説明

経時変化型示温ラベル

【課題】ワックスなどの化学物質の熱による融解作用を利用し、設定温度超過の際に発色紙を発色させる設定温度超過の事実を表示する示温ラベルにおいては、測定対象物が経時的に受ける熱の総量(累積値)の表示はなかなかむずかしく、実用に耐えるものは存在していなかった。
【構成】任意の設定温度で固体から液体に変化する化学物質からなるシート状の感温材2をベースフィルム1上に載置せしめると共に、一方が彩色面4となっており、前記化学物質が浸み込むことにより、半透明化し、他方の面から彩色面4が透けて見える様になるシート状の発色材3を、その一部が前記感温材2に重なる様に、彩色面4を下側にしてベースフィルム1上に重畳し、その上を表面フィルム5で被覆せしめて示温ラベルを構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は経時変化型示温ラベル、詳しくは対象物が経時的に受ける熱の総量を表示することが出来る経時変化型示温ラベルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
温度管理を必要とする対象物の中には、単なる時間毎の温度変化やある瞬間における温度情報ではなく、対象物が経時的に受ける熱の総量(累積値)を知る必要がある場合もある。
【0003】
たとえば、食品工業のある分野においては、品質保持の為、ある設定温度以上で、かつ一定時間以上その温度に晒されぬ様にしなければならないものがあり、その為には加えられた熱の総量(累積値)を知ることが必要となる。又、ある種の電気機器においては、継続的な稼動によって機器内に発生した熱の総量(累積値)がある一定値を超えた場合、機能劣化の可能性ありとして精密検査することが定められているものもある。更に、半導体ウェハーの製造過程においては、プラズマ雰囲気中において半導体ウェハーの各部分に加わる熱量の累積値を試験により確認することも行われている。
【0004】
この様に、対象物が経時的に受ける熱の総量(累積値)を知ることは大変重要であり、従来からその為の測定具がいくつか提案されている。
【特許文献1】なし
【非特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワックスなどの化学物質の熱による融解作用を利用し、設定温度超過の際に発色紙を発色させて設定温度超過の事実を表示する示温ラベルは、対象物の表面に簡単に貼付出来ると共に低コストで調達出来、検知精度も比較的すぐれているので、最近では各種産業分野において広く使用される様になっており、これら示温ラベルにおいても、対象物が経時的に受ける熱の総量(累積値)を表示出来る様にする試みがなされている。
【0006】
しかしながら、従来から存在する経時的に受ける熱の総量(累積値)を表示出来る示温ラベルの多くは、発色体の色調の変化によって累積値を表示するものがほとんどであり、表示が不鮮明で、測定精度も低く、到底実用に耐え得るものではなかった。又、測定時間を長くすればする程、測定精度が低下する性質があり、長時間にわたり精度の高い測定値を維持するのはなかなかむずかしかった。
【0007】
本発明者は、対象物が経時的に受ける熱の総量(累積値)の測定に関する従来の問題点を解決すべく研究を行った結果、熱の累積値を高精度かつ鮮明に表示することが出来ると共に、測定時間を自由に設定できる極めて便利な示温ラベルを開発することに成功し、本発明としてここに提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
任意の設定温度で固体から液体に変化する化学物質からなるシート状の感温材2をベースフィルム1上に設置せしめると共に、前記化学物質が浸み込むことにより発色するシート状の吸収発色材3を、その一部が前記感温材2に重なる様にベースフィルム1上に重畳し、その上を表面フィルム5で被覆せしめて経時変化型示温ラベルを構成することにより、又、それぞれ異なった任意の設定温度で固体から液体に変化する化学物質からなるシート状をなした複数の感温材2をベースフィルム1上に間隔をあけて並列状態で設置せしめると共に、前記化学物質が浸み込むことにより発色する短冊状の吸収発色材3をその一端が前記感温材2に重なる様にベースフィルム1上に平行に設置せしめ、その上を表面フィルム5で被覆して経時変化型示温ラベルを構成することにより、それぞれ上記課題を解決した。。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る経時変化型示温ラベルにおいては、従来のものの様に発色体3の色調の変化ではなく、発色体3の発色部分6の面積の変化によって超過温度の累積値を知るようにしたので、より視認しやすく、各種機器類の温度管理をより正確かつ迅速に実施出来る効果を有する。又、吸収発色体3の長さを長くすることにより、累積時間を自由に延長させることが出来、従来のものにおいては不可能であった長時間にわたる累積値の測定が可能となり、示温ラベルの適用分野をより拡大させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
