結束ロボットの運転制御方法
【課題】結束ロボットを構築して作業能率向上、労力低減を図るべく結束ロボットを導入するにあたり、結束ミスが生じても良好に自動運転できる運転制御方法を提供する。
【解決手段】ワイヤーハーネスを係止維持可能な基板と、結束機Tを移動自在な移動装置3と、ワイヤーハーネスの結束予定箇所を記憶する結束箇所記憶手段89Aと、結束ミスの検出が自在な結束検出手段Uとを設け、結束機Tの移動及び結束作動を行わせて、予定された多数の結束予定箇所を順次結束させる自動運転制御方法において、結束検出手段Uによる結束ミス検知により、移動装置3と結束機Tを停止させ、かつ、結束ミスの生じた結束箇所を特定する自動停止工程と、移動装置3と結束機Tの停止後に結束ミスの回復処理を行う修復工程と、修復工程の後に自動運転の再始動指令を出し、かつ、結束ミスが生じた結束予定箇所の結束作動から自動運転を再開させる再始動工程とを行わせる。
【解決手段】ワイヤーハーネスを係止維持可能な基板と、結束機Tを移動自在な移動装置3と、ワイヤーハーネスの結束予定箇所を記憶する結束箇所記憶手段89Aと、結束ミスの検出が自在な結束検出手段Uとを設け、結束機Tの移動及び結束作動を行わせて、予定された多数の結束予定箇所を順次結束させる自動運転制御方法において、結束検出手段Uによる結束ミス検知により、移動装置3と結束機Tを停止させ、かつ、結束ミスの生じた結束箇所を特定する自動停止工程と、移動装置3と結束機Tの停止後に結束ミスの回復処理を行う修復工程と、修復工程の後に自動運転の再始動指令を出し、かつ、結束ミスが生じた結束予定箇所の結束作動から自動運転を再開させる再始動工程とを行わせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の線材や管材、ワイヤーハーネス等の結束対象を複数箇所で結束させる一連の作業を自動化させる結束ロボットの運転制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種産業機械や自動車においては、それに使用される電気、電子部品の配線も多く、多数の電線を束ねたワイヤーハーネスとして使用される。この場合、多数の電線をばらけないように束ねることが必要であり、また、複数に枝分かれ配線される構成も多いことから、例えば特許文献1において開示されるように、通常は、合成樹脂材等による結束バンドを用いて、電線を適当間隔毎に結束する手段が採られる。
【0003】
一般的な結束バンドは、長尺ベルト状のバンド部と、このバンド部の根元側に別体又は一体形成されたバンド係止部とから成り(特許文献1の図4参照)、バンド部をバンド係止部に通して引締めるという比較的簡単な操作により、電線群をしっかりと結束させることができる。このように電線等の結束対象への結束は手指操作で行える便利なものではあるが、多数の箇所に結束処理を施すには非能率的であるとともに、作業者の労力負担も大きい。また、結束の引締め強度もばらつき易い面もある。
【0004】
そこで、特許文献2や特許文献3において示されたように、結束バンドの電線への結束作動を自動化した結束機(結束工具)を用いることにより、手作業による面倒な結束操作を無くして簡単、便利で、しかも迅速に結束を行えるようにしている。結束機では、結束バンドの電線等の結束対象への巻付け、引締め、及びバンド余剰部分の切除が機械的に行われるようになっており、結束による結束対象の引締め強度を一定の範囲に維持することも容易である。
【特許文献1】特開2001−25141号公報
【特許文献2】特開平10−250706号公報
【特許文献3】特開平7−89512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記結束機の採用によって結束作業の容易化がある程度達成されたのではあるが、種々の機械装置及び電子器具が内蔵された結束機は結構重い(2kg前後)ので、多数箇所の結束等で長時間使用するには限界があった。特に高齢者や女性作業員には労力負担が大きい。加えて、近年の急激な電子化の波により、自動車等においても制御部品等の電子部品が増加して、そのための電線群であるワイヤーハーネスが長大化、肥大化し、その結束箇所も増加の一途をたどってきていることから、結束作業の見直しが迫られてきているのが実情である。
【0006】
そこで、結束機を用いた結束作業のさらなる機械化を進めて、作業能率向上や労力低減を図るべく、自動化された結束ロボットを望む声が高まってきている。結束ロボットで結束作業を行うには、予定される多数の結束箇所を順次結束して移動して行くように動作させる制御方法が必要になるが、その場合、結束ミスが生じることも考慮した制御を行わせることが必要に思われる。結束ミスとしては、結束バンドが無くなって結束不能になるとか、結束機内部における結束バンドの移送不良といった種々のケースが考えられる。
【0007】
本発明の目的は、上記実情に鑑みることにより、作業能率向上、労力低減を図るべく、結束ロボットを構築してさらなる結束作業の機械化を進めるにあたり、結束ミスが生じても良好に自動運転させることができる結束ロボットの運転制御方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の方法は、結束ロボットの運転制御方法において、
結束対象Wを結束自在な結束機Tと、結束対象Wを所定の形状に設定して係止維持可能な取付面1Aを有する基板1と、この基板1に係止維持されている前記結束対象Wに結束バンドVを巻回して結束するに適した位置又は姿勢に前記結束機Tを移動自在な移動装置3と、前記結束対象Wにおける結束予定箇所を記憶させておくことが自在な結束箇所記憶手段89Aと、結束ミスを検出自在な結束検出手段Uとを設けておき、
前記結束箇所記憶手段89Aの機能により、前記移動装置3による前記結束機Tの移動及び結束作動を行わせて、予め設定された複数の結束予定箇所を順次結束させる自動運転を行わせるにあたり、
前記結束検出手段Uによる結束ミスの検知により、前記移動装置3及び前記結束機Tの双方の作動を自動停止させ、かつ、その結束ミスの生じた予定結束箇所を特定する自動停止工程と、この自動停止工程による前記移動装置3及び前記結束機Tの停止後に結束ミスの回復処理を行う修復工程と、この修復工程の後に前記自動運転の再始動指令を出すとともに、この再始動指令の発令によって結束ミスが生じた結束予定箇所の結束作動から前記自動運転を再開させる再始動工程とを行わせることを特徴とする。
【0009】
請求項2の方法は、請求項1に記載の結束ロボットの運転制御方法において、前記結束検出手段Uが、前記結束機に装備された結束バンド有無検出センサ87であり、前記結束ミスの回復処理は結束バンドの補給処理であることを特徴とする。
【0010】
請求項3の方法は、請求項2に記載の結束ロボットの運転制御方法において、多数の結束バンドVを連ねて成るケーブルバンドCVを巻回装備自在な回転リール8を備え、前記結束機Tは、前記回転リール8から解されてくるケーブルバンドCVを用いて結束対象Wに結束バンドVを巻回して結束するものに構成されており、前記修復工程における結束バンドVの補給処理は、人為操作による回転リール8の交換作業であることを特徴とする。
【0011】
請求項4の方法は、請求項1に記載の結束ロボットの運転制御方法において、前記結束検出手段Uが、空結束を検出すべく前記結束機の結束部Dに設けられたヘッド検出センサ101、又は前記結束機T自体の動作不良を検出するものであることを特徴とする。
【0012】
請求項5の方法は、請求項1〜4の何れか一項に記載の結束ロボットの運転制御方法において、前記修復工程における再始動指令は、人為によるスイッチ操作であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の方法によれば、結束箇所記憶手段の機能によって結束機を移動装置で動かすことで、複数の結束予定箇所を順次結束して行く自動運転を行わせることができるので、ワイヤーハーネス等の結束箇所が多数存在する結束対象の結束作業を機械化させ、重い結束機を持っての人為結束作業が不要になって労力が軽減されるとともに、結束作業効率を向上させることが可能になる。
【0014】
この結束ロボットの自動運転中において、結束ミスが生じた場合には、自動停止工程によって移動装置及び結束機が停止され、かつ、何処の箇所に結束ミスが生じたのかが特定される。従って、結束ミスが生じたまま運転が続行されてしまう不都合を防止することができる。そして、移動装置と結束機とが停止すると、修復工程によって結束ミスの回復処理が行われる。回復処理としては、結束ミス検知によって停止された移動装置や結束機を、再起動でき得る状態に戻すとか、結束ミス表示の解除、或いは、結束バンドの補給(回転リールの交換)等、種々のものが考えられる。修復工程が済むと、再始動工程によって再始動指令が出されて移動装置及び結束機が再び動き出し、結束ミスの生じた結束予定箇所から結束作動が開始される。従って、結束ミスが生じた場合でも、その結束ミスが補足されて正規の結束が為された状態で結束対象を機械的に結束させることができる結束ロボットの運転制御方法を提供することができる。
【0015】
但し、再始動工程は、結束バンドが無くなったことによって結束ミスが生じたと判断される場合には、最後に結束された結束予定箇所の次の結束予定箇所から結束されるように、自動運転の再開場所が特定される機能が発揮されるようになる。
【0016】
請求項2の方法によれば、結束検出手段として結束機に装備されている結束バンドの有無検出センサを用いるものであるから、結束ロボット専用にセンサを新設する必要が無く、請求項1の方法による前記効果を経済的に得ることが出きる利点がある。また、前述したように、結束バンドが消費される等して無くなった状態が結束ミスとして検知されることがあるから、その場合の回復処理(修復工程)が結束バンドの補給処理とすることにより、種々のメリットのある結束ロボットの運転を円滑に続行させることができる。
【0017】
請求項3の方法によれば、結束バンドとして、これが大量に連ねられて回転リールに巻回されるケーブルバンドを用いるので、より長時間の連続結束作動が行えるとか、より結束箇所の多い結束対象にも好適に用いることが可能になり、実用上の利点が大となる結束ロボットの運転制御方法が提供できる。この場合の、修復工程においては、頻度の少ない回転リールの交換を人為操作によって行うものとしてあるので、自動結束運転の効率低下を招かないようにしながら、回転リールの交換操作に要するコストが安い合理性もある。
【0018】
請求項4の方法によれば、結束検出手段としては、前述のバンド有無検出センサの他、元々結束機に装備されている種々のセンサを用いることもできる。例えば、結束部に配備されたヘッド検出センサは、結束後にも尚結束バンドのヘッド部が存在し続けることを検出することにより、結束対象を巻回せずに引締められて実質的にヘッド部のみの状態となった結束バンド、即ち空結束であることが検出可能なセンサであるから、それによって結束ミスの検出として活用することができるのである。また、詳しくは実施例において説明するが、その他にも結束機には種々のセンサが設けられているので、それらのセンサを兼用することにより、結束ミスを検出できるセンサとして利用する経済的手段を採ることが可能になる。
【0019】
請求項5の方法によれば、上述のように、結束ミスの形態は多岐に亘る種々の場合が考えられるので、再始動指令を人為操作で行わせるようにすれば、例えば、一義的に制御によって再始動指令を発令させる方法に比べて、あらゆるケースの結束ミスにも適切に対応できるものとなり、全体としてより円滑な結束ロボットの運転状態を実現させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明による結束ロボットの運転制御方法の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1〜図4は結束ロボットの全体斜視図、正面図、左側面図、平面図、図5は正面壁の開閉作用図、図6は枠体背面の引戸を示す要部図、図7〜図9は結束装置やその要部を示し、図10、11はホース長可変機構を、図12は基板の構造を示す図である。図13,14はハーネスホルダーを示す図、図15,16は結束動作状態を示す作用図、図17は制御系統のブロック図、図18〜20は結束ロボットの制御フロー図、図21はタッチパネルの一表示例を夫々示す図である。
【実施例1】
【0021】
図1〜図4に結束ロボットAを示す。結束ロボットAは、自動車用のワイヤーハーネス(結束対象の一例)Wを結束自在な結束機Tを有した結束装置2と、ワイヤーハーネスWを所定の形状に設定して係止維持可能な取付面1Aを有する基板1と、この基板1に係止維持されているワイヤーハーネスWに結束バンドVを巻回して結束するに適した位置又は姿勢に結束機Tを移動自在な移動装置3と、ワイヤーハーネスWの所定箇所が結束されるように移動装置3及び結束機1の動作状態を司る制御部4と、結束バンドVの余剰部分を吸引回収する結束屑回収装置5と、これら基板1、結束装置2、移動装置3、制御部4、及び結束屑回収装置5を収容する枠体6とから構成されている。
【0022】
ここで、この結束ロボットAによるワイヤーハーネスWの自動結束作動の概略について説明すると、枠体6内に載置された基板1には、その上面である取付面1Aに展開状態で係止維持されたワイヤーハーネスWが装備されており、その上方には、下端に結束機Tが支持され、その上方にケーブルバンドCVが巻回装備された回転リール8が回転自在に支持される結束装置2が移動装置3に支持されており、結束機Tは三次元移動及び上下向きの支点X回りに回動移動自在に移動装置3に支持されている。ケーブルバンドCVは、多数の並列状の結束バンドVを、それら両端に小断面積でもって一体連結される長尺状のストランドC,Cで接続連結して成る一体成形品で構成されている。
【0023】
