説明

給湯装置

【課題】貯湯温度を維持させて総合的な効率向上をはかることができる密閉循環式の給湯装置を提供する。
【解決手段】原水供給部50から供給される原水を貯留可能であり、その上部に形成される循環温水領域に貯留された貯留水を給湯部21に循環給湯管路22を介して供給する密閉循環型の貯湯タンク30と、貯湯タンク30から取水した水を加熱して貯湯タンク30の循環温水領域へ供給するヒートポンプ40と、運転モードに応じて、貯湯タンク30の上部に設けられた上側取水部31又は貯湯タンク30の下部に設けられた下側取水部32のいずれか一方側からヒートポンプ40へ選択的に流入させる取水部切換機構34とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は即時給湯を可能とした貯湯タンクを備える給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ランニングコストが低いことなどからヒートポンプを用いた貯湯式の給湯装置が、大衆浴場や所謂スパ(温泉などを中心としたリラクゼーション施設)などの業務用や家庭用として広く採用されている。特に、業務用の給湯装置においては給湯箇所での即時給湯が求められるため、循環式給湯が必須であり、割安な夜間電力を有効利用できて種々の用途にも対応できる給湯システムが望まれている。
例えば、特許文献1にはヒートポンプと、このヒートポンプで加熱された温水を蓄える貯湯タンクと、この貯湯タンクと給湯部との間を循環する循環流路とを備える循環式の給湯装置が開示されている。
このような給湯装置における給湯方式は、貯湯タンク内の湯が大気に開放されているか否かにより、大まかに開放式と密閉式に大別されている。
開放式の給湯装置では一般的に成層貯湯は行なわず貯湯タンク内の温度はほぼ均一として、貯湯タンク内の湯量(水位)と湯温制御を行なう。貯湯タンク内の湯温低下時は高温の湯を加えるか循環加温で対応する。このため、貯湯タンク内の湯量が増えたり、残湯全てを加温したりすることとなり効率的ではなかった。
一方、密閉式の給湯装置は、貯湯タンク上部から成層貯湯するもので、熱損失が少なく保温性に優れ、貯湯タンク内の湯温低下時などにおいてヒートポンプの効率的な運転制御を図ることができる。また、二酸化炭素(CO2)を冷媒とするヒートポンプ給湯機ではその特性上、給水温度を低温から高温へ加熱する能力に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−30642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、貯湯タンク上部から成層貯湯する密閉式の給湯装置では、貯湯タンク内の湯温低下時に残湯部分のみの加温を効率的に行なうことができず、結果として残湯以外の部分まで加温してしまったり、温度によっては残湯は加温できずに蓄熱量が低下してしまうといった欠点があった。
また、CO2冷媒などを用いたヒートポンプ給湯機では、近年、性能が向上して保温運転時等の中間温度を加温するものが開発されているものの、その特性上、中温→高温への加熱能力は低温からの加熱に対し制限され、効率も低くなり、使い方によっては省エネルギー性が低下し、ランニングコストの増加を招いてしまうという欠点もあった。
【0005】
さらに、このような循環式の場合、循環流路内の温水を所定の温度範囲に保持するために、循環流路を循環する温水はタンク内の温水から熱供給を受けて加熱される。このため、高温湯の温度低下がはなはだしくなるおそれがある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、給湯循環その他熱負荷による貯湯温度の低下に対し、貯湯量を増加させることなく貯湯温度を維持させることによって総合的な効率向上をはかることができる密閉循環式の給湯装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の給湯装置は、(イ)原水供給部から供給される原水を貯留可能であり、その上部に形成される循環温水領域に貯留された貯留水を給湯部に循環給湯管路を介して供給する密閉循環型の貯湯タンクと、(ロ)前記貯湯タンクから取水した水を加熱して前記貯湯タンクの前記循環温水領域へ供給するヒートポンプと、(ハ)運転モードに応じて、前記貯湯タンクの上部に設けられた上側取水部又は前記貯湯タンクの下部に設けられた下側取水部のいずれか一方側から前記ヒートポンプへ選択的に流入させる取水部切換機構と、を備えている。
