結晶系安定組成物およびその製造方法
【課題】フタロシアニン化合物又はポルフィリン化合物を安定化させた組成物及びその製造方法の提供。
【解決手段】式1で表される化合物を式2で表される化合物100質量部に対して0.01〜50質量部含有する結晶系安定組成物。
(Xは-N=又は-CH=を表す。N1〜N4はN;Mは金属原子又はH;但し、MがHを表す場合、2つのHがN1〜N4の2つのNに結合する。Ra〜RhはHか、又はRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhが一緒になって芳香族環を形成する。R1はH又は置換基;nは1〜16を表す。)
【解決手段】式1で表される化合物を式2で表される化合物100質量部に対して0.01〜50質量部含有する結晶系安定組成物。
(Xは-N=又は-CH=を表す。N1〜N4はN;Mは金属原子又はH;但し、MがHを表す場合、2つのHがN1〜N4の2つのNに結合する。Ra〜RhはHか、又はRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhが一緒になって芳香族環を形成する。R1はH又は置換基;nは1〜16を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フタロシアニン化合物又はポルフィリン化合物における特定の不安定型結晶系(具体的にはα型結晶系)を安定化した組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅フタロシアニン顔料において工業的にもっとも重要な結晶型はβ型及びα型である。β型は熱力学的に最も安定な構造であって、不安定なα型と比較すると24kcal/molのエネルギー差がある(例えば、非特許文献1を参照)。
【0003】
銅フタロシアニン顔料は、熱、有機溶剤との接触、機械的剪断力により容易に他の結晶型に変化し、β型とα型との中間に多くの準安定状態の結晶型が存在する。α型の銅フタロシアニン顔料の工業的製造法は、アシッドペースティング法もしくはアシッドスラリー法とよばれ銅フタロシアニンを濃硫酸に溶解した後に水で希釈することにより得られる。この不安定なα型の銅フタロシアニンを安定化するために、下記のようなフタロシアニン化合物を結晶系安定化剤として用いることが知られている(例えば、特許文献1及び2、非特許文献2〜5を参照)。
【化1】
【0004】
しかし、これらのフタロシアニン化合物はいずれも溶媒に不溶であり、混合するための方法としては硫酸に溶解させたり、もしくはボールミルやニーダーなどの機械的剪断力を用いたりすることが必要であった。そのため、副生物の懸念や均一な混合の点で問題があり、高次の不安定型結晶(α型結晶)を得ることは困難であった。また上記のような結晶系安定化剤を用いる場合、均一な薄膜を得ることは困難であった。
【0005】
【特許文献1】特公昭39−28884号公報
【特許文献2】特開昭57−42770号公報
【非特許文献1】Beynon,J.H.,Humphries,A.R.,「Trans.Faraday Soc.」,Vol.51,p.1065,(1955)
【非特許文献2】社団法人色材協会・顔料技術研究会・日本顔料技術協会主催 第43回顔料入門講座テキスト、2001年9月4日〜9月12日
【非特許文献3】彦坂道邇、林三樹夫、「最新粉体の材料設計」、テクノシステム、p.489-514、(1988)
【非特許文献4】望月明光、「最新顔料分散技術」、科学情報協会、p.31-44、(1993)
【非特許文献5】K.Yase,「Acta.Cryst.C」,Vol.44,p.514,(1988)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の技術的背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、不安定な結晶系を有するフタロシアニン化合物又はポルフィリン化合物を安定化させた組成物およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、以上のような課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、従来とは異なる特定の置換基を有する化合物を結晶系安定化剤として用いることにより、溶解が容易でかつ溶液や塗膜に熱などの外部刺激を加えることにより置換基の脱離反応が効率的に進行するため均一に混合され、保存性が良好かつ高次に成長した不安定型フタロシアニン顔料を得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明の課題は、下記の手段によって解決された。
[1]下記一般式(1)で表される化合物を下記一般式(2)で表される化合物100質量部に対して0.01〜50質量部含有することを特徴とする結晶系安定組成物。
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1は水素原子または置換基を表す。nは1から16までの範囲の整数である。nが2以上の場合、複数の−OR1基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。)
[2]下記一般式(3)で表される化合物および下記一般式(4)で表される化合物を熱分解、光分解及び/又は化学分解することにより、これらの化合物から置換基を脱離させて前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物を得ることを特徴とする[1]項に記載の結晶系安定組成物の製造方法。
【0013】
【化4】
【0014】
【化5】
【0015】
(前記一般式(3)及び(4)中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。lは1〜15の整数を表し、mは1〜15の整数を表し、かつl+mは2〜16の整数を表す。pは1〜16の整数を表す。l、m又はpが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
[3]前記一般式(3)で表される化合物が、下記一般式(5)で表される化合物の一部を下記一般式(6)で表される化合物に変換させながらもしくは下記一般式(5)で表される化合物に下記一般式(6)で表される化合物を混合して、下記一般式(5)で表される化合物と下記一般式(6)で表される化合物との環形成反応を行うことにより得られることを特徴とする[2]項に記載の方法。
【0016】
【化6】
【0017】
【化7】
【0018】
(一般式(5)及び(6)中、Qは芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環を形成するのに必要な原子群を表す。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。R3及びR4は各々独立に置換基を表し、同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。xは1〜4の整数、yは1〜4の整数、及びzは0〜3の整数を表し、かつy+z=xの関係を満たす。x、y又はzが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、Qにより形成される芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
[4]前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物を熱分解、光分解及び/又は化学分解することにより、これらの化合物から置換基を脱離させて前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物を得、前記一般式(2)で表される化合物の結晶系を制御することを特徴とする前記一般式(2)で表される化合物の結晶系制御方法。
[5]前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物を水又は有機溶媒に溶解させた後、熱分解、光分解及び/又は化学分解によりこれらの化合物から置換基を脱離させて、前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物からなる顔料を前記の水又は有機溶媒中に分散させることを特徴とする顔料分散液の製造方法。
[6]前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物を熱分解、光分解及び/又は化学分解することにより、これらの化合物から置換基を脱離させて、前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物からなる顔料を得、画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
[7]前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物を基板上に塗布した後、熱分解、光分解及び/又は化学分解によりこれらの化合物から置換基を脱離させて、前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物からなる薄膜を形成することを特徴とする薄膜形成方法。
[8]前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物を物質上に塗布した後、熱分解、光分解及び/又は化学分解によりこれらの化合物から置換基を脱離させて、前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物からなる薄膜を前記物質の表面に形成し、前記物質の表面を改質することを特徴とする表面改質方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の方法によれば、不安定型結晶(α型結晶)を有するフタロシアニン化合物又はポルフィリン化合物を安定化させた結晶系安定組成物を製造することができる。本発明の結晶系安定組成物は、保存性が良好でかつ高次に成長した不安定型結晶(α型結晶)を有する。特にフタロシアニン化合物の場合、不安定型結晶(α型結晶)を有するフタロシアニン顔料として用いることができ、該顔料を均一に分散したインクを作製し、該インクを用いて画像を形成することもできる。また、本発明によれば、溶液プロセスによる成膜が可能で、不安定なα型結晶の均一な薄膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の結晶系安定組成物について説明する。まず、本発明の結晶系安定組成物に含まれる下記一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0021】
【化8】
【0022】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1は水素原子または置換基を表す。nは1から16までの範囲の整数である。nが2以上の場合、複数の−OR1基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【0023】
前記一般式(1)中、R1は水素原子または置換基を表す。
置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基等の環状構造を含む。)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基等の環状構造を含む。)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む。)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。
【0024】
さらに詳しくは、R1で表される置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、
【0025】
アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、
【0026】
アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5又は6員の置換もしくは無置換の、芳香族性もしくは非芳香族性のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、
【0027】
アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、
【0028】
カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
【0029】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、
【0030】
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−(n−オクチルオキシ)フェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、
【0031】
アルキル又はアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、
【0032】
スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル又はアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、
【0033】
アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、
【0034】
アリール又はヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)が挙げられる。
【0035】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていても良い。そのような置換基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。より具体的には、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0036】
ここでR1としては、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシル基、シリル基が挙げられる。好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基であり、特に好ましくは水素原子、炭素数1〜30の直鎖又は分枝のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基である。
【0037】
前記一般式(1)中、−OR1基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換することが好ましい。
【0038】
nは1から16までの範囲の整数である。nが2以上の場合、複数の−OR1基は同一でも異なっていてもよい。nは、好ましくは1から8までの範囲の整数であり、さらに好ましくは1から4までの範囲の整数である。
【0039】
前記一般式(1)中、Xは−N=又は−CH=を表す。Xが−N=を表す場合が好ましい。
【0040】
前記一般式(1)中、Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。ここで、芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環としては4〜10員環が好ましく、5〜7員環がより好ましく、5又は6員環がさらに好ましく、6員環が特に好ましい。
芳香族ヘテロ環に含まれるヘテロ原子は特に限定されないが、窒素、酸素、硫黄、セレン、ケイ素、ゲルマニウム又はリンが好ましく、窒素、酸素又は硫黄がさらに好ましく、窒素が特に好ましい。芳香族ヘテロ環ひとつに含有されるヘテロ原子数は特に限定されないが、1〜3が好ましい。
【0041】
芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環の具体例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。
芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環は、置換基を有していてもよく、置換基としては先述のR1で挙げたものが適用できる。
【0042】
芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環はさらに他の環と縮合環を形成してもよく、縮合する環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。上記の置換基および縮合環は、さらに置換基を有していてもよく、さらに他の環と縮合していてもよい。置換基としては、先述のR1として挙げたものが適用できる。
【0043】
芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環として好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、フラン環、チオフェン環であり、より好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、チオフェン環であり、さらに好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、チオフェン環であり、特に好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環である。
【0044】
前記一般式(1)中、Mは金属原子または水素原子を表す。Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。
Mが金属原子を表す場合、安定な錯体を形成するものであれば金属はいかなるものでも良く、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Ba、Al、Si、Hg、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Pd、Cd、Sn、Pt、Pb、Sr、V、Mn、Ti、In又はGaなどを使用することができる。金属原子には置換基が結合していてもよく、置換基としては、先述のR1で挙げたものを用いることができる。
Mとして好ましくはMg、Ca、AlCl、SiCl2、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、Sn、SnCl2、Pt、Pb、V=O、Mn又はTi=Oが用いられ、より好ましくはFe、Co、Ni、Cu又はZnが用いられ、特に好ましくはCu又はZnが用いられる。なお、Mが水素原子である場合も好ましく、Mが水素原子である場合の前記一般式(1)は下記一般式(1−a)で表される。
【0045】
【化9】
【0046】
前記一般式(1−a)において、Ra〜Rh、X、R1及びnは、それぞれ前記一般式(1)におけるRa〜Rh、X、R1及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0047】
前記一般式(1)で表される化合物としては、(a)Xが−N=を表し、かつ、Ra及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になってベンゼン環を形成するフタロシアニン化合物、(b)Xが−CH=を表し、かつ、Ra〜Rhがそれぞれ水素原子を表すポルフィリン化合物、及び(c)Xが−CH=を表し、かつ、Ra及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になってベンゼン環を形成するテトラベンゾポルフィリン化合物が特に好ましい。
【0048】
以下に、前記一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
表1にフタロシアニン化合物の具体例、表2にポルフィリン化合物の具体例、表3にテトラベンゾポルフィリン化合物の具体例をそれぞれ示す。表1〜3中、置換基の*印は、下記一般式(1A)で表されるフタロシアニン化合物、下記一般式(1B)で表されるポルフィリン化合物、又は下記一般式(1C)で表されるテトラベンゾポルフィリン化合物への結合部位を示す。また、Rα1〜Rα8、Rβ1〜Rβ8、Rm1〜Rm4又はRi1〜Ri8が無置換の場合、即ち水素原子が結合している場合は表記を省略している。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
(異性体の存在)
前記表1において、例えば「Rα1/Rα2」という表記は「Rα1又はRα2のいずれか一方」という意味を表しており、したがってこの表記のある化合物は置換位置異性体の混合物である。
例えば、例示化合物(A−2)の置換位置異性体としては、Rα1/Rα2とRα3/Rα4との組み合わせ、Rα1/Rα2とRα5/Rα6との組み合わせ、Rα1/Rα2とRα7/Rα8との組み合わせ、Rα3/Rα4とRα5/Rα6との組み合わせ、Rα3/Rα4とRα7/Rα8との組み合わせが
【化10】
に置換されているものが挙げられる。すなわち、例示化合物(A−2)の場合、フタロシアニンのα位のいずれか二つが
【化11】
に置換されていることを意味する。ここで、フタロシアニンのα位とは前記一般式(1A)におけるRα1〜Rα8が置換した位置であり、β位とはRβ1〜Rβ8が置換した位置である。
