説明

継手とパイプとの接続構造

【課題】パイプと継手との接続角度をパイプの突起又は凹みの円周方向の回転角ピッチを基準に定めて位置決め固定できる接続構造を提供する。
【解決手段】パイプ7の外周面に、円周線を等分した複数の位置に突起70又は凹みが形成され、更に前記突起70又は凹みは同パイプ7の全長にわたり前記円周線を等分した位置を通って管軸方向に平行な線L上に一定のピッチで形成されており、継手のセグメント2、3において前記パイプ7を挟み持つ嵌合筒1A、1Bの内周面に、前記パイプ7の突起70又は凹みと嵌め合わせ可能な配置と大きさ、形状の貫通孔10a又は凹み若しくは突起が設けられ、前記パイプ7の突起70又は凹みへ前記嵌合筒1A、1Bの貫通孔10a又は凹み若しくは突起を嵌め合わせて継手が接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボルトとナットで結合される複数のセグメントで構成された分割型の継手とパイプとの接続構造の技術分野に属し、更に云うと、パイプの外周面に円周線を等分した配置で複数の突起又は凹みが形成され、しかも前記突起又は凹みは同パイプの全長にわたり一定のピッチで形成され、一方、継手のセグメントにはパイプの突起又は凹みと嵌り合う貫通孔又は凹み若しくは突起を設け、パイプと継手との接続角度を前記パイプの突起又は凹みの円周方向の回転角ピッチを基準に定めて位置決め固定できる接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分割型の継手とパイプとの接続構造として、下記の特許文献1には、パイプの端部に全周にわたって線状の溝が設けられ、継手のセグメントにおいて前記パイプを挟み持つ嵌合筒の内周面には、その円周方向に前記溝と係合可能な形状の楔状の突起が設けられ、前記嵌合筒の突起とパイプの溝とを嵌め合わせて接続することにより、継手とパイプの引き抜き耐力を高めた接続技術が開示され、実用に供されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−169775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に開示された接続構造は、継手とパイプの引き抜き耐力を高める効果は認められる。しかし、パイプに設けられた溝は、その全周にわたって線状に形成されているため、前記継手の突起は同パイプの溝に沿って円周方向に回転可能であり、継手とパイプの接続に際し、円周方向の位置決めはできない構造である。したがって、継手をパイプに対して所望する円周方向の角度に位置決めし固定する作業は、目測で行うか、又は予め厳格に測定しつつ接続作業を行わないと、継手とパイプの接続角度に誤差を生じやすく、ひいては組み立てたパイプ構造物の全体が歪んだ形状になってしまう。そのため、パイプ構造物の製作(組立て)に非常に手間が掛かっているし、品質、精度の確保が難しく、組立作業のやり直しが必要な場合さえ生ずる。その上、組立作業時に、パイプの継手取付位置を設定し、同パイプの全周に溝を設ける作業を行う必要があり、大きな手間となっていた。
【0005】
本発明の目的は、パイプに対する継手の接続角度を、パイプの突起又は凹みの円周方向の回転角ピッチを基準として定めることができ、測定しないでも的確に正確に位置決め固定でき、品質、精度の高いパイプ構造物の組立が容易に行える、継手とパイプとの接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る継手とパイプとの接続構造は、
複数のセグメント2、3に分割され、一組のセグメント2、3がボルト5及びナット6で結合される継手1と、前記セグメント2、3の締め付けによって接続されるパイプ7との接続構造において、
前記パイプ7の外周面に、円周線を等分した複数の位置に突起70又は凹みが形成され、更に前記突起70又は凹みは同パイプ7の全長にわたり前記円周線を等分した位置を通って管軸方向に平行な線L上に一定のピッチで形成されており、
