説明

経口投与用錠剤

【課題】口腔内での速崩壊性を損なうことなく、薬物の苦味を低減させる経口投与用錠剤を提供すること。
【解決手段】内核および該内核を被覆する被覆層からなり、該内核は薬物を含有せずかつ咀嚼可能であり、該被覆層は薬物を含有し、かつ口腔内速崩壊性であることを特徴とする経口投与用錠剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内核および該内核を被覆する被覆層からなり、該内核は薬物を含有せずかつ咀嚼可能であり、該被覆層は薬物を含有しかつ口腔内速崩性である経口投与用錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の口腔内崩壊錠への適用が図られているが、一般的に苦味のある薬物を使用し、口腔内速崩壊錠を製造する場合、該錠剤が速やかに崩壊するために、薬物が口腔内にて即時広がり、苦味を感じる。また、D−マンニトールなどの賦形剤や人口甘味料が添加されている場合、甘味の速感により、苦味はさらに増大する傾向にある。従って、最近では、苦味のある薬物の製剤を調製する場合には、別途製造工程によって、マスキング等の手段を施している。しかしながら、マスキングに用いる設備および工程が増加する、マスキングに使用する添加剤の多くは水不溶性であるため、溶解性(溶出試験等)評価にて薬物の放出が大幅に遅延するなどの問題がある。
【0003】
一方、光に不安定な薬物は、一般的にフィルムコーティング錠として製造される。錠剤の硬度は、打錠圧力を大きくすれば容易に増大させることができる。しかしながら、打錠圧力を大きくした場合、錠剤の中心部が全く崩壊しなくなり、口腔内に芯が残存してしまう。口腔内速崩壊錠として製造する上では、速やかに崩壊する必要があるため、錠剤の硬度を増大できず、十分な硬度がないためにフィルムコーティングを施すことが不可能である。従って、光に不安定な薬物を口腔内速崩壊錠とすることは不可能であった。
【0004】
【特許文献1】特開2000−302672号公報
【特許文献2】特開2002−338500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、口腔内での速崩壊性を損なうことなく、薬物の苦味を低減させる経口投与用錠剤を提供することを目的とする。また、本発明は、口腔内での速崩壊性を損なうことなく、薬物の苦味を低減させると共に光安定性を改善した経口投与用錠剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、薬物を含有しないチュアブル錠を内核とした錠剤とすることにより、優れた苦味の低減効果を有することを見出した。さらに、本発明者らは、有核錠とすることで、打錠圧力が外部表面のみに伝達し、被覆層の速崩壊性が維持されることを知見した。これらの知見に基づいてさらに研究を進め、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
[1] 内核および該内核を被覆する被覆層からなり、該内核は薬物を含有せずかつ咀嚼可能であり、該被覆層は薬物を含有しかつ口腔内速崩壊性であることを特徴とする経口投与用錠剤、
[2] 内核が、チュアブル錠である前記[1]記載の経口投与用錠剤、
[3] 薬物が苦味を有する薬物であることを特徴とする前記[1]〜[2]のいずれかに記載の経口投与用錠剤、
[4] 被覆層の崩壊時間が30秒以内である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の経口投与用錠剤、
[5] 錠剤の硬度が2〜15kgfである請求項[1]〜[4]のいずれかに記載の経口投与用錠剤、および
[6] さらに、被覆層の表面がコーティングされてなることを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載の経口投与用錠剤、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薬物を含む外部の被覆層が速崩壊した後、薬物の苦味が口腔内に広がった場合、残存する内核によって苦味マスキング効果を得ることができる。また、錠剤の硬度を増大しても速崩壊性を損なうことがないため、外部の被覆層に光に不安定な薬物を含む場合であっても容易に錠剤をコーティングすることができる。さらに、本発明の経口投与用錠剤は、水なしで服用できるため、容易に服用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、内核および該内核を被覆する被覆層からなり、該内核は薬物を含有せずかつ咀嚼可能であり、該被覆層は薬物を含有しかつ口腔内速崩壊性であることを特徴とする経口投与用錠剤に関する。
