説明

給水タンク及びそれを備えた電解装置

【課題】電解装置において十分な濃度の次亜塩素酸を生成可能とする水を供給することを可能とする給水タンク及びそれを備えた電解装置を提供する。
【解決手段】供給される水を電気化学的に処理することにより、電解水を生成する電解装置としての空気清浄装置10に着脱可能に設けられる給水タンク1であって、空気清浄装置10に設けられた状態で最下部となる位置に形成された給水口2と、水との接触時間に比例した量の塩化物イオンを放出する徐放材40とを備え、徐放材40は、少なくとも給水口2から内部に水を注入している間、当該水に接触すると共に、空気清浄装置10に設けられた状態では注入された水に接触することのない位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を電気化学的に処理することにより電解水を生成する電解装置に水を供給する給水タンク及びそれを用いた電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水を電気化学的に処理する電解手段としての電極を備えた電解装置には、加湿器(例えば特許文献1参照)や空気清浄機(例えば、特許文献2参照)などがある。いずれの場合であっても、電解装置の本体には、水を電気化学的に処理する電極を備えた電解ユニットが設けられ、当該電解ユニットに水を供給する、又は、当該電解ユニットが配設される水槽が設けられる。そして、この水槽には、当該本体に対して着脱自在に給水タンクが設けられる。
【0003】
この給水タンクは、電解装置に設けられた状態で最下部となる位置に給水口が形成されており、この給水口には、弁が内蔵されたキャップが着脱自在に取り付けられている。キャップに内蔵された弁は、給水タンクが電解装置に設置された状態で、当該電解装置に設けられる突起が当該弁を押し上げて、当該給水タンクに貯留された水を電解ユニットに水を供給する水槽に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−89895号公報
【特許文献2】特開2009−216320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した如き電解装置に設けられる電解ユニットは、水道水を電気分解することによって、カソードでは、水素が発生し、アノードでは、酸素ガスが発生する。また、アノードでは、水に含まれる塩化物イオンが反応して、塩素が発生する。この塩素は、水と反応し次亜塩素酸を生成する。
【0006】
このように、電解ユニットによって、ある濃度以上の次亜塩素酸を発生させるためには、所定の塩化物イオンが含有される水道水を電解ユニットに供給する必要がある。即ち、給水タンクに純水が注水された場合や、井戸水など所定の濃度を満たす塩化物イオンが含有されていない水が注水された場合、当該電解装置によって生成される電解水に有効な濃度の次亜塩素酸を生成することができず、十分な効果を発揮することができなくなるという問題がある。
【0007】
本発明は、従来の技術的課題を解決するためになされたものであり、電解装置において十分な濃度の次亜塩素酸を生成可能とする水を供給することを可能とする給水タンク及びそれを備えた電解装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の給水タンクは、供給される水を電気化学的に処理することにより、電解水を生成する電解装置に着脱可能に設けられるものであって、電解装置に設けられた状態で最下部となる位置に形成された給水口と、水との接触時間に比例した量の塩化物イオンを放出する徐放材とを備え、この徐放材は、少なくとも給水口から内部に水を注入している間、当該水に接触すると共に、電解装置に設けられた状態では注入された水に接触することのない位置に配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、上記において、給水口には、当該給水口からの単位時間当たりの注水量を調整するための注水量調整部材が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、上記各発明において、徐放材は、給水口が最下部となった状態で上部となる位置に設けられ、満水状態で電解装置に設けられたときに、水面より上方に位置することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、上記において、電解装置に設けられた状態で、徐放材の下側に対応する位置に、上下方向に所定寸法を有して