説明

経頭蓋磁気刺激を用いた電界パルスパラメータの制御のためのシステムおよび方法

経頭蓋磁気刺激時においてパルスパラメータを制御するためのシステムおよび方法が提供される。複数のコイルが外部身体部分上に配置され、高速スイッチを有する刺激装置に連結された外部制御ユニットを用いて制御される。スイッチのタイミングおよび前記刺激装置内の他のパラメータにより、パルスパラメータ(例えば、パルス形状)が決定される。このようなシステムおよび方法を用いて入手可能な多様なパルス形状により、内部体器官内の生理学的効果の制御が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体器官中で発生する電界パルスパラメータを経頭蓋磁気刺激の使用を通じて制御および変更し、これにより、その結果得られる当該器官中の神経細胞活性化特性に影響を与えるためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経頭蓋磁気刺激(TMS)は非侵襲的技術であり、短めの磁気パルスを脳または他のヒトの器官に付加することで、ニューロン構造を活性化させる技術である。これらのパルスは、外部から患者上に配置された電磁コイル(例えば、脳治療のために頭皮上に配置されたもの)を通じて刺激装置から送られる高電流(例えば、下層組織内の電流)によって付加され、これにより、局所的軸索脱分極を得る。この技術は、中枢神経系の研究において主要なツールとなっており、また、多様な神経行動学的疾患および神経学的疾患に対して有望となり得る治療法となっている。
【0003】
ほとんどのTMSデバイスにおいて、コンデンサが事前規定された電圧まで充電され、単一の高速スイッチを用いて、単一の刺激コイルを通じてコンデンサから放電させることにより、磁気刺激が行われる。TMSコイル内の短い電流に起因して、前記電流の時間導関数に比例する電界が発生する。この電界がニューロン組織に付加されると、ニューロン膜電位に変化が生じる.この電位変化に起因して、前記膜の過分極または脱分極が発生し得る。前記膜が臨界レベルまで脱分極させられると、特定の条件下においてニューロン刺激が発生する。
【0004】
従来のTMSデバイスにおいて生成される電流のパルス形状は、単相または二相の正弦波である。このパルス形状は、コンデンサCのキャパシタンス、刺激コイルのインダクタンスL、および回路内の抵抗Rによって決定される。刺激装置が二相パルスと共に用いられた場合、単相パルスが用いられた場合とは対照的に、サイクル最終部においてそのエネルギーの一部がコンデンサへと戻り、その結果、反復的動作が可能となる。そのため、二相パルスは反復TMS(rTMS)において用いられ、単相パルスは単一のパルスの生成に用いられることが多い。
【0005】
制御可能TMS(cTMS)という名称の方法について、Peterchevらの(「A Transcranial Magnetic Simuilator Inducing Near−Reactangular Pulses With Controllable Pulse Width(cTMS)」、IEEE Trans Biomed Eng 2008、55:257〜266)中に開示がある。この方法において、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)がスイッチとして用いられ、IGBTをオフにすることにより、単相パルスを制御された様態でトランケートすることができる。前記コイルからのエネルギーはレジスタ中で散逸し、前記コンデンサには戻らない。そのため、この方法における反復TMSのための能力は限定される。この方法を二相パルス形状に対して利用した方法について、米国特許公開番号第2007/0293916Al中に開示がある。これは、前記二相に対して2つのコンデンサおよびIGBTを用いることにより、行われる。しかし、この方法においては、スイッチイングは電流が高いときに行われることが多いため、過渡電圧ノイズおよびスイッチイング損失という深刻な問題に繋がり得る。さらに、この開示の場合、矩形パルス形状のみの生成に限定される。加えて、この開示の場合、異なる体器官または体器官領域において異なるパルス形状を誘導することは不可能である。さらに、単一のコイルの使用についてしか開示されていない。
【0006】
正確なニューロン組織応答は、特定のパルスパラメータ(例えば、誘導電界のパルス形状)によって異なる場合がある。そのため、パルスパラメータ(例えば、パルス形状)を制御された様態で変化させる方法があれば、有利である。パルス形状パラメータの制御の可変性および柔軟性を増大できれば、脳研究ならびに精神医学、神経学および末梢神経に関連する疾患における多様な臨床用途において有用であり得る。
【0007】
多チャンネル経頭蓋磁気刺激の方法について、米国特許公開番号第US20060287566号中に開示がある。この方法において、別個のチャンネルを用いて異なるコイル要素を動作させる。これら複数のチャンネルは、同時に活性化してもよいし、あるいは、異なる遅延時間と共に逐次的に活性化してもよい。各チャンネルの動作間の遅延時間は、マイクロ秒レベルで制御される。この開示中には、本発明におけるようなパルスパラメータ、パルス形状およびパルス極性の特定の制御についての言及が無い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、経頭蓋磁気刺激のためのシステムが提供される。前記システムは、身体の第1の外部身体部分上に配置されるように構成された第1の電磁刺激コイルと、第2の場所に配置されるように構成された第2の電磁刺激コイルと、高電流を電磁コイルに提供する刺激装置であって、前記刺激装置は、前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイルに電気的に接続される、刺激装置とを含む。前記刺激装置は、少なくとも1つのエネルギー保存デバイスと、少なくとも1つの外部から制御可能な高速スイッチとを含む。前記少なくとも1つのエネルギー保存デバイスは、前記電磁刺激コイルのうち少なくとも1つに電流を放出するように構成され、これにより、その結果、内部体器官内因おいて電界パルスが得られる。前記少なくとも1つの外部から制御可能な高速スイッチは、前記放出された電流パルスのパラメータの制御のために、少なくとも1つのエネルギー保存デバイスと、少なくとも1つの電磁刺激コイルとに接続される。前記システムは、外部制御ユニットをさらに含む。前記外部制御ユニットは、前記外部から制御可能な高速スイッチのパラメータを制御するように、前記刺激装置と電気通信し、これにより前記電流パルスの少なくとも1つのパラメータの制御を可能にし、これにより、ニューロン構造における生理学的効果の制御を可能にする。
【0009】
本発明の別の実施形態によれば、内部体器官における生理学的効果を経頭蓋磁気刺激を用いて得る方法が提供される。前記方法は、第1の電磁刺激コイルおよび第2の電磁刺激コイルを有するシステムと、前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイルを刺激する刺激装置であって、前記刺激装置は、少なくとも1つのエネルギー保存デバイスおよび少なくとも1つの外部から制御可能な高速スイッチを含む、刺激装置と、前記高速スイッチを制御するように前記刺激装置と電気通信する外部制御ユニットとを提供するステップと、前記第1の電磁刺激コイルを第1の身体部分上に配置するステップと、前記第2の電磁刺激コイルを第2の場所に配置するステップと、前記少なくとも1つの外部から制御可能な高速スイッチのパラメータを前記外部制御ユニットを用いて制御することで、制御された電流パルスを提供するステップと、記制御された電流パルスを前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイルのうち少なくとも1つを通じて放出することで、内部身体部分において電界パルスを生成するステップとを含む。
【0010】
前記エネルギー保存デバイスは、複数のエネルギー保存デバイスを含み得、前記外部から制御可能な高速スイッチは、1つまたは複数のエネルギー保存デバイスに接続された複数の高速スイッチを含み得る。前記外部制御ユニットは、前記少なくとも1つの外部から制御可能な高速スイッチをオンまたはオフするタイミングと、前記エネルギー保存デバイス上の初期電圧の振幅と、前記エネルギー保存デバイスからの放電の周波数と、パルス間またはパルスの組み合わせ間の時間間隔と、各パルスのパルス幅と、各動作期間における前記電磁刺激コイル内の電流方向の相対的極性と、各動作期間における前記電磁刺激コイル内の電流が流れる方向と、各種類のパルスの数とを制御できるように、構成される。
【0011】
前記第2の電磁刺激コイルが配置される第2の場所は、前記身体から遠隔であり得る。あるいは、前記第2の場所は第2の外部身体部分であり得、前記第2の外部身体部分において、前記第1の外部身体部分および前記第2の外部身体部分は、同一の身体部分であってもよいし、前記同一の身体部分の異なる領域であってもよいし、あるいは、異なる身体部分であってもよい。前記内部体器官は、前記脳、脊髄または末梢神経内のニューロン組織であり得る。前記制御された電界パルスは、ニューロン構造に対して生理学的効果を持つように構成される。前記生理学的効果は、神経細胞活性化の閾値、誘導されたニューロン活動電位の振幅、誘導されたニューロン活動電位のレイテンシー、ニューロン膜の脱分極、ニューロン膜の過分極、脱分極または過分極あるいは他の任意のパラメータの速度に関連し得る。
【0012】
第1の電磁刺激コイルおよび第2の電磁刺激コイルは、同一のインダクタンスを持ってもよいし、あるいは異なるインダクタンスを持ってもよい。第1の電磁刺激コイルおよび第2の電磁刺激コイルは、直列に接続してもよいし、あるいは並列に接続してもよい。前記システムは、複数のコイルを含み得る。前記複数のコイルは、他のコイルと同一または異なるインダクタンスを有する複数のコイルを有し、直列および並列の任意の組み合わせにおいて接続される。前記高速スイッチは、前記システム内を流れている電流が低いときにオンまたはオフをすることが可能であり、その場合、電圧ノイズおよびスイッチイング損失を低減し、あるいは、前記システム内を流れている電流が高いときにオンまたはオフをすることが可能であり、その場合、特殊なコンポーネントが必要となり得る。前記第1電磁刺激コイルのおよび前記第2の電磁刺激コイルは、両者のための1つのエネルギー保存デバイスと、前記第1の電磁刺激コイルのための第1のエネルギー保存デバイスと、前記第2の電磁刺激コイルのための第2のエネルギー保存デバイスとに接続され得、あるいは、第1の動作期間において第1のエネルギー保存デバイスおよび第2の動作期間において第2のエネルギー保存デバイスまたはその任意の組み合わせに接続され得る。前記コイルのうち少なくとも1つは、発熱の低減およびエネルギー消費の低減が得られるように、構成され得る。エネルギー消費が低減することにより、前記刺激装置は、高周波数において電流を提供することができる。前記刺激装置はまた、低減した電圧または電流を提供するように構成することもでき、これにより、サイズおよび/または価格の低いコンポーネントの使用が可能となる。いくつかの実施形態において、前記第1の電磁刺激コイルは第1のチャンネルに接続され、前記第2の電磁刺激コイルは第2のチャンネルに接続される。
【0013】
他に規定無き限り、本明細書中用いられる技術用語および科学用語は全て、本発明が属している分野の当業者によって一般的に理解されるような意味と同じ意味を有する。本明細書中に記載されている方法および材料と同様または均等の材料と同様を本発明の実践または試験において用いることが可能であるが、適切な方法および材料について以下に説明する。矛盾がある場合、定義を含む特許明細書が優先される。加えて、材料、方法および例はひとえに例示目的のためのものであり、限定的なものではないことが意図される。
【0014】
本発明の上記利点およびさらなる利点は、以下の説明を添付図面と共に参照すれば、より深く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来のTMSデバイスの模式図である。
【図2A】TMSデバイスによって生成された二相パルスの一例の図示である。
【図2B】TMSデバイスによって生成された単相パルスの図示である。
【図3】本発明の実施形態によるシステムの模式図である。
【図4】本発明の実施形態による図3のシステムの刺激装置を模式的に示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態による回路図である。