【0010】
本発明で用いられる薬物としては、例えば滋養強壮保健薬、解熱鎮痛消炎薬、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、鎮痙薬、中枢神経作用薬、脳代謝改善剤、脳循環改善剤、抗てんかん剤、交感神経興奮剤、胃腸薬、制酸剤、抗潰瘍剤、鎮咳去痰剤、鎮吐剤、呼吸促進剤、気管支拡張剤、アレルギー用薬、歯科口腔用薬、抗ヒスタミン剤、強心剤、不整脈用剤、利尿薬、血圧降下剤、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、高脂血症用剤、利胆剤、抗生物質、化学療法剤、糖尿病用剤、骨粗しょう症用剤、抗リウマチ薬、骨格筋弛緩薬、鎮けい剤、ホルモン剤、アルカロイド系麻薬、サルファ剤、痛風治療薬、血液凝固阻止剤、抗悪性腫瘍剤などから選ばれた1種または2種以上の成分が用いられる。
【0011】
滋養強壮保健薬には、例えばビタミンA、ビタミンD、ビタミンE(酢酸d−α−トコフェロールなど)、ビタミンB1(ジベンゾイルチアミン、フルスルチアミン塩酸塩など)、ビタミンB2(酪酸リボフラビンなど)、ビタミンB6(塩酸ピリドキシンなど)、ビタミンC(アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウムなど)、ビタミンB12(酢酸ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミンなど)のビタミン、カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラル、タンパク、アミノ酸、オリゴ糖、生薬などが含まれる。
【0012】
解熱鎮痛消炎薬としては、例えばアスピリン、アセトアミノフェン、エテンザミド、イブプロフェン、塩酸ジフェンヒドラミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸ジヒドロコデイン、ノスカピン、塩酸メチルエフェドリン、塩酸フェニルプロパノールアミン、カフェイン、無水カフェイン、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、トルフェナム酸、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム、フルフェナム酸、サリチルアミド、アミノピリン、ケトプロフェン、インドメタシン、ブコローム、ペンタゾシンなどが挙げられる。向精神薬としては、例えばクロルプロマジン、レセルピンなどが挙げられる。抗不安薬としては、例えばアルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、ジアゼパムなどが挙げられる。抗うつ薬としては、例えばイミプラミン、塩酸マプロチリン、アンフェタミンなどが挙げられる。催眠鎮静薬としては、例えばエスタゾラム、ニトラゼパム、ジアゼパム、ペルラピン、フェノバルビタールナトリウムなどが挙げられる。鎮痙薬には、例えば臭化水素酸スコポラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸パパベリンなどが含まれる。中枢神経作用薬としては、例えばシチコリンなどが挙げられる。脳代謝改善剤としては、例えば塩酸メクロフェニキセートなどが挙げられる。脳循環改善剤としては、例えばビンポセチンなどが挙げられる。抗てんかん剤としては、例えばフェニトイン、カルバマゼピンなどが挙げられる。交感神経興奮剤としては、例えば塩酸イソプロテレノールなどが挙げられる。胃腸薬には、例えばジアスターゼ、含糖ペプシン、ロートエキス、セルラーゼAP3、リパーゼAP、ケイヒ油などの健胃消化剤、塩化ベルベリン、耐性乳酸菌、ビフィズス菌などの整腸剤などが含まれる。
【0013】