吸収発色材3の一部にのみ重なる様に、感温材2を吸収発色材3に部分的に重ね合せ、融解した化学物質が序々に吸収発色材3に浸み込む様にしたことに最大の特徴が存する。
【実施例1】
【0011】
図1はこの発明に係る経時変化型示温ラベルの実施例1の断面図、図2は図1における矢視A−A線断面図である。
【0012】
図中1はベースフィルムであり、裏面には粘着材が塗布され、図示を省略した対象物の表面に粘着せしめられる様になっている。そして、このベースフィルム1の表面側には、矩形をなしたシート状の感温材2が設置されている。
【0013】
感温材2は、あらかじめ定められた設定温度で固体から液体に変化する石油系ワックスなどの化学物質を吸い取り紙や和紙などの薄いシート状吸収体に浸み込ませたものであるが、石油系ワックスなどの化学物質自体を薄いシート状に成形したものであっても良い。
【0014】
一方、図中3は、一方の面に色彩が施された色紙(いろがみ)からなる短冊状をなした吸収発色材であり、その色彩面4を裏側にし、その長手方向一端寄りの部分が前記感温材2に重畳する様に、ベースフィルム1上に設置されており、その上からベースフィルム1全体を覆う様に透明な表面フィルム5が重畳されている。
【0015】
この実施例1は上述の通りの構成を有するものであり、あらかじめ設定された温度以上になると、感温材2を構成している石油系ワックスなどの化学物質が融解し、吸収発色材3中に浸み込み、吸収発色材3の表面側に位置している不透明部分を半透明化し、裏面側の彩色面4を表面側から透けて見える様にして設定温度超過の事実を表示する。
【0016】
この際、感温材2は短冊状をなした吸収発色材3の長手方向側端付近に設置されているので、融解した化学物質は時間の経過と共に吸収発色材3の長手方向他端側へ序々に浸み出し、浸み込み面積を増して行き、図3に示す様に発色部分6が序々に拡大するので、設定温度超過の累積時間を吸収発色材3の発色部分6の大きさから知ることが出来る。
【0017】
なお、設定温度超過後に、設定温度以下に対象物の温度が低下すると、それまで融解して液状だった化学物質は固体に戻る為、吸収発色材3への浸み込みはその時点で一時停止し、発色部分6の拡大はストップする。その後、再び設定温度を超過すると化学物質は再び融解し、吸収発色材3への浸み込みが再開され、発色部分6は増加することになる。この様に、設定温度超過、設定温度以下への低下を繰り返しても、吸収発色体3は設定温度超過の累積値に応じて発色部分6の面積を断続的に増加させ、その累積値を逐次表示する。
【0018】
なお、上記実施例においては、吸収発色材3には色紙(いろがみ)を用いたが、図4に示すものの様に、彩色されていない和紙や吸い取り紙などの吸収機能を持った吸収紙を吸収発色材3として用いると共に、感温材2を構成する化学物質として着色された化学物質を用いても良く、その場合には、図5に示す様に、あらかじめ設定された温度以上になると、感温材2を構成している着色された化学物質が融解し、吸収発色材3中に浸み込み、吸収発色材3を着色して発色部分6を形成して設定温度超過の事実を表示する。
【0019】
なお、用途によっては、設定温度超過の累積値の変化状況の把握は特に必要ではなく、累積値が予め設定された限界を超過した事実だけを知れば良い場合もあるが、その場合には、図6及び図7に示す様に、所定位置に透明窓8が形成された不透明な表面フィルム5を用い、あらかじめ設定された任意の超過温度累積値に相当する吸収発色材3の発色位置に前記透明窓8が一致する様に表面フィルム5をベースフィルム1上に重畳すれば良い。
【0020】
又、長時間にわたる超過温度累積値を知りたい場合もあるが、その場合には、図8に示す様に、吸収発色材3をつづら折り状に形成したり、図9に示す様に渦巻き状に形成し、その一方の端末に感温材2を重畳する様にしても良い。更に、図10に示す様に、感温材2と吸収紙10とを隔離し、その間を融解した化学物質が流動出来る連絡路11で連結すると共に、吸収紙10に吸収発色材3の一端を重畳し、設定温度超過の際に、融解した化学物質を連絡路11を通して一旦吸収紙10に浸み込ませ、この吸収紙10を介して吸収発色材3に融解した化学物質を供給する様にしても良い。
【0021】
