絡石藤とイチヤクソウの混合抽出物を含有する炎症性疾患の予防及び/又は治療用医薬組成物
本発明は、有効成分として絡石藤(Trachelospermi caulis)とイチヤクソウ(Pyrola japonica)の生薬混合抽出物を含有する炎症性疾患の予防及び治療用医薬組成物に関する。更に詳しくは、本発明の医薬組成物は、所定比で混合された絡石藤とイチヤクソウの生薬混合抽出物を含有することで、1種の生薬から製剤されたものに比べて、鎮痛効果、急性炎症抑制効果、炎症を含む因子と係る酵素分泌の抑制効果、及びNO、iNOSなどの生成抑制効果が優れており、それ故、関節炎などの炎症性疾患の予防及び治療に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分として絡石藤(Trachelospermi caulis)とイチヤクソウ(一薬草、Pyrola japonica)の生薬混合抽出物を含有する炎症性疾患の予防及び/又は治療用医薬組成物に関する。更に詳しくは、本発明の医薬組成物は、所定比で混合された絡石藤とイチヤクソウの生薬混合抽出物を含有することで、1種の生薬から製剤されたものに比べて、鎮痛効果、急性炎症抑制効果、炎症を含む因子と係る酵素分泌の抑制効果、及びNO、iNOSなどの生成抑制効果が優れており、それ故、関節炎などの炎症性疾患の予防及び治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
関節炎は、細菌感染や外傷により関節内で生じた炎症性変化に関連する疾病の総称である。このような関節炎は大きく急性関節炎と慢性関節炎の2つに分類される。
【0003】
急性関節炎は次のようにさらに分類することができる。(1)漿液性関節炎:通常外傷により生じるが、原因不明なものもあり、一般的に1つの関節だけに起きる。(2)漿液線維素性関節炎:急性関節リウマチ関節炎と同時に起き、関節腔内に混濁した滲出液が溜まる。これは偽膜の生成により炎症が治まっても運動障害を引き起こし得る。(3)化膿性関節炎:関節の開放創、または淋疾、腸チフス、しょう紅熱及び敗血症のような伝染病で多発性関節炎が起きる。生後1〜2ヶ月の乳児は、治療不能の骨の損傷により脱臼に発展し得る。成人はしばしば、化膿部がつぶれて膿が関節に入り骨膜骨髄炎に発展するが、これを2次化膿関節炎と言う。
【0004】
慢性関節炎は次のようにさらに分類することができる。
(1)特殊型炎症:通常、結核性関節炎または梅毒性関節炎、もしくは中年男性に多く発生する尿酸の代謝障害により起こる通風性関節炎と関連する。
(2)多発性関節炎:慢性関節リウマチが大部分である。これは、急性漿液性関節炎から移行したり、肺炎、梅毒及び淋疾の過程で多発性関節炎として起こったり、または敗血症の1種であることもある。その他に、スティル病もこの範疇に属する。
(3)変形性関節炎:通常退行性の老化過程または外傷により起きる。
(4)血友病性関節炎:血友病患者のうち関節内の出血により発生する。
【0005】
また、変性性関節炎は「骨関節炎」とも呼ばれる。変性による関節軟骨の変化により生じる局部的関節炎であり、主に中年または高齢者に発生する。局部的関節炎の主要因は老化であり、55〜65歳の年齢層の約85%に発生する。男性より女性に多く表れ、更に深刻である。更に、肥満の人に正常な健康の人より2倍ほど多く発生し、特に、体重がかかる脚の軟骨に表れ、例えば、股関節、膝関節、足首関節などに表れる。関節痛は一般的に、関節を激しく動かした後、または夕方に発生し、休息すると症状は改善する。
朝に感じる初期硬直は、約5〜10分間体を動かすと、簡単になくなる。症状が深刻であったり、進行した場合、動くたびに関節からポキッという音がし、更に深刻な場合、関節の動きが限定される。時折、体重に耐える関節、特に膝関節は、一時的に全く使えなくなった後、特別な治療なく自発的に症状が改善されることがよくある。一般的に、60歳以上の女性の約35%及び男性の約15%で、変性関節炎と関連する症状が観察される。症状を改善させるための最適な治療法は、規則的な運動または水泳をすることであり、各自に適した程度行い、運動を助けるための補助器具を使用することができる。症状の治療薬の例としては、抗消炎鎮痛剤、副腎皮質ホルモン剤、軟骨保護剤、関節内への潤滑剤投与手術などがある。前述した関節炎に代表される各種炎症性疾患の治療のために、多くの薬剤が開発されている。
【0006】
本発明は、生薬抽出物を含有する医薬組成物に関し、合成薬品による副作用の恐れを排除することができる。実際、本発明の生薬組成物を含有する生薬の単回投与毒性実験によりその安全性が確認された。
【0007】
本発明の生薬組成物は、絡石藤及びイチヤクソウの抽出物を含有する。絡石藤は、キョウチクトウ(夾竹桃)科(Apocynaceae)に属するテイカカズラ(定家葛)、及びツキヌキニンドウ(突抜忍冬)とも呼ばれ、5メートルの高さまで育つ。花びらは5つに深く分岐し、5〜6月に風車の形をした白い花が咲き、とても良い香りを持つ。果実は9〜11月頃に実り、2つの長い果実は漢字の人という字を想像させ、しばしば腕輪のように丸い円形を作る。実際、絡石藤は韓国の南部地方の海岸、山麓、または荒地に育ち、特に、岩石、壁、またはその他の木や植物に巻きつきながら育つ。絡石藤が多い所では、その他の種類の草が育つことができず、四方が絡石藤で覆われている所もある。北朝鮮で発行された「東医学辞典」によると、絡石藤はテイカカズラの茎と葉を乾かしたものである。味は苦く、東洋医学の観点からその性質は冷たい。心経絡、肝経絡、及び腎経絡に作用する。病原因子と混ざり合った風湿を排除し、経絡をスムーズに通すようにする。一方、麻痺症候群、四肢痙攣、腰痛、関節痛、扁桃炎、及び発疹を治療するのに有用である。
【0008】
絡石藤の有効成分は、アクチイン(arctiin)、アクチゲニン(arctigenin)、トラケロサイド(tracheloside)、マテレシノサイド(matairesinoside)、シマロース(cymarose)などである。これらは血管拡張作用及び降圧作用を有することが知られている[非特許文献1]。
【0009】
イチヤクソウは、イチヤクソウ(Pyrola japonica Klenze ex Alefeld)科に属する常緑多年草である。黄白色または白色の花が総状花序に6〜7月に花茎の先に咲き、果実はさく果で8月に熟す。葉と茎は止血剤及び解毒剤として使用される。有効成分として、アルブチン(arbutin)とメチルアルブチン(methylarbutine)が約1%含有しており、ホモアルブチン、ケツセチン、ウルソル酸、オレアノール酸などを含む。一般的に、高血圧及び関節痛の治療に有用されることが知られている[非特許文献2]。
【0010】
しかし、生薬混合抽出物を含有する薬剤の効能についての研究は未だない。また、東医宝鑑、郷薬集成方、広済秘笈などの薬草書や関連文献は、東洋医学の観点からの生薬の効能及び煎じ薬を製剤する方法を簡潔に言及しているのみである。更に、生薬混合剤の煎じ薬の処方法に関する報告はない。実際に、前記方法を使用して抽出された有効成分の効能についての報告はない。また、動物モデルを使用した前臨床試験または抗炎症効果及び鎮痛効果のような薬学効果に関する知見はない。
【0011】
本発明の背景技術に開示された情報は、発明の背景技術の理解を高めるだけのものであり、この情報が先行技術をなす提案または認識として受け入れられてはならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Herb Medicinal Pharmacology, J.P. Lim, p155-156(2003)
【非特許文献2】The Encyclopedia of Chinese Crude Drug, J.H. Park, p139-140(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
より科学的で客観的なデータを提供することで前述した問題を解決し、抽出効能を最適化するために集中的に努力した結果、本発明の発明者らは、適合質量比で混合し、疼痛と急性炎症の治療に優れた絡石藤とイチヤクソウの2種の生薬抽出物を含有する医薬組成物を発見した。
【0014】
従って、本発明の目的は、有効成分として絡石藤とイチヤクソウ(一薬草)の生薬混合抽出物を含有する炎症疾患の予防及び治療用医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は絡石藤とイチヤクソウとの生薬混合抽出物を含有する炎症疾患の予防及び治療用医薬組成物に関する。
【0016】
本発明を更に詳しく説明すると下記の通りである。
【0017】
本発明は、所定範囲で混合された絡石藤とイチヤクソウの生薬混合抽出物を含有し、1種の生薬から製剤されたものに比べて、鎮痛効果、急性炎症抑制効果、炎症を含む因子と係る酵素分泌の抑制効果、及びNO、iNOSなどの生成抑制効果が優れており、それ故、関節炎などの炎症性疾患の予防及び治療に有用である医薬組成物に関する。
【0018】