【図6】本発明の一実施形態のパラメータによる、図5に示す回路の動作時に生成され得るパルス形状を示す。
【図7】本発明の別の実施形態のパラメータによる、図5に示す回路の動作時に生成され得るパルス形状を示す。
【図8】本発明の別の実施形態のパラメータによる、図5に示す回路の動作時に生成され得るパルス形状を示す。
【図9】本発明の別の実施形態のパラメータによる、図5に示す回路の動作時に生成され得るパルス形状を示す。
【図10】本発明の別の実施形態のパラメータによる、図5に示す回路の動作時に生成され得るパルス形状を示す。
【図11】本発明の別の実施形態のパラメータによる、図5に示す回路の動作時に生成され得るパルス形状を示す。
【図12】本発明の別の実施形態による回路図である。
【図13】本発明の一実施形態のパラメータによる、図12に示す回路の動作時に生成され得るパルス形状を示す。
【図14】本発明の一実施形態のパラメータによる、図12に示す回路の動作時に生成され得るパルス形状を示す。
【図15】本発明の別の実施形態のパラメータによる、図12に示す回路の動作時に生成され得るパルス形状を示す。
【図16】本発明の別の実施形態による回路図である。
【図17】本発明の一実施形態のパラメータによる、図16に示す回路の動作時に生成され得るパルス形状を示す。
【図18】本発明の別の実施形態のパラメータによる、図16に示す回路の動作時に生成され得るパルス形状を示す。
【図19】本発明の別の実施形態のパラメータによる、図16に示す回路の動作時に生成され得るパルス形状を示す。
【図20】本発明の別の実施形態のパラメータによる、図16に示す回路の動作時に生成され得るパルス形状を示す。
【図21】本発明の別の実施形態のパラメータによる、図16に示す回路の動作時に生成され得るパルス形状を示す。
【図22】本発明の別の実施形態のパラメータによる、図16に示す回路の動作時に生成され得るパルス形状を示す。
【図23】本発明の別の実施形態による回路図である。
【図24】本発明の一実施形態のパラメータによる、図23に示す回路の動作時に生成され得るパルス形状を示す。
【図25】本発明の別の実施形態による回路図である。
【図26】本発明の一実施形態のパラメータによる、図25に示す回路の動作時に生成され得るパルス形状を示す。
【図27】本発明の別の実施形態のパラメータによる、図25に示す回路の動作時に生成され得るパルス形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
簡潔さおよび明確な例示のため、図面中に示す要素は、必ずしも正確に縮尺通りに描写されていないことが理解される。例えば、要素のうちいくつかの寸法を明確さのために他の要素と比べて誇張している場合もあるし、あるいは、いくつかの物理的コンポーネントを1つの機能ブロックまたは要素内に含めている場合もある。さらに、適切と考えられる場合、対応する要素または類似の要素を示すために参照符号を図面中において繰り返し示している場合もある。さらに、図面中に示すブロックのうちいくつかは、単一の機能として組み合わせてもよい。
【0017】
以下の詳細な説明において、本発明の深い理解を得るために、多数の特定の詳細について説明する。当業者であれば、これらの特定の詳細無しに本発明を実施することが可能であることを理解する。他の場合において、本発明を曖昧にしないために、周知の方法、手順、コンポーネントおよび構造についての詳細な説明を省略している場合もある。
【0018】
本発明は、経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いてパルスパラメータを制御するシステムおよび方法に関する。本発明によるシステムおよび方法の動作の原理および動作は、図面および添付の図面を参照すれば、より深く理解することができる。
【0019】
少なくとも本発明の一実施形態を詳細に説明する前に、本発明の用途は、以下の説明に記載の要素または図面中に示す要素の構成および配置の詳細に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、あるいは、多様な様式で実施または実行が可能である。また、本明細書中において用いられる表現および用語は説明目的のためのものであり、限定的なものとしてみなされるべきではないことが理解されるべきである。
【0020】
従来のTMSデバイスでは、高速スイッチを用いて電気エネルギー保存デバイス(例えば、コンデンサ)からの放電が単一の刺激コイルを通じて行われる。図1中に、従来のTMSデバイスを模式的に示す。コンデンサCは事前規定された電圧まで充電され、動作時において、コンデンサCは単一の刺激コイルLを通じて放電し、これにより、コイルL内に電流パルスが発生する。高電流高速スイッチSを用いて、電流流れを制御する。回路中の抵抗をRとして示す。前記コイルが体器官(例えば、頭部)上に配置されると、前記コイルは、組織内に電界パルスを発生させ得る。この電界パルスは、前記コイル内の電流パルスの時間導関数に比例する。前記組織中の電界パルスに起因して、ニューロン構造中の膜電位が変化し得る。前記ニューロン膜が閾レベルまで脱分極されると、神経細胞活性化が発生し得る。
【0021】
従来のTMSデバイスは、二相または単相のパルス形状を生成し得る。二相パルスの一例を図2Aに示す。図示されているのは、コイル電流Ibp(菱形)と、電界Ebp(四角)と、コンデンサ内の電圧Vbp(三角)と、ニューロン構造中において発生し得る膜電位変化Vmbp(x’s)である。この例において用いられるパラメータは、キャパシタンスC=I80μF、インダクタンスL=16μH、抵抗R=0.05オーム、コンデンサ内初期電圧Vo=3OOVである。Ibpの単位はアンペアであり、Vbpの単位はVであり、Ebpの単位はV/メートルであり、Vmbpの単位(これは、一般的にはmV単位で測定されることが多い)は、図2A中において、グラフスケールに合わせて正規化単位で図示されている。
【0022】
図2Aから、サイクル終了時において電気エネルギーの一部がコンデンサへと戻り、そのため、サイクル終了時のVbpの値が、初期値Voのうち大きな割合を占めていることが分かる。従って、一般的に、二相パルスを生成する刺激装置を反復TMS(rTMS)において用いることができる。
【0023】
単相パルスの一例を図2Bに示す。図示されているのは、コイル電流Imp(菱形)と、電界Emp(四角)と、コンデンサ内電圧Vmp(三角)と、ニューロン構造内に発生し得る電位変化Vmbp(x’s)とである。この例において用いられるパラメータは、回路を大幅に減衰させるために抵抗がR=V(4L/C)=0.596オームである点を除いて、図2Aにおいて用いられている例と同じである。単位も図2Aと同じである。しかし、これらの単位は例示的なものであり、限定的なものとしてみなすべきではない点に留意されたい。
【0024】
図2Bから、二相パルスとは対照的に、単相パルスにおいて、電気エネルギーはコンデンサに戻らないことが分かる。そのため、高周波数反復TMSにおいて単相パルスを生成する能力が限定される。
【0025】
本出願が開示するシステムおよび方法の場合、従来のTMSシステムおよび方法と対照的に、コイル電流を多様なパルス形状で生成することが可能であり、その結果得られる電界も制御可能な様式で得ることができる。多様なパルス形状を生成する能力を提供することにより、TMSの生理学的効果も制御することができる。なぜならば、生物組織中において得られた生理学的効果は、誘導された電界パルスのパラメータの大きく依存し得るからである。詳細には、ニューロン組織における神経細胞活性化の閾値は、電界パルス形状に依存し得る。例えば、活動電位の生成は、ニューロン膜中のナトリウムチャンネルの開口二位損する。3つのmゲートおよび1つのhゲートを有するナトリウムチャンネルがあり、これらのmゲートは、膜脱分極時に開口し、過分極時に閉口し、短い時定数を有する。この1つのhゲートは、膜過分極時に開口し、脱分極時に閉口し、長居時定数を有することが周知である。そのため、脱分極パルスの直前に過分極パルスを誘導することにより、神経細胞活性化の閾値を低下させることができる。一方、超閾値脱分極パルスの直前にサブ閾値脱分極パルスを誘導することにより、神経細胞活性化の閾値を増加させることもできる。このような操作を用いて、より深い脳部位においても、TMS効果の焦点精度を上げることができる。加えて、活動電位の閾値は、脱分極速度にも依存し得る[AzouzR、GrayCM.(2000)Dynamic spike threshold reveals a mechanism for synaptic coincidence detection in cortical neurons in vivo.Proc Natl Acad Sci USA 97:8110−5;Naundorf B、WoIf F、Volgushev M(2006)Unique features of action potential initiation in cortical neurons.Nature 440:1060−1063]。そのため、脱分極速度の制御により、特に異なる脳領域が異なるパルス形状および/または異なる脱分極速度によって影響を受ける場合に、刺激効果のさらなる局在化が可能となる。
【0026】
神経細胞活性化の閾値に加えて、前記誘発された活動電位の振幅も、多様なパラメータ(例えば、強度、立ち上がり時間、パルス幅および脱分極のパルス形状および/または過分極電界パルス、脱分極電界パルスおよび/または過分極電界パルスの数、パルス間の時間間隔、および動作周波数)に依存し得る。
【0027】
ニューロン応答に影響を与える別のパラメータとして、パルス間の時間遅延がある。例えば、対パルスI波rTMSにおいて、パルスがI波周期性(1.5msおよびその倍数)を有する場合、第2のパルスと第1のパルスによって生成されたI波との間の相互作用が促進されることが公知である[Ziemann U、Tergau F、WassermannEM、Wischer S、Hildebrandt J、Paulus W.Demonstration of facilitatory I wave interaction in the human motor cortex by paired transcranial magnetic stimulation.J Physiol(Lond)1998;511:181〜190;ThickbroomGW、Byrnes ML、Edwards DJ、Mastaglia FL.Repetitive paired−pulse TMS at I−wave periodicity markedly increases corticospinal excitability:a new technique for modulating synaptic plasticity.Clin Neurophysiol2006;117:61〜66]。一方、他の刺激間隔(ISI)(例えば、1msまたは2.5ms)の場合、抑制に繋がり得る[RoshanL、Paradiso GO、Chen R.2つの 位相s of short−interval intracortical inhibition.Exp Brain Res2003;151:330〜337]。本発明のシステムを用いて、異なるISIと共に、異なる脳領域にわたって2個以上のTMSパルスを誘導することができる。各パルスの振幅を制御することができる。加えて、特定のパルスによって各脳領域内に誘導される効果の振幅は、パルスを発生させるコイルまたはコイル要素の位置および方向に依存し得る。このようにして、ここに開示されるシステムおよび方法により、特定の脳領域における促進および/または他の脳領域における抑制が可能となる。各パルス組間の刺激間隔は、各個人の波パターンに整合するように調節することができる。そのため、例えば、1.5msの間隔ではなく当該個人のI波ピークに従って調節された間隔でI波周期性を得ることができる。この方法により、特定の脳領域(例えば、深い脳領域)におけるTMS効果の局所性を増大させることができる。加えて、特定の脳領域における促進と、他の脳領域における抑制とを誘導する能力により、多様な神経学的疾患および精神医学的疾患(例えば、鬱病、双極性疾患、依存症、摂食障害、肥満、卒中リハビリテーション、てんかん、片頭痛、パーキンソン病、統合失調症、自閉症、心的外傷、トゥレット症候群、眼瞼けいれんなど)における臨床結果を向上させ得る。
