説明

組電池の充電制御装置および充電制御方法

【課題】定格電力の大きな抵抗を用いなくても、各電池の電圧を短時間で均衡させることを可能にする。
【解決手段】組電池の充電制御装置1は、組電池2の各電池21にそれぞれ並列に接続される放電回路10と、各電池21の電圧を検出する電圧検出回路13と、電圧検出回路13の出力に基づいて、充電の抑制が必要な電池を判別し、放電回路10を制御する制御部14とを備える。放電回路10は、抵抗11とトランジスタ12との直列回路からなり、トランジスタ12がONすることで、当該トランジスタ12に対応する電池21を放電させる。制御部14は、充電の抑制が必要な電池の電圧が基準電圧未満である場合は、当該電池に対応するトランジスタ12を第1の期間だけONさせ、充電の抑制が必要な電池の電圧が基準電圧以上である場合は、当該電池に対応するトランジスタ12を第1の期間よりも短い第2の期間だけONさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池を構成する各電池の電圧のばらつきを少なくするための充電制御の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気自動車においては、走行用モータや車載機器の電源となる高電圧バッテリが搭載される。この高電圧バッテリは、一般に、リチウムイオン電池などの二次電池を複数個直列に接続した、いわゆる組電池から構成される。このような組電池にあっては、各電池の特性のばらつきに起因して、放電可能な電気エネルギー(以下、「放電容量」という。)が電池間で異なる。また、二次電池の場合、過充電や過放電によって電池寿命が低下することから、組電池を構成する電池のうちの1つが充電完了状態や放電完了状態になれば、組電池全体として充電動作や放電動作を停止する必要がある。
【0003】
このため、放電時に、最も放電容量の小さい電池が放電を完了すると、他の電池の放電が完了しない状態で、組電池全体の放電動作が停止する。一方、充電時には、放電時に完全に放電した電池が充電完了状態にならないうちに、放電時に完全に放電しなかった電池が先に充電完了状態となり、この時点で組電池全体の充電動作が停止する。このような動作が繰り返されると、放電容量の小さい電池は常に充電不足となり、組電池全体としての放電容量が低下する。
【0004】
この対策として、例えば特許文献1〜5に記載されているように、組電池を構成する各電池と並列に、スイッチング素子と抵抗の直列回路からなる放電回路を接続し、各電池の充電状態に応じて、スイッチング素子のON・OFFを制御する方法が知られている。この方法によれば、電圧の高い電池については、スイッチング素子がONして充電が抑制され、電圧の低い電池については、スイッチング素子がOFFとなって充電が優先的に行われる。これにより、各電池をバランスよく充電することができ、組電池全体の放電容量が低下するのを抑制することができる。
【0005】
また、特許文献6には、組電池を構成する各電池ごとにコンバータを設け、このコンバータのスイッチング素子を、各電池の電圧に応じて、PWM信号によりON・OFFさせる充放電制御の技術が記載されている。これによれば、PWM信号のデューティを調整することにより、各電池の出力を均等化することができる。
【0006】
図5は、組電池の充電制御を模式的に示した図である。(a)は充電前の状態、(b)は充電中の状態、(c)は充電が完了した状態をそれぞれ表している。(a)のように、各電池B1〜B4の電圧がばらついている状態から充電が開始されると、(b)のように各電池B1〜B4の電圧が上昇してゆく。このとき、破線で示す目標電圧(ここでは、最も低い電池B3の電圧)より電圧が高い電池B1、B2、B4については、スイッチング素子をONさせて放電を行うことで、充電を抑制する。一方、電池B3については、スイッチング素子をOFF状態とする。このため、電池B3が優先的に充電される。そして、最終的には(c)のように、最も電圧の高い電池B2が満充電に達すると、他の電池の充電も終了する。この状態では、各電池B1〜B4の電圧のばらつきは小さくなっている。
【0007】
ところで、スイッチング素子をONさせて放電を行う場合、スイッチング素子と直列に接続された抵抗に放電電流が流れるため、当該抵抗が発熱する。このため、放電電流が多く流れると、抵抗が高温となって焼損することがある。そこで、温度の高い領域では、抵抗に定格電力を100%かけずに、温度が高くなるほど抵抗に印加する電力を小さくするような使い方がされている。
