説明

給湯器/冷水器

本発明は、伝熱特性を有する材料により形成された壁部(18)を有する水槽(12)を備えた給湯器/冷水器(10)を開示する。冷媒を搬送する管(24)は、水槽(12)の壁部(18)の外周部に取り付けられる。伝熱性材料(32)は、管(24)の長さに沿って延伸しかつ水槽(12)の壁部(18)と管(24)を熱伝達接触させる。少なくとも1つの材料層(34,36)は、水槽(12)の壁部(18)と管(24)の周りに緊密に包装される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器/冷水器、特に排他的表現でないが、太陽熱支援ヒートポンプ式給湯器及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1及び2は、給湯器の水槽が溶接されたサドル部材と融溶はんだで機械的に固定された管により、給湯器の水槽の全長の実質的な部分に沿って水槽を包囲した太陽熱支援ヒートポンプ式給湯器を開示する。管は、熱媒体流体を搬送して、水槽の表面を加熱することにより水槽内に収容される水を加熱する。水槽に管を取付ける間に、管に錫/鉛/流動酸性のはんだペーストを付着し、その後炉内で水槽を加熱して、はんだを融解し管と水槽との熱伝達接着を完了する。スケールを除去する円筒外面の研磨工程、錫メッキをするための硫酸銅液による予備洗浄工程及び最終洗浄工程、並びに管を緊張状態に維持する工程を含む予備巻付法は、製造サイクルを示し、その後水槽全体を加熱して、はんだを溶融する工程は、製造時間の損失と言える。水槽全体をはんだ融解温度まで加熱するのに要するガス及び付随する冷却期間は、多くの費用と時間とを製造工程に付加する。水槽を十分に洗浄して残留はんだ酸を除去し、ビチューメン塗料で防食処理を施さなければならないので、更なる時間遅延と経費が必要となる。また製造工程には、水槽に管を巻き付けているとき、水槽から約600mmだけ管を変形し、緊張させる装置を有し、この装置は、管がローラから離れるときに管が自由に捩れるので、水槽と管との接触損失を招来する可能性がある。
【特許文献1】オーストラリア特許第582,291号
【特許文献2】オーストラリア特許第603,510号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の目的は、特許文献1及び2に記載される技術的着想を改善する給湯器を提供することである。
【0004】
本発明の他の目的は、特許文献1及び2に記載されるものよりも簡素な構造を有する給湯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に対し、本発明の実施の一形態は、伝熱特性を有する材料により形成された壁部を有する水槽と、水槽の壁部の外周部に取り付けられかつ冷媒を搬送する管と、管の長さに沿って延伸しかつ水槽の壁部と管を熱伝達接触させる伝熱性材料と、水槽の壁部と管の周りに緊密に包装された少なくとも1つの材料層とを備えたことを特徴とする給湯器/冷水器を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
水槽の壁部に対して管を圧縮して取付け、少なくとも1つの材料層により管への圧縮力を保持することが好ましい。円形断面を有する管を水槽の壁部に押圧する圧縮力を加えて、D形断面に変形することが好ましい。別法として、円形断面を有する管を水槽の壁部に押圧する圧縮力を加えて、繭形断面に変形することが好ましい。本発明の好適な実施の形態では、少なくとも1つの材料層は、少なくとも1つの延伸包装フィルム(ストレッチラップフィルム)と、延伸包装フィルム上に被覆された少なくとも1つの熱反射性材料層とを備える。少なくとも1つの熱反射性材料層上に少なくとも1つの別の延伸包装フィルム層を被覆することが好ましい。
【0007】
延伸包装フィルムは、ポリエチレンを主成分とすることが好ましい。本発明の他の実施の形態では、伝熱性材料は、未硬化の伝熱性ペーストである。更に別の実施の形態では、少なくとも1つの延伸包装フィルム層は、伝熱性材料を気密に包囲する。水槽の長さの少なくとも85%にわたり管を延伸させることが好ましい。
