説明

絶縁抵抗低下検出装置および絶縁抵抗低下検出方法

【課題】複数の電池パックを並列に配置した電気系統に対して、どこで絶縁抵抗の劣化が発生しているのかを、より詳細に判定することができる絶縁抵抗低下検出装置を提供すること。
【解決手段】ECU600は、複数の電池パック200を並列に配置した電気系統における絶縁抵抗の低下を検出する絶縁抵抗低下検出装置であって、各電池パック200と電気系統の他の部分との間の接続状態を制御する接続状態制御部610と、各電池パック200について、絶縁抵抗が所定の値より低下したか否かを示す検出結果を取得し、その検出結果と接続状態制御部610の制御状態とに基づいて、絶縁抵抗が劣化している箇所を判定する絶縁抵抗劣化箇所判定部620とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池パックを並列に配置した電気系統における絶縁抵抗の低下の検出を行う絶縁抵抗低下検出装置および絶縁抵抗低下検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池パックを並列に配置した電気系統は、電気自動車の電源など、様々な分野で用いられている。このような電気系統における絶縁抵抗の低下の検出を行う技術として、例えば、特許文献1に記載の技術および特許文献2に記載の技術が存在する。
【0003】
特許文献1に記載の技術は、電気系統の他の部分と切り離した状態の電池パックにおいて絶縁抵抗の低下が検出されるか否かの判定を、電池パックを切り替えながら、絶縁抵抗の低下が検出されるまで繰り返す。そして、特許文献1に記載の技術は、全ての電池パックについての判定が完了するまでに絶縁抵抗の低下が検出された場合、電気系統の絶縁抵抗は劣化していると判定する。これにより、絶縁抵抗低下検出器間のパルス信号の干渉による影響を回避して、電気系統における絶縁抵抗の劣化の有無を精度良く判定することができる。
【0004】
特許文献2に記載の技術は、複数の電池パックを並列に接続する電池組と負荷とを接続するリレー(コンタクタ)が、オンになっている状態とオフになっている状態との両方で、電池組の絶縁抵抗の低下の検出を行う。これにより、電池組側と負荷側とのどちらで絶縁抵抗の劣化が発生しているのかを判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−179831号公報
【特許文献2】特開2008−58085号公報
【特許文献3】国際公開第2007/026603号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、どの電池パックで絶縁抵抗が劣化しているのかを特定することができない。また、特許文献2に記載の技術は、1つでも電池パックの絶縁抵抗が劣化している場合には、負荷側に絶縁抵抗の劣化が発生しているか否かを判定することができない。部品の交換や修理の手間を鑑みると、電力系統のどこで絶縁抵抗の劣化が発生しているのかを、より詳細に判定可能であることが望まれる。
【0007】
本発明の目的は、複数の電池パックを並列に配置した電気系統に対して、どこで絶縁抵抗の劣化が発生しているのかを、より詳細に判定することができる絶縁抵抗低下検出装置および絶縁抵抗低下検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の絶縁抵抗低下検出装置は、複数の電池パックを並列に配置した電気系統における絶縁抵抗の低下を検出する絶縁抵抗低下検出装置であって、前記各電池パックと前記電気系統の他の部分との間の接続状態を制御する接続状態制御部と、前記各電池パックについて、絶縁抵抗が所定の値より低下したか否かを示す検出結果を取得し、前記検出結果と前記接続状態制御部の制御状態とに基づいて、絶縁抵抗が劣化している箇所を判定する絶縁抵抗劣化箇所判定部とを有する。
【0009】