絡石藤とイチヤクソウの抽出物を含有する混合生薬組成物は、水またはアルコール水溶液を使用して次の方法を利用して抽出された。
【0019】
絡石藤とイチヤクソウの生薬を細かく刻み、1:1〜1:15の質量比、好ましくは1:1〜1:5の質量比で混合し、混合生薬の総質量に対して10〜15倍の水、アルコールまたはアルコール水溶液を添加した後、抽出する。前記抽出により得られたろ液を層分離して、得られたアルコール層を60〜80℃で減圧濃縮する。濃縮段階の間、得られた抽出物を共沸濃縮して、凍結乾燥し、最終的に粉末抽出物の形体で製造される。
【0020】
本発明の抽出方法を更に詳しく説明すると下記の通りである。
【0021】
絡石藤とイチヤクソウの元生薬は、1:1〜1:15の質量比、好ましくは1:1〜1:5の質量比で混合され、水、アルコールまたはアルコール水溶液を添加した後、2〜3時間、2〜5回繰り返し抽出する。得られた抽出物を室温で徐々に冷却し、遠心分離を通したろ過により残渣と分離する。残渣に、混合生薬の総質量に対して10〜15倍の水、アルコールまたはアルコール水溶液を加えた後、加熱して、再抽出した後、ろ過して、以前のろ液と混合した後、再ろ過する。再ろ過は、水、アルコールまたはアルコール水溶液を残渣に加えて行われた後、ろ過することで、抽出効率を高めることができる。ここで、水、アルコールまたはアルコール水溶液の量が混合生薬の総質量の10倍未満の場合、抽出物の溶解度が下がるため、抽出効率が低下する。一方、水、アルコールまたはアルコール水溶液の量が混合生薬の総質量の15倍を超過すると、使用されるアルコールの量が増加し、減圧濃縮時間が長くなるため、非経済的であり、扱いに問題が生じる。
【0022】
本発明のアルコールとして、脂肪族及び芳香族アルコール全て使用することができ、好ましくは脂肪族アルコール、更に好ましくは炭素数1〜6の低級アルコールが使用され得る。
【0023】
更に、各段階別抽出効率を分析した結果、1次抽出に加えて再抽出を行うことにより、全体抽出量の約80〜90%の収率を得ることできることが分かったが、3次以上の追加抽出は収率の増加があまりないため、経済的ではない。
【0024】
前述したように、水、アルコールまたはアルコール水溶液で抽出して得られた抽出液は、ろ過、濃縮された後、ろ液中に含まれる不必要なタンパク質、多糖類及び脂肪酸の不純物が精製される。本発明では、ろ液と同量のアルコール水溶液を溶媒として使用して、2〜5回層分離を実施し、溶媒分画を得ることで、前記不純物が除去される。
【0025】
前記アルコールは炭素数1〜6のアルコール、更に好ましくは30%エタノールであることが好ましい。低級アルコール水溶液の量がろ液に比べて少ない場合、脂肪酸のような不必要な成分により微粒子が形成されるため、層分離が円滑に行われず、また、有効成分の抽出含量が低くなるため、経済的ではない。
【0026】
層分離後に得られた抽出液は、60〜80℃で減圧濃縮して、残っている溶媒を除去する。従って、得られた濃縮物に、減圧濃縮過程で集めたアルコールを加えて、500〜1000rpmで遠心分離したろ液を加え、再び減圧濃縮する。ここで、減圧濃縮温度が60℃未満の場合、溶媒が完全に除去され得ない。一方、前記温度が80℃を超過すると、濃縮物の安定性に問題が発生する。前記濃縮が500rpm未満のとき、アルコールからの濃縮物の分離が困難となる。
【0027】
一方、1,000rpmを超過すると、濃縮物の安定性に問題が生じる。
【0028】
従って、得られた濃縮物を60〜80℃、0.08〜0.3paで乾燥し、30〜80メッシュのふるいにかけて滅菌し、粉末状の絡石藤とイチヤクソウの混合抽出物が最終的に得られる。それ故、得られた混合抽出物は、1種の生薬から得られたものと比べて、関節炎及び疼痛の治療効果が優れており、絡石藤とイチヤクソウを含有する混合生薬は炎症疾患の予防及び治療に有用である。
【0029】
本発明で使用される前記生薬は、中国の河南省長沙市で採取された。前記混合生薬は、絡石藤の有効成分であるアクチインを0.5〜4.3 質量%含有し、アクチインは生体指標として使用される。アクチインの分子式はC27H34O11である。
【0030】
また、本発明は、前記粉末状抽出物を有効成分として含有する薬剤を、変性性関節炎および疼痛/炎症の治療薬として使用する方法に関する。絡石藤とイチヤクソウ抽出物から抽出された有効生理活性物質は、HPLCを利用して分析された。その結果、アクチインとアルクチゲニンが薬剤に含有され、アクチインとアルクチゲニンはTNF−α阻害活性を有することが明らかになった[非特許文献3](Int Immunopharmacol. 2004 Oct; 4(10-11):1419-29, Arctigenin, a phenylpropanoid dibenzylbutyrolactone lignan, inhibits MAP kinases and AP-1 activation via potent MKK inhibition: the role in TNF-α inhibition)。
【0031】
イチヤクソウの主成分であるアルブチンは、炎症誘発因子であるNF−悔κBの活性を抑制することで知られている[非特許文献4](J Dermatol Sci. 2003 May; 31(3):193-201, Downregulation of NF-κB activation in human keratinocytes by melanogenic inhibitors)。
【0032】
本発明による炎症疾患の治療剤の場合、生体指標としてアクチインの含量は0.5〜1.1質量%含有されているときに目的とする治療効果が得られる。例えば、前記アクチインの含量が0.5質量%未満の場合、関節炎などの治療効果が大きく低下する。アクチインの含量に特別な上限はないが、前記範囲を超過するアクチインが含有されても、目的とする治療効果は増加しないだけでなく、その技術的及び経済的側面で好ましくない。従って、アクチイン含量は約0.8〜1.0質量%であることが好ましい。
【0033】
本発明の生体指標であるアクチインは、炎症疾患の治療剤の必須成分であり、一定量が含有されるとき、相乗効果を発揮して優れた薬効を表す。更に、治療剤の有効成分だけでなく、その他の成分にも、炎症疾患を治療する優れた効果が含まれている。
【0034】
本発明の炎症疾患の治療に有用な絡石藤抽出物の製造方法は、次の通りである。
【0035】
本発明の絡石藤とイチヤクソウの混合抽出物を含有する複合薬剤は、通常の方法を利用して、錠剤、カプセル剤、注射剤などに剤形することができる。錠剤製造時に基剤として使用されるラクトース、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウムなどの混合量と、絡石藤とイチヤクソウの混合抽出物の量を1:1〜1:15の質量比で使用され、製造された錠剤は、関節炎のような炎症疾患の治療に効果的である。
【0036】
生薬抽出物自体は治療剤として使用されるが、担体、賦形剤、希釈剤 などと一般的に混合され、粉末、顆粒、カプセル剤または注射剤に剤形される。本発明の絡石藤抽出物は、食用及び薬用として使用されてきた。投薬量に関しては特別な限定はないが、体内吸収度、体重、年齢、性別、健康状態、患者の食事、投与時間、投与方法、排出率、疾患の重傷度などによって異なる。一般的に、体重1kg当り生薬混合抽出物を約10〜1000mg、好ましくは50〜500mg投与することが好ましい。
【0037】
従って、本発明の有効成分を含む組成物はその有効範囲を考慮して製造しなければならず、このように剤形化された単位投与製剤の投与は、必要に応じて監視される。更に、特別な投与は専門家の判断と患者の要求に応じて使用されるか、一定間隔で数回投与され得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例により製造された混合生薬抽出物のHPLCクロマトグラムである。
【図2】本発明のカラギーナンにより誘導された脚浮腫の増加率を比較したデータを表すグラフである。
【図3】本発明のFCAにより誘導された慢性炎症の増加率を比較したデータを表すグラフである。
【図4】本発明の実施例により製造されたiNOSを使用したウエスタンブロット法により得たバンドの結果を表す。
【図5】本発明のLPSによるマクロファージのNO発現量の減少を表す。
【図6】本発明の実施例により製造されたTNF−α抗体を使用したウエスタンブロット法により得たバンドの結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の好ましい実施形態について詳しく説明するが、本発明の範囲をこれら実施形態により限定されるものではない。
【0040】
参考例1:絡石藤抽出物の製造
絡石藤を減菌水で洗浄して乾燥させ、生薬の質量に対して5〜8倍の量の30%エタノールを添加した後、攪拌して2時間単位で2回熱湯抽出をした。前記抽出物を室温まで冷却し、遠心濾過を行って不純物を除去した。濾液を混合して60〜80℃で減圧濃縮した。濃縮物をエタノール分画から回収されたエタノールと懸濁し、1000rpmで遠心濾過を行い、60℃で減圧濃縮し、0.08paの圧力下で乾燥させた後、80メッシュのふるいでふるいをかけて滅菌した。得られた絡石藤抽出物をHPLCにより分析し、アクチイン3.0〜6.0質量%が含まれていることが分かった。