なお、前記表2及び3に示したポルフィリン化合物及びテトラベンゾポルフィリン化合物でも同様である。
【0053】
次に、本発明の結晶系安定組成物に含まれる下記一般式(2)で表される化合物について説明する。
【0054】
【化12】
【0055】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。)
【0056】
前記一般式(2)において、Ra〜Rh、X、N1〜N4及びMは、それぞれ前記一般式(1)におけるRa〜Rh、X、N1〜N4及びMと同義であり、好ましい範囲も同様である。
本発明の結晶系安定組成物に含まれる前記一般式(1)で表される化合物のRa〜Rh、X及びMと前記一般式(2)で表される化合物のRa〜Rh、X及びMとは、同一であっても異なっていてもよいが、結晶系を安定させる観点から、同一であることが好ましい。
【0057】
本発明の結晶系安定組成物において、前記一般式(2)で表される化合物100質量部に対する前記一般式(1)で表される化合物の含有量は0.01質量部〜50質量部であり、好ましくは0.05質量部〜25質量部であり、さらに好ましくは0.1質量部〜10質量部である。この場合、前記一般式(1)で表される化合物が複数種含まれていても構わない。前記一般式(1)で表される化合物は、結晶系安定化剤として作用する。
【0058】
通常、溶媒不溶性の化合物に溶解性を付与するためにアルコキシ基を置換することが行われる。そのため、そのようなアルコキシ基を含む−OR1基を有する前記一般式(1)で表される化合物を、溶媒不溶性の顔料として使用するフタロシアニン化合物(前記一般式(2)で表される化合物)に積極的に混合しようという試みは従来検討されていなかった。また、両者を混合した際に、前記一般式(2)で表される化合物の結晶のパッキングを阻害して顔料のパッキングを密に形成できなくなるため、前記一般式(2)で表される化合物の溶媒不溶性や熱あるいは光に対する堅牢性を低下してしまうと予想される。これに対し、本発明の結晶系安定組成物では、前記一般式(2)で表される化合物の溶媒不溶性や熱あるいは光に対する堅牢性が低下することなく、しかも前記一般式(1)で表される化合物が結晶系安定化剤として作用して、高次の不安定型結晶(α型結晶)を得ることができる。
【0059】
次に、本発明の結晶系安定組成物の製造方法について説明する。
まず、下記一般式(3)で表される化合物および下記一般式(4)で表される化合物について説明する。
【0060】
【化13】
【0061】
【化14】
【0062】
(前記一般式(3)及び(4)中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。lは1〜15の整数を表し、mは1〜15の整数を表し、かつl+mは2〜16の整数を表す。pは1〜16の整数を表す。l、m又はpが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【0063】
前記一般式(3)及び(4)において、Ra〜Rh、X、N1〜N4及びMは、それぞれ前記一般式(1)におけるRa〜Rh、X、N1〜N4及びMと同義であり、好ましい範囲も同様である。前記一般式(3)におけるR1は、前記一般式(1)におけるR1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0064】
前記一般式(3)及び(4)中、R2は水素原子または置換基を表す。ここで、R2は、先述のR1と同義であり、好ましい範囲も同様である。aは1又は2の整数を表し、aが2であることが最も好ましい。すなわち、前記一般式(3)及び(4)で表される化合物は、下記一般式(a)で表される置換基を有することが好ましい。下記一般式(a)で表される置換基は、溶媒可溶性基として作用する。ここで、「溶媒可溶性」とは、溶媒に対して、溶剤を加熱還流した後に室温まで冷却した状態で0.1質量%以上の溶解度を有することをいう。好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは10%質量以上である。
【0065】
【化15】
【0066】
一般式(a)中、R2は水素原子または置換基を表し、R2は前記一般式(3)及び(4)におけるR2と同じである。
【0067】
ここで、R2としては、好ましくは水素原子、水酸基、炭素数4〜30の直鎖又は分枝のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基が挙げられ、特に好ましくは炭素数4〜18の直鎖又は分枝のアルキル基である。前記一般式(3)及び(4)で表される化合物は、下記一般式(b)で表される置換基を有することがさらに好ましい。
【0068】
【化16】
【0069】
一般式(b)中、R5〜R7は各々独立に水素原子または置換基を表す。R5〜R7のうち、2つ以上が水素原子以外の置換基であることが好ましく、より好ましくは3つとも水素原子以外の置換基である場合である。
【0070】
R5〜R7で表される置換基の例としては、先述のR1で挙げたものが適用できる。R5〜R7は互いに連結して環を形成しても良い。また、R5〜R7はさらに置換基によって置換されていても良い。
【0071】
R5〜R7で表される置換基として好ましくは、ハロゲン原子、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、5又は6員の置換もしくは無置換のヘテロ環基、シアノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基である。さらに好ましくは、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基、シアノ基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基である。最も好ましくは、R5〜R7がいずれもメチル基の場合である。
【0072】
前記一般式(3)及び(4)中、lは1〜15の整数を表し、mは1〜15の整数を表し、かつl+mは2〜16の整数を表す。l+mは、好ましくは1〜8の範囲の整数であり、さらに好ましくは1〜4の範囲の整数である。また、lは、好ましくは1〜8の範囲の整数であり、さらに好ましくは1〜4の範囲の整数である。mは、好ましくは1〜8の範囲の整数であり、さらに好ましくは1〜4の範囲の整数である。l又はmが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。
【0073】
前記一般式(3)及び(4)中、−OR1基及び−S(O)aR2基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換することが好ましい。
【0074】
前記一般式(3)及び(4)で表される化合物としては、(a)Xが−N=を表し、かつ、Ra及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になってベンゼン環を形成するフタロシアニン化合物、(b)Xが−CH=を表し、かつ、Ra〜Rhがそれぞれ水素原子を表すポルフィリン化合物、及び(c)Xが−CH=を表し、かつ、Ra及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になってベンゼン環を形成するテトラベンゾポルフィリン化合物が特に好ましい。
【0075】
以下に、前記一般式(3)で表される化合物の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
表4及び5にフタロシアニン化合物の具体例、表6にポルフィリン化合物の具体例、表7にテトラベンゾポルフィリン化合物の具体例をそれぞれ示す。表4〜7中、置換基の*印は、下記一般式(3D)で表されるフタロシアニン化合物、下記一般式(3E)で表されるポルフィリン化合物、又は下記一般式(3F)で表されるテトラベンゾポルフィリン化合物への結合部位を示す。また、Rα1〜Rα8、Rβ1〜Rβ8、Rm1〜Rm4又はRi1〜Ri8が無置換の場合、即ち水素原子が結合している場合は表記を省略している。
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】
【0079】
【表7】
【0080】
以下に、前記一般式(4)で表される化合物の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
表8〜12にフタロシアニン化合物の具体例、表13にポルフィリン化合物の具体例、表14にテトラベンゾポルフィリン化合物の具体例をそれぞれ示す。表7〜14中、置換基の*印は、下記一般式(4−G)で表されるフタロシアニン化合物、下記一般式(4−H)で表されるポルフィリン化合物、又は下記一般式(4−I)で表されるテトラベンゾポルフィリン化合物への結合部位を示す。また、Rα1〜Rα8、Rβ1〜Rβ8、Rm1〜Rm4又はRi1〜Ri8が無置換の場合、即ち水素原子が結合している場合は表記を省略している。
【0081】
【表8】
【0082】
【表9】
【0083】
【表10】
【0084】
【表11】
【0085】
【表12】
【0086】
【表13】
【0087】
【表14】
【0088】
(異性体の存在)
前記表4〜14において、例えば「Rα1/Rα2」という表記は「Rα1又はRα2のいずれか一方」という意味を表しており、従ってこの表記のある化合物は置換位置異性体の混合物である。
例えば、例示化合物(D−2)の置換位置異性体としては、Rα1/Rα2とRα3/Rα4との組み合わせ、Rα1/Rα2とRα5/Rα6との組み合わせ、Rα1/Rα2とRα7/Rα8との組み合わせ、Rα3/Rα4とRα5/Rα6との組み合わせ、Rα3/Rα4とRα7/Rα8との組み合わせが
【化17】
に置換されており、かつ、Rα5/Rα6とRα7/Rα8との組み合わせ、Rα5/Rα6とRα1/Rα2との組み合わせ、Rα5/Rα6とRα3/Rα4との組み合わせ、Rα7/Rα8とRα1/Rα2との組み合わせ、Rα7/Rα8とRα3/Rα4との組み合わせが
【化18】
に置換されているものが挙げられる。すなわち、例示化合物(D−2)の場合、フタロシアニンのα位のうち、いずれか二つが
【化19】
に置換されており、かつ、いずれか二つが
【化20】
に置換されていることを意味する。ここで、フタロシアニンのα位とは前記一般式(3D)におけるRα1〜Rα8が置換した位置であり、β位とはRβ1〜Rβ8が置換した位置である。
なお、ポルフィリン化合物及びテトラベンゾポルフィリン化合物でも同様である。
【0089】
本発明の方法では、前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物を熱分解、光分解及び/又は化学分解することにより、これらの化合物から置換基の一部もしくは全部を脱離させて前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物を得る。
【0090】
[化合物を溶媒に溶解させる工程]
本発明では、まず、前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物を水及び/又は有機溶媒に溶解させることが好ましい。
有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1−メチルナフタレン、1,2−ジクロロベンゼン等の炭化水素系溶媒;例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶媒;例えば、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール等のアルコール系溶媒;例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル系溶媒;例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒などを用いることができる。
水及び/又は有機溶媒中の前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物の濃度は、特に限定されず、用途によって異なる。
【0091】
[化合物から溶媒可溶性基を脱離させる工程]
前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物またはそれらの溶液を用いて塗布などの処理を行った後、熱分解、光分解及び/又は化学分解によりこれらの化合物から置換基の一部もしくは全部を脱離させて前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物を得ることができる。すなわち、前記一般式(3)で表される化合物における置換基のうち−S(O)aR2基のみが脱離されて前記一般式(1)で表される化合物が得られるとともに、前記一般式(4)で表される化合物における−S(O)aR2基が脱離されて前記一般式(2)で表される化合物が得られる。前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物はそれぞれ、溶媒可溶性基(−S(O)aR2基)を脱離することで、溶媒不溶性の前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物に転換される。
【0092】
本発明における熱分解は、好ましくは200℃以上、より好ましくは250℃以上に加熱することで引き起こすことができる。加熱温度の上限は、好ましくは550℃以下、より好ましくは400℃以下である。高温であるほど反応時間は短く、低温であるほど脱離反応に必要な時間は長くなる。
用途によっては、加熱温度や加熱時間を変えることで、前記一般式(1)で表される化合物の生成量と前記一般式(2)で表される化合物の生成量とを調整して、組成物の特性を調整することも可能である。
加熱にはヒーターを用いた伝熱による加熱の他、赤外線ランプや、化合物が吸収する波長の光を照射することを利用してもよい。その際に半導体レーザーを用いてもよい。また、前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物の近傍に光を吸収する層を設け、光をこの層で吸収させることにより加熱してもよい。これらの加熱は、窒素やアルゴンなどの不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
【0093】
上記のような熱処理の他、光分解処理(たとえば405nm以下の波長に露光)するか、又は化学分解(有機又は無機酸・塩基使用)することによって実施することができる。これらの変換方法を組み合わせることもできる。
【0094】
光分解処理の場合、赤外線ランプや、化合物が吸収する波長の光を照射すること(例えば405nm以下の波長に露光)等を利用してもよい。その際に半導体レーザーを用いてもよい。例えば、近赤外域のレーザー光(通常は780nm付近の波長のレーザー光)、可視レーザー光(通常は、630nm〜680nmの範囲の波長のレーザー光)、波長390〜440nmのレーザー光が挙げられる。
最も好ましくは波長390〜440nmのレーザー光であり、440nm以下の範囲の発振波長を有する半導体レーザー光が好適に用いられる。中でも好ましい光源としては、390〜440(更に好ましくは390〜415nm)の範囲の発振波長を有する青紫色半導体レーザー光、中心発振波長850nmの赤外半導体レーザー光を光導波路素子を使って半分の波長にした中心発振波長425nmの青紫色SHGレーザー光を挙げることができる。
【0095】
また、化学分解の場合に好ましく用いることができる有機又は無機の酸又は塩基としては、例えば酸として、鉱酸類(例えば硫酸、塩酸、臭化水素酸、硝酸、リン酸等)、有機カルボン酸類(例えば酢酸、蓚酸、ギ酸、プロピオン酸、安息香酸等)、又はスルホン酸類(例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等)を用いるのが好ましく、より好ましくは硫酸、塩酸、臭化水素酸または酢酸であり、最も好ましくは硫酸または塩酸である。なおこれらの酸は、単独または二種以上を混合して使用しても良い。塩基として好ましくは、有機塩基、アルキルメタル、メタルハイドライド(例えばナトリウムハイドライド等)等である。更に好ましくはトリエチルアミン、ピリジン又はナトリウムハイドライドである。最も好ましくはトリエチルアミン又はピリジンである。
【0096】
前記一般式(3)で表される化合物は、下記一般式(5)で表される化合物および下記一般式(6)で表される化合物から合成することができる。また、前記一般式(4)で表される化合物は、下記一般式(5)で表される化合物から合成することができる。
以下に、下記一般式(5)で表される化合物および下記一般式(6)で表される化合物について説明する。
【0097】
【化21】
【0098】
【化22】
【0099】
(一般式(5)及び(6)中、Qは芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環を形成するのに必要な原子群を表す。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。R3及びR4は各々独立に置換基を表し、同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。xは1〜4の整数、yは1〜4の整数、及びzは0〜3の整数を表し、かつy+z=xの関係を満たす。x、y又はzが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、Qにより形成される芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【0100】
前記一般式(5)及び(6)において、R1、R2及びaは、それぞれ前記一般式(3)及び(4)におけるR1、R2及びaと同義であり、好ましい範囲も同様である。また、Qにより形成される芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環は、先述と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0101】
R3及びR4は置換基を表し、同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。
ここで、R3及びR4は、−CN(シアノ)基、−CO2H(カルボキシル)基、又は−CO2NH2(カルボキシルアミノ)基であることが好ましく、互いに連結して環を形成する場合には下記一般式(7)〜(10)のいずれかで表される骨格に限定される。下記一般式(7)〜(10)のいずれかで表される骨格は、Qにより形成される環がベンゼン環である場合、それぞれ無水フタル酸骨格、フタルイミド骨格、1−アミノ−3−イミノイソインドレニン骨格、1−アルコキシ−3−イミノイソインドレニン骨格である。
【0102】
【化23】
【0103】
前記一般式(7)〜(10)において、Qは、それぞれ前記一般式(5)又は(6)におけるQと同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記一般式(10)中、R8は、先述のR1で挙げたものと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0104】
前記一般式(5)及び(6)において、xは1から4までの整数であり、好ましくは1〜2、さらに好ましくは1である。yは1から4の整数であり、好ましくは1〜2、さらに好ましくは1である。zは0〜3の整数であり、好ましくは0〜1、さらに好ましくは0である。ただし、x、y及びzはy+z=xの関係を満たす。
x、y又はzが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、Qにより形成される芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。
【0105】
(フタロシアニン化合物の合成法)
フタロシアニン化合物のフタロシアニン環形成反応は、白井汪芳,小林長夫編・著「フタロシアニン−化学と機能−」(アイピーシー社,1997年刊)の第1〜62頁、廣橋亮,坂本恵一,奥村映子編「機能性色素としてのフタロシアニン」(アイピーシー社,2004年刊)の第29〜77頁に準じて行うことができる。
【0106】
フタロシアニン化合物の代表的な合成方法としては、これらの文献に記載のワイラー法、フタロニトリル法、リチウム法、サブフタロシアニン法、および塩素化フタロシアニン法などが挙げられる。本発明においては、フタロニトリル法を好ましく用いることができる。フタロシアニン環形成反応において、いかなる反応条件を用いても良い。環形成反応においては、フタロシアニンの中心金属となる種々の金属を添加することが好ましいが、中心金属を持たないフタロシアニン化合物を合成後に、所望の金属を導入しても良い。反応溶媒としては、いかなる溶媒を用いても良いが、好ましくは高沸点の溶媒である。また、環形成反応促進のために、酸または塩基を用いても良い。最適な反応条件は、目的とするフタロシアニン化合物の構造により異なるが、上記の文献に記載された具体的な反応条件を参考に設定することができる。
【0107】
上記のフタロシアニン化合物の合成に使用する原料としては、無水フタル酸、フタルイミド、無水フタル酸およびその塩、フタル酸ジアミド、フタロニトリル、1,3−ジイミノイソインドリンなどの誘導体を用いることができる。これらの原料は公知のいかなる方法で合成しても良い。
【0108】
