説明

統合型貨物用火災抑制剤分配システム

【課題】火災抑制剤又は気流を分配するように動作可能なビークルベンチレーション手段を備える統合型の貨物用火災抑制剤分配システムを提供する。
【解決手段】統合型の貨物用火災抑制剤分配システムは、調整空気供給源302、調整空気遮断弁304、管路系306、一又は複数の分配ノズル308、少なくとも一つの火災抑制剤供給源310、火災抑制剤流量制御バルブ、配管接続314、火災/煙検知器316、及び制御装置318を備えている。火災警報信号を受信すると、遮断弁304が閉じることにより気流が遮断されて、代わりに火災抑制剤の分配が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の実施形態は、概して火災の抑制に関する。具体的には、本明細書の実施形態は、火災抑制剤の分配に使用可能な火災抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火災の抑制とは、燃焼を消滅させるために、気体、液体、固体、化学薬品、及びそれらの混合物などの薬剤を使用することを指す。火災抑制システムは、「全域放出」又は「非全域放出」法を使用して、閉じた体積に消化剤を適用する。全域放出又は非全域放出法は、火災を抑制するか又は消滅させるために十分な消化剤の濃度(空気に対する体積比)を達成することができる。環境に配慮した化学薬品又は不活性ガスのような環境に配慮した火災抑制剤の使用が、火災抑制システムのハロンの代替として奨励されている。しかしながら、このようなガス系には、極めて大きな体積流量が必要となるものがあるので、既存のハロン式火災抑制剤分配システムより大きな体積及び重量を有するシステムが必要となる。航空機の運行においては、大きな体積は貨物用の体積を塞ぐこととなり、また重量の増加は燃料燃焼率を増加させるので望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
統合型貨物用火災抑制剤分配システムが開示される。統合型貨物用火災抑制剤分配システムは、火災抑制剤又は気流を分配するように動作可能なビークルベンチレーション手段を備える。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の実施形態では、航空機の統合型貨物用火災抑制剤分配システムは、気流を遮断するように閉まることができる遮断弁を備えている。このシステムは、気流が遮断された場合に火災抑制剤を分配するように動作可能なビークルベンチレーション手段も備えている。
【0005】
少なくとも一つの火災抑制剤供給源を含むビークルベンチレーション手段を供給する合型貨物用火災抑制剤分配方法が開示される。この方法は、更に、ビークルベンチレーション手段を使用して、少なくとも一つの火災抑制剤供給源から火災抑制剤を分配する。ビークルベンチレーション手段は、閉鎖された体積(内部体積)に連結される。この内部体積は、航空機内部に位置しうる。火災抑制剤は、ガス状の化学薬品、不活性ガス、準不活性ガス、エアロゾル化された液体ミスト、及びハロンからなる群のうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0006】
遮断弁を閉じて気流を遮断する統合型貨物用火災抑制剤分配方法が開示される。この方法は、更に、気流の代わりに火災抑制剤を分配する。統合型貨物用火災抑制剤分配方法は、火災警報信号を受信すると遮断弁を閉じて気流を遮断すること、及び気流の代わりに火災抑制剤を分配することを含む。本方法は、更に、内部体積を気流で換気すること、火災抑制剤の分配を終了させること、及び内部体積を気流で再度喚起することを含むことができる。遮断弁は、火災抑制済み信号を受信すると、気流が遮断されないように開くことができる。火災抑制剤の分配は、火災抑制済み信号を受信すると終了される。火災抑制剤は、ガス状化学薬品、不活性ガス、準不活性ガス、エアロゾル化された液体ミスト、及びハロンからなる群のうちの少なくとも一つを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の実施形態に対する更に完全な理解は、添付図面に関連して考慮される以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を参照することにより得られるだろう。添付図面を通して、同様の参照番号は類似の要素を指している。図面は、本発明の幅、範囲、縮尺、又は利用可能性を制限することなく、本明細書の理解を促すために提供されている。図面の縮尺比は必ずしも正確でない。
【0008】
【図1】図1は、航空機の製造及び整備方法の一実施例のフロー図である。