制酸剤としては、例えば炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、沈降炭酸カルシウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。抗潰瘍剤としては、例えばファモチジン、ランソプラゾール、オメプラゾール、ラベプラゾール、シメチジン、塩酸ラニチジンなどが挙げられる。鎮咳去痰剤としては、例えば塩酸クロペラスチン、臭化水素酸デキストロメルトファン、テオフィリン、グァヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシン、リン酸コデインなどが挙げられる。鎮吐剤としては、例えば塩酸ジフェニドール、メトクロプラミドなどが挙げられる。呼吸促進剤としては、例えば酒石酸レバロルファンなどが挙げられる。気管支拡張剤としては、例えばテオフィリン、硫酸サルブタモールなどが挙げられる。アレルギー用薬としては、アンレキサノクス、セラトロダストなどが挙げられる。歯科口腔用薬としては、例えばオキシテトラサイクリン、トリアムシノロンアセトニド、塩酸クロルヘキシジン、リドカインなどが挙げられる。抗ヒスタミン剤としては、例えば塩酸ジフェンヒドラミン、プロメタジン、塩酸イソチペンジル、dl−マレイン酸クロルフェニラミンなどが挙げられる。強心剤としては、例えばカフェイン、ジゴキシンなどが挙げられる。不整脈用剤としては、例えば塩酸プロカインアミド、塩酸プロプラノロール、ピンドロールなどが含まれる。利尿薬としては、例えばイソソルピド、フロセミド、ヒドロクロロチアジドなどが挙げられる。血圧降下剤としては、例えば塩酸デラプリル、カプトプリル、塩酸ヒドララジン、塩酸ラベタロール、塩酸マニジピン、カンデサルタンシレキセチル、メチルドパ、ペリンドプリルエルブミンなどが挙げられる。血管収縮剤としては、例えば塩酸フェニレフリンなどが挙げられる。冠血管拡張剤としては、例えば塩酸カルボクロメン、モルシドミン、塩酸ペラパミルなどが挙げられる。末梢血管拡張薬としては、例えばシンナリジンなどが挙げられる。高脂血症用剤としては、例えばセリバスタチンナトリウム、シンバスタチン、プラバスタチンナトリウム、アトルバスタチンカルシウム水和物などが挙げられる。利胆剤としては、例えばデヒドロコール酸、トレピプトンなどが挙げられる。抗生物質には、例えばセファレキシン、セファクロル、アモキシシリン、塩酸ピプメシリナム、塩酸セフォチアムヘキセチル、セファドロキシル、セフィキシム、セフジトレンピボキシル、セフテラムピボキシル、セフポドキシミプロキセチルなどのセフェム系、アンピシリン、シクラシン、ナリジクス酸、エノキサシンなどの合成抗菌剤、カルモナムナトリウムなどのモノバクタム系、ペネム系及びカルバペネム系抗生物質などが挙げられる。
【0014】
化学療法剤としては、例えばスルファメチゾールなどが挙げられる。糖尿病用剤としては、例えばトルブタミド、ボグリボース、塩酸ピオグリタゾン、グリベンクラミド、トログリダゾンなどが挙げられる。骨粗しょう症用剤としては、例えばイプリフラボンなどが挙げられる。骨格筋弛緩薬としては、メトカルバモールなどが挙げられる。鎮けい剤としては、塩酸メクリジン、ジメンヒドリナートなどが挙げられる。抗リウマチ薬としては、メソトレキセート、ブシラミンなどが挙げられる。ホルモン剤としては、例えばリオチロニンナトリウム、リン酸デキメタゾンナトリウム、プレドニゾロン、オキセンドロン、酢酸リュープロレリンなどが挙げられる。アルカロイド系麻薬として、アヘン、塩酸モルヒネ、トコン、塩酸オキシコドン、塩酸アヘンアルカロイド、塩酸コカインなどが挙げられる。サルファ剤としては、例えばスルフィソミジン、スルファメチゾールなどが挙げられる。痛風治療薬としては、例えばアロプリノール、コルヒチンなどが挙げられる。血液凝固阻止剤としては、例えばジクマロールが挙げられる。抗悪性腫瘍剤としては、例えば5−フルオロウラシル、ウラシル、マイトマイシンなどが挙げられる。苦味の強い薬物に本発明を適用した場合、その効果がより発揮される。
【0015】
上記した薬物の使用量は、通常薬物の種類あるいは医薬用途(適応症)により適宜選択され、治療学的に有効な量あるいは予防学的に有効な量であれば特に制限されないが、好ましくは、錠剤全量に対して通常0.01〜90重量%、好ましくは0.1〜50重量%である。
【0016】
本発明の錠剤の内核となる素錠は、通常の錠剤と同様の方法で製造することができる。すなわち、公知の賦形剤、結合剤などの添加剤を混和し、それをそのまま圧縮成形するか(直接粉末圧縮法、直打法)、それを顆粒に造粒し、それをそのままあるいは添加剤を加えて混和して圧縮成形して(湿式及び乾式顆粒圧縮法、間接圧縮法)製造できる。このような内核の製造は、通常の医薬品の製造に使用されているロータリー打錠機のような市販の打錠機を用いて行うことができる。内核錠は、錠剤全量に対して通常1〜90重量%、好ましくは10〜50重量%である。内核素錠の大きさは特に限定されないが、通常、直径(平面形状が円形でない場合は最大径)が4〜10mm、好ましくは5〜7mmである。内核の厚さも特に限定されないが、内核径を1としたときに、0.1〜1程度、好ましくは0.2〜0.6程度である。本発明の内核素錠は、薬物を含有しないチュアブル錠であり、該チュアブル錠の噛み砕きやすさは錠剤の形状、厚さ等にも影響され得るが、上記のような内核素錠の大きさ、厚さにすることにより噛み砕きやすさが確保される。