本発明では、前記一般式(5)で表される化合物および前記一般式(6)で表される化合物を用いて、前記一般式(3)で表される化合物(フタロシアニン化合物)を合成することができる。また、前記一般式(5)で表される化合物を用いて、前記一般式(4)で表される化合物(フタロシアニン化合物)を合成することができる。
前記一般式(3)で表される化合物は、前記一般式(5)で表される化合物の一部を前記一般式(6)で表される化合物に変換させながら、もしくは前記一般式(5)で表される化合物に前記一般式(6)で表される化合物を混合して、前記一般式(5)で表される化合物と前記一般式(6)で表される化合物との環形成反応を行うことにより得られる。
【0109】
前記一般式(5)で表される化合物を前記一般式(6)で表される化合物に変換させる方法としては、前記一般式(5)で表される化合物を用いて、塩基性条件下、アルコール溶媒中で環形成反応を行う。これにより、前記一般式(5)で表される化合物の一部の置換基が変性し、前記一般式(6)で表される化合物に変換される。
塩基としては、好ましくはメタルアルコキシド(例えばナトリウムアルコキシド、リチウムアルコキシド等)、アルコール溶媒中から形成されるアルコキシド誘導体、アルキルメタル(例えばメチルリチウム、n−ブチルリチウム等)、有機強塩基、たとえば1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンや1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン等を用いることができる。更に好ましくはメタルアルコキシドであり。最も好ましくはナトリウムアルコキシドやその溶液である。
アルコール溶媒としては本反応を阻害するものでなければどのような溶媒でもよく、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、2−メチルアミノエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等が挙げられる。
【0110】
前記一般式(5)で表される化合物と前記一般式(6)で表される化合物との環形成反応における溶媒の使用量は、原料基質(前記一般式(5)で表される化合物と前記一般式(6)で表される化合物との総和)の1〜100質量倍が好ましく、より好ましくは3〜50質量倍である。最も好ましくは5〜20質量倍である。
【0111】
前記一般式(5)で表される化合物と前記一般式(6)で表される化合物との環形成反応における反応温度は、用いる反応剤の種類により最適温度は異なるが、−20℃〜200℃で行うのが好ましく、より好ましくは0℃〜170℃である。最も好ましくは20℃〜150℃である。
【0112】
(ポルフィリン化合物の合成法)
ポルフィリン化合物およびテトラベンゾポルフィリン化合物の合成法については、例えば、KARL M.,KADIS H.,KEVIN M.,SMITH ROGER GUILARD著、「THE PORPHYRIN HANDBOOK」、VOL.1、ACADEMIC PRESS(2000)に記述されている方法を参照することができる。
【0113】
[結晶系制御方法]
前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物を加熱等することによりこれらの化合物から置換基を脱離させることで、前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物を得、前記一般式(2)で表される化合物に結晶系安定化剤として前記一般式(1)で表される化合物を含んだ組成物、換言すれば、結晶系の制御された前記一般式(2)で表される化合物を得ることができる。本発明の方法によれば、前記一般式(2)で表される化合物の結晶系を前記一般式(1)の化合物を添加することにより制御することができる。前記一般式(4)で表される化合物はアモルファスの結晶構造を示すが、前記一般式(4)で表される化合物における置換基を脱離して前記一般式(2)で表される化合物に転換することで結晶転移が起こる。例えば、銅フタロシアニンは同質異晶を示し、α、β、ε、γ、δ、π、χ、R等の結晶が報告されている(例えば、「機能性色素としてのフタロシアニン基礎編・応用編」(アイピーシー)を参照)。本発明で制御できる結晶系は好ましくはα、β、εであり、より好ましくはαとβである。
特に、準安定のα型結晶は、従来アシッドペースト法により作成していたため結晶子が小さく、X線回折測定結果のピークがブロードになっていたが、本発明では、加熱等によって、半値幅が小さいシャープなピークの、高次に成長した結晶子が大きいα型結晶を効率よく作製することができる。
【0114】
[顔料分散方法]
本発明の結晶系安定組成物が色素(特に顔料)である場合、顔料が溶媒可溶性基により修飾された構造の顔料前駆体(前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物)を溶媒に溶解させた後、加熱などの外部刺激を与えることで顔料(前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物からなる顔料)に転換させ、溶媒中に顔料微粒子が分散した顔料分散液を得ることができる。
得られた顔料粒子は、例えば、塗料、印刷インク、電子写真用トナー、インクジェットインク、カラーフィルタなどの用途に好ましく用いることができる。
【0115】
[画像形成方法]
本発明の結晶系安定組成物の色素の用途としては、画像、特にカラー画像を形成するための画像記録材料が挙げられ、具体的には、以下に詳述するインクジェット方式記録材料を始めとして、感熱記録材料、感圧記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等があり、好ましくはインクジェット方式記録材料、感熱記録材料、電子写真方式を用いる記録材料であり、更に好ましくはインクジェット方式記録材料である。
また、CCDなどの固体撮像素子やLCD、PDP等のディスプレーで用いられるカラー画像を記録・再現するためのカラーフィルタ、各種繊維の染色の為の染色液にも適用できる。
本発明の結晶系安定組成物(色素)は、その用途に適した溶媒可溶性、分散性、熱移動性などの物性を、置換基で調整して使用する。また、本発明の結晶系安定組成物(色素)は、用いられる系に応じて溶解状態、乳化分散状態、さらには固体分散状態でも使用することができる。
【0116】
(インク)
本発明の結晶系安定組成物の製造方法を利用することで、インクを作製することができる。当該インクは、少なくとも一種の本発明の結晶系安定組成物(色素)を含有するインクを意味する。
インクは、媒体を含有させることができるが、媒体として溶媒を用いた場合は特にインクジェット記録用インクとして好適である。インクは、媒体として、親油性媒体や水性媒体を用いて、それらの中に、本発明の結晶系安定組成物(色素)を溶解及び/又は分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いる場合である。インクには、媒体を除いたインク用組成物も含まれる。
インクは、必要に応じてその他の添加剤を含有しうる。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤(特開2003−306623号公報に記載)が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加する。油溶性染料を分散物の形で用いる場合には、染料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0117】
本発明の結晶系安定組成物(色素)を水性媒体に分散させる場合は、特開平11−286637号公報,特開2001−240763号公報,特開2001−262039号公報,特開2001−247788号公報に記載されているように、色素と油溶性ポリマーとを含有する着色微粒子を水性媒体に分散させたり、特開2001−262018号公報,特開2001−240763号公報,特開2001−335734号公報に記載されているように、高沸点有機溶媒に溶解した本発明の結晶系安定組成物(色素)を水性媒体中に分散させたりすることが好ましい。本発明の結晶系安定組成物(色素)を水性媒体に分散させる場合の具体的な方法、使用する油溶性ポリマー、高沸点有機溶剤、添加剤及びそれらの使用量は、前記特許文献に記載されたものを好ましく使用することができる。あるいは、前記色素を固体のまま微粒子状態に分散してもよい。分散時には、分散剤や界面活性剤を使用することができる。
【0118】
分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル等)、超音波方式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000(商品名)等)を使用することができる。上記のインクジェット記録用インクの調製方法については、先述の特許文献以外にも特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号、同11−286637号、特開2001−271003号の各公報に詳細が記載されており、本発明の結晶系安定組成物(色素)を用いたインクジェット記録用インクの調製にも利用できる。
【0119】
前記水性媒体は、水を主成分とし、所望により、水混和性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。前記水混和性有機溶剤の例は特開2003−306623号公報に記載のものが使用できる。尚、前記水混和性有機溶剤は、二種類以上を併用してもよい。
【0120】
インクジェット記録用インク100質量部中に、本発明の結晶系安定組成物(色素)を0.1質量部以上20質量部以下含有するのが好ましく、0.2質量部以上10質量部以下含有するのがより好ましく、0.5〜9質量部含有するのがさらに好ましい。また、インクジェット用インクには、本発明の結晶系安定組成物(色素)とともに、他の色素を併用してもよい。2種類以上の色素を併用する場合は、色素の含有量の合計が前記範囲となっているのが好ましい。
【0121】
インクは、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクを用いることができ、また、色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。
【0122】
さらに、インクジェット記録用インクは、本発明の結晶系安定組成物(色素)の他に別のシアン染料を同時に用いることが出来る。適用できるイエロー染料、適用できるマゼンタ染料、適用できるシアン染料としては、各々任意のものを使用することができるが、特開2003−306623号公報の段落番号0090〜0092に記載の各染料が利用できる。適用できる黒色材としては、ジスアゾ、トリスアゾ、テトラアゾ染料のほか、カーボンブラックの分散体を挙げることができる。
【0123】
[インクジェット記録方法]
インクジェット記録方法は、前記インクジェット記録用インクにエネルギーを供与して、公知の受像材料、即ち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載されているインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に画像を形成する。なお、インクジェット記録方法として特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105の記載が適用できる。
【0124】
画像を形成する際に、光沢性や耐水性を与えたり耐候性を改善する目的からポリマーラテックス化合物を併用してもよい。ラテックス化合物を受像材料に付与する時期については、着色剤を付与する前であっても、後であっても、また同時であってもよく、したがって添加する場所も受像紙中であっても、インク中であってもよく、あるいはポリマーラテックス単独の液状物として使用しても良い。具体的には、特開2002−166638号公報、特開2002−121440号公報、特開2002−154201号公報、特開2002−144696号公報、特開2002−080759号公報、特願2000−299465号明細書、特願2000−297365号明細書に記載された方法を好ましく用いることができる。
【0125】
[カラートナー]
カラートナー100質量部中における本発明の結晶系安定組成物(色素)の含有量は特に制限がないが、0.1質量部以上含有するのが好ましく、1〜20質量部がより好ましく、2〜10質量部含有するのが最も好ましい。
本発明の結晶系安定組成物(色素)を導入するカラートナー用バインダー樹脂としては一般に使用されるすべてのバインダーが使用できる。例えば、スチレン系樹脂・アクリル系樹脂・スチレン/アクリル系樹脂・ポリエステル樹脂等が挙げられる。
トナーに対して流動性向上、帯電制御等を目的として無機微粉末、有機微粒子を外部添加しても良い。表面をアルキル基含有のカップリング剤等で処理したシリカ微粒子、チタニア微粒子が好ましく用いられる。なお、これらは数平均一次粒子径が10〜500nmのものが好ましく、さらにはトナー中に0.1〜20質量%添加するのが好ましい。
【0126】
離型剤としては、従来使用されている離型剤は全て使用することができる。具体的には、低分子量ポリプロピレン・低分子量ポリエチレン・エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン類、マイクロクリスタリンワックス・カルナウバワックス・サゾールワックス・パラフィンワックス等が挙げられる。これらの添加量はトナー中に1〜5質量%添加することが好ましい。
【0127】
荷電制御剤としては、必要に応じて添加しても良いが、発色性の点から無色のものが好ましい。例えば4級アンモニウム塩構造のもの、カリックスアレン構造を有するものなどが挙げられる。
【0128】
キャリアとしては、鉄・フェライト等の磁性材料粒子のみで構成される非被覆キャリア、磁性材料粒子表面を樹脂等によって被覆した樹脂被覆キャリアのいずれを使用してもよい。このキャリアの平均粒径は体積平均粒径で30〜150μmが好ましい。
【0129】
トナーが適用される画像形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば感光体上に繰り返しカラー画像を形成した後に転写を行って画像を形成する方法や、感光体に形成された画像を逐次中間転写体等へ転写し、カラー画像を中間転写体等に形成した後に紙等の画像形成部材へ転写しカラー画像を形成する方法等が挙げられる。
【0130】
[感熱記録(転写)材料]
感熱記録材料は、支持体上に本発明の結晶系安定組成物(色素)をバインダーとともに塗設したインクシート、及び画像記録信号に従ってサーマルヘッドから加えられた熱エネルギーに対応して移行してきた色素を固定する受像シートから構成される。インクシートは、本発明の組成物をバインダーと共に溶剤中に溶解することによって、或いは溶媒中に微粒子状に分散させることによってインク液を調製し、該インクを支持体上に塗布して適宜に乾燥することにより形成することができる。支持体上のインクの塗布量は特に制限するものではないが、好ましくは30〜1000mg/m2である。好ましいバインダー樹脂、インク溶媒、支持体、更には受像シートについては、特開平7−137466号公報に記載されたものを好ましく用いることができる。
【0131】
該感熱記録材料をフルカラー画像記録が可能な感熱記録材料に適用するには、シアン画像を形成することができる熱拡散性シアン色素を含有するシアンインクシート、マゼンタ画像を形成することができる熱拡散性マゼンタ色素を含有するマゼンタインクシート、イエロー画像を形成することができる熱拡散性イエロー色素を含有するイエローインクシートを支持体上に順次塗設して形成する事が好ましい。また、必要に応じて他に黒色画像形成物質を含むインクシートがさらに形成されていても良い。
【0132】
[カラーフィルタ]
カラーフィルタの形成方法としては、初めにフォトレジストによりパターンを形成し、次いで染色する方法、或いは特開平4−163552号、同4−128703号、同4−175753号等の各公報で開示されているように色素を添加したフォトレジストによりパターンを形成する方法がある。本発明の結晶系安定組成物(色素)をカラーフィルタに導入する場合に用いられる方法としては、これらのいずれの方法を用いても良いが、好ましい方法としては、特開平4−175753号公報や特開平6−35182号公報に記載されたところの、熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、色素及び溶剤を含有してなるポジ型レジスト組成物、並びに、それを基体上に塗布後、マスクを通して露光し、該露光部を現像してポジ型レジストパターンを形成させ、上記ポジ型レジストパターンを全面露光し、次いで露光後のポジ型レジストパターンを硬化させることからなるカラーフィルタの形成方法を挙げることができる。また、常法に従いブラックマトリックスを形成させ、RGB原色系あるいはY、M、C補色系カラーフィルタを得ることができる。カラーフィルタの場合も色素の使用量の制限はないが0.1〜50質量%が好ましい。
【0133】
この際使用する熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、及び溶剤とそれらの使用量については、前記特許文献に記載されているものを好ましく使用することができる。
【0134】
[薄膜形成方法]
本発明の結晶系安定組成物の製造方法を利用して、前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物を基板上に塗布し、乾燥させてから加熱等することにより、本発明の結晶系安定組成物の薄膜を形成することができる。
【0135】
(基板)
本発明においては、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、セラミック、シリコン、石英、ガラスなどの種々の材料を基板として用いることができる。好ましくはセラミック、シリコン、石英またはガラスであり、より好ましくはシリコン、石英またはガラスである。また、用途に応じていかなる基板を選択してもよい。例えば、フレキシブルな素子の用途の場合にはフレキシブル基板を用いることができる。
また、基板の厚さは、特に限定されないが、好ましくは1〜1000μmであり、より好ましくは10〜800μmである。
【0136】
(成膜方法)
本発明において、前記化合物を基板上に成膜する方法はいかなる方法でも良く、真空プロセスまたは溶液プロセスにより成膜することができるが、溶液プロセスにより成膜することが特に好ましい。
真空プロセスによる成膜の具体的な例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、分子ビームエピタキシー(MBE)法などの物理気相成長法あるいはプラズマ重合などの化学気相蒸着(CVD)法が挙げられる。
溶液プロセスによる成膜とは、ここでは水もしくは有機化合物を溶解させることができる溶媒中に溶解させ、その溶液を基板上に塗布し乾燥させて成膜する方法を指す。具体的には、キャスト法、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、ディッピング(浸漬)コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、インクジェット法、スピンコート法、ラングミュア−ブロジェット(Langmuir-Blodgett)(LB)法などの通常の方法を用いることができる。本発明においては、キャスト法、スピンコート法、およびインクジェット法を用いることがさらに好ましい。このような溶液プロセスにより、表面が平滑で大面積の薄膜を低コストで生産することが可能となる。
【0137】
(塗布条件)
溶液プロセスにより基板上に成膜する場合、層を形成する材料を適当な有機溶媒(例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1−メチルナフタレン、1,2−ジクロロベンゼン等の炭化水素系溶媒;例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶媒;例えば、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール等のアルコール系溶媒;例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル系溶媒;例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルフォキサイド等の極性溶媒など)及び/又は水に溶解又は分散させて塗布液とし、各種の塗布法により薄膜を形成することができる。
その塗布液中の前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物の合計の濃度は、好ましくは0.1〜80質量%、より好ましくは0.1〜10質量%であり、これにより任意の厚さの膜を形成できる。
【0138】
前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物は、特に溶液プロセスによる成膜に適している。溶液プロセスで成膜するためには、上記で挙げた溶媒などに材料が溶解することが必要であるが、単に溶解するだけでは不十分である。通常、真空プロセスで成膜する材料でも、溶媒にある程度溶解させることができる。しかし、溶液プロセスでは、材料を溶媒に溶解させて塗布した後で、溶媒が蒸発して薄膜が形成する過程があり、溶液プロセスに適さない材料は結晶性が高いものが多いため、この過程で結晶化してしまい良好な薄膜を形成させることが困難である。前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物は、このような結晶化が起こりにくい点でも優れている。
