説明

継手構造

【課題】雄型継手と雌型継手とを適切に連結することが可能な継手構造を提供する。
【解決手段】雌型継手4に、雄型継手3の接合棒が挿入されるハウジング16と、ハウジング16内に設けられていて、対向する位置に一対の切欠部18,18を有するガイド部材31と、各切欠部18,18内にそれぞれ進退可能に設けられていて、接合棒9の係合凹部12に係合可能な矩形平板状の係合部材20,20と、該係合部材20,20を付勢する板バネ21,21と、一対の係合部材20,20を互いに平行に離間させた状態とする拡開部材40とを備え、ハウジング16内に接合棒9を挿入する際に、接合棒9の頭部13が係合部材20,20の間から拡開部材40を押し出すようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル等を構築するセグメント等の部材同士を接合するための継手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル等を構築するセグメント同士を接合するための継手構造として、例えば下記特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
この特許文献1に記載された継手構造においては、雌型継手に嵌合する雄型継手が、先端側に設けられた頭部の基端側に係合凹部を備えた構成とされている。また、雌型継手は、雄型継手が挿入されるハウジング内に、切欠部を有する部材(ガイド部材)と、該切欠部に進退可能に配置された矩形平板状の係合部材と、該係合部材を切欠部内に押圧する方向に付勢する付勢部材とを備えている。
【0004】
そして継手の締結時においては、雄型継手本体をハウジング内に挿入すると、雄型継手本体の頭部が係合部材を付勢部材の付勢力に抗して互いに離間させて乗り越える。この際、雄型継手の頭部の基端側に設けた係合凹部に雌型継手のハウジング内に設けた係合部材が付勢部材の付勢力によって係合させられる。これによって、雄型継手と雌型継手とが連結されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−35929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1の継手構造においては、雄型継手本体の頭部が係合部材を付勢部材の付勢力に抗して互いに離間させて乗り越える際に、係合部材が傾斜して変位するため、これら係合部材が傾斜した状態で係合凹部に嵌合してしまうことがあった。この場合、雄型継手と雌型継手とを適切に連結できなくなり、継手構造本来の締結力を発揮することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、一対の係合部材が傾斜することなく互いに平行をなした状態で雄型継手の係合凹部に係合することができ、雄型継手と雌型継手とを適切に連結することが可能な継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係る継手構造は、雄型継手と雌型継手を係合して雄型継手を有する部材と雌型継手を有する部材とを互いに接合する継手構造であって、前記雄型継手は、先端側に設けた頭部の基端側に係合凹部を設けた雄型継手本体を備え、前記雌型継手は、前記雄型継手本体が挿入されるハウジングと、該ハウジング内に設けられていて、対向する位置に一対の切欠部を有するガイド部材と、各前記切欠部内にそれぞれ進退可能に設けられていて、前記雄型継手本体の係合凹部に係合可能な矩形平板状の係合部材と、該係合部材を前記切欠部内に押圧する方向に付勢する付勢部材と、前記一対の係合部材の間に設けられていて、これら一対の係合部材を付勢部材の付勢力に抗して互いに平行に離間させた状態とする拡開部材とを備え、前記ハウジング内に前記雄型継手本体を挿入する際に、前記雄型継手本体の頭部が前記一対の係合部材の間から前記拡開部材を押し出して、前記係合凹部に係合部材を係合させるようにしたことを特徴とする。
【0009】
本発明による継手構造によれば、一対の係合部材の間に拡開部材が設けられているため、雄型継手本体をハウジング内に挿入する前から一対の係合部材が互いに平行をなして離間された状態とされている。よって、雄型継手を挿入するためのスペースが当初から形成されおり、雄型継手の挿入動作で係合部材を離間させる必要はないため、係合部材を傾斜させてしまうことはない。
