説明

給紙トレイ、給紙装置、及び画像形成装置

【課題】 シート材の材質・大きさ、またその端部状態に因らず、シート材を画像形成装置内へとスムーズに搬送することを可能にし、スキュ−の発生を防ぎ、シート材の引っ掛かりに起因するジャムの発生を防ぐことを可能にするシート材供給装置を提供する。
【解決手段】 シート材を積層状態で保持する給紙トレイにおいて、シート材搬送方向側のトレイ側壁をシート材中央部とシート材端部とで高低差をつけたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真式複写機、プリンタ、ファクシミリ、印刷機あるいはこれらの複合機等の画像形成装置に用いられるシート材供給装置に関し、特にその給紙トレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、画像形成装置に装備されるシート材供給装置(給紙装置)は、四方をトレイ側壁により包囲され且つ上下方向へ回動可能に構成された底板上にシート材を積載し、シート材最上面に接する給紙コロによって最上部のシート材から一枚ずつ送り出され、トレイ側壁の上端を超えて給紙トレイ内から画像形成装置内へと搬送される構造となっている。
斯かる装置において、底板上に積載されるシート材はその保管環境や自身の特性によって端部が巻状(カール癖)になることがあり、このシート材端部の変形部分がトレイ内から画像形成部内へと搬送される過程でトレイ側壁に引っ掛かることでスキュー・不給紙等の給紙不良が起こる。
そこで、従来はトレイ側壁に用紙が突き当たるのを防ぐため、シート材幅方向全域にわたり、シート材の進行経路に位置する側壁の高さを低くするといった対策がなされてきたが、側壁の高さが低くなると用紙の分離性が低下し、用紙がブロック状態のまま用紙分離部に進入することで重送・不給紙などのジャムが発生するという欠点を有する。
また、トレイ内部の湿度、温度などの環境を一定に保つことで用紙端部の変形を防ぐといった施策があるが、この場合には除湿ヒーター等の装置設置に伴うコストなどの点で問題がある。
また、特開2001−213528公報には、給紙カセットの前縁部に斜面を形成し、斜面の傾斜角度を中央部と幅方向郎端部とで異ならせることにより、安定した給送動作を実現するようにしたシート材給送装置が開示されているが、シート材端部の変形等、端部状態、シート材の材質、大きさ等によっては、トレイ内から画像形成部内へと搬送される過程でトレイ側壁に引っ掛かることでスキュー・不給紙等の給紙不良が起こる、という不具合を十分に解消することができない。
【特許文献1】特開2001−213528公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上述した問題点を考慮してなされたもので、シート材の材質・大きさ、またその端部状態に因らず、シート材を画像形成装置内へとスムーズに搬送することを可能にし、スキューの発生を防ぎ、シート材の引っ掛かりに起因するジャムの発生を防ぐことを可能にするシート材供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、シート材を積層状態で保持する底板と、底板上のシート材の搬送方向前方に位置した前部トレイ側壁と、を備えた給紙トレイにおいて、前部トレイ側壁の高さに、その中央部と、幅方向両端部とで高低差を設けたことを特徴とする。即ち、シート材を積載した状態で内部に保持するトレイ筐体と、シート材を積載した状態で回動可能な底板と、シート材幅方向に移動可能なサイドフェンスもしくはシート材幅方向端面位置に固定されたサイドフェンスと、最上位のシート材から給紙するようにしたシート材供給装置において、上記トレイの用紙搬送経路上にあたる側壁の形状を、搬送されるシート材の中央部と端部とで高低差をつけたことを最も主要な特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の給紙トレイにおいて、側壁の全体およびその一部をトレイ筐体に対して着脱可能な構造とすることを主要な特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の給紙トレイにおいて、高低差を設けた側壁をシート材積載高さ方向に対して可動構造であることを主要な特徴とする。