【0008】
(2)本発明は前記(1)記載の給湯装置において、(イ)前記運転モードは、前記循環温水領域の温度を保つ保温運転モードと、前記貯湯タンク内の温水レベルを制御する貯湯運転モードとがあり、(ロ)前記取水部切換機構は、前記保温運転モードでは前記上側取水部から、前記貯湯運転モードでは前記下側取水部から前記貯留水を前記ヒートポンプに流入させることを特徴とする。
【0009】
(3)本発明は前記(1)又は(2)記載の給湯装置において、前記取水部切換機構は、前記上側取水部から伸延する上側取水管と、前記下側取水部から伸延する下側取水管とに連接され、前記貯留水を前記ヒートポンプに選択供給する三方弁を備えていることを特徴とする。
【0010】
(4)本発明は前記(1)〜(3)記載の給湯装置において、前記貯湯タンクがその軸を水平とする円筒横置き型であって、前記ヒートポンプからの温水が流入する注湯口と前記上側取水部とが、前記貯湯タンクにおける前記循環温水領域の下限の左右対称位置に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、貯湯タンクの取水部から採取された水をヒートポンプにより加熱してタンク上部に設けられた注湯口に供給する際に、運転モードに応じてタンクに複数配置された取水部を切り換える取水部切換機構を備えるので、給湯循環その他熱負荷による貯湯温度の低下に対してタンク貯湯量を増加させることなくタンク内の貯湯温度を維持させ、総合的な効率向上をはかることができる。
また、給湯部における循環給湯管路の湯温低下を防止するための専用熱源機器などを設ける必要がなく、流路構成を単純化できるため、イニシャルコストの増加を防止でき、割安な夜間電力によるヒートポンプ稼働の利点などを生かした省エネルギ性に優れた給湯装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る給湯装置の全体構成図である。
【図2】同給湯装置の流路構成を示す説明図である。
【図3】同給湯装置における貯湯タンクの説明図である。
【図4】同給湯装置の各運転モードにおける貯湯タンクの温度変化のグラフである。
【図5】同給湯装置の貯湯運転モードにおける動作説明図である。
【図6】同給湯装置の保温運転モードにおける動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態に係る給湯装置は、原水供給部から供給される原水を貯留してその上部に形成される循環温水領域に貯留された貯留水を給湯部に循環給湯管路を介して供給する密閉循環型の貯湯タンクと、前記貯湯タンクの取水部から採取された水を加熱してそのタンク上部に設けられた注湯口に供給するヒートポンプと、貯湯状況や前記給湯部の使用状態などの運転モードに応じて前記貯湯タンクに設けられた上側取水部及び下側取水部を切り換える取水部切換機構と、を備えている。これによって、夜間や昼間などの時間帯によってそれぞれ異なる給湯部の運転モードに応じてタンク取水位置を適宜切り換えて調整し、給湯循環その他熱負荷による貯湯温度の低下に対して貯湯量を増加させることなく給湯装置を効率的に稼働させることができる。
【0014】
すなわち、本実施形態の給湯装置は以下のような効果を有している。
(a)保温運転時には、貯湯タンク上部に形成される循環温水領域に貯留した湯のみを加温するのでタンク内上下方向に高温から低温に至る層状の温度分布を維持しながら無駄な沸き上げを抑制して放熱ロスを抑えられる。一方、貯湯運転時には貯湯タンク内全部を循環させながら効果的に加熱できる。
(b)高温貯湯して水と混合して給湯する場合より、貯湯温度を低くすることが可能となるため、COPを高くできる。
(c)三方弁などの取水部切換機構を用いることにより保温運転又は貯湯運転に際して上側取水部及び下側取水部とを容易に切り換えることができるので、貯湯タンクを給湯使用温度に維持するのに必要な温度調整用の混合弁等や煩雑なメンテナンスを不要として低コストで構築可能な簡素なシステムとすることができる。