【図2】図2は、航空機の一実施例のブロック図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態によるデュアルモード調整空気/火災抑制剤分配システムの例示的概略ブロック図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態によるデュアルモード調整空気/火災抑制剤分配システムの例示的構造を示している。
【図5】図5は、本発明の一実施形態によるデュアルモード調整空気/火災抑制剤分配システムを備えた航空機貨物室の例示的構造を示している。
【図6】図6は、本発明の一実施形態によるデュアルモード調整空気/火災抑制剤分配プロセスを示す例示的フロー図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態によるデュアルモード調整空気/火災抑制剤分配プロセスを示す例示的フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明は、例示的性質のものであり、開示内容又は本明細書の実施形態の用途及び使用法を制限するものではない。特定のデバイス、技術、及び用途の記載は、実施例としてのみ提示される。ここに記載される実施例に対する修正は当業者には自明であろう。また、ここに規定される一般的な原理は、本発明の理念及び範囲を逸脱せずに他の実施例及び用途に適用することができる。更に、上述した発明の分野、背景技術、発明の概要又は後述の詳細な説明において明示又は暗示されたいずれか理論に拘束されることは意図されていない。本発明は、特許請求の範囲に相当する範囲を有し、ここに記載されて示された実施例に限定されないと理解されるべきである。
【0010】
本明細書の実施形態について、機能的及び/又は論理的なブロック構成要素、及び種々の処理工程の観点から記載する。このようなブロック構成要素は、特定の機能を実行するように構成された任意の数のハードウェア、ソフトウェア、及び/又はファームウェア構成要素によって実現することができる。説明を簡潔にするために、火災抑制技術、火災抑制剤、ベンチレーションシステム、及びシステムのその他の機能的側面に関連する従来の技術及び構成要素(及びシステムの個々の動作要素)については、本明細書では詳細に記載しない。加えて、当業者であれば、本明細書の実施形態は種々の構造的ボディと共に実施できること、及び本明細書に記載される実施形態が本発明の単なる例示的実施形態であることを理解するであろう。
【0011】
ここでは、本明細書の実施形態は、実用的で非限定的な用途という観点、即ち航空貨物倉の火災抑制という観点から説明される。しかしながら、本発明の実施形態は、このような航空貨物倉の用途に限定されるものではなく、ここに記載される技術は他の火災抑制用途にも利用することができる。限定しないが、例えば、実施形態は、トラックの貨物倉の火災抑制、列車の貨物倉の火災抑制、船舶貨物倉の火災抑制などに適用することができる。
【0012】
本明細書を読んだ当業者には明らかであるように、後述は本明細書の実施例及び実施形態であり、これらの実施例による動作に限定されない。他の実施形態を利用することができ、本発明の例示的実施形態の範囲から逸脱せずに構造的な変更を行うことができる。
【実施例】
【0013】
更に詳細に図面を参照し、本発明の実施形態について、図1に示す航空機の製造及び整備方法100、及び図2に示す航空機200の観点から説明する。製造前の段階では、例示的方法100は、航空機200の仕様及び設計104と、材料調達106とを含むことができる。製造段階では、航空機200のコンポーネント及びサブアセンブリの製造108と、システムインテグレーション110が行われる。その後、航空機200は認可及び納品112を経て就航114される。顧客によって就航される間、航空機200は、定期的なメンテナンス及び整備116(改造、再構成、改修なども含む)を受ける。
【0014】
方法100の各工程は、システムインテグレーター、第三者、及び/又はオペレーター(例えば顧客)によって実施又は実行されうる。本明細書の目的のために、システムインテグレーターには、限定されないが、任意の数の航空機製造者及び主要なシステム下請業者が含まれ、第三者には、限定されないが、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給豪奢が含まれ、オペレーターには、限定されないが、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関などが含まれうる。
【0015】