下方に開放する空間が形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、上記請求項3又は請求項4の発明において、反転することで内容物が落下することにより計時可能な計時手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、上記各発明において、徐放材は、外部より交換可能に設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、上記において、徐放材は、担持される塩化物イオン濃度に応じた色素を含有すると共に、外部より透視可能に設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明の電解装置は、上記各発明のうちの何れかの給水タンクから供給される水を電気化学的に処理することにより、活性酸素種を含む電解水を生成し、この電解水を用いて空気を浄化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、供給される水を電気化学的に処理することにより、電解水を生成する電解装置に着脱可能に設けられる給水タンクであって、電解装置に設けられた状態で最下部となる位置に形成された給水口と、水との接触時間に比例した量の塩化物イオンを放出する徐放材とを備え、この徐放材は、少なくとも給水口から内部に水を注入している間、当該水に接触すると共に、電解装置に設けられた状態では注入された水に接触することのない位置に配置されているので、給水口から内部に水を注入している間に水と徐放材とが接触し、当該徐放材から接触時間に比例した量の塩化物イオンをタンク内部の水に放出させることができる。そして、内部への注水終了後、給水口が最下部となるように電解装置に設けられた状態で、徐放材は、貯留されているタンク内部の水と非接触となるため、係る状態において、徐放材から塩化物イオンが内部に貯留された水に放出されてしまうことを回避することができる。
【0017】
これにより、給水口からの内部への水の注入に要する時間だけ徐放材が注水される水と接触して接触時間に比例した量の塩化物イオンを当該水中に放出することができる。従って、濃度検出手段などの格別な測定手段を用いることなく、電解装置において必要とされる量の塩化物イオンを含んだ水を給水タンク内から電解装置に供給することができ、適切に電解水を生成することが可能となる。
【0018】
請求項2の発明によれば、上記に加えて、給水口には、当該給水口からの単位時間当たりの注水量を調整するための注水量調整部材が設けられているので、内部への注水速度を調整することができる。これにより、給水口から注水される水の量に応じて徐放材と当該水との接触時間を調整及び確保することができる。
【0019】
従って、当該水との接触時間に比例する徐放材から放出される塩化物イオンの量を係る給水口を介した注水量に応じて注水された水に放出させることができる。これにより、所定の塩化物イオン濃度の水を給水タンクから電解装置に供給することができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、上記各発明に加えて、徐放材は、給水口が最下部となった状態で上部となる位置に設けられ、満水状態で電解装置に設けられたときに、水面より上方に位置することにより、電解装置に設けられた状態では、確実に給水タンク内の水が徐放材と非接触の状態とすることができる。これにより、必要以上に給水タンク内の水に徐放材から塩化物イオンが放出される不都合を回避することができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、上記に加えて、電解装置に設けられた状態で、徐放材の下側に対応する位置に、上下方向に所定寸法を有して下方に開放する空間が形成されることにより、電解装置に設けられた状態では、貯留される水と徐放材とは、当該空間を介して隔てた状態とされるため、より一層確実に、給水タンク内の水と徐放材とが接触してしまい必要以上に塩化物イオンが放出される不都合を回避することができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、上記請求項3又は請求項4の発明に加えて、反転することで内容物が落下することにより計時可能な計時手段を備えたことにより、電解装置に設けられた状態では、最下部となる位置に設けられた給水口は、内部への注水時には、これが反転することで最上部とされ、これと共に計時手段が反転されることで内容物の落下による計時が可能となる。
