結晶性ポリマー微孔性膜及びその製造方法、並びに濾過用フィルタ
【課題】微粒子を効率良く捕捉することができ、目詰まりがなく、濾過寿命が長い結晶性ポリマー微孔性膜、及び該結晶性ポリマー微孔性膜を効率良く製造することができる結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法、並びに該結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルタの提供。
【解決手段】互いに異なる2種以上の結晶性ポリマーからなる単層構造の結晶性ポリマー層と、該結晶性ポリマー層の厚み方向に貫通した多数の孔部とを有する結晶性ポリマー微孔性膜であって、前記結晶性ポリマーの組成比が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化しており、かつ前記孔部の平均孔径が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化している結晶性ポリマー微孔性膜及び該結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルタである。
【解決手段】互いに異なる2種以上の結晶性ポリマーからなる単層構造の結晶性ポリマー層と、該結晶性ポリマー層の厚み方向に貫通した多数の孔部とを有する結晶性ポリマー微孔性膜であって、前記結晶性ポリマーの組成比が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化しており、かつ前記孔部の平均孔径が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化している結晶性ポリマー微孔性膜及び該結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルタである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体、液体等の精密濾過に使用される濾過効率の高い結晶性ポリマー微孔性膜及び該結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法、並びに濾過用フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
微孔性膜は古くから知られており、濾過用フィルタ等に広く利用されている(非特許文献1参照)。このような微孔性膜としては、例えばセルロースエステルを原料とするもの(特許文献1〜7参照)、脂肪族ポリアミドを原料とするもの(特許文献8〜14参照)、ポリフルオロカーボンを原料とするもの(特許文献15〜18参照)、ポリプロピレンを原料とするもの(特許文献19参照)、などが挙げられる。
これらの微孔性膜は、電子工業用洗浄水、医薬用水、医薬製造工程用水、食品水等の濾過、滅菌に用いられ、近年、その用途及び使用量が拡大しており、粒子捕捉の点から信頼性の高い微孔性膜が注目されている。これらの中でも、結晶性ポリマーからなる微孔性膜は耐薬品性に優れており、特に、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と称することもある)を原料とした結晶性ポリマー微孔性膜は、耐熱性及び耐薬品性に優れているため、その需要の伸びが著しい。
【0003】
一般に、微孔性膜の単位面積当たりの濾過可能量は少ない(即ち濾過寿命が短い)。このため、工業的に使用する際には、膜面積を増すため、多くの濾過ユニットを並列して使用することを余儀無くされており、濾過工程のコストダウンの観点から、濾過寿命を上げることが必要とされている。例えば目詰まり等による流量低下に有効な微孔性膜として、インレット側からアウトレット側に向かって孔径が徐々に小さくなる非対称膜が提案されている(特許文献20及び21参照)。
また、小孔径を有する濾過層と、該濾過層より孔径が大きい支持層とからなるポリテトラフルオロエチレン複層多孔膜(特許文献22参照)、ポリテトラフルオロエチレンシート上にポリテトラフルオロエチレン乳化分散液を塗布し、延伸したもの(特許文献23参照)、などが提案されている。
【0004】
しかし、前記特許文献20及び21の非対称膜を、ポリテトラフルオロエチレンを用いて実現しようとすると、該ポリテトラフルオロエチレンが極めて特殊な溶媒にしか可溶でないため、孔径が徐々に小さくなる微孔性膜を製造することができない。また、得られた微孔性膜を用いて濾過を行うと、目詰まり等による流量低下を招くという問題がある。
また、前記特許文献22及び23によれば、前記特許文献20及び21における問題は低減できるが、その一方において、塗布し、乾燥させた際に、微孔性膜にクラックや欠陥が発生しやすいという問題がある。また、表面のみが小孔径になっているため、十分な濾過寿命が得られないという問題がある。
しかし、前記特許文献22及び23では、塗布し、乾燥させた際に、微孔性膜にクラックや欠陥が発生しやすいという問題がある。更に、表面のみが小孔径になっているため、十分な濾過寿命が得られないという問題がある。
【0005】
また、特許文献24及び25によれば、複層シート押し出し法により、小孔径の濾過層と、大孔径の支持層を完全に一体化したものが作製できるが、濾過層と支持層の境界部(孔径が不連続な部分)において目詰まりが起きやすいという問題がある。
【0006】
また、特許文献26には、四弗化エチレン樹脂薄膜の厚み方向に温度差と圧縮力をかけて非対称孔径薄膜を製造する方法が提案されている。しかし、この提案では、加熱温度が250℃〜四弗化エチレン樹脂の融点までと低いため、所望の形状の孔部を形成することはできないものである。
【0007】
したがって互いに異なる2種以上の結晶性ポリマーからなる単層構造の結晶性ポリマー層からなり、微粒子を効率良く捕捉することができ、目詰まりがなく、濾過寿命が長い結晶性ポリマー微孔性膜及びその製造方法、並びに濾過用フィルタの速やかな提供が望まれているのが現状である。
【0008】
【特許文献1】米国特許第1,421,341号明細書
【特許文献2】米国特許第3,133,132号明細書
【特許文献3】米国特許第2,944,017号明細書
【特許文献4】特公昭43−15698号公報
【特許文献5】特公昭45−3313号公報
【特許文献6】特公昭48−39586号公報
【特許文献7】特公昭48−40050号公報
【特許文献8】米国特許第2,783,894号明細書
【特許文献9】米国特許第3,408,315号明細書
【特許文献10】米国特許第4,340,479号明細書
【特許文献11】米国特許第4,340,480号明細書
【特許文献12】米国特許第4,450,126号明細書
【特許文献13】独国特許発明第3,138,525号明細書
【特許文献14】特開昭58−37842号公報
【特許文献15】米国特許第4,196,070号明細書
【特許文献16】米国特許第4,340,482号明細書
【特許文献17】特開昭55−99934号公報
【特許文献18】特開昭58−91732号公報
【特許文献19】西独特許第3,003,400号明細書
【特許文献20】特公昭55−6406号公報
【特許文献21】特公平4−68966号公報
【特許文献22】特開平4−351645号公報
【特許文献23】特開平7−292144号公報
【特許文献24】特開平3−179038号公報
【特許文献25】特開平3−179039号公報
【特許文献26】特公昭63−48562号公報
【非特許文献1】アール・ケスティング(R.Kesting)著「シンセティック・ポリマー・メンブラン(Synthetic Polymer Membrane)」マグロウヒル社(McGrawHill社)発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、互いに異なる2種以上の結晶性ポリマーからなる単層構造の結晶性ポリマー層と、該結晶性ポリマー層の厚み方向に貫通した多数の孔部とを有し、前記結晶性ポリマーの組成比が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化させ、かつ前記孔部の平均孔径が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化させることにより、微粒子を効率良く捕捉することができ、目詰まりがなく、高流量の濾過が可能であり、濾過寿命が長い結晶性ポリマー微孔性膜、及び該結晶性ポリマー微孔性膜を効率良く製造することができる結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法、並びに該結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 互いに異なる2種以上の結晶性ポリマーからなる単層構造の結晶性ポリマー層と、該結晶性ポリマー層の厚み方向に貫通した多数の孔部とを有する結晶性ポリマー微孔性膜であって、
前記結晶性ポリマーの組成比が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化しており、かつ前記孔部の平均孔径が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化していることを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜である。
<2> 孔部における平均孔径の変化が、連続的乃至非連続的に増加、及び連続的乃至非連続的に減少のいずれかである前記<1>に記載の結晶性ポリマー微孔性膜である。
<3> 平均孔径が最小の部位が、結晶性ポリマー層の内部に存在する前記<1>から<2>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜である。
<4> 結晶性ポリマーの組成比の変化が、連続的乃至非連続的に増加、及び連続的乃至非連続的に減少のいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜である。
<5> 結晶性ポリマー層が互いに数平均分子量が異なる2種以上の結晶性ポリマーからなり、該結晶性ポリマーの数平均分子量が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化している前記<1>から<4>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜である。
<6> 結晶性ポリマーが、いずれもポリテトラフルオロエチレンである前記<1>から<5>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜である。
<7> 互いに異なる2種以上の結晶性ポリマー粒子を1種ずつ金型内に敷き詰め、該結晶性ポリマー粒子を界面混合し、加圧して予備成形体を形成し、該予備成形体を押出成形して結晶性ポリマーフィルムを作製する結晶性ポリマーフィルム作製工程と、
得られた結晶性ポリマーフィルムを延伸する延伸工程と、を少なくとも含む結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<8> 延伸前の結晶性ポリマーフィルムの一方の面を加熱して、該結晶性ポリマーフィルムの厚み方向に温度勾配を形成する非対称加熱工程を含む前記<7>に記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<9> 界面混合が、結晶性ポリマー粒子に振動を付与して行われる前記<7>から<8>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<10> 結晶性ポリマー粒子が、互いに異なる数平均分子量を有する前記<7>から<9>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<11> 結晶性ポリマー粒子が、ポリテトラフルオロエチレン粒子である前記<7>から<10>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<12> 延伸が、一軸延伸である前記<7>から<11>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<13> 延伸が、二軸延伸である前記<7>から<11>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<14> 前記<1>から<6>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜を用いたことを特徴とする濾過用フィルタである。
<15> 結晶性ポリマー微孔性膜の孔部の平均孔径の大きな側の面をフィルタの濾過面に使用する前記<14>に記載の濾過用フィルタである。
【0011】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、互いに異なる2種以上の結晶性ポリマーからなる単層構造の結晶性ポリマー層と、該結晶性ポリマー層の厚み方向に貫通した多数の孔部とを有し、前記結晶性ポリマーの組成比が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化しており、かつ前記孔部の平均孔径が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化しているので、微粒子を効率良く捕捉することができ、目詰まりがなく、濾過寿命を長くすることができる。
【0012】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法は、結晶性ポリマーフィルム作製工程と、延伸工程とを少なくとも含む。
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法においては、前記結晶性ポリマーフィルム作製工程において、互いに異なる2種以上の結晶性ポリマー粒子を1種ずつ金型内に敷き詰め、該結晶性ポリマー粒子を界面混合し、加圧して予備成形体を形成し、該予備成形体を押出成形して結晶性ポリマーフィルムを作製する。前記延伸工程において、得られた結晶性ポリマーフィルムを延伸する。その結果、前記結晶性ポリマーの組成比が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化しており、かつ前記孔部の平均孔径が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化し、微粒子を効率良く捕捉することができ、目詰まりがなく、濾過寿命が長い結晶性ポリマー微孔性膜を効率良く製造することができる。
【0013】
本発明の濾過用フィルタは、本発明の前記結晶性ポリマー微孔性膜を用いているので、平均孔径が大きい面(表面)をインレット側として濾過を行うことにより、効率よく微粒子を捕捉することができる。また、比表面積が大きいため微細粒子が最小孔径部分に到達する以前に吸着又は付着によって除かれる効果が大きく、濾過寿命を大きく改善することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、互いに異なる2種以上の結晶性ポリマーからなる単層構造の結晶性ポリマー層と、該結晶性ポリマー層の厚み方向に貫通した多数の孔部とを有し、前記結晶性ポリマーの組成比が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化させ、かつ前記孔部の平均孔径が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化させることにより、微粒子を効率良く捕捉することができ、目詰まりがなく、高流量の濾過が可能であり、濾過寿命が長い結晶性ポリマー微孔性膜、及び該結晶性ポリマー微孔性膜を効率良く製造することができる結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法、並びに該結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(結晶性ポリマー微孔性膜)
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、互いに異なる2種以上の結晶性ポリマーからなる単層構造の結晶性ポリマー層と、該結晶性ポリマー層の厚み方向に貫通した多数の孔部とを有してなり、更に必要に応じてその他の構成を有してなる。
