説明

絶縁電線

【課題】高温環境下での課電劣化を抑制し、かつ課電寿命を向上させることができる絶縁電線を提供する。
【解決手段】絶縁電線T1は、導体4の外周に被覆された比誘電率ε1の第1の樹脂層1と、第1の樹脂層1の外周に被覆された比誘電率ε2の第2の樹脂層2とを有し、150℃以上で、ε1/ε2>1、望ましくは、ε1/ε2>1.1の関係にある。第1の樹脂層1及び第2の樹脂層2は、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上の非晶性樹脂又は融点(Tm)が150℃以上の結晶性樹脂から選択される物質で作られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体の外周に少なくとも2層の絶縁皮膜を被覆してなる絶縁電線に関し、特に、自動車等のような高温環境下で用いられるのに適する絶縁電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の絶縁電線は、例えば特許文献1に示すように、導体に絶縁皮膜を被覆して構成されている。
【0003】
導体は、例えば銅、アルミニウム等の導電性の金属で作られ、絶縁皮膜は、例えば絶縁性の樹脂で作られている。
【特許文献1】特開平2005−268082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)の樹脂を被覆した絶縁電線の場合の高温課電状態における電流特性を示すグラフである。
【0005】
図7から、高温になるに従い、オームの法則から導き出される電流(点線で示す)よりも大きな電流(実線で示す)が流れることがわかる。
【0006】
そのため、従来の絶縁電線では、高温環境下での課電劣化が大きく、課電寿命が短いという課題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、高温環境下での課電劣化を抑制し、かつ課電寿命を向上させることができる絶縁電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、自動車等の高温環境下での絶縁電線の課電劣化や寿命は、電極からの電荷注入(ショットキー放出)に大きく影響されることを突き止めた。
一般に、ショットキー放出電流iは次式で表される。
【0009】
【数1】

【0010】
ここで、Aはリチャードソン-ダッシュマン定数、Tは絶対温度、Eは電界、φDは金属の誘電体に対する仕事関数、kはボルツマン定数である。
【0011】
すなわち、高温環境下では電極からの電荷注入に支配的な電気伝導となり、電極面に大きな電界がかかると電荷注入がさらに促進され、急激な電流増加が樹脂を劣化させるとともに、絶縁破壊に導くのである。
【0012】
そこで、本発明の絶縁電線は、導体の外周に少なくとも2層の絶縁皮膜を被覆してなる絶縁電線において、
前記導体の外周に被覆された比誘電率ε1の第1の樹脂層と、
前記第1の樹脂層の外周に被覆された比誘電率ε2の第2の樹脂層とを有し、
150℃以上で、ε1/ε2>1の関係にある、
ことを特徴とするものである。
【0013】
150℃以上で、ε1/ε2>1.1の関係にあるのが望ましい。
【0014】
前記第1の樹脂層の厚さは、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層の合計の厚さの0%より大きく、30%以下であってもよい。
【0015】
前記第1の樹脂層の厚さは、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層の合計の厚さの0%より大きく、20%以下であるのが望ましい。
【0016】
前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層は、ガラス転移温度が150℃以上の非晶性樹脂又は融点が150℃以上の結晶性樹脂から選択される物質で作られていてもよい。
【0017】
前記第2の樹脂層の外周に被覆された比誘電率ε3の第3の樹脂層を有し、
150℃以上において、ε3/ε2>1の関係にあるものでもよい。
【0018】
150℃以上で、ε3/ε2>1.1の関係にあるのが望ましい。
【0019】
前記第1の樹脂層と前記第3の樹脂層との合計の厚さは、前記第1の樹脂層、前記第2の樹脂層及び前記第3の樹脂層の合計の厚さの0%より大きく、30%以下であってもよい。
【0020】
前記第1の樹脂層と前記第3の樹脂層との合計の厚さは、前記第1の樹脂層、前記第2の樹脂層及び前記第3の樹脂層の合計の厚さの0%より大きく、20%以下であるのが望ましい。
