説明

絞りユニットを有する粒子ビーム装置および粒子ビーム装置のビーム電流を調整する方法

【課題】粒子ビームのビーム電流の正確な調整を良好に行い、粒子ビームのモジュールとは無関係のビーム経路を限定する絞りユニットおよび絞りユニットを備える粒子ビーム装置を提案する。
【解決手段】粒子ビーム装置は、粒子を生成する粒子ビーム発生器(2)と、試料(16)に粒子ビームを集束する対物レンズ(10)と、第1コンデンサレンズ(6,6a,6b,6c)および第2コンデンサレンズ(7,7a,7b,7c)と、粒子ビーム発生器(2)と第1コンデンサレンズとの間に配置した第1絞りユニット(8)と、第1コンデンサレンズと第2コンデンサレンズとの間に配置した第2絞りユニット(9)とを備える。第1コンデンサレンズ(6)は、相互に無関係に第2絞りユニットに対して調整可能な第1極および第2極片(6a,6b)を備え、第2絞りユニットは、第1圧力を有する真空の第1領域と、第2圧力を有する真空の第2領域とを相互に分離する圧力段階絞りである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞りユニットを有する粒子ビーム装置に関する。また、本発明は、粒子ビーム装置のための絞りユニットに関する。さらに本発明は、粒子ビーム装置におけるビーム電流を設定する方法に関する。本明細書において粒子ビーム装置とは、走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」とも呼ぶ)や透過型電子顕微鏡(以下、「TEM」とも呼ぶ)等の電子ビーム装置、ならびにイオンビーム装置を意味する。すなわち、本発明は電子ビーム装置に限定されるものではなく、あらゆる粒子ビーム装置にも適用可能である。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム装置、特にSEMは、物体(試料)の表面を検査するために使用する。このために、SEMでは、ビーム発生器により電子ビーム(以下、「一次電子ビーム」とも呼ぶ)を生成し、対物レンズによって検査すべき物体に集束させる。偏向装置によって、一次電子ビームは、検査すべき物体の表面にわたってラスタ状に案内される。この場合に一次電子ビームの電子は物体と相互作用する。この相互作用の結果として、相互作用粒子および/または相互作用ビームが生じ、これらを検出する。このようにして得た検出信号を評価する。
【0003】
相互作用粒子として、物体表面から特に電子を検出する(いわゆる二次電子)か、または一次電子ビームの電子を後方散乱させる(いわゆる後方散乱電子)。電子ビーム装置の少なくとも1つの検出器によって、この二次電子および後方散乱電子を検出する。これにより発生した検出信号を画像生成に使用する。
【0004】
一般に、高解像度の画像生成が重要である。このために、電子ビーム装置いわゆる高解像度モードで作動する。電子ビーム装置では、ビーム発生器は、約1μA〜100μAの範囲、例えば20μAの規定可能なビーム電流を有する一次電子ビームを生成する。実質的に電子ビーム装置の光軸に沿って検査すべき試料の方向に一次電子ビームを案内する。電子ビーム装置には第1絞りを配置する。この第1絞りは、一次電子ビームのビーム電流を約1nA〜100nA、例えば20nAに低減する。試料の方向に第1絞りの後方に配置した第2絞りもまた、数pA〜約500pAの範囲の値にビーム電流を低減する。このようにビーム電流を低減することにより、一次電子ビームに残された電子の相互作用が、相互に無視できる程度に小さくなり、このような相互作用に基づく一次電子ビームの拡大を防止する。
【0005】
上記のような高解像度の画像生成の他に、検査物体を検査することのできる、電子ビーム装置で使用可能な他の検査方法がある。これには、特にいわゆるEBSD法(“Electron Backscattered Diffraction:電子ビーム後方散乱回折法”)が挙げられる。一次電子が検査すべき物体に入射した後に物体で散乱する電子の回折パターンを決定する。別の方法は、一次電子ビームが検査すべき物体に入射した場合に物体から放出するカソード・ルミネッセセンスの検出に基づいている。別の検査方法は、例えばエネルギー分散型X線分光法(EDX)による検査、および波長分散型X線分光法(WDX)による検査である。しかしながら、上記検査方法では、電子ビーム装置を光電流モードで作動することが望ましい。すなわち、一次電子ビームは、数nA、例えば100nA〜500nAの範囲のビーム電流で、検査すべき物体に入射する。これにより、上記検査方法においてより良好な計数率が得られ、この方法の評価に有利となる。
【0006】
したがって、粒子ビーム、特に電子ビームのビーム電流を変化させ、粒子ビーム装置の所望の作動形式(高解像度モードまたは高電流モード)のためにそれぞれ適したビーム電流を設定することができるようにする必要性が生じる。この場合、高解像度モードでは像生成時に、一次電子ビームのエネルギーに応じて、例えば、0.5nm〜3.0nmの範囲の良好な解像度を得ることができるようにすべきである。
【0007】
従来技術により、電子ビーム装置に1つ以上の圧力段階を設けることが既知である。これらの圧力段階は、電子ビーム装置においてそれぞれ異なる圧力の真空を有する領域を分離する。したがって、例えば圧力段階は、一般に超高真空(10−6〜10−10Pa)を有し、ビーム発生器を配置した第1領域を、高真空(10−1〜10−5Pa)を有する第2領域から分離する。第2領域は、例えば、試料を配置した電子ビーム装置の試料チャンバ、または試料チャンバに通じる中間圧力領域であってよい。これらの圧力段階により、第2領域からの汚染物質によって、例えば試料の領域へのガスの導入によって、第1領域の超高真空が劣化することを阻止する。
【0008】
従来技術により、所望の作動形式のためにビーム電流の設定を可能にする電子ビーム装置が既知である。この既知の電子ビーム装置は、電子ビーム生成器と、検査すべき物体に一次電子ビームを集束させるための対物レンズとを備える。さらに、この既知の電子ビーム装置は、第1コンデンサレンズと第2コンデンサレンズとを備え、電子ビーム発生器を起点として対物レンズの方向にまず第1コンデンサレンズ、次いで第2コンデンサレンズを配置する。さらに、電子ビーム発生器と第1コンデンサレンズとの間に第1絞りユニットを配置する。さらに第1コンデンサレンズと第2コンデンサレンズとの間に第2絞りユニットを配置する。第1絞りユニットは複数の異なる絞り開口を備える。光軸に垂直な平面で第1絞りユニットを移動し、所望の絞り開口を一次電子ビーム下に案内することによりビーム電流を調整する。既知の電子ビーム装置は、圧力段階絞りとして構成した第2絞りユニットの汚染を防止することも可能にする。この汚染は、圧力段階絞りに入射する一次電子ビームによって生じる。
【0009】
しかしながら、従来技術は、第1コンデンサレンズの所定の励起時に一次電子ビームが第2絞りユニットを通過しないことが欠点である。一次電子ビームのビーム経路はモードとは無関係である(モードは、選択した一次エネルギーおよび選択したビーム電流を表す)。この場合には、一次電子ビームの「漂遊」にも関する。したがって、一次電子ビームのできるだけモードとは無関係なビーム経路を得ることが望ましい。
【0010】
さらに、第1絞り素子と第2絞り素子とを有する絞りユニットを備える粒子ビーム装置が従来技術により既知である。第1絞り素子および第2絞り素子は双方ともV字形部分を有し、これらの部分は絞り開口を形成するために協働する。第1絞り素子と第2絞り素子とは相互にオーバラップし、相互に反対方向に移動させることができる。このようにして、絞り開口の大きさ、ひいては粒子ビーム装置の粒子ビームのビーム電流も調整する。
【0011】
上記従来技術に関しては、米国特許7,550,724号明細書ならびに米国特許出願公開第2007/0138403号明細書を参照されたい。
【0012】
従来技術により既知の調整可能な2つの絞りユニットは欠点を有する。これらの絞りユニットは、マニピュレータによって手動の偏向レバーを用いて機械的に、または絞り開口を調整するための調節モータによって移動する。マニピュレータの機械的構成の不可避的に不正確であることにより、粒子ビームの光路に所定の絞り開口を移動するために個々の絞りユニットについて調整しなければならない位置は、一般に再現することができない。したがって、所望のビーム電流を得るためには、絞りユニットを後から調節しなければならない。この調節は、一般にマニピュレータによる絞りユニットの移動およびビーム電流の観察によって行う。
【0013】
マニピュレータを圧電素子によって作動したとしても、絞りユニットの位置は、所定のビーム電流を得るためには十分に良好に調整可能ではない。圧電素子による調整でも、例えばヒステリシスによって生じる場合のあるエラーを免れない。このような理由から、マニピュレータを操作するために圧電素子を使用する場合、絞りユニットの所望の絞り開口を粒子ビーム下に正確に位置決めすることができるように、マニピュレータが辿った距離を決定するための手間のかかる測定システムを使用しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許7,550,724号
