説明

組織硬度評価装置

【課題】プローブの押し付け力と組織の変形の関係から組織の硬さに関する値を推定することができる組織硬度評価装置を提供する。
【解決手段】組織硬度評価装置は、超音波プローブおよび押し付け力測定センサからなる測定部と、超音波送受信部と押し付け力受信部と組織変形量検出部と弾性指標計算部と表示部からなる解析部とからなり、
押し付け力測定センサは組織への超音波プローブの押し付け力を測定してその測定結果を押し付け力受信部に送り、超音波送受信部は超音波プローブの超音波発信信号の送信を制御し、組織から反射して超音波プローブによって変換された超音波信号を組織変形量検出部と表示部へ出力し、組織変形量検出部は組織の厚さを検出し、その検出結果を弾性指標計算部へ出力し、弾性指標計算部は押し付け力受信部からの信号と組織変形量検出部からの信号を基に組織各層の弾性指標を計算して表示部へ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押し付け力による生体組織の変形状態、押し付け力と組織変形率から組織の硬さ(又は柔らかさ)に関する情報を得ることができる、組織硬度評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の医療現場で使用されている超音波エコー装置は、映し出される画像の形状から組織の状態を診断していた。その際、経験的にプローブを体に押し付けて組織の同定の参考にしていた。
従来の超音波エコー装置に組織弾性率を測定できる機能を付加したエラストグラフィーという装置が開発されている。これはプローブを体に押し付け組織の変形の程度を画像から読み取り、そのひずみ量から相対的な弾性率を推定する装置である。装置の構成は通常の超音波エコー装置と同じである。押し付け前後の超音波信号から装置に組み込まれたソフトウェアで計算している。この装置では押し付け力を測定していないため、得られる弾性率は周りの組織に対する相対的な値しか得られない。
【0003】
既存特許などでは、押し付け力やプローブの移動量を測定し、硬さに関する値を計算する技術がある。例えば、下記のようなものがある。
【0004】
(1)特許文献1の超音波を利用した軟組織の粘弾性推定装置およびプログラムに関する技術は、体組織のように皮膚、脂肪、筋、骨などと階層構造をなす軟組織に対しても、各階層ごとに弾性、粘性、慣性を推定することを可能とし、しかも、短時間の押し込み動作のみで推定を可能にすることにより軟組織に与えるダメージを軽減する目的で、超音波信号を送受信するための超音波プローブと、そこで受信したデータの時間変化から対象物形状の変形量を計算する対象物変形量計算部と、超音波プローブを移動させるための移動機構と、それを制御するプローブ制御部と、プローブの位置を計測するための位置センサと、プローブ部に負荷される力を計測する力センサと、位置センサ、力センサ、対象物変形量計算部のそれぞれから得られる値をもとに対象物の粘弾性を推定する粘弾性推定部と、推定した粘弾性を使用者に提示する粘弾性表示部から構成する技術である。
【0005】
(2)特許文献2の超音波診断装置に関する技術は、いかなる歪み弾性画像描出手段においても、断層画像と歪み弾性画像との位置関係を的確に把握して描出できるようにする目的で、磁気センサに代表される3次元の位置情報を検出する位置検出手段を超音波探触子に取り付け、この3次元の位置検出手段は、ある点に固定された基点をもとに、磁気センサにより空間位置を把握可能とする。これを用いることで、断層画像を得る際の探触子の位置情報と、歪み弾性画像を得る際の探触子の位置情報をそれぞれ比較し、お互いの画像を取得する際に動いた探触子の移動距離より得られる診断画像の相対的なずれを把握することを可能とする。また、3次元の位置検出手段を用いることで、装置取扱者によらず、被検体組織への加圧量を一定に保つことを可能とし、装置取扱者に依存しない検査環境を整えることを可能とする技術である。