【0139】
また、成膜の際に樹脂バインダーを用いることも可能である。この場合、層を形成する材料とバインダー樹脂とを前述の適当な溶媒に溶解させ、または分散させて塗布液とし、各種の塗布法により薄膜を形成することができる。樹脂バインダーとしては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン等の絶縁性ポリマー、およびこれらの共重合体、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン等の光伝導性ポリマー、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレン等の導電性ポリマーなどを挙げることができる。樹脂バインダーは、単独で使用してもよく、あるいは複数併用しても良い。薄膜の機械的強度を考慮するとガラス転移温度の高い樹脂バインダーが好ましい。
樹脂バインダーは使わない方が有機半導体の特性上好ましいが、目的によっては使用することもある。この場合の樹脂バインダーの使用量は、特に制限はないが、薄膜中、好ましくは0.1〜10質量%で用いられる。
【0140】
また、成膜の際、基板を加熱または冷却してもよく、基板の温度を変化させることで膜質や膜中での分子のパッキングを制御することが可能である。基板の温度としては特に制限はないが、0℃〜200℃の間であることが好ましい。
【0141】
(膜厚)
膜厚は、用途によって異なり、特に制限はないが、好ましくは5nm〜50μm、より好ましくは20nm〜500nmである。
【0142】
(膜の後処理)
作製された膜は、後処理により調整することができる。例えば、加熱処理や溶媒蒸気への暴露により膜のモルホロジーや膜中での分子のパッキングを変化させることで特性を向上させることが可能である。また、酸化性または還元性のガスや溶媒、物質などにさらす、あるいはこれらを混合することで酸化あるいは還元反応を起こし、膜中での会合状態を調整することができる。
【0143】
[表面改質方法]
ところで、酸化チタンは、太陽光線(紫外線)の照射によって化学反応を起こす「光触媒」として様々な素材に用いられている。これは酸化力が最も強く、毒性がなく、化学的にも安定していることから、食品や化粧品など幅広い用途に使われている。一方、本発明により得られる銅フタロシアニンは一重項酸素の発生能が高く、有機物を分解することができるため、酸化チタンと同様に使用することができる。
したがって、本発明の結晶系安定組成物の製造方法を利用して、前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物を物質上に塗布し、乾燥させてから加熱等することで、本発明の結晶系安定組成物の薄膜を物質の表面に形成することができる。すなわち、これにより物質表面に耐光性・耐水性の極めて高い顔料薄膜が形成されるので、物質表面を改質することができる。ここで、表面改質が行われる物質としては、特に限定されないが、例えば、酸化物/酸化膜(ZrO2、TiO2、Al2O3、AgO、CuO、Ta2O5、Zr/Al2O3、ガラス、マイカ、SiO2、SnO2、GeO2、ZrO2、ITO)などが好ましく適用される。また基板最表層をオゾン処理して水酸基を基板上にあらわにさせる方法を用いることができる、また例えば、金属表面上に水酸基含有のアルカンチオールの自己集積単分子膜(SAM)を形成した表面を用いることもできる。
【実施例】
【0144】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0145】
実施例1
特開2005−119165号公報の記載に従って、α−t−ブチルスルホニル置換フタロニトリル4mmol、塩化第二銅1mmolをブタノール10mlに添加し、80℃まで加熱したところでジアザビシクロウンデセン(DBU)10mmolを滴下した。そのまま7時間加熱攪拌を続けた後に濾過し、メタノールで洗浄して、α−テトラ−t−ブチルスルホニル置換銅フタロシアニン(化合物1)を68%の収率で得た。
【0146】
得られた生成物について、MALDI−MSによる分析を行った。MALDI−MS分析は、Applied Biosystems社製Voyager−DE PRO(商品名)を使用して行った。スペクトル測定結果を図1に示す。図1から明らかなように、化合物1のイオンピーク[M++1]=1056の他に、α−モノブトキシ−α−トリ−t−ブチルスルホニル置換銅フタロシアニン(例示化合物(B−1))のイオンピーク[M++1]=1008が検出された。このことから、本実施例では、化合物1が生成するだけでなく、わずかながら例示化合物(B−1)も生成していることがわかった。例示化合物(B−1)は、強塩基条件であるために、アルキルスルホニル基置換フタロニトリルの一部がブトキシアニオンの求核攻撃を受けてブトキシフタロニトリルに変化し、その後にフタロシアニン環を形成して生成したものと考えられる。
【0147】
比較例1
α−t−ブチルスルホニル置換フタロニトリル4mmol、酢酸第二銅1mmolをジエチレングリコール15ml及び1−メトキシ−2−プロパノール(MFG)50mlに添加し、115℃まで加熱したところで安息香酸アンモニウム4mmolを添加した。そのまま6時間加熱攪拌を続けた後にメタノールを加え濾過して、α−t−ブチルスルホニル置換銅フタロシアニン(化合物1)を34%の収率で得た。
【0148】
得られた生成物について、実施例1と同様にして、MALDI−MSによる分析を行った。スペクトル測定結果を図2に示す。図2から明らかなように、比較例1では、化合物1のイオンピーク[M++1]=1056が検出されたが、他のフタロシアニン化合物のイオンピークは検出されなかった。比較例1では、穏和な条件(バッファー)であるために、アルキルスルホニル基置換フタロニトリルの置換基の損失がなく、化合物1のみが生成したものと考えられる。
【0149】
なお、実施例1および比較例1の生成物について、それぞれ液体クロマトグラフィーによる分析を行ったが、例示化合物(B−1)の極性が化合物1の極性とほぼ同じであり、構造異性体も多数含有されるため、液体クロマトグラフィー分析では実施例1の生成物と比較例1の生成物との明確な相違が測定できなかった。
【0150】
実施例2
実施例1で得られた生成物を400℃で加熱して銅フタロシアニンを得た。得られた銅フタロシアニンを、プロパンスルホン酸に溶解させ、クロロホルム溶媒で順層カラムを用いて液体クロマトグラフィー測定を行った。測定結果を図3に示す。また、実施例1と同様にして、MALDI−MSによる分析を行った。スペクトル測定結果を図4A及び4Bに示す。図4Bは、図4Aにおける質量数600〜680付近の部分拡大図である。一方、対照として、東京化成社製銅フタロシアニンについても同様にして液体クロマトグラフィー測定を行った。測定結果を図3に示す。
図3の結果から明らかなように、保持時間11.5分付近のピークを基準として正規化した場合に、東京化成社製銅フタロシアニン(対照)と比較して、本実施例では、9.5分付近、10.5分付近にそれぞれ0.9%、6.0%の低極性化合物のピークが検出された。また、図4A及び4Bの結果から明らかなように、[M+]に相当する647のピークが検出された。このピークは一置換ブトキシ基置換銅フタロシアニン(例示化合物(A−1))に対応する。これらの結果から、本実施例では、銅フタロシアニンだけでなくブトキシ基置換銅フタロシアニン(例示化合物(A−1))も存在することが分かった。特に、保持時間9.5分付近で検出されたピークは、二置換ブトキシ基置換銅フタロシアニン(例示化合物(A−2))であり、保持時間10.5分付近で検出されたピークは、一置換ブトキシ基置換銅フタロシアニン(例示化合物(A−1))であると考えられる。
【0151】
実施例3、比較例2及び3
実施例1および比較例1で得られた生成物をそれぞれ350℃で焼成して銅フタロシアニンを得た(実施例3および比較例2)。
また、α型銅フタロシアニンの一般的な工業的製造法であるアシッドペースティング法により微細α型銅フタロシアニン結晶を調製した。具体的には、東京化成社製β型銅フタロシアニン2.5gを濃硫酸25mlに溶解させた後に、0℃で500mlの水中に注入して、微細α型銅フタロシアニン結晶を得た(比較例3)。
【0152】
得られた銅フタロシアニンについてX線粉末回折を行った。X線回折測定は、Rigaku社製X−ray DIFFRACTOMETER RINT−2500(商品名)を使用した。実施例3の測定結果を図5に、比較例2の測定結果を図6にそれぞれ示す。
また、対照として、東京化成社製α型銅フタロシアニン結晶についても上記と同様にしてX線粉末回折を行った。実施例3および比較例2の測定結果との対比をそれぞれ図7及び8に示す。また、実施例3の測定結果と比較例3の測定結果との対比を図9に示す。
【0153】
図5〜9の結果から明らかなように、実施例3では、銅フタロシアニン顔料のα型銅フタロシアニンの結晶型を示し、特に回折角2θ=6.9°、7.4°の二本のピークが検出された。これは面指数(200)、(002)に対応し、このことから、実施例3ではb軸方向に大きな結晶子が成長していることがわかった。一方、比較例2及び3では、ピークの半値幅が大きく、実施例3で検出されたようなシャープな複数のピークが検出されずにブロードなピークが検出された。
【0154】
実施例3および比較例2のα型銅フタロシアニン結晶ならびに東京化成社製α型銅フタロシアニン結晶(対照)のサイズ及び凝集状態を比較するために、走査型電子顕微鏡法(SEM)を用いて粒子形状を観察した。走査型電子顕微鏡法は以下のようにして測定した。日立ハイテク社製S−3400型(商品名)を用いて粉末の表面を観測した。撮影条件は加速電圧10kV、二次電子像を検出器とし、ランダムパターンで傾斜角度は0°、撮影倍率は5000倍とした。結果を図10〜12に示す。
図10〜12の結果から明らかなように、比較例2の結晶(図11参照)および対照の結晶(図12参照)に比べて、実施例3のα型銅フタロシアニン結晶(図10参照)は大きな結晶子を有することが分かった。
【0155】
従来、不安定構造である銅フタロシアニンのα型結晶で大きな結晶子を作製することは困難であったが、本発明によれば、前記一般式(1)で表される化合物が結晶系安定化剤として作用し、大きな結晶子を有するα型結晶を効率よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】実施例1で得られた生成物のMALDI−MSスペクトル図である。
【図2】比較例1で得られた生成物のMALDI−MSスペクトル図である。
【図3】実施例2で得られた生成物および対照の銅フタロシアニンの液体クロマトグラフィー測定結果を示す図である。
【図4A】実施例2で得られた生成物のMALDI−MSスペクトル図である。
【図4B】図4Aの部分拡大図である。
【図5】実施例3で得られた銅フタロシアニンのX線粉末回折のチャート図である。
【図6】比較例2で得られた銅フタロシアニンのX線粉末回折のチャート図である。
【図7】実施例3で得られた銅フタロシアニンおよび対照の銅フタロシアニンのX線粉末回折のチャート図である。
【図8】比較例2で得られた銅フタロシアニンおよび対照の銅フタロシアニンのX線粉末回折のチャート図である。
【図9】実施例3で得られた銅フタロシアニンおよび比較例3で得られた銅フタロシアニンのX線粉末回折のチャート図である。
【図10】実施例3で得られたα型銅フタロシアニン結晶のSEM写真である。
【図11】比較例2で得られたα型銅フタロシアニン結晶のSEM写真である。
【図12】対照のα型銅フタロシアニン結晶のSEM写真である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フタロシアニン化合物又はポルフィリン化合物における特定の不安定型結晶系(具体的にはα型結晶系)を安定化した組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅フタロシアニン顔料において工業的にもっとも重要な結晶型はβ型及びα型である。β型は熱力学的に最も安定な構造であって、不安定なα型と比較すると24kcal/molのエネルギー差がある(例えば、非特許文献1を参照)。
【0003】
銅フタロシアニン顔料は、熱、有機溶剤との接触、機械的剪断力により容易に他の結晶型に変化し、β型とα型との中間に多くの準安定状態の結晶型が存在する。α型の銅フタロシアニン顔料の工業的製造法は、アシッドペースティング法もしくはアシッドスラリー法とよばれ銅フタロシアニンを濃硫酸に溶解した後に水で希釈することにより得られる。この不安定なα型の銅フタロシアニンを安定化するために、下記のようなフタロシアニン化合物を結晶系安定化剤として用いることが知られている(例えば、特許文献1及び2、非特許文献2〜5を参照)。
【化1】
【0004】
しかし、これらのフタロシアニン化合物はいずれも溶媒に不溶であり、混合するための方法としては硫酸に溶解させたり、もしくはボールミルやニーダーなどの機械的剪断力を用いたりすることが必要であった。そのため、副生物の懸念や均一な混合の点で問題があり、高次の不安定型結晶(α型結晶)を得ることは困難であった。また上記のような結晶系安定化剤を用いる場合、均一な薄膜を得ることは困難であった。
【0005】
【特許文献1】特公昭39−28884号公報
【特許文献2】特開昭57−42770号公報
【非特許文献1】Beynon,J.H.,Humphries,A.R.,「Trans.Faraday Soc.」,Vol.51,p.1065,(1955)
【非特許文献2】社団法人色材協会・顔料技術研究会・日本顔料技術協会主催 第43回顔料入門講座テキスト、2001年9月4日〜9月12日
【非特許文献3】彦坂道邇、林三樹夫、「最新粉体の材料設計」、テクノシステム、p.489-514、(1988)
【非特許文献4】望月明光、「最新顔料分散技術」、科学情報協会、p.31-44、(1993)
【非特許文献5】K.Yase,「Acta.Cryst.C」,Vol.44,p.514,(1988)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の技術的背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、不安定な結晶系を有するフタロシアニン化合物又はポルフィリン化合物を安定化させた組成物およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、以上のような課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、従来とは異なる特定の置換基を有する化合物を結晶系安定化剤として用いることにより、溶解が容易でかつ溶液や塗膜に熱などの外部刺激を加えることにより置換基の脱離反応が効率的に進行するため均一に混合され、保存性が良好かつ高次に成長した不安定型フタロシアニン顔料を得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明の課題は、下記の手段によって解決された。
[1]下記一般式(1)で表される化合物を下記一般式(2)で表される化合物100質量部に対して0.01〜50質量部含有することを特徴とする結晶系安定組成物。
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1は水素原子または置換基を表す。nは1から16までの範囲の整数である。nが2以上の場合、複数の−OR1基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。)
[2]下記一般式(3)で表される化合物および下記一般式(4)で表される化合物を熱分解、光分解及び/又は化学分解することにより、これらの化合物から置換基を脱離させて前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物を得ることを特徴とする[1]項に記載の結晶系安定組成物の製造方法。
【0013】
【化4】
【0014】
【化5】
【0015】
(前記一般式(3)及び(4)中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。lは1〜15の整数を表し、mは1〜15の整数を表し、かつl+mは2〜16の整数を表す。pは1〜16の整数を表す。l、m又はpが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
[3]前記一般式(3)で表される化合物が、下記一般式(5)で表される化合物の一部を下記一般式(6)で表される化合物に変換させながらもしくは下記一般式(5)で表される化合物に下記一般式(6)で表される化合物を混合して、下記一般式(5)で表される化合物と下記一般式(6)で表される化合物との環形成反応を行うことにより得られることを特徴とする[2]項に記載の方法。
【0016】
【化6】
【0017】
【化7】
【0018】
(一般式(5)及び(6)中、Qは芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環を形成するのに必要な原子群を表す。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。R3及びR4は各々独立に置換基を表し、同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。xは1〜4の整数、yは1〜4の整数、及びzは0〜3の整数を表し、かつy+z=xの関係を満たす。x、y又はzが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、Qにより形成される芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
[4]前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物を熱分解、光分解及び/又は化学分解することにより、これらの化合物から置換基を脱離させて前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物を得、前記一般式(2)で表される化合物の結晶系を制御することを特徴とする前記一般式(2)で表される化合物の結晶系制御方法。
[5]前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物を水又は有機溶媒に溶解させた後、熱分解、光分解及び/又は化学分解によりこれらの化合物から置換基を脱離させて、前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物からなる顔料を前記の水又は有機溶媒中に分散させることを特徴とする顔料分散液の製造方法。
[6]前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物を熱分解、光分解及び/又は化学分解することにより、これらの化合物から置換基を脱離させて、前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物からなる顔料を得、画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
[7]前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物を基板上に塗布した後、熱分解、光分解及び/又は化学分解によりこれらの化合物から置換基を脱離させて、前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物からなる薄膜を形成することを特徴とする薄膜形成方法。
[8]前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物を物質上に塗布した後、熱分解、光分解及び/又は化学分解によりこれらの化合物から置換基を脱離させて、前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物からなる薄膜を前記物質の表面に形成し、前記物質の表面を改質することを特徴とする表面改質方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の方法によれば、不安定型結晶(α型結晶)を有するフタロシアニン化合物又はポルフィリン化合物を安定化させた結晶系安定組成物を製造することができる。本発明の結晶系安定組成物は、保存性が良好でかつ高次に成長した不安定型結晶(α型結晶)を有する。特にフタロシアニン化合物の場合、不安定型結晶(α型結晶)を有するフタロシアニン顔料として用いることができ、該顔料を均一に分散したインクを作製し、該インクを用いて画像を形成することもできる。また、本発明によれば、溶液プロセスによる成膜が可能で、不安定なα型結晶の均一な薄膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の結晶系安定組成物について説明する。まず、本発明の結晶系安定組成物に含まれる下記一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0021】
【化8】
【0022】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1は水素原子または置換基を表す。nは1から16までの範囲の整数である。nが2以上の場合、複数の−OR1基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【0023】