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0138403号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、粒子ビームのビーム電流の正確な調整をわずかな手間で十分に良好に行うことができ、粒子ビームのモジュールとはできるだけ無関係のビーム経路を達成する絞りユニットおよび絞りユニットを有する粒子ビーム装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、この課題は、請求項1に記載の特徴を有する粒子ビーム装置によって解決される。本発明による絞りユニットが、請求項20の特徴部に記載されている。粒子ビーム装置における粒子ビームのビーム電流を変化させる方法が請求項34に記載されている。本発明の実施例および代替的な実施形態の関するさらなる特徴および/または代替的な特徴が、以下の説明、添付の請求項および/または添付の図面により明らかである。
【0017】
本発明による粒子ビーム装置は、粒子を生成する粒子ビーム発生器を備える。粒子は粒子ビームを形成する。さらに粒子ビームを試料に収束するための対物レンズが設けられている。さらに粒子ビーム装置は、第1コンデンサレンズおよび第2コンデンサレンズを備える。粒子ビーム発生器を起点として対物レンズの方向に見て、まず第1コンデンサレンズ、次いで第2コンデンサレンズを粒子ビーム装置に配置する。換言すれば、粒子ビーム装置の光軸に沿って以下の順序で上記構成部分を配置する:粒子ビーム発生器-第1コンデンサレンズ-第2コンデンサレンズ-対物レンズ。さらに本発明による粒子ビーム装置は、粒子ビーム発生器と第1コンデンサレンズとの間に配置した少なくとも1つの第1絞りユニットを備える。第1絞りユニットに加えて、第1コンデンサレンズと第2コンデンサレンズとの間に配置した少なくとも第2絞りユニットを設ける。
【0018】
第1コンデンサレンズは、第1極片および第2極片を備え、粒子ビーム発生器を起点として対物レンズの方向に見て、まず第1極片、次いで第2極片を配置する。換言すれば、粒子ビーム装置の光軸に沿って以下の順序で上記構成部分を配置する:粒子ビーム発生器-第1絞りユニット-第1極片-第2極片-第2絞りユニット-第2コンデンサレンズ-対物レンズ。第1極片を上側極片と呼び、第2極片を下側極片と呼ぶことも多い。第1極片および第2極片は双方とも相互に無関係に第2絞りユニットに対して調整可能である。すなわち、第2絞りユニットに対する第1極片の位相対位置が調整可能である。同様のことが第2極片についてもいえる。さらに、第2絞りユニットは圧力段階絞りであり、この圧力段階絞りは、第1圧力を有する真空を形成した第1領域と、第2圧力を有する真空を形成した第2領域とを相互に分離する。
【0019】
第2絞りユニットは、例えば孔状絞りとして構成し、粒子ビームが通過するための開口を備え、この開口は、例えば10μm〜100μmの範囲、好ましくは25μm〜50μmの範囲、例えば35μmの長さを有する。
【0020】
上記粒子ビーム装置は2つの有利な特性を備える。一方では、粒子ビームのビーム電流は、広範囲、例えば10pA〜300pAにわたって連続的に可変である。これは、第1コンデンサレンズの励起を変化させることによって達成する。他方では、第2絞りユニットを、例えば一般に超高真空(10−6〜10−10Pa)を有し、ビーム発生器を配置した第1領域を、高真空(10−1〜10−5Pa)を有する第2領域から分離する圧力段階として構成する。第2領域は、例えば、試料を配置した電子ビーム装置の試料チャンバ、または試料チャンバに通じる中間圧力領域であってよい。第2絞りユニットにより、第2領域からの汚染物質によって、例えば試料の領域へのガスの導入によって、第1領域の超高真空が劣化することを阻止する。圧力段階として構成した第2絞りユニットの気密な構成により、第2絞りユニットの機械的調整が困難となる。一次電子ビームの経路が常にモジュールとは無関係となるように、第1コンデンサレンズの第1極片および第2極片を双方とも第2絞りユニットに対して相対的に調整する。この場合、調整は、第1極片および第2極片に関して相互に無関係に行う。第1コンデンサレンズの全体の調整(すなわち、第1極片および第2極片を常に相互に調整すること)は、モードとは無関係のビーム経路を保持するには不十分であることが考察の結果明らかとなった。むしろ、第1極片と第2極片とを相互に無関係に調節することが実際には重要である。
【0021】
第1絞りユニットとして薄膜絞りを使用した場合、対応して集束した粒子ビームにより、第2絞りユニットを、場合によって生じた汚染物質を再び排除する強さで加熱することができる。この場合、上記および下記において薄膜絞りとは、絞り縁部の領域および少なくとも絞り開口の2倍の直径(例えば約100μm)を有する領域の材料厚さが10μm未満である絞りのことである。
【0022】
ビーム電流の調整は、例えば使用すべき検査モードに関係して行う。検査すべき物体の表面の像を生成したい場合、例えば粒子ビーム装置の高解像度モードを設定する。このためには、例えば10pA〜500pAの範囲のビーム電流を選択する。しかしながら、例えば上述の他の検査方法を使用するために高電流モードで作動させる場合には、例えば10nA〜数100nAの範囲のビーム電流を選択する。
【0023】
第2コンデンサレンズは、同様に本発明では特別な機能を備える。すなわち、第2コンデンサレンズにより、選択したビーム電流のために良好な側方解像度が得られるように、対物レンズにおける粒子束の直径を調整することが可能となる。
【0024】
粒子ビームの特に良好な、モードとは無関係なビーム経路を得るためには、本発明の別の、または代替的な実施形態では、第2コンデンサレンズは、第3極片および第4極片を備え、粒子ビーム発生器を起点として対物レンズの方向に見て、まず第3極片、次いで第4極片を配置する。換言すれば、粒子ビーム装置の光軸に沿って以下の順序で粒子ビーム装置の上記構成部分を配置する:粒子ビーム発生器-第1絞りユニット-第1極片-第2極片-第2絞りユニット-第3極片-第4極片-対物レンズ。第3極片および第4極片は、共に、または相互に無関係に第2絞りユニットに対して調整可能である。
【0025】
本発明の別の、または代替な実施形態では、第1コンデンサレンズと第2コンデンサレンズとの間に少なくとも1つの偏向手段を配置する。例えば、偏向手段を、第1偏向ユニットおよび第2偏向ユニットを備える偏向システムとして構成する。このような偏向システムは、二重偏向システムとも呼ぶ。例えば、第1偏向ユニットと第2偏向ユニットとの間に第2絞りユニットを配置する。偏向ユニット、例えば上記偏向システムにより、第2絞りユニットの通過後に粒子ビームを第2コンデンサレンズに対して偏向し、調整する。これにより、モードとは無関係の良好な粒子ビームのビーム経路が得られる。
【0026】
本発明のさらに別の、または代替的な実施形態では、第1絞りユニットは、可変の開口サイズを有する絞り開口を備える。この実施形態は、特に高解像度モードに用いる。例えば、絞りユニットは、第1開口サイズおよび第2開口サイズを有する絞り開口を備え、第1開口サイズは第2開口サイズよりも大きい。第1開口サイズから第2開口サイズに絞り開口を変更することにより、粒子を早期に(すなわち第1絞りユニットで)粒子ビームから遮断する。さもなければ粒子は第2絞りユニットでいずれにせよ遮断されるであろう。このようにして、第1絞りユニットと第2絞りユニットとの間に生じる場合のある粒子ビームの粒子の相互作用を低減または防止する。このようにして、粒子ビームの伝搬に抗して、像生成時の解像度を改善する。この実施形態では、第1絞りユニットの最大絞り開口により粒子ビームの最大ビーム電流を決定する。
【0027】
本発明の別の、または代替的な実施形態では、第1絞りユニットは第1絞り素子および第2絞り素子を備え、第1絞り素子と第2絞り素子とは、絞り開口を形成するために協働する。換言すれば、第1絞り開口と第2絞り開口とを相対配置して絞り開口を形成する。第1絞り素子と第2絞り素子とは、絞り開口を形成するために相対移動可能である。したがって、例えば、第1絞り素子または第2絞り素子を可動に構成することができる。これに対して代替的に、例えば第1絞り素子および第2絞り素子を双方とも可動に構成する。
【0028】
本発明の別の、または代替的な実施形態では、さらに第1絞りユニットは、第1絞りストッパ素子および第2絞りストッパ素子を備える。第1絞り素子は、絞り開口を形成するために第1絞りストッパ素子に当接するように可動となっている。付加的または代替的には、第2絞り素子は、絞り開口を形成するために第2絞りストッパ素子に当接するように可動となっている。本発明さらに別の、または代替的な実施形態では、第1絞りユニットは、第1ストッパ素子および第2ストッパ素子を備え、第1絞りユニットは、第1開口サイズを有する絞り開口を形成するために第1ストッパ素子に当接するか、または第2開口サイズを有する絞り開口を形成するために第2ストッパ素子に当接する。第1開口サイズと第2開口サイズとは異なるように構成されている。例えば第2開口サイズは、第1開口サイズよりも大きい。第1ストッパ素子および第2ストッパ素子に基づき、第1絞り素子がとることのできる2つの位置を設ける。第1絞り素子が第1絞ストッパ素子に当接する第1位置では、第1絞り素子は第2絞り素子と協働し、第1開口サイズの絞り開口を準備する。第1絞り素子が第2ストッパ素子に当接する第2位置では、第1絞り素子は第2絞り素子と協働し、第2開口サイズの絞り開口を準備する。第1ストッパ素子および第2ストッパ素子は、例えば、第1絞りユニットを粒子ビーム装置に組み込む前にベースプレートに取付け可能であり、粒子ビームの稼働前に調整する。これにより、粒子ビームが通過することのできる絞り開口の特定の開口サイズを設けることが可能である。第1開口サイズおよび第2開口サイズは、例えば約10μm〜500μmの範囲であり、例えば第2開口サイズを第1開口サイズよりも大きく(またはその反対に第1開口サイズを第2開口サイズよりも大きく)選択する。