さて、基板1が正規にセットされていることを確認し、操作ボックス7を操作して自動結束運転を開始させる。すると、待機位置にある結束機Tが移動装置3によって先ず前後及び左右に動かされて、多数ある結束予定箇所K25のうちの1番目の結束箇所である第1結束予定箇所K1(図7参照)の直上位置に移動される。このとき、回動機構44により、第1結束予定箇所K1におけるワイヤーハーネスWの向きに合わせて適宜に結束ホルダ22を(結束機Tを)回動移動する制御は、結束機Tの左右移動と同時に行われる。次いで、上下移動機構43によって結束機Tは下降移動され、先端の一対の嘴部材9,10間の結束用空間S内にワイヤーハーネスWを取込み[図15(b)参照]、直ちに嘴部材9,10が閉じ移動するとともに結束作動して結束バンドVで第1結束予定箇所K1を結束する。結束によって生じた結束屑は、結束屑回収装置5によって直ちに吸引されて吸引機11に回収される。
【0024】
第1結束予定箇所K1での結束が終了すると、結束されたワイヤーハーネスWを結束用空間から抜き去るべく、一対の嘴部材9,10を開き移動させてから結束機Tを真上に上昇移動させる[図16(a)参照]。それから結束機Tを前後左右に移動させて第2結束予定箇所K2の位置であるポジション2(P2)に移動させる、というように、この一連の移動及び結束動作を繰り返すことにより、多数の結束箇所(例:25箇所)の結束作業が結束ロボットAによって自動的に行われるのである。尚、全ての結束が終了すると、結束機Tは最初の待機位置であるポジション27(P27)に戻るようになっている。次に、各部の構造について順次説明する。
【0025】
基板1は、図1〜図5、図12等に示すように、前後一対の横支持部材1aと左右端及び中央の三箇所で横支持部材1a,1aを連結する3個の縦支持部材1bとから成る横倒し「日」字形状の枠フレーム1Fにシナ材やベニヤ材等による木板1Bを載置してビス止め一体化して構成されている。木板1Bの上面である取付面1Aには、多数のハーネスホルダ15が取付けられており、手前側端部の左右には、引出し及び送り入れ用の取っ手(把手)16が左右一対配備されている。左右中央の縦支持部材1bの左右側面には、枠体6に固定された左右一対の係合部材95の横向き溝95aに嵌合するレール96が側方突出状に形成されており、この左右の係合部材95とレール96との係合により、基板1を前後スライド移動自在に枠体6の中間エリアE2(後述)に支持させてある。尚、図12は、枠フレーム1F内部の構造を開示すべく、枠フレーム1Fに対して木板1Bをずらした状態として描いてある。
【0026】
そして、一方の係合部材95には、基板1が枠体6内に収容された正規の作用位置(図1に示す位置)へセットされていることを検出する作用位置検出センサ90と、ワイヤーハーネスWを交換すべく枠体6から最大限引き出された交換位置(図5に示す位置)にあるかことを検出する交換位置検出センサ91とが取付けられている。これら検出センサ90,91は互いに同じ部品であって前後に対向する状態で配置されており、センサ本体90A,91Aに前後揺動移動可能な上下向きの接触子90a,91aが枢支された接触スイッチ型センサに構成されている。作用位置検出センサ90は、それの接触子90aが基板1の前側の横支持部材1aとの接当によって、そして交換位置検出センサ91は、それの接触子91aが基板1の後側の横支持部材1aとの接当によって、夫々検出作動するように構成されている。
【0027】
また、基板1を作用位置に係止固定する係止機構78が装備されている。係止機構78は、図4、図5、図12に示すように、左右の縦支持部材1bの内側に取付けられた係合部材79と、枠体6側に固定されたエアシリンダ80とで成り、エアシリンダ80のピストンロッド80aの先端部の挿脱が自在な凹入穴79aが係合部材79に形成されている。つまり、基板1が作用位置にあるときに、基板1の右手前端部に配置されている押スイッチ81を押し操作すれば、エアシリンダ80が突出動してピストンロッド80aが凹入穴79aに嵌り込み、基板1の前後移動を不能とする作用位置での係止状態が得られる。ワイヤーハーネスWの交換等で基板1を枠体6から引出すには、もう一度押しスイッチ81を押せばエアシリンダ80が短縮動して、ピストンロッド80aを凹入穴79aから抜け出し、基盤1が自由に前後スライドできる状態としてから、取っ手16を持って引出し操作すれば良い。
【0028】
ハーネスホルダ15は、図13、図14に示すように、取付面1Aにビス止めされる一対の脚部15kを有したホルダ本体15Aと、この本体15Aに横向き支点Qで開閉揺動移動自在に枢支される一対の揺動片15a,15bと、これら揺動片15a,15bの上端部どうしを近付けて閉じ付勢するための巻きバネ15cと、ハーネスを受止め付勢するために各揺動片15a,15bの上部どうしに亘って架設されるゴム紐15dとから構成されている。ホルダ本体15Aの上部に形成された下方への凹入部15eと、各揺動片15a,15bの上部内側に形成された円弧端15fにより、両揺動片15a,15bが閉じている自由状態では、側面視で円形のハーネス配置空間15sが形成されている。
【0029】
また、各揺動片15a,15bの上端部は、落し込み傾斜が施された湾曲上面に形成されており、ワイヤーハーネスWを押し下げれば、その分力によって両揺動片15a,15bが支点Qで開き揺動し、ゴム紐15dを押し下げながらハーネス配置空間15sに移動すれば、巻きバネ15cの付勢力によって両揺動片15a,15bが閉じ揺動する。つまり、ワイヤーハーネスWを単に押し下げ移動するだけで、ハーネスホルダ15のハーネス配置空間15sに、弛むことなく円形に保持した状態で係止維持させることができる便利なホルダである。
【0030】
結束装置2は、図1〜図5、及び図7〜図9に示すように、多数の結束バンドを連ねて成るケーブルバンドCVを巻回装備自在な回転リール8と、回転リール8から解されてくるケーブルバンドCVを用いてワイヤーハーネスWに結束バンドVを巻回しての結束が自在な結束機Tと、回転リール8から解されて結束機Tのケーブルバンド受入部18に至る途中のケーブルバンドCVを案内支持するガイド機構19等から構成されている。径の大なる回転リール8は、移動装置3における水平移動体20に前後向きの軸心Zで回転自在に支持されており、その水平移動体20に対して駆動上下移動自在に支持される上下移動体21にガイド機構19が支持されるとともに、上下移動体21に対して上下向きの回動軸心Xで回動自在に支持される結束ホルダ22に結束機Tが取付けられている。
【0031】
ガイド機構19は、ケーブルバンドCVをその移動方向である上下に所定長さを有した状態でガイドすべく対向配置される一対のガイド板23,24を上下移動体21に装備して成る中間ガイド部19Aと、この中間ガイド部19Aを経たケーブルバンドCVを、結束機Tのケーブルバンド受入部18に供給されるに適した姿勢に案内すべく、ケーブルバンド受入部18の近傍に配備される姿勢矯正部19Bとを有して構成されている。
【0032】
中間ガイド部19Aは、図9等に示すように、ケーブルバンドCVの厚みよりも少し広い間隔を空けて対向配置されるガイド板23,24間の偏平なガイド空間25において、ケーブルバンドCVが倒れ込まないように案内支持しながら抵抗少なく滑り移動できるように構成されている。両ガイド板23,24は、ケーブルバンドCVの移動経路であるガイド空間25が上下端において左側に湾曲するようにやや曲げられており、その上端開口部25aの近傍には上下一対で回転自在なガイドローラ26,26が配備されている。また、このガイドローラ対26,26と回転リール8との間においては、ケーブルバンドCVが左に向いて凸となる姿勢・形状に維持されるように、回転自在な規制ローラ27が水平移動体に支承されている。
【0033】
姿勢矯正部19Bは、図8等に示すように、結束機Tのケーブルバンド受入部18にケーブルバンドCVが不都合なく良好に搬入されるよう、予めケーブルバンドCVの姿勢をケーブルバンド受入部18に適合するようにするものであり、一対の回転自在な小径ローラ28,28を支持アーム29を介して結束ホルダ22に装備して構成されている。これは、後述する回動機構44によって結束ホルダ22、即ち結束機Tが上下移動体21に対して回動軸心X回りに最大で約180度捩じられるからであり、それによってケーブルバンドCVが捩じられても、円滑にケーブルバンド受入部18に受け入れられるようになる。
【0034】
以上の構成を持つガイド機構19によれば、次のような作用効果が得られる。水平移動体20に支持される回転リール8と結束ホルダ22に支持される結束機Tとは上下に離れており、かつ、回転リール8に対して結束機Tは上下移動及び回動移動してこれら両者の間隔が変化することから、回転リール8から解されてケーブルバンド受入部18に至る間のいケーブルバンド長さが比較的長いものとなる。加えて、回転リール8から解されるケーブルバンドCVの姿勢(向き)とケーブルバンド受入部18の姿勢(向き)とが、元々90度近く捩じられている。そのため、ガイド機構19が無いと、結束機Tの捩じられ角度によっては、ケーブルバンドCVがケーブルバンド受入部18に円滑に入り難いとか、ケーブルバンドが途中で折れ曲ってしまうといった不都合のおそれがあるとともに、ケーブルバンドが消費されて回転リール8から最後の一巻き部分が解れると、そのケーブルバンド後端部分が基板1上に大きく垂れ下がり、結束作業に悪影響を及ぼすおそれが高い状態になることが予測される。
【0035】
そこで、姿勢矯正部19Bを設けることにより、結束装置2の構造に基づく元々のケーブルバンドCVの捩じれに拘わらずに、一対の小径ローラ28,28に挟持されるようにガイドされることで姿勢が矯正され、ケーブルバンド受入部18に円滑に入り込ませることができる。この姿勢矯正機能による利点は、結束機Tが回転リール8に対して回動移動されてケーブルバンドCVがさらに捩じられる、或いは反対方向に捩じられるようになっても同様に発揮される。そして、ケーブルバンドCVが無くなってその後端部が回転リール8から外れても、回転リール8と結束機Tとのほぼ上下中央に位置する中間ガイド部19Aによって支持されているので、一対のガイドローラ26,26から垂れ下がるバンド後端部は結束機Tの嘴部材9,10部位迄には達せず、結束作動に支障をきたすことが無い。また、さらにケーブルバンドCVが消費されて中間ガイド部19Aから外れても、姿勢矯正部19Bと結束機Tとの間には横方向の間隔があることから、垂れ下がったバンド後端部が嘴部材9,10に干渉しないものとなっている。
【0036】
結束機Tは、図7、図8、図17に示すように、手動操作用として結束工具(図17参照)であり、結束ホルダ22に装備すべく透明合成樹脂材製の結束屑回収部ケース39が取り外された状態で使用される。この結束機Tは公知に付き概略説明に止めるが、一対の嘴部材9,10等から成る結束部Dを有した結束本体30と、結束本体30から突設された握り部31、ケーブルバンド受入部18を有して結束本体30に開閉支点(図8参照)で揺動開閉可能に支持される送り部32と、握り部31に装備された起動スイッチ92等から構成されている。結束本体30の後端部にはコネクタ33を介して制御部4に続く電気配線34が接続されており、内部に装備される種々の機械装置類を制御部4から制御駆動できるようになっている。
【0037】
結束機Tに装備される種々の機械装置類としては、切断刃102(図8,17参照)、切断具103(図8,17参照)、図示しないが、嘴部材9,10の開閉機構、結束バンドの送出し機構、結束バンドの引締め機構等がある。切断刃102は、結束後のバンド部93を切除して結束屑となるバンド余剰部93aを生じさせるための切断機構であり、結束部Dにおける一対の嘴部材9,10の近傍位置に内装されている。切断具103は、ケーブルバンドCVから結束バンドVが分離された後の一対のストランドCを、結束バンドVの送り1ピッチに相当する長さ毎に細断してストランド余剰部Ca,Cbを生じさせるための長尺状のダブル切断機構であり、結束本体30の上端部に前後スライドする状態で配置されている。
【0038】
送り部32においては、受け入れたケーブルバンドCVを、前述の送出し機構により、隣合う結束バンドVの間隔、即ち1ピッチ分だけ結束作動毎に順次送る機能が発揮され、送り途中において公知の分離手段で結束バンドVが各ストランドC,Cから切り離されて、結束バンドVは待機位置に送られ、各ストランドC,Cは、前後一対の細断刃103a,103a(図8参照)を一体的に有した切断具103によって1ピッチ分ずつの長さに細断される。切断された結束屑であるストランド余剰部Ca,Cbは、結束本体30の左側面に形成された前後の縦通路35,36等を通って、結束ホルダ22内に形成される合流経路部37に集められる。結束本体30の左側面部分に形成される前縦通路35は、開閉自在な透明カバー35aを有している。後縦通路36は、開閉自在な透明カバー36aを有した端部通路36Aと、握り部31の内部に形成される内部通路36Bとから形成されている。また、切断機構によって切断された結束屑であるバンド余剰部93aは、小嘴部材10付近の結束本体30内部に形成された屑通路38を経て、合流経路部37に集められるようになっている。
【0039】
結束機Tにおける送り部32には、図8、図17に示すように、ケーブルバンド受入部18から供給されてくるケーブルバンドの有無を検出するために、接触式の結束バンド有無検出センサであるバンド存否センサ(結束検出手段Uの一例)87が装備されており、このバンド存否センサ87のケーブルバンドCVの非存在検出により、回転リール8の交換が必要になったことを知ることができる。但し、バンド存否センサ87の配置設定により、非存在検出情報が出ても、残り数回分(例:4回分)は結束が行えるものとなっている。
【0040】
また、図8、図14、図17に示すように、結束機Tにおける嘴部材9,10の付根部位におけるバンド供給溝(図示省略)には、結束バンドVのヘッド部94の有無を検出する接触式のヘッド検出センサ(結束検出手段Uの一例)101が装備されている。これは結束バンドVが正規に供給されると必ずヘッド部94の検出作動が行われる構成になっており、この部分における結束バンドVの存否センサとして用いることも可能である。正常な結束が行われた場合は、結束バンドVはワイヤーハーネスWに結束されて結束機Tから離れるので、ヘッド検出センサ101は暫く存在検出作動した後に非存在検出作動に切換るようになる。
【0041】