【0028】
本発明のシステムおよび方法は、複数の電磁刺激コイルを有利に含む。これら複数の電磁刺激コイルは、同様のおよび/または異なるインダクタンスを有し、並列または直列にあるいは双方ともまたは並列または直列に電気的に接続され、1つ以上のエネルギー保存デバイスを備える。これら1つ以上のエネルギー保存デバイスは、1つ以上の高速スイッチを用いて前記コイルに接続され、各スイッチをオンかつ/またはオフするタイミングは、ユーザによって制御可能である。いくつかの実施形態において、これらのスイッチは、電流が低い場合にオンかつ/またはオフ可能であり、これにより、電圧ノイズおよびスイッチイング損失を低減させる。他の実施形態において、スイッチの開口および/または閉口時間のうちいくつかまたは全ては、電流が高いときに行うことができる。このような場合、部品を注意深く選択することが必要となり得、スナバ回路の使用も含まれ得る。いくつかの実施形態において、その他のコイル/コイルは体器官(例えば、頭部)から遠隔にある状態で、これらの刺激コイルのうち1つを当該体器官に取り付けることができる。他の実施形態において、同一の場所において2個以上のコイルを体器官に近接して配置する。さらに他の実施形態において、1つ以上の他のコイルが別の体器官に近接して配置されているかまたは異なる場所(例えば、頭部近隣の異なる場所)において体器官の近隣に配置されている状態で、1つ以上のコイルを特定の場所において当該体器官に近接して配置する。このようにして、身体中の異なる領域(例えば、異なる脳領域および/または脊髄または末梢神経領域)において生成される生理学的効果を区別することが可能となり得る。例えば、特定の脳領域(例えば、より深いニューロン構造)において誘導された選択性効果を上げることが可能となり得る。
【0029】
2個以上のコイルを用いることにより、電力消費の節約およびコイル発熱の低減も可能となる。詳細には、体器官の近隣のコイル(単数または複数)内を流れる電流量を低減することができ、これにより、発熱問題を最小化することができる。
【0030】
2個以上のコイルを用いることにより、神経細胞活性化の誘導に必要な電圧の低減も可能となり得る。さらに、前記刺激コイル内に誘導される必要な電流の低減も可能となり得る。そのため、本出願のシステムおよび方法において複数のコイルを用いることにより、現行のTMS刺激装置の場合よりもより安価かつ/または小型の部品を前記システムにおいて用いることが可能となり得る。なぜならば、前記システムは、より低い値の電圧および/または電流に耐えるように設計され得るからである。
【0031】
コンデンサエネルギーは、1/2CVに比例する。ここで、Cはキャパシタンスであり、Vは電圧である。従って、サイクル終了時において電圧の一部を特定のパルス形状と共にコンデンサ(単数または複数)に回復させる能力により、二相ではない多様なパルス形状(例えば、単相パルスまたは本出願中に開示される他の任意のパルス形状)を用いて、反復動作がより高い周波数で可能となる。
【0032】
ここで図3を参照する。図3は、本発明の実施形態によるシステム10の模式図である。システム10は、第1の電磁刺激コイル12および第2の電磁刺激コイル14を含む。第1の電磁刺激コイル12および第2の電磁刺激コイル14はそれぞれ、対象16の身体上に配置することが可能である。本明細書中に示す実施形態において、第1の電磁刺激コイル12および第2の電磁刺激コイル14は、対象16の頭部上に配置され、前記脳の治療に用いられる。しかし、他の身体部分に対してもシステム10を用いることが可能であることが容易に明らかである。刺激装置18は、第1の電磁刺激コイル12および第2の電磁刺激コイル14に電気的に接続され、これらの電磁刺激コイルに高電流を提供するように構成される。いくつかの実施形態において、別個の刺激装置18を第1の電磁刺激コイル12および第2の電磁刺激コイル14それぞれに対して用いる。
【0033】
いくつかの実施形態において、第1の電磁刺激コイル12を外部身体部分上に配置し、第2の電磁刺激コイル14を前記対象の身体から遠隔に配置する。いくつかの実施形態において、第2の電磁刺激コイル14を外部身体部分上にも配置する。前記外部身体部分は、whichmaybe同一の身体部分であってもよいし、前記同一の身体部分の異なる領域であってもよいし、あるいは、異なる身体部分であってもよい。
【0034】
第1の電磁刺激コイル12および第2の電磁刺激コイル14内に高電流が生成されると、内部体器官内に電界パルスが発生する。いくつかの実施形態において、前記内部体器官は、脳、脊髄または末梢神経である。これらの場合において、前記電界パルスは、前記内部体器官内のニューロン構造に対して生理学的効果を持ち得る。例えば、前記電界パルスは、神経細胞活性化の閾値、誘導されたニューロン活動電位の振幅、誘導されたニューロン活動電位のレイテンシー、ニューロン膜の脱分極、ニューロン膜の過分極、脱分極または過分極の速度、促進、抑制、または他のパラメータに影響を与え得る。
【0035】
ここで図4を参照する。図4は、本発明の実施形態による刺激装置18を模式的に示すブロック図である。刺激装置18は、第1の電磁刺激コイル12および第2の電磁刺激コイル14のうち少なくとも1つの中に電流を放電する少なくとも1つのエネルギー保存デバイス20と、少なくとも2つの外部から制御可能な高速スイッチ22および23とを含む。これらの少なくとも2つの外部から制御可能な高速スイッチ22および23はそれぞれ、エネルギー保存デバイス20と、第1の電磁刺激コイル12および第2の電磁刺激コイル14のうち少なくとも1つとに接続される。外部制御ユニット24は、エネルギー保存デバイス20および高速スイッチ22および23のパラメータを制御するように、刺激装置18と電気通信する。外部制御ユニット24により、高速スイッチ22および23または2個よりも多い高速スイッチのオン/オフが可能となる。さらに、外部制御ユニット24により、各オン/オフのタイミング、エネルギー保存デバイス20上の初期電圧の振幅、エネルギー保存デバイス20の電流放電の周波数、パルスまたはパルスの組み合わせ間の時間間隔、パルス幅、パルス形状、パルス列またはパルスまたはパルス組み合わせの長さ、パルス列間の時間間隔、異なる動作期間におけるコイル12および14内の電流方向の相対的極性、コイル12および14内の電流流れ方向、各種類のパルスの数、および他の任意のパラメータの制御が可能となる。
【0036】
本発明の一実施形態において、第1の電磁刺激コイル12および第2の電磁刺激コイル14は、1つのエネルギー保存デバイスに接続される。本発明の別の実施形態において、第1の電磁刺激コイル12は第1のエネルギー保存デバイスに接続され、第2の電磁刺激コイル14は第2のエネルギー保存デバイスに接続される。さらに別の実施形態において、動作期間が異なる場合、異なる構成が必要となり得る。例えば、第1の動作期間において第1のエネルギー保存デバイスが用いられ得、第2の動作期間において第2のエネルギー保存デバイスが用いられ得る。
【0037】
複数のエネルギー保存デバイス20および複数の高速スイッチ22を用いて、第1の電磁刺激コイル12および第2の電磁刺激コイル14を直列または並列に制御することができることが容易に明らかである。さらに、各高速スイッチ22または23により、1方向またはその他方向および/または両方向における電流流れが可能になり得、各方向における前記流れのオン/オフと、流れのオン/オフのタイミングとを別個に制御することも可能である。パルス間の時間間隔の制御を非限定的に挙げると、例えば、0〜1000マイクロ秒の範囲、1〜1000ミリ秒の範囲、およそ1.5ミリ秒またはその倍数、およそ1ミリ秒、およそ2.5ミリ秒、0.5〜10ミリ秒の範囲、0.1〜100ミリ秒の範囲、1〜500マイクロ秒の範囲、または他の範囲がある。加えて、パルス間の時間間隔は、個人の波パターン(例えば、I波のピークまたはD波のピーク)に合わせて調節することができる。パルス列内のパルス間の間隔も、相互に異ならせてよい。放出された電流パルスは、反復単相電流パルス、反復二相電流パルス、交互の方向の反復単相電流パルス、または他の構成であり得る。さらに、2つよりも多くの電磁刺激コイルを本発明において用いることができる。本明細書中、以下、いくつかの非限定的な実施形態および例を示す。
【0038】
ここで図5を参照する。図5は、本発明の一実施形態による回路図である。図5に示す実施形態において、2つの刺激コイルL1およびL2が、1つのコンデンサC1および4つのZ1a、Z1b、Z2aおよびZ2bと共に並列に接続されている。図5に示す実施形態において、スイッチZ1a、Z1b、Z2aおよびZ2bはIGBTである。しかし、任意の適切なスイッチを用いてよい。各スイッチを開くまたは閉めるタイミングは、ユーザが制御することができる。
【0039】
図5に示す回路の特定の動作において、電流がゼロに近いときにスイッチイングが行われ得、これにより、過渡電圧ノイズおよびスイッチイング損失が最小化される。前記回路のさらに他の動作において、電流が高いときに前記スイッチイングが行われ得る。このような場合、適切なスナバ回路の使用が必要となり得、また、高電圧および/または電流のノイズに耐え得る部品を注意深く選択することも必要となり得る。図5に示す回路は、異なる値のコイルインダクタンス、キャパシタンス、各回路中の抵抗、初期電圧、ならびに各スイッチの開く異なるタイミングおよび閉まる異なるタイミングと共に用いることができる。いくつかの実施形態において、コイルL1およびL2は、異なるエネルギー保存デバイスまたはコンデンサに接続可能であり、これにより、初期電圧の別個の制御およびよって前記2つのコイル内の電流振幅の制御が可能となる。
【0040】
図5の回路のいくつかの例について、以下に説明する。
【0041】
例1:1つの非限定的な例において、コンデンサC1のキャパシタンスC=25μFであり、コイルL1のインダクタンスof150μHであり、コイルL2のインダクタンスは16μHであり、前記2つの回路内の抵抗R1およびR2はどちらも0.05オームであり、前記スイッチのうち2つ(Z1aおよびZ2b)は常に閉められている。各スイッチが開くタイミングまたは閉まるタイミングは、ユーザによって制御可能である。
【0042】
ここで図6を参照する。図6は、例1のパラメータに従って図5に示す回路の動作時に生成可能なパルス形状を示す。図6中に図示するのは、L1中の電流L1(L1)、L2中の電流I(L2)、コンデンサ近隣の電流I(C1)、およびコンデンサ電圧V(C1)である。この例において、前記コンデンサを初期電圧of300Vまで充電する。0〜40μsの間、Z2aのみが開かれ、これにより、コイルL2内のみに電流が流れる。40μsにおいて、スイッチZ1bも開かれ、これにより、(より低いインダクタンスを有する)コイルL2内を流れる電流と反対方向において(より高いインダクタンスを有する)コイルL1内に電流が流れる。この例において、コイルL2内に単相パルスが発生し、コイルL1内に別の単相パルスが発生することが分かる。しかし、コンデンサ電圧V(C1)は、1サイクルの終了時においてその初期値の約85%を取り戻す。そのため、ほとんどの電気エネルギーが前記コンデンサへと戻り、これにより、高周波数rTMSの生成が実行可能となる。
【0043】
この回路による活性化は、いくつかの様態で行うことができる。例えば、
【0044】
1.コイルL2を体器官(例えば、頭部)の近隣に配置し、コイルL1を前記体器官から遠隔位置に配置する。この場合、前記体器官内に形状I(L2)の単相パルスが誘導される。このパルス形状は、単一のパルスモード、低周波数または高周波数TMSにおいて誘導され得る。
【0045】
2.コイルL1を体器官(例えば、頭部)の近隣に配置し、コイルL2を前記体器官から遠隔位置に配置する。この場合、前記体器官内に形状I(L1)の単相パルスが誘導される。このパルス形状は、より長いパルス幅およびより小さな電流振幅を有する。このパルス形状は、単一のパルスモード、低周波数または高周波数TMSにおいて誘導され得る。
【0046】
3.コイルL2およびコイルL1をどちらとも体器官(例えば、頭部)の近隣に配置し、近い場所において同一の電流極性を用いる。この場合、前記体器官内に二相パルスが誘導される。この二相パルスの形状はI(C1)と同様であり、パルス形状I(L1)およびI(L2)の合計である。正確なパルス形状は、前記コイル間の電磁結合に起因して変化し得、前記コイルの構成および相対的配置、位置および電流極性によって異なる。このパルス形状は、単一のパルスモード、または低周波数または高周波数TMSにおいて誘導され得る。