【0006】
(3)特許文献3の超音波探触子及び超音波診断装置に関する技術は、超音波探触子が被検体に押し付けられている接触面における超音波探触子の接触圧力を検出可能な手段を実現し、この接触圧力が所定の圧力以上になった場合には、アラーム音等による警告を発する超音波診断装置を提供する目的で、超音波探触子の被検体に当接する当接面に設けられている振動子の周囲に圧力伝達媒体を満たしたチューブ50を設け、このチューブ50内の圧力伝達媒体の圧力を検出する圧力センサ52を設け、これによって、外部の測定機器などでこの超音波探触子の当接面が被検体に押し付けられる接触圧力を測定する。そのため、超音波探触子の本体部に基準値以上の圧力が検出された場合に、検者に警告を発する回路を設ければ、検者が一定の圧力以上の圧力で超音波探触子を被検体に押し付けてしまうことを防止することができ、被検者の苦痛を取り除くことを可能とする技術である。
【0007】
(4)特許文献4のエラストグラフィー測定および撮像法およびこの方法を実施する装置に関する技術は、任意の後方散乱物質、特に有機組織中の正確な圧縮度測定に応用される改良型超音波パルス/エコー方法およびこの方法を実施する装置を提供する目的で、標準型トランスデューサまたは軸方向に並進されるトランスデューサデバイスを使用し、ターゲット体の近位端区域を既知の小増分だけ圧縮または移動させる。各増分において、パルスが放出され、ターゲット中の音走行通路またはトランスデューサビームに沿った区域からエコー系列(A−ライン)が検出される。ターゲット中のフィーチャに対応するエコーセグメント中の時間ずれが音通路にそって音速の変動する各区域について修正されて、圧縮によって生じた歪に関する相対的定量的情報を提供する。またトランスデューサおよびトランスデューサデバイスによって加えられる応力が音通路に沿った深さに対応して決定されまた修正される。適当な応力値を各通路に沿ったそれぞれの歪値によって分割して、ターゲットのエラストグラムまたは圧縮度値列を生じる技術である。
【0008】
(5)特許文献5の超音波診断装置に関する技術は、超音波診断装置において、生体組織の硬さ又は柔らかさを表す弾性画像を表示する目的で、 断層走査手段によって得た時系列の二つの断層像間で演算を行って断層像上の各点の移動量又は変位を計測する変位計測手段8と、被検体の診断部位の体腔内圧力を計測又は推定する圧力計測手段9と、上記各計測手段で求めた変位及び圧力から断層像上の各点の弾性率を演算して弾性画像データを生成する弾性率演算手段10と、この弾性率演算手段10からの弾性画像データを入力して色相情報を付与する色相情報変換手段11と、上記断層走査手段からの白黒の断層像データと色相情報変換手段11からのカラーの弾性画像データとを加算又は切り換える切換加算手段12とを備え、この切換加算手段12からの画像データを画像表示手段7に表示するようにしたものである。これにより、生体組織の硬さ又は柔らかさを表す弾性画像を表示する技術である。
【0009】
(6)特許文献6の生体軟組織の硬さ検出方法及びこれに用いる検出装置に関する技術は、小型化されたセンサ素子が、生体内の軟組織や癌、腫瘍等に触れたときの周波数の変化から硬さの違いを検出し、しかも一つのセンサで骨や歯のように硬い物から軟らかい生体軟組織の硬さまでを測定できるようにする目的で、対物接触振動子11及び振動検出部12からなるセンサ部1と、該センサ部1からの出力信号を増幅器21で増幅し、これを帯域フィルター22またはピーキング増幅器23を通して、対物接触振動子11に強制帰還してなる自励発振回路部2と、該自励発振回路2の周波数変化量を計測する計測部3とから構成する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4189840号公報
