説明

結核菌中のイソニアジド抵抗性の迅速検出

【課題】抗結核治療法における主要な成分であるイソニアジド(INH)に対する抵抗性の分子機構を知り、INH−抵抗株を迅速に同定することのできる簡単な試験法及び核酸プローブと核酸ハイブリダイゼーションを実施するためのキットを提供する。
【解決手段】INH−感受性を仲介するKat G遺伝子を含有するクロモソーム領域のユニークな核酸配列との核酸ハイブリダイゼーションまたは増幅法によって検出する方法及びそのキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は1992年4月30日に出願した通し番号No.875,940の一部継続出願である。本発明は抗生物質イソニアジドに抵抗性の結核菌株の迅速検出に関するものである。より詳しくいえば、本発明は核酸ハイブリダイゼーションにより結核菌中のイソニアジド抵抗性を検出する方法に関する。本発明はまた核酸プローブおよび核酸ハイブリダイゼーションを実施するためのキットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
結核の病原因子としてロベルド・コッホにより結核菌が発見されて以来一世紀以上にわたる研究にもかかわらず、結核は依然としてヒトの罹病率と死亡率の主要な原因の一つになっている。結核による死亡は毎年300万人に達しており(Snider,1989)、これらの大半は発展途上国であるが西側でもホームレス人口の増加とAIDS流行の影響によって結核は再び重要な問題となっている(非特許文献1:Chaisson et al.,1989;Snider and Roper,1992)。
【0003】
イソニコチン酸ヒドラジド、すなわちイソニアジド(INH)は“結核”群−ヒト型結核菌、ウシ型結核菌およびM.africanumの菌種に対して強い薬効をもつことから過去40年間結核の治療に用いられてきた(非特許文献2:Middlebrook,1952;Youatt,1969)。INHの標的は正確にはわからないし、また作用機作も知られていないが、本剤の投与等よっていくつかの代謝系路が乱されることがわかっている。INHがNADおよびピリドキサルリン酸の抗代謝体として作用するらしいことを示すたくさんの証拠があり(非特許文献3:Bekierkunst and Bricker,1967;Sriprakash and Ramakrishnan,1970;Winder and Collins,1968,1969,1970)、またそのほか結核菌細胞壁の酸抵抗特性の原因となっているミコール酸の合成を本剤がブロックすることを示すデータがある(非特許文献4:Winder and Collins 1970;Quemard et al.,1991)。INHが使用されるようになって間もなく、INH−抵抗性の結核菌分離菌が出現し、特性をしらべた結果カタラーゼ−パーオキシダーゼ活性がなくなり、モルモットで菌毒性が弱まっていることがわかった(非特許文献5:Middlebrook et al.,1954;Kubica et al.,1968;Sriprakash and Rama−Krishman,1970)。
【非特許文献1】Chaisson et al.,1989;Snider and Roper,1992
【非特許文献2】Middlebrook,1952;Youatt,1969
【非特許文献3】Bekierkunst and Bricker,1967;Sriprakash and Ramakrishnan,1970;Winder and Collins,1968,1969,1970
【非特許文献4】Winder and Collins 1970;Quemard et al.,1991
【非特許文献5】Middlebrook et al.,1954;Kubica et al.,1968;Sriprakash and Rama−Krishman,1970
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ごく最近になって、結核菌の多剤抵抗(MDR)変種によるUSAでの結核の流行(CDC,1990;1991a,b)ならびにこれら変異株がHIV−感染者とヘルスケア従事者の広範な院内感染の原因になっていることがわかったことから、INH−抵抗性の問題は新しい重要性をもつに至った(Snider and Roper,1992)。この問題の重要性にかんがみ、INH抵抗性とカタラーゼ−ペルオキシダーゼ産生の関連をはっきりさせる必要がある。
【0005】
より詳しくいえば、薬剤感受性に含まれる分子機構を知る必要がある。加えて、INH−抵抗株を迅速に同定することのできる簡単な試験法を開発する必要がある。さらに、このような試験法を実施するための試薬を作ることが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明はイソニアジドに抵抗性の結核菌細胞の存在をin vitroで検出するプロセスを提供することによって上述の諸要求を満たすことについて手助けする。そのプロセスは以下の段階から成る:
(A) 細胞の核酸を沈着、固定してそれがプローブに近接できるようにする;
(B) ステップ(A)から得られた固定化核酸をハイブリダイゼーションのできる条件下でプローブと接触させる;
(C) ステップ(B)からのフィルターを洗滌してハイブリッド形成しなかったプローブをすべて除去する;ついでそのあと
(D) ステップ(C)から得られた洗滌済みフィルター上のハイブリッド形成したすべてのプローブを検出する。
【0007】