前記継手のセグメント2、3において前記パイプ7を挟み持つ嵌合筒1A、1Bの内周面に、前記パイプ7の突起70又は凹みと嵌め合わせ可能な配置と大きさ、形状の貫通孔10a又は凹み若しくは突起が設けられ、前記パイプ7の突起70又は凹みへ前記嵌合筒1A、1Bの貫通孔10a又は凹み若しくは突起を嵌め合わせて継手が接続されることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載した継手とパイプとの接続構造において、
パイプ7の突起70又は凹みは、それぞれパイプの円周線を4等分した90度毎の配置、又は8等分した配置に設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載した継手とパイプとの接続構造において、
パイプ7の突起70又は凹みは、ハイドロフォーミング加工法により、軸方向に20mmのピッチで全長にわたり設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1〜3の発明に係る継手とパイプとの接続構造によれば、
パイプ7の外周面に、円周線を等分した複数の位置に突起70又は凹みを形成し、同突起70又は凹みは同パイプの全長にわたり円周線を等分した位置を通って管軸方向に平行な線L上に一定のピッチで形成したので、パイプ7上に突起70又は凹みが均整がとれて並び、意匠性が良いパイプとなる。また、前記突起70又は凹みへ、継手の嵌合筒1A、1Bの内周面に設けた貫通孔10a又は凹み若しくは突起を嵌め合わせて接続する構造としたので、パイプ7と継手1の接続角度は、前記パイプ7の突起70又は凹みの円周方向の回転角ピッチを基準に定めることができ、測定しないでも的確に正確に継手の方向性と角度の位置決めができ、接続できるし、パイプの引き抜き耐力も十分に確保できる。当然ながら、前記継手1と接続したパイプ7の途中位置又は他端へ接続する他の継手の接続角度や方向性も、同パイプ7の管軸方向に平行な線L上に形成された突起70の回転角ピッチを基準に選定することで所望する適切な角度に正確に決定できる。
したがって、パイプ構造物の組立てを迅速に精度良く、正確に行うことができ、品質の確保が容易であり、組立て後に、継手間の角度の微調整をする必要が無くなり、誰でも容易に精度の高いパイプ構造物の組立作業を行える。
【0010】
特に直方体形状とするパイプ構造物を組立てる場合は、パイプ7の突起70又は凹みを、予めパイプの円周線を4等分した角度90度毎の位置、又は8等分した位置に設けると、同パイプ7と接続する継手相互の関係は確実に45度ないし90度若しくはその倍数の角度となるように接続することができ、全接合箇所において縦用のパイプと横用のパイプとが確実に90度で接合され正確な直方体形状のパイプ構造物を容易に構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、複数のセグメント2、3に分割され、一組のセグメント2、3がボルト5及びナット6で結合される継手1と、前記セグメント2、3の締め付けによって接続されるパイプ7との接続構造である。
前記パイプ7の外周面に、円周線を等分した複数の位置に突起70が複数形成され、更に前記突起70は同パイプ7の全長にわたり前記円周線を等分した位置を通って管軸方向に平行な線L上で一定のピッチで形成されている。
前記継手1のセグメント2、3において前記パイプ7を挟み持つ嵌合筒1A、1Bの内周面に、前記パイプ7の突起70と嵌め合わせ可能な配置と大きさ、形状の貫通孔10a又は凹みが設けられ、前記パイプ7の突起70へ前記嵌合筒1A、1Bの貫通孔10a又は凹みを嵌め合わせて継手が接続される。
【実施例1】
【0012】
以下に本発明を、図示した実施例に基づいて説明する。
図1A、Bに、本発明に係るパイプ7の実施例を、側面図と横断面図として示した。
このパイプ7は、ステンレス鋼等の金属管で成り、パイプ構造物の縦用のパイプや横用のパイプとして共通に使用される。一例として、その外径は約28mm程度、内厚は0.7mm程度の大きさである。前記パイプ7の外周面には、図1A、Bの実施例では円周線を4等分した回転角90度毎の位置に半円球形状の突起70が形成されている。更に前記突起70は、パイプ7の全長にわたり、前記円周線を4等分した位置を通って管軸方向に平行な線L上に、一例として20mmのピッチで形成されている。但し、前記突起70の配置は前述の限りではなく、図1Cに示すように、パイプ7の円周線を8等分した回転角45度毎の配置に設けてもよい(請求項2記載の発明)。或いは、パイプ構造物の種類や形態によっては、前記回転角を60度又は30度毎の位置、また30度以下で90度の倍数となるその他の回転角に設けて実施することもできる。