また、請求項4の本発明は、請求項1、2又は3の給紙トレイを備えたことを特徴とする給紙装置を最も主要な特徴とする。
また、請求項5の本発明は、請求項4記載の給紙装置を備えた画像形成装置を最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の給紙トレイによれば、給送方向前方に位置する前部トレイ側壁の高さを、シート材の幅方向中央部と端部とで高低差を設けることにより、シート材が給紙トレイ内部から画像形成部内へと搬送される際に、落ち込み方向に変形したシート材の端部がトレイ側壁に引っ掛かることで発生するスキュー・不送り等の給紙不具合の発生を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。図1は従来の給紙トレイの斜視図である。
この給紙トレイは、複写機、FAX、プリンタ等の電子写真式画像形成装置に装備したシート材供給装置(給紙装置)に含まれ、感光体や中間転写体の周辺に設けた転写位置に向けて給紙される転写紙Pを積載収容する。給紙トレイ1は、収容される転写紙Pの幅方向(搬送方向と直交する方向)両側に配置され且つ転写紙Pの幅方向サイズに応じて転写紙Pの幅方向に移動可能な一対のサイドフェンス2、3と、用紙送り方向後端部に位置し転写紙端面を用紙送り方向に押圧するエンドフェンス4と、転写紙Pを押し上げて転写紙Pを繰り出し可能な給紙位置に常時保持する底板5とを有している。
図2は、底板5を回動して起伏させる駆動機構を示す概略図である。この駆動機構は、画像形成装置の本体に設けられたモータ6と、このモータ6に連結された駆動軸7と、駆動軸7の端部に一体に取り付けられるとともに底板5の底部に配置された回動アーム8によって構成されている。この構成では、給紙トレイ1が画像形成装置の本体にセットされると、モータ6が駆動され、これに伴って駆動軸7が回転して、駆動軸7と一体で回動する回動アーム8が底板5を回動させて起上させる。これにより、底板5上に載置された転写紙Pが給紙位置に保持(待機)される。給紙位置においては、呼び出しコロに転写紙Pの最上面が当接された状態となる。
図3に示す給紙部(給紙装置)では給紙トレイに収容された転写紙Pを1枚ずつ分離して給紙する。呼び出しコロ9(ピックアップローラ)と、互いに対向する給紙コロ10(フィードローラ)および逆転コロ11(リバースローラ)とが設けられており、コピースタートスイッチがONされると、給紙信号により給紙コロ10と呼び出しコロ9とが回転される。所定圧で転写紙Pの上面に圧接された呼び出しコロ9は、転写紙Pを給紙コロ10と逆転コロ11との間のニップ部に送り込んだ後、転写紙Pの表面から解除される。逆転コロ11は、トルクリミッタを介して転写紙Pの給紙方向(搬送方向)と逆に回転駆動されており、加圧スプリングによる初期圧とトルクリミッタのトルクにより生じる作動圧とで給紙コロに圧接されている。
【0007】
図4は、本発明の給紙トレイの構成を示す斜視図であり、図1乃至図3と同一部分には同一符号を付して説明する。この給紙トレイは、前部トレイ側壁12の上端部高さが、転写紙中央部に相当するトレイ側壁中央部12aと転写紙の幅方向両端部に相当するトレイ側壁両端部12bとで高低差のある構造からなる。
つまり、シート材を積層状態で保持する底板5と、底板上のシート材の搬送方向前方に位置した前部トレイ側壁12と、を備えた給紙トレイ1において、前部トレイ側壁12の高さに、その中央部と、幅方向両端部とで高低差を設けたことを特徴としている。
ほぼ垂直に立設したトレイ側壁中央部12aは、底板上に積載された転写紙Pの最上部を呼び出しコロ9より搬送する際、給紙コロ10と逆転コロ11のニップ部に転写紙Pをブロック状(重送状態)で送り込むことを防ぐために、満載された転写紙最上面と給紙コロ・逆転コロのニップを結ぶ直線から数mm程度低くなるように構成している。転写紙の幅方向両端部に相当するトレイ側壁両端部12bは、給紙方向前方へ向けて所定の傾斜角度にて突出しており、更にトレイ側壁両端部12bの上端縁は、トレイ側壁中央部12aの上端部よりもさらに数mm低くなるように構成する。これにより積載された転写紙の端部が落ち込み方向に変形している場合にも、搬送過程において転写紙端部の引っ掛かりや側壁への突き当たりを低減することが可能となる。
