説明

結晶形態のエポチロンBおよび医薬組成物における使用

本発明は、新規結晶形態のエポチロンBに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
有機化合物
本発明は、新規結晶形態のエポチロン、とりわけエポチロンB、医薬製剤の製造におけるそれらの使用、これらの新規結晶形態を含む新規医薬製剤、および/または腫瘍のような増殖性疾患の処置における、もしくはこの処置に適切な医薬製剤の製造における、これらの化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
腫瘍を処置するための既存の細胞毒性活性成分であり、微小管安定化剤であるTaxol(登録商標)(Paclitaxel; Bristol-Myers Squibb)は、重要な役割を有しており、顕著な商業的成功を収めている。しかし、Taxolは多くの欠点を有する。とりわけ、その極めて低い水溶性が問題である。したがって、Taxol(登録商標)をCremophor EL(登録商標)(ポリオキシエチレンひまし油;BASF, Ludwigshafen, Germany)との製剤において投与する必要がある。Cremophor EL(登録商標)は重大な副作用を有しており;例えばこれは、少なくとも1症例では患者の死さえ導くアレルギーを惹起する。
【0003】
タキサンクラスの微小管安定化抗がん剤は「この10年でがんに対するおそらく最も重要な医薬兵器の追加」と褒め称えられているが(Rowinsky E.K., Ann. rev. Med. 48, 353-374 (1997)参照)、Taxol(登録商標)の商業的成功にもかかわらず、これらの化合物はがんの化学療法に本当に優れた飛躍をもたらしたとはなおも考えられない。Taxol(登録商標)での処置は様々な顕著な副作用と関連しており、わずかな1次クラスの小型の腫瘍、すなわち結腸腫瘍および前立腺腫瘍がわずかな程度のみこの化合物に応答する(とりわけRowinsky E.K.参照)。さらに、Taxolの効果は不十分であり得るし、後天的な耐性機構、とりわけ有効成分の排出ポンプとして作用するリンタンパク質の過剰発現に基づくもの、例えば多剤輸送糖タンパク質「P糖タンパク質」の過剰発現による「多剤耐性」によって完全に中和すらされる。
【0004】
エポチロンAおよびBは、式:
【化1】

〔式中、Rは水素(エポチロンA)またはメチル(エポチロンB)を意味する〕
の微小管安定化細胞毒性有効成分の新規クラスである(Gerth, K. et al., J. Antibiot. 49, 560-3 (1966)参照)。
【0005】
これらの化合物は以下の点でTaxol(登録商標)よりも利点を有する:
a) それらはより良い水溶性を有し、したがって製剤により容易に利用可能である。
b) 細胞培養実験において、「多剤耐性」とするP−糖タンパク質排出ポンプの活性のためにTaxol(登録商標)を含む他の化学療法剤での処置に抵抗性を示す細胞の増殖に対しても、それらは活性であることが報告されている(Bolag, D. M., et al., “Epothilones, a new class of microtubuli-stabilizing agents with a Taxol-like mechanism of action”, Cancer Research 55, 2325-33 (1995)参照)。および
c) 修飾βチューブリンを有するTaxol(登録商標)抵抗性卵巣がん細胞系に対してさえインビトロで極めて有効であることが示され得る(Kowalski, R. J., et al., J. Biol. Chem. 272(4), 2534-2541 (1997)参照)。
【0006】
例えば腫瘍処置のためのエポチロンの医薬適応は、Taxol(登録商標)について記載されているものと同様の方法で可能である(例えば、US 5.641.803;US 5.496.804;US 5.565.478参照)。
【0007】
エポチロンは、特許出願WO 93/10121、US 6,194,181、WO 98/25929、WO 98/08849、WO 99/43653、WO 98/22461およびWO 00/31247に記載のとおりに製造することができる(各場合において、とりわけ化合物クレームおよび実施例の最終生成物において、最終生成物、医薬製剤およびクレームの主題を出典明示により本明細書の一部とする)。式Iのエポチロン誘導体、とりわけエポチロンBを、WO 99/39694に記載の医薬組成物の一部として投与することができる。
【発明の概要】
【0008】
発明の詳細な説明
1つの局面において、本発明は新規結晶形態のエポチロンBに関する。
【0009】
本明細書において使用されている一般的な用語は、好ましくは後記意味を有する:
本明細書において文献が言及されているとき、これらは必要に応じて本明細書の一部とする。
接頭語「低級」は、対応する名称の基が好ましくは最大7個までの炭素原子、とりわけ4個までの炭素原子を含み、そして分枝または非分枝であることを意味する。低級アルキルは例えば、非分枝または1回以上の分枝、例えばメチル、エチル、プロピル、例えばイソプロピルまたはn−プロピル、ブチル、例えばイソブチル、sec.−ブチル、tert.−ブチルまたはn−ブチル、あるいはペンチル、例えばアミルまたはn−ペンチルであり得る。
【0010】
エポチロンは主としてエポチロンAおよび/またはBであるが、他のエポチロン、例えば国際出願WO 97/19086およびWO 98/22461で命名されたエポチロンCおよびD、WO 98/22461で命名されたエポチロンEおよびF、および対応する微生物から入手可能なさらなるエポチロンでもある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好ましい態様
本発明は、新規結晶形態のエポチロンB、とりわけ修飾体Cと記載する結晶形態のエポチロンBに関する。
【0012】
結晶形態はとりわけ、それらのX線ダイアグラムによって区別することができる。回折計でCu−Kα照射を用いて得るX線ダイアグラムを、好ましくは、有機化合物の固体を特徴付けるために用いる。X線回折ダイアグラムはとりわけ、物質の結晶修飾を測定するために成功裏に用いる。エポチロンBに存在する結晶修飾体Cを特徴付けるため、角度範囲(2θ)2°〜35°で、室温に維持した物質のサンプルで測定を行う。
【0013】
修飾体Cの1個の結晶構造
修飾体Cは、斜方晶系スペースグループP2によって特徴付けられる。格子パラメーター(100K)は以下のとおりである:
修飾体Cの構造データ
イソプロピルアセテートから結晶化
【表1】