【0047】
4.コイルL2およびコイルL1をどちらとも体器官(例えば、頭部)の近隣に配置し、近い場所において反対の電流極性を用いる。この場合、2つの単相パルスの合計が前記体器官内において誘導され、これは、前記パルス形状I(L1)およびI(L2)の同一電流方向における合計である。正確なパルス形状は、前記コイル間の電磁結合に起因して変化し得、前記コイルの構成および相対的配置、位置および電流極性によって異なる。このパルス形状は、単一のパルスモード、または低周波数または高周波数TMSにおいて誘導され得る。
【0048】
5.3または4と同様であるが、前記2つのコイルは、異なる体器官または体器官(例えば、頭部)の近隣の異なる場所の近隣に配置する。この場合、前記2つの電流内に誘導された電流パルスの異なるコンボリューションに対応する異なるパルス形状が前記身体内の異なる領域において発生する。前記身体中の各領域内の正確なパルス形状は、各コイルからの距離と、各コイル中の電流パルスの振幅および時間的特徴とによって異なる。
【0049】
例2:別の非限定的例において、コンデンサC1はC=25uFであり、コイルL1のインダクタンスは16μHであり、コイルL2のインダクタンスは16uHであり(よって、前記2つのコイル中のインダクタンスは同様または同一であり)、前記2つの回路中の抵抗R1およびR2はどちらとも0.05オームであり、前記スイッチのうち2つ(Z1aおよびZ2b)は常に閉められている。各スイッチの開くタイミングまたは閉まるタイミングは、ユーザによって制御可能である。
【0050】
ここで図7を参照する。図7は、図5に示す回路を例2のパラメータに従って動作させたときに発生し得るパルス形状を示す。図7中に図示されているのは、L1中の電流I(L1)、L2中の電流I(L2)、コンデンサ近隣の電流I(C1)、およびコンデンサ電圧V(C1)である。この例において、前記コンデンサを初期電圧300Vまで充電する。0〜40μsにおいてZ2aのみを開き、これにより、コイルL2内のみに電流を流す。40μsにおいて、スイッチZ1bも開き、これにより、コイルL1内において、コイルL2内を流れる電流と反対方向に電流を流す。この例において、コイルL2内に単相パルスが発生し、コイルL1内に別の単相パルスが発生することが分かる。この場合、前記2つのコイルの電流パルスの組み合わせにより、二相パルス形状が得られる。さらに、第1のパルス(図7中のI(L2))に対する第2のパルス(図7中のI(L1))の振幅は、単一のコイル中において誘導された従来の二相パルスのものよりも高い。
【0051】
図7から、コンデンサ電圧V(C1)は、1サイクル終了時においてその初期値の約80%を取り戻していることが分かる。従って、高周波数rTMSの生成が実行可能となる。サイクル終了時のコンデンサ電圧の正確な値は、キャパシタンス、インダクタンス、抵抗、およびシステム内の動作の時間的特徴によって異なり得る。この回路の活性化は、図6を参照して上述したオプションのうち任意のものを用いて行うことができる。
【0052】
例3:別の非限定的な例において、コンデンサC1、コイルL1およびL2、および抵抗R1およびR2のパラメータは例2のものと同じである。すなわち、コンデンサC1のC=25uFであり、コイルL1のインダクタンス16μHであり、コイルL2のインダクタンスは16uHであり(よって、前記2つのコイル中のインダクタンスは同様または同一であり)、前記2つの回路内の抵抗R1およびR2はどちらも0.05オームである。しかし、各スイッチが開くタイミングまたは閉まるタイミングが変更されている。
【0053】
ここで図8を参照する。図8は、図5に示す回路を例3のパラメータの動作時に生成され得るパルス形状を示す。図8中に図示されるのは、L1中の電流I(L1)、L2中の電流I(L2)、コンデンサ近隣の電流I(C1)、およびコンデンサ電圧V(C1)である。この例において、前記コンデンサを初期電圧300Vまで充電する。0〜110μsの間にスイッチZ1aおよびZ1bを開き、0〜60μsの間にスイッチZ2aを開き、Z2bを常に閉めている。この例において、0〜110μsの間に二相パルスがコイルL1内に発生し、0〜50μsの間に単相パルスがコイルL2内に発生することが分かる。コンデンサ電圧V(C1)は、その初期値の約80%を取り戻し、これにより高周波反復動作を可能にする。サイクル終了時の前記コンデンサ電圧の正確な値は、キャパシタンス、インダクタンス、抵抗、および前記システム内における動作の時間的特徴に応じて異なり得る。
【0054】
ここでもやはり、図6中の例について述べたオプション全てを図8中の例において実行することができる。すなわち、体器官において、2つのコイルの効果(図8)を組み合わせることにより、パルス形状(例えば、I(L1)、I(L2)またはI(C1))を誘導することができる。この場合、I(C1)内において二相パルスが生成され、第1の位相の振幅を第2のパルスと比較すると、単一のコイル内において誘導された従来の二相パルスよりも高い。
【0055】
例4:別の非限定的例において、コンデンサC1はC=25μFであり、コイルL1のインダクタンスは1μHであり、コイルL2のインダクタンスは16μHであり、前記2つの回路中の抵抗はR1=R2=0.05オームであり、初期コンデンサ電圧はV(C1)=300Vである。各スイッチの開く/閉まるタイミングは、ユーザによって制御される。
【0056】
ここで図9を参照する。図9は、図5に示す回路を本発明の一実施形態に従って動作させたときに生成され得るパルス形状を示す。スイッチZ2aおよびZ2bを0〜103μsの間に開き、スイッチZ1aを10〜42μsの間に開き、スイッチZ1bを常に閉めておく。その結果、0〜103μsの間にコイルL2内に二相パルスが得られ、10〜26μsの間にコイルL1内に単相パルスが得られる。サイクル終了時のコンデンサ電圧は、その初期値よりも70%多い。
【0057】
この例は、L1またはL2のいずれかと共に実行してもよいし、あるいはL1およびL2双方を同様の場所または異なる場所において体器官に取り付けて実行してもよい。コイルL1中の単相パルスは、電流の急激な増加およびピーク電流の増加と共に、インダクタンスが低減し、パルス幅がより狭くなる。前記2つのコイルが体器官に適用されると、図9中のI(C1)と同様の電流パターンが生成され得、その際、開始時において(この例において0〜10μsの間)比較的ゆっくりと増加した後、急激に増加し、その後急激に低減し、その後(26〜38μsの間に)ゆっくりと低減し、その後、電流パルスは反対方向になる。この例は、異なる時点において(すなわち、第2の反対の位相時において)Z1aおよび/またはZ1bを開くことにより法則化され得、これにより、他のまたはさらなる鋭いパルス(例えば、図9中のI(L1))が生成される。各パルスコンポーネントの幅は、前記コイルのインダクタンス、抵抗および/またはシステム内のキャパシタンスを変更することにより、変更可能である。
【0058】
例5:別の非限定的例において、例4と同様に、コンデンサC1はC=25μFであり、コイルL1のインダクタンスは1μHであり、コイルL2のインダクタンスは16μHであり、前記2つの回路中の抵抗はR1=R2=0.05オームであり、初期コンデンサ電圧はV(C1)=300Vである。しかし、前記スイッチが開く/閉まるタイミングが変更されている。
【0059】
ここで、図10を参照する。図10は、f図5に示す回路を例5のパラメータに従って動作させた場合に生成され得るパルス形状を示す。この例において、スイッチのタイミングは、スイッチZ1aが0〜42μsの間に開いている点を除いて、例4と同様である。その結果、0〜90μsの間にコイルL2内に二相パルスが発生し、0〜18μsの間にコイルL1内に単相パルスが発生する。ここで、サイクル終了時のコンデンサ電圧は、その初期値の約61%であり、これは、従来の例よりも低い。これは、サイクルのより大きな部分におけるL1を流れる電流と、減衰とがより小さなインダクタンスのコイル(例えば、この場合L1)におけるよりもより大きいからである。
【0060】
ここでも、このシステムは、L1またはL2またはのいずれかあるいは双方が体器官の同様のまたは異なる場所に取り付けられた様態で、実施することができる。
【0061】
例6:別の非限定的例において、例4および例5と同様に、コンデンサC1はC=25μFであり、コイルL1のインダクタンスは1μHであり、コイルL2のインダクタンスは16μHであり、前記2つの回路内の抵抗はR1=R2=0.05オームであり、初期コンデンサ電圧はV(C1)=300Vである。しかし、前記スイッチを開ける/閉めるタイミングが変更されている。
【0062】
ここで図11を参照する。図11は、図5に示す回路を例6のパラメータに従って動作させた場合に生成され得るパルス形状を示す。この例において、.スイッチZ2aは0〜64μsの間に開かれ、スイッチZ1bは60〜76μsの間に開かれる。その結果、0〜64μsの間にコイルL2内に単相パルスが発生し、60〜76μsの間にコイルL1内に反対の単相パルスが発生する。ここで、サイクル終了時のコンデンサ電圧は、その初期値の約57%であり、これは、従来例よりも低い。
【0063】
ここでも、このシステムは、L1またはL2またはのいずれかあるいは双方が体器官の同様のまたは異なる場所に取り付けられた様態で、実施することができる。
【0064】
ここで図12を参照する。図12は、本発明の別の実施形態による回路図である。図12中に示す実施形態において、2つの刺激コイルL1およびL2は、1つのコンデンサC1および6つのスイッチZ1a、Z1b、Z2a、Z2b、Z3aおよびZ3bと共に直列に接続されている。図12に示す実施形態において、スイッチZ1a、Z1b、Z2a、Z2b、Z3aおよびZ3bはIGBTである。しかし、任意の適切なスイッチを用いてもよい。各スイッチの開くタイミングまたは閉まるタイミングは、ユーザによって制御可能である。
【0065】
ここで、図12の回路を用いたいくつかの例について説明する。
【0066】
例7:この例において、、コンデンサC1はC=25uFであり、コイルL1のインダクタンス=16μHであり、コイルL2のインダクタンスは150μHであり、前記2つのコイル内の抵抗はR1=R2=0.05オームであり、初期コンデンサ電圧はV(C1)=300Vである。各スイッチの開くタイミングまたは閉まるタイミングは、ユーザによって制御可能である。
【0067】
ここで図13を参照する。図13は、図12に示す回路を例7のパラメータに従って動作させた場合に生成され得るパルス形状を示す。この例において、0〜415μsの間にスイッチZ1a、Z1b、Z2aおよびZ2bが開かれ、0μsにおいてスイッチZ3aが開かれ、10μsにおいて閉められ、Z3bは常に閉められている。その結果得られたパルスは、L1中において0〜10μsの間において急激に増加し、極めて急激に低減し、その後二相パルスが発生する。この二相パルスは、パルス幅が長くおよび電流振幅がより低く、これはより高いインダクタンスコイルに典型的な結果である。これが発生する理由としては、10μs後にコイルL1およびL2が直列接続され、インダクタンスの合計がLT=L1+L2=166uHとなるからである。コイルL2においては、10μsまでほとんど電流は流れず、その後二相パルスが発生する。サイクル終了時のコンデンサ電圧は、その初期値の約66%である。
【0068】
ここでも、このシステムは、L1またはL2またはのいずれかあるいは双方が体器官の同様のまたは異なる場所に取り付けられた様態で、実施することができる。
【0069】
例8:この例において、例7と同様に、コンデンサC1はC=25uFであり、コイルL1のインダクタンスは=16μHであり、コイルL2のインダクタンスは150μHであり、前記2つのコイル中の抵抗はR1=R2=0.05オームであり、初期コンデンサ電圧はV(C1)=300Vである。各スイッチの開く/閉まるタイミングは、ユーザによって制御可能である。
【0070】
ここで図14を参照する。図14は、図12に示す回路を例8のパラメータに従って動作させた際に生成され得るパルス形状を示す。0〜415μsの間にスイッチZ1a、Z1b、Z2aおよびZ2bが開かれ、0μsにおいてスイッチZ3aが開かれ、(例7におけるような10μsと対照的に)20μsにおいて閉められ、Z3bは常に閉められている。この例において、コイルL1内の電流ピークは例7の場合よりもずっと高い。さらに、サイクル終了時のコンデンサ電圧は、その初期値のわずか30%である。