そのプローブはプラスミドpYZ56の2.5Kb EcoRV−KpnIフラグメント中に存在する核酸配列を含んでおり、そのフラグメントの中にはBamHI開裂部位が含まれる。このフラグメントはイソニアジド−感受性結核菌の細胞内DNAと会合することがわかっており、このような抗生物質感受性の微生物を、以下に述べる条件下でこのフラグメントとハイブリッド形成するDNAを含まないような、イソニアジド−抵抗性結核菌と区別することができる。
【0008】
さらに本発明は、イソニアジド−抵抗性細胞からのDNAには存在しないイソニアジド感受性を付与する結核菌のKat G遺伝子領域をコードするところの、イソニアジド−抵抗性結核菌のヌクレオチド配列−RNAやDNAのような−も用意する。
本発明は、本発明のヌクレオチド配列に結合した、核種のような、標識から成るプローブも用意する。
【0009】
さらに本発明は、本発明のヌクレオチド配列が、DNAやRNAのような、相補的な塩基配列のヌクレオチド配列と水素結合したものから成るハイブリッド二重複合分子を用意する。
また、本発明は結核菌のカタラーゼ−ペルオキシダーゼ遺伝子、またはこのようなヌクレオチド配列の一部分をコードするヌクレオチド配列を一群のヌクレオチド配列から選択するためのプロセスも用意しており、これはどのヌクレオチド配列が本発明のヌクレオチド配列とハイブリッド形成するかを決めるステップから成っている。そのヌクレオチド配列はDNA配列か、またはRNA配列かである。そのプロセスはヌクレオチド配列上の標識を検出するステップを含んでいる。
【0010】
さらに、本発明はイソニアジドに抵抗性の結核菌の検出のためのキットを用意している。そのキットは、プラスミドpYZ56の2.5Kb EcoRV−KpnIフラグメントで、その中にBamHI開裂部位を含むところのヌクレオチド配列を包含するプローブを含む容器一式から成る。そのキットは核酸の対照調製物を含む容器一式も含んでいる。
【0011】
本発明はまた酵素カタラーゼ、または類似の酵素がイソニアジドに作用して生じた生成物として得られた化合物をも包含する。Kat G遺伝子または同様の活性を保持する誘導体はカタラーゼ蛋白質のソースとして使用することができる。新化合物はISBN N°0995−2454、パスツール研究所により編集されたH.Davidらの“マイコバクテリア臨床のための実験室の方法”に述べられているようなアンチバイオグラム法を用いて、INH−抵抗性結核菌株に対する反応性により選別される。
【0012】
図の簡単な説明
本発明は以下の図を引用することによりさらに一層詳しく記述されるであろうし、それらはつぎの如くである:
図1(A)はシャトルコスミドpBH4中でクローン化した結核菌DNAのフィジカルマップである。C1aI(C)、NotI(N)およびHindIII(H)に対する制限部位を示してある。DraIとAsnIに対する制限部位は見出されておらず、コスミドは結核菌中に記載されている付加的既知遺伝子または挿入配列のいずれも有していない。Kat G遺伝子の位置とスケールバーを示す。
【0013】
図1(B)はpYZ56中に存在する挿入体の制限マップであり、Kagの位置と転写の方向を示している。
図2は結核菌カタラーゼ/ペルオキシダーゼポリペプチドの部分配列および大腸菌とB.stearothermophilusからのHPI酵素との比較である。同じ残基は*で示してある。
図3は活性染色による組換え結核菌カタラーゼ/ペルオキシダーゼの検出を示す。細胞抽出物をポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、ペルオキシダーゼ(レーン1−5)とカタラーゼ活性に関して染色した。試料は結核菌からがレーン1;大腸菌TG1,レーン2,6;TG1/pYZ56(Kat G+),レーン3と7;TG1/pBAK16(lacZ′::KatG),レーン4と8;TG1/pYZ56(1.4Kb BamHI−KpnIフラグメントを欠失したpYZ55と同じ)。
【0014】
図4は4.5KbのKpnIフラグメントをプローブとして用いての種々の結核菌株のサウザーンブロット分析の結果を示す。KpnIで切断したゲノムDNAはH37RV株からのものがレーン1;株12,レーン2;B1453,レーン3;株24,レーン4;79112,レーン5;12646,レーン6;79665,レーン7。株B1453と24は高濃度のINHに抵抗性、株12は低濃度のINHに抵抗性であるのに対してその他はINH感受性である。対照として、同じブロットをsodA遺伝子に対するプローブとハイブリッドさせた(Zhang et al.,1991)。B1453と関連したIS6110−仲介多型現象に注目のこと。
【0015】
図5はINH−抵抗性M.スメグマの株を示し、BH111(mc2−15510株の誘導体)は結核菌H37RVシャトルコスミド(ニューヨークのW.R.Jacob博士より提供された)のプールでトランスフォームし、それぞれのクローンをINH−感受性に関して数をかぞえた。コスミドpBH4は終始一貫して薬剤感受性を付与し、トランスフォーマントはカタラーゼを過剰産生した(Heym中としてアッセイした)。pBH4からのDNA挿入体の制限マップをpYZ55からの挿入体のマップと並べて示してある。このpYZ55は結核菌H37RVのKat Gを含むプラスミドで、大腸菌HPIの保存領域からのアミノ酸配列とマッチするように計画されたつぎのようなオリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションを基礎に分離されたものである:
【0016】