従って、一連の結束動作が終了しても、尚もヘッド検出センサ101が存在検出作動しているのは異常であり、それによって自動運転が停止され「結束ミス」表示が表示パネル7aに表示される。原因例としては、空結束により、実質的にヘッド部94だけがバンド供給溝(図示省略)に取り残される、という場合が考えられる。加えて、図示は省略するが、結束機tには、結束バンドVの送り不良検出センサや、電流値の増大検出センサといった種々のセンサが内蔵されており、これら複数のセンサ群により、後述の「結束ミス」の判断が行われるように構成されている。尚、夫々が結束検出手段Uの例であるこれらバンド存否センサ87やヘッド検出センサ101、並びにその他の内臓センサ群は、結束機(結束工具)T単体としての公知技術に付き、これ以上の詳細な説明は割愛する。
【0042】
移動装置3は、図7、図17に示すように、前後移動機構41、左右移動機構42、上下移動機構43、及び回動機構44とから成り、結束機Tを三次元移動自在であり、かつ、嘴部材9,10の上下向きの回動軸心Xに関する向きを360度変更設定自在に構成されている。前後移動機構41は、枠体6の左右側面壁6L,6Rの内側に配された前後向きフレーム45,45に、電気モータ等を用いた適宜の駆動手段によって駆動前後移動自在に前後移動フレーム46を架設して成り、左右移動機構42は、適宜の駆動手段手によって前後移動フレーム46に左右移動自在に水平移動体20を支持して成り、上下移動機構43は、適宜の駆動手段手によって水平移動体20に駆動上下スライド移動自在に上下移動体21を支持して成る。回動機構44は、結束機Tを着脱自在に支持する結束ホルダ22を、適宜の駆動手段を用いて上下移動体21に上下向きの回動軸心X回りで回動自在に支持して構成されている。この場合、ケーブルバンドCVや電気配線34の捩じれを考慮して、360度の範囲内で回動する状態に設定されている。
【0043】
結束ホルダ22は、図7、図8に示すように、上下向きの回動軸心Xで回動自在に支持されるブロック部22bと、オーバーハング下形状のホルダ本体22Aと、ホルダ本体22Aの側面蓋となるカバー部材22aと、姿勢矯正部19Bを支持すべくホルダ本体22Aから突設された支持アーム29から構成されている。ホルダ本体22Aには、結束機Tを装着するための三箇所の円形突起22x,22y,22zが取付けられている。上突起22xには握り部31の背面側が位置され、中心に雌ネジ40が形成されている取付突起22yと下突起22zとは、結束本体30と握り部31下部とを繋ぐ背面壁39a(結束屑回収部ケース39の背面壁)と握り部31とで形成される手指挿入空間部47に丁度嵌るように位置されている。支持アーム29は、ノブボルト49を用いてブロック部22bに着脱自在に取付けられる。
【0044】
結束ホルダ22としての左側壁となるカバー部材22aは、取付突起22yの雌ネジ40に螺合自在なノブボルト48を用いて結束機Tを挟持する状態でホルダ本体22Aに装備自在であり、装備された使用状態では、ホルダ本体22A、及びこれの底壁22cと後壁22d、背面壁39a、カバー部材22aによって囲まれた空間部が中継接続部Hであり、前述の合流経路部37として機能する(図8参照)。また、後壁22dの下端部には、後述する結束屑回収装置5の吸引ホース52(52B)先端の接続連結部52aを内嵌取付けして、合流経路部37に連通するための挿通孔22eが形成されている。そして、結束ホルダ22は、これに装着された状態の結束機Tが、一対の嘴部材9,10が丁度下端となり、かつ、それら嘴部材9,10先端どうしの間隔の中央に上下向きの回動軸心Xが通るように形状設定されており(図7,13参照)、回動機構44を駆動して結束ホルダ22を回動移動すると、一対の嘴部材9,10を中心に結束機Tが回動するように構成されている。
【0045】
結束屑回収装置5は、図2、図10、図11に示すように、底床50に載置される吸引機11、同じく底床50に載置して取付けられるホース長可変機構51、吸引機11の吸引口11aとホース長可変機構51とを繋ぐ基部ホース52Aと、ホース長可変機構51と結束ホルダ22とを繋ぐ主ホース52Bとで成る吸引ホース52から構成されている。吸引機11は屋外用等の一般的な掃除機で構成されており、基部ホース52Aをホース軸心に関して回転可能に装着している。ホース長可変機構51から出る主ホース52Bは、その前部が枠体6の支持される中間ガイド部53に相対移動自在に支承されるとともに、その後部が水平移動体20の下部にクランプ部54を用いて取付けられている。中間ガイド部53は、枠対6の左右フレーム75に左右スライド自在に支持されるスライダ53Aと、このスライダ53Aに回動自在に支持される回動体53Bとを有しており、移動装置3の動きに追従して左右及び回動移動して、吸引ホース52Bの円滑な配策状態を維持できるように構成されている。
【0046】
ホース長可変機構51は、移動装置3によって結束機Tが三次元移動することで変化するホース長に弛みなく追従できるようにするためのものであり、図10、図11に示すように、一対の縦フレーム55,55及び取付基板55Aを用いて底床50に固定取付けされる固定円板体56と、これに対して回転自在に支持される回転円板体57と、回転円板体57をホース巻取り方向に回動付勢させるテンション機構58から構成されている。
【0047】
固定円板体56は、円板部56Aと、その外端に取付けられる外周板部56Bとから成り、円板部56Aの中心部にボルト止めで取付けられる環状のフランジ部58には、軸受部材である筒状のブッシュ59を介して筒軸60が軸心Rで回転自在に支承されている。筒軸60に形成された外周凹溝60aには、互いにボルト連結される二つ割り構造のリング体61が相対回転自在に外嵌されており、そのリング体61をブッシュ59の側面に接する状態に寸法設定すること、及び後述する自在ベアリング63とにより、筒軸60の軸方向の位置決めが行われている。筒軸60の外端には、基部ホース52Aが外嵌装備されている。
【0048】
回転円板体57は、取出し筒62と共に筒軸60の軸端に固定取付けされる支持円板部57Aと、その外端に取付けられる外周板部57Bと、これの端に取り付けられるガイド円板部57Cとから成る。支持円板部57Aの三箇所には、円板部56Aに接して転動自在なボール63Aを有する自在ベアリング63が取付けられており、回転円板体57が倒れなく良好に回転できるようにされている。この回転円板体57の外周板部57Bとガイド円板部57C、及び固定円板体56の円板部56Aの外側部分と外周板部56Bで囲まれた環状の空間部が主ホース52Bの巻取りスペース64になっている。軸心Rを持つ取出し筒62の外端には主ホース52Bの一端が外嵌装備されており、ガイド円板部57Cに形成された切欠き57cから巻取りスペース64に取り込まれる主ホース52Bは、円板部56Aの後部上端部に設けた取出部65から上に向けて取出され、その上方に配置されている水平移動体20へと延設される。取出部65は、主ホース52Bを挟むように対向配置される回転自在な一対のガイドローラ65a,65aを設けて構成されている。
【0049】
テンション機構58は、ケース66内にワイヤーロープ67を巻取り付勢するようにした公知のものであり、付勢力を可変調節するための調整ノブ68付の仕様として、縦フレーム55,55を支持する取付基板55Aに載置装備されている。ケース66の頂部から上向きに取出されるワイヤーロープ67は、外周板部57B上に巻回され、先端のフック部67aがガイド円板部57Cにおける切欠き57c部分に引掛けられており、それによって回転円板体57を図10において矢印イ方向に回動付勢しており、その結果、主ホース52Bが巻取り方向に軽く引張り付勢されている。
【0050】
枠体6は、図1〜図6等に示すように、4本の縦フレーム74、複数の左右フレーム75、複数の前後フレーム76、及び複数の部分フレーム77を用いて、正面壁6S、背面壁6T、左側面壁6L、右側面壁6R、及び底床50とを有した箱状のものに構成されており、底床50上に吸引機11や配電盤12等が配置される下部エリアE1と、基板1が配置されて主に結束作動が行われる部分である中間エリアE2と、主に移動装置3が配置される上部エリアE3とに大別される。この実施形態では頂上壁は装備されておらず、吹きぬけ状態となっているが、配置場所の条件等に応じて頂壁6T(図5の仮想線参照)を設けても良い。四方を囲む各壁6S,6T,6L,6Rは、いずれも中間エリアE2と上部エリアE3とをカバーするものであり、下部アリアE1は開放状態とされている。また、各壁6S,6T,6L,6Rは、内部を見通せるよう、アクリル板等の透明合成樹脂板を用いているが、部分的に非透明な板材を使用しても良い。
【0051】
正面壁6Sは、図1,2,5に示すように、中間エリアE2の中央部に左右幅の大なる基板出入れ用開口部13及びその開け閉めを行う開閉扉14が装備されるとともに、その右隅には制御ボックス7が操作自在に配置されている。横長形状の開閉扉14は、枠部14aと透明樹脂板14bとから成り、開け閉め操作用の一対の取っ手14cが枠部14aに装備されており、枠部14aの下部に取付られた一対の蝶番70によって開閉自在に枠体6に装備される。つまり、開閉扉14を開くことでワイヤーハーネスWを取り換えるべく基板1を取出す子とが可能になり、基板1を枠体6内に収容すれば開閉扉14を上昇揺動させて閉めることができる構成となっている。尚、開閉扉14の閉じ状態を検出する第1閉じセンサ82が枠体6に装備されている。
【0052】
正面壁6Sは、その上部エリアE3が観音開き構造を採る一対の上部扉71,71によって開放自在とされており、取っ手71aに手指を掛けての人為操作により、図1に示す閉じ状態と、図5に示すように、左右端に設けた蝶番72によって横開きされた開き状態とに揺動切換え自在である。この上部扉71は回転リール8の交換やメンテナンスをするべく、上部エリアE3を開放状態とするためのものであり、通常は閉じ状態にしておく。また、上部扉71を開くことにより、移動装置3の各部メンテナンスを行うことも可能である。これら各上部扉71の閉じ状態を検出する一対の第2閉じセンサ83が枠体6に装備されている。上部扉71は、透明合成樹脂板71Bを扉枠71Aで支持して構成されている。
【0053】
背面壁6Tの中間エリアE2部分には、図6に示すように、スライド開閉構造とすべく左右一対の引戸72,72が装備されている。各引戸72は、内部の視認が可能となるように透明板72aから成り、枠体6に形成される前後一対のレール部73,73に嵌って左右スライド自在であり、何れかの引戸72を開け閉めすることにより、基板1、吸引ホース52、或いは各種機器を枠体6後部からメンテナンスできるようになっている。そして、枠体6には、各引戸72の閉じ状態を検出する引戸センサ97が装備されている。引戸センサ97は、前述の作用位置検出センサ90や交換位置検出センサ91と同じものであり、センサ本体97Aと、引戸72に接触自在な接触子97aとから成る接触式センサに構成されている。また、下部エリアE1である底床50には、吸引機11、ホース長可変機構51、配電盤12、及び結束ロボットAの制御ボックス84等が配置されており、これら各機械装置類を四方からメンテナンス可能としてある。
【0054】
制御部4は、操作ボックス7、配電盤12、制御ボックス84等から構成されており、結束機T、移動装置3、結束屑回収装置5の動きを司るとともに、各種センサ、スイッチ類が接続されている。操作ボックス7は、図2、図21に示すように、正面壁6Sの中間エリアE2の右隅に配置され、上部に表示パネル(タッチパネル)7aを有するとともに、左下部分には結束機用コントロールボックス99と、その上の結束機用電源制御ボックス98とが装備されている。結束機用コントロールボックス99にはリセットスイッチ100が配置されている。表示パネル7aに表示される操作形態は種々のものが設定されており、一例を図21に示す。図21において、表示されているスイッチ類の部分の画面を手指でタッチすることで操作できるようになっており、例えば、画面上に表示されている「手動」と「自動」の切換えスイッチ85は、タッチすることで順次切換るバッジ式に構成されている。尚、移動装置3の制御については、操作ボックス7とは別に設けられた操縦ハンドル86の操作により、テスト的な部分駆動等の任意の操作が可能となっている。
【0055】
次に、制御部4による結束ロボット自動運転の制御方法について説明する。図17には制御部4における制御系統のブロック図が示されている。操作ボックス7には、自動運転制御手段89を有したCPU等による制御装置88が装備されており、自動運転制御手段89は、結束予定箇所(K1〜K25)を記憶させておくことが自在な結束箇所記憶手段89Aを有している。この制御部4による結束ロボットの運転制御方法は、次のようである。結束箇所記憶手段89Aの機能により、移動装置3による結束機Tの移動及び結束作動を行わせて、予め設定された多数(25箇所)の結束予定箇所K1〜K25を順次結束させる自動運転を行わせる。
【0056】
即ち、図18〜図20に示す自動運転制御フロー図のように、最初に、自動モード、手動モードから自動モードを選択する運転モード選択(ステップ♯1)を行い、自動運転が開始される(ステップ♯2)。このとき、第1閉じセンサ82、一対の第2閉じセンサ83,83、作用位置検出センサ90、及び一対の引戸センサ97,97の全てが検出作動していること、即ち、基板1が正規の作用位置にあり、かつ、開閉扉14、左右の上部扉71、及び一対の引戸72,72の全てが閉じている状態が前提条件であり、何れか一つ以上のセンサが検出作動していないと自動運転は開始されない(このときには、その旨表示パネル7aに表示される)。
【0057】
自動運転が開始されると、移動装置3が駆動されて結束機Tを第1結束予定箇所K1の位置であるP1(ポジション1)に移動させ(ステップ♯11)、P1への移動完了後に結束指示(結束指令)が出される(ステップ♯12)。そして、バンド存否センサ87の検出作動による結束バンドの有無判断(ステップ♯13−1)が為され、結束バンドVが無い場合にはヘッド検出センサ101等による結束OKかNGかの判断(ステップ♯13−2)へ進み、結束バンドVが有る場合にもヘッド検出センサ101等による結束OKかNGかの判断(ステップ♯13−3)へ進む。ステップ♯13−2において結束NGであれば、即ち、結束バンドVが無く、かつ、結束不良であるときにはバンド補給再結束ルーチンF1に進み、ステップ♯13−2において結束OKであれば、即ち、結束バンドVが無く、かつ、結束良好であるときにはバンド補給ルーチンG1に進む。また、ステップ♯13−3において結束NGであれば、即ち、結束バンドVが有り、かつ、結束不良であるときには再結束ルーチンL1に進み、ステップ♯13−3において結束OKであれば、即ち、結束バンドVが有り、かつ、結束良好であるときには次のステップ♯21へ進む。以上のステップ♯11〜ステップ♯13−3が一つの結束予定箇所K1(P1)における結束作動の1サイクルである。
