説明

組織由来細胞の凍結保存方法

【課題】組織由来の細胞を簡便に且つ有効に凍結保存する。
【解決手段】組織を断片化し、断片化された組織片を所定の培地中で培養し、培養された組織片を回収して凍結保護溶液中に懸濁し、そして当該組織片懸濁物を−70℃以下の温度で凍結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織由来細胞の凍結保存方法に関し、より詳しくは、哺乳動物より採取した組織に由来する所望の細胞を、簡便にかつ確実に凍結保存するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物の組織又は器官は、被検体より採取したまま、若しくはこれを培養、増殖させて患者の欠損部を補填するための移植用組織や、薬剤や化粧品の効能を調べるために用いられている。或いは、特定の組織から幹細胞を抽出し、これを増殖させて用いるいわゆる再生医療への応用が注目されている。一般に、生体より採取した組織や培養組織をその機能を維持した状態で貯蔵するには寿命があるので、あらゆる長さの期間適正な在庫品を保持することは不可能である。貯蔵時間を延長するために、凍結による組織や細胞の保存が行われている。組織を保存する場合には、凍結保護剤を添加した保存液に培養組織を浸漬して凍結保存する技術(例えば、特許文献1参照)、培養上皮シートをDMEMに浸漬した状態で8〜19℃に低温保存する技術(例えば、特許文献2参照)などが開示されている。
【0003】
一方、哺乳動物細胞の保存方法としては、樹立細胞の場合は遺伝的変化を最小限にし、寿命のある細胞の場合は加齢と形質転換を避けるために凍結保存する方法が確立されている(例えば、非特許文献1及び2参照)。この方法は、培養細胞等の細胞を、活性が50%以上維持されるように保存するため、細胞を毎分1℃前後の速さで徐々に冷却し、−200℃前後で保存し、保存終了時には急速に融解(解凍)する。その際、細胞の凍結による破壊を防ぐために、細胞を10%グリセロールを含む完全培地、又は5〜10%のジメチルスルホキシドを含むコンディション培地又は無血清培地等に懸濁する。凍結に際し、液体は凝固して結晶化し、細胞内に氷晶を形成することが問題になる。これらの氷晶は解凍時に細胞の生育力に悪影響を及ぼす。上記グリセロール等の凍結保護剤は、細胞内の液体をガラス化又は非晶質化させて氷晶の生成を抑止すると考えられる。
【0004】
哺乳動物組織から細胞を得るためには、一般に酵素処理等により細胞を分散させて培養するか、又は組織片そのものを培地中に浸し、組織から培地中に遊走した細胞を取得する方法等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平9−505032号公報
【特許文献2】特許第2693640号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】井出利憲著、細胞培養入門ノート、1999年、羊土社、139頁
【非特許文献2】シグマ細胞培養マニュアル、2005年、シグマアルドリッチジャパン株式会社、286頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
採取した組織を酵素処理等によりばらばらにして細胞を回収する場合は、多種類の細胞が混在するために目的とする細胞のみを取得することが難しい。このため、回収した細胞を特定の細胞のみが成育する選択培地にて培養し、目的とする細胞を選択するための手間と時間がかかる。一方、組織片そのものを培地中に浸し、組織から培地中への細胞の遊走を待つ方法では、長期間の培養と、遊走してきた細胞を組織から分離するために継代する必要があり、このための手間と時間がかかるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、採取した組織から目的とする細胞のみを組織片の辺縁まで遊走させ、これをそのまま凍結保存した場合に、組織内の細胞は氷や溶質の結晶が発生し細胞に重大なダメージを受けるのに対し、組織の辺縁に存在する細胞は、組織中での氷や溶質の結晶が発生してもこれによるダメージを受けることなく、通常の凍結方法により長期間の貯蔵が可能となり、かつ凍結組織を解凍することによって再生育可能な細胞として回収しうることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明に係る組織由来細胞の凍結保存方法は、組織を断片化し、断片化された組織片を所定の培地中で培養し、培養された組織片を回収して凍結保護溶液中に懸濁し、そして当該組織片懸濁物を−70℃以下の温度で凍結させることを特徴とする。
