説明

結腸粘液定量法

【課題】結腸の粘液を簡便に精度良く定量する方法を提供する。
【解決手段】哺乳類の結腸における粘液量を定量する方法であって、採取した糞便の粘液または採取した腸管の管壁に付着した粘液に含まれる硫酸化多糖を指標として定量する、哺乳類の結腸の粘液の定量法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結腸粘液量を定量する方法、並びにそれに用いられる器具およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
消化管の粘液は杯細胞でつくられ、潤滑剤、拡散障壁として物理的損傷、化学的刺激から粘膜を保護すると考えられている。このため、粘液は、抗菌タンパク質や免疫系と同様、粘膜の防御機構において重要な役割を担うものであるといえる。
【0003】
粘液の主成分は、ムチンと呼ばれる糖タンパク質であり、タンパク質に糖鎖が結合した構造を取っている。このムチンは、中性ムチン、糖鎖の糖残基にシアル酸を含むシアロムチン、および、硫酸基を有するスルホムチンに分類される。この内、ヒトやラット等の哺乳類において、スルホムチンの分布についての報告がある(例えば、非特許文献1および2参照)。
【0004】
【非特許文献1】「大腸肛門誌」、36、1983年、p.626−634
【非特許文献2】「医学のあゆみ」、147(5)、1988年、p.407−410
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
結腸の粘膜に関して、便通状態等の変化により結腸の粘液量も変化することが報告されている(「Comp.Biochem.Physiol.A.Mol.Integr.Physiol.」、126、2000年、p.203−212参照)。
以上のことから、結腸の粘液の量を定量できれば、結腸の病変の早期発見や、健康管理のための指標とすることにつながる。このため、結腸の粘液を簡便に定量する方法が望まれている。
上記の知見に基づき、本発明の目的は、硫酸化多糖を指標として、粘液中の糖タンパク質を定量することにより、結腸における粘液の分泌を簡便に定量する方法を提供することである。
また、本発明の目的は、上記の結腸の粘液を定量するための器具およびキットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、下記の手段によって解決された:
(1)哺乳類の結腸における粘液量を定量する方法であって、採取した糞便の粘液または採取した腸管の管壁に付着した粘液に含まれる硫酸化多糖を指標として定量することを特徴とする、哺乳類の結腸の粘液の定量法、
(2)糖タンパク質を定量するための試料として一定面積の糞便表層を採取し、採取した試料を用い硫酸化多糖を指標として定量することを特徴とする、前記(1)項に記載の哺乳類の結腸の粘液の定量法、
(3)粘液量の定量において、アルシアンブルーを用いることを特徴とする、前記(1)または(2)項に記載の哺乳類の結腸の粘液の定量法、
(4)採取した糞便表層の試料から粘液を抽出し、得られた粘液抽出液を用いて定量することを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の哺乳類の結腸の粘液の定量法、
(5)一定面積の糞便表層を採取するための穴が開けられた平板と、平板に取り付けられた持ち手を有することを特徴とする、糞便試料採取用器具、
(6)前記(5)に記載の糞便試料採取用器具を含むことを特徴とする、哺乳類の結腸の粘液の定量キット、および
(7)前記(5)に記載の糞便試料採取用器具の平板を糞便表層に押し当てることで平板の穴より出た糞便を回収するための器具をさらに有することを特徴とする、前記(6)項に記載の哺乳類の結腸の粘液の定量キット。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、結腸における粘液を簡便に精度良く定量することができる。また、糞便の表層部分を試料として用いることにより、結腸による粘液の分泌量を非侵襲的に定量することができる。
また、本発明により、このような粘液を定量するための器具およびキットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の哺乳類の結腸の粘液の定量法は、採取した糞便の粘液または腸管の管壁に付着した粘液に含まれる硫酸化多糖を指標として粘液量を定量するものである。
【0009】
本発明では、粘液を定量するに当たり、スルホムチンを染色することができる色素、とりわけアルシアンブルーを用いて硫酸化多糖を指標として粘液を定量することが好ましい。
【0010】