【特許文献2】特許第4179596号公報
【特許文献3】特開平08−033623号公報
【特許文献4】特表2001−519674号公報
【特許文献5】特許第3268396号公報
【特許文献6】特開平8−29312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1記載の技術は、押し付け力の測定機構に加えて、組織の変形量を計算するためプローブの移動量を何らかの形で測定する必要があり、そのため移動量を測定するための機構が必要となり、装置機構が大がかりになり、実際の測定現場では使いにくい。また、使用時にプローブ周りの取り回しが困難になり、また可搬性を確保することが難しいという問題がある。
上記特許文献2記載の技術は、プローブの3次元位置情報を検出する機構が必要となる。また、押し付け力の測定は行わない。
上記特許文献3記載の技術は、押し付け力を測定し、プローブと生体の接触圧力が所定の圧力以上になった場合に、アラーム音等による警告を発する技術であり、正確な測定ができない。
上記特許文献4記載の技術は、モータで超音波プローブを移動し、組織を変形させるので、モータ周りの制御装置等を別途必要とし、更に押し付け力の測定は行わない。
上記特許文献5記載の技術は、生体内に圧力センサを挿入して内部応力を測定する侵襲方式であり、参考にならない。
上記特許文献6記載の技術は、超音波の周波数を変化させて弾性率を測定する技術であり、測定結果から周波数の影響を排除する校正処理が困難な処理となり、実用的でない。
【0012】
本発明の目的は、上記従来例の問題点に鑑み、プローブの押し付け力と組織の変形の関係から組織の硬さに関する値を計算することができる組織硬度評価装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、体組織のように皮膚、脂肪、筋、骨等と階層構造をなす軟組織に対しても、各階層毎に計算することを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明の組織硬度評価装置は、超音波プローブおよび押し付け力測定センサからなる測定部と、超音波送受信部と押し付け力受信部と組織変形量検出部と弾性指標計算部と表示部からなる解析部とからなり、
押し付け力測定センサは組織への超音波プローブの押し付け力を測定してその測定結果を押し付け力受信部に送り、超音波送受信部は超音波プローブの超音波発信信号の送信を制御し、組織から反射して超音波プローブによって変換された超音波信号を組織変形量検出部と表示部へ出力し、組織変形量検出部は組織の厚さを検出し、その検出結果を弾性指標計算部へ出力し、弾性指標計算部は押し付け力受信部からの信号と組織変形量検出部からの信号を基に組織各層の弾性指標を計算して表示部へ出力する。
(2)解析部をコンピュータにより構成する。
(3)組織変形量検出部は、xを組織の表面からの深さ方向の位置とすると、組織から得られた超音波信号(エコー信号)変化b(x)に対してある幅をもった窓を設定し、その窓幅Wの中で超音波信号の最大値を見つけ出し、この窓を順次、窓の幅より十分に小さい間隔、例えば窓の幅の1/10程度の間隔でx軸方向にずらしながら最大値の曲線p(x)を下記数式1により求め、
この最大値が所定の許容変動値A以上に変化しない部分が窓幅W以上連続している部分の中心位置を前記組織の位置とし、窓幅を前記組織の厚みが最小となる値とすることで適切に前記組織の位置を同定する。但し、maxは最大値を求める関数である。
【数1】