【0041】
参考例2:イチヤクソウ抽出物の製造
イチヤクソウを減菌水で洗浄して乾燥させ、生薬の質量に対して5〜8倍の量の30%エタノールを添加した後、攪拌して2時間単位で2回熱湯抽出をした。前記抽出物を室温まで冷却し、遠心濾過を行って不純物を除去した。濾液を混合して60〜80℃で減圧濃縮した。濃縮物をエタノール分画から回収されたエタノールと懸濁し、1000rpm で遠心濾過を行い、60℃で減圧濃縮し、0.08paの圧力下で乾燥させた後、80メッシュのふるいでふるいをかけて滅菌した。得られたイチヤクソウ抽出物をHPLCにより分析し、アルブチン0.1〜1.0質量%が含まれていることが分かった。
【0042】
参考例3:混合生薬抽出物の製造
同量の絡石藤とイチヤクソウを減菌水で洗浄して乾燥させ、生薬の質量に対して5〜8倍の量の30%エタノールを添加した後、攪拌して2時間単位で2回熱湯抽出をした。前記抽出物を室温まで冷却し、遠心濾過を行って不純物を除去した。濾液を混合して60〜80℃で減圧濃縮した。濃縮物をエタノール分画から回収されたエタノールと懸濁し、1000rpmで遠心濾過を行い、60℃で減圧濃縮し、0.08paの圧力下で乾燥させた後、80メッシュのふるいでふるいをかけて滅菌した。得られた混合生薬組成物をHPLCにより分析し、その結果を表1に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例1:TPA誘導によるマウスの耳浮腫試験
前記参考例3で得られた混合生薬抽出物に対するTPA誘導によるマウスの耳浮腫への効果を調べた。6mmパンチを利用して計測した耳の重さをその結果値として使用した。その結果を下記表2に示す。
【0045】
[実験方法]
生後7週のICRマウスを各実験群に分離し、Joins(登録商標)(SKケミカル、韓国)400mg/kg及び200mg/kg、絡石藤抽出物400mg/kg及び200mg/kg、イチヤクソウ抽出物400mg/kg及び200mg/kgと、絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物400mg/kg、200mg/kg、20mg/kg及び2mg/kgを各々経口投与した。経口投与1時間後、炎症誘発剤であるTPA(2.5μg/20μL)をアセトンに溶解した後、各マウスの右耳に均等に塗り、浮腫を誘発させた。実験の間、観察者は実験体を後方から完全に固定し、2次観察者がマイクロピペットを用いて浮腫誘導物質で各マウスの耳を刺激した。4時間後、耳浮腫が各実験群から観察された。頚椎脱臼を通してマウスを犠牲にした後、浮腫の重さを6mmパンチを利用して計測した。
【0046】
【表2】
【0047】
前記表2に示すように、本発明の混合生薬抽出物はTPA誘導による耳浮腫に対して優れた抑制効果を示した。特に、使用した混合生薬抽出物の濃度が400mg/kgのときに、浮腫抑制率が54%で最高であった。
【0048】
実施例2:アラキドン酸誘導によるマウスの耳浮腫試験
前記参考例3で得られた混合生薬抽出物に対するTPA誘導によるマウスの耳浮腫への効果を調べた。その結果を下記表3及び4に示す。
【0049】
[実験方法]
生後7週のICRマウスを各実験群に分離し、Joins(登録商標)(SKケミカル、韓国)400mg/kg及び200mg/kg、絡石藤抽出物400mg/kg及び200mg/kg、イチヤクソウ抽出物400mg/kg及び200mg/kgと、絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物400mg/kg、200mg/kg、20mg/kg及び2mg/kgを各々経口投与した。経口投与1時間後、炎症誘発剤であるTPA(2mg/20μL)をアセトンに溶解した後、各マウスの右耳に均等に塗り、浮腫を誘発させた。実験の間、観察者は実験体を後方から完全に固定し、2次観察者がマイクロピペットを用いて浮腫誘導物質で各マウスの耳を刺激した。1時間後、耳浮腫が各実験群から観察された。頚椎脱臼を通してマウスを犠牲にし、耳の厚さをマイクロメータを利用して測定した後、浮腫の重さを6mmパンチを利用して計測した。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
前記表3及び4に示すように、本発明の混合生薬抽出物はアラキドン酸誘導による耳浮腫に対して優れた抑制効果を示した。特に、使用した生薬抽出物の濃度が400mg/kgのときに、浮腫抑制率は各々64%及び56%で最高であった。
【0053】
実施例3:λカラギーナン誘導によるラットの耳浮腫試験
前記参考例3で得られた混合生薬抽出物に対する急性炎症への効果を調べた。その結果を下記表5及び図2に示す。
【0054】
[実験方法]
体重約200gのSDラットに、Joins(登録商標)(SKケミカル、韓国)400mg/kg、絡石藤抽出物400mg/kg及び200mg/kg、イチヤクソウ抽出物200mg/kg及び400mg/kgと、絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物2mg/kg、20mg/kg、200mg/kg及び400mg/kgを各々経口投与した。その後、1%カラギーナン生理食塩水100μLを左側の脚に注射して、脚浮腫を誘発させた。脚浮腫は、 マウス・ラット用足容積測定装置(Plethysmometer7140、Ugo Basile社)を利用して4時間後の脚の容積を測定して分析した(N=7)。
【0055】
【0056】
前記表5及び図2に示すように、本発明の混合生薬抽出物は急性関節炎に対して優れた治療効果を示した。特に、使用した混合生薬抽出物の濃度が400mg/kgのときに治療効果が最も優れていた。
【0057】
実施例4:FCA誘発によるラットの関節炎
前記参考例3で得られた混合生薬抽出物に対する慢性炎症への効果を調べた。その結果を下記図3に示す。
【0058】
[実験方法]
生後7週のSDマウスを各実験群に分離し、経口投与のための投与量を計量するために、体重を測定した。その次、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を1mg/mL含有する完全フロイントアジュバント試薬0.1mL/paw(シグマ社)を29Gシリンジを利用して、後脚の裏の中央に皮内注射した。アジュバンド投与後、試験物質を21日間、1日1回同一時間帯に経口投与し、脚浮腫の程度をマウス・ラット用足容積測定装置(Ugo Basile社)を利用して、3日に1度測定した後、カラギーナンにより誘発する脚浮腫法と同様に、浮腫増加率を算出し、対照群と比較した。陽性対照群として、ジクロフェナク5mg/kgが使用された。
【0059】
実施例5:酢酸誘発によるマウスの血管透過度
前記参考例3で得られた混合生薬抽出物の血管透過度に対する抑制効果を調べた。その結果を下記表6に示す。
【0060】
[実験方法]
生後7週のICRマウスを各実験群に分離し、絡石藤抽出物20mg/kg及び200mg/kg、イチヤクソウ抽出物20mg/kg及び200mg/kgと、絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物2mg/kg、20mg/kg及び200mg/kg b.wt.各々を濃度が0.1mL/10g b.wt.となるように蒸留水に溶かした後、針(sonde)を使用して経口投与した。
【0061】
投与容積は、実験当日に測定した体重を基準にして算出され、対照群は、調剤用溶媒である蒸留水を0.1mL/10g b.wt.の濃度で経口投与した。フェニルブタゾンは50mg/kg b.wt.の容量で0.5%メチルセルロースに懸濁した後、経口投与した。
【0062】
実験前、12時間絶食させたオスのICRマウスに、ホイットル(1964)の方法によって試験物質を投与した。経口投与30分後、2.5%エバンスブルー溶液(0.1mL/10g b.wt.)を尾静脈に投与した。エバンブルー溶液投与20分後、0.6生理食塩水に溶かした酢酸を0.1mL/10g b.wt.の濃度で腹腔内注射して、血管透過性の亢進を誘導した。酢酸投与20分後、各マウスを頸部脱臼させ、生理食塩水5mLを腹腔に加えて、軽く振った。腹腔から洗浄液を取った後、10分間2,000rpmで遠心分離し、分光光度計を使用して630nmで上澄液の光吸度を測定することで、腹腔内に流出されたエバンブルー溶液の量を算出した。フェニルブタゾン(50mg/kg b.wt.)とインドメタシン(1mg/kg b.wt.)を陽性対照群として使用した。
【0063】
【表5】
【0064】
