説明

給湯機

【課題】出湯する湯の酸化力を低減する給湯機を提供する。
【解決手段】水や湯を蓄える貯湯タンク2と、貯湯タンク2に原水を導く原水回路3と、貯湯タンク2の湯と原水回路3の水を混合して出湯する出湯回路5と、出湯回路5から出湯する湯を改質する電解装置7とを有し、電解装置7は、少なくとも1対の陽極(図示せず)と陰極(図示せず)からなる電極と、電極間の水路を分離するセパレータ16と、電極間に電圧を印加する直流電源(図示せず)とを有し、電解装置7を通過する湯を陰極に導き電気分解することにより還元成分を発生させ、還元成分により出湯回路5の湯に含まれる酸化成分を分解し、出湯回路5より供給する湯の酸化力が、原水より減少するようにしたもので、簡単な構成で、酸化力が減少したお湯を得ると共に、それを利用することができ、また、定期的な薬剤の補給等のメンテナンスを必要としない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出湯する湯の湯質を改良し、酸化力が減少した湯を提供する給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の酸化力を低減した湯を供給する給湯機に使用される水処理装置は、図4に示すような構成であった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、従来の給湯機に使用される水処理装置の構成を示す図である。
【0004】
図4において、電解槽31は、陰極32を含む陰極室33と、陽極34を含む陽極室35とを備える。陰極室33と陽極室35とは隔膜36により分離されている。陰極室33には、陰極水(電解還元水)を取出す管37が接続されており、陽極室35には、陽極水(酸性水)を外部に排出する管38が接続されている。
【0005】
陰極室33および陽極室35のそれぞれには、給水管39が接続されており、電解槽31に導く水を、逆浸透膜に通過させることにより純水にする純水製造装置40と、純水製造装置40により生成した純水に、NaOHを添加するNaOH添加装置41が、給水管39上に配置されている。
【0006】
以上のよう構成された従来の給湯機に使用された水処理装置の動作を説明する。
【0007】
給水管39により導かれる水は、残留塩素(Cl)濃度が0.1ppm未満、また、塩化物イオン(Cl)濃度が5ppm以下で、実質的に含有しないよう純水製造装置40により除去される。次に、NaOH添加装置41により純水製造装置40により生成した純水に電解質としてNaOHを添加し、電解槽31で電気分解が行われる。陰極室33では、Naを高濃度で含有し、残留塩素濃度が0.1ppm未満の電解還元水が生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3933403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の給湯機の構成では、所望の水質を得るために、純水製造装置40により純水を製造した後に、NaOHを添加しており、構成が複雑で、しかも高コストな装置であり、また、定期的にNaOHを補充する必要がありメンテナンスが煩雑になる、という課題があった。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、メンテナンス性に優れ、安価な構成で酸化力が低減した湯を提供することができる給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の給湯機は、水や湯を蓄える貯湯タンクと、前記貯湯タンクに原水を導く原水回路と、前記貯湯タンクの湯と前記原水回路の水を混合して出湯する出湯回路と、前記出湯回路から出湯する湯を改質する改質手段とを有し、前
記改質手段は、少なくとも1対の陽極と陰極からなる電極と、前記電極間の水路を分離する隔膜と、前記電極間に電圧を印加する直流電源とを有し、前記改質手段を通過する湯を前記陰極に導き電気分解することにより還元成分を発生させ、前記還元成分により前記出湯回路の湯に含まれる酸化成分を分解し、前記出湯回路より供給する湯の酸化力が、前記原水より減少するようにしたもので、簡単な構成で、酸化力が減少したお湯を得ると共に、それを利用することができ、また、定期的な薬剤の補給等のメンテナンスを必要としない。