硫酸化多糖を指標として粘液を定量するためのサンプルとしては、採取した糞便または採取した結腸の腸管を用いることができる。このうち、非侵襲的に結腸の粘液を定量できる点から、糞便を対象とするのが好ましい。
【0011】
本発明において糞便を用いる場合、どの哺乳類の糞便も用いることができるが、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウスまたはモルモットの糞便であることが好ましい。
【0012】
ラット、マウス、ブタ、ヒト等の糞便の表層に存在する粘液層の厚さは、約20μmであることが知られている(例えば、「J.Nutr.Sci.Vitaminol.」、51、2005年、p.278−291参照)。したがって、本発明において糞便を用いる場合は、小動物の糞便であれば糞便をそのまま用いてもよいが、ウシやヒト等の大きな動物の糞便の場合等は特に、糞便表層から一定面積を採取して、硫酸化多糖の定量に用いることが好ましい。
【0013】
本明細書において、「糞便表層」とは、粘液塗被層をいう。その厚さは哺乳類の種類によって異なるが、例えばヒトの場合は、糞便の表面から約5000μmまで、好ましくは4000μmまで、特に好ましくは1000μmまでの部分を意味する。
また、硫酸化多糖を定量するために採取する試料の量については、糞便表層部分を採取でき、かつ糞便表層の粘液層に含まれる硫酸化多糖を定量するのに十分な量であれば特に限定されないが、好ましくは20〜1000mm、より好ましくは50〜200mmの面積の糞便表層を採取することが好ましい。
【0014】
糞便表層を一定面積採取する方法は特に制限するものではないが、糞便表層を採取するために穴が開けられた平板と、平板に取り付けられた持ち手を有する糞便試料採取用器具を好適に用いることができる。
【0015】
以下、本発明の糞便試料採取用器具を説明する。
本発明の糞便試料採取用器具は、一定面積の糞便表層を採取するための穴が開けられた平板と、平板に取り付けられた持ち手を有する。
【0016】
本発明の糞便試料採取用器具の形状に特に限定はないが、糞便に押し付け、表層採取が容易であるという観点からL型であることが好ましい。平板の面積は1〜40cmが好ましく、2〜10cmがより好ましい。平板の厚さは0.01〜0.4cmが好ましく、0.08〜0.2cmがより好ましい。平板に開けられた穴の形状に特に限定はないが、押し出された糞便の回収が容易であるという観点から円形であることが好ましい。この場合、円形の穴の直径は5〜20mmが好ましく、8〜16mmがより好ましい。
【0017】
上記平板に取り付けられた持ち手の形状は、糞便試料採取用器具を糞便に押し当て、押し当てることによって平板の穴から出てきた糞便表層を採取する、という一連の操作ができれば、特に限定されない。持ち手の長さは、5〜20cmが好ましく、8〜16cmがより好ましい。
【0018】
本発明の糞便試料採取用器具の材質に特に制限はないが、プラスチック、合成樹脂、木材、合成紙、金属等が好ましい。
【0019】
図1(a)および図1(b)に本発明の糞便試料採取用器具の一例を示す。なお、図1(a)は本発明の糞便試料採取用器具の一例の正面図、図1(b)は本発明の糞便試料採取用器具の一例の側面図である。
図1に示す糞便試料採取用器具の場合、一定面積の糞便表層を採取するための穴2を有する平板1の縦のサイズは1〜5cmであることが好ましく、2〜4cmであることがより好ましい。横のサイズは1〜5cmであることが好ましく、2〜4cmであることがより好ましい。厚さは0.01〜0.4cmであることが好ましく、0.08〜0.2cmであることがより好ましい。また、図1に示す糞便試料採取用器具の平板1に取り付けられた持ち手3の長さは5〜20cmが好ましく、7〜12cmがより好ましい。
【0020】
本発明の糞便試料採取用器具は、糞便試料採取用器具の平板1の穴2から糞便表層を出すために、糞便試料採取用器具の平板1を糞便に押し当てる。小腸などで形成された糞塊を覆っている結腸でつくられた粘液が大部分を占める糞便表層試料を採取するために、平板1を糞便の表面から0.1〜0.5cm押し当てるのが好ましく、0.2〜0.4cm押し当てるのがより好ましい。
本発明の糞便試料採取用器具を用いることにより、本発明の結腸の粘液の定量法において、硫酸化多糖を定量するための糞便表層試料を簡便に採取することができる。
【0021】
本発明の糞便試料採取用器具の平板1を糞便に押し当てて、平板1の穴2から出てきた糞便表層試料を回収するための器具としては、ヘラ、ブラシ、スプーン、綿棒等が挙げられる。
本発明の糞便試料採取用器具と、上記糞便表層試料を回収するための器具とを哺乳類の結腸の粘液の定量キットとして用いることで、本発明の哺乳類の結腸の粘液の定量法に用いられる一定面積の糞便表層を簡便に採取することができる。