(d)割安な夜間電力を用いて沸き上げを有効に行ない、ランニングコストの低い高効率の貯湯運転を行なうことができ、省エネ性に優れた給湯循環のシステムを構築できる。
(e)大気熱を有効利用できるヒートポンプの特性を活かすことができ、加熱能力の範囲で暖房や浴槽昇温等の負荷変動にも対応できる。
【0015】
貯湯タンクは、横置き又は縦置きとなる略円筒形や箱型の密閉循環型耐圧容器などであって、水道設備などの原水供給部から供給される原水を貯留してその上部に貯留された温水を、蛇口やシャワーヘッド等の各種出湯端末を取り付けた給湯部に循環給湯管路を介して供給する。貯湯タンクには、ヒートポンプに連結してヒートポンプにタンク内の水を送るための上側取水部や下側取水部などの取水部と、ヒートポンプにより加熱された温水をタンク内に供給するための注湯口とが設けられている。
【0016】
ヒートポンプは、貯湯タンクの取水部(上側取水部、下側取水部)のいずれか一方から採取された水を熱交換器により加熱してそのタンク上部に設けられた注湯口に供給するための装置系であって、二酸化炭素などの自然冷媒を介して取り出された大気の熱により水を加熱する給湯システムの要素である。このヒートポンプユニットは、圧縮機や貯湯用熱交換器、ヒートポンプ熱交換器、アキュムレータなどが配設されて構成される。圧縮機により冷媒を高温に圧縮して、圧縮機から吐出された冷媒の熱により湯または水を加熱する。自然冷媒が二酸化炭素を多量に含有する場合には、フロン系冷媒に比べ冷媒圧力を高くして高温が得られる上に、環境保護性にも優れたものとすることができる。
【0017】
このようなヒートポンプを用いたシステムでは、大気の熱を移動するだけなので投入エネルギーよりも多くの熱エネルギーを利用でき、ランニングコストに優れている。すなわち、ヒートポンプによるシステムは、化石燃料を燃焼させて加熱するボイラなどの加熱装置に比べて効率がよく、環境への負荷も低い。さらに、安価な夜間電力を利用した高温貯湯を行なうことで蓄えた熱を利用して貯湯温度よりも低い温度で循環給湯を行なってランニングコストの低減を図ることが可能である。
【0018】
取水部切換機構は、給湯部における湯の使用状態やその時間帯などの運転モードに応じて前記貯湯タンクに設けられた複数の取水部の位置を変更調整してタンク内湯温分布を所定範囲に維持させるための機構である。なお、このような取水部切換機構としては、例えば、貯湯タンクに設けられた複数の取水部に接続された各流路を切り換えるための三方弁などの流路切換バルブや、タンク内でその先端が上下方向にスライド伸縮自在に設けられてタンク取水口の位置を上下動させるための駆動部、タンク内温度分布を取得するために複数設置された温度センサ、これらの温度センサやタイマなどのデータに基づいて三方弁やこれらの駆動部を制御するための制御部などにより構成することができる。
【0019】
本実施形態に係る給湯装置の運転モードには、前記循環温水領域の温度を保つ保温運転モードと、前記貯湯タンク内の温水レベルを制御する貯湯運転モードとがあり、前記保温運転モードでは前記上側取水部から、前記貯湯運転モードでは前記下側取水部から前記貯留水を前記ヒートポンプに流入させることができる。
【0020】
貯湯タンクからヒートポンプへの貯留水の流路に取水部切換機構として三方弁を設けることによって、給湯装置の各使用モードに応じて貯湯タンク下部の下側取水部又は貯湯タンク上部の上側取水部に取水位置を切り換えることで貯湯運転や保温運転に設定できる。
この場合、貯湯運転(貯湯タンク内で特定温度以上となる湯量が増加する)時には貯湯タンク下部に設けた下側取水部から取水して沸き上げる。一方、保温運転(貯湯タンク内の湯量は変わらず上部の湯温だけを上昇させる)時には貯湯タンク上部に設けた上側取水部から取水して加温する。
なお、ヒートポンプから貯湯タンクへ高温水を出湯するための接続口はいずれの場合もタンク上部側に設けた注湯口に接続されており、高温水は貯湯タンクの頂部側から供給され、給湯部からの循環水も貯湯タンク頂部側に戻される。こうして、貯湯タンク頂部の温度が目標温度になるようにヒートポンプからの高温水の温度又はタンクへの供給水量が制御される。