【0016】
前記「単層構造」とは、結晶性ポリマー層と結晶性ポリマー層の間に境界を有しないことを意味し、2層以上の結晶性ポリマー層を積層したものから境界をなくしたものも含まれる。ここで、結晶性ポリマー層と結晶性ポリマー層の間の境界の有無は、例えば結晶性ポリマー微孔性膜を厚み方向に切断した切断面を光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)により確認することができる。
前記境界をなくす方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば界面(層間)の粉体をランダムに拡散させて、界面混合する方法などが挙げられる。
【0017】
本発明においては、前記単層構造の結晶性ポリマー層における結晶性ポリマーの組成比が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化しており、前記単層構造の結晶性ポリマー層における孔部の平均孔径が、前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化している。これにより、微粒子を効率良く捕捉することができ、目詰まりがなく、濾過寿命を長くすることができる。
【0018】
前記「結晶性ポリマーの組成比が結晶性ポリマー層の厚み方向に変化している」とは、単層構造の結晶性ポリマー層を構成する少なくとも2種の結晶性ポリマーが界面混合してその組成比が結晶性ポリマー層の厚み方向に変化し、連続傾斜組成比になっていることを意味する。なお、一部に非連続な傾斜組成比を含んでいても構わない。
前記結晶性ポリマーの組成比の変化の同定方法としては、例えば、分光学的手法(X線、紫外線(UV)、可視光、赤外線(IR))、NMR、MSスペクトル、DSC、TG−DTA、密度、平均分子量(数平均分子量、質量平均分子量等)、などを用いることができる。これらの中でも、孔径を制御する目的で平均分子量が異なる2種類の素材を混合することが好ましく、混合比を形成するためにも平均分子量を測定することが直接的である点から結晶性ポリマーの数平均分子量を用いることが特に好ましい。
これらの方法により、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法におけるいずれかの工程での、例えば予備成形体、押出成形後のシート、圧延後のシート、延伸後のシートなどの厚み方向の分布を断面解析(サンプリング、撮影等)、あるいはおもて面又はうら面からのエッチング処理(溶解、分解、切削等)により、結晶性ポリマーの厚み方向の組成比を求めることができる。
【0019】
前記孔部における平均孔径の変化及び結晶性ポリマーの組成比の変化は、連続的乃至非連続的に増加、及び連続的乃至非連続的に減少のいずれかであることが好ましい。
前記「孔部の平均孔径が、結晶性ポリマー層の厚み方向に変化している」とは、横軸に結晶性ポリマー微孔性膜のおもて面からの厚み方向の距離d(おもて面からの深さに相当)をとり、縦軸に孔部の平均孔径Dをとったとき、(1)おもて面(d=0)からうら面(d=膜厚)に至るまでのグラフが、1本の連続線で描かれ(連続的)、グラフの傾き(dD/dt)が負の領域(減少)、及び傾きが正の領域(増加)のいずれであるが、連続であれば一部に傾きが0(ゼロ)の場合を含んでいてもよい。なお、微孔性膜全体において傾きが0(ゼロ)の場合(変化なし)は含まれない。
これらの中でも、結晶性ポリマー層における孔部の平均孔径が、おもて面からうら面に至るまでのグラフが連続的に減少しているものが特に好ましい。
【0020】
また、「結晶性ポリマーの組成比が、結晶性ポリマー層の厚み方向に変化している」とは、横軸に結晶性ポリマー微孔性膜のおもて面からの厚み方向の距離d(おもて面からの深さに相当)をとり、縦軸に結晶性ポリマーの組成比をとったとき、(1)おもて面(d=0)からうら面(d=膜厚)に至るまでのグラフが、1本の連続線で描かれ(連続的)、グラフの傾き(dD/dt)が負の領域(減少)、及び傾きが正の領域(増加)のいずれであるが、連続であれば一部に傾きが0(ゼロ)の場合を含んでいてもよい。なお、微孔性膜全体において傾きが0(ゼロ)の場合(変化なし)は含まれない。
これらの中でも、結晶性ポリマーの組成比が、おもて面からうら面に至るまでのグラフが連続的に減少しているものが特に好ましい。
【0021】
本発明においては、結晶性ポリマー微孔性膜における孔部の平均孔径が大きい方の面を「おもて面」と言い、孔部の平均孔径が小さい方の面を「うら面」と言っているが、これは本発明の説明をわかりやすくするために便宜的につけた呼称に過ぎず、いずれの面を「うら面」にしても構わない。
【0022】
ここで、図1に示すように、単層構造の結晶性ポリマー層101からなる本発明の結晶性ポリマー微孔性膜における孔部101aの孔径は、結晶性ポリマー層の厚み方向に変化(一部変化していない部分を含み、連続的に減少)しており、結晶性ポリマー微孔性膜全体としては、孔部101aの孔径が厚み方向に変化(段階的に減少)し、孔径が変化している部分はテーパー状となっている。
これに対し、図2に示すように、結晶性ポリマー層102、103を積層した2層構造の従来の結晶性ポリマー微孔性膜における孔部102b、103bの孔径は、いずれも各結晶性ポリマー層の厚み方向に変化しておらず、結晶性ポリマー微孔性膜全体としては、孔径が厚み方向に変化(段階的に減少)している。
また、図3に示すように、単層構造の結晶性ポリマー層104において、孔部104aの平均孔径が、結晶性ポリマー層の厚み方向に変化(一部変化していない部分を含み、連続的に減少及び連続的に増加)しており、孔径が変化している部分はテーパー状となっている。
これに対し、図4に示すように、結晶性ポリマー層105、106、107を積層した3層構造の従来の結晶性ポリマー微孔性膜における孔部105b、106b、107bの孔径は、いずれも各結晶性ポリマー層の厚み方向に変化しておらず、また、結晶性ポリマー微孔性膜全体としてみると、孔径が厚み方向に段階的に変化している部分がある。
【0023】
また、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、平均孔径が最小の部位が、結晶性ポリマー層の内部に存在することが好ましい。これにより、捕捉粒径に最も影響する最も小さい径の結晶性ポリマー層を、摩擦、引っ掻き等の物理的破壊要因から保護することができ、捕捉性能の安定化を図ることができる。
例えば、図3に示すように、単層構造の結晶性ポリマー層104の内部に、孔部104aの平均孔径が最小の部位104cが存在している。
【0024】
ここで、前記孔部の平均孔径は、例えば走査型電子顕微鏡(日立S−4000型、蒸着は日立E1030型、いずれも日立製作所製)で膜表面の写真(SEM写真、倍率1,000倍〜5,000倍)をとり、得られた写真を画像処理装置(本体名:日本アビオニクス株式会社製、TVイメージプロセッサTVIP−4100II、制御ソフト名:ラトックシステムエンジニアリング株式会社製、TVイメージプロセッサイメージコマンド4198)に取り込んで結晶性ポリマー繊維のみからなる像を得て、その像を演算処理することにより平均孔径が求められる。
【0025】
−結晶性ポリマー−
本発明において、前記「結晶性ポリマー」とは、分子構造の中に長い鎖状の分子が規則的に並んだ結晶性領域と、規則的に並んでいない非結晶領域が混在したポリマーを意味し、このようなポリマーは物理的な処理により、結晶性が発現する。例えば、ポリエチレンフィルムを外力により延伸すると、初めは透明なフィルムが白濁する現象が認められる。これは外力によりポリマー内の分子配列が一つの方向に揃えられることによって、結晶性が発現したことに由来する。
【0026】
前記結晶性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばポリアルキレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、液晶性ポリマーなどが挙げられ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、シンジオタクチック・ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、フッ素樹脂、ポリエーテルニトリル、などが挙げられる。
これらの中でも、耐薬品性と取り扱い性の観点から、ポリアルキレン(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)が好ましく、該ポリアルキレンにおけるアルキレン基の水素原子がフッ素原子によって一部又は全部が置換されたフッ素系ポリアルキレンがより好ましく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が特に好ましい。
前記ポリエチレンは、その分岐度により密度が変化し、分岐度が多く、結晶化度が低いものが低密度ポリエチレン(LDPE)、分岐度が少なく、結晶化度の高いものが高密度ポリエチレン(HDPE)と分類され、いずれも用いることができる。これらの中でも、結晶性コントロールの点から、HDPEが特に好ましい。
【0027】
前記ポリテトラフルオロエチレンは、通常、乳化重合法により製造されたポリテトラフルオロエチレンを用いることができ、乳化重合により得られた水性分散体を凝析することにより取得した微粉末状のポリテトラフルオロエチレンを使用することが好ましい。
【0028】
前記ポリテトラフルオロエチレンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、市販品を用いることができる。該市販品としては、例えば、ポリフロンPTFE F−104、ポリフロンPTFE F−201、ポリフロンPTFE F−205、ポリフロンPTFE F−207、ポリフロンPTFE F−301(いずれも、ダイキン工業株式会社製);Fluon PTFE CD1、Fluon PTFE CD141、Fluon PTFE CD145、Fluon PTFE CD123、Fluon PTFE CD076、Fluon PTFE CD090(いずれも、旭硝子株式会社製);テフロン(登録商標)PTFE 6−J、テフロン(登録商標)PTFE 62XT、テフロン(登録商標)PTFE 6C−J、テフロン(登録商標)PTFE 640−J(いずれも、三井デュポンフロロケミカル株式会社製)、などが挙げられる。これらの中でも、F−104、CD1、CD141、CD145、CD123、6−Jが好ましく、F−104、CD1、CD123,6−Jがより好ましく、CD123が特に好ましい。
【0029】
前記結晶性ポリマー層は、互いに異なる2種以上の結晶性ポリマーからなる。
ここで、前記「互いに異なる」とは、結晶性ポリマー層に含まれる2種以上の各結晶性ポリマーの材料、数平均分子量、結晶化度などが異なることを意味する。
前記各結晶性ポリマーの材料としては、それぞれ同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよく、各結晶性ポリマーが同じ材料である場合には、数平均分子量、及び結晶化度のいずれかが異なる結晶性ポリマーを用いればよい。
前記異なる材料の結晶性ポリマーとしては、例えばPTFEとポリエチレンとを用いる場合などが挙げられる。
前記異なる数平均分子量の結晶性ポリマーとしては、例えばPTFEの場合には、数平均分子量の差が、100万以上のものが挙げられる。
前記結晶化度が異なる結晶性ポリマーとしては、例えばPTFEの場合には、結晶化度の差が5%以上のものが挙げられる。
ここで、前記結晶化度は、例えば広角X線回折、NMR、赤外線(IR)、DSC、密度測定、「ふっ素樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社、里川孝臣編)P.45に記載の方法などにより測定することができる。
【0030】
前記各結晶性ポリマーは、そのガラス転移温度が、40℃〜400℃であることが好ましく、50℃〜350℃がより好ましい。
前記各結晶性ポリマーの質量平均分子量は、それぞれ1,000〜100,000,000が好ましい。
前記各結晶性ポリマーの数平均分子量は、それぞれ500〜50,000,000が好ましく、1,000〜10,000,000がより好ましい。
ここで、前記数平均分子量は、例えばゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。しかし、PTFEは溶剤に不溶であるため、DSC測定による結晶化熱(ΔHc:cal/g)測定を行い、関係式:Mn=2.1×1010×ΔHc−5.16、を用いて算出することが好ましい。
【0031】
前記単層構造の結晶性ポリマー微孔性膜の膜厚は、1μm〜300μmが好ましく、5μm〜100μmがより好ましく、10μm〜80μmが更に好ましい。
【0032】
(結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法)
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法は、結晶性ポリマーフィルム作製工程と、延伸工程とを少なくとも含み、非対称加熱工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0033】
−結晶性ポリマーフィルム作製工程−
前記結晶性ポリマーフィルム作製工程は、互いに異なる2種以上の結晶性ポリマー粒子を1種ずつ金型内に敷き詰め、該結晶性ポリマー粒子を界面混合し、加圧して予備成形体を形成し、該予備成形体を押出成形して結晶性ポリマーフィルムを作製する工程である。
前記互いに異なる結晶性ポリマーとしては、上述したものの中から目的に応じて適宜選択して用いることができ、互いに異なる数平均分子量を有する結晶性ポリマー粒子を用いることが好ましい。
【0034】
前記結晶性ポリマーフィルム作製工程は、特に制限はなく、公知のペースト押し出し方法に準じて行うことができる。
まず、互いに異なる2種の結晶性ポリマー粒子を押出助剤と混合した混合物(ペースト)を1種ずつ金型内に敷き詰め、該ペースト(結晶性ポリマー粒子)を界面混合する。
前記押出助剤としては、液状潤滑剤を用いることが好ましく、具体的には、ソルベントナフサ、ホワイトオイルなどが挙げられる。また、前記押出助剤としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、エッソ石油株式会社製「アイソパー」などの炭化水素油を用いても構わない。前記押出助剤の添加量は、前記結晶性ポリマー100質量部に対して、20質量部〜30質量部が好ましい。
前記界面混合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば結晶性ポリマー粒子に振動を付与して行うことが好ましい。前記振動は、公知の振動機を用い、振動のモード(縦、横、回転、ランダム等)、振幅、速度、時間などを適宜調整して行うことが好ましい。
次に、前記界面混合したペーストを加圧して予備成形体を作製し、該予備成形体をペースト押出装置で圧延することにより結晶性ポリマー未加熱フィルムを作製する。
【0035】
前記ペースト押し出しは、50℃〜80℃の温度にて行うことが好ましい。押出し形状については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、通常は棒状乃至矩形状が好ましい。押出物は、次いで圧延することによりフィルム状にする。圧延は、例えばカレンダーロールにより50m/分の速度でカレンダー掛けすることにより行うことができる。圧延温度は、通常50℃〜70℃に設定することができる。その後、フィルムを加熱することにより押出助剤を除去して結晶性ポリマー未加熱フィルムとする。このときの加熱温度は用いる結晶性ポリマーの種類に応じて適宜選定することができるが、40℃〜400℃が好ましく、60℃〜350℃がより好ましい。例えばポリテトラフルオロエチレンを用いる場合には、150℃〜280℃が好ましく、200℃〜255℃がより好ましい。加熱は、フィルムを熱風乾燥炉に通すなどの方法で行うことができる。このようにして製造される結晶性ポリマー未加熱フィルムの厚みは、最終的に製造しようとする結晶性ポリマー微孔性膜の厚みに応じて適宜調整することができる。