【0058】
バンド補給再結束ルーチンF1は、結束バンドVが無く、かつ、結束NGになると、結束ロボットAの自動運転が停止され(ステップ♯14)、表示パネル7aに結束ミス表示が為される(ステップ♯15)。つまり、この場合の「結束ミス」とは、ケーブルバンドCVが消費されて無くなり、かつ、結束自体も正規に行われていない、という極めて稀なケースを意味しており、例えば、表示パネル7aに「P1結束NG・バンド無」といった具合に表示されるようにすれば好都合である。そこで、結束機用コントロールボックス99のリセットスイッチ100を手指で操作する(図21参照)、といった人為操作でミス表示を解除する(ステップ♯16)と、それに伴って移動装置3が作動して水平移動台20が最も前方、即ち上面壁6Sに寄った回転リール交換位置であるポジション26に移動される(ステップ♯17)。
【0059】
しかして、左右何れか若しくは両方の上部扉71を開き、空になった回転リール8を外し、ケーブルバンドCVが満載された回転リール8に付換える人為作業による回転リール交換(ステップ♯18)が行われ、付換えが完了すると結束やり直しの結束予定箇所K1、即ちこの場合にはP1を人為操作で入力(ステップ♯19)する。人為操作によるポジションP1の入力に伴って自動運転が再開され(ステップ♯20)、移動装置3が作動して結束機TをP1(ポジション1)に移動させる工程(ステップ♯11)が再び行われる。この人為操作を含めた一連の回転リール交換及び結束やり直し工程をバンド補給再結束ルーチンF1(F2〜F25)と呼ぶものとする。
【0060】
バンド補給ルーチンG1は、結束バンドVが無く、かつ、結束OKであるときに行われるサブルーチンであり、バンド補給再結束ルーチンF1において、人為操作によるポジション(P1)入力(ステップ♯19)が省略されたルーチンである。つまり、この場合の「結束ミス」とは、バンド存否センサ87のケーブルバンドCVの非存在検出によって結束ベルトVが後数回の結束で無くなることを意味しており、回転リール8を交換して下さい、との注意喚起が行われているだけで、結束自体には問題が無い状態のことである。従って、第1結束予定箇所K1での結束は予定通り済んでいるから、この場合には、回転リール8の交換後の自動運転再開(ステップ♯20)に伴い、結束機Tは次の行先である第2結束予定箇所であるP2へ移動されることとなる。このバンド補給ルーチンG1は、ケーブルバンドCVが無くなって回転リール8を交換するときにのみ行われるルーチンであり、頻度は少ない。
【0061】
再結束ルーチンL1は、結束バンドVが有り、かつ、結束NGであるときに行われるサブルーチンであり、バンド補給再結束ルーチンF1における回転リール8の交換に要する三つのステップ(ステップ♯17〜ステップ♯19)が省略されたルーチンである。つまり、この場合の「結束ミス」とは、ヘッド検出センサ101等による結束NG判断によるものであって、結束バンドVはあるが、何らの理由によって結束不良が生じている状態を意味している。何らかの理由とは、結束バンドの送り抵抗増大、引っ掛りによる供給不良といった結束機T内部における不都合や、空結束等、種々のエラーが考えられる。この場合には、自動運転再開(ステップ♯20)に伴い、結束機Tには結束指示(ステップ♯12)からやり直されるようになる。この場合の結束ミスが最も生じ易いものであり、場合によっては目視によって結束ミスであることを検知することも有り得る。
【0062】
前記何れかのサブルーチンF1,G1,L1が行われるか、或いは結束が問題なく行われて何れのサブルーチンも通らず、第1結束予定箇所K1における結束が無事終了すると、図19に示すように、移動装置3が駆動されて結束機Tが第2結束予定箇所K2の位置であるP2に移動され(ステップ♯21)、P2への移動完了後に結束指示(結束指令)が出され(ステップ♯22)る。それからの、結束バンドVの有無判断(ステップ♯23−1)、二箇所の結束良否判断(ステップ♯23−2,♯23−3)による三種のサブルーチンF2,G2,L2等の内容は前述した第1結束予定箇所K1におけるものと同じであり、重複説明を省略する。
【0063】
このような動作が次の第3結束予定箇所K3から第25結束予定箇所K25(図20参照)に亘って順次繰り返され、25箇所全ての結束が終了(ステップ♯253−3がYES)すると、移動装置3が結束機Tをロボット待機位置であるP27に移動させ(ステップ♯270)、自動運転が終了する。尚、各サブルーチンF,G,Lの数字は、結束予定箇所の数字と同じ(例:第14結束予定箇所ではF14,G14,L14)であり、「結束指示」等の主ルーチン部分におけるステップ♯の数字も結束予定箇所の数字と同じである(例:第21結束予定箇所K21における「P21へ移動」は♯211)となる。
【0064】
つまり、自動運転制御手段89による運転制御方法は、バンド存否センサ87、ヘッド検出センサ101等のセンサ群による結束ミスの検知により、移動装置3及び結束機Tの双方の作動を自動停止させ、かつ、その結束ミスの生じた結束予定箇所(例えばK2)を特定する自動停止工程と、この自動停止工程による移動装置3及び結束機Tの停止後に結束ミスの回復処理を行う修復工程と、行われる結束ミスの回復処理後に自動運転の再始動指令を出す修復工程と、この修復工程の後に自動運転の再始動指令を出すとともに、この再始動指令の発令によって結束ミスが生じた結束予定箇所の結束作動から自動運転を再開させる再始動工程とを行わせることを特徴としている。
【0065】
自動停止工程は、バンド補給再結束ルーチンF1〜25においては、バンド存否センサ87を用いた結束OKか否かを判断するステップ♯13(♯23〜♯253)と、移動装置3及び結束機Tの停止、即ちロボットを停止させるステップ♯14(♯24〜♯254)との部分であり、修復工程は、結束機TをP26(回転リール交換ポジション)に移動させるステップ♯17(♯27〜♯257)と、人為作業による回転リールの交換作業を行うステップ♯18(♯28〜♯258)との部分であり、再始動工程は、人為操作でポジションP1(P2〜P25)[再結束させる箇所の位置]の入力を行うステップ♯19(♯29〜♯259)と、実際に移動装置3が動いて結束機Tを入力されたポジションに向けて移動させるステップ♯20(♯30〜♯260)との部分である。
【0066】
バンド補給ルーチンG1〜25においては、自動運転再開のステップ♯20(♯30〜♯260)が再始動工程に相当しており、自動停止工程と修復工程とはバンド補給再結束ルーチンL1〜25の場合と同じである。また、再結束ルーチンL1〜25においては、結束ミス表示のステップ♯15(♯25〜♯255)と、ミス表示解除のステップ♯16(♯26〜♯256)との部分で修復工程に相当し、自動運転再開のステップ♯20(♯30〜♯260)が再始動工程に相当し、自動停止工程に関してはバンド補給再結束ルーチンF1〜25の場合と同じである。
【0067】
自動運転が正規に終了すると、開閉扉14を開けてから取っ手16,16を持って基板1を引張り出して、多数のハーネスホルダ15から結束後のワイヤーハーネスWを取出し、結束されていないワイヤーハーネスWを所定の形状となるように多数のハーネスホルダ15に係止させるハーネス交換作業を行い、基板1を押込んで枠体6内に収容された作用位置にセットする。それから開閉扉14を閉じ操作し、操作パネル7aに表示されている「運転」部分を手指でタッチし(図21参照)、次の結束の自動運転をスタートさせるのである。
【0068】
つまり、制御部4による結束ロボットAの運転制御方法は、結束箇所記憶手段89Aの機能により、移動装置3による結束機Tの移動及び結束作動を行わせて、予め設定された複数の結束予定箇所K1〜K25を順次結束させる自動運転を行わせるにあたり、結束検出手段Uによる結束ミスの検知により、移動装置3及び結束機Tの双方の作動を自動停止させ、かつ、その結束ミスの生じた予定結束箇所を特定する自動停止工程と、この自動停止工程による移動装置3及び結束機Tの停止後に結束ミスの回復処理を行う修復工程と、この修復工程の後に自動運転の再始動指令を出すとともに、この再始動指令の発令によって結束ミスが生じた結束予定箇所の結束作動から自動運転を再開させる再始動工程とを行わせることを特徴とする。
【0069】
ところで、ステップ♯12,♯13等における結束予定箇所での公知の結束作動について、例として第1結束予定箇所K1の場合を用いて簡単に説明する。第1ポジションP1にある結束機Tは、図15(a)に示すように、一対の嘴部材9,10を結ぶ線分と平行なラインMと、ワイヤーハーネスWの軸方向ラインNとが直交(又はほぼ直交)する状態となるように、左右移動と同時に回動機構44(図17等を参照)によって回動移動(方向転換)された状態[図16(b)参照]にされてから下降移動され、結束用空間S内にワイヤーハーネスWの第1結束予定箇所K1を取込む。
【0070】
結束用空間S内に取込まれたワイヤーハーネスWの第1結束予定箇所K1には、図15(b)に示すように、主嘴部材9が湾曲スライド移動で、かつ、副嘴部材10が揺動移動で夫々閉じ移動されて、開き姿勢から閉じ姿勢に切換えられるとともに、結束バンドVが副嘴部材10及び主嘴部材9にこの順で案内送出され、バンド部93がヘッド部(バンド係止部)94に挿通されると同時に、引締め機構(図示省略)によってヘッド部94に対してバンド部93が引張られ、第1結束予定箇所K1におけるワイヤーハーネスWが確りと結束バンドVで結束される。結束が為される[図16(a)、(b)参照]と、一対の嘴部材9,10が開き移動されて開き姿勢とされてから、移動装置3によって結束機Tが上昇移動され、結束後の第1結束予定箇所K1が結束用空間Sから相対的に排出されるのである。
【0071】
移動装置3としては、前後と上下、左右と上下等の二次元移動する構造のものも可能である。結束機Tは、開閉作動する一対の嘴部材9,10の構成に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】結束ロボット全体の斜視図
【図2】結束ロボットの正面図
【図3】結束ロボットの左側面図
【図4】結束ロボットの平面図
【図5】開閉扉、上部扉の開閉、基板引出し等の作用を示す斜視図
【図6】背面壁の引戸部分を示す斜視図
【図7】結束装置全体の正面図
【図8】結束装置下部の結束機部分を示す斜視図
【図9】ガイド゛機構の中間ガイド部を示す拡大正面図
【図10】結束屑回収装置のホース長可変機構を示す略側面図
【図11】ホース長可変機構の構造を示す断面図
【図12】基板の枠フレームの構造を示す斜視図
【図13】ハーネスホルダ及びワイヤーハーネス係止構造を示す一部切欠き正面図
【図14】ハーネスホルダの側面図
【図15】(a),(b)は結束機を下降移動して嘴部材間の結束用空間にワイヤーハーネスを取込んで結束する状態を示す作用図
【図16】(a)は結束後に嘴部材を開いて上昇させる状態の作用図、(b)は結束状態及びワイヤーハーネスと嘴部材との位置関係を示す平面図
【図17】結束自動運転に関する制御装置の概略構成を示すブロック図
【図18】制御装置による結束自動運転モードを示すフロー図その1
【図19】制御装置による結束自動運転モードを示すフロー図その2
【図20】制御装置による結束自動運転モードを示すフロー図その3
【図21】操作ボックスの表示パネルにおける表示例を示す正面図
【符号の説明】
【0073】
1 基板
1A 取付面
2 結束装置
3 移動装置
8 回転リール
87 結束バンド有無検出センサ
89 結束箇所記憶手段
101 ヘッド検出センサ
A 結束ロボット
CV ケーブルバンド
D 結束部
T 結束機
U 結束検出手段
V 結束バンド
W 結束対象
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の線材や管材、ワイヤーハーネス等の結束対象を複数箇所で結束させる一連の作業を自動化させる結束ロボットの運転制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種産業機械や自動車においては、それに使用される電気、電子部品の配線も多く、多数の電線を束ねたワイヤーハーネスとして使用される。この場合、多数の電線をばらけないように束ねることが必要であり、また、複数に枝分かれ配線される構成も多いことから、例えば特許文献1において開示されるように、通常は、合成樹脂材等による結束バンドを用いて、電線を適当間隔毎に結束する手段が採られる。
【0003】
一般的な結束バンドは、長尺ベルト状のバンド部と、このバンド部の根元側に別体又は一体形成されたバンド係止部とから成り(特許文献1の図4参照)、バンド部をバンド係止部に通して引締めるという比較的簡単な操作により、電線群をしっかりと結束させることができる。このように電線等の結束対象への結束は手指操作で行える便利なものではあるが、多数の箇所に結束処理を施すには非能率的であるとともに、作業者の労力負担も大きい。また、結束の引締め強度もばらつき易い面もある。
【0004】
そこで、特許文献2や特許文献3において示されたように、結束バンドの電線への結束作動を自動化した結束機(結束工具)を用いることにより、手作業による面倒な結束操作を無くして簡単、便利で、しかも迅速に結束を行えるようにしている。結束機では、結束バンドの電線等の結束対象への巻付け、引締め、及びバンド余剰部分の切除が機械的に行われるようになっており、結束による結束対象の引締め強度を一定の範囲に維持することも容易である。
【特許文献1】特開2001−25141号公報
【特許文献2】特開平10−250706号公報
