説明

経腔的に挿入可能な熱交換カテーテルを用いて患者の体温を制御する方法およびシステム

【課題】神経保護のための脳領域の局所低体温の誘発状態を含む、患者またはその選択された領域の温度を変えるための方法および装置を提供する。
【解決手段】温度は、内部を流体熱交換媒体が循環する留置熱交換カテーテル24を使用して、変えることができるように、使い捨て可能な熱交換カセットが、カテーテルの循環流れラインに取り付けられ、熱交換カセットは、様々な再使用可能な制御ユニット22内のキャビティに係合するよう寸法決めされ、制御ユニットは、加熱器/冷却器装置と、ユーザ入力装置と、身体およびシステムの周りの様々なセンサ36,38,40からの入力を受信するよう接続されたプロセッサを含み、加熱器/冷却器装置は、極性に基づいて加熱と冷却の両方が可能であり、行過ぎることなく体温を上昇させ下降させるために温度制御する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に医療用具および医療方法に関し、より詳細には、患者の身体の少なくとも一部を冷却しまたは温めるために患者の体内に挿入した熱交換カテーテル内を循環する熱交換流体の温度および流れを制御する、プログラム可能なマイクロプロセッサを用いた制御器および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の環境下において、健康な人体の体温調節機構は身体を約37℃(98.6°F)という一定の温度に維持するように働き、この状態はときどき正常体温と呼ばれる。正常体温を維持するために、体温調節機構は、人体から失われる熱の代わりに体内の代謝活性によって発生する同量の熱を使用するように作用する。極度の環境暴露や麻酔などの様々な理由で、人体の体温は通常よりも低くなる場合があり、この状態は、低体温として知られている。そのような偶発的な低体温は一般に危険な状態であり、例えば体温が30℃以下まで低下するといった重症の場合には、心不整脈や正常な代謝の妨害など、重篤な予後を呈する可能性がある。低体温の期間が長いと、患者の免疫応答が損なわれたり感染率が上昇する可能性もある。
【0003】
偶発的低体温を治療する簡単な方法は、非常に早い時期から知られている。そのような方法には、患者を毛布で包むこと、口で温かい流体を与えること、そして患者を温水浴させることが含まれる。低体温がそれほど重症ではない場合は、これらの方法が有効と考えられる。しかし、患者を毛布で包むことは、患者自身の身体がその身体を再び温める熱を発生させることができるかどうかに左右される。口で温かい流体を与えることは、患者の嚥下能力に依存するものであり、また、飲み込む液体の温度および限られた時間内に与えることができる流体の量に限度がある。温水に患者を浸すことは、しばしば実際的ではなく、特に患者が同時に手術を受けまたは何らかの医療処置を受けた場合に無理がある。
【0004】
ごく最近では、患者の皮膚に熱を与える加温ブランケットまたは加温ランプを利用することによって、低体温を治療することができる。しかし、患者の皮膚に与えられた熱は、遅くて非効率的な伝導または放射によって、皮膚を通してその下にある毛細血管床まで伝達させなければならず、毛細血管床に流れる血流は、身体の体温調節応答によって止められる可能性があり、したがってそのような機構は、患者の身体の中心に熱を与えるのに効果がないと考えられる。
【0005】
極限状況では、低体温の患者に熱を与えるのに現代的な技法を使用することができる。IV注射を介して熱い液体を患者に注入することができ、または、シャントを患者の内部に配置して、患者からの血液を、ヒータを含む心肺バイパス(CPB)機械などの外部機械に通すことができる。このように、血液を患者から取り出して外部で加熱し、さらに、もとの患者へと送り返すことができる。そのような思い切った手段には、その有効性に明らかな利点があるが、健康な組織への侵襲性に関しては明らかな欠点がある。
【0006】
低体温と同様に、偶発的高体温は、ときどき致命的にもなる重篤状態である。特に高体温は、それ自体で、または卒中などその他の健康上の問題と相俟って、神経を破壊するものであることがわかっており、その場合、正常な温度を超えた体温と卒中または外傷性脳損傷とが相俟って、劇的に悪い結果をもたらすことが示されている。
【0007】
低体温の場合と同様に、高体温を治療する簡単な方法の対案として、冷水浴や冷却用のブランケット、アスピリンやタイレノールなどの解熱剤などがあり、より効果的であるが複雑で侵襲性の手段として、冷却呼吸ガスや冷浸剤、CPB中での血液の冷却などもある。しかしこれらの方法は、低体温に関連して述べたように制限を受け易く複雑な問題を引き起こし易い。低体温と高体温は共に、場合によっては有害で治療の必要があり、その他の場合には、高体温、特に低体温は治療の役に立ち、または別の点で有利と考えられ、したがって意図的に誘発させる場合がある。例えば、心臓手術での心停止または心不全の期間によって、脳損傷またはその他の神経損傷が生じる可能性がある。低体温は、医学界において、公に認められた神経保護剤として認識されており、したがって患者は、開心術中にしばしば人工低体温状態に保たれる。同様に低体温は、神経外科において、神経保護剤として人工的に誘発させる。低体温には、頭部外傷や脊髄外傷、脳出血、虚血発作などの、ある特定の神経疾患または神経障害の治療に関し、またはそのような神経疾患または神経障害による治療の副作用を最小限に抑えることに関し、同様に有利な保護能力もあると考えられる。さらに、開心術や動脈瘤修復術、血管内動脈瘤修復処置、脊髄手術、あるいは脳、脊髄、または生命枢要器への血流が中断されまたは妨げられる可能性があるその他の外科手術など、ある特定の外科的または介入的な処置による副作用を促進させまたは最小限に抑えるため、全身または局所的に低体温を誘発させることが望ましいこともある。例えば低体温は、心筋梗塞(MI)後の心筋組織を保護するのに有利であることもわかっている。
【0008】
低体温または高体温を意図的に誘発させる他、患者が正常体温に、すなわち約37℃という正常な体温に維持されるよう、患者の体温を制御することが望ましいこともある。例えば全身麻酔をかけた患者の場合、身体の正常な体温調節中枢およびその機構が十分に機能しない可能性があり、したがって麻酔医は、熱を直接加えまたは取り除くことによって患者の体温を直接制御したいと考える場合がある。同様に患者は、例えば大手術をしている間に大量の熱を周囲に放出する可能性があり、したがって患者の身体は、助けを受けなければ、失われた熱を補うのに十分な熱を生成することができない。さらに患者は、病気にかかりまたは外傷を受ける可能性があり、あるいは、感染または炎症の場合のように、患者の身体に導入されて設定温度を上昇させ、その結果発熱を引き起こす、ある特定の物質を有する可能性がある。したがって助けを受けない身体は温度を37℃以上に維持するように機能し、表面冷却は、身体の体温調節活性を抑制して正常体温を再度確立するのに効果がない場合がある。
【0009】
患者の全身の温度に影響を与えることを目的とする方法には、患者の温度に影響を与える上述の方法しかない。しかし哺乳動物の身体は、一般に、正常体温で最も効率的に機能する。したがって、脳や心臓など身体の一部を低体温に維持しつつ、身体の残りの部分を正常体温に維持することによって、例えば脳神経の保護や心筋の保護のように標的組織を保護することができると共に、身体の残りの部分を正常体温で機能させることができる。そのような用途に利用できる可能性がある方法には、明らかな利点がある。
【0010】
一部では、表面に熱を加えることが不十分であることを受けて、内的手段により患者の身体に熱を加える方法が開発された。例えば、患者から取り出した血液を、心肺バイパス(CPB)システムを通して循環させ、加熱しまたは冷却し、再び患者の身体に導入することができる。このCPB法は、素早くかつ効果的に患者の血液に熱を加えまたは除去することができるが、複雑な装置と高度な技能を有する操作者のチームが必要な、非常に侵襲性の高い医療処置を伴うという欠点があり、一般に外科的状況でしか利用することができない。またCPB法は、血液を機械的にポンプ給送する必要があり、一般に血液組織に大きいダメージを与え易い。
【0011】
外付けの機械ポンプで血液をポンプ給送することなく身体の中心に熱を加える手段が提案されている。例えば、患者の血流中に配置された熱交換カテーテルを用いて低体温または高体温を治療する方法が、Ginsburgの特許文献1に記載されており、その完全な開示を本明細書に援用する。そのようなシステムを制御する手段は、やはりGinsburgの特許文献2に開示されており、その完全な開示を本明細書に援用する。そのような制御された脈管間温度制御のためのその他のシステムがGinsburg他の特許文献3に開示されており、その完全な開示を本明細書に援用する。これらの特許(および刊行物)は、熱交換フィンを備えたバルーンを含む熱交換領域を有する熱交換カテーテルを患者の血流に挿入し、バルーン内に熱交換流体を循環させながら、バルーンを血液に接触させて血流に熱を加えまたは除去することによって、低体温を治療しまたは誘発させる方法を開示している。(本明細書で使用するバルーンは、加圧下で容易に膨張し真空中で潰れる構造である。)
【0012】
カテーテル内を循環する流体の温度を使用して、隣接する組織を冷却しまたはカテーテルの温度を調節するいくつかのカテーテル・システムが、公表された技術に示されている。そのようなカテーテルの中には、熱交換流体供給用のリザーバまたは同様のタンクを利用するものがある。例えば、Datoの特許文献4、Imran他の特許文献5、およびSaab他の特許文献6は、タンクまたはリザーバからの循環熱交換流体を有するカテーテルを開示している。しかしそのような配置構成を、血流中に配置されたカテーテルに使用する場合、一般に流体供給源を、使用するたびに滅菌する必要があり、かなりの熱量を含む大量の流体の温度を迅速に変更することが難しくなる。Neilson他の特許文献7は、使い捨て可能なカセットを有する熱療法カテーテルに液体冷却剤を供給し、その液体の温度を別個の制御ユニットによって制御するシステムを開示する。Neilsonの配置構成では、冷却板に対して保持された封止済みリザーバ内の曲がりくねったチャネル内を、液体冷却剤が通過する。封止済みリザーバとは別個のモジュールによって、冷却剤が通過する流体チャンバが画定され、この流体チャンバの外にある温度および圧力センサが、内部のそれぞれの冷却剤パラメータをモニタ(監視)する。モニタされた冷却剤パラメータを使用して、冷却板と、可撓性コンジットを通して冷却剤を熱療法カテーテルへと導く蠕動ポンプの動作を制御する。意図される用途に適していることに疑いの余地はないが、Neilson他に開示されているシステムは、使い易さ、患者の体温からのフィードバック制御、および血管内温度調節カテーテルの迅速な温度調節の点で、最適ではない。
【0013】
留置カテーテルを冷却するための別のシステムが、Phillips他の特許文献8に開示されている。冷却剤流体は、一群の中空糸を有して熱電式冷却器内に挟まれた熱交換器内を通過する。患者の、ある位置での温度をモニタし、所望の患者の温度を制御器に入力する。制御器は、これら2つの感知された温度と、経験的に求められた乗数を利用した特定の論理を使用して、患者の温度の時間当たりの所望の変化率を設定する。制御器は、熱電式冷却器およびポンプを作動させて、患者の温度を調節する。冷却剤の温度が非常に低い場合、熱電式冷却器の極性が逆転して加熱をもたらす可能性がある。その場合も、特に中空糸熱交換器に関連する圧力損失と、付随する流動容量の低下を考慮すると、このシステムは特に最適というわけではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,486,208号明細書
【特許文献2】米国特許第5,837,003号明細書
【特許文献3】国際公開00/10494号
【特許文献4】米国特許第3,425,419号明細書
【特許文献5】米国特許第5,423,811号明細書
【特許文献6】米国特許第5,624,392号明細書
【特許文献7】米国特許第5,733,319号明細書
【特許文献8】米国特許第6,019,783号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前述の理由で、従来技術の方法の不十分な点を回避しながら、効果的かつ効率的な手法で患者の体温を制御するのに使用されるカテーテルへの流体供給に熱を加えまたは除去する迅速で効果的な手段が求められている。特に、患者の温度または患者の標的組織からのフィードバックに基づいて、使い捨て可能な流体供給源を迅速に、効率的に、かつ制御可能に調節する流体供給源が、非常に有利であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様では、リザーバ・セクション(貯蔵器部)が、リザーバ内の流体レベルを検出する手段を備えており、リザーバ内の比較的透明な窓または壁部の内側に隣接してリザーバ・セクション内に取り付けられた少なくとも1つのプリズムと、窓の外側に隣接して再使用可能な主制御ユニットに取り付けられた少なくとも1つの光ビーム源および少なくとも1つの光ビーム・センサを含んでいる。1つの特定の実施形態では、流体レベル検出器が、リザーバ内に取り付けたプリズムと、光ビーム源と、光ビーム・センサを含んでいる。プリズムは回折面を有し、光ビーム源は、光ビームをその面に向ける。プリズムは、回折面が空気に接触したときに光ビームを光ビーム・センサに向けて反射させ、センサが信号を生成するように、構成される。同様に回折面が流体に接触すると、光ビームはセンサに向かって反射せず、センサは信号を生成しない。
【0017】
作動中、光ビームはリザーバ・セクションを通り、その曲がった長さに沿って特定の点でプリズムに対して向けて送られる。センサは、反射ビームの有無を検出するように位置付けられる。流体リザーバが満たされていて、流体レベルが光ビームの衝突点よりも高い所定の高さにある限り、その点でのプリズムの回折面は流体に接触する。したがって、プリズムに向かう光ビームはプリズムを通過し、回折面に到達すると、そのビームはセンサが反射ビームを観測しないように反射される。流体が所定の高さよりも下がると、ビームが衝突する点でのプリズムの回折面はもはや流体に接触せず、代わりに空気に接触するようになる。空気の屈折率は、流体の屈折率とは異なる。したがって回折面に到達すると、反射ビームはもはや同じ点へと反射せず、反射ビームを観測するセンサに衝突するように反射する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるシステムを使用した治療を受ける患者の斜視図である。
【図2】熱交換カテーテルおよび外付け流体供給源に取り付けられ、本発明の再使用可能な主制御ユニットの適切な開口に挿入されるよう位置決めされた、使い捨て可能な熱交換カセットの概略図である。
【図3A】図3Bと共に、本発明の熱交換システムの制御スキームのフローチャートを示す。
【図3B】図3Aと共に、本発明の熱交換システムの制御スキームのフローチャートを示す。
【図4】図3Aおよび3Bの制御スキームの影響下の、感知された、時間に対する標的組織または体液の温度のグラフである。
【図5A】本発明の典型的な、再使用可能な制御ユニットの斜視図である。
【図5B】図5Aの制御ユニットの上部の斜視図である。
【図5C】図5Aの制御ユニット用の典型的な制御パネルの平面図である。
【図5D】内部構成要素が露出するように外部パネルを取り外した、図5Aの制御ユニットの下部の斜視図である。
【図5E】内部構成要素が露出するように外部パネルを取り外した、図5Aの制御ユニットの下部の斜視図である。
【図5F】内部構成要素が露出するように外部パネルを取り外した、図5Aの制御ユニットの下部の斜視図である。
【図5G】制御ユニット下部の斜視図であり、内部キャビティの上方を分解した、熱交換カセットを受容するサブアセンブリを示している。
【図6A】図5Gに示す熱交換カセット受容サブアセンブリの斜視図である。
【図6B】図5Gに示す熱交換カセット受容サブアセンブリの斜視図である。
【図6C】図5Gに示す熱交換カセット受容サブアセンブリの斜視図である。
【図7A】図6Aの熱交換カセット受容サブアセンブリの、下部ガイド・アセンブリおよびポンプ駆動機構の斜視図である。
【図7B】図6Aの熱交換カセット受容サブアセンブリの、下部ガイド・アセンブリおよびポンプ駆動機構の斜視図である。
【図7C】図6Aの熱交換カセット受容サブアセンブリの、下部ガイド・アセンブリおよびポンプ駆動機構の斜視図である。
【図7D】図6Aの熱交換カセット受容サブアセンブリの、下部ガイド・アセンブリおよびポンプ駆動機構の斜視図である。
【図8】本発明の典型的な制御回路の概略図である。
【図9】熱交換カテーテルおよび外付け流体供給源に取り付けられ、本発明の再使用可能な主制御ユニットの適切な開口に挿入されるよう位置決めされた、使い捨て可能な熱交換カセットの斜視図である。
【図10A】本発明に用いる第1の使い捨て可能な熱交換カセットの分解図である。
【図10B】図10Aの熱交換カセットの一端の平面図であり、隔壁および取り付けた外付け熱交換器を通る流体の流れを示している。
【図10C】図10Bの隔壁のリザーバ・セクションの分解斜視図である。
【図10D】図10Bの隔壁の流体圧力ダンパの概略平面図である。
【図11A】図10Aの外付け熱交換器の線11−11に沿った断面図であり、膨張していない状態の熱交換器を示している。
【図11B】図10Aの外付け熱交換器の線11−11に沿った断面図であり、膨張した状態の熱交換器を示している。
【図12A】図10Aの外付け熱交換器と共に用いる典型的な流体取付部品の斜視図である。
【図12B】図10Aの外付け熱交換器と共に用いる典型的な流体取付部品の、上下逆にした斜視図である。
【図13A】本発明に用いる第2の使い捨て可能な熱交換カセットの分解図である。
【図13B】図13Aの熱交換カセットの一端の平面図であり、隔壁アセンブリおよび取り付けた外付け熱交換器を通る流体の流れを示している。
【図13C】図13Bの隔壁アセンブリの平面図である。
【図13D】図13Bの隔壁アセンブリの断面図である。
【図13E】図13Bの隔壁アセンブリのリザーバ・セクションの分解斜視図である。
【図14A】図13Bの隔壁アセンブリのフィードブロック・セクションの分解斜視図である。
【図14B】図14Aのフィードブロック・セクションの平面図であり、内部にある流体圧力調節機構を隠れ線で示している。
【図14C】図14Aのフィードブロック・セクションの断面図であり、内部にある流体圧力調節機構を隠れ線で示している。