【0021】
なお、本実施形態において前記取水部切換機構は、前記上側取水部から伸延する上側取水管と、前記下側取水部から伸延する下側取水管とに連接され、前記貯留水を前記ヒートポンプに選択供給する三方弁を備えることができる。こうして、前記貯湯タンクの上部及び下部に上側取水部、下側取水部とを三方弁に連接して設け、前記貯湯タンクから採取されるタンク貯留水を前記ヒートポンプに選択供給する。これによって、三方弁の切り換え操作により、給湯装置をその保温運転と貯湯運転とに複雑な制御系などを用いることなく設定でき、メンテナンス性や操作性、コスト性に優れた給湯装置を提供することができる。
【0022】
さらに、本実施形態に係る給湯装置は、前記貯湯タンクがその軸を水平とする円筒横置き型とすることもできる。その場合、前記ヒートポンプからの温水が流入する注湯口と前記上側取水部とを、前記貯湯タンクにおける前記循環温水領域の下限の左右対称位置に設けることができる。これによって、ヒートポンプでの保温運転時には注湯口より上方の残湯部分全体を徐々に昇温することになる。つまり、貯湯タンク最上部温度(=給湯循環温度)の急な上昇なしに所定の温度になるまで残湯部分の昇温ができる。さらに上側取水部と注湯口の距離を置くことでショートサイクル防止にもなっている。
【0023】
なお、給湯装置には、ヒートポンプに接続される取水部や注湯口、給湯部における循環給湯管路の接続部、原水供給部に接続される原水供給部などに流入する高温水や低温水を一旦受けて減速させるための整流部材を貯湯タンク内に配設することもできる。
【0024】
このような整流部材を貯湯タンク内に設けることで貯留水がタンク内で撹拌・対流が生じるのを防止できる。例えばヒートポンプで加熱されて貯湯タンクに注入される湯は、貯湯タンクの上部から底部へ順次積層される態様、すなわち、原水との界面を保った状態で貯えることができる。
また、蛇口などの給湯部で給湯された分だけの原水が原水供給部から貯湯タンク内部に底部側から供給される。これによって貯湯タンク内は常に満たされた状態となるが、追加された原水はタンク下側に配置された整流部材によって、タンク内で撹拌・対流が抑制された状態でタンク底部に留まり、高温湯と原水との界面は乱れることなく保持される。こうして貯湯タンク内では高温水と低温水とが層状に貯蓄されるものの、高温水と低温水との間で熱交換がなされ、高温水と低温水(原水)との間には小幅ではあるが中温域の層も形成されることになる。
【0025】
なお、夜間電力を用いてヒートポンプにより加熱して貯湯する場合、低温の原水は下側取水部から取り込まれて高温湯となって貯湯タンク内に還流されるため、貯湯タンク内のほとんどの領域を所定温度の湯に維持することができ、従来と同じ容積の貯湯タンクで有効温度の湯水をより多量に貯蔵することができる。こうして、給湯装置を前述したスパなどに適用して、より少ない容量の貯湯タンクを使用することができ、貯湯タンクに要する部品コストを低減できるとともに、より狭い設置スペースに設置できる。
【0026】
また、貯湯タンク内の湯を所定温度範囲に保持するためにタンク貯留水の温度を検出するための温度センサと、この温度センサが検出した温度に基づいて取水部切換機構としての三方弁などの弁開度を制御する制御装置とを備えた構成とすることも可能である。
【0027】
また、給湯装置の他の実施形態として、給湯部に連接される循環給湯管路と前記ヒートポンプからの高温水が供給される注湯口とを三方弁などを介して連結するようにしてもよい。この際、三方弁の開度についても上記制御装置によって自動制御可能とするとよい。例えば三方弁の動作機構として電磁弁を設けてオンオフ制御したり、流量調整バルブを設けて流量調整を自動制御したりして一定量に調整することなども考えられる
【0028】
