絶縁防水型ヒータ
【課題】より絶縁性及び防水性に優れた絶縁防水型ヒータを提供すること。
【解決手段】絶縁防水型ヒータは、発熱素子と、発熱素子に重ね合わされた電極部材と、発熱素子と電極部材とを包む絶縁シートと、絶縁シートに包まれた発熱素子及び電極部材を収容し両端部を通じてのみ外部と連通可能な中空部と、発熱素子からの熱が伝導される放熱面と、を有する筒体と、筒体の両端部に設けられ中空部を閉塞するキャップと、電気絶縁性及び防水性を有する被覆材で導線を被覆してなり、一端部がキャップを貫通して筒体の中空部内に配置されて電極部材に接続されたケーブルと、筒体とキャップとの間の隙間及びケーブルとキャップとの間の隙間を塞ぐ電気絶縁性及び防水性を有する封止材と、を備えている。
【解決手段】絶縁防水型ヒータは、発熱素子と、発熱素子に重ね合わされた電極部材と、発熱素子と電極部材とを包む絶縁シートと、絶縁シートに包まれた発熱素子及び電極部材を収容し両端部を通じてのみ外部と連通可能な中空部と、発熱素子からの熱が伝導される放熱面と、を有する筒体と、筒体の両端部に設けられ中空部を閉塞するキャップと、電気絶縁性及び防水性を有する被覆材で導線を被覆してなり、一端部がキャップを貫通して筒体の中空部内に配置されて電極部材に接続されたケーブルと、筒体とキャップとの間の隙間及びケーブルとキャップとの間の隙間を塞ぐ電気絶縁性及び防水性を有する封止材と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電部が外部に露出しておらず、また通電部が防水化された絶縁防水型ヒータに関し、特にPTC(Positive Temperature Coefficient)素子を発熱源に用いた絶縁防水型ヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、PTC素子を用いたヒータは周知であり、本発明者も特許文献1に開示されるような発熱体ユニットを提案している。
図14は、その発熱体ユニットの斜視図を表す。
図15は、図14におけるX−X線方向の断面図を表す。
なお、図14では、図15に表されるキャップ65、66は省略されている。
【0003】
この発熱体ユニットは、上面部に長手方向に沿ってスリット63aが形成されたアルミニウム製の筒体63を備え、その内部には発熱素子(PTC素子)62が配置されている。発熱素子62の上面には一方の電極板68が配置され、下面には他方の電極板67が配置されている。
【0004】
両電極板67、68の外側には断面コ字状の合成樹脂からなる絶縁体64が配置されている。筒体63の両端部は、キャップ65、66によって密封されている。一方の電極板68の一端部はキャップ66から突出して筒体63の外部に露出しており、他方の電極板67の一端部はキャップ65から突出して筒体63の外部に露出している。
【特許文献1】特開2001−351764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、洗濯用水や、熱帯魚用の水槽の水などの液体を加温する場合に、ヒータを液体中に浸漬させる、あるいは液体の流路に置くなどして、液体を直接高温部分に接触させれば伝熱効率を高めることができる。この場合、ヒータには、高い電気絶縁性及び防水性が要求される。
【0006】
上記特許文献1に開示された発熱体ユニットは、浴室など高湿環境下で使用することも可能である。しかし、液体に浸漬されるような状況下での使用を考えた場合には、特許文献1の構造では、絶縁性及び防水性に関して改善の余地がある。すなわち、通電部分である電極板67、68の一部が外部に露出しており、また、筒体63の長手方向全長にわたってスリット63aが形成され、そのスリット63aを通じて、発熱素子62と電極板67、68とが収容された筒体63内部への液体の浸入を許してしまう。
【0007】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、より絶縁性及び防水性に優れた絶縁防水型ヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の絶縁防水型ヒータは、
電極面を有する発熱素子と、
前記電極面に接して前記発熱素子に重ね合わされた電極部材と、
前記発熱素子と前記電極部材とを包む絶縁シートと、
前記絶縁シートに包まれた前記発熱素子及び前記電極部材を収容し両端部を通じてのみ外部と連通可能な中空部と、前記発熱素子からの熱が伝導される放熱面と、を有する筒体と、
前記筒体の両端部に設けられ前記中空部を閉塞するキャップと、
電気絶縁性及び防水性を有する被覆材で導線を被覆してなり、一端部が前記キャップを貫通して前記筒体の前記中空部内に配置されて前記電極部材に接続されたケーブルと、
前記筒体と前記キャップとの間の隙間及び前記ケーブルと前記キャップとの間の隙間を塞ぐ、電気絶縁性及び防水性を有する封止材と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の絶縁防水型ヒータは、電気絶縁性及び防水性に優れているので、液体に接する環境下で用いても漏電することなく安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る絶縁防水型ヒータ1の側面図である。
図2は、図1に表された絶縁防水型ヒータ1の上面図である。
図3は、図1に表された絶縁防水型ヒータ1の左側面図である。
図4は、図1に表された絶縁防水型ヒータ1の右側面図である。
【0012】
本実施形態に係る絶縁防水型ヒータ1は、主として、発熱素子を内部に収容した本体3と、本体3の放熱面上に設けられたフィン8と、本体3の両端部にそれぞれ設けられたキャップ5、6と、を備える。
【0013】
図5は本体3の平面図を表す。
図6は図5におけるA−A線方向の拡大断面図を表す。
【0014】
本体3は、発熱素子20と、発熱素子20を挟み込むように設けられた一対の電極部材22a、22bと、発熱素子20と電極部材22a、22bとを包む絶縁シート24と、絶縁シート24に包まれた発熱素子20及び電極部材22a、22bを内部に収容する筒体12と、を備える。
【0015】
発熱素子20は、正温度特性をもったPTC(Positive Temperature Coefficient)セラミック素子であり、キューリー点以上の温度になると急激に抵抗が増加してそれ以上の温度上昇が制限される。図5において点線で表されるように、複数(図示では例えば4つ)の発熱素子20が筒体12の長手方向に沿って配置されている。発熱素子20は、例えば四角い薄板片状を呈し、他面よりも面積が大なる表裏両面には、例えば銀などの金属からなる電極面が形成されている。発熱素子20の厚さは、例えば2ミリメータである。発熱素子20の両電極面には、それぞれ電極部材22a、22bが接して重ね合わされている。