【発明の効果】
【0012】
本発明の給湯機は、出湯する湯を電気分解することで酸化力が低減した湯を提供することができるので、装置の構成を簡素にすることで安価な商品を提供することができ、また、定期的な薬剤の補給を必要とせずメンテナンスの煩雑さから開放される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における給湯機の構成図
【図2】同給湯機の電解装置の構成図
【図3】同給湯機のミネラル供給手段の構成図
【図4】従来の給湯機の構成図
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、水や湯を蓄える貯湯タンクと、前記貯湯タンクに原水を導く原水回路と、前記貯湯タンクの湯と前記原水回路の水を混合して出湯する出湯回路と、前記出湯回路から出湯する湯を改質する改質手段とを有し、前記改質手段は、少なくとも1対の陽極と陰極からなる電極と、前記電極間の水路を分離する隔膜と、前記電極間に電圧を印加する直流電源とを有し、前記改質手段を通過する湯を前記陰極に導き電気分解することにより還元成分を発生させ、前記還元成分により前記出湯回路の湯に含まれる酸化成分を分解し、前記出湯回路より供給する湯の酸化力が、前記原水より減少するようにしたもので、簡単な構成で、酸化力が減少したお湯を得ると共に、それを利用することができ、また、定期的な薬剤の補給等のメンテナンスを必要としない。
【0015】
第2の発明は、特に、第1の発明の改質手段は、原水では希薄なミネラルを投入するミネラル供給手段を有するもので、ミネラルの豊富な湯を利用したり、そのお湯に入浴することができる。
【0016】
第3の発明は、特に、第2の発明のミネラル供給手段は、出湯回路から出湯する湯のアルカリ度を増加させるアルカリ供給手段を有し兼ねるもので、省スペースで簡単な構成とすることができ、安価に給湯機を提供することができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における給湯機の構成図、図2は、同給湯機の電解装置の構成図、図3は、同給湯機のミネラル供給手段の構成図である。
【0019】
図1において、本実施の形態における給湯機の貯湯タンクユニット1は、内部に水と製造した湯を蓄える貯湯タンク2を有し、水道水、工業用水、地下水等の水源から供給される原水ライン(図示せず)に原水回路3により接続されている。
【0020】
通常、貯湯タンク2は、湯および水で満たされており、原水ラインの水圧がかかってい
る。給湯機から出湯する際は、原水回路3の水と、水が貯湯タンクに流入することで貯湯タンク2から押し出された湯とを、任意の温度になるよう混合手段4により調整し、注湯弁6を開放して出湯する。
【0021】
湯質を改質する改質手段として、出湯する湯の酸化力を減少する電解装置7と、原水では希薄なミネラルを投入しアルカリ度を増加させるミネラル供給手段8とが、出湯回路5上に配置されている。
【0022】
浴槽9の湯を循環させる循環回路10は、浴槽循環ポンプ11により循環され、出湯回路5は、循環回路10に接続されている。追焚熱交換器12は、タンク循環ポンプ13により貯湯タンク2の湯を導き、循環回路10の湯に熱を供給している。貯湯タンク2には、上部に高温の湯が、下部に低温の水が蓄えられており、ヒートポンプユニット(図示せず)の加熱手段(図示せず)により下部の水から湯を生成し、上部に蓄積している。
【0023】
図2は、電解装置7の構成図である。
【0024】
電解装置7は、陽極14と、陰極15の電極を対向して設置しており、流路を分離する隔膜としてのセパレータ16が両電極14、15間に配置され、陽極室17と陰極室18に分離されている。陽極14は、カーボングラファイト、白金メッキを施したチタン等を用いることができるが、耐久性と低コストを兼ね備えたカーボングラファイト電極が望ましい。陰極15は、チタン、ステンレス、カーボングラファイト等を用いることができる。
【0025】
給湯機から出湯する際は、電極14、15間に図示しない直流電源で直流の電圧を印加し、出湯回路5の湯は、電解装置7に導かれる際に分岐され、陰極室18を通過した湯が出湯される。一方、陽極室17を通過した湯は、排水弁19を開放することにより機外へ排出される。水道水は、消毒の為に塩素剤を注入しており、残留塩素により酸化力を有している。