前記第3の樹脂層は、ガラス転移温度が150℃以上の非晶性樹脂又は融点が150℃以上の結晶性樹脂から選択される物質で作られていてもよい。
前記導体と前記第1の樹脂層との間には、前記導体による樹脂層の劣化を防止するための劣化防止層が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明によれば、150℃以上で、導体表面に隣接する第1の樹脂層の比誘電率ε1の方が、第1の樹脂層の外周に被覆された第2の樹脂層の比誘電率ε2よりも高いため、導体表面の電界を小さくでき、絶縁電線への電荷注入を抑制できる。その結果、高温環境下での課電劣化を抑制できるとともに、課電寿命を向上させることができる。
【0022】
請求項2に係る発明によれば、比誘電率ε1が比誘電率ε2よりもさらに高くなるため、電圧低減効果がさらに向上する。
【0023】
請求項3に係る発明によれば、誘電率の高い第1の樹脂層が薄いため、第2の樹脂層にかかる電界の増加を抑えられるため、絶縁破壊電圧特性を損なうことがない。
【0024】
また、空気ギャップを伴う場合、空気ギャップの電界増加を抑えられるため、耐インバータサージ(コロナ開始電圧)特性を損なうことがない。
【0025】
請求項4に係る発明によれば、第1の樹脂層がさらに薄いため、絶縁破壊電圧特性や耐インバータサージ特性がより向上する。
【0026】
請求項5に係る発明によれば、上記効果をより確実に奏することができる。
【0027】
請求項6に係る発明によれば、150℃以上で、第2の樹脂層の外周に被覆された第3の樹脂層の比誘電率ε3の方が、第2の樹脂層の比誘電率ε2よりも高いため、絶縁電線への電荷注入を抑制できる。その結果、高温環境下での課電劣化を抑制できるとともに、課電寿命を向上させることができる。
【0028】
請求項7に係る発明によれば、比誘電率ε3が比誘電率ε2よりもさらに高くなるため、電圧低減効果がさらに向上する。
【0029】
請求項8に係る発明によれば、誘電率の高い第1の樹脂層及び第3の樹脂層が薄いため、第2の樹脂層にかかる電界が小さくなり、絶縁破壊電圧特性を損なうことがない。
【0030】
また、空気ギャップを伴う場合、空気ギャップの電界増加を抑えられるため、耐インバータサージ(コロナ開始電圧)特性を損なうことがない。
【0031】
請求項9に係る発明によれば、第1の樹脂層及び第3の樹脂層がさらに薄いため、絶縁破壊電圧特性や耐インバータサージ特性がより向上する。
【0032】
請求項10に係る発明によれば、上記効果をより確実に奏することができる。
【0033】
請求項11に係る発明によれば、金属との接触による樹脂の酸化劣化促進作用を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0035】
図1は、本発明の第1の実施形態例に係る絶縁電線を示す断面図であり、(A)は断面が丸形の場合、(B)は断面が方形の場合を示す。
【0036】
図1(A)及び(B)に示すように、本発明の第1の実施形態例に係る絶縁電線T1は、導体4の外周に被覆された比誘電率ε1の第1の樹脂層1と、第1の樹脂層1の外周に被覆された比誘電率ε2の第2の樹脂層2とを有し、150℃以上で、ε1/ε2>1、望ましくは、ε1/ε2>1.1の関係にあることを特徴としている。
【0037】
導体4は、例えば銅、アルミニウム等の導電性の金属で作られている。
【0038】
第1の樹脂層1及び第2の樹脂層2は、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上の非晶性樹脂又は融点(Tm)が150℃以上の結晶性樹脂から選択される物質で作られている。
【0039】
ガラス転移温度が150℃以上の非晶性樹脂としては、例えば、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミドヒダントイン変性ポリエステル、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリサルホン(PSU)、ポリフェニルサルホン(PPSU)ポリアリレート(PAR)等が挙げられる。またこれら複数のコポリマー、複数のポリマーアロイも含まれる。
【0040】