【特許文献3】特開平7−89512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記結束機の採用によって結束作業の容易化がある程度達成されたのではあるが、種々の機械装置及び電子器具が内蔵された結束機は結構重い(2kg前後)ので、多数箇所の結束等で長時間使用するには限界があった。特に高齢者や女性作業員には労力負担が大きい。加えて、近年の急激な電子化の波により、自動車等においても制御部品等の電子部品が増加して、そのための電線群であるワイヤーハーネスが長大化、肥大化し、その結束箇所も増加の一途をたどってきていることから、結束作業の見直しが迫られてきているのが実情である。
【0006】
そこで、結束機を用いた結束作業のさらなる機械化を進めて、作業能率向上や労力低減を図るべく、自動化された結束ロボットを望む声が高まってきている。結束ロボットで結束作業を行うには、予定される多数の結束箇所を順次結束して移動して行くように動作させる制御方法が必要になるが、その場合、結束ミスが生じることも考慮した制御を行わせることが必要に思われる。結束ミスとしては、結束バンドが無くなって結束不能になるとか、結束機内部における結束バンドの移送不良といった種々のケースが考えられる。
【0007】
本発明の目的は、上記実情に鑑みることにより、作業能率向上、労力低減を図るべく、結束ロボットを構築してさらなる結束作業の機械化を進めるにあたり、結束ミスが生じても良好に自動運転させることができる結束ロボットの運転制御方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の方法は、結束ロボットの運転制御方法において、
結束対象Wを結束自在な結束機Tと、結束対象Wを所定の形状に設定して係止維持可能な取付面1Aを有する基板1と、この基板1に係止維持されている前記結束対象Wに結束バンドVを巻回して結束するに適した位置又は姿勢に前記結束機Tを移動自在な移動装置3と、前記結束対象Wにおける結束予定箇所を記憶させておくことが自在な結束箇所記憶手段89Aと、結束ミスを検出自在な結束検出手段Uとを設けておき、
前記結束箇所記憶手段89Aの機能により、前記移動装置3による前記結束機Tの移動及び結束作動を行わせて、予め設定された複数の結束予定箇所を順次結束させる自動運転を行わせるにあたり、
前記結束検出手段Uによる結束ミスの検知により、前記移動装置3及び前記結束機Tの双方の作動を自動停止させ、かつ、その結束ミスの生じた予定結束箇所を特定する自動停止工程と、この自動停止工程による前記移動装置3及び前記結束機Tの停止後に結束ミスの回復処理を行う修復工程と、この修復工程の後に前記自動運転の再始動指令を出すとともに、この再始動指令の発令によって結束ミスが生じた結束予定箇所の結束作動から前記自動運転を再開させる再始動工程とを行わせることを特徴とする。
【0009】
請求項2の方法は、請求項1に記載の結束ロボットの運転制御方法において、前記結束検出手段Uが、前記結束機に装備された結束バンド有無検出センサ87であり、前記結束ミスの回復処理は結束バンドの補給処理であることを特徴とする。
【0010】
請求項3の方法は、請求項2に記載の結束ロボットの運転制御方法において、多数の結束バンドVを連ねて成るケーブルバンドCVを巻回装備自在な回転リール8を備え、前記結束機Tは、前記回転リール8から解されてくるケーブルバンドCVを用いて結束対象Wに結束バンドVを巻回して結束するものに構成されており、前記修復工程における結束バンドVの補給処理は、人為操作による回転リール8の交換作業であることを特徴とする。
【0011】
請求項4の方法は、請求項1に記載の結束ロボットの運転制御方法において、前記結束検出手段Uが、空結束を検出すべく前記結束機の結束部Dに設けられたヘッド検出センサ101、又は前記結束機T自体の動作不良を検出するものであることを特徴とする。
【0012】
請求項5の方法は、請求項1〜4の何れか一項に記載の結束ロボットの運転制御方法において、前記修復工程における再始動指令は、人為によるスイッチ操作であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の方法によれば、結束箇所記憶手段の機能によって結束機を移動装置で動かすことで、複数の結束予定箇所を順次結束して行く自動運転を行わせることができるので、ワイヤーハーネス等の結束箇所が多数存在する結束対象の結束作業を機械化させ、重い結束機を持っての人為結束作業が不要になって労力が軽減されるとともに、結束作業効率を向上させることが可能になる。
【0014】
この結束ロボットの自動運転中において、結束ミスが生じた場合には、自動停止工程によって移動装置及び結束機が停止され、かつ、何処の箇所に結束ミスが生じたのかが特定される。従って、結束ミスが生じたまま運転が続行されてしまう不都合を防止することができる。そして、移動装置と結束機とが停止すると、修復工程によって結束ミスの回復処理が行われる。回復処理としては、結束ミス検知によって停止された移動装置や結束機を、再起動でき得る状態に戻すとか、結束ミス表示の解除、或いは、結束バンドの補給(回転リールの交換)等、種々のものが考えられる。修復工程が済むと、再始動工程によって再始動指令が出されて移動装置及び結束機が再び動き出し、結束ミスの生じた結束予定箇所から結束作動が開始される。従って、結束ミスが生じた場合でも、その結束ミスが補足されて正規の結束が為された状態で結束対象を機械的に結束させることができる結束ロボットの運転制御方法を提供することができる。
【0015】
但し、再始動工程は、結束バンドが無くなったことによって結束ミスが生じたと判断される場合には、最後に結束された結束予定箇所の次の結束予定箇所から結束されるように、自動運転の再開場所が特定される機能が発揮されるようになる。
【0016】
請求項2の方法によれば、結束検出手段として結束機に装備されている結束バンドの有無検出センサを用いるものであるから、結束ロボット専用にセンサを新設する必要が無く、請求項1の方法による前記効果を経済的に得ることが出きる利点がある。また、前述したように、結束バンドが消費される等して無くなった状態が結束ミスとして検知されることがあるから、その場合の回復処理(修復工程)が結束バンドの補給処理とすることにより、種々のメリットのある結束ロボットの運転を円滑に続行させることができる。
【0017】
請求項3の方法によれば、結束バンドとして、これが大量に連ねられて回転リールに巻回されるケーブルバンドを用いるので、より長時間の連続結束作動が行えるとか、より結束箇所の多い結束対象にも好適に用いることが可能になり、実用上の利点が大となる結束ロボットの運転制御方法が提供できる。この場合の、修復工程においては、頻度の少ない回転リールの交換を人為操作によって行うものとしてあるので、自動結束運転の効率低下を招かないようにしながら、回転リールの交換操作に要するコストが安い合理性もある。
【0018】
請求項4の方法によれば、結束検出手段としては、前述のバンド有無検出センサの他、元々結束機に装備されている種々のセンサを用いることもできる。例えば、結束部に配備されたヘッド検出センサは、結束後にも尚結束バンドのヘッド部が存在し続けることを検出することにより、結束対象を巻回せずに引締められて実質的にヘッド部のみの状態となった結束バンド、即ち空結束であることが検出可能なセンサであるから、それによって結束ミスの検出として活用することができるのである。また、詳しくは実施例において説明するが、その他にも結束機には種々のセンサが設けられているので、それらのセンサを兼用することにより、結束ミスを検出できるセンサとして利用する経済的手段を採ることが可能になる。
【0019】
請求項5の方法によれば、上述のように、結束ミスの形態は多岐に亘る種々の場合が考えられるので、再始動指令を人為操作で行わせるようにすれば、例えば、一義的に制御によって再始動指令を発令させる方法に比べて、あらゆるケースの結束ミスにも適切に対応できるものとなり、全体としてより円滑な結束ロボットの運転状態を実現させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明による結束ロボットの運転制御方法の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1〜図4は結束ロボットの全体斜視図、正面図、左側面図、平面図、図5は正面壁の開閉作用図、図6は枠体背面の引戸を示す要部図、図7〜図9は結束装置やその要部を示し、図10、11はホース長可変機構を、図12は基板の構造を示す図である。図13,14はハーネスホルダーを示す図、図15,16は結束動作状態を示す作用図、図17は制御系統のブロック図、図18〜20は結束ロボットの制御フロー図、図21はタッチパネルの一表示例を夫々示す図である。
【実施例1】
【0021】
図1〜図4に結束ロボットAを示す。結束ロボットAは、自動車用のワイヤーハーネス(結束対象の一例)Wを結束自在な結束機Tを有した結束装置2と、ワイヤーハーネスWを所定の形状に設定して係止維持可能な取付面1Aを有する基板1と、この基板1に係止維持されているワイヤーハーネスWに結束バンドVを巻回して結束するに適した位置又は姿勢に結束機Tを移動自在な移動装置3と、ワイヤーハーネスWの所定箇所が結束されるように移動装置3及び結束機1の動作状態を司る制御部4と、結束バンドVの余剰部分を吸引回収する結束屑回収装置5と、これら基板1、結束装置2、移動装置3、制御部4、及び結束屑回収装置5を収容する枠体6とから構成されている。
【0022】
ここで、この結束ロボットAによるワイヤーハーネスWの自動結束作動の概略について説明すると、枠体6内に載置された基板1には、その上面である取付面1Aに展開状態で係止維持されたワイヤーハーネスWが装備されており、その上方には、下端に結束機Tが支持され、その上方にケーブルバンドCVが巻回装備された回転リール8が回転自在に支持される結束装置2が移動装置3に支持されており、結束機Tは三次元移動及び上下向きの支点X回りに回動移動自在に移動装置3に支持されている。ケーブルバンドCVは、多数の並列状の結束バンドVを、それら両端に小断面積でもって一体連結される長尺状のストランドC,Cで接続連結して成る一体成形品で構成されている。
【0023】
さて、基板1が正規にセットされていることを確認し、操作ボックス7を操作して自動結束運転を開始させる。すると、待機位置にある結束機Tが移動装置3によって先ず前後及び左右に動かされて、多数ある結束予定箇所K25のうちの1番目の結束箇所である第1結束予定箇所K1(図7参照)の直上位置に移動される。このとき、回動機構44により、第1結束予定箇所K1におけるワイヤーハーネスWの向きに合わせて適宜に結束ホルダ22を(結束機Tを)回動移動する制御は、結束機Tの左右移動と同時に行われる。次いで、上下移動機構43によって結束機Tは下降移動され、先端の一対の嘴部材9,10間の結束用空間S内にワイヤーハーネスWを取込み[図15(b)参照]、直ちに嘴部材9,10が閉じ移動するとともに結束作動して結束バンドVで第1結束予定箇所K1を結束する。結束によって生じた結束屑は、結束屑回収装置5によって直ちに吸引されて吸引機11に回収される。
【0024】
第1結束予定箇所K1での結束が終了すると、結束されたワイヤーハーネスWを結束用空間から抜き去るべく、一対の嘴部材9,10を開き移動させてから結束機Tを真上に上昇移動させる[図16(a)参照]。それから結束機Tを前後左右に移動させて第2結束予定箇所K2の位置であるポジション2(P2)に移動させる、というように、この一連の移動及び結束動作を繰り返すことにより、多数の結束箇所(例:25箇所)の結束作業が結束ロボットAによって自動的に行われるのである。尚、全ての結束が終了すると、結束機Tは最初の待機位置であるポジション27(P27)に戻るようになっている。次に、各部の構造について順次説明する。
【0025】
基板1は、図1〜図5、図12等に示すように、前後一対の横支持部材1aと左右端及び中央の三箇所で横支持部材1a,1aを連結する3個の縦支持部材1bとから成る横倒し「日」字形状の枠フレーム1Fにシナ材やベニヤ材等による木板1Bを載置してビス止め一体化して構成されている。木板1Bの上面である取付面1Aには、多数のハーネスホルダ15が取付けられており、手前側端部の左右には、引出し及び送り入れ用の取っ手(把手)16が左右一対配備されている。左右中央の縦支持部材1bの左右側面には、枠体6に固定された左右一対の係合部材95の横向き溝95aに嵌合するレール96が側方突出状に形成されており、この左右の係合部材95とレール96との係合により、基板1を前後スライド移動自在に枠体6の中間エリアE2(後述)に支持させてある。尚、図12は、枠フレーム1F内部の構造を開示すべく、枠フレーム1Fに対して木板1Bをずらした状態として描いてある。
【0026】
そして、一方の係合部材95には、基板1が枠体6内に収容された正規の作用位置(図1に示す位置)へセットされていることを検出する作用位置検出センサ90と、ワイヤーハーネスWを交換すべく枠体6から最大限引き出された交換位置(図5に示す位置)にあるかことを検出する交換位置検出センサ91とが取付けられている。これら検出センサ90,91は互いに同じ部品であって前後に対向する状態で配置されており、センサ本体90A,91Aに前後揺動移動可能な上下向きの接触子90a,91aが枢支された接触スイッチ型センサに構成されている。作用位置検出センサ90は、それの接触子90aが基板1の前側の横支持部材1aとの接当によって、そして交換位置検出センサ91は、それの接触子91aが基板1の後側の横支持部材1aとの接当によって、夫々検出作動するように構成されている。
【0027】
また、基板1を作用位置に係止固定する係止機構78が装備されている。係止機構78は、図4、図5、図12に示すように、左右の縦支持部材1bの内側に取付けられた係合部材79と、枠体6側に固定されたエアシリンダ80とで成り、エアシリンダ80のピストンロッド80aの先端部の挿脱が自在な凹入穴79aが係合部材79に形成されている。つまり、基板1が作用位置にあるときに、基板1の右手前端部に配置されている押スイッチ81を押し操作すれば、エアシリンダ80が突出動してピストンロッド80aが凹入穴79aに嵌り込み、基板1の前後移動を不能とする作用位置での係止状態が得られる。ワイヤーハーネスWの交換等で基板1を枠体6から引出すには、もう一度押しスイッチ81を押せばエアシリンダ80が短縮動して、ピストンロッド80aを凹入穴79aから抜け出し、基盤1が自由に前後スライドできる状態としてから、取っ手16を持って引出し操作すれば良い。
