説明

結露センサ

【課題】従来よりも単純な構成であって、冷媒通路の形成部品の腐食を防止しつつ、熱交換器の表面に存在する結露水を検出できる結露センサを提供する。
【解決手段】蒸発器20の表面に存在する結露水を検出する結露センサ30であって、蒸発器20のチューブ21と同じ金属で構成された第1金属部材33と、第1金属部材33を構成する金属よりも自然電位が低い金属で構成され、第1金属部材33と非接触状態で配置された第2金属部材35とを備え、第1金属部材33と第2金属部材35との間に結露水が存在する場合に、第1金属部材33と第2金属部材35とを電極とした局部電池が形成され、局部電池の起電力に基づいて結露水を検出する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風空気と冷媒との間で熱交換させる熱交換器に設けられ、熱交換器の表面に存在する結露水を検出する結露センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置では、特許文献1に記載のように、車室内に向かう送風空気を冷却する蒸発器の表面に結露水が存在する状態(蒸発器の表面が濡れている状態)の上限温度となるように、蒸発器の温度を制御している。
【0003】
この蒸発器の温度制御では、蒸発器の空気流れ上流側に設けた温・湿度センサによって、蒸発器に吸入される空気の温度および湿度を測定し、その測定結果から吸入空気の露点温度を算出し、この算出した露点温度に応じて、蒸発器の表面に結露が生じるように蒸発器の目標温度を設定している。
【0004】
また、温・湿度センサとしては、一般的に、温度により抵抗値が変化することで温度を検出するサーミスタと湿度により抵抗値(もしくは静電容量)が変化することにより湿度を検出する感湿膜とを一体で構成したものが採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−137532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の温・湿度センサでは、湿度を検出するために乾湿膜という特殊な材料が必要となる。また、温・湿度センサは、空気の温度および湿度を測定するものであるため、温度と湿度の2つの値から露点温度を算出するための複雑な処理回路が必要となる。このため、従来よりも単純な構成で、蒸発器表面に存在する結露水を検出できる結露センサが望まれる。
【0007】
そこで、本発明者は、種類の異なる2種類の金属部材の間に水分などの電解溶液が存在する場合、その2種類の金属部材を電極とした局部電池が形成され、この局部電池から起電力が発生することから、この局部電池を利用して結露水を検出する構成の結露センサを検討した。
【0008】
すなわち、2種類の金属部材によって構成した結露センサを蒸発器に設置し、2種類の金属部材の間で形成される局部電池の起電力を検出すれば、蒸発器表面に存在する結露水を検出できる。
【0009】
そして、この結露センサによれば、局部電池を形成する2種類の金属部材と、局部電池の起電力を検出する検出手段とがあれば、結露水が検出できることから、乾湿膜や露点算出用の複雑な処理回路が不要となり、従来よりも単純な構成となる。
【0010】
ところが、局部電池の陽極側では、金属がイオン化し水分中に溶け出して電子が生じる反応が起きるので、陽極側の金属が腐食する。このため、結露センサを構成する金属部材の種類によっては、チューブ等の冷媒通路を形成する冷媒通路の形成部品と結露センサを構成する金属部材との間で、冷媒通路の形成部品を陽極側とした局部電池が形成され、冷媒通路の形成部品が腐食して、冷媒が漏れてしまう問題が生じる。
【0011】
本発明は上記点に鑑みて、従来よりも単純な構成であって、冷媒通路の形成部品の腐食を防止しつつ、熱交換器の表面に存在する結露水を検出できる結露センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、冷媒通路を流れる冷媒と送風空気とを熱交換する熱交換器(20)に設けられ、熱交換器(20)の表面に存在する結露水を検出する結露センサ(30)であって、
熱交換器(20)の冷媒通路を形成する冷媒通路の形成部品(21)を構成する金属と比較して、自然電位が同等もしくは低い金属で構成された第1金属部材(33)と、
第1金属部材(33)を構成する金属よりも自然電位が低い金属で構成され、第1金属部材(33)と非接触状態で配置された第2金属部材(35)とを備え、