【0013】
前記パイプ7の突起70を、その全長にわたり、管軸方向に20mmのピッチで設けた理由は、例えば、パイプ構造物の梁用(横用)のパイプ7に20mmピッチで突起70があるので、横用のパイプ7の高さ位置をずらせば20mm毎の段差が付き、前後の梁用のパイプ7、7間にホイールコンベアーを一定の下り勾配に接続して流動棚を形成できるなど、設計・製作の自由度を向上できる。また、パイプ7は、必要な長さに突起70の間を定尺切断するだけで直ちに継手を接続可能な状態となり、従前のように切断した後、パイプの端部に接続用又は位置決め用の溝等を加工することが一切必要無くなり、作業性も向上する。のみならず、後述する継手1の嵌合筒1Bは、前記パイプ7を挟む挟持部1bを約30mmとしているので、パイプ7の前記突起70を管軸方向に2個(2周分)配置させて接続でき(図1C参照)、パイプ7の引き抜き耐力や軸方向の拘束力を発揮できる。
【0014】
図1B、図1Cに示したパイプ7の突起70は、一例としてハイドロフォーミング加工法によって形成される。具体的には図2A、Bに示すように、内部に水等の液体を充填した全長2m位のパイプ7をハイドロフォーミング用金型90内へ配置し、パイプ内へ高い液圧(軸押)を加えながら、パイプ7の両端を圧縮して、同金型90に形成された凹み91へパイプ7の外面を倣わせて突起70が形成されるのである。
また、後述するようにパイプ7の外周面に、図1Dに示すような凹み71をハイドロフォーミング加工法により形成する場合には、図2C〜Eに示すように、上述した内部に液体を入れたパイプの径より少し小さい径のパイプ7をハイドロフォーミング用金型92内へ配置し、ハイドロフォーミング用金型92を閉じ、同パイプ内へ適度な液圧を加えた状態でパイプ7の両端を圧縮すると、同金型92に形成された突起93により、前段階の凹み71が形成され、更にパイプ内の液圧を高めるとハイドロフォーミング用金型92に作られたパイプ形状に倣って、パイプを変形させることなく表面に凹み71を形成できる。
したがって、ハイドロフォーミング加工法によれば、比較的長いパイプの全長に突起や凹みを、一度に安定して且つ板厚減少を少なくして設けることが可能である。
【0015】
次に、図3A、B、Cには、上記パイプ7に適用される継手1の構成と接続構造を分解状態及び、接続状態の斜視図と平面図として示した。
継手1の構成は、既に分割型として公知、周知のものと大差なく、複数のセグメント2、3に分割された一組のセグメント2、3がボルト5、及びナット6で結合される構成である。図3Aに示した継手1は、ステンレス鋼製の二つのセグメント2、3で成る二分割型の継手で、前記パイプ7を挟み接続する二つの嵌合筒1Aと1Bが直角なT字形に交わる所謂Tジョイントであり、各セグメント2、3は二つの嵌合筒1Aと1Bの軸線を含む平面により分割された構成である。
【0016】
この継手1において、特徴ある構成は、各セグメント2、3における嵌合筒1A、Bにそれぞれ、前記パイプ7の突起70と嵌め合わせ可能な配置と大きさ、形状の貫通孔10aが設けられている。前記嵌め合わせ可能な配置とは、上記パイプ7の突起70と同じ回転角90度又はその倍数毎の位置(円周を4等分又は8等分した位置)に設ける意味である。前記貫通孔10aが二つのセグメント2と3の嵌合筒1A、1Bの連結箇所に設けられる場合は、それぞれの分割縁が同貫通孔10aを半割にした形状に切り欠かれ、連結時に貫通孔10aを形成する構成とされる。
もっとも、図示例では嵌合筒1Aと1Bに貫通孔10aを設けたが、この限りではない。図示することは省略したが、上記パイプ7の突起70と嵌め合わせ可能な形状の凹みを設けた構成でも好適に実施される。
【0017】
上記構成の継手1とパイプ7を接続するには、二つの嵌合筒1A、1Bをそれぞれ該当する2本のパイプ7、7を挟む配置とし、各パイプ7のそれぞれの突起70、70へ継手1の嵌合筒1Aと1Bの貫通孔10a、10aを嵌め合わせ、そのまま嵌合筒1Bに設けられたボルト孔4へボルト5を貫通させ、反対側からナット6をねじ込み締め付ける通例の手法によって接続が行われる。