【0010】
本発明の好ましい実施形態において、前記組織は、哺乳動物より採取されるか、又は培養された組織であることを特徴とする。また、前記組織片の培養は、組織内部の細胞が、組織片の辺縁に遊走するために必要な期間行うことを特徴とする。前記所定の培地が、当該組織に存在する所望の細胞を組織片の辺縁に遊走させ得る培地であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の一つの実施形態において、前記凍結された組織片懸濁物を解凍し、解凍した組織片を培養し、培地中に遊走した細胞を回収することをさらに含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の他の1つの実施形態において、哺乳動物より採取した皮膚を断片化し、断片化された皮膚片を血清含有最小必須培地中で培養し、培養された皮膚片を回収して凍結保護溶液中に懸濁し、そして当該皮膚片懸濁物を−70℃以下の温度で凍結させることを特徴とする真皮由来の線維芽細胞の凍結保存方法が提供される。前記断片化された皮膚片の最大径は、5mm以下が好ましく、より好ましくは1mm〜0.5mmである。前記皮膚片の培養は、通常の細胞培養条件下、例えば、約37℃、5%炭酸ガス下において、5〜10日間行うが好ましく、典型的な一つの実施形態では約1週間(7日間)である。
【0013】
本発明のさらに好ましい実施形態において、前記凍結保護溶液は、10%のグリセロール、又は5〜10%のジメチルスルホキシドを含み、前記組織片懸濁物の凍結は、液体窒素中にて行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法により凍結された組織片の中には、当該組織由来の生育可能な細胞が含まれるため、この組織片を解凍して培養したときに多くの生存細胞を回収することができる。このため、生体より採取した組織を培養し、細胞のみを予め回収して保存する場合と比べて短期間に、例えば、皮膚線維芽細胞の場合は約1週間で凍結保存を完了することができ、組織由来の細胞を短期間にかつ低コストで保存することが可能となる。また、凍結前の組織片の培養に所定の培地を用いることにより、当該組織由来の所望の細胞のみを組織片の辺縁に誘導し生育可能な状態で保存することができる。従って、凍結保存終了後に組織片を解凍して培養したときに所望の細胞のみを効率的に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】皮膚組織を直接凍結保存した場合(D群)と本発明の方法により凍結した場合(C群)における解凍直後の所見を示す写真である。
【図2】皮膚組織を直接凍結保存した場合(D群)と本発明の方法により凍結した場合(C群)における解凍後培養1日目の所見を示す写真である。
【図3】皮膚組織を直接凍結保存した場合(D群)と本発明の方法により凍結した場合(C群)における解凍後培養7日目の所見を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(定義)
本明細書において、以下の用語は次のように定義される。用語「組織(tissue)」とは、多細胞生物において、構成細胞が分化し同一の機能、形態を持った細胞集団をいう。動物の組織は形態的、機能的、又は発生学的根拠に基づいて上皮組織、結合組織、筋肉組織、神経組織に大別できる。組織の成分は細胞のみではなく細胞間を満たす物質である基質(マトリックス)がある。複数の組織や細胞が集まって器官(organ)を構成する。動物の器官は臓器とも呼ばれる。本発明において、「組織」とは「器官」又は「臓器」と同義に用いてもよく、例えば、皮膚、骨格筋、心筋、神経等の他、肝臓、腎臓、すい臓、脾臓、精巣、卵巣、副腎、脳、甲状腺等を含む。
【0017】