【0023】
このとき、内容物の落下による計時によって、注水されている水と徐放材との接触時間を計時することが可能となり、係る接触時間を確保することが可能となる。これにより、徐放材から貯留される水への放出量を確保することができ、所定の塩化物イオン濃度の水を生成することが可能となる。
【0024】
請求項6の発明によれば、上記各発明に加えて、徐放材は、外部より交換可能に設けられているので、徐放材から塩化物イオンが放出され尽くした場合など、容易に外部から交換することができる。これにより、永続的な使用が可能となる。
【0025】
請求項7の発明によれば、上記に加えて、徐放材は、担持される塩化物イオン濃度に応じた色素を含有すると共に、外部より透視可能に設けられているので、徐放材に含有されている塩化物イオンの量を同様に含有されている色素の量を指標として視覚的に認識することが可能となる。これにより、徐放材の交換時期を外部から視覚的に認識でき、適切に交換することができる。
【0026】
請求項8の発明の電解装置によれば、上記各発明のうちの何れかの給水タンクから供給される水を用いて電気化学的に処理することにより、活性酸素種を含む電解水を生成し、この電解水を用いて空気を浄化するので、所定濃度の次亜塩素酸を含む電解水によって空気を浄化することが可能となる。
【0027】
これにより、純水やその他低塩化物イオン濃度の水などを給水タンクに注水した場合であっても、効果的に空気を浄化する能力を有する濃度の次亜塩素酸を含む電解水によって浄化効果の高い処理を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の給水タンクを用いた一実施例としての空気清浄装置(電解装置)の後方斜視図である。
【図2】図1の空気清浄装置の給水タンクを引き抜いた状態の前方斜視図である。
【図3】図1の空気清浄装置の後方分解斜視図である。
【図4】電解ユニットの概略構成図である。
【図5】給水タンクの斜視図(空気清浄装置の設置状態)である。
【図6】図5の給水タンクの正面図である。
【図7】給水タンクの正面図(注水状態)である。
【図8】注水量調整部材の斜視図(注水状態の上方斜視図)である。
【図9】注水量調整部材の斜視図(注水状態の下方斜視図)である。
【図10】徐放材の水との接触時間に対する塩化物イオンの溶出量の関係を示す図である。
【図11】徐放材の水との接触時間に対する塩化物イオン濃度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明の電解装置用の給水タンクの実施形態について図面を参照して説明する。先ず、電解装置として給水タンクから供給される水を用いて空気清浄を行う空気清浄装置を例に挙げて説明する。図1は本実施例の空気清浄装置(電解装置)10の後方斜視図、図2は図1の給水タンク1を引き抜いた状態の前方斜視図、図3は図1の空気清浄装置の後方分解斜視図をそれぞれ示している。
【0030】
本実施例における電解装置としての空気清浄装置10は、矩形状を呈する本体11の側面に空気吸込口12と、上面に清浄空気の吹出口13とが形成されており、この本体11内には、空気吸込口12と吹出口13とを連通する通風路が形成されている。この通風路内には、図示しない送風手段としての送風機や、後述する水槽16に設けられる気液接触部材17が配設される。これにより、送風機が運転されることにより、当該通風路内に進入した外気は、気液接触部材17を通過した後、吹出口13より外部に吐出される。
【0031】
そして、本体11の下部は、水槽収納部14となっており、当該水槽収納部14に対応する本体11の下部後面は、後方に開口した挿脱口15が形成されている。この挿脱口15には、上面開口の水槽16が後面下部の把手16Aによって本体11に対して前後にスライド式にて挿脱自在に収納される。
【0032】
この水槽16の後部には、該水槽16が空気清浄装置10の本体11に装着された状態で、本体11の後方に突出する膨出部16Bとされている。そして、当該水槽16内には、本体11の挿脱口15を閉塞する仕切部19が立設されており、当該仕切部19により本体11側にはフィルタ室16Fが形成され、外側(本体11後方)にはタンク室16Tが形成されている。
【0033】
水槽16のフィルタ室16Fには、当該水槽内に貯留される水に下部が浸漬される状態に気液接触手段としての保水性の高い気液接触部材17が立設されている。尚、本実施例では、当該気液接触部材17は、ハニカム構造を採用したフィルタ部材であって、気液接触面積が広く確保され、目詰まりしにくい構造とされている。また、当該気液接触部材17は、水槽16内にて生成された電解水と反応性の少ない素材、即ち、電解水による劣化が少ない素材、例えば、ポリオレフィン樹脂系、PET樹脂系、塩化ビニル樹脂系、フッ素樹脂系、又は、セラミックス樹脂系などの素材が使用されている。