なお、結晶性ポリマー未加熱フィルムの製造に際しては、「ポリフロンハンドブック」(ダイキン工業株式会社発行、1983年改訂版)に記載されている事項を適宜採用することができる。
【0036】
ここで、図5〜図8を参照して、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法の一例について説明する。
図7に示すように、2種のPTFEのファインパウダー1及び2を界面混合させて境界をなくした単層構造の結晶性ポリマー層6からなる予備成形体10を作製する。
前記予備成形体は、平均一次粒径0.2μm〜0.4μmのPTFE乳化重合水性分散体を凝析して製造したPTFEのファインパウダーにソルベントナフサ、ホワイトオイル等のような液状潤滑剤を添加したペースト1及びペースト2から得られる。前記液状潤滑剤の使用量は、その種類、成形条件等によって異なり、通常PTFEのファインパウダー100質量部に対して20質量部〜35質量部の範囲で用いられる。更に必要に応じて着色剤などを添加することもできる。
まず、図5に示すような箱形状の下金型8内に、第1層を形成するためのPTFEのファインパウダー1(白丸)を含むペースト1を層状に下金型8上に敷き詰め、第1層4上に第2層を形成するためのPTFEのファインパウダー2(黒丸)を含むペースト2を敷き詰め、第1層4上に第2層5を形成する。この際、パウダー同士がくっつかないように各ペーストをよく振り混ぜてから敷き詰める。
次に、パウダーが流動可能な状態で、金型を試験管ミキサー(振幅5mm、150rpm)で振動させ、各層のパウダーを界面混合する(図6参照)。この界面混合により、両層間の境界がなくなる(単層構造のペーストとなる)。その後、界面混合したペーストを加圧し、予備成形体10とした(図7参照)。
以上により、図7に示すようなペースト押出装置のシリンダー部の中に収納される寸法に成形された予備成形体10が得られる。
【0037】
次に、得られた予備成形体10を図8に示すペースト押出装置のシリンダー部に収納した後、これを加圧手段(不図示)によって矢印方向に押圧する。図8のペースト押出装置のシリンダー部は、例えば軸直角方向断面は50mm×100mmの矩形であり、出口部でシリンダー部の一方が絞られたノズル50mm×5mmで構成されている。
このようにして単層構造のポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルム15が成形される。
【0038】
−延伸工程−
前記延伸工程は、得られた結晶性ポリマーフィルムを延伸する工程である。
前記延伸は、長手方向と幅方向の両方について行うことが好ましい。長手方向と幅方向について、それぞれ逐次延伸を行ってもよいし、同時に二軸延伸を行ってもよい。
長手方向と幅方向について、それぞれ逐次延伸を行う場合には、まず、長手方向の延伸を行ってから幅方向の延伸を行うことが好ましい。
前記長手方向の延伸倍率は、4倍〜100倍が好ましく、8倍〜90倍がより好ましく、10倍〜80倍が更に好ましい。長手方向の延伸温度は、100℃〜300℃が好ましく、200℃〜290℃がより好ましく、250℃〜280℃が特に好ましい。
前記幅方向の延伸倍率は、10倍〜100倍が好ましく、12倍〜90倍がより好ましく、15倍〜70倍が更に好ましく、20倍〜40倍が特に好ましい。幅方向の延伸温度は、100℃〜300℃が好ましく、200℃〜290℃がより好ましく、250℃〜280℃が特に好ましい。
面積延伸倍率は、50倍〜300倍が好ましく、75倍〜280倍がより好ましく、100倍〜260倍が更に好ましい。延伸を行う際には、予め延伸温度以下の温度に結晶性ポリマーフィルムを予備加熱しておいてもよい。
なお、延伸後に、必要に応じて熱固定を行うことができる。該熱固定の温度は、通常、延伸温度以上で結晶性ポリマーの融点未満で行うことが好ましい。
【0039】
−非対称加熱工程−
前記非対称加熱工程は、延伸前の結晶性ポリマーフィルムの一方の面を加熱して、該結晶性ポリマーフィルムの厚み方向に温度勾配を形成する工程である。
ここで、前記非対称加熱とは、結晶性ポリマーフィルムをその加熱体の融点以上であり、かつ、その未加熱体の融点+15℃以下の温度で加熱処理することを意味する。
本発明において、未加熱体とは、非対称加熱処理をしていないものを意味する。また、未加熱体の融点とは、未加熱体を示差走査熱量計により測定した際に現れる吸熱カーブのピークの温度を意味する。前記加熱体の融点及び未加熱体の融点は、結晶性ポリマーの種類や数平均分子量等により変化するが、50℃〜450℃が好ましく、80℃〜400℃がより好ましい。
このような温度は、以下のように考えることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレンの場合、加熱体の融点が約324℃で未加熱体の融点が約345℃である。したがって、融点約324℃のものと融点約345℃のものが混在している状態である半加熱体にするには、ポリテトラフルオロエチレンフィルムの場合、324℃〜360℃が好ましく、335℃〜350℃がより好ましく、例えば345℃の温度に加熱する。
【0040】
前記非対称加熱工程における、熱エネルギーの供給については、連続的に供給する方法、もしくは何度かに分割して間欠的にエネルギーを供給する方法のいずれも採用することができる。前記非対称加熱の定義上、結晶性ポリマーフィルムのおもて面とうら面で温度に差を生じさせることが必要であるが、この方法として、間欠的にエネルギーを供給することによりうら面の温度上昇を抑えるという方法が利用できる。一方、連続的に加熱する場合、この温度勾配を保持するために、おもて面の加熱と同時にうら面を冷却するという方法も有効に使用できる。
【0041】
前記熱エネルギーの供給方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば(1)結晶性ポリマーフィルムに熱風を吹き付ける方法、(2)結晶性ポリマーフィルムに熱媒に接触させる方法、(3)結晶性ポリマーフィルムを加熱部材に接触させる方法、(4)結晶性ポリマーフィルムに赤外線を照射する方法、(5)結晶性ポリマーフィルムをマイクロ波等の電磁波により加熱する方法などが使用できる。これらの中でも、(3)加熱部材に接触させる方法、(4)赤外線を照射する方法が好ましい。
前記(3)の加熱部材としては、加熱ロールが好ましい。加熱ロールであれば、工業的に流れ作業で連続的に非対称加熱を行うことができ、しかも温度制御や装置のメンテナンスも容易である。加熱ロールの温度は、上記半加熱体にする際の温度に設定することができる。加熱ロールにフィルムを接触させる時間は、目的とする非対称加熱が十分に進行するのに必要な時間であり、30秒間〜120秒間が好ましく、45秒間〜90秒間がより好ましく、60秒間〜80秒間が更に好ましい。
【0042】
前記(4)の赤外線照射としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記赤外線の一般的な定義は「実用赤外線」(人間と歴史社、1992年発行)を参考にすることができる。本発明において、前記赤外線とは、波長が0.74μm〜1,000μmの電磁波を意味し、そのうち波長が0.74μm〜3μmの範囲を近赤外線とし、波長が3μm〜1,000μmの範囲を遠赤外線とする。
本発明においては、未加熱体のおもて面とうら面での温度差がある方が好ましいため、表層の加熱に有利な遠赤外線が好ましく使用される。
前記赤外線の装置の種類としては、目的の波長の赤外線が照射できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一般的に、近赤外線は電球(ハロゲンランプ)、遠赤外線はセラミック、石英、金属酸化面などの発熱体を用いることができる。
また、赤外線照射であれば、工業的に流れ作業で連続的に非対称加熱を行うことができ、しかも温度制御や装置のメンテナンスも容易である。また非接触であるため、クリーン、かつ毛羽立ちのような欠陥が生じることがない。
前記赤外線照射によるフィルム表面温度は、赤外線照射装置の出力、赤外線照射装置とフィルム表面の距離、照射時間(搬送速度)、雰囲気温度で制御でき、上記の半加熱体にする際の温度に設定することができるが、324℃〜380℃が好ましく、335℃〜360℃がより好ましい。前記表面温度が、324℃未満であると、結晶状態が変化せず、孔径制御ができなくなることがあり、380℃を超えると、結晶性ポリマーフィルムが溶融することにより過度に形状が変形したり、結晶性ポリマーの熱分解が生じることがある。
前記赤外線の照射時間は、特に制限はなく、目的とする非対称加熱が十分に進行するのに必要な時間であり、30秒間〜120秒間が好ましく、45秒間〜90秒間がより好ましく、60秒間〜80秒間が更に好ましい。
前記非対称加熱における赤外線照射は、連続的に行ってもよく、又は何度かに分割して間欠的に行ってもよい。
【0043】
また、結晶性ポリマーフィルムの厚み方向の温度勾配としては、おもて面とうら面の温度差は30℃以上が好ましく、50℃以上であることがより好ましい。
なお、連続的に結晶性ポリマーフィルムのうら面を加熱する場合には、結晶性ポリマーフィルムのおもて面とうら面で温度勾配を保持するため、うら面の加熱と同時におもて面を冷却することが好ましい。
前記おもて面を冷却する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば冷風を吹き付ける方法、冷媒に接触させる方法、冷却した材料に接触させる方法、放冷による冷却等の種々の方法が使用でき、フィルムの表面に冷却部材を接触させる方法は、接触物表面が遠赤外線により加熱されるため好ましくない。
また、前記非対称加熱工程を間欠的に行う場合にも、結晶性ポリマーフィルムのうら面を間欠的に加熱及び冷却し、おもて面の温度上昇を抑制することが好ましい。
【0044】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、様々な用途に用いることができるが、特に、以下に説明する濾過用フィルタとして好適に用いることができる。
【0045】
(濾過用フィルタ)
本発明の濾過用フィルタは、本発明の前記結晶性ポリマー微孔性膜を用いることを特徴とする。
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜を濾過用フィルタとして用いるときは、その表面(平均孔径が大きい面)をインレット側として濾過を行う。即ち、ポアサイズの大きな表面側をフィルタの濾過面に使用する。このように、平均孔径が大きい面(表面)をインレット側として濾過を行うことにより、効率よく微粒子を捕捉することができる。
また、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は比表面積が大きいため、その表面から導入された微細粒子が最小孔径部分に到達する以前に吸着又は付着によって除かれる。したがって、目詰まりを起こしにくく、長期間にわたって高い濾過効率を維持することができる。
【0046】
本発明の濾過用フィルタは、差圧0.1kg/cm2として濾過を行った時に、少なくとも5ml/cm2・min以上の濾過が可能なものとすることができる。
本発明の濾過用フィルタは、プリーツ状に加工成形することが好ましい。プリーツ状に加工することにより、カートリッジあたりのフィルタの濾過に使用する有効表面積を増大させることができるという利点がある。
【0047】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルタは、このように濾過機能が高くて長寿命であるという特徴を有することから、濾過装置をコンパクトにまとめることができる。従来の濾過装置では、多数の濾過ユニットを並列的に使用して濾過寿命の短さに対処していたが、本発明の濾過用フィルタを用いれば並列的に使用する濾過ユニットの数を大幅に減らすことができる。また、濾過用フィルタの交換期間も大幅に延ばすことができるため、メンテナンスにかかる費用や時間を節減できる。
【0048】
本発明の濾過用フィルタは、濾過が必要とされる様々な状況において使用することができ、気体、液体等の精密濾過に好適に用いられ、例えば、腐食性ガス、半導体工業で使用される各種ガス等の濾過、電子工業用洗浄水、医薬用水、医薬製造工程用水、食品水等の濾過、滅菌に用いられる。特に、本発明の濾過用フィルタは耐熱性及び耐薬品性に優れているため、従来の濾過用フィルタでは対応できなかった高温濾過や反応性薬品の濾過にも効果的に用いられる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
<ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製>
−予備成形体の作製−
結晶性ポリマーとして数平均分子量が100万のポリテトラフルオロエチレンのファインパウダー(旭硝子株式会社製、「Fluon PTFE CD1」)100質量部に、押出助剤として炭化水素油(エッソ石油株式会社製、「アイソパーM」)27質量部を加えた。これをペースト1とした。
同様に、数平均分子量が1000万のポリテトラフルオロエチレンのファインパウダー(旭硝子株式会社製、「Fluon PTFE CD123」)100質量部に、押出助剤として炭化水素油(エッソ石油株式会社製、「アイソパーM」)27質量部を加えた。これをペースト2とした。
次に、ペースト1と、ペースト2とを厚み比(ペースト1/ペースト2)が4/1となるように、図5に示すように金型内に敷き詰めた(図5中ではペースト1を5、ペースト2を4で表す)。このとき、パウダー同士がくっつかないように、各ペーストはよく振り混ぜてから敷き詰めた。
次に、加圧前のパウダーが流動可能な状態で、金型を試験管ミキサー(振幅5mm、150rpm)で1分間振動させ、各層のパウダーを界面混合した(図6参照)。その後、界面混合したペーストを加圧し、予備成形体10とした(図7参照)。
以降の処理では、ペースト1(5)側を「おもて面」、ペースト2(4)側を「うら面」とした。
【0051】
得られた予備成形体の厚み方向の結晶性ポリマーの組成比の分布を調べる目的で、予備成形体の厚みを20とし、おもて面から深さ方向0(即ち表層)の厚み部分における数平均分子量をM0、深さ方向1の厚み部分における数平均分子量をM1・・・深さ方向20の厚み部分における数平均分子量をM20とし、M0〜M20を、それぞれ予備成形体の厚み方向のDSC測定(各部分10mgサンプリング)を行い、下記関係式1を用いて結晶性ポリマーの数平均分子量を求めた。なお、DSC測定は、示差走査熱量計(DSC7200、SII社製)を用いて行った。
<関係式1>
数平均分子量(Mn)=2.1×1010×ΔHc−5.16
ただし、ΔHcはDSC結晶化熱(cal/g)を表す。
上記のようにして求めたM0〜M20の値を基に、表層からの深さ(M0〜M20)における数平均分子量(Mn)をプロットした。結果を図9に示す。
図9の結果から、単層構造の予備成形体の結晶性ポリマー層において、結晶性ポリマーの数平均分子量が、結晶性ポリマー層の厚み方向に変化(一部変化していない部分を含み、連続的に増加)しており、このことから、予備成形体は界面混合により連続傾斜組成比になっていることが分かった。
【0052】
−未加熱フィルムの作製−
作製した予備成形体10を、図8に示すようなペースト押し出し金型のシリンダー内に挿入し、シート状に複層ペースト押出しを行った。これを、60℃に加熱したカレンダーロールによりカレンダー掛けして、ポリテトラフルオロエチレンフィルムを作製した。得られたポリテトラフルオロエチレンフィルムを250℃の熱風乾燥炉に通して押出助剤を乾燥除去し、平均厚さ100μm、平均幅150mm、比重1.55のポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムを作製した。
【0053】
−ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製−
得られたポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムを270℃にて長手方向に12.5倍にロール間延伸し、一旦巻き取りロールに巻き取った。その後、フィルムを305℃に予備加熱した後、両端をクリップで挟み、270℃で幅方向に30倍に延伸した。その後、380℃で熱固定を行った。得られた延伸フィルムの面積延伸倍率は、伸長面積倍率で260倍であった。以上により、実施例1のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0054】
(実施例2)
−ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製−
実施例1において、予備成形体を作製する際の厚み比を、おもて面からペースト1/ペースト2/ペースト1=3/1/1とした以外は、実施例1と同様にして、予備成形体を作製した。
得られた予備成形体について、実施例1と同様にして、予備成形体の表層からの深さ(M0〜M20)における数平均分子量をプロットした。結果を図10に示す。
図10の結果から、単層構造の予備成形体の結晶性ポリマー層において、結晶性ポリマーの数平均分子量が、結晶性ポリマー層の厚み方向に変化(変化していない部分を含み、連続的に増加及び連続的に減少)しており、このことから予備成形体は連続傾斜組成比になっていることが分かった。
次に、得られた予備成形体を用い、実施例1と同様にして、ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムを作製し、同様に延伸して、実施例2のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0055】
(実施例3)
−ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製−
実施例1と同じ予備成形体を用い、実施例1と同様にして、ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムを作製した。なお、実施例3の予備成形体は、図9と同じ結果であり、連続傾斜組成比になっていることが分かった。
次に、ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムのうら面(ペースト2側)を、タングステンフィラメント内蔵のハロゲンヒーターで近赤外線により、フィルム表面温度が345℃で1分間加熱して、半加熱フィルムを作製し、該半加熱フィルムを実施例1と同様に延伸した以外は、実施例1と同様にして、実施例3のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0056】
(比較例1)
−ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製−
実施例1において、加圧前の予備成形体の各層のパウダーを界面混合しなかった以外は、実施例1と同様にして、予備成形体を作製した。
得られた予備成形体について、実施例1と同様にして、予備成形体の表層からの深さ(M0〜M20)における数平均分子量をプロットした。結果を図11に示す。
図11の結果から、2層構造の予備成形体の各結晶性ポリマー層において、結晶性ポリマーの数平均分子量が、厚み方向に変化しておらず、全体としてみると数平均分子量が変化(断続的に増加)していることが分かった。
次に、得られた予備成形体を用い、実施例1と同様にして、複層ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムを作製し、同様に延伸して、比較例1の複層ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0057】
(比較例2)
−ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製−
実施例2において、加圧前の予備成形体の各層のパウダーを界面混合しなかった以外は、実施例2と同様にして、予備成形体を作製した。
得られた予備成形体について、実施例1と同様にして、予備成形体の表層からの深さ(M0〜M20)における数平均分子量をプロットした。結果を図12に示す。
図12の結果から、3層構造の予備成形体の各結晶性ポリマー層において、結晶性ポリマーの数平均分子量が、厚み方向に変化しておらず、全体としてみると数平均分子量が断続的に変化していることが分かった。
次に、得られた予備成形体を用い、実施例1と同様にして、複層ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムを作製し、同様に延伸して、比較例2の複層ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0058】
次に、作製した実施例1〜3及び比較例1〜2の各ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜について、以下のようにして、平均膜厚、及びおもて面からの厚み方向における平均孔径の測定を行った。
【0059】
<平均膜厚の測定>
実施例1〜3及び比較例1〜2の各ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の膜厚をダイヤル式厚さゲージ(アンリツ株式会社製、K402B)により測定した。なお、任意の3箇所を測定し、その平均値を求めた。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
<微孔性膜の層構成>
実施例1〜3及び比較例1〜2の各ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の層構成を厚み方向に切断した切断面のSEM観察により測定した。
その結果、実施例1〜3は、微孔性膜中に界面が存在せず単層構造であることが分かった。また、比較例1は微孔性膜中に1つの界面を有し2層構造であることが分かった。また、比較例2は微孔性膜中に2つの界面を有し、3層構造であることが分かった。
【0062】
<おもて面からの厚み方向における平均孔径の測定>
実施例1〜3及び比較例1〜2の各ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜について、微孔性膜の膜厚を20とし、おもて面から厚み方向に0(即ち、表層)の部分における平均孔径をP0、厚み方向に1の部分における平均孔径をP1、・・・、厚み方向に20の部分における平均孔径をP20とし、P0〜P20をそれぞれフィルム断面のSEM写真から求めた。ここで、SEM写真は走査型電子顕微鏡(日立S−4000型、蒸着は日立E1030型、いずれも日立製作所製)で倍率1,000倍〜5,000倍)をとり、得られた写真を画像処理装置(本体名:日本アビオニクス株式会社製、TVイメージプロセッサTVIP−4100II、制御ソフト名:ラトックシステムエンジニアリング株式会社製、TVイメージプロセッサイメージコマンド4198)に取り込んでポリテトラフルオロエチレン繊維のみからなる像を得、その像を演算処理することにより平均孔径を求めた。
上記のように求めたP0〜P20の値を基に、おもて面からの厚み方向の距離(μm)における平均孔径(μm)をプロットした。結果を図13〜図17に示す。
【0063】
図13の結果から、実施例1のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜は、単層構造の結晶性ポリマー層において、孔部の平均孔径が、結晶性ポリマー層の厚み方向に変化(一部変化していない部分を含み、連続的に減少)しており、結晶性ポリマー微孔性膜全体としては、孔部の孔径が厚み方向に変化(段階的に減少)していることが分かった。
また、図14の結果から、実施例2のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜は、単層構造の結晶性ポリマー層において、孔部の平均孔径が、結晶性ポリマー層の厚み方向に変化(一部変化していない部分を含み、連続的に減少及び連続的に増加)しており、結晶性ポリマー微孔性膜全体としては、孔部の孔径が厚み方向に変化(段階的に減少)していることが分かった。また、単層構造の結晶性ポリマー層の内部に、孔部の最大平均孔径が最も小さい部位が存在することが分かった。
また、図15の結果から、実施例3のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜は、単層構造の結晶性ポリマー層において、孔部の平均孔径が、結晶性ポリマー層の厚み方向に変化(連続的に減少)していることが分かった。
これに対し、図16の結果から、比較例1のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜は、
2層構造の微孔性膜の各結晶性ポリマー層において、孔部の平均孔径が、厚み方向に変化しておらず、全体としてみると数平均分子量が変化(断続的に減少)していることが分かった。
また、図17の結果から、比較例2のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜は、3層構造の微孔性膜の各結晶性ポリマー層において、孔部の平均孔径が、厚み方向に変化しておらず、全体としてみると数平均分子量が断続的に変化していることが分かった。
【0064】
<濾過テスト>
次に、実施例1〜3及び比較例1〜2の各結晶性ポリマー微孔性膜について、濾過テストを行った。
実施例1〜2及び比較例1〜2については、最小平均孔径を有する層の孔径に合わせてポリスチレン微粒子(平均粒子サイズ3.0μm)を0.01質量%含有する水溶液を、差圧0.1kgとして濾過を行った。実施例3については、ポリスチレン微粒子(平均粒子サイズ1.0μm)を0.01質量%含有する水溶液を差圧0.1kgとして濾過を行った。結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
表2の結果から、比較例1及び比較例2の微孔性膜に対し、実施例1〜3の各微孔性膜は濾過寿命が大幅に改善されることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜及びこれを用いた濾過用フィルタは、長期間にわたって効率よく微粒子を捕捉することができ、耐熱性及び耐薬品性に優れているため、濾過が必要とされる様々な状況において使用することができ、気体、液体等の精密濾過に好適に用いられ、例えば、腐食性ガス、半導体工業で使用される各種ガス等の濾過、電子工業用洗浄水、医薬用水、医薬製造工程用水、食品水等の濾過、滅菌、高温濾過、反応性薬品の濾過などに幅広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本発明の結晶性ポリマー微孔膜の一例を示す模式図である。
【図2】図2は、従来の2層構造の結晶性ポリマー微孔膜の一例を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明の結晶性ポリマー微孔膜の一例を示す模式図である。
【図4】図4は、従来の3層構造の結晶性ポリマー微孔膜の一例を示す模式図である。
【図5】図5は、本発明の結晶性ポリマー微孔膜の製造工程の一例を示す図である。
【図6】図6は、本発明の結晶性ポリマー微孔膜の製造工程の他の一例を示す図である。
【図7】図7は、予備成形体の一例を示す図である。
【図8】図8は、本発明の結晶性ポリマー微孔膜の製造工程の他の一例を示す図である。
【図9】図9は、実施例1の予備成形体における数平均分子量と表面からの距離との関係を示すグラフである。
【図10】図10は、実施例2の予備成形体における数平均分子量と表面からの距離との関係を示すグラフである。
【図11】図11は、比較例1の予備成形体における数平均分子量と表面からの距離との関係を示すグラフである。
【図12】図12は、比較例2の予備成形体における数平均分子量と表面からの距離との関係を示すグラフである。
【図13】図13は、実施例1における孔部の平均孔径と表面からの距離との関係を示すグラフである。
【図14】図14は、実施例2における孔部の平均孔径と表面からの距離との関係を示すグラフである。
【図15】図15は、実施例3における孔部の平均孔径と表面からの距離との関係を示すグラフである。
【図16】図16は、比較例1における孔部の平均孔径と表面からの距離との関係を示すグラフである。
【図17】図17は、比較例2における孔部の平均孔径と表面からの距離との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0068】
4 第1層
5 第2層
8 下金型
10 予備成形体
15 ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルム
101、104 結晶性ポリマー層(単層)
102、103、105、106、107 結晶性ポリマー層(複層)
101a、104a 孔部
102b、103b、105b、106b、107b 孔部
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体、液体等の精密濾過に使用される濾過効率の高い結晶性ポリマー微孔性膜及び該結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法、並びに濾過用フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
微孔性膜は古くから知られており、濾過用フィルタ等に広く利用されている(非特許文献1参照)。このような微孔性膜としては、例えばセルロースエステルを原料とするもの(特許文献1〜7参照)、脂肪族ポリアミドを原料とするもの(特許文献8〜14参照)、ポリフルオロカーボンを原料とするもの(特許文献15〜18参照)、ポリプロピレンを原料とするもの(特許文献19参照)、などが挙げられる。
これらの微孔性膜は、電子工業用洗浄水、医薬用水、医薬製造工程用水、食品水等の濾過、滅菌に用いられ、近年、その用途及び使用量が拡大しており、粒子捕捉の点から信頼性の高い微孔性膜が注目されている。これらの中でも、結晶性ポリマーからなる微孔性膜は耐薬品性に優れており、特に、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と称することもある)を原料とした結晶性ポリマー微孔性膜は、耐熱性及び耐薬品性に優れているため、その需要の伸びが著しい。
【0003】
一般に、微孔性膜の単位面積当たりの濾過可能量は少ない(即ち濾過寿命が短い)。このため、工業的に使用する際には、膜面積を増すため、多くの濾過ユニットを並列して使用することを余儀無くされており、濾過工程のコストダウンの観点から、濾過寿命を上げることが必要とされている。例えば目詰まり等による流量低下に有効な微孔性膜として、インレット側からアウトレット側に向かって孔径が徐々に小さくなる非対称膜が提案されている(特許文献20及び21参照)。
また、小孔径を有する濾過層と、該濾過層より孔径が大きい支持層とからなるポリテトラフルオロエチレン複層多孔膜(特許文献22参照)、ポリテトラフルオロエチレンシート上にポリテトラフルオロエチレン乳化分散液を塗布し、延伸したもの(特許文献23参照)、などが提案されている。
【0004】
しかし、前記特許文献20及び21の非対称膜を、ポリテトラフルオロエチレンを用いて実現しようとすると、該ポリテトラフルオロエチレンが極めて特殊な溶媒にしか可溶でないため、孔径が徐々に小さくなる微孔性膜を製造することができない。また、得られた微孔性膜を用いて濾過を行うと、目詰まり等による流量低下を招くという問題がある。
また、前記特許文献22及び23によれば、前記特許文献20及び21における問題は低減できるが、その一方において、塗布し、乾燥させた際に、微孔性膜にクラックや欠陥が発生しやすいという問題がある。また、表面のみが小孔径になっているため、十分な濾過寿命が得られないという問題がある。
しかし、前記特許文献22及び23では、塗布し、乾燥させた際に、微孔性膜にクラックや欠陥が発生しやすいという問題がある。更に、表面のみが小孔径になっているため、十分な濾過寿命が得られないという問題がある。
【0005】
また、特許文献24及び25によれば、複層シート押し出し法により、小孔径の濾過層と、大孔径の支持層を完全に一体化したものが作製できるが、濾過層と支持層の境界部(孔径が不連続な部分)において目詰まりが起きやすいという問題がある。
