキュベーターに入れ37℃で終夜インキュベートした。
【0111】
門脈血、体循環血および腸組織由来の増幅ファージをプラーク形成のためプレーティングした。プラークをハイボンド−N(Hybond-N)ナイロンフィルターに移した後、変性させ(1.5M NaCl、0.5M NaOH)、中和し(0.5M トリス塩酸(pH7.4)、1.5M NaCl)、2倍濃度SSC緩衝液で洗浄した。フィルターを風乾し、そしてフィルターにDNAを架橋させた(UV架橋:2分間、設定−強)。このフィルターをプレハイブリダイゼーション・バッファー(6倍濃度SSC、5倍濃度デンハート液、0.1%SDS、20μg/ml酵母tRNA)中、40〜45℃で少なくとも60分間インキュベートした。
【0112】
予備選択ファージ・ライブラリー作成に使用した受容体または結合部位のコード領域と相補的な合成オリゴヌクレオチド(22量体)を合成した。このオリゴヌクレオチド(5ピコモル)を32P-ATPおよびT4ポリヌクレオチドキナーゼで5’末端標識し、標識オリゴヌクレオチドおよそ2.5ピコモルをハイブリダイゼーションによる検討に使用した。ハイブリダイゼーションは、6倍濃度SSC、5倍濃度デンハート液、0.1%SDS、20μg/ml酵母tRNAおよび放射標識合成オリゴヌクレオチドを含む緩衝液中、40〜45℃で終夜行なった後、次の緩衝液で洗浄した(40〜45℃で20〜30分)。(i)2倍濃度SSC/0.1%SDS、(ii)1倍濃度SSC/0.1%SDS、(III)0.1倍濃度SSC/0.1%SDS。このフィルターを風乾し、そして15時間、24時間または72時間オートラジオグラフィーに暴露した。
【0113】
表10.ハイブリダイゼーションの結果のまとめ
【0114】
【表21】

【0115】
【表22】

【0116】
上に概略を述べたハイブリダイゼーションによる検討の結果を表10にまとめた。HAX9向けのオリゴヌクレオチドを除き、オリゴヌクレオチドはいずれも、対応するファージ標的(例えばオリゴヌクレオチドS15にハイブリダイズされたファージS15)へのハイブリダイゼーションにより測定して、最初に放射標識されていることを確認した。さらに、使用した実験条件下では、オリゴヌクレオチドは陰性対照ファージ・テンプレート、即ちM13mp18とハイブリダイズしなかった。ファージM13mp18に向けて2種類のオリゴヌクレオチドを合成した。即ち、(1)M13mp18と表10中の各GIT受容体選択ファージまたはGIT結合部位選択ファージ(M13(陽性))の両方の中の保存配列とハイブリダイズする陽性オリゴヌクレオチド、および(2)ファージM13mp18の複数のクローニング部位に独特の配列だけとハイブリダイズし、GIT受容体選択ファージまたはGIT結合部位選択ファージのいずれともハイブリダイズしない陰性オリゴヌクレオチドである。
【0117】
ファージのGT-Sプールの場合、閉ループモデルから門脈循環へは、S15、SNI-10、SNI-34およびSNI-38の4種類のファージだけが輸送される。その他のファージ、即ちS21、S22、SNI-28、SNI-45、SNTAX-2、SNTAX-6およびSNTAX-8はGITから門脈循環へ輸送されない。さらに、ファージSNT-10とそれより程度は低いがS15およびS22が腸試料または腸断片中に見られたが、その他のファージは見られなかった。Int-G試料にはファージM13mp18がごくわずか(<0.1%)存在した。これらの結果から、予備選択ライブラリーからファージがさらに選択され、それによってGIT閉ループから門脈循環へ輸送されるファージもしくは腸組織と結合するか、それに取り込まれるファージの同定が可能になることが分かる。
【0118】
ファージのGI-Dプールの場合、GIT閉ループモデルから門脈循環への輸送には順位序列があり、ファージDCX11とDAB10が優先的に輸送され、DCX8、DAB30、DAB3およびDAB7がこれに続く。このプール由来のかなりの数のファージが門脈循環へ輸送されず、それにはファージDAB18、DAB24、DAX15、DAX24、DAX27、DCX26、DCX36、DCX39、DCX42、DCX45などがある。GITから門脈循環へのファージDAX23の輸送レベルは極めて低い。同様に、腸試料断片に見られるファージは数種類しかなく、それにはファージDAB30、DCX33、DAB7、DCX11、DCX45などがあり、またそれより程度は低いがファージDAB3、DAB10、DCX8、DCX39、DCX42などがある。ファージには腸試料に見られないものもあり、それにはDAB18、DAB24、DAX15、DAX24、DCX26およびDCX36などがある。Int-G試料中のファージM13mp18量は非常に少なかった(<0.1%)。これらの結果から、予備選択ライブラリーからファージがさらに選択され、それによってGIT閉ループから門脈循環へ輸送されるファージもしくは腸組織と結合するか、それに取り込まれるファージの同定が可能になることが分かる。
【0119】
ファージのGI-Hプールの場合、GIT閉ループモデルから門脈循環または体循環への輸送には順位序列があり、ファージPAX2(このプールでは他のファージの4倍濃度で使用した)、続いて門脈循環および体循環に見られるファージHAX42、体循環だけに見られるファージH40などである。このプールのファージのうち、腸試料または腸断片に見られるものはなかった。ファージM13mp18は腸断片にも体循環にも見られず、門脈循環に極めてわずか(<0.001%)出現した。これらの結果から、予備選択ライブラリーからファージがさらに選択され、それによってGIT閉ループから門脈循環および/または体循環へ輸送されるファージもしくは腸組織と結合するか、それに取り込まれるファージの同定が可能になることが分かる。
【0120】