本発明の絶縁抵抗低下検出方法は、複数の電池パックを並列に配置した電気系統における絶縁抵抗の低下を検出する絶縁抵抗低下検出方法であって、前記各電池パックについて、絶縁抵抗が所定の値より低下したか否かを示す検出結果を取得する検出ステップと、前記各電池パックと前記電気系統の他の部分との間の接続状態を制御する制御ステップと、前記検出ステップの検出結果と前記制御ステップの制御状態とに基づいて、絶縁抵抗が劣化している箇所を判定する判定ステップとを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の電池パックを並列に配置した電気系統に対して、どこで絶縁抵抗の劣化が発生しているのかを、より詳細に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る絶縁抵抗低下検出装置を含む絶縁抵抗低下検出システムの構成の一例を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1に係る絶縁抵抗低下検出装置を含むECUの動作の一例を示すフローチャート
【図3】本発明の実施の形態2に係る絶縁抵抗低下検出装置を含む絶縁抵抗低下検出システムの構成の一例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1は、本発明を電気自動車の電源系統に適用した例である。
【0014】
まず、実施の形態1に係る絶縁抵抗低下検出装置を含む絶縁抵抗低下検出システムの構成について説明する。
【0015】
図1は、実施の形態1に係る絶縁抵抗低下検出装置を含む絶縁抵抗低下検出システムの構成の一例を示すブロック図である。
【0016】
図1において、絶縁抵抗低下検出システム100は、第1〜第nの電池パック200−1〜200−n、充電器300、インバータ400、モータ500、ECU(Electric Control Unit:電子制御装置)600および情報出力装置700を有する。これらのうち、第1〜第nの電池パック200−1〜200−n、充電器300、インバータ400およびモータ500は、電気自動車(図示せず)の電源系統(以下、単に「電源系統」という)を構成している。
【0017】
第1〜第nの電池パック200−1〜200−nは、電源系統に並列に配置された電池であり、電気自動車を駆動するための電力を蓄積する。第1〜第nの電池パック200−1〜200−nは、それぞれ、絶縁抵抗低下検出器210を備えている。以下、第1〜第nの電池パック200−1〜200−nに備えられたn個の絶縁抵抗低下検出器210を、順に、第1〜第nの絶縁抵抗低下検出器210−1〜210−nという。
【0018】
第1〜第nの絶縁抵抗低下検出器210−1〜210−nは、対応する電池パック200の絶縁抵抗が所定の値より低下したか否かを示す検出結果を出力する。各絶縁抵抗低下検出器210は、例えば、特許文献3に記載の絶縁抵抗低下検出器の構成を有する。なお、以下の説明において、電池パック200の絶縁抵抗が所定の値より低下していることは、適宜、「絶縁抵抗の低下」と表現する。
【0019】
また、各電池パック200と電気系統の他の部分との間には、電池パック200毎に、リレー220が挿入されている。
【0020】
なお、電池パック200における絶縁の低下が検出されたとしても、必ずしもその電池パック200自体の絶縁抵抗が劣化しているとは限らない。例えば、電池パック200と接続状態にある他の部分の絶縁抵抗が劣化している場合にも、絶縁の低下は検出され得る。
【0021】
充電器300は、第1〜第nの電池パック200−1〜200−nへの充電を行う。
【0022】
インバータ400は、第1〜第nの電池パック200−1〜200−nの直流電力を、三相交流電力に変換してモータ500に供給する。
【0023】
モータ500は、三相交流モータであり、インバータ400から供給される三相交流電力により、電気自動車のホイール(図示せず)を駆動する。
【0024】
ECU600は、本発明に係る絶縁抵抗低下検出装置を含み、電気系統における絶縁抵抗の低下を検出すると共に、絶縁抵抗が劣化している電池パックを特定する。ECU600は、接続状態制御部610および絶縁抵抗劣化箇所判定部620を有する。
【0025】
接続状態制御部610は、電池パック200毎に、リレー220のオンオフを制御することにより、電池パック200と電気系統の当該電池パック200以外の部分である他の部分(以下、単に「他の部分」という)との間の接続状態を制御する。より具体的には、接続状態制御部610は、第1〜第nの電池パック200−1〜200−nのそれぞれが他の部分と接続していない状態(以下、「第1の状態」という)となるように、各リレー220のオンオフを制御する。
【0026】