【0008】
具体的に説明すると、図6は、抵抗の負荷軽減曲線の一例であって、横軸は温度、縦軸は定格電力比を示している。定格電力比は、抵抗の定格電力を100%としたときの、当該抵抗に印加できる電力の割合である。この例では、温度が70℃までは、定格電力の100%を抵抗に印加できるが、温度が70℃を超えると、温度上昇に応じて、抵抗に印加できる電力が減少する。例えば、温度が100℃では、定格電力比は50%となり、印加可能電力は定格電力の半分となる。
【0009】
このように、抵抗に印加できる電力が温度によって制限を受けることから、抵抗に流す電流も制限されることになる。その一方で、組電池の各電池の電圧を短時間で均衡させる点からは、抵抗にできるだけ多くの放電電流を流すことが好ましい。しかし、そのためには、定格電力の大きな抵抗を用いる必要がある。図6の例では、100℃において定格電力使用時と同じだけの電流を流すには、2倍の定格電力をもった抵抗が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−253463号公報
【特許文献2】特開平8−19188号公報
【特許文献3】特開2000−83327号公報
【特許文献4】特開平7−264780号公報
【特許文献5】特開2002−233069号公報
【特許文献6】特開2010−148242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、定格電力の大きな抵抗を用いなくても、各電池の電圧を短時間で均衡させることが可能な組電池の充電制御装置および充電制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る組電池の充電制御装置は、組電池の各電池にそれぞれ並列に接続される、抵抗とスイッチング素子との直列回路からなり、スイッチング素子がONすることで、当該スイッチング素子に対応する電池を放電させる放電回路と、組電池の各電池の電圧を検出する電圧検出手段と、電圧検出手段で検出された各電池の電圧に基づいて、充電の抑制が必要な電池を判別し、当該電池に対応するスイッチング素子をONさせる制御手段とを備える。制御手段は、充電の抑制が必要な電池の電圧が、予め決められた基準電圧未満である場合は、当該電池に対応するスイッチング素子を第1の期間だけONさせ、充電の抑制が必要な電池の電圧が、基準電圧以上である場合は、当該電池に対応するスイッチング素子を第1の期間よりも短い第2の期間だけONさせる。
【0013】
このようにすると、充電が開始された直後は、各電池の電圧は基準電圧未満であるため、スイッチング素子のON期間が長くなって、抵抗に放電電流が多く流れる。これにより、電圧の高い電池の充電が抑制され、電圧の低い電池に優先的に充電が行われるので、電池間の電圧のばらつきを早い段階で是正することができる。一方、充電が開始されて時間が経つと、各電池の電圧が基準電圧以上となるため、スイッチング素子のON期間が短くなって、抵抗に流れる放電電流が少なくなる。この結果、抵抗での消費電力が小さくなり、抵抗の発熱が抑制される。このように、電池の電圧に応じてスイッチング素子のON期間を切り替えることで、充電開始直後は抵抗に放電電流が多く流れ、充電が進むと放電電流が減少するので、定格電力の小さな抵抗を使用して、電池間の電圧を短時間で均衡させることが可能となる。
【0014】
本発明では、制御手段は、PWM信号によりスイッチング素子を制御してもよい。この場合、PWM信号のデューティを変化させることによって、第1の期間および第2の期間が切り替えられる。
【0015】
また、本発明では、制御手段は、電圧検出手段で検出された各電池の電圧に基づいて、目標電圧を設定し、各スイッチング素子に対してON・OFF制御を行っていない状態で、いずれかの電池の電圧が、目標電圧に一定値を加算した電圧以上となった場合は、当該電池に対応するスイッチング素子を第1または第2の期間だけONさせ、各スイッチング素子に対してON・OFF制御を行っている状態で、第1または第2の期間だけONするスイッチング素子に対応する電池の電圧が、目標電圧未満となった場合は、当該電池に対応するスイッチング素子をOFFにするようにしてもよい。
【0016】
