説明

継手体の接続手段

【課題】膨出部の形状に関わらず、引寄せ部材による引寄せ力が管軸方向に確実に受口と挿口とに伝達され、相対的に引寄せることが出来る継手体の接続手段を提供すること。
【解決手段】挿口12の外面に周方向に沿って固定された挿口固定部材16と、一端側に形成された鉤部17aが受口5の膨出部5aと掛止され他端側が挿口固定部材16と係合されるとともに、受口5と挿口12とを管軸C方向に相対的に引寄せる引寄せ部材17と、から構成され、更に鉤部17aが、受口5の外面に周方向に沿って膨出部5aと当接する掛止部材20を介して、膨出部5aと掛止されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の流体管の受口に他方の流体管の挿口を水密的に接続する継手体の接続手段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の継手体の接続手段は、挿口の外面に周方向に沿って固定された挿口固定部材と、一端側が受口と掛止され他端側が挿口固定部材と係合されるとともに、受口と挿口とを管軸方向に相対的に引寄せる引寄せ部材と、から構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実公昭55−39190号公報(第1頁、第6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、受口の外面の一部が、周方向に沿って外方に膨出する膨出部に形成されており、この膨出部よりも延長方向に挿口と離間した受口の所定箇所において、引寄せ部材と受口とを掛止し、受口と挿口とを管軸方向に相対的に引寄せていた。
【0005】
このような接続手段の構成のために、挿口の外面に固定した挿口固定部材と、受口の膨出部をまたいで設置された上記所定箇所と、の間に架設する引寄せ部材の延長が長くなるため、引寄せ部材の構成が大型化するばかりか、引寄せ方向が管軸方向に定まり難く、引寄せ部材による引寄せ力が確実に伝達されないおそれが生じていた。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、膨出部の形状に関わらず、引寄せ部材による引寄せ力が管軸方向に確実に受口と挿口とに伝達され、相対的に引寄せることが出来る継手体の接続手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の継手体の接続手段は、一方の流体管の受口に他方の流体管の挿口を水密的に接続する継手体の接続手段であって、前記受口の外面の一部が、周方向に沿って外方に膨出する膨出部に形成されており、
前記挿口の外面に周方向に沿って固定された挿口固定部材と、一端側に形成された鉤部が前記受口の膨出部と掛止され他端側が前記挿口固定部材と係合されるとともに、前記受口と前記挿口とを管軸方向に相対的に引寄せる引寄せ部材と、から構成され、
更に前記鉤部が、前記受口の外面に周方向に沿って前記膨出部と当接する掛止部材を介して、前記膨出部と掛止されていることを特徴としている。
この特徴によれば、引寄せ部材の鉤部が、受口の膨出部に取付けられた掛止部材を介して膨出部と掛止されているため、引寄せ部材の延長を短く構成でき、膨出部の形状に関わらず、引寄せ部材による引寄せ力が掛止部材を介して管軸方向に確実に受口と挿口とに伝達され、相対的に引寄せることが出来る。
【0008】
本発明の請求項2に記載の継手体の接続手段は、請求項1に記載の継手体の接続手段であって、前記引寄せ部材が、管軸に対して略対称に位置する少なくとも2箇所において構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、管軸に対して略対称に位置する少なくとも2箇所において構成されている引寄せ部材を用いて、受口と挿口とを管軸方向に対してずれることなく引寄せることが出来る。
【0009】
本発明の請求項3に記載の継手体の接続手段は、請求項2に記載の継手体の接続手段であって、前記掛止部材は、前記受口の外径と略同径の内径を有している略U字形部材であって、前記引寄せ部材の鉤部が、前記略U字形部材の両端部において掛止されていることを特徴としている。
この特徴によれば、管軸に対して略対称に位置している引寄せ部材とともに用いる掛止部材が略U字形部材であって、鉤部と掛止する箇所としてこの略U字形部材の両端部を利用することで、掛止部材を一方向から容易に受口の外面に取付けることが出来る。また、鉤部が、略U字形部材である掛止部材の全面を利用して、引寄せ力を受口の膨出部に均等に負荷することが出来る。
【0010】
本発明の請求項4に記載の継手体の接続手段は、請求項3に記載の継手体の接続手段であって、前記略U字形部材の両端部の先端に、前記鉤部を載置する鉤部載置台が突設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、略U字形部材の両端部の先端に突設された鉤部載置台に、引寄せ部材の鉤部を載置することで、受口と挿口とを引寄せる際に鉤部を安定させた状態で掛止できる。