【0014】
エポチロンBの結晶修飾体C(修飾体C)からかくして測定したX線回折ダイアグラム(反射線(reflection line)および最も重要な線の強度)は下記表によって特徴付けられる。
【表2】

【0015】
新規結晶形態はとりわけ安定であり、したがって固体投与形態の有効成分として、固体形態での保存のために、または固体もしくは液体投与形態の製造における中間体(とりわけ良好な保存性を有する)として、好適である。
【0016】
本発明はまた、医薬製剤の製造における新規結晶形態(以後有効成分と称する)の使用、これらの新規結晶形態を含む新規医薬製剤、および/または増殖性疾患、例えば腫瘍の処置におけるこれらの化合物の使用に関する。以下において、有効成分を含むかまたは含有する製剤または組成物が言及されているとき、液体組成物または結晶形態それ自体を最早含まない製剤において、最早各結晶形態を含まなくとも(例えばそれらが溶液中に存在するため)、これは常に結晶形態を用いて得ることができる医薬製剤(例えばエポチロンBの結晶形態Cを用いて得られる輸液)をも意味していると理解される。
【0017】
本発明はまた、とりわけ、医薬製剤の製造における新規結晶形態のエポチロンBの使用であって、該新規結晶形態のエポチロンBを1種以上の担体と混合することを特徴とする使用に関する。
【0018】
本発明はまた、増殖性疾患を有する温血動物を処置する方法であって、該疾患の処置に有効な量のエポチロンBを1種以上の新規結晶形態で、かかる処置、例えばとりわけ1種以上の新規結晶形態を用いて製造される製剤での処置を必要とする温血動物に投与することによって特徴付けられる方法に関する。
【0019】
医薬製剤を製造するために、有効成分を例えば、医薬製剤が有効量の有効成分を顕著な量の1種以上の有機または無機、液体または固体の薬学的に許容される担体と共に、またはそれとの混合物において含むように使用することができる。
【0020】
本発明はまた、増殖性疾患、例えば腫瘍の処置において温血動物、とりわけヒトに投与するのに適切な医薬組成物であって、該疾患を処置するのに好適な量の有効成分を薬学的に許容される担体と共に含む組成物に関する。
【0021】
本発明の医薬組成物は、温血動物、とりわけヒトへの経腸、とりわけ経鼻、直腸もしくは経口、または好ましくは非経腸、とりわけ筋肉内もしくは静脈内投与を意図したものであり、有効量の有効成分をそれ自体として、または顕著な量の薬学的に許容される担体と共に含む。有効成分の量は、温血動物のタイプ、体重、年齢および個体の状態、個体の薬物動力学的状態、処置する疾患および投与タイプに依存する。
【0022】
当該医薬組成物は約0.0001%〜約95%、好ましくは0.001%〜10%、または20%〜約90%の有効成分を含む。本発明の医薬組成物は例えば、単位投与形態、例えばアンプル、バイアル、座薬、糖衣錠、錠剤またはカプセル剤の形態で存在してもよい。
【0023】
本発明の医薬組成物は、既知の方法、例えば常套の溶解、凍結乾燥、混合、造粒または製造方法によって製造する。
【0024】
有効成分の溶液および懸濁液、とりわけ水溶液または懸濁液は好ましく使用され、また例えば、投与の前に溶液または懸濁液を調製するための有効成分をそれ自体として、または顕著な量の薬学的に許容される担体、例えばマンニトールと共に含む凍結乾燥組成物であり得る。医薬組成物を滅菌することができ、および/または賦形剤、例えば保存剤、安定化剤、保湿剤および/またはエマルジョン形成剤、溶解剤、浸透圧調節のための塩、および/またはバッファーを含んでいてもよく、そして既知の方法、例えば常套の溶解または凍結乾燥によって製造する。記載の溶液または懸濁液は、増粘剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルピロリドンまたはゼラチンを含んでいてもよい。
【0025】
油中懸濁液は油性成分として、注射目的において常套の植物油、合成油または半合成油を含む。顕著な例は、とりわけ酸成分として8〜22、とりわけ12〜22個の炭素原子を有する長鎖脂肪酸、例えばラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸または対応する不飽和酸、例えばオレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ブラシジン酸またはリノレン酸を、所望により抗酸化剤、例えばビタミンE、β−カロチンまたは3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエンと共に含む液体脂肪酸エステルである。これらの脂肪酸エステルのアルコール成分は、好ましくは最大6個の炭素原子を有し、モノまたはポリヒドロキシアルコール、例えばモノ−、ジ−またはトリ−ヒドロキシアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールもしくはペンタノール、またはその異性体、とりわけグリコールおよびグリセロールである。下記脂肪酸エステルがとりわけ記載され得る:プロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、“Labrafil M 2375”(ポリオキシエチレングリセロールトリオレエート、Gattefosse, Paris)、“Miglyol 812”(8〜12個の炭素原子鎖長を有する飽和脂肪酸のトリグリセリド、Huels AG, Germany)、とりわけ植物油、例えば綿実油、アーモンド油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油、大豆油およびとりわけピーナッツ油。