【0006】
また、特許文献26には、四弗化エチレン樹脂薄膜の厚み方向に温度差と圧縮力をかけて非対称孔径薄膜を製造する方法が提案されている。しかし、この提案では、加熱温度が250℃〜四弗化エチレン樹脂の融点までと低いため、所望の形状の孔部を形成することはできないものである。
【0007】
したがって互いに異なる2種以上の結晶性ポリマーからなる単層構造の結晶性ポリマー層からなり、微粒子を効率良く捕捉することができ、目詰まりがなく、濾過寿命が長い結晶性ポリマー微孔性膜及びその製造方法、並びに濾過用フィルタの速やかな提供が望まれているのが現状である。
【0008】
【特許文献1】米国特許第1,421,341号明細書
【特許文献2】米国特許第3,133,132号明細書
【特許文献3】米国特許第2,944,017号明細書
【特許文献4】特公昭43−15698号公報
【特許文献5】特公昭45−3313号公報
【特許文献6】特公昭48−39586号公報
【特許文献7】特公昭48−40050号公報
【特許文献8】米国特許第2,783,894号明細書
【特許文献9】米国特許第3,408,315号明細書
【特許文献10】米国特許第4,340,479号明細書
【特許文献11】米国特許第4,340,480号明細書
【特許文献12】米国特許第4,450,126号明細書
【特許文献13】独国特許発明第3,138,525号明細書
【特許文献14】特開昭58−37842号公報
【特許文献15】米国特許第4,196,070号明細書
【特許文献16】米国特許第4,340,482号明細書
【特許文献17】特開昭55−99934号公報
【特許文献18】特開昭58−91732号公報
【特許文献19】西独特許第3,003,400号明細書
【特許文献20】特公昭55−6406号公報
【特許文献21】特公平4−68966号公報
【特許文献22】特開平4−351645号公報
【特許文献23】特開平7−292144号公報
【特許文献24】特開平3−179038号公報
【特許文献25】特開平3−179039号公報
【特許文献26】特公昭63−48562号公報
【非特許文献1】アール・ケスティング(R.Kesting)著「シンセティック・ポリマー・メンブラン(Synthetic Polymer Membrane)」マグロウヒル社(McGrawHill社)発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、互いに異なる2種以上の結晶性ポリマーからなる単層構造の結晶性ポリマー層と、該結晶性ポリマー層の厚み方向に貫通した多数の孔部とを有し、前記結晶性ポリマーの組成比が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化させ、かつ前記孔部の平均孔径が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化させることにより、微粒子を効率良く捕捉することができ、目詰まりがなく、高流量の濾過が可能であり、濾過寿命が長い結晶性ポリマー微孔性膜、及び該結晶性ポリマー微孔性膜を効率良く製造することができる結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法、並びに該結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 互いに異なる2種以上の結晶性ポリマーからなる単層構造の結晶性ポリマー層と、該結晶性ポリマー層の厚み方向に貫通した多数の孔部とを有する結晶性ポリマー微孔性膜であって、
前記結晶性ポリマーの組成比が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化しており、かつ前記孔部の平均孔径が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化していることを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜である。
<2> 孔部における平均孔径の変化が、連続的乃至非連続的に増加、及び連続的乃至非連続的に減少のいずれかである前記<1>に記載の結晶性ポリマー微孔性膜である。
<3> 平均孔径が最小の部位が、結晶性ポリマー層の内部に存在する前記<1>から<2>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜である。
<4> 結晶性ポリマーの組成比の変化が、連続的乃至非連続的に増加、及び連続的乃至非連続的に減少のいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜である。
<5> 結晶性ポリマー層が互いに数平均分子量が異なる2種以上の結晶性ポリマーからなり、該結晶性ポリマーの数平均分子量が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化している前記<1>から<4>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜である。
<6> 結晶性ポリマーが、いずれもポリテトラフルオロエチレンである前記<1>から<5>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜である。
<7> 互いに異なる2種以上の結晶性ポリマー粒子を1種ずつ金型内に敷き詰め、該結晶性ポリマー粒子を界面混合し、加圧して予備成形体を形成し、該予備成形体を押出成形して結晶性ポリマーフィルムを作製する結晶性ポリマーフィルム作製工程と、
得られた結晶性ポリマーフィルムを延伸する延伸工程と、を少なくとも含む結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<8> 延伸前の結晶性ポリマーフィルムの一方の面を加熱して、該結晶性ポリマーフィルムの厚み方向に温度勾配を形成する非対称加熱工程を含む前記<7>に記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<9> 界面混合が、結晶性ポリマー粒子に振動を付与して行われる前記<7>から<8>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<10> 結晶性ポリマー粒子が、互いに異なる数平均分子量を有する前記<7>から<9>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<11> 結晶性ポリマー粒子が、ポリテトラフルオロエチレン粒子である前記<7>から<10>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<12> 延伸が、一軸延伸である前記<7>から<11>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<13> 延伸が、二軸延伸である前記<7>から<11>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<14> 前記<1>から<6>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜を用いたことを特徴とする濾過用フィルタである。
<15> 結晶性ポリマー微孔性膜の孔部の平均孔径の大きな側の面をフィルタの濾過面に使用する前記<14>に記載の濾過用フィルタである。
【0011】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、互いに異なる2種以上の結晶性ポリマーからなる単層構造の結晶性ポリマー層と、該結晶性ポリマー層の厚み方向に貫通した多数の孔部とを有し、前記結晶性ポリマーの組成比が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化しており、かつ前記孔部の平均孔径が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化しているので、微粒子を効率良く捕捉することができ、目詰まりがなく、濾過寿命を長くすることができる。
【0012】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法は、結晶性ポリマーフィルム作製工程と、延伸工程とを少なくとも含む。
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法においては、前記結晶性ポリマーフィルム作製工程において、互いに異なる2種以上の結晶性ポリマー粒子を1種ずつ金型内に敷き詰め、該結晶性ポリマー粒子を界面混合し、加圧して予備成形体を形成し、該予備成形体を押出成形して結晶性ポリマーフィルムを作製する。前記延伸工程において、得られた結晶性ポリマーフィルムを延伸する。その結果、前記結晶性ポリマーの組成比が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化しており、かつ前記孔部の平均孔径が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化し、微粒子を効率良く捕捉することができ、目詰まりがなく、濾過寿命が長い結晶性ポリマー微孔性膜を効率良く製造することができる。
【0013】
本発明の濾過用フィルタは、本発明の前記結晶性ポリマー微孔性膜を用いているので、平均孔径が大きい面(表面)をインレット側として濾過を行うことにより、効率よく微粒子を捕捉することができる。また、比表面積が大きいため微細粒子が最小孔径部分に到達する以前に吸着又は付着によって除かれる効果が大きく、濾過寿命を大きく改善することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、互いに異なる2種以上の結晶性ポリマーからなる単層構造の結晶性ポリマー層と、該結晶性ポリマー層の厚み方向に貫通した多数の孔部とを有し、前記結晶性ポリマーの組成比が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化させ、かつ前記孔部の平均孔径が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化させることにより、微粒子を効率良く捕捉することができ、目詰まりがなく、高流量の濾過が可能であり、濾過寿命が長い結晶性ポリマー微孔性膜、及び該結晶性ポリマー微孔性膜を効率良く製造することができる結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法、並びに該結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(結晶性ポリマー微孔性膜)
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、互いに異なる2種以上の結晶性ポリマーからなる単層構造の結晶性ポリマー層と、該結晶性ポリマー層の厚み方向に貫通した多数の孔部とを有してなり、更に必要に応じてその他の構成を有してなる。
【0016】
前記「単層構造」とは、結晶性ポリマー層と結晶性ポリマー層の間に境界を有しないことを意味し、2層以上の結晶性ポリマー層を積層したものから境界をなくしたものも含まれる。ここで、結晶性ポリマー層と結晶性ポリマー層の間の境界の有無は、例えば結晶性ポリマー微孔性膜を厚み方向に切断した切断面を光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)により確認することができる。
前記境界をなくす方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば界面(層間)の粉体をランダムに拡散させて、界面混合する方法などが挙げられる。
【0017】
本発明においては、前記単層構造の結晶性ポリマー層における結晶性ポリマーの組成比が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化しており、前記単層構造の結晶性ポリマー層における孔部の平均孔径が、前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化している。これにより、微粒子を効率良く捕捉することができ、目詰まりがなく、濾過寿命を長くすることができる。
【0018】
前記「結晶性ポリマーの組成比が結晶性ポリマー層の厚み方向に変化している」とは、単層構造の結晶性ポリマー層を構成する少なくとも2種の結晶性ポリマーが界面混合してその組成比が結晶性ポリマー層の厚み方向に変化し、連続傾斜組成比になっていることを意味する。なお、一部に非連続な傾斜組成比を含んでいても構わない。
前記結晶性ポリマーの組成比の変化の同定方法としては、例えば、分光学的手法(X線、紫外線(UV)、可視光、赤外線(IR))、NMR、MSスペクトル、DSC、TG−DTA、密度、平均分子量(数平均分子量、質量平均分子量等)、などを用いることができる。これらの中でも、孔径を制御する目的で平均分子量が異なる2種類の素材を混合することが好ましく、混合比を形成するためにも平均分子量を測定することが直接的である点から結晶性ポリマーの数平均分子量を用いることが特に好ましい。
これらの方法により、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法におけるいずれかの工程での、例えば予備成形体、押出成形後のシート、圧延後のシート、延伸後のシートなどの厚み方向の分布を断面解析(サンプリング、撮影等)、あるいはおもて面又はうら面からのエッチング処理(溶解、分解、切削等)により、結晶性ポリマーの厚み方向の組成比を求めることができる。
【0019】
前記孔部における平均孔径の変化及び結晶性ポリマーの組成比の変化は、連続的乃至非連続的に増加、及び連続的乃至非連続的に減少のいずれかであることが好ましい。
前記「孔部の平均孔径が、結晶性ポリマー層の厚み方向に変化している」とは、横軸に結晶性ポリマー微孔性膜のおもて面からの厚み方向の距離d(おもて面からの深さに相当)をとり、縦軸に孔部の平均孔径Dをとったとき、(1)おもて面(d=0)からうら面(d=膜厚)に至るまでのグラフが、1本の連続線で描かれ(連続的)、グラフの傾き(dD/dt)が負の領域(減少)、及び傾きが正の領域(増加)のいずれであるが、連続であれば一部に傾きが0(ゼロ)の場合を含んでいてもよい。なお、微孔性膜全体において傾きが0(ゼロ)の場合(変化なし)は含まれない。
これらの中でも、結晶性ポリマー層における孔部の平均孔径が、おもて面からうら面に至るまでのグラフが連続的に減少しているものが特に好ましい。
【0020】
また、「結晶性ポリマーの組成比が、結晶性ポリマー層の厚み方向に変化している」とは、横軸に結晶性ポリマー微孔性膜のおもて面からの厚み方向の距離d(おもて面からの深さに相当)をとり、縦軸に結晶性ポリマーの組成比をとったとき、(1)おもて面(d=0)からうら面(d=膜厚)に至るまでのグラフが、1本の連続線で描かれ(連続的)、グラフの傾き(dD/dt)が負の領域(減少)、及び傾きが正の領域(増加)のいずれであるが、連続であれば一部に傾きが0(ゼロ)の場合を含んでいてもよい。なお、微孔性膜全体において傾きが0(ゼロ)の場合(変化なし)は含まれない。
これらの中でも、結晶性ポリマーの組成比が、おもて面からうら面に至るまでのグラフが連続的に減少しているものが特に好ましい。
【0021】
本発明においては、結晶性ポリマー微孔性膜における孔部の平均孔径が大きい方の面を「おもて面」と言い、孔部の平均孔径が小さい方の面を「うら面」と言っているが、これは本発明の説明をわかりやすくするために便宜的につけた呼称に過ぎず、いずれの面を「うら面」にしても構わない。
【0022】
ここで、図1に示すように、単層構造の結晶性ポリマー層101からなる本発明の結晶性ポリマー微孔性膜における孔部101aの孔径は、結晶性ポリマー層の厚み方向に変化(一部変化していない部分を含み、連続的に減少)しており、結晶性ポリマー微孔性膜全体としては、孔部101aの孔径が厚み方向に変化(段階的に減少)し、孔径が変化している部分はテーパー状となっている。