【0017】
本発明に用いる内核成分としては、賦形剤を主成分とし、これ以外に例えば崩壊剤、滑沢剤、結合剤、酸味料、甘味料、香料、着色剤などを添加することができる。主成分として用いる賦形剤としては、糖類や糖アルコール類などが好適に挙げられ、このような糖類や糖アルコール類としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース、D−ソルビトール、D−マンニトール、スクロース、マルトース、ラクトース、イソマルトース、パラチノース、マルツロース、ラクツロース、マルチトール、ラクチトール、パラチニット、キシリトール、エリスリトール、トレハロース等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、デンプン、結晶セルロース、粉末セルロースなどが挙げられる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、カルメロース、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、タルク、マクロゴールなどが挙げられる。結合剤としては、アラビアゴム、カルメロース、カルメロースナトリウム、ゼラチン、単シロップ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースなどが挙げられる。酸味料としては、クエン酸、酒石酸、乳酸、酢酸、リン酸などの有機酸とその塩類が挙げられる。甘味剤としては、アスパルテーム、グリチルリチン酸二カリウム、サッカリンナトリウム等が挙げられる。香料としては、L−メントール、カラメル、各種フルーツ系香料等が挙げられる。着色剤としては、酸化チタン、食用ベンガラ、タートラジン、インジゴカルミンなどが挙げられる。
【0018】
本発明の錠剤の被覆層は、前記薬物に前記賦形剤やその他の添加剤を混和し、内核素錠と同様の方法で製造することができる。このような錠剤の製造は、通常の有核錠の製造に使用されている有核打錠機を用いて行うことができる。打錠の際の圧力は、通常200〜1000kgf/cm、好ましくは250〜900kgf/cmである。内核と被覆層の重量比は、1:1.1〜1:20、好ましくは1:1.5〜1:10、さらに好ましくは1:2〜1:5である。錠剤全体の大きさは特に限定されないが、通常、直径(平面形状が円形でない場合は最大径)が7〜15mmである。
【0019】
本発明の錠剤は、硬度(kgf)が2〜15kgfになるように製造される。ここで本発明の錠剤の硬度は、通常用いられる錠剤の硬度測定装置(例えば、(株)菊水製作所製の錠剤重量・厚み・硬度測定器(商品名:TM5−5))により測定される値を意味し、錠剤が崩壊する際の圧力(kgf)で表される。このような所望の硬度は、打錠時の圧縮圧力、内核の成分などを調整することにより容易に得ることができる。このような範囲よりも硬度が低いと、製造、包装、流通の過程において錠剤の破損等が起こりやすくなり、またこのような範囲よりも硬度が高いと硬度が高すぎ、錠剤が噛み砕きにくくなる。
【0020】
なお、本発明では、薬物が光に不安定である場合に、前記で得られた錠剤をさらにコーティングすることができる。光に不安定な薬物としては、例えばビタミンA、ビタミンD、ビタミンK(メナテトレノン、フィトナジオンなど)、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、カルバマゼピン、ニフェジピン、ソファルコンなどが挙げられる。コーティングは、通常用いられるコーティング剤とコーティング装置を用いて行うことができる。コーティング剤としては、口腔内で溶解するものが好ましく、例えば、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体が好適に挙げられる。また、コーティング剤にマクロゴールや酸化チタンを添加することもできる。また、コーティング装置としては、例えば、錠剤コーティング装置、流動層造粒コーティング装置などを使用することができる。