【0028】
ハーネスホルダ15は、図13、図14に示すように、取付面1Aにビス止めされる一対の脚部15kを有したホルダ本体15Aと、この本体15Aに横向き支点Qで開閉揺動移動自在に枢支される一対の揺動片15a,15bと、これら揺動片15a,15bの上端部どうしを近付けて閉じ付勢するための巻きバネ15cと、ハーネスを受止め付勢するために各揺動片15a,15bの上部どうしに亘って架設されるゴム紐15dとから構成されている。ホルダ本体15Aの上部に形成された下方への凹入部15eと、各揺動片15a,15bの上部内側に形成された円弧端15fにより、両揺動片15a,15bが閉じている自由状態では、側面視で円形のハーネス配置空間15sが形成されている。
【0029】
また、各揺動片15a,15bの上端部は、落し込み傾斜が施された湾曲上面に形成されており、ワイヤーハーネスWを押し下げれば、その分力によって両揺動片15a,15bが支点Qで開き揺動し、ゴム紐15dを押し下げながらハーネス配置空間15sに移動すれば、巻きバネ15cの付勢力によって両揺動片15a,15bが閉じ揺動する。つまり、ワイヤーハーネスWを単に押し下げ移動するだけで、ハーネスホルダ15のハーネス配置空間15sに、弛むことなく円形に保持した状態で係止維持させることができる便利なホルダである。
【0030】
結束装置2は、図1〜図5、及び図7〜図9に示すように、多数の結束バンドを連ねて成るケーブルバンドCVを巻回装備自在な回転リール8と、回転リール8から解されてくるケーブルバンドCVを用いてワイヤーハーネスWに結束バンドVを巻回しての結束が自在な結束機Tと、回転リール8から解されて結束機Tのケーブルバンド受入部18に至る途中のケーブルバンドCVを案内支持するガイド機構19等から構成されている。径の大なる回転リール8は、移動装置3における水平移動体20に前後向きの軸心Zで回転自在に支持されており、その水平移動体20に対して駆動上下移動自在に支持される上下移動体21にガイド機構19が支持されるとともに、上下移動体21に対して上下向きの回動軸心Xで回動自在に支持される結束ホルダ22に結束機Tが取付けられている。
【0031】
ガイド機構19は、ケーブルバンドCVをその移動方向である上下に所定長さを有した状態でガイドすべく対向配置される一対のガイド板23,24を上下移動体21に装備して成る中間ガイド部19Aと、この中間ガイド部19Aを経たケーブルバンドCVを、結束機Tのケーブルバンド受入部18に供給されるに適した姿勢に案内すべく、ケーブルバンド受入部18の近傍に配備される姿勢矯正部19Bとを有して構成されている。
【0032】
中間ガイド部19Aは、図9等に示すように、ケーブルバンドCVの厚みよりも少し広い間隔を空けて対向配置されるガイド板23,24間の偏平なガイド空間25において、ケーブルバンドCVが倒れ込まないように案内支持しながら抵抗少なく滑り移動できるように構成されている。両ガイド板23,24は、ケーブルバンドCVの移動経路であるガイド空間25が上下端において左側に湾曲するようにやや曲げられており、その上端開口部25aの近傍には上下一対で回転自在なガイドローラ26,26が配備されている。また、このガイドローラ対26,26と回転リール8との間においては、ケーブルバンドCVが左に向いて凸となる姿勢・形状に維持されるように、回転自在な規制ローラ27が水平移動体に支承されている。
【0033】
姿勢矯正部19Bは、図8等に示すように、結束機Tのケーブルバンド受入部18にケーブルバンドCVが不都合なく良好に搬入されるよう、予めケーブルバンドCVの姿勢をケーブルバンド受入部18に適合するようにするものであり、一対の回転自在な小径ローラ28,28を支持アーム29を介して結束ホルダ22に装備して構成されている。これは、後述する回動機構44によって結束ホルダ22、即ち結束機Tが上下移動体21に対して回動軸心X回りに最大で約180度捩じられるからであり、それによってケーブルバンドCVが捩じられても、円滑にケーブルバンド受入部18に受け入れられるようになる。
【0034】
以上の構成を持つガイド機構19によれば、次のような作用効果が得られる。水平移動体20に支持される回転リール8と結束ホルダ22に支持される結束機Tとは上下に離れており、かつ、回転リール8に対して結束機Tは上下移動及び回動移動してこれら両者の間隔が変化することから、回転リール8から解されてケーブルバンド受入部18に至る間のいケーブルバンド長さが比較的長いものとなる。加えて、回転リール8から解されるケーブルバンドCVの姿勢(向き)とケーブルバンド受入部18の姿勢(向き)とが、元々90度近く捩じられている。そのため、ガイド機構19が無いと、結束機Tの捩じられ角度によっては、ケーブルバンドCVがケーブルバンド受入部18に円滑に入り難いとか、ケーブルバンドが途中で折れ曲ってしまうといった不都合のおそれがあるとともに、ケーブルバンドが消費されて回転リール8から最後の一巻き部分が解れると、そのケーブルバンド後端部分が基板1上に大きく垂れ下がり、結束作業に悪影響を及ぼすおそれが高い状態になることが予測される。
【0035】
そこで、姿勢矯正部19Bを設けることにより、結束装置2の構造に基づく元々のケーブルバンドCVの捩じれに拘わらずに、一対の小径ローラ28,28に挟持されるようにガイドされることで姿勢が矯正され、ケーブルバンド受入部18に円滑に入り込ませることができる。この姿勢矯正機能による利点は、結束機Tが回転リール8に対して回動移動されてケーブルバンドCVがさらに捩じられる、或いは反対方向に捩じられるようになっても同様に発揮される。そして、ケーブルバンドCVが無くなってその後端部が回転リール8から外れても、回転リール8と結束機Tとのほぼ上下中央に位置する中間ガイド部19Aによって支持されているので、一対のガイドローラ26,26から垂れ下がるバンド後端部は結束機Tの嘴部材9,10部位迄には達せず、結束作動に支障をきたすことが無い。また、さらにケーブルバンドCVが消費されて中間ガイド部19Aから外れても、姿勢矯正部19Bと結束機Tとの間には横方向の間隔があることから、垂れ下がったバンド後端部が嘴部材9,10に干渉しないものとなっている。
【0036】
結束機Tは、図7、図8、図17に示すように、手動操作用として結束工具(図17参照)であり、結束ホルダ22に装備すべく透明合成樹脂材製の結束屑回収部ケース39が取り外された状態で使用される。この結束機Tは公知に付き概略説明に止めるが、一対の嘴部材9,10等から成る結束部Dを有した結束本体30と、結束本体30から突設された握り部31、ケーブルバンド受入部18を有して結束本体30に開閉支点(図8参照)で揺動開閉可能に支持される送り部32と、握り部31に装備された起動スイッチ92等から構成されている。結束本体30の後端部にはコネクタ33を介して制御部4に続く電気配線34が接続されており、内部に装備される種々の機械装置類を制御部4から制御駆動できるようになっている。
【0037】
結束機Tに装備される種々の機械装置類としては、切断刃102(図8,17参照)、切断具103(図8,17参照)、図示しないが、嘴部材9,10の開閉機構、結束バンドの送出し機構、結束バンドの引締め機構等がある。切断刃102は、結束後のバンド部93を切除して結束屑となるバンド余剰部93aを生じさせるための切断機構であり、結束部Dにおける一対の嘴部材9,10の近傍位置に内装されている。切断具103は、ケーブルバンドCVから結束バンドVが分離された後の一対のストランドCを、結束バンドVの送り1ピッチに相当する長さ毎に細断してストランド余剰部Ca,Cbを生じさせるための長尺状のダブル切断機構であり、結束本体30の上端部に前後スライドする状態で配置されている。
【0038】
送り部32においては、受け入れたケーブルバンドCVを、前述の送出し機構により、隣合う結束バンドVの間隔、即ち1ピッチ分だけ結束作動毎に順次送る機能が発揮され、送り途中において公知の分離手段で結束バンドVが各ストランドC,Cから切り離されて、結束バンドVは待機位置に送られ、各ストランドC,Cは、前後一対の細断刃103a,103a(図8参照)を一体的に有した切断具103によって1ピッチ分ずつの長さに細断される。切断された結束屑であるストランド余剰部Ca,Cbは、結束本体30の左側面に形成された前後の縦通路35,36等を通って、結束ホルダ22内に形成される合流経路部37に集められる。結束本体30の左側面部分に形成される前縦通路35は、開閉自在な透明カバー35aを有している。後縦通路36は、開閉自在な透明カバー36aを有した端部通路36Aと、握り部31の内部に形成される内部通路36Bとから形成されている。また、切断機構によって切断された結束屑であるバンド余剰部93aは、小嘴部材10付近の結束本体30内部に形成された屑通路38を経て、合流経路部37に集められるようになっている。
【0039】
結束機Tにおける送り部32には、図8、図17に示すように、ケーブルバンド受入部18から供給されてくるケーブルバンドの有無を検出するために、接触式の結束バンド有無検出センサであるバンド存否センサ(結束検出手段Uの一例)87が装備されており、このバンド存否センサ87のケーブルバンドCVの非存在検出により、回転リール8の交換が必要になったことを知ることができる。但し、バンド存否センサ87の配置設定により、非存在検出情報が出ても、残り数回分(例:4回分)は結束が行えるものとなっている。
【0040】
また、図8、図14、図17に示すように、結束機Tにおける嘴部材9,10の付根部位におけるバンド供給溝(図示省略)には、結束バンドVのヘッド部94の有無を検出する接触式のヘッド検出センサ(結束検出手段Uの一例)101が装備されている。これは結束バンドVが正規に供給されると必ずヘッド部94の検出作動が行われる構成になっており、この部分における結束バンドVの存否センサとして用いることも可能である。正常な結束が行われた場合は、結束バンドVはワイヤーハーネスWに結束されて結束機Tから離れるので、ヘッド検出センサ101は暫く存在検出作動した後に非存在検出作動に切換るようになる。
【0041】
従って、一連の結束動作が終了しても、尚もヘッド検出センサ101が存在検出作動しているのは異常であり、それによって自動運転が停止され「結束ミス」表示が表示パネル7aに表示される。原因例としては、空結束により、実質的にヘッド部94だけがバンド供給溝(図示省略)に取り残される、という場合が考えられる。加えて、図示は省略するが、結束機tには、結束バンドVの送り不良検出センサや、電流値の増大検出センサといった種々のセンサが内蔵されており、これら複数のセンサ群により、後述の「結束ミス」の判断が行われるように構成されている。尚、夫々が結束検出手段Uの例であるこれらバンド存否センサ87やヘッド検出センサ101、並びにその他の内臓センサ群は、結束機(結束工具)T単体としての公知技術に付き、これ以上の詳細な説明は割愛する。
【0042】
移動装置3は、図7、図17に示すように、前後移動機構41、左右移動機構42、上下移動機構43、及び回動機構44とから成り、結束機Tを三次元移動自在であり、かつ、嘴部材9,10の上下向きの回動軸心Xに関する向きを360度変更設定自在に構成されている。前後移動機構41は、枠体6の左右側面壁6L,6Rの内側に配された前後向きフレーム45,45に、電気モータ等を用いた適宜の駆動手段によって駆動前後移動自在に前後移動フレーム46を架設して成り、左右移動機構42は、適宜の駆動手段手によって前後移動フレーム46に左右移動自在に水平移動体20を支持して成り、上下移動機構43は、適宜の駆動手段手によって水平移動体20に駆動上下スライド移動自在に上下移動体21を支持して成る。回動機構44は、結束機Tを着脱自在に支持する結束ホルダ22を、適宜の駆動手段を用いて上下移動体21に上下向きの回動軸心X回りで回動自在に支持して構成されている。この場合、ケーブルバンドCVや電気配線34の捩じれを考慮して、360度の範囲内で回動する状態に設定されている。
【0043】
結束ホルダ22は、図7、図8に示すように、上下向きの回動軸心Xで回動自在に支持されるブロック部22bと、オーバーハング下形状のホルダ本体22Aと、ホルダ本体22Aの側面蓋となるカバー部材22aと、姿勢矯正部19Bを支持すべくホルダ本体22Aから突設された支持アーム29から構成されている。ホルダ本体22Aには、結束機Tを装着するための三箇所の円形突起22x,22y,22zが取付けられている。上突起22xには握り部31の背面側が位置され、中心に雌ネジ40が形成されている取付突起22yと下突起22zとは、結束本体30と握り部31下部とを繋ぐ背面壁39a(結束屑回収部ケース39の背面壁)と握り部31とで形成される手指挿入空間部47に丁度嵌るように位置されている。支持アーム29は、ノブボルト49を用いてブロック部22bに着脱自在に取付けられる。
【0044】
結束ホルダ22としての左側壁となるカバー部材22aは、取付突起22yの雌ネジ40に螺合自在なノブボルト48を用いて結束機Tを挟持する状態でホルダ本体22Aに装備自在であり、装備された使用状態では、ホルダ本体22A、及びこれの底壁22cと後壁22d、背面壁39a、カバー部材22aによって囲まれた空間部が中継接続部Hであり、前述の合流経路部37として機能する(図8参照)。また、後壁22dの下端部には、後述する結束屑回収装置5の吸引ホース52(52B)先端の接続連結部52aを内嵌取付けして、合流経路部37に連通するための挿通孔22eが形成されている。そして、結束ホルダ22は、これに装着された状態の結束機Tが、一対の嘴部材9,10が丁度下端となり、かつ、それら嘴部材9,10先端どうしの間隔の中央に上下向きの回動軸心Xが通るように形状設定されており(図7,13参照)、回動機構44を駆動して結束ホルダ22を回動移動すると、一対の嘴部材9,10を中心に結束機Tが回動するように構成されている。
【0045】