【0026】
注射または輸液製剤は、常套の方法によって滅菌条件下で製造する;同じことが組成物のアンプルまたはバイアルおよび密封容器への組成物の充填にも適用される。
【0027】
有効成分および薬学的に許容される有機溶媒を含む輸液溶液が好ましい。
【0028】
本発明の製剤に使用することができる薬学的に許容される有機溶媒は、当業者に既知の全ての溶媒から選択することができる。溶媒は好ましくは、アルコール、例えば無水エタノール、エタノール/水混合物、好ましくは70%エタノール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリプロピレングリコールおよびN−メチルピロリドン、とりわけポリプロピレングリコールまたは70%エタノールから選択される。
【0029】
輸液の前に適当な溶液、例えば生理食塩水で希釈する、純粋なポリエチレングリコール中の製剤が好ましい。
【0030】
有効成分は製剤中、0.001〜100mg/ml、好ましくは約0.05〜5mg/ml、または5〜50mg/mlの濃度で存在する。
【0031】
このタイプの製剤は、バイアルまたはアンプルとして容易に貯蔵される。バイアルまたはアンプルは典型的にはガラス、例えばボロンシリケート製である。バイアルまたはアンプルは当業者に既知のあらゆる体積について適当であり得る。それらは好ましくは、製剤0.5〜5mlが許容され得る十分なサイズである。
【0032】
投与の前に、有効成分を患者に投与する前に、組成物を静脈内投与に適した水性媒体で希釈する。
【0033】
体液と同じまたは基本的に同じ浸透圧を有する輸液溶液が好ましい。結果として、水性媒体は、輸液溶液の浸透圧を体液の浸透圧と同じまたは基本的に同じとする効果を有する等張剤を含む。
【0034】
等張剤は、当業者に既知の全ての剤、例えばマンニトール、デキストロース、グルコースおよび塩化ナトリウムから選択され得る。等張剤は好ましくはグルコースまたは塩化ナトリウムである。等張剤は、輸液溶液の浸透圧を体液と同じまたは基本的に同じとする量で用いることができる。必要とされる正確な量は、常套の実験によって測定することができ、輸液の組成および等張剤のタイプに依存する。
【0035】
水性媒体中の等張剤の濃度は、使用する各剤のタイプに依存する。グルコースを用いるとき、好ましくは1〜5%w/v、好ましくは5%w/vの濃度で用いる。等張剤が塩化ナトリウムであるとき、好ましくは1%まで、好ましくは約0.9%w/vの濃度で用いる。
【0036】
輸液溶液は水性媒体で希釈することができる。用いる水性媒体の量は輸液溶液中の有効成分の所望の濃度にしたがって選択する。輸液溶液は好ましくは、輸液濃縮物(上記参照)を含むバイアルまたはアンプルを水性媒体と、水性媒体で200〜1000mlの体積となるように混合して製造する。輸液溶液は静脈内投与製剤に通常使用される他の添加物を含んでいてもよい。これらの添加物には抗酸化剤も含まれる。
【0037】
抗酸化剤は、有効成分を酸化による分解から保護するために使用することができる。抗酸化剤は当業者に既知の、静脈内製剤に適したものから選択することができる。抗酸化剤の量を常套の実験によって決定することができる。抗酸化剤を加える代わりに、またはそれに加えて、抗酸化効果は輸液溶液と酸素(空気)の接触を制限することによって達成することができる。これは単純な方法で、輸液溶液を含む容器を不活性ガス、例えば窒素またはアルゴンで処理することによって達成することができる。
【0038】
輸液溶液は、アンプルまたはバイアルを水性媒体、例えば5%グルコース溶液とWFI中、適当な容器、例えば輸液バッグまたは輸液ボトル中で混合することによって製造することができる。
【0039】
輸液溶液の容器は、輸液溶液に対して非反応性の常套の容器から選択することができる。これらの中で、とりわけボロンシリケートのガラス容器が好適であるが、プラスチック輸液バッグのようなプラスチック容器も好ましい。
【0040】
プラスチック容器はまた、熱可塑性ポリマー製であってもよい。プラスチックはまた、添加物、例えば軟化剤、増量剤、抗酸化剤、帯電防止剤または他の常套の添加物を含んでいてもよい。
【0041】
本発明の好適なプラスチックは、滅菌のために用いる高温に耐性であるべきである。好ましいプラスチック輸液バッグは、当業者に既知のPVC物質である。
【0042】
様々な容器サイズを考慮することができる。容器のサイズを選択するとき、考慮すべき要素はとりわけ、エポチロンの水性媒体への溶解度、取り扱いの容易さ、および適当であるとき、容器の保存である。約200〜1000mlの輸液溶液を保持する容器を用いることが好ましい。