また、本発明では、基準電圧が、第1の基準電圧と、この第1の基準電圧よりも小さい第2の基準電圧とからなり、制御手段は、ON期間が第1の期間であるスイッチング素子に対応する電池の電圧が、第1の基準電圧以上となった場合は、当該スイッチング素子のON期間を第2の期間に切り替え、ON期間が第2の期間であるスイッチング素子に対応する電池の電圧が、第2の基準電圧未満となった場合は、当該スイッチング素子のON期間を第1の期間に切り替えるようにしてもよい。
【0017】
本発明に係る組電池の充電制御方法では、組電池の各電池の電圧を検出し、検出された各電池の電圧に基づいて、充電の抑制が必要な電池を判別し、充電の抑制が必要な電池の電圧が、予め決められた基準電圧未満である場合は、当該電池に対応するスイッチング素子を第1の期間だけONさせ、充電の抑制が必要な電池の電圧が、基準電圧以上である場合は、当該電池に対応するスイッチング素子を第1の期間よりも短い第2の期間だけONさせる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、充電開始直後は抵抗に放電電流が多く流れ、充電が進むと放電電流が減少するので、定格電力の大きな抵抗を用いなくても、各電池の電圧を短時間で均衡させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態を示したブロック図である。
【図2】充電制御の手順を表したフローチャートである。
【図3】デューティ切り替えの手順を表したフローチャートである。
【図4】PWM信号の波形図である。
【図5】組電池の充電制御を模式的に示した図である。
【図6】抵抗の負荷軽減曲線を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。以下では、本発明を電気自動車に搭載される組電池に適用した場合を例に挙げる。
【0021】
まず、図1を参照して、実施形態の構成について説明する。図1において、充電制御装置1は、組電池2と充電回路3との間に設けられ、組電池2の充電を制御する。組電池2は、直列に接続された複数の電池21から構成される。各電池21は、例えばリチウムイオン電池のような二次電池からなる。充電制御装置1と充電回路3との間には、コンタクタ4が設けられている。
【0022】
充電制御装置1には、組電池2の各電池21ごとに、抵抗11とトランジスタ12との直列回路からなる放電回路10、および、電池21の電圧を検出する電圧検出回路13が備わっている。また、各放電回路10と各電圧検出回路13に共通な制御部14が設けられている。制御部14は、CPUやメモリ等から構成される。トランジスタ12は、本発明における「スイッチング素子」の一例であり、電圧検出回路13は、本発明における「電圧検出手段」の一例である。制御部14は、本発明における「制御手段」の一例である。
【0023】
放電回路10は、電池21に並列に接続されており、トランジスタ12がONすることで、当該トランジスタ12に対応する電池21を放電させる。抵抗11の一端は、電池21の正極に接続され、抵抗11の他端は、トランジスタ12のコレクタに接続されている。トランジスタ12のエミッタは、電池21の負極に接続され、トランジスタ12のベースは、制御部14に接続されている。電圧検出回路13は、電池21の正極と負極の間に接続されている。電圧検出回路13の出力は、制御部14に与えられる。
【0024】
制御部14は、後述するように、電圧検出回路13の検出電圧に基づいてトランジスタ12を制御する。また、制御部14は、充電回路3に対して充電開始または充電停止の指令を与えるとともに、充電開始時にはコンタクタ4をON(閉状態)にし、充電停止時にはコンタクタ4をOFF(開状態)にする制御を行う。さらに、制御部14は、図示しない上位装置との間で通信を行う。
【0025】
次に、充電制御装置1による充電制御の概要について説明する。制御部14は、上位装置からの指令に基づき、充電回路3に対して充電開始指令を出力するとともに、コンタクタ4をONにする。これにより、充電回路3からコンタクタ4を介して、組電池2に充電が行われる。充電開始後、各電池21の電圧が上昇してゆくが、前述の通り、電池間で電圧のばらつきがある。制御部14は、各電圧検出回路13の出力に基づいて、各電池21の電圧を監視し、充電の抑制が必要な電池を判別する。例えば、電圧検出回路13で検出された電圧のうちの最小電圧よりも電圧が高い電池は、充電抑制が必要な電池と判別される。