図2に示すように、例示的方法100によって製造された航空機200は、複数のシステム220及び内装222を有する機体218を含むことができる。高レベルシステム220の実施例は、推進システム224、電気システム226、油圧システム228、及び空調/火災抑制システム232(デュアルモード調整空気/火災抑制剤分配システム)を備えた環境システム230のうちの一又は複数を含んでいる。任意の数の他のシステムが含まれてもよい。航空宇宙産業の実施例を示したが、本明細書の実施形態は他の産業に適用可能である。
【0016】
本明細書に具現化される装置及び方法は、製造及び整備方法100の一又は複数の任意の段階において利用することができる。例えば、製造工程108に対応するコンポーネント又はサブアセンブリは、航空機200が就航中に製造されるコンポーネント又はサブアセンブリに類似の方法で作製又は製造することができる。加えて、装置の実施形態、方法の実施形態、又はそれらの組み合わせのうちの一又は複数は、例えば、航空機200のアセンブリを実質的に効率化するか、又はコストを削減することにより、製造段階108及び110の間に利用されうる。同様に、装置の実施形態、方法の実施形態、又はそれらの組み合わせのうちの一又は複数は、航空機200の就航中に、限定しないが、例えばメンテナンス及び整備116に利用されうる。
【0017】
貨物火災を抑制するため、通常は、貨物用火災抑制剤であるハロン1301が、専用の分配システムを介して貨物室(積荷ベイ)に分配される。このような専用分配システムは、通常、ハロン1301を、高速放出については高圧液体で、低速(定量)放出については気相で、それぞれ放出する流量に最適化されている。航空機の分野では、各貨物室は、積荷ベイ内のノズルに繋がる管を有する独自の専用分配システムを有することができる。このようなノズルは、積荷ベイの天井ライナーの中心線に沿って位置するパンに取り付けることができる。火災抑制システムは、例えば、自動検出及び制御機構によって自動的に、アクチュエータが遠隔スイッチを用いて手動で起動することによって人の手により、それらの組み合わせにより、作動させることができる。
【0018】
環境に配慮したガス状の薬剤などの環境に配慮した火災抑制剤の使用が、ハロンに代わるものとして推奨されている。しかしながら、このような非ハロン式の抑制システムのガス放出体積は、液体及び気体両方でのハロン1301の放出の体積よりずっと高い放出速度を必要とする。現在のハロン式システムは、一分当たり約150立方フィート(cfm)の低い体積流量に限定されうる。システムが環境に配慮したガス状薬剤又は不活性ガス用いることが可能であるためには、約5000立方フィートの体積を有する貨物室の場合、2000〜3000cfmのオーダーという極めて高い体積流量を必要とする可能性があり、これは既存のハロン式火災抑制剤送達システムの性能を超えている。本明細書の実施形態は、ハロン1301式火災抑制システムと大きさ及び重量の点で競合しうる火災抑制システムを提供し、これはハロン式及び/又は非ハロン式火災抑制剤と共に使用することができる。
【0019】
本明細書の実施形態は、限定しないが、例えば、貨物用空調システム、貨物用暖房システムといったベンチレーションシステムを利用するデュアルモード調整空気/火災抑制剤分配システムを使用する。本デュアルモード調整空気/火災抑制剤分配システムは、積荷ベイ又は内部体積のうちの他の空の部分(例えば、乗客のいない区画)に高体積流量の火災抑制剤(例えば、高体積流量のガス)を分配することにより、そのような区画又は内部体積内の火災を抑制する。このようにして、正常運行時には貨物室又は内部体積に調整空気を供給し、貨物室又は内部体積内に火災/煙が検知されたときには不活性ガス又は抑制剤を供給する一のネットワークを有することにより、複数の分配システムを備える必要が排除される。このようにして、火災抑制剤分配システムの重量が低減され、これは航空機の運行において燃料燃焼割合を最小化するために望ましい。更に、保護される体積(例えば貨物室又はコントロール体積)中に導入される火災抑制剤の体積流量は、既存の火災抑制剤放出ネットワークによって通常供給される体積流量よりも大きくすることができる。
【0020】
本発明の実施形態によるアーキテクチャは、貨物質に運搬される火災抑制剤の体積流量を増大させることができる。このシステムはデュアル使用であり、正常運行中は、システムは、貨物室に調整空気を流入させることにより、暖房、冷房、又は換気を行うことができる。火災の際は、システムを換気に使用することを中止し、システムは、火災抑制剤を積荷ベイ内に運搬するために使用される。これは、異なる二組の管路及び小配管によってそれぞれ調整空気及び火災抑制剤を積荷ベイへ運搬する既存の解決法とは異なる。このようにして、本明細書の実施形態は、部品数の低減、据え付け時間の短縮及び重量回避により、コスト削減を行う。