第1金属部材(33)と第2金属部材(35)との間に結露水が存在する場合に、第1金属部材(33)と第2金属部材(35)とを電極とした局部電池が形成され、局部電池の起電力に基づいて結露水を検出することを特徴としている。
【0013】
これによると、結露センサは、局部電池を形成する第1、第2金属部材を有し、この局部電池の起電力に基づいて結露水の存在を検出する構成であるので、従来よりも単純な構成となっている。
【0014】
また、これによると、第1金属部材と冷媒通路の形成部品との間では、両者を構成する金属の自然電位が同等であれば、局部電池は形成されず、第1金属部材の方が自然電位が低ければ、局部電池が形成されたとしても、第1金属部材が陽極側となる。同様に、第2金属部材と冷媒通路の形成部品との間で局部電池が形成されたとしても、自然電位が低い方の第2金属部材が陽極側となる。このように、本発明によれば、冷媒通路の形成部品は、局部電池の陽極側にならないので、冷媒通路の形成部品の腐食を防止できる。
【0015】
請求項1に記載の発明においては、請求項2に記載の発明のように、第1金属部材(33)を、冷媒通路の形成部品(21)を構成する金属と同じ金属で構成することが好ましい。
【0016】
また、請求項3に記載の発明のように、第1金属部材(33)を筒形状とし、第2金属部材(35)を、第1金属部材(33)の中心側に配置した形状とすることが好ましい。
【0017】
これによると、局部電池の陽極側となる第2金属部材が、第1金属部材の中心側に配置されているので、結露センサの中心側のみが腐食し、外周側は腐食しないので、結露センサの外形を維持できる。また、第2金属部材の外周が第1金属部材によって覆われているので、第2金属部材と冷媒通路の形成部品との間で局部電池が形成されるのを防止できる。
【0018】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用空調装置の主要部を示す断面図である。
【図2】(a)、(b)は、それぞれ、第1実施形態の結露センサを取り付けた蒸発器の空気流れ下流側から見た正面図と結露センサ取り付け部分の拡大断面図である。
【図3】(a)は第1実施形態の結露センサ30のセンサ本体部31の斜視図であり、(b)は(a)中の領域A1の拡大断面図である。
【図4】Al、Mgおよび他の金属の自然電位を示す図表である。
【図5】ECUが実行する蒸発器の濡れ制御を示すタイムチャートである。
【図6】(a)、(b)は、それぞれ、第2実施形態の結露センサを取り付けた蒸発器の空気流れ下流側から見た正面図と結露センサ取り付け部分の拡大断面図である。
【図7】(a)は第3実施形態の結露センサが取り付けられた蒸発器の斜視図であり、(b)は(a)中の領域A2の部分断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0021】
(第1実施形態)
本実施形態は、車両用空調装置の蒸発器表面に存在する結露水を検出する結露センサに本発明を適用したものである。図1に車両用空調装置の断面図を示し、図2(a)、(b)に蒸発器の空気流れ下流側から見た正面図と結露センサ取り付け部分の拡大断面図とを示す。なお、図1、2の上下方向が車両の上下方向である。
【0022】
図1に示すように、車両用空調装置1は、車室内に向かう送風空気の空気通路を形成する空調ケース10と、空調ケース10内に収容された蒸発器20とを備えている。
【0023】
蒸発器20は、送風機によって形成された車室内に向かう送風空気と冷媒との間の熱交換によって、送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。蒸発器20は、図示しない圧縮機、放熱器、減圧装置とともに冷媒の循環回路を構成し、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成している。
【0024】
また、図示しないが、空調ケースには、送風空気を形成する送風機と、蒸発器通過後の空気を加熱する加熱用熱交換器と、加熱用熱交換器を迂回して流れる蒸発器通過後の空気と加熱用熱交換器通過後の空気との混合割合を調整するエアミックスドアとが収容されている。
【0025】
また、車両用空調装置は、送風機、圧縮機、エアミックスドア等の各種機器を制御する制御装置(ECU)を備えている。
【0026】