(5′−TTCATCCGCATGGCCTGGCACGGCGCGGGCACCTACCGC−3′)。以下の酵素に対する制限部位が示されている:B,BamH1;C,Cal;E,EcoRV;H,Hind111,K,Kpn1;M,Smal;N,Notl;R,EcoR1;S,Sac1.pYZ55からの4.5Kbの挿入体を含むマイコバクテリアシャトルプラスミド,PBAK14,Zhang et al.,1991,によるBH1のトランスフォーメーションは同じようにINH−感受性を供与する。MIC′SもまたpYZ55から導出されたサブフラグメントでトランスフォームされたBH1に関して示され、1つ(+)または他の(−)配位でpBAK14中に挿入される。Kat G遺伝子およびINH−感受性を供与する能力の両方とも2.9Kb EcoRV−Kpn1フラグメント(pBAK−KE+)にマップされた。
【0017】
図6は前に記載した活性ゲル分析18のために調製した種々のプラスミド構造によってトランスフォームした結核菌H37RVからの抽出物と大腸菌からのそれを示す。Wayne and Diaz19により記載されたように、8%ポリアクリルアミドを含む非変性ゲルがカタラーゼ(パネルA)とペルオキシダーゼ(パネルB)活性に対して染色された。レーン1,結核菌H37RV;2,大腸菌UM2(Kat E,Kat G,ref.15);3,大腸菌UM2/pYZ55;4,大腸菌UM2/pYZ56(図1中のpBAK−KE+に対応する、pUC19中の2.9Kb EcoRV−Kpn1フラグメント);5,大腸菌UM2/pYZ57(図1中のpBAK−KB+に対応する、BamH1−Kpn1欠失を有するpYZ55)。これらの条件下で結核菌カタラーゼとペルオキシダーゼ活性は2つのバンドとして移動した(レーン1);同じパターンがpYZ55で発現した組換え酵素についてみられた(レーン3)。pYZ56(レーン4)は、パネルCに示したベクターからのKat Gとlac Z′の間への融合によって分子量の増大した蛋白質を発現する。パネルCも大腸菌HP1をもった部分配列の並びを示す(遺伝子の完全配列はどこかで発表されるであろう)。
【0018】
図7はKat GとKat E(UM2,ref.15)両方に突然変異を有する大腸菌株で、これはPUC19ベクターだけ(ハッチしたバー)、結核菌Kat Gを発現するpYZ55(白色バー)、および結核菌Kat Gを多量に発現するpYZ56(黒バー)でトランスフォームされたものである。適当量の抗生物質を加えたLuria−Bertaniブイヨン中で終夜培養したものを種々の濃度のINHの存在下でプレートし、コロニー生成ユニットを数えた。典型的な実験の結果を3重試料での標準偏差を示す誤差バーとともに示す。結核菌Kat Gの過剰発現は同様に大腸菌UM255中で高濃度のINHに対して感受性を付与したが(Kat G,Kat E,Mulvey et al.,1988)、大腸菌TG1のようなカタラーゼ陽性株に対しては作用しなかった。いくつかの実験において、高濃度のINHはUM2とUM255だけの増殖に対して検出できる阻害作用を示したが、すべての実験でpYZ56−トランスフォーマントの阻害は対応するベクター対照で観察された阻害よりも少なくとも10−100倍大きかった。
【0019】
図8は、異なる結核菌株からKpn1で切断し、(A)Kat G(4.5Kb Kpn1フラグメント)、および(B)SOD遺伝子(1.1Kb EcoR1−Kpn1フラグメント,Zhang et al.,1991)でプローブしたゲノムDNAを用いて調製したサウザーンブロットを示す。プローブの標識とブロットのプロセッシングは前に記載した16とおりに実施した。レーン1,H37RV;2,株12−MIC 1.6μg/m11NH;3,B1453−MIC>50μg/ml INH20;4,株24−MIC>50μg/ml INH;5,79112−INH−感受性21;6,12646−INH−感受性21;7,79665−INH−感受性21。INH感受性は異なるINH濃度を含むLowenstein−Jensen s opesの播種によって確認した。
【0020】
好ましい態様の詳細な記述
米国で最近多剤抵抗性を示す多数の結核菌株が出現したことは最も驚くべき出来事であり、これはこの菌の並はずれて強い接触感受性による。この危険はいくつかの小さな結核流行域についてはっきりと示されていて、そこではMDR結核菌に感染した1人の患者がHIV陽性の刑務所看守と健常な看護スタッフ両方に感染させた(CDC1990,1991;Daley et al.,1992;Snider and Roper,1992)。HIVの流行が世界的な拡がりを見せている現状の重大さからみて、西側のAIDS患者がアフリカの患者のようにMDR結核菌株(トリ結核菌/細胞内マイコバクテリウム複合体よりもむしろ)に感染したとすれば、この病気が世界的な規模で伝播するだろうと予測される。
イソニアジド(INH)はマイコバクテリアの結核菌群−ヒト結核菌、ウシ結核菌、M.africanum−に対して特に強力な殺菌作用をもつ薬剤であり、結核の治療に特別な効力を発揮してきている。標準的な抗結核治療方式は一般にはINHとリファンピシンを与えるが、しばしばもっと弱い薬であるピラジナミド、エタンブトールまたはストレプトマイシンとの組み合わせが用いられる。治療に用いるほかにINHは予防の方法として患者と直接に接触する人達に対しても投与される。
【0021】