【0029】
本発明の別の、または代替的な実施形態では、第2絞り素子を可動に構成する。さらに第1絞りユニットは第3ストッパ素子および第4ストッパ素子を備える。第2絞りユニットは、絞り開口を形成するために第3絞りストッパ素子または第4絞りストッパ素子に当接するように可動に構成する。この実施例により、第1絞り素子を移動し、第1ストッパ素子または第2ストッパ素子に当接させることによっても、第2絞り素子を移動し、第3ストッパ素子または第4ストッパ素子に当接させることによっても、絞り開口を調節可能とすることができる。これに対して代替的には、第1絞り素子のみまたは第2絞り素子のみを移動し、当接させて絞り開口を調節することも可能である。第1絞り素子および第2絞り素子の双方の移動により、特に簡単に、絞り開口の第1開口サイズを適度に小さく(例えば10μm〜100μmの範囲で)選択し、絞り開口の第2開口サイズを適度に大きく(例えば50μm〜500μmの範囲で)選択することが可能となる。
【0030】
本発明の別の、または代替的な実施形態では、上記第1絞りストッパ素子を第2ストッパ素子として構成し、上記第2絞りストッパ素子を第3ストッパ素子として構成している。
【0031】
例えば第1絞りユニットは、第1絞り素子を移動させるための第1駆動ユニットと、第2絞り素子を移動させるための第2駆動ユニットとを備える。これに対して代替的には、1つの駆動ユニットが第1絞り素子および第2絞り素子の双方を移動させる。例えば、駆動ユニットは圧電素子、電磁式移動素子、および/またはバイメタル素子を備える。バイメタル素子としては、必要な動きを提供し、特に非電磁性であり、超真空で使用可能であり、超真空に著しい影響を及ぼすことのない金属のあらゆる組み合わせが適している。列挙した上記駆動ユニットは包括的ではない。むしろ本発明に適したあらゆる駆動ユニットを使用することができる。
【0032】
駆動ユニット、例えば上記圧電素子または上記電磁式の移動素子の供給または制御のためには、例えば駆動ユニットを制御する電圧を駆動ユニットに供給する供給ユニットを設ける。駆動ユニットをバイメタル素子として構成した場合、駆動ユニットに熱を供給し、駆動ユニットから熱を放出する供給ユニットを設ける。供給ユニットは、例えば粒子ビーム装置の高圧供給ユニットに配置する。高圧供給ラインによって、供給ユニットの制御信号を駆動ユニットに伝達する。さらに、例えば光学信号によって制御可能な駆動ユニットを設計する。このために、駆動ユニットは光学センサを備え、この光学センサを切り換えるために光線によって光学センサを照射することができる。光学センサは駆動ユニットを制御する。駆動ユニットに光学センサを設けることが不都合な場合、本発明の別の、または代替的な実施形態では、例えば駆動ユニットとして構成したバイメタル素子を、粒子ビーム装置に光線(例えばレーザ光線)を投光することによって照射および加熱し、駆動のために不可欠な撓みを得る。上記実施形態では、粒子ビーム発生器と第1コンデンサレンズとの間の構成スペースが一般に小さく、このようにして、制御ラインのための付加的な構成スペースを準備することなしに駆動ユニットの制御が可能となることが有利である。
【0033】
本発明の別の、または代替的な実施例では、第1絞りユニットの第1絞り素子と第2絞り素子とを弾性的な結合素子によって結合する。例えば、弾性的な結合素子をバイメタル素子として構成する。この実施例では、駆動ユニットは、第1絞り素子を第1ストッパ素子から第2ストッパ素子に移動させるため、または第2絞り素子を第3ストッパ素子から第4ストッパ素子に移動させるために不可欠であるよりも大きい移動距離を有していてもよい。弾性的な結合素子により、不要な移動距離を補償する。さらに、調節距離の設定時には、特に機械的な不正確さにより、絞り開口の所望の開口サイズとは異なる他の開口サイズがもたらされることはない。本発明の実施形態では、第1ストッパ素子と第2ストッパ素子との間、あるいは第3ストッパ素子と第4ストッパ素子との間で第1絞り素子または第2絞り素子が辿る必要のある距離よりも大きい調節距離を常に選択する。第1絞り素子および第2絞り素子を第1ストッパ素子もしくは第2ストッパ素子または第3ストッパ素子もしくは第4ストッパ素子に当接させた後、駆動ユニットがまだ提供している不要な調節距離を弾性的な結合素子によって補償する。
【0034】
本発明の別の、または代替的な実施例では、第1絞り素子および/または第2絞り素子を少なくとも部分的に弾性的に構成している。これにより、弾性的な結合素子に関して上述のものと同様な効果および利点が得られる。この実施例では、第1絞り素子は第1ジョイントによって相互に結合した第1ジョイント部分および第2ジョイント部分を備える。これに対して代替的または付加的に、第2絞り素子は、第2ジョイントによって相互に結合した第3ジョイント部分および第4ジョイント部分を備える。例えば、第1ジョイントおよび/または第2ジョイントは弾性的に構成している。第1ジョイントおよび/または第2ジョイントは、それぞれ固体ジョイントとして構成してもよい。固体ジョイントは、曲げ剛性を低減した箇所を備えることにより優れている。この箇所は、第1ジョイントと第2ジョイントとを材料接続的に相互に結合することを保証する。同様のことが第3ジョイントおよび第4ジョイントについていえる。曲げ剛性の低減は、一般に局所的な横断面低減によって得られる。この場合、横断面低減部は異なる幾何学形状を有していてよい。固体ジョイントは、さらなるメンテナンスおよび摩擦なしに移動を行うことができるという特性を備える。
【0035】
本発明の別の、または代替的な実施例では、第1絞りストッパ素子、第2絞りストッパ素子、第1ストッパ素子、第2ストッパ素子、第3ストッパ素子および/または第4ストッパ素子を偏心的に構成している。このようにして、絞り開口の所望の開口サイズが得られるように上記ストッパ素子を正確に位置決めすることが可能となる。偏心の設定は、例えば第1絞り素子を粒子ビーム装置に組み付ける前に行う。
【0036】
粒子ビーム装置の別の、または代替的な実施例では、例えば5kV〜15kV、特に8kVの地電位に対して第1絞りユニットは1kV〜20kVの範囲の電位に位置している。地電位は、例えば試料チャンバのハウジングの電位である。この場合、第1絞りユニットは、粒子ビーム発生器と同じ電位に位置する。このようにして、粒子ビーム発生器によって生成した粒子は問題なしにアノード電位に加速される。上記にも下記にも説明しない遅延手段によって、物体のさらなる検査に必要な所望の電位に制動することが可能となる。
【0037】
請求項20に記載の特徴を有する本発明による絞りユニットが得られる。この絞りユニットは、調整可能な絞り開口を備え、粒子ビーム装置に配置するためのものである。さらに、絞りユニットは、絞り開口を形成するために協働する第1絞り素子および第2絞り素子を備える。絞りユニットはさらに第1ストッパ素子を備え、第1絞り素子は、絞り開口を形成するために第1ストッパ素子に当接するように可動となっている。絞りユニットは、上述のような特性および利点を備える。これに関してここで明示的に述べておく。以下に、絞りユニットの幾つかの特徴のみを挙げるが、絞りユニットは、いずれの場合にも上記または下記の特徴を個別に、または特徴を組み合わせて備えていてよい。
【0038】
絞りユニットの一実施例によれば、絞りユニットは第2ストッパ素子を備える。さらに第1絞り素子は、第1開口サイズを有する絞り開口を形成するために第1ストッパ素子に当接するように可動であるか、または第2開口サイズを有する絞り開口を形成するために第2ストッパ素子に当接するように可動である。別の、または代替的な実施形態では、第2絞り素子を可動に構成する。絞りユニットは第3ストッパ素子を備え、第2絞り素子は、絞り開口を形成するために第3ストッパ素子に当接するように可動である。さらに別の、または代替的な実施形態では、絞りユニットは第4絞り素子を備える。第2絞り素子は、絞り開口を形成するために第3ストッパ素子または第4ストッパ素子に当接するように可動である。
【0039】
絞りユニットの別の、または代替的な実施例では、絞りユニッは第1絞り素子および/または第2絞り素子を移動させるための少なくとも1つの駆動ユニットを備える。特に駆動ユニットは圧電素子、電磁式の移動素子および/またはバイメタル素子を備える。さらに、駆動ユニットには、駆動ユニットに電圧を供給する供給ユニットを特に設けている。代替的または付加的に、駆動ユニットは供給ユニットを備える。駆動ユニットに熱を供給し、駆動ユニットから熱を放出する供給ユニットを備える。別の実施例では、駆動ユニットを光学信号によって制御可能に設計している。
【0040】