ファージのGI-Pプールの場合、ファージPAX2およびH40もこのプールに含まれる。このプール由来のかなりの数のファージが門脈循環に見られ、それにはP31、PAX46、PAX9、H40、PAX17、PAX40、PAX2、PAX14、5PAX3、5PAX12などがある。かなりの数のファージが門脈循環に見られず、それには陰性対照ファージM13mp18、PAX15、PAX16、PAX18、PAX35、PAX38、PAX43、PAX45、P90、5PAX5、5PAX7などがある。体循環に見られたファージはファージ5PAX5とP31だけであった。さらに、いくつかのファージは腸へ優先的に結合し、それにはファージ5PAX12、5PAX7、5PAX3、H40、P31、PAX9などがあり、またそれより程度は低いがPAX38およびPAX15などがある。ファージには腸試料に見られないものもあり、それには陰性対照M13mp18およびファージPAX2、PAX14、PAX16、PAX18、PAX35、PAX45、PAX46、P90および5PAX5などがある。これらの結果から、予備選択ライブラリーからファージがさらに選択され、それによってGIT閉ループから門脈循環および/または体循環へ輸送されるファージもしくは腸組織と結合するか、それに取り込まれるファージの同定が可能になることが分かる。
【0121】
本発明は、本明細書中に記載した特定の実施態様に範囲を限定するべきではない。本明細書中に記載したものに加え、上記の記載および添付図から当業者には本発明の様々な改変が明白となるであろう。このような改変は添付した請求の範囲に含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】図1は、X30ファージ・ディスプレイ・ライブラリー選択のサイクル1、サイクル2、サイクル3、サイクル4にスナップウェルで培養した極性Caco-2細胞の側底側培地中のファージ収率(頂端側培地中から側底側培地中へ輸送されたファージの割合(%))を示す。各サイクルとも、頂端側培地へのファージ添加から1時間後および24時間後に側底側培地の試料採取を行なった。
【図2】図2は、Caco-2スナップ・ウェルでのX30ファージ・ディスプレイ・ライブラリー選択サイクル4(頂端側培地から側底側培地への輸送)完了時に側底側培地から得られた100種類のX30ファージ・ディスプレイ・ライブラリー由来分離ファージの固定Caco-2細胞への相対結合度を示す。
【図3】図3は、陰性対照ファージM13mp18と、Caco-2スナップウェルでのサイクル4選択後にX30ライブラリーから得られた上位10個の結合物、即ちクローン32、34、39、40、53、80、84、97、98、100(各々原液、1:25希釈および1:100希釈)の固定Caco-2細胞への結合を示す。参考値として、ファージ処理を行なわなかった固定Caco-2細胞で得られたELISA吸収の読取り値を入れた。
【図4】図4は、陰性対照ファージM13mp18と、Caco-2スナップウェルでのサイクル4選択後にX30ライブラリーから得られた上位10個の結合物、即ちクローン32、34、39、40、53、80、84、97、98、100(各々原液、1:25希釈および1:100希釈)の固定Caco-2細胞への結合であるが、ファージを添加しなかった固定Caco-2細胞のみから得られたバックグラウンド吸収の読取り値を差し引いたものを示す。
【図5】図5は、ファージ原液試料またはそのファージを1:25および1:100希釈したものを使用したファージ・クローン39、97、100および陰性対照ファージM13mp18のCaco-2細胞との結合のグラフ表示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト組織または動物組織を介した活性物質の輸送を可能にし、または促進するペプチドであって、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:14、またはSEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含む、前記ペプチド。
【請求項2】
組織が、十二指腸、空腸、回腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、骨盤結腸、血管系に沿って並ぶ血管内皮、血液脳関門の血管内皮、血管平滑筋、肺胞、肝臓、腎臓、骨髄、心臓、脾臓、膵臓、胸腺、脳、脊髄、神経、または眼の網膜から選択される、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
組織が胃腸管の管腔側に並んでいる上皮細胞を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
組織が結腸から誘導される、請求項3のペプチド。
【請求項5】
活性物質が薬物または抗原である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項6】
活性物質がナノ粒子またはミクロ粒子である、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項7】
ペプチドをナノ粒子またはミクロ粒子の表面にコートし、または吸着し、または共有結合する、請求項6に記載のペプチド。
【請求項8】
ナノ粒子またはミクロ粒子がペプチドから形成される、請求項6に記載のペプチド。
【請求項9】
ナノ粒子またはミクロ粒子が、薬物を充填または薬物を封入したナノ粒子またはミクロ粒子である、請求項6ないし8のいずれか一項に記載のペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−117686(P2006−117686A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345975(P2005−345975)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【分割の表示】特願平9−518026の分割
【原出願日】平成8年11月11日(1996.11.11)
【出願人】(591034970)エラン コーポレーシヨン ピーエルシー (3)
【氏名又は名称原語表記】ELAN CORPORATION,PUBLIC LIMITED COMPANY
【出願人】(591061541)サイトジェン,コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】