【0016】
図7は電極部材22aの一端部側の要部平面図を表す。
図8は図7に表される電極部材22aをB−B線方向から見た拡大図を表す。
なお、電極部材22bも、図7、8に表される電極部材22aと同様に構成される。
【0017】
電極部材22aは、例えばアルミニウムなどの金属材料からなり、帯板状の平板部26と、平板部26の一端側に一体に設けられた端子部27と、を有する。平板部26は、発熱素子20の電極面に接し、一対の電極部材22a、22bによって発熱素子20は挟まれている。平板部26の厚さは、例えば0.4ミリメータである。発熱素子20と平板部26とは、導電性と熱伝導性に優れた、例えばシリコーン系接着剤によって接着される。
【0018】
端子部27は、平板部26の一端部から突出して設けられ、周方向の一部を切り欠いた筒状を呈する。筒状の端子部27の内部に、図5に表されるケーブル14aの一端が挿入され、端子部27を縮径方向に押しつぶすことで端子部27にケーブル14aの一端が固定される。ケーブル14aは、導線を被覆材によって被覆してなる。ケーブル14aにおいて、端子部27に固定される部分の少なくとも先端側の導線の一部は被覆材から露出され、はんだなどを介して端子部27に接合されている。したがって、発熱素子20の電極面は、平板部26及び端子部27を介してケーブル14aと電気的に接続される。他方の電極部材22bについても、同様にケーブル14bと電気的に接続される。ケーブル14a、14bの被覆材は、電気絶縁性、防水性及び可撓性を有する樹脂材料からなる。
【0019】
図6に表されるように、発熱素子20を一対の電極部材22a、22bで挟んでなる積層体は、絶縁シート24に包まれている。絶縁シート24は、可撓性、熱伝導性及び電気絶縁性を有し、例えば、厚さ0.05ミリメータのポリイミドフィルムからなる。絶縁シート24の両端縁部24a、24bは互いに重ね合わされ、発熱素子20及び電極部材22a、22bの両端部以外の部分を完全に覆っている。その絶縁シート24の両端縁部24a、24bは、電極部材22a、22b上ではなく、発熱素子20及び電極部材22a、22bの側面に対向する部分で重なり合っている。すなわち、絶縁シート24の両端縁部24a、24bは、筒体12の側面12bの裏側で重なり合っている。
【0020】
発熱素子20及び電極部材22a、22bは、両端部以外の部分が絶縁シート24に包まれた状態で、角筒状の筒体12の中空部13内に収容される。筒体12は、例えばアルミニウム等の熱伝導性及び容易な加工性を有する材料からなる。筒体12は両端部のみに開口が形成され、その両端部の開口を通じてのみ中空部13は外部と連通可能とされる。すなわち、図14を参照して前述した従来例の筒体63のようなスリット63aは形成されておらず、本具体例の筒体12の両端部が後述するキャップ及び封止材で塞がれると、中空部13は外部から完全に遮断された密閉空間となる。
【0021】
筒体12は、互いに略平行な2つの放熱面12aと、放熱面12aに略垂直な2つの側面12bと、を有する。放熱面12aの方が側面12bより面積が大きい。側面12bには、図1にも表されるように、長手方向に沿って溝18が形成されている。
【0022】
発熱素子20は、その電極面が、筒体12の放熱面12aの裏面に対向するように中空部13内に収容される。発熱素子20の電極面と、放熱面12aの裏面との間には、電極部材22a、22bのうちのどちらか一方と、絶縁シート24とが介在されている。組立前の状態においては、筒体12の内部寸法(図6における上下方向の寸法)は、図6に表したよりもやや大きめとされている。そして、発熱素子20と電極部材22a、22bとを組み立てて絶縁シート24にくるんだ状態の構造体を筒体12の中に挿入し、筒体12の放熱面12aに機械的圧力を加えて図6の上下方向に筒体12を押しつぶすことで、発熱素子20、電極部材22a、22b及び絶縁シート24は、筒体12の放熱面12aの裏面間で狭圧された状態となり中空部13内で固定される。
【0023】
上述した筒体12の押しつぶし量は例えば0.5mmほどである。ここで、筒体12の両側面12bには長手方向に沿って溝18が形成されているため、筒体12を押しつぶしたときにその側面12bが外側に膨らんでしまうことを防げる。つまり、外寸の増加を防止できる。筒体12の側面12bが凸面にならないため、側面12bに例えば熱電対などの温度センサを取り付けやすくなり、また取り付けた後の安定性もよい。放熱面12aは平面であり、この放熱面12a上には、後述するようにフィンが取り付けられる。
【0024】
図1〜4に表されるように、筒体12の両端部にはそれぞれキャップ5、6が取り付けられる。
図9は、一方のキャップ5を内側から見た平面図である。
図10は図9におけるC−C線方向の断面図である。
【0025】
キャップ5は、電気絶縁性及び発熱素子20が発する熱に対する耐熱性を有し、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT:polybutylene terephthalate)からなる。キャップ5は、筒体12の一端部が嵌め入れられる凹部5bを有し、その凹部5bの底には凹部5bの内外を連通させる2つの貫通孔5aが形成されている。
【0026】
キャップ5は、筒体12の一端部に被せられる。具体的には、キャップ5の凹部5bに、耐熱性及び電気絶縁性を有する例えばシリコーン系の封止材を入れたうえで、その凹部5bに筒体12の一端部を嵌め入れる。このとき、図1〜3に表されるように、凹部5b内の封止材16が凹部5bの外にはみ出してキャップ5と筒体12との隙間を覆う。封止材16が硬化することでキャップ5と筒体12とが固定される。
【0027】
キャップ5に形成された2つの貫通孔5aにはそれぞれ上述したケーブル14a、14bが通され、ケーブル14a、14bはその貫通孔5aを通してキャップ5の外に引き出され、図示しない外部回路に接続される。ケーブル14a、14bが通された貫通孔5a内にも、封止材16が注入され、その一部が貫通孔5aからキャップ5の外側にはみ出し、ケーブル14a、14bと貫通孔5aとの隙間を覆って硬化する。
【0028】
図1、2、4に表されるように、筒体12の他端部にも同様なキャップ6が設けられるが、このキャップ6には貫通孔5aが形成されていない。このようにして、筒体12の中空部13は、キャップ5、6及び封止材16によって外部から液密に遮断される。
【0029】
図1、2に表されるように、筒体12の2つの放熱面12a上には、それぞれ、フィン8が設けられる。フィン8は、例えばアルミニウムからなる板材を、山部と谷部とが繰り返された形状に折り曲げてなる。フィン8は、耐熱性及び熱伝導性に優れた例えばシリコーン系の接着剤により放熱面12a上に固定される。図2に表されるように、フィン8は、筒体12の短手方向に沿って直線状ではなく波形状に湾曲している。