ヒトの病気の原因物質であるヒト結核菌のINH−抵抗変異体は2つのレベルの抵抗性を示す:すなわち低(1〜10μg/ml)と高(10〜100μg/ml)である。INH−抵抗性はしばしばカタラーゼ活性および菌毒性の消失を伴う。最近、AIDSの流行とホームレスの増大や社会条件の悪化によって、先進諸国とくに米国において結核が重大な公衆衛生上の問題として再び現われてきた。今日におけるこの病気の恐るべき一面は多剤薬剤に抵抗性の細菌の出現とヘルスケア従事者やHIV−感染患者への急速な院内感染である。このためCDCは多剤抵抗株(少くともINHとリファンピシン)の処置と伝染予防に関する新しい勧告を提起した。INH−抵抗性の問題に新しい見通しを得るとともに迅速な診断テスト法を開発するために以下の研究が行われた。
当然のこととして、必須なことは主な抗結核薬であるINHとリファンピシンに対する抵抗性のメカニズムを明らかにすることであり、それによって開発すべき新しい化学療法上の戦略が立てられ、MDR株を抑える新化合物の計画が可能になる。
【0022】
本発明は以上のものとしてカタラーゼ−ペルオキシダーゼ酵素、HPI、が有効であることを証明しており、この酵素単独で毒性を仲介するものと考えている。このような結論を支持する証拠として以下のことが挙げられる。すなわち、大腸菌のカタラーゼ陰性変異体中の結核菌Kat G遺伝子の発現によってこの細菌がINH感受性になるということである。さらに、結核菌INH−感受性遺伝子、Kat Gの分離は、ハイブリダイゼーションとPCRを用いたアプローチによってINH−抵抗性株の迅速な検出を容易にするという点で重要である。臨床株中にKat G欠失が高頻度でみられることは、ここに示すように、この手続きを簡単化する。
【0023】
INH−感受性中に含まれる結核菌遺伝子の同定
INH−感受性中に含まれる結核菌遺伝子を分離するのに一つの異種的アプローチを用いた。BH1は容易にトランスフォームするスメグマ菌株MC2155の偶発変異体であり(Snapper et al.,1990)、512μg/mlのINHに抵抗性でカタラーゼ−ペルオキシダーゼ活性を欠いている(Heym et al.,1992)。INH−感受性とこれらの酵素の活性との間には厳密な相関関係があるので、結核菌からの適当な遺伝子を運ぶプラスミドによるBH1のトランスフォーメーションは、それらの回復と同時に起こるINH−抵抗性に導くべきである。
したがって、DNAを大腸菌中の結核菌シャトルコスミドのプールから調製し、ついでエレクトロ−トランスフォーメーションによってBH1中に導入した。すると1000以上のカナマイシン−抵抗性トランスフォーマントがINH−抵抗性に関して数えられ、32g/mlのINHを含む培地上で増殖できない4つのクローン、すなわち野生型MC2155からのMICが得られた。
【0024】
BH1を再トランスフォーメーションしてのち、これらのうちのたった1つ、pBH4だけが終始一貫してINH−感受性表現型を付与した。制限酵素BamHI,KpnI,NotI,ClaIおよびHindIIIによる切断によってpBH4によって運ばれるクロモソームDNAの大きさは約30Kbであることがわかった。上記の酵素のうちの終りの方の3つによって生じたマップを図1に示した。
【0025】
pBH4をハイブリダイゼーションプローブとして用いてライブラリー中の相同クローンを検出したところ、さらに8つのシャトルコスミドが分離された。BH1へのトランスフォーメーションによって、これらのうちの5つ(T35,T646,T673,T79,T556)がINH−抵抗性を取り戻してpBH4と類似の制限プロフィルを示した(データは示さず)。とくに、4.5KbのKpnIフラグメントはすべての場合に存在していた。
【0026】
個々のBamHIフラグメントをサブクローンすることを試みたが、BH1中の傷害を補足して完全にすることのできるトランスフォーマントは生じなかったことから、BamHI部位は興味ある遺伝子の中に位置すると示唆された。それとは逆に、pBH4の誘導体であるpBH5はEcoRIフラグメントの欠失によって作り上げられ、このことはINH−感受性の回復のためには7Kbフラグメントは必要でないことを示している。
【0027】
BH1のINH−抵抗性変異と相補的であるシャトルコスミドを包含するトランスフォーマントを注意深くしらべて、いくつかの抗生物質に対するMICSを確立した。すべての場合に、INHに関するMICは512から8μg/mlへ減少し、これは感受性株MC2155(32μg/ml)の値よりも低い。このような過剰感受性表現型は組換えクローンがINH−毒性を強化する能力をもつ酵素を過剰産生したかもしれないことを示唆している。酵素学的研究から、これらのトランスフォーマントはすべてINH−感受性である野生型MC2155株よりも約2倍多いペルオキシダーゼとカタラーゼを産生することがわかった(データは示さず)。
【0028】
結核菌のMDR株の多くのものが、INHだけでなくリファンピシン、ストレプトマイシン、エタンブトールおよびピラジンアミドに対して感受性を失っている。INHとこれらの化合物に対する抵抗性の間に相関関係があるかもしれないという可能生をしらべるために、種々のM.スメグマチス株と、それらのpBH4トランスフォーマントに対するいくつかの薬剤のMICSを決定したが、なんらの差異は見出されなかった。
【0029】
結核菌カタラーゼ遺伝子のクローニング
大腸菌(Triggs−Raine et al.,1989)およびバチルスstearothermophilus(Loprasert et al.,1988)のカタラーゼ−ペルオキシダーゼ酵素中の高度保存領域の一次配列をもとに45−merオリゴヌクレオチドプローブをデザインした。結核菌DNAのゲノムブロットをこのオリゴヌクレオチドでプローブすることによって、ほとんどの場合に特異なバンドが検出された。KpnIは強くハイブリッド形成する4.5Kbのユニークなフラグメントを生成したので、この酵素をPUC19中の大きさで選択するライブラリーを作るのに用いた。