図2(a)に示すように、蒸発器20は、冷媒が流れる冷媒通路を形成する複数のチューブ21と、チューブ21の外面に設けられ、冷媒と空気との熱交換を促進させるフィン22と、複数のチューブ21の一端もしくは他端に連通し、蒸発器20の冷媒入口から流入した冷媒を複数のチューブ21に分配させ、もしくは、チューブ21を流れる冷媒を集合させて蒸発器20の冷媒出口から冷媒を流出させるタンク24と、複数本のチューブ21およびフィン22によって構成される熱交換コア部23の端部に設けられ、蒸発器20の形状および強度を保つためのサイドプレート25とを備えている。
【0027】
チューブ21、フィン22、タンク24、サイドプレート25は、同じ金属、例えば、Alで構成されている。チューブ21、タンク24が冷媒通路を形成する冷媒通路の形成部品であり、フィン22とサイドプレート25が冷媒通路を形成しない冷媒通路の非形成部品である。
【0028】
このような構成の蒸発器20は、熱交換コア部23において、チューブ21内を流れる冷媒と、空調ケース10内を流れる空気とが、フィン22を介して熱交換することにより、冷媒が空気の熱を吸熱して、空気を冷却する。
【0029】
そして、図1、図2(a)に示すように、送風により蒸発器20の空気流れ下流側に排出される結露水Wを検出するため、熱交換コア部23の空気流出面に結露センサ30が取り付けられている。
図2(b)に示すように、結露センサ30は、円柱状のセンサ本体部31と、熱交換コア部の内部(具体的にはチューブ21と波板形状のフィン22との間に形成される空隙)に差し込まれる突起部32とを有している。すなわち、突起部32がフィン22を押し広げながら差し込まれることによって、結露センサ30が熱交換コア部23に固定されるようになっている。本実施形態では、円柱状のセンサ本体部31も熱交換コア部23の内部に差し込まれている。
【0030】
ここで、図3(a)に結露センサ30のセンサ本体部31の斜視図を示し、図3(b)に図3(a)中の領域A1の拡大断面図を示す。
【0031】
図3(a)に示すように、センサ本体部31は、円筒形状の第1金属部材33と、第1金属部材33の中心側に配置された円筒状の絶縁体34と、絶縁体34の中心側に配置された円柱形状の第2金属部材35とを有している。
【0032】
図3(a)中の左側に位置するセンサ本体部31の先端面31aが、結露水Wを検出する検出部となる。この先端面31aでは、第2金属部材35を中心側、第1金属部材33を外周側として、第1、第2金属部材33、35が同心円状に配置されている。なお、先端面以外は、第2金属部材35は第1金属部材33に覆われている。
【0033】
センサ本体部31の外周側に位置する第1金属部材33は、蒸発器20(チューブ21)と同じ金属材料、すなわち、Alで構成されている。一方、センサ本体部31の中心側に位置する第2金属部材35は、第1金属部材33と異なる種類の金属材料、例えば、Mgで構成されている。
【0034】
絶縁体34は、第1、第2金属部材33、35を互いに非接触の状態とするためのものであり、樹脂、セラミックス等の絶縁材料で構成されたものが用いられる。絶縁体34は、第1、第2金属部材33、35と接着等によって固定されている。
【0035】
そして、第1、第2金属部材33、35は、ECU40と電気的に接続されており、ECU40を介して、第1金属部材33と第2金属部材35との間に電流が流れる回路が構成されている。中心側に位置する第2金属部材35はECU40内のA/Dコンバータ41に接続され、外周側に位置する第1金属部材33はGNDに接続されている。
【0036】
A/Dコンバータ41は、ECU40の入力部および起電力の検出部として機能する部分であり、第1、第2金属部材33、35の間に発生した電圧をアナログ値からデジタル値に変換するものである。
【0037】
本実施形態の結露センサ30は、第1金属部材33と第2金属部材35との間で局部電池(腐食電池もしくは水電池とも言われる)を形成し、この局部電池の起電力に基づいて、蒸発器表面に存在する結露水を検出するものである。
【0038】
ここで、局部電池は、互いに非接触状態である種類の異なる2種類の金属の間(異種金属間)に水分などの電解溶液が存在する場合に形成されるものであり、両者の自然電位が異なることから、異種金属間に電位差(電圧、起電力)が生じ、電流が流れる。
【0039】
図4に、Al、Mgおよび他の金属の自然電位を示す。本実施形態では、第1金属部材33と第2金属部材35とを非接触状態としており、第1金属部材33を構成するAlと、第2金属部材35を構成するMgの自然電位は、図4に示すように、それぞれ、「−0.75」V、「−1.5」Vであり、両者の自然電位は異なっている。
【0040】