これに対し、図2に示すように、結晶性ポリマー層102、103を積層した2層構造の従来の結晶性ポリマー微孔性膜における孔部102b、103bの孔径は、いずれも各結晶性ポリマー層の厚み方向に変化しておらず、結晶性ポリマー微孔性膜全体としては、孔径が厚み方向に変化(段階的に減少)している。
また、図3に示すように、単層構造の結晶性ポリマー層104において、孔部104aの平均孔径が、結晶性ポリマー層の厚み方向に変化(一部変化していない部分を含み、連続的に減少及び連続的に増加)しており、孔径が変化している部分はテーパー状となっている。
これに対し、図4に示すように、結晶性ポリマー層105、106、107を積層した3層構造の従来の結晶性ポリマー微孔性膜における孔部105b、106b、107bの孔径は、いずれも各結晶性ポリマー層の厚み方向に変化しておらず、また、結晶性ポリマー微孔性膜全体としてみると、孔径が厚み方向に段階的に変化している部分がある。
【0023】
また、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、平均孔径が最小の部位が、結晶性ポリマー層の内部に存在することが好ましい。これにより、捕捉粒径に最も影響する最も小さい径の結晶性ポリマー層を、摩擦、引っ掻き等の物理的破壊要因から保護することができ、捕捉性能の安定化を図ることができる。
例えば、図3に示すように、単層構造の結晶性ポリマー層104の内部に、孔部104aの平均孔径が最小の部位104cが存在している。
【0024】
ここで、前記孔部の平均孔径は、例えば走査型電子顕微鏡(日立S−4000型、蒸着は日立E1030型、いずれも日立製作所製)で膜表面の写真(SEM写真、倍率1,000倍〜5,000倍)をとり、得られた写真を画像処理装置(本体名:日本アビオニクス株式会社製、TVイメージプロセッサTVIP−4100II、制御ソフト名:ラトックシステムエンジニアリング株式会社製、TVイメージプロセッサイメージコマンド4198)に取り込んで結晶性ポリマー繊維のみからなる像を得て、その像を演算処理することにより平均孔径が求められる。
【0025】
−結晶性ポリマー−
本発明において、前記「結晶性ポリマー」とは、分子構造の中に長い鎖状の分子が規則的に並んだ結晶性領域と、規則的に並んでいない非結晶領域が混在したポリマーを意味し、このようなポリマーは物理的な処理により、結晶性が発現する。例えば、ポリエチレンフィルムを外力により延伸すると、初めは透明なフィルムが白濁する現象が認められる。これは外力によりポリマー内の分子配列が一つの方向に揃えられることによって、結晶性が発現したことに由来する。
【0026】
前記結晶性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばポリアルキレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、液晶性ポリマーなどが挙げられ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、シンジオタクチック・ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、フッ素樹脂、ポリエーテルニトリル、などが挙げられる。
これらの中でも、耐薬品性と取り扱い性の観点から、ポリアルキレン(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)が好ましく、該ポリアルキレンにおけるアルキレン基の水素原子がフッ素原子によって一部又は全部が置換されたフッ素系ポリアルキレンがより好ましく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が特に好ましい。
前記ポリエチレンは、その分岐度により密度が変化し、分岐度が多く、結晶化度が低いものが低密度ポリエチレン(LDPE)、分岐度が少なく、結晶化度の高いものが高密度ポリエチレン(HDPE)と分類され、いずれも用いることができる。これらの中でも、結晶性コントロールの点から、HDPEが特に好ましい。
【0027】
前記ポリテトラフルオロエチレンは、通常、乳化重合法により製造されたポリテトラフルオロエチレンを用いることができ、乳化重合により得られた水性分散体を凝析することにより取得した微粉末状のポリテトラフルオロエチレンを使用することが好ましい。
【0028】
前記ポリテトラフルオロエチレンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、市販品を用いることができる。該市販品としては、例えば、ポリフロンPTFE F−104、ポリフロンPTFE F−201、ポリフロンPTFE F−205、ポリフロンPTFE F−207、ポリフロンPTFE F−301(いずれも、ダイキン工業株式会社製);Fluon PTFE CD1、Fluon PTFE CD141、Fluon PTFE CD145、Fluon PTFE CD123、Fluon PTFE CD076、Fluon PTFE CD090(いずれも、旭硝子株式会社製);テフロン(登録商標)PTFE 6−J、テフロン(登録商標)PTFE 62XT、テフロン(登録商標)PTFE 6C−J、テフロン(登録商標)PTFE 640−J(いずれも、三井デュポンフロロケミカル株式会社製)、などが挙げられる。これらの中でも、F−104、CD1、CD141、CD145、CD123、6−Jが好ましく、F−104、CD1、CD123,6−Jがより好ましく、CD123が特に好ましい。
【0029】
前記結晶性ポリマー層は、互いに異なる2種以上の結晶性ポリマーからなる。
ここで、前記「互いに異なる」とは、結晶性ポリマー層に含まれる2種以上の各結晶性ポリマーの材料、数平均分子量、結晶化度などが異なることを意味する。
前記各結晶性ポリマーの材料としては、それぞれ同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよく、各結晶性ポリマーが同じ材料である場合には、数平均分子量、及び結晶化度のいずれかが異なる結晶性ポリマーを用いればよい。
前記異なる材料の結晶性ポリマーとしては、例えばPTFEとポリエチレンとを用いる場合などが挙げられる。
前記異なる数平均分子量の結晶性ポリマーとしては、例えばPTFEの場合には、数平均分子量の差が、100万以上のものが挙げられる。
前記結晶化度が異なる結晶性ポリマーとしては、例えばPTFEの場合には、結晶化度の差が5%以上のものが挙げられる。
ここで、前記結晶化度は、例えば広角X線回折、NMR、赤外線(IR)、DSC、密度測定、「ふっ素樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社、里川孝臣編)P.45に記載の方法などにより測定することができる。
【0030】
前記各結晶性ポリマーは、そのガラス転移温度が、40℃〜400℃であることが好ましく、50℃〜350℃がより好ましい。
前記各結晶性ポリマーの質量平均分子量は、それぞれ1,000〜100,000,000が好ましい。
前記各結晶性ポリマーの数平均分子量は、それぞれ500〜50,000,000が好ましく、1,000〜10,000,000がより好ましい。
ここで、前記数平均分子量は、例えばゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。しかし、PTFEは溶剤に不溶であるため、DSC測定による結晶化熱(ΔHc:cal/g)測定を行い、関係式:Mn=2.1×1010×ΔHc−5.16、を用いて算出することが好ましい。
【0031】
前記単層構造の結晶性ポリマー微孔性膜の膜厚は、1μm〜300μmが好ましく、5μm〜100μmがより好ましく、10μm〜80μmが更に好ましい。
【0032】
(結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法)
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法は、結晶性ポリマーフィルム作製工程と、延伸工程とを少なくとも含み、非対称加熱工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0033】
−結晶性ポリマーフィルム作製工程−
前記結晶性ポリマーフィルム作製工程は、互いに異なる2種以上の結晶性ポリマー粒子を1種ずつ金型内に敷き詰め、該結晶性ポリマー粒子を界面混合し、加圧して予備成形体を形成し、該予備成形体を押出成形して結晶性ポリマーフィルムを作製する工程である。
前記互いに異なる結晶性ポリマーとしては、上述したものの中から目的に応じて適宜選択して用いることができ、互いに異なる数平均分子量を有する結晶性ポリマー粒子を用いることが好ましい。
【0034】
前記結晶性ポリマーフィルム作製工程は、特に制限はなく、公知のペースト押し出し方法に準じて行うことができる。
まず、互いに異なる2種の結晶性ポリマー粒子を押出助剤と混合した混合物(ペースト)を1種ずつ金型内に敷き詰め、該ペースト(結晶性ポリマー粒子)を界面混合する。
前記押出助剤としては、液状潤滑剤を用いることが好ましく、具体的には、ソルベントナフサ、ホワイトオイルなどが挙げられる。また、前記押出助剤としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、エッソ石油株式会社製「アイソパー」などの炭化水素油を用いても構わない。前記押出助剤の添加量は、前記結晶性ポリマー100質量部に対して、20質量部〜30質量部が好ましい。
前記界面混合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば結晶性ポリマー粒子に振動を付与して行うことが好ましい。前記振動は、公知の振動機を用い、振動のモード(縦、横、回転、ランダム等)、振幅、速度、時間などを適宜調整して行うことが好ましい。
次に、前記界面混合したペーストを加圧して予備成形体を作製し、該予備成形体をペースト押出装置で圧延することにより結晶性ポリマー未加熱フィルムを作製する。
【0035】
前記ペースト押し出しは、50℃〜80℃の温度にて行うことが好ましい。押出し形状については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、通常は棒状乃至矩形状が好ましい。押出物は、次いで圧延することによりフィルム状にする。圧延は、例えばカレンダーロールにより50m/分の速度でカレンダー掛けすることにより行うことができる。圧延温度は、通常50℃〜70℃に設定することができる。その後、フィルムを加熱することにより押出助剤を除去して結晶性ポリマー未加熱フィルムとする。このときの加熱温度は用いる結晶性ポリマーの種類に応じて適宜選定することができるが、40℃〜400℃が好ましく、60℃〜350℃がより好ましい。例えばポリテトラフルオロエチレンを用いる場合には、150℃〜280℃が好ましく、200℃〜255℃がより好ましい。加熱は、フィルムを熱風乾燥炉に通すなどの方法で行うことができる。このようにして製造される結晶性ポリマー未加熱フィルムの厚みは、最終的に製造しようとする結晶性ポリマー微孔性膜の厚みに応じて適宜調整することができる。
なお、結晶性ポリマー未加熱フィルムの製造に際しては、「ポリフロンハンドブック」(ダイキン工業株式会社発行、1983年改訂版)に記載されている事項を適宜採用することができる。
【0036】
ここで、図5〜図8を参照して、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法の一例について説明する。
図7に示すように、2種のPTFEのファインパウダー1及び2を界面混合させて境界をなくした単層構造の結晶性ポリマー層6からなる予備成形体10を作製する。
前記予備成形体は、平均一次粒径0.2μm〜0.4μmのPTFE乳化重合水性分散体を凝析して製造したPTFEのファインパウダーにソルベントナフサ、ホワイトオイル等のような液状潤滑剤を添加したペースト1及びペースト2から得られる。前記液状潤滑剤の使用量は、その種類、成形条件等によって異なり、通常PTFEのファインパウダー100質量部に対して20質量部〜35質量部の範囲で用いられる。更に必要に応じて着色剤などを添加することもできる。
まず、図5に示すような箱形状の下金型8内に、第1層を形成するためのPTFEのファインパウダー1(白丸)を含むペースト1を層状に下金型8上に敷き詰め、第1層4上に第2層を形成するためのPTFEのファインパウダー2(黒丸)を含むペースト2を敷き詰め、第1層4上に第2層5を形成する。この際、パウダー同士がくっつかないように各ペーストをよく振り混ぜてから敷き詰める。
次に、パウダーが流動可能な状態で、金型を試験管ミキサー(振幅5mm、150rpm)で振動させ、各層のパウダーを界面混合する(図6参照)。この界面混合により、両層間の境界がなくなる(単層構造のペーストとなる)。その後、界面混合したペーストを加圧し、予備成形体10とした(図7参照)。
以上により、図7に示すようなペースト押出装置のシリンダー部の中に収納される寸法に成形された予備成形体10が得られる。
【0037】
次に、得られた予備成形体10を図8に示すペースト押出装置のシリンダー部に収納した後、これを加圧手段(不図示)によって矢印方向に押圧する。図8のペースト押出装置のシリンダー部は、例えば軸直角方向断面は50mm×100mmの矩形であり、出口部でシリンダー部の一方が絞られたノズル50mm×5mmで構成されている。
このようにして単層構造のポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルム15が成形される。
【0038】
−延伸工程−
前記延伸工程は、得られた結晶性ポリマーフィルムを延伸する工程である。
前記延伸は、長手方向と幅方向の両方について行うことが好ましい。長手方向と幅方向について、それぞれ逐次延伸を行ってもよいし、同時に二軸延伸を行ってもよい。
長手方向と幅方向について、それぞれ逐次延伸を行う場合には、まず、長手方向の延伸を行ってから幅方向の延伸を行うことが好ましい。
前記長手方向の延伸倍率は、4倍〜100倍が好ましく、8倍〜90倍がより好ましく、10倍〜80倍が更に好ましい。長手方向の延伸温度は、100℃〜300℃が好ましく、200℃〜290℃がより好ましく、250℃〜280℃が特に好ましい。
前記幅方向の延伸倍率は、10倍〜100倍が好ましく、12倍〜90倍がより好ましく、15倍〜70倍が更に好ましく、20倍〜40倍が特に好ましい。幅方向の延伸温度は、100℃〜300℃が好ましく、200℃〜290℃がより好ましく、250℃〜280℃が特に好ましい。
面積延伸倍率は、50倍〜300倍が好ましく、75倍〜280倍がより好ましく、100倍〜260倍が更に好ましい。延伸を行う際には、予め延伸温度以下の温度に結晶性ポリマーフィルムを予備加熱しておいてもよい。
なお、延伸後に、必要に応じて熱固定を行うことができる。該熱固定の温度は、通常、延伸温度以上で結晶性ポリマーの融点未満で行うことが好ましい。
【0039】
−非対称加熱工程−
前記非対称加熱工程は、延伸前の結晶性ポリマーフィルムの一方の面を加熱して、該結晶性ポリマーフィルムの厚み方向に温度勾配を形成する工程である。
ここで、前記非対称加熱とは、結晶性ポリマーフィルムをその加熱体の融点以上であり、かつ、その未加熱体の融点+15℃以下の温度で加熱処理することを意味する。
本発明において、未加熱体とは、非対称加熱処理をしていないものを意味する。また、未加熱体の融点とは、未加熱体を示差走査熱量計により測定した際に現れる吸熱カーブのピークの温度を意味する。前記加熱体の融点及び未加熱体の融点は、結晶性ポリマーの種類や数平均分子量等により変化するが、50℃〜450℃が好ましく、80℃〜400℃がより好ましい。
このような温度は、以下のように考えることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレンの場合、加熱体の融点が約324℃で未加熱体の融点が約345℃である。したがって、融点約324℃のものと融点約345℃のものが混在している状態である半加熱体にするには、ポリテトラフルオロエチレンフィルムの場合、324℃〜360℃が好ましく、335℃〜350℃がより好ましく、例えば345℃の温度に加熱する。
【0040】