また、雄型継手を挿入して拡開部材を一対の係合部材の間から押し出した後には、係合部材は付勢部材の付勢力にしたがって平行状態を維持したまま雄型継手の係合凹部に係合させられる。
【0010】
また、本発明に係る継手構造においては、前記拡開部材が、前記一対の係合部材の間に挿入されて該挿入方向に沿った軸線回りに回転されることで、前記一対の係合部材同士を押し広げて互いに離間させた状態としていることを特徴とする。
【0011】
拡開部材を挿入する前の状態においては、一対の係合部材はガイド部材における一対の切欠部の間隔にしたがって近接した状態、即ち、係合部材同士が最接近した状態とされている。本発明においては、この最接近した係合部材の間に拡開部材を挿入するとともに軸線回りに回転させることによって容易に係合部材同士を雄型継手本体挿入前の状態まで離間させることができる。
また、拡開部材を係合部材間に挿入して回転させることで、係合部材の近接、離間動作が確実に行なわれるか否かの検査をすることが可能となる。
【0012】
さらに、本発明に係る継手構造においては、前記拡開部材が、前記挿入方向に一様に延在して前記一対の係合部材に当接する外周面を有し、該外周面の断面視形状が、短手寸法と長手寸法とを有していることを特徴とする。
【0013】
このような特徴の継手構造においては、一対の係合部材が最接近した状態において、拡開部材を、その短手寸法の両端を係合部材に対抗させた状態で係合部材間に挿入する。そして、長手方向が係合部材に対向する位置まで拡開部材を軸線回りに回転させる。この際、拡開部材の外周面が各係合部材に当接することでこれら係合部材が拡開部材に押し広げられるように拡開される。これにより、容易に係合部材同士を平行状態のまま離間させることができる。
【0014】
また、本発明に係る継手構造においては、前記外周面の断面視形状における短手寸法と長手寸法の遷移領域にR面取りが施されていることを特徴とする。
【0015】
これによって、拡開部材を一対の係合部材間で軸線回りに回転させる際に係合部材と拡開部材との間で生じる抵抗を低減させることができるため、係合部材同士を離間させる動作を円滑かつ容易に行なうことができる。
【0016】
さらに、本発明に係る継手構造においては、前記短手寸法が、最接近した前記一対の係合部材同士の間隔以下とされ、前記長手寸法が、前記雄型継手本体の頭部の直径以上とされていることを特徴とする。
【0017】
これによって、最接近した一対の係合部材間に容易に拡開部材を挿入することができ、また、係合部材を離間させた際におけるこれら係合部材同士の間隔が雄型継手本体の頭部の直径以上となるため、雄型継手本体の挿入抵抗を低減させることができる。
【0018】
また、本発明に係る継手構造は、前記拡開部材の後端に設けられ、最接近した前記一対の係合部材の間に前記拡開部材が挿入された際に、前記係合部材に対して前記挿入方向から当接可能とされるとともに、前記一対の係合部材が離間した際に、前記係合部材に当接不能とされるストッパ部が設けられたことを特徴とする。
【0019】
これによって、拡開部材を一対の係合部材間に挿入する際に、ストッパ部が係合部材に当接することにより拡開部材の移動が規制される。したがって、拡開部材が挿入方向前方に行き過ぎてしまうことはなく、拡開部材の位置決めを容易に行なうことが可能となる。
また、拡開部材により係合部材が離間した際には、ストッパ部が係合部材に当接することはないため、雄型継手本体により拡開部材を押し出すことが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の継手構造によれば、一対の係合部材を平行状態に離間させる拡開部材を設けたことによって、これら係合部材の平行状態を維持したまま係合部材を確実に雄型継手の係合凹部に係合させることができる。これにより、雄型継手と雌型継手とを確実に連結させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態による継手構造を示すものであり、雄型継手と雌型継手とを分離状態で示す縦断面図である。
【図2】図1における雌型継手の拡大図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のB方向矢視図である。
【図5】図2のC−C断面図である。
【図6】実施形態の拡開部材の(a)側面図、(b)平面図、(c)正面図である。
【図7】雌型継手に拡開部材を挿入した状態における縦断面図である。
