説明

絶縁塗料およびこの塗料を用いた電子部品、電子部品の製造方法

【課題】 本発明は、耐熱性を有し、作業性が良好で、アゾ系着色剤を用いることなく印字隠蔽を行える絶縁塗料、またこの絶縁塗料を用いた電子部品、更に、この絶縁塗料を用いた電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、(a)A−B−A型スチレンブロック共重合体ゴム10〜40重量部、(b)粘着性付与樹脂1〜20重量部、(c)溶剤50〜90重量部、(d)アジン系着色剤を含有してなる絶縁塗料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アジン系着色剤を含有する絶縁塗料、及び、この絶縁塗料を塗布した電子部品、更に、この絶縁塗料を用いた電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器は、年々小型軽量化及び多機能化の傾向にあり、これを制御する各種電気機器に搭載した実装回路板は、湿気、塵埃、ガス等から保護する目的で絶縁処理が行われる。この絶縁処理方法としては、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等の塗料を塗布する保護コーティング処理が広く採用されている。そして、このような実装回路板は、過酷な環境下、特に高湿度下で使用されることがあり、例えば洗濯機、自動車、フラットパネルディスプレイ等の機器に搭載されて使用されている。
【特許文献1】特開2004−99761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、背景技術にて述べたアクリル系樹脂の塗料は、耐熱性が80〜100℃という低温であり、加熱劣化後には可撓性が失われ、耐熱性が要求される電子部品での使用ができず、その用途が限定される。一方、シリコーン系樹脂の塗料は、耐熱性に優れ、加熱劣化後の可とう性が良いものの、材料価格が高く、塗料に皮張り、ゲル化等が発生し作業性に問題があった。
【0004】
また、実装回路板に絶縁塗料を塗布した場合、実装回路板に搭載される電子部品の部品番号等が印字隠ぺいされない問題があるが、特許文献1に開示されるアゾ系着色剤を用いることにより、隠蔽問題を解決することが出来た。但し、近年では、環境問題によりアゾ化合物の使用が問題視されている。
【0005】
本発明は、耐熱性を有し、作業性が良好で、アゾ系着色剤を用いることなく印字隠蔽を行える絶縁塗料、またこの絶縁塗料を用いた電子部品、更に、この絶縁塗料を用いた電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、(a)A−B−A型スチレンブロック共重合体ゴム10〜40重量部、(b)粘着性付与樹脂1〜20重量部、(c)溶剤50〜90重量部、(d)アジン系着色剤を含有してなる絶縁塗料である。
(2)項(1)において、(d)アジン系着色剤の含有量が、絶縁塗料100重量部に対し0.01〜70重量部である絶縁塗料である。
(3)項(1)又は(2)において、さらに充填剤、改質剤、消泡剤および接着性付与剤からなる添加剤から選ばれる少なくとも1種を含む絶縁塗料である。
(4)項(1)乃至(3)の何れかの絶縁塗料を塗布した電子部品である。
(5)項(1)乃至(3)の何れかの絶縁塗料を電子部品に塗布し、その後乾燥させる電子部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の絶縁塗料は、アゾ系の着色剤を使用せず隠避性に優れ電子部品の品番等を隠ぺいすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明にて述べる(a)A−B−A型スチレンブロック共重合体ゴムは、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体ゴム(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体ゴム(SIS)、スチレン−ビニル・イソプレン−スチレンブロック共重合体ゴム(SVIS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体ゴム(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体ゴム(SEPS)等を用いることができる。
【0009】
また、これらのA−B−A型スチレンブロック共重合体ゴムは、その二重結合の一部若しくは全部を水素化していても良い。これらのA−B−A型スチレンブロック共重合体ゴムの配合量は10〜40重量部であり、15〜30重量部が好ましく、20〜25重量部がより好ましい。A−B−A型スチレンブロック共重合体ゴムの配合量は、10重量部より少ないと組成物の防湿効果が徐々薄れ、40重量部より多いとガラスやプリント基板等の基材との接着性が徐々に低くなる。