前記一般式(1)中、R1は水素原子または置換基を表す。
置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基等の環状構造を含む。)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基等の環状構造を含む。)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む。)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。
【0024】
さらに詳しくは、R1で表される置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、
【0025】
アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、
【0026】
アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5又は6員の置換もしくは無置換の、芳香族性もしくは非芳香族性のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、
【0027】
アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、
【0028】
カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
【0029】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、
【0030】
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−(n−オクチルオキシ)フェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、
【0031】
アルキル又はアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、
【0032】
スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル又はアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、
【0033】
アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、
【0034】
アリール又はヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)が挙げられる。
【0035】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていても良い。そのような置換基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。より具体的には、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0036】
ここでR1としては、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシル基、シリル基が挙げられる。好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基であり、特に好ましくは水素原子、炭素数1〜30の直鎖又は分枝のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基である。
【0037】
前記一般式(1)中、−OR1基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換することが好ましい。
【0038】
nは1から16までの範囲の整数である。nが2以上の場合、複数の−OR1基は同一でも異なっていてもよい。nは、好ましくは1から8までの範囲の整数であり、さらに好ましくは1から4までの範囲の整数である。
【0039】
前記一般式(1)中、Xは−N=又は−CH=を表す。Xが−N=を表す場合が好ましい。
【0040】
前記一般式(1)中、Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。ここで、芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環としては4〜10員環が好ましく、5〜7員環がより好ましく、5又は6員環がさらに好ましく、6員環が特に好ましい。
芳香族ヘテロ環に含まれるヘテロ原子は特に限定されないが、窒素、酸素、硫黄、セレン、ケイ素、ゲルマニウム又はリンが好ましく、窒素、酸素又は硫黄がさらに好ましく、窒素が特に好ましい。芳香族ヘテロ環ひとつに含有されるヘテロ原子数は特に限定されないが、1〜3が好ましい。
【0041】
芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環の具体例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。
芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環は、置換基を有していてもよく、置換基としては先述のR1で挙げたものが適用できる。
【0042】
芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環はさらに他の環と縮合環を形成してもよく、縮合する環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。上記の置換基および縮合環は、さらに置換基を有していてもよく、さらに他の環と縮合していてもよい。置換基としては、先述のR1として挙げたものが適用できる。
【0043】
芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環として好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、フラン環、チオフェン環であり、より好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、チオフェン環であり、さらに好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、チオフェン環であり、特に好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環である。
【0044】
前記一般式(1)中、Mは金属原子または水素原子を表す。Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。
Mが金属原子を表す場合、安定な錯体を形成するものであれば金属はいかなるものでも良く、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Ba、Al、Si、Hg、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Pd、Cd、Sn、Pt、Pb、Sr、V、Mn、Ti、In又はGaなどを使用することができる。金属原子には置換基が結合していてもよく、置換基としては、先述のR1で挙げたものを用いることができる。
Mとして好ましくはMg、Ca、AlCl、SiCl2、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、Sn、SnCl2、Pt、Pb、V=O、Mn又はTi=Oが用いられ、より好ましくはFe、Co、Ni、Cu又はZnが用いられ、特に好ましくはCu又はZnが用いられる。なお、Mが水素原子である場合も好ましく、Mが水素原子である場合の前記一般式(1)は下記一般式(1−a)で表される。
【0045】
【化9】
【0046】
前記一般式(1−a)において、Ra〜Rh、X、R1及びnは、それぞれ前記一般式(1)におけるRa〜Rh、X、R1及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0047】
前記一般式(1)で表される化合物としては、(a)Xが−N=を表し、かつ、Ra及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になってベンゼン環を形成するフタロシアニン化合物、(b)Xが−CH=を表し、かつ、Ra〜Rhがそれぞれ水素原子を表すポルフィリン化合物、及び(c)Xが−CH=を表し、かつ、Ra及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になってベンゼン環を形成するテトラベンゾポルフィリン化合物が特に好ましい。
【0048】
以下に、前記一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
表1にフタロシアニン化合物の具体例、表2にポルフィリン化合物の具体例、表3にテトラベンゾポルフィリン化合物の具体例をそれぞれ示す。表1〜3中、置換基の*印は、下記一般式(1A)で表されるフタロシアニン化合物、下記一般式(1B)で表されるポルフィリン化合物、又は下記一般式(1C)で表されるテトラベンゾポルフィリン化合物への結合部位を示す。また、Rα1〜Rα8、Rβ1〜Rβ8、Rm1〜Rm4又はRi1〜Ri8が無置換の場合、即ち水素原子が結合している場合は表記を省略している。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
(異性体の存在)
前記表1において、例えば「Rα1/Rα2」という表記は「Rα1又はRα2のいずれか一方」という意味を表しており、したがってこの表記のある化合物は置換位置異性体の混合物である。
例えば、例示化合物(A−2)の置換位置異性体としては、Rα1/Rα2とRα3/Rα4との組み合わせ、Rα1/Rα2とRα5/Rα6との組み合わせ、Rα1/Rα2とRα7/Rα8との組み合わせ、Rα3/Rα4とRα5/Rα6との組み合わせ、Rα3/Rα4とRα7/Rα8との組み合わせが
【化10】
に置換されているものが挙げられる。すなわち、例示化合物(A−2)の場合、フタロシアニンのα位のいずれか二つが
【化11】
に置換されていることを意味する。ここで、フタロシアニンのα位とは前記一般式(1A)におけるRα1〜Rα8が置換した位置であり、β位とはRβ1〜Rβ8が置換した位置である。
なお、前記表2及び3に示したポルフィリン化合物及びテトラベンゾポルフィリン化合物でも同様である。
【0053】
次に、本発明の結晶系安定組成物に含まれる下記一般式(2)で表される化合物について説明する。
【0054】
【化12】
【0055】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。)
【0056】
前記一般式(2)において、Ra〜Rh、X、N1〜N4及びMは、それぞれ前記一般式(1)におけるRa〜Rh、X、N1〜N4及びMと同義であり、好ましい範囲も同様である。
本発明の結晶系安定組成物に含まれる前記一般式(1)で表される化合物のRa〜Rh、X及びMと前記一般式(2)で表される化合物のRa〜Rh、X及びMとは、同一であっても異なっていてもよいが、結晶系を安定させる観点から、同一であることが好ましい。
【0057】
本発明の結晶系安定組成物において、前記一般式(2)で表される化合物100質量部に対する前記一般式(1)で表される化合物の含有量は0.01質量部〜50質量部であり、好ましくは0.05質量部〜25質量部であり、さらに好ましくは0.1質量部〜10質量部である。この場合、前記一般式(1)で表される化合物が複数種含まれていても構わない。前記一般式(1)で表される化合物は、結晶系安定化剤として作用する。
【0058】
通常、溶媒不溶性の化合物に溶解性を付与するためにアルコキシ基を置換することが行われる。そのため、そのようなアルコキシ基を含む−OR1基を有する前記一般式(1)で表される化合物を、溶媒不溶性の顔料として使用するフタロシアニン化合物(前記一般式(2)で表される化合物)に積極的に混合しようという試みは従来検討されていなかった。また、両者を混合した際に、前記一般式(2)で表される化合物の結晶のパッキングを阻害して顔料のパッキングを密に形成できなくなるため、前記一般式(2)で表される化合物の溶媒不溶性や熱あるいは光に対する堅牢性を低下してしまうと予想される。これに対し、本発明の結晶系安定組成物では、前記一般式(2)で表される化合物の溶媒不溶性や熱あるいは光に対する堅牢性が低下することなく、しかも前記一般式(1)で表される化合物が結晶系安定化剤として作用して、高次の不安定型結晶(α型結晶)を得ることができる。
【0059】
次に、本発明の結晶系安定組成物の製造方法について説明する。
まず、下記一般式(3)で表される化合物および下記一般式(4)で表される化合物について説明する。
【0060】
【化13】
【0061】
【化14】
【0062】
(前記一般式(3)及び(4)中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。lは1〜15の整数を表し、mは1〜15の整数を表し、かつl+mは2〜16の整数を表す。pは1〜16の整数を表す。l、m又はpが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【0063】
前記一般式(3)及び(4)において、Ra〜Rh、X、N1〜N4及びMは、それぞれ前記一般式(1)におけるRa〜Rh、X、N1〜N4及びMと同義であり、好ましい範囲も同様である。前記一般式(3)におけるR1は、前記一般式(1)におけるR1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0064】
前記一般式(3)及び(4)中、R2は水素原子または置換基を表す。ここで、R2は、先述のR1と同義であり、好ましい範囲も同様である。aは1又は2の整数を表し、aが2であることが最も好ましい。すなわち、前記一般式(3)及び(4)で表される化合物は、下記一般式(a)で表される置換基を有することが好ましい。下記一般式(a)で表される置換基は、溶媒可溶性基として作用する。ここで、「溶媒可溶性」とは、溶媒に対して、溶剤を加熱還流した後に室温まで冷却した状態で0.1質量%以上の溶解度を有することをいう。好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは10%質量以上である。
【0065】
【化15】
【0066】
一般式(a)中、R2は水素原子または置換基を表し、R2は前記一般式(3)及び(4)におけるR2と同じである。
【0067】
ここで、R2としては、好ましくは水素原子、水酸基、炭素数4〜30の直鎖又は分枝のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基が挙げられ、特に好ましくは炭素数4〜18の直鎖又は分枝のアルキル基である。前記一般式(3)及び(4)で表される化合物は、下記一般式(b)で表される置換基を有することがさらに好ましい。
【0068】
【化16】
【0069】
一般式(b)中、R5〜R7は各々独立に水素原子または置換基を表す。R5〜R7のうち、2つ以上が水素原子以外の置換基であることが好ましく、より好ましくは3つとも水素原子以外の置換基である場合である。
【0070】
R5〜R7で表される置換基の例としては、先述のR1で挙げたものが適用できる。R5〜R7は互いに連結して環を形成しても良い。また、R5〜R7はさらに置換基によって置換されていても良い。
【0071】
R5〜R7で表される置換基として好ましくは、ハロゲン原子、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、5又は6員の置換もしくは無置換のヘテロ環基、シアノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基である。さらに好ましくは、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基、シアノ基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基である。最も好ましくは、R5〜R7がいずれもメチル基の場合である。
【0072】
前記一般式(3)及び(4)中、lは1〜15の整数を表し、mは1〜15の整数を表し、かつl+mは2〜16の整数を表す。l+mは、好ましくは1〜8の範囲の整数であり、さらに好ましくは1〜4の範囲の整数である。また、lは、好ましくは1〜8の範囲の整数であり、さらに好ましくは1〜4の範囲の整数である。mは、好ましくは1〜8の範囲の整数であり、さらに好ましくは1〜4の範囲の整数である。l又はmが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。
【0073】
前記一般式(3)及び(4)中、−OR1基及び−S(O)aR2基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換することが好ましい。
【0074】
前記一般式(3)及び(4)で表される化合物としては、(a)Xが−N=を表し、かつ、Ra及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になってベンゼン環を形成するフタロシアニン化合物、(b)Xが−CH=を表し、かつ、Ra〜Rhがそれぞれ水素原子を表すポルフィリン化合物、及び(c)Xが−CH=を表し、かつ、Ra及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になってベンゼン環を形成するテトラベンゾポルフィリン化合物が特に好ましい。
【0075】
以下に、前記一般式(3)で表される化合物の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
表4及び5にフタロシアニン化合物の具体例、表6にポルフィリン化合物の具体例、表7にテトラベンゾポルフィリン化合物の具体例をそれぞれ示す。表4〜7中、置換基の*印は、下記一般式(3D)で表されるフタロシアニン化合物、下記一般式(3E)で表されるポルフィリン化合物、又は下記一般式(3F)で表されるテトラベンゾポルフィリン化合物への結合部位を示す。また、Rα1〜Rα8、Rβ1〜Rβ8、Rm1〜Rm4又はRi1〜Ri8が無置換の場合、即ち水素原子が結合している場合は表記を省略している。
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】
【0079】
【表7】
【0080】
以下に、前記一般式(4)で表される化合物の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
表8〜12にフタロシアニン化合物の具体例、表13にポルフィリン化合物の具体例、表14にテトラベンゾポルフィリン化合物の具体例をそれぞれ示す。表7〜14中、置換基の*印は、下記一般式(4−G)で表されるフタロシアニン化合物、下記一般式(4−H)で表されるポルフィリン化合物、又は下記一般式(4−I)で表されるテトラベンゾポルフィリン化合物への結合部位を示す。また、Rα1〜Rα8、Rβ1〜Rβ8、Rm1〜Rm4又はRi1〜Ri8が無置換の場合、即ち水素原子が結合している場合は表記を省略している。
【0081】
【表8】
【0082】
【表9】
【0083】
【表10】
【0084】
【表11】
【0085】
【表12】
【0086】
【表13】
【0087】
【表14】
【0088】
(異性体の存在)
前記表4〜14において、例えば「Rα1/Rα2」という表記は「Rα1又はRα2のいずれか一方」という意味を表しており、従ってこの表記のある化合物は置換位置異性体の混合物である。
例えば、例示化合物(D−2)の置換位置異性体としては、Rα1/Rα2とRα3/Rα4との組み合わせ、Rα1/Rα2とRα5/Rα6との組み合わせ、Rα1/Rα2とRα7/Rα8との組み合わせ、Rα3/Rα4とRα5/Rα6との組み合わせ、Rα3/Rα4とRα7/Rα8との組み合わせが
【化17】
に置換されており、かつ、Rα5/Rα6とRα7/Rα8との組み合わせ、Rα5/Rα6とRα1/Rα2との組み合わせ、Rα5/Rα6とRα3/Rα4との組み合わせ、Rα7/Rα8とRα1/Rα2との組み合わせ、Rα7/Rα8とRα3/Rα4との組み合わせが
【化18】
に置換されているものが挙げられる。すなわち、例示化合物(D−2)の場合、フタロシアニンのα位のうち、いずれか二つが
【化19】
に置換されており、かつ、いずれか二つが
【化20】
に置換されていることを意味する。ここで、フタロシアニンのα位とは前記一般式(3D)におけるRα1〜Rα8が置換した位置であり、β位とはRβ1〜Rβ8が置換した位置である。
なお、ポルフィリン化合物及びテトラベンゾポルフィリン化合物でも同様である。
【0089】
本発明の方法では、前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物を熱分解、光分解及び/又は化学分解することにより、これらの化合物から置換基の一部もしくは全部を脱離させて前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物を得る。
【0090】
[化合物を溶媒に溶解させる工程]