【0030】
以上のように構成される本実施形態に係る絶縁防水型ヒータ1において、ケーブル14a、14b、電極部材22a、22bを介して、発熱素子20が通電され発熱する。発熱素子20が発する熱は、いずれも良好な熱伝導性を有する電極部材22a、22b、絶縁シート24を介して筒体12の放熱面12aへと伝わり、さらに放熱面12a上に設けられたフィン8へと伝わる。例えば、発熱素子20は230〜240℃程度まで昇温し、フィン8の温度は200℃程度になる。
【0031】
そして、本具体例によれば、電極部材22a、22bは、キャップ5、6及び封止材16によって密閉される筒体12内部に収容され、外部に露出していない。また、電極部材22a、22bと、筒体12との間には絶縁シート24が介在されているので、筒体12及びフィン8は通電されない。さらに、ケーブル14a、14bの外側は絶縁性の被覆材となっている。したがって、本実施形態に係る絶縁防水型ヒータ1では、通電部分が外部に露出されない構造となっている。
【0032】
また、筒体12は、従来例のようなスリット63a(図14参照)がなく、両端部のみが開口される構造であるが、その両端部はキャップ5、6によって閉塞され、さらに封止材16によってキャップ5、6と筒体12との隙間がシールされる構造となっている。すなわち、筒体12内部は完全に外部から遮断され、液体の浸入を許さない。
【0033】
このように、本実施形態に係る絶縁防水型ヒータ1は、電気絶縁性及び防水性に優れているので、液体中に浸漬させるなど、液体に接触させる使い方をしても漏電することがなく安全である。
【0034】
例えば、本実施形態に係る絶縁防水型ヒータ1の使用例として、洗濯機の洗濯水や、水槽の水を加熱する用途などが挙げられる。また、スチーム機能付き電子レンジにおいて、水を加熱してスチームにするためのヒータとしても用いることができる。絶縁防水型ヒータ1の設置形態としては、加熱すべき液体中に浸漬させる形態、液体の流路中に設置する形態などを採用できる。また、例えば浴室などの高湿環境下での使用にも好適である。
【0035】
また、図2に表されるように、フィン8が波形状に湾曲しているため、例えば図2において矢印aで表される方向に液体が流れる流路中にフィン8の延在方向を沿わせて、絶縁防水型ヒータ1を設置した場合に、フィン8が流れ方向aに沿ってまっすぐである場合よりも、液体とフィン8との接触時間が長くなりフィン8から液体への伝熱効率を上げることができる。
【0036】
なお、フィン8の形状や取り付け方向については、各種の変形も可能である。例えば、図1及び図2に例示した具体例においては、フィン8は、本体3の幅方向(図2における矢印aの方向)に気体や液体を流す場合に好適な形態を有する。これに対して、本体3の長手方向(図2における矢印aと略直角な方向)に気体や液体を流すようにフィン8の取り付け方向を変えてもよい。
【0037】
また、フィン8は、必ずしも本体3の両側に設ける必要はなく、片側のみに設けてもよい。すなわち、絶縁防水型ヒータ1の用途によっては、本体3の一方の側のみにフィン8を設け、本体3の他方の側は平坦面のままとしたり、他の部材に接合してもよい。
【0038】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。なお、前出したものと同様の要素については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0039】
図11は、本発明の他の実施形態に係る絶縁防水型ヒータ21の本体の断面図を表す。 この絶縁防水型ヒータ21が、図6に本体断面構造が表される上述した実施形態と異なるのは、電極部材22aと、放熱面12aの裏面との間の部分で、絶縁シート24の両端縁部24a、24bを重ね合わせている点である。
【0040】
発熱素子20から放熱面12aへの伝熱効率を考えると、上述した実施形態のように、筒体12の側面12bの裏側の部分で絶縁シート24の両端縁部24a、24bを重ね合わせた方が望ましい。電極部材22aと放熱面12aとの間の部分は、発熱素子20から放熱面12aへの伝熱経路中にあり、この部分に2重に絶縁シート24が重なり合うとその分、伝熱の妨げになる。また、絶縁シート24が重なり合った部分の両側に隙間が生じ、このことも発熱素子20から放熱面12aへの熱伝達効率を低下させる。
【0041】
図6に表される構造の場合には、400[W]の出力が得られたのに対し、図11の構造の場合には、370〜380[W]であった。すなわち、図11の構造では、発熱素子20の熱が外部(特に、図11において上方)に伝わりにくく、自らの温度上昇によって出力を低下させる性質を有するPTC素子である発熱素子20の出力が5〜8%ほど低下した。ただし、例えば、発熱素子20から放出される熱を片側(図11において下方)のみに取り出したいような場合には、本実施形態の構造を採用することができる。
【0042】
図12は、本発明のさらに他の実施形態に係る絶縁防水型ヒータ31の本体の断面図を表す。
この絶縁防水型ヒータ31では、電極部材22aの外側にスペーサ29を重ねた上で、発熱素子20、電極部材22a、22b、スペーサ29を絶縁シート24で包んで、筒体12の中空部13に収容して、筒体12を押しつぶしている。
【0043】
スペーサ29は、例えばアルミナ、アルミニウムなど熱伝導性を有する材料からなり、発熱素子20から放熱面12aへの熱伝達を妨げない。スペーサ29は、筒体12を押しつぶす際の緩衝材として機能し、発熱素子20に過剰な力が作用するのを抑えて発熱素子20の破損を防ぐことができる。
【0044】
以上説明した本実施形態に係る絶縁防水型ヒータ1は、水などの液体を加熱する用途や、湿度が高い環境下において用いて好適である。そのような用途としては、例えば、熱帯魚などの水槽の加熱、食器洗浄機など各種の洗浄水の加熱、浴室暖房乾燥機における加熱ヒータをはじめとする各種の民生機器や産業機器を挙げることができる。
例えば、本発明の実施形態に係る絶縁防水型ヒータ1の使用例として、温水機能付き洗濯機が挙げられる。
図13は、本実施形態に係る絶縁防水型ヒータ1を備えた洗濯機の構成を表すブロック図である。
【0045】
絶縁防水型ヒータ1は、例えば、洗濯槽35への給水経路(配管)の途中に設けられる。絶縁防水型ヒータ1は、上述した波形状のフィン8の延在方向(図2における矢印aの方向)が水の流れる方向に沿うように配置される。給水経路において、絶縁防水型ヒータ1の上流側には電磁弁36が設けられている。洗濯槽39の下部には排水口が設けられ、この排水口は電磁弁39により開閉される。
【0046】
洗濯槽35は、モータ37によって回転可能とされている。制御部38は、モータ38、絶縁防水型ヒータ1、給水用の電磁弁36、排水用の電磁弁39の動作を制御する。
