説明

絞り出し装置

【課題】異なる混合比を有する物質を容易に絞り出すことができる、物質を収容したカートリッジのための絞り出し装置を得る。
【解決手段】物質を収容したカートリッジのための絞り出し装置に、絞り出し機構12およびカートリッジのための収容部16を設け、収容部16を前面においてヘッドプレート17、後面においてストッパプレート18によって画定し、ヘッドプレート17に第1ストッパ21を、ストッパプレート18の領域には第2ストッパ22を設けることによりカートリッジ26を第1姿勢にした状態で保持し、少なくとも1個の他のストッパ23を設けることにより、カートリッジ26を他の姿勢にして保持する。好適には、少なくとも1個の他のストッパ23をばね素子とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質を収容した容器のための絞り出し装置に関する。この絞り出し装置は、絞り出し機構とカートリッジのための収容部を有し、収容部を前面においてヘッドプレート、後面においてストッパプレートによって画定し、ヘッドプレートに第1ストッパを、ストッパプレートの領域には第2ストッパを備えることにより、カートリッジを第1姿勢にして保持する。
【0002】
この種の絞り出し装置によってカートリッジに収容したモルタル剤またはシーリング剤などの多成分系の物質を塗布部位に絞り出す。絞り出し機構は通常は送り機構を有し、この送り機構を操作すると、例えばピストンロッドなどの送り手段が所定の距離を摺動される。ピストンロッドに備えた押圧力伝達手段によってカートリッジ内に収容した物質に作用することにより、1回の送り動作毎に適切な量の物質を吐出口から絞り出す。
【背景技術】
【0003】
特許文献1(米国特許第5104005号)にはこの種の、物質を収容したカートリッジのための絞り出し装置が記載されている。ヘッドプレートにはカートリッジの混合接続部を収容するためのスリットを設け、このスリットによってカートリッジを保持するための第1ストッパを構成する。ストッパプレートの領域には、2個の側壁を連結するU字状素子を備え、このU字状素子の連結部分によってカートリッジを保持するための第2ストッパを構成する。
【0004】
既知の方法は、収容部内に挿入したカートリッジを1個の姿勢または向きでしか保持できないという欠点を有する。この種の絞り出し装置によって異なる混合比を有する種々の物質を絞り出すためには、適切な形状を有する様々なカートリッジを挿入しなければならない。しかしこの場合、とり得る混合比の幅が収容部の形状により大きく制限される。
【特許文献1】米国特許第5104005号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、物質を収容したカートリッジのための絞り出し装置であって、異なる混合比を有する物質を容易に絞り出すことができる絞り出し装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明特許請求の範囲における独立項の後段に記載の特徴により解決する。
【0007】
本発明によれば、カートリッジを他の姿勢にして保持する少なくとも1個の他のストッパを設ける。
【発明の効果】
【0008】
装填したカートリッジに応じて、カートリッジに収容した多成分系の物質を絞り出し装置によって絞り出す。カートリッジにおける成分の比率をA:Bとすると、装填した状態においてカートリッジを例えば混合接続部または混合ハウジングにおいて収容部の第1ストッパに、混合接続部側とは反対側の壁部分において収容部の第2ストッパに接触させ、これらのストッパによって収容部内で適切な姿勢または向きにして保持する。それに対してカートリッジにおける成分の比率をA:Cとすると、装填した状態においてカートリッジを例えば混合接続部または混合ハウジングにおいて収容部の第1ストッパに、混合接続部側とは反対側の壁部分において少なくとも1個の他のストッパに接触させ、これらストッパによって収容部内で他の姿勢または向きにして保持する。このようにして、カートリッジは、適正配置で、絞り出すべき物質に適合させて収容部に固定できる。
【0009】
収容部には、多成分系の物質の異なる成分のための、3個またはそれ以上の収容空間を有するカートリッジも正しい配置で装填できる。例えば、3個の収容空間を有するカートリッジでは1個の収容空間に成分Aを、他の2個の収容空間にはそれぞれ成分Bを備え、他の2個の収容空間は収容容積において互いに異なるものとする。使用者は必要に応じて多成分系の物質を使用でき、この多成分系の物質を必要に応じて、または環境条件によって混合比を適合することできるものとする。収容空間の組み合わせによって、異なるヘッド部分を使用する。使用者が所定の混合比を有する物質を絞り出したいが、カートリッジに誤ったヘッド部材を備えた場合、例えば混合接続部がヘッドプレートの第1ストッパに接触しない。これは、カートリッジを収容部に装填する際に、第2ストッパまたは少なくとも1個の他のストッパに阻害されるためである。使用者は直ちにカートリッジを望ましいように装填していないことに気付き、これにより使用上の失敗を大きく排除できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
好適には、少なくとも1個の別のストッパをばね素子とし、このばね素子によってカートリッジの構成に応じて、収容部に装填したカートリッジの壁部分にばね負荷を加え、このカートリッジを絞り出し機構によって物質を絞り出す状態に保持する。好適には、ばね素子は、遊端を備えた収容部内に突出する部分を有し、この部分によって壁部分の、カートリッジのいずれか1個の収容空間を包囲する部分のための接触面を構成する。カートリッジを収容部に装填し、このカートリッジが正しく装填された状態で収容部の第1ストッパおよび第2ストッパに接触すると、ばね素子の少なくとも1個の部分がこのカートリッジを装填する際にカートリッジから外れるため、正しい装填が可能となる。好適には、カートリッジが、それぞれ第1ストッパおよびいずれか1個の他のストッパにのみ収容部において接触するように、少なくとも1個の他のストッパを備えるか、またはカートリッジを構成する。これにより、使用者が起こし得る使用上の失敗を回避する。
【0011】
好適には、収容部の側面を、ヘッドプレートとストッパプレートとの間に延在する側壁によって画定し、少なくとも1個の他のストッパを、収容部の一方の側壁に設けることにより、絞り出すべき物質の特性に適合させてカートリッジを簡単な形状に構成できる。
【0012】