【0008】
本発明の他の実施の形態では、管の長さと同じ広さで伝熱性材料を管又は水槽の壁部の一方に取り付けて、管と水槽の壁部とを熱伝達接触可能に水槽の壁部の周囲に管を捲回し、水槽の壁部と管の周りに少なくとも1つの材料層を緊密に包装する。
【0009】
管の各側の水槽の壁部に細長い伝熱性材料を取り付けて、細長い伝熱性材料を接合隅部に形成して、使用時に管の水槽の壁部との熱伝達を増加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
より容易に本発明を理解すると共に、実用上の効果を明確にするため、添付図面について説明する。
通常凹状又は凸状の底壁(14)と、凸状の頂壁(16)と、円筒状の側壁(18)とを有する水槽(12)を備えた給湯器(10)を図面に示す。金属又は合金を主成分とする適当な伝熱性又は熱伝達性材料により水槽(12)を形成することができる。好適な実施の形態では、ガラスを内張りした鋼、ステンレス鋼、銅又は他の適当な材料により水槽(12)が製造される。底壁(14)に隣接して冷水入口(図示せず)が設けられ、頂壁(16)に隣接して熱水出口(図示せず)が設けられる。水槽(12)は、蓋(22)により密閉される円筒ケース(20)内に保持される。断熱発泡材料(図示せず)は、水槽(12)と円筒ケース(20)及び蓋(22)とのすき間に充填される。管(24)は、側壁(18)の周囲に巻き付けられかつ入口(26)及び出口(28)を有する。また、金属又は合金を主成分とするあらゆる適切な熱伝導性又は熱伝達性の素材から管(24)を形成することが好ましい。好適な実施の形態では、管(24)は、可撓性と耐食性を考慮して銅から成る。管(24)は、通常は側壁(18)の長さの85%以上延伸する。通常R22(フロンHCFC)及びR12(フロンHCF)同等物を含む冷媒(図示せず)は、管(24)を通して供給されて側壁(18)を加熱し、水槽(12)内の水が加熱される。管(24)は、太陽熱支援ヒートポンプ式給湯器の一部で、特許文献1及び2に記載されている。重複説明を避けるために、参考文献として特許文献1及び2を挙げ、それらの内容を明細書本文の一部とする。
【0011】
図2及び図3は、側壁(18)に管(24)を取り付けた状態の断面図を示す。管(24)は、平板な底面(30)を有するD形状(図示)、楕円形状又は他の閉鎖形状の断面を有し、側壁(18)に取付ける前に円形断面管を変形させるか又は図示のように成形ローラ圧縮により側壁(18)に押付けて成形する。管(24)は、底面(30)に付着されかつ管(24)から側壁(18)への熱伝達を最大にする熱伝導性ペースト(32)を有する。管(24)は、圧縮力により側壁(18)及び給湯器(10)の周囲に包装された材料層に押付けられて圧縮力が維持される。通常、延伸包装フィルムの2層(34,36)が最初に取付けられる。延伸包装フィルムは、適切に形成されたポリエチレンフィルムが好ましい。次の層(38)は、給湯器(10)へ熱を逆に反射する反射器として作用するアルミニウム箔である。最後に、更なる4つの延伸包装フィルム層(40,42,44,46)が層(38)を覆う。材料層の数及び積層状態は、必要に応じて適宣変更できるのであって、記載した材料層の数及び積層状態には限定されない。延伸包装フィルムは、紫外線光に暴露されなければ、フィルムの変性は生じない。材料層の包装及び圧縮状態により、熱伝導性ペースト(32)の保全性を確保しかつ空気循環又は熱循環による乾燥が生じないように、熱伝導性ペーストを封止する。熱伝導性ペースト(32)は、包装しなければ空気に露出され、時間とともに乾燥し脆くなる。熱循環もこの崩壊を促進する。崩壊により、管断面(25)と側壁(18)との間の熱伝導接触効率を低減する。包装は、空気から熱伝導性ペースト(48)を密封してあらゆる乾燥又は肥大化を回避する事ができる。
【0012】