【0026】
そして、制御部14は、充電抑制が必要と判別した電池21に対応する放電回路10のトランジスタ12を、所定時間だけONさせる。この場合、制御部14からトランジスタ12のベースにPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)信号が与えられ、この信号がH(High)レベルとなる期間は、トランジスタ12がON状態となる。トランジスタ12がONすると、抵抗11とトランジスタ12による放電経路が形成されるので、電池21の充電が抑制される。一方、充電抑制が不要な電池21については、トランジスタ12はOFFしているため、優先的に充電が行われる。
【0027】
ところで、本実施形態では、制御部14は、トランジスタ12をONするにあたり、PWM信号のデューティを変化させることにより、トランジスタ12のON期間を2段階で切り替える。すなわち、充電が開始されて電池電圧がある基準値に達するまでは、PWM信号のデューティを例えば70%にして、トランジスタ12のON期間を長くする。そして、充電が進んで電池電圧がある基準値に達すると、PWM信号のデューティを例えば30%に変更して、トランジスタ12のON期間を短くする。
【0028】
このようにすると、充電が開始されて間もない、電池の電圧が低い段階では、トランジスタ12のON期間が長いため、抵抗11を介して放電電流が多く流れる。この結果、電圧の高い電池の充電が抑制され、電圧の低い電池に優先的に充電が行われるので、電池間の電圧のばらつきを早い段階で是正して、各電池21の電圧の均等化を図ることができる。一方、充電が開始されてから時間が経って、電池の電圧が高くなった段階では、トランジスタ12のON期間が短くなって、抵抗11を流れる放電電流が減少する(この段階では、電圧が均等化しているので、放電電流が減少しても問題はない)。この結果、抵抗11における消費電力が小さくなり、抵抗11の発熱が抑制される。したがって、抵抗11は定格電力の小さな抵抗で済む。
【0029】
以上のように、本実施形態においては、電池21の電圧が低い間は、抵抗11に多くの放電電流を流し、電池21の電圧が高くなると、抵抗11に流す放電電流を減少させる。これによって、定格電力の小さな抵抗11を使用しつつ、各電池21の電圧を短時間で均等化することが可能となる。
【0030】
抵抗11の定格電力に関し、以下に具体例を挙げて説明する。まず、放電電流を変化させない場合(従来方式)について考える。いま、周囲温度を85℃、抵抗11の自己発熱による温度を15℃とし、簡単のために、85℃+15℃=100℃を抵抗11の温度とする。また、抵抗11に流れる放電電流を、電池21の電圧(以下、「セル電圧」という。)にかかわらず、0.1〔A〕とする。
【0031】
上記条件の下で、例えばセル電圧が2.5〔V〕の場合、抵抗11での消費電力は、2.5〔V〕×0.1〔A〕=0.25〔W〕である。抵抗11の負荷軽減曲線が図6に示したものであれば、抵抗温度が100℃のときの定格電力比は50%である。すなわち、定格電力×50%=0.25〔W〕となるから、抵抗11としては、定格電力が0.5〔W〕のものが必要となる。
【0032】
また、例えばセル電圧が4.0〔V〕の場合、抵抗11での消費電力は、4.0〔V〕×0.1〔A〕=0.4〔W〕である。すなわち、定格電力×50%=0.4〔W〕となるから、抵抗11としては、定格電力が0.8〔W〕以上の1.0〔W〕の抵抗が必要となる。
【0033】
したがって、従来方式では、結果的に定格電力が1.0〔W〕の抵抗11を選定することが必要となる。
【0034】
次に、放電電流を変化させる場合(本発明)について考える。いま、周囲温度を85℃、抵抗11の自己発熱による温度を15℃とし、簡単のために、85℃+15℃=100℃を抵抗11の温度とする。また、抵抗11に流れる放電電流を、セル電圧が2.5〔V〕の場合には0.1〔A〕、セル電圧が4.0〔V〕の場合には0.06〔A〕とする。
【0035】
上記条件の下で、セル電圧が2.5〔V〕の場合、抵抗11での消費電力は、2.5〔V〕×0.1〔A〕=0.25〔W〕である。また、図6の負荷軽減曲線より、抵抗温度が100℃のときの定格電力比は50%である。すなわち、定格電力×50%=0.25〔W〕となるから、抵抗11としては、定格電力が0.5〔W〕のものが必要となる(これについては、従来方式と変わりはない)。
【0036】