前記表6に示されるように、本発明の混合生薬抽出物は、その他の対照群に比べて優れた抑制活性を表した。特に、使用された混合生薬抽出物の濃度が200mg/kgのとき、容量依存的に酢酸で誘導された血管透過性に対して高い抑制効果が観察された。更に、使用された混合生薬抽出物の濃度が200mg/kgのとき、フェニルブタゾン及びインドメタシンのような陽性対照群に比べて、酢酸で誘導された血管透過性に対して優れた抑制効果が観察されたことが分かった。
【0065】
実施例6:酢酸誘発によるマウスのライジング反応
前記参考例3で得られた混合生薬抽出物の鎮痛効果を調べた。その結果を下記表7に示す。
【0066】
[実験方法]
生後7週のICRマウスを各実験群に分離し、Joins(登録商標)(SKケミカル、韓国)400mg/kg及び200mg/kg、絡石藤抽出物400mg/kg及び200mg/kg、イチヤクソウ抽出物400mg/kg及び200mg/kgと、絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物400mg/kg、200mg/kg、20mg/kg及び2mg/kgを各々経口投与した。経口投与1時間後、各マウスに0.7%酢酸を腹腔内投与した(0.1mL/10g)。腹腔内投与10分後、ストレッチング(ライジング:背中を伸ばしたり後足を完全に伸ばすこと)方法で観察し、その結果を痛覚指標として使用した。
【0067】
【表6】
【0068】
前記表7に示されるように、本発明の混合生薬抽出物は、対照群と比べてライジング数が少ないことが分かった。特に、使用された混合生薬抽出物の濃度が400mg/kgのとき、高い痛覚効果が観察された。
【0069】
実施例7:混合生薬のNO、iNOS及びTNF−α生成に対する効果
前記参考例3で得られた混合生薬抽出物の炎症関連因子治療に対する効果を調べた。
【0070】
[実験方法]
マウス由来マクロファージであるRaw264.7細胞株をLPS(1μg/mL)で処理した。処理24時間後、培養液を集めて、酵素法及びラジカルクロマトグラフィーを通して分析し、LPSで処理した。4時間後、細胞を溶解させた後、iNOS抗体を利用したウエスタンブロット法により、内因性炎症誘発分子である一酸化窒素(NO)、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)及びTNF−αの発現量に対する絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物の効果を調べた。
【0071】
NOは、24時間培養液100μLを集めた後、グリース溶液100μLと混合し、OD540nmでの光吸度を測定した。
【0072】
iNOS及びTNF−αは、Raw264.7細胞株をLPSで処理し(1μg/mL)、処理4時間後、前記細胞を溶解させて、溶解された総タンパク質を集めた。前記タンパク質を電気泳動により分離した後、ウエスタンブロット法によりナイロン膜に転換し、タンパク質の量をiNOS及びTNF−α抗体を使用して分析した。
【0073】
図4はiNOSの発現量の抑制を表し、図5はLPSによりマクロファージ内のNO生成抑制を表し、そして図6はTNF−αの発現抑制を表すため、本発明の混合生薬抽出物は抗炎症効果が優れていることを確認した。
【0074】
実施例8:毒性試験
参考例3で得られた絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物1gの反復投与よる毒性を、16時間絶食させた生後4〜5週のICRマウス(群当り5匹)を使用して調べた。0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC)に溶解した前記生薬抽出物1gを5日間経口投与した。その結果、全てのマウスが生存し、臓器損傷などの異常は観察されなかった。
【0075】
製造例1:錠剤の製造
下に記載の組成にて絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物を含む経口投与用錠剤を湿式顆粒法または乾式顆粒法を利用して製造した。
[組成]
絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物 200mg
軽質無水ケイ酸(light anhydrous silicic acid) 10mg
ステアリン酸マグネシウム(magnesium stearate) 2mg
微細結晶セルロース(microcrystalline cellulose) 50mg
デンプングリコール酸ナトリウム(sodium starch glycolate) 25mg
ラクトース(lactose) 101mg
ポビドン(povidone) 12mg
無水エタノール(anhydrous ethanol) 適量
【0076】
製造例2:軟膏剤の製造
下に記載の組成にて絡石藤抽出物を含む軟膏剤を製造した。
[組成]
絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物 5g
パルミチン酸セチル(cetyl palmitate) 20g
セタノール(cetanol) 40g
ステアリル・アルコール(stearyl alcohol) 40g
ミリスチン酸イソプロピル(isopropyl myristate) 80g
モノステアリン酸ソルビタン(sorbitan monostearate 20g
ポリソルベート(polysolvate) 60g
パラオキシ安息香酸プロピル(propyl p-oxybenzoate) 1g
パラオキシ安息香酸メチル(methyl p-oxybenzoate) 1g
リン酸及び精製水 適量
【0077】
製造例3:注射剤の製造
下に記載の組成にて絡石藤抽出物を含む注射剤を製造した。
[組成]
絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物 100mg
マンニトール(mannitol) 180mg
第二リン酸ナトリウム(sodium phosphate dibasic) 25mg
注射用精製水 2974mg
【0078】
製造例4:経皮剤の製造
下に記載の組成にて絡石藤抽出物を含む経皮剤を製造した。
[組成]
絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物 0.4g
ポリアクリル酸塩(poly acrylate) 1.3g
グリセリン(glycerin) 3.6g
水酸化アルミニウム(aluminium hydroxide) 0.004g
メチルパラベン(methyl parabene) 0.2g
アクリル接着溶液(acrylic adhesive solution) 14mL
【産業上の利用可能性】
【0079】
前述したように、本発明の絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物は、疼痛、急性炎症、慢性炎症及び急性浮腫、血管透過性及び炎症関連因子を治療するのに抑制効果が優れているため、炎症疾患の予防及び治療に効果的な成分及びその含量を調節することにより、絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物の規格化を達成することができる。
【0080】
更に、本発明の絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物は、アクチインを生体指標として、生体指標の含量を調節することで炎症疾患の予防及び治療用薬剤を製造することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分として絡石藤(Trachelospermi caulis)とイチヤクソウ(一薬草、Pyrola japonica)の生薬混合抽出物を含有する炎症性疾患の予防及び/又は治療用医薬組成物に関する。更に詳しくは、本発明の医薬組成物は、所定比で混合された絡石藤とイチヤクソウの生薬混合抽出物を含有することで、1種の生薬から製剤されたものに比べて、鎮痛効果、急性炎症抑制効果、炎症を含む因子と係る酵素分泌の抑制効果、及びNO、iNOSなどの生成抑制効果が優れており、それ故、関節炎などの炎症性疾患の予防及び治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
関節炎は、細菌感染や外傷により関節内で生じた炎症性変化に関連する疾病の総称である。このような関節炎は大きく急性関節炎と慢性関節炎の2つに分類される。
【0003】
急性関節炎は次のようにさらに分類することができる。(1)漿液性関節炎:通常外傷により生じるが、原因不明なものもあり、一般的に1つの関節だけに起きる。(2)漿液線維素性関節炎:急性関節リウマチ関節炎と同時に起き、関節腔内に混濁した滲出液が溜まる。これは偽膜の生成により炎症が治まっても運動障害を引き起こし得る。(3)化膿性関節炎:関節の開放創、または淋疾、腸チフス、しょう紅熱及び敗血症のような伝染病で多発性関節炎が起きる。生後1〜2ヶ月の乳児は、治療不能の骨の損傷により脱臼に発展し得る。成人はしばしば、化膿部がつぶれて膿が関節に入り骨膜骨髄炎に発展するが、これを2次化膿関節炎と言う。
【0004】