図4は、側壁(18)に管(24)を取付ける一連の工程を示す。本実施の形態では、管(24)は、ローラ圧縮により形成される。第1に、直径10mmの管断面(25)を有する一定長さの管(24)は、側壁(18)の所定の位置に配置されて保持される。側壁(18)上に押付ける管断面(25)の直下に、供給機(図示せず)から例えば3mmの細長い熱伝導性ペースト(ビード)(48)を水平に回転する水槽(12)上に配置する。本実施の形態に使用する細長い熱伝導性ペースト(48)は、ボスティック熱伝導密封剤#1128又は#5603として公知である。本実施の形態では細長い熱伝導性ペースト(48)は、非接着性の油状材料であるが、接着性材料でも同様に使用できる。第2に、管断面(25)は、側壁(18)に対してD形状(図示)又は楕円形に圧縮されて、細長い熱伝導性ペースト(48)を扁平に潰し、均等な厚みで管(24)の底面(30)に熱伝導性ペースト(48)を取付ける。熱伝導性ペースト(48)は、通常は底面(30)の下で扁平に潰される。軸(66)周りに回転する圧縮ローラ(64)により、管断面(25)を側壁(18)上に押し付けてD形又は楕円形断面に管(24)に変形させる。第3に、例えば直径4〜6mmの細長い一対の並行な熱伝導性ペースト(50,52)が、側壁(18)上に管(24)の両端へ取付けられる。この過程により、熱伝導域の面積を増加することができる。最終過程では、細長い熱伝導性ペースト(50,52)を接合隅部(56)に充填して最大の熱伝達率を得ることができる。管(24)は、通常側壁(18)の底部(14)から頂部(16)に捲回されて保持されるが付着されず、通常樹脂製のブラケット(図示せず)により側壁(18)に管(24)の両端が留められる。水槽(12)の側壁(18)の周囲に緊張して捲回される非延伸接合材により、ブラケットは、側壁(18)に保持される。管(24)が水槽(12)の頂壁(16)付近まで捲回されると、螺旋状の延伸包装フィルムを形成しながら、管(24)は、安定して固定される。通常上半分(60)側より下半分(58)側をより緊密に管(24)が螺旋状に捲回される。例えば、可変ピッチで漸進的に螺旋を増加する捲回法、個別の2条捲回法、重畳捲回法又は、介在物挿入捲回法等他の捲回法を使用することができる。給湯器(10)の構造を完成するには、図2及び図3について説明したように、その後層(34〜46)が付着される。包装された捲回体全体で管(24)を曲げて出口(28)が形成される。
【0013】
図5は、D型断面の管(24)の変形実施例の形態を示す。本実施の形態では、管(24)は、断面中央部(68)で窪んで膨出部(70,72)を有する繭形断面となる。繭形断面により、管(24)の両縁部及び接合隅部(56)への熱量の集中を増加し、管(24)の断面積内の冷媒速度を上げて、冷媒油の帰還量及び信頼性を向上する。
【産業上の利用可能性】
【0014】
前記好適な実施の形態は、特許文献1及び2に開示される技術と比較して、給湯器(10)の構造を簡素化するものである。比較試験では前記好適な実施の形態は、特許文献1及び2に示される給湯器(10)よりも性能が28%増加し、中温から高温領域では圧縮器と水との温度比が10%以上減少した。前記性能改善により、直接かつ効率的に圧縮器寿命を増加してかつ作動騒音出力を低減することが出来る。前記好適な実施の形態は、少なくとも28%より高い成績係数を示した。24時間の熱損失とそれ以降の熱回収を考慮すると、この値は、38%まで増加した。
【0015】
好適な実施の形態では、給湯器(10)としての使用例を記載したが、管(24)内の媒体が熱媒体でなく冷媒を使用する逆サイクル冷凍により冷やして水を水槽(12)により保持することもできる。
【0016】
本明細書では、用語「備えた」又は「備えている」他の意味を含む「備える」は、別途説明しない限り説明した完全充足体又は完全充足体群を包含することを意味し、他のいかなる完全充足体又は完全充足体群を除外するものではない。
【0017】
本明細書では、本発明の主要な本質と実施例による或る特徴の実施の形態のみを説明したが、本発明は当業者に自明な多くの修正及び本発明の技術的範囲と領域に包含されるものと認められる多くの修正を含むことは理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好適な実施の形態により製造した給湯器の斜視図