一方、セル電圧が4.0〔V〕の場合、抵抗11での消費電力は、4.0〔V〕×0.06〔A〕=0.24〔W〕である。すなわち、定格電力×50%=0.24〔W〕となるから、抵抗11としては、定格電力が0.48〔W〕以上の0.5〔W〕の抵抗が必要となる。
【0037】
したがって、本発明の場合は、結果的に定格電力が0.5〔W〕の抵抗11を選定すればよいことになる。このように、定格電力の小さい抵抗を使用することで、コストを低減することができる。
【0038】
次に、充電制御装置1による充電制御の詳細を、フローチャートに従って説明する。
【0039】
図2は、充電制御の手順を表したフローチャートである。各ステップは、制御部14を構成するCPUによって実行される。以下では、制御部14が各トランジスタ12に対してON・OFF制御を行って、各電池21間で電圧を均等化することを「電圧バランス動作」という。
【0040】
ステップS1では、各電池21のセル電圧に基づいて、目標電圧が設定される。目標電圧は、例えば、電圧検出回路13で検出されたセル電圧のうち、最も低いセル電圧に設定される。但し、目標電圧の設定方法はこれに限らない。例えば、特許文献3に記載されているように、セル電圧の平均値を目標電圧として設定してもよい。
【0041】
ステップS2では、電池21ごとに、セル電圧が異常電圧以下であるか否かが判定される。異常電圧とは、電池21が過充電された場合の電圧(満充電時の電圧よりも高い電圧)に相当する高電圧をいう。判定の結果、セル電圧が異常電圧を超えておれば(ステップS2;NO)、当該電池21が異常であると判断し、ステップS8へ移行して、当該電池21に対応する放電回路10を非駆動とする。この場合、当該放電回路10におけるトランジスタ12は、OFF状態に維持される。一方、セル電圧が異常電圧以下であれば(ステップS2;YES)、当該電池21は正常であると判断し、ステップS3へ進む。
【0042】
ステップS3では、電圧バランス動作が許可されているか否かが判定される。この判定は、上位装置からの許可指令の有無に基づいて行われる。例えば、自動車の走行中は、電圧バランス動作が禁止され、自動車の停止中に組電池2に充電が行われるときは、電圧バランス動作が許可される。判定の結果、電圧バランス動作が許可されていなければ(ステップS3;NO)、ステップS8へ移行して、放電回路10を非駆動とする。一方、電圧バランス動作が許可されていれば(ステップS3;YES)、ステップS4へ進む。
【0043】
ステップS4では、電圧バランス動作が停止中か否かが判定される。判定の結果、電圧バランス動作が停止中であれば(ステップS4;YES)、ステップS5へ進む。
【0044】
ステップS5では、電池21ごとに、セル電圧と目標電圧+αとを比較する。ここで、αは一定値である。そして、セル電圧≧目標電圧+αの電池については(ステップS5;YES)、充電の抑制が必要と判断して、ステップS6へ進む。また、セル電圧<目標電圧+αの電池については(ステップS5;NO)、充電の抑制が不要と判断して、ステップS8へ進む。
【0045】
ステップS6では、充電の抑制が必要な電池21に対応する放電回路10を駆動して、電圧バランス動作を実行する。すなわち、当該放電回路10のトランジスタ12に、制御部14からPWM信号が与えられ、PWM信号のデューティで決まる期間だけ、トランジスタ12がONとなる。このON期間に、電池21が放電回路10を介して放電する。なお、トランジスタ12のON期間は、セル電圧に応じて切り替えられるが、これについては後で説明する。
【0046】
一方、ステップS4での判定の結果、電圧バランス動作が実行中であれば(ステップS4;NO)、ステップS7へ進む。
【0047】
ステップS7では、電池21ごとに、セル電圧と目標電圧とを比較する。そして、セル電圧≧目標電圧の電池については(ステップS7;YES)、充電抑制が必要と判断して、ステップS6へ進む。また、セル電圧<目標電圧の電池については(ステップS7;NO)、充電抑制が不要と判断して、ステップS8へ進む。
【0048】
以上により、電圧バランス動作が行われていない状態で(ステップS4;YES)、いずれかの電池21の電圧が、目標電圧+α以上となった場合は(ステップS5;YES)、当該電池21に対応するトランジスタ12が所定期間ONとなり、当該電池21が放電する(ステップS6)。また、電圧バランス動作が行われている状態で(ステップS4;NO)、所定期間ONするトランジスタ12に対応する電池21の電圧が、目標電圧未満となった場合は(ステップS7;NO)、当該電池21に対応するトランジスタ12がOFFとなり、当該電池21の放電が停止する(ステップS8)。このような動作が繰り返されることで、各電池21の電圧が均等化される。