【図14D】図14Aのフィードブロック・セクションの呼び水弁機構を通る垂直断面図である。
【図14E】図14Aのフィードブロック・セクションの呼び水弁機構を通る垂直断面図である。
【図14F】図14Cのフィードブロック・セクションの線14F−14Fに沿った断面図である。
【図14G】図14Cのフィードブロック・セクションの線14G−14Gに沿った断面図である。
【図15A】図13Bの隔壁アセンブリのポンプ・セクションの斜視分解図である。
【図15B】図15Aのポンプ・セクションの平面図である。
【図15C】図15Bの線15C−15Cに沿ったポンプ・セクションを通る断面図である。
【図15D】図15Aのポンプ・セクション内のポンプ・ヘッドの幾何学的な概略平面図である。
【図16A】図15Aのポンプ・セクションに用いるポンプ羽根の代替実施形態の立面図である。
【図16B】図15Aのポンプ・セクションに用いるポンプ羽根の代替実施形態の立面図である。
【図16C】図15Aのポンプ・セクションに用いるポンプ羽根の代替実施形態の立面図である。
【図17A】再使用可能な制御ユニットの駆動機構に係合するポンプ・ヘッド被動歯車の平面図である。
【図17B】再使用可能な制御ユニットの駆動機構に係合するポンプ・ヘッド被動歯車の立面図である。
【図18A】本発明の使い捨て可能な熱交換カセットの実施形態を使用する、流体の流れの概略図である。
【図18B】本発明の使い捨て可能な熱交換カセットの実施形態を使用する、流体の流れの概略図である。
【図18C】本発明の使い捨て可能な熱交換カセットの実施形態を使用する、流体の流れの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、主に、患者の血液温度を調節するために血流中で用いることを目的とするが、当業者なら、本発明のシステムに関するその他の様々な適用例が可能であることを理解するであろう。実際に、本発明には内部体液の温度を制御すること以上の適用例があり、特許請求の範囲はそれに限定されるべきではない。好ましい適用例では、全身の温度を調節するために、または患者の身体の局所領域の温度を調節するために、本発明の熱交換カテーテルの1つまたは複数を患者の脈管構造内に位置決めして、血液との間で熱交換を行う。カテーテルは、例えば脳を冷却するために脳に向かって流れる動脈血との間で熱交換を行うのに適しており、したがって、通常なら脳卒中またはその他の障害を引き起こすおそれのある脳組織の損傷を防ぐことができ、あるいは、心筋を冷却するために心臓に向かって流れる静脈血を冷却して、通常ならMI(心筋梗塞)またはその他同様の事象によって生じる組織損傷を防止するのに適している。
【0020】
一般に、本発明は、患者の体温を制御するために用いる熱伝達カテーテル用の熱伝達流体の温度および流れを制御するための好ましい制御ユニットおよび方法を提供する。制御ユニットは、最初に自動的に熱伝達流体を熱伝達カテーテルに供給して、使用のため熱交換カテーテルを準備作動する。またこの制御ユニットは使用者からの入力を受け取り、患者の温度情報を感知するセンサから温度情報を受信し、それに基づいて熱伝達流体の温度を自動的に制御する。さらに、熱伝達流体を含有するカセット内のポンプからのフィードバックに基づいて、制御ユニットは熱伝達流体を比較的一定の圧力で供給し、カセット内の流体レベルが許容できないほど低い場合には、例えばポンプのモータを停止させ使用者に知らせることによって危険な状況にあることを使用者に警告する、いくつかの警告または警報状態を有する。
【0021】
熱交換システムの概要
任意の適切な熱交換カテーテルは、患者または患者の身体の一領域の温度を調節するために熱交換システムで利用することができ、本明細書に開示する制御ユニットで制御することができる。本明細書に開示するカテーテルの他、一例としてかつ非限定的なものとして本発明で利用することができるカテーテルには、Ginsburgの特許文献1、Ginsburgの特許文献2、Ginsburg他の特許文献3、およびSaabの特許文献6に開示されているカテーテルがあり、それぞれの完全な開示を本明細書に援用する。そのような熱交換カテーテル・システム20の一例を図1に示す。システム20は、カテーテル制御ユニット22、そして少なくとも1つの熱伝達セクション44と共に形成された熱交換カテーテル24を含む。1つまたは複数の熱伝達セクションは、セクション(区域)26によって示すように、患者に挿入するカテーテル24の一部に位置付けられる。この挿入部分はカテーテルの全長より短く、カテーテルを完全に挿入した場合、患者のすぐ内側のカテーテルの位置からカテーテルの遠位端まで延びる。カテーテル制御ユニット22は、カテーテル24内に熱交換流体または熱交換媒体を循環させるための流体ポンプ28と、熱伝達システム20内を循環する流体を加熱しかつ/または冷却するための熱交換器構成要素を含んでよい。リザーバまたは流体バッグ30を制御ユニット22に接続して、生理食塩水や血液代用溶液、またはその他の生体適合性流体などの熱伝達流体の供給源を設けることができる。カテーテル内の循環熱交換流チャネル(流路)をポンプ28の吸込コンジット32および吐出コンジット34にそれぞれ接続し、それによってバルーン内に熱伝達流体を循環させて、選択された身体領域内の流体の流れを冷却することができる。システムの冷却構成要素を使用して、選択された複数の身体領域を同時にまたは独立に加熱するために、同様の配置構成を実装することができる。
【0022】
制御ユニット22はさらに、カテーテルからのフィードバックを提供する、例えば固相熱電対でよい様々なセンサと、中心温度あるいは選択された器官または身体の部分の温度を表す患者の温度情報を提供する様々なセンサから、データを受信することができる。例えばセンサは、脳または頭部領域用の温度プローブ36、直腸温度プローブ38、耳温度プローブ40、食道温度プローブ(図示せず)、膀胱温度プローブ(図示せず)などを含んでよい。
【0023】
感知された温度および状態に基づき、それに応じて制御ユニット22をカテーテルの加熱または冷却に切り換えることができる。制御ユニット22は、第1の感知温度で熱交換器を作動させて流体を加熱し、次いでバルーン内にその流体を循環させることができ、また、第1の感知温度よりも比較的高くまたは低い第2の感知温度、または任意のその他の所定温度で熱交換器を停止させることができる。あるいは制御ユニットは、熱交換流体を積極的に冷却して、バルーンを冷却することができる。制御ユニット22は、複数の熱伝達ユニットを作動させて異なる選択された熱伝達セクションを独立に加熱しまたは冷却し、それによって身体領域に所望の温度または事前に選択された温度を実現することができる。同様に制御器22は、患者の身体の特定領域の温度を制御するために、複数の熱交換器を作動させることができる。また制御器は、感知した温度に応答して、例えば外付け加熱ブランケットなどのその他の装置を作動させまたは停止させることもできる。
【0024】
熱伝達カテーテルまたはその他の装置に対して行う調節は、単純なオン・オフ制御でよく、あるいは、加熱または冷却の程度、加熱または冷却のランプ(昇降)速度、熱交換領域または患者の温度が目標とする温度に近付くときの比例制御などの調節を含めた著しく高度な制御スキーム(計画)にすることができる。
【0025】
カテーテル制御ユニット22はさらに、閉ループ・カテーテル・システム内の同じまたは異なる熱伝達媒体によって加熱機能および冷却機能の両方を発揮するよう選択的に作動する、熱電式の冷却器および加熱器(および関連するフロー(流れ)・コンジット)を含むことができる。例えば、少なくとも1本の温度調節カテーテル24の挿入部分26に位置付けられた第1の熱伝達セクション(部分)42は、低温の溶液を、隣接する頭部領域に循環させることができ、あるいは、頚動脈またはその他の脳に至る血管内で循環させることができる。頭部温度は、患者の比較的近接した外面に、または選択された身体領域内に位置決めした、温度センサ36によって局所的にモニタすることができる。やはり挿入部分26に位置付けられた、カテーテル24の別の熱伝達セクション44は、加熱した溶液を折畳みバルーン内に循環させることができ、または別の方法で、熱要素または本発明のその他の態様により記述したその他の機構によって、その他の身体部位を加熱することができる。熱交換カテーテル24は、神経保護のために脳領域を局所低体温状態にすることができるが、不快感や震え、血液凝固障害、免疫不全などの副作用を回避しまたは最小限に抑えるように身体のその他の部分を比較的温かく保つことができる。一般に首よりも下の身体を温めることは、首よりも上の頭部領域が冷却されている間、電気座布団または電気毛布46で下半身を覆いまたは包むことによって、さらに実現することができる。当然ながら、身体の中心温度に変化が生じるように全身の冷却または加温を行うため、カテーテル24の複数の熱交換セクションに変更を加えることができることを理解されたい。
【0026】
例示の熱交換システム
本発明は、内部に加熱器/冷却器装置を有し、コンジットを介して遠位留置熱交換カテーテルに結合した使い捨て可能な熱交換要素を受容する、再使用可能な制御器または制御コンソールの使用を意図するものである。より詳細には、制御器は、内部に熱交換要素を受容するための開口またはスロットを有する外部ハウジングを含み、その開口およびハウジングによって、熱交換要素を加熱器/冷却器装置に近接して確実に位置決めすることが望ましい。このように操作者は、システムの再使用可能および使い捨て可能な部分を結合するために、熱交換要素を制御器の開口に完全に挿入して取り付けるだけでよいので、システムの設定が容易になる。
【実施例】
【0027】
例示的な実施形態で、図2は、再使用可能なカテーテル制御ユニット50と、熱交換カテーテル52、熱交換要素54、生理食塩水バッグ56、センサ58a、58b、付随するワイヤ60a、60b、そして熱交換要素54から遠位方向に延びる2方向コンジット62を含んだ複数の流体フロー・コンジットを含めた複数の使い捨て可能な構成要素とを含む、熱交換カテーテル・システムを示す。再使用可能なカテーテル制御ユニット50は外部ハウジング64を含み、その内部には、加熱器/冷却器66、ポンプ駆動装置68、および制御器プロセッサ70が設けられている。さらに、手動入力ユニット72によって、操作者は、例えば脳に関して事前に選択された温度など、制御器の望ましい操作パラメータを入力することが可能になる。制御ユニット50内に設けた電子装置のそれぞれは、適切な配線によって連絡している。
【0028】
熱交換カテーテル52は、カテーテル・フロー・ライン74と、例えば熱交換媒体として働く生体適合性流体の閉ループ・フローを用いて作動する熱交換バルーンでよい熱交換器76と共に形成される。カテーテル52は、薬物や蛍光色素などを注入するための、または患者の身体の適切な部位にカテーテルを配置するのに用いるガイドワイヤ78を受容するための、作業ルーメン(図示せず)を含んでよい。センサ80は、熱交換バルーンの温度をモニタするために熱交換器76の遠位でカテーテル52に設けることができ、その他のセンサ(図示せず)は、血液の温度をモニタするために、カテーテルの遠位先端、バルーンの近位先端、またはカテーテルに沿った任意のその他の所望の位置に望み通りに設けることができる。
【0029】
カテーテル・フロー・ライン74の近位端は、カテーテル52の様々なチャネルに別々にアクセス(接触)できるように、マルチアーム・アダプタ82に接続することができる。例えば、第1のアーム84によってカテーテル52の作業ルーメンにアクセスし、ガイドワイヤ78を挿入することによって熱交換カテーテルが所望の部位に導かれるようにすることができる。熱交換器76が熱交換媒体の閉ループ・フロー用の熱交換バルーンである場合、アダプタ82は、流入ライン(管路)88に接続した第2のアーム86と、流出ライン92に接続した第3のアーム90を含んでよい。したがって流入ライン88および流出ライン92は、フロー・ライン74および熱交換器76に設けた流入チャネルおよび流出チャネルのそれぞれ(図示せず)と流動連絡するように配置される。この点に関し、流入ライン88および流出ライン92は一緒になって、熱交換要素54に接続した単一の二重チャネル・フロー・ライン62を形成することができる。さらに、生理食塩水バッグ56などの外付け流体供給源を、コンジット94aおよびT接合部94bを介して流出ライン92と流体連絡するよう配置することができる。以下にさらに述べるように、閉ループ熱交換バルーン・システムを作動準備するために外付け流体供給源を使用する。あるいは、外付け流体供給源は、熱交換ユニット54に直接接続することができる。
【0030】
さらに図2を参照すると、熱交換ユニット54は、熱交換プレート96およびポンプ・ヘッド98を含むことが望ましい。ポンプ・ヘッド98は、熱交換プレート96の蛇行状流体経路100を通して、また関連するフロー・ラインおよびカテーテル52を通して熱交換流体を送出する。上述のように、熱交換ユニット54は、再使用可能なカテーテル制御ユニット50に実装されるよう構成される。このため熱交換ユニット54は、プレート形状で、制御ユニット・ハウジング64の細長いスロット102にぴたりと嵌め込まれるように寸法決めされていることが望ましい。挿入すると、ポンプ・ヘッド98はポンプ駆動装置68の近くに配置されてそこに係合し、熱交換プレート96は、加熱器/冷却器66の近くに配置されてそこに熱連絡した状態になる。固相熱電加熱器/冷却器66は、同一のユニットが、そのユニットを作動させる電流の極性を変化させるだけで熱を発生させまたは熱を除去することができるので、特に有利である。したがって加熱器/冷却器66は、2つの別個のユニットを必要とせず、システムから熱を供給しまたは熱が除去されるように都合良く制御することができる。
【0031】
ポンプ駆動装置68はポンプ・ヘッド98に係合して作動させ、それによって熱交換流体を、熱交換ユニット54と熱交換プレート96の蛇行状経路100内に循環させる。したがって、熱交換器ユニット54が制御ユニット50に適正に実装されると、熱交換流体が蛇行状経路100内を循環しその後に留置熱交換器76に至るフロー・ライン内を循環するときに、加熱器/冷却器66は、その熱交換流体を加熱しまたは冷却するように働くことができる。患者の体内に位置付けた熱交換器76内を熱交換流体が循環するとき、その熱交換流体は、身体に熱を加えまたは身体から熱を奪うように働くことができる。このように加熱器/冷却器66は、患者の血液温度を望み通りに調節する。
【0032】
加熱器/冷却器66およびポンプ駆動装置68は、制御器プロセッサ70に応答する。プロセッサ70は、多数のセンサ、例えば患者の様々な部位の温度を感知するよう位置決めした体温センサ58a、58bとの電気接続104を介して、データ入力を受信する。例えば温度は、操作者が望む通りに、患者の耳、脳領域、膀胱、直腸、食道、またはその他の適切な部位で感知することができる。また上述のように、センサ80は熱交換器76の温度をモニタすることもでき、カテーテル52に沿ったその他のセンサは、ワイヤ60cを介するなどして制御器プロセッサ70に入力を供給することができる。さらに、手動入力ユニット72を用いることによって、操作者は、例えば患者の脳および/または全身に関して事前に選択した温度など、制御システムの動作パラメータを提供する。操作者が入力したパラメータは、適切な配線を介して制御器プロセッサ70に伝達される。
【0033】
制御器プロセッサ70は、受信した様々なデータを調整し、いくつかの動作可能なサブシステムを選択的に作動させて、所望の結果を実現しかつ維持し、すなわち患者の体温の適正な調節を行う。例えばプロセッサ70は、加熱器/冷却器66を作動させて、実際の温度が指定温度よりも高い場合には除去する熱の量を増加させ、または、実際の温度が指定温度よりも低い場合には除去する熱の量を減少させることができる。あるいはプロセッサ70は、感知した身体または局所的な温度が所望の温度に達したときに、熱交換流体のポンプ給送動作を停止させることができる。
【0034】
さらに図2を参照すると、本発明の使い捨て可能な熱交換ユニット54は熱交換カテーテル52に取着されるものとして示されており、外付け流体供給源56は、適切な再使用可能な主制御ユニット50と協働するように位置決めされている。治療を始める前に、熱交換ユニット54を再使用可能な主制御ユニット50に挿入し、外付け流体供給源56を注入口に取り付け、ポンプ98を自動的にまたは受動的に準備作動して使い捨て可能なシステムに充填し、その後、カテーテルを、患者の脈管構造、例えば下大静脈や頚動脈に挿入できるようにする。冷却しまたは加温した生理食塩水などの生体適合性流体を閉回路カテーテル内に送出し、それによって、患者の血液との間で直接熱交換を行う。制御ユニットは、患者の温度を自動的に制御する働きをする。カテーテルによる治療が完了したら、カテーテルを患者から取り外し、カセットを再使用可能な主制御ユニットから取り外す。次いでカテーテルとカセットの両方を廃棄する。しかし再使用可能な主制御ユニットは、熱交換流体に決して直接接触するものではなく、新しいカセットおよびカテーテルと全く新しい外付け流体供給源と共に、他の患者の治療にすぐ使用できる状態になっている。
【0035】
例示の温度制御方法
図3Aおよび3Bのフローチャートは、患者の温度調節中に制御ユニット70が編成する例示的な一連のステップ(段階)を示す。まず、ステップ110では、一般に使用者の入力によって標的組織(全身でよい)の目標温度を選択する。ステップ112aおよび112bでは、上限変動設定点および下限変動設定点をそれぞれ決定する。これは一般に、制御器プロセッサに組み込まれまたはプログラムされた目標温度の上下に関するプリセット・バッファ・レンジ(事前設定緩衝範囲)である。これらの変動設定点は目標温度を間に挟み、制御器が動作する温度のバッファ・レンジを作成する。
【0036】
より詳細には、感知した標的組織の温度は、体液を加熱しまたは冷却することができる熱交換器を標的組織へ流れる体液の近くに配置するステップ116の前または後の、ステップ114で得られる。ステップ118では、使用者の入力に基づいて、または目標温度と感知した組織温度との比較に基づいて、熱交換器を冷却モードで動作させるか、加熱モードで動作させるか、またはオフ(停止)のままにするかを決定する。すなわち目標温度と組織温度が等しい場合は、体液を最初に加熱しまたは冷却する必要がない。
【0037】
システムが冷却、加熱、またはオフになるかに応じて、決定ステップ118は3つの異なるシステム・モードになる。これらの動作モードは、図3Aおよび3Bの両方に表されるステップ120a、120b、および120cに対応する。
【0038】