【0021】
図3は、本明細書の一実施形態によるデュアルモード調整空気/火災抑制剤分配システム300の例示的な概略ブロック図である。このデュアルモード調整空気/火災抑制剤分配システム300は、統合型貨物用火災抑制剤分配システムである。デュアルモード調整空気/火災抑制剤分配システム300は、調整空気供給源302、調整空気遮断弁304、管路系306、一又は複数の分配ノズル308、少なくとも一つの火災抑制剤供給源310、火災抑制剤流量制御バルブ312、配管接続314、火災/煙検知器316、及び制御装置318を備えている。
【0022】
調整空気供給源302は、調整空気遮断弁304を介して管路系306に連結され、管路系306に調整空気を供給する。調整空気は、限定しないが、例えば、空調システムからの冷風又は温風、貨物用熱分配システムからの温風、エンジン用空気圧縮機からの抽気、除湿空気、消毒空気などを含むことができる。
【0023】
調整空気遮断弁304は、調整空気供給源302及び管路系306に連結され、後で詳述するように、制御装置318により指示されると調整空気供給源302からの調整空気の流れを遮断する。調整空気遮断弁304は、開位置において管路系306へ調整空気を流すか、又は閉位置において管路系306への調整空気の流れをほぼ完全に遮断するように動作可能である。調整空気遮断弁304は、後述するように、制御装置318から信号を受信すると開位置から閉位置へとその位置を変える。幾つかの実施形態では、調整空気遮断弁304は、メンテナンス中にリセットされるまで閉位置に留まる。例えば、航空機の運行においては、調整空気遮断弁304は、着陸後次の飛行の準備をする間に、メンテナンス作業員により開位置にリセットされてもよい。他の実施形態では、調整空気の遮断弁304は、制御装置318から信号を受信すると、閉位置から開位置へとその位置を変えることができる。調整空気遮断弁304は、アクチュエータを介して、歯車機構を介して、及び/又はシステム300の一又は複数の構成要素と組み合わせて、起動させることができる。特定の実施形態では、調整空気遮断弁304は電子的に起動される。例えば、限定しないが、油圧アクチュエータ、圧電アクチュエータ、ばね押上機構、逆流防止機構、発火式アクチュエータなど、当業者に既知のアクチュエータのいずれかを使用して、調整空気遮断弁304を起動することができる。
【0024】
管路系306は、調整空気遮断弁304を介して調整空気供給源302へ、火災抑制剤流量制御弁312及び配管接続314を介して火災抑制剤供給源310へ、且つ分配ノズル308へ連結している。管路系306は、調整空気供給源302又は火災抑制剤供給源310から、それぞれ調整空気又は火災抑制剤を、分配ノズル308へと運搬する。
【0025】
分配ノズル308は、管路系306に連結し、調整空気又は火災抑制剤を、貨物体積504(図5)のような内部体積中に分配する。分配ノズル308は、貨物体積504(図5)の側壁、床、天井、又はその他の場所に取り付けることができる。
【0026】
火災抑制剤供給源310は、火災抑制剤を管路系306中に運搬することにより、貨物体積504のような内部体積内の火災を抑制する。火災抑制剤は、限定しないが、例えば、ガス状の火災抑制剤を収容する貯蔵容器、不活性ガス発生器(例えば、窒素生成系)などにより送達することができる。火災抑制剤は、限定しないが、例えば、HFC−125又はペンタフルオロエタン(CFCHF);窒素、アルゴン、又はヘリウムのような不活性ガス及び準不活性ガス;3M(登録商標)NOVEC(登録商標)1230防火液(C12O)(3Mから市販されている)のようなエアロゾル化された液体ミスト又は水(HO);ハロン;これらの混合物といったガス状の化学薬品を含むことができる。
【0027】
火災抑制剤の流量制御弁312は、火災抑制剤供給源310及び配管接続314に連結されている。火災抑制剤流量制御弁312は、火災抑制剤供給源310から配管接続314への火災抑制剤の流れを制御する。火災抑制剤流量制御弁312は、それぞれ火災の有無に応じて開位置又は閉位置をとる。火災抑制剤流量制御弁312は、限定しないが、例えば、ボール弁、バタフライ弁などを含むことができる。火災抑制剤流量制御弁312は、限定しないが、例えば、電子的に、アクチュエータにより、歯車機構により、システム300の一又は複数の構成要素と協働させるなどして、起動することができる。例えば、限定しないが、油圧アクチュエータ、圧電アクチュエータ、火災抑制剤流量制御弁312などに結合されたばね押上機構など、当業者に既知のアクチュエータを使用して、調整空気遮断弁304を起動することができる。一実施形態では、火災抑制剤流量制御弁312は、発火弁を含む。発火弁は、燃焼プロセスによって開き、メンテナンスによって弁が取り替えられるまで開いたままである。発火弁の利点は、耐久性及び信頼性と、開くまでかなり長期に亘って高圧を確実に保持できる能力である。