(4)弾性指標計算部は、組織変形量検出部からの前記組織における移動量Δxと、押し付け力受信部からの前記押し付け力測定センサの測定値である押し付け力値Fを取り込み、下記数式2の演算を行い、硬さに関する値kを求める。
【数2】

【0014】
(評価原理)
プローブを押し付け、組織を変形させることで、組織の硬さ(柔らかさ)に関係する値が得られる。組織を1次元のバネで単純化しフックの法則を適応すると、下記数式3となる。
【数3】

但し、Fは押し付け力、kは硬さに関する値、Δxは組織の移動量である。
つまり、組織を押し付け、硬さに関する値 kを求めるためには、下記数式4
【数4】

を計算すればよいことになる。Fは本発明でプローブに組み込んだロードセル等のセンサで測定し、Δxは超音波画像から測定する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、組織、特に体組織の形状という体積に関係する量に関する情報だけでなく、硬さ(柔らかさ)という質に関する情報を測定することができる。
また、押し付け力を測定するセンサを超音波プローブに一体に組み込むことで、必要なデータを収集する際のセンサおよびプローブの操作の自由度および操作のし易さを確保し、また可搬性を犠牲にすることなく、適切且つ正確に組織の硬さ(又は柔らかさ)に関する値を得ることができる装置を実現できる。
また、センサを超音波プローブに一体に組み込むことで、超音波画像の測定と押し付け力の測定を同時に行うことができる。
本発明は、組織に対する押し付け力の測定値と、その押し付け時の組織の変形率に相当する組織の超音波のエコー画像とから、組織の硬さに関する値を計算により求めるので、プローブの移動量を測定するための機構を必要としないようにできる。
また、体組織のように皮膚、脂肪、筋、骨等と階層構造をなす軟組織に対しても、各階層毎に計算することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の組織硬度評価部8における処理を説明する図である。
【図2】本発明のエコー画像と組織の層位置を示す図であり、右図は大腿前部であり、左図は上腕前部である。
【図3】図3は、図3(a)の押し付け力を連続的に変化したときの、図3(b)のある組織部位の変化状態を示すエコー画像と、図3(c)の各層の間隔表と、図3(d)の初期押し付け力からの変化率の特性表を示す。
【図4】図3(d)の初期押し付け力からの変化率の特性表をグラフ化したものである。
【図5】組織に押し付け力を加えたときの組織各層の伸縮態様を図示したものである。
【図6】組織のB−C層とC−D層の押し付け力に対する弾性指標の特性図である。
【図7】本発明の組織硬度評価装置のブロック構成図である。
【図8】プローブに押し付け力を測定するセンサを組み込む方法についていくつかの例を示す。
【図9】本発明のAモードとBモードの例を示す。
【図10】本発明の各組織位置を求める方法を示す。
【図11】本発明の解析部3における処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
図7は、本発明の組織硬度評価装置のブロック構成図である。
組織硬度評価装置1は、測定部2と解析部3からなる。測定部2は、超音波プローブ4、押し付け力測定センサ5で構成される。解析部3は超音波送受信部6、押し付け力受信部7、組織変形量検出部8、弾性指標計算部9、表示部10で構成される。超音波プローブ4は電圧を超音波信号に変換して組織11に送信し、反射してきた超音波信号を電圧に変換して超音波送受信部6に送る。
解析部3は例えばコンピュータから構成する。解析部3は、コンピュータのi/oインターフェースによる入出力機能、メモリによる記憶読み出し機能、CPUによる演算機能を使用してこの組織硬度評価装置の制御を行う。
組織硬度評価装置1は、押し付け力測定センサ5を備えた超音波プローブ4を、組織に対して任意の位置に移動させるために図示しないリニアスライダ等の移動機構を設けることもまた手動操作することもできる。なお、組織の超音波信号(エコー画像信号)の取得時間は極めて短くなっているので、押し付け力一定の条件を満たす時間間隔も短くなって、手動での押し付け操作でも押し付け力一定の条件を満たすようになっている。
押し付け力測定センサ5は組織11への超音波プローブ4の押し付け力を測定してその測定結果を押し付け力受信部7に送る。超音波送受信部6は電圧によって超音波プローブ4の超音波送信信号を制御し、また、組織11から反射して超音波プローブ4によって電圧に変換された超音波信号を組織変形量検出部8と表示部10に送る。組織変形量検出部8は組織11の厚さを検出し、その検出結果を弾性指標計算部9に送る。弾性指標計算部9は押し付け力受信部7からの信号と組織変形量検出部8からの信号を基に組織11各層の弾性指標を計算して表示部10に送る。
【0019】
(組織厚変形量の検出方法)
超音波による測定には、Bモードと呼ばれる超音波信号の振幅を輝度に変換して2次元画像として表示する方法と、Aモードと呼ばれる超音波の振幅を曲線として描く方法がある。
図9に本発明のAモードとBモードの例を示す。
図9(a)はBモード(輝度モード)の2次元画像で、波線方向(紙面上方から下方へ向かう方向)が組織の表面からの深さ方向で、画像中白色部分は輝度が高い箇所で黒色部分は輝度が低い箇所を表す。
図9(b)はAモード(輝度の振幅モード)の特性図で、Bモードの2次元画像における波線部(1次元画像)の輝度変化特性を表し、その縦軸は組織の深さ方向の距離を表し、その横軸は輝度値を表す。
Bモード画像中の波線部の輝度を抜き出して超音波信号の変化として表示したグラフがAモードに相当する。
各組織の変形量は、このAモードの超音波信号変化から求める。
【0020】
図10に本発明の各組織位置を求める方法を示す。図10の縦軸は輝度値、横軸は深さ方向の距離とする。
予め、超音波信号(エコー信号)は、組織11から反射して超音波プローブ4によって電圧に変換された超音波信号として超音波送受信部6から出力されている。
そこで、図10のxを組織の表面からの深さ方向の位置とすると、組織変形量検出部8は、超音波送受信部6を介して得た超音波信号(エコー信号)変化b(x)に対してある幅をもった窓を設定し、その窓幅Wの中で超音波信号の最大値を見つけ出す。この窓を順次、窓の幅より十分に小さい間隔、例えば窓の幅の1/10程度の間隔でx軸方向にずらしながら最大値の曲線p(x)を求める。数式で表すと下記数式5のようになる。maxは最大値を求める関数である。
【数5】