システムが冷却モードの場合、フローチャートの論理はステップ120aに至り、感知した組織温度と事前に選択した目標温度とを比較する。組織温度が目標温度より高い場合、システムはステップ122に示すように冷却を継続し、プロセッサ70は判定ステップ118に戻る。一方、感知した組織温度が目標温度に等しいかまたはそれよりも低い場合、ステップ124に示すように熱交換器はオフ・モードに切り換わり、プロセッサ70は判定ステップ118に戻る。
【0039】
システムが加熱モードの場合、フローチャートの論理はステップ120bに至り、やはり感知した組織温度と事前に選択した目標温度とを比較する。組織温度が目標温度より低い場合、システムはステップ126に示すように加熱を継続し、プロセッサ70は判定ステップ118に戻る。一方、組織温度が目標温度に等しいかまたはそれよりも高い場合、ステップ128に示すように熱交換器はオフ・モードに切り換わり、プロセッサ70は判定ステップ118に戻る。
【0040】
システムがオフ・モードの場合、フローチャートの論理はステップ120cに至り、感知した組織温度と上限変動温度設定点とを比較する。次いで感知した組織温度が上限変動設定点に等しいかまたはそれより高い場合、ステップ130に示すようにシステムは冷却モードに切り換わり、プロセッサ70は判定ステップ118に戻る。組織温度が上限変動設定点より低い場合、プロセッサは引き続きフローチャート論理のステップ132に移り、組織温度が下限変動設定点に等しいかまたはそれよりも低いかどうかを決定し、それによってシステムは加熱モードに切り換わり、プロセッサ70は判定ステップ118に戻る。最後に、組織温度が上限変動設定点と下限変動設定点との間である場合、システムはステップ134に示すように何もせず、プロセッサ70は判定ステップ118に戻る。
【0041】
図4は、感知した組織温度の変動を、目標温度および変動設定点に対して経時的に描いたグラフである。この例では、目標温度を摂氏31度に設定し、それに対する上限および下限の変動設定点は共に1/2度である。最初は、熱交換カテーテルが摂氏37度の血液に接触した状態で配置されるなど、感知した組織温度が目標温度よりも高い。システムは、感知した組織温度が136で示す目標温度に等しくなるまで低下するように、最初に冷却モードで配置するが、これは図3Aのステップ120aおよび124に対応する。ステップ124では熱交換器がオフ・モードに切り換わり、その結果、図3Bのステップ130に対応するように、感知した組織温度が138で示す上限変動設定点に到達するまで上昇し、その時点でシステムは再び冷却を始める。このサイクルは、Aで示す領域内で繰り返される。
【0042】
結局、患者は、Bで示す領域の温度プロフィル(特性)によって示すように、目標温度でさえ維持することができない。例えば、感知した組織温度が140で示す目標温度に到達し、熱交換器をオフにした後、感知した目標温度は142で示す下限変動設定点に到達するまで、より低い温度へと下がり続ける。制御器の論理は、これを図3Bのステップ132で感知し、システムを加熱モードへと切り換える。その後、感知した組織温度は144で示す目標温度まで上昇し、システムは再びオフになるが、これは図3Bのステップ120bおよび128に対応する。あるいは、患者および状況に応じて、感知した組織温度が目標温度に到達して熱交換器がオフになった後、患者の温度が上昇し始めて上限変動設定点の温度になる可能性があり、その時点で、ボックス(わく)130に示すように熱交換器が冷却を開始する。理解されるように、感知した組織温度はこのように、上限変動設定点と下限変動設定点との間を変動し続ける。
【0043】
本発明のシステムに用いる制御スキームには、操作者が本質的に所望の温度を入力でき、その後システムが自動的に、組織温度が目標温度になるまで調節を行い、さらにその組織温度を目標温度に維持できるという利点がある。上限および下限の変動設定点によって作成したバッファ・レンジがあるので、これらの電気装置に損傷を与える可能性のある素早く絶え間ない動作で制御器が加熱器/冷却器をオンおよびオフにしないように、またはポンプ駆動装置を作動させまたは停止させることがないようにすることができる。
【0044】
また本発明によれば、制御器プロセッサ70は、複数のセンサに同時に応答するように、あるいはいくつかの熱交換器など様々な構成要素を作動させまたは停止させるように構成できることも理解されたい。このように、例えば制御器は、目標温度よりも低い、感知した身体の中心温度に応答して、その後身体の中心を循環する血液を加熱することができ、同時に第2の熱交換器を作動させて、目標温度よりも高い、感知した脳の温度に応答して、脳領域に向かう血液を冷却することができる。感知した体温が目標温度であり、そのため身体の中心を循環する血液に接触する熱交換器は制御器によってオフにされ、一方それと同時に制御器は、第2の熱交換器を作動し続けて脳領域に向かう血液を冷却することができる。操作者が予想することができ、制御ユニットにプログラムすることができる多くの制御器スキームのいずれかは、本発明の範囲内に含まれる。
【0045】
本発明のシステムのその他の利点は、患者に接触するシステムの全ての部分が使い捨て可能であり、しかしそのシステムの相当高価な部分および比較的高価な部分が再使用可能なことである。このため、カテーテル、滅菌熱交換流体用流路、滅菌熱交換流体自体、およびポンプ・ヘッドは全て使い捨て可能である。熱交換バルーンの破裂によって熱交換流体チャネル、したがってポンプ・ヘッドが患者の血液に接触しても、これら全ての要素を使い捨てにできるので、患者同士の間で交差汚染は生じない。しかし、ポンプ駆動装置、電子制御機構、熱電冷却器、そして手動入力ユニットは全て、節約上および便宜上、再使用可能である。図示すように、これら再使用可能な構成要素の全ては、単一の制御ユニット50内に収納されていることが望ましい。同様に、身体の周りおよびカテーテルに沿って分布された様々なセンサは、使い捨てにすることができるが、それらが付属する制御器プロセッサ70は、滅菌する必要なく再使用される。
【0046】
また、本明細書で述べるシステムは、前述の特許請求の範囲に記載する本発明の精神から逸脱することなく、多数の置換え、削除、そして代替例を使用できることも、当業者に理解されよう。例えば、熱交換プレート96の蛇行状の経路100はコイルまたはその他の適切な構成のものでよく、あるいはセンサは、広く様々な身体部位を感知することができ、プロセッサ70には温度や圧力などその他のパラメータを供給することができるが、これらに限定するものではない。さらに、カテーテル52の端部にある留置熱交換器76は、熱交換流体の循環を必要としない熱電過熱/冷却ユニットなどの任意の適切なタイプでよい。熱交換バルーンを設ける場合、ポンプは、ネジ・ポンプ、歯車ポンプ、ダイヤフラム・ポンプ、蠕動ローラ・ポンプ、または熱交換流体をポンプ給送する任意のその他の適切な手段のものを設けることができる。当業者に明らかなこれらおよびその他の置換えは、本発明の範囲内に含まれる。
【0047】
例示の熱交換カテーテル制御ユニット
図5Aから5Fは、患者の迅速な温度調節に特に適する本発明の典型的な熱交換カテーテル制御ユニット150を様々な観点から見た図である。これらの図からわかるように、制御ユニット150は、このユニットの最上部近くに位置付けられた略水平な分割ライン156で分離する下部152および上部154を有する縦向きの外部ハウジングを含む。下部152は、容易に持ち運びできるように車輪158上に取り付けられ、これらの車輪は、足で作動するロックを有する旋回型のものが好ましい。点検等を容易にするため、上部および下部はその背面がヒンジ155により一緒に接合され、最上部を持ち上げて後方に回転させることによりユニットの内部が露出するようになっている。典型的な実施形態では、制御ユニット150の高さは、操作者が大きく腰を曲げることなく上部制御パネル160に容易にアクセスできるような高さである。例えば制御ユニット150は、その全高が約61〜91cm(2〜3フィート)の間でよく、好ましくは約81cm(32インチ)である。制御ユニット150の大部分の実質上水平な断面の幅は、約30cmから約61cm(1フィートから2フィート)の間でよいが、下部152はその下端が広がって、その下部の隅に車輪158が取り付けられ、より安定になることが好ましい。
【0048】
図5Aは、組み立てた制御ユニット150を示し、一方図5Bから5Gは、制御ユニットの様々な分解図およびサブアセンブリ(副組立体)を示す。図5Aは、ユニット150の正面および右側を示し、上部154の正面の、角度をなす上部パネル162上には制御パネル160が見える。角度をなす上部パネル162は、制御パネル160に隣接して、流体容器受容キャビティ164も画定する。さらに、制御ユニット150の移動を助けるため、複数の取っ手166を設けることができる。
【0049】
制御ユニット150の正面パネル169には、水平分割ライン156の直ぐ下に、熱交換カセット受容開口168も設けられている。以下に述べるように、開口168は、図2に示す熱交換カセット受容開口102と同様に、本発明の熱交換カセットを受容するよう寸法決めされ成形されている。同様に制御ユニット150は、加熱器/冷却器、ポンプ駆動装置、制御器プロセッサ、および手動入力ユニット、すなわち制御パネル160を含む、図2の制御ユニット50に関して既に述べた特徴の全てを提供する。
【0050】
加熱および冷却能力が比較的高いので、制御ユニット・ハウジングの下部152は、ハウジングの内部と周囲環境とのあいだで対流熱交換が促進されるように、複数の通気孔170を含んでいる。制御ユニット・ハウジングは、ステンレス鋼、アルミニウム、または成形プラスチックを含めた、いくつかの適切で強力な耐食性ある材料で製造することができる。
【0051】
例示の制御パネル
図5Bおよび5Cは、制御ユニット150の上部154、特に制御パネル160について、より詳細に示す。図5Bは、制御パネル160から分解した状態のファサード(前面)172を示し、このファサードは、その表面に様々なディスプレイおよびボタンに対応するラベルを印刷したものが、図5Cに示されている。(読者は、図5Cの制御パネル160が残りの図面に示すものの代替の実施形態であり、いくつかの追加した特徴を含んで、いくつかのボタンおよび/またはディスプレイがいくらか移動していることに気付くであろう)。以下に、制御パネル160の物理的特徴について記述し、その記述の後半で、制御パネルを使用する例示的な方法について述べる。
【0052】
図5Cの典型的な制御パネル160は、中心線に沿って上から下まで、患者温度ディスプレイ174、目標温度ディスプレイ176、冷却/加温速度ディスプレイ178、およびシステム・フィードバック/ステータス・ディスプレイ180を含めたいくつかの表示装置が設けられている。その他の望ましい情報を、追加のディスプレイで、またはこの図に示すスクリーンの1つに表示されている情報と交互に、またはこの図に示すスクリーンの1つから使用者によって出された要求によって、表示することができる。例えば一例として、患者を加熱しまたは冷却するランプ速度を使用者が設定し、または制御マイクロプロセッサで計算する場合、あるいは目標温度に対して予測された時間を計算する場合にこれらの値を示すことができるが、これらに限定するものではない。英数字用の大型ディスプレイは液晶ディスプレイ(LCD)であることが好ましいが、いくつかの発光ダイオード(LED)状態標識も設けられる。いくつかの図形アイコンを、上部3つのLCDディスプレイ174、176、および178の左に隣接して位置決めし、それによってそれぞれの表示機能を示す。具体的には、患者の温度のアイコン182a、目標温度LED182b、および冷却/加温速度LED182cが設けられる。冷却/加温速度LED182cの直ぐ下には、動作モードLED182d、および関連する垂直な一連の3モード・インジケータ184が設けられる。システムが冷却モードか、加温モードか、または維持モードであるかによって、インジケータ184の1つだけが常に点灯する。モード・インジケータ184の代わりにディスプレイ180によって、操作者が制御器の機能モードを容易に識別できるように、患者の冷却、患者の加温、または維持というメッセージを伝えることができる。また、1列のライトを有するただ1つの患者温度アイコン182であってもよく、これらのライトはユニットが加温中の場合には上方に光が流れ、ユニットが冷却中の場合は下方に流れ、ユニットが維持の最中であれば固定位置で点滅させることができる。最後に、電源オン/オフ・インジケータLEDを、制御パネル160の左下の隅に設ける。
【0053】
制御パネル160は、制御パネルの右側に上から下まで順に、摂氏/華氏表示トグル190、1対の目標温度調整ボタン192、1対の冷却/加温速度調整ボタン194、多機能/入力ボタン196、および警報音ミュート・ボタン198を含めたいくつかの入力ボタンも表示する。警報音ミュート・ボタン198は、LED警報インジケータ200内に組み込まれる。最後に、制御パネル160の中央下部には停止システム操作ボタン202があり、それによって、システムを瞬時に停止させることができる。
【0054】
制御ユニット・ハウジング
図5Dから5Gよりわかるように、制御ユニット・ハウジングはいくつかのパネルによって画定され、そのパネルのいくつかを取り外して、制御ユニット150の内部構成要素を見ることができ、触れることができる。例えば図5Dおよび5Fでは、正面パネル169(図5A)を取り外して内部キャビティ210を露出しているが、その大部分は、比較的大きい送風機(図示せず)を封じ込めるサブハウジング212で塞がれている。以下に述べるように、サブハウジング212内の送風機は、熱電冷却器/加熱器と相互に作用し、それと共に、円形上部開口214にかかる第1のフィルタ(図示せず)によって分離され、ガスケット216によって、その上に保持される。制御ユニット内のサブハウジング212の底部にある四角形の開口220は、第2の空気フィルタ218によって覆われており、その結果、円形開口214を通して送風される空気(上方または下方に)が二重に濾過されるようになっている。最後に、ドレーン・カップ222を制御ユニット150の底部に設けることができる。図5Eでは後部パネルが取り外されて、後部キャビティ224が露出しており、そこからいくつかの電気接続226にアクセス可能である。
【0055】
図5Gは、制御ユニット150の下部152の正面斜視図であり、内部キャビティ210から上方に分解した状態の熱交換カセット受容サブアセンブリ240を示している。サブアセンブリ240を個別に図6Aに示すが、その正面に熱交換カセット受容キャビティ242を画定し、サブアセンブリがキャビティ210内にあるときに正面パネルに169に同様に寸法決めされた開口168に対して位置合わせされる。この配置構成によれば、図2の熱交換ユニット54や以下に述べる熱交換カセットなどの本発明の熱交換ユニットを、正面パネルの開口168に挿入して、サブアセンブリ240内のキャビティ242に「差し込む」ことができる。
【0056】
図5Gおよび6Aの両方からわかるように、管状スカート244はサブアセンブリ240から垂設され、そこに一連の通し穴を有する下部フランジ246を含んでおり、それによって、送風機サブハウジング212(図5D)の円形開口214の周りに取り付けることができる。したがってこのスカート244により、サブアセンブリ240を冷却する送風機によって上向きに吹き付けられる空気用のまっすぐの囲まれた経路が設けられる。あるいは、この空気の経路を逆向きにすることができ、その場合、送風機は、サブハウジング212内の下方に向けて空気を引き込む。サブアセンブリ240は、複数の取付けブラケット248をさらに含み、これらのブラケットは、制御ユニット250のキャビティ210内に設けた同様の数のサポート・ブラケット250にしっかりと取り付けられる。
【0057】
熱交換カセット受容サブアセンブリ
図6Aから6Cは、熱交換カセット受容サブアセンブリ240の様々な構成要素をいくつかの観点から見たものであり、いくつかの点を取り除きまたは分解した状態で見た図である。まず図6Bを参照すると、サブアセンブリ240は、上部から底部まで、上部圧力プレート260と、1対の細長いサイド・スペーサ262と、上部ガイド・アセンブリ264と、下部ガイド・アセンブリ266と、その下部ガイド・アセンブリに取り付けられてそこから下向きに垂設したポンプ駆動機構268と、後部水チャネル・アセンブリ270と、加熱器/冷却器サブシステム272と、この加熱器/冷却器サブシステムの真下に配置した空気冷却器274とを含む。さらに図6Bには、流体レベル測定センサ・モジュール276が分解した状態で示されており、これは図6Aからわかるように、下部ガイド・アセンブリ266の下側に取り付けられるようになっている。
【0058】
空気冷却器274は、中実な前部壁および後部壁を有する中空のボックス状構造と、管状スカート244の内部に連絡する底部壁に形成した円形開口(図示せず)と、周囲の制御ユニット・ハウジングに設けた通気孔170に位置合わせされる通気孔278を備えた1対の側壁とを含む。さらに、空気冷却器274は、加熱器/冷却器サブシステム272の下側で露出した状態になる。これは、加熱器/冷却器サブシステム272の一部を、図6Cに関して以下により詳細に述べるように、空気冷却器274の開口型ボックス上に固定することによって実現される。このように、管状スカート244内を吹き抜ける空気(上向きまたは下向きに)は、加熱器/冷却器サブシステム272の下側を通って流れる。空気が上向きに吹き付ける場合、空気は横向きにされて通気孔278および170を通り、外部環境に至る。空気が下向きに吹き付ける場合、空気が通気孔278および170を通って引込まれ、下向きにされて円形上部開口214内の第1のフィルタを通り、四角形の開口220を覆う第2のエア・フィルタ218を通って外に出され、外部環境に至る。したがって空気冷却器274は、加熱器/冷却器サブシステム272用の、非常に効率的で便利なヒート・シンクとして働く。当然ながら、その他のタイプのヒート・シンクおよびその他の対流空気冷却パターンを使用することができ、本発明は、図示する送風機274に限定されると考えるべきではない。
【0059】