慢性関節炎は次のようにさらに分類することができる。
(1)特殊型炎症:通常、結核性関節炎または梅毒性関節炎、もしくは中年男性に多く発生する尿酸の代謝障害により起こる通風性関節炎と関連する。
(2)多発性関節炎:慢性関節リウマチが大部分である。これは、急性漿液性関節炎から移行したり、肺炎、梅毒及び淋疾の過程で多発性関節炎として起こったり、または敗血症の1種であることもある。その他に、スティル病もこの範疇に属する。
(3)変形性関節炎:通常退行性の老化過程または外傷により起きる。
(4)血友病性関節炎:血友病患者のうち関節内の出血により発生する。
【0005】
また、変性性関節炎は「骨関節炎」とも呼ばれる。変性による関節軟骨の変化により生じる局部的関節炎であり、主に中年または高齢者に発生する。局部的関節炎の主要因は老化であり、55〜65歳の年齢層の約85%に発生する。男性より女性に多く表れ、更に深刻である。更に、肥満の人に正常な健康の人より2倍ほど多く発生し、特に、体重がかかる脚の軟骨に表れ、例えば、股関節、膝関節、足首関節などに表れる。関節痛は一般的に、関節を激しく動かした後、または夕方に発生し、休息すると症状は改善する。
朝に感じる初期硬直は、約5〜10分間体を動かすと、簡単になくなる。症状が深刻であったり、進行した場合、動くたびに関節からポキッという音がし、更に深刻な場合、関節の動きが限定される。時折、体重に耐える関節、特に膝関節は、一時的に全く使えなくなった後、特別な治療なく自発的に症状が改善されることがよくある。一般的に、60歳以上の女性の約35%及び男性の約15%で、変性関節炎と関連する症状が観察される。症状を改善させるための最適な治療法は、規則的な運動または水泳をすることであり、各自に適した程度行い、運動を助けるための補助器具を使用することができる。症状の治療薬の例としては、抗消炎鎮痛剤、副腎皮質ホルモン剤、軟骨保護剤、関節内への潤滑剤投与手術などがある。前述した関節炎に代表される各種炎症性疾患の治療のために、多くの薬剤が開発されている。
【0006】
本発明は、生薬抽出物を含有する医薬組成物に関し、合成薬品による副作用の恐れを排除することができる。実際、本発明の生薬組成物を含有する生薬の単回投与毒性実験によりその安全性が確認された。
【0007】
本発明の生薬組成物は、絡石藤及びイチヤクソウの抽出物を含有する。絡石藤は、キョウチクトウ(夾竹桃)科(Apocynaceae)に属するテイカカズラ(定家葛)、及びツキヌキニンドウ(突抜忍冬)とも呼ばれ、5メートルの高さまで育つ。花びらは5つに深く分岐し、5〜6月に風車の形をした白い花が咲き、とても良い香りを持つ。果実は9〜11月頃に実り、2つの長い果実は漢字の人という字を想像させ、しばしば腕輪のように丸い円形を作る。実際、絡石藤は韓国の南部地方の海岸、山麓、または荒地に育ち、特に、岩石、壁、またはその他の木や植物に巻きつきながら育つ。絡石藤が多い所では、その他の種類の草が育つことができず、四方が絡石藤で覆われている所もある。北朝鮮で発行された「東医学辞典」によると、絡石藤はテイカカズラの茎と葉を乾かしたものである。味は苦く、東洋医学の観点からその性質は冷たい。心経絡、肝経絡、及び腎経絡に作用する。病原因子と混ざり合った風湿を排除し、経絡をスムーズに通すようにする。一方、麻痺症候群、四肢痙攣、腰痛、関節痛、扁桃炎、及び発疹を治療するのに有用である。
【0008】
絡石藤の有効成分は、アクチイン(arctiin)、アクチゲニン(arctigenin)、トラケロサイド(tracheloside)、マテレシノサイド(matairesinoside)、シマロース(cymarose)などである。これらは血管拡張作用及び降圧作用を有することが知られている[非特許文献1]。
【0009】
イチヤクソウは、イチヤクソウ(Pyrola japonica Klenze ex Alefeld)科に属する常緑多年草である。黄白色または白色の花が総状花序に6〜7月に花茎の先に咲き、果実はさく果で8月に熟す。葉と茎は止血剤及び解毒剤として使用される。有効成分として、アルブチン(arbutin)とメチルアルブチン(methylarbutine)が約1%含有しており、ホモアルブチン、ケツセチン、ウルソル酸、オレアノール酸などを含む。一般的に、高血圧及び関節痛の治療に有用されることが知られている[非特許文献2]。
【0010】
しかし、生薬混合抽出物を含有する薬剤の効能についての研究は未だない。また、東医宝鑑、郷薬集成方、広済秘笈などの薬草書や関連文献は、東洋医学の観点からの生薬の効能及び煎じ薬を製剤する方法を簡潔に言及しているのみである。更に、生薬混合剤の煎じ薬の処方法に関する報告はない。実際に、前記方法を使用して抽出された有効成分の効能についての報告はない。また、動物モデルを使用した前臨床試験または抗炎症効果及び鎮痛効果のような薬学効果に関する知見はない。
【0011】
本発明の背景技術に開示された情報は、発明の背景技術の理解を高めるだけのものであり、この情報が先行技術をなす提案または認識として受け入れられてはならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Herb Medicinal Pharmacology, J.P. Lim, p155-156(2003)
【非特許文献2】The Encyclopedia of Chinese Crude Drug, J.H. Park, p139-140(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
より科学的で客観的なデータを提供することで前述した問題を解決し、抽出効能を最適化するために集中的に努力した結果、本発明の発明者らは、適合質量比で混合し、疼痛と急性炎症の治療に優れた絡石藤とイチヤクソウの2種の生薬抽出物を含有する医薬組成物を発見した。
【0014】
従って、本発明の目的は、有効成分として絡石藤とイチヤクソウ(一薬草)の生薬混合抽出物を含有する炎症疾患の予防及び治療用医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は絡石藤とイチヤクソウとの生薬混合抽出物を含有する炎症疾患の予防及び治療用医薬組成物に関する。
【0016】
本発明を更に詳しく説明すると下記の通りである。
【0017】
本発明は、所定範囲で混合された絡石藤とイチヤクソウの生薬混合抽出物を含有し、1種の生薬から製剤されたものに比べて、鎮痛効果、急性炎症抑制効果、炎症を含む因子と係る酵素分泌の抑制効果、及びNO、iNOSなどの生成抑制効果が優れており、それ故、関節炎などの炎症性疾患の予防及び治療に有用である医薬組成物に関する。
【0018】
絡石藤とイチヤクソウの抽出物を含有する混合生薬組成物は、水またはアルコール水溶液を使用して次の方法を利用して抽出された。
【0019】
絡石藤とイチヤクソウの生薬を細かく刻み、1:1〜1:15の質量比、好ましくは1:1〜1:5の質量比で混合し、混合生薬の総質量に対して10〜15倍の水、アルコールまたはアルコール水溶液を添加した後、抽出する。前記抽出により得られたろ液を層分離して、得られたアルコール層を60〜80℃で減圧濃縮する。濃縮段階の間、得られた抽出物を共沸濃縮して、凍結乾燥し、最終的に粉末抽出物の形体で製造される。
【0020】
本発明の抽出方法を更に詳しく説明すると下記の通りである。
【0021】
絡石藤とイチヤクソウの元生薬は、1:1〜1:15の質量比、好ましくは1:1〜1:5の質量比で混合され、水、アルコールまたはアルコール水溶液を添加した後、2〜3時間、2〜5回繰り返し抽出する。得られた抽出物を室温で徐々に冷却し、遠心分離を通したろ過により残渣と分離する。残渣に、混合生薬の総質量に対して10〜15倍の水、アルコールまたはアルコール水溶液を加えた後、加熱して、再抽出した後、ろ過して、以前のろ液と混合した後、再ろ過する。再ろ過は、水、アルコールまたはアルコール水溶液を残渣に加えて行われた後、ろ過することで、抽出効率を高めることができる。ここで、水、アルコールまたはアルコール水溶液の量が混合生薬の総質量の10倍未満の場合、抽出物の溶解度が下がるため、抽出効率が低下する。一方、水、アルコールまたはアルコール水溶液の量が混合生薬の総質量の15倍を超過すると、使用されるアルコールの量が増加し、減圧濃縮時間が長くなるため、非経済的であり、扱いに問題が生じる。
【0022】
本発明のアルコールとして、脂肪族及び芳香族アルコール全て使用することができ、好ましくは脂肪族アルコール、更に好ましくは炭素数1〜6の低級アルコールが使用され得る。
【0023】
更に、各段階別抽出効率を分析した結果、1次抽出に加えて再抽出を行うことにより、全体抽出量の約80〜90%の収率を得ることできることが分かったが、3次以上の追加抽出は収率の増加があまりないため、経済的ではない。
【0024】
前述したように、水、アルコールまたはアルコール水溶液で抽出して得られた抽出液は、ろ過、濃縮された後、ろ液中に含まれる不必要なタンパク質、多糖類及び脂肪酸の不純物が精製される。本発明では、ろ液と同量のアルコール水溶液を溶媒として使用して、2〜5回層分離を実施し、溶媒分画を得ることで、前記不純物が除去される。