さらに、化石燃料などを用いたヒータを備えた貯湯用補助循環流路を前記貯湯タンクに連通連結して、ヒートポンプによる加熱と併用することもできる。すなわち、ヒートポンプに加え、例えば大気圧ヒータ(無圧ヒータ)なども適用でき、かかるヒータを用いれば量の湯を短時間で貯湯タンク内に満たすことが可能となり、湯を大量消費する場合などに対応できる。このような大気圧ヒータなどを併用することによって、ヒートポンプでランニングコストの低減を図りつつ、低温時の能力不足や湯切れの不安を解消することができ、業務用として好適となる。ヒートポンプの場合、浴槽の湯を昇温させるような中温から高温へ加温することがその特性上難しいが、大気圧ヒータを用いれば簡単に対応できる。
【0029】
以下、本発明に係る給湯装置の実施形態について図面を参照してさらに具体的に説明する。
(実施形態)
図1は本発明の一実施形態に係る給湯装置の全体構成図であり、図2は同給湯装置の流路構成を示す説明図である。図3は同給湯装置における貯湯タンクの説明図である。
図示するように本実施形態の給湯装置10は、利用者に高温水を供給するための蛇口やシャワーヘッドなどの出湯端末21に循環給湯管路22を介して湯を供給する給湯部20と、その循環温水領域に高温水を貯留する横置き円筒状に形成された密閉循環型の貯湯タンク30と、貯湯タンク30に設けられた上側取水部31又は下側取水部32からそれぞれの上側取水管31b及び下側取水管32bを介して取り込まれたタンク貯留水を加熱してタンク頂部の循環温水領域に設けられた注湯口33に循環供給させるためのヒートポンプユニット40を備えている。
【0030】
ここで上側取水部31はタンク内上部に層状分布する循環温水域内の下限近傍に配置される。下側取水部32はタンク底部の低温度域下部に配置されている。これらの取水部切換機構を構成する上側取水部31及び下側取水部32は、三方弁34を介してヒートポンプユニット40の取水口41にそれぞれ接続されるようになっていて、給湯部20における出湯端末21の使用時間帯やタンク内温度分布状態などの運転使用モードに応じて貯湯タンク30に設けられた各取水部31,32とヒートポンプユニット40との接続流路を切り換えることができるようになっている。
【0031】
貯湯タンク30は図示するように、横置きされた略円筒状の本体部30aにおける左右端を膨出状に形成して封止した細長カプセル状の形態を備え、本体部30a底部に設けた脚部30bなどを介して配設されている。また、本体部30a底部近傍の位置には、水道水等の原水を供給する原水供給路である原水給水管50が連結されている。この原水給水管50から貯湯タンク30内に原水が加圧供給されることによって、貯湯タンク30内が加圧状態に維持されている。
【0032】
貯湯タンク30底部には、タンク底に貯留した貯留水を昇温するための下側取水部32が設けられており、この下側取水部32は三方弁34を操作することによって上側取水部31と交互にそのタンク取水位置を切り換えて、ヒートポンプユニット40の取水口41に連結可能としている。ヒートポンプユニット40には、ヒートポンプや熱交換器などにより加熱昇温した湯水を出水するための出水口42が設けられており、この出水口42は貯湯タンク30へ湯水を注入するための注湯管43の始端を連結し、この注湯管43の終端が貯湯タンク30上側部に設けた注湯口33に連通させている。貯湯タンク30の天井中央には出入湯部35が配置され、この貯湯タンク30内に貯えられた湯水を給湯部20の蛇口などの出湯端末21へ循環供給するための循環給湯管路22の出湯部23及び入湯部24が連結されている。こうして、この循環給湯管路22の終端は貯湯タンク30に連通され、給湯部20を経由して循環する湯が入湯部24を介してタンク内に戻されるようになっている。
【0033】
ヒートポンプユニット40は、周知のヒートポンプを構成する圧縮機や熱交換器、循環ポンプ44などを具備しており、このヒートポンプユニット40によって、貯湯タンク30内の貯蔵水を加熱・昇温するための貯湯用循環流路が形成されている。
こうして、例えば深夜などにおける貯湯運転時など、給湯不要の時間帯では、貯湯タンク30内の低温水は、貯湯タンク30→下側取水部32→三方弁34→ヒートポンプユニット40→注湯管43→注湯口33→貯湯タンク30へと循環させることで安価な深夜電力によって90℃程度までの高温湯として貯えられることになる。