図6Cは、加熱器/冷却器サブシステム272を分解した状態で示しており、上部プレート280と下部プレート282とを分離しているが、その間には複数の熱電(TE)モジュール284が挟まれて双方のプレートと熱接触している。前述のように、下部プレート282は、ボックス状空気冷却器274の開口部を覆うように固定される。TEモジュール284は、下部プレート282の表面上に分布した離散的なモジュールであることが好ましい。図示する例示的な実施形態では、12個の四角形のTEモジュール284が、下部プレート282のほぼ全面にわたり縦横に分布している。TEモジュール284は、周知のペルティエの原理に基づいて機能することが好ましく、その場合は同一のTEモジュールで、ユニットを流れるDC電流の方向に応じて加熱しまたは冷却を行うことができる。本明細書で述べる全てのTEモジュールは、電流がそれぞれ同じ方向に流れるように配置される。したがって、TEモジュールを流れる電流の極性を変えるだけで、加熱器/冷却器サブシステムは加熱器から冷却器に、またはその逆の状態に、瞬時に変えることができる。発生する熱または冷気の量も、TEモジュールを流れる電流の量を制御することによって調整できる。したがって、たった1つの変数、すなわちTEモジュールに供給されるDC電流を制御するだけで、非常に高いレベルの制御を行うことができる。
【0060】
上部プレート280は、TEモジュール284と、キャビティ242内に挿入した熱交換カセットとの間に伝導性熱伝達インターフェース(介在物)を提供し、したがってその表面には、TEモジュール284によってもたらされる離散的な温度差が分布する傾向にある。これは、誤った温度測定を引き起こす可能性がある熱交換カセットの局所的な加熱または冷却を防止するのを助ける。さらに、上部プレート280は、アルマイトやその他の適切な材料など、熱伝導性が良好な適切で剛性の金属により製造される。上部プレート280と下部圧力プレート260の両方の剛性は、内部キャビティ242内に位置決めした熱交換カセットの流体加圧による曲げに耐えられるように、十分なものである。
【0061】
図6Aおよび6Bを再び参照すると、サブアセンブリ240の様々な構成要素の接続によって前述の内部キャビティ242が作成され、その内部には、本発明の熱交換カセットを挿入することができる。好ましい実施形態では、カセットが、以下により詳細に述べるように設けられ、比較的厚い隔壁部と比較的薄い熱外部熱交換器を含み、この外部熱交換器は、上部圧力プレート260と加熱器/冷却器アセンブリ272の上部プレート280の間にぴたりと嵌まるように寸法決めされている。この点に関し、下部ガイド・アセンブリ266は、互いに内側に向いたガイド・スロット292a、292bを有する1対の直立側壁290a、290bを含んでいる。ガイド・スロット292a、292bは、外部熱交換ユニットの側縁を受容するよう寸法決めされており、それによってユニットは、上部圧力プレート260と上部プレート280の間に画定された狭い隙間へと確実に誘導されることになる。図示しないが、一方の直立側壁290のスロット292には、熱交換カセットが内部キャビティ242に完全に挿入されてシステムが適正に作動するようその内部に係合したことを示す、マイクロスイッチを設けることが望ましい。同様に図示しないものの関連技術においては周知であるが、圧力ピンやボール、対合用のつめなどの位置合わせ手段を、制御ユニットおよびカセットにそれぞれ設けて、カセットと制御ユニットとの相対的な位置決めを正しく行う際の補助をすることもできる。
【0062】
熱交換カセット受容サブアセンブリ240は、熱交換カセット内に設けられたポンプを駆動するためのシステムをさらに含む。より具体的には、図6Bに関して既に述べたように、かつ図7Aから7Dにより詳細に示すように、ポンプ駆動機構268が下部ガイド・アセンブリ266の下側に取り付けられて、熱交換カセット内のポンプに動力を供給する。図7Cに関して以下に示すように、ポンプ駆動機構268は、下部ガイド・アセンブリ266の下側に取り付けられ且つ駆動ベルト300に係合する出力シャフト(図示せず)を有する電気モータを含むことが好ましく、このベルトによりプーリ304を介してポンプ駆動シャフト302を回転させるが、駆動シャフトは軸支されて下部ガイド・アセンブリ266の垂直な通し穴内で回転する。この開示によって、ポンプ駆動モータからの回転運動を伝達するその他の代替方法が明らかに予想され、電気モータと出力シャフトの間に設けた一連の歯車、電気モータがカセット内のポンプに直接係合する直結駆動機構、またはその他同様の構成を含んでよい。
【0063】
図7Aおよび7Bに関しては、駆動シャフト302の上端が、下部ガイド・アセンブリ266の上面に形成した不定形チャネル306内に位置付けられている。駆動シャフト302の上端は、駆動歯車308を示している。図示しないが、本発明の典型的な熱交換カセットは、チャネル306に嵌合する下向きの突起を含み、駆動歯車308に係合する図15Aのポンプ・ヘッド歯車774を含む。ポンプ・シャフト・アイドラ・ホイールに係合し、且つポンプ・ヘッド歯車を駆動歯車308に係合して位置決めするように、1対のアイドラ・ハブ310a、310bも設けることができる。一連の関連するピンおよび軸受けを図面に示すが、当業者なら様々な機能および設計の代替例を理解するであろうと思われるので、さらに説明はしない。
【0064】
図7Aから7Dは、下部ガイド・アセンブリ266の下側に形成したキャビティ312も示す。キャビティ312と下部ガイド・アセンブリ266の上面との間には、一連の通し穴314が延在している。図7Bに示すように、透明な窓316が、対応するよう寸法決めされた凹部318に嵌め込まれ、穴314を覆っている。図6Aおよび6Bに見られる流体レベル測定センサ・モジュール276は、キャビティ312内に固定され、開口314に位置合わせされた状態で配置されかつ熱交換カセットと相互に作用する光送信器/センサを含み、それによって、以下にさらに述べるようにユニット内の流体レベルの表示を行う。
【0065】
本発明の電子制御回路
図8は、本発明の例示的な電子制御回路を示す。マイクロプロセッサは、設定温度とも呼ばれる目標温度を受信する。マイクロプロセッサは、システムが患者の温度を変化させる初期速度を指定するランプ速度も受信し、例えばMAXは、システムが動作可能な最大速度を示す。例えば冷却の際、これは熱交換流体の温度が4℃程度に低くなる動作モードにすることができる。患者の温度がモニタされ、目標温度と実際の温度との差が計算される。システムは、この計算を頻繁に行うことができ、例えば1秒当たり1回行うことができる。この差に基づいて、マイクロプロセッサは、熱交換流体に加える冷却用電力の加熱を調整する。実際の温度が目標温度に近付くにつれ、変化率は無視することができ、実際の温度が最終的には最後の10分の数度だけ非常にゆっくりと下がるように、出力率は徐々に低下する。PID定数を調整することによって、PID制御を望み通りに調整することができる。
【0066】
別の言い方をすれば、制御回路は、目標体温と感知した体温とが互いに大きく離れている場合には迅速な熱交換を可能にし、感知した体温が目標温度に近付くにつれて熱交換率が低下する論理を含む。患者の温度変化の傾向は常にサンプリング(抜き取り検査)され、したがって熱交換システムは、患者を冷却するために全力で動作するが、患者の温度が目標温度に近付くにつれてその冷却はより漸進的になり、冷却段階の最後の部分においては患者の温度が徐々に冷却されて過度に冷却されることがないように、精密に制御される。
【0067】
第1の典型的な熱交換カセット
本発明で使用する適切な熱交換カセットは、本明細書に援用する米国特許出願第60/185,561号に記載されている。そのようなカテーテルの概要を以下に述べる。
【0068】
図9は、制御ユニット404の受容開口402に隣接した本発明の例示的な熱交換カセット400を概略的に示す。制御ユニット404は、図2に関して既に述べた要素50と同様に、または図5から8に関する要素150と同様に構成することができる。その結果、制御ユニット404は、加熱器/冷却器機構(図9には示さず)と、ポンプ駆動機構406(概略的に示す)と、制御器プロセッサと、手動入力装置(やはり図9には示さず)を含む。ポンプ駆動機構406は、図7Aから7Dに示す実施形態と同様に、駆動歯車408と1対のアイドラ・ホイール410を含む。
【0069】
図9は、さらに以下に述べるように、熱交換カセット400内の流体レベルを決定するのに用いる光ビーム源412と光ビーム・センサ414の典型的な配置を概略的に示す。さらに、少なくともリニア・アクチュエータ418とプッシュ・ロッド420を含む、弁作動システム416の典型的な配置が示されている。最後に、当業者なら、図9の制御ユニット404が、図2および図5から8に関して既に述べた様々な有利な特徴を有することが理解されよう。
【0070】
図9は、図2に関して既に述べた本発明の熱交換カテーテル・システム全体の、ある特定の態様を示しており、留置カテーテル424の遠位端に熱交換器422を含むものであって、熱交換流体は、流入ライン426および流出ライン428を介してその内部を循環することができる。流体の流入ライン426および流出ライン428は、一般に、ポリ塩化ビニルなどのフレキシブルな圧縮性の材料またはその他の適切な柔軟で圧縮性のチュービング材料で作製され、熱交換カセット400の隔壁430に流体連絡している。流体供給バッグ432は、コックまたはピンチ・クランプ436を使用することによって閉じることが可能な供給ライン434を介してシステムを準備作動するために、熱交換流体を供給する。バッグの大きさは一般には重要ではなく、その容量は約250mlという典型的なものである。使い捨て可能な熱交換カセット400は、熱交換カテーテル424と共にまたは別個に包装することができる。
【0071】
熱交換カセット400は前述の隔壁430を含み、そこには外部熱交換器440がカバー・プレート442を介して結合されている。上述のように、外部熱交換器440は、制御ユニット404内に設けた狭いスロットまたは隙間に嵌め込まれて加熱器/冷却器のプレートと圧力プレートとの間に挟まれるように、十分に平らで薄くなっている。隔壁430はいくらか厚く、制御ユニット404への挿入および取外しを容易にする取っ手444を備えている。さらに、隔壁430は、その内部のポンプ・ヘッドにポンプ駆動機構406が係合するように、開口402の外側の部分に連結される。ポンプ・ヘッドの例示的な詳細を以下に示す。(図は、隔壁の2つの異なった実施形態を示すことに留意されたい。図9に示す隔壁は、図10B、図13Aから13E、そして図14Aから14Eに関してより詳細に記述する。)
【0072】
ここでも、制御ユニット404は全システムの再使用可能な構成要素を構成し、一方、熱交換器440、カテーテル424、そして流体供給432は使い捨て可能な構成要素を構成することを、繰り返し述べる。実際に、好ましい実施形態では、制御ユニット404を除く全ての構成要素が、滅菌され事前に組み立てられたユニットとして1つにまとめて包装される。このように準備することによって、医療スタッフは、この滅菌包装を開け、熱交換カセット400を制御ユニット404に「差し込み」、カテーテル424を患者の適切な位置に導入するだけで、システム全体を設置することができる。処置が終了した後は、制御ユニット404以外の全てを廃棄する。
【0073】
図10Aおよび図10C,10Dを参照しながら、本発明の例示的な熱交換カセット400aについて記述する。上述のように、交換ユニット400aは、隔壁430aと、外部熱交換器440aと、カバー・プレート442aを含む。隔壁430aは、リザーバ・セクション450とポンプ・セクション452を含み、これらは図10Aでは分解された状態で、また図10Bでは流体連絡するよう一まとめに結合した状態が示されている。
【0074】
図10Bの切取平面図は、隔壁430aおよび外部熱交換器440a内の熱交換流体の流路を表すいくつかの流れの矢印を示す。図9に示す流体バッグ432などの外付け流体供給源454から始まって、入口ライン456がリザーバ・セクション450に流体を注入し、次いで流体は、L字型の出口チャネル458(図10C)を介して図面の右側に送出され、ポンプ・セクション452の入口459に送り込まれる。ポンプ・セクション452の出口は2つのチャネルに分かれ、その一方は外部熱交換器440aに至り、他方は留置カテーテルに供給を行うフロー・ライン460に至る。ポンプ・セクションのどの出口チャネルが流体を受け取るかについて、以下により詳細に述べる。熱交換流体は最初にカテーテルのフロー・ラインを準備作動し、次いで外部熱交換器440aを準備作動すると言えば十分であろう。
【0075】
流体は、ポンプ・セクション452の上側の出口462を通って、外部熱交換器440aに流入し、さらにその内部に画定された複数の蛇行状経路へと流入する。熱交換器440a内を通過した後、流体は、リザーバ・セクション450の入口464に戻る。
【0076】
図10Aおよび図10C,10Dを、特に図10Cの斜視図をさらに参照すると、リザーバ・セクション450は下部容器470を含み、この下部容器470は、上部壁として、この容器の段付きリムに密接に受容されかつそこに生体適合性の接着性によって固定する上部カバー・プレート472を含んでいる。容器470はその内部に、2つの供給源、すなわち外付け流体供給源コンジット456が付属する供給用入口476と、外部熱交換器440aの内部に接続される入口464からの流体を受け取る流体キャビティ474を画定する。L字型チャネル458は、ポンプ入口459に流体連絡するリザーバ・セクション450の端部に位置付けられた流体用出口を提供する。L字型チャネルと同じリザーバの端部には、このリザーバには開かれていない減衰チャンバ478を位置付けている。ブロック状フォームなどの圧縮性材料480が、突出したカラー482内を通って減衰チャンバ478の内部へと嵌め込まれる。そのような減衰チャンバ478の機能および利点について、以下にさらに述べる。
【0077】
カバー・プレート472は、容器470の縁の周りを封止して流体キャビティ474を生成するが、キャビティ内からの空気の放出を可能にする疎水性のガス透過性ベントを有する1つまたは複数の通気孔484を備えている。通気孔484があるので、システムの準備注入動作中に流体が容器470の内部に導入されたとき、いかなる流体もそこから逃がすことなく空気を容器470の内部から移動させることが可能になる。通気孔484の孔径は、微生物などのいかなる汚染物質の流入も防止できるように十分小さく、したがって、患者の身体内をカテーテルを介して循環する流体の無菌状態が維持される。第1および第2のプリズム486a、486bも、流体レベル検出システムの一部として容器470内に位置付けられ、これについて以下にさらに述べる。この実施形態におけるプリズムの位置は、減衰チャンバ478の壁面に隣接しているが、図9に示す実施形態ではリザーバのもう一方の端部にあり、図13Eに示すように590a、590bで取り付けられている。当業者に容易に理解されるように、プリズムの位置、そして垂直かまたは水平かという機能は、設計選択上の問題であり、それに伴って制御ユニット内の光ビーム・センサ412、414の位置を変える必要がある。
【0078】
図10Bからわかるように、ポンプ・セクション452は、準カージオイド形のキャビティ492内に画定した回転式ポンプ・ヘッド490を含む。ポンプ・ヘッド490はロータ494と可動翼496を含み、図9に見られるポンプ駆動機構406などの外部供給源によって駆動するシャフト(符号は付けていない)上で回転する。ポンプ・ヘッド490は、約2.5kg/cm2(35psi)を超える圧力でシステムを通して流体を送出できることが望ましく、所定の圧力、例えば約2.8kg/cm2(40psi)を迅速に実現し維持できることがより好ましい。ポンプ・ヘッド490の具体的な詳細について、図15および16を参照しながら以下に述べるが、回転式ポンプは、図示するベーン・ポンプ、インペラ・ポンプ、または歯車ポンプでよいことが理解されよう。さらに、いくらか変更を加えることによって、本発明のシステムは、ダイヤフラム・ポンプや蠕動ポンプなどのその他のタイプの流体ポンプを利用することができる。
【0079】
ポンプ・セクション452は、流体結合入口手段498を有する貫流チャネル497も有し、この流体結合入口手段498は、カテーテルから出口462まで直接繋がり、さらに外部熱交換器440aに至るものである。図10Bおよび10Dからわかるように、分岐ポンプ出口チャネル499は、カテーテル460に至る流体結合出口と流体連絡しており、圧力減衰チャンバ478にも繋がっている。圧力減衰チャンバは、例えば、カテーテルに流れる流体と平行な流体通路内のブロック状圧縮性材料480で塞ぐことができる。したがってカテーテルに流れるポンプからの流体は、減衰チャンバ478内の圧縮性材料480に曝され、流体が圧縮性材料480に接触するにつれて、その材料はわずかに圧縮し、次いでその元の形に戻るが、そのようにすることによって緩衝材としての働きをし、ポンプの動作によって生じる可能性がある流体の小さな圧力変動を吸収する。このように圧縮性材料には、カテーテルへの流体の流れの圧力パルスを減衰させる効果がある。
【0080】
圧縮性材料の適切な例には、ブロック状フォーム、ポリエチレン・フィルムに包まれたポリエチレン・フォームなどのカプセル化フォーム、封止プラスチックの袋に包封したフォーム、プラスチックまたはシリコーンで被覆しまたはそれらを染み込ませたフォーム、ポリウレタン・バルーンなど柔軟な袋に包まれた気体などが含まれる。
【0081】
例示の外部熱交換器
図9の440および図10Aの440aで示す外部熱交換器は、外部熱交換器の構成全体が制御ユニット404aに設けた開口にかみ合うようになった、1つまたは複数の構造部材およびコンプライアント(弾性)部材の任意の組合せにすることができる。好ましい実施形態では、図11Aおよび11Bの断面に見られるように、構造部材が平面的なバック・プレート500を構成し、コンプライアント部材が、柔軟で熱伝導性の層502を構成する。コンプライアント層502は、図10Aからわかるように、該コンプライアント層とパック・プレート500の間に蛇行状流路504を形成するパターンとしてバック・プレート500に封止される。フロー・チャネル504は、フロー・フィッティング508を備えた流体入口オリフィス506と、同一のフロー・フィッティング512を備えた流体出口オリフィス510を含む。フロー・フィッティング508および512を、図12Aおよび12Bの斜視図に示す。
【0082】
バック・プレート500は、典型的には堅く、高密度ポリエチレンで作製され、一般に約0.762mm(0.030インチ)の厚さである。この実施形態では、より薄いコンプライアント層が、ヒート・シールや2層を一緒に永久に接着させるその他の適切な技法などの融着によって、バック・プレートに蛇行状パターンで封止されるものとして、示されている。ヒート・シールのパターンは、連続する蛇行状流路504を分離する封止部514からなる蛇行状経路、あるいは、複数の流路からなる蛇行状経路を生成する。
【0083】
