説明

結晶固体IM−20およびその調製方法

本発明は、以下に示すX線回折図を有する、IM−20で指し示される結晶固体に関する。前記固体は、実験式mXO:nGeO:pZ:qR:sF:wHO(式中、Rは1種以上の有機種を表し、Xはゲルマニウムとは異なる1種以上の四価元素を表し、Zは少なくとも1種の三価元素を表し、かつFは、フッ素である)によって表現される化学組成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な結晶構造を有する、以下でIM−20と称される新規な結晶固体、並びに前記固体の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新規なミクロ孔モレキュラーシーブの研究により、この数年間で非常に多様なこのクラスの生成物の合成に至った。非常に多様なゼオライト構造アルミノケイ酸塩、特に、化学組成、含まれる細孔の径、そのミクロ孔の系の形態および幾何学配置を特徴とするものがそれに伴って開発された。
【0003】
約40年前から合成されたゼオライトの中で、幾つかの固体が、吸着および触媒作用の分野で著しい進歩を実現させることを可能にした。これらの中で、ゼオライトY(特許文献1)およびゼオライトZSM−5(特許文献2)が挙げられる。毎年合成される、ゼオライトを包含する新規なモレキュラーシーブの数は、絶えず上昇している。発見された様々なモレキュラーシーブの更に完全な記載を得るには、次の著作を有効に参照することができる:非特許文献1。ゼオライトNU−87(特許文献3)、ゼオライトMCM−22(特許文献4)、あるいはCLO構造タイプのガロホスファート(cloverite)(特許文献5)、またはゼオライトITQ−12(特許文献6)、ITQ−13(特許文献7)、CIT−5(特許文献8)、ITQ−21(特許文献9)、ITQ−22(非特許文献2)、SSZ−53(非特許文献3)、SSZ−59(非特許文献3)、SSZ−58(非特許文献4)、およびUZM−5(非特許文献5)を挙げることができる。
【0004】
幾つかの前述のゼオライトは、可動化剤(agent mobilisateur)が通常の水酸化物イオンでなく、フッ化物イオンであるフッ化物媒質において、当初Flanigenら(特許文献10)によって記載され、次にJ. -L. Guthら(非特許文献6)によって開発された方法に従って合成された。合成媒質のpHは、概して中性に近い。これらのフッ化反応系の利点の一つは、伝統的なOH媒質で得られるゼオライトよりも欠点が少ない、純粋にケイ素のゼオライトを得ることが可能になることである(非特許文献7)。フッ化反応媒質の使用に関連した、もう一つの決定的な利点は、ゼオライトITQ−7、ITQ−12およびITQ−13の場合のように、4つの四面体(D4R)を有する二重サイクルを含むケイ素骨格の新規なトポロジーを得ることが可能になることである。その上、合成媒質中でゲルマニウムおよびケイ素の源を共に使用することにより、ゼオライトITQ−17およびITQ−21(非特許文献8、9)またはIM−12(非特許文献10)の場合のように、フッ化媒質と同様に、従来の非フッ化塩基性媒質で、このタイプの、すなわちD4R単位を含む新規な骨格を得ることも可能になり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,130,007号明細書
【特許文献2】米国特許第3,702,886号明細書
【特許文献3】米国特許第5,178,748号明細書
【特許文献4】米国特許第4,954,325号明細書
【特許文献5】米国特許第5,420,279号明細書
【特許文献6】米国特許第6,471,939号明細書
【特許文献7】米国特許第6,471,941号明細書
【特許文献8】米国特許第6,043,179号明細書
【特許文献9】国際公開第02/092511号パンフレット
【特許文献10】米国特許第4,073,865号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】シー・エイチ・ベルロチア(Ch. Baerlocher) 、ダブリュー・エム・マイアー(W. M. Meier)、ディー・エイチ・オルソン(D. H. Olson)著、「アトラス・オフ・ゼオライト・フレームワーク・タイプス(Atlas of Zeolite Framework types)」、第5改訂版、エルセビア(Elsevier)、2001年