【0047】
洗濯時には、電磁弁36が開とされ、絶縁防水型ヒータ1に水が供給される。絶縁防水型ヒータ1に供給された水は高温のフィン8に接して加温され温水となって、洗剤及び洗濯物が投入された洗濯槽35内に供給される。そして、モータ37からの回転駆動力を受けて洗濯槽35は回転される。電磁弁39が開とされることで、洗濯槽35内の洗濯水は排水される。
【0048】
温水で洗濯することで、洗浄力を上げることができ、節水効果が得られる。また、除菌効果も期待できる。また、洗剤の溶け残りを防いで洗剤も有効利用できる。
【0049】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0050】
2本のケーブル14a、14bは、図9に表されるキャップ5に形成された2つの貫通孔5aをそれぞれ通すことに限らず、共通の1つの貫通孔を通してもよい。また、2本のケーブル14a、14bのうち、一方をキャップ5側から、他方を反対側のキャップ6側から引き出す構成としてもよい。
【0051】
また、筒体12を押しつぶすことによって、発熱素子20、電極部材22a、22b、絶縁シート24を中空部13内で狭圧することに限らず、各部材間を熱伝導性を有する接着剤で接着固定させてもよい。
【0052】
フィン8の形状は図2に表したような波形状に限らず、直線状としてもよい。つまり、図2において、フィン8が矢印aの方向に沿って屈曲せず、まっすぐに形成されていてももよい。例えば、浴室の乾燥・暖房用に用いる場合のように空気を加温する用途に適用する場合には、空気がフィン8を通り抜ける際の圧力損失及び風音を抑制する観点から、風路は直線状である方がよい。
【0053】
また、フィン8と筒体12とを接着剤によって固定することに限らず、ロウ付けや、はんだ付けによって固定してもよい。
【0054】
また、フィン8及び筒体12は、アルミニウムからなることに限らず。例えば、アルミニウム−マグネシウム合金のようなアルミニウム合金から構成してもよい。この場合には、以下のような固定方法も採用できる。
【0055】
例えばアルミニウムからなる筒体12と、例えばアルミニウム−マグネシウム合金からなるフィン8とを、フラックスに浸漬して取り出した後、エアブローにより余分なフラックスを吹き飛ばす。この後、筒体12とフィン8とを圧接させた状態で、例えば窒素ガス雰囲気中で600℃に加熱することで、フィン8と筒体12とが接合される。この接合では、高湿環境下で変質して劣化しやすい傾向がある一般的なアルミ材接合用のロウ材を用いないため、高湿環境下でも劣化しにくいという利点がある。
【0056】
なお、上記接合時、筒体12は、発熱素子20、電極部材22a、22b、絶縁シート24などを収容せず、内部が空の状態であり、筒体12とフィン8とが接合された後、筒体12の内部に、絶縁シート24で包まれた発熱素子20と電極部材22a、22bを入れて、フィン8が取り付けられた状態のまま筒体12を押しつぶして、発熱素子20などの収容物を筒体12内部に固定させる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態に係る絶縁防水型ヒータの側面図である。
【図2】図1に表された絶縁防水型ヒータの上面図である。
【図3】図1に表された絶縁防水型ヒータの左側面図である。
【図4】図1に表された絶縁防水型ヒータの右側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る絶縁防水型ヒータの本体の平面図である。
【図6】図5におけるA−A線方向の拡大断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る絶縁防水型ヒータの一構成要素である電極部材の一端部側の要部平面図である。
【図8】図7に表される電極部材をB−B線方向から見た拡大図である。
【図9】本発明の実施形態に係る絶縁防水型ヒータの一構成要素であるキャップを内側から見た平面図である。
【図10】図9におけるC−C線方向の断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係るヒータ本体の断面図である。
【図12】本発明のさらに他の実施形態に係るヒータ本体の断面図である。
【図13】本発明の実施形態に係る絶縁防水型ヒータを備えた洗濯機の構成を表すブロック図である。
【図14】従来例の発熱体ユニットの斜視図である。
【図15】図14におけるX−X線方向の断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1,21,31 絶縁防水型ヒータ
3 本体
5,6 キャップ
8 フィン
12 筒体
12a 放熱面
12b 側面
13 中空部
14a,14b ケーブル
16 封止材
18 溝
20 発熱素子
22a,22b 電極部材
24 絶縁シート
29 スペーサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電部が外部に露出しておらず、また通電部が防水化された絶縁防水型ヒータに関し、特にPTC(Positive Temperature Coefficient)素子を発熱源に用いた絶縁防水型ヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、PTC素子を用いたヒータは周知であり、本発明者も特許文献1に開示されるような発熱体ユニットを提案している。
図14は、その発熱体ユニットの斜視図を表す。
図15は、図14におけるX−X線方向の断面図を表す。
なお、図14では、図15に表されるキャップ65、66は省略されている。
【0003】
この発熱体ユニットは、上面部に長手方向に沿ってスリット63aが形成されたアルミニウム製の筒体63を備え、その内部には発熱素子(PTC素子)62が配置されている。発熱素子62の上面には一方の電極板68が配置され、下面には他方の電極板67が配置されている。
【0004】
両電極板67、68の外側には断面コ字状の合成樹脂からなる絶縁体64が配置されている。筒体63の両端部は、キャップ65、66によって密封されている。一方の電極板68の一端部はキャップ66から突出して筒体63の外部に露出しており、他方の電極板67の一端部はキャップ65から突出して筒体63の外部に露出している。
【特許文献1】特開2001−351764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、洗濯用水や、熱帯魚用の水槽の水などの液体を加温する場合に、ヒータを液体中に浸漬させる、あるいは液体の流路に置くなどして、液体を直接高温部分に接触させれば伝熱効率を高めることができる。この場合、ヒータには、高い電気絶縁性及び防水性が要求される。
【0006】