このため、図3(b)に示すように、先端面31aに結露水が付着し、第1金属部材33と第2金属部材35の両方にわたって結露水Wが存在すると、第1金属部材33と第2金属部材35とを電極とした局部電池が形成され、この局部電池で発生した電圧が結露センサ30から出力される。このときの結露センサ30の出力電圧Vsは、Vs=−0.75−(−1.5)=0.75(V)となる。
【0041】
したがって、第1金属部材33と第2金属部材35との間の電圧を検出し、検出した電圧値が0よりも大きな所定値となっていれば、第1金属部材33と第2金属部材35の間に結露水Wが存在することがわかる。
【0042】
このように、本実施形態の結露センサ30は、第1、第2金属部材33、35を備え、第1、第2金属部材33、35の間の電圧を検出する構成なので、上記背景技術の欄で説明した温・湿度センサと比較して、乾湿膜や露点算出用の複雑な処理回路が不要となり、従来よりも単純な構成となっている。
【0043】
ところで、上記発明が解決しようとする課題の欄で説明した通り、局部電池では、自然電位の低い方の金属が陽極側となり、陽極側の金属がイオン化し水分中に溶け出すので、陽極側の金属が腐食し、やせ細ってしまう。
【0044】
このため、センサ本体部31を構成する第1、第2金属部材33、35を、チューブを構成する金属よりも自然電位が高い金属で構成すると、第1、第2金属部材33、35とチューブ21とにわたって結露水が存在する場合、第1、第2金属部材33、35とチューブ21との間で、チューブ21を陽極側とする局部電池が形成されてしまう。この結果、腐食によってチューブ21の機械的強度が低下して、チューブ21内を流れる冷媒が漏れてしまうことが考えられる。
【0045】
そこで、本実施形態では、チューブ21と同じAlで第1金属部材33を構成し、第1金属部材33を構成するAlよりも自然電位が低いMgで第2金属部材35を構成している。
【0046】
これにより、第1金属部材33とチューブ21とは構成する金属材料の自然電位が同等であるので、第1金属部材33とチューブ21との間で局部電池が形成されるのを防止できる。また、第1、第2金属部材33、35およびチューブ21のうち第2金属部材35を構成するMgの自然電位が最も低いので、仮に、第2金属部材35とチューブ21との間に局部電池が形成されたとしても、第2金属部材35が必ず陽極側となり、チューブ21は陽極側にならない。この結果、チューブ21の腐食を防止でき、冷媒漏れが発生することを防止できる。
【0047】
なお、本実施形態では、結露センサ30をタンク24から離れた部位に配置しているが、この結露センサ30をタンク24の近くに配置した場合であっても、同様の理由により、タンク24の腐食を防止でき、冷媒漏れが発生することを防止できる。
【0048】
また、本実施形態によると、円柱形状のセンサ本体部31において、局部電池の陽極側となる第2金属部材35が、第1金属部材33の中心側に配置されているので、センサ本体部31の中心側のみが腐食し、外周側は腐食しないので、センサ本体部31の外形を維持できる。
【0049】
また、センサ本体部31の先端面31a以外では、第2金属部材35が第1金属部材33によって覆われているので、第2金属部材35とチューブ21との間で局部電池が形成されるのを防止できる。
【0050】
なお、本実施形態では、第2金属部材35をMgで構成したが、Mgに限らず、第1金属部材33を構成する金属材料よりも自然電位が低い金属であれば、他の金属で構成することもできる。例えば、図4に示すように、Alよりも自然電位が低いZnで第2金属部材35を構成することもできる。この場合、結露センサ30の出力電圧Vsは、Vs=−0.75−(−1.1)=0.35(V)となる。
【0051】
次に、このような構成の結露センサ30を用いたECU40の蒸発器20の温度制御について説明する。図5は、ECUが実行する蒸発器の濡れ制御を示すタイムチャートである。
【0052】
この蒸発器20の濡れ制御とは、臭い発生の防止と省エネの両立を図るために、蒸発器20の表面を濡れた状態での上限温度、すなわち、ほぼ露点温度となるように蒸発器の温度を制御するものである。
【0053】
ECU40は、蒸発器表面の濡れ状況に応じて、フィン22の温度を検出する蒸発器温度センサの検出温度が目標の蒸発器温度TEOとなるように、圧縮機の冷媒吐出能力(例えば、可変容量式の圧縮機では、圧縮機の冷媒吐出容量)を制御する。
【0054】
具体的には、図5に示すように、時刻t0で、エンジンON→A/CスイッチONとなったとき、ECU40は、初期設定等を実施して圧縮機の作動を開始する。このとき、目標蒸発器温度TEOとして、外気温等の空調熱負荷に基づいて算出した初期値を用いる。