【0043】
それらの良好な製剤特性のため、本発明の新規結晶形態のエポチロンBはとりわけ、輸液溶液の単純かつ再現性のよい製造に好適である。しかし、新規結晶形態はとりわけ、有効成分を固体形態、例えば経口製剤に含む医薬製剤の製造に好適である。
【0044】
経口適用のための医薬製剤は、有効成分と固体担体の混合、所望により得られた混合物の造粒、および所望または必要により錠剤、糖衣錠核またはカプセルに好適なアジュバントを加えた後、さらなる混合物の処理によって得ることができる。測定量で有効成分を分散または放出させるためのプラスチック物質に包埋することもできる。
【0045】
好適な薬学的に使用される担体は、とりわけ増量剤、例えばラクトース、サッカロース、マンニトールまたはソルビトール、セルロース調製物、および/またはリン酸カルシウム、例えばリン酸3カルシウムまたはリン酸水素カルシウム、および結合剤、例えばデンプン、例えばトウモロコシ、コムギ、コメまたはポテトデンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン、および/または所望により、崩壊剤、例えば上記デンプン、架橋ビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムである。アジュバントはとりわけ、流動改善剤および滑沢剤、例えばシリケート、タルカム、ステアリン酸またはその塩、例えばステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウム、および/またはポリエチレングリコールである。糖衣錠核は所望により、適当な胃液耐性コーティングで、とりわけ濃縮糖溶液、アラビアゴム、タルカム、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび/または2酸化チタン、または好適な有機溶媒のコーティング溶液を用いて、または胃液耐性コーティングを製造するために、適当なセルロース調製物、例えばエチルセルロースフタレートまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを用いて得る。カプセル剤はゼラチンまたはペクチン、および所望により軟化剤、例えばグリセロールまたはソルビトールからなる乾燥カプセル剤である。乾燥カプセル剤は、例えば増量剤、例えばラクトース、結合剤、例えばデンプンおよび/または滑沢剤、例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウム、および適当なとき安定化剤を含む顆粒の形態の有効成分を含んでいてもよい。軟カプセル剤において、油性アジュバント、例えば脂肪油、パラフィン油または液体プロピレングリコールを加えて、有効成分は溶解、または好ましくは懸濁形態で存在していてもよい;安定化剤および/または抗菌剤も加えることができる。錠剤または糖衣コーティングに染料または顔料を加えて、例えば同一性を改善するか、または有効成分の異なる用量を区別することができる。
【0046】
結晶形態BおよびとりわけAの1つでの増殖性疾患の処置における使用は、好ましくは結晶形態(好ましくは上記のとおり、輸液溶液の製剤に用いるために)を温血動物、とりわけヒトに、標準的な方法、例えば修飾Fibronacciシリーズを用いた最大耐用量(MTD)の20〜133%、好ましくは25〜100%で決定することができる用量で投与することによって行い、連続的使用の投与量の増加は、100%、67%、50%および40%であり、その後のすべての投与において33%であり;そして所望により、第1の用量として上記投与量範囲で投与される1種以上のさらなる用量を、前回の投与後、とりわけ1回目の投与後1週間以上、好ましくは各前回の投与後2〜10週間、とりわけ3〜6週間で処置する個体が十分に回復する時間の後各投与を行う。一般に、高用量を1回、2回または複数回、各投与間で回復が起こるのに十分な長期間隔で投与するこの処置スキームは、来院が減少し、短期間で改善された抗腫瘍効果が期待できるため、低用量でのより頻繁な処置よりも好ましい。ヒトについてのエポチロンBの投与量は、好ましくは0.1〜50mg/m、好ましくは0.2〜10mg/mである。
【0047】
下記実施例を、本発明を説明するために、その範囲を限定することなく供する。
注意:エポチロンを取り扱うとき、それらの高い毒性のため、必要により適当な保護手段をとるべきである。
【実施例】
【0048】
実施例1:エポチロンBの結晶修飾体C
エポチロンB 20mgを過剰のイソプロピルアセテート5mlに溶解させる。ゆっくりと室内環境(25℃)で蒸発させて、針状の1個の結晶が2日後に得られる。生成物を濾過し、乾燥させる。エポチロンBの結晶修飾体Cが得られる。
【0049】
実施例2:輸液濃縮物
ポリエチレングリコールPEG300に結晶修飾体CのエポチロンBを溶解させて、輸液溶液を製造するための前濃縮物を製造し、バイアル中で保存する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【表1】