【0025】
前記アルコールは炭素数1〜6のアルコール、更に好ましくは30%エタノールであることが好ましい。低級アルコール水溶液の量がろ液に比べて少ない場合、脂肪酸のような不必要な成分により微粒子が形成されるため、層分離が円滑に行われず、また、有効成分の抽出含量が低くなるため、経済的ではない。
【0026】
層分離後に得られた抽出液は、60〜80℃で減圧濃縮して、残っている溶媒を除去する。従って、得られた濃縮物に、減圧濃縮過程で集めたアルコールを加えて、500〜1000rpmで遠心分離したろ液を加え、再び減圧濃縮する。ここで、減圧濃縮温度が60℃未満の場合、溶媒が完全に除去され得ない。一方、前記温度が80℃を超過すると、濃縮物の安定性に問題が発生する。前記濃縮が500rpm未満のとき、アルコールからの濃縮物の分離が困難となる。
【0027】
一方、1,000rpmを超過すると、濃縮物の安定性に問題が生じる。
【0028】
従って、得られた濃縮物を60〜80℃、0.08〜0.3paで乾燥し、30〜80メッシュのふるいにかけて滅菌し、粉末状の絡石藤とイチヤクソウの混合抽出物が最終的に得られる。それ故、得られた混合抽出物は、1種の生薬から得られたものと比べて、関節炎及び疼痛の治療効果が優れており、絡石藤とイチヤクソウを含有する混合生薬は炎症疾患の予防及び治療に有用である。
【0029】
本発明で使用される前記生薬は、中国の河南省長沙市で採取された。前記混合生薬は、絡石藤の有効成分であるアクチインを0.5〜4.3 質量%含有し、アクチインは生体指標として使用される。アクチインの分子式はC27H34O11である。
【0030】
また、本発明は、前記粉末状抽出物を有効成分として含有する薬剤を、変性性関節炎および疼痛/炎症の治療薬として使用する方法に関する。絡石藤とイチヤクソウ抽出物から抽出された有効生理活性物質は、HPLCを利用して分析された。その結果、アクチインとアルクチゲニンが薬剤に含有され、アクチインとアルクチゲニンはTNF−α阻害活性を有することが明らかになった[非特許文献3](Int Immunopharmacol. 2004 Oct; 4(10-11):1419-29, Arctigenin, a phenylpropanoid dibenzylbutyrolactone lignan, inhibits MAP kinases and AP-1 activation via potent MKK inhibition: the role in TNF-α inhibition)。
【0031】
イチヤクソウの主成分であるアルブチンは、炎症誘発因子であるNF−悔κBの活性を抑制することで知られている[非特許文献4](J Dermatol Sci. 2003 May; 31(3):193-201, Downregulation of NF-κB activation in human keratinocytes by melanogenic inhibitors)。
【0032】
本発明による炎症疾患の治療剤の場合、生体指標としてアクチインの含量は0.5〜1.1質量%含有されているときに目的とする治療効果が得られる。例えば、前記アクチインの含量が0.5質量%未満の場合、関節炎などの治療効果が大きく低下する。アクチインの含量に特別な上限はないが、前記範囲を超過するアクチインが含有されても、目的とする治療効果は増加しないだけでなく、その技術的及び経済的側面で好ましくない。従って、アクチイン含量は約0.8〜1.0質量%であることが好ましい。
【0033】
本発明の生体指標であるアクチインは、炎症疾患の治療剤の必須成分であり、一定量が含有されるとき、相乗効果を発揮して優れた薬効を表す。更に、治療剤の有効成分だけでなく、その他の成分にも、炎症疾患を治療する優れた効果が含まれている。
【0034】
本発明の炎症疾患の治療に有用な絡石藤抽出物の製造方法は、次の通りである。
【0035】
本発明の絡石藤とイチヤクソウの混合抽出物を含有する複合薬剤は、通常の方法を利用して、錠剤、カプセル剤、注射剤などに剤形することができる。錠剤製造時に基剤として使用されるラクトース、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウムなどの混合量と、絡石藤とイチヤクソウの混合抽出物の量を1:1〜1:15の質量比で使用され、製造された錠剤は、関節炎のような炎症疾患の治療に効果的である。
【0036】
生薬抽出物自体は治療剤として使用されるが、担体、賦形剤、希釈剤 などと一般的に混合され、粉末、顆粒、カプセル剤または注射剤に剤形される。本発明の絡石藤抽出物は、食用及び薬用として使用されてきた。投薬量に関しては特別な限定はないが、体内吸収度、体重、年齢、性別、健康状態、患者の食事、投与時間、投与方法、排出率、疾患の重傷度などによって異なる。一般的に、体重1kg当り生薬混合抽出物を約10〜1000mg、好ましくは50〜500mg投与することが好ましい。
【0037】
従って、本発明の有効成分を含む組成物はその有効範囲を考慮して製造しなければならず、このように剤形化された単位投与製剤の投与は、必要に応じて監視される。更に、特別な投与は専門家の判断と患者の要求に応じて使用されるか、一定間隔で数回投与され得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例により製造された混合生薬抽出物のHPLCクロマトグラムである。
【図2】本発明のカラギーナンにより誘導された脚浮腫の増加率を比較したデータを表すグラフである。
【図3】本発明のFCAにより誘導された慢性炎症の増加率を比較したデータを表すグラフである。
【図4】本発明の実施例により製造されたiNOSを使用したウエスタンブロット法により得たバンドの結果を表す。
【図5】本発明のLPSによるマクロファージのNO発現量の減少を表す。
【図6】本発明の実施例により製造されたTNF−α抗体を使用したウエスタンブロット法により得たバンドの結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の好ましい実施形態について詳しく説明するが、本発明の範囲をこれら実施形態により限定されるものではない。
【0040】
参考例1:絡石藤抽出物の製造
絡石藤を減菌水で洗浄して乾燥させ、生薬の質量に対して5〜8倍の量の30%エタノールを添加した後、攪拌して2時間単位で2回熱湯抽出をした。前記抽出物を室温まで冷却し、遠心濾過を行って不純物を除去した。濾液を混合して60〜80℃で減圧濃縮した。濃縮物をエタノール分画から回収されたエタノールと懸濁し、1000rpmで遠心濾過を行い、60℃で減圧濃縮し、0.08paの圧力下で乾燥させた後、80メッシュのふるいでふるいをかけて滅菌した。得られた絡石藤抽出物をHPLCにより分析し、アクチイン3.0〜6.0質量%が含まれていることが分かった。
【0041】
参考例2:イチヤクソウ抽出物の製造
イチヤクソウを減菌水で洗浄して乾燥させ、生薬の質量に対して5〜8倍の量の30%エタノールを添加した後、攪拌して2時間単位で2回熱湯抽出をした。前記抽出物を室温まで冷却し、遠心濾過を行って不純物を除去した。濾液を混合して60〜80℃で減圧濃縮した。濃縮物をエタノール分画から回収されたエタノールと懸濁し、1000rpm で遠心濾過を行い、60℃で減圧濃縮し、0.08paの圧力下で乾燥させた後、80メッシュのふるいでふるいをかけて滅菌した。得られたイチヤクソウ抽出物をHPLCにより分析し、アルブチン0.1〜1.0質量%が含まれていることが分かった。
【0042】
参考例3:混合生薬抽出物の製造
同量の絡石藤とイチヤクソウを減菌水で洗浄して乾燥させ、生薬の質量に対して5〜8倍の量の30%エタノールを添加した後、攪拌して2時間単位で2回熱湯抽出をした。前記抽出物を室温まで冷却し、遠心濾過を行って不純物を除去した。濾液を混合して60〜80℃で減圧濃縮した。濃縮物をエタノール分画から回収されたエタノールと懸濁し、1000rpmで遠心濾過を行い、60℃で減圧濃縮し、0.08paの圧力下で乾燥させた後、80メッシュのふるいでふるいをかけて滅菌した。得られた混合生薬組成物をHPLCにより分析し、その結果を表1に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例1:TPA誘導によるマウスの耳浮腫試験
前記参考例3で得られた混合生薬抽出物に対するTPA誘導によるマウスの耳浮腫への効果を調べた。6mmパンチを利用して計測した耳の重さをその結果値として使用した。その結果を下記表2に示す。
【0045】
[実験方法]