この最大値がある値(許容変動値A)以上に変化しない部分が窓幅W以上連続している部分の中心位置を組織の位置(組織位置)とする。窓幅を組織の厚みが最小となる値とすることで適切に組織の位置を同定することができる。押し付け力によって変化する組織の厚みの変化は、2種類の押し付け力による組織の厚みを比較することで計算することができる。生体組織において上腕部や大腿部では皮下脂肪部分が組織の厚さの最小となるので、窓幅を10mmとするのが適切である。
【0021】
(弾性指標の計算式)
弾性指標計算部9は、組織変形量検出部8からのこの組織11における移動量Δxと、押し付け力受信部7からの押し付け力測定センサ5の測定値である押し付け力値Fを取り込み、以下の演算を行う。
組織を1次元のバネで単純化しフックの法則を適応すると、
F=−kΔx
但し、Fは押し付け力、kは硬さに関する値、Δxは組織の移動量である。
つまり組織11を押し付け、硬さに関する値kを求めるためには
k=−F/Δx
を計算すればよいことになる。
【0022】
(処理態様)
図1は、本発明の組織硬度評価部8における処理を説明する図である。
図1の上段の押し付け力の特性図は押し付け力の増減の態様を示す。
図1の中段のイメージ画像は、エコー画像(Bモード)であり、その隣の特性図(線図:Aモード)はエコー画像における中心の点線の特性を表す。画像1は荷重150gfで20/100コマ目で取得した画像であり、画像2は荷重4500gfで90/100コマ目で取得した画像である。イメージ画像中の記号A、B、C、Dは、となりの線図における頂点位置を示す。なお、記号A、B、C、Dは、イメージ画像上の輝度が変化するAモードの特性位置を示す。
下段の特性表は、画像1および画像2におけるA〜Dの位置までの端点からの距離と、画像1と画像2の値の差(計測値差異)と、変化率(単位面積当たりの力の値を意味し、次元は(N/m)又は(m/kg))である。
図2は本発明のエコー画像と組織の層位置を示す図であり、右図は大腿前部であり、左図は上腕前部である。
図3は、図3(a)の押し付け力を連続的に変化したときの、図3(b)のある組織部位の変化状態を示すエコー画像と、図3(c)の各層の間隔表と、図3(d)の初期押し付け力からの変化率の特性表を示す。
図4は図3(d)の初期押し付け力からの変化率の特性表をグラフ化したものである。
図5は組織に押し付け力を加えたときの組織各層の伸縮態様を図示したものである。組織各層の伸縮態様は、全体的に伸縮する態様を示す。
図6は、組織のB−C層とC−D層の押し付け力に対する弾性指標の特性図である。
一般的に図4のように押し付け力に対して組織の厚さの変化は線形にはならない。これは押し付け力に伴って組織の硬度が増す、ひずみ硬化と呼ばれる現象である。そのため組織の評価のために必要となる、押し付け力に対して一定の(押し付け力に依存しない)指標を得るためには、押し付け力をある関数で変換し線形の近似を行う必要がある。利用する関数を自然対数(ln)とし、Fを押し付け力、k’を弾性指標、Δxを組織の移動量とすると、
k’=−ln(F)/Δx
と表されることになる。図6では押し付け力Fに対する弾性指標k’を計算してグラフ化したものである。
【0023】
(解析部3のフローチャート)
図11は本発明の解析部3における処理のフローチャートである。
コンピュータからなる解析部3の処理フローは大凡以下のように表される。
(S0:ステップ0)
メモリに予め押し付け力のサンプル、窓幅w、移動間隔を記憶しておく。
スタート:
(S1:ステップ1)
超音波送受信部6から超音波プローブ4へ組織の深度に応じた超音波を送信し、組織11からのエコー信号を超音波プローブ4を介して受け取り、エコー信号の深度-輝度特性(1次元、2次元)を得、その深度-輝度特性(1次元、2次元)信号を出力する。
(S2:ステップ2)
深度-輝度特性(1次元、2次元)にメモリより読み出した窓幅wの窓を順次深さ方向にずらしながら最大値の曲線を求め、この最大値がある値以上に変化しない部分が窓幅以上連続している部分の中心位置を組織位置として求める。
(S3:ステップ3)
組織変形量検出部8からの組織位置を組織の移動量Δxに変換し、この移動量Δxと押し付け力受信部7からの押し付け力Fから、組織の硬さに関する値k=−F/Δxを求める。
(S4:ステップ4)
押し付け力測定センサ5からの測定値を押し付け力受信部7で受信する。
(S5:ステップ5)
超音波送受信部6からのエコー信号の深度-輝度特性(1次元、2次元)と、弾性指標計算部9からの組織の移動量Δxと押し付け力Fと組織の硬さkの組み合わせを表示する。
エンド:
【産業上の利用可能性】
【0024】
組織の形状や硬さ柔らかさなどの質を、非侵襲で測定することが求められる分野、例えば健康医療、農業(肉質の評価)、漁業(肉質の評価)で利用することができる。またプローブ部分に移動機構などの大がかりな装置が必要ないので、屋内だけでなく屋外などに持ち運びポータブルに使用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 組織硬度評価装置
2 想定部
3 解析部
4 超音波プローブ
5 押し付け力測定センサ
6 超音波送受信部
7 押し付け力受信部
8 組織変形量検出部
9 弾性指標計算部
10 表示部
11 組織