融点が150℃以上の結晶性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリアミド6、66、11、12、610、46を含む脂肪族ポリアミド、ポリアミド6T、9T、MXD6、ポリフタルアミドを含む芳香族ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンオキサイト(PPO)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)を含む芳香族ポリエステル、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリアセタール(POM)等が挙げられる。またこれら複数のコポリマー、複数のポリマーアロイも含まれる。
【0041】
なお、第1の樹脂層1及び第2の樹脂層2として同じ組成の樹脂を用い、第1の樹脂層1の誘電率を上げるために、第1の樹脂層1の樹脂にカーボン、シリカ(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、アルミナ(Al23)等のフィラーを添加してもよい。
【0042】
図2は、本発明の第1の実施形態例に係る絶縁電線T1(図1(B)参照)に対して電圧Vを印加した状態を示す説明図である。
【0043】
第1の樹脂層1の比誘電率をε1、その厚さをTa、第2の樹脂層2の比誘電率をε2、その厚さをTbとすると、導体表面の電界Eは、
E=ε2×V/(ε1×Tb+ε2×Ta)
となる。
【0044】
150℃以上の高温環境下においては、電圧Vからの電荷注入は導体4表面の電界Eに依存するため、導体4表面の電界Eを小さくすることで、電荷注入を抑制できる。導体4表面の電界を小さくするには、導体4に隣接する第1の樹脂層1の誘電率を上げればよい。
【0045】
本発明の第1の実施形態例に係る絶縁電線T1によれば、150℃以上で、導体4表面に隣接する第1の樹脂層1の比誘電率ε1の方が、第1の樹脂層1の外周に被覆された第2の樹脂層2の比誘電率ε2よりも高いため、導体4表面の電界を小さくでき、絶縁電線T1への電荷注入を抑制できる。その結果、高温環境下での課電劣化を抑制できるとともに、課電寿命を向上させることができる。
【0046】
本発明者らは、第1の樹脂層1の比誘電率ε1の方が、第2の樹脂層2の比誘電率ε2よりも高くなるように異なる材質を用いた場合(実施例(1)〜(4))、第1の樹脂層1の比誘電率ε1と第2の樹脂層2の比誘電率ε2が等しくなるように同じ材質を用いた場合(比較例(1))、第1の樹脂層1の比誘電率ε1よりも、第2の樹脂層2の比誘電率ε2の方が高くなるように異なる材質を用いた場合(比較例(2))における導体4表面の電界を測定する実験を行った。
【0047】
表1は、その実験結果、比較例(1)との比率及び電界低減効果を示す。
【0048】
【表1】

この実験において、実施例(1)では、第1の樹脂層1としてPAI、第2の樹脂層2としてPPSを用い、実施例(2)では、第1の樹脂層1としてPEEK、第2の樹脂層2としてPPSを用い、実施例(3)では、第1の樹脂層1としてPET、第2の樹脂層2としてPPSを用い、実施例(4)では、第1の樹脂層1としてNy66、第2の樹脂層2としてPPSを用いた。
【0049】
比較例(1)では、第1の樹脂層1及び第2の樹脂層2としてPPSを用い、比較例(2)では、第1の樹脂層1としてPPS、第2の樹脂層2としてNy66を用いた。
【0050】
また、第1の樹脂層1の厚さTaは10μm、第2の樹脂層2の厚さTbは90μm、全体膜厚T(Ta+Tb)は100μm、印加電圧は1.0kVとした。
【0051】
表1から、実施例(1)〜(4)の場合、比較例(1)の場合に比べ、導体4表面の電界が10%以上低減していることがわかる。このことから、150℃以上で、ε1/ε2>1の関係、望ましくはε1/ε2>1.1の関係にあると、絶縁電線T1への電荷注入を抑制でき、高温環境下での課電劣化を抑制できるとともに、課電寿命を向上させることができることがわかる。
【0052】
図3は、全体膜厚Tに対する第1の樹脂層1の厚さTaの比率と電界低減効果との関係を示すグラフである。
【0053】
図3からわかるように、第1の樹脂層1を厚くすると電界低減効果が小さくなるため、電界低減効果を奏するためには、全体膜厚Tに対する第1の樹脂層1の厚さTaの比率が30%以下、望ましくは、20%以下になるように形成する必要がある。
【0054】
本発明者らは、全体膜厚Tを50μmに薄くして、第1の樹脂層1の厚さTaと第2の樹脂層2の厚さTbの比率を同じにした場合(実施例(5))と、第1の樹脂層1を形成せず、第2の樹脂層2だけの場合(比較例(3))における導体4表面の電界を測定する実験を行った。
【0055】
表2は、その実験結果、比較例(3)との比率を示す。
【0056】
【表2】

表2からわかるように、全体膜厚を薄くしても、全体膜厚Tに対する第1の樹脂層1の厚さTaの比率が同じであれば、同様の電界低減効果を奏する。