一方、保温運転時には、貯湯タンク30内の水又は低温湯は、貯湯タンク30→上側取水部31→三方弁34→ヒートポンプユニット40→注湯管43→注湯口33→貯湯タンク30へと循環されることになる。
【0034】
循環給湯管路22には貯湯タンク30天井中央の出入湯部35が接続され、循環給湯管路用ポンプ25を連通配置している。この循環給湯管路22には、蛇口・シャワーヘッド等の各種出湯端末21を連通連結させており、貯湯タンク30の内部圧力によって貯湯タンク30内の湯水が出湯部23から循環給湯管路22内に吐出され、出湯端末21に供給されることになる。
【0035】
ところで、循環給湯管路22は電磁弁などの混合弁を介して前述した原水給水管50に接続することもでき、この電磁弁を介して高温湯と冷水である原水とを混合することによって、循環給湯管路22内を例えば60〜70℃の温度範囲の湯で常時満たすこともできる。なお、電磁弁の弁駆動操作によって循環給湯管路22への原水の流入量を制御可能としてもよい。
【0036】
また、図1、図2に示すように循環給湯管路22に設けた循環給湯管路用ポンプ25を駆動させることで循環給湯管路22内の湯を当該循環給湯管路内で巡回させることができる。したがって、前記出湯端末21からの要求に応じて即時給湯することが可能となっている。なお、図示しないが、出湯端末21には、その内部の取水路中に原水を取り込むことのできる湯水混合機構を備えることができ、使用者は所望する温度の湯水をいつでも取水できる。
【0037】
以上説明した本実施形態において特徴的な構成は、その運転モードに応じて貯湯タンク30における上側取水部31、下側取水部32の位置を変更するための三方弁34などの取水部切換機構を備えたことである。これによって、給湯循環その他熱負荷による貯湯温度の低下に対して貯湯量を増加させることなく、タンク内上部側から下部側に向って漸次温度低下する安定層状の温度分布状態を保持して総合的な効率向上をはかることができる。
【0038】
図4は給湯装置10における貯湯タンク内温度分布の時間変化を示すグラフである。図示するように貯湯タンク30の側面に沿って配置された温度センサT1〜T11及び、ヒートポンプユニット40に接続する循環給湯管路22の出入湯部35(出湯部23、入湯部24)に配置された温度センサによりそれぞれの温度変化を計測した。ここでは、循環負荷が小さい保温運転時(12:00〜22:00)と、給湯部20への湯供給が抑制される貯湯運転時(22:00以降)における貯湯タンク30内上下方向の温度分布の様子が示されている。
すなわち、温度センサT1〜T5が配置されている貯湯タンク30の循環温水領域の上部域において、その貯留水の温度は約60度前後に維持されている。なお、図1、図3などに示すようにこの上部域の略下限に上側取水部31と注湯口33とが略同一水平面上に配置されている。
【0039】
図6に示す保温運転時には、上側取水部31からヒートポンプユニット40に取水され、次にヒートポンプユニット40により加熱された温度(HP)の高温水がタンク頂部の上部側面に設けられた注湯口33から貯湯タンク30に供給される。こうして、タンク上部(温度センサT1〜T5が配置された領域)を貯留水が循環する所定温度の循環温水領域として確保し、そのタンク下部領域(温度センサT5〜T11が配置された領域)を比較的低温の貯留水用として利用できる。
【0040】
すなわち、昼間などの保温運転時には、三方弁34は貯湯タンク30の上側取水部31より取水する側に設定され、循環温水領域内における規定温度の湯の量である残湯量が設定した目標値以上で、かつタンク内における前記循環温水領域の湯の温度である残湯温度が目標温度−α(αは保温運転ディファレンシャル)となるようにヒートポンプユニット40の循環ポンプ44や、ヒートポンプを調整して温度制御される。例えば、ヒートポンプからは目標温度よりも高温の湯が供給され、残湯のうち上部の温度が上昇する。例えば、残湯温度設定が65℃、循環給湯管路22における行き帰りの循環湯の温度差(ディファレンシャル)が5℃のとき、タンク内の残湯温度が60℃になったら残湯温度が65℃になるように制御する。なお、タンク鉛直方向の温度をサーミスタT(温度センサ)により数点測定して、これらのデータに基づいてタンク内の残湯量を計算することができる。
【0041】