絞りユニットの別の、または代替的な実施例では、第1絞り素子および第2絞り素子を代替的な結合素子によって結合している。特に、弾性的な結合子素子をバイメタル素子として構成している。特に第1絞り素子は、第1ジョイントによって相互に結合した第1ジョイント部分および第2ジョイント部分を備える。これに対して代替的または付加的に、第2絞り素子は、第2ジョイントによって相互に結合した第3ジョイント部分および第4ジョイント部分を備える。特に、第1ジョイントおよび/または第2ジョイントは弾性的に構成している。第1ジョイントおよび/または第2ジョイントは、それぞれ固体ジョイントとして構成してもよい。
【0041】
絞りユニットの別の、または代替的な実施例では、第1絞りストッパ素子、第2絞りストッパ素子、第1ストッパ素子、第2ストッパ素子、第3ストッパ素子および/または第4ストッパ素子を偏心的に構成している。
【0042】
像生成時に良好な解像度を得ることができる方法を請求項34の特徴部に記載している。この方法は、粒子ビームを生成するための粒子ビーム発生器と、試料に粒子ビームを集束するための対物レンズと、第1コンデンサレンズと第2コンデンサレンズとを備え、電子ビーム発生器を起点として対物レンズの方向にまず第1コンデンサレンズ、次いで第2コンデンサレンズを配置した粒子ビーム装置における粒子ビームのビーム電流を変化させるための役割を果たす。さらに、粒子ビーム装置は、電子ビーム発生器と第1コンデンサレンズとの間に配置した第1絞りユニットと、第1コンデンサレンズと第2コンデンサレンズとの間に配置した第2絞りユニットとを備える。第1絞りユニットは、可変の開口サイズを有する絞り開口を備え、少なくとも第1開口サイズと第2開口サイズとの間の開口サイズが可変であり、第1開口サイズは第2開口サイズよりも大きい。この方法は、第1コンデンサレンズの励起を変化させるステップを含み、第1ビーム電流(例えば、10nA〜数100nA)で、第2絞りユニットの領域で粒子ビームのクロスオーバーを生成し(例えば、第2絞りユニットに隣接して)、第2ビーム電流(例えば10nA〜1nA)で、粒子ビームのクロスオーバーを第2絞りユニットから所定の間隔をおいて生成し、第1ビーム電流は第2ビーム電流よりも大きい。第1コンデンサレンズの主平面から第2絞りユニットまでの間隔をDと定義し、クロスオーバーから第1コンデンサレンズの主平面までの間隔をLと定義した場合、次の関係が成り立つ。
L<0.45×D [関係式1]
の場合、粒子ビーム装置は高解像度モードで作動する(ビーム電流は、例えば約10pA〜500pAの範囲)。
0.75×D<L<1.25×D [関係式2]
の場合、粒子ビーム装置は高電流モードで作動する(ビーム電流は、例えば10nA〜300nAの範囲)。
0.45×D<L<0.75×D [関係式3]
の場合、粒子ビーム装置は移行領域で作動し、ビーム電流を制限することが不都合な場合には適宜な場所で大きい絞り開口を有する第1絞りユニットを選択することが望ましい。
【0043】
この方法は、第2ビーム電流の場合にエネルギー幅および仮想光源サイズの拡大を低減するために第1絞りを第2開口サイズに設定するステップをさらに含む。第1開口サイズから第2開口サイズに絞り開口を変更することにより、粒子を早期に(すなわち、第1絞りユニットで)粒子ビームから遮断することが達成される。さもなければ粒子は第2絞りユニットでいずれにせよ遮断されるであろう。このようにして、第1絞りユニットと第2絞りユニットとの間に生じる場合のある粒子ビームの粒子の相互作用を低減または防止する。これにより、像生成時の解像度を改善する。
【0044】
Lが増加するつれてビーム電流は上昇し、解像度は低下する。高解像度モードでは、解像度は緩やかに(例えばビーム電流が10pA〜500pAに上昇した場合に1.4nmから2nmに)低下する。高電流モードでは、解像度はもはやそれほど良好ではない。例えば解像度は5nmである。しかしながら、解像度はさらに低下する場合もある。
【0045】
この方法の別の実施例では、第1ビーム電流よりも小さく、第2ビーム電流よりも大きい第3ビーム電流で、粒子ビーム発生器と対物レンズとの間に粒子ビームのクロスオーバーが生じないように第1コンデンサレンズおよび第2コンデンサレンズを作動する。この設定をクロスオーバーなしのモードと呼ぶ。このクロスオーバーなしのモードは、
0.3×D<L<0.45×D [関係式4]
が成り立つ場合、上位のビーム電流範囲(200pA〜500pA)で高解像度モードとオーバーラップする。
【0046】
このオーバーラップでは、クロスオーバーなしのモードは、クロスオーバーがないので高解像度モードよりも幾分良好な解像度を示す(同じビーム電流を有する両モードを比較した場合)。200pA未満のビーム電流では、
L<0.3×D [関係式5]
が成り立ち、高解像度モードにおける作動のみが可能である。このモードでは粒子ビーム装置の最適な解像度が得られる。
【発明の効果】
【0047】
本発明による絞りユニットおよび絞りユニットを有する粒子ビーム装置により、粒子ビームのビーム電流の正確な調整をわずかな手間で十分に良好に行うことができ、粒子ビームのモジュールとはできるだけ無関係のビーム経路を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】調整可能な絞り開口を有する絞りユニットを備えるSEMの概略図である。
【図2】調整可能な絞り開口を有する絞りユニットの第1実施例を示す概略図である。
【図3】図2に示す絞りユニットの別の概略図である。
【図4】図2に示す絞りユニットの別の概略図である。
【図5】ストッパ素子の概略図である。
【図6】調整可能な絞り開口を有する絞りユニットの第2実施例を示す概略図である。
【図7】図1のSEMを高解像度モードで示す別の概略図である。
【図8】図1のSEMを高電流モードで示す別の概略図である。
【図9】クロスオーバーのない光路を選択した場合の図1のSEMの別の概略図である。
【図10】調整可能な絞り開口を有する別の絞りユニットを備えるSEMの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
SEMの形態の粒子ビーム装置を用いて本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明がSEMに制限されないことを明確に指摘しておく。むしろ本発明はあらゆる粒子ビーム装置、特にイオンビーム装置で実施することができる。
【0050】
図1は、SEM1の概略図である。SEM1は電子源2(カソード)、引出し電極3、およびSEM1のビーム案内管5の端部に載置したアノード4の形態のビーム発生器を有している。電子源2は、例えば熱電界放出器として構成している。本発明は、もちろんこのような熱電界放出器に制限されない。むしろあらゆる電子源が使用可能である。
【0051】
電子源2から放出する電子は、一次電子ビームを形成する。電子は、電子源2とアノード4との間の電位差に基づきアノード電位に加速される。アノード電位はここの示す実施例1では試料チャンバ(図示しない)のハウジングの地電位に対して1kV〜20kVであり、例えば5kV〜15kV、特に8kVである。しかしながら、代替的には地電位に位置してもよい。
【0052】
ビーム案内管5には2つのコンデンサレンズ、すなわち、第1コンデンサレンズ6および第2コンデンサレンズ7を配置する。この場合、電子源2を起点として対物レンズ10の方向にまず第1コンデンサレンズ6、次いで第2コンデンサレンズ7を配置する。
【0053】
第1コンデンサレンズ6は第1極片6aおよび第2極片6bを備え、電子源1を起点として対物レンズ10の方向に見て、まず第1極片6a、次いで第2極片6bを配置する。第2コンデンサレンズ7は同様の構成を有し、第3極片7aおよび第4極片7bを備える。電子源2を起点として対物レンズ10の方向に見て、まず第3極片6a、次いで第4極片7bを配置する。第1極片6a(または第3極片7a)を上側極片と呼び、第2極片6b(または第4極片7b)を下側極片と呼ぶことも多い。
【0054】
アノード4と第1コンデンサレンズ6との間には、第1絞りユニット8を配置する。第1絞りユニット8は、アノード4およびビーム案内管5と共に高圧電位、すなわち、アノード4の電位または接地に位置する。第1コンデンサレンズ6と第2コンデンサレンズ7との間には定置の第2絞りユニット9を配置する。第1コンデンサレンズ6、第2コンデンサレンズ7、第1絞りユニット8および第2絞りユニット9の機能をさらに以下に詳細に説明する。
【0055】
第1コンデンサレンズ6の第1極片6aおよび第2極片6bは双方とも第1調整機構23によって相互に無関係に第2絞りユニット9に対して調整可能である。すなわち、第2絞りユニット9に対する第1極片6aの位相対位置が調整可能である。同様のことが第2極片6bについてもいえる。第2コンデンサレンズ7の第3極片7aおよび第4極片7bも第2調整ユニット24によって共に、または相互に無関係に第2絞りユニット9に対して調整可能である。
【0056】
第1コンデンサレンズ6には第1コイル6cが配置されており、第2コンデンサレンズ7には第1コイル7cが配置されている。第1コイル6cおよび第2コイル7cによって、第1極片6aおよび第2極片6c、または第3極片7aおよび第4極片7bの不可欠な励磁を得ることができる。
【0057】
対物レンズ10は、孔を構成した対物レンズ極片11を有している。この孔を通ってビーム案内管5を案内する。極片11に第2コイル12をさらに配置する。ビーム案内管5の後方には静電的な遅延手段を配置する。この遅延手段は個々の電極15およびチューブ電極14を備え、ビーム案内管5における試料16に向いた端部にチューブ電極14を構成する。したがって、チューブ電極14は、ビーム案内管5と共にアノード4の電位に位置し、個々の電極15および試料16はアノード4の電極に対してより低い電位に位置する。本実施例では、これは試料チャンバ(図示しない)のハウジングの地電位である。このように、一次電子ビームの電子を試料16の検査のために必要な所望のエネルギーに制動することができる。