用語「凍結保護溶液」とは、組織や細胞を凍結保存するときに液体成分の結晶化により細胞が受ける障害を保護するためのあらゆる保護剤を意味し、細胞浸透性のガラス化剤や細胞非浸透性のガラス化剤を含む。非細胞浸透ガラス形成剤としては、コンドロイチン硫酸、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、又はヒドロキシエチルスターチ等の複合炭水化物の高分子量形成体を含む。細胞浸透ガラス化剤には、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジメチルスルフォキシド(DMSO)等が含まれる。好ましい凍結保護溶液としては、10%グリセロールを含む完全培地、10%DMSOを含む完全培地、10%グリセロールを含む50%コンディション培地+50%新鮮培地、10%DMSOを含む50%コンディション培地+50%新鮮培地、7.5%DMSOを含む50%コンディション培地+50%無血清培地、及び7.5%DMSOと10%BSAを含む新鮮無血清培地などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0018】
用語「培地」ないし「培養液」とは、細胞、組織、器官等をガラス器内で増殖、生育させるために与える栄養成分のことをいう。用語「辺縁(border or marginal)」とは、断片化された組織片の端部領域のことであり、組織片末端から数μm以内の領域をいう。用語「遊走(migration)」とは、組織や器官又は生体内で細胞がある場所から他の場所へ移ることをいう。血管壁を通って血球細胞が移動したり、また、腫瘍細胞が転移することも一種の遊走である。
【0019】
(組織由来細胞の凍結保存)
本発明の凍結保存方法は、最初に生体から採取した組織を断片化する。夫々の組織によって好適は断片化方法を用いることができ、例えば、トリプシンやコラゲナーゼ等の酵素処理による化学的な方法でも、手術用ハサミやメスにより細断する物理的な方法であっても何れでもよい。哺乳動物の皮膚のように比較的薄くて脆弱な組織の場合は、物理的な方法による断片化が好ましい。断片化された組織片の大きさは、用いる組織によって異なるが、例えば皮膚組織の場合、最大径で5mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは最大径で1mm〜0.5mmである。
【0020】
次に、断片化された組織片を所定の培地中で培養する。例えば、断片化した哺乳動物の皮膚を用いることができる。ヒトの皮膚を組織学的にみると表面から表皮、真皮及び皮下組織の順番で層を形成している。表皮はその主な構成細胞として角化細胞(ケラチノサイト)、メラニン色素産生細胞(メラノサイト)、知覚に関係するといわれているメルケル細胞、抗原提示細胞で骨髄由来の細胞であるランゲルハンス細胞からなる。表皮は0.1〜0.3mmと極めて薄いが、この表皮の中で防波堤の役割を担うのはケラチノサイトである。表皮下層に存在する母細胞が増殖を繰り返し、皮膚の表面に物理的にも化学的にも強靱な角化層(細胞内が硬いケラチン線維と呼ばれる物質で充満した状態)を形成し、バリアとなる。創傷治癒には、ケラチノサイトが遊走して傷表面を覆うことが重要である。一方、真皮は線維芽細胞と、この細胞が産生する弾性コラーゲン性間質から構成され、皮膚の伸縮性や弾力性をもたらすとともに、毛細血管に富み、表皮との協調的作用も持っている。真皮(コラーゲン繊維、エラスチン繊維、繊維芽細胞)は表皮の下に保護され外部からのダメージを受けにくく、水分を保持することで皮膚の機能を支え、主に、皮膚の弾力性やハリを保つ働きを担っている。
【0021】
組織片を培養するための培地組成及び血清添加の有無又はその添加量を調節することにより、当該組織中に存在する所望の細胞を組織片の辺縁に遊走させることができる。本発明の一つの実施形態として、皮膚組織の場合、血清含有最小必須培地を用いることにより真皮由来の線維芽細胞を好適に遊走させることができる。最小必須培地とは、細胞培養を可能とする定義された数の栄養源が含まれた培地のことであり、例えば、イーグルのMEM培地、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、ハムの培地、RPMI1640培地等が挙げられる。一方、線維芽細胞の増殖を抑制し、増殖能のあるケラチノサイトを選択的に遊走させるためには、無血清、低カルシウム濃度の培地を用いることが知られている。また、ケラチノサイトやメラノサイトを遊走させるためには、培地にペプチド添加物(上皮成長因子、インスリン、塩基性線維芽細胞増殖因子が重要である。