図5に示す貯湯運転時には、三方弁34を切り換えることによって下側取水部32からヒートポンプユニット40にタンク底部側に滞留する低温の貯留水が送られる。次にヒートポンプユニット40により加熱された高温水が注湯口33から貯湯タンク30に供給される。こうして、貯湯タンク30の全領域(温度センサT1〜T11が配置された領域)に渡って貯留水をタンク内で循環させることによって、図4に示すような効率的な運転制御を可能にしている。
【0042】
すなわち、夜間又は昼間における貯湯運転時には、三方弁34は本体部30aの下側取水部32より取水する側に設定され、循環温水領域内の残湯量が設定した目標値以下の時、目標値になるまで残湯量を制御する。ヒートポンプユニット40からは目標温度の湯が供給される。例えば、夜間は目標100%(全量沸上)、昼間は目標25%(湯切れ防止)になるまで貯湯運転する。いずれの目標値も設定により変更可能である。また、タンク鉛直方向の温度をタンク側面に設けたサーミスタT(温度センサ)により数点測定して、これらのデータに基づいて循環温水領域内の残湯量を計算することができる。なお、以上の図5及図6においてタンク内における貯留水の温度状態を模式的に表記している。
【0043】
また、給湯装置10の使用状況により変動する貯湯タンク30内の温度分布を温度センサにより取得解析して、このような温度分布データに基づいて取水部切換機構によりタンク取水部の高低位置を適宜調整することも可能である。
【0044】
貯湯タンク30は図3(b)の平面図に示すように、そのタンク天井側の出入湯部35には循環給湯管路22から流入流出する返り湯などを一旦受けて分散させながら貯湯タンク30天井部側へ導く給湯側整流部材35aを配設するとともに、上側取水部31及び注湯口33それぞれのタンク内先端取水口や給水口にもそれぞれ貯留水の流れを分散制御するための取水側整流部材31a、給水側整流部材33aを設けている。
【0045】
これらの各整流部材31a,33a,35aは、それぞれ左右水平方向に延びる平板状などに形成されており、それぞれの長手側開口端をタンク軸に沿うように配設している。なお、各整流部材の開口端と本体部30a内面との間には適宜寸法の間隙がそれぞれ形成してある。
【0046】
こうして、循環給湯管路22からの返り湯や、ヒートポンプユニット40からの加熱水、上側取水部31からヒートポンプユニット40に吸引される貯留水は、各整流部材31a,33a,35aによりその流れが制御されて緩やかに吐出又は吸引されるようにしている。したがって、タンク下部の原水給水管50から給水された原水などと高温水とが過度に撹拌混合されることがなく、冷たい原水や、ヒートポンプユニット40で加熱された温水は貯湯タンク30のそれぞれの温度帯域に層状に安定して貯えられることになる。
【0047】
すなわち、貯湯タンク30に整流部材を設けることによって、循環給湯管路22から戻された湯は貯湯タンク30上部の循環温水領域内に貯留され、例えば、貯湯タンク30の下部側に貯留された低温水とヒートポンプユニット40から供給される高温水とが混合されて湯温が急激に低下するなどのおそれがない。したがって、循環給湯管路22に対して相対的に高温湯を常時供給することが可能となり、給湯装置として効率的な給湯が可能となる。
【0048】
以上説明したように本発明の給湯装置は、その運転モードに応じて貯湯タンクに複数配置された取水部を切り換えることによって、給湯循環などの負荷変動に伴う貯湯温度の低下に対して貯湯量を増加させることなく貯湯温度を維持させ、総合的な効率向上をはかることができるようにしたことを要旨とするものである。すなわち、上述の実施形態より以下の給湯装置を実現することができる。
【0049】
原水供給管50(原水供給部)から供給される原水を貯留可能であり、その上部に形成される循環温水領域に貯留された貯留水を給湯部20に循環給湯管路22を介して供給する密閉循環型の貯湯タンク30と、前記貯湯タンクから取水した水を加熱して前記貯湯タンクの前記循環温水領域へ供給するヒートポンプユニット40(ヒートポンプ)と、運転モードに応じて、前記貯湯タンクの上部に設けられた上側取水部31又は前記貯湯タンクの下部に設けられた下側取水部32のいずれか一方側から前記ヒートポンプへ選択的に流入させる取水部切換機構(三方弁34など)と、を備えた給湯装置10。