【0028】
配管接続314は、火災抑制剤流量制御弁312及び管路系306に連結されている。配管接続314は、火災抑制剤流量制御弁312から管路系306へと火災抑制剤の流れを運搬する。配管接続314は、限定しないが、例えば、金属管、プラスチック管、複合材料管などを含むことができる。配管接続314は、火災抑制剤流量制御弁312から管路系306へと火災抑制剤の流れを導く。配管接続314は、火災抑制剤の流れを、管路系306を流れるのに適した圧力を有する流量に調整するための流量調節弁(図示しない)を含むことができる。
【0029】
火災検知器316は、電気的及び/又は光学的な信号により制御装置318に連結され、火災状態を検知する。火災検知器316は、限定しないが、例えば、煙センサ、熱センサ、赤外線センサなどの、火災を検知するためのデバイスを含むことができる。
【0030】
制御装置318は、電気的及び/又は光学的な信号により火災検知器316、調整空気遮断弁304、及び火災抑制剤流量制御弁312に連結されている。制御装置318は、ここに記載される実施形態に従って、調整空気遮断弁304、及び火災抑制剤流量制御弁312を管理/制御する。制御装置318は、限定しないが、例えば、航空機の演算モジュール、航空機の中央プロセッサ、デュアルモード調整空気/火災抑制剤分配システム300専用のサブシステム演算モジュールなどの一部として実装することができる。制御装置318は、限定しないが、例えば、ソフトウェアにより制御されるデバイスか、電子的、機械的、電子機械的、流体的なものなどとすることができる。制御装置318は、限定しないが、例えば、自動的に、手動で、それらを組み合わせてなどして起動することができる。制御装置318は、火災検知器316に基づいて貨物体積504(図5)における火災の有無を表わす信号を受信することができる。
【0031】
一実施形態では、制御装置318は、調整空気遮断弁304に信号を送信することにより調整空気遮断弁304を開閉する。例えば、火災検知器316が貨物体積504内に火災/煙を検知した場合、制御装置318は、調整空気遮断弁304のアクチュエータ機構(図示せず)に火災警報信号を送信して、調整空気遮断弁304に閉じるよう命令する。このようにして、調整空気遮断弁304は、開位置から閉位置へとその位置を変えることにより、管路系306を通る調整空気の流れを遮断する。ほぼ同時に、制御装置318は、火災警報信号を、例えばアクチュエータ(図示せず)を介して火災抑制剤流量制御弁312に送信し、同弁312が閉位置から開位置へとその位置を変えることにより、火災抑制剤が配管接続314及び管路系306に流れる。
【0032】
一実施形態では、火災が抑制されると、制御装置318は火災が抑制されたという信号を、調整空気遮断弁304及び火災抑制剤流量制御弁312に送信する。このようにして、調整空気遮断弁304は閉位置から開位置へとその位置を変え、それにより管路系306への調整空気の流れが遮断解除される。加えて、このようにして火災抑制剤流量制御弁312が開位置から閉位置へとその位置を変えることにより、管路系306への火災抑制剤の流れが止まる。
【0033】
一実施形態では、火災警報信号及び火災抑制済み信号は、コックピットのコントロールパネルといった制御盤(図示せず)に送信される。このようにして、パイロット又は別の飛行乗務員のようなオペレーターは、スイッチなどを用いて制御装置318を手動により起動して、遠隔地点から調整空気遮断弁304及び火災抑制剤流量制御弁312をしかるべく開閉することができる。
【0034】
システム300は、限定しないが、例えば積荷ベイ、貨物室などの内部体積へ、火災抑制剤の高い又は低い体積流量を送達することを可能にする。システム300は、貨物ベンチレーションシステムの外に専用の分配システムを別個に有さずに、火災抑制剤供給源310のような遠隔地点に位置する薬剤供給源から、管路系306を介して内部体積へ、火災抑制剤の高い又は低い体積流量を送達する。システム300はデュアルオペレーションモードを有している。非火災非常動作の間は、システム300は、内部体積に調整空気を流すことにより、暖房、冷房、又は換気を行うことができる。火災の場合、システム300は、換気を止めて、火災抑制剤を内部体積に運搬する。
【0035】