【非特許文献2】コルマ・エイ(Corma, A.)ら著、「ネイチャー・マテリアルズ(Nature Materials)」、2003年、第2巻、p.493
【非特許文献3】バートン・エイ(Burton, A.)ら著、「Chemistry:a Eur. Journal」、2003年、第9巻、p.5737
【非特許文献4】バートン・エイ(Burton, A.)ら著、「J. Am. Chem. Soc.」、2003年、第125巻、p.1633
【非特許文献5】ブラックウェル・シー・エス(Blackwell, C.S.)ら著、「Angew. Chem., Int. Ed.」、第2003年、第42巻、p.1737
【非特許文献6】ジェイ・エル・グス(J.-L. Guth)ら著、「Proc. Int. Zeol. Conf.」、Tokyo、1986年、p.121
【非特許文献7】ジェイ・エム・チェゾウ(J.M. Chezeau)ら著、「ゼオライツ(Zeolites)」、1991年、第11巻、p.598
【非特許文献8】エイ・コルマ(A. Corma)ら著、「Chem. Commun.」、2001年、第16巻、p.1486
【非特許文献9】エイ・コルマ(A. Corma)ら著、「Chem. Commun.」、2003年、第9巻、p.1050
【非特許文献10】ジェイ・エル・パイラウド(JL. Paillaud)ら著、「サイエンス(Science)」、2004年、第304巻、p.990
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の説明)
本発明は、新規な結晶構造を有する、結晶固体IM−20と称される新規な結晶固体を対象とする。前記固体は、次の一般式:mXO:nGeO:pZ:qR:sF:wHO(式中、Rは1種以上の有機種を表し、Xはゲルマニウムとは異なる1種以上の四価元素を表し、Zは少なくとも1種の三価元素を表し、Fは、フッ素であり、m、n、p、q、sおよびwはXO、GeO、Z、R、FおよびHOのモル数をそれぞれ表し、mは0.3〜0.8であり、nは0.2〜0.7であり、pは0〜0.1であり、qは0〜0.2であり、sは0〜0.2であり、wは0〜1である)によって表現される化学組成を有する。
【0008】
本発明による結晶固体IM−20は、粗合成形態で、表1に記載された線を少なくとも含むX線回折図を有する。本発明による結晶固体IM−20は、焼成形態で、表2に記載された線を少なくとも含むX線回折図を有する。この新規な結晶固体IM−20は、新規な結晶構造を有する。
【0009】
これらの回折図は、銅のKα線(λ=1.5406Å)による従来の粉末法を使用して、回折計を用いた放射線結晶分析によって得られる。角度2θにより表される回折ピークの位置から、ブラッグの関係によって、試料の特徴を示す格子面間隔(equidistances reticulaires)dhklが計算される。dhklに対する測定誤差Δ(dhkl)は、2θの測定に割り当てられる絶対誤差Δ(2θ)に応じて、ブラッグの関係によって計算される。±0.02°に等しい絶対誤差Δ(2θ)が、一般に認められる。dhklの各値に割り当てられる相対強度I/Iは、対応する回折のピークの高さにより測定される。粗合成形態での、本発明による結晶固体IM−20のX線回折図は、表1に示されたdhklの値に対する線を少なくとも含む。焼成形態での、本発明による結晶固体IM−20のX線回折図は、表2に示されたdhklの値に対する線を少なくとも含む。dhklの欄に、格子間距離の平均値がオングストローム(Å)で示される。これらの値の各々には、±0.2Å〜±0.003Åの測定誤差Δ(dhkl)が割り当てられなければならない。
【0010】
【表1】

【0011】
【表2】

【0012】
表中、FF=非常に強い;m=中程度;f=弱い;F=強い;mf=中程度に弱い;ff=非常に弱い。
【0013】
相対強度I/Iは、X線回折図の100の値が割り当てられる最も強い線に相対強度の大きさに応じて与えられる:ff<15;15≦f<30;30≦mf<50;50≦m<65;65≦F<85;FF≧85。
【0014】
本発明による結晶固体IM−20は、それぞれ図1および図2により示される粗合成形態および焼成形態でのX線回折図を特徴とする新規な基本結晶構造またはトポロジーを有する。