【0057】
図4は、全体膜厚Tに対する第1の樹脂層1の厚さTaの比率と第2の樹脂層2にかかる電界、導体4表面の電界との関係を示すグラフである。
【0058】
ここで、ε1は4.0、ε2は2.8、印加電圧Vは1kV、全体膜厚は100μmである。
【0059】
図4からわかるように、誘電率の高い第1の樹脂層1が厚くなると、第2の樹脂層2にかかる電界が大きくなるため、絶縁破壊電圧が低下するおそれがある。
【0060】
そこで、電界上昇を抑制し、絶縁破壊電圧特性を損なわないためには、全体膜厚Tに対する第1の樹脂層1の厚さTaの比率が30%以下、望ましくは、20%以下になるように形成する必要がある。
【0061】
図5は、全体膜厚Tに対する第1の樹脂層1の厚さTaの比率と、空気ギャップの電界増加率との関係を示すグラフである。
【0062】
ここで、ε1は4.0、ε2は2.8、空気ギャップは、30μmである。
【0063】
図5からわかるように、誘電率の高い第1の樹脂層1が厚くなると、空気ギャップの電界が高くなり、コロナ開始電圧の低下を招く。
【0064】
そこで、耐インバータサージ(コロナ開始電圧)特性を損なわないためには、全体膜厚Tに対する第1の樹脂層1の厚さTaの比率が30%以下、望ましくは、20%以下になるように形成する必要がある。
【0065】
図6は、本発明の第2の実施形態例に係る絶縁電線を示す断面図であり、(A)は断面が丸形の場合、(B)は断面が方形の場合を示す。
【0066】
本発明の第2の実施形態例に係る絶縁電線T2は、第1の樹脂層1及び第2の樹脂層2の他に、第2の樹脂層2の外周に被覆された比誘電率ε3の第3の樹脂層3を有し、150℃以上において、ε3/ε2>1の関係、望ましくはε3/ε2>1.1の関係にあることを特徴としている。
【0067】
第3の樹脂層3は、ガラス転移温度が150℃以上の非晶性樹脂又は融点が150℃以上の結晶性樹脂から選択される物質で作られている。具体的な物質は、前述した第1の樹脂層1及び第2の樹脂層2の場合と同様である。
【0068】
本発明の第2の実施形態例に係る絶縁電線T2によれば、150℃以上で、第2の樹脂層2の外周に被覆された第3の樹脂層3の比誘電率ε3の方が、第2の樹脂層2の比誘電率ε2よりも高いため、絶縁電線T1への電荷注入を抑制できる。その結果、高温環境下での課電劣化を抑制できるとともに、課電寿命を向上させることができる。
【0069】
また、第1の樹脂層1の厚さTaと第3の樹脂層3の厚さTcとの合計の厚さ(Ta+Tc)は、第1の樹脂層1、第2の樹脂層2及び第3の樹脂層3の合計膜厚Tの30%以下、望ましくは20%以下になるように形成されている。これによって、第1の樹脂層1及び第3の樹脂層3が第2の樹脂層2よりもかなり薄いため、絶縁破壊特性や耐インバータサージ(コロナ開始電圧)特性を損なうことがなくなる。
【0070】
本発明者らは、第1の樹脂層1としてPAI、第2の樹脂層2としてPPS、第3の樹脂層3としてPAIを用い、第1の樹脂層1の厚さTa及び第3の樹脂層3の厚さTcを5μm、第2の樹脂層2の厚さTbを90μmにした場合(実施例(6))と、第2の樹脂層2だけを形成し、その厚さTbを100μmにした場合(比較例(4))と、第1の樹脂層1及び第2の樹脂層2だけを形成し、厚さTaを10μm、厚さTbを90μmにした場合(比較例(5))における導体4表面の電界を測定する実験を行った。
【0071】
ここで、ε1は4.0、ε2は2.8、印加電圧Vは1kV、全体膜厚は100μmである。
【0072】
表3は、その実験結果、比較例(4)との比率を示す。
【0073】
【表3】

表3からわかるように、第1の樹脂層1、第2の樹脂層2及び第3の樹脂層3を形成した実施例(6)の場合は、第1の樹脂層1及び第2の樹脂層2を形成した場合(比較例(5))と同様に、第2の樹脂層2だけを形成した比較例(4)の場合に比べ、電界低減効果を奏する。
【0074】
本発明は、上記実施の形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内において、種々の変更が可能である。例えば、導体と第1の樹脂層との間に、金属酸化を防止するために金属酸化物又はコーディング層等からなる金属酸化防止層が形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の絶縁電線は、自動車等のような高温環境下で用いられるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施形態例に係る絶縁電線を示す断面図であり、(A)は断面が丸形の場合、(B)は断面が方形の場合を示す。