【0011】
本発明の請求項5に記載の継手体の接続手段は、請求項1ないし4のいずれかに記載の継手体の接続手段であって、前記引寄せ部材の鉤部が、前記受口の膨出部を囲繞可能に略コ字状に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、略コ字状に形成された鉤部を受口の膨出部に囲繞することにより、略コ字状の鉤部を受口の外端側と掛止して、受口と挿口とを相対的に引離すことが可能となる。
【0012】
本発明の請求項6に記載の継手体の接続手段は、請求項1ないし5のいずれかに記載の継手体の接続手段であって、前記引寄せ部材が、ラックピニオン構造を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、汎用のラックピニオン構造を利用して、安価に引寄せ部材を構成出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0014】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、本発明の実施例における継手体の接続手段の全体像を示す平面図である。図2は、図1と同じく正面図である。図3は、図1と同じく側面図である。図4(a)は、略U字形部材の正面図であり、(b)は、(a)のA−A断面図である。図5は、受口と挿口とを接続した状況を示す一部断面図である。
【0015】
図1及び図2に示されるように、本発明における継手体は、一方の流体管としての直管2の受口5と、他方の流体管としての直管11の挿口12とを水密的に接続するものである。また流体管の管内は、例えば上下水道やガスなどの流体が流下するようになっている。
【0016】
また、継手体は、直管2の端部に形成されている受口5と、受口5の内面に挿入される直管11の端部に形成されている挿口12と、受口5と挿口12との固定部材としてのボルト9と、から主に構成されている。また、受口5の外端近傍において、外面の一部が、周方向に沿って外方に膨出する膨出部5aに形成されている。
【0017】
また、図5に示されるように、受口5の膨出部5aの外周面には、周方向に略等間隔おきにボルト孔5bが形成されており、直管2の外方から管軸Cに対し直交する方向に螺挿される受口5と挿口12との固定部材としてのボルト9が構成されている。
【0018】
ボルト9の先方には、固定つめ10が設けられている。固定つめ10は、受口5内面に周方向に沿って形成された凹部に収納されている。
【0019】
次に、図1ないし図3に示されるように、受口5と挿口12との接続手段について説明すると、本発明における接続手段は、挿口12の外面に周方向に沿って固定された挿口固定部材16と、一端側に形成された鉤部17aが受口5の膨出部5aと掛止され他端側が挿口固定部材16と係合されるとともに、受口5と挿口12とを管軸C方向に相対的に引寄せる引寄せ部材17と、から主に構成されている。
【0020】
挿口固定部材16は、挿口12の外径と略同径の内径を有するリング状体であって、支点部16bを中心として回動可能な分割構造を有しており、ボルトナット16cの締め付けにより挿口の外面に周方向に沿って固定できるように成っている。
【0021】
挿口固定部材16の内面に、管軸Cに向かって内方に膨出するとともに挿口12の外面よりも軟質の突起部16aが、周方向に沿って複数箇所設けられている。このようにすることで、挿口12の外面よりも軟質の突起部16aを挿口12の外面に当接させて、挿口固定部材16を挿口12の外面に固定することにより、挿口12の外面が固定により傷付き腐食することを防止できる。
【0022】
また、引寄せ部材17は、互いに噛合したラック17bとピニオン17cとからなるラックピニオン構造を有しているとともに、管軸Cに対して略対称に位置する2箇所において構成されており、管軸C方向に配置されたラック17b、17bの受口5側に、鉤部17a、17aが取付けられている。
【0023】
ピニオン17c、17cは、挿口固定部材16の両側部において回動可能に設けられており、夫々のピニオン17c、17cに噛合したラック17b、17bは、ピニオン17c、17cの回動により管軸C方向に移動可能に係合されている。
【0024】
更に、鉤部17aは、受口5の膨出部5aを囲繞可能に略コ字状に形成されており、膨出部5aと当接する掛止部材としての略U字形部材20を介して、膨出部5aと掛止されている。この略U字形部材20は、受口5の外径と略同径の内径を有しており、受口5の外面に周方向に沿って膨出部5aの背面と当接して配置されている。引寄せ部材17の鉤部17aが、略U字形部材20の両端部20a、20aにおいて掛止されている。