そして、接続状態制御部610は、第1の状態にある電池パック200の絶縁抵抗低下検出器210を動作させる。この結果、第1の状態にある電池パック200の絶縁抵抗低下検出器210は、周期性のある信号を発生し、その振幅に基づいて、対応する電池パック200の絶縁抵抗が所定の値より低下したか否かを示す検出結果を、絶縁抵抗劣化箇所判定部620に出力する。
【0027】
また、接続状態制御部610は、第1〜第nの電池パック200−1〜200−nのうち絶縁抵抗は劣化していないと判定された1又は複数の電池パック200のみが、他の部分と接続している状態(以下、「第2の状態」という)となるように、各リレー220のオンオフを制御する。
【0028】
そして、接続状態制御部610は、第2の状態にある電池パック200の絶縁抵抗低下検出器210を動作させる。この結果、第2の状態にある電池パック200の絶縁抵抗低下検出器210は、周期性のある信号を発生し、その振幅に基づいて、対応する電池パック200の絶縁抵抗が所定の値より低下したか否かを示す検出結果を、絶縁抵抗劣化箇所判定部620に出力する。
【0029】
なお、接続状態制御部610は、第1〜第nの電池パック200−1〜200−nを第1の状態にしているか、第2の状態にしているか、いずれでもないかを示す制御モード情報を、絶縁抵抗劣化箇所判定部620に出力する。
【0030】
絶縁抵抗劣化箇所判定部620は、第1〜第nの絶縁抵抗低下検出器210−1〜210−nが出力する検出結果を入力し、電池パック200毎に、電池パック200における絶縁抵抗の低下の検出結果を取得する。そして、絶縁抵抗劣化箇所判定部620は、上述の第1の状態において絶縁抵抗の低下が検出される電池パック200が存在するとき、当該電池パック200の絶縁抵抗は劣化していると判定する。より具体的には、絶縁抵抗劣化箇所判定部620は、制御モード情報と検出結果とに基づいて、第1〜第nの電池パック200−1〜200−nの中で、第1の状態にあるときに絶縁抵抗の低下が検出されたものを判定する。
【0031】
また、絶縁抵抗劣化箇所判定部620は、上述の第2の状態にある電池パック200において絶縁抵抗の劣化が検出されたとき、電気系統のうち第1〜第nの電池パック200−1〜200−n以外の部分(以下「高圧系」という)の絶縁抵抗は劣化していると判定する。より具体的には、絶縁抵抗劣化箇所判定部620は、制御モード情報と検出結果とに基づいて、第2の状態にあるときに絶縁抵抗の低下が検出されたか否かを判定する。
【0032】
そして、絶縁抵抗劣化箇所判定部620は、電池パック200毎に当該電池パック200の絶縁抵抗は劣化していると判定したか否かを示す情報(つまり、絶縁抵抗が劣化している電池パックを特定する情報。以下「劣化箇所特定情報」という)を、記録または出力する。本実施の形態においては、絶縁抵抗劣化箇所判定部620は、劣化箇所特定情報を、情報出力装置700へ出力する。なお、劣化箇所特定情報は、高圧系に対して絶縁抵抗が劣化していると判定したか否かを示す情報を含んでもよい。
【0033】
なお、ECU600は、図示しないが、例えば、CPU(central processing unit)、制御プログラムを格納したROM(read only memory)などの記憶媒体、およびRAM(random access memory)などの作業用メモリを有する。この場合、上記したECU600の各部の機能は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。
【0034】
情報出力装置700は、例えば、電気自動車のインストゥルメントパネルであり、劣化箇所特定情報の内容を、文字、記号、あるいは画像などにより表示する。
【0035】
このような絶縁抵抗低下検出システム100は、電気系統の他の部分と接続していない状態において絶縁抵抗の低下が検出される電池パック200に対して、絶縁抵抗が劣化していると判定する。これにより、絶縁抵抗低下検出システム100は、絶縁抵抗が劣化している電池パック200を特定することができる。
【0036】
また、絶縁抵抗低下検出システム100は、電気系統の他の部分と接続していない状態において絶縁抵抗の低下が検出されるか否かを、第1〜第nの絶縁抵抗低下検出器210−1〜210−nのそれぞれに対して行う。これにより、絶縁抵抗低下検出システム100は、絶縁抵抗が劣化している全ての電池パック200を特定することができる。
