説明

経糸・緯条織物

【課題】 表面には出ない経糸に抗菌処理を施すことで、抗菌作用を持続させることができる経糸・緯条からなる織物を提供する。
【解決手段】 経糸の表面と裏面を経糸と直交する方向に所定間隔ごとに交叉させて通した緯条で交互に表面と裏面を覆うように畳織りで織成した経糸・緯条織物において、経糸を抗菌処理したことを特徴とする経糸・緯条織物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持続性の高い抗菌処理がされた経糸・緯条織物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
経糸を芯に緯条を交互に織り込む畳織りと称される経糸・緯条織物(以下、織物)は、畳表や上敷き或いは敷物として利用されている。ところが、緯条に天然素材であるい草を用いたものは、ダニや黴といったものが発生することが知られており、これを防ぐために抗菌処理が施されている(抗菌以外にも消臭等も目的とされている)。従来の抗菌処理は、抗菌液(殺菌材)を表面処理用機械のスプレー液等に混ぜて散布していた。
【0003】
これであると、抗菌液は緯条の表面に付着するのみであるから、この上を人が歩いたり、座ったりすると、擦れて剥離してしまい、その効果は短期で薄れてしまう。また、抗菌液は緯条表面からも蒸散するから、これも効果の短期消滅の原因になる。
【0004】
一方で、抗菌液は、一般的には化学物質であるから、人体や環境に悪影響を与えることが心配される。このため、最近では、天然資材からなる抗菌液が使用されるようになり、その代表格として竹を乾留する際に生成する竹酢液がある。しかし、抗菌液としてこれら天然資材を使用したとしても、緯条表面に散布しただけでは、上記と同様に効果は短期に消滅する。
【特許文献1】WO2003/002808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような課題を解決するものであり、表面には出ない経糸に竹酢液による抗菌処理を施すことで、効果の長持ちを期したものである。なお、繊維(糸)に竹酢液を浸潤させて抗菌処理を施す案件は、上記特許文献1に見られるが、本発明は、竹酢液付着の繊維を得るのではなく、この繊維を利用して優位な織物を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、経糸の表面と裏面を経糸と直交する方向に所定間隔ごとに交叉させて通した緯条で交互に表面と裏面を覆うように畳織りで織成した経糸・緯条織物において、経糸を抗菌処理したことを特徴とする経糸・緯条織物を提供するとともに、これにおいて、請求項2に記載した、抗菌処理が経糸を竹酢液に浸漬した手段、請求項3に記載した、経糸が麻、木綿、といった天然素材である手段、請求項4に記載した、緯条がい草、ペーパーパルプといった天然素材又はポリプロピレンの人工素材である手段を提供する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の手段により、経糸は緯条の芯材となって中に隠れるものであるから、表面に出て物理的刺激を受けることはない。したがって、物理的な刺激によって経糸に施された抗菌液が剥離することはない。また、経糸は緯条で周囲を被覆されているから、これに浸潤した抗菌液の蒸散も防がれる。したがって、抗菌作用の持続性が期待される。また、請求項2〜4の手段によれば、人体や環境に悪影響を与えることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、図1は畳織りと称される織成法で織られた織物(本例では畳表)の断面図、図2は一部平面図であるが、周知のとおり、畳織りにおける織物は、経糸1を芯材としてこの表裏面を緯条2で覆うように織成したものである。この場合、緯条2は経糸1を一本又は二本おいて表裏が逆になるように交叉させている。また、緯条2同士は強く圧接し、経糸1を挟んで上下に二条が重なるようになっており、経糸1は外部からは見えないようになっている。
【0009】
なお,以上の経糸1の素材としては、木綿や麻といった天然素材のものが多いが、化繊等の人工素材のものもある。また,緯条2の素材としては、天然素材であるい草がもっとも多いが、ペーパーパルプの場合もある。さらに、ポリプロピレン(PP)といった人工素材のものを使用することもある。
【0010】
本発明では、この経糸1を竹酢液で抗菌処理するのである。具体的には、竹片を酸素を遮断した状態で蒸し焼きにし、そのガスを冷却させて得た液体(竹酢液)に経糸1を浸漬している。この場合、竹酢液を50〜100℃に熱し(好適には50〜70℃、最適には60℃程度)、この中に経糸1を約30分程度浸漬(どぶ漬け)し、これを水洗いした後、乾燥機で乾燥させたものを経糸1としてこれに緯条2を織成して織物とする。
【0011】
以上の方法で抗菌処理した織物を実際に床に敷いてその抗菌性を調べてみた。テストは、竹酢液に60℃で30分どぶ漬けした経糸を用いた発明品(織物)に菌を接種し、菌体内に普遍的に存在するATP(アデノシン三燐酸)の時間ごとの増加数を測定する菌液吸収法(JIS L 1902)による方法で行ってみた。下記の表1は発明品と従来品(抗菌液を散布しただけのもの)との比較である。
【0012】
【表1】

以上より、本発明に係る織物は1年経過後でも、抗菌効果(菌数の増大なし)は依然として維持されており、この維持は更に持続されると推察される。これに対して従来品は6ケ月も経過すると著しく低下し、1年後ではほぼ消失している。これは、竹酢液(抗菌液)の離散は摩擦によるものが主因であるからと思われる。
【0013】
以上、本発明の基本的な実施の形態を説明したが、本発明はこの他に種々改変された形態をとることがある。具体的には、抗菌液が竹酢液等の天然素材であることは絶対的な条件ではなく、化学物質であってもよい。また、織物の織成方法は畳織りに限定されるものではなく、双目織りや袋織りのようなものであってもよい。袋織りは縦糸が表面に出る部分が多いが、それでも緯条の中に隠れる部分もあり、この点で抗菌作用の持続性は期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】畳織りの織物の断面図である。
【図2】畳織りの織物の一部平面図でる。
【符号の説明】
【0015】
1 経糸
2 緯条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸の表面と裏面を経糸と直交する方向に所定間隔ごとに交叉させて通した緯条で交互に表面と裏面を覆うように畳織りで織成した経糸・緯条織物において、経糸を抗菌処理したことを特徴とする経糸・緯条織物。
【請求項2】
抗菌処理が経糸を竹酢液に浸漬したものである請求項1の経糸・緯条織物。
【請求項3】
経糸が麻、木綿、といった天然素材である請求項1又は2の経糸・緯条織物。
【請求項4】
緯条がい草、ペーパーパルプといった天然素材又はポリプロピレンの人工素材である請求項1〜3いずれかの経糸・緯条織物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−303472(P2008−303472A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148770(P2007−148770)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(500099353)株式会社大島屋 (1)
【Fターム(参考)】