【0022】
他の実施形態として、末梢神経損傷における神経再生を誘導する材料として有用なシュワン細胞を選択的に遊走させるための方法が報告されている(特開2003−70465号公報参照)。この方法によると、酵素処理した末梢神経片を血清含有培地で所定期間培養した後、無血清培地で所定期間培養して線維芽細胞の増殖抑制下にシュワン細胞の遊走を誘導することができる。さらに、2.5%程度のFCS等、低濃度の血清含有培地で培養してもよい。さらに他の実施形態において、さい帯静脈、大動脈、肺動脈等から血管内皮細胞又は血管平滑筋細胞等を選択的に遊走させることも可能である。これらに使用する培地は、シグマ社やアルドリッチ社、インビトロジェン/GIBCO社、クロンテック社、キアゲン社、クラボウ、タカラバイオ株式会社等の市販業者から入手可能である。
【0023】
上記組織片の培養は、組織内部の所望の細胞が組織片の辺縁に遊走するために必要な期間行うことが好ましく、例えば、皮膚組織の場合は、約37℃の培養温度にて5〜10日間、好ましくは約一週間(7日間)である。培養期間が短いと真皮線維芽細胞が完全に皮膚組織片の辺縁に遊走せず、組織内(皮膚片内)に留まってしまうため組織片を凍結したときにこれらの細胞がダメージを受けるからであり、また培養期間がこれ以上長いと組織片の外部に細胞が遊走してしまい、通常の細胞凍結保存と何ら変わらなくなってしまうからである。
【0024】
続いて、上記培養組織片を回収し、培地を取り除いた後、凍結保護溶液中に懸濁する。培養組織片は培地中に浮遊しているか又は培養容器に緩く接着しているため、容器に軽い衝撃を与えるか又はピペッティング操作等によって容易に回収することができる。
【0025】
最後に、上記組織片懸濁物を−70℃以下の温度で凍結する。好ましくは、約−140℃〜約−180℃に冷却する。冷却速度は、ゆっくりと1分間に−1℃程度が好ましくプログラムフリーザーを用いるか、又はバイアルを断熱箱(発泡スチロール製箱等)に立て、−70℃〜−90℃の冷凍庫に入れて凍結させる。凍結後は、液体窒素保存容器に移してさらに低温で保存することが好ましい。
【0026】
(凍結保存された組織片懸濁物の解凍)
凍結された組織片懸濁物は、約1〜数秒以内で解凍するように高速に昇温することにより解凍する。例えば、組織片懸濁物を凍結するチューブを水浴にて加熱するか、又は誘導加熱してもよい。好ましくは、チューブ内で凍結された組織片懸濁物を37℃の水浴に浸漬することにより解凍する。
【0027】
凍結保護剤によっては長時間触れると細胞を損傷するおそれがあるため、解凍した組織片から凍結保護剤溶液をできるだけ短時間に除去することが、組織片の辺縁部に存在する細胞の活力を維持する上で好ましい。例えば、アンプルやバイアルの内容物を、培地15〜20mlを加えたフラスコ又は適当な容器に移し、通常通りにインキュベートする。接着細胞の場合、大部分の細胞が接着したらすぐに(通常3〜4時間)希釈済みの凍結保護剤を含有している培地を除去し、新しい培地と交換する。凍結保護剤に感受性のある細胞の場合は、低速遠心分離によって古い培地を容易に除去することができる。例えば、アンプルやバイアルの内容物を、新しい培地10mlを加えた15mlの遠心チューブに移し、100×gで5分間遠心分離し、凍結保護剤を含む上清を廃棄し、新しい培地に組織片ペレットを再懸濁させる。その後、組織片の懸濁物を適切な培養容器に移し、通常通りにインキュベートする。
【0028】
さらに、以下の実施例において、本発明の実施に用いる材料及び方法を具体的に説明するが、この実施例は、なんら本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0029】
成人女性3名(年齢33歳、27歳及び35歳)と成人男性1名(年齢50歳)より、本人の同意を得て皮膚を採取し以下の実験を行った。各被験者を麻酔の後、耳介後面から1mm〜3mmの全層皮膚を採取した。直ちに酵素(ディスパーゼ2000単位/ml、合同酒精)処理を2時間行い、全層皮膚を表皮層と真皮層とに分離し、表皮層を破棄した後、真皮層を細切(直径約0.5mm)し、標本を10切片作製した。得られた10標本切片を2群に分けて以下の実験に供した。