【0037】
更に、絶縁抵抗低下検出システム100は、絶縁抵抗が劣化していないと判定した電池パック200のみを高圧系に接続して、絶縁抵抗の低下が発生しているか否かを判定する。これにより、絶縁抵抗低下検出システム100は、高圧系に絶縁抵抗の劣化が発生しているか否かを判定することができる。
【0038】
すなわち、絶縁抵抗低下検出システム100は、複数の電池パック200を並列に配置した電気系統に対して、絶縁抵抗の劣化が発生している箇所を、従来技術よりも詳細に判定することができる。
【0039】
以上で、絶縁抵抗低下検出システム100の構成についての説明を終える。
【0040】
次に、本発明に係る絶縁抵抗低下検出装置を含むECU600の動作について説明する。
【0041】
図2は、ECU600の動作の一例を示すフローチャートである。ECU600は、例えば、電気自動車がメンテナンスモードにある間に、以下に説明する動作を行う。
【0042】
まず、ステップS1100において、接続状態制御部610は、第1〜第nの電池パック200−1〜200−nのリレー220をオフにした後、第1〜第nの絶縁抵抗低下検出器210−1〜210−nをオンにする(動作させる)。すなわち、接続状態制御部610は、全ての電池パック200を、第1の状態にする。この結果、絶縁抵抗劣化箇所判定部620は、第1の状態にある第1〜第nの電池パック200−1〜200−nの検出結果を取得する。
【0043】
そして、ステップS1200において、絶縁抵抗劣化箇所判定部620は、電池パック200毎に予め用意された劣化フラグのうち、絶縁抵抗の低下が検出された電池パック200の劣化フラグを、初期状態のオフから、オンに切り替える。
【0044】
そして、ステップS1300において、接続状態制御部610は、劣化フラグがオフの電池パック200のみにおいて、リレー220をオンにした後、絶縁抵抗低下検出器210をオンにする(動作させる)。すなわち、接続状態制御部610は、劣化フラグがオフの電池パック200を、第2の状態にする。この結果、絶縁抵抗劣化箇所判定部620は、第2の状態にある電池パック200の検出結果を取得する。
【0045】
そして、ステップS1400において、絶縁抵抗劣化箇所判定部620は、第2の状態にある電池パック200において、絶縁抵抗の低下が検出されたか否かを判断する。第2の状態にある電池パック200において、絶縁抵抗の低下が検出された場合(S1400:YES)、ステップS1500へ進む。また、絶縁抵抗劣化箇所判定部620は、第2の状態にある電池パック200において、絶縁抵抗の低下が検出されなかった場合(S1400:NO)、後述のステップS1600へ進む。
【0046】
ステップS1500において、絶縁抵抗劣化箇所判定部620は、予め用意された高圧系の劣化フラグを、初期状態のオフから、オンに切り替える。
【0047】
そして、ステップS1600において、絶縁抵抗劣化箇所判定部620は、判定結果を示す劣化箇所特定情報を、情報出力装置700へ出力する。すなわち、絶縁抵抗劣化箇所判定部620は、第1〜第nの電池パック200−1〜200−nおよび高圧系のそれぞれの劣化フラグのうちどれがオンとなっているかに基づいて、劣化箇所特定情報を生成し、出力する。
【0048】
そして、ステップS1700において、接続状態制御部610は、第1〜第nの絶縁抵抗低下検出器210−1〜210−nをオフにする(停止させる)。
【0049】
このような動作により、ECU600は、第1〜第nの電池パック200−1〜200−nおよび高圧系のうち、どこで絶縁抵抗が劣化しているのかを特定し、その特定結果を示す情報を出力することができる。
【0050】
以上で、ECU600の動作についての説明を終える。
【0051】
このように、絶縁抵抗低下検出システム100は、電気系統の他の部分と接続していない状態において絶縁抵抗の低下が検出される電池パック200に対して、絶縁抵抗が劣化していると判定する。これにより、絶縁抵抗低下検出システム100は、絶縁抵抗が劣化している電池パック200を特定することができ、電気系統に対して、どこで絶縁抵抗の劣化が発生しているのかを、より詳細に判定することができる。
【0052】