【0030】
そのオリゴヌクレオチドプローブでスクリーニングすることによって、適当なクローン、pYZ56が得られた。挿入DNAの制限マップを図1に示したが、これはpBH4の部分に正確に対応することがわかる。クロス−ハイブリダイゼーションによっても独立に確認された。
【0031】
いくつかのサブクローニングの実験によって大腸菌中の結核菌カタラーゼ−ペルオキシダーゼ活性を発現する最小フラグメントは2.5Kb EcoRV−KpnIフラグメントであることがわかり、これは予期したように、BamHIに対する開裂部位を含んでいた。部分DNA配列解析から、pYZ56によって運ばれるKat G遺伝子は大腸菌およびB.stearothermophilusのHPI酵素に極めて相同なカタラーゼ−ペルオキシダーゼ酵素をコードすることがわかった。
【0032】
結核菌 APLNSWPDNASLDKARRLLWPSKKKYGKKLSW
ADLIV
大腸菌 *********V***********I*Q***Q*I**
***FI
B.stearo−
thermophilus **********N******C*GR**
RNT*T*−*LGPICS
(図2;Triggs−Raine et al.,1988);(Loprasert et al.,1988).同じ残基を*で示した。HPI活性は染色により大腸菌、M.スメグマチスいずれについても検出された(以下を見よ)。
【0033】
INH−感受性中にカタラーゼ−ペルオキシダーゼが含まれる
結核菌Kat G遺伝子をクローン化したので、カタラーゼ−陰性とイソニアジド抵抗性の相関関係の遺伝的基礎をしらべることが緊急の関心事であった。一連の構成をシャトルベクターpBAK14中に確立し、INH−抵抗M.スメグマチス変異体BH1をトランスフォームするのに用いた。完全なKat G遺伝子を運んでいるプラスミドのみがHPIを産生してINH−感受性を取り戻した。これらのうちの最小のpBAK16は2.5Kb EcoRV−KpnIフラグメントを運び、このことはKat Gの上流2Kb領域は含まれないこと、そしてカタラーゼ−ペルオキシダーゼだけでマイコバクテリアがINHに感受性になるのに十分であることを示している。
【0034】
無細胞抽出物を非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で分離し、ペルオキシダーゼとカタラーゼ活性に関して染色を行なった。これらの条件下で、結核菌酵素はペルオキシダーゼ活性の2つのバンドを示し(レーン1)、これはカタラーゼ活性と同時移動した(データは示さず;Heym et al.,1992)。
【0035】
大腸菌中にKat G遺伝子を導入すると、同じ蛋白質の合成が行われるのに対して、pYZ56は僅かに大きい蛋白質を産生した。これは、フレーム内のlac Z::Kat G遺伝子融合の構成による。M.スメグマチスの細胞抽出物についても活性染色を実施した。BH1中の結核菌からのKat G遺伝子の存在はカタラーゼ−ペルオキシダーゼ酵素の産生に導き、これは結核菌または大腸菌中に作られる酵素、およびM.スメグマチスの未変性HPIと電気泳動的に同じ移動度を示した。
【0036】
結核菌中のINH−抵抗性の基礎
INH−抵抗株のサブセット、とくに最高薬物濃度に抵抗性をもつものはモルモットに菌毒性が低く、またカタラーゼ活性を欠くことがずっと以前から知られていた。臨床的に分離したいくつかの結核菌からゲノムDNAを調製し、4.5Kb KpnIフラグメントをプローブとして用いることによってサウザーンブロッティングにより解析した。高度の抵抗性をもつ2つの株、B1453と24の中で、カタラーゼ遺伝子がクロモソームから欠失していた。これに対して株12のような低い抵抗性を示すものではそれがなお存在していたが発現はしていない。さらに付加して行なった研究からKat Gの直前の領域は転位し易いことがわかった(データは示さず)。
【0037】
結核菌のHPIは大腸菌をINHに対して感受性にさせる
結核菌のHPI酵素が大腸菌にINH感受性を付与できるかどうかを明らかにするために、一連のカタラーゼ変異体をpYZ56でトランスフォームしてMICSを定量した。野生型株はINH感受性でなかったが、内因性カタラーゼ活性を欠如する一方でpYZ56を包含する変異体は高濃度のINH(500μg/ml)の存在下では増殖阻害を示した。一方、トランスフォームしない株は非感受性であった。
【0038】
本発明の目的のために、図5に示したプラスミド含有および制限エンドヌクレアーゼマップを、培養コレクション受入No.I−1209として1992年5月18日に、フランス、パリー、パスツール研究所のNational Collection of Cultures of Microorganismの株中にdepositした。このプラスミドは本発明の核酸配列、すなわちフラグメント中にBamHI開裂部位をもつプラスミドpYZ56の4.5Kb KpnI−KpnIフラグメントを含んでいる。
【0039】