【0071】
例9:この例において、コンデンサC1はC=180μF(そして例7および例8におけるような25μFではない)であり、コイルL1のインダクタンス=16μHであり、コイルL2のインダクタンスは150μHであり、前記2つのコイル中の抵抗はR1=R2=0.05オームであり、初期コンデンサ電圧はV(C1)=300Vである。各スイッチの開くタイミングまたは閉まるタイミングは、ユーザによって制御可能である。この例は、コンデンサに戻った電気エネルギーの一部の増加をキャパシタンスの増加により得ることができることを示すように、設計されている。
【0072】
ここで図15を参照する。図15は、図12に示す回路を例9のパラメータに従って動作させた場合に生成され得るパルス形状を示す。この例において、20μsにおけるコイルL1中のピーク電流は例8(図14)の場合よりも大きく、サイクル終了時のコンデンサ電圧は、その初期値の約60%である。このようにして、キャパシタンスの増加により、コンデンサに戻ったエネルギー部分を向上させることができる。
【0073】
ここで図16を参照する。図16は、本発明の別の実施形態による回路図である。図16中に示す実施形態において、1つのコンデンサC1および8つのスイッチZ1a、Z1b、Z2a、Z2b、Z3a、Z3b、Z4aおよびZ4bと共に、2つの刺激コイルL1およびL2が直列に接続されている。図16に示す実施形態において、スイッチZ1a、Z1b、Z2a、Z2b、Z3a、Z3b、Z4aおよびZ4bはIGBTである。しかし、任意の適切なスイッチを用いてよい。各スイッチの開くタイミングまたは閉まるタイミングは、ユーザによって制御可能である。
【0074】
ここで、図16の回路を用いたいくつかの例について説明する。
【0075】
例10:この例において、、コンデンサC1のキャパシタンスは180μFであり、コイルL1のインダクタンスは16μHであり、コイルL2のインダクタンスは150μHであり、前記2つのコイル内の抵抗はR1=R2=0.05オームであり、初期コンデンサ電圧V(C1)は300Vである。スイッチZ4aおよびZ4bはコイルL1に並列に接続され、スイッチZ3aおよびZ3bは、コイルL2に並列に接続される。
【0076】
ここで図17を参照する。図17は、図16に示す回路を例10のパラメータに従って動作させた場合に生成され得るパルス形状を示す。この例において、0μsにおいてスイッチZ3aおよびZ3bが開かれ、20μsにおいて閉められ、スイッチZ4aおよびZ4bは20μsまで閉められた後、開けられる。その結果、0〜20μsの間にコイルL1内には電流が流れ、コイルL2内には電流は流れない。20μs後、前記コンデンサからの電流はスイッチZ4aおよびコイルL2を流れ、L1の電流はスイッチZ4bを通じて指数関数的に減衰する。その結果得られた電流パルスは、0〜20μsの間にL1中において急激に増加した後、指数関数的に減衰する。コイルL2中において、二相パルスが生成される。サイクル終了時のコンデンサ電圧は、その初期値の約70%であり、これにより、反復活性化が実行可能となる。コイルL1の電流の指数関数的減衰により、電圧損失を低減し、スイッチ上の過渡電圧ノイズも低減することができる。
【0077】
ここでも、このシステムは、L1またはL2またはのいずれかあるいは双方が体器官の同様のまたは異なる場所に取り付けられた様態で、実施することができる。
【0078】
例11:この例において、、コンデンサC1のキャパシタンスは180μFであり、コイルL1のインダクタンスは16μHであり、コイルL2のインダクタンスは150μHであり、前記2つのコイル内の抵抗はR1=R2=0.05オームであり、初期コンデンサ電圧V(C1)は300Vである。スイッチZ4aおよびZ4bはコイルL1に並列に接続され、スイッチZ3aおよびZ3bはコイルL2に並列に接続される。
【0079】
ここで図18を参照する。図18は、図16に示す回路を例11のパラメータに従って動作させた場合に生成され得るパルス形状を示す。この例において、0μsにおいてスイッチZ3aおよびZ3bが開かれ、20μsにおいて閉められ、20μsまでスイッチZ4aが閉められ、その後閉められる。スイッチZ4bは常に閉められている。その結果、コイルL1中に誘導されたパルス形状は異なる。20μsにおいて、電流が低い一定の値まで急激に減衰し、約550μsにおいて、コイルL2と同様に第2の位相が反対方向に生成され、約950μsにおいて、コンデンサ電圧が変化した後、L1中の電流が指数関数的に減衰する。コイルL2中において、二相パルスが誘導される。サイクル終了時のコンデンサ電圧は、その初期値の約62%である。
【0080】
ここでも、このシステムは、L1またはL2またはのいずれかあるいは双方が体器官の同様のまたは異なる場所に取り付けられた様態で、実施することができる。コイルL1中の定電流の時間間隔(図18の例において20〜約500μs)は、L2のインダクタンスおよび/またはキャパシタンスを変更することにより、変化させることができる。このようにして、可変の間隔を間に挟んだ過分極パルスおよび脱分極パルスを、ニューロン組織中に発生させることができる。
【0081】
例12:この非限定的例において、コンデンサC1はC=180μFであり、コイルL1のインダクタンスは16μHであり、コイルL2のインダクタンスは150μHであり、前記2つのコイル内の抵抗はR1=R2=0.05オームであり、初期コンデンサ電圧V(C1)=300Vである。スイッチZ4aおよびZ4bはコイルL1に並列に接続され、スイッチZ3aおよびZ3bはコイルL2に並列に接続される。
【0082】
ここで図19を参照する。図19は、図16に示す回路を例12のパラメータに従って動作させた場合に生成され得るパルス形状を示す。0〜20μsの間にスイッチZ1a、Z3aおよびZ3bが開かれ、20〜1100μsの間にスイッチZ4aおよびZ4bが開かれ、0〜1100μsの間にスイッチZ2aおよびZ2bが開かれる。その結果、0〜20μsの間に、L1内に電流が流れ、L2内に最小の電流が流れ、20μs後には、L2内のみに電流が流れ、L1内には電流は流れず、これにより二相パルスが生成される。この結果は、より単純な回路によって実行可能であり、このより単純な回路において、3つのスイッチおよびコイルL1およびL2が並列に接続される。その結果得られたL1中のパルスは図19に示すものと同様であるが、20μs後に、電流は急激にゼロまで低減する。サイクル終了時のコンデンサ電圧は、その初期値の約70%である。そのため、1のパルス形状を高周波反復動作において生成することができる。閉める時間、キャパシタンスおよび初期コンデンサ電圧を異ならせることにより、この方法により、極めて多様なパルス形状の電界(例えば、ほとんど全ての矩形パルス形状)を生成することが可能となり得る点に留意されたい。
【0083】
ここでも、このシステムは、L1またはL2またはのいずれかあるいは双方が体器官の同様のまたは異なる場所に取り付けられた様態で、実施することができる。
【0084】
例13:この非限定的例において、コンデンサC1はC=180μFであり、コイルL1のインダクタンスは16μHであり、コイルL2のインダクタンスは150μHであり、前記2つのコイル内の抵抗はR1=R2=0.05オームであり、初期コンデンサ電圧はV(C1)=300Vである。スイッチZ4aおよびZ4bはコイルL1に並列に接続され、スイッチZ3aおよびZ3bはコイルL2に並列に接続される。
【0085】
ここで図20を参照する。図20は、図16に示す回路を例13のパラメータに従って動作させた際に生成され得るパルス形状を示す。この例において、0〜530μsの間に第1の位相時において電流が双方のコイル内を流れる。530〜550μsの間および700〜720μsの間、ほとんどの電流はコイルL1内を流れる。そのため、これらの2つの期間において、コイルL1中に鋭いパルスが発生する。550〜700μsの間、双方のコイル内を電流が順次流れる。720μs後、スイッチZ1bおよびZ3bは閉められ、L1中の電流はゼロまで減衰し、L2内のみを電流が流れる。サイクル終了時のコンデンサ電圧は、その初期値の約50%である。
【0086】
前記2つの鋭い電流パルスの時点(図20の例において、530〜550μsの間および700〜720μsの間)と、これらのパルス間の時間間隔とは、前記スイッチの開く時間および閉まる時間を制御することにより、制御可能かつ可変である。加えて、任意の数の鋭いパルスを同様の様式で生成することができる。これとは別に、このようなパルスは、第1の位相時または第2の位相時のいずれかあるいは第1の位相時および第2の位相時双方において、生成することができる。そのため、極めて多様な脱分極パルス形状および/または過分極パルス形状を生成する手段が得られる。
【0087】
ここでも、このシステムは、L1またはL2またはのいずれかあるいは双方が体器官の同様のまたは異なる場所に取り付けられた様態で、実施することができる。
【0088】
例14:この非限定的例において、例13と同様に、コンデンサC1はC=180μFであり、コイルL1のインダクタンスは16μHであり、コイルL2のインダクタンスは150μHであり、前記2つのコイル内の抵抗はR1=R2=0.05オームであり、初期コンデンサ電圧V(C1)=300Vである。スイッチZ4aおよびZ4bはコイルL1に並列に接続され、スイッチZ3aおよびZ3bはコイルL2に並列に接続される。
【0089】
ここで図21を参照する。図21は、図16に示す回路を例14のパラメータに従って動作させた際に生成され得るパルス形状を示す。この例において、0〜530μsの間に第1の位相時に双方のコイル内に電流が流れる。550〜700μsの間に、スイッチZ4bは開かれ、スイッチZ1bおよびZ3bは閉められ、これにより、コイルL2内のみを電流が流れ、L1内の電流はゼロとなる。720μs後、スイッチZ1bおよびZ3bは閉められ、L1内の電流は急激に減衰してゼロとなり、L2内のみを電流が流れる。サイクル終了時のコンデンサ電圧は、その初期値の約50%である。
【0090】
例15:この非限定的例において、例13および例14と同様に、コンデンサC1はC=180μFであり、コイルL1のインダクタンスは16μHであり、コイルL2のインダクタンスは150μHであり、前記2つのコイル内の抵抗はR1=R2=0.05オームであり、初期コンデンサ電圧V(C1)=300Vである。スイッチZ4aおよびZ4bはコイルL1に並列に接続され、スイッチZ3aおよびZ3bはコイルL2に並列に接続される。
【0091】
ここで図22を参照する。図22は、図16に示す回路を例15のパラメータに従って動作させた際に生成され得るパルス形状を示す。この例において、0〜530μsの間に、第1の位相時において双方コイル内に電流が流れる。550〜700μsの間に、また720μsの後に、スイッチZ1bが開かれ、Z3bが閉められる。そのため、双方のコイル内に電流が順次流れる。サイクル終了時のコンデンサ電圧は、その初期値の約60%である。
【0092】
これらの例においてスイッチZ4aおよびZ4bは常に閉められているため、スイッチZ4aおよびZ4bはこの例の実行において不要である。さらに、別の実施形態において、スイッチZ4aは0〜500μsの間の一定期間の間開くことができ、その際、恐らくはスイッチZ1aを閉めることとし、これにより、第1の位相時におけるパルス形状を変更する。
【0093】
ここでも、上記例はそれぞれ、L1またはL2またはのいずれかあるいは双方が体器官の同様のまたは異なる場所に取り付けられた様態で、実施することができる。
【0094】
ここで図23を参照する。図23は、本発明のさらなる実施形態による回路図である。図23に示す実施形態において、3つの刺激コイルL1、L2およびL3が接続され、コイルL1およびL3が並列に接続され、コイルL2がコイルL1およびL3に直列に接続される。この回路はまた、1つのコンデンサC1と、10個のスイッチZ1a、Z1b、Z2a、Z2b、Z3a、Z3b、Z5a、Z5b、Z6aおよびZ6bとを含む。図23に示す実施形態において、スイッチZ1a、Z1b、Z2a、Z2b、Z3a、Z3b、Z5a、Z5b、Z6aおよびZ6bはIGBTである。しかし、任意の適切なスイッチを用いてよい。各スイッチの開くタイミングまたは閉まるタイミングは、ユーザによって制御可能である。
【0095】