曲がりくねった流路504は、制御ユニット404a内の加熱器/冷却器装置に隣接して熱伝達関係で熱交換流体を前後に流し、さらにその流体を十分に加熱しまたは冷却することができるよう十分な時間、熱加熱器/冷却器装置の近くにこの流体を確実に循環させる、経路を生成する。また本発明は、流体を外部熱交換器440aに流すチャネルが生成されるように封止部が構成される限り、不連続な封止部を利用することもできる。さらに、外部熱交換器は、制御ユニット404内への配置を容易にする案内具として働くV字型の前縁516を有するように、構成することができる。
【0084】
より薄いコンプライアント層502は、一般に約0.102〜0.203mm(0.004〜0.008インチ)であり、典型的な場合は、図11A(膨張していない)と図11B(膨張している)を比べることによってわかるように、加圧された熱交換流体が蛇行状チャネル504の脚部に流入したときにわずかに撓むように、わずかにエラストマー性を有する、あるいはコンプライアントな低密度ポリエチレン材料である。バック・プレート500とより薄いコンプライアント層502は共にポリエチレンであるので、これらを一緒に、熱溶融または超音波溶接によって効果的に溶接する。しかし隔壁430aは同じ材料ではなく、したがって外部熱交換器は一般に、機械的な圧力シールなど、その他の手段によって隔壁に封止される。
【0085】
図10Aからわかるように、外部熱交換器440aには、隔壁330に封止される延長型アタッチメント520が設けられている。延長型アタッチメント520は、隔壁330全体にわたって分布する3つのセクション、すなわち第1のフラップ・セクション522aと、切取りセクション522bと、第2のフラップ・セクション522cを有する。第1のフラップ・セクション142には1つまたは複数の通気孔524が切り込まれて、上述のように、リザーバのカバー・プレート472に設けた対応する数の疎水性ガス透過性ベント484から空気が排気される。図10Aの実施形態では複数の通気孔524を示すが、任意の適切な形状または数の孔で十分であり、例えば以下の図13Aの実施形態では単一の通気孔が示されている。
【0086】
既に述べたように、蛇行状チャネル504に開放されているオリフィス506、510のそれぞれにはフィッティング(継手)508、512が設けられ、薄いコンプライアント層502とバック・プレート500との間のスペースに流体を流入させることができる。第1のフィッティング508を介して熱交換流体を入口オリフィス506内に送出する場合、その流体は、蛇行状通路に沿って出口オリフィス510まで曲がりくねって進み、次いで第2のフィッティング512を介して隔壁内に入る。外部熱交換器440aの全体は、制御ユニット440内の加熱器/冷却器に熱接触するよう配置され、例えば、熱電冷却器またはいくつかのTE冷却器モジュールの熱交換面が熱プレートと接触するように配置される(図6Cに示すように)。より薄いコンプライアント層502は、表面温度を制御して外部熱交換器を通して流体を送出することによって熱交換流体の温度を制御することができるように、熱交換面に対して位置決めされる。
【0087】
フィッティング508、512は、図12Aおよび12Bに示すように、その特定の構造によって入口オリフィス506および出口オリフィス510内に固定される。各フィッティング506、510は、中心チャネル530と、ベース・プレート532と、このベース・プレートの下面に設けた複数のスペーサ突起534と、ベース・プレート532の反対方向に突出するノーズ536を有する。図12Bの実施形態はそのような4つの突起を示すが、本発明は、4個より少ないかまたは多い突起を有することを意図している。フィッティング506を外部熱交換器440aに配置する場合、ノーズ536は入口オリフィス506を通って突出し、ベース・プレート532は、コンプライアント層502とバック・プレート500との間に耐密に位置決めされる。スペーサ突起534によって、ベース・プレート532は、外部熱交換器のバック・プレート500から間隔を空けて配置される。出口オリフィス510では、チャネル504内に入っている流体がチャネル530を通って突起の間を通過し、次いで隔壁430aに至る。同様に、熱交換カテーテルから戻ってくる流体は、フィッティング506の中心チャネル530を通って熱交換チャネル504に入り、突起534の間を通過する。コンプライアント層502と隔壁430aとの間の各フィッティング506、510のノーズ(鼻状部)536の周囲には、柔軟なゴム座金など、2個のOリングを位置決めすることができる。各フィッティング506、510のノーズ536は、隔壁430aの、関連する出口462および入口464に挿入するよう寸法決めされる。
【0088】
第2の典型的な熱交換カセット
図13Aから13Eは、最初に述べた熱交換カセット400aといろいろな意味で同様の第2の例示的な熱交換カセット400bを示すが、以下に述べるフィードブロック・セクションおよび圧力弁を含んだ隔壁アセンブリを有している。最初の実施形態と同様に、交換器400bは、カバー・プレート442bによって外部熱交換器440bに結合された隔壁アセンブリ430bを含む。隔壁アセンブリ430bは、リザーバ・セクション550と、ポンプ・セクション552と、これらの間に配置されたフィードブロック・セクション554を含む。これら3つのセクションは、図13Aからわかるように、独立の、または別個のユニットを一まとめに結合したものにすることができ、あるいは、単一のユニット内に画定することができる。隔壁セクションは、機械加工し、成型し、または鋳造することができ、典型的な場合には、プラスチックやPLEXIGLASなど耐久力がある軽量の材料で作製される。
【0089】
図13Aおよび13Eの斜視図を参照すると、中空のリザーバ・セクション550は細長い直線的な形状であり、フィードブロック・セクション554に面する一方の縦方向の端部には、1対のカラー、すなわちリザーバ出口チャネル561を画定する流体出口カラー560と圧力調節器カラー562とが設けられている。これら2つのカラーは、近接して並べたフィードブロック・セクション554の端部のわずかに小さいサイズの2つのカラーとしっかり係合し、具体的には、図14Aに示すように、流体入口カラー(図示せず)および圧力感知チャンバ・カラー564に係合する。フィードブロック・セクション554も中空で、全体的に直線的なハウジングであり、ポンプ・セクション552に面する側に、入口コンジット568に繋がる入口カラー566と、第1の出口コンジット572から開いている第1の出口カラー570と、第2の出口コンジット576から開いている第2の出口カラー574を含んでいる。一連のOリング578が、これらのカラー566、570、および574のそれぞれの周りに嵌め込まれるよう寸法決めされ、したがってこれらのカラーと、これらに近接して並べたポンプ・セクション552の面に形成されている関連する開口との流体耐密封止が、確実に行われる。
【0090】
a.例示のリザーバ・セクション
図13Aから13Eを、特に図13Eの斜視図をさらに参照すると、リザーバ・セクション550は下部容器580を含み、この容器は、上部壁として、この容器の段付きリムに密接に受容され、また接着剤、熱溶着あるいはその他の適切な締着方法によってさらに固定することができる上部カバー・プレート582を含んでいる。容器580は、その内部に、単一の供給源、すなわち外部熱交換器440bの内部に接続した入口586から流体を受け取る流体キャビティ584を画定する。カバー・プレート582は、容器580の縁の周りで流体キャビティ584を封止するが、準備注入動作中にキャビティ内から空気を放出させる疎水性ガス透過性ベントを備えた1つまたは複数の通気孔588が設けられている。
【0091】
容器580内には、流体レベル検出システムの一部として、透明な隔壁材料または窓591に隣接させて第1および第2のプリズム590a、590bも配置することができる。図13Dからわかるように、下部容器580は、くぼみまたは傾斜を付けた領域592をベースが有するように、構成することができる。傾斜またはくぼみ付きの領域によって、プリズム590a、590bに隣接するリザーバの内部流体キャビティ584から流体出口561まで流路または流体溜めが画定される。このように、リザーバの出口チャネル561に至る流体開口はプリズム590a、590bとほぼ同じ高さにあり、したがって、プリズムでの流体のレベルが非常に低い場合であっても、流体はポンプまで確実に送られる。以下に論じるように、プリズムは、低い流体レベル、すなわち危険な可能性がある状態を検出するための安全システムであり、くぼみ付き領域592によって、ポンプへの流体が存在しないことが問題になる前に低流体レベルを検出するという追加の保証が得られる。
【0092】
図13Eからわかるように、圧力調節器シャフト598は、容器580の側壁の1つからキャビティ内に延在する取付けフランジ600によって、流体リザーバ・キャビティ584内に取り付けられる。一実施形態では、圧力調節器シャフト598は、フランジ600の通し穴602に設けためねじに一致するねじ山を含む。標準ばね604は、シャフト598とダイアフラム606との間に押し付けられる。ダイアフラム606は膜でよく、例えば、クロス強化シリコーン膜でよい。疎水性のガス透過性ベント588が存在するので、ダイアフラム606のリザーバ側にかかる圧力は、本質的に、大気圧と、標準ばね604によって加えられる圧力とを合わせたものである。標準ばね604の圧力は、ねじ穴602内でシャフト598を前進させまたは引き込むことによって調整することができ、その結果、ダイアフラムに対して加えるばねの力の量を調整することができる。ダイアフラム606と標準ばね604との間には圧力プレート608が挟まり、それによって、ダイアフラムのリザーバ側にかかるばねの圧力がより均等に分散する。本発明のこの例示的な圧力調節機構のさらなる詳細について、以下に述べる。
【0093】
b.カバー・プレート
初めに述べた熱交換カセット400aと同様に、図13Aの外部熱交換器440bは、カバー・プレート442bによって隔壁アセンブリ430bの上側に固定される延長型アタッチメント・フランジ610を含む。機械的シールは、カバー・プレート442bと隔壁アセンブリとの間に延在するいくつかの締着具(図示せず)によって、アタッチメント・フランジ610と隔壁アセンブリ430bとの間に形成されることが好ましい。カバー・プレート442bは、熱交換カセット400bの操作を容易にするための取っ手612を含む。
【0094】
カバー・プレート442bは、隔壁アセンブリ430bと、図9の例示的な制御ユニット404などの本発明の再使用可能な制御ユニットとも相互に作用する、複数のアパーチャ(穴)および溝をさらに含む。例えば、細長いアパーチャ614は、アタッチメント・フランジ610に設けた同様の形をしたアパーチャ616と整合され、これら両方のアパーチャによって、リザーバ・セクションのベント588から空気を通すことができる。カバー・プレート442bは、以下に述べるように、フィードブロック・セクション554の柔軟なダイアフラムへのアクセスを可能にする呼び水弁アパーチャ618をさらに有する。さらに、カバー・プレート442bは、熱交換カセットが正しい操作位置にあることを使用者に知らせる1つまたは複数のインジケータを有するように構成される。例えばカバー・プレートは、図9の例示的な制御ユニット404の受容開口402のスイッチなど、制御ユニット上のスイッチを、適正な配置であることが示されるまで押し下げるように動作するスロットを有することができる。同様に、カバー・プレート442bは、制御ユニット上の、ばね負荷のかかった軸受けなど、付勢された戻り止めを受容するくぼみ622に至るスロット620を有することができる。熱交換カセット400bを制御ユニット内に位置決めすると、戻り止めがスロット620に沿って案内され、このユニットを完全に挿入すると、その戻り止めがくぼみ622に入り込み、カチッという音によって、完全に配置されたことを使用者に知らせる。当業者に理解されるように、より確実な押込みロック構成を提供することができるが、以下に述べるように、外部熱交換器440bに圧力を加えることによって、熱交換カセット400bを再使用可能な制御ユニット内にしっかりと保持することができる。
【0095】
c.自動準備注入中に第2の熱交換カセット内を通る流体経路
隔壁アセンブリ430bの各セクションについて詳細に述べる前に、熱交換カセット400b内を通る流体の流れについて、概略を述べる。外付け流体供給源をフィードブロック554に取り付けた場合、まずこのシステムに流体を充填し、空気をパージしてから患者に挿入する。このプロセスを、プライミング(準備注入動作)と呼ぶ。プライミングは、図9に示す制御ユニットに接続したカセットによって自動的に行われる。制御ユニットは、初めにプライミング・プッシュ・ロッド420を作動させて、カバー・プレート上の柔軟な膜672を弁作動ロッド680上へと押し下げる。これによって、フィードブロック内の弁が「プライム」位置に位置決めされ(図14E)、その結果、流体供給源からの流体が流体充填リザーバ682aに入り、ポンプ供給ライン640を介してポンプへと向けられるようになる。リザーバからの供給ラインは閉じており、流体は流体バッグからポンプに入り、そこから圧力調節チャンバ、カテーテルを通って熱交換ユニットに戻り、蛇行状通路を通ってリザーバに入る。リザーバが満たされるにつれ、押し退けられる空気は親水性の弁を介して追い出される。リザーバが満たされると、流体レベル検出器は、リザーバが満たされたという信号を制御ユニットに送り、呼び水弁を停止させ、したがってプッシュ・ロッド420は引き上げられて、柔軟な膜672が弛緩し、ばね678によって上方位置に付勢された弁作動ロッド680が「実行(run)」位置に戻る。この位置では、呼び水弁が実行位置に位置決めされ(図14D)、流体はリザーバから閉回路内に送出され、ポンプを通り、圧力調節チャンバを通り、カテーテルを通り、蛇行状通路を経てTE冷却器上を熱交換ユニットへと戻り、リザーバに至る。
【0096】
図13Aから13Cを参照する。これに関し、いくつかの流体流れの矢印を図13Bに示している。外付け流体供給源630は、フィードブロック・セクション554の中心チャンバ636に連通している充填チャネル634に繋がった注入口632に付属する。リザーバ・セクション550の流体出口カラー560も、フィードバック・セクションの内部チャネル638を介して流体を中心チャンバ636に向ける。フィードバック・セクション554のその他の内部チャネル640は、中心チャンバ636からの出口を提供し、図14Aに見られる第1の出口カラー570内に画定された第1の出口コンジット572に至り、最終的にはポンプ・セクション552に至る。
【0097】
初めにこのシステムを、次の文節で述べるように準備注入する。これによりリザーバ、カテーテル、および外部熱交換器に流体が充填され、システム内の空気を追い出す。次いでシステムを運転状態にし、後に続く経路にほぼ従って流体を閉回路内に送出する。ポンプ・セクション552は、流体を出口チャネル644内に推し進め、入口カラー566内の入口コンジット568を介してフィードブロック・セクション554内の圧力調節チャンバ646内に戻す、回転式ポンプ・ヘッド642を含む。圧力調節チャンバ646は、出口チャネル648と、カテーテル流入ライン652(図13B)が結合される出口ポート650とを有する。流体は、出口チャネルから熱交換カテーテルを通して送出される。熱交換カテーテルを通過した後、流体は、入口ポート656(図13C)に結合した流出ライン654内を戻っていく。次いで戻り熱交換流体はリレー・チャネル658を通過し、第2の出口カラー574内の第2の出口コンジット576を通って、フィードブロック・セクション554からなくなっていく。次いで流体は、図13Aからわかるように、ポンプ・セクション552内の流路660を通過して隔壁出口662に至る。
【0098】
隔壁出口662は、外部熱交換器440b内に設けた1つまたは複数の内部流路に繋がっている。既に述べた実施形態と同様に、熱交換器440bは、その構成全体が制御ユニット404aに設けた開口に一致するように、1つまたは複数の構造部材またはコンプライアント部材の任意の組合せでよい。例えば熱交換器440bは、図11Aおよび11Bの断面からわかるように、またそれらの図に関して述べたように、構成することができる。すなわち熱交換器440bは、剛性のバック・プレート500と、このバック・プレート500に封止した柔軟な熱伝導性材料の層502であって、これらの間に蛇行状の流路504を形成するパターンをなす層を含むことができる。蛇行状流路504への流入またはそこからの流出を促進するために、図12Aおよび12Bに見られる前述のフロー・フィッティング508および512を使用することも望ましい。
【0099】
熱交換器440b内の流路504を通過した後、流体は、隔壁の入口オリフィス586を通ってリザーバ・キャビティ584内に入る。最後に流体は、リザーバ・セクション550から出口カラー560を通って、フィードブロック・セクション554の中心チャンバ636内に戻る。
【0100】
d.例示のフィードブロック・セクション
図14Aから14Eは、本発明の熱交換カテーテル・システム用の呼び水弁および流体調節器の一実施形態を提供する、例示的なフィードブロック・セクション554の構成部品を示す。前述のように、中心チャンバ636は、外付け流体供給源630に流体連通する第1の入口と、リザーバ・セクション554に流体連通する第2の入口と、ポンプ・セクション552に流体連通する出口とを有する。中心チャンバ636内に取り付けた呼び水弁670は、リザーバ・セクション550内の流体レベルに応じて、第1の入口と第2の入口のいずれかから中心チャンバ内への流れを調節する。呼び水弁670は、図14Aの上から下まで、柔軟部材672と、中心オリフィス675を有する環状ガイド・ディスク674と、弁部材676と、弁ばね678と、弁棒680を含む。図14Dおよび14Eからわかるように、これらの構成要素は、一連の徐々に小さくなる3つの段階状サブチャンバ682a、682b、682cを実際に含む中心チャンバ636内に配置される。
【0101】
中実の柔軟な膜672が中心チャンバ636を覆うが、より詳細には、その膜をカウンタ・ボア684内に据えて、接着剤などでその内部に固定する。図9に見られる制御ユニット404の受容開口402におけるプッシュ・ロッド402などのプッシュ・ロッドが、カバー・プレート442b内の呼び水弁のアパーチャ618を通して柔軟な膜672を下方に押しやるように位置決めされ、したがって図14Eからわかるように、弁部材676を下向きに変位させる。プッシュ・ロッド420は、熱交換カセット400bに収容されないことが望ましく、手動で作動させまたは図9の弁作動システム416などによって自動的に制御することができる。プッシュ・ロッド420は、例えばリニア・アクチュエータ418によって作動することができ、制御ユニット404の受容開口402に熱交換カセット400bが完全に挿入されたことをきっかけとして制御ユニット404のプロセッサから信号があると、プッシュ・ロッドを下向きに変位させる。