一般的には、本発明は試料中のイソニアジド−抵抗性結核菌の存在を検出する方法を特徴としており、イソニアジド−抵抗性結核菌DNAと選択的にハイブリッド形成して検出可能な複合体を作れるようなDNAまたはRNAを少なくとも1つ用意することも含んでいる。検出はプローブが試料中に存在するイソニアジド−感受性結核菌DNAとハイブリッドを作ってハイブリッド複合体を形成し、試料中のイソニアジド−感受性結核菌の存在の表示としてハイブリッド複合体を検出できるような条件下で行なわれる(ここで用いた“選択的ハイブリッド形成”はイソニアジド−抵抗性結核菌とはハイブリッドを作らずにイソニアジド−感受性結核菌とだけハイブリッド形成するDNAまたはRNAプローブを指している。)試料は結核菌細胞またはその細胞の一部または結核菌核酸、とくにDNAを豊富に含む細胞成分から作ることができる。ハイブリダイゼーションは通常のハイブリダイゼーション試薬を用いて実施することができる。本発明にとって決定的であるような特定のハイブリダイゼーションの条件は何も見出されなかった。
【0040】
より詳しくいえば、結核菌からのDNAの配列はサウザーンブロッティングとハイブリダイゼーションによって解析できる。本発明で用いる方法についてはManiatis,Sambrook et al.,(Cold SpringHarbor,Second Edition,1989)に述べられている。DNAフラグメントはアガロースゲル上で分離できてその場所で変性される。ついでフラグメントはゲルから水不溶性固体、すなわちニトロセルロースフィルター、ナイロン膜、または活性化セルロース紙のような多孔性の支持体に移され、そこで固定されるが、それにはたとえばAmershamで発売しているHybondTM膜が用いられる。プローブとの非特異的ハイブリダイゼーションを減らすためにプレハイブリダイゼーションしてのち、固体支持体を本発明の核酸プローブとハイブリッド形成させる。非結合と弱く結合したプローブを取除くために固体支持体を洗滌し、生成したハイブリッド二重複合分子をしらべる。代わりの便利なやり方はゲル中で変性したDNAにオリゴヌクレオチドをハイブリッド形成させることである。
【0041】
ハイブリダイゼーション溶液中に存在する標識プローブの量は標識の性質、フィルターに当然結合しうる標識プローブの量およびハイブリダイゼーションの厳密さに依存して大きく変化する。一般的には、固定化したDNAへのプローブの結合の速度を促進させるために化学量論的量を大きく超える過量が用いられる。
【0042】
種々の段階の厳密さをもつハイブリダイゼーションを用いることができる。条件が厳密であればあるほど、二重複合体形成のためのポリヌクレオチドとプローブ間のハイブリダイゼーションにとって要求される相補性はより大きくなる。ハイブリダイゼーションの厳しさは温度、プローブの濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間その他もろもろによって調節できる。都合よく、ハイブリダイゼーションの厳密さは反応溶液の極性を変えることによって変えられる。用いるべき温度は経験的に使用するか、またはこの目的のために開発された、よく知られた公式から決められる。
【0043】
DNAフラグメントがアガロースゲルから固体支持体へ移されるサウザーンハイブリダイゼーションと異なり、本発明の方法は乾燥アガロースゲル中でのオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションによっても実施することができる。この方法では、アガロースゲルを乾燥させ、本発明のオリゴヌクレオチドプローブを用いてハイブリダイゼーションをその位置で行なわせる。この方法は検出の速度と感度が望まれるときに推奨される。この方法は結核菌のゲノムまたはクローン化DNAを含むアガロースゲル上で実施することができる。
【0044】
さらに、本発明の方法は結核菌DNAをポリアクリルアミドゲルからエレクトロブロッティングによってナイロンフィルターへ移すことによって実施することができる。時間が最も重要なときはエレクトロブロッティングが望ましいかもしれない、というのはエレクトロブロッティングはDNAをアガロースゲルから移すために開発された毛細管ブロッティングよりも必まって早いからである。この方法はUV−クロスリンキングと組み合わせて実施することができる。テストすべき試料を含むポリアクリルアミドゲルが、適当に調製されたナイロンフィルターと接触して置かれる。ついでこれらをエレクトロブロッティング装置の中にサンドイッチ状に入れ、ついで電流を用いてDNAをゲルからフィルター上へ移す。緩衝液で洗滌後、フィルターをプレハイブリダイゼーションのために用意し、ついでハイブリッド形成またはUV−クロスリンキングを行なわせる。
【0045】
本発明の方法は、イソニアジドに抵抗性の結核菌を検出するための、本発明による核酸プローブを用いて実施することができる。プローブは通常の方法を用いて検出することができる。
【0046】
本発明のヌクレオチドは結核菌の生物学的試料中のヌクレオチド配列の検出のためのプローブとして用いることができる。ポリヌクレオチドプローブは原子または無機遊離基、もっとも普通には放射性核種で標識することができるが、おそらく重金属でも標識できる。放射性標識の中には32P,3H,14Cまたは類似のものが含まれる。適当なシグナルを提供し十分な半減期をもつ放射性標識はどんなものでも用いることができる。その他の標識の中には、標識抗体、蛍光物質、化学ルミネッセンス体、酵素、抗体など標識リガンドや類似体に対する特異結合ペアメンバーとして働らきうるようなものが含まれる。標識の選択がどのようになされるかはハイブリダイゼーションの速度とDNAまたはRNAへの標識の結合に対する標識の効果によって決められる。標識が、ハイブリダイゼーションのためのDNAまたはRNAの量を検出するのに十分な感度を提供することが必要である。
【0047】
本発明の望ましい態様中では、プローブはたとえばニック−トランスレーションによって標識中に取みされ得るような、例えば32Pや125Iなどの放射性アイソトープで標識される。