【0010】
本発明にて述べる(b)粘着性付与樹脂は、基材に対する接着性を向上させるものであり、石油系樹脂、ロジン系樹脂、及び、テルペン系樹脂、或いはそれらの混合物等を用いることができ、溶剤に溶解しやすいものが好ましい。
【0011】
石油系樹脂としては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環式系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂及びそれらの水添石油樹脂等を用いることができる。ロジン系樹脂としては、ロジン、ロジン変性樹脂及びその誘導体等を用いることができる。テルペン系樹脂としては、ポリテルペン、テルペンフェノール系樹脂等及びそれらの水添樹脂等を用いることができる。
【0012】
これら粘着性付与樹脂の配合量は、1〜20重量部であり、2〜15重量部が好ましく、3〜13重量部がより好ましい。粘着付与樹脂の配合量は、1重量部より少ないとガラスやプリント基板等の基材との接着性が徐々に低下し、20重量部より多いと組成物の防湿効果が徐々に薄れる。
【0013】
本発明にて述べる(c)溶剤は、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶剤、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶剤、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶剤、パラフィン油、ナフテン油等のパラフィン系溶剤、ミネラルターペン、ナフサ等の石油系溶剤等を用いることができる。溶剤の配合は、作業性に関連する塗料の粘度に応じて決められるが、50〜90重量部、好ましくは60〜80重量部の割合である。
【0014】
本発明にて述べる(d)アジン系着色剤は、C.I. Solvent Black 5、C.I. Solvent Black 7等が好適に用いられる。これらは、2種以上組み合わせて使用しても良い。また、公知の無機顔料、有機系顔料、及び有機系染料等と組み合わせて使用しても良い。市販品としては、OIL BLACK No.5、OIL OPLAS BLACK BS(オリエント化学工業(株)製商品名)などが挙げられる。
【0015】
アジン系着色剤の添加量は、塗料100重量部に対し、0.01〜70重量部であり、0.1〜60重量部が好ましく、0.1〜50重量部がより好ましい。
【0016】
本発明にて述べる絶縁塗料には、必要に応じ充填剤、改質剤、消泡剤、及び接着性付与剤などを塗料に任意に添加することができる。
【0017】
充填剤としては、微粉末酸化けい素、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等を用いることができる。
【0018】
改質剤としては、乾燥性を向上させるためにナフテン酸マンガン、オクテン酸マンガン等の有機酸金属塩等を用いることができる。
【0019】
シランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロキシ系シランカップリング剤、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤およびN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1.3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、特殊アミノシラン等のアミン系等を用いることができ、これらは2種以上組み合わせて使用しても良い。
市販品としては、KBM−502、KBE−502、KBM−503、KBE−503、KBM−5103、KBM−802、KBM−803、KBM−602、KBE−603(信越化学工業(株)製商品名)およびA−174、A−189、A−1122(日本ユニカ−(株)製商品名)等が挙げられる。
これらのシランカップリング剤の配合量は0.1〜5重量部であり、0.3〜3重量部が好ましく、0.5〜1重量部がより好ましい。シランカップリング剤の配合量が0.1重量部より少ないとガラスやプリント基板等の基材との接着性が劣り、5重量部より多いと製造方法によっては組成物の粘度が上昇し作業性が劣る。
【0020】
消泡剤としては、シリコーン系オイル、フッ素オイル、ポリカルボン酸系ポリマ−等公知の消泡剤を用いることができ、塗料100重量部に対し、0.001〜5重量部添加することができる。
【0021】