例16:この非限定的例において、コンデンサはC=25μFであり、コイルL1のインダクタンスは16μHであり、コイルL2のインダクタンスは150μHであり、コイルL3のインダクタンスは1μHであり、これら3つのコイル内の抵抗はR1=R2=R3=0.05オームであり、初期コンデンサ電圧はV(C1)=300Vである。スイッチZ6aおよびZ6bはコイルL1およびL3に並列に接続され、スイッチZ3aおよびZ3bはコイルL2に並列に接続される。
【0096】
ここで図24を参照する。図24は、図23に示す回路を例16のパラメータに従って動作させた際に生成され得るパルス形状を示す。初期に、コイル内に電流が流れる。20〜35μsの間にスイッチZ5が開かれ、L1およびL3を通じて電流が順次流れる。35〜60μsの間、L1内のみを電流が流れる。60μs後、第2の位相において、L1およびL2双方内を電流が流れる。80〜85μsの間および110〜130μsの間はスイッチZ3bは開いているため、ほとんどの電流はL1内を流れる。130μs後、Z1は閉められ、Z6は開けられる。そのため、L1内の電流が急激に減衰し、L2内を電流が流れ、コンデンサを再充電する。サイクル終了時のコンデンサ電圧は、その初期値の50%を超えている。
【0097】
第1の位相(20〜35μs)におけるL3内の鋭いパルスの時点および/または第2の位相(80〜85μsおよび110〜130μs)におけるL1内の2つの鋭い電流パルスの時点およびこれらの間の時間間隔は、前記スイッチの開く時間および閉まる時間を制御することにより制御可能かつ可変である。加えて、任意の数の鋭いパルスを同様の方式で生成することができる。これとは別に、このようなパルスは、第1の位相または前記第2の位相のいずれかあるいはこれらの位相双方において生成することができる。そのため、極めて多様な脱分極パルス形状および/または過分極パルス形状を生成するための手段が得られる。
【0098】
ここでも、このシステムは、L1またはL2またはのいずれかあるいは双方が体器官の同様のまたは異なる場所に取り付けられた様態で、実施することができる。加えて、このようなシステムは、異なるコイルインダクタンス、抵抗、キャパシタンスおよび初期電圧と共に実行することが可能である。
【0099】
ここで図25を参照する。図25は、本発明のさらに別の実施形態による回路図である。図25に示す実施形態において、2つの刺激コイルL1およびL2が直列に接続され、2つのコンデンサC1およびC2が直列に接続され、12個のスイッチZ1a、Z1b、Z2a、Z2b、Z3a、Z3b、Z4a、Z4b、Z5a、Z5b、Z6aおよびZ6bがある。図25に示す実施形態において、スイッチZ1a、Z1b、Z2a、Z2b、Z3a、Z3b、Z4a、Z4b、Z5a、Z5b、Z6aおよびZ6bはIGBTである。しかし、任意の適切なスイッチを用いてよい。各スイッチの開くタイミングまたは閉まるタイミングは、ユーザによって制御可能である。
【0100】
例17:この非限定的例において、前記コンデンサのキャパシタンスはC1=180μFおよびC2=700μFであり、コイルL1のインダクタンスは16μHであり、コイルL2のインダクタンスは150μHであり、前記2つのコイル内の抵抗はR1=R2=0.05オームであり、初期コンデンサ電圧はV(C1)=300VおよびV(C2)=400Vである。そのため、C1の陰極および陽極上への電圧はそれぞれ400Vおよび700Vである。スイッチZ1a/bおよびZ2a/bは、コンデンサC1およびC2と共にそれぞれコイルL1に接続する。スイッチZ3a/bおよびZ4a/bは、コンデンサC1およびC2と共にそれぞれコイルL2に接続する。スイッチZ5a/bは、コイルL1に並列に接続される。
【0101】
ここで図26を参照する。図26は、図25に示す回路を例17のパラメータに従って動作させた際に生成され得るパルス形状を示す。初期においては、スイッチZ3およびZ5のみが開かれている。そのため、初期はコンデンサC1からコイルL2を通じて電流が流れる。120μs後、スイッチZ5が閉じられ、Z1が開かれる。そのため、L1内にも電流が流れる。180μsにおいて、スイッチZ3が閉められる。そのため、L2内の電流が減衰し始める。210〜300μsの間、スイッチZ1が閉められ、Z2が開かれる。そのため、L1はC1にではなくC2に接続される。L1内の電流は方向を反転させ、210μsにおいて約−650Aから300μsにおいて約845Aへと変化する。正ピークと負ピークとの間の相対的振幅および時間間隔は、各スイッチをオン/オフするタイミング、前記コンデンサ上の初期電圧、回路内のキャパシタンス、インダクタンスおよび抵抗の値sにより制御可能である点に留意されたい。300μsにおいて、スイッチZ2が閉められ、Z1が開かれる。そのため、L1はC2にではなくC1に接続され、L1内の電流は減衰し、C1が再充電される。
【0102】
サイクル終了時のコンデンサC1上の電圧は、その初期値の約72%((602V−386V)/300V、図26を参照)であり、C2内においてその初期値の約96%(386V/400V)である。C2はより高いキャパシタンスを有するため、相対的な電気エネルギー損失が低くなる。
【0103】
例18:この非限定的例において、コンデンサのキャパシタンスはC1=180μFおよびC2=700μFであり、コイルL1hのインダクタンスは16μHであり、コイルL2のインダクタンスは150μHであり、前記2つのコイル内の抵抗はR1=R2=0.05オームであり、初期コンデンサ電圧はV(C1)=300VおよびV(C2)=300Vである。そのため、C1の陰極および陽極上の電圧はそれぞれ300Vおよび600Vである。スイッチZ1a/bおよびZ2a/bは、コンデンサC1およびC2と共にそれぞれコイルL1に接続する。スイッチZ3a/bおよびZ4a/bは、コンデンサC1およびC2と共にそれぞれコイルL2に接続する。スイッチZ5a/bはコイルL1に並列接続される。
【0104】
ここで図27を参照する。図27は、図25に示す回路を例18のパラメータに従って動作させた際に生成され得るパルス形状を示す。この例において、、初期には、スイッチZ1およびZ6のみが開かれる。そのため、初期はコンデンサC1からコイルL1を通じて電流が流れる。30μs後、L1内の電流が約490Aに達すると、スイッチZ1が閉められ、スイッチZ3が開かれる。そのため、コイルL1およびコイルL2双方を電流が順次流れる。100μs〜120μsにおいて、スイッチZ6およびZ1が閉められ、Z5が開かれる。そのため、コイルL2内を電流が流れ、コイルL1内において電流が急激に減衰する。120μsにおいて、スイッチZ6が開かれ、スイッチZ5が閉められる。そのため、コイルL2およびコイルL1内を電流が順次流れる。150μsにおいて、スイッチZ2が開かれ、スイッチZ3が閉められる。そのため、L1はC2に接続され、その電流は方向を逆転させる。180μsにおいて、スイッチZ2が閉められ、スイッチZ1が開かれる。そのため、L1はC2にではなくC1に接続され、L1内の電流は減衰し、C1は再充電される。サイクル終了時のコンデンサC1上の電圧はその初期値の約60%((468V−289V)/300V、図27を参照)であり、C2内においてはその初期値の約96%(289V/300V)である。
【0105】
ここでも、上記例はそれぞれ、L1またはL2またはのいずれかあるいは双方が体器官の同様のまたは異なる場所に取り付けられた様態で、実施することができる。
【0106】
上記の全ての非限定的例および本出願から得られる他の任意の実行例は、2つよりも多くのコイルおよび/または1つよりも多くの電気エネルギー保存デバイスを含むように一般化され得る。特定の実施形態において、各コイルは、異なる電気エネルギー保存デバイスに接続され得る。さらに他の実施形態において、いくつかのコイルは、共通電気エネルギー保存デバイスに接続され得る。さらに他の実施形態において、いくかのコイルは、異なる期間(例えば、異なる位相時)において、異なる電気エネルギー保存デバイスに接続され得る。
【0107】
本出願中に開示されるシステムおよび方法は、複数のチャンネルを用いて組み合わせることが可能であり、これにより、さらに多様なパルス形状を体器官内に提供することが可能となる。体器官は単一の体器官または複数の体器官であり得、刺激の提供は、体器官の1つの領域または複数の領域にわたって行われ得る。例えば、異なる領域において異なる生理学的効果を提供しかつ/または特定の領域(例えば、より深いニューロン構造)内において誘導される効果の選択性を増加させるように、異なる脳領域に対して刺激を与えることができる。生理学的効果の例をいくつか非限定的に挙げると、反復二相パルス、膜電位の反復脱分極、ニューロン構造における交互の過分極および脱分極、脱分極無しの過分極、過分極無しの脱分極などがある。
【0108】
明確さのため、本発明特定の特徴について、別個の実施形態の文脈において説明しているが、これらの特徴を組み合わせて単一の実施形態として提供することも可能であることが理解される。逆に、簡潔さのため、本発明の多様な特徴について、単一の実施形態の文脈において説明しているが、これらの特徴を別個に提供することもできるし、あるいは、別個にまたは任意の適切な組み合わせとして提供することもできる。
【0109】
本明細書中、本発明の特定の特徴について例示および記載してきたが、当業者であれば、多くの改変、代替、変更および均等物を想起する。そのため、添付の特許請求の範囲は、このような改変および変更全てを本発明の真なる意図内に収まるものとして網羅することが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経頭蓋磁気刺激のためのシステムであって、前記システムは、
身体の第1の外部身体部分上に配置されるように構成された第1の電磁刺激コイルと、
第2の場所に配置されるように構成された第2の電磁刺激コイルと、
電磁コイルに電流を提供する刺激装置であって、前記刺激装置は、前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイルに電気的に接続され、前記刺激装置は、
前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイルのうち少なくとも1つ内に電流パルスを放出し、これにより内部体器官内に電界パルスを発生させるように構成された少なくとも1つのエネルギー保存デバイスと、
前記放出された電流パルスのパラメータを制御するように、前記少なくとも1つのエネルギー保存デバイスと、前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイルのうち前記少なくとも1つとに接続された少なくとも1つの外部から制御可能な高速スイッチと、
を含む、刺激装置と、
前記少なくとも1つの外部から制御可能な高速スイッチのパラメータを制御するように前記刺激装置と電気通信する外部制御ユニットであって、前記少なくとも1つの外部から制御可能な高速スイッチのパラメータの前記制御により、前記電流パルスの少なくとも1つのパラメータの制御が可能となり、これにより、ニューロン構造内において制御された生理学的効果を誘導する、外部制御ユニットと、
を含む、システム。
【請求項2】