【0055】
そして、時刻t0から時間が経過して、実際の蒸発器温度が露点よりも下がると、蒸発器表面が結露し始める(濡れ始める)。この結露水が結露センサ30に接触すると、結露センサ30が電気化学反応(局部電池反応)を開始して起電力が発生する。この起電力はA/Dコンバータ41によって検出されるので、時刻t1〜t2のように、結露センサの出力電圧が所定値となった場合に、ECU40は、蒸発器表面が濡れていると判定する。
【0056】

ECU40は、蒸発器表面が濡れていると判定している間(時刻t1〜t2の間)、TEOを所定値(例えば、0.5℃)ずつ段階的に上昇させる。すなわち、時刻t0〜t1の間は、TEOを初期値で固定していたが、時刻t1〜t2の間では、TEOを初期値から所定時間毎に所定値ずつ上昇させる。
【0057】
このように、TEOを少しずつ段階的に上昇させていくと、実際の蒸発器温度は、いつか露点温度以上の範囲となる。この範囲では、結露水が発生せず、蒸発器表面に結露水が存在しなくなるため、結露センサ30の出力電圧は0Vとなる(時刻t2)。この場合、ECUは、蒸発器表面が乾いていると判定し、TEOを所定値(例えば0.5℃もしくはそれ以上)ずつ段階的に下降させる(時刻t2〜t3)。
【0058】
これにより、実際の蒸発器温度が露点よりも下がり、再度、蒸発器表面に結露水が発生する。
【0059】
時刻t3以降では、このようなTEOの上昇と下降とを繰り返すことで、蒸発器温度をほぼ露点温度となるよう制御でき、蒸発器表面を濡れた状態に維持することが可能となる。
【0060】
(第2実施形態)
図6(a)、(b)に、本実施形態の結露センサが取り付けられた蒸発器の正面図と結露センサ取り付け部分の拡大断面図とを示す。
本実施形態では、円柱状のセンサ本体部31が熱交換コア部23の内部に差し込まれることなく、熱交換コア部23の空気流出面と平行に配置されている。このように、センサ本体部31をチューブ21から離して配置することもできる。
【0061】
(第3実施形態)
図7(a)に本実施形態の結露センサが取り付けられた蒸発器の斜視図を示し、図7(b)に図7(a)中の領域A2の部分断面斜視図を示す。本実施形態は、第1、第2実施形態で説明したセンサ本体部31の形状を変更したものである。
【0062】
図7(a)に示すように、本実施形態の結露センサ30は、熱交換コア部23の端部に位置するサイドプレート25に取り付けられている。
【0063】
具体的には、図7(b)に示すように、断面コ字形状のサイドプレート25のうちフィン22から離れる側に屈曲している部分25aの上に、平板形状の第1金属部材33が配置され、第1金属部材33の上に、平板形状の第2金属部材35が配置されている。
【0064】
第1実施形態と同様に、第1金属部材33は、蒸発器20(チューブ21)と同じ金属材料、すなわち、Alで構成されており、第2金属材料35は、第1金属部材33を構成する金属材料よりも自然電位が低いMg、Zn等の金属材料で構成されている。
【0065】
そして、サイドプレート25と第1金属部材33との間には、断面コ字形状の絶縁体34の一部分34aが位置し、第1金属部材33と第2金属部材35との間には、絶縁体34の他の部分34bが位置している。これにより、サイドプレート25と第1金属部材33とは絶縁され、第1金属部材33と第2金属部材35とは非接触状態となっている。
【0066】
また、第1金属部材33と第2金属部材35とは、ECU40と電気的に接続されており、ECU40を介して、両者の間に電流が流れる回路が構成されている。第2金属部材35がECU40内のA/Dコンバータ41に接続され、第1金属部材33がGNDに接続されている。
【0067】
これにより、第1金属部材33と第2金属部材35との間に結露水が存在すると、第1金属部材33と第2金属部材35との間で局部電池を形成する構成となっている。
【0068】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1金属部材33をチューブ21と同じ金属材料で構成し、第1金属部材33を構成する金属材料よりも自然電位が低い金属材料で第2金属部材35を構成している。これにより、第1実施形態と同様に、チューブ21の腐食を防止でき、冷媒漏れが発生することを防止できる。
【0069】
(他の実施形態)