生後7週のICRマウスを各実験群に分離し、Joins(登録商標)(SKケミカル、韓国)400mg/kg及び200mg/kg、絡石藤抽出物400mg/kg及び200mg/kg、イチヤクソウ抽出物400mg/kg及び200mg/kgと、絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物400mg/kg、200mg/kg、20mg/kg及び2mg/kgを各々経口投与した。経口投与1時間後、炎症誘発剤であるTPA(2.5μg/20μL)をアセトンに溶解した後、各マウスの右耳に均等に塗り、浮腫を誘発させた。実験の間、観察者は実験体を後方から完全に固定し、2次観察者がマイクロピペットを用いて浮腫誘導物質で各マウスの耳を刺激した。4時間後、耳浮腫が各実験群から観察された。頚椎脱臼を通してマウスを犠牲にした後、浮腫の重さを6mmパンチを利用して計測した。
【0046】
【表2】
【0047】
前記表2に示すように、本発明の混合生薬抽出物はTPA誘導による耳浮腫に対して優れた抑制効果を示した。特に、使用した混合生薬抽出物の濃度が400mg/kgのときに、浮腫抑制率が54%で最高であった。
【0048】
実施例2:アラキドン酸誘導によるマウスの耳浮腫試験
前記参考例3で得られた混合生薬抽出物に対するTPA誘導によるマウスの耳浮腫への効果を調べた。その結果を下記表3及び4に示す。
【0049】
[実験方法]
生後7週のICRマウスを各実験群に分離し、Joins(登録商標)(SKケミカル、韓国)400mg/kg及び200mg/kg、絡石藤抽出物400mg/kg及び200mg/kg、イチヤクソウ抽出物400mg/kg及び200mg/kgと、絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物400mg/kg、200mg/kg、20mg/kg及び2mg/kgを各々経口投与した。経口投与1時間後、炎症誘発剤であるTPA(2mg/20μL)をアセトンに溶解した後、各マウスの右耳に均等に塗り、浮腫を誘発させた。実験の間、観察者は実験体を後方から完全に固定し、2次観察者がマイクロピペットを用いて浮腫誘導物質で各マウスの耳を刺激した。1時間後、耳浮腫が各実験群から観察された。頚椎脱臼を通してマウスを犠牲にし、耳の厚さをマイクロメータを利用して測定した後、浮腫の重さを6mmパンチを利用して計測した。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
前記表3及び4に示すように、本発明の混合生薬抽出物はアラキドン酸誘導による耳浮腫に対して優れた抑制効果を示した。特に、使用した生薬抽出物の濃度が400mg/kgのときに、浮腫抑制率は各々64%及び56%で最高であった。
【0053】
実施例3:λカラギーナン誘導によるラットの耳浮腫試験
前記参考例3で得られた混合生薬抽出物に対する急性炎症への効果を調べた。その結果を下記表5及び図2に示す。
【0054】
[実験方法]
体重約200gのSDラットに、Joins(登録商標)(SKケミカル、韓国)400mg/kg、絡石藤抽出物400mg/kg及び200mg/kg、イチヤクソウ抽出物200mg/kg及び400mg/kgと、絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物2mg/kg、20mg/kg、200mg/kg及び400mg/kgを各々経口投与した。その後、1%カラギーナン生理食塩水100μLを左側の脚に注射して、脚浮腫を誘発させた。脚浮腫は、 マウス・ラット用足容積測定装置(Plethysmometer7140、Ugo Basile社)を利用して4時間後の脚の容積を測定して分析した(N=7)。
【0055】
【0056】
前記表5及び図2に示すように、本発明の混合生薬抽出物は急性関節炎に対して優れた治療効果を示した。特に、使用した混合生薬抽出物の濃度が400mg/kgのときに治療効果が最も優れていた。
【0057】
実施例4:FCA誘発によるラットの関節炎
前記参考例3で得られた混合生薬抽出物に対する慢性炎症への効果を調べた。その結果を下記図3に示す。
【0058】
[実験方法]
生後7週のSDマウスを各実験群に分離し、経口投与のための投与量を計量するために、体重を測定した。その次、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を1mg/mL含有する完全フロイントアジュバント試薬0.1mL/paw(シグマ社)を29Gシリンジを利用して、後脚の裏の中央に皮内注射した。アジュバンド投与後、試験物質を21日間、1日1回同一時間帯に経口投与し、脚浮腫の程度をマウス・ラット用足容積測定装置(Ugo Basile社)を利用して、3日に1度測定した後、カラギーナンにより誘発する脚浮腫法と同様に、浮腫増加率を算出し、対照群と比較した。陽性対照群として、ジクロフェナク5mg/kgが使用された。
【0059】
実施例5:酢酸誘発によるマウスの血管透過度
前記参考例3で得られた混合生薬抽出物の血管透過度に対する抑制効果を調べた。その結果を下記表6に示す。
【0060】
[実験方法]
生後7週のICRマウスを各実験群に分離し、絡石藤抽出物20mg/kg及び200mg/kg、イチヤクソウ抽出物20mg/kg及び200mg/kgと、絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物2mg/kg、20mg/kg及び200mg/kg b.wt.各々を濃度が0.1mL/10g b.wt.となるように蒸留水に溶かした後、針(sonde)を使用して経口投与した。
【0061】
投与容積は、実験当日に測定した体重を基準にして算出され、対照群は、調剤用溶媒である蒸留水を0.1mL/10g b.wt.の濃度で経口投与した。フェニルブタゾンは50mg/kg b.wt.の容量で0.5%メチルセルロースに懸濁した後、経口投与した。
【0062】
実験前、12時間絶食させたオスのICRマウスに、ホイットル(1964)の方法によって試験物質を投与した。経口投与30分後、2.5%エバンスブルー溶液(0.1mL/10g b.wt.)を尾静脈に投与した。エバンブルー溶液投与20分後、0.6生理食塩水に溶かした酢酸を0.1mL/10g b.wt.の濃度で腹腔内注射して、血管透過性の亢進を誘導した。酢酸投与20分後、各マウスを頸部脱臼させ、生理食塩水5mLを腹腔に加えて、軽く振った。腹腔から洗浄液を取った後、10分間2,000rpmで遠心分離し、分光光度計を使用して630nmで上澄液の光吸度を測定することで、腹腔内に流出されたエバンブルー溶液の量を算出した。フェニルブタゾン(50mg/kg b.wt.)とインドメタシン(1mg/kg b.wt.)を陽性対照群として使用した。
【0063】
【表5】
【0064】
前記表6に示されるように、本発明の混合生薬抽出物は、その他の対照群に比べて優れた抑制活性を表した。特に、使用された混合生薬抽出物の濃度が200mg/kgのとき、容量依存的に酢酸で誘導された血管透過性に対して高い抑制効果が観察された。更に、使用された混合生薬抽出物の濃度が200mg/kgのとき、フェニルブタゾン及びインドメタシンのような陽性対照群に比べて、酢酸で誘導された血管透過性に対して優れた抑制効果が観察されたことが分かった。
【0065】
実施例6:酢酸誘発によるマウスのライジング反応
前記参考例3で得られた混合生薬抽出物の鎮痛効果を調べた。その結果を下記表7に示す。
【0066】
[実験方法]
生後7週のICRマウスを各実験群に分離し、Joins(登録商標)(SKケミカル、韓国)400mg/kg及び200mg/kg、絡石藤抽出物400mg/kg及び200mg/kg、イチヤクソウ抽出物400mg/kg及び200mg/kgと、絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物400mg/kg、200mg/kg、20mg/kg及び2mg/kgを各々経口投与した。経口投与1時間後、各マウスに0.7%酢酸を腹腔内投与した(0.1mL/10g)。腹腔内投与10分後、ストレッチング(ライジング:背中を伸ばしたり後足を完全に伸ばすこと)方法で観察し、その結果を痛覚指標として使用した。
【0067】
【表6】
【0068】
前記表7に示されるように、本発明の混合生薬抽出物は、対照群と比べてライジング数が少ないことが分かった。特に、使用された混合生薬抽出物の濃度が400mg/kgのとき、高い痛覚効果が観察された。
【0069】
実施例7:混合生薬のNO、iNOS及びTNF−α生成に対する効果
前記参考例3で得られた混合生薬抽出物の炎症関連因子治療に対する効果を調べた。
【0070】
[実験方法]
マウス由来マクロファージであるRaw264.7細胞株をLPS(1μg/mL)で処理した。処理24時間後、培養液を集めて、酵素法及びラジカルクロマトグラフィーを通して分析し、LPSで処理した。4時間後、細胞を溶解させた後、iNOS抗体を利用したウエスタンブロット法により、内因性炎症誘発分子である一酸化窒素(NO)、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)及びTNF−αの発現量に対する絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物の効果を調べた。
【0071】