【0022】
上記のように採取した、硫酸化多糖を指標として粘液を定量するための試料には、結腸の粘液の他に、様々な成分が含まれる場合がある。このような場合であっても、糞便中の他の物質の影響を受けないので、粘液以外の成分を取り除くことなく、硫酸化多糖を指標として粘液を定量することができる。
【0023】
本発明の哺乳類の結腸における粘液の定量方法において、採取した腸管の管壁に付着した粘液に含まれる硫酸化多糖を指標とする場合、どの哺乳類の腸管も用いることができる。例としては、ウマ、ウシ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、モルモット、の腸管が挙げられる。
採取した腸管の管壁に付着した粘液に含まれる硫酸化多糖を指標とした粘液の定量において、採取した腸管に内容物が含まれていない場合はそのまま使用できるが、採取した腸管が内容物を含む場合は、腸管の長軸方向に切開した後、腸管内容物を除去するという前処理を施すことが好ましい。
採取した腸管に対しては、還元剤、プロテアーゼ阻害剤を含んだ緩衝液を加え、ホモジナイズした後、遠心分離という前処理を行う。緩衝液としては、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、トリス塩酸緩衝液、トリス緩衝生理食塩水、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液等が挙げられ、このうちトリス塩酸緩衝液が好ましい。還元剤としては、ジチオスレイトール、N−アセチルシステイン等、ジスルフィドを還元するチオール基を有する還元剤が挙げられ、このうちジチオスレイトールが好ましい。
このようにして得られた試料を、粘液を定量するための試料として用いることができる。
【0024】
本発明の粘液の定量法において、採取した糞便試料をそのまま硫酸化多糖を指標とした粘液の定量に用いてもよいが、糞便試料から粘液を抽出したものを、硫酸化多糖を指標とした粘液の定量に用いることが好ましい。
【0025】
以下、粘液の抽出方法について説明する。
採取した糞便に緩衝液を加え、撹拌した後、遠心分離を行い、上清を回収することにより、粘液の抽出液を得ることができる。緩衝液を加えるのは溶液のpHを一定に保つためである。緩衝液としてはリン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、トリス塩酸緩衝液、トリス緩衝生理食塩水、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液等が挙げられるが、このうちリン酸緩衝生理食塩水が好ましい。なお、緩衝液のpHは5〜9が好ましく、6.5〜7.5がより好ましい。
また、緩衝液には、糖タンパク質のジスルフィド結合を還元するチオール基を有する還元剤が含まれていることが好ましい。緩衝液に還元剤を添加するのは糖タンパク質のジスルフィド結合を切断し、粘液を可溶化するためである。還元剤としては、ジチオスレイトール、N−アセチルシステイン等が挙げられ、この中でもN−アセチルシステインが好ましい。還元剤の添加量に特に限定はないが、0.5〜5%が好ましく、1〜3%がより好ましい。
さらに、緩衝液にはタンパク質変性剤が含まれていることが好ましい。緩衝液にタンパク質変性剤を添加するのは糖タンパク質のタンパク質を変性させ、粘液を可溶化するためである。タンパク質変性剤としては、グアニジン塩酸塩、尿素、ドデシル硫酸ナトリウム、グルタルアルデヒド、フェノール等が挙げられ、この中でもグアニジン塩酸塩が好ましい。タンパク質変性剤の添加量は1〜16Mが好ましく、4〜10Mがより好ましい。
【0026】
硫酸化多糖を指標とするの定量方法としては、通常の方法を用いることができるが、本発明においてはアルシアンブルーを用いた方法であることが好ましい。
アルシアンブルーを用いた、硫酸化多糖指標とする粘液の定量方法について説明する。
【0027】
採取した糞便若しくは腸管試料、または粘液抽出液にアルシアンブルーの溶液を添加する。アルシアンブルーの添加量は、体積比で、糖タンパク質を定量するための試料50に対して10〜200が好ましく、20〜80がより好ましい。また、アルシアンブルーの溶液pHは1.0〜3.0が好ましく、1.0〜2.5がより好ましい。このような範囲とすることで、アルシアンブルーがスルホムチンを特異的に染色することができる。
【0028】
アルシアンブルーの溶液を添加したあと、吸光度を測定する。測定波長としては550〜650nmが好ましく、590〜620nmがより好ましい。この吸光度から、あらかじめ作製した検量線を基に硫酸化多糖の量を求めることができる。