本発明では、まず、前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物を水及び/又は有機溶媒に溶解させることが好ましい。
有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1−メチルナフタレン、1,2−ジクロロベンゼン等の炭化水素系溶媒;例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶媒;例えば、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール等のアルコール系溶媒;例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル系溶媒;例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒などを用いることができる。
水及び/又は有機溶媒中の前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物の濃度は、特に限定されず、用途によって異なる。
【0091】
[化合物から溶媒可溶性基を脱離させる工程]
前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物またはそれらの溶液を用いて塗布などの処理を行った後、熱分解、光分解及び/又は化学分解によりこれらの化合物から置換基の一部もしくは全部を脱離させて前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物を得ることができる。すなわち、前記一般式(3)で表される化合物における置換基のうち−S(O)aR2基のみが脱離されて前記一般式(1)で表される化合物が得られるとともに、前記一般式(4)で表される化合物における−S(O)aR2基が脱離されて前記一般式(2)で表される化合物が得られる。前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物はそれぞれ、溶媒可溶性基(−S(O)aR2基)を脱離することで、溶媒不溶性の前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物に転換される。
【0092】
本発明における熱分解は、好ましくは200℃以上、より好ましくは250℃以上に加熱することで引き起こすことができる。加熱温度の上限は、好ましくは550℃以下、より好ましくは400℃以下である。高温であるほど反応時間は短く、低温であるほど脱離反応に必要な時間は長くなる。
用途によっては、加熱温度や加熱時間を変えることで、前記一般式(1)で表される化合物の生成量と前記一般式(2)で表される化合物の生成量とを調整して、組成物の特性を調整することも可能である。
加熱にはヒーターを用いた伝熱による加熱の他、赤外線ランプや、化合物が吸収する波長の光を照射することを利用してもよい。その際に半導体レーザーを用いてもよい。また、前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物の近傍に光を吸収する層を設け、光をこの層で吸収させることにより加熱してもよい。これらの加熱は、窒素やアルゴンなどの不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
【0093】
上記のような熱処理の他、光分解処理(たとえば405nm以下の波長に露光)するか、又は化学分解(有機又は無機酸・塩基使用)することによって実施することができる。これらの変換方法を組み合わせることもできる。
【0094】
光分解処理の場合、赤外線ランプや、化合物が吸収する波長の光を照射すること(例えば405nm以下の波長に露光)等を利用してもよい。その際に半導体レーザーを用いてもよい。例えば、近赤外域のレーザー光(通常は780nm付近の波長のレーザー光)、可視レーザー光(通常は、630nm〜680nmの範囲の波長のレーザー光)、波長390〜440nmのレーザー光が挙げられる。
最も好ましくは波長390〜440nmのレーザー光であり、440nm以下の範囲の発振波長を有する半導体レーザー光が好適に用いられる。中でも好ましい光源としては、390〜440(更に好ましくは390〜415nm)の範囲の発振波長を有する青紫色半導体レーザー光、中心発振波長850nmの赤外半導体レーザー光を光導波路素子を使って半分の波長にした中心発振波長425nmの青紫色SHGレーザー光を挙げることができる。
【0095】
また、化学分解の場合に好ましく用いることができる有機又は無機の酸又は塩基としては、例えば酸として、鉱酸類(例えば硫酸、塩酸、臭化水素酸、硝酸、リン酸等)、有機カルボン酸類(例えば酢酸、蓚酸、ギ酸、プロピオン酸、安息香酸等)、又はスルホン酸類(例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等)を用いるのが好ましく、より好ましくは硫酸、塩酸、臭化水素酸または酢酸であり、最も好ましくは硫酸または塩酸である。なおこれらの酸は、単独または二種以上を混合して使用しても良い。塩基として好ましくは、有機塩基、アルキルメタル、メタルハイドライド(例えばナトリウムハイドライド等)等である。更に好ましくはトリエチルアミン、ピリジン又はナトリウムハイドライドである。最も好ましくはトリエチルアミン又はピリジンである。
【0096】
前記一般式(3)で表される化合物は、下記一般式(5)で表される化合物および下記一般式(6)で表される化合物から合成することができる。また、前記一般式(4)で表される化合物は、下記一般式(5)で表される化合物から合成することができる。
以下に、下記一般式(5)で表される化合物および下記一般式(6)で表される化合物について説明する。
【0097】
【化21】
【0098】
【化22】
【0099】
(一般式(5)及び(6)中、Qは芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環を形成するのに必要な原子群を表す。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。R3及びR4は各々独立に置換基を表し、同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。xは1〜4の整数、yは1〜4の整数、及びzは0〜3の整数を表し、かつy+z=xの関係を満たす。x、y又はzが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、Qにより形成される芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【0100】
前記一般式(5)及び(6)において、R1、R2及びaは、それぞれ前記一般式(3)及び(4)におけるR1、R2及びaと同義であり、好ましい範囲も同様である。また、Qにより形成される芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環は、先述と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0101】
R3及びR4は置換基を表し、同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。
ここで、R3及びR4は、−CN(シアノ)基、−CO2H(カルボキシル)基、又は−CO2NH2(カルボキシルアミノ)基であることが好ましく、互いに連結して環を形成する場合には下記一般式(7)〜(10)のいずれかで表される骨格に限定される。下記一般式(7)〜(10)のいずれかで表される骨格は、Qにより形成される環がベンゼン環である場合、それぞれ無水フタル酸骨格、フタルイミド骨格、1−アミノ−3−イミノイソインドレニン骨格、1−アルコキシ−3−イミノイソインドレニン骨格である。
【0102】
【化23】
【0103】
前記一般式(7)〜(10)において、Qは、それぞれ前記一般式(5)又は(6)におけるQと同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記一般式(10)中、R8は、先述のR1で挙げたものと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0104】
前記一般式(5)及び(6)において、xは1から4までの整数であり、好ましくは1〜2、さらに好ましくは1である。yは1から4の整数であり、好ましくは1〜2、さらに好ましくは1である。zは0〜3の整数であり、好ましくは0〜1、さらに好ましくは0である。ただし、x、y及びzはy+z=xの関係を満たす。
x、y又はzが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、Qにより形成される芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。
【0105】
(フタロシアニン化合物の合成法)
フタロシアニン化合物のフタロシアニン環形成反応は、白井汪芳,小林長夫編・著「フタロシアニン−化学と機能−」(アイピーシー社,1997年刊)の第1〜62頁、廣橋亮,坂本恵一,奥村映子編「機能性色素としてのフタロシアニン」(アイピーシー社,2004年刊)の第29〜77頁に準じて行うことができる。
【0106】
フタロシアニン化合物の代表的な合成方法としては、これらの文献に記載のワイラー法、フタロニトリル法、リチウム法、サブフタロシアニン法、および塩素化フタロシアニン法などが挙げられる。本発明においては、フタロニトリル法を好ましく用いることができる。フタロシアニン環形成反応において、いかなる反応条件を用いても良い。環形成反応においては、フタロシアニンの中心金属となる種々の金属を添加することが好ましいが、中心金属を持たないフタロシアニン化合物を合成後に、所望の金属を導入しても良い。反応溶媒としては、いかなる溶媒を用いても良いが、好ましくは高沸点の溶媒である。また、環形成反応促進のために、酸または塩基を用いても良い。最適な反応条件は、目的とするフタロシアニン化合物の構造により異なるが、上記の文献に記載された具体的な反応条件を参考に設定することができる。
【0107】
上記のフタロシアニン化合物の合成に使用する原料としては、無水フタル酸、フタルイミド、無水フタル酸およびその塩、フタル酸ジアミド、フタロニトリル、1,3−ジイミノイソインドリンなどの誘導体を用いることができる。これらの原料は公知のいかなる方法で合成しても良い。
【0108】
本発明では、前記一般式(5)で表される化合物および前記一般式(6)で表される化合物を用いて、前記一般式(3)で表される化合物(フタロシアニン化合物)を合成することができる。また、前記一般式(5)で表される化合物を用いて、前記一般式(4)で表される化合物(フタロシアニン化合物)を合成することができる。
前記一般式(3)で表される化合物は、前記一般式(5)で表される化合物の一部を前記一般式(6)で表される化合物に変換させながら、もしくは前記一般式(5)で表される化合物に前記一般式(6)で表される化合物を混合して、前記一般式(5)で表される化合物と前記一般式(6)で表される化合物との環形成反応を行うことにより得られる。
【0109】
前記一般式(5)で表される化合物を前記一般式(6)で表される化合物に変換させる方法としては、前記一般式(5)で表される化合物を用いて、塩基性条件下、アルコール溶媒中で環形成反応を行う。これにより、前記一般式(5)で表される化合物の一部の置換基が変性し、前記一般式(6)で表される化合物に変換される。
塩基としては、好ましくはメタルアルコキシド(例えばナトリウムアルコキシド、リチウムアルコキシド等)、アルコール溶媒中から形成されるアルコキシド誘導体、アルキルメタル(例えばメチルリチウム、n−ブチルリチウム等)、有機強塩基、たとえば1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンや1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン等を用いることができる。更に好ましくはメタルアルコキシドであり。最も好ましくはナトリウムアルコキシドやその溶液である。
アルコール溶媒としては本反応を阻害するものでなければどのような溶媒でもよく、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、2−メチルアミノエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等が挙げられる。
【0110】
前記一般式(5)で表される化合物と前記一般式(6)で表される化合物との環形成反応における溶媒の使用量は、原料基質(前記一般式(5)で表される化合物と前記一般式(6)で表される化合物との総和)の1〜100質量倍が好ましく、より好ましくは3〜50質量倍である。最も好ましくは5〜20質量倍である。
【0111】
前記一般式(5)で表される化合物と前記一般式(6)で表される化合物との環形成反応における反応温度は、用いる反応剤の種類により最適温度は異なるが、−20℃〜200℃で行うのが好ましく、より好ましくは0℃〜170℃である。最も好ましくは20℃〜150℃である。
【0112】
(ポルフィリン化合物の合成法)
ポルフィリン化合物およびテトラベンゾポルフィリン化合物の合成法については、例えば、KARL M.,KADIS H.,KEVIN M.,SMITH ROGER GUILARD著、「THE PORPHYRIN HANDBOOK」、VOL.1、ACADEMIC PRESS(2000)に記述されている方法を参照することができる。
【0113】
[結晶系制御方法]
前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物を加熱等することによりこれらの化合物から置換基を脱離させることで、前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物を得、前記一般式(2)で表される化合物に結晶系安定化剤として前記一般式(1)で表される化合物を含んだ組成物、換言すれば、結晶系の制御された前記一般式(2)で表される化合物を得ることができる。本発明の方法によれば、前記一般式(2)で表される化合物の結晶系を前記一般式(1)の化合物を添加することにより制御することができる。前記一般式(4)で表される化合物はアモルファスの結晶構造を示すが、前記一般式(4)で表される化合物における置換基を脱離して前記一般式(2)で表される化合物に転換することで結晶転移が起こる。例えば、銅フタロシアニンは同質異晶を示し、α、β、ε、γ、δ、π、χ、R等の結晶が報告されている(例えば、「機能性色素としてのフタロシアニン基礎編・応用編」(アイピーシー)を参照)。本発明で制御できる結晶系は好ましくはα、β、εであり、より好ましくはαとβである。
特に、準安定のα型結晶は、従来アシッドペースト法により作成していたため結晶子が小さく、X線回折測定結果のピークがブロードになっていたが、本発明では、加熱等によって、半値幅が小さいシャープなピークの、高次に成長した結晶子が大きいα型結晶を効率よく作製することができる。
【0114】
[顔料分散方法]
本発明の結晶系安定組成物が色素(特に顔料)である場合、顔料が溶媒可溶性基により修飾された構造の顔料前駆体(前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物)を溶媒に溶解させた後、加熱などの外部刺激を与えることで顔料(前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物からなる顔料)に転換させ、溶媒中に顔料微粒子が分散した顔料分散液を得ることができる。
得られた顔料粒子は、例えば、塗料、印刷インク、電子写真用トナー、インクジェットインク、カラーフィルタなどの用途に好ましく用いることができる。
【0115】
[画像形成方法]
本発明の結晶系安定組成物の色素の用途としては、画像、特にカラー画像を形成するための画像記録材料が挙げられ、具体的には、以下に詳述するインクジェット方式記録材料を始めとして、感熱記録材料、感圧記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等があり、好ましくはインクジェット方式記録材料、感熱記録材料、電子写真方式を用いる記録材料であり、更に好ましくはインクジェット方式記録材料である。
また、CCDなどの固体撮像素子やLCD、PDP等のディスプレーで用いられるカラー画像を記録・再現するためのカラーフィルタ、各種繊維の染色の為の染色液にも適用できる。
本発明の結晶系安定組成物(色素)は、その用途に適した溶媒可溶性、分散性、熱移動性などの物性を、置換基で調整して使用する。また、本発明の結晶系安定組成物(色素)は、用いられる系に応じて溶解状態、乳化分散状態、さらには固体分散状態でも使用することができる。
【0116】
(インク)
本発明の結晶系安定組成物の製造方法を利用することで、インクを作製することができる。当該インクは、少なくとも一種の本発明の結晶系安定組成物(色素)を含有するインクを意味する。
インクは、媒体を含有させることができるが、媒体として溶媒を用いた場合は特にインクジェット記録用インクとして好適である。インクは、媒体として、親油性媒体や水性媒体を用いて、それらの中に、本発明の結晶系安定組成物(色素)を溶解及び/又は分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いる場合である。インクには、媒体を除いたインク用組成物も含まれる。
インクは、必要に応じてその他の添加剤を含有しうる。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤(特開2003−306623号公報に記載)が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加する。油溶性染料を分散物の形で用いる場合には、染料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0117】
本発明の結晶系安定組成物(色素)を水性媒体に分散させる場合は、特開平11−286637号公報,特開2001−240763号公報,特開2001−262039号公報,特開2001−247788号公報に記載されているように、色素と油溶性ポリマーとを含有する着色微粒子を水性媒体に分散させたり、特開2001−262018号公報,特開2001−240763号公報,特開2001−335734号公報に記載されているように、高沸点有機溶媒に溶解した本発明の結晶系安定組成物(色素)を水性媒体中に分散させたりすることが好ましい。本発明の結晶系安定組成物(色素)を水性媒体に分散させる場合の具体的な方法、使用する油溶性ポリマー、高沸点有機溶剤、添加剤及びそれらの使用量は、前記特許文献に記載されたものを好ましく使用することができる。あるいは、前記色素を固体のまま微粒子状態に分散してもよい。分散時には、分散剤や界面活性剤を使用することができる。
【0118】
分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル等)、超音波方式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000(商品名)等)を使用することができる。上記のインクジェット記録用インクの調製方法については、先述の特許文献以外にも特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号、同11−286637号、特開2001−271003号の各公報に詳細が記載されており、本発明の結晶系安定組成物(色素)を用いたインクジェット記録用インクの調製にも利用できる。
【0119】
前記水性媒体は、水を主成分とし、所望により、水混和性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。前記水混和性有機溶剤の例は特開2003−306623号公報に記載のものが使用できる。尚、前記水混和性有機溶剤は、二種類以上を併用してもよい。
【0120】
インクジェット記録用インク100質量部中に、本発明の結晶系安定組成物(色素)を0.1質量部以上20質量部以下含有するのが好ましく、0.2質量部以上10質量部以下含有するのがより好ましく、0.5〜9質量部含有するのがさらに好ましい。また、インクジェット用インクには、本発明の結晶系安定組成物(色素)とともに、他の色素を併用してもよい。2種類以上の色素を併用する場合は、色素の含有量の合計が前記範囲となっているのが好ましい。
【0121】
インクは、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクを用いることができ、また、色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。
【0122】
さらに、インクジェット記録用インクは、本発明の結晶系安定組成物(色素)の他に別のシアン染料を同時に用いることが出来る。適用できるイエロー染料、適用できるマゼンタ染料、適用できるシアン染料としては、各々任意のものを使用することができるが、特開2003−306623号公報の段落番号0090〜0092に記載の各染料が利用できる。適用できる黒色材としては、ジスアゾ、トリスアゾ、テトラアゾ染料のほか、カーボンブラックの分散体を挙げることができる。
【0123】
[インクジェット記録方法]