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブおよび押し付け力測定センサからなる測定部と、
超音波送受信部と押し付け力受信部と組織変形量検出部と弾性指標計算部と表示部からなる解析部とからなり、
前記押し付け力測定センサは組織への前記超音波プローブの押し付け力を測定してその測定結果を前記押し付け力受信部に送り、前記超音波送受信部は前記超音波プローブの超音波発信信号の送信を制御し、組織から反射して前記超音波プローブによって変換された超音波信号を前記組織変形量検出部と前記表示部へ出力し、前記組織変形量検出部は組織の厚さを検出し、その検出結果を前記弾性指標計算部へ出力し、前記弾性指標計算部は前記押し付け力受信部からの信号と前記組織変形量検出部からの信号を基に組織各層の弾性指標を計算して前記表示部へ出力することを特徴とする組織硬度評価装置。
【請求項2】
前記解析部をコンピュータにより構成することを特徴とする請求項1記載の組織硬度評価装置。
【請求項3】
前記組織変形量検出部は、xを組織の表面からの深さ方向の位置とすると、前記組織から得られた超音波信号(エコー信号)変化b(x)に対してある幅をもった窓を設定し、その窓幅Wの中で超音波信号の最大値を見つけ出し、この窓を順次、窓の幅より十分に小さい間隔でx軸方向にずらしながら最大値の曲線p(x)を下記数式6により求め、
この最大値が所定の許容変動値A以上に変化しない部分が窓幅W以上連続している部分の中心位置を前記組織の位置とし、前記窓幅を前記組織の厚みが最小となる値とすることで適切に前記組織の位置を同定することを特徴とする請求項1記載の組織硬度評価装置。
但し、maxは最大値を求める関数である。
【数6】

【請求項4】
前記弾性指標計算部は、前記組織変形量検出部からの前記組織における移動量Δxと、前記押し付け力受信部からの前記押し付け力測定センサの測定値である押し付け力値Fを取り込み、下記数式7の演算を行い、硬さに関する値kを求めることを特徴とする請求項1記載の組織硬度評価装置。
【数7】

【請求項5】
前記弾性指標計算部は、前記組織変形量検出部からの前記組織における移動量Δxと、前記押し付け力受信部からの前記押し付け力測定センサの測定値である押し付け力値Fを取り込み、下記数式8の演算を行い、硬さに関する値k’を求めることを特徴とする請求項1記載の組織硬度評価装置。
【数8】


【図5】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−130943(P2011−130943A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294097(P2009−294097)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】