本発明の絶縁塗料を塗布する電子部品は、特に制限されるものではないが、マイコン、トランジスタ、コンデンサ、抵抗、リレ−、トランス等及びこれらを搭載した実装回路板などが挙げられ、更にこれら電子部品に接合されるリ−ド線、ハーネス、フィルム基板等も含むことができる。
【0022】
本発明になる絶縁塗料を用いて絶縁される電子部品の製造方法としては、一般に知られている浸漬法、ハケ塗り法、スプレ−法、線引き塗布法、ディスペンス法等を用いることができ、絶縁塗料を上記電子部品に塗布し、乾燥すればよい。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
また、本発明で、「部」として表したものは特に限定しない限り重量部を示す。
(実施例1)
1リットルの四つ口フラスコに、SIS樹脂(クレイトンポリマージャパン(株)製商品名、D−1107)20部、粘着性付与樹脂(出光石油化学(株)製商品名、P−100)10部、エチルシクロヘキサン70部を加え100℃で3時間攪拌溶解しワニスAを得た。
ワニスAを100部秤量し、アジン系の着色材(オリエント化学(株)製商品名、OIL BLACK No.5)5部を加えて、室温で攪拌溶解し絶縁塗料(ア)を得た。
(実施例2)
実施例1にて得たワニスA105部に、アジン系の着色材(オリエント化学(株)製商品名、OIL BLACK No.5)5部、及び、シランカップリング剤(信越化学工業(株)製商品名、KBM−5103)1部を加え室温で攪拌混合し絶縁塗料(イ)を得た。
(比較例1)
1リットルの四つ口フラスコに、SIS樹脂(クレイトンポリマージャパン(株)製商品名、D−1107)20部、粘着性付与樹脂(出光石油化学(株)製商品名、P−100)10部、エチルシクロヘキサン70部を加え100℃で3時間攪拌溶解し絶縁塗料(ウ)を得た。
(比較例2)
比較例1にて得た絶縁塗料(ウ)100部に、アゾ化合物クロム錯塩(オリエント化学(株)製商品名、VALIFAST BLACK 3804)5部を加えて、室温で攪拌溶解し絶縁塗料(エ)を得た。
【0024】
絶縁塗料(ア)〜(エ)を基材との接着試験用として、ガラス板(縦750mm×横750mm×厚さ2mm)に塗布し、乾燥させて厚み100μmの塗膜を成形した。次いで、この塗膜をJIS K5400「碁盤目テープ法」に準じ試験を行った。その結果を表1に示す。
【0025】
また、透湿度測定用としてフッ素加工板(縦150mm×横100mm×厚さ2mm)に塗布し、乾燥させて100μmの塗膜を成形した。次いで、この塗膜をJIS Z0208の「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準じ試験を行った。その結果を表1に示す。
【0026】
更に、絶縁塗料(ア)〜(エ)の遮光性試験用として、ガラス板(縦200mm×横100mm×厚さ2mm)に塗布し、乾燥させて100μmの塗膜を成形した。次いで、この塗膜を分光光度計(日立製作所製 U−2000型 日立Double beam分光光度計)を用いて、400〜700nm領域での遮光性を測定した。その結果を表1に示す。

















【0027】
【表1】

【0028】
表1に示すように、実施例1及び実施例2にて得られた絶縁塗料(ア)、(イ)は、比較例に比べ、遮光性が高く、アゾ系の着色剤を使用せず電子部品の品番等を隠ぺいすることができる





【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)A−B−A型スチレンブロック共重合体ゴム10〜40重量部、(b)粘着性付与樹脂1〜20重量部、(c)溶剤50〜90重量部、(d)アジン系着色剤を含有してなる絶縁塗料。
【請求項2】
請求項1において、(d)アジン系着色剤の含有量が、絶縁塗料100重量部に対し0.01〜70重量部である絶縁塗料。
【請求項3】
請求項1又は2において、さらに充填剤、改質剤、消泡剤および接着性付与剤からなる添加剤から選ばれる少なくとも1種を含む絶縁塗料。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかの絶縁塗料を塗布した電子部品。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れかの絶縁塗料を電子部品に塗布し、その後乾燥させる電子部品の製造方法。




【公開番号】特開2006−335975(P2006−335975A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165421(P2005−165421)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】