【0015】
前記固体IM−20は、次の一般式:mXO:nGeO:pZ:qR:sF:wHO(I)(式中、Rは1種以上の有機種を表し、Xはゲルマニウムとは異なる1種以上の四価元素を表し、Zは少なくとも1種の三価元素を表し、Fは、フッ素である)によって規定される化学組成を有する。式(I)において、m、n、p、q、sおよびwは、それぞれ、XO、GeO、Z、R、FおよびHOのモル数を表し、mは0.3〜0.8であり、nは0.2〜0.7であり、pは0〜0.1であり、qは0〜0.2であり、sは0〜0.2であり、wは0〜1である。
【0016】
有利には、本発明による結晶固体IM−20の骨格のモル比m/nは、1〜10、好ましくは1〜5、非常に好ましくは1.5〜2である。モル比{(n+m)/p}は、10以上、好ましくは20以上である。pの値は、0〜0.1、非常に好ましくは0〜0.05、なお更に好ましくは0.005〜0.02である。qの値は、0〜0.2、有利には0.02〜0.2、非常に有利には0.05〜0.15である。本発明によれば、sは、0〜0.2であり、好ましくは、sは0.01〜0.2であり、非常に好ましくは、sは0.02〜0.1である。wが取る値は、本発明によれば0〜1であり、好ましくは0.3〜0.5である。本発明による結晶固体IM−20の乾燥かつ焼成形態で、q、sおよびwの値は、0である。
【0017】
本発明に従えば、Xは、好ましくはケイ素、スズおよびチタンから選択され、非常に好ましくはXは、ケイ素であり、Zは、好ましくはアルミニウム、ホウ素、鉄、インジウムおよびガリウムから選択され、非常に好ましくはZは、アルミニウムである。好ましくは、Xはケイ素である:本発明による結晶固体IM−20は、元素Zが存在する時に、結晶メタロゲルマノケイ酸塩であり、粗合成形態にある時に表1に記載されたのと同一および焼成形態にある時に表2に記載されたのと同一のX線回折図を有する。なお更に好ましくは、Xはケイ素であり、Zはアルミニウムである:本発明による結晶固体IM−20は、アルミノゲルマノケイ酸塩結晶であり、粗合成形態にある時に表1に記載されたのと同一および焼成形態にある時に表2に記載されたのと同一のX線回折図を有する。
【0018】
本発明による結晶固体IM−20が、粗合成形態を呈する場合、すなわち合成から直接生じ、かつ当業者に周知である焼成および/またはイオン交換のあらゆる工程の前にある場合、前記固体IM−20は、以下に記載されるような少なくとも1種の有機種、またはその分解生成物、またはその前駆体を含む。粗合成形態で、固体IM−20を規定する一般式中に存在する有機種R(単数または複数)は、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に前記有機種(単数または複数)である。本発明の好ましい態様によれば、Rは、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンである。構造化剤(structurant)の役割を果たす前記有機種Rは、熱および/または化学処理のような先行技術の従来の方法によって除去され得る。
【0019】
本発明による結晶固体IM−20は、好ましくはゼオライト固体である。
【0020】
本発明は、結晶固体IM−20の調製方法であって、少なくとも1種の酸化ゲルマニウムの少なくとも1種の源、少なくとも1種の酸化物XOの少なくとも1種の源、場合による少なくとも1種の酸化物Zの少なくとも1種の源、少なくとも1種の有機種R、およびフッ化物イオンの少なくとも1種の源を含む水性混合物を反応させ、混合物は、好ましくは、次のモル組成:
(XO+GeO)/Z:少なくとも5、好ましくは少なくとも10、
O/(XO+GeO):1〜50、好ましくは5〜20、
R/(XO+GeO):0.3〜3、好ましくは0.4〜1.5、
XO/GeO:0.5〜10、好ましくは1〜10、かつ非常に好ましくは1〜5、
F(XO/GeO):0.1〜2、好ましくは0.2〜1
(式中、Xは、ゲルマニウムとは異なる1種以上の四価元素、好ましくはケイ素、スズおよびチタンから選択され、非常に好ましくは、Xは、ケイ素であり、Zは、次の元素:アルミニウム、鉄、ホウ素、インジウムおよびガリウムから形成される群から選択される1種以上の三価元素、好ましくはアルミニウムである)を有する、方法にも関する。
【0021】