また、絶縁抵抗低下検出システム100は、特定結果を出力することができるので、電池パック200の交換・高圧系の修理などの電力系統のメンテナンスを、的確に行うことを可能にする。また、これにより、絶縁抵抗低下検出システム100は、電力系統および電気自動車の安全性や信頼性を向上させることができる。
【0053】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2は、1つの絶縁抵抗低下検出器を複数の電池パックに共用とした場合の例である。
【0054】
図3は、実施の形態2に係る絶縁抵抗低下検出装置を含む絶縁抵抗低下検出システムの構成の一例を示すブロック図であり、実施の形態1の図1に対応するものである。図1と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。
【0055】
図3において、絶縁抵抗低下検出システム100aは、図1の第1〜第nの電池パック200−1〜200−nおよびECU600に代えて、第1〜第nの電池パック200a−1〜200a−nおよびECU600aを有する。
【0056】
第1〜第nの電池パック200a−1〜200a−nは、個別の絶縁抵抗低下検出器を備えておらず、共通の絶縁抵抗低下検出器210aに、リレー230aを介して接続している。リレー230aは、絶縁抵抗低下検出器210a側の接点を、第1〜第nの電池パック200a−1〜200a−n側のn個の接点のそれぞれに切り替え接続可能となっている。すなわち、絶縁抵抗低下検出器210aは、第1〜第nの電池パック200a−1〜200a−nのそれぞれに切り替え接続可能となっている。
【0057】
ECU600aは、図1の接続状態制御部610に代えて、接続状態制御部610aを有する。
【0058】
接続状態制御部610aは、接続状態制御部610と同様の機能に加えて、リレー230aの接続状態を制御して、絶縁抵抗低下検出器210aの検出対象を、第1〜第nの電池パック200a−1〜200a−nで順次切り替える機能を有する。より具体的には、接続状態制御部610aは、絶縁抵抗低下検出器210aをオフにしてからリレー230aの接点接続を切り替え、その後に絶縁抵抗低下検出器210aをオンにする制御を、全ての電池パック200aに対する検出が完了するまで繰り返す。
【0059】
また、接続状態制御部610aは、絶縁抵抗が低下していないと判定された電池パック200aを示す情報を、絶縁抵抗劣化箇所判定部620から取得する。そして、接続状態制御部610aは、該当する電池パック200aが上述の第2の状態となるように、リレー220のオンオフを切り替える。更に、接続状態制御部610aは、該当する電池パック200aの1つが絶縁抵抗低下検出器210aに接続されるように、リレー230aの接点接続を切り替えてから、絶縁抵抗低下検出器210aをオンにする。
【0060】
このような絶縁抵抗低下検出システム100aは、絶縁抵抗低下検出器210aを、第1〜第nの電池パック200a−1〜200a−nに共用とした状態で、絶縁抵抗が劣化している電池パック200aを特定することができる。
【0061】
すなわち、絶縁抵抗低下検出システム100aは、電池パック毎に絶縁抵抗低下検出器を設ける実施の形態1に比べて、装置構成を簡素化することができ、装置の小型化、軽量化、および低コスト化を図ることができる。
【0062】
なお、本実施の形態と比較した場合の実施の形態1のメリットとしては、絶縁抵抗低下検出器210aの検出対象を順次切り替える必要がないため、判定に要する時間が短いことや、制御の簡素さが挙げられる。
【0063】
なお、以上説明した各実施の形態では、本発明を電気自動車のECUに適用した場合について説明したが、本発明の適用は、これに限定されない。本発明は、産業用電源装置や家庭用電源装置など、複数の電池パックを並列に配置した電気系統を有する各種の電源装置に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、複数の電池パックを並列に配置した電気系統に対して、どこで絶縁抵抗の劣化が発生しているのかを、より詳細に判定することができる絶縁抵抗低下検出装置および絶縁抵抗低下検出方法として有用である。
【符号の説明】
【0065】
100、100a 絶縁抵抗低下検出システム
200、200a 電池パック
210、210a 絶縁抵抗低下検出器
220、230a リレー
300 充電器
400 インバータ