図4は、本発明の一実施形態によるデュアルモード調整空気/火災抑制剤分配システムの例示的構造400を示している。構造400は、図3に示した実施形態に類似の機能、材料、及び構造を有する。したがって、共通の特徴、機能、及び要素については繰返して説明しない。構造400は、調整空気供給源302、調整空気遮断弁304、管路系306、一又は複数の分配ノズル308、少なくとも一つの火災抑制剤供給源310、火災抑制剤流量制御弁312(図4には示さない)、配管接続314、火災検知器316、及び制御装置318を備えている。管路系306の管路の形状は、限定しないが、例えば、外径404を有する円筒状などとすることができ、外径404は、限定しないが、例えば、約2〜約3インチとすることができる。分配ノズル308の形状は、限定しないが、例えば、直径406を有する円形などとすることができ、直径406は、限定しないが、例えば、約2〜約7.5インチとすることができる。分配ノズル308の形状は、限定しないが、例えば、楕円形、四角形などとすることもできる。管路系306は、分岐管路402を介して分配ノズル308に放射状に連結させることができる。
【0036】
図5は、本発明の一実施形態によるデュアルモード調整空気/火災抑制剤分配システム400を備えた航空機の貨物体積の例示的構造500を示している。構造500は、図3〜4に示した実施形態に類似の機能、材料、及び構造を有する。したがって、共通の特徴、機能、及び要素については繰返して説明しない。構造500は、デュアルモード調整空気/火災抑制剤分配システム400を備えた前方貨物体積504を取り囲む航空機の胴体502を含む。
【0037】
一実施形態では、貨物体積は、複数の積荷ベイを含む場合がある。例えば、構造500は、前方貨物体積504の他に、前方貨物体積504から航空機の翼(図示しない)によって分離された後方積荷ベイ(図示しない)を含む場合がある。二つ以上の積荷ベイを有する場合、デュアルモード調整空気/火災抑制剤分配システム400は、前方貨物体積504及び/又は後方貨物体積内における一又は複数の火災を抑制するように動作することができる。
【0038】
図5に示す実施形態では、管路系306は、天井516から距離514だけ離間した貨物の床面510に実質的に隣接させて配置することができる。各分岐管路402は、管路系306から放射方向に、構造500の動作に適した任意の位置まで延びることができ、このような位置は、限定しないが、例えば、左側壁512、右側壁(図示しない)、前方壁(図示しない)、左側壁512と右側壁の両方、前方壁(図示しない)、後方壁(図示しない)、通路(図示しない)、貨物体積504に連結された区画(図示しない)、複数の壁、天井516、貨物床面510、これらの組み合わせなどの少なくとも一部である。一又は複数の火災抑制剤供給源310は、限定しないが、例えば、右側壁(図示しない)の外側などに据え付けることができる。分配ノズル308は、限定しないが、例えば、左側壁512のライナー(図示しない)内、前方貨物体積504側の右側壁、天井516、貨物床面510などに据え付けることができる。構造500は、火災抑制能を保持しながら、めったに発生しない火災事象のために専用の火災抑制剤システムを搭載するのに必要な余分な重量を回避することにより、正常な航空機運行の間の燃料を節約する。
【0039】
図6〜7は、本発明の二つの実施形態によるデュアルモード調整空気/火災抑制剤分配プロセス600〜700を示す二つの例示的なフロー図である。プロセス600〜700に関連して実行される種々のタスクは、機械的に、ソフトウェアにより、ハードウェアにより、ファームウェアにより、又はこれらの何らかの組み合わせにより、実行される。例示を目的として、プロセス600〜700に関する以下の記載は、図1〜5に関連して上記した要素に言及している場合がある。実用的な実施形態では、プロセス600〜700の各部分は、デュアルモード調整空気/火災抑制剤分配システム300〜500の異なる要素により実行され、これらの異なる要素には、調整空気供給源302、調整空気遮断弁304、管路系306、一又は複数の分配ノズル308、少なくとも一つの火災抑制剤供給源310、火災抑制剤流量制御弁312、配管接続314、火災検知器316、及び制御装置318が含まれる。プロセス600〜700は、図1〜5に示した実施形態に類似の機能、材料、及び構造を有することができる。したがって、共通の特徴、機能、及び要素については繰返して説明しない。
【0040】
図6は、本発明の一実施形態によるデュアルモード調整空気/火災抑制剤分配プロセス600を示す例示的フロー図である。
【0041】