【0021】
本発明において、口腔内速崩壊性とは、服用した際に口腔内において、外部の被覆層がすみやかに崩壊することを意味し、“すみやかに”とは具体的には45秒以内、好ましくは30秒以内である。
【実施例】
【0022】
以下に実施例、比較例および試験例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
[実施例1]
D−マンニトール(ロケットジャパン(株)製)300g、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達(株)製)10g、アスパルテーム(味の素(株)製)50g、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ(株)製)100gを造粒機(商品名:ハイスピードミキサーFS−2、深江パウテック(株)製)酒石酸(昭和化工(株)製)50gを精製水60gに溶解して得た造粒液110gを用いて造粒を行い、造粒物を乾燥後、整粒して整粒物を得た。得られた整粒物51部、カルボキシメチルスターチナトリウム(ロケットジャパン(株)製)10部、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ(株)製)10部、D−マンニトール(メルクジャパン(株)製)22部、炭酸水素ナトリウム(トクヤマ社)5部およびステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製)2部を混合し、内核用打錠用顆粒とした。ロータリー式打錠機(商品名:VIRG、(株)菊水製作所製)により、直径6mm、重量85mgの内核素錠を製造した。得られた内核素錠にファモチジン(コーア商事(株)製)60g、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ(株)製)1422g、カルメロース(五徳薬品(株)製)540gおよびステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製)18gを混合した混合末を1錠当たり340mg、有核打錠機(商品名:LIBRA2、(株)菊水製作所製)により、打錠圧力280kgf/cmにて圧縮被覆し、直径11mm、重量425mgの有核錠(1錠当たりファモチジン10mgを含む)を得た。
【0024】
[実施例2]
打錠圧力を540kgf/cmとする以外は、実施例1と同様にして、直径11mm、重量425mgの有核錠(1錠当たりファモチジン10mgを含む)を得た。
【0025】
[実施例3]
打錠圧力を650kgf/cmとする以外は、実施例1と同様にして、直径11mm、重量425mgの有核錠(1錠当たりファモチジン10mgを含む)を得た。
【0026】
[実施例4]
打錠圧力を770kgf/cmとする以外は、実施例1と同様にして、直径11mm、重量425mgの有核錠(1錠当たりファモチジン10mgを含む)を得た。
【0027】
[実施例5]
打錠圧力を880kgf/cmとする以外は、実施例1と同様にして、直径11mm、重量425mgの有核錠(1錠当たりファモチジン10mgを含む)を得た。
【0028】
[試験例1]
実施例1〜5で得られた有核錠について、以下の試験を実施した。
(1)有核錠20錠を用い、錠剤重量・厚み・硬度測定器(商品名:TM5−5、(株)菊水製作所製)により、錠剤の硬度を測定した。
(2)第十五改正日本薬局方の錠剤の摩損度試験法により錠剤摩損度を測定した。
(3)健常人被験者(各実施例に各3名)の口内に有核錠を含ませ、自然な状態で外部の被覆層の崩壊時間を確認した。実施例1〜5で得られた有核錠について各崩壊時間の平均値および標準偏差を求めた。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1から明らかなように、打錠圧力による増大により、硬度が10以上であっても極めて早い崩壊を示すことが確認された。また、圧力増大による崩壊性の遅延はほとんどみられなかった。
【0031】
[実施例6]
実施例5で得られた有核錠を、錠剤コーティング機(商品名:ハイコーターHCT−30、フロイント産業(株)製)により、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学(株)製)5部、マクロゴール6000(日本油脂(株)製)0.5部、酸化チタン(フロイント産業(株)製)4部、日本薬局方エタノール(コニシ(株)製)46.25部、精製水46.25部にて混合分散して得られたコーティング溶液にてコーティングし、重量435mgのコーティング有核錠(1錠当たりファモチジン10mgを含む)を得た。