500 モータ
600、600a ECU
610、610a 接続状態制御部
620 絶縁抵抗劣化箇所判定部
700 情報出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池パックを並列に配置した電気系統における絶縁抵抗の低下を検出する絶縁抵抗低下検出装置であって、
前記各電池パックと前記電気系統の他の部分との間の接続状態を制御する接続状態制御部と、
前記各電池パックについて、絶縁抵抗が所定の値より低下したか否かを示す検出結果を取得し、前記検出結果と前記接続状態制御部の制御状態とに基づいて、絶縁抵抗が劣化している箇所を判定する絶縁抵抗劣化箇所判定部と、を有する、
絶縁抵抗低下検出装置。
【請求項2】
前記接続状態制御部は、
前記各電池パックが前記他の部分と接続していない第1の状態となるように前記接続状態を制御し、
前記絶縁抵抗劣化箇所判定部は、
前記第1の状態において絶縁抵抗の低下が検出された前記電池パックに対して、当該電池パックの絶縁抵抗が劣化していると判定する、
請求項1記載の絶縁抵抗低下検出装置。
【請求項3】
前記接続状態制御部は、
前記電池パックのうち絶縁抵抗は劣化していないと判定された1又は複数の電池パックのみが前記他の部分と接続している第2の状態となるように前記接続状態を制御し、
前記絶縁抵抗劣化箇所判定部は、
前記第2の状態において絶縁抵抗の低下が検出されたとき、前記他の部分の絶縁抵抗が劣化していると判定する、
請求項2記載の絶縁抵抗低下検出装置。
【請求項4】
前記絶縁抵抗劣化箇所判定部は、
前記電池パック毎に前記電池パックの絶縁抵抗は劣化していると判定したか否かを示す情報を、記録または出力する、
請求項1記載の絶縁抵抗低下検出装置。
【請求項5】
前記接続状態制御部は、
前記電池パック毎に当該電池パックと前記他の部分との間に挿入されたリレーを用いて、前記接続状態を制御する、
請求項1記載の絶縁抵抗低下検出装置。
【請求項6】
前記絶縁抵抗劣化箇所判定部は、
前記電池パック毎に1つずつ設けられた複数の絶縁抵抗低下検出器から、前記検出結果を取得する、
請求項1記載の絶縁抵抗低下検出装置。
【請求項7】
前記絶縁抵抗劣化箇所判定部は、
前記複数の電池パックのそれぞれに切り替え接続可能な絶縁抵抗低下検出器から、前記検出結果を取得する、
請求項1記載の絶縁抵抗低下検出装置。
【請求項8】
前記電気系統は、電気自動車の電源系統であり、
前記接続状態制御部および前記絶縁抵抗劣化箇所判定部は、前記電気自動車に搭載された電子制御ユニットに配置されている、
請求項1記載の絶縁抵抗低下検出装置。
【請求項9】
複数の電池パックを並列に配置した電気系統における絶縁抵抗の低下を検出する絶縁抵抗低下検出方法であって、
前記各電池パックについて、絶縁抵抗が所定の値より低下したか否かを示す検出結果を取得する検出ステップと、
前記各電池パックと前記電気系統の他の部分との間の接続状態を制御する制御ステップと、
前記検出ステップの検出結果と前記制御ステップの制御状態とに基づいて、絶縁抵抗が劣化している箇所を判定する判定ステップと、を有する、
絶縁抵抗低下検出方法。
【請求項10】
前記制御ステップは、
前記各電池パックが前記他の部分と接続していない第1の状態となるように前記接続状態を制御し、
前記判定ステップは、
前記第1の状態において絶縁抵抗の低下が検出された前記電池パックに対して、当該電池パックの絶縁抵抗が劣化していると判定する、
請求項9記載の絶縁抵抗低下検出方法。
【請求項11】
前記制御ステップは、
前記電池パックのうち絶縁抵抗は劣化していないと判定された1又は複数の電池パックのみが前記他の部分と接続している第2の状態となるように前記接続状態を制御し、
前記判定ステップは、
前記第2の状態において絶縁抵抗の低下が検出されたとき、前記他の部分の絶縁抵抗が劣化していると判定する、
請求項10記載の絶縁抵抗低下検出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−83611(P2013−83611A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225248(P2011−225248)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】