【0058】
SEM1はさらに操作手段13を備え、この走査手段13によって一次電子ビームを偏向し、試料16によって走査することができる。この場合、一次電子ビームの電子は、試料16の相互作用している。相互作用の結果、相互作用粒子および/または相互作用ビームが生じ、これらは検出される。このようにして得られた検出信号を評価する。
【0059】
相互作用粒子として、特に試料16の表面からの電子(いわゆる「二次電子」)または一次電子ビームの電子を後方散乱させる(いわゆる「後方散乱電子」)。二次電子ビームおよび/または後方散乱電子を検出するために、第1検出器17および第2検出器18を有する検出装置をビーム案内管5に配置する。この場合、光軸Aに沿って電子源側に第1検出器17を配置し、光軸に沿って試料側にビーム案内管5の内部に第2検出器18を配置する。さらに、SEM1の光軸Aの方向に互いにずらして第1検出器17および第2検出器18を配置する。第1検出器17および第2検出器18は双方とも、一次電子ビームが進入できるそれぞれ1つの貫通開口を有し、ほぼアノード4およびビーム案内管5の電位に位置する。SEM1の光軸Aは、それぞれの貫通開口を通って延在している。
【0060】
第2検出器18は、比較的大きい空間角度で試料16から放出する電子を検出する役割を果たす。この場合、まず二次電子が問題となる。これに対して試料16で後方散乱し、試料16からの放出時に二次電子に比べて比較的高い動的エネルギーを有する電子(後方散乱電子)は、第2検出器18によって極めて僅かな部分だけ検出される。なぜなら、後方散乱電子は、対物レンズ10の光軸Aに対して比較的近傍に集束され、ひいては二次検出器18の貫通開口を通過することができるからである。したがって、第1検出器17は、後方散乱電子を検出する役割を果たす。第1検出器17および第2検出器18によって生成された検出信号を使用し、試料16の表面の1つまたは複数の画像を生成する。
【0061】
第1絞りユニット8および第2絞りユニット9の絞り開口ならびに第1検出器17および第2検出器18の貫通開口は誇張して示していることを明確に指摘しておく。第1検出器17および第2検出器18の貫通開口は、1mm〜5mmの範囲の最大長さを有する。例えばこれらの貫通開口は円形に構成されており、1mm〜3mmの範囲の直径を有する。第1絞りユニット8および第2絞りユニット9の絞り開口の大きさについては以下にさらに詳細に説明する。
【0062】
第2絞りユニット9は、ここに示す実施例では、孔状絞りとして構成されており、一次電子ビームを通過させるための開口を備え、この開口は、25μm〜50μmの範囲、例えば35μmの口径を有する。第2絞りユニット9は圧力段階絞り()として構成している。第2絞りユニット9は、電子源2が配置されており、超高真空(10−6〜10−10Pa)を有する第1領域を、高真空(10−1〜10−5Pa)を有する第2領域から分離している。第2領域は、試料チャンバ(図示しない)に通じるビーム案内管5の中間圧力領域である。これについても以下にさらに詳細に説明する。
【0063】
画像生成の他に、SEM1では、試料16を検査するために使用することができる検査方法がある。これには、散乱電子の回折パターンを検出するいわゆるEBSD法(“Electron Backscattered Diffraction:電子後方散乱回折”)が挙げられる。別の検査方法は、一次電子ビームが試料16に入射した場合に試料16から放出するカソードルミネッセンスの検出に基づく。他の検査方法は、例えばエネルギー分散型X線分光法(EDX)による検査および波長分散型X線分光法(WDX)である。これら他の検査方法では、ビーム案内管5と試料16との間の領域に配置した少なくとも1つの第3検出器19を設ける。さらなる第3検出器19を設けてもよい(図示しない)。
【0064】
上述のように、試料16の表面における画像の十分に良好な解像度を得るためには、SEM1を高解像度モードで作動することが望ましい。これに対して、他の検査方法では、高い計数率が必要とされ、したがって、SEM1を高電流モードで作動することが望ましい。
【0065】
2つのモード(高解像度モードおよび高電流モード)の間で切り換えることができるように、まず第1コンデンサレンズ6を対応して励磁する。これにより、ビーム電流を、例えば10pA〜300nAの範囲で連続的に変化させる。高解像度モードでは、第1絞り開口8の別の絞り開口を選択し、これにより、一次電子ビームから電子を早期に遮断することが可能である。さもなければ電子はいずれにせよ第2絞りユニット9で遮断される。図2〜図4は、図1に示すSEM1の場合と同様に装備し、使用する第1絞りユニット8の実施態様を概略的に示す。第1絞りユニット8は第1絞り素子85を有し、第1絞り素子85は第1ジョイント部分86と第2ジョイント部分87を備える。第1ジョイント部87と第2ジョイント部87とは、第1ジョイント88で相互に結合している。付加的に、第1絞りユニット8には第2絞り素子89が設けられており、第2絞り素子は、第3ジョイント部分90と第4ジョイント部分91とを備える。第3ジョイント部分90と第4ジョイント部分91とは第2ジョイント92で相互に結合している。
【0066】
第1ジョイント88および第2ジョイント92は、弾性的に、それぞれ固体ジョイントとして構成する。固体ジョイントは、相互に曲げ剛性を有する箇所を備えていることにより優れている。第1ジョイント88および第2ジョイント92は、それぞれ実質的にSEM1の光軸Aに対して平行な運動軸線を有する。光軸Aは、図2〜図4の図平面で垂直方向に位置する。
【0067】
第1絞り素子85の第2ジョイント87と第2絞り素子89の第4ジョイント91との間には圧電素子95を配置しる。圧電素子95は、第1固定素子93と第2固定素子94とによって保持する。圧電素子95は、弾性圧電素子(弾性アクチュエータ)として構成する。しかしながら、本発明は、弾性圧電素子に限定されないことを明確に指摘しておく。むしろあらゆる適宜な駆動ユニット、例えば圧電−慣性駆動部、ブロック-圧電素子および/または圧電式-尺取り虫寸動機構が使用可能である。ピエゾ素子95は、図1にも示した制御・供給手段20に結合している。制御・供給手段20は、第1絞りユニット8のアノード電圧に制御・供給信号を重畳するように配置し、切り換える。
【0068】
第1絞りユニット8の第1ジョイント部分86には、第1制限素子96を配置する。同様のことが第2絞り素子89の第3ジョイント部分90についてもいえる。ここには第2制限素子97を配置する。第1制限素子96および第2制限素子97は、それぞれV字形部分を有し、これらの部分は、絞り開口を形成するために協働する。第1制限素子96と第2制限素子97とは相互に重なり、相互に反対方向に移動させることができる。このようにして、以下にさらに詳細に説明するように、絞り開口98の大きさを調整する。
【0069】
第1ジョイント部分86の第1端部100の領域には、第1ストッパ素子81および第2ストッパ素子82を配置する。さらに、第3ジョイント部分90の第2端部101の領域には、第3ストッパ素子83および第4ストッパ素子を配置する。図5は、第1ストッパ素子81を概略的に示す。他のストッパ素子は構成が同じである。第1ストッパ素子81は偏心素子として構成し、制限部分81aと案内素子81bとを備える。案内素子81bは、図2〜図4に概略的に示すベースプレート102に取り付ける。このベースプレート102には、上記ストッパ素子81〜84、第1固定素子93および第2固定素子94を配置する。
【0070】
図2〜図4に示すように、2つの設定を設け、一方では第1ジョイント部分86が第2ストッパ素子82に当接し、第3ジョイント部分90が第3ストッパ素子83に当接する(図2)し、他方では、第1ジョイント部分86が第1ストッパ素子81に当接し、第3ジョイント部分90が第4ストッパ素子84に当接する(図4)。これら2つの設定は、絞り開口98の第1開口サイズ(図2)および第2開口サイズ(図4)を提供する。この場合、以上および以下においても開口サイズとは一次元的なサイズ(長さ)であり、絞り開口の直径または第1制限素子96の縁部と第2制限素子97の縁部との間の最大間隔を意味する。第1ストッパ素子81、第2ストッパ素子82、第3ストッパ素子83および第4ストッパ素子84を偏心素子として構成することにより、上記ストッパ素子を正確に位置決めし、絞り開口98の所望の開口サイズ(第1開口サイズまたは第2開口サイズ)を得ることが可能であり、第1開口サイズおよび第2開口サイズは、それぞれ所定方向の絞り開口98の最大長さによって付与される。上記ストッパ素子の設定は、例えば第2絞りユニット8をSEM1に組み込む前に得られる。第1開口サイズおよび第2開口サイズは、例えば約10μm〜500μmの範囲である。さらに第2開口サイズは第1開口サイズよりも大きく選択する。例えば、第1開口サイズは50μmであり、第2開口サイズは200μmである。
【0071】