【0008】
図5には側壁12の一部が着脱可能である給紙トレイ1が示されている。即ち、この給紙トレイは、記前部トレイ側壁12の一部または全部が、トレイ側壁本体に対して着脱可能であることを特徴としている。
予め前部のトレイ側壁12に高低差を設けてあるトレイに、シート材搬送補助の働きを有するガイド13をシール等で接着する。即ち、トレイ側壁の前部は、満載された転写紙最上面と給紙コロ・逆転コロのニップを結ぶ直線から数mm程度高さが低い中央部12aと、中央部12aの両側に位置し凹状に切欠かれた状態にある両端部12bと、を有している。弾性を有したシート状の樹脂、金属等を所定角度に屈曲させた構造のガイド13の一面を両端部12bの周辺のトレイ側壁外面に接着固定する。ガイド13の上端部の高さはトレイ側壁中央部12aの上端部よりもさらに数mm低くなるように構成する。
トレイ側壁前端部の高さは用紙の種類およびそのサイズに因って最適な高さにばらつきがある。図の構成の側壁によって、通常の搬送では給紙不具合の起きるシート材に対しても不給紙ジャムの発生を防ぐことが可能となる。
図6にはトレイ側壁両端部の高さ方向を可動とする機構を示す。前部トレイ側壁12の幅方向両端側に夫々設けた凹所12Aの内縁に、可動ガイド壁15(図5のガイド13と同様に構成したシート材)を上下方向にガイドするレール(切込み、溝)12Bを設け、該レール12Bにシート材搬送補助の働きを有する可動ガイド壁15の両端縁(レール内に嵌合可能な突出片)を挿入する。レール内に嵌合した可動ガイド壁15の両端部はネジ16によって、トレイ側壁に設けた穴部17に位置を固定されるとともに給紙トレイ1と一体化するものである。
このように、本発明の給紙トレイは搬送側トレイ側壁を着脱可能とすることにより、シート材の種類や大きさ、端部形状のばらつきに応じた最適な高低差や搬送経路をもった側壁に交換することを可能にする。
また、本発明の給紙トレイ1に対して、高さ方向に可動な側壁をネジ止めすることにより、シート材の種類や大きさ、端部形状のばらつきに応じた最適な高低差を得ることができるとともに高剛性を保つことを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来例の給紙トレイの斜視図。
【図2】底板及び底板上昇機構の概略図。
【図3】図1の側断面図。
【図4】本発明に係る給紙トレイのトレイ側壁高低差のある給紙トレイ概略図。
【図5】着脱可能な給紙トレイ側壁概略図。
【図6】上下動可能な給紙トレイ側壁概略図。
【符号の説明】
【0010】
P 転写紙、1 給紙トレイ、2 右サイドフェンス、3 左サイドフェンス、4 エンドフェンス、5 底板、6 モータ、7 駆動軸、8 アーム、9 呼び出しコロ、10 給紙コロ、11 逆転コロ、12 トレイ側壁、13 着脱式搬送側壁、14 レール、15 固定ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を積層状態で保持する底板と、底板上のシート材の搬送方向前方に位置した前部トレイ側壁と、を備えた給紙トレイにおいて、前部トレイ側壁の高さに、その中央部と、幅方向両端部とで高低差を設けたことを特徴とする給紙トレイ。
【請求項2】
上記前部トレイ側壁の一部または全部が、トレイ側壁本体に対して着脱可能であることを特徴とする請求項1記載の給紙トレイ。
【請求項3】
上記前部トレイ側壁の少なくとも一部が、シート材積載高さ方向に対して可動構造であることを特徴とする請求項1記載の給紙トレイ。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3記載の給紙トレイを備えたことを特徴とする給紙装置。
【請求項5】
請求項4記載の給紙装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−21902(P2006−21902A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202802(P2004−202802)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】