【0102】
弁部材676が下向きに変位すると、前述の充填チャネル634(図13B)によって、流体が外付け流体供給源630から上方の最大サブチャンバ682aへと流れる。ガイド・ディスク674は、上部サブチャンバ682aの底面の肩686に嵌め込まれ、上部サブチャンバと中間サブチャンバ682bの間に移行部を画定する。中間サブチャンバ682bは、出口チャネル640に開いており、また、より小さいサブチャンバ682cにも繋がっている。下部サブチャンバ682cは、入口チャネル638を介してリザーバ・セクション550から流体を受け取る。剛性の弁棒680は、下部サブチャンバ682cの床面のキャビティ内に固定状に位置決めされ、上向きに伸びて上部サブチャンバ682aに至る。弁部材676は、弁棒680の上端を受容する内部キャビティ688を含み、それらの間で比較的直線状の運動を可能にしている。弁ばね678は、弁棒680を取り巻き、弁部材676と下部サブチャンバ682cの床面との間に圧縮状態で配置される。
【0103】
弁部材676は、1対のOリング692を受容して止める凹面状の肩から外側に向かって伸びた下部環状フランジ690を有する。弁部材676は、これらのOリング692がガイド・ディスク674(図14D)の下側と中間サブチャンバ682b(図14E)の床面に交互に接触するように、弁棒680に沿って直線状に移動する。ばね678は、通常、上部Oリング692がガイド・ディスク674の下側を封止するように、弁部材676を弁棒680に沿って上方へと付勢する。図14Dに見られるこの初期設定位置では、流体が、リザーバ・セクションから入口チャネル638を通って下部サブチャンバ682c、中間サブチャンバ682bに流れ、出口チャネル642を経てポンプ・ヘッド552に向かう。あるいは、このシステムの準備注入動作中、図14Eに見られるようにプッシュ・ロッド420を下方に移動させ、下部Oリング692が中間サブチャンバ682bの床面を接触し封止するように弁部材676を下向きに変位させる。この動作モードでは、流体は、充填チャネル634から上部サブチャンバ682aへと流れ、弁部材とガイド・ディスク674の中心オリフィス675との間の環状スペースを通り、中間サブチャンバ682bを通り、さらに出口チャネル642を通ってポンプ・ヘッド552へと向かう。
【0104】
e.例示の圧力調節器
ポンプ出力圧力を調節する圧力調節器が望ましい。また、そのような圧力調節器は、ポンプによって生じる流体ラインの振動など、いかなる圧力の変動も減衰させるように働くことがわかる。図10Aから10Dの実施形態における前述の減衰チャンバも含め、圧力を調節するいくつかの方法がある。図14Aの熱交換カセット400bでは、フィードブロック・セクション554は典型的な圧力調節システムを含むことができ、このシステムは、ばね負荷がかかったダイアフラムを含むが、このダイアフラムは、閾値を超えた圧力を和らげるように曲げられて、比較的一定の圧力で熱交換カテーテルへ熱伝達流体が供給されることを確実にする。第3の実施形態では、以下に述べるように、加圧した作動流体に直接接触する圧力調節器はないが、代わりにポンプ・モータの電流をモニタして一定の値に維持する。当業者なら、これらだけが圧力調節器の種類ではなく、コストや重量、サイズなどの制約、設計上の問題点などに基づいて、利用する特定のタイプのものを選択できることを理解するであろう。
【0105】
図14Bに示す圧力調節弁の一実施形態では、ポンプの出口が、圧力調節器チャンバ646の入口に流体接続している。ポンプ出力での流体の圧力は、摩耗および流体温度に応じていくらか変動する可能性があり、例えば約3.2〜3.8kg/cm2(45〜54psi)になる場合がある。図13Eに関して先に述べたように、第2の実施形態の圧力調節器の一部はリザーバ・チャンバ684内に存在し、線形調整のためフランジ600内に取り付けた圧力調節器シャフト598と、このシャフトとダイアフラム606との間に押し付けられた標準ばね604とを含む。
【0106】
ダイアフラム606の右側にはプッシュ・ロッド700が付属し、スロットル・チャンバ702内を伸びている。スロットル・チャンバ702は、図14Cに最もよく見られるように、4つのローブ706によって取り囲まれた中心スロットル・アパーチャ704の形をした、クローバ形の断面形状である。プッシュ・ロッド700は右側に伸び、スロットル・アパーチャ708内を通る。カウンタ・スプリング・ブロック710はアパーチャ708の面全体に取り付けられ、カウンタ・スプリング712によってプッシュ・ロッド700へと付勢される。初期設定位置では、ブロック710が開放アパーチャ708に対して付勢され、それによって、感知チャンバ714と調節器チャンバ646との間で流体耐密な封止を行う。あるいは、ばね604によってダイアフラム606に対して加えられた圧力とリザーバ・キャビティ584内の圧力が、感知チャンバ714に向けてダイアフラム606を変形させるのに十分である場合、プッシュ・ロッド700は、カウンタ・スプリング・ブロック710をスロットル・アパーチャ708から引き離す。この運動によってスロットルのギャップが開き、流体はそのギャップを通して、調節器チャンバ646と感知チャンバ714との間を流れることができる。スロットル・ギャップは比較的狭いので、流体がその内部を流れるときには圧力低下が生じる。
【0107】
実際に、標準ばね604は、ダイアフラム606に対する圧力、したがってプッシュ・ロッド700に対する圧力が約3.0kg/cm2(約43psi)になるように調整される。調節器チャンバ646内の圧力が約3.0kg/cm2(約43psi)よりも高い場合、カウンタ・スプリング・ブロック710はスロットル・アパーチャ708の方により接近するように押しやられ、したがってスロットル・ギャップが狭くなる。これは、スロットル・ギャップの端から端までの圧力低下が、調節器チャンバ646内の流体と、ダイアフラム606に対して標準ばね604により設定された圧力、一般には約3.0kg/cm2(約43psi)である圧力との間の超過圧力と同じになるように、スロットル・ギャップが自動的に調整されるよう機能する。このため、感知チャンバ714内の流体の圧力が約3.0kg/cm2(約43psi)に調節されるように作用する。流体は、出口648(図13C)を通って感知チャンバから出ていき、そこからカテーテル流入ライン652(図13B)へと流れる。このように、比較的一定の圧力で、流体はカテーテルに供給される。
【0108】
f.モータ電流を使用して流体の流れを制御する間接的方法
上述のように、熱交換カテーテルを通る熱交換媒体の圧力および/または流量の制御は、送出する流体の背圧に基づいてポンプの速度を調節することによって行われる。あるいは、従来の流量計を流体フロー・ライン内に設けることができる。しかし、これら従来のシステムのそれぞれは、さらにコストがかかり、故障やエラーが生じる可能性がある。さらに、そのようなモニタ要素は、流体に接触しないように設計を行って流体が汚染される可能性を回避することが望ましい。非接触式のフローセンサおよび圧力センサは、一般に、赤外線装置または超音波装置を、測定値の解釈をする関連するハードウェアと共に含み、高価であり使用中に故障が生じる可能性がある。その結果、カセットの設計から、圧力調節弁、圧力調節器チャンバ、および感知チャンバをなくすことが望ましいと考えられる。その場合、一定の圧力を確実に得ると共に滑らかな流体の流れを提供する別の手段を、カセットの設計に組み込むことができる。
【0109】
本発明は、熱交換媒体の流量または圧力をモニタするための従来の手段を包含するが、好ましい手段は、ポンプ駆動モータ内を流れる電流をモニタすることである。電気モータによって生じるトルクは、その電気モータに供給する電流に正比例する。以下に述べるポンプのように、ポンプ内の摩擦が無視できるほどであって、その結果摩擦によって生じたトルクがポンプの速度に応じて大きく変動しないような場合、以下に述べるような回転式ポンプ羽根によって生じた流体の圧力は、ポンプを作動する電気モータによって供給されるトルクに正比例する。(言い換えると、ポンプによって生じた圧力はシステムによって生じた背圧である。)したがって、モータによって生じた速度(rpm)とは無関係に一定量で電気モータに供給する電流を制御することによって、ポンプの圧力出力は比較的一定になると考えられる。この定電流に対する圧力調節は、当業者に周知の簡単な増幅フィードバックによって実現し、それについては本明細書でさらに詳細に記述しない。
【0110】
図5から8の実施形態に関して言えば、ポンプ駆動機構268は一般に、電気モータと、このモータを作動させるのに必要な電流を供給する電源を含むと言うことができる。定電流は、電源からの電圧を増幅器に送ることで得られ、そこではモータに定電流出力を供給するために、電圧入力の変動を調整し制御する。ポンプを駆動する電気モータに定電流が供給されると、モータは、一定のトルクを使い捨て可能な熱交換ユニット/カセットのポンプ・ヘッドに与え、最終的には、カテーテルへの流体に一定の圧力を与えることになる。
【0111】
したがって本発明の使い捨て可能なカセットの一実施形態では、カセットは、入口および出口を有する外部熱交換器と、熱交換器の入口に流体連通する第1の流体供給ラインと、熱交換器の出口に流体連通するポンプ入口を有しかつポンプ出口を有する使い捨て可能なポンプ・ヘッドと、ポンプ出口から送出した流体を受け取るためのポンプ出口に流体連通する第2の流体供給ラインと、ポンプ・ヘッドから送出する流体の圧力を調節するためのポンプ出口に流体連通する任意選択の圧力調節器とを含む。ポンプ・ヘッドは、増幅器制御器によって制御される電気モータによって作動するが、この増幅器制御器はポンプ・ヘッドに定電流を供給し、それによってポンプ・ヘッドは、比較的一定の圧力を、第2の流体供給ライン内の流体に与える。
【0112】
例示のポンプ
ポンプ・セクション552は、図13Aの熱交換カセットのリザーバ・セクション550およびフィードブロック・セクション554、または図10Aの熱交換器400aのリザーバ・セクション450との使用に容易に適合し、定圧で熱交換流体を送出するように構成される。本発明のこの実施形態では、ポンプ給送機構が、熱交換流体を血管内熱交換カテーテルに供給するために熱交換流体供給システム内で急速な流れを生成し、またこのポンプ給送機構は、準カージオイド形のキャビティと、このキャビティへの入口と、このキャビティからの出口と、中心溝を有するロータを含んだポンプ・ヘッドと、この溝に滑動可能に取り付けられてキャビティの縁に衝突する羽根とを含む。
【0113】
図15Aから15Cに典型的な羽根型ポンプ・セクション552を示すが、ポンプ・セクション550は、準カージオイド形のキャビティ720と、ポンプ・ヘッド642を含む。ポンプ・ヘッド642は、円形でキャビティ720内で回転するロータ722を有し、またその端から端まで直径に沿って配置した中心溝724を有する。羽根726は、その溝に滑動可能に取り付けられ、キャビティ720の縁に衝突する。ロータ722がその中心を回転するにつれて、羽根726は溝724内を自由に前後に滑動し、その羽根の端部728a、728bは、キャビティ720の壁面に常に接触するようになる。
【0114】
図15Aおよび15Cを参照すると、ロータ722は、ピン732によってシャフト730と共に回転するよう取り付けられる。シャフト730は、流体耐密な配置構成で取り付けたシャフトを回転させる技術の当業者に知られている方法で設けられた、任意選択のスペーサ738によって分離されたシール材734および軸受け736内で回転する。
【0115】
図15Bを参照すると、流体入口チャネル742がフィードブロック・セクション554から導かれ、ロータ722の縁をちょうど越えたところでキャビティ720の内部に開いている。流体出口チャネル744は、ロータ722のその反対側でキャビティ720の内部に開いており、もとのフィードブロック・セクション554へと導かれている。ロータ722が回転するにつれて、羽根726は比較的流体耐密で常にキャビティの壁面740に接触するようになる。流体は、入口チャネル742からキャビティ720に入り、キャビティ壁面740と、ロータ壁面124と、羽根726の間のキャビティに収容される。ロータ722が回転するにつれて羽根726も動く。このため、流体の通路は、入口チャネル742からの熱交換流体が充填されるにつれてその面積が増大し、次いで羽根が出口チャネル744を通して熱交換流体を押しやるにつれ、その面積は減少する。ロータ722の外壁746は、弧748に沿ってキャビティの壁面740と比較的流体耐密に接触し、したがって流体は、ポンプの入口チャネル742から出口チャネル744まで直接移動することができない。ロータが回転するにつれて、流体は、入口チャネル742から準カージオイド形のキャビティ内に送出され、羽根によって出口チャネル744へと押し出される。流体通路の形状は、図15Bに見られるように、「三日月」形のようにすることができる。
【0116】
ポンプは、200〜1000rpmの範囲内で回転するように、かつ最長72時間機能するように設計される。より具体的には、ポンプは、非常に長い時間、例えば72時間を超えて、かなり速い回転速度で、例えば約800rpmで動作するように、かつ約0℃から45℃の間で変動する温度でポンプ流体に作用するように設計される。材料の選択は、これらの必要性を満たすようになされるべきである。例えばポンプ・ヘッドのロータ722は、過度に摩耗することなく回転しながらキャビティの壁面740(図15B)に対して長時間にわたる密接な接触が維持されるよう、十分に滑らかな状態の、剛性かつ耐久性ある材料で作製される。ロータ722は、例えばポリフッ化ビニリデンで作製することができ、羽根726は、高密度ポリエチレンなどの材料で作製することができる。
【0117】
熱交換カテーテルには、このカテーテルへの入口の圧力が比較的一定の状態で、例えば約2.8〜3.2kg/cm2(約40〜46psi)で、流体が供給されることが望ましいが、摩耗および温度の変動によってポンプ出力の圧力に影響が生じる可能性がある。圧力調節器を含む実施形態では、ポンプは、その出力の圧力が熱交換カテーテルに最適な圧力よりもわずかに高くなるように、例えば約2.9〜3.4kg/cm2(約42〜48psi)になるように設計され、その圧力は、調節されて所望の圧力約2.8〜3.2kg/cm2(40〜46psi)まで下げられる。ポンプの出力圧力が変化する場合、圧力調節器を使い捨て可能な熱交換カセットに組み込んで、熱交換カテーテルに熱伝達流体が比較的一定の圧力で確実に供給されるようにすることができる。圧力調節器は、例えば、図14Bに関して述べた圧力調節弁、図10Dに見られる圧力ダンパ、またはポンプ・モータの定電流調節とすることができる。
【0118】
羽根726の端部728a、728bは湾曲しているので、羽根の縁とキャビティ壁面740との接触点はロータ722の回転中に常に変化し、したがって、羽根の端部の一点のみが摩耗するのを避けられるという追加の利点がある。このため羽根726は、72時間ほどの間キャビティの壁面740を擦るが、それでも羽根と壁面との間に比較的流体耐密な接触状態を維持することができる。好ましい実施形態では、羽根は、わずかな隙間、例えば0.127mm(0.005インチ)の隙間がある状態で室温でキャビティ720にぴたりと嵌まるように設計される。この隙間は、動作中に生じる一時的かつ定常的な状態熱変化に順応する一手段であり、動作中の温度上昇による羽根の膨張を考慮したものである。このように正常動作中に生じる温度では、羽根の端部728a、728bは、ポンプ給送のためキャビティ720の壁面740との十分な接触を維持することになる。
【0119】
羽根がキャビティの壁面に常に接触するように、かつキャビティ内を円滑に動くことができるように、同様に熱変化に順応する非常に数多くのその他の羽根の設計がある。図16Aから16Cは、そのような設計の例の側面図である。図16Aでは、羽根750が切込みセクション752a、752bと共に構成されており、そのため動作中に羽根の膨張または収縮が可能になる。図16Bでは、羽根754が、動作中の端部758a、758bの膨張または収縮に順応するように圧縮性材料で作製した中心セクション756を画定する。図16Cでは、羽根760が中心ばね762を含んでおり、動作中に端部764a、764bを外側に付勢して、羽根の温度に関係なくキャビティの壁面に接触するようになされている。
【0120】
本発明の1つの重要な態様は、図15Dに見られる準カージオイド形のキャビティ720の幾何形状に関する。図15Bを思い出すと、キャビティの壁面740は、そのキャビティへの入口742および出口744を含んでおり、使い捨て可能な熱交換カセット400bのポンピング機構の一部である。ポンプ給送機構のポンプ・ヘッド642は、直径が「D」のロータ722と、前述の直径に沿った溝724(図15A)と、長さが「L」でありキャビティ740の縁に衝突するようその溝に滑動可能に取り付けた羽根726を含む。
【0121】
図15Dに示すように、キャビティ740の周辺は、4つの弧770a、770b、770c、770dに分割することができ、各弧の半径「R」はその中心をロータ722の中心に有し、キャビティの壁面740まで測定される。向きを定める目的で、弧770a、770b、770c、770dはロータ722の中心に対して画定され、0°の基線は、キャビティの入口と出口の間の中間点で定められ、すなわちロータ722の中心から、入口チャネル742と出口チャネル744(図15B参照)との中間のキャビティ壁面上の点まで投影した線である。0〜360°の角度は、この基線から時計回りに測定する。
【0122】
したがって、4つの弧は、以下のように画定される:(a)第1の弧770aは330°から30°であり半径はR1、(b)第2の弧770bは150°から210°であり半径はR2、(b)第3の弧770cは30°から150°であり半径はR3、そして(d)第4の弧770dは210°から330°であり半径はR4。4つの半径は、以下のように定義される。
R1=D/2
R2=L−(D/2)
R3=(D/2)+{[(L−D)/2]・[cos(1.5q+135)]}
R4=(D/2)+{[(L−D)/2]・[cos(1.5q−135)]}
【0123】