SEM1では、圧電素子95の制御によって、第1絞り素子85および第2絞り素子89を移動させ、第1開口サイズと第2開口サイズとの間で切り換えることが可能である。図2は、圧電素子5が励起されていない状態を示す。この状態では、第1ジョイント88および第2ジョイント92は予荷重をかけられており、第1ジョイント部分86は第2ストッパ素子82に当接し、第3ジョイント部分96は第3ストッパ素子83に当接している。第1制限素子96と第2制限素子97とは相互に重なり、絞り開口98が第1開口サイズをとるように協働する。図3は移行状態を示す。この状態では、圧電素子95は、軽く撓むように励起される。これにより、第1ジョイント部分86は、第1ストッパ素子81と第2ストッパ素子82との間に位置するように移動する。さらに第3ジョイント部分90は、第3ストッパ素子83と第4ストッパ素子84との間に位置するように移動する。第1ジョイント88および第2ジョイント92は弛緩している。図4は、第1ジョイント部分86が第1ストッパ素子81に当接し、第3ジョイント部分90が第4ストッパ素子84に当接するように圧電素子95を励起し、曲げた状態を示す。第1ジョイント88および第2ジョイント92は再び緊張している。第1制限素子96および第2制限素子97は相互に重なり、絞り開口98が第2開口サイズをとるように協働する。
【0072】
上述のように、第1ジョイント88および第2ジョイント92は、弾性的に構成されている。さらに、提供される調節経路が、それぞれのストッパ素子間における第1ジョイント部分86および第2ジョイント部分90の移動に実際に必要とされる経路よりも大きくなるように、圧電素子95を励起する。第1ジョイント部分86を第1ストッパ素子81または第2ストッパ素子82に当接させ、第3ジョイント部分90を第3ストッパ素子83または第4ストッパ素子84に当接させた後、圧電素子95が撓みによってまだ提供している不要な移動距離を弾性的な構成によって補償する。絞り開口における第1開口サイズまたは第2開口サイズとは異なる開口サイズをもたらす機械的な不正確さによる誤差をこのようにして防止する。
【0073】
上述のように、一次電子ビームのビームを規定可能な範囲にわたって、例えば10nA〜300nAの範囲で連続的に調整可能である。第1コンデンサレンズ6の励起を変化させることによってこれを達成する。
【0074】
上述のように、第2絞りユニット9は圧力段階絞りとして構成されている。第2絞りユニット9により、第1領域の超高真空が、第2領域からの汚染物質によって、例えば試料の領域におけるガスの導入により劣化することを防止する。
【0075】
一次電子ビームの経路が常にモードとは無関係となるように、第1コンデンサレンズ6の第1極片6aおよび第2極片6bは第1調整機構23によって第2絞りユニット9に対して調整可能となっている。この調整は、第1極片6aおよび第2極片6bについて相互に無関係に行う。第1コンデンサレンズ6の全体の調整(すなわち、第1極片6aおよび第2極片6bを常に相互に調整すること)は、モードとは無関係のビーム経路を保持するには不十分であることが考察の結果明らかとなった。むしろ、第1極片6aと第2極片6bとを相互に無関係に調節することが実際には重要である。
【0076】
モードとは無関係の特に良好な一次電子ビームのビーム経路を保持するために、本実施例では、第2調整機構24によって、第2コンデンサレンズ7の第3極片7aと第4極片7bとを共に、または相互に無関係に第2絞りユニット9に対して調整可能となっている。これに対して代替的に、第1偏向ユニット25、第2偏向ユニット26および第3偏向ユニット27からなる偏向システムによって、絞りユニット9と試料16との間の領域における一次電子ビームを偏向し、これによりモードとは無関係なビーム経路を得ることができる。しかしながら、本発明は、上記数の偏向ユニットに制限されないことを明確に指摘しておく。むしろ、1つのみの偏向ユニット、2つの偏向ユニット、または4つ以上の偏向ユニットを設けることもできる。
【0077】
図7は図1に示したSEM1を、一次電子ビームの光路の一部と共に示す。粒子束の直径は、図7および以下の図面において誇張した大きさで示している。SEM1は、図7では高解像モードになっている。第1コンデンサレンズ6は、一次電子ビームのクロスオーバーが電子源3の比較的近傍に配置されるように励起する。第1コンデンサレンズ6の主平面と第2絞りユニット9との間隔をDとし、クロスオーバーと第1コンデンサレンズ6の主平面との間隔をLと定義した場合、高解像度モードでは、
L<0.45×D [関係式1]
が成り立ち、ビーム電流は、例えば約10pA〜500pAである。同時に、第1絞りユニット8では小さい絞り開口を選択する。このようにして、既に第1絞りユニット8で一次電子ビームの大部分を遮断する。一次電子ビームはさもなければ、いずれにせよ第2絞りユニット9で遮断される。これにより、一次電子ビームに残された電子の相互作用が、相互に無視できる程度に小さくなり、このような相互作用に基づく一次電子ビームの拡大を防止する。したがって、像生成時に良好な解像度を得ることができる。
【0078】
図8は、図1のSEM1を、再び高電流モードにおける一次電子ビームの光路の一部と共に示す。一次電子ビームのクロスオーバーが第2絞りユニット9の近傍で得られるように一次コンデンサレンズ6を励起する。この場合、クロスオーバーは第1コンデンサレンズ6と第1絞りユニット9との間に位置する。しかしながら、これに対して代替的に、クロスオーバーを第2絞りユニット9と第2コンデンサレンズ7との間に配置することも可能である。このようにして、一次電子ビームの大部分を第2絞りユニット9を通過させることが可能である。高電流モードでは、
0.75×D<L<1.25×D [関係式2]
が成り立ち、ビーム電流は、例えば10nA〜300nAの範囲である。
【0079】
図9は、図1のSEM1を、一次電子ビームの光路の一部と共に示し、ここでは高い電流と低い電流との間のビーム電流を選択する。これは、高電流モードと高解像度モードとのあいだの移行領域である。この実施例では、電子源2と対物レンズ19との間に一次電子ビームのクロスオーバーが生じるように第1コンデンサレンズ6および第2コンデンサレンズ7を作動する。図9に示すクロスオーバーなしのモードでは、このモードは、例えば、
0.3×D<L<0.45×D [関係式4]
が成り立つ場合、上位のビーム電流領域(200pA〜500pA)で高解像度モードと重なる。
【0080】
この重なりでは、クロスオーバーなしのモードはクロスオーバーがないために、(両モードを同じビーム電流で比較した場合)高解像度モードよりも幾分良好な解像度を示す。200pA未満のビーム電流の場合には、
L<0.3×D [関係式5]
が成り立ち、高解像度モードにおける作動のみが可能である。
【0081】
一次電子ビームのビーム電流の設定は、使用すべき検査モードとは無関係に行う。試料16の表面の像を生成したい場合、SEM1の高解像度モードを設定することができる。このために、例えば10pA〜1nAの範囲のビーム電流を選択する。しかしながら、例えばさらに上記の他の検査方法を使用するために高電流モードで作動したい場合には、例えば10nA〜100nAの範囲のビーム電流を選択する。
【0082】
第2コンデンサレンズ7は、SEM1において、選択したビーム電流で良好な側方解像度が得られるように対物レンズ10の一次電子束の直径を調整する機能を有する。
【0083】
図6は、第1絞りユニット8の別の実施例を示す。絞りユニット8は、図2〜図4に示した実施例に類似している。同じ構成部分には同じ符号を付す。図2〜図4に示した実施例とは異なり、第1絞り素子85および第2絞り素子89はジョイント部分を有していない。むしろ第1絞り素子85および第2絞り素子89は、バイメタル素子99を介して相互に接続されている。バイメタル素子99は、制御・供給手段20に接続している。制御・供給手段20は、光学センサ21および加熱・冷却素子22を有している。光学センサ21への光の入射により、加熱・冷却素子22を切り換えることができ、加熱・冷却素子22はバイメタル素子99を制御する。高温および低温の供給とは無関係に、第1絞り素子85および第2絞り素子89をストッパ素子の位置へ移動させ、第1開口サイズまたは第2開口サイズが得られるようにバイメタル素子99を撓ませることができる。したがって、電子源2と第1コンデンサレンズ6との間の構成スペースがわずかなので光学センサ21の使用は有利であり、このようにして、制御ラインのために付加的な構成スペースを設けることなしにバイメタル素子99を制御することが可能である。図6に示したバイメタル素子99は弾性的に構成されており、第1ジョイント88および第2ジョイント92の弾性的な構成に関して述べたのと同じ作用および同じ利点を提供する。制御・供給ユニット20をベースプレート102に配置してこの領域の真空を劣化させたくない場合、別の実施形態で、光線(例えばレーザビーム)をSEM1に入射することにより、バイメタル素子99を照射し、加熱し、これにより、駆動に不可欠な撓みを得る。
【0084】