プロセス600は、少なくとも一つの火災抑制剤供給源を備えるビークルベンチレーション手段を供給することにより開始される(タスク602)。上述のように、ビークルベンチレーション手段は、ここに記載されるデュアルモード調整空気/火災抑制剤分配システムの実施形態の動作に適した暖房システム、空調システムなどを含むことができる。
【0042】
プロセス600では、次いで、ビークルベンチレーション手段を内部体積に連結させる(タスク604)。貨物体積504のような内部体積は、限定しないが、例えば、空の航空貨物倉などの積荷ベイを含むことができる。
【0043】
プロセス600では、次いで、ビークルベンチレーション手段を使用して、少なくとも一つの火災抑制剤供給源から火災抑制剤を分配する(タスク606)。
【0044】
図7は、本発明の一実施形態によるデュアルモード調整空気/火災抑制剤分配システム700を示す例示的なフロー図である。
【0045】
プロセス700は、内部体積(例えば、貨物体積504)を気流で換気することにより開始される(タスク702)。
【0046】
プロセス700では、次いで、制御装置318が火災検知器316から火災警報信号を受信する(タスク704)。
【0047】
プロセス700では、次いで、制御装置318が火災警報信号を受信したことに応答して調整空気遮断弁304を閉じることにより、気流を遮断する(タスク706)。制御装置318は、火災警報信号を受信すると、アクチュエーション機構に対し、調整空気遮断弁304が閉じる閉状態を命令する命令信号を送信する。このようにして、調整空気遮断弁304は、制限しないが、例えば、客席ベイ、占有エリア用の管路系などに、火災抑制剤が流入することを防止する。加えて、調整空気遮断弁304は、火災事象の間に、外気を含む調整空気が積荷ベイに流入することを防ぐ。内部体積において調整空気に含まれる酸素が制限することが、火災の抑制を助ける。
【0048】
プロセス700では、次いで、気流の代わりに火災抑制剤を内部体積のほぼ全体に分配する(タスク708)。上述のように、内部体積は、限定しないが、例えば、積荷ベイ、空の内部体積、これらの組み合わせなどを含むことができる。
【0049】
プロセス700では、次いで、コントローラ318が火災検出器316から火災抑制済み信号を受信する(タスク710)。
【0050】
プロセス700では、次いで、制御装置318による火災抑制済み信号の受信に応答して、火災抑制剤の分配を終了させる(タスク712)。
【0051】
プロセス700では、次いで、制御装置318による火災抑制済み信号の受信に応答して調整空気遮断弁304を開くことにより、気流の遮断を解除する(タスク714)。制御装置318は、火災検出器316から火災抑制済み信号を受信し、アクチュエーション機構に対し、調整空気遮断弁304が開く開状態を命令する命令信号を送信する。
【0052】
プロセス700では、次いで、内部体積を気流で換気/再換気する(タスク716)。
【0053】
このように、本発明の種々の実施形態は、信号デュアルモードシステムを使用して、空調又は火災の抑制を行う方法を提供することにより、重量及び体積の削減と据え付け時間の短縮とを行う。このようにして、貨物用火災抑制システムの複雑性及びコストは著しく低減される。更に、本発明の実施形態は、既存のハロン式システムと比較して、体積流量を著しく増大させることができる。環境に配慮した火災抑制剤に既存のハロン式システムを適応させるには、その大きさ及び重量を増大させなければならないであろう。
【0054】
上述の詳細な説明では、少なくとも一つの例示的実施形態を提示したが、多数の変形例が存在することを理解されたい。また、本明細書に記載された一又は複数の実施形態は、本発明の主題の範囲、実用性、又は構造をいかなる意味でも制限するものではない。上述の詳細な説明は、むしろ、当業者に対し、記載された一又は複数の実施形態を実施するための便利なロードマップを提供するものである。請求の範囲によって定義される範囲から逸脱せずに、要素の機能及び構成に種々の変更を加えることが可能であり、これらの変更には、既知の等価物及び本特許出願の出願時に予見可能な等価物が含まれる。
【0055】
上記では、互いに「接続」又は「連結」される要素又はノード又は特徴に言及している。本明細書で使用される場合、特に断らない限り、「接続」とは、一の要素/ノード/特徴が別の要素/ノード/特徴に直接に接合する(又は直接に連絡する)ことを意味し、これは必ずしも機械的に行われなくともよい。同様に、特に断らない限り、「連結」とは、一の要素/ノード/特徴が別の要素/ノード/特徴に直接に又は間接に接合する(或いは直接に又は間接に連絡する)ことを意味し、これは必ずしも機械的に行われなくともよい。このように、図3〜5は要素の例示的構成を示しているが、本発明の一実施形態には、追加の中間的な要素、デバイス、特徴、又は構成要素が含まれてもよい。