【0025】
このようにすることで、管軸Cに対して略対称に位置している引寄せ部材17、17とともに用いる掛止部材が略U字形部材20であって、鉤部17aと掛止する箇所としてこの略U字形部材20の両端部20a、20aを利用することで、掛止部材としての略U字形部材20を把手部20cにより一方向から容易に受口5の外面に取付けることが出来る。また、鉤部17aが、略U字形部材20の全面を利用して、引寄せ力を受口5の膨出部5aに均等に負荷することが出来る。
【0026】
また、U字形部材20の両端部20aの先端に、鉤部17aを載置する鉤部載置台20bが突設されており、このように略U字形部材20の両端部20aの先端に突設された鉤部載置台20bに、引寄せ部材17の鉤部17aを載置することで、受口5と挿口12とを引寄せる際に、鉤部17aを安定させた状態で掛止できる。
【0027】
次に、受口5と挿口12との接続について説明すると、図3に示されるように、引寄せ部材17のピニオン17cを回動工具Kにて回動操作することにより、ピニオン17cと噛合したラック17bが管軸C方向(図1及び図2の白抜矢印方向)に移動することにより、略U字形部材20を介して鉤部17aに掛止された受口5の膨出部5aに引寄せ力が伝達される。
【0028】
このように、引寄せ部材17の鉤部17aが、受口5の膨出部5aに取付けられた略U字形部材20を介して膨出部5aと掛止されているため、引寄せ部材17のラック17bを短く構成でき、膨出部5aの形状に関わらず、引寄せ部材17による引寄せ力が略U字形部材20を介して管軸C方向に確実に受口5と挿口12とに伝達され、相対的に引寄せることが出来る。
【0029】
また、管軸Cに対して略対称に位置する2箇所において構成されている引寄せ部材17、17を用いて、受口5と挿口12とを管軸C方向に対してずれることなく引寄せることが出来る。
【0030】
尚、本発明の引寄せ部材は、本実施例のように管軸Cに対して略対称に位置する2箇所において構成されているに限らず、受口5と挿口12とを管軸C方向に対してずれることなく引寄せることが出来れば、引寄せ部材は、3箇所以上において構成されていてもよい。
【0031】
また、引寄せ部材17が、互いに噛合したラック17bとピニオン17cとからなるラックピニオン構造を有しており、このようにすることで、汎用のラックピニオン構造を利用して、安価に引寄せ部材17を構成出来る。
【0032】
上述したように引寄せ部材17を用いることにより、受口5と挿口12とが相対的に引寄せられ、挿口12が、受口5の内方に向かって挿入されるとともに、シール部材8が、挿口12の外周面により圧縮されて、受口5内面と挿口12外面との間隙を水密的に密封する(図5参照)。
【0033】
次に、図5に示されるように、受口5と挿口12との固定について説明すると、受口5の膨出部5aに管軸Cに対し直交する方向にボルト9が螺挿されており、受口5内面と挿口12外面との間隙が密封された後において、受口5と挿口12とを汎用のボルト9で固定的に接続するようになっている。
【0034】
また、ボルト9の先方に固定つめ10が設けられていおり、このようにすることで、ボルト9の螺入により固定つめ10の先端10aが、管軸Cに向かって押圧されて挿口12の外周面に食い込み、受口5と挿口12とを確実に固定的に接続することができる。更に、このように固定的に接続することで、受口5若しくは挿口12に、外力若しくは内圧が加わった場合でも、継手体の密封性を安定的に維持できる。
【0035】
尚、本実施例におけるボルトは、必ずしも管軸Cに対し直交する方向に形成されている必要はなく、例えば、管軸Cに対し直交方向以外の所定角度を有する斜方向に螺入されるように形成されていてもよい。
【0036】
次に、本実施例における引寄せ部材17を利用した受口5と挿口12との引離しについて説明すると、上述したように受口5と挿口12とが水密的に接続された状態において、同様に挿口固定部材16及び引寄せ部材17を設置する。略コ字状に形成された引寄せ部材17の鉤部17aを、受口5の膨出部に囲繞する。
【0037】
略コ字状に形成された鉤部17aを受口5の膨出部5aに囲繞することにより、引寄せ部材17のピニオン17cを上述と逆方向に回動し、ピニオン17cと噛合したラック17bが上述と逆方向に移動するとともに、略コ字状の鉤部17aを受口5の外端側に掛止して、受口5と挿口12とを相対的に引離す力が伝達され、水密的に接続された受口5と挿口12とを相対的に引離すことが可能となる。
【0038】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0039】