前記非対称加熱工程における、熱エネルギーの供給については、連続的に供給する方法、もしくは何度かに分割して間欠的にエネルギーを供給する方法のいずれも採用することができる。前記非対称加熱の定義上、結晶性ポリマーフィルムのおもて面とうら面で温度に差を生じさせることが必要であるが、この方法として、間欠的にエネルギーを供給することによりうら面の温度上昇を抑えるという方法が利用できる。一方、連続的に加熱する場合、この温度勾配を保持するために、おもて面の加熱と同時にうら面を冷却するという方法も有効に使用できる。
【0041】
前記熱エネルギーの供給方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば(1)結晶性ポリマーフィルムに熱風を吹き付ける方法、(2)結晶性ポリマーフィルムに熱媒に接触させる方法、(3)結晶性ポリマーフィルムを加熱部材に接触させる方法、(4)結晶性ポリマーフィルムに赤外線を照射する方法、(5)結晶性ポリマーフィルムをマイクロ波等の電磁波により加熱する方法などが使用できる。これらの中でも、(3)加熱部材に接触させる方法、(4)赤外線を照射する方法が好ましい。
前記(3)の加熱部材としては、加熱ロールが好ましい。加熱ロールであれば、工業的に流れ作業で連続的に非対称加熱を行うことができ、しかも温度制御や装置のメンテナンスも容易である。加熱ロールの温度は、上記半加熱体にする際の温度に設定することができる。加熱ロールにフィルムを接触させる時間は、目的とする非対称加熱が十分に進行するのに必要な時間であり、30秒間〜120秒間が好ましく、45秒間〜90秒間がより好ましく、60秒間〜80秒間が更に好ましい。
【0042】
前記(4)の赤外線照射としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記赤外線の一般的な定義は「実用赤外線」(人間と歴史社、1992年発行)を参考にすることができる。本発明において、前記赤外線とは、波長が0.74μm〜1,000μmの電磁波を意味し、そのうち波長が0.74μm〜3μmの範囲を近赤外線とし、波長が3μm〜1,000μmの範囲を遠赤外線とする。
本発明においては、未加熱体のおもて面とうら面での温度差がある方が好ましいため、表層の加熱に有利な遠赤外線が好ましく使用される。
前記赤外線の装置の種類としては、目的の波長の赤外線が照射できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一般的に、近赤外線は電球(ハロゲンランプ)、遠赤外線はセラミック、石英、金属酸化面などの発熱体を用いることができる。
また、赤外線照射であれば、工業的に流れ作業で連続的に非対称加熱を行うことができ、しかも温度制御や装置のメンテナンスも容易である。また非接触であるため、クリーン、かつ毛羽立ちのような欠陥が生じることがない。
前記赤外線照射によるフィルム表面温度は、赤外線照射装置の出力、赤外線照射装置とフィルム表面の距離、照射時間(搬送速度)、雰囲気温度で制御でき、上記の半加熱体にする際の温度に設定することができるが、324℃〜380℃が好ましく、335℃〜360℃がより好ましい。前記表面温度が、324℃未満であると、結晶状態が変化せず、孔径制御ができなくなることがあり、380℃を超えると、結晶性ポリマーフィルムが溶融することにより過度に形状が変形したり、結晶性ポリマーの熱分解が生じることがある。
前記赤外線の照射時間は、特に制限はなく、目的とする非対称加熱が十分に進行するのに必要な時間であり、30秒間〜120秒間が好ましく、45秒間〜90秒間がより好ましく、60秒間〜80秒間が更に好ましい。
前記非対称加熱における赤外線照射は、連続的に行ってもよく、又は何度かに分割して間欠的に行ってもよい。
【0043】
また、結晶性ポリマーフィルムの厚み方向の温度勾配としては、おもて面とうら面の温度差は30℃以上が好ましく、50℃以上であることがより好ましい。
なお、連続的に結晶性ポリマーフィルムのうら面を加熱する場合には、結晶性ポリマーフィルムのおもて面とうら面で温度勾配を保持するため、うら面の加熱と同時におもて面を冷却することが好ましい。
前記おもて面を冷却する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば冷風を吹き付ける方法、冷媒に接触させる方法、冷却した材料に接触させる方法、放冷による冷却等の種々の方法が使用でき、フィルムの表面に冷却部材を接触させる方法は、接触物表面が遠赤外線により加熱されるため好ましくない。
また、前記非対称加熱工程を間欠的に行う場合にも、結晶性ポリマーフィルムのうら面を間欠的に加熱及び冷却し、おもて面の温度上昇を抑制することが好ましい。
【0044】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、様々な用途に用いることができるが、特に、以下に説明する濾過用フィルタとして好適に用いることができる。
【0045】
(濾過用フィルタ)
本発明の濾過用フィルタは、本発明の前記結晶性ポリマー微孔性膜を用いることを特徴とする。
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜を濾過用フィルタとして用いるときは、その表面(平均孔径が大きい面)をインレット側として濾過を行う。即ち、ポアサイズの大きな表面側をフィルタの濾過面に使用する。このように、平均孔径が大きい面(表面)をインレット側として濾過を行うことにより、効率よく微粒子を捕捉することができる。
また、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は比表面積が大きいため、その表面から導入された微細粒子が最小孔径部分に到達する以前に吸着又は付着によって除かれる。したがって、目詰まりを起こしにくく、長期間にわたって高い濾過効率を維持することができる。
【0046】
本発明の濾過用フィルタは、差圧0.1kg/cm2として濾過を行った時に、少なくとも5ml/cm2・min以上の濾過が可能なものとすることができる。
本発明の濾過用フィルタは、プリーツ状に加工成形することが好ましい。プリーツ状に加工することにより、カートリッジあたりのフィルタの濾過に使用する有効表面積を増大させることができるという利点がある。
【0047】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルタは、このように濾過機能が高くて長寿命であるという特徴を有することから、濾過装置をコンパクトにまとめることができる。従来の濾過装置では、多数の濾過ユニットを並列的に使用して濾過寿命の短さに対処していたが、本発明の濾過用フィルタを用いれば並列的に使用する濾過ユニットの数を大幅に減らすことができる。また、濾過用フィルタの交換期間も大幅に延ばすことができるため、メンテナンスにかかる費用や時間を節減できる。
【0048】
本発明の濾過用フィルタは、濾過が必要とされる様々な状況において使用することができ、気体、液体等の精密濾過に好適に用いられ、例えば、腐食性ガス、半導体工業で使用される各種ガス等の濾過、電子工業用洗浄水、医薬用水、医薬製造工程用水、食品水等の濾過、滅菌に用いられる。特に、本発明の濾過用フィルタは耐熱性及び耐薬品性に優れているため、従来の濾過用フィルタでは対応できなかった高温濾過や反応性薬品の濾過にも効果的に用いられる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
<ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製>
−予備成形体の作製−
結晶性ポリマーとして数平均分子量が100万のポリテトラフルオロエチレンのファインパウダー(旭硝子株式会社製、「Fluon PTFE CD1」)100質量部に、押出助剤として炭化水素油(エッソ石油株式会社製、「アイソパーM」)27質量部を加えた。これをペースト1とした。
同様に、数平均分子量が1000万のポリテトラフルオロエチレンのファインパウダー(旭硝子株式会社製、「Fluon PTFE CD123」)100質量部に、押出助剤として炭化水素油(エッソ石油株式会社製、「アイソパーM」)27質量部を加えた。これをペースト2とした。
次に、ペースト1と、ペースト2とを厚み比(ペースト1/ペースト2)が4/1となるように、図5に示すように金型内に敷き詰めた(図5中ではペースト1を5、ペースト2を4で表す)。このとき、パウダー同士がくっつかないように、各ペーストはよく振り混ぜてから敷き詰めた。
次に、加圧前のパウダーが流動可能な状態で、金型を試験管ミキサー(振幅5mm、150rpm)で1分間振動させ、各層のパウダーを界面混合した(図6参照)。その後、界面混合したペーストを加圧し、予備成形体10とした(図7参照)。
以降の処理では、ペースト1(5)側を「おもて面」、ペースト2(4)側を「うら面」とした。
【0051】
得られた予備成形体の厚み方向の結晶性ポリマーの組成比の分布を調べる目的で、予備成形体の厚みを20とし、おもて面から深さ方向0(即ち表層)の厚み部分における数平均分子量をM0、深さ方向1の厚み部分における数平均分子量をM1・・・深さ方向20の厚み部分における数平均分子量をM20とし、M0〜M20を、それぞれ予備成形体の厚み方向のDSC測定(各部分10mgサンプリング)を行い、下記関係式1を用いて結晶性ポリマーの数平均分子量を求めた。なお、DSC測定は、示差走査熱量計(DSC7200、SII社製)を用いて行った。
<関係式1>
数平均分子量(Mn)=2.1×1010×ΔHc−5.16
ただし、ΔHcはDSC結晶化熱(cal/g)を表す。
上記のようにして求めたM0〜M20の値を基に、表層からの深さ(M0〜M20)における数平均分子量(Mn)をプロットした。結果を図9に示す。
図9の結果から、単層構造の予備成形体の結晶性ポリマー層において、結晶性ポリマーの数平均分子量が、結晶性ポリマー層の厚み方向に変化(一部変化していない部分を含み、連続的に増加)しており、このことから、予備成形体は界面混合により連続傾斜組成比になっていることが分かった。
【0052】
−未加熱フィルムの作製−
作製した予備成形体10を、図8に示すようなペースト押し出し金型のシリンダー内に挿入し、シート状に複層ペースト押出しを行った。これを、60℃に加熱したカレンダーロールによりカレンダー掛けして、ポリテトラフルオロエチレンフィルムを作製した。得られたポリテトラフルオロエチレンフィルムを250℃の熱風乾燥炉に通して押出助剤を乾燥除去し、平均厚さ100μm、平均幅150mm、比重1.55のポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムを作製した。
【0053】
−ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製−
得られたポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムを270℃にて長手方向に12.5倍にロール間延伸し、一旦巻き取りロールに巻き取った。その後、フィルムを305℃に予備加熱した後、両端をクリップで挟み、270℃で幅方向に30倍に延伸した。その後、380℃で熱固定を行った。得られた延伸フィルムの面積延伸倍率は、伸長面積倍率で260倍であった。以上により、実施例1のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0054】
(実施例2)
−ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製−
実施例1において、予備成形体を作製する際の厚み比を、おもて面からペースト1/ペースト2/ペースト1=3/1/1とした以外は、実施例1と同様にして、予備成形体を作製した。
得られた予備成形体について、実施例1と同様にして、予備成形体の表層からの深さ(M0〜M20)における数平均分子量をプロットした。結果を図10に示す。
図10の結果から、単層構造の予備成形体の結晶性ポリマー層において、結晶性ポリマーの数平均分子量が、結晶性ポリマー層の厚み方向に変化(変化していない部分を含み、連続的に増加及び連続的に減少)しており、このことから予備成形体は連続傾斜組成比になっていることが分かった。
次に、得られた予備成形体を用い、実施例1と同様にして、ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムを作製し、同様に延伸して、実施例2のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0055】
(実施例3)
−ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製−
実施例1と同じ予備成形体を用い、実施例1と同様にして、ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムを作製した。なお、実施例3の予備成形体は、図9と同じ結果であり、連続傾斜組成比になっていることが分かった。
次に、ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムのうら面(ペースト2側)を、タングステンフィラメント内蔵のハロゲンヒーターで近赤外線により、フィルム表面温度が345℃で1分間加熱して、半加熱フィルムを作製し、該半加熱フィルムを実施例1と同様に延伸した以外は、実施例1と同様にして、実施例3のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0056】
(比較例1)
−ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製−
実施例1において、加圧前の予備成形体の各層のパウダーを界面混合しなかった以外は、実施例1と同様にして、予備成形体を作製した。
得られた予備成形体について、実施例1と同様にして、予備成形体の表層からの深さ(M0〜M20)における数平均分子量をプロットした。結果を図11に示す。
図11の結果から、2層構造の予備成形体の各結晶性ポリマー層において、結晶性ポリマーの数平均分子量が、厚み方向に変化しておらず、全体としてみると数平均分子量が変化(断続的に増加)していることが分かった。
次に、得られた予備成形体を用い、実施例1と同様にして、複層ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムを作製し、同様に延伸して、比較例1の複層ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0057】
(比較例2)
−ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製−
実施例2において、加圧前の予備成形体の各層のパウダーを界面混合しなかった以外は、実施例2と同様にして、予備成形体を作製した。
得られた予備成形体について、実施例1と同様にして、予備成形体の表層からの深さ(M0〜M20)における数平均分子量をプロットした。結果を図12に示す。
図12の結果から、3層構造の予備成形体の各結晶性ポリマー層において、結晶性ポリマーの数平均分子量が、厚み方向に変化しておらず、全体としてみると数平均分子量が断続的に変化していることが分かった。
次に、得られた予備成形体を用い、実施例1と同様にして、複層ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムを作製し、同様に延伸して、比較例2の複層ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0058】
次に、作製した実施例1〜3及び比較例1〜2の各ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜について、以下のようにして、平均膜厚、及びおもて面からの厚み方向における平均孔径の測定を行った。
【0059】
<平均膜厚の測定>
実施例1〜3及び比較例1〜2の各ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の膜厚をダイヤル式厚さゲージ(アンリツ株式会社製、K402B)により測定した。なお、任意の3箇所を測定し、その平均値を求めた。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