【0056】
本明細書、及びその改訂版に使用される用語及び表現は、特に断らない限り、限定的にではなく、広義に解釈されるべきである。上述の例として、用語「含む」は「限定せずに含む」などを意味し、「例」とは、議論されるアイテムの例示的事例を挙げているのであって、その完全なリスト又は限定的リストを供給しているのではなく、「従来の」、「常套的な」、「通常の」、「標準的な」、「既知の」といった形容詞、及び同様の意味を有する表現は、記載されたアイテムを、所定の期間又は所定の時間に利用可能なアイテムに限定しているのではなく、現在又は未来のいずれかの時点で利用可能な、又は既知の、従来の、常套的な、正常の、又は標準的な技術を包含する。同様に、接続詞「及び」で結ばれたアイテムの組は、それらアイテムの全てが必要というわけではなく、特に断らない限り、むしろ「及び/又は」で結ばれたアイテムを意味するものである。同様に、接続詞「又は」で結ばれたアイテムの組は、それらのアイテムが互いに排他的であることを必要とせず、特に断らない限り、むしろ「及び/又は」で結ばれたアイテムを意味するものである。更に、本発明のアイテム、要素、又は構成要素は単数形で記載されているかもしれないが、単数形に限定することを特に断っていない限り、複数形も本発明の範囲内と考慮される。幾つかの事例における「一又は複数」、「少なくとも」、「限定しないが」又はその他同様の表現のような広義の語句及び表現の存在は、そのような広義の表現が無い箇所においては狭義の場合が意図されている又は必要とされることを意味するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流を遮断するように閉じることが可能な遮断弁(304)と、
気流が遮断された場合に火災抑制剤を分配するように動作可能なビークルベンチレーション手段(302)と
を備える航空機に統合された貨物用火災抑制剤分配システム(300)。
【請求項2】
ビークルベンチレーション手段(302)が航空機に連結されている、請求項1に記載の航空機統合型貨物用火災抑制剤分配システム(300)。
【請求項3】
ビークルベンチレーション手段(302)が内部体積(504)に連結されている、請求項1に記載の航空機統合型貨物用火災抑制剤分配システム(300)。
【請求項4】
火災抑制剤によって内部体積(504)内の火災を抑制する、請求項3に記載の航空機統合型貨物用火災抑制剤分配システム(300)。
【請求項5】
ビークルベンチレーション手段(302)が、火災抑制剤を供給するように動作可能な少なくとも一つの火災抑制剤供給源(310)を備えている、請求項1に記載の航空機統合型貨物用火災抑制剤分配システム(300)。
【請求項6】
火災抑制剤が高体積流量のガスを含む、請求項1に記載の航空機統合型貨物用火災抑制剤分配システム(300)。
【請求項7】
火災警報信号を受信すると閉状態を命令するように動作可能な制御装置(318)を更に備えており、遮断弁(304)が閉じることにより気流が遮断されて、代わりに火災抑制剤の分配が可能になる、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の航空機統合型貨物用火災抑制剤分配システム(300)。
【請求項8】
制御装置(318)が、更に、火災抑制済み信号を受信すると開状態を命令するように動作可能であり、遮断弁(304)が開くことにより気流の遮断が解除され、気流による換気が可能となる、請求項7に記載の航空機統合型貨物用火災抑制剤分配システム(300)。
【請求項9】
少なくとも一つの火災抑制剤供給源(310)を備えるビークルベンチレーション手段(302)を供給すること、及び
ビークルベンチレーション手段(302)を用いて少なくとも一つの火災抑制剤供給源(310)から火災抑制剤を分配すること
を含む統合型貨物用火災抑制剤分配方法。
【請求項10】
火災抑制剤が、ガス状の化学薬品、不活性ガス、準不活性ガス、エアロゾル化された液体ミスト、及びハロンからなる群のうちの少なくとも一つを含む、請求項9に記載の統合型貨物用火災抑制剤分配方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−35074(P2012−35074A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−157618(P2011−157618)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】