【図8】図7のD方向矢視図である。
【図9】図7のD方向矢視図において拡開部材を軸線O回りに回転させた状態を示す図である。
【図10】本発明の実施形態による継手構造を示すものであり、雄型継手の接合棒を雌型継手のハウジング内に挿入している際の状態を示す縦断面図である。
【図11】本発明の実施形態による継手構造を示すものであり、雄型継手と雌型継手とが連結された状態を示す縦断面図である
【図12】図12のE−E断面図である。
【図13】変形例の拡開部材の(a)側面図、(b)平面図、(c)正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る継手構造の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態による継手構造は、例えばセグメントリング同士をトンネルの軸方向に接合するためのリング間継手の接合構造に関するものである。
図1に示すように、一方のセグメント1Aの接合面である主桁板6に雄型継手3が設けられ、他方のセグメント1Bの主桁板14に雌型継手4が設けられている。
【0023】
図1において、雄型継手3を有するセグメント1Aは、一方の主桁板6に孔部7が穿孔され、その裏面側に袋ナット8が固着されている。雄型継手本体をなす接合棒9は略円柱状で、その後端部に袋ナット8に螺合する雄ねじ部10が形成され、その先端側に基部11と係合凹部12と頭部13とが順次形成された略棒状をなしている。接合棒9は雄ねじ部10を主桁板6裏面の袋ナット8に螺合することで主桁板6から突出した状態で固定されている。
【0024】
また、接合棒9の頭部13は先端側にテーパ状をなすテーパ部13aが形成され、基端側は接合棒9の中心軸線Oに対して直交する方向から微小角度、例えば約5℃基端側に傾斜して係合凹部12に接続される壁面13bとされている。基部11の先端面は係合凹部12に向けてテーパ面を形成している。
【0025】
次に、雌型継手4を有するセグメント1Bは、詳しくは図2〜図4に示すように、主桁板14に円形の孔部15が穿孔され、また、上記孔部15の裏面側に例えば角筒状のハウジング16が溶接等で固着されている。さらに、このハウジング16の基端側には、弾性変形可能な蛇腹部39aを備えた例えば樹脂製からなるキャップ39が嵌合されている。なお、上記孔部15の直径は接合棒9の頭部13の直径よりを僅かに大きい程度とされている。
【0026】
また、図2、図3及び図5に示すように、ハウジング16の内部には平板状板材からなるガイド部材31が設けられている。このガイド部材31は、主桁板14に当接して固着された中央部31aと、その両端側で折り曲げられてハウジング16の対向する内側面に沿って配設された平板状の端部31b、31cとによって、平面視略コの字形状に形成されている(図3参照)。
【0027】
ガイド部材31の中央部31aには、接合棒9を挿入するための挿通孔33が穿孔されている、挿通孔33の直径は、接合棒9の頭部の直径と同等又は僅かに大きい程度とされている。
【0028】
また、ガイド部材31の端部31b、31cは、それぞれ横向きの略T字形状に形成され、これによって横向きT字の上下に対向して一対の切欠部18,18が形成されている。これら切欠部18,18間の距離は、例えば接合棒9の係合凹部12の直径と同等またはそれ以上であって頭部13の外径より小さい寸法に設定されている。
【0029】
上記切欠部18,18は、図2に示す側面視において略矩形状をなしており、この切欠部18,18に、矩形平板状、例えば長方形平板状の係合部材20,20が設置されている。即ち、これら係合部材20,20は、ガイド部材31における端部31b,31cにわたって配されており、係合部材20,20の延在方向の両端がそれぞれ一方の端部31bの切欠部18及び他方の端部31cの切欠部18に収納されるようにして設置されている。
【0030】
また、図2に示すように、係合部材20,20はハウジング16の内周面基端側に一端が固定された付勢部材である板バネ21によって押圧されている。
板バネ21は例えば短冊形状とされ、固定された基端側から先端側に向けて中心軸線O方向に傾斜して先端屈曲部で係合部材20を押圧する。これによって係合部材20は切欠部18内でハウジング16の中心となる軸線O方向に進退可能とされるとともに。板バネ21で径方向内側に付勢されて保持されている。
【0031】