本発明による方法に従えば、Rは、有機構造化剤の役割を果たす有機種である。好ましくはRは、化合物1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムである。
【0022】
元素Xの源は、元素Xを含み、かつこの元素を活性な形態で水溶液に放出し得るあらゆる化合物であり得る。有利には、元素Xがケイ素である時、シリカの源は、ゼオライトの合成において一般的に使用されるいずれかのもの、例えば、粉末固体シリカ、ケイ酸、コロイドシリカ、または溶解シリカ、またはテトラエトキシシラン(TEOS)であり得る。
【0023】
粉末シリカのうち、沈降シリカ、特に、アルカリ金属ケイ酸塩の溶液からの沈降によって得られたもの、例えば、アエロジルシリカ、発熱性シリカ、例えば、「CAB−O−SIL(登録商標)」およびシリカゲルが使用され得る。異なる粒子サイズを有する、例えば、10〜15nmまたは40〜50nmの平均等価径を有するコロイダルシリカ、例えば、商標名「LUDOX(登録商標)」の下で販売されているものを用いることが可能である。
【0024】
ゲルマニウムの源は、ゲルマニウム元素を含み、かつこの元素を活性な形態で水溶液に放出し得るあらゆる化合物であり得る。ゲルマニウムの源は、水晶またはルチル(rutile)と呼ばれる形態で結晶化した酸化ゲルマニウムであり得る。テトラエトキシゲルマニウムまたはテトライソプロポキシゲルマニウムのようなゲルマニウムの源も使用され得る。ゲルマニウムの源は、好ましくは無定形酸化ゲルマニウムGeOであり得る。
【0025】
元素Zの源は、元素Zを含み、かつこの元素を活性な形態で水溶液中に放出し得るあらゆる化合物であり得る。Zがアルミニウムである好ましい場合、アルミナの源は、好ましくはアルミン酸ナトリウム、またはアルミニウム塩(例えば塩化物、硝酸塩、水酸化物若しくは硫酸塩)、アルミニウムアルコキシド、または、水和または水和可能な形態のいわゆるアルミナ、例えば、コロイドアルミナ、擬ベーマイト、ガンマアルミナ、またはアルファ若しくはベータの三水和物である。以上に記載された源の混合物も同様に使用され得る。
【0026】
フッ素は、アルカリ金属若しくはアンモニウムの塩の形態(例えばNaF、NHF、NHHF)、またはフッ化水素酸の形態、または、水中にフッ化物アニオンを放出し得る加水分解可能な化合物の形態(例えば、フッ化ケイ素SiFまたはフルオロケイ酸アンモニウム(NHSiF若しくはフルオロケイ酸ナトリウムNaSiF)で導入され得る。
【0027】
本発明による方法の好ましい実施態様によれば、シリカ、場合によるアルミナ、酸化ゲルマニウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムおよびフッ化物イオンの源を含む水性混合物を反応させる。
【0028】
本発明による方法は、少なくとも1種の酸化ゲルマニウムの少なくとも1種の源、少なくとも1種の酸化物XOの少なくとも1種の源、場合による少なくとも1種の酸化物Zの少なくとも1種の源、少なくとも1種のフッ化物イオン源、および少なくとも1種の有機種Rを含む、ゲルと称される水性反応混合物を調製することからなる。前記反応体の量は、一般式mXO:nGeO:pZ:qR:sF:wHO(式中、m、n、p、q、sおよびwは前に規定された基準に対応する)の結晶固体IM−20への結晶化を可能にする組成をこのゲルに与えるように調節される。次にゲルは、結晶固体IM−20が形成されるまで水熱処理を受ける。有利には、ゲルは、自己生成圧力下、場合によっては、ガス、例えば窒素を添加して、120〜200℃、好ましくは140〜180℃の温度、なお更に好ましくは150〜175℃の温度で、本発明による固体IM−20の結晶が形成されるまで水熱条件に置かれる。結晶化を得るために必要な期間は、ゲル中の反応体の組成、撹拌および反応温度に応じて一般的に1時間から数ヶ月、好ましくは10時間から20日の間で変化する。反応は、撹拌下でまたは撹拌なしで行われる。
【0029】
結晶の形成に必要な時間および/または全体の結晶化期間を減少させるために、反応混合物に種を添加することは、有利であり得る。不純物を減じて結晶固体IM−20の形成を促進するために、種を使用することは、同様に有利であり得る。かかる種は、結晶固体、特に固体IM−20の結晶を含む。結晶種は、反応混合物中で使用される酸化物(XO+GeO)(XOは好ましくはシリカである)の質量の0.01〜10%の比率で一般的に添加される。