結束屑回収装置5は、図2、図10、図11に示すように、底床50に載置される吸引機11、同じく底床50に載置して取付けられるホース長可変機構51、吸引機11の吸引口11aとホース長可変機構51とを繋ぐ基部ホース52Aと、ホース長可変機構51と結束ホルダ22とを繋ぐ主ホース52Bとで成る吸引ホース52から構成されている。吸引機11は屋外用等の一般的な掃除機で構成されており、基部ホース52Aをホース軸心に関して回転可能に装着している。ホース長可変機構51から出る主ホース52Bは、その前部が枠体6の支持される中間ガイド部53に相対移動自在に支承されるとともに、その後部が水平移動体20の下部にクランプ部54を用いて取付けられている。中間ガイド部53は、枠対6の左右フレーム75に左右スライド自在に支持されるスライダ53Aと、このスライダ53Aに回動自在に支持される回動体53Bとを有しており、移動装置3の動きに追従して左右及び回動移動して、吸引ホース52Bの円滑な配策状態を維持できるように構成されている。
【0046】
ホース長可変機構51は、移動装置3によって結束機Tが三次元移動することで変化するホース長に弛みなく追従できるようにするためのものであり、図10、図11に示すように、一対の縦フレーム55,55及び取付基板55Aを用いて底床50に固定取付けされる固定円板体56と、これに対して回転自在に支持される回転円板体57と、回転円板体57をホース巻取り方向に回動付勢させるテンション機構58から構成されている。
【0047】
固定円板体56は、円板部56Aと、その外端に取付けられる外周板部56Bとから成り、円板部56Aの中心部にボルト止めで取付けられる環状のフランジ部58には、軸受部材である筒状のブッシュ59を介して筒軸60が軸心Rで回転自在に支承されている。筒軸60に形成された外周凹溝60aには、互いにボルト連結される二つ割り構造のリング体61が相対回転自在に外嵌されており、そのリング体61をブッシュ59の側面に接する状態に寸法設定すること、及び後述する自在ベアリング63とにより、筒軸60の軸方向の位置決めが行われている。筒軸60の外端には、基部ホース52Aが外嵌装備されている。
【0048】
回転円板体57は、取出し筒62と共に筒軸60の軸端に固定取付けされる支持円板部57Aと、その外端に取付けられる外周板部57Bと、これの端に取り付けられるガイド円板部57Cとから成る。支持円板部57Aの三箇所には、円板部56Aに接して転動自在なボール63Aを有する自在ベアリング63が取付けられており、回転円板体57が倒れなく良好に回転できるようにされている。この回転円板体57の外周板部57Bとガイド円板部57C、及び固定円板体56の円板部56Aの外側部分と外周板部56Bで囲まれた環状の空間部が主ホース52Bの巻取りスペース64になっている。軸心Rを持つ取出し筒62の外端には主ホース52Bの一端が外嵌装備されており、ガイド円板部57Cに形成された切欠き57cから巻取りスペース64に取り込まれる主ホース52Bは、円板部56Aの後部上端部に設けた取出部65から上に向けて取出され、その上方に配置されている水平移動体20へと延設される。取出部65は、主ホース52Bを挟むように対向配置される回転自在な一対のガイドローラ65a,65aを設けて構成されている。
【0049】
テンション機構58は、ケース66内にワイヤーロープ67を巻取り付勢するようにした公知のものであり、付勢力を可変調節するための調整ノブ68付の仕様として、縦フレーム55,55を支持する取付基板55Aに載置装備されている。ケース66の頂部から上向きに取出されるワイヤーロープ67は、外周板部57B上に巻回され、先端のフック部67aがガイド円板部57Cにおける切欠き57c部分に引掛けられており、それによって回転円板体57を図10において矢印イ方向に回動付勢しており、その結果、主ホース52Bが巻取り方向に軽く引張り付勢されている。
【0050】
枠体6は、図1〜図6等に示すように、4本の縦フレーム74、複数の左右フレーム75、複数の前後フレーム76、及び複数の部分フレーム77を用いて、正面壁6S、背面壁6T、左側面壁6L、右側面壁6R、及び底床50とを有した箱状のものに構成されており、底床50上に吸引機11や配電盤12等が配置される下部エリアE1と、基板1が配置されて主に結束作動が行われる部分である中間エリアE2と、主に移動装置3が配置される上部エリアE3とに大別される。この実施形態では頂上壁は装備されておらず、吹きぬけ状態となっているが、配置場所の条件等に応じて頂壁6T(図5の仮想線参照)を設けても良い。四方を囲む各壁6S,6T,6L,6Rは、いずれも中間エリアE2と上部エリアE3とをカバーするものであり、下部アリアE1は開放状態とされている。また、各壁6S,6T,6L,6Rは、内部を見通せるよう、アクリル板等の透明合成樹脂板を用いているが、部分的に非透明な板材を使用しても良い。
【0051】
正面壁6Sは、図1,2,5に示すように、中間エリアE2の中央部に左右幅の大なる基板出入れ用開口部13及びその開け閉めを行う開閉扉14が装備されるとともに、その右隅には制御ボックス7が操作自在に配置されている。横長形状の開閉扉14は、枠部14aと透明樹脂板14bとから成り、開け閉め操作用の一対の取っ手14cが枠部14aに装備されており、枠部14aの下部に取付られた一対の蝶番70によって開閉自在に枠体6に装備される。つまり、開閉扉14を開くことでワイヤーハーネスWを取り換えるべく基板1を取出す子とが可能になり、基板1を枠体6内に収容すれば開閉扉14を上昇揺動させて閉めることができる構成となっている。尚、開閉扉14の閉じ状態を検出する第1閉じセンサ82が枠体6に装備されている。
【0052】
正面壁6Sは、その上部エリアE3が観音開き構造を採る一対の上部扉71,71によって開放自在とされており、取っ手71aに手指を掛けての人為操作により、図1に示す閉じ状態と、図5に示すように、左右端に設けた蝶番72によって横開きされた開き状態とに揺動切換え自在である。この上部扉71は回転リール8の交換やメンテナンスをするべく、上部エリアE3を開放状態とするためのものであり、通常は閉じ状態にしておく。また、上部扉71を開くことにより、移動装置3の各部メンテナンスを行うことも可能である。これら各上部扉71の閉じ状態を検出する一対の第2閉じセンサ83が枠体6に装備されている。上部扉71は、透明合成樹脂板71Bを扉枠71Aで支持して構成されている。
【0053】
背面壁6Tの中間エリアE2部分には、図6に示すように、スライド開閉構造とすべく左右一対の引戸72,72が装備されている。各引戸72は、内部の視認が可能となるように透明板72aから成り、枠体6に形成される前後一対のレール部73,73に嵌って左右スライド自在であり、何れかの引戸72を開け閉めすることにより、基板1、吸引ホース52、或いは各種機器を枠体6後部からメンテナンスできるようになっている。そして、枠体6には、各引戸72の閉じ状態を検出する引戸センサ97が装備されている。引戸センサ97は、前述の作用位置検出センサ90や交換位置検出センサ91と同じものであり、センサ本体97Aと、引戸72に接触自在な接触子97aとから成る接触式センサに構成されている。また、下部エリアE1である底床50には、吸引機11、ホース長可変機構51、配電盤12、及び結束ロボットAの制御ボックス84等が配置されており、これら各機械装置類を四方からメンテナンス可能としてある。
【0054】
制御部4は、操作ボックス7、配電盤12、制御ボックス84等から構成されており、結束機T、移動装置3、結束屑回収装置5の動きを司るとともに、各種センサ、スイッチ類が接続されている。操作ボックス7は、図2、図21に示すように、正面壁6Sの中間エリアE2の右隅に配置され、上部に表示パネル(タッチパネル)7aを有するとともに、左下部分には結束機用コントロールボックス99と、その上の結束機用電源制御ボックス98とが装備されている。結束機用コントロールボックス99にはリセットスイッチ100が配置されている。表示パネル7aに表示される操作形態は種々のものが設定されており、一例を図21に示す。図21において、表示されているスイッチ類の部分の画面を手指でタッチすることで操作できるようになっており、例えば、画面上に表示されている「手動」と「自動」の切換えスイッチ85は、タッチすることで順次切換るバッジ式に構成されている。尚、移動装置3の制御については、操作ボックス7とは別に設けられた操縦ハンドル86の操作により、テスト的な部分駆動等の任意の操作が可能となっている。
【0055】
次に、制御部4による結束ロボット自動運転の制御方法について説明する。図17には制御部4における制御系統のブロック図が示されている。操作ボックス7には、自動運転制御手段89を有したCPU等による制御装置88が装備されており、自動運転制御手段89は、結束予定箇所(K1〜K25)を記憶させておくことが自在な結束箇所記憶手段89Aを有している。この制御部4による結束ロボットの運転制御方法は、次のようである。結束箇所記憶手段89Aの機能により、移動装置3による結束機Tの移動及び結束作動を行わせて、予め設定された多数(25箇所)の結束予定箇所K1〜K25を順次結束させる自動運転を行わせる。
【0056】
即ち、図18〜図20に示す自動運転制御フロー図のように、最初に、自動モード、手動モードから自動モードを選択する運転モード選択(ステップ♯1)を行い、自動運転が開始される(ステップ♯2)。このとき、第1閉じセンサ82、一対の第2閉じセンサ83,83、作用位置検出センサ90、及び一対の引戸センサ97,97の全てが検出作動していること、即ち、基板1が正規の作用位置にあり、かつ、開閉扉14、左右の上部扉71、及び一対の引戸72,72の全てが閉じている状態が前提条件であり、何れか一つ以上のセンサが検出作動していないと自動運転は開始されない(このときには、その旨表示パネル7aに表示される)。
【0057】
自動運転が開始されると、移動装置3が駆動されて結束機Tを第1結束予定箇所K1の位置であるP1(ポジション1)に移動させ(ステップ♯11)、P1への移動完了後に結束指示(結束指令)が出される(ステップ♯12)。そして、バンド存否センサ87の検出作動による結束バンドの有無判断(ステップ♯13−1)が為され、結束バンドVが無い場合にはヘッド検出センサ101等による結束OKかNGかの判断(ステップ♯13−2)へ進み、結束バンドVが有る場合にもヘッド検出センサ101等による結束OKかNGかの判断(ステップ♯13−3)へ進む。ステップ♯13−2において結束NGであれば、即ち、結束バンドVが無く、かつ、結束不良であるときにはバンド補給再結束ルーチンF1に進み、ステップ♯13−2において結束OKであれば、即ち、結束バンドVが無く、かつ、結束良好であるときにはバンド補給ルーチンG1に進む。また、ステップ♯13−3において結束NGであれば、即ち、結束バンドVが有り、かつ、結束不良であるときには再結束ルーチンL1に進み、ステップ♯13−3において結束OKであれば、即ち、結束バンドVが有り、かつ、結束良好であるときには次のステップ♯21へ進む。以上のステップ♯11〜ステップ♯13−3が一つの結束予定箇所K1(P1)における結束作動の1サイクルである。
【0058】
バンド補給再結束ルーチンF1は、結束バンドVが無く、かつ、結束NGになると、結束ロボットAの自動運転が停止され(ステップ♯14)、表示パネル7aに結束ミス表示が為される(ステップ♯15)。つまり、この場合の「結束ミス」とは、ケーブルバンドCVが消費されて無くなり、かつ、結束自体も正規に行われていない、という極めて稀なケースを意味しており、例えば、表示パネル7aに「P1結束NG・バンド無」といった具合に表示されるようにすれば好都合である。そこで、結束機用コントロールボックス99のリセットスイッチ100を手指で操作する(図21参照)、といった人為操作でミス表示を解除する(ステップ♯16)と、それに伴って移動装置3が作動して水平移動台20が最も前方、即ち上面壁6Sに寄った回転リール交換位置であるポジション26に移動される(ステップ♯17)。
【0059】
しかして、左右何れか若しくは両方の上部扉71を開き、空になった回転リール8を外し、ケーブルバンドCVが満載された回転リール8に付換える人為作業による回転リール交換(ステップ♯18)が行われ、付換えが完了すると結束やり直しの結束予定箇所K1、即ちこの場合にはP1を人為操作で入力(ステップ♯19)する。人為操作によるポジションP1の入力に伴って自動運転が再開され(ステップ♯20)、移動装置3が作動して結束機TをP1(ポジション1)に移動させる工程(ステップ♯11)が再び行われる。この人為操作を含めた一連の回転リール交換及び結束やり直し工程をバンド補給再結束ルーチンF1(F2〜F25)と呼ぶものとする。
【0060】
バンド補給ルーチンG1は、結束バンドVが無く、かつ、結束OKであるときに行われるサブルーチンであり、バンド補給再結束ルーチンF1において、人為操作によるポジション(P1)入力(ステップ♯19)が省略されたルーチンである。つまり、この場合の「結束ミス」とは、バンド存否センサ87のケーブルバンドCVの非存在検出によって結束ベルトVが後数回の結束で無くなることを意味しており、回転リール8を交換して下さい、との注意喚起が行われているだけで、結束自体には問題が無い状態のことである。従って、第1結束予定箇所K1での結束は予定通り済んでいるから、この場合には、回転リール8の交換後の自動運転再開(ステップ♯20)に伴い、結束機Tは次の行先である第2結束予定箇所であるP2へ移動されることとなる。このバンド補給ルーチンG1は、ケーブルバンドCVが無くなって回転リール8を交換するときにのみ行われるルーチンであり、頻度は少ない。
【0061】
再結束ルーチンL1は、結束バンドVが有り、かつ、結束NGであるときに行われるサブルーチンであり、バンド補給再結束ルーチンF1における回転リール8の交換に要する三つのステップ(ステップ♯17〜ステップ♯19)が省略されたルーチンである。つまり、この場合の「結束ミス」とは、ヘッド検出センサ101等による結束NG判断によるものであって、結束バンドVはあるが、何らの理由によって結束不良が生じている状態を意味している。何らかの理由とは、結束バンドの送り抵抗増大、引っ掛りによる供給不良といった結束機T内部における不都合や、空結束等、種々のエラーが考えられる。この場合には、自動運転再開(ステップ♯20)に伴い、結束機Tには結束指示(ステップ♯12)からやり直されるようになる。この場合の結束ミスが最も生じ易いものであり、場合によっては目視によって結束ミスであることを検知することも有り得る。