【0050】
前記運転モードは、前記循環温水領域の温度を保つ保温運転モードと、前記貯湯タンク内の温水レベルを制御する貯湯運転モードとがあり、前記取水部切換機構は、前記保温運転モードでは前記上側取水部31から、前記貯湯運転モードでは前記下側取水部32から前記貯留水を前記ヒートポンプ40に流入させる給湯装置10。
【0051】
前記取水部切換機構は、前記上側取水部31から伸延する上側取水管31bと、前記下側取水部32から伸延する下側取水管32bとに連接され、前記貯留水を前記ヒートポンプ40に選択供給する三方弁34を備えている給湯装置10。
【0052】
前記貯湯タンク30がその軸を水平とする円筒横置き型であって、前記ヒートポンプ40からの温水が流入する注湯口33と前記上側取水部31とが、前記貯湯タンク30における前記循環温水領域の下限近傍に設けられている給湯装置10。
【0053】
なお、本実施形態に記載された給湯装置は、本発明から生じる最も好適な構成のものを列挙したに過ぎず、本発明は上述してきた実施形態のものに限定されるものではない。
例えば本実施形態ではヒートポンプ40へ貯留水を供給するための選択可能な取水部として上側取水部31と下側取水部32を貯湯タンク30に設ける例について記載したが、タンク側壁に沿って3箇所以上の取水部を設けて、取水部切換機構によりこれらを選択して給湯装置の運転モードに応じた給湯条件を適宜設定するようにすることも可能である。また、本実施形態の貯湯タンクとして円筒横置き型のものを例に説明したが、直立された円筒縦置き型の貯湯タンクについても同様に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 給湯装置
20 給湯部
21 出湯端末
22 循環給湯管路
23 出湯部
24 入湯部
25 循環給湯管路用ポンプ
30 貯湯タンク
30a 本体部
30b 脚部
31 上側取水部
31a 取水側整流部材
31b 上側取水管
32 下側取水部
32b 下側取水管
33 注湯口
33a 給水側整流部材
34 三方弁(取水部切換機構)
35 出入湯部
40 ヒートポンプユニット
41 取水口
42 出水口
43 注湯管
44 循環ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水供給部から供給される原水を貯留可能であり、その上部に形成される循環温水領域に貯留された貯留水を給湯部に循環給湯管路を介して供給する密閉循環型の貯湯タンクと、
前記貯湯タンクから取水した水を加熱して前記貯湯タンクの前記循環温水領域へ供給するヒートポンプと、
運転モードに応じて、前記貯湯タンクの上部に設けられた上側取水部又は前記貯湯タンクの下部に設けられた下側取水部のいずれか一方側から前記ヒートポンプへ選択的に流入させる取水部切換機構と、
を備えたことを特徴とする給湯装置。
【請求項2】
前記運転モードは、前記循環温水領域の温度を保つ保温運転モードと、前記貯湯タンク内の温水レベルを制御する貯湯運転モードとがあり、
前記取水部切換機構は、
前記保温運転モードでは前記上側取水部から、前記貯湯運転モードでは前記下側取水部から前記貯留水を前記ヒートポンプに流入させることを特徴とする請求項1記載の給湯装置。
【請求項3】
前記取水部切換機構は、
前記上側取水部から伸延する上側取水管と、前記下側取水部から伸延する下側取水管とに連接され、前記貯留水を前記ヒートポンプに選択供給する三方弁を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の給湯装置。
【請求項4】
前記貯湯タンクがその軸を水平とする円筒横置き型であって、前記ヒートポンプからの温水が流入する注湯口と前記上側取水部とが、前記貯湯タンクにおける前記循環温水領域の下限の左右対称位置に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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