【0032】
[試験例2]
実施例6のコーティング有核錠について以下の試験を実施した。
(1)有核錠20錠を用い、錠剤重量・厚み・硬度測定器(商品名:TM5−5、(株)菊水製作所製)により、錠剤の硬度を測定した。
(2)健常人被験者(3名)の口内に有核錠を含ませ、自然な状態で外部の被覆層の崩壊時間を確認した。実施例6で得られた有核錠について崩壊時間の平均値および標準偏差を求めた。結果を表2に示す。
【表2】

【0033】
コーティング工程では、有核錠の強度があるため、容易にコーティングすることができた。また、表2から明らかなように、コーティングした有核錠であっても、崩壊時間が30秒以内であった。
【0034】
[比較例1]
ファモチジン(コーア商事(株)製)30g、D−マンニトール(ロケットジャパン(株)製)205.5gを流動層造粒乾燥機(商品名:フローコーターFLO−1、フロイント産業(株)製)にて、精製水100gにデキストリン3gを溶解させた液103gを噴霧、造粒、乾燥し、造粒物とした。造粒物79.5部、カルメロース(五徳薬品(株)製)20部、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製)0.5部を混合し、打錠用剤を得た。ロータリー式打錠機(商品名:VIRG、(株)菊水製作所製)により、0.65tで直径7mm、重量100mgの口腔内速崩壊錠を得た。また、健常人被験者3名に、口内に含ませ、自然な状態で崩壊時間は平均18秒であった。
【0035】
[試験例3]
実施例5で得られた有核錠および比較例1で得られた口腔内速崩壊錠について、計5名のパネラーにより苦味の官能評価試験を実施した。有核錠については、口内で被覆層が崩壊した後、口腔内速崩壊錠については、口内で錠剤が崩壊した後の残存する苦味についての試験結果を示す。なお、官能評価は、苦味の強さを以下の基準により数値化して比較した。
(苦味の評価基準)
苦くない:1点、少し苦い:2点、苦い:3点、非常に苦い:4点
【0036】
【表3】

【0037】
表3から明らかなように、外部の被覆層が崩壊後、内核が残存し、発砲錠としての機能を果たすため、舌や口腔内周辺に残存する薬物による苦味が軽減されることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明により、口腔内での速崩壊性を損なうことなく、薬物の苦味を低減させる経口投与用錠剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明の錠剤の断面図を示す。
【符号の説明】
【0040】
1 内核
2 薬物
3 被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内核および該内核を被覆する被覆層からなり、該内核は薬物を含有せずかつ咀嚼可能であり、該被覆層は薬物を含有しかつ口腔内速崩性であることを特徴とする経口投与用錠剤。
【請求項2】
内核が、チュアブル錠である請求項1記載の経口投与用錠剤。
【請求項3】
薬物が苦味を有する薬物であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の経口投与用錠剤。
【請求項4】
被覆層の崩壊時間が30秒以内である請求項1〜3のいずれかに記載の経口投与用錠剤。
【請求項5】
錠剤の硬度が2〜15kgfである請求項1〜4のいずれかに記載の経口投与用錠剤。
【請求項6】
さらに、被覆層の表面がコーティングされてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の経口投与用錠剤。

【図1】
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【公開番号】特開2008−280316(P2008−280316A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128521(P2007−128521)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(592235075)大正薬品工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】