NOは、24時間培養液100μLを集めた後、グリース溶液100μLと混合し、OD540nmでの光吸度を測定した。
【0072】
iNOS及びTNF−αは、Raw264.7細胞株をLPSで処理し(1μg/mL)、処理4時間後、前記細胞を溶解させて、溶解された総タンパク質を集めた。前記タンパク質を電気泳動により分離した後、ウエスタンブロット法によりナイロン膜に転換し、タンパク質の量をiNOS及びTNF−α抗体を使用して分析した。
【0073】
図4はiNOSの発現量の抑制を表し、図5はLPSによりマクロファージ内のNO生成抑制を表し、そして図6はTNF−αの発現抑制を表すため、本発明の混合生薬抽出物は抗炎症効果が優れていることを確認した。
【0074】
実施例8:毒性試験
参考例3で得られた絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物1gの反復投与よる毒性を、16時間絶食させた生後4〜5週のICRマウス(群当り5匹)を使用して調べた。0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC)に溶解した前記生薬抽出物1gを5日間経口投与した。その結果、全てのマウスが生存し、臓器損傷などの異常は観察されなかった。
【0075】
製造例1:錠剤の製造
下に記載の組成にて絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物を含む経口投与用錠剤を湿式顆粒法または乾式顆粒法を利用して製造した。
[組成]
絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物 200mg
軽質無水ケイ酸(light anhydrous silicic acid) 10mg
ステアリン酸マグネシウム(magnesium stearate) 2mg
微細結晶セルロース(microcrystalline cellulose) 50mg
デンプングリコール酸ナトリウム(sodium starch glycolate) 25mg
ラクトース(lactose) 101mg
ポビドン(povidone) 12mg
無水エタノール(anhydrous ethanol) 適量
【0076】
製造例2:軟膏剤の製造
下に記載の組成にて絡石藤抽出物を含む軟膏剤を製造した。
[組成]
絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物 5g
パルミチン酸セチル(cetyl palmitate) 20g
セタノール(cetanol) 40g
ステアリル・アルコール(stearyl alcohol) 40g
ミリスチン酸イソプロピル(isopropyl myristate) 80g
モノステアリン酸ソルビタン(sorbitan monostearate 20g
ポリソルベート(polysolvate) 60g
パラオキシ安息香酸プロピル(propyl p-oxybenzoate) 1g
パラオキシ安息香酸メチル(methyl p-oxybenzoate) 1g
リン酸及び精製水 適量
【0077】
製造例3:注射剤の製造
下に記載の組成にて絡石藤抽出物を含む注射剤を製造した。
[組成]
絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物 100mg
マンニトール(mannitol) 180mg
第二リン酸ナトリウム(sodium phosphate dibasic) 25mg
注射用精製水 2974mg
【0078】
製造例4:経皮剤の製造
下に記載の組成にて絡石藤抽出物を含む経皮剤を製造した。
[組成]
絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物 0.4g
ポリアクリル酸塩(poly acrylate) 1.3g
グリセリン(glycerin) 3.6g
水酸化アルミニウム(aluminium hydroxide) 0.004g
メチルパラベン(methyl parabene) 0.2g
アクリル接着溶液(acrylic adhesive solution) 14mL
【産業上の利用可能性】
【0079】
前述したように、本発明の絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物は、疼痛、急性炎症、慢性炎症及び急性浮腫、血管透過性及び炎症関連因子を治療するのに抑制効果が優れているため、炎症疾患の予防及び治療に効果的な成分及びその含量を調節することにより、絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物の規格化を達成することができる。
【0080】
更に、本発明の絡石藤とイチヤクソウの混合生薬抽出物は、アクチインを生体指標として、生体指標の含量を調節することで炎症疾患の予防及び治療用薬剤を製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絡石藤とイチヤクソウの混合抽出物を含有する炎症性疾患の予防及び/又は治療用医薬組成物。
【請求項2】
前記絡石藤とイチヤクソウの抽出物の混合比は、1:1〜1:15の質量比である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記炎症疾患は関節炎及び浮腫である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
(a)絡石藤とイチヤクソウを 混合して、水、アルコール及びアルコール水溶液から選択される溶媒を使用して抽出し、混合抽出液をろ過する段階と、
(b)前記ろ液から 水層分離する段階と、
(c)前記水層を濃縮して 可溶性固形物を得る段階と、
を含む絡石藤とイチヤクソウの混合抽出物の製造方法。
【請求項5】
前記抽出は、混合抽出物の質量の5〜8倍量の溶媒を使用して行う、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記濃縮は減圧下で行う、請求項4記載の方法。
【請求項7】
(a)アルコールを使用して濃縮を懸濁して前記懸濁液を遠心分離し、ろ過する段階と、
(b)前記ろ液を再度減圧濃縮する段階と、
(c)前記濃縮物を乾燥、粉砕及び滅菌する段階と、
を更に含む、請求項4記載の方法。
【請求項1】
絡石藤とイチヤクソウの混合抽出物を含有する炎症性疾患の予防及び/又は治療用医薬組成物。
【請求項2】
前記絡石藤とイチヤクソウの抽出物の混合比は、1:1〜1:15の質量比である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記炎症疾患は関節炎及び浮腫である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
(a)絡石藤とイチヤクソウを 混合して、水、アルコール及びアルコール水溶液から選択される溶媒を使用して抽出し、混合抽出液をろ過する段階と、
(b)前記ろ液から 水層分離する段階と、
(c)前記水層を濃縮して 可溶性固形物を得る段階と、
を含む絡石藤とイチヤクソウの混合抽出物の製造方法。
【請求項5】
前記抽出は、混合抽出物の質量の5〜8倍量の溶媒を使用して行う、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記濃縮は減圧下で行う、請求項4記載の方法。
【請求項7】
(a)アルコールを使用して濃縮を懸濁して前記懸濁液を遠心分離し、ろ過する段階と、
(b)前記ろ液を再度減圧濃縮する段階と、
(c)前記濃縮物を乾燥、粉砕及び滅菌する段階と、
を更に含む、請求項4記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公表番号】特表2010−516755(P2010−516755A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547160(P2009−547160)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際出願番号】PCT/KR2007/006683
【国際公開番号】WO2008/091064
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(509004147)シン−イル ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際出願番号】PCT/KR2007/006683
【国際公開番号】WO2008/091064
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(509004147)シン−イル ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
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