【0030】
反応終了時に、固相は、ろ過され、かつ洗浄される;それは次に乾燥、脱水および焼成および/またはイオン交換のようなその後の工程のための準備ができている。これらの工程のために、当業者に公知である従来のあらゆる方法が用いられ得る。
【0031】
焼成工程は、有利には数時間から数日に及ぶ期間にわたる、100〜1000℃に及ぶ温度での1回以上の加熱工程によって行われる。好ましくは、本発明による結晶固体IM−20の焼成形態を得るために、粗合成形態の結晶固体は、最初に、中性ガス掃引下、例えば、窒素掃引下、好ましくは100〜250℃の温度で有利には2〜8時間の期間にわたる加熱、次いで、中性ガス雰囲気下、例えば、窒素雰囲気下、好ましくは400〜700℃の温度での有利には6〜10時間の期間にわたる焼成を受ける。これらの第1処理の後、得られた結晶固体IM−20は、400〜700℃の温度で6〜10時間の期間にわたって空気流下に、次いで、好ましくは6〜10時間の期間にわたって酸素流下に焼成される。
【0032】
本発明はまた、吸着剤としての前記固体IM−20の使用に関する。好ましくは、前記固体IM−20は、吸着剤として使用される場合、有機種、好ましくは1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンを取り除かれる。吸着剤として使用される場合、本発明による結晶固体IM−20は、一般的に分離される流体が結晶固体にアクセスすることを可能にするチャネルおよびキャビティを含む無機マトリクス相中に分散する。これらのマトリクスは、好ましくは鉱物酸化物、例えばシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、または粘土である。マトリクスは、一般的に、形成された吸着剤の質量の2〜25%を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、次の実施例によって例証される。
【0034】
(実施例1)
(実施例1:本発明に合致する結晶固体IM−20の調製)
4.335gの水酸化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム(Solvionic)を、内部容積20mLのテフロン(登録商標)製容器中の9.17mLの蒸留水に添加する。次に2.330gの酸化ゲルマニウム(Aldrich)を、この溶液に添加する。混合物を、磁気撹拌器を用いて15分間にわたって撹拌する。2.002gのAerosil(登録商標)200(沈降シリカ、Degussa)を、その時に導入する。次に混合物を、2時間にわたって周囲温度で撹拌する。次いで、1.218mL(1.389g)のHF水溶液(フッ化水素酸40質量%、Riedel de Haen)を添加する。混合物を、その時15分間にわたって撹拌する。必要な含水量の計量および調整後、得られた混合物のモル組成は:0.6SiO:0.4GeO:0.5 1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム:0.5HF:10HOである。
【0035】
合成混合物(pH約9)を含むテフロン(登録商標)製のジャケットを、その時、オートクレーブに導入し、オートクレーブを、撹拌なしで、14日の期間、170℃で乾燥のために炉に入れる。
【0036】
ろ過後、得られた生成物を、蒸留水によって数回洗浄する。次に70℃で24時間にわたって乾燥させる。得られた乾燥生成物の質量は、約4.23gである。
【0037】
乾燥した固体生成物を、最初に、窒素掃引下、200℃の温度での4時間にわたる加熱、次に、なおも窒素雰囲気下、550℃で8時間にわたる焼成に付す。これらの第1処理の後、得られた固体を、空気流下で550℃で8時間にわたり、次に酸素流下で更に8時間にわたり焼成する。
【0038】
得られた固体を、X線回折によって分析し、かつ結晶固体IM−20から構成されるものと確認した:固体IM−20に対して実現されたディフラクトグラムを図2に示す。
【0039】
(実施例2:本発明による結晶固体IM−20の調製)