上記特許文献1に開示された発熱体ユニットは、浴室など高湿環境下で使用することも可能である。しかし、液体に浸漬されるような状況下での使用を考えた場合には、特許文献1の構造では、絶縁性及び防水性に関して改善の余地がある。すなわち、通電部分である電極板67、68の一部が外部に露出しており、また、筒体63の長手方向全長にわたってスリット63aが形成され、そのスリット63aを通じて、発熱素子62と電極板67、68とが収容された筒体63内部への液体の浸入を許してしまう。
【0007】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、より絶縁性及び防水性に優れた絶縁防水型ヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の絶縁防水型ヒータは、
電極面を有する発熱素子と、
前記電極面に接して前記発熱素子に重ね合わされた電極部材と、
前記発熱素子と前記電極部材とを包む絶縁シートと、
前記絶縁シートに包まれた前記発熱素子及び前記電極部材を収容し両端部を通じてのみ外部と連通可能な中空部と、前記発熱素子からの熱が伝導される放熱面と、を有する筒体と、
前記筒体の両端部に設けられ前記中空部を閉塞するキャップと、
電気絶縁性及び防水性を有する被覆材で導線を被覆してなり、一端部が前記キャップを貫通して前記筒体の前記中空部内に配置されて前記電極部材に接続されたケーブルと、
前記筒体と前記キャップとの間の隙間及び前記ケーブルと前記キャップとの間の隙間を塞ぐ、電気絶縁性及び防水性を有する封止材と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の絶縁防水型ヒータは、電気絶縁性及び防水性に優れているので、液体に接する環境下で用いても漏電することなく安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る絶縁防水型ヒータ1の側面図である。
図2は、図1に表された絶縁防水型ヒータ1の上面図である。
図3は、図1に表された絶縁防水型ヒータ1の左側面図である。
図4は、図1に表された絶縁防水型ヒータ1の右側面図である。
【0012】
本実施形態に係る絶縁防水型ヒータ1は、主として、発熱素子を内部に収容した本体3と、本体3の放熱面上に設けられたフィン8と、本体3の両端部にそれぞれ設けられたキャップ5、6と、を備える。
【0013】
図5は本体3の平面図を表す。
図6は図5におけるA−A線方向の拡大断面図を表す。
【0014】
本体3は、発熱素子20と、発熱素子20を挟み込むように設けられた一対の電極部材22a、22bと、発熱素子20と電極部材22a、22bとを包む絶縁シート24と、絶縁シート24に包まれた発熱素子20及び電極部材22a、22bを内部に収容する筒体12と、を備える。
【0015】
発熱素子20は、正温度特性をもったPTC(Positive Temperature Coefficient)セラミック素子であり、キューリー点以上の温度になると急激に抵抗が増加してそれ以上の温度上昇が制限される。図5において点線で表されるように、複数(図示では例えば4つ)の発熱素子20が筒体12の長手方向に沿って配置されている。発熱素子20は、例えば四角い薄板片状を呈し、他面よりも面積が大なる表裏両面には、例えば銀などの金属からなる電極面が形成されている。発熱素子20の厚さは、例えば2ミリメータである。発熱素子20の両電極面には、それぞれ電極部材22a、22bが接して重ね合わされている。
【0016】
図7は電極部材22aの一端部側の要部平面図を表す。
図8は図7に表される電極部材22aをB−B線方向から見た拡大図を表す。
なお、電極部材22bも、図7、8に表される電極部材22aと同様に構成される。
【0017】
電極部材22aは、例えばアルミニウムなどの金属材料からなり、帯板状の平板部26と、平板部26の一端側に一体に設けられた端子部27と、を有する。平板部26は、発熱素子20の電極面に接し、一対の電極部材22a、22bによって発熱素子20は挟まれている。平板部26の厚さは、例えば0.4ミリメータである。発熱素子20と平板部26とは、導電性と熱伝導性に優れた、例えばシリコーン系接着剤によって接着される。
【0018】
端子部27は、平板部26の一端部から突出して設けられ、周方向の一部を切り欠いた筒状を呈する。筒状の端子部27の内部に、図5に表されるケーブル14aの一端が挿入され、端子部27を縮径方向に押しつぶすことで端子部27にケーブル14aの一端が固定される。ケーブル14aは、導線を被覆材によって被覆してなる。ケーブル14aにおいて、端子部27に固定される部分の少なくとも先端側の導線の一部は被覆材から露出され、はんだなどを介して端子部27に接合されている。したがって、発熱素子20の電極面は、平板部26及び端子部27を介してケーブル14aと電気的に接続される。他方の電極部材22bについても、同様にケーブル14bと電気的に接続される。ケーブル14a、14bの被覆材は、電気絶縁性、防水性及び可撓性を有する樹脂材料からなる。
【0019】
図6に表されるように、発熱素子20を一対の電極部材22a、22bで挟んでなる積層体は、絶縁シート24に包まれている。絶縁シート24は、可撓性、熱伝導性及び電気絶縁性を有し、例えば、厚さ0.05ミリメータのポリイミドフィルムからなる。絶縁シート24の両端縁部24a、24bは互いに重ね合わされ、発熱素子20及び電極部材22a、22bの両端部以外の部分を完全に覆っている。その絶縁シート24の両端縁部24a、24bは、電極部材22a、22b上ではなく、発熱素子20及び電極部材22a、22bの側面に対向する部分で重なり合っている。すなわち、絶縁シート24の両端縁部24a、24bは、筒体12の側面12bの裏側で重なり合っている。
【0020】
発熱素子20及び電極部材22a、22bは、両端部以外の部分が絶縁シート24に包まれた状態で、角筒状の筒体12の中空部13内に収容される。筒体12は、例えばアルミニウム等の熱伝導性及び容易な加工性を有する材料からなる。筒体12は両端部のみに開口が形成され、その両端部の開口を通じてのみ中空部13は外部と連通可能とされる。すなわち、図14を参照して前述した従来例の筒体63のようなスリット63aは形成されておらず、本具体例の筒体12の両端部が後述するキャップ及び封止材で塞がれると、中空部13は外部から完全に遮断された密閉空間となる。
【0021】
筒体12は、互いに略平行な2つの放熱面12aと、放熱面12aに略垂直な2つの側面12bと、を有する。放熱面12aの方が側面12bより面積が大きい。側面12bには、図1にも表されるように、長手方向に沿って溝18が形成されている。
【0022】