<微孔性膜の層構成>
実施例1〜3及び比較例1〜2の各ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の層構成を厚み方向に切断した切断面のSEM観察により測定した。
その結果、実施例1〜3は、微孔性膜中に界面が存在せず単層構造であることが分かった。また、比較例1は微孔性膜中に1つの界面を有し2層構造であることが分かった。また、比較例2は微孔性膜中に2つの界面を有し、3層構造であることが分かった。
【0062】
<おもて面からの厚み方向における平均孔径の測定>
実施例1〜3及び比較例1〜2の各ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜について、微孔性膜の膜厚を20とし、おもて面から厚み方向に0(即ち、表層)の部分における平均孔径をP0、厚み方向に1の部分における平均孔径をP1、・・・、厚み方向に20の部分における平均孔径をP20とし、P0〜P20をそれぞれフィルム断面のSEM写真から求めた。ここで、SEM写真は走査型電子顕微鏡(日立S−4000型、蒸着は日立E1030型、いずれも日立製作所製)で倍率1,000倍〜5,000倍)をとり、得られた写真を画像処理装置(本体名:日本アビオニクス株式会社製、TVイメージプロセッサTVIP−4100II、制御ソフト名:ラトックシステムエンジニアリング株式会社製、TVイメージプロセッサイメージコマンド4198)に取り込んでポリテトラフルオロエチレン繊維のみからなる像を得、その像を演算処理することにより平均孔径を求めた。
上記のように求めたP0〜P20の値を基に、おもて面からの厚み方向の距離(μm)における平均孔径(μm)をプロットした。結果を図13〜図17に示す。
【0063】
図13の結果から、実施例1のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜は、単層構造の結晶性ポリマー層において、孔部の平均孔径が、結晶性ポリマー層の厚み方向に変化(一部変化していない部分を含み、連続的に減少)しており、結晶性ポリマー微孔性膜全体としては、孔部の孔径が厚み方向に変化(段階的に減少)していることが分かった。
また、図14の結果から、実施例2のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜は、単層構造の結晶性ポリマー層において、孔部の平均孔径が、結晶性ポリマー層の厚み方向に変化(一部変化していない部分を含み、連続的に減少及び連続的に増加)しており、結晶性ポリマー微孔性膜全体としては、孔部の孔径が厚み方向に変化(段階的に減少)していることが分かった。また、単層構造の結晶性ポリマー層の内部に、孔部の最大平均孔径が最も小さい部位が存在することが分かった。
また、図15の結果から、実施例3のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜は、単層構造の結晶性ポリマー層において、孔部の平均孔径が、結晶性ポリマー層の厚み方向に変化(連続的に減少)していることが分かった。
これに対し、図16の結果から、比較例1のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜は、
2層構造の微孔性膜の各結晶性ポリマー層において、孔部の平均孔径が、厚み方向に変化しておらず、全体としてみると数平均分子量が変化(断続的に減少)していることが分かった。
また、図17の結果から、比較例2のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜は、3層構造の微孔性膜の各結晶性ポリマー層において、孔部の平均孔径が、厚み方向に変化しておらず、全体としてみると数平均分子量が断続的に変化していることが分かった。
【0064】
<濾過テスト>
次に、実施例1〜3及び比較例1〜2の各結晶性ポリマー微孔性膜について、濾過テストを行った。
実施例1〜2及び比較例1〜2については、最小平均孔径を有する層の孔径に合わせてポリスチレン微粒子(平均粒子サイズ3.0μm)を0.01質量%含有する水溶液を、差圧0.1kgとして濾過を行った。実施例3については、ポリスチレン微粒子(平均粒子サイズ1.0μm)を0.01質量%含有する水溶液を差圧0.1kgとして濾過を行った。結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
表2の結果から、比較例1及び比較例2の微孔性膜に対し、実施例1〜3の各微孔性膜は濾過寿命が大幅に改善されることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜及びこれを用いた濾過用フィルタは、長期間にわたって効率よく微粒子を捕捉することができ、耐熱性及び耐薬品性に優れているため、濾過が必要とされる様々な状況において使用することができ、気体、液体等の精密濾過に好適に用いられ、例えば、腐食性ガス、半導体工業で使用される各種ガス等の濾過、電子工業用洗浄水、医薬用水、医薬製造工程用水、食品水等の濾過、滅菌、高温濾過、反応性薬品の濾過などに幅広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本発明の結晶性ポリマー微孔膜の一例を示す模式図である。
【図2】図2は、従来の2層構造の結晶性ポリマー微孔膜の一例を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明の結晶性ポリマー微孔膜の一例を示す模式図である。
【図4】図4は、従来の3層構造の結晶性ポリマー微孔膜の一例を示す模式図である。
【図5】図5は、本発明の結晶性ポリマー微孔膜の製造工程の一例を示す図である。
【図6】図6は、本発明の結晶性ポリマー微孔膜の製造工程の他の一例を示す図である。
【図7】図7は、予備成形体の一例を示す図である。
【図8】図8は、本発明の結晶性ポリマー微孔膜の製造工程の他の一例を示す図である。
【図9】図9は、実施例1の予備成形体における数平均分子量と表面からの距離との関係を示すグラフである。
【図10】図10は、実施例2の予備成形体における数平均分子量と表面からの距離との関係を示すグラフである。
【図11】図11は、比較例1の予備成形体における数平均分子量と表面からの距離との関係を示すグラフである。
【図12】図12は、比較例2の予備成形体における数平均分子量と表面からの距離との関係を示すグラフである。
【図13】図13は、実施例1における孔部の平均孔径と表面からの距離との関係を示すグラフである。
【図14】図14は、実施例2における孔部の平均孔径と表面からの距離との関係を示すグラフである。
【図15】図15は、実施例3における孔部の平均孔径と表面からの距離との関係を示すグラフである。
【図16】図16は、比較例1における孔部の平均孔径と表面からの距離との関係を示すグラフである。
【図17】図17は、比較例2における孔部の平均孔径と表面からの距離との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0068】
4 第1層
5 第2層
8 下金型
10 予備成形体
15 ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルム
101、104 結晶性ポリマー層(単層)
102、103、105、106、107 結晶性ポリマー層(複層)
101a、104a 孔部
102b、103b、105b、106b、107b 孔部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる2種以上の結晶性ポリマーからなる単層構造の結晶性ポリマー層と、該結晶性ポリマー層の厚み方向に貫通した多数の孔部とを有する結晶性ポリマー微孔性膜であって、
前記結晶性ポリマーの組成比が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化しており、かつ前記孔部の平均孔径が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化していることを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜。
【請求項2】
孔部における平均孔径の変化が、連続的乃至非連続的に増加、及び連続的乃至非連続的に減少のいずれかである請求項1に記載の結晶性ポリマー微孔性膜。
【請求項3】
平均孔径が最小の部位が、結晶性ポリマー層の内部に存在する請求項1から2のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜。
【請求項4】
結晶性ポリマーの組成比の変化が、連続的乃至非連続的に増加、及び連続的乃至非連続的に減少のいずれかである請求項1から3のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜。
【請求項5】
結晶性ポリマー層が互いに数平均分子量が異なる2種以上の結晶性ポリマーからなり、該結晶性ポリマーの数平均分子量が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化している請求項1から4のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜。
【請求項6】
結晶性ポリマーが、いずれもポリテトラフルオロエチレンである請求項1から5のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜。
【請求項7】
互いに異なる2種以上の結晶性ポリマー粒子を1種ずつ金型内に敷き詰め、該結晶性ポリマー粒子を界面混合し、加圧して予備成形体を形成し、該予備成形体を押出成形して結晶性ポリマーフィルムを作製する結晶性ポリマーフィルム作製工程と、
得られた結晶性ポリマーフィルムを延伸する延伸工程と、を少なくとも含む結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項8】
延伸前の結晶性ポリマーフィルムの一方の面を加熱して、該結晶性ポリマーフィルムの厚み方向に温度勾配を形成する非対称加熱工程を含む請求項7に記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項9】
界面混合が、結晶性ポリマー粒子に振動を付与して行われる請求項7から8のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項10】
結晶性ポリマー粒子が、互いに異なる数平均分子量を有する請求項7から9のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項11】
結晶性ポリマー粒子が、ポリテトラフルオロエチレン粒子である請求項7から10のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項12】
延伸が、一軸延伸である請求項7から11のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項13】
延伸が、二軸延伸である請求項7から11のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項14】
請求項1から6のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜を用いたことを特徴とする濾過用フィルタ。
【請求項15】
結晶性ポリマー微孔性膜の孔部の平均孔径の大きな側の面をフィルタの濾過面に使用する請求項14に記載の濾過用フィルタ。
【請求項1】
互いに異なる2種以上の結晶性ポリマーからなる単層構造の結晶性ポリマー層と、該結晶性ポリマー層の厚み方向に貫通した多数の孔部とを有する結晶性ポリマー微孔性膜であって、
前記結晶性ポリマーの組成比が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化しており、かつ前記孔部の平均孔径が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化していることを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜。
【請求項2】
孔部における平均孔径の変化が、連続的乃至非連続的に増加、及び連続的乃至非連続的に減少のいずれかである請求項1に記載の結晶性ポリマー微孔性膜。
【請求項3】
平均孔径が最小の部位が、結晶性ポリマー層の内部に存在する請求項1から2のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜。
【請求項4】
結晶性ポリマーの組成比の変化が、連続的乃至非連続的に増加、及び連続的乃至非連続的に減少のいずれかである請求項1から3のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜。
【請求項5】
結晶性ポリマー層が互いに数平均分子量が異なる2種以上の結晶性ポリマーからなり、該結晶性ポリマーの数平均分子量が前記結晶性ポリマー層の厚み方向に変化している請求項1から4のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜。
【請求項6】
結晶性ポリマーが、いずれもポリテトラフルオロエチレンである請求項1から5のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜。
【請求項7】
互いに異なる2種以上の結晶性ポリマー粒子を1種ずつ金型内に敷き詰め、該結晶性ポリマー粒子を界面混合し、加圧して予備成形体を形成し、該予備成形体を押出成形して結晶性ポリマーフィルムを作製する結晶性ポリマーフィルム作製工程と、
得られた結晶性ポリマーフィルムを延伸する延伸工程と、を少なくとも含む結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項8】
延伸前の結晶性ポリマーフィルムの一方の面を加熱して、該結晶性ポリマーフィルムの厚み方向に温度勾配を形成する非対称加熱工程を含む請求項7に記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項9】
界面混合が、結晶性ポリマー粒子に振動を付与して行われる請求項7から8のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項10】
結晶性ポリマー粒子が、互いに異なる数平均分子量を有する請求項7から9のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項11】
結晶性ポリマー粒子が、ポリテトラフルオロエチレン粒子である請求項7から10のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項12】
延伸が、一軸延伸である請求項7から11のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項13】
延伸が、二軸延伸である請求項7から11のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項14】
請求項1から6のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜を用いたことを特徴とする濾過用フィルタ。
【請求項15】
結晶性ポリマー微孔性膜の孔部の平均孔径の大きな側の面をフィルタの濾過面に使用する請求項14に記載の濾過用フィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−61361(P2009−61361A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229179(P2007−229179)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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