【0034】
水槽16のタンク室16Tには、詳細は後述する本願発明に係る給水タンク1が収納される。タンク室16Tの底面には、凹所20が形成されており、当該凹所20内には、給水タンク1の後述する止水弁31を押し上げて開放する突起18が設けられている。
【0035】
そのため、給水タンク1をタンク室16Tに収納することによって、給水タンク1の重量でその最下部となる後述する蓋部材6が凹所20に収納される。この状態で、給水タンク1の蓋部材6に設けられた止水弁31が突起18によって押し上げられて開放され、給水タンク1内の水が水槽16内に供給される。水槽16内の凹所20は、フィルタ室16F内と連通して構成されているため、当該凹所20及びフィルタ室16F内には、所定の水位が維持される。
【0036】
そして、本体11内には、水槽16を本体11内に挿入することにより、少なくとも一部が水槽16(フィルタ室16F)内の水に浸漬される電極ユニット21が設けられている。
【0037】
この電極ユニット21は、図4の概略構成図に示すように、少なくとも一対以上の電極21A、21Bが配設されており、電極21A、21Bに通電すると、水槽16内に貯留される水は電気分解(電気化学的処理)されて活性酸素種を生成する。ここで、活性酸素種とは、通常の酸素よりも高い酸化活性を持つ酸素分子と、その関連物質のことであり、スーパーオキシドアニオン、一重項酸素、ヒドロキシルラジカル、或いは、過酸化水素といった所謂狭義の活性酸素に、オゾン、次亜ハロゲン酸等といった所謂広義の活性酸素を含むものとする。水槽16は気液接触部材17の近傍に配置され、給水タンク1から供給された水を電気分解して生成された活性酸素種を迅速に気液接触部材17に供給できるように構成される。
【0038】
上記電極21A、21Bは、例えばベースがTi(チタン)で皮膜層がIr(イリジウム)、Pt(白金)から構成された電極板である。上記電極により例えば水道水に通電すると、カソードを構成する電極では、
2H2O+2e-→H2+2OH-
の反応が起こり、アノードを構成する電極では、
2H2O→4H++O2+4e-
の反応が起こると同時に、水に含まれる塩化物イオンが、
2Cl-→Cl2+2e-
のように反応し、更にこのCl2は水と反応し、
Cl2+H2O→HClO+H++Cl-
となる。
【0039】
この構成では、上記電極に通電することで、殺菌力の大きいHClO(次亜塩素酸)が発生し、この次亜塩素酸が供給された電解水は、気液接触部材17の毛細管現象によって吸い上げられ、当該気液接触部材17に空気吸込口12から本体11内に吸い込まれた外気を通過させる。これにより、この気液接触部材17で雑菌が繁殖することを防止でき、気液接触部材17を通過する外気中に浮遊するウィルスを不活化することができる。また、臭気も気液接触部材17を通過する際に、電解水中の次亜塩素酸と反応し、イオン化して溶解することで、空気中から除去され、脱臭される。
【0040】
次に、図5乃至図9を参照して、本願発明に係る給水タンク1について詳述する。図5は給水タンク1の斜視図(空気清浄装置10の設置状態)、図6は図5の給水タンク1の正面図、図7は給水タンク1の正面図(注水状態)、図8は注水量調整部材7の斜視図(注水状態の上方斜視図)、図9は注水量調整部材7の斜視図(注水状態の下方斜視図)をそれぞれ示している。
【0041】
給水タンク1は、内部の水が外部から透視可能な合成樹脂製のタンクであり、上記空気清浄装置10のタンク室16Tに設けられた状態で最下部となる位置に給水口2が形成されている。この給水口2は、所定の径を有する所謂広口の開口により形成されており、当該開口縁は、外方に向けて起立すると共に、外面にねじ切りが形成された側面2Aが構成されている。当該側面2Aに形成されたねじ切りによって、係る給水口2を閉塞する蓋部材6が着脱自在に設けられる。
【0042】
この蓋部材6は、給水タンク1内部と外部とを連通する連通部32が形成されており、当該連通部32の給水タンク1側には、止水弁31が配設されている。この止水弁31は、当該連通部32内に位置し、且つ、給水タンク1外部側に向けて延在する軸33を有する。この軸33は、図示しない付勢手段によって常時止水弁31が連通部32を閉塞する方向に付勢されている。当該給水タンク1が、上述したように空気清浄装置10のタンク室16Tに、当該給水口2(蓋部材6)が最下部となるように設けた状態で、当該蓋部材6の軸33は、空気清浄装置10に設けられた前記突起18によって付勢手段の付勢力に抗して押し上げられ、これによって、連通部32が開放される。