したがって、弧770aは円形であり、そのため一定の半径R1を有し、弧770bは、回転角度が30°から150°に増大するにつれて半径R3が変化するので円形ではなく、弧770cはやはり円形で、そのため一定の半径R2を有し、弧770dは、回転角度が210°から330°に減少するにつれて半径R4が変化するので円形ではない。これらの計算は、羽根が厚みを持ち、羽根の端部も半径を有し(すなわち湾曲し)、羽根とキャビティ壁面との正確な接触点がロータの回転と共にわずかに変化するので、やや概略的なものである。羽根の両端は同じ曲率半径なので、この不正確さは各面で等しく、カージオイド・キャビティの正確な形状を調整して、羽根とキャビティ壁面との全ての点における接触を補償しさらに維持することができる。
【0124】
次に図15Cを参照すると、シャフト730がロータ722の下に突出して3つのホイール772、774、および776が装着され、これらが再使用可能な主制御ユニット404(図9)内に収容したポンプ駆動機構と協働し、それによってシャフトに、したがってロータに回転運動が伝えられる。最上部のホイール772は平滑アライメント・ホイールであり、中間のホイール774は歯付き従動ホイールであり、最も下にあるホイール776は、もう1つの平滑アライメント・ホイールである。従動ホイール774は、例えばナイロンやポリウレタンなどのプラスチック材料で構成することができる。アライメント・ホイール772および776は、例えばポリカーボネート材料で構成することができる。これら3つのホイールは、再使用可能な主制御ユニット404上の複数のホイールと協働し、そのうちの2つをガイド・ホイール410として図9に示す。歯付き駆動ホイール408はポンプ駆動機構406によって駆動され、これを図17Aおよび17Bに示すが、これらの図は、制御ユニット404内のポンプ・ホイール772、774、および776の配置を示している。図17Aは、熱交換カセット400bが所定位置に位置決めされたときに制御ユニット404(図9)の受容開口402を覆う、歯車シールド778の配置も示す。
【0125】
熱交換カセット440bを再使用可能な主制御ユニット404に挿入すると、歯付き従動ホイール774は、モータ・ホイール708の歯が付いた部分に係合する。従動ホイール774およびモータ・ホイール408は、ガイド・ホイール410とアライメント・ホイール772、776との接触によって、係合した状態で保持される。図17Bからわかるように、ガイド・ホイール410は、より大きい直径の上部セクション782aおよび底部セクション782bと、小さい直径の中間セクション784を有する。このため、上部セクション782aはアライメント・ホイール772にぴたりと係合し、底部セクション782bはアライメント・ホイール776にぴたりと係合するが、それと同時に中間セクション784は歯付き駆動ホイール774に接触しない。ガイド・ホイールは、単一のスプール形状のユニットとして機械加工することができ、あるいは、上部セクション、中間セクション、および底部セクションが永久に一緒に添着される別個の部品にすることができる。歯付きモータ・ホイールは、アライメント・ホイール772にぴたりと係合するわずかに大きい上部セクション786a、および/またはアライメント・ホイール776にぴたりと係合するわずかに大きい底部セクション786bを有するように設計することもできる。モータ・ホイールは、平滑アライメント・ホイールの少なくとも1つに接触することが好ましい。
【0126】
アライメント・ホイールおよびガイド・ホイールをこのように位置決めすることによって、モータ・ホイール408および従動ホイール774の歯は、これらの歯が一緒にきつく押し合わないように、適切な距離でかみ合う。平滑アライメント・ホイール772、776の直径は、ほぼ従動ホイール774のピッチ円直径になり、駆動歯を適正に位置決めすることができる。同様に、モータ・ホイール408の上部セクション786aおよび底部セクション786bの直径は、ほぼ、モータ・ホイール408の歯付き部分780のピッチ円直径になる。これは、駆動シャフトに横力を与えることなく、または歯が押し込まれることによってそれらの歯の間に摩擦を引き起こすことなく、平滑な回転運動を伝達するのに有利である。
【0127】
従動ホイール774とモータ・ホイール408の直径ピッチは同じであり、しかしそれらの直径は一般に異なることになる。例えば、適切な直径ピッチは48(直径1インチあたり、歯が48個)であり、このため動作中に、最小限のノイズで十分な強度が得られることがわかった。典型的な従動ホイール774のピッチ円直径は2.54cm(1インチ)になり、一方、対応するモータ・ホイール780のピッチ円直径は、約9.53mm(0.375インチ)になる。
【0128】
熱交換カテーテル・システムのプライミング方法
図18Aおよび18Bを参照すると、熱交換流体を血管内熱交換カテーテルに供給するいくつかの方法が、流体流動経路によって示されており、各経路は、本発明の熱交換カセットの異なる実施形態を示すものである。これらの実施形態で、流体は、ポンプから熱交換カテーテルに流れ、カテーテルから戻って、外部熱交換器を通過し、次いで流体リザーバに入る。このリザーバから流体はポンプへと移動し、このサイクルを所望の期間、繰り返す。ポンプからカテーテルまでの流体通路には、任意選択の圧力調節器を位置決めすることができる。流体は、外付け流体供給源から供給され、図18Aの実施形態では呼び水弁に入り、図18および18Cの実施形態では、直接ポンプ・ヘッドに入る(当然ながら、図10Bに示すように、流体の外付け供給源はリザーバに接続することができる)。
【0129】
これらの方法およびそれぞれの流体経路の例は、図10Aおよび図13Aを参照することによってさらに理解されよう。一般にその方法は、
(a)ポンプ・ヘッドを作動させるために電力を供給するステップと、
(b)外付け流体供給源からチャンバに流体を移送するステップと、
(c)チャンバからポンプ・キャビティ内に流体を送出するステップと、
(d)ポンプ・キャビティからカテーテルに流体を送出するステップと、
(e)カテーテルから、加熱器/冷却器との間で熱が伝達されるよう位置決めされた外部熱交換器へと流体を送出するステップと、
(f)外部熱交換器から熱交換流体リザーバまで流体を送出するステップと、
(g)熱交換流体リザーバからポンプ・キャビティ内に流体を送出するステップと、
(h)カテーテルの操作期間中、ステップ(d)から(g)までを繰り返すステップとを含む。
【0130】
本発明の熱交換カセットでは最初に準備注入操作を行う、すなわち、外付け供給源から熱交換流体を充填し、過剰な空気を除去する。本発明のシステムのこの準備注入操作は、非常に数多くの方法で実現することができる。本発明の一実施形態は「バルブプライミング」機構を利用し、これは図13Aから図14Eの実施形態によって示される。このバルブプライミング機構は、外付け流体供給源からの流体入力を一時的に制御する弁などを有するプライミング・シーケンスを含み、このシステムが準備注入されると、弁によって、外付け供給源からのさらなる流体の入力が防止され、流体はその後、熱交換カセット400bおよび取り付けた留置カテーテルを含む閉回路内を循環する。図13Aから図14Eの実施形態では、バルブプライミング機構670が別個のユニット、すなわちフィードブロック・セクション554内に収容される。しかし、バルブプライミング機構は、隔壁430bの別の部分、例えばポンプ・セクション552またはリザーバ・セクション550の一部として位置付けでき、なお同じ役割を果たすことが理解される。
【0131】
また本発明は、上述の手段を使用して、熱交換流体を外付け流体供給源から血管内熱交換カテーテルに供給するために、熱交換流体供給システムのプライミングを自動的に開始しかつ停止するための方法も包含する。この方法は、
(a)ポンプを作動させるために最初に電力を供給するステップであって、リザーバがまだその容量いっぱいには充填されておらず、弁がその第1の位置にあり、ポンプが流体を下記のように送出するよう作動するステップ、すなわち流体が、
a.外付け流体供給源から流体供給ラインを通してチャンバの注入口に入り、流体出口から出てポンプ・キャビティに入り、
b.ポンプ・キャビティから流体戻りラインに入ってさらにカテーテルに至り、
c.カテーテルから流体供給ラインを通して外部熱交換器入口オリフィスに至り、
d.外部熱交換器出口オリフィスから熱交換流体リザーバに至り、
e.熱交換流体リザーバに入ってリザーバを充填するように作動するステップと、
(b)次いでリザーバをその容量いっぱいに充填するステップと、その時点で、
(c)弁がその第2の位置に動くように光流体レベル検出器が作動し、流体が熱交換流体リザーバからチャンバの流体入口に送出されさらに流体出口から出てポンプ・キャビティに入るようにポンプが作動するステップとを含む。
【0132】
本発明の使い捨て可能な熱交換カセット400bが初めに動作を開始すると、まずユニットには、充填チャネル634に至る注入口632に取り付けた生理食塩水のIVバッグなどの外付け流体供給源から、熱交換流体が充填される。さらに、弁作動システム416のリニア・アクチュエータ418が作動して、呼び水弁670をその第1の位置に配置し(図14E)、このとき弁部材676が十分に押し下げられる状態となって、流体が、IVバッグから弁チャンバ636の内部へと流れる。より具体的には、プライミング動作中、図9に見られる制御ユニット404の受容開口402内のプッシュ・ロッド420は、カバー・プレート442b(図13A)の呼び水弁アパーチャ618を通過し、柔軟部材672を下向きに変位させ、それによって、図14Eに見られるように、弁部材676を下向きに変位させる。したがって弁部材676上の下部Oリング692は、中間サブチャンバ682bの床面に接触して封止を行い、流体を、充填チャネル634から上部サブチャンバ682aに流し、中間サブチャンバ682bを通し、さらに出口チャネル642を通してポンプ・ヘッド552に向かうことになる。このように、外付け流体供給源630(図13B)からの熱交換流体は、フィードブロック・セクション554に入り、次いでポンプ・セクション552に流入する。ポンプ・セクション552から、流体は、圧力調節チャンバ646、出口チャネル648、および出口ポート650を通して送出され、さらにカテーテル流入ライン652に入って熱交換カテーテルに至る。流体は、その後、カテーテル内を循環し、フィードブロック・セクション554の入口ポート656に結合したカテーテル流入ライン654を通って戻り、ポンプ・セクション552内の貫流チャネル660を通って隔壁出口662に至る。流体は、外部熱交換器440bに入ってその内部を通過し、リザーバ・セクション550に戻る。流体がリザーバ・セクション550内に送出されるにつれ、流体によって押し退けられた空気は疎水性弁588を通して逃げていく。これは一般に、システムが熱交換流体で満たされるまで、かつ過剰な空気がシステムから排気されるまで続く。プロセスのこの時点で、弁670は外付け流体供給源630に対して閉じ(例えばプッシュ・ロッド420の自動解放によって)、カテーテルと熱交換カセット400bの間の流体供給回路が閉じる。
【0133】
リザーバ・セクションは、以下に述べるように、流体リザーバが充填されたときを検出する手段を備え、その手段によれば、リザーバ内の熱交換流体レベルを表す信号が再使用可能な主制御ユニットに供給される。このデータを使用することにより、再使用可能な主制御ユニットは、弁670の位置を変化させて流体の流路が変わるように、リニア・アクチュエータ416を調整する。したがって、リザーバ・セクション550内の流体レベルが十分なレベルにまで上昇すると、信号が再使用可能な主制御ユニットに送られて、リニア・アクチュエータ416を停止して解放位置まで移動するようにし、したがってプッシュ・ロッド420が引き込まれ、その結果、弁部材676がそのもとの第2の位置(図14D)に付勢される。この第2の位置では、現在満たされているリザーバからの流体が、フィードブロック・セクション554を通ってポンプ・セクション552へと向けられ、一方、外付け流体供給源からの流体の流れは減少し、または完全に停止する。
【0134】
好ましい実施形態では、システムが満たされてカテーテルまたは外部熱交換器または隔壁内のいかなる気泡もリザーバ・セクション550に確実に放出されそこから大気中に排気されたことをレベル・センサが示した後、ポンプは、ある期間作動し続ける。流体は、リザーバ出口チャネル561(図13E)を通ってリザーバの底部から引き出され、空気は、疎水性弁588が位置付けられているリザーバの上部に向かって上昇するので、これがシステムから空気をパージするように働く。したがって呼び水弁670も、上述の第1の位置と第2の位置との中間位置である第3の位置を有してよいことに気付くことが重要である。このように、熱交換流体は、呼び水弁670がこの中間位置に対して開いた場合、リザーバまたは外付け流体供給源から、あるいはこれら双方から同時に中心チャンバ636へと入ることができる。したがって、例えば第1、中間、次いで第2の位置でポンプを利用する意図の実施形態では、流体は、外付け流体供給源(第1の位置、図14E)のみからポンプに入ると考えられ、次いで流体は、一部が外付け流体供給源からポンプに入り、一部がリザーバ・セクション550(中間位置)からポンプに入ると考えられ、最後に流体は、リザーバ・セクション550(第2の位置、図14D)のみからポンプに入ると考えられる。
【0135】
システムのプライミングは、患者に熱交換カテーテルを挿入する前に、熱交換バルーンが身体の外部にある状態で行われることに留意されたい。実際に、熱交換バルーンは管状シース内に押し込められていることが望まく、または別の方法で半径方向に抑制されて、プライミング中に膨張するのを防止する。プライミングが終了したら、カテーテルおよびシースを患者の所望の位置、典型的には脈管構造内に挿入し、次いでシースを除去することができる。したがってシースは、血管内に挿入する間、半径方向に圧縮されたカテーテルのプロフィルを維持するのを助け、それによって外傷が防止され挿入が容易になって、処置が迅速に行われるようになる。
【0136】
図13から図15の実施形態および図18Aの流れ図を参照すると、熱交換流体を血管内熱交換カテーテルに供給するための方法は、
(a)流体を外付け流体供給源630から流体リザーバ550に移送するステップと、
(b)ポンプ・ヘッド642が作動するように電力を供給するステップと、
(c)外付け流体供給源からの流体によって空気が押し退けられるにつれて、流体リザーバ・セクション550から空気を排出するステップと、
(d)加熱器/冷却器との間で熱伝達が行われるように位置決めされ外部熱交換器440bを介して、流体を、流体リザーバ・セクション550からポンプ・キャビティ720を通して熱交換カテーテルに送出し、その流体と、外部熱交換器440bから流体リザーバ550に至る循環流体によって押し退けられた空気とを送出するステップと、
(e)流体リザーバ・セクション550からの循環熱交換流体によって押し退けられた空気を排出するステップと、
(f)カテーテルの操作期間中、ステップ(a)から(e)までを繰り返すステップとを含む。
【0137】
熱交換流体リザーバの流体レベルを測定するためのステップは、リザーバが満たされたままであることを確実にするために行うことが好ましい。そのようなステップは、流体レベルを決定するために光流体レベル検出器を使用することも含むことができ、ステップ(h)は、リザーバがその容量いっぱいに満たされたときに始まり、ステップ(b)は、ステップ(h)が始まったときに停止する。図10Aの実施形態に関するカテーテルに熱交換流体を供給するための方法は、受動プライミング機構を使用し、一方、図13Aの実施形態に関する方法は、既に詳細に述べた独自のバルブプライミング機構を使用する。図10Aに示すプライミング機構では、流体レベル測定ステップが、流体レベルを決定するために光流体レベル検出器を使用することを含むこともでき、ステップ(g)は、リザーバがその容量いっぱいに満たされたときに始まり、ステップ(b)は、ステップ(g)が始まったときに停止する。
【0138】
より具体的には、図10Aから10Dの実施形態は、外付け供給源454からの熱交換流体によって受動的にシステムのプライミングを行う機構を提供する。外付け流体供給源454は、一般にリザーバ450の上方に吊るされまたは配置され、流体供給ライン456によってリザーバに接続されている。リザーバ450は、流体供給ライン456に接続した注入口476を有し、したがって流体は、ポンプ・セクション452に連通するリザーバ450に流入し、このためポンプ・ヘッド490のプライミングが行われる。初めに、患者の身体の外部にカテーテルを置き、シースで覆った状態で、ポンプを作動させ、それによって外付け流体供給源から熱伝達流体を引き出して、システム内で循環させる。このシステム内の空気は、疎水性通気孔を通して排気する。システム内の圧力が外付け流体供給源からの上部圧力に等しい場合(これは、ポンプ圧力、およびリザーバ上方の外付け流体供給源の高さに応じたレベルで生じることになる)、システムは本質的に平衡状態になり、外付け供給源から流体を引き出すのを中止する。この時点で、カテーテルおよび熱交換カセット・システムは準備注入されたと考えられる。熱交換カテーテルは、一般にその後患者に挿入され、システムが作動するにつれて、上述の圧力平衡を維持するためにシステムに加えられる必要がある全ての流体は、流体供給ラインを介してリザーバに流体連通している外付け供給源から引き出されることになる。同様に、例えばシステムの加熱や膨張に起因するシステム内の圧力のいかなる上昇も、もとの外付け流体供給源454内に流れる流体によって緩和されることになる。このシステムは、流体供給の軽微な膨張および収縮に反応できるので、流体の高レベルをモニタする必要はなく、低レベルの冗重センサのみ熱交換カセットに組み込む必要がある。これには、センサなどを必要とせずに、比較的均一な流体レベルが自動的に維持されるという利点がある。
【0139】
安全システム
リザーバ・セクションは、システム内にある熱交換流体の量をモニタする手段を備えることができ、より具体的には、流体リザーバ内に入っている流体のレベルを検出するための光学手段を備えることができる。熱交換流体は生体適合性流体であり、外付け供給源の体積はわずかに約250mlであるので、患者への流体の漏れは問題にならないと考えられる。しかし、流体レベルが非常に低く下がると空気が患者に送出されるので、非常に望ましくない。したがって本発明の熱交換流体供給システムは、システムが許容できないほど低下した場合に警告またはその他の手段を設定することができるように、システム内の流体レベルを検出するよう設計される。好ましい実施形態では、隔壁リザーバ内に設けた2個のプリズムを利用し、そのそれぞれは、対応するビーム源およびビームを持っている。各プリズムは、そのプリズムに隣接した位置で再使用可能な主制御ユニットに取り付けた、対応するビーム源およびセンサを有することになる。