図10は、SEM1の別の実施例を示す。図10のSEM1は図1のSEM1に対応している。同じ構成部分には同じ符号を付す。図1に示した実施例とは異なり、第1絞りユニット8は、アノード4と第1絞りユニット8との間に配置した孔状ユニット8aを備える。孔状ユニット8aは、第1開口サイズを有する絞り開口を提供し、第1絞りユニット8は、第2開口サイズおよび第3開口サイズを有する絞り開口を提供する。第1開口サイズは、第3開口サイズより著しく大きい。第1開口サイズは、第2開口サイズよりも小さい。この実施形態では、第1絞りユニット8は図2〜図4に示した実施形態に対応し、第1絞りユニット8は第1絞り素子85のためには第1絞りストッパ素子182のみを備え、第2絞り素子89のためには第2絞りストッパ素子183のみを備える。これは、第1開口サイズ(これは実際に得られる効果的開口)または第3開口サイズが得られるように第1絞り素子85および第2絞り素子89を移動するためには十分である。上記実施形態は、第1制限素子96および第2制限素子97の領域で散乱電子がほぼ完全に防止されるという利点を有する。代替的に、第1開口サイズを第2開口サイズよりも幾分大きくするか、またはほぼ同じ大きさにしてもよい。この実施形態では、第1絞りストッパ素子182および第2絞りストッパ素子183の代わりに、再び第1ストッパ素子81、第2ストッパ素子82、第3ストッパ素子83および第4ストッパ素子84を必要とする。第1絞り素子85および第2絞り素子89の移動により、第2開口サイズまたは第3開口サイズを得ることができる。この実施形態では、第1制限素子96および第2制限素子97の領域の散乱電子を少なくとも広範囲に防止する。
【符号の説明】
【0085】
1 SEM(走査型電子顕微鏡)
2 電子源
3 引出し電極
4 アノード
5 ビーム案内管
6 第1コンデンサレンズ
6a 第1極片
6b 第2極片
6c 第1コイル
7 第2コンデンサレンズ
7a 第3極片
7b 第4極片
7c 第2コイル
8 第1絞りユニット
9 第2絞りユニット
10 対物レンズ
11 対物レンズ-極片
12 第3コイル
13 走査手段
14 チューブ電極
15 電極
16 試料
17 第1検出器
18 第2検出器
19 第3検出器
20 制御・供給ユニット
21 光学センサ
22 加熱・冷却素子
23 第1調整機構
24 第2調整機構
25 第1偏向ユニット
26 第2偏向ユニット
27 第3偏向ユニット
A 光軸
81 第1ストッパ素子
81a 制限部分
81b 案内素子
82 第2ストッパ素子
83 第3ストッパ素子
84 第4ストッパ素子
85 第1絞り素子
86 第1ジョイント部分
87 第2ジョイント部分
88 第1ジョイント
89 第2絞り素子
90 第3ジョイント部分
91 第4ジョイント部分
92 第2ジョイント
93 第1固定素子
94 第2固定素子
95 圧電素子
96 第1制限素子
97 第2制限素子
98 絞り開口
99 バイメタル素子
100 第1端部
101 第2端部
102 ベースプレート
182 第1絞りストッパ素子
183 第2絞りストッパ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子ビーム装置(1)であって、
粒子ビームを形成する粒子を生成するための粒子ビーム発生器(2)と、
試料(16)に前記粒子ビームを集束するための対物レンズ(10)と、
前記粒子ビーム発生器(2)を起点として前記対物レンズ(10)の方向に見て、まず第1コンデンサレンズ(6,6a,6b,6c)、次いで第2コンデンサレンズ(7,7a,7b,7c)の順序で配置した第1コンデンサレンズ(6,6a,6b,6c)および第2コンデンサレンズ(7,7a,7b,7c)と、
前記粒子ビーム発生器(2)および前記第1コンデンサレンズ(6,6a,6b,6c)の間に配置した第1絞りユニット(8)と、
前記第1コンデンサレンズ(6,6a,6b,6c)および前記第2コンデンサレンズ(7,7a,7b,7c)の間に配置した第2絞りユニット(9)とを備える粒子ビーム装置において、
前記第1コンデンサレンズ(6)が、第1極片(6a)および第2極片(6b)を備え、前記粒子ビーム発生器(2)を起点として前記対物レンズ(10)の方向に見て、まず前記第1極片(6a)、次いで前記第2極片(6b)が配置され、
前記第1極片(6a)および前記第2極片(6b)が、双方とも相互に無関係に前記第2絞りユニット(9)に対して調整可能であり、
前記第2絞りユニット(9)が、薄膜絞り等で構成された圧力段階絞りであり、前記圧力段階絞りは、第1圧力を有する真空を形成した第1領域と、第2圧力を有する真空を形成した第2領域とが相互に分離されていることを特徴とする粒子ビーム装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粒子ビーム装置(1)において、
前記第2コンデンサレンズ(7)が、第3極片(7a)および第4極片(7b)を備え、前記粒子ビーム発生器(2)を起点として前記対物レンズ(10)の方向に見て、まず前記第3極片(7a)、次いで前記第4極片(7b)が配置され、
前記第3極片(7a)および前記第4極片(7b)が、共に、または相互に無関係に前記第2絞りユニット(9)に対して調整可能であることを特徴とする粒子ビーム装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粒子ビーム装置(1)において、
前記第1絞りユニット(8)と前記第2コンデンサレンズ(7,7a,7b,7c)との間に少なくとも1つの偏向手段(25,26,27)が配置されている粒子ビーム装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の粒子ビーム装置(1)において、
前記第1絞りユニット(8)が、変更可能な開口サイズを有する絞り開口(98)を備える粒子ビーム装置。
【請求項5】
請求項4に記載の粒子ビーム装置(1)において、
前記第1絞りユニット(8)が第1絞り素子(85)および第2絞り素子(89)を備え、
前記第1絞り素子(85)および前記第2絞り素子(89)が、互いに協働して絞り開口(98)を形成し、
前記第1絞り素子(85)および前記第2絞り素子(89)が相対移動可能である粒子ビーム装置(1)。
【請求項6】
請求項5に記載の粒子ビーム装置(1)において、
前記第1絞りユニット(8)が、第1絞りストッパ素子(182)および第2絞りストッパ素子(183)を備え、
前記第1絞り素子(85)が、前記絞り開口(98)を形成するために前記第1絞りストッパ素子(182)に当接するように可動となっており、および/または
前記第2絞り素子(89)が、前記絞り開口(98)を形成するために前記第2絞りストッパ素子(183)に当接するように可動である粒子ビーム装置。
【請求項7】
請求項5に記載の粒子ビーム装置(1)において、
前記第1絞りユニット(8)が、第1ストッパ素子(81)および第2ストッパ素子(82)を備え、
前記第1絞り素子(85)が、第1開口サイズを有する前記絞り開口(98)を形成するために前記第1ストッパ素子(82)に当接するか、または第2開口サイズを有する前記絞り開口(98)を形成するために前記第2ストッパ素子(82)に当接する粒子ビーム装置。
【請求項8】
請求項5から7までの何れか一項に記載の粒子ビーム装置(1)において、
前記第1絞りユニット(8)が、第3ストッパ素子(83)および第4ストッパ素子(84)を備え、
前記第2絞りユニット(89)が、前記絞り開口(98)を形成するために第3絞りストッパ素子(83)または第4絞りストッパ素子(84)に当接するように可動である粒子ビーム装置。
【請求項9】
請求項5から8までの何れか一項に記載の粒子ビーム装置(1)において、
前記第1絞りユニット(8)が、前記第1絞り素子(85)および/または前記第2絞り素子(89)を移動させるための少なくとも1つの駆動ユニット(95,99)を備える粒子ビーム装置。
【請求項10】
請求項9に記載の粒子ビーム装置(1)において、
前記第1絞りユニット(8)が次の特徴、すなわち:
前記駆動ユニット(95)が圧電素子を備えるか、
前記駆動ユニットが電磁式移動素子を備えるか、または
前記駆動ユニット(99)がバイメタル素子を備える
という特徴のうちの少なくとも1つを備える粒子ビーム装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の粒子ビーム装置(1)において、
前記第1絞りユニット(8)が次の特徴、すなわち:
前記駆動ユニット(95)が、該駆動ユニット(95)に電圧を供給する供給ユニット(20)を備えるか、または
前記駆動ユニット(99)が、該駆動ユニット(99)に熱を供給し、該駆動ユニットから熱を放出する供給ユニット(20)を備える
という特徴のうちの少なくとも1つを備える粒子ビーム装置。
【請求項12】
請求項9から11までの何れか一項に記載の粒子ビーム装置(1)において、
前記駆動ユニット(99)が光学信号によって制御可能に設計されている粒子ビーム装置。
【請求項13】
請求項5から12までの何れか一項に記載の粒子ビーム装置(1)において、
前記第1絞りユニット(85)と前記第2絞りユニット(89)とが弾性的な結合素子(99)によって相互に結合されている粒子ビーム装置。
【請求項14】
請求項13に記載の粒子ビーム装置(1)において、
前記弾性的な結合素子(99)がバイメタルとして構成されている粒子ビーム装置。
【請求項15】
請求項5から12までの何れか一項に記載の粒子ビーム装置(1)において、
前記第1絞りユニット(8)が次の特徴、すなわち:
前記第1絞り素子(85)を少なくとも部分的に弾性的構成しているか、または
前記第2絞り素子(89)を少なくとも部分的に弾性的に構成している
という特徴のうちの少なくとも1つを備える粒子ビーム装置。
【請求項16】