3.476gの水酸化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム(Solvionic)を、内容積20mLのテフロン(登録商標)製容器中の8.30mLの蒸留水に添加する。次に1.862gの酸化ゲルマニウム(Aldrich)を、この溶液に添加する。混合物を、磁気撹拌器を用いて15分間にわたって撹拌する。5.945mL(5.553g)のTEOS(テトラエトキシシラン、Aldrich)を、その時に導入する。次に混合物を、48時間にわたって周囲温度で攪拌し、TEOSの加水分解によって生じたエタノールを蒸発させる。次に、0.975mL(1.113g)のHF水溶液(フッ化水素酸40質量%、Riedel de Haen)を添加する。混合物を、その時、15分間にわたって撹拌する。必要な含水量の計量および調整後、得られた混合物のモル組成は:0.6SiO:0.4GeO:0.5 1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム:0.5HF:10HOである。
【0040】
合成混合物(pH約9)を含むテフロン(登録商標)製のジャケットを、その時、オートクレーブに導入し、オートクレーブを、170℃で乾燥のために14日間にわたって攪拌なしで炉に入れる。
【0041】
ろ過後、得られた生成物を、蒸留水によって数回洗浄する。次に70℃で24時間にわたって乾燥させる。得られた乾燥生成物の質量は、約2.45gである。
【0042】
乾燥した固体生成物を、最初に、窒素掃引下、200℃の温度での4時間にわたる加熱、次に、なおも窒素雰囲気下、550℃での8時間にわたる焼成に付す。これらの第1処理の後、得られた固体を、空気流下、550℃で8時間、次に更に8時間にわたり酸素流下に焼成する。
【0043】
得られた固体を、X線回折によって分析し、結晶固体IM−20からなるものと確認した:固体IM−20に対して実現されたディフラクトグラムを図2に示す。
【0044】
(実施例3:本発明に合致する結晶固体IM−20の調製)
6.952gの水酸化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム(Solvionic)を、内容積20mLのテフロン(登録商標)製容器中の7.64mLの蒸留水に添加する。次に、0.349gの水酸化アルミニウム(63〜67質量%のAl、Fluka)および1.862gの酸化ゲルマニウム(Aldrich)を、この溶液に添加する。磁気撹拌器を用いて、混合物を1時間にわたって撹拌する。実施例1において記載された合成生成物を予め粉砕したもの約0.070g(すなわち、酸化物SiOおよびGeOに対して2質量%)を、その時、種として導入し、次いで、混合物を15分間にわたって攪拌する。5.945mL(5.553g)のTEOS(テトラエトキシシラン、Aldrich)を、その時に導入する。次に、混合物を48時間にわたって周囲温度で攪拌し、TEOSの加水分解によって形成されたエタノールを蒸発させる。1.952mL(2.225g)のHF水溶液(フッ化水素酸40質量%、Riedel de Haen)を、その時に添加し、次に混合物を15分間にわたって撹拌する。必要な含水量の計量および調整の後、得られた混合物のモル組成は:0.6SiO:0.4GeO:0.05Al:1 1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム:1HF:10HO(酸化物SiOおよびGeOに対して+2質量%の種)である。
【0045】
合成混合物(pH約9)を含むテフロン(登録商標)製のジャケットを、その時、オートクレーブに導入し、オートクレーブを、攪拌なしで、170℃で乾燥のために14日にわたって炉内に置く。
【0046】
ろ過後、得られた生成物を、蒸留水によって数回洗浄する。次に70℃で24時間にわたって乾燥させる。得られた乾燥生成物の質量は、約2.27gである。
【0047】
乾燥した固体生成物を、最初に、窒素掃引下、200℃の温度での4時間にわたる加熱、次いで、なおも窒素雰囲気下、550℃での8時間にわたる焼成に付す。この第1処理の後、得られた固体を、空気流下550℃で8時間、次に酸素流下更に8時間焼成する。
【0048】
得られた固体を、X線回折によって分析し、結晶固体IM−20からなるものであると確認した:固体IM−20に対して実現されたディフラクトグラムを図2に示す。
【0049】
(実施例4:結晶固体IM−20を含む吸着剤の調製)