【0140】
例えば図9は、図13Aから13Eの隔壁計設内の第1のプリズム590aに関する光ビーム源412および光ビーム・センサの配置を示す。図13Eからわかるように、リザーバ容器580の端部に構成した透明な窓591により、リザーバ・キャビティ584内の流体レベルの光学的観察が可能になる。第2のプリズム590bが存在する場合は、それに関しても隣接するビーム源およびセンサを設けることができる。
【0141】
図10Aの隔壁のデザインでは、ビーム源およびセンサを、第1および第2のプリズム486a、486bの下の位置の、制御ユニット404上に位置決めすることができる。例えば、図6Bの下部ガイド・アセンブリ266の下側に取り付けた流体レベル測定センサ・モジュール276は、熱交換カセットと相互に作用するようにかつユニット内の流体レベルを表示するように、透明な窓316に位置合わせして配置した光送信器/センサを含んでよい。プリズムは回折面を有し、ポリカーボネートなどの材料を使用して個別に機械加工してリザーバ・セクション内に添着することができ、またはそのセクションの一部として機械加工することができる。この場合も、流体レベル検出方法を機能させるのに1個のプリズムしか必要としないが、以下に述べる第2の冗長プリズムを含むことが望ましいと考えられる。
【0142】
第2のプリズム/ソース/センサは冗長であり、第1のプリズムと同じ流体レベルをモニタするが、たとえ第1のプリズム/ソース/センサが適正に機能できないとしても、安全機構として作動するよう機能する。あるいはプリズムの1つは、リザーバ内の流体がある高レベルに達したときに、制御ユニットに信号を送るのに使用することが可能な、「高レベル」感知システムを有することもできる。これは、例えばバルブプライミング・システムを使用し、いつ弁を作動させていつプライミング・シーケンスを停止させるかを決定するのに高レベルまたはフル・レベルの検出が必要である場合に、有用である。望むなら、高レベル・センサと低レベル・センサの両方を各プリズムに関して使用することができる。これらのセンサは、光ビームのレベルに流体が存在し、またはそのレベルに流体が存在しないことを示す信号を、発生することになる。光ビーム源およびセンサが位置決めされ、すなわち光ビームがタンク上部付近へ向けられると、流体がそのレベルに達したという表示によって、制御システムから、例えば充填シーケンスを停止させるという適切な応答が引き出される。一方、タンク底部の流体レベルを感知するようにセンサを位置決めしまたは光ビームを向ける場合、流体レベル検出器は、低い流体レベルを検出するよう構成され、そのような低レベルを表す信号を発生することができる。熱交換カセットは、リザーバ内の流体が低レベルであることを示す信号に応答するよう構成することができる。例えばポンプ・ヘッドは、この信号に応答して低流体レベルが検出されたときにポンプ・ヘッドがポンプ給送を停止するように設計することができ、したがって空気は熱交換カテーテル内に送出されない。さらに、警告音を発生することができ、図5Cのディスプレイ200などのように警告表示を作動させて、低流体レベルの状態であることを操作者に警告することができる。
【0143】
本発明の好ましい実施形態では、リザーバ・セクションは、流体リザーバが非常に低いことを検出する手段を備えている。操作中、光ビーム源をオンにして光ビームを生成し、その光をプリズム底部に向けて、もとの光ビーム・センサへと反射させる。一般にこの光源は、リザーバに流体が充填され始めた後に動作を開始する。そのため流体はリザーバ内にあり、したがってセンサは、反射光ビームを観測しない。これが事実である限り、ポンプは動作し続け、流体を熱交換カセットおよびカテーテル内に移動させる。しかし、流体レベルが光ビームのレベルよりも下がると、センサは反射光ビームを観測し、これがきっかけとなってポンプの動作を止め、システムを停止させる。
【0144】
バルブプライミング・シーケンスを含む本発明の実施形態では、光ビーム源をオンにして光ビームを生成し、これをプリズムの上部に向けてもとの光ビーム・センサへと反射させる。センサが反射光ビームを観測する限り、熱交換カセットの充填またはプライミング操作は行われ続ける。流体レベルが上昇するにつれ、いくつかの点では、光ビームが偏向してもはやもとのセンサには反射されないようなレベルに到達する。センサがもはや反射光ビームを観測しない場合には、熱交換カセットのプライミング操作が停止する。その後、流体レベル検出器は、低流体レベルおよび高流体レベルを検出するよう構成され、検出器は、低レベルであることを表す第1の信号と、高レベルであることを表す第2の信号を発生する。初めに弁はその第1の位置にあり、第1の信号に応答してこの第1の位置に維持され、それによって流体は、高レベルに達するまでリザーバに入ることができ、そのレベルに達した時点で検出器は第2の信号を発生し、弁を作動させてその第2の位置に動かす。図14Aおよび図14Dから14Eを具体的に参照すると、呼び水弁670の弁部材676は「第2」の位置(図14D)に付勢され、フィードブロック・セクション554を介してリザーバ・セクション550とポンプ・セクション552の間に流体を流すことが可能になる。したがってカテーテルと熱交換カセットの循環システムは閉じる。弁部材676が「第1」の位置(図14E)にある場合、外付け供給源からの流体が、通常は閉じている流体循環システムに流入してそれを補うことができる。
【0145】
本発明が意図する追加の安全システムは、流体システム内に送出される可能性があるどのような気泡も検出するために、フロー・ライン上の様々な位置に気泡検出器を含み、かつシステムの一部または流体が許容できないほど高いまたは低い温度である場合に信号を送ることができる温度モニタを含む。流体センサ光ビーム源が動作可能であるかどうかを示す検出器は、例えば、システムがオンになったがリザーバ内の流体が不十分でありそれによってビームがもとの検出器へと回折するときに初めに光ビームを検出するように位置する検出器を配置することによって、提供することができる。図1、2、および5に示す制御ユニットは、複数の患者温度センサを備える。2つの異なるセンサからの温度信号が著しく異なって、これらのセンサの1つ、おそらくはシステムの制御を行う1つのセンサが誤って配置され、機能せず、または落下したなどの状況が示される場合には、警告音を発することができ、システムを停止させることができる。その他同様の安全および警告システムが、本発明のシステムの範囲内で考えられる。
【0146】
この出願には、本発明のシステムおよび方法を使用した患者の治療に関する5ページのプロトコル(実験計画)を添付している。具体的には、一般的記述(ページA1)、科学的記述(ページA2〜A3)、そして具体的なプロトコル記述(ページA4〜A5)がある。これらの記述を本出願に特別に援用する。
【0147】
例示する目的で本発明の特定の実施形態について述べてきたが、添付の特許請求の範囲に定義した本発明から逸脱することなく上述の実施形態に数多くの変更を加えることができることが、当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換カテーテルと、外部熱交換器と、熱交換流体を流すためのポンプとを含む回路内の熱交換流体の温度および流れを制御するための制御器であって、
前記熱交換流体が入っている外部熱交換器に熱接触している熱および/または冷気発生要素と、
患者の生物物理学的な状態を表す患者センサから信号を受信し、該信号に応答して前記発生要素を制御するマイクロプロセッサと、
前記熱交換流体を送出するために前記回路に含まれるポンプを作動させる機械式駆動ユニットと、
前記回路内の流体レベルを検出し、該流体レベルを表す流体レベル安全信号を発生させるための流体レベル検出器であって、前記流体レベル安全信号が、前記ポンプの動作を制御することによって応答する前記マイクロプロセッサに送信される流体レベル検出器と
を含む制御器。
【請求項2】
前記発生要素がTE冷却器である請求項1に記載の制御器。
【請求項3】
患者の生物物理学的状態を感知するための複数の患者センサをさらに含み、前記マイクロプロセッサがこれらセンサのそれぞれに応答して前記発生要素を制御する請求項1に記載の制御器。
【請求項4】
前記マイクロプロセッサが、前記複数の患者センサのそれぞれからの信号を比較してこれら信号が一致しない場合には警告状態を生成するよう構成される請求項3に記載の制御器。
【請求項5】
前記駆動ユニットが電気ポンプであり、さらに、前記モータ用の電流が、該モータに定電流を供給するフィードバック・ループを通して供給される請求項1に記載の制御器。
【請求項6】
前記マイクロプロセッサが目標温度入力をさらに受信し、前記患者センサが患者の温度を表し、前記信号が感知された温度を表し、目標温度が感知された温度よりも高い場合には前記マイクロプロセッサが前記流体に熱を加えるように働き、目標温度が前記感知された温度よりも低い場合には前記マイクロプロセッサが前記流体から熱を奪うように働き、感知された患者の温度が目標温度に近付くにつれて流体に熱を加えまたは流体から熱を奪う速度を低下させるように比例積分微分(PID)応答によって前記マイクロプロセッサが前記患者センサからの信号に応答する請求項1に記載の制御器。
【請求項7】
熱交換カテーテルと、外部熱交換器と、熱交換流体を流すためのポンプとを含む回路内の熱交換流体の温度および流れを制御するための制御器であって、
前記熱交換流体が入っている外部熱交換器に熱接触している熱および/または冷気発生要素と、
患者の生物物理学的な状態を表す患者センサから信号を受信し、該信号に応答して前記発生要素を制御するマイクロプロセッサと、
前記熱交換流体を送出するために前記回路に含まれるポンプを作動させる機械式駆動ユニットと、
前記回路内の気泡を検出し、該回路内の気泡の検出に応答して気泡安全信号を発生するための気泡検出器であって、前記気泡安全信号が、前記ポンプの動作を制御することによって応答する前記マイクロプロセッサに送信される気泡検出器と
を含む制御器。
【請求項8】
熱交換カテーテルと、外部熱交換器と、熱交換流体を流すためのポンプの内部の熱交換流体の温度および流れを制御するための制御器において、
外部熱交換器に熱接触している熱および/または冷気発生要素と、
熱交換流体の外付け供給源であって、該外付け供給源が前記回路に流体接続しており、該回路がベントを含み、該ベントによって気体の通過が可能になるが前記回路からの液体は通過することができない外付け供給源と、
制御器の動作を指示するためのマイクロプロセッサであって、2つの動作モード、プライミング・モードおよび実行モードを有し、前記プライミング・モードと前記実行モードとを切換え可能であり、前記プライミング・モードの場合に、前記回路に対し、該回路が前記流体で満たされかつ該回路内の全ての気体が前記ベントを通して放出されるまで前記外付け供給源からの流体を受容して熱交換流体を送出するよう指示し、次いで前記実行モードに切り換え、該実行モードの場合に、制御器に対し、前記外付け供給源から流体を受け取ることなく前記回路内に前記流体を循環させるよう指示するマイクロプロセッサと
を含む制御器。
【請求項9】
前記回路が、該回路が前記熱交換流体で満たされているかどうかを感知しそれに応答して充満状態を示す信号を発生するためのセンサをさらに含み、前記マイクロプロセッサが、この充満状態を示す信号を受信して、該充満状態を示す信号に応答して前記プライミング・モードから前記実行モードに切り換える請求項8に記載の制御器。
【請求項10】
前記マイクロプロセッサが、前記プライミング動作モードから前記実行動作モードに手動で切換え可能である請求項8に記載の制御器。
【請求項11】
前記回路の外部に接触する温度センサであって、その内部の熱交換流体の温度を感知し、温度信号を発生し、前記信号に応答して制御ユニットに指示するマイクロプロセッサに温度信号を送るようになった温度センサをさらに含む請求項8に記載の制御器。
【請求項12】
前記発生要素に接触する温度センサであって、前記要素の温度を感知し、温度信号を発生し、前記信号に応答して制御ユニットに指示するマイクロプロセッサに該温度信号を送るようになった温度センサをさらに含む請求項8に記載の制御器。
【請求項13】
患者に挿入可能な熱伝達カテーテルと、
使い捨て可能な熱交換プレートと、
熱伝達カテーテルおよび熱交換プレートに結合したコンジットであって、それらの間に熱交換媒体を循環させることが可能なコンジットと、
加熱器/冷却器ユニットを収容し且つスロットを有する主制御ユニットであって、このスロットが、該スロットを通して使い捨て可能な熱交換プレートを主制御ユニットに、加熱器/冷却器ユニットに熱連通状態で据え付けることができるように寸法決めされ、加熱器/冷却器ユニットが、使い捨て可能な熱交換プレート、コンジット、および熱伝達カテーテルを介して患者の温度に影響を及ぼすことができる主制御ユニットと
を含む熱伝達カテーテル・システム。
【請求項14】
患者に挿入可能な熱伝達カテーテルと、
内部に流体経路を有し、該流体経路を通して流体を移動させるようになった一体型ポンプ・ヘッドを組み込んだ、使い捨て可能な熱交換ユニットと、
ポンプ・ヘッドが作動すると熱交換媒体を循環させることが可能な熱伝達カテーテルおよび熱交換プレートに結合したコンジットと、
加熱器/冷却器およびポンプ駆動装置を有する再使用可能な主制御ユニットであって、ポンプ駆動装置が一体型ポンプ・ヘッドに係合するように、したがって流体経路が加熱器/冷却器に熱連通状態であるように、使い捨て可能な熱交換ユニットが主制御ユニットに結合するようになった主制御ユニットと
を含む熱伝達カテーテル・システム。
【請求項15】
患者の少なくとも一部の温度を調節する方法であって、
熱交換媒体を循環させることが可能なコンジット群を介して結合した使い捨て可能な熱伝達カテーテルと熱交換ユニットを準備すること、
加熱器/冷却器ユニットを収容し且つスロットを有する主制御ユニットを準備すること、
熱交換ユニットを、スロットを通して主制御ユニットに、かつ加熱器/冷却器ユニットに熱連通状態で据え付けること、
熱伝達カテーテルを患者に挿入すること、
主制御ユニット内で熱伝達カテーテルと熱交換ユニットの間に流体を循環させること、そして
熱伝達カテーテルを介して患者の温度が調節されるように、熱交換ユニットと加熱器/冷却器ユニットの間に熱を伝達すること
を含む方法。
【請求項16】
患者の体内に据え付けた熱伝達カテーテルを通して熱交換媒体を循環させる方法において、
熱交換媒体を循環させることが可能なコンジット群を介して結合した使い捨て可能な熱伝達カテーテルと熱交換ユニットであって、熱交換ユニットが、コンジットを通して流体を循環させるようになった一体型ポンプ・ヘッドを組み込んでいる、熱伝達カテーテルと熱交換ユニットを準備すること、
ポンプ駆動装置を有する再使用可能な主制御ユニットを準備すること、
ポンプ駆動装置が一体型ポンプ・ヘッドに係合するように、熱交換ユニットを主制御ユニットに結合すること、
患者に熱伝達カテーテルを挿入すること、そして
ポンプ駆動装置を作動させて、熱伝達カテーテルと熱交換ユニットの間に流体を循環させること
を含む方法。
【請求項17】
内部に流体の流路を有する熱伝達カテーテルと、
熱伝達経路およびリザーバを有する使い捨て可能な熱伝達カセットと、
熱伝達媒体を循環させることが可能な熱伝達カテーテルと熱伝達カセットに結合され、かつ流体の流路、熱伝達経路、およびリザーバを含む熱伝達媒体循環ループの一部を形成するコンジットと、
リザーバ内の流体のレベルを検出するように位置決めされたセンサと
を含む熱伝達カテーテル・システム。
【請求項18】
熱伝達カテーテル、熱伝達ユニット、熱伝達媒体を循環させることが可能な熱伝達カテーテルおよび熱伝達ユニットに結合したコンジットを含む熱伝達媒体循環ループと、
循環ループ内で熱伝達媒体を循環させるために循環ループ内の熱伝達媒体に接触するインペラ型ポンプと、
インペラ型ポンプにより生じるバック・トルクを検出し、検出したバック・トルクの値を、循環ループ内の熱伝達媒体圧力の値に変換する電子フィードバック・ループと
を含む熱伝達カテーテル流れ制御器。
【請求項19】
熱伝達カテーテルと、
両側の側壁の間に熱伝達経路を画定する熱伝達ユニットであって、それら側壁のうちの一方が、比較的薄くかつ柔軟で最小限の断熱をもたらし、一方、反対側の側壁が、熱伝達ユニットを構造的に支えるように比較的柔軟ではない熱伝達ユニットと、
熱伝達媒体を循環させることが可能な熱伝達カテーテルと熱伝達ユニットに結合したコンジットと
を含む熱伝達カテーテル・システム。
【請求項20】
入口および出口を有する外部熱交換器を含むカセットと、
熱交換器の出口に流体連絡するポンプ入口とポンプ出口を有するポンプ・ヘッドと、
熱交換器の入口に流体連絡する第1の流体供給ラインと、
熱交換カテーテルに流体を供給するための第2の流体供給ラインであって、ポンプ出口から送出される流体を受容するためにポンプ出口に流体連絡する第2の流体供給ラインと、
ポンプ・ヘッドを駆動するよう接続した電気モータと、
電気モータを制御するための増幅器制御器であって、ポンプ・ヘッドに定電流を供給し、それによって、ポンプ・ヘッドに、比較的一定の圧力を第2の流体供給ライン内の流体に供給させる増幅器制御器と
を含む熱伝達カテーテル・システム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図14E】
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【図14F】
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【図14G】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【公開番号】特開2011−224394(P2011−224394A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151453(P2011−151453)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【分割の表示】特願2002−513525(P2002−513525)の分割
【原出願日】平成13年7月20日(2001.7.20)
【出願人】(501076298)レイディアント メディカル インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】RADIANT MEDICAL, INC.
【Fターム(参考)】