【0029】
結腸粘液に含まれる硫酸化多糖量と糖タンパク質量には相関関係が認められる。この相関関係に基づき、硫酸化多糖相当量として結腸粘液を定量する。
このようにして、上記のように求めた硫酸化多糖の量から、結腸粘液を定量する。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
(1)試料の採取
排泄されたヒト糞便に図1(a)および図1(b)に示す糞便試料採取用器具を押し付け、ヘラを用いて押し出た糞便表層を含んだ糞便試料約0.3gを回収した。回収した糞便試料を凍結乾燥器により凍結乾燥した後、乾燥糞便の重量を測定した。糞便試料採取用器具の構成は以下の通りである。
平板1 面積9cmの正方形、厚さ0.1cm、材質:塩化ビニル
穴2 直径1.2cm
持ち手3 幅3cm、長さ10cm、厚さ0.1cm、材質:塩化ビニル
【0032】
(2)粘液の抽出
糞便試料に8Mグアニジン塩酸塩−2%N アセチルシステイン/PBS2mLを加え、攪拌した後、遠心分離した。
【0033】
(3)硫酸化多糖の定量
遠心分離したサンプルの上清を回収し、アルシアンブルーを利用して硫酸化多糖を定量する。硫酸化多糖の定量は、WieslabTM sGAG quantitative kit(Wieslab)に記載された方法により次のように実施可能である。
回収上清に、蒸留水 50μl、SAT solution(HSO 0.3%、Triton X−100 0.75%)50μlを加え、攪拌した後、室温で15分間反応させる。その後、アルシアンブルー溶液(組成:SAT solution 250μl、蒸留水 450μl、アルシアンブルーstock solution(組成:0.1% HSO、0.4M GuHCl)50μl)750μlを加え、攪拌した後、室温で30分間反応させる。遠心分離(15000rpm、15分間)後、上清を吸引除去、DMSO溶液(MgCl 0.05M、ジメチルスルホキシド 40%)500μlを加え、15分間攪拌する。遠心分離(15000rpm、15分間)後、上清を吸引除去、Gu−Prop溶液(GuHCl 4M、1−プロパノール 33%、Trion X−100 0.25%)500μlを加え、15分間攪拌する。595nmにおける吸光度を測定し、コンドロイチン6硫酸を標準物質として作成した検量線から硫酸化多糖の濃度を算出する。その結果、硫酸化多糖の量は約59μg/cmであった。
【0034】
(4)粘液の定量
結腸粘液に含まれる硫酸化多糖量と糖タンパク質量には、相関関係が認められる。従って、上記で定量した硫酸化多糖の量に基づき、硫酸化多糖相当量として、粘液量を定量した。その結果、粘液の量は約59μg/cm(硫酸化多糖相当量)であった。
【0035】
参考例1
ヒト(3名、N=45試料)より糞便表層を含んだ糞便試料を回収した。回収した試料を、凍結乾燥器により、凍結乾燥した後、乾燥糞便の重量を測定し、乾燥糞便の硫酸化多糖量を以下のように定量した。
糞便試料は、8Mグアニジン塩酸塩 2%N−アセチルシステイン/PBS2mLを加え、攪拌した後、遠心分離した。遠心分離したサンプルの上清を回収し、蒸留水 50μl、SAT solution(HSO 0.3%、Triton X−100 0.75%)50μlを加え、攪拌した後、室温で15分間反応させた。その後、アルシアンブルー溶液(組成:SAT solution 250μl、蒸留水 450μl、アルシアンブルーstock solution 750μlを加え、攪拌した後、室温で30分間反応させた。遠心分離(15000rpm、15分間)後、上清を吸引除去、DMSO溶液(MgCl 0.05M、ジメチルスルホキシド 40%)500μlを加え、15分間攪拌した。遠心分離(15000rpm、15分間)後、上清を吸引除去、Gu−Prop溶液(GuHCl 4M、1−プロパノール 33%、Trion X−100 0.25%)500μlを加え、15分間攪拌した。595nmにおける吸光度を測定し、コンドロイチン6硫酸を標準物質として作成した検量線から硫酸化多糖の濃度を算出した。
【0036】
また、同試料を用いて、糖タンパク質の定量を行った。糖タンパク質の定量は、「Amersham ECL glycoprotein detection system」(GE Healthcare)に記載された方法により次のように実施した。
抽出液(組成:8M グアニジン塩酸塩 2%N−アセチルシステイン/PBS)により抽出した試料を遠心分離し、回収した上清に、サンプルバッファー(Laemmli sample buffer(組成:62.5mM Tris−HCl、25% glycerol, 2% ドデシル硫酸ナトリウム、 0.01% Bromophenol Blue)950ml、2−メルカプトエタノール 50ml)を等量混合し、95℃、5分間処理した。ゲルに試料を添加し、電気泳動(200V、40分間)を行った。電気泳動後のゲルを、PVDF膜に転写した(30V、一晩)。