使用される固体は、実施例1の焼成された固体である。Z字形アームを有する混練機内でのベーマイト(Pural SB3、Sasol)との混練およびピストン押出機により得られたペースト状物の押出により固体を押出成形する。押出物を、その時、120℃で12時間にわたり、空気下に乾燥させ、550℃で2時間にわたり、空気流下マッフル炉内で焼成する。このようにして調製された吸着剤は、80重量%のゼオライト固体IM−20および20重量%のアルミナからなる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】結晶固体IM−20の粗合成形態でのX線回折図を示すグラフである。
【図2】結晶固体IM−20の焼成形態でのX線回折図を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成形態で、下記表:
【表1】

(表中、FF=非常に強い;m=中程度;f=弱い;F=強い;mf=中程度に弱い;ff=非常に弱い)
に記載された線を少なくとも含むX線回折図を示し、次の一般式:mXO:nGeO:pZ:qR:sF:wHO(式中、Rは1種以上の有機種を表し、Xはゲルマニウムとは異なる1種以上の四価元素を表し、Zは少なくとも1種の三価元素を表し、Fは、フッ素であり、m、n、p、q、sおよびwはXO、GeO、Z、R、FおよびHOのモル数をそれぞれ表し、mは0.3〜0.8であり、nは0.2〜0.7であり、pは0〜0.1であり、qは0〜0.2であり、sは0〜0.2であり、wは0〜1である)によって表現される化学組成を示す結晶固体IM−20。
【請求項2】
Xがケイ素である、請求項1に記載の結晶固体IM−20。
【請求項3】
Zがアルミニウムである、請求項1または2に記載の結晶固体IM−20。
【請求項4】
モル比{(n+m)/p}が10以上であり、pは0.005〜0.2であり、qは0〜0.2であり、sは0〜0.2であり、wは0〜1である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の結晶固体IM−20。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の結晶固体IM−20の調製方法であって、水性媒質中で、少なくとも1種のゲルマニウム酸化物の少なくとも1種の源と、少なくとも1種の酸化物XOの少なくとも1種の源と、場合による少なくとも1種の酸化物Zの少なくとも1種の源と、少なくとも1種のフッ化物イオン源と、少なくとも1種の有機種Rとを混合する工程と、次いで、結晶固体IM−20が形成されるまで前記混合物の水熱処理を行う工程とからなる、方法。
【請求項6】
反応混合物のモル組成が:
(XO+GeO)/Z :少なくとも5、
O/(XO+GeO) :1〜50、
R/(XO+GeO) :0.3〜3、
XO/GeO :0.5〜10、
F(XO/GeO) :0.1〜2
である、請求項5に記載の結晶固体IM−20の調製方法。
【請求項7】
前記有機種Rが、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンである、請求項5または6に記載の調製方法。
【請求項8】
種が反応混合物に添加される、請求項5〜7のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の結晶固体IM−20または請求項5〜8のいずれか1つにより調製された結晶固体IM−20の吸着剤としての使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−512800(P2012−512800A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541530(P2011−541530)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際出願番号】PCT/FR2009/001347
【国際公開番号】WO2010/076399
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(591007826)イエフペ エネルジ ヌヴェル (261)
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
【Fターム(参考)】