【0043】
そして、本実施例では、当該給水口2は、当該給水口2からの単位時間当たりの注水量を調整するための注水量調整部材(圧損キャップ)7が設けられている。尚、本実施例において、当該注水量調整部材7は、給水口2に着脱自在としても良いが、これに限られない。
【0044】
この注水量調整部材7は、図8及び図9の斜視図に示すように、給水タンク1側に向けて突出して所定の容積を有する貯留部8が形成されている。この貯留部8の給水タンク1内側の面(、即ち、給水タンク1内への注水時において給水口2が上側となるように載置された状態における当該貯留部8の底面)8Aには、所定の寸法を有する複数の連通孔9が形成されている。当該貯留部8の容積及び、面8Aに形成される連通孔9の数及び寸法は、給水タンク1内への単位時間当たりの注水量によって予め設定されているものとする。
【0045】
そして、この貯留部8の開口側の外縁には、外方に向けて折り返して形成された係止部8Bが形成されている。これにより、当該注水量調整部材7は、給水口2の開口縁部に着脱自在に係止される。
【0046】
一方、給水タンク1が空気清浄装置10に設けられた状態における最上部には、把手部35が設けられている。本実施例において把手部35は、給水タンク1と一体に形成されている。尚、給水タンク1への注水時には、給水口2は最上部となり、この状態で、最下部となる部分、この場合把手部35は、当該状態で最下部となる面は、平坦面35Aとされている。これにより、注水時において、平坦面35Aにより安定した支持が可能となる。
【0047】
そして、給水タンク1の該把手部35が設けられている側には、徐放材用開口36が形成されており、当該徐放材用開口36は、徐放材取付部材41によって開閉自在に閉塞されている。
【0048】
この徐放材取付部材41は、徐放材用開口36の開口縁から外方に向けて起立すると共に、外面にねじ切りが形成された側面に対し、着脱自在に設けられている。そして、この徐放材取付部材41には、外方側(給水口2とは反対側)に突出する徐放材収容部42が構成されており、当該徐放材収容部42内に徐放材40が収容されている。
【0049】
この徐放材収容部42の給水口2側の面には、水の通過を許容すると共に、徐放材40の通過を禁止する複数の連通孔43が形成されている。
【0050】
この徐放材収容部42内に収容される徐放材40は、水との接触時間に比例した量の塩化物イオンを放出するものである。本実施例では、塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの塩化物イオンを含有する水溶性物質を疎水性物質、例えば、飽和脂肪酸などの水不溶性樹脂と混練した状態で、多孔性及び親水性を有する構造材料に埋め込むことにより構成される。これにより、当該徐放材40が水と接触している間は、構造材料と疎水性材料との間に生じる隙間(経路)を通じて水が進入し、塩化物イオンを含有する水溶性物質より、当該接触時間と比例した量の塩化物イオンが当該接触している水(この場合給水タンク1内の水)に放出される。
【0051】
図10は、本実施例において採用する徐放材40の水との接触時間に対する塩化物イオンの溶出量を示している。この場合、徐放材1gを純水100mLに接触させた場合における接触時間に対する塩化物イオン量を示している。これによると、接触時間5分では、6.2mg程度塩化物イオンが溶出し、接触時間10分では10.6mg程度の塩化物イオンが溶出している。このことから、当該徐放材40は、水との接触時間に比例した量の塩化物イオンが水に溶出することがいえる。
【0052】
以上の構成により、給水タンク1への注水及び当該給水タンク1から空気清浄装置10への給水動作について説明する。給水タンク1内の水がなくなった場合には、空気清浄装置10は予め内蔵されている水位検出手段による低水位検出によって使用者に給水タンク1内の水がなくなったことが報知される。使用者は、把手部35を持って給水タンク1を空気清浄装置10のタンク室16Tから取り外す。そして、給水口2が上部、徐放材40(把手部35側)が下部となるように持ち、給水口2を閉塞する蓋部材6を開放する。
【0053】