インクジェット記録方法は、前記インクジェット記録用インクにエネルギーを供与して、公知の受像材料、即ち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載されているインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に画像を形成する。なお、インクジェット記録方法として特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105の記載が適用できる。
【0124】
画像を形成する際に、光沢性や耐水性を与えたり耐候性を改善する目的からポリマーラテックス化合物を併用してもよい。ラテックス化合物を受像材料に付与する時期については、着色剤を付与する前であっても、後であっても、また同時であってもよく、したがって添加する場所も受像紙中であっても、インク中であってもよく、あるいはポリマーラテックス単独の液状物として使用しても良い。具体的には、特開2002−166638号公報、特開2002−121440号公報、特開2002−154201号公報、特開2002−144696号公報、特開2002−080759号公報、特願2000−299465号明細書、特願2000−297365号明細書に記載された方法を好ましく用いることができる。
【0125】
[カラートナー]
カラートナー100質量部中における本発明の結晶系安定組成物(色素)の含有量は特に制限がないが、0.1質量部以上含有するのが好ましく、1〜20質量部がより好ましく、2〜10質量部含有するのが最も好ましい。
本発明の結晶系安定組成物(色素)を導入するカラートナー用バインダー樹脂としては一般に使用されるすべてのバインダーが使用できる。例えば、スチレン系樹脂・アクリル系樹脂・スチレン/アクリル系樹脂・ポリエステル樹脂等が挙げられる。
トナーに対して流動性向上、帯電制御等を目的として無機微粉末、有機微粒子を外部添加しても良い。表面をアルキル基含有のカップリング剤等で処理したシリカ微粒子、チタニア微粒子が好ましく用いられる。なお、これらは数平均一次粒子径が10〜500nmのものが好ましく、さらにはトナー中に0.1〜20質量%添加するのが好ましい。
【0126】
離型剤としては、従来使用されている離型剤は全て使用することができる。具体的には、低分子量ポリプロピレン・低分子量ポリエチレン・エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン類、マイクロクリスタリンワックス・カルナウバワックス・サゾールワックス・パラフィンワックス等が挙げられる。これらの添加量はトナー中に1〜5質量%添加することが好ましい。
【0127】
荷電制御剤としては、必要に応じて添加しても良いが、発色性の点から無色のものが好ましい。例えば4級アンモニウム塩構造のもの、カリックスアレン構造を有するものなどが挙げられる。
【0128】
キャリアとしては、鉄・フェライト等の磁性材料粒子のみで構成される非被覆キャリア、磁性材料粒子表面を樹脂等によって被覆した樹脂被覆キャリアのいずれを使用してもよい。このキャリアの平均粒径は体積平均粒径で30〜150μmが好ましい。
【0129】
トナーが適用される画像形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば感光体上に繰り返しカラー画像を形成した後に転写を行って画像を形成する方法や、感光体に形成された画像を逐次中間転写体等へ転写し、カラー画像を中間転写体等に形成した後に紙等の画像形成部材へ転写しカラー画像を形成する方法等が挙げられる。
【0130】
[感熱記録(転写)材料]
感熱記録材料は、支持体上に本発明の結晶系安定組成物(色素)をバインダーとともに塗設したインクシート、及び画像記録信号に従ってサーマルヘッドから加えられた熱エネルギーに対応して移行してきた色素を固定する受像シートから構成される。インクシートは、本発明の組成物をバインダーと共に溶剤中に溶解することによって、或いは溶媒中に微粒子状に分散させることによってインク液を調製し、該インクを支持体上に塗布して適宜に乾燥することにより形成することができる。支持体上のインクの塗布量は特に制限するものではないが、好ましくは30〜1000mg/m2である。好ましいバインダー樹脂、インク溶媒、支持体、更には受像シートについては、特開平7−137466号公報に記載されたものを好ましく用いることができる。
【0131】
該感熱記録材料をフルカラー画像記録が可能な感熱記録材料に適用するには、シアン画像を形成することができる熱拡散性シアン色素を含有するシアンインクシート、マゼンタ画像を形成することができる熱拡散性マゼンタ色素を含有するマゼンタインクシート、イエロー画像を形成することができる熱拡散性イエロー色素を含有するイエローインクシートを支持体上に順次塗設して形成する事が好ましい。また、必要に応じて他に黒色画像形成物質を含むインクシートがさらに形成されていても良い。
【0132】
[カラーフィルタ]
カラーフィルタの形成方法としては、初めにフォトレジストによりパターンを形成し、次いで染色する方法、或いは特開平4−163552号、同4−128703号、同4−175753号等の各公報で開示されているように色素を添加したフォトレジストによりパターンを形成する方法がある。本発明の結晶系安定組成物(色素)をカラーフィルタに導入する場合に用いられる方法としては、これらのいずれの方法を用いても良いが、好ましい方法としては、特開平4−175753号公報や特開平6−35182号公報に記載されたところの、熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、色素及び溶剤を含有してなるポジ型レジスト組成物、並びに、それを基体上に塗布後、マスクを通して露光し、該露光部を現像してポジ型レジストパターンを形成させ、上記ポジ型レジストパターンを全面露光し、次いで露光後のポジ型レジストパターンを硬化させることからなるカラーフィルタの形成方法を挙げることができる。また、常法に従いブラックマトリックスを形成させ、RGB原色系あるいはY、M、C補色系カラーフィルタを得ることができる。カラーフィルタの場合も色素の使用量の制限はないが0.1〜50質量%が好ましい。
【0133】
この際使用する熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、及び溶剤とそれらの使用量については、前記特許文献に記載されているものを好ましく使用することができる。
【0134】
[薄膜形成方法]
本発明の結晶系安定組成物の製造方法を利用して、前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物を基板上に塗布し、乾燥させてから加熱等することにより、本発明の結晶系安定組成物の薄膜を形成することができる。
【0135】
(基板)
本発明においては、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、セラミック、シリコン、石英、ガラスなどの種々の材料を基板として用いることができる。好ましくはセラミック、シリコン、石英またはガラスであり、より好ましくはシリコン、石英またはガラスである。また、用途に応じていかなる基板を選択してもよい。例えば、フレキシブルな素子の用途の場合にはフレキシブル基板を用いることができる。
また、基板の厚さは、特に限定されないが、好ましくは1〜1000μmであり、より好ましくは10〜800μmである。
【0136】
(成膜方法)
本発明において、前記化合物を基板上に成膜する方法はいかなる方法でも良く、真空プロセスまたは溶液プロセスにより成膜することができるが、溶液プロセスにより成膜することが特に好ましい。
真空プロセスによる成膜の具体的な例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、分子ビームエピタキシー(MBE)法などの物理気相成長法あるいはプラズマ重合などの化学気相蒸着(CVD)法が挙げられる。
溶液プロセスによる成膜とは、ここでは水もしくは有機化合物を溶解させることができる溶媒中に溶解させ、その溶液を基板上に塗布し乾燥させて成膜する方法を指す。具体的には、キャスト法、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、ディッピング(浸漬)コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、インクジェット法、スピンコート法、ラングミュア−ブロジェット(Langmuir-Blodgett)(LB)法などの通常の方法を用いることができる。本発明においては、キャスト法、スピンコート法、およびインクジェット法を用いることがさらに好ましい。このような溶液プロセスにより、表面が平滑で大面積の薄膜を低コストで生産することが可能となる。
【0137】
(塗布条件)
溶液プロセスにより基板上に成膜する場合、層を形成する材料を適当な有機溶媒(例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1−メチルナフタレン、1,2−ジクロロベンゼン等の炭化水素系溶媒;例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶媒;例えば、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール等のアルコール系溶媒;例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル系溶媒;例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルフォキサイド等の極性溶媒など)及び/又は水に溶解又は分散させて塗布液とし、各種の塗布法により薄膜を形成することができる。
その塗布液中の前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物の合計の濃度は、好ましくは0.1〜80質量%、より好ましくは0.1〜10質量%であり、これにより任意の厚さの膜を形成できる。
【0138】
前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物は、特に溶液プロセスによる成膜に適している。溶液プロセスで成膜するためには、上記で挙げた溶媒などに材料が溶解することが必要であるが、単に溶解するだけでは不十分である。通常、真空プロセスで成膜する材料でも、溶媒にある程度溶解させることができる。しかし、溶液プロセスでは、材料を溶媒に溶解させて塗布した後で、溶媒が蒸発して薄膜が形成する過程があり、溶液プロセスに適さない材料は結晶性が高いものが多いため、この過程で結晶化してしまい良好な薄膜を形成させることが困難である。前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物は、このような結晶化が起こりにくい点でも優れている。
【0139】
また、成膜の際に樹脂バインダーを用いることも可能である。この場合、層を形成する材料とバインダー樹脂とを前述の適当な溶媒に溶解させ、または分散させて塗布液とし、各種の塗布法により薄膜を形成することができる。樹脂バインダーとしては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン等の絶縁性ポリマー、およびこれらの共重合体、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン等の光伝導性ポリマー、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレン等の導電性ポリマーなどを挙げることができる。樹脂バインダーは、単独で使用してもよく、あるいは複数併用しても良い。薄膜の機械的強度を考慮するとガラス転移温度の高い樹脂バインダーが好ましい。
樹脂バインダーは使わない方が有機半導体の特性上好ましいが、目的によっては使用することもある。この場合の樹脂バインダーの使用量は、特に制限はないが、薄膜中、好ましくは0.1〜10質量%で用いられる。
【0140】
また、成膜の際、基板を加熱または冷却してもよく、基板の温度を変化させることで膜質や膜中での分子のパッキングを制御することが可能である。基板の温度としては特に制限はないが、0℃〜200℃の間であることが好ましい。
【0141】
(膜厚)
膜厚は、用途によって異なり、特に制限はないが、好ましくは5nm〜50μm、より好ましくは20nm〜500nmである。
【0142】
(膜の後処理)
作製された膜は、後処理により調整することができる。例えば、加熱処理や溶媒蒸気への暴露により膜のモルホロジーや膜中での分子のパッキングを変化させることで特性を向上させることが可能である。また、酸化性または還元性のガスや溶媒、物質などにさらす、あるいはこれらを混合することで酸化あるいは還元反応を起こし、膜中での会合状態を調整することができる。
【0143】
[表面改質方法]
ところで、酸化チタンは、太陽光線(紫外線)の照射によって化学反応を起こす「光触媒」として様々な素材に用いられている。これは酸化力が最も強く、毒性がなく、化学的にも安定していることから、食品や化粧品など幅広い用途に使われている。一方、本発明により得られる銅フタロシアニンは一重項酸素の発生能が高く、有機物を分解することができるため、酸化チタンと同様に使用することができる。
したがって、本発明の結晶系安定組成物の製造方法を利用して、前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物を物質上に塗布し、乾燥させてから加熱等することで、本発明の結晶系安定組成物の薄膜を物質の表面に形成することができる。すなわち、これにより物質表面に耐光性・耐水性の極めて高い顔料薄膜が形成されるので、物質表面を改質することができる。ここで、表面改質が行われる物質としては、特に限定されないが、例えば、酸化物/酸化膜(ZrO2、TiO2、Al2O3、AgO、CuO、Ta2O5、Zr/Al2O3、ガラス、マイカ、SiO2、SnO2、GeO2、ZrO2、ITO)などが好ましく適用される。また基板最表層をオゾン処理して水酸基を基板上にあらわにさせる方法を用いることができる、また例えば、金属表面上に水酸基含有のアルカンチオールの自己集積単分子膜(SAM)を形成した表面を用いることもできる。
【実施例】
【0144】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0145】
実施例1
特開2005−119165号公報の記載に従って、α−t−ブチルスルホニル置換フタロニトリル4mmol、塩化第二銅1mmolをブタノール10mlに添加し、80℃まで加熱したところでジアザビシクロウンデセン(DBU)10mmolを滴下した。そのまま7時間加熱攪拌を続けた後に濾過し、メタノールで洗浄して、α−テトラ−t−ブチルスルホニル置換銅フタロシアニン(化合物1)を68%の収率で得た。
【0146】
得られた生成物について、MALDI−MSによる分析を行った。MALDI−MS分析は、Applied Biosystems社製Voyager−DE PRO(商品名)を使用して行った。スペクトル測定結果を図1に示す。図1から明らかなように、化合物1のイオンピーク[M++1]=1056の他に、α−モノブトキシ−α−トリ−t−ブチルスルホニル置換銅フタロシアニン(例示化合物(B−1))のイオンピーク[M++1]=1008が検出された。このことから、本実施例では、化合物1が生成するだけでなく、わずかながら例示化合物(B−1)も生成していることがわかった。例示化合物(B−1)は、強塩基条件であるために、アルキルスルホニル基置換フタロニトリルの一部がブトキシアニオンの求核攻撃を受けてブトキシフタロニトリルに変化し、その後にフタロシアニン環を形成して生成したものと考えられる。
【0147】
比較例1
α−t−ブチルスルホニル置換フタロニトリル4mmol、酢酸第二銅1mmolをジエチレングリコール15ml及び1−メトキシ−2−プロパノール(MFG)50mlに添加し、115℃まで加熱したところで安息香酸アンモニウム4mmolを添加した。そのまま6時間加熱攪拌を続けた後にメタノールを加え濾過して、α−t−ブチルスルホニル置換銅フタロシアニン(化合物1)を34%の収率で得た。
【0148】
得られた生成物について、実施例1と同様にして、MALDI−MSによる分析を行った。スペクトル測定結果を図2に示す。図2から明らかなように、比較例1では、化合物1のイオンピーク[M++1]=1056が検出されたが、他のフタロシアニン化合物のイオンピークは検出されなかった。比較例1では、穏和な条件(バッファー)であるために、アルキルスルホニル基置換フタロニトリルの置換基の損失がなく、化合物1のみが生成したものと考えられる。
【0149】
なお、実施例1および比較例1の生成物について、それぞれ液体クロマトグラフィーによる分析を行ったが、例示化合物(B−1)の極性が化合物1の極性とほぼ同じであり、構造異性体も多数含有されるため、液体クロマトグラフィー分析では実施例1の生成物と比較例1の生成物との明確な相違が測定できなかった。
【0150】
実施例2
実施例1で得られた生成物を400℃で加熱して銅フタロシアニンを得た。得られた銅フタロシアニンを、プロパンスルホン酸に溶解させ、クロロホルム溶媒で順層カラムを用いて液体クロマトグラフィー測定を行った。測定結果を図3に示す。また、実施例1と同様にして、MALDI−MSによる分析を行った。スペクトル測定結果を図4A及び4Bに示す。図4Bは、図4Aにおける質量数600〜680付近の部分拡大図である。一方、対照として、東京化成社製銅フタロシアニンについても同様にして液体クロマトグラフィー測定を行った。測定結果を図3に示す。
図3の結果から明らかなように、保持時間11.5分付近のピークを基準として正規化した場合に、東京化成社製銅フタロシアニン(対照)と比較して、本実施例では、9.5分付近、10.5分付近にそれぞれ0.9%、6.0%の低極性化合物のピークが検出された。また、図4A及び4Bの結果から明らかなように、[M+]に相当する647のピークが検出された。このピークは一置換ブトキシ基置換銅フタロシアニン(例示化合物(A−1))に対応する。これらの結果から、本実施例では、銅フタロシアニンだけでなくブトキシ基置換銅フタロシアニン(例示化合物(A−1))も存在することが分かった。特に、保持時間9.5分付近で検出されたピークは、二置換ブトキシ基置換銅フタロシアニン(例示化合物(A−2))であり、保持時間10.5分付近で検出されたピークは、一置換ブトキシ基置換銅フタロシアニン(例示化合物(A−1))であると考えられる。
【0151】
実施例3、比較例2及び3
実施例1および比較例1で得られた生成物をそれぞれ350℃で焼成して銅フタロシアニンを得た(実施例3および比較例2)。
また、α型銅フタロシアニンの一般的な工業的製造法であるアシッドペースティング法により微細α型銅フタロシアニン結晶を調製した。具体的には、東京化成社製β型銅フタロシアニン2.5gを濃硫酸25mlに溶解させた後に、0℃で500mlの水中に注入して、微細α型銅フタロシアニン結晶を得た(比較例3)。
【0152】
得られた銅フタロシアニンについてX線粉末回折を行った。X線回折測定は、Rigaku社製X−ray DIFFRACTOMETER RINT−2500(商品名)を使用した。実施例3の測定結果を図5に、比較例2の測定結果を図6にそれぞれ示す。
また、対照として、東京化成社製α型銅フタロシアニン結晶についても上記と同様にしてX線粉末回折を行った。実施例3および比較例2の測定結果との対比をそれぞれ図7及び8に示す。また、実施例3の測定結果と比較例3の測定結果との対比を図9に示す。
【0153】
図5〜9の結果から明らかなように、実施例3では、銅フタロシアニン顔料のα型銅フタロシアニンの結晶型を示し、特に回折角2θ=6.9°、7.4°の二本のピークが検出された。これは面指数(200)、(002)に対応し、このことから、実施例3ではb軸方向に大きな結晶子が成長していることがわかった。一方、比較例2及び3では、ピークの半値幅が大きく、実施例3で検出されたようなシャープな複数のピークが検出されずにブロードなピークが検出された。
【0154】
実施例3および比較例2のα型銅フタロシアニン結晶ならびに東京化成社製α型銅フタロシアニン結晶(対照)のサイズ及び凝集状態を比較するために、走査型電子顕微鏡法(SEM)を用いて粒子形状を観察した。走査型電子顕微鏡法は以下のようにして測定した。日立ハイテク社製S−3400型(商品名)を用いて粉末の表面を観測した。撮影条件は加速電圧10kV、二次電子像を検出器とし、ランダムパターンで傾斜角度は0°、撮影倍率は5000倍とした。結果を図10〜12に示す。
図10〜12の結果から明らかなように、比較例2の結晶(図11参照)および対照の結晶(図12参照)に比べて、実施例3のα型銅フタロシアニン結晶(図10参照)は大きな結晶子を有することが分かった。
【0155】
従来、不安定構造である銅フタロシアニンのα型結晶で大きな結晶子を作製することは困難であったが、本発明によれば、前記一般式(1)で表される化合物が結晶系安定化剤として作用し、大きな結晶子を有するα型結晶を効率よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】実施例1で得られた生成物のMALDI−MSスペクトル図である。
【図2】比較例1で得られた生成物のMALDI−MSスペクトル図である。
【図3】実施例2で得られた生成物および対照の銅フタロシアニンの液体クロマトグラフィー測定結果を示す図である。
【図4A】実施例2で得られた生成物のMALDI−MSスペクトル図である。
【図4B】図4Aの部分拡大図である。
【図5】実施例3で得られた銅フタロシアニンのX線粉末回折のチャート図である。