請求項15に記載の粒子ビーム装置(1)において、
前記第1絞りユニット(8)が次の特徴、すなわち:
前記第1絞り素子(85)が、第1ジョイント(88)によって相互に結合した第1ジョイント部分(86)および第2ジョイント部分(87)を備えるか、または
前記第2絞り素子(89)が、第2ジョイント(92)よって相互に結合した第3ジョイント部分(90)および第4ジョイント部分(91)を備える
という特徴のうちの少なくとも1つを備える粒子ビーム装置。
【請求項17】
請求項16に記載の粒子ビーム装置(1)において、
前記第1絞りユニット(8)が次の特徴、すなわち:
前記第1ジョイント(88)を弾性的に構成しているか、または
前記第2ジョイント(92)を弾性的に構成している
という特徴のうちの少なくとも1つを備える粒子ビーム装置。
【請求項18】
請求項6から17までの何れか一項に記載の粒子ビーム装置(1)において、
前記第1絞りユニット(8)が次の特徴、すなわち:
前記第1絞りストッパ素子(182)を偏心的に構成しているか、
前記第2絞りストッパ素子(183)を偏心的に構成しているか、
第1ストッパ素子(81)を偏心的に構成しているか、
第2ストッパ素子(82)を偏心的に構成しているか、
第3ストッパ素子(83)を偏心的に構成しているか、または
第4ストッパ素子(84)を偏心的に構成している
という特徴のうちの少なくとも1つを備える粒子ビーム装置。
【請求項19】
請求項1から18までの何れか一項に記載の粒子ビーム装置(1)において、
前記第1絞りユニット(8)が、1kV〜20kVの範囲の電位に位置する粒子ビーム装置。
【請求項20】
粒子ビーム装置(1)に配置するための調整可能な絞り素子(85)を有する絞りユニット(8)において、
該絞りユニット(8)が、絞り開口(98)を形成するために協働する第1絞り素子(85)および第2絞り素子(89)を備え、
前記絞りユニット(8)が第1ストッパ素子(81,82)を備え、
前記第1絞り素子(85)が、前記絞り開口(98)を形成するために前記第1ストッパ素子(81,82)に当接するように可動であることを特徴とする粒子ビーム装置。
【請求項21】
請求項20に記載の絞りユニット(8)において、
該絞りユニット(8)が、第2ストッパ素子(82)を備え、
前記第1絞り素子(85)が、第1開口サイズを有する前記絞り開口(98)を形成するために前記第1ストッパ素子(81)に当接するように可動であるか、または第2開口サイズを有する前記絞り開口(98)を形成するために前記第2ストッパ素子(82)に当接するように可動である絞りユニット(8)。
【請求項22】
請求項20または21に記載の絞りユニット(8)において、
該絞りユニット(8)が第3ストッパ素子(83)を備え、
前記第2絞り素子(89)が、前記絞り開口(98)を形成するために前記第3ストッパ素子(83)に当接するように可動である絞りユニット。
【請求項23】
請求項22に記載の絞りユニット(8)において、
該絞りユニット(8)が第4絞り素子(84)を備え、
前記第2絞り素子(89)が、前記絞り開口(98)を形成するために第3ストッパ素子(83)または第4ストッパ素子(84)に当接するように可動である絞りユニット。
【請求項24】
請求項20から23までの何れか一項に記載の絞りユニット(8)において、
該絞りユニッが、前記第1絞り素子(85)および/または前記第2絞り素子(89)を移動させるための少なくとも1つの駆動ユニット(95,99)を備える絞りユニット。
【請求項25】
請求項24に記載の絞りユニット(8)において、
該第1絞りユニット(8)が次の特徴、すなわち:
前記駆動ユニット(95)が圧電素子を備えるか、
前記駆動ユニットが電磁式移動素子を備えるか、かつ/または
前記駆動ユニット(99)がバイメタル素子を備える
という特徴のうちの少なくとも1つを備える粒子ビーム装置。
【請求項26】
請求項24または25に記載の絞りユニット(8)において、
該第1絞りユニット(8)が次の特徴、すなわち、
前記駆動ユニット(95)が、該駆動ユニット(95)に電圧を供給する供給ユニット(20)を備えるか、または
前記駆動ユニット(99)が、該駆動ユニット(99)に熱を供給し、該駆動ユニットから熱を放出する供給ユニットを備える
という特徴のうちの少なくとも1つを備える粒子ビーム装置。
【請求項27】
請求項24から26までの何れか一項に記載の絞りユニット(8)において、
前記駆動ユニット(99)が光学信号によって制御可能に設計されている粒子ビーム装置。
【請求項28】
請求項20から27までの何れか一項に記載の絞りユニット(8)において、
前記第1絞り素子(85)と前記第2絞り素子(89)とが弾性的な結合素子(99)によって相互に結合されている粒子ビーム装置。
【請求項29】
請求項28に記載の絞りユニット(8)において、
前記弾性的な結合素子(99)がバイメタルとして構成されている絞りユニット。
【請求項30】
請求項20から27までの何れか一項に記載の絞りユニット(8)において、
該第1絞りユニット(8)が次の特徴、すなわち:
前記第1絞り素子(85)を少なくとも部分的に弾性的構成しているか、または
前記第2絞り素子(89)を少なくとも部分的に弾性的に構成している
という特徴のうちの少なくとも1つを備える絞りユニット。
【請求項31】
請求項30に記載の絞りユニットにおいて、
該第1絞りユニット(8)が次の特徴、すなわち:
前記第1絞り素子(85)が、第1ジョイント(88)によって相互に結合した第1ジョイント部分(86)および第2ジョイント部分(87)を備えるか、または
前記第2絞り素子(89)が、第2ジョイント(92)よって相互に結合した第3ジョイント部分(90)および第4ジョイント部分(91)を備える
という特徴のうちの少なくとも1つを備える絞りユニット。
【請求項32】
請求項31に記載の絞りユニット(8)において、
該第1絞りユニット(8)が次の特徴、すなわち:
前記第1ジョイント(88)を弾性的に構成しているか、または
前記第2ジョイント(92)を弾性的に構成している
という特徴のうちの少なくとも1つを備える絞りユニット。
【請求項33】
請求項20から32までの何れか一項に記載の絞りユニット(8)において、
該第1絞りユニット(8)が次の特徴、すなわち:
第1ストッパ素子(81)を偏心的に構成しているか、
第2ストッパ素子(82)を偏心的に構成しているか、
第3ストッパ素子(83)を偏心的に構成しているか、または
第4ストッパ素子(84)を偏心的に構成している
という特徴のうちの少なくとも1つを備える絞りユニット。
【請求項34】
粒子ビーム装置(1)であって、
粒子ビームを形成する粒子を生成するための粒子ビーム発生器(2)と、
試料(16)に粒子ビームを集束するための対物レンズ(10)と、
前記粒子ビーム発生器(2)を起点として前記対物レンズ(10)の方向に見て、まず第1コンデンサレンズ(6,6a,6b,6c)、次いで第2コンデンサレンズ(7,7a,7b,7c)の順序で配置した第1コンデンサレンズ(6,6a,6b,6c)および第2コンデンサレンズ(7,7a,7b,7c)と、
前記粒子ビーム発生器(2)と前記第1コンデンサレンズ(6,6a,6b,6c)との間に配置した第1絞りユニット(8)と、
前記第1コンデンサレンズ(6,6a,6b,6c)と第2コンデンサレンズ(7,7a,7b,7c)との間に配置した第2絞りユニット(9)とを備え、
前記第1絞りユニット(8)が、可変の開口サイズを有する絞り開口(98)を備え、少なくとも第1開口サイズと第2開口サイズとの間の開口サイズが可変であり、前記第1開口サイズが前記第2開口サイズよりも大きい粒子ビーム装置(1)における粒子ビームのビーム電流を変化させる方法において、
第1コンデンサレンズ(6,6a,6b,6c)の励起を変化させるステップであって、第1ビーム電流の場合に、第2絞りユニット(9)の領域で粒子ビームのクロスオーバーを生成し、第2ビーム電流の場合に、前記第2絞りユニット(9)から所定の間隔をおいて粒子ビームのクロスオーバーを生成し、前記第1ビーム電流を前記第2ビーム電流よりも大きくするステップと、
前記第2ビーム電流の場合に、エネルギー幅および粒子ビームのビーム拡大を低減するために前記第1絞り(8)を第2開口サイズに設定するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法において、
前記第1ビーム電流よりも小さく、前記第2ビーム電流よりも大きい第3ビーム電流で、前記粒子ビーム発生器(2)と前記対物レンズ(10)との間に粒子ビームのクロスオーバーが生じないように、前記第1コンデンサレンズ(6,6a,6b,6c)および前記第2コンデンサレンズ(7,7a,7b,7c)を作動する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−29185(P2011−29185A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−165242(P2010−165242)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(504020452)カール・ツァイス・エヌティーエス・ゲーエムベーハー (36)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss NTS GmbH
【Fターム(参考)】