【図2】図1の点線包囲領域を示す給湯器の部分断面図
【図3】図2の点線包囲領域を示す部分拡大図
【図4】水槽に管を取付けて図1の給湯器を作る一連の工程図
【図5】図3に示す断面図の包装フィルムを使用しない変形例の断面図
【符号の説明】
【0019】
(10)・・給湯器、 (12)・・水槽、 (14)・・底部、 (16)・・頂壁、 (18)・・側壁、 (20)・・円筒ケース、 (22)・・蓋、 (24)・・管、 (25)・・管断面、 (26)・・入口、 (28)・・出口、 (30)・・底面、 (32,48,50,52)・・熱伝導性ペースト、 (34〜46)・・素材層、 (56)・・接合隅部、 (64)・・圧縮ローラ、 (66)・・軸、 (68)・・断面中央部、 (70,72)・・膨出部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱特性を有する材料により形成された壁部を有する水槽と、水槽の壁部の外周部に取り付けられかつ冷媒を搬送する管と、管の長さに沿って延伸しかつ水槽の壁部と管を熱伝達接触させる伝熱性材料と、水槽の壁部と管の周りに緊密に包装された少なくとも1つの材料層とを備えたことを特徴とする給湯器/冷水器。
【請求項2】
水槽の壁部に対して管を圧縮して取付け、少なくとも1つの材料層により管への圧縮力を保持する請求項1に記載の給湯器/冷水器。
【請求項3】
円形断面を有する管を水槽の壁部に押圧する圧縮力を加えて、D形断面に管を変形する請求項2に記載の給湯器/冷水器。
【請求項4】
円形断面を有する管を水槽の壁部に押圧する圧縮力を加えて、繭形断面に管を変形する請求項2に記載の給湯器/冷水器。
【請求項5】
少なくとも1つの材料層は、少なくとも1つの延伸包装フィルムと、延伸包装フィルム上に被覆された少なくとも1つの熱反射性材料層とを備える先行する請求項の何れか1項に記載の給湯器/冷水器。
【請求項6】
少なくとも1つの熱反射性材料層上に少なくとも1つの他の延伸包装フィルムを被覆した請求項5に記載の給湯器/冷水器。
【請求項7】
延伸包装フィルムは、ポリエチレンを主成分とする請求項5又は6に記載の給湯器/冷水器。
【請求項8】
伝熱性材料は、未硬化の伝熱性ペーストである先行する請求項の何れか1項に記載の給湯器/冷水器。
【請求項9】
少なくとも1つの延伸包装フィルム層は、伝熱性材料を気密に包囲する請求項5〜8の何れか1項に記載の給湯器/冷水器。
【請求項10】
水槽の長さの少なくとも85%に管を延伸させた先行する請求項の何れか1項に記載の給湯器/冷水器。
【請求項11】
管の長さと同じ広さで伝熱性材料を管又は水槽の壁部の一方に取り付けて、管と水槽の壁部とを熱伝達接触可能に水槽の壁部の周囲に管を捲回し、水槽の壁部と管の周りに少なくとも1つの材料層を緊密に包装したことを特徴とする給湯器/冷水器の形成法。
【請求項12】
管の各側の水槽の壁部に細長い伝熱性材料を取り付けて、細長い伝熱性材料を接合隅部に形成し、使用時に管の水槽の壁部との熱伝達を増加する請求項11に記載の形成法。
【請求項13】
添付図面について明細書に記載した給湯器/冷水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−521528(P2006−521528A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503974(P2006−503974)
【出願日】平成16年3月24日(2004.3.24)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000365
【国際公開番号】WO2004/085927
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(505363570)シドンズ・スティーブンス・ディベロップメンツ・ピーティーワイ・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】