【0062】
前記何れかのサブルーチンF1,G1,L1が行われるか、或いは結束が問題なく行われて何れのサブルーチンも通らず、第1結束予定箇所K1における結束が無事終了すると、図19に示すように、移動装置3が駆動されて結束機Tが第2結束予定箇所K2の位置であるP2に移動され(ステップ♯21)、P2への移動完了後に結束指示(結束指令)が出され(ステップ♯22)る。それからの、結束バンドVの有無判断(ステップ♯23−1)、二箇所の結束良否判断(ステップ♯23−2,♯23−3)による三種のサブルーチンF2,G2,L2等の内容は前述した第1結束予定箇所K1におけるものと同じであり、重複説明を省略する。
【0063】
このような動作が次の第3結束予定箇所K3から第25結束予定箇所K25(図20参照)に亘って順次繰り返され、25箇所全ての結束が終了(ステップ♯253−3がYES)すると、移動装置3が結束機Tをロボット待機位置であるP27に移動させ(ステップ♯270)、自動運転が終了する。尚、各サブルーチンF,G,Lの数字は、結束予定箇所の数字と同じ(例:第14結束予定箇所ではF14,G14,L14)であり、「結束指示」等の主ルーチン部分におけるステップ♯の数字も結束予定箇所の数字と同じである(例:第21結束予定箇所K21における「P21へ移動」は♯211)となる。
【0064】
つまり、自動運転制御手段89による運転制御方法は、バンド存否センサ87、ヘッド検出センサ101等のセンサ群による結束ミスの検知により、移動装置3及び結束機Tの双方の作動を自動停止させ、かつ、その結束ミスの生じた結束予定箇所(例えばK2)を特定する自動停止工程と、この自動停止工程による移動装置3及び結束機Tの停止後に結束ミスの回復処理を行う修復工程と、行われる結束ミスの回復処理後に自動運転の再始動指令を出す修復工程と、この修復工程の後に自動運転の再始動指令を出すとともに、この再始動指令の発令によって結束ミスが生じた結束予定箇所の結束作動から自動運転を再開させる再始動工程とを行わせることを特徴としている。
【0065】
自動停止工程は、バンド補給再結束ルーチンF1〜25においては、バンド存否センサ87を用いた結束OKか否かを判断するステップ♯13(♯23〜♯253)と、移動装置3及び結束機Tの停止、即ちロボットを停止させるステップ♯14(♯24〜♯254)との部分であり、修復工程は、結束機TをP26(回転リール交換ポジション)に移動させるステップ♯17(♯27〜♯257)と、人為作業による回転リールの交換作業を行うステップ♯18(♯28〜♯258)との部分であり、再始動工程は、人為操作でポジションP1(P2〜P25)[再結束させる箇所の位置]の入力を行うステップ♯19(♯29〜♯259)と、実際に移動装置3が動いて結束機Tを入力されたポジションに向けて移動させるステップ♯20(♯30〜♯260)との部分である。
【0066】
バンド補給ルーチンG1〜25においては、自動運転再開のステップ♯20(♯30〜♯260)が再始動工程に相当しており、自動停止工程と修復工程とはバンド補給再結束ルーチンL1〜25の場合と同じである。また、再結束ルーチンL1〜25においては、結束ミス表示のステップ♯15(♯25〜♯255)と、ミス表示解除のステップ♯16(♯26〜♯256)との部分で修復工程に相当し、自動運転再開のステップ♯20(♯30〜♯260)が再始動工程に相当し、自動停止工程に関してはバンド補給再結束ルーチンF1〜25の場合と同じである。
【0067】
自動運転が正規に終了すると、開閉扉14を開けてから取っ手16,16を持って基板1を引張り出して、多数のハーネスホルダ15から結束後のワイヤーハーネスWを取出し、結束されていないワイヤーハーネスWを所定の形状となるように多数のハーネスホルダ15に係止させるハーネス交換作業を行い、基板1を押込んで枠体6内に収容された作用位置にセットする。それから開閉扉14を閉じ操作し、操作パネル7aに表示されている「運転」部分を手指でタッチし(図21参照)、次の結束の自動運転をスタートさせるのである。
【0068】
つまり、制御部4による結束ロボットAの運転制御方法は、結束箇所記憶手段89Aの機能により、移動装置3による結束機Tの移動及び結束作動を行わせて、予め設定された複数の結束予定箇所K1〜K25を順次結束させる自動運転を行わせるにあたり、結束検出手段Uによる結束ミスの検知により、移動装置3及び結束機Tの双方の作動を自動停止させ、かつ、その結束ミスの生じた予定結束箇所を特定する自動停止工程と、この自動停止工程による移動装置3及び結束機Tの停止後に結束ミスの回復処理を行う修復工程と、この修復工程の後に自動運転の再始動指令を出すとともに、この再始動指令の発令によって結束ミスが生じた結束予定箇所の結束作動から自動運転を再開させる再始動工程とを行わせることを特徴とする。
【0069】
ところで、ステップ♯12,♯13等における結束予定箇所での公知の結束作動について、例として第1結束予定箇所K1の場合を用いて簡単に説明する。第1ポジションP1にある結束機Tは、図15(a)に示すように、一対の嘴部材9,10を結ぶ線分と平行なラインMと、ワイヤーハーネスWの軸方向ラインNとが直交(又はほぼ直交)する状態となるように、左右移動と同時に回動機構44(図17等を参照)によって回動移動(方向転換)された状態[図16(b)参照]にされてから下降移動され、結束用空間S内にワイヤーハーネスWの第1結束予定箇所K1を取込む。
【0070】
結束用空間S内に取込まれたワイヤーハーネスWの第1結束予定箇所K1には、図15(b)に示すように、主嘴部材9が湾曲スライド移動で、かつ、副嘴部材10が揺動移動で夫々閉じ移動されて、開き姿勢から閉じ姿勢に切換えられるとともに、結束バンドVが副嘴部材10及び主嘴部材9にこの順で案内送出され、バンド部93がヘッド部(バンド係止部)94に挿通されると同時に、引締め機構(図示省略)によってヘッド部94に対してバンド部93が引張られ、第1結束予定箇所K1におけるワイヤーハーネスWが確りと結束バンドVで結束される。結束が為される[図16(a)、(b)参照]と、一対の嘴部材9,10が開き移動されて開き姿勢とされてから、移動装置3によって結束機Tが上昇移動され、結束後の第1結束予定箇所K1が結束用空間Sから相対的に排出されるのである。
【0071】
移動装置3としては、前後と上下、左右と上下等の二次元移動する構造のものも可能である。結束機Tは、開閉作動する一対の嘴部材9,10の構成に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】結束ロボット全体の斜視図
【図2】結束ロボットの正面図
【図3】結束ロボットの左側面図
【図4】結束ロボットの平面図
【図5】開閉扉、上部扉の開閉、基板引出し等の作用を示す斜視図
【図6】背面壁の引戸部分を示す斜視図
【図7】結束装置全体の正面図
【図8】結束装置下部の結束機部分を示す斜視図
【図9】ガイド゛機構の中間ガイド部を示す拡大正面図
【図10】結束屑回収装置のホース長可変機構を示す略側面図
【図11】ホース長可変機構の構造を示す断面図
【図12】基板の枠フレームの構造を示す斜視図
【図13】ハーネスホルダ及びワイヤーハーネス係止構造を示す一部切欠き正面図
【図14】ハーネスホルダの側面図
【図15】(a),(b)は結束機を下降移動して嘴部材間の結束用空間にワイヤーハーネスを取込んで結束する状態を示す作用図
【図16】(a)は結束後に嘴部材を開いて上昇させる状態の作用図、(b)は結束状態及びワイヤーハーネスと嘴部材との位置関係を示す平面図
【図17】結束自動運転に関する制御装置の概略構成を示すブロック図
【図18】制御装置による結束自動運転モードを示すフロー図その1
【図19】制御装置による結束自動運転モードを示すフロー図その2
【図20】制御装置による結束自動運転モードを示すフロー図その3
【図21】操作ボックスの表示パネルにおける表示例を示す正面図
【符号の説明】
【0073】
1 基板
1A 取付面
2 結束装置
3 移動装置
8 回転リール
87 結束バンド有無検出センサ
89 結束箇所記憶手段
101 ヘッド検出センサ
A 結束ロボット
CV ケーブルバンド
D 結束部
T 結束機
U 結束検出手段
V 結束バンド
W 結束対象
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結束対象を結束自在な結束機と、結束対象を所定の形状に設定して係止維持可能な取付面を有する基板と、この基板に係止維持されている前記結束対象に結束バンドを巻回して結束するに適した位置又は姿勢に前記結束機を移動自在な移動装置と、前記結束対象における結束予定箇所を記憶させておくことが自在な結束箇所記憶手段と、結束ミスを検出自在な結束検出手段とを設けておき、
前記結束箇所記憶手段の機能により、前記移動装置による前記結束機の移動及び結束作動を行わせて、予め設定された複数の結束予定箇所を順次結束させる自動運転を行わせるにあたり、
前記結束検出手段による結束ミスの検知により、前記移動装置及び前記結束機の双方の作動を自動停止させ、かつ、その結束ミスの生じた予定結束箇所を特定する自動停止工程と、この自動停止工程による前記移動装置及び前記結束機の停止後に結束ミスの回復処理を行う修復工程と、この修復工程の後に前記自動運転の再始動指令を出すとともに、この再始動指令の発令によって結束ミスが生じた結束予定箇所の結束作動から前記自動運転を再開させる再始動工程とを行わせる結束ロボットの運転制御方法。
【請求項2】
前記結束検出手段が、前記結束機に装備された結束バンド有無検出センサであり、前記結束ミスの回復処理は結束バンドの補給処理である請求項1に記載の結束ロボットの運転制御方法。
【請求項3】
多数の結束バンドを連ねて成るケーブルバンドを巻回装備自在な回転リールを備え、前記結束機は、前記回転リールから解されてくるケーブルバンドを用いて結束対象に結束バンドを巻回して結束するものに構成されており、前記修復工程における結束バンドの補給処理は、人為操作による回転リールの交換作業である請求項2に記載の結束ロボットの運転制御方法。
【請求項4】
前記結束検出手段が、空結束を検出すべく前記結束機の結束部に設けられたヘッド検出センサ、又は前記結束機自体の動作不良を検出するものである請求項1に記載の結束ロボットの運転制御方法。
【請求項5】
前記修復工程後における再始動指令は、人為によるスイッチ操作である請求項1〜4の何れか一項に記載の結束ロボットの運転制御方法。
【請求項1】
結束対象を結束自在な結束機と、結束対象を所定の形状に設定して係止維持可能な取付面を有する基板と、この基板に係止維持されている前記結束対象に結束バンドを巻回して結束するに適した位置又は姿勢に前記結束機を移動自在な移動装置と、前記結束対象における結束予定箇所を記憶させておくことが自在な結束箇所記憶手段と、結束ミスを検出自在な結束検出手段とを設けておき、
前記結束箇所記憶手段の機能により、前記移動装置による前記結束機の移動及び結束作動を行わせて、予め設定された複数の結束予定箇所を順次結束させる自動運転を行わせるにあたり、
前記結束検出手段による結束ミスの検知により、前記移動装置及び前記結束機の双方の作動を自動停止させ、かつ、その結束ミスの生じた予定結束箇所を特定する自動停止工程と、この自動停止工程による前記移動装置及び前記結束機の停止後に結束ミスの回復処理を行う修復工程と、この修復工程の後に前記自動運転の再始動指令を出すとともに、この再始動指令の発令によって結束ミスが生じた結束予定箇所の結束作動から前記自動運転を再開させる再始動工程とを行わせる結束ロボットの運転制御方法。
【請求項2】
前記結束検出手段が、前記結束機に装備された結束バンド有無検出センサであり、前記結束ミスの回復処理は結束バンドの補給処理である請求項1に記載の結束ロボットの運転制御方法。
【請求項3】
多数の結束バンドを連ねて成るケーブルバンドを巻回装備自在な回転リールを備え、前記結束機は、前記回転リールから解されてくるケーブルバンドを用いて結束対象に結束バンドを巻回して結束するものに構成されており、前記修復工程における結束バンドの補給処理は、人為操作による回転リールの交換作業である請求項2に記載の結束ロボットの運転制御方法。
【請求項4】
前記結束検出手段が、空結束を検出すべく前記結束機の結束部に設けられたヘッド検出センサ、又は前記結束機自体の動作不良を検出するものである請求項1に記載の結束ロボットの運転制御方法。
【請求項5】
前記修復工程後における再始動指令は、人為によるスイッチ操作である請求項1〜4の何れか一項に記載の結束ロボットの運転制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
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【図4】
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【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
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【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−36252(P2006−36252A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217037(P2004−217037)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000108524)タイトン株式会社 (57)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000108524)タイトン株式会社 (57)
【Fターム(参考)】
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