他の望ましい態様においては、アビヂンがビオチンに結合しているとき、ハイブリッドDNA複合体の検出を可能にさせるような化学物質、たとえば蛍光団(fluorophore)と結合体を作っているアビヂンと反応するところのビオチンでプローブを標識する。この蛍光団の存在によって、ハイブリッドDNA複合体を蛍光測定法によって検出することが可能となる;ビオチンに結合する化学物質が電子密度の高い化合物であれば電子顕微鏡によってハイブリッドDNA複合体の検出が可能である;抗体の場合は免疫学的に検出できる;あるいはカタラーゼ/基質対の一つは酵素学的に検出することができる。細菌をプローブと接触させる前に、結核菌を破壊してDNAを溶出させ、ついでそれを変性させてニトロセルロース膜のような、適当な固体のDNA支持体上に固定させる。
【0048】
プローブの標識を必要としないその他の検出法はいわゆるサンドイッチハイブリダイゼーション法である。このアッセイでは、1本鎖ベクター中に含まれる非標識プローブがイソニアジド−感受性結核菌DNAとハイブリッドを形成し、標識した、プローブを含まない1本鎖ベクターが、ハイブリッド複合体全体を標識しつつ、プローブを含むベクターとハイブリッド形成する。
【0049】
本発明の配列はジデオキシヌクレオチド配列決定法から導かれた。ヌクレオチドの塩基配列は5′−−−−→3′の方向に書かれている。示した文字のそれぞれは以下のヌクレオチドについての通常の命名法によっている。
A アデニン
G グアニン
T チミン
C サイトシン
【0050】
本発明のヌクレオチドは、通常の化学合成法を用いてヌクレオシド間を3′−−−→5′リン酸結合生成によって作ることができる。たとえば、よく知られたホスホジエステル、ホスホトリエステル、およびホスファイトトリエステル法、ならびにこれらの方法の既知修飾法を用いることができる。デオキシリボヌクレオチドは、ホスホラミダイトアプローチを基礎としたような、自動合成マシンで調製することができる。オリゴ−およびポリリボヌクレオチドも通常の方法を用い、RNAリガーゼの助けをかりて得ることができる。
【0051】
本発明のヌクレオチドは純粋状態にある。たとえば、これらのヌクレオチドはヒト血液由来の蛋白質、ヒト血清蛋白質、ウィルス蛋白質、これらの蛋白質をコードするヌクレオチド配列、ヒト組織、およびヒト組織成分を含んでいない。さらに、言えることはこれらのヌクレオチドは他の核酸、外来蛋白質や脂質、それに細菌やウィルスのような外来微生物を含まない。
【0052】
もちろん本発明は、本発明のヌクレオチド配列の変異体または、本発明のプローブと同じ選択的ハイブリダイゼーションの性質を示す血清型変異体も含んでいる。
本発明のヌクレオチド配列はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)として知られているDNA増幅プロセスで用いることができる。たとえばS.Kwok et al.,J.Virol.,61:1690−1694(1987)参照。PCRは迅速の故に好都合である。
【0053】
増幅しようとするDNAのプラスとマイナスストランドに相補的である部分から10−300塩基対だけ離れて位置する、既知配列のDNAプライマー対は、オリゴヌクレオチド合成のためのよく知られた方法によって調製することができる。各プライマーの一方の端を伸ばすことができ、プライマーがPBMC DNAにアニーリングするときに制限エンドヌクレアーゼ部位をつくるように修飾される。PCR反応混合物が含み得るものは、PBMC DNA、DNAプライマー対、4つのデオキシリボヌクレオシドトリリン酸、MgCl2、DNAポリメラーゼおよび通常の緩衝液である。DNAは何回にもわたるサイクルで増幅される。一般的には、サイクル回数を多くすることによって検出感度を増すことが可能であり、各サイクルは温度を上げて短時間PBMC DNAを変性させ、反応液を冷却し、ついでDNAポリメラーゼで重合させることから成っている。
【0054】
増幅した配列はオリゴマー制限(OR)と呼ばれている方法を用いて検出できる。R.K.Saiki et al.,Bio/Technology 3:1008−1012(1985)およびSSCP PNAS 1985,Vol.86,p.2766−2770を参照。たとえば、増幅後、PCR反応混合物の一部を分離してとり、32P標識アデノシントリリン酸末端−標識プローブのような、末端を標識したヌクレオチドプローブとハイブリダイズさせる。OR中では、末端標識オリゴヌクレオチドプローブは溶液中で増幅配列領域にハイブリド形成し、そのプロセスで特異なエンドヌクレアーゼ部位を再構成する。こうして、標識プローブと増幅Kat G配列のハイブリダイゼーションによって、選択的制限酵素切断に感受性の2本鎖DNA形を生ずる。エンドヌクレアーゼで制限的に切断後、生成した試料をポリアクリルアミドゲル上で分析し、診断的に標識したフラグメントを有するゲルの1部のオートラジオグラムが得られる。オートラジオグラム中の診断的フラグメント(たとえば長さ10−15塩基)が見られたときはPBMCs中にKat G配列が存在することを示している。
【0055】
もとのテンプレートとしてクロモソームDNAの代りにRNAを用いることによって検出感度を上げる可能性があるので、本発明ではここで述べたDNA配列に相補的なRNA配列を用いることを企てた。RNAは逆転写酵素によって相補的なDNAに変換でき、そのあとDNA増幅させる。
【0056】
実験法
細菌株とプラスミド
本発明で用いた細菌株とプラスミドの概略を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