【0026】
残留塩素(ClO)の濃度は、水道法施行規則で0.1ppm以上、また、水質管理目標設定項目として1ppm以下が示されている。電圧が印加された陰極15では、水を電気分解することで還元成分である水素を生成し、残留塩素は、水素と反応することで酸化力の無い塩化物イオン(Cl)に分解され、酸化力が減少する。
【0027】
印加した電流によって残留塩素の分解量が決まり、酸化力の減少量が決まる。水の電気伝導率は、温度が1℃上昇すると約2%増加するので、水温を増加させることで、必要な電流を得るために印加する電圧を低く抑えることができる。
【0028】
本実施の形態における給湯機は、出湯する高温の湯に対して電気分解を行うことができるので、印加電圧を低く抑えることができ、電源を簡素化することができるので、省スペースで安価な商品を提供することができる。また、酸化力を低減した湯を提供することができるので、肌や髪に優しい湯を利用することができ、入浴した際の皮膚への刺激が減少する。水道水中の残留塩素濃度は、浄水量の平均値が0.4ppmであり、酸化力を有している。電解装置7は、水道水中の残留塩素を通常の検出限界以下である0.02ppm以下に減少させ、肌や髪に対して優しい湯を提供することができる。
【0029】
一方、陽極室17では、水の電気分解により発生した酸素が、水に溶解している塩化物イオンと反応し、残留塩素を生成する反応が同時に起こる。陽極室17で生成した酸化成分は、出湯する湯と混合しないよう、セパレータ16で分離して排出される。
【0030】
セパレータ16は、電解装置7内で還元成分と酸化成分の混合を防止するよう水を分離し、かつ、電流を電極間に電流が通るよう導電性を持った材質であり、イオン交換膜、不織布、メンブレンフィルタ、連続発泡膜、造粒焼結体等を用いることができる。
【0031】
なお、陽イオン交換膜が、水の移動が微少であり、また、陽イオンを透過することで出湯する湯のアルカリ度を増加させることができるので、最も適している。出湯を停止した際は、電極間への電圧の印加を停止して水の電気分解ガスの発生を無くし、排水弁19を閉めて湯の漏出を防止する。
【0032】
図3は、ミネラル供給手段8の構成図である。
【0033】
ミネラル供給手段8は、略円筒形の上部に人間の必須元素である固体の無機塩ミネラルを樹脂網等で保持した溶解部20を有しており、給湯機の出湯停止時にミネラルが溶解し、出湯時に溶解したミネラル分と共に流すことで、出湯する湯にミネラルを供給することができる。
【0034】
ミネラル供給手段8は、水道水では希薄なミネラルを追加することができ、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、カリウム、カルシウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、セレン、モリブデン等の酸化物、水酸化物、炭酸塩、塩化物等の無機塩を用いることができる。
【0035】
なお、ミネラル供給手段8は、ミネラルを全て溶出すると補充の必要があるので、メンテナンスの頻度を減少させるため、溶解度の低い金属元素の酸化物が望ましい。また、必要量が少ない微量元素を選定することで、ミネラル補給効果を長期間維持することができる。
【0036】
また、水酸化物を選定することでアルカリ度を高めることができ、肌への浸透力が強いpHの高い湯を提供することができる。ミネラル剤として、水酸化亜鉛(Zn(OH))、酸化亜鉛(ZnO)、炭酸亜鉛(ZnCO)が適しており、単体または混合物として用いることができる。
【0037】
亜鉛は、成人の一日の必要量が10〜15mgであり、食品からの摂取状況は、男性で平均9.1mg、女性は平均7.6mgである。亜鉛は、細胞分裂に重要な酵素の構成成分であり、欠乏すると皮膚炎、味覚障害、胃腸機能の減衰、免疫機能低下等が起こる。
【0038】
サプリメントとしても亜鉛は定着しており、味覚を正常に保つのに必要な栄養素、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素、たんぱく質・核酸の代謝に関与して健康の維持に役立つ栄養素として認知されている。
【0039】