前記刺激装置は、前記第1の電磁刺激コイルに接続された第1の刺激装置と、前記第2の電磁刺激コイルに接続された第2の刺激装置とを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのエネルギー保存デバイスは、前記第1の電磁刺激コイル内に第1の電流パルスを放出しかつ前記第2の電磁刺激コイル内に第2の電流パルスを放出するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つのエネルギー保存デバイスは、前記第1の電流パルスを放出するように構成された第1のエネルギー保存デバイスと、前記第2の電流パルスを放出するように構成された第2のエネルギー保存デバイスとを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの外部から制御可能な高速スイッチは、第1の外部から制御可能な高速スイッチと、第2の外部から制御可能な高速スイッチとを含み、前記第1の外部から制御可能な高速スイッチは、前記第1のエネルギー保存デバイスに接続され、前記第2の外部から制御可能な高速スイッチは、前記第2のエネルギー保存デバイスに接続される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの外部から制御可能な高速スイッチは、前記少なくとも1つのエネルギー保存デバイスに接続された複数の外部から制御可能な高速スイッチを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2の電流パルスは、前記第1の電流パルスと反対方向である、請求項3に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1の電流パルスの生成に用いられるエネルギーは、再利用のため、前記第2のコイルを介して前記エネルギー保存デバイスに戻される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記外部制御ユニットは、前記少なくとも1つの外部から制御可能な高速スイッチをオンまたはオフするタイミングを制御できるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記外部制御ユニットは、前記少なくとも1つのエネルギー保存デバイス上の初期電圧の振幅、前記少なくとも1つのエネルギー保存デバイスからの電流放出の周波数、パルス間またはパルスの組み合わせ間の時間間隔、各パルスのパルス幅、各パルスのパルス形状、パルス列またはパルス組み合わせの長さ、列間の時間間隔、各動作期間における前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイル内の電流方向の相対的極性、各動作期間における前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイル内の電流が流れる方向、および各種のパルスの数のうち少なくとも1つを制御するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記外部制御ユニットは、パルス列中のパルス間の時間間隔を個別制御するように構成され、前記時間間隔は相互に可変である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記パルス間の時間間隔は0〜1000マイクロ秒である、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記パルス間の時間間隔は0〜1000マイクロ秒である、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記パルス間の時間間隔は、およそ1.5ミリ秒またはその倍数である、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記パルス間の時間間隔は、個人の波パターンに合わせて調節可能であり、前記個人の波パターンは、前記個人のI波ピークまたはD波ピークを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記パルス間の時間間隔は、およそ1ミリ秒またはおよそ2.5ミリ秒である、請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
前記パルス間の時間間隔は、0.5ミリ秒〜10ミリ秒である、請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
前記パルス間の時間間隔は、0.1ミリ秒〜100ミリ秒である、請求項10に記載のシステム。
【請求項19】
前記パルス間の時間間隔は、1マイクロ秒〜500マイクロ秒である、請求項10に記載のシステム。
【請求項20】
前記放出された電流パルスは反復単相電流パルスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記反復単相電流パルスは、連続するパルス間の交代する電流方向を含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記交代する電流方向に起因して、前記ニューロン構造内に脱分極および過分極が交互に誘導される、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記反復単相パルスは、ニューロンの過分極無しの脱分極、ニューロンの脱分極無しの過分極、ニューロンの脱分極および過分極、およびニューロンの脱分極および過分極の特定の組み合わせのうち少なくとも1つを伴う、請求項20に記載のシステム。
【請求項24】
前記ニューロン構造内における前記制御された生理学的効果は、反復二相パルスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項25】
前記ニューロン構造内における前記制御された生理学的効果は、前記ニューロン構造内の膜電位の反復脱分極を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項26】
前記制御された生理学的効果は、複数のコイルの使用と、使用するコイルおよびその使用のタイミングの制御と、前記複数のコイルそれぞれにおける電流のオンおよびオフを切り替えるタイミングの制御とにより、得られる、請求項1に記載のシステム。
【請求項27】
前記放出された電流パルスは反復二相電流パルスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項28】
前記電流パルスの前記制御されたパラメータは、電流流れのタイミングである、請求項1に記載のシステム。
【請求項29】
前記第2の場所は前記身体から遠隔である、請求項1に記載のシステム。
【請求項30】
前記第2の場所は第2の外部身体部分であり、前記第1の外部身体部分および前記第2の外部身体部分は、同一の身体部分、前記同一の身体部分の異なる領域、および異なる身体部分のうち少なくとも1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項31】
前記生理学的効果は、神経細胞活性化の閾値、誘導されたニューロン活動電位の振幅、誘導されたニューロン活動電位のレイテンシー、ニューロン膜の脱分極、ニューロン膜の過分極、脱分極または過分極、促進および抑制の速度のうち少なくとも1つに関連する、請求項1に記載のシステム。
【請求項32】
前記誘導された生理学的効果は複数の生理学的効果を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項33】
前記複数の生理学的効果は、異なる領域または身体部分内において誘導された異なる生理学的効果を含む、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイルは、異なるインダクタンスを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項35】
前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイルは直列に接続される、請求項1に記載のシステム。
【請求項36】
前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイルは並列に接続される、請求項1に記載のシステム。
【請求項37】
前記少なくとも1つの外部から制御可能な高速スイッチは、前記システム内を流れる電流が低いときにオンまたはオフ可能であり、これにより、電圧ノイズおよびスイッチイング損失を低減させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項38】
前記少なくとも1つの外部から制御可能な高速スイッチは、前記システム内を流れる電流が高いときにオンまたはオフ可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項39】
前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイルは、前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイル双方のための1つのエネルギー保存デバイス、前記第1の電磁刺激コイルのための第1のエネルギー保存デバイスおよび前記第2の電磁刺激コイルのための第2のエネルギー保存デバイス、ならびに第1の動作期間における第1のエネルギー保存デバイスおよび第2の動作期間における第2のエネルギー保存デバイスのうち少なくとも1つに接続される、請求項1に記載のシステム。
【請求項40】
前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイルのうち少なくとも1つは、発熱が低減するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項41】
前記刺激装置は、通常のエネルギー消費量と比較して低いエネルギー消費で多様な制御可能パルス形状を生成するように構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項42】
前記低いエネルギー消費に起因して、前記刺激装置は、高周波数において前記電流を提供するように構成される、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
前記刺激装置は、各コイル内において数百アンペア〜数百ボルトの範囲でより低い電圧または電流を提供するように構成され、これにより、より小さなサイズまたは定格電圧を有する部品の使用を可能にする、請求項1に記載のシステム。
【請求項44】
前記第1の電磁刺激コイルは第1のチャンネルに接続され、前記第2の電磁刺激コイルは第2のチャンネルに接続される、請求項1に記載のシステム。
【請求項45】
内部体器官における生理学的効果を経頭蓋磁気刺激を用いて得る方法であって、前記方法は、
第1の電磁刺激コイルおよび第2の電磁刺激コイルを含むシステムを提供するステップであって、少なくとも1つの刺激装置を前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイルの刺激のために用い、前記刺激装置は、少なくとも1つのエネルギー保存デバイスと、少なくとも1つの外部から制御可能な高速スイッチと、外部制御ユニットとを含み、前記外部制御ユニットは、前記少なくとも1つの外部から制御可能な高速スイッチを制御するように前記少なくとも1つの刺激装置と電気通信する、ステップと、
前記第1の電磁刺激コイルを第1の身体部分上に配置するステップと、
前記第2の電磁刺激コイルを第2の場所に配置するステップと、
前記少なくとも1つの外部から制御可能な高速スイッチのパラメータを前記外部制御ユニットを用いて制御し、これにより、制御された電流パルスを提供するステップと、
前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイルのうち少なくとも1つを通じて前記制御された電流パルスを放出し、これにより、内部身体部分内に電界パルスを生成するステップと、
を含む、方法。
【請求項46】
前記制御された電流パルスを放出するステップは、第1の制御された電流パルスを前記第1の電磁刺激コイル内に、第2の制御された電流パルスを前記第2の電磁刺激コイル内に放出するステップを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記放出するステップは、前記第1の制御された電流パルスを放出するように構成された第1のエネルギー保存デバイスと、前記第2の制御された電流パルスを放出するように構成された第2のエネルギー保存デバイスとを用いて行われる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記パラメータを制御するステップは、前記第1のエネルギー保存デバイスに接続された第1の外部から制御可能な高速スイッチのパラメータを制御するステップと、前記第2のエネルギー保存デバイスに接続された第2の外部から制御可能な高速スイッチのパラメータを制御するステップとを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記パラメータを制御するステップは、前記第1のエネルギー保存デバイスに接続された第1の外部から制御可能な高速スイッチのパラメータを制御するステップと、前記第1のエネルギー保存デバイスに接続された第2の外部から制御可能な高速スイッチのパラメータを制御するステップとを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記第2の制御された電流パルスは、前記第1の制御された電流パルスに対して反対方向に放出される、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記第1の制御された電流パルスの生成に用いられるエネルギーを再利用のため前記第2のコイルを介して前記エネルギー保存デバイスに戻すステップをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記パラメータを制御するステップは、前記少なくとも1つの外部から制御可能な高速スイッチをオンまたはオフするタイミングを制御するステップを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項53】