【0018】
上記の継手1とパイプ7、7に対して、図3B、Cに示すように、他の継手1’及びパイプ7’…を接続する場合には、先ず継手1’の接続角度や方向性を、先に接続した継手1とパイプ7の関係を見定め、同パイプ7の管軸方向に平行な線L上に形成された突起70の回転角90度のピッチを基準に当該他の継手1’向きと姿勢を決定して接続する。斯くすることで、パイプ7を基礎として、これに接続する複数の継手1、1’の相互の関係を回転角90度及び管軸方向の突起70のピッチを基本にして正確に決定でき、直方体形状のパイプ構造物の精度の高い組立てに至便である。
【実施例2】
【0019】
図1Dに示したパイプ7は、その外周面に凹み71を形成した実施例である。この凹み71も上述したハイドロフォーミング加工法により、円周線を4等分した回転角90度毎の位置に、且つパイプの全長にわたり例えば20mmのピッチで設けられている。したがって、このパイプ7に適用する継手は、図示することは省略したが、同継手1の嵌合筒1Aと1Bの内周面に、逆に前記凹み71と嵌合可能な配置と大きさ、形状の突起が設けられる。前記パイプ7の凹み71へ継手の嵌合筒1A、1Bに設けた突起を嵌め合わせることで継手1が所望の角度、姿勢に接続されることは上記実施例1と同様である。
【0020】
以上に本発明を図示した実施例と共に説明したが、もとより本発明は実施例に限定されるものではない。本発明の目的と要旨を逸脱しない範囲で、当業者が必要に応じて行う設計変更や応用変形を包含するものであることを念のため申し添える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】Aはパイプの外周面の全長に突起を回転角90度間隔で設けた側面図を示し、Bは前記パイプを少し拡大した横断面図、Cはパイプの外周面に突起を回転角45度間隔で設けた実施例の横断面図である。更にDはパイプの外周面に凹みを設けた実施例の横断面図である。
【図2】A、Bはパイプの外周面に突起を設ける場合のハイドロフォーミング加工法の概略図である。C〜Eはパイプの外周面に凹みを設ける場合のハイドロフォーミング加工法の工程を示す概略図である。
【図3】Aは本発明に係る継手とパイプとの接続構造の分解斜視図、Bは継手とパイプを接続した斜視図、CはBの平面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 継手
1A、1B 嵌合筒
10a 貫通孔
2、3 セグメント
4 ボルト孔
5 ボルト
6 ナット
7 パイプ
70 突起
71 凹み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセグメントに分割され、一組のセグメントがボルト及びナットで結合される継手と、前記セグメントの締め付けによって接続されるパイプとの接続構造において、
前記パイプの外周面に、円周線を等分した複数の位置に突起又は凹みが形成され、更に前記突起又は凹みは同パイプの全長にわたり前記円周線を等分した位置を通って管軸方向に平行な線上に一定のピッチで形成されており、
前記継手のセグメントにおいて前記パイプを挟み持つ嵌合筒の内周面に、前記パイプの突起又は凹みと嵌め合わせ可能な配置と大きさ、形状の貫通孔又は凹み若しくは突起が設けられ、前記パイプの突起又は凹みへ前記嵌合筒の貫通孔又は凹み若しくは突起を嵌め合わせて継手が接続されることを特徴とする、継手とパイプとの接続構造。
【請求項2】
パイプの突起又は凹みは、それぞれパイプの円周線を4等分した90度毎の配置、又は8等分した配置に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載した継手とパイプとの接続構造。
【請求項3】
パイプの突起又は凹みは、ハイドロフォーミング加工法により、軸方向に20mmのピッチで全長にわたり設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載した継手とパイプとの接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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