転写後のPVDF膜をPBSに10分間浸漬した。その後、遮光下で20分間、過ヨウ素酸ナトリウム 10mMに浸漬した。軽くPBS洗浄(2回)後、PBSで洗浄(10分間、3回)した。その後、ビオチンヒドラジド(0.125mM)4mLを酢酸緩衝液(100mM、pH5.5)20mLに添加した溶液中に室温で60分間浸漬した。軽くPBS洗浄(2回)後、PBSで洗浄(10分間、3回)した。5%membrane blocking agent/PBS溶液中に室温で60分間浸漬(ブロッキンク)する。軽くPBS洗浄(2回)後、PBSで洗浄(10分間、3回)する。PBSで1:6000に希釈したストレプトアビジンHRP溶液中に室温で30分間浸漬した。軽くPBS洗浄(2回)後、PBSで洗浄(10分間、3回)した。「ECL Western bollting detection reagents(GE Healthcare)」の検出溶液1と検出溶液2を等量混合し、PVDF膜に添加する。室温、1分間反応させ、余分な検出溶液を除去した後、透明フィルムに挟み、化学発光検出装置 ChemiDoc XRS(BIO−RAD)を利用して、糖タンパク質を定量した。
【0037】
その結果、硫酸化多糖量と乾燥糞便重量との間に相関関係は認められなかった(図2)。また、硫酸化多糖量と糖タンパク質量との間に相関関係が確かめられた(図3)。
【0038】
参考例2
エーテル麻酔下で雄性SDラット(10週齢、日本SLC、N=14)より、結腸の最遠位側にある糞便を摘出した後、糞便表層粘液の硫酸化多糖を参考例1と同様に定量した。
同サンプルを用いて、糖タンパク質の定量を行った。糖タンパク質の定量は、Amersham ECL glycoprotein detection system(GE Healthcare)に記載された方法により上記のように実施した。その結果、硫酸化多糖量と糖タンパク質量との間に相関関係が確かめられた(図4)。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1(a)は、本発明の糞便試料採取用器具の一例の正面図を示し、図1(b)は、本発明の糞便試料採取用器具の一例の側面図を示す。
【図2】図2は、ヒトの糞便表層の硫酸化多糖量と乾燥糞便重量との相関を示した図である。
【図3】図3は、ヒトの糞便表層の硫酸化多糖量と糖タンパク質量との相関を示した図である。
【図4】図4は、ラットの糞便表層の硫酸化多糖量と糖タンパク質量との相関を示した図である。
【符号の説明】
【0040】
1 平板
2 穴
3 持ち手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の結腸における粘液量を定量する方法であって、採取した糞便の粘液または採取した腸管の管壁に付着した粘液に含まれる硫酸化多糖を指標として定量することを特徴とする、哺乳類の結腸の粘液の定量法。
【請求項2】
糖タンパク質を定量するための試料として一定面積の糞便表層を採取し、採取した試料を用い硫酸化多糖を指標として定量することを特徴とする、請求項1に記載の哺乳類の結腸の粘液の定量法。
【請求項3】
粘液量の定量において、アルシアンブルーを用いることを特徴とする、請求項1または2に記載の哺乳類の結腸の粘液の定量法。
【請求項4】
採取した糞便表層の試料から粘液を抽出し、得られた粘液抽出液を用いて定量することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の哺乳類の結腸の粘液の定量法。
【請求項5】
一定面積の糞便表層を採取するための穴が開けられた平板と、平板に取り付けられた持ち手を有することを特徴とする、糞便試料採取用器具。
【請求項6】
請求項5に記載の糞便試料採取用器具を含むことを特徴とする、哺乳類の結腸の粘液の定量キット。
【請求項7】
請求項5に記載の糞便試料採取用器具の平板を糞便表層に押し当てることで平板の穴より出た糞便を回収するための器具をさらに有することを特徴とする、請求項6に記載の哺乳類の結腸の粘液の定量キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−216655(P2009−216655A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63024(P2008−63024)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】