(1)第1、第2実施形態では、センサ本体部31の外周側に位置する第1金属部材33の形状を、円筒形状としたが、円筒形状に限らず、他の筒形状とすることもできる。第1金属部材33が筒形状であれば、第1実施形態と同様に、センサ本体部31の中心側のみが腐食し、外周側は腐食しないので、センサ本体部31の外形を維持できる。また、センサ本体部31の先端面31a以外では、第2金属部材35が第1金属部材33によって覆われているので、第2金属部材35とチューブ21との間で局部電池が形成されるのを防止できる。
【0070】
(2)上述の各実施形態では、チューブ21を構成する金属材料と同じ金属材料で、第1金属部材33を構成したが、チューブ21を構成する金属材料と比較して自然電位が低い金属材料で、第1金属部材33を構成することもできる。この場合、金属材料の自然電位が、チューブ21>第1金属部材33>第2金属部材35となるようにする。例えば、第1金属部材33をZnで構成し、第2金属部材35をMgで構成する。
【0071】
これにより、チューブ21と第1、第2金属部材33、35との間で局部電池が形成されたとしても、チューブ21を構成する金属材料の方が第1、第2金属部材33、35を構成する金属材料よりも自然電位が高いので、チューブ21は陽極側とならない。この結果、チューブ21の腐食を防止でき、冷媒漏れが発生することを防止できる。
【0072】
(3)上述の各実施形態では、第1、第2金属部材33、35を互いに非接触の状態とするために、絶縁体34を用いたが、第1、第2金属部材33、35を非接触の状態にできれば、絶縁体34を省略しても良い。
【0073】
(4)上述の各実施形態では、第1金属部材33を蒸発器20に近い側に配置し、第2金属部材35を蒸発器20から離れた側に配置したが、逆に、第2金属部材35を蒸発器20に近い側に配置し、第1金属部材33を蒸発器20から離れた側に配置しても良い。
【0074】
(5)上述の各実施形態では、局部電池の起電力、すなわち、出力電圧の大きさから結露水を検出したが、局部電池の電流の大きさから結露水を検出するようにしても良い。ちなみに、一般的に、電圧を用いて電流が測定されることから、電流の大きさから結露水を検出する場合も、起電力(電圧)に基づいて、結露水を検出していると言える。
【0075】
(6)上述の各実施形態では、結露センサによる結露水の検出対象が、車両用空調装置の熱交換器であったが、結露センサによる結露水の検出対象を、車両用以外の他の空調装置の熱交換器とすることもできる。また、結露センサによる結露水の検出対象の熱交換器は、冷媒と送風空気との熱交換によって冷媒が蒸発する蒸発器に限らず、冷媒が蒸発しない熱交換器であっても良い。
【0076】
(7)上述の各実施形態を実施可能な範囲で組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0077】
20 蒸発器(熱交換器)
21 チューブ(冷媒通路の形成部品)
30 結露センサ
31 センサ本体部
33 第1金属部材
34 絶縁体
35 第2金属部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒通路を流れる冷媒と送風空気とを熱交換する熱交換器(20)に設けられ、前記熱交換器(20)の表面に存在する結露水を検出する結露センサ(30)であって、
前記熱交換器(20)の前記冷媒通路を形成する冷媒通路の形成部品(21)を構成する金属と比較して、自然電位が同等もしくは低い金属で構成された第1金属部材(33)と、
前記第1金属部材(33)を構成する金属よりも自然電位が低い金属で構成され、前記第1金属部材(33)と非接触状態で配置された第2金属部材(35)とを備え、
前記第1金属部材(33)と前記第2金属部材(35)との間に結露水が存在する場合に、前記第1金属部材(33)と前記第2金属部材(35)とを電極とした局部電池が形成され、前記局部電池の起電力に基づいて結露水を検出することを特徴とする結露センサ。
【請求項2】
前記第1金属部材(33)は、前記冷媒通路の形成部品(21)を構成する金属と同じ金属で構成されることを特徴とする請求項1に記載の結露センサ。
【請求項3】
前記第1金属部材(33)は筒形状であり、
前記第2金属部材(35)は、前記第1金属部材(33)の中心側に配置された形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の結露センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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