そして、本実施形態においては、図2〜5に示すように、上記一対の係合部材20,20の間に、これら係合部材20,20に挟持されるようにして拡開部材40が設けられている。この拡開部材40は、軸線Oに沿って接合棒9と同じ方向から一対の係合部材20,20間に挿入されることにより係合部材20,20間に配置される。即ち、拡開部材40の挿入方向は軸線Oに沿った方向とされている。
【0032】
拡開部材40は、図6に示すように、軸線O方向に延在する拡開部材本体41と、該拡開部材本体41の後端に一体に設けられた一対のストッパ部44,44とを備えている。
拡開部材本体41は、挿入方向の先端側が閉塞されて後端側に凹孔42が開口する有底筒状をなしており、その外周面43は挿入方向に一様な形状とされている。なお、拡開部材本体41の軸線O方向の長さは、係合部材20,20の軸線O方向の長さよりも小さく設定されている。
【0033】
拡開部材本体41の外周面43の断面視形状は、本実施形態においては略矩形状をなしており、即ち、図6(c)に示すように、矩形の短辺方向に沿った短手寸法L1と長辺方向に沿った長手寸法L2とを有した形状とされている。
本実施形態においては、上記短手寸法L1は、最接近した一対の係合部材20,20同士の間隔、即ち、切欠部18,18間の距離よりも小さく設定されており、上記長手寸法L2は、接合棒9の頭部13の直径よりも大きく設定されている。
【0034】
また、図6(c)に示すように、外周面43の断面視における短手寸法L1と長手寸法L2との遷移領域は曲線状とされており、即ち、本実施形態においては、拡開部材本体41の外周面43における角部42aにR面取りが施されることによって当該角部が丸みを帯びた形状とされている。
【0035】
ストッパ部44は、上記拡開部材本体41の長手寸法L2に沿った一対の面の後端から軸線Oの径方向外側に向かってそれぞれ張り出すように形成されている。このストッパ部44,44の外周縁部44a,44aは、拡開部材本体41の後方視において略円弧状をなしており、該円弧状の最大直径は拡開部材本体41の長手寸法L2と同等か僅かに小さい程度とされている。
【0036】
このような拡開部材40が、一対の係合部材20,20間に設置された状態においては、図5に示すように、拡開部材本体41の外周面43における長手寸法L2の両端面(短手寸法に沿った面)がそれぞれ係合部材20,20に当接する。これにより、係合部材20,20を板バネ21の付勢力に抗して長手寸法L2だけ離間させた状態に保持することができる。また、拡開部材本体41の外周面43は軸線O方向に一様な形状で延在しているため、係合部材20,20は互いに平行をなした状態で離間させられた状態となる。
【0037】
次に、このような拡開部材40の係合部材20,20間への設置方法について説明する。
拡開部材40を係合部材20,20間に挿入する前の状態においては、係合部材20,20は、板ばね21の付勢力により近接された最接近状態とされている。この状態においては、一対の係合部材20,20の間には切欠部18,18同士の距離に応じた空間が形成されている。そして、図7及び図8に示すように、最接近した係合部材20,20間に、外周面43の短手寸法L1の両端面が係合部材20,20に対向するように挿入する。この際、拡開部材40のストッパ部44,44が挿入方向(軸線O方向)から係合部材20,20に当接することで、拡開部材40が軸線O方向に位置決めされる。
【0038】
次いで、例えば拡開部材40の後端側から凹孔42に工具を差し込んで該工具を回転させることで図9に示すように、拡開部材40を軸線O回りに回転させる。この際、拡開部材本体41の角部42aがそれぞれ係合部材20,20に当接し、拡開部材40の回転に伴って上記角部42aが係合部材20,20を互いに離間させる方向に押し広げる。
【0039】
そして、拡開部材40が当初の位置から軸線回りに90°回転した時点で、図4に示すように、拡開部材本体41の外周面における長手寸法L2の両端面がそれぞれ係合部材20,20に当接し、これら係合部材20,20が長手寸法L2だけ拡開させられた状態となり、拡開部材40の設置作業が完了する。
【0040】
以上のような構成の接合構造において雄型継手3と雌型継手4とを連結させるには、
雄型継手3の接合棒9を主桁板6の孔部15を介して雌型継手4のハウジング16内に挿入する。すると、図10に示すように、接合棒9の頭部13が、一対の係合部材20,20間から拡開部材40を挿入方向前方側へと向かって押し出す。これにより、係合部材20,20の拡開部材40による拡開が解除され、これら係合部材20,20は板バネ21,21の付勢力にしたがって互いに近接する方向に変位可能とされる。