の形態で複製したX線回折ダイアグラムによって特徴付けられる修飾体C(the reference modification C)を有する、結晶形態のエポチロンB。
【請求項2】

【表2】

の形態で複製したX線回折ダイアグラムによって特徴付けられる修飾体C(the reference modification C)を有する、結晶形態のエポチロンB。
【請求項3】
イソプロピルアセテートから結晶化したとき下記構造データ
【表3】

によって特徴付けられる、修飾体C(the reference modification C)を有する結晶形態のエポチロンB。
【請求項4】
増殖性疾患の処置のために温血動物に投与するのに適切である医薬組成物であって、一定量の前記疾患の処置に適切な請求項1、2または3のいずれかに記載の有効成分を薬学的に許容される担体と共に含む、医薬組成物。
【請求項5】
増殖性疾患を有する温血動物を処置する方法であって、かかる処置を必要とする温血動物に請求項1、2または3のいずれかに記載の疾患を処置するのに有効な用量のエポチロンBを投与することによる、方法。
【請求項6】
医薬製剤の製造における、請求項1、2または3のいずれかに記載の新規結晶形態のエポチロンBの使用。

【公表番号】特表2010−500387(P2010−500387A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524113(P2009−524113)
【出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007173
【国際公開番号】WO2008/019820
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】