一方、超過温度累積値の表示を視覚的により分かりやすくしたい場合には、図11及び図12に示す様に、感温材2をドーナツ状に形成し、その上に円盤状をなした吸収発色材3を同心円状に重畳しても良く、この場合には超過温度累積値に応じてリング状の発色部分6の幅が大きくなることにより、その値をより明瞭に知ることが出来る様になる。
【0022】
この様に、この実施例1に係る経時変化型示温ラベルにおいては、従来のものの様に吸収発色体3の色調の変化ではなく、吸収発色体3の発色部分6の面積の変化によって超過温度累積値を知る様にしたので、より視認しやすく、各種機器類の温度管理を正確かつ迅速に実施出来る効果を有する。又、吸収発色体3の長さを長くしたり、吸収紙10の大きさを大きくすることにより、累積時間を自由に延長させることが出来、従来のものにおいては、不可能であった長時間にわたる累積値の測定が可能となり、示温ラベルの適用分野をより拡大させることが出来る効果を有する。
【実施例2】
【0023】
図13はこの発明に係る経時変化型示温ラベルの実施例2の平面図であり、この実施例2においても、感温材2及び吸収発色材3自体は、前述の実施例1におけるそれと同じものであるが、この実施例2においては、例えば40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃という様に、それぞれ異なった任意の設定温度で融解を開始する複数の感温材2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i、2jを用い、これらをベースフィルム1上に間隔をあけて並列状態で設置せしめ、短冊状をなした吸収発色材3a、3b、3c、3d、2e、2f、2g、2h、2i、2jの長手方向一端寄りの部分を前記感温材2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i、2jに重畳する様にベースフィルム1上に平行状態で設置し、その上からベースフィルム1全体を覆う様に透明な表面フィルム5を重畳している。
【0024】
この実施例2においては、上述の通り、感温材3a、3b、3c、3d、2e、2f、2g、2h、2i、2jはそれぞれ40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃で融解を開始する様になっているので、たとえば、対象物の温度が40℃を超えたときには、図14に示す様に吸収発色材3aの発色部分6aが時間の経過と共に拡大して40℃超過の累積時間を表示し、同様に対象物の温度が65℃を超えたときには図15に示す様に、85℃を超えたときには図16に示す様に、それぞれ発色部分6が拡大してそれぞれの温度の累積値を表示する。従って、このグラフ状の発色部分6の大きさ、全体の形状や傾きなどを分析することにより、複数の設定温度超過の累積時間だけではなく、対象物に加わった熱エネルギーの総和を簡単かつ正確に知ることが出来、今まで不可能であったより精緻な温度管理や温度試験が可能となる。なお、上述の設定温度40℃、50℃、60℃、70℃、75℃、80℃、85℃は、あくまで例示に過ぎず、自由に設定温度を決定出来ることは言うまでもない。又、設定温度が10段階に限らないことももちろんであり、2段階以上何段階の設定温度としてもよいことは当然である。
【0025】
更に、上述の図13に示す実施例2においては、透明な表面フィルム5を用いたが、図17及び図18に示す様に、吸収発色材3a、3b、3c、3dがそれぞれ設置されている位置に対応する箇所にスリット状の透明窓12a、12b、12c、12dが平行に形成された不透明な表面フィルム5を用い、前記透明窓12a、12b、12c、12dがそれぞれ対応する吸収発色材3a、3b、3c、3dにかぶさる様にベースフィルム1に重畳しても良く、この様にした場合には、吸収発色材3a、3b、3c、3dの発色部分6a、6b、6c、6dはそれぞれ累積時間に応じて棒グラフ状に伸びていくので、その視認性がより一層向上する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
食品産業分野や電気機器分野など、温度管理を必要とするあらゆる産業分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明に係る経時変化型示温ラベルの実施例1の平面図。
【図2】図1における矢視A−A線断面図。
【図3】同じく、設定温度超過により、発色材3が発色した状態の平面図。
【図4】感温材2と吸収発色材3の材質を変えた実施例の平面図。
【図5】同じく、その発色状態の平面図。
【図6】他の実施例の一部を切欠いて描いた平面図。
【図7】同じく、表面フィルム5を分離して描いたその斜視図。