【0049】
ところで、本実施形態では、ステップS6において放電回路10を駆動する場合、セル電圧に応じて、PWM信号のデューティを70%と30%に切り替える。但し、このデューティの値は一例であって、他の値を採用してもよい。
【0050】
図4(a)は、デューティが70%のPWM信号の波形を示している。信号の1周期をTとし、ON期間(信号がHレベルの期間)をT1としたとき、T1/T=70%である。ON期間T1は、本発明における「第1の期間」に相当する。図4(b)は、デューティが30%のPWM信号の波形を示している。信号の1周期をTとし、ON期間をT2としたとき、T2<T1であって、T2/T=30%である。ON期間T2は、本発明における「第2の期間」に相当する。これらのPWM信号のON期間T1、T2において、トランジスタ12はON状態となる。
【0051】
図3は、図2のステップS6において放電回路10を駆動する場合の、PWM信号のデューティ切替手順を表したフローチャートである。各ステップは、制御部14を構成するCPUによって実行される。
【0052】
ステップS11では、PWM信号のデューティが30%か否かが判定される。充電開始直後は、PWM信号のデューティが70%に設定されるので(ステップS11;NO)、ステップS14へ進む。
【0053】
ステップS14では、セル電圧を可変電圧と比較する。ここでいう可変電圧とは、例えば、満充電状態での電圧の80%程度の電圧である。セル電圧が可変電圧付近の高い電圧である場合に、抵抗11に大きな放電電流を流すと、抵抗11に許容値を超える消費電力が発生し、抵抗11が焼損するおそれがある。しかし、充電開始後、暫くの間はセル電圧が低いので、セル電圧<可変電圧となる(ステップS14;YES)。したがって、ステップS13へ進んで、PWM信号のデューティを70%に維持する。なお、ステップS14における可変電圧は、本発明における「第1の基準電圧」に相当する。
【0054】
一方、充電が進んでセル電圧が高くなり、セル電圧≧可変電圧になると(ステップS14;NO)、抵抗11に流す放電電流を制限する必要があるので、ステップS15へ進んで、PWM信号のデューティを30%に切り替える。これにより、トランジスタ12のON期間が短くなって、抵抗11に流れる放電電流が減少する。このため、抵抗11の消費電力も抑制される。
【0055】
また、ステップS11において、PWM信号のデューティが30%の場合は(ステップS11;YES)、ステップS12へ進む。
【0056】
ステップS12では、セル電圧を、可変電圧−α(αは前述の一定値)と比較する。比較の結果、セル電圧≧可変電圧−αであれば(ステップS12;NO)、抵抗11に流す放電電流を引き続き制限する必要があると判断し、ステップS15へ進んで、PWM信号のデューティを30%に維持する。一方、セル電圧<可変電圧−αであれば(ステップS12;YES)、抵抗11に流す放電電流を制限する必要がないと判断し、ステップS13へ進んで、PWM信号のデューティを70%に切り替える。なお、ステップS12における可変電圧−αは、本発明における「第2の基準電圧」に相当する。
【0057】
本発明では、以上述べた以外にも種々の実施形態を採用することができる。例えば、図2の手順では、ステップS2〜S8において、電池21ごとに処理を行うステップ(S2、S5、S7)を含んでいるが、1つの電池につきステップS2〜S8を実行した後、次の電池につき改めてステップS2〜S8を実行する手順としてもよい。
【0058】
また、前記の実施形態では、放電回路10のスイッチング素子としてトランジスタ12を用いているが、トランジスタに代えてFETを用いてもよい。
【0059】
また、前記の実施形態では、電圧検出回路13を制御部14と別に設けているが、電圧検出回路13を制御部14に組み込んでもよい。
【0060】
さらに、前記の実施形態では、本発明を電気自動車に搭載される組電池に適用した例を挙げたが、本発明は、電気自動車以外の用途に用いられる組電池にも適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 充電制御装置