発熱素子20は、その電極面が、筒体12の放熱面12aの裏面に対向するように中空部13内に収容される。発熱素子20の電極面と、放熱面12aの裏面との間には、電極部材22a、22bのうちのどちらか一方と、絶縁シート24とが介在されている。組立前の状態においては、筒体12の内部寸法(図6における上下方向の寸法)は、図6に表したよりもやや大きめとされている。そして、発熱素子20と電極部材22a、22bとを組み立てて絶縁シート24にくるんだ状態の構造体を筒体12の中に挿入し、筒体12の放熱面12aに機械的圧力を加えて図6の上下方向に筒体12を押しつぶすことで、発熱素子20、電極部材22a、22b及び絶縁シート24は、筒体12の放熱面12aの裏面間で狭圧された状態となり中空部13内で固定される。
【0023】
上述した筒体12の押しつぶし量は例えば0.5mmほどである。ここで、筒体12の両側面12bには長手方向に沿って溝18が形成されているため、筒体12を押しつぶしたときにその側面12bが外側に膨らんでしまうことを防げる。つまり、外寸の増加を防止できる。筒体12の側面12bが凸面にならないため、側面12bに例えば熱電対などの温度センサを取り付けやすくなり、また取り付けた後の安定性もよい。放熱面12aは平面であり、この放熱面12a上には、後述するようにフィンが取り付けられる。
【0024】
図1〜4に表されるように、筒体12の両端部にはそれぞれキャップ5、6が取り付けられる。
図9は、一方のキャップ5を内側から見た平面図である。
図10は図9におけるC−C線方向の断面図である。
【0025】
キャップ5は、電気絶縁性及び発熱素子20が発する熱に対する耐熱性を有し、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT:polybutylene terephthalate)からなる。キャップ5は、筒体12の一端部が嵌め入れられる凹部5bを有し、その凹部5bの底には凹部5bの内外を連通させる2つの貫通孔5aが形成されている。
【0026】
キャップ5は、筒体12の一端部に被せられる。具体的には、キャップ5の凹部5bに、耐熱性及び電気絶縁性を有する例えばシリコーン系の封止材を入れたうえで、その凹部5bに筒体12の一端部を嵌め入れる。このとき、図1〜3に表されるように、凹部5b内の封止材16が凹部5bの外にはみ出してキャップ5と筒体12との隙間を覆う。封止材16が硬化することでキャップ5と筒体12とが固定される。
【0027】
キャップ5に形成された2つの貫通孔5aにはそれぞれ上述したケーブル14a、14bが通され、ケーブル14a、14bはその貫通孔5aを通してキャップ5の外に引き出され、図示しない外部回路に接続される。ケーブル14a、14bが通された貫通孔5a内にも、封止材16が注入され、その一部が貫通孔5aからキャップ5の外側にはみ出し、ケーブル14a、14bと貫通孔5aとの隙間を覆って硬化する。
【0028】
図1、2、4に表されるように、筒体12の他端部にも同様なキャップ6が設けられるが、このキャップ6には貫通孔5aが形成されていない。このようにして、筒体12の中空部13は、キャップ5、6及び封止材16によって外部から液密に遮断される。
【0029】
図1、2に表されるように、筒体12の2つの放熱面12a上には、それぞれ、フィン8が設けられる。フィン8は、例えばアルミニウムからなる板材を、山部と谷部とが繰り返された形状に折り曲げてなる。フィン8は、耐熱性及び熱伝導性に優れた例えばシリコーン系の接着剤により放熱面12a上に固定される。図2に表されるように、フィン8は、筒体12の短手方向に沿って直線状ではなく波形状に湾曲している。
【0030】
以上のように構成される本実施形態に係る絶縁防水型ヒータ1において、ケーブル14a、14b、電極部材22a、22bを介して、発熱素子20が通電され発熱する。発熱素子20が発する熱は、いずれも良好な熱伝導性を有する電極部材22a、22b、絶縁シート24を介して筒体12の放熱面12aへと伝わり、さらに放熱面12a上に設けられたフィン8へと伝わる。例えば、発熱素子20は230〜240℃程度まで昇温し、フィン8の温度は200℃程度になる。
【0031】
そして、本具体例によれば、電極部材22a、22bは、キャップ5、6及び封止材16によって密閉される筒体12内部に収容され、外部に露出していない。また、電極部材22a、22bと、筒体12との間には絶縁シート24が介在されているので、筒体12及びフィン8は通電されない。さらに、ケーブル14a、14bの外側は絶縁性の被覆材となっている。したがって、本実施形態に係る絶縁防水型ヒータ1では、通電部分が外部に露出されない構造となっている。
【0032】
また、筒体12は、従来例のようなスリット63a(図14参照)がなく、両端部のみが開口される構造であるが、その両端部はキャップ5、6によって閉塞され、さらに封止材16によってキャップ5、6と筒体12との隙間がシールされる構造となっている。すなわち、筒体12内部は完全に外部から遮断され、液体の浸入を許さない。
【0033】
このように、本実施形態に係る絶縁防水型ヒータ1は、電気絶縁性及び防水性に優れているので、液体中に浸漬させるなど、液体に接触させる使い方をしても漏電することがなく安全である。
【0034】
例えば、本実施形態に係る絶縁防水型ヒータ1の使用例として、洗濯機の洗濯水や、水槽の水を加熱する用途などが挙げられる。また、スチーム機能付き電子レンジにおいて、水を加熱してスチームにするためのヒータとしても用いることができる。絶縁防水型ヒータ1の設置形態としては、加熱すべき液体中に浸漬させる形態、液体の流路中に設置する形態などを採用できる。また、例えば浴室などの高湿環境下での使用にも好適である。
【0035】
また、図2に表されるように、フィン8が波形状に湾曲しているため、例えば図2において矢印aで表される方向に液体が流れる流路中にフィン8の延在方向を沿わせて、絶縁防水型ヒータ1を設置した場合に、フィン8が流れ方向aに沿ってまっすぐである場合よりも、液体とフィン8との接触時間が長くなりフィン8から液体への伝熱効率を上げることができる。
【0036】
なお、フィン8の形状や取り付け方向については、各種の変形も可能である。例えば、図1及び図2に例示した具体例においては、フィン8は、本体3の幅方向(図2における矢印aの方向)に気体や液体を流す場合に好適な形態を有する。これに対して、本体3の長手方向(図2における矢印aと略直角な方向)に気体や液体を流すようにフィン8の取り付け方向を変えてもよい。
【0037】
また、フィン8は、必ずしも本体3の両側に設ける必要はなく、片側のみに設けてもよい。すなわち、絶縁防水型ヒータ1の用途によっては、本体3の一方の側のみにフィン8を設け、本体3の他方の側は平坦面のままとしたり、他の部材に接合してもよい。