例えば、上記実施例では、互いに接続される挿口12及び受口5は、図1及び図2に示されるような直管2及び直管11からなる管路部材を構成しているが、本発明に用いられる挿口12及び受口5は、互いに接続可能な構成を有していれば、必ずしも直管2及び直管11に限らず、例えば端部を3箇所有するT字管や、管軸に沿って一部に曲部を有するエルボ管でもよいし、可撓性を有するホース等であってもよい。また、挿口12及び受口5は、各種ポンプ若しくは貯留タンクの一部を構成するものであっても構わない。
【0040】
また、上記実施例では、受口5の膨出部5aの外周面にボルト孔5bが形成されており、ボルト孔5bに螺挿される固定部材としてのボルト9が構成されているが、膨出部は、受口5の外端近傍において、外面の一部が周方向に沿って外方に膨出し、掛止部材が掛止されていれば、特にボルト孔5bが形成されていなくてもよく、例えば膨出部がフランジであってもよい。
【0041】
また、上記実施例では、引寄せ部材17の鉤部17aを掛止する掛止部材として、受口5の外径と略同径の内径を有している略U字形部材20が用いられているが、掛止部材は、鉤部17aと受口5の膨出部5aとの間に介在し、引寄せ部材17による引寄せ力を管軸C方向に確実に受口5と挿口12とに伝達するものであれば、必ずしも略U字形部材20である必要はなく、例えば掛止部材の形状は、受口の周方向に亘ってリング状に形成されていてもよい。
【0042】
また、上記実施例では、引寄せ部材17の鉤部17aは、受口5の膨出部5aを囲繞可能に略コ字状に形成されているが、鉤部は、受口5と挿口12とを相対的に引寄せ可能に膨出部5aに掛止されていれば、必ずしも略コ字状に形成されていなくてもよく、例えば略L字状に形成され、膨出部5aの背面側において掛止されていてもよい。
【0043】
また、上記実施例では、引寄せ部材17は、互いに噛合したラック17bとピニオン17cとからなるラックピニオン構造を有しているが、引寄せ部材は、受口と挿口とを引寄せるものであれば、上述したラックピニオン構造に限られず、例えば、ボルトナット構造であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例における継手体の接続手段の全体像を示す平面図である。
【図2】図1と同じく正面図である。
【図3】図1と同じく側面図である。
【図4】(a)は、略U字形部材の正面図であり、(b)は、(a)のA−A断面図である。
【図5】受口と挿口とを接続した状況を示す一部断面図である。
【符号の説明】
【0045】
2 直管(流体管)
5 受口
5a 膨出部
5b ボルト孔
8 シール部材
9 ボルト
10 固定つめ
10a 先端
11 直管(流体管)
12 挿口
16 挿口固定部材
16a 突起部
16b 支点部
16c ボルトナット
17 引寄せ部材
17a 鉤部
17b ラック
17c ピニオン
20 略U字形部材
20a 両端部
20b 鉤部載置台
20c 把手部
C 管軸
K 回動工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の流体管の受口に他方の流体管の挿口を水密的に接続する継手体の接続手段であって、前記受口の外面の一部が、周方向に沿って外方に膨出する膨出部に形成されており、
前記挿口の外面に周方向に沿って固定された挿口固定部材と、一端側に形成された鉤部が前記受口の膨出部と掛止され他端側が前記挿口固定部材と係合されるとともに、前記受口と前記挿口とを管軸方向に相対的に引寄せる引寄せ部材と、から構成され、
更に前記鉤部が、前記受口の外面に周方向に沿って前記膨出部と当接する掛止部材を介して、前記膨出部と掛止されていることを特徴とする継手体の接続手段。
【請求項2】
前記引寄せ部材が、管軸に対して略対称に位置する少なくとも2箇所において構成されていることを特徴とする請求項1に記載の継手体の接続手段。
【請求項3】
前記掛止部材は、前記受口の外径と略同径の内径を有している略U字形部材であって、前記引寄せ部材の鉤部が、前記略U字形部材の両端部において掛止されていることを特徴とする請求項2に記載の継手体の接続手段。
【請求項4】
前記略U字形部材の両端部の先端に、前記鉤部を載置する鉤部載置台が突設されていることを特徴とする請求項3に記載の継手体の接続手段。
【請求項5】
前記引寄せ部材の鉤部が、前記受口の膨出部を囲繞可能に略コ字状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の継手体の接続手段。
【請求項6】
前記引寄せ部材が、ラックピニオン構造を有していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の継手体の接続手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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