2 組電池
3 充電回路
10 放電回路
11 抵抗
12 トランジスタ
13 電圧検出回路
14 制御部
21 電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の二次電池から構成される組電池の充電を制御する装置であって、
前記組電池の各電池にそれぞれ並列に接続される、抵抗とスイッチング素子との直列回路からなり、前記スイッチング素子がONすることで、当該スイッチング素子に対応する前記電池を放電させる放電回路と、
前記組電池の各電池の電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電圧検出手段で検出された各電池の電圧に基づいて、充電の抑制が必要な電池を判別し、当該電池に対応する前記スイッチング素子をONさせる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
充電の抑制が必要な電池の電圧が、予め決められた基準電圧未満である場合は、当該電池に対応する前記スイッチング素子を第1の期間だけONさせ、
充電の抑制が必要な電池の電圧が、前記基準電圧以上である場合は、当該電池に対応する前記スイッチング素子を前記第1の期間よりも短い第2の期間だけONさせることを特徴とする組電池の充電制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の組電池の充電制御装置において、
前記制御手段は、PWM信号により前記スイッチング素子を制御し、
前記PWM信号のデューティを変化させることによって、前記第1の期間および前記第2の期間を切り替えることを特徴とする組電池の充電制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の組電池の充電制御装置において、
前記制御手段は、
前記電圧検出手段で検出された各電池の電圧に基づいて、目標電圧を設定し、
前記各スイッチング素子に対してON・OFF制御を行っていない状態で、いずれかの電池の電圧が、前記目標電圧に一定値を加算した電圧以上となった場合は、当該電池に対応する前記スイッチング素子を前記第1または第2の期間だけONさせ、
前記各スイッチング素子に対してON・OFF制御を行っている状態で、前記第1または第2の期間だけONするスイッチング素子に対応する電池の電圧が、前記目標電圧未満となった場合は、当該電池に対応する前記スイッチング素子をOFFにすることを特徴とする組電池の充電制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の組電池の充電制御装置において、
前記基準電圧は、第1の基準電圧と、この第1の基準電圧よりも小さい第2の基準電圧とからなり、
前記制御手段は、
ON期間が前記第1の期間であるスイッチング素子に対応する電池の電圧が、前記第1の基準電圧以上となった場合は、当該スイッチング素子のON期間を前記第2の期間に切り替え、
ON期間が前記第2の期間であるスイッチング素子に対応する電池の電圧が、前記第2の基準電圧未満となった場合は、当該スイッチング素子のON期間を前記第1の期間に切り替えることを特徴とする組電池の充電制御装置。
【請求項5】
直列に接続された複数の二次電池から構成され、各電池にそれぞれ並列に抵抗とスイッチング素子との直列回路からなる放電回路が接続される組電池の充電を制御する方法であって、
前記組電池の各電池の電圧を検出し、
前記検出された各電池の電圧に基づいて、充電の抑制が必要な電池を判別し、
充電の抑制が必要な電池の電圧が、予め決められた基準電圧未満である場合は、当該電池に対応する前記スイッチング素子を第1の期間だけONさせ、
充電の抑制が必要な電池の電圧が、前記基準電圧以上である場合は、当該電池に対応する前記スイッチング素子を前記第1の期間よりも短い第2の期間だけONさせることを特徴とする組電池の充電制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−55719(P2013−55719A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190269(P2011−190269)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】