好適には、少なくとも1個の他のストッパを側壁に沿って摺動可能とすることにより、絞り出し装置を種々の長さに構成したカートリッジに簡単に適合できる。
【0013】
好適には、少なくとも1個の他のストッパを取り外し可能に収容部に設けることにより、絞り出し機構を種々の形状を有するカートリッジに簡単に適合させることができる。少なくとも1個の他のストッパをばね素子として構成する場合、このばね素子を好適には、収容部を画定する部分にクリップして固定する。
【0014】
次に、図面につき本発明の好適な実施例を説明する。原則として、図において同一部材は同一符号で示す。
【実施例】
【0015】
図1〜図4には、物質を収容したカートリッジ26のための絞り出し装置11を示す。この絞り出し装置11は、2個のピストンロッド13を備えた絞り出し機構12およびカートリッジ26のための収容部16を有する。このカートリッジ26は、第1収容空間28、第2収容空間29、および第3収容空間30を有する。第1収容空間28には絞り出すべき多成分系物質の成分Aを収容する。収容空間29および30には、それぞれ絞り出すべき多成分系物質の成分Bを収容し、ただし、2個の収容空間29および30は収容容積が異なるものとする。図3に示すカートリッジ26の構成では、物質を例えば成分Aと成分Bとの比率を3:1で絞り出す。図4に示すカートリッジ26の配置では、物質を例えば成分Aと成分Bとの比率を5:1で絞り出す。
【0016】
絞り出し装置11の収容部16を、前面においてヘッドプレート17、後面においてストッパプレート18、および側面においてヘッドプレート17とストッパプレート18との間に延在する側壁19および20によって画定する。ヘッド板17にはカートリッジ26の混合ハウジング27のための収容部を設け、この収容部は、カートリッジ26を保持するための第1ストッパ21とする。ストッパプレート18の領域には、側壁20にカートリッジ26を保持するための第2ストッパ22を設ける。第1ストッパ21および第2ストッパ22によってカートリッジ26を収容部16内で第1姿勢または第1の向きにして保持する。
【0017】
側壁20における、第2ストッパ22とストッパプレート18との間の部分に、カートリッジ26のための、他の第3ストッパ23を設ける。第1ストッパ21および他の第3ストッパ23によってカートリッジ26を収容部16内で第2姿勢または第2の向きにして保持する。側壁19の内側には保持素子15を、装填した状態におけるカートリッジ26の固定手段として設ける。
【0018】
他の、第3ストッパ23をばね素子とし、このばね素子によって側壁20の側方端縁を包囲し、側壁20を挟み込むように所定の位置に取り付ける。他の、第3ストッパ23を取り外し可能に収容部16に備え、側壁20に沿って摺動可能とする。カートリッジ26を適切に収容部16内に装填するとき、第3ストッパ23の自由部分24がカートリッジ26の壁部分における、第3収容空間30を包囲する部分に接触する。図1に示すように、第2収容空間29の長手方向長さを第3収容空間30よりも短いものとする。これにより、および第3ストッパ23を第2ストッパ22とストッパ板18との間に備えることにより、第2収容空間29を包囲する壁部分が、カートリッジ26を第1姿勢にして装填する際に第3ストッパ23に接触しないことを保証する
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の絞り出し装置の、カートリッジを装填した状態における側面図である。
【図2】カートリッジを装填していない状態における、絞り出し装置の収容部の概要を示す頂面図である。
【図3】カートリッジを第1姿勢にして装填した状態における、図2に示すIII-III線上の横断面図である。
【図4】カートリッジを第2姿勢にして装填した状態における、図3と同様の横断面図である。
【符号の説明】
【0020】
11 絞り出し装置
12 絞り出し機構
13 ピストンロッド
15 保持素子
16 収容部
17 ヘッドプレート
18 ストッパプレート
19 側壁
20 側壁
21 第1ストッパ
22 第2ストッパ
23 ばね素子
24 自由部分
26 カートリッジ
27 混合ハウジング
28 第1収容空間
29 第2収容空間
30 第3収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質を収容したカートリッジ(26)のための絞り出し装置であって、絞り出し機構(12)およびカートリッジ(26)のための収容部(16)を有し、
収容部(16)を、前面においてヘッドプレート(17)、後面においてストッパプレート(18)によって画定し、
ヘッドプレート(17)に第1ストッパ(21)を、ストッパプレート(18)の領域には第2ストッパ(22)を設けることによりカートリッジ(26)を第1姿勢にした状態で保持し、
カートリッジ(26)を他の姿勢にして保持する少なくとも1個の他のストッパ(23)を設けたことを特徴とする絞り出し装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、少なくとも1個の他のストッパ(23)をばね素子とした絞り出し装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の装置において、収容部(16)の側面を、ヘッドプレート(17)とストッパプレート(18)との間に延在する側壁(19;20)によって画定し、少なくとも1個の他のストッパ(23)を収容部(16)の一方の側壁(20)に設けた絞り出し装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、少なくとも1個の他のスットパ(23)を、側壁(20)に沿って摺動可能とした絞り出し装置。
【請求項5】
請求項1〜4記載の装置において、少なくとも1個の他のストッパ(23)を取り外し可能に収容部(16)に設けた絞り出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−101352(P2009−101352A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267631(P2008−267631)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(591010170)ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト (339)
【Fターム(参考)】