【図6】比較例2で得られた銅フタロシアニンのX線粉末回折のチャート図である。
【図7】実施例3で得られた銅フタロシアニンおよび対照の銅フタロシアニンのX線粉末回折のチャート図である。
【図8】比較例2で得られた銅フタロシアニンおよび対照の銅フタロシアニンのX線粉末回折のチャート図である。
【図9】実施例3で得られた銅フタロシアニンおよび比較例3で得られた銅フタロシアニンのX線粉末回折のチャート図である。
【図10】実施例3で得られたα型銅フタロシアニン結晶のSEM写真である。
【図11】比較例2で得られたα型銅フタロシアニン結晶のSEM写真である。
【図12】対照のα型銅フタロシアニン結晶のSEM写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を下記一般式(2)で表される化合物100質量部に対して0.01〜50質量部含有することを特徴とする結晶系安定組成物。
【化1】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1は水素原子または置換基を表す。nは1から16までの範囲の整数である。nが2以上の場合、複数の−OR1基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【化2】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
下記一般式(3)で表される化合物および下記一般式(4)で表される化合物を熱分解、光分解及び/又は化学分解することにより、これらの化合物から置換基を脱離させて前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物を得ることを特徴とする請求項1記載の結晶系安定組成物の製造方法。
【化3】
【化4】
(前記一般式(3)及び(4)中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。lは1〜15の整数を表し、mは1〜15の整数を表し、かつl+mは2〜16の整数を表す。pは1〜16の整数を表す。l、m又はpが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【請求項3】
前記一般式(3)で表される化合物が、下記一般式(5)で表される化合物の一部を下記一般式(6)で表される化合物に変換させながらもしくは下記一般式(5)で表される化合物に下記一般式(6)で表される化合物を混合して、下記一般式(5)で表される化合物と下記一般式(6)で表される化合物との環形成反応を行うことにより得られることを特徴とする請求項2記載の方法。
【化5】
【化6】
(一般式(5)及び(6)中、Qは芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環を形成するのに必要な原子群を表す。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。R3及びR4は各々独立に置換基を表し、同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。xは1〜4の整数、yは1〜4の整数、及びzは0〜3の整数を表し、かつy+z=xの関係を満たす。x、y又はzが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、Qにより形成される芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【請求項4】
下記一般式(3)で表される化合物および下記一般式(4)で表される化合物を熱分解、光分解及び/又は化学分解することにより、これらの化合物から置換基を脱離させて下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(2)で表される化合物を得、下記一般式(2)で表される化合物の結晶系を制御することを特徴とする下記一般式(2)で表される化合物の結晶系制御方法。
【化7】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1は水素原子または置換基を表す。nは1から16までの範囲の整数である。nが2以上の場合、複数の−OR1基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【化8】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。)
【化9】
【化10】
(前記一般式(3)及び(4)中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。lは1〜15の整数を表し、mは1〜15の整数を表し、かつl+mは2〜16の整数を表す。pは1〜16の整数を表す。l、m又はpが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【請求項5】
下記一般式(3)で表される化合物および下記一般式(4)で表される化合物を水又は有機溶媒に溶解させた後、熱分解、光分解及び/又は化学分解によりこれらの化合物から置換基を脱離させて、下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(2)で表される化合物からなる顔料を前記の水又は有機溶媒中に分散させることを特徴とする顔料分散液の製造方法。
【化11】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1は水素原子または置換基を表す。nは1から16までの範囲の整数である。nが2以上の場合、複数の−OR1基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【化12】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。)
【化13】
【化14】
(前記一般式(3)及び(4)中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。lは1〜15の整数を表し、mは1〜15の整数を表し、かつl+mは2〜16の整数を表す。pは1〜16の整数を表す。l、m又はpが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【請求項6】
下記一般式(3)で表される化合物および下記一般式(4)で表される化合物を熱分解、光分解及び/又は化学分解することにより、これらの化合物から置換基を脱離させて、下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(2)で表される化合物からなる顔料を得、画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【化15】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1は水素原子または置換基を表す。nは1から16までの範囲の整数である。nが2以上の場合、複数の−OR1基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【化16】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。)
【化17】
【化18】
(前記一般式(3)及び(4)中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。lは1〜15の整数を表し、mは1〜15の整数を表し、かつl+mは2〜16の整数を表す。pは1〜16の整数を表す。l、m又はpが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【請求項7】
下記一般式(3)で表される化合物および下記一般式(4)で表される化合物を基板上に塗布した後、熱分解、光分解及び/又は化学分解によりこれらの化合物から置換基を脱離させて、下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(2)で表される化合物からなる薄膜を形成することを特徴とする薄膜形成方法。
【化19】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1は水素原子または置換基を表す。nは1から16までの範囲の整数である。nが2以上の場合、複数の−OR1基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【化20】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。)
【化21】
【化22】
(前記一般式(3)及び(4)中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。lは1〜15の整数を表し、mは1〜15の整数を表し、かつl+mは2〜16の整数を表す。pは1〜16の整数を表す。l、m又はpが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【請求項8】
下記一般式(3)で表される化合物および下記一般式(4)で表される化合物を物質上に塗布した後、熱分解、光分解及び/又は化学分解によりこれらの化合物から置換基を脱離させて、下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(2)で表される化合物からなる薄膜を前記物質の表面に形成し、前記物質の表面を改質することを特徴とする表面改質方法。
【化23】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1は水素原子または置換基を表す。nは1から16までの範囲の整数である。nが2以上の場合、複数の−OR1基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【化24】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。)
【化25】
【化26】
(前記一般式(3)及び(4)中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。lは1〜15の整数を表し、mは1〜15の整数を表し、かつl+mは2〜16の整数を表す。pは1〜16の整数を表す。l、m又はpが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を下記一般式(2)で表される化合物100質量部に対して0.01〜50質量部含有することを特徴とする結晶系安定組成物。
【化1】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1は水素原子または置換基を表す。nは1から16までの範囲の整数である。nが2以上の場合、複数の−OR1基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【化2】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
下記一般式(3)で表される化合物および下記一般式(4)で表される化合物を熱分解、光分解及び/又は化学分解することにより、これらの化合物から置換基を脱離させて前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(2)で表される化合物を得ることを特徴とする請求項1記載の結晶系安定組成物の製造方法。
【化3】
【化4】
(前記一般式(3)及び(4)中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。lは1〜15の整数を表し、mは1〜15の整数を表し、かつl+mは2〜16の整数を表す。pは1〜16の整数を表す。l、m又はpが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【請求項3】
前記一般式(3)で表される化合物が、下記一般式(5)で表される化合物の一部を下記一般式(6)で表される化合物に変換させながらもしくは下記一般式(5)で表される化合物に下記一般式(6)で表される化合物を混合して、下記一般式(5)で表される化合物と下記一般式(6)で表される化合物との環形成反応を行うことにより得られることを特徴とする請求項2記載の方法。
【化5】
【化6】
(一般式(5)及び(6)中、Qは芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環を形成するのに必要な原子群を表す。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。R3及びR4は各々独立に置換基を表し、同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。xは1〜4の整数、yは1〜4の整数、及びzは0〜3の整数を表し、かつy+z=xの関係を満たす。x、y又はzが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、Qにより形成される芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【請求項4】
下記一般式(3)で表される化合物および下記一般式(4)で表される化合物を熱分解、光分解及び/又は化学分解することにより、これらの化合物から置換基を脱離させて下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(2)で表される化合物を得、下記一般式(2)で表される化合物の結晶系を制御することを特徴とする下記一般式(2)で表される化合物の結晶系制御方法。
【化7】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1は水素原子または置換基を表す。nは1から16までの範囲の整数である。nが2以上の場合、複数の−OR1基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【化8】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。)
【化9】
【化10】
(前記一般式(3)及び(4)中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。lは1〜15の整数を表し、mは1〜15の整数を表し、かつl+mは2〜16の整数を表す。pは1〜16の整数を表す。l、m又はpが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【請求項5】
下記一般式(3)で表される化合物および下記一般式(4)で表される化合物を水又は有機溶媒に溶解させた後、熱分解、光分解及び/又は化学分解によりこれらの化合物から置換基を脱離させて、下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(2)で表される化合物からなる顔料を前記の水又は有機溶媒中に分散させることを特徴とする顔料分散液の製造方法。
【化11】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1は水素原子または置換基を表す。nは1から16までの範囲の整数である。nが2以上の場合、複数の−OR1基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【化12】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。)
【化13】
【化14】
(前記一般式(3)及び(4)中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。lは1〜15の整数を表し、mは1〜15の整数を表し、かつl+mは2〜16の整数を表す。pは1〜16の整数を表す。l、m又はpが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【請求項6】
下記一般式(3)で表される化合物および下記一般式(4)で表される化合物を熱分解、光分解及び/又は化学分解することにより、これらの化合物から置換基を脱離させて、下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(2)で表される化合物からなる顔料を得、画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【化15】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1は水素原子または置換基を表す。nは1から16までの範囲の整数である。nが2以上の場合、複数の−OR1基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【化16】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。)
【化17】
【化18】
(前記一般式(3)及び(4)中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。lは1〜15の整数を表し、mは1〜15の整数を表し、かつl+mは2〜16の整数を表す。pは1〜16の整数を表す。l、m又はpが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【請求項7】
下記一般式(3)で表される化合物および下記一般式(4)で表される化合物を基板上に塗布した後、熱分解、光分解及び/又は化学分解によりこれらの化合物から置換基を脱離させて、下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(2)で表される化合物からなる薄膜を形成することを特徴とする薄膜形成方法。
【化19】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1は水素原子または置換基を表す。nは1から16までの範囲の整数である。nが2以上の場合、複数の−OR1基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【化20】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。)
【化21】
【化22】
(前記一般式(3)及び(4)中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。lは1〜15の整数を表し、mは1〜15の整数を表し、かつl+mは2〜16の整数を表す。pは1〜16の整数を表す。l、m又はpが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【請求項8】
下記一般式(3)で表される化合物および下記一般式(4)で表される化合物を物質上に塗布した後、熱分解、光分解及び/又は化学分解によりこれらの化合物から置換基を脱離させて、下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(2)で表される化合物からなる薄膜を前記物質の表面に形成し、前記物質の表面を改質することを特徴とする表面改質方法。
【化23】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1は水素原子または置換基を表す。nは1から16までの範囲の整数である。nが2以上の場合、複数の−OR1基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【化24】
(式中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。)
【化25】
【化26】
(前記一般式(3)及び(4)中、Xは−N=又は−CH=を表す。N1〜N4はそれぞれ窒素原子を表す。Mは金属原子または水素原子を表す。ただし、Mが水素原子を表す場合、2つの水素原子がN1〜N4のいずれか2つの窒素原子にそれぞれ結合する。Ra〜Rhはそれぞれ水素原子を表すか、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環を形成する。複数の芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環は同一でも異なっていてもよい。R1及びR2は各々独立に水素原子または置換基を表す。aは1又は2の整数を表す。lは1〜15の整数を表し、mは1〜15の整数を表し、かつl+mは2〜16の整数を表す。pは1〜16の整数を表す。l、m又はpが2以上の場合、複数の−OR1基又は−S(O)aR2基は同一でも異なっていてもよい。−OR1基及び−S(O)aR2基は、X、Ra〜Rh、またはRa及びRb、Rc及びRd、Re及びRf、Rg及びRhがそれぞれ一緒になって形成する芳香族炭化水素環もしくは芳香族へテロ環における水素原子と置換する。)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−298970(P2009−298970A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157225(P2008−157225)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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