結核菌H37RVゲノムライブラリーがシャトルコスミドpYUB18(Snapper et al.,1988)中に構成され、Dr.W.R.Jacobsの厚意により提供を受けた。使用したその他のシャトルベクターはpYUB12(Snapper et al.,1988)とpBAK14(Zhanget al.,1991)である。
【0059】
微生物学的方法と酵素学
用いた抗生物質、増殖条件、酵素学およびMIC定量はHeym et al.,(1992)中で見ることができる。
【0060】
核酸に関する方法
サブクローニング、サウザーンブロッティング、DNA配列決定、オリゴヌクレオチド生合成等に用いたのは標準プロトコールである(Maniatis et al.,1989;Eiglmeeier et al.,1991)。
【0061】
活性染色
大腸菌とマイコバクテリアの無細胞抽出物の調製は最近記載されている(Heym et al.,1992;Zhang et al.,1991)。未変性蛋白試料はLaemmli(1970)が記載しているようなポリアクリルアミドゲル電気泳動法で調製した:但し以下の点はLaemmliと異なる。すなわち、すべての緩衝液からSDSを取除き、試料を煮沸せず、そしてβ−メルカプトエタノールを試料緩衝液中に含めなかった。50−100μgの蛋白質試料を7.5%のポリアクリルアミドゲル上で電気泳動してのち、そのゲルをゆるく攪拌しながら3mM H22中に20分間浸してカタラーゼ活性を検出した。等量の2%塩化第二鉄と2%第二鉄シアン化カリウムを加えると、光照射によってカタラーゼ活性を示す鮮明なバンドが現われる。ペルオキシダーゼ活性は、0.2−0.5mg/mlジアミノベンヂジンと1.5mM H22を含む溶液中にゲルを30−120分間浸したのち褐色バンドとして検出される。
【0062】
高度の毒性化合物をつくるための最も適当な方法は、結核菌HPI酵素でペルオキシダーゼ作用的にINHを活性化することである(Youatt,1969;Gayathri−Devi et al.,1975)。kat G遺伝子が分離されて特性が明らかになったので、同じようにして活性化され得るINHの新しい誘導体を作ることも可能なはずである。
【0063】
引 用 文 献

【0064】

【0065】

【0066】

【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】pYZ56中に存在する挿入体の制限マップを示す。
【図2】結核菌カタラーゼ/ペルオキシダーゼポリペプチドの部分配列およびHPI酵素との比較を示す。
【図3】組換え結核菌ペルオキシダーゼ/カタラーゼの発現を示す。
【図4】INH−抵抗株におけるカタラーゼ遺伝子の欠失を示す。
【図5】各種の制限酵素地図を示す。
【図6A】結核菌H37RVからの抽出物と大腸菌からの抽出物を示す。
【図6B】結核菌H37RVからの抽出物と大腸菌からの抽出物を示す。
【図6C】結核菌H37RVからの抽出物と大腸菌からの抽出物を示す。
【図7】コロニー数を示すグラフである。
【図8】サザーンブロット分析の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図6B及び図6Cに示す121から360の塩基配列を含む、精製されたポリヌクレオチド。
【請求項2】
放射性標識、酵素標識、蛍光標識およびリン光標識からなる群から選択される少なくとも1つの標識で標識されている、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリヌクレオチドを含む、INH感受性の結核菌を検出するための組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のポリヌクレオチド或いは請求項3に記載の組成物を含む、INH感受性の結核菌を検出するためのキット。
【請求項5】
結核菌由来のヌクレオチドを、請求項1又は2に記載のポリヌクレオチドを含むプローブと、該プローブが試料中に存在する該INH感受性の結核菌のDNAとハイブリダイズできる条件下で接触させて、ハイブリッド複合体を形成するステップと、
該ハイブリッド複合体を検出して、該試料中のINH感受性結核菌の存在を明らかにするステップと
を含む、INH感受性の結核菌を検出する方法。
【請求項6】
結核菌の生物学的試料を、請求項1又は2に記載のポリヌクレオチドを含むプローブと、該プローブが結核菌のKatG遺伝子とハイブリダイズできる条件下で接触させて、ハイブリッド複合体を形成するステップと、
該ハイブリッド複合体を検出して、該試料中のカタラーゼ−パーオキシダーゼ遺伝子の存在を明らかにするステップと
を含む、カタラーゼ−パーオキシダーゼ遺伝子又はその一部をコードする結核菌の生物学的試料中におけるヌクレオチド配列を検出する方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図6A】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−149390(P2006−149390A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369286(P2005−369286)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【分割の表示】特願2002−374077(P2002−374077)の分割
【原出願日】平成4年10月9日(1992.10.9)
【出願人】(594120009)メディカル リサーチ カウンスル (2)
【Fターム(参考)】