【0038】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。なお、前出したものと同様の要素については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0039】
図11は、本発明の他の実施形態に係る絶縁防水型ヒータ21の本体の断面図を表す。 この絶縁防水型ヒータ21が、図6に本体断面構造が表される上述した実施形態と異なるのは、電極部材22aと、放熱面12aの裏面との間の部分で、絶縁シート24の両端縁部24a、24bを重ね合わせている点である。
【0040】
発熱素子20から放熱面12aへの伝熱効率を考えると、上述した実施形態のように、筒体12の側面12bの裏側の部分で絶縁シート24の両端縁部24a、24bを重ね合わせた方が望ましい。電極部材22aと放熱面12aとの間の部分は、発熱素子20から放熱面12aへの伝熱経路中にあり、この部分に2重に絶縁シート24が重なり合うとその分、伝熱の妨げになる。また、絶縁シート24が重なり合った部分の両側に隙間が生じ、このことも発熱素子20から放熱面12aへの熱伝達効率を低下させる。
【0041】
図6に表される構造の場合には、400[W]の出力が得られたのに対し、図11の構造の場合には、370〜380[W]であった。すなわち、図11の構造では、発熱素子20の熱が外部(特に、図11において上方)に伝わりにくく、自らの温度上昇によって出力を低下させる性質を有するPTC素子である発熱素子20の出力が5〜8%ほど低下した。ただし、例えば、発熱素子20から放出される熱を片側(図11において下方)のみに取り出したいような場合には、本実施形態の構造を採用することができる。
【0042】
図12は、本発明のさらに他の実施形態に係る絶縁防水型ヒータ31の本体の断面図を表す。
この絶縁防水型ヒータ31では、電極部材22aの外側にスペーサ29を重ねた上で、発熱素子20、電極部材22a、22b、スペーサ29を絶縁シート24で包んで、筒体12の中空部13に収容して、筒体12を押しつぶしている。
【0043】
スペーサ29は、例えばアルミナ、アルミニウムなど熱伝導性を有する材料からなり、発熱素子20から放熱面12aへの熱伝達を妨げない。スペーサ29は、筒体12を押しつぶす際の緩衝材として機能し、発熱素子20に過剰な力が作用するのを抑えて発熱素子20の破損を防ぐことができる。
【0044】
以上説明した本実施形態に係る絶縁防水型ヒータ1は、水などの液体を加熱する用途や、湿度が高い環境下において用いて好適である。そのような用途としては、例えば、熱帯魚などの水槽の加熱、食器洗浄機など各種の洗浄水の加熱、浴室暖房乾燥機における加熱ヒータをはじめとする各種の民生機器や産業機器を挙げることができる。
例えば、本発明の実施形態に係る絶縁防水型ヒータ1の使用例として、温水機能付き洗濯機が挙げられる。
図13は、本実施形態に係る絶縁防水型ヒータ1を備えた洗濯機の構成を表すブロック図である。
【0045】
絶縁防水型ヒータ1は、例えば、洗濯槽35への給水経路(配管)の途中に設けられる。絶縁防水型ヒータ1は、上述した波形状のフィン8の延在方向(図2における矢印aの方向)が水の流れる方向に沿うように配置される。給水経路において、絶縁防水型ヒータ1の上流側には電磁弁36が設けられている。洗濯槽39の下部には排水口が設けられ、この排水口は電磁弁39により開閉される。
【0046】
洗濯槽35は、モータ37によって回転可能とされている。制御部38は、モータ38、絶縁防水型ヒータ1、給水用の電磁弁36、排水用の電磁弁39の動作を制御する。
【0047】
洗濯時には、電磁弁36が開とされ、絶縁防水型ヒータ1に水が供給される。絶縁防水型ヒータ1に供給された水は高温のフィン8に接して加温され温水となって、洗剤及び洗濯物が投入された洗濯槽35内に供給される。そして、モータ37からの回転駆動力を受けて洗濯槽35は回転される。電磁弁39が開とされることで、洗濯槽35内の洗濯水は排水される。
【0048】
温水で洗濯することで、洗浄力を上げることができ、節水効果が得られる。また、除菌効果も期待できる。また、洗剤の溶け残りを防いで洗剤も有効利用できる。
【0049】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0050】
2本のケーブル14a、14bは、図9に表されるキャップ5に形成された2つの貫通孔5aをそれぞれ通すことに限らず、共通の1つの貫通孔を通してもよい。また、2本のケーブル14a、14bのうち、一方をキャップ5側から、他方を反対側のキャップ6側から引き出す構成としてもよい。
【0051】
また、筒体12を押しつぶすことによって、発熱素子20、電極部材22a、22b、絶縁シート24を中空部13内で狭圧することに限らず、各部材間を熱伝導性を有する接着剤で接着固定させてもよい。
【0052】
フィン8の形状は図2に表したような波形状に限らず、直線状としてもよい。つまり、図2において、フィン8が矢印aの方向に沿って屈曲せず、まっすぐに形成されていてももよい。例えば、浴室の乾燥・暖房用に用いる場合のように空気を加温する用途に適用する場合には、空気がフィン8を通り抜ける際の圧力損失及び風音を抑制する観点から、風路は直線状である方がよい。
【0053】
また、フィン8と筒体12とを接着剤によって固定することに限らず、ロウ付けや、はんだ付けによって固定してもよい。
【0054】
また、フィン8及び筒体12は、アルミニウムからなることに限らず。例えば、アルミニウム−マグネシウム合金のようなアルミニウム合金から構成してもよい。この場合には、以下のような固定方法も採用できる。
【0055】
例えばアルミニウムからなる筒体12と、例えばアルミニウム−マグネシウム合金からなるフィン8とを、フラックスに浸漬して取り出した後、エアブローにより余分なフラックスを吹き飛ばす。この後、筒体12とフィン8とを圧接させた状態で、例えば窒素ガス雰囲気中で600℃に加熱することで、フィン8と筒体12とが接合される。この接合では、高湿環境下で変質して劣化しやすい傾向がある一般的なアルミ材接合用のロウ材を用いないため、高湿環境下でも劣化しにくいという利点がある。
【0056】
なお、上記接合時、筒体12は、発熱素子20、電極部材22a、22b、絶縁シート24などを収容せず、内部が空の状態であり、筒体12とフィン8とが接合された後、筒体12の内部に、絶縁シート24で包まれた発熱素子20と電極部材22a、22bを入れて、フィン8が取り付けられた状態のまま筒体12を押しつぶして、発熱素子20などの収容物を筒体12内部に固定させる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態に係る絶縁防水型ヒータの側面図である。
【図2】図1に表された絶縁防水型ヒータの上面図である。
【図3】図1に表された絶縁防水型ヒータの左側面図である。