そして、開放された給水口2から水道水などの給水を行う。給水口2から給水タンク1内に注水される水は、その自重によって給水タンク1の下部から順に満たされていく。ここで、徐放材40は、給水タンク1の下部、本実施例では、この状態で最下部となる位置に設けられているため、係る状態(姿勢)が保持されている間、実際には、注水動作が行われている間は、注水された水と徐放材40とが接触状態となり、当該接触している間は、徐放材40から当該接触時間に比例した量の塩化物イオンが放出される。
【0054】
本実施例では、給水タンク1内への注水を行う給水口2には、注水量調整部材7が設けられている。そのため、水道管などから供給される水は、その流速にかかわらず、注水量調整部材7によって、給水タンク1内への注水速度(単位時間当たりの注水量)が制限される。
【0055】
そのため、給水タンク1が満水となるまでの時間は、当該注水量調整部材7によって一定に保つことができ、これにより、徐放材40と給水タンク1内の水との接触時間を一定時間確保することが可能となる。
【0056】
これにより、給水タンク1内の水との接触時間に比例する徐放材40から放出される塩化物イオンの量を係る給水口2を介した注水量に応じて注水された水に放出させることができる。そのため、所定の塩化物イオン濃度の水を給水タンク1から空気清浄装置(電解装置)10に供給することができる。
【0057】
図11は、上述した如き徐放材を20g、及び給水タンク1への注水量を純水4Lとした場合の接触時間に対する塩化物イオン濃度を示している。これによると、徐放材と給水タンク1内の水との接触時間(注水時間)が5分10秒程度であった場合、純水であった水は、塩化物イオン濃度が31mg/L程度となり、接触時間(注水時間)が10分程度であった場合、純粋であった水は、塩化物イオン濃度が48mg/L程度となった。
【0058】
そのため、給水タンク1に対し、当該給水タンク1内への単位時間当たりの注水量毎に異なる注水量調整部材7を複数種類、構成しても良い。この場合、給水タンク1に供給される水の種類、即ち、塩化物イオンの濃度が異なる水や、同じ塩化物イオンの濃度の水であったとしても当該給水タンク1において調整される塩化物イオン濃度に応じて注水量調整部材7を当該給水口2に取り付けて使用する。これにより、用いる水の種類や、使用態様に応じて適切な速度にて給水タンク1に注水を行うことができ、徐放材40と注水された水との接触時間を適切に確保し、調整することが可能となる。そのため、給水タンク1から適切な塩化物イオン濃度の水を電解装置、本実施例では、空気清浄装置10に供給することが可能となる。
【0059】
そのため、本実施例において採用される給水タンク1が4Lで満水となるものであり、純水が注水される場合には、注水量調整部材7によって、満水までの注水時間が5分10秒程度となるように設定したものを用いれば、塩化物イオン濃度が31mg/L程度となるように、徐放材から塩化物イオンを放出することができる。使用する注水量調整部材7を満水までの注水時間が10分程度となるように設定したものを用いれば、塩化物イオン濃度が48mg/L程度となるように、徐放材から塩化物イオンを放出することができる。
【0060】
そして、所定の満水位(例えば給水口2の端部と面一の水位を満水位とした場合や、予め給水タンク1自体に満水位を表示した場合はその水位)に達した場合には、使用者は、給水口2を蓋部材6にて閉塞し、給水口2が最下部、徐放材40が上部となる位置に反転させ、空気清浄装置10のタンク室16Tに設置する。
【0061】
これにより、給水タンク1の蓋部材6に設けられた止水弁31は、空気清浄装置10側に設けられた突起18に押し上げられて連通部32が開放され、水槽16が満水となった状態で、給水タンク1から水槽16への給水が停止する。
【0062】
満水状態で給水タンク1が空気清浄装置10に設けられたとき、当該給水タンク1内の水面より上方に徐放材40が位置し、徐放材40と給水タンク1内の水が接触することのない状態とされているものとする。この際における満水状態とは、給水タンク1への注水を給水口2の端部と略面一となる水位にまで行い、その状態で、空気清浄装置10の水槽16が満水状態であったとしても、空気清浄装置10に設置した状態で、給水タンク1内の水位が徐放材40の下面よりも下方に位置する状態であるものとする。
【0063】
尚、水槽16内の水が低水位となっていることを条件とすれば、給水タンク1への注水を給水口2の端部と略面一となる水位まで行った場合であっても、空気清浄装置10に設置した状態で、ある程度の量が給水タンク1から水槽16内に給水されるため、この状態で最上部に設けられる徐放材40の下面よりも給水タンク1内の水位が下方に位置することとなる。また、これ以外にも、上述したように、給水タンク1への満水位を予め表示しておき、当該水位までしか注水を行わないこととすれば、給水タンク1を反転させて、徐放材40を最上部に位置させることで、当該徐放材40と給水タンク1内の水との接触を禁止することができる。