【図2】本発明の第1の実施形態例に係る絶縁電線に対して電圧Vを印加した状態を示す説明図である。
【図3】全体膜厚Tに対する第1の樹脂層の厚さTaの比率と電界低減効果との関係を示すグラフである。
【図4】全体膜厚Tに対する第1の樹脂層の厚さTaの比率と電界との関係を示すグラフである。
【図5】全体膜厚Tに対する第1の樹脂層の厚さTaの比率と空気ギャップの電界増加率との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第2の実施形態例に係る絶縁電線を示す断面図であり、(A)は断面が丸形の場合、(B)は断面が方形の場合を示す。
【図7】ポリフェニレンサルファイド(PPS)の樹脂を被覆した絶縁電線の場合の高温課電状態における電流特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0077】
T1,T2:絶縁電線
1:第1の樹脂層
2:第2の樹脂層
3:第3の樹脂層
4:導体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体の外周に少なくとも2層の絶縁皮膜を被覆してなる絶縁電線において、
前記導体の外周に被覆された比誘電率ε1の第1の樹脂層と、
前記第1の樹脂層の外周に被覆された比誘電率ε2の第2の樹脂層とを有し、
150℃以上で、ε1/ε2>1の関係にある、
ことを特徴とする絶縁電線。
【請求項2】
150℃以上で、ε1/ε2>1.1の関係にあることを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線。
【請求項3】
前記第1の樹脂層の厚さは、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層の合計の厚さの0%より大きく、30%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁電線。
【請求項4】
前記第1の樹脂層の厚さは、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層の合計の厚さの0%より大きく、20%以下であることを特徴とする請求項3に記載の絶縁電線。
【請求項5】
前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層は、ガラス転移温度が150℃以上の非晶性樹脂又は融点が150℃以上の結晶性樹脂から選択される物質で作られていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つの項に記載の絶縁電線。
【請求項6】
前記第2の樹脂層の外周に被覆された比誘電率ε3の第3の樹脂層を有し、
150℃以上において、ε3/ε2>1の関係にある、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つの項に記載の絶縁電線。
【請求項7】
150℃以上で、ε3/ε2>1.1の関係にあることを特徴とする請求項6に記載の絶縁電線。
【請求項8】
前記第1の樹脂層と前記第3の樹脂層との合計の厚さは、前記第1の樹脂層、前記第2の樹脂層及び前記第3の樹脂層の合計の厚さの0%より大きく、30%以下であることを特徴とする請求項6又は7に記載の絶縁電線。
【請求項9】
前記第1の樹脂層と前記第3の樹脂層との合計の厚さは、前記第1の樹脂層、前記第2の樹脂層及び前記第3の樹脂層の合計の厚さの0%より大きく、20%以下であることを特徴とする請求項8に記載の絶縁電線。
【請求項10】
前記第3の樹脂層は、ガラス転移温度が150℃以上の非晶性樹脂又は融点が150℃以上の結晶性樹脂から選択される物質で作られていることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1つの項に記載の絶縁電線。
【請求項11】
前記導体と前記第1の樹脂層との間には、前記導体による樹脂層の劣化を防止するための劣化防止層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1つの項に記載の絶縁電線。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−245652(P2009−245652A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88297(P2008−88297)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】