【図4】図1に表された絶縁防水型ヒータの右側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る絶縁防水型ヒータの本体の平面図である。
【図6】図5におけるA−A線方向の拡大断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る絶縁防水型ヒータの一構成要素である電極部材の一端部側の要部平面図である。
【図8】図7に表される電極部材をB−B線方向から見た拡大図である。
【図9】本発明の実施形態に係る絶縁防水型ヒータの一構成要素であるキャップを内側から見た平面図である。
【図10】図9におけるC−C線方向の断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係るヒータ本体の断面図である。
【図12】本発明のさらに他の実施形態に係るヒータ本体の断面図である。
【図13】本発明の実施形態に係る絶縁防水型ヒータを備えた洗濯機の構成を表すブロック図である。
【図14】従来例の発熱体ユニットの斜視図である。
【図15】図14におけるX−X線方向の断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1,21,31 絶縁防水型ヒータ
3 本体
5,6 キャップ
8 フィン
12 筒体
12a 放熱面
12b 側面
13 中空部
14a,14b ケーブル
16 封止材
18 溝
20 発熱素子
22a,22b 電極部材
24 絶縁シート
29 スペーサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極面を有する発熱素子と、
前記電極面に接して前記発熱素子に重ね合わされた電極部材と、
前記発熱素子と前記電極部材とを包む絶縁シートと、
前記絶縁シートに包まれた前記発熱素子及び前記電極部材を収容し両端部を通じてのみ外部と連通可能な中空部と、前記発熱素子からの熱が伝導される放熱面と、を有する筒体と、
前記筒体の両端部に設けられ前記中空部を閉塞するキャップと、
電気絶縁性及び防水性を有する被覆材で導線を被覆してなり、一端部が前記キャップを貫通して前記筒体の前記中空部内に配置されて前記電極部材に接続されたケーブルと、
前記筒体と前記キャップとの間の隙間及び前記ケーブルと前記キャップとの間の隙間を塞ぐ、電気絶縁性及び防水性を有する封止材と、
を備えたことを特徴とする絶縁防水型ヒータ。
【請求項2】
前記発熱素子は、PTC(Positive Temperature Coefficient)セラミック素子であることを特徴とする請求項1記載の絶縁防水型ヒータ。
【請求項3】
前記中空部内において、前記電極部材と前記絶縁シートとの間に、熱伝導性を有するスペーサが介在されていることを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁防水型ヒータ。
【請求項4】
前記筒体は、前記放熱面に略垂直な側面を有し、
前記側面の裏側で、前記絶縁シートの両端縁部が重なり合っていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の絶縁防水型ヒータ。
【請求項5】
前記筒体の前記側面に溝が形成されていることを特徴とする請求項4記載の絶縁防水型ヒータ。
【請求項6】
前記筒体の前記放熱面上に設けられたフィンをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の絶縁防水型ヒータ。
【請求項7】
前記フィンは、波形状に湾曲していることを特徴とする請求項6に記載の絶縁防水型ヒータ。
【請求項1】
電極面を有する発熱素子と、
前記電極面に接して前記発熱素子に重ね合わされた電極部材と、
前記発熱素子と前記電極部材とを包む絶縁シートと、
前記絶縁シートに包まれた前記発熱素子及び前記電極部材を収容し両端部を通じてのみ外部と連通可能な中空部と、前記発熱素子からの熱が伝導される放熱面と、を有する筒体と、
前記筒体の両端部に設けられ前記中空部を閉塞するキャップと、
電気絶縁性及び防水性を有する被覆材で導線を被覆してなり、一端部が前記キャップを貫通して前記筒体の前記中空部内に配置されて前記電極部材に接続されたケーブルと、
前記筒体と前記キャップとの間の隙間及び前記ケーブルと前記キャップとの間の隙間を塞ぐ、電気絶縁性及び防水性を有する封止材と、
を備えたことを特徴とする絶縁防水型ヒータ。
【請求項2】
前記発熱素子は、PTC(Positive Temperature Coefficient)セラミック素子であることを特徴とする請求項1記載の絶縁防水型ヒータ。
【請求項3】
前記中空部内において、前記電極部材と前記絶縁シートとの間に、熱伝導性を有するスペーサが介在されていることを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁防水型ヒータ。
【請求項4】
前記筒体は、前記放熱面に略垂直な側面を有し、
前記側面の裏側で、前記絶縁シートの両端縁部が重なり合っていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の絶縁防水型ヒータ。
【請求項5】
前記筒体の前記側面に溝が形成されていることを特徴とする請求項4記載の絶縁防水型ヒータ。
【請求項6】
前記筒体の前記放熱面上に設けられたフィンをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の絶縁防水型ヒータ。
【請求項7】
前記フィンは、波形状に湾曲していることを特徴とする請求項6に記載の絶縁防水型ヒータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
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【図4】
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【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−128720(P2007−128720A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319653(P2005−319653)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(501138817)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(501138817)
【Fターム(参考)】
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