【0064】
このように、本実施例によれば、給水タンク1に設けられる徐放材40は、少なくとも給水口2から内部に水を注入している間、当該水に接触すると共に、空気清浄装置10に設けられた状態では注入された水に接触することのない位置に配置されているので、給水口2から内部に水を注入している間に水と徐放材40とが接触し、当該徐放材40から接触時間に比例した量の塩化物イオンをタンク内部の水に放出させることができる。そして、内部への注水終了後、給水口2が最下部となるように空気清浄装置10に設けられた状態で、徐放材40は、貯留されているタンク1内部の水と非接触となるため、係る状態において、徐放材40から塩化物イオンが内部に貯留された水に放出されてしまうことを回避することができる。
【0065】
これにより、給水口2からの内部への水の注入に要する時間だけ徐放材40が注水される水と接触して接触時間に比例した量の塩化物イオンを当該水中に放出することができる。従って、濃度検出手段などの格別な測定手段を用いることなく、空気清浄装置10において必要とされる量の塩化物イオンを含んだ水を給水タンク1内から空気清浄装置10に供給することができ、電解ユニット21による電解処理によって適切に電解水を生成することが可能となる。
【0066】
特に、徐放材40は、給水口2が最下部となった状態で上部となる位置に設けられ、満水状態で空気清浄装置10に設けられたときに、水面より上方に位置することにより、空気清浄装置10に設けられた状態では、確実に給水タンク1内の水が徐放材40と非接触の状態とすることができる。これにより、必要以上に給水タンク1内の水に徐放材40から塩化物イオンが放出される不都合、例えば、過度に塩化物イオンが給水タンク1内に放出されてしまったり、徐放材40の寿命が短くなってしまう不都合を回避することができる。
【0067】
本実施例では、図6に示すように徐放材用開口36は、給水タンク1のタンク部分の給水口2とは反対側の端部よりも外方に突出する突部36Aが形成されており、その突部36Aの外端に徐放材40の端部が位置するように設けられている。
【0068】
これにより、空気清浄装置10に設けられた状態で、徐放材40の下側に対応する位置に、当該突部36Aによって、上下方向に所定寸法を有して下方に開放する空間37が形成されることにより、空気清浄装置10に設けられた状態では、貯留される水と徐放材40とは、当該空間37を介して隔てた状態とされるため、より一層確実に、給水タンク1内の水と徐放材40とが接触してしまうことを回避でき、所定量必要以上の塩化物イオンが放出されることを抑制できる。
【0069】
このように、給水タンク1に供給される水の種類、即ち、塩化物イオン濃度にかかわらず、空気清浄装置10には、電解水を生成するのに適した塩化物イオン濃度の水を給水タンク1から供給することが可能となり、空気清浄装置10に設けられた電解ユニット21は、当該水を用いて電気化学的に処理することにより、活性酸素種を含む電解水を生成し、この電解水を用いて空気を浄化することが可能となる。従って、所定濃度の次亜塩素酸を含む電解水によって空気を浄化することができる。
【0070】
特に、純水やその他、低塩化物イオン濃度の水道水などを給水タンク1に注水した場合であっても、効果的に空気を浄化する能力を有する濃度の次亜塩素酸を含む電解水によって浄化効果の高い処理を実現することが可能となる。
【0071】
尚、本実施例では、注水量調整部材7によって給水タンク1に注水される単位時間当たりの注水量を調整しているが、注水時における徐放材40と給水タンク1内の水との接触時間を所定時間確保する手段はこれに限定されない。
【0072】
例えば、給水タンク1の側面に、反転することで内容物、例えば砂や比重が異なる複数種類の液体が、落下することにより計時可能な計時手段を設けても良い。これにより、空気清浄装置10に設けられた状態では、最下部となる位置に設けられた給水口2は、内部への注水時には、これが反転することで最上部とされ、これと共に計時手段が反転されることで内容物の落下による計時が可能となる。
【0073】
そのため、計時手段の内容物の落下による計時によって、注水されている水と徐放材40との接触時間を計時することが可能となり、係る接触時間を確保することが可能となる。これにより、徐放材40から貯留される水への放出量を確保することができ、所定の塩化物イオン濃度の水を生成することが可能となる。