前記パラメータを制御するステップは、前記少なくとも1つのエネルギー保存デバイス上の初期電圧の振幅、前記少なくとも1つのエネルギー保存デバイスからの電流放出の周波数、パルス間またはパルスの組み合わせ間の時間間隔、各パルスのパルス幅、各パルスのパルス形状、パルス列またはパルス組み合わせの長さ、列間の時間間隔、各動作期間における前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイル内の電流方向の相対的極性、各動作期間における前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイル内の電流が流れる方向、ならびに各種のパルスの数のうち少なくとも1つを制御するステップを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項54】
前記パラメータを制御するステップは、パルス列中のパルス間の時間間隔を個別制御するステップを含み、前記時間間隔は相互に可変である、請求項45に記載の方法。
【請求項55】
前記パルス間の時間間隔を制御するステップは、0〜1000マイクロ秒の時間間隔をパルス間に設けるステップを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記パルス間の時間間隔を制御するステップは、0〜1000マイクロ秒の時間間隔をパルス間に設けるステップを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記パルス間の時間間隔を制御するステップは、およそ1.5ミリ秒またはその倍数の時間間隔をパルス間に設けるステップを含む、求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記パルス間の時間間隔を制御するステップは、個人の波パターンに合わせて前記時間間隔を調節するステップを含み、前記個人の波パターンは、前記個人のI波ピークまたはD波ピークを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項59】
前記パルス間の時間間隔を制御するステップは、およそ1ミリ秒またはおよそ2.5ミリ秒の時間間隔を設けるステップを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項60】
前記パルス間の時間間隔を制御するステップは、0.5ミリ秒および10ミリ秒の時間間隔をパルス間に設けるステップを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項61】
前記パルス間の時間間隔を制御するステップは、0.1ミリ秒〜100ミリ秒の時間間隔をパルス間に設けるステップを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項62】
前記パルス間の時間間隔を制御するステップは、1マイクロ秒〜500マイクロ秒の時間間隔をパルス間に設けるステップを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項63】
前記制御された電流パルスを放出するステップは、反復単相電流パルスを放出するステップを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項64】
前記制御された電流パルスを放出するステップは、連続するパルス間において電流方向を交代させるステップを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記電流方向を交代させるステップに起因して、前記ニューロン構造内に脱分極および過分極を交互に誘導するステップが行われる、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記反復単相パルスを放出するステップは、ニューロンの過分極無しの脱分極、ニューロンの脱分極無しの過分極、ニューロンの脱分極および過分極、およびニューロンの脱分極および過分極の特定の組み合わせのうち少なくとも1つを伴う、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記放出するステップに起因して、前記ニューロン構造内に反復二相パルスが発生する、請求項45に記載の方法。
【請求項68】
前記放出するステップに起因して、前記ニューロン構造内に膜電位の反復脱分極が発生する、請求項45に記載の方法。
【請求項69】
前記パラメータを制御するステップは、使用するコイルおよびその使用のタイミングを制御するステップと、前記コイルそれぞれにおける電流のオンおよびオフを切り替えるタイミングを制御するステップとのうち少なくとも1つを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項70】
前記制御された電流パルスを放出するステップは、反復二相電流パルスを放出するステップを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項71】
前記制御するステップは、電流の流れるタイミングを制御するステップを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項72】
前記第2の電磁刺激コイルを第2の場所に配置するステップは、前記身体から遠隔位置にある場所に前記第2の電磁刺激コイルを配置するステップを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項73】
前記第2の電磁刺激コイルを第2の場所に配置するステップは、前記第2の電磁刺激コイルを第2の外部身体部分に配置するステップを含み、前記第1の外部身体部分および前記第2の外部身体部分は、同一の身体部分、前記同一の身体部分の異なる領域、および異なる身体部分のうち少なくとも1つである、請求項45に記載の方法。
【請求項74】
前記制御するステップに起因して、前記内部身体部分において生理学的効果が得られる、請求項45に記載の方法。
【請求項75】
前記内部身体部分は、前記脳中、脊髄中または末梢神経中のニューロン組織であり、前記制御するステップに起因して、ニューロン構造に対して生理学的効果が得られる、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記制御するステップに起因して、1つの内部身体部分領域あるいは1つまたは複数の内部身体部分において第1の生理学的効果が得られ、別の内部身体部分領域または内部身体部分において第2の生理学的効果が得られる、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記制御するステップに起因して、前記第2の生理学的効果により、前記第1の生理学的効果の焦点精度が上昇する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記制御するステップに起因して、以下の生理学的効果のうち少なくとも1つが得られる:ニューロン構造内に生成される過分極パルスであって、前記過分極パルスは、前記ニューロン構造中の活性化閾値に影響を与え得る、過分極パルス、ニューロン構造内に生成されサブ閾値脱分極パルスであって、前記サブ閾値脱分極パルスは、前記ニューロン構造中の活性化閾値に影響を与え得る、サブ閾値脱分極パルス、ニューロン構造内に生成される超閾値脱分極パルスであって、前記超閾値脱分極パルスは、神経細胞活性化を発生させ得る、超閾値脱分極パルス、誘導される脱分極の速度、誘導される過分極の速度、促進および抑制、請求項74に記載の方法。
【請求項79】
前記提供するステップは、前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイルに異なるインダクタンスを与えるステップを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項80】
前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイルを直列接続するステップをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項81】
前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイルを並列接続するステップをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項82】
前記制御するステップは、前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイルのうち少なくとも1つの内部を流れる電流が低いときに前記少なくとも1つの外部から制御可能な高速スイッチをオンまたはオフし、これにより電圧ノイズおよびスイッチイング損失を低減するステップを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項83】
前記制御するステップは、前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイルのうち少なくとも1つの内部を流れる電流が高いときに前記少なくとも1つの外部から制御可能な高速スイッチをオンまたはオフするステップを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項84】
前記提供するステップは、1つのエネルギー保存デバイスを前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイル双方に接続するステップと、第1のエネルギー保存デバイスを前記第1の電磁刺激コイルに、第2のエネルギー保存デバイスを前記第2の電磁刺激コイルに接続するステップと、第1の動作期間において第1のエネルギー保存デバイスを、第2の動作期間において第2のエネルギー保存デバイスを接続するステップとのうち少なくとも1つを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項85】
前記第1の電磁刺激コイルおよび前記第2の電磁刺激コイルのうち少なくとも1つにおける発熱を低減するステップをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項86】
前記刺激装置中のエネルギー消費を低減するステップをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項87】
前記放出するステップは、より低い電圧またはより低い電流と共に放出し、これによりサイズのより小さな部品の使用を可能にするステップを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項88】
前記第1の電磁刺激コイルおよび第2の電磁刺激コイルを提供するステップは、前記第1の電磁刺激コイルを第1のチャンネルに、前記第2の電磁刺激コイルを第2のチャンネルに接続するステップを含む、請求項45に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公表番号】特表2012−511387(P2012−511387A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540319(P2011−540319)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055704
【国際公開番号】WO2010/067336
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(311015872)イェダ リサーチ アンド デベロップメント カンパニー リミテッド アット ザ ウェイズマン インスティテュート オブ サイエンス (1)
【Fターム(参考)】