【0030】
D群(ダイレクト群):標本切片をそのまま凍結保存液(10%DMSO、80%αMEM、10%ヒト血清)又は市販の細胞凍結保存液セルバンカー(登録商標)1(十慈フィールド株式会社)に浸し、マイナス80℃で12時間保管後、液体窒素で2週間凍結させた。
【0031】
C群(カルチャー群):標本切片を、10%ヒト血清を含むαMEM培地中にて、5%炭酸ガス濃度下、37℃で1週間インキュベートした。その後、切片を遠心チューブに回収し、上清を取り除いた後、上記と同様に凍結保存液に浸し、マイナス80℃で12時間保管後、液体窒素で2週間凍結させた。
【0032】
2週間経過後に上記D群及びC群のそれぞれの標本を液体窒素から取り出して解凍し、10%ヒト血清を含むαMEM培地中にて、5%炭酸ガス濃度下、37℃でインキュベートした。各標本の解凍直後、培養1日目、及び培養7日目の所見を顕微鏡で観察し、それぞれの代表例を図1、図2及び図3に示した。図1に示したように、解凍直後の標本はD群及びC群共に差異はなかった。図2は、D群は解凍直後と特に変化はないが、C群では組織片の近傍に細胞が遊走し始めていることが分かる。培養7日目においてD群では2つの皮膚片に細胞遊走が認められた(図3のd−1参照)が、他の3つの皮膚片では細胞の遊走が認められず死滅していた(図3のd−2参照)。一方、培養7日目のC群では、5つ全ての皮膚片から良好且つ大量の細胞の遊走が認められた(図3のc−1及びc−2参照)。
【0033】
以上のように、D群は明らかに細胞の遊走数が少なく、且つ真皮内に細胞が死滅し、全く細胞が遊走しない皮膚片も半数以上認められた。これに対し、C群では明らかに細胞の遊走数が多く、且つ真皮内に細胞が死滅し全く細胞が遊走しない皮膚片は一つも認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
従来、細胞を保存するには完全に細胞の形態にしないと半永久的な保存は困難を極めた。しかし、例えば皮膚のような組織を細切し、目的とする細胞を組織辺縁まで遊走させた後、組織片ごと凍結保存することで簡便且つ有効に所望の細胞を保存することができるようになり、細胞を用いる診断や治療等の生命科学関連産業、及び医薬品産業に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物より採取された組織を断片化し、断片化された組織片を血清含有最小必須培地中で培養し、培養された組織片を回収して凍結保護溶液中に懸濁し、そして当該組織片懸濁物を−70℃以下の温度で凍結させることを特徴とする組織由来細胞の凍結保存方法。
【請求項2】
前記断片化された組織片の最大径が5mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記断片化された組織片の最大径が1mm〜0.5mmであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組織片の培養は、37℃の温度にて5〜10日間行うことを特徴とする請求項1〜3何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記組織片の培養は、37℃の温度にて7日間行うことを特徴とする請求項1〜3何れか一項に記載の方法。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−219503(P2009−219503A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160838(P2009−160838)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【分割の表示】特願2006−274243(P2006−274243)の分割
【原出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(504268685)株式会社セルバンク (4)
【Fターム(参考)】