【0074】
また、本実施例における徐放材は、上述したように徐放材取付部材41によって、外部から給水タンク1に交換可能に設けられている。そのため、徐放材40から塩化物イオンが放出され尽くした場合などは、容易に外部から交換することができる。これにより、永続的な使用が可能となる。
【0075】
この際、使用する徐放材40に、担持される塩化物イオン濃度に応じた色素を含有させてもよい。また、この場合、徐放材取付部材41は、少なくとも徐放材収容部42が外部より透視可能に構成する。これにより、徐放材40に含有されている塩化物イオンの量を同様に含有されている色素の量を指標として視覚的に認識することが可能となる。これにより、徐放材40の交換時期を外部から視覚的に認識でき、適切に交換することができる。
【0076】
尚、本実施例では、電解装置として空気清浄装置10を例に挙げて説明しているが、これに限定されるものではなく、水を電気化学的処理(電解)することによって、少なくとも次亜塩素酸などの活性酸素種を含有する電解水を生成し、当該電解水によって除菌処理を行うもの、例えば、水槽などの水の経路の除菌を行う加湿器などであっても同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 給水タンク
2 給水口
6 蓋部材
7 注水量調整部材(圧損キャップ)
8 貯留部
9 連通孔
10 空気清浄装置
11 本体
16 水槽
17 気液接触部材
18 突起
19 仕切部
21 電極ユニット
21A、21B 電極
31 止水弁
35 把手部
36 徐放材用開口
36A 突部
37 空間
40 徐放材
41 徐放材取付部材
42 徐放材収容部
43 連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される水を電気化学的に処理することにより、電解水を生成する電解装置に着脱可能に設けられる給水タンクであって、
前記電解装置に設けられた状態で最下部となる位置に形成された給水口と、
水との接触時間に比例した量の塩化物イオンを放出する徐放材とを備え、
該徐放材は、少なくとも前記給水口から内部に水を注入している間、当該水に接触すると共に、前記電解装置に設けられた状態では前記注入された水に接触することのない位置に配置されていることを特徴とする給水タンク。
【請求項2】
前記給水口には、当該給水口からの単位時間当たりの注水量を調整するための注水量調整部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の給水タンク。
【請求項3】
前記徐放材は、前記給水口が最下部となった状態で上部となる位置に設けられ、満水状態で前記電解装置に設けられたときに、水面より上方に位置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の給水タンク。
【請求項4】
前記電解装置に設けられた状態で、前記徐放材の下側に対応する位置に、上下方向に所定寸法を有して下方に開放する空間が形成されることを特徴とする請求項3に記載の給水タンク。
【請求項5】
反転することで内容物が落下することにより計時可能な計時手段を備えたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の給水タンク。
【請求項6】
前記徐放材は、外部より交換可能に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちの何れかに記載の給水タンク。
【請求項7】
前記徐放材は、担持される塩化物イオン濃度に応じた色素を含有すると共に、外部より透視可能に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の給水タンク。
【請求項8】
前記給水タンクから供給される水を電気化学的に処理することにより、活性酸素種を含む電解水を生成し、該電解水を用いて空気を浄化することを特徴とする請求項1乃至請求項7のうちの何れかに記載の給水タンクを備えた電解装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−112337(P2011−112337A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271807(P2009−271807)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】