【図8】同じく、超過温度累積値をより長時間にわたり測定出来る様にした実施例の平面図。
【図9】吸収発色材3を渦巻き状にした実施例の平面図。
【図10】同じく、超過温度累積値をより長時間にわたり測定出来る様にした他の実施例の平面図。
【図11】視認性を高めた実施例の平面図。
【図12】図8における矢視B−B線断面図。
【図13】この発明に係る経時変化型示温ラベルの実施例2の平面図。
【図14】同じく、吸収発色材3が発色した状態の平面図。
【図15】同じく、発色が進行した状態の平面図。
【図16】同じく、発色が更に進行した状態の平面図。
【図17】スリット状の透明窓8を用いた実施例2の平面図。
【図18】同じく、表面フィルム5を分離して描いたその斜視図。
【符号の説明】
【0028】
1 ベースフィルム
2 感温材
3 吸収発色材
4 彩色面
5 表面フィルム
6 発色部分
8 透明窓
10 吸収紙
11 連絡路










【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の設定温度で固体から液体に変化する化学物質からなるシート状の感温材2をベースフィルム1上に設置せしめると共に、前記化学物質が浸み込むことにより発色するシート状の吸収発色材3を、その一部が前記感温材2に重なる様にベースフィルム1上に重畳し、その上を表面フィルム5で被覆せしめたことを特徴とする経時変化型示温ラベル。
【請求項2】
それぞれ異なった任意の設定温度で固体から液体に変化する化学物質からなるシート状をなした複数の感温材2をベースフィルム1上に間隔をあけて並列状態で設置せしめると共に、前記化学物質が浸み込むことにより発色する短冊状の吸収発色材3を、その一端が前記感温材2に重なる様にベースフィルム1上に平行に設置せしめ、その上を表面フィルム5で被覆したことを特徴とする経時変化型示温ラベル。
【請求項3】
吸収発色材3として色紙(いろがみ)を用い、その彩色面4を下側にしてベースフィルム1上に重畳し、感温材2中の化学物質が浸み込むことにより、半透明化して表面側から彩色面4が透けて見える様にしたことを特徴とする請求項1又は2記載の経時変化型示温ラベル。
【請求項4】
感温材2を構成する化学物質として着色された化学物質を用いると共に、吸収発色材3として彩色されていない吸収紙を用い、着色された化学物質が吸収発色材3に浸み込むことにより、吸収発色材3を発色させる様にしたことを特徴とする請求項1又は2記載の経時変化型示温ラベル。
【請求項5】
表面フィルム5が透明であることを特徴とする請求項1又は2記載の経時変化型示温ラベル。
【請求項6】
所定位置に透明窓8が形成された不透明な表面フィルム5を、あらかじめ設定された任意の超過温度累積値に相当する吸収発色材3の発色位置に前記透明窓8が一致する様にベースフィルム1上に重畳したことを特徴とする請求項1記載の経時変化型示温ラベル。
【請求項7】
吸収発色材3がつづら折り状に屈曲せしめられており、その一方の末端に感温材2が重畳されていることを特徴とする請求項1記載の経時変化型示温ラベル。
【請求項8】
吸収発色材3が渦巻き状に形成せしめられており、その一方の末端に感温材2が重畳されていることを特徴とする請求項1記載の経時変化型示温ラベル。
【請求項9】
感温材2がドーナツ状に形成されており、その上に円盤状の吸収発色材3が同心円状に重畳されていることを特徴とする請求項1記載の経時変化型示温ラベル。
【請求項10】
感温材2と吸収紙10とがベースフィルム1上で隔離されており、前記感温材2と吸収紙10との間に融解した化学物質が流動出来る連絡路11が形成されていると共に、吸収紙10に吸収発色材3の一端が重畳されていることを特徴とする請求項1記載の経時変化型示温ラベル。
【請求項11】
任意の設定温度で固体から液体に変化する化学物質が石油系ワックスであることを特徴とする請求項1又は2記載の経時変化型示温ラベル。
【請求項12】
スリット状の透明窓8が複数条平行に形成されている不透明な表面フィルム5を、前記透明窓8がそれぞれ対応する吸収発色材3にかぶさる様にベースフィルム1上に重畳したことを特徴とする請求項2記載の経時変化型示温ラベル。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−121017(P2007−121017A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311127(P2005−311127)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(599140781)株式会社ジークエスト (16)
【Fターム(参考)】