一方、水道水中の亜鉛濃度は、平均値が0.01ppm以下であり、大半の地域で検出限界以下であり、含有していない。ミネラル供給手段8は、水道水では希薄なミネラルを投入することで、ミネラルの豊富な湯を利用および入浴することができる。
【0040】
日本三大美人の湯は、川中温泉、龍神温泉、湯の川温泉と広く知られており、pHは7.8〜8.5程度と弱アルカリ性である。一方、水道水のpHは平均値が7.3と中性であり、pH7.8未満が浄水量の95%以上であり、大半の地域が美人の湯と呼ばれる弱アルカリ性ではない。ミネラル供給手段8は、ミネラルの投入と共にアルカリ度をpH7.8〜pH8.5に増加させ、弱アルカリ性の湯を提供することができる。弱アルカリ性の湯は、肌への水分の浸透力が強く、弱アルカリ性の湯を利用および入浴することで、みずみずしい肌を提供することができる。
【0041】
ミネラル供給手段8は、出湯回路5から電解装置7と分岐して湯を導入しており、ミネラル供給手段8の上流と下流にそれぞれ開閉手段21、22を配置している。開閉手段21、22は、注湯停止時にスプリング等で閉止状態に保たれており、開閉手段21、22に挟まれた空間でミネラルが飽和溶解する。注湯時は、開閉手段21、22が水流で開き、飽和溶解したミネラル成分が出湯される。ミネラルの投入量は、飽和溶解度のミネラルが供給されることから、開閉手段21、22に挟まれた空間の大きさで調整することができる。
【0042】
なお、給湯機の長期不使用時は、凍結防止等のため、内部の水を排出することが望ましい。開放弁23をミネラル供給手段8と上流の開閉手段21との間に配置し、長期不使用時に開放することで、ミネラルを飽和溶解度まで含有した水が電解装置7に流入することなく、ミネラル供給手段8および電解装置7内部の水を排出することができる。
【0043】
なお、本発明の出湯する湯を改質する改質手段を備えた給湯機は、ヒートポンプ式に限らず、電気ヒータ式、燃料電池式の加熱手段であっても湯を供給する機器であれば適応することができる。
【0044】
なお、上記実施の形態では、電解装置7とミネラル供給手段8とを出湯回路5に並列に配置しているが、電解装置7の下流にミネラル供給手段8を配置しても構わない。電解装置7により原水の酸化力を低減し、ミネラル供給手段8によりミネラルを付与した湯を提供できることに変わりはない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明にかかる出湯する湯を改質する改質手段を備えた給湯機は、原水より酸化力を減少した湯を提供することができることから、家庭用、産業用に制限されることなく、湯を提供する給湯機全般に適応することができる。
【符号の説明】
【0046】
2 貯湯タンク
3 原水回路
5 出湯回路
7 電解装置(改質手段)
8 ミネラル供給手段(改質手段)
14 陽極(電極)
15 陰極(電極)
16 セパレータ(隔膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水や湯を蓄える貯湯タンクと、前記貯湯タンクに原水を導く原水回路と、前記貯湯タンクの湯と前記原水回路の水を混合して出湯する出湯回路と、前記出湯回路から出湯する湯を改質する改質手段とを有し、前記改質手段は、少なくとも1対の陽極と陰極からなる電極と、前記電極間の水路を分離する隔膜と、前記電極間に電圧を印加する直流電源とを有し、前記改質手段を通過する湯を前記陰極に導き電気分解することにより還元成分を発生させ、前記還元成分により前記出湯回路の湯に含まれる酸化成分を分解し、前記出湯回路より供給する湯の酸化力が、前記原水より減少するようにした給湯機。
【請求項2】
改質手段は、原水では希薄なミネラルを投入するミネラル供給手段を有する請求項1に記載の給湯機。
【請求項3】
ミネラル供給手段は、出湯回路から出湯する湯のアルカリ度を増加させるアルカリ供給手段を有し兼ねる請求項2に記載の給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−13359(P2012−13359A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151793(P2010−151793)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】