【0041】
そして、接合棒9の頭部13が係合部材20,20を通過すると、これら係合部材20,20が係合凹部12の両側に押付けられることで、図11及び図12に示すように、係合部材20,20と係合凹部12とが係合状態に保持される。これにより、雄型継手3と雌型継手4とが強固に連結される。
【0042】
本実施形態に係る継手構造においては、一対の係合部材20,20の間に拡開部材40が設けられているため、接合棒9をハウジング16内に挿入する前から係合部材20,20同士が互いに平行をなして離間された状態とされている。即ち、接合棒9を挿入するためのスペースが当初から形成されているため、接合棒9の挿入動作でもって係合部材20,20を離間させる必要はない。よって、係合部材20,20が傾斜してしまうことはなく、これら係合部材20,20の平行状態を維持することができる。
【0043】
また、これにより、接合棒9を挿入して拡開部材40を係合部材20,20の間から押し出した後に、各係合部材20,20は板バネ21,21の付勢力によって平行状態を維持したまま接合棒9の係合凹部12に係合する。したがって、係合部材20,20と係合凹部12とを適切に係合させることができるため、不具合が生じることがなく雄型継手3と雌型継手4をと確実に連結することが可能となる。
【0044】
また、最接近した係合部材20,20の間に拡開部材40の拡開部材本体41を挿入するととも該拡開部材40を軸線O回りに回転させることによって容易に係合部材20,20同士を離間させて、雄型継手3の接合棒9挿入前の状態とすることができる。
さらに、このように拡開部材40を係合部材20,20間に挿入して回転させて、係合部材20,20を近接、離間させることで、これら係合部材20,20の近接、離間動作が確実に行なわれるか否かの検査をすることができる。
【0045】
また、この拡開部材40による係合部材20,20の近接、離間動作は、拡開部材40の拡開部材本体41が挿入方向に一様に延在する外周面43を有しており、該外周面43断面視形状が短手寸法L1と長手寸法L2とを有していることにより容易に実現することができる。
即ち、短手寸法L1の両端面が係合部材20,20の対向方向を向く状態で拡開部材本体41を挿入させた後、該拡開部材40を回転させて、長手寸法L2の両端面が係合部材20,20の対向方向を向くようにすることで、係合部材20,20同士を平行状態を維持したまま確実に離間させることができる。
【0046】
さらに、拡開部材40の外周面43の断面視形状における短手寸法L1と長手寸法L2の遷移領域にR面取りが施されているため、拡開部材40を一対の係合部材20,20間で軸線O回りに回転させる際に係合部材20,20と拡開部材40の外周面43との間で生じる抵抗を低減させることができる。これにより、係合部材20,20同士を離間させる動作を円滑かつ容易に行なうことができる。
【0047】
さらに、短手寸法L1が最接近した係合部材20,20同士の間隔以下とされているため、これら係合部材20,20間に拡開部材本体41を容易に挿入することができ、また、長手寸法L2が接合棒9の頭部13の直径以上とされているため、係合部材20,20同士が離間した際の間隔が頭部13の直径以上となり、接合棒9の挿入抵抗を小さくすることができる。
【0048】
また、拡開部材40にストッパ部44,44が設けられているため、拡開部材本体41を一対の係合部材20,20間に挿入する際に、ストッパ部44,44が係合部材20,20に当接することにより拡開部材40の移動が規制される。したがって、拡開部材40が挿入方向前方に行き過ぎてしまうことはなく、拡開部材40の位置決めを容易に行なうことが可能となる。
また、拡開部材40の回転により係合部材20,20が離間した際には、ストッパ部44,44の最大直径が長手寸法L2以下とされているため、該ストッパ部44が係合部材20,20に当接することはない。したがって、接合棒9により拡開部材40を容易に押し出すことが可能となる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
例えば、拡開部材40の変形例として、図13に示すような拡開部材50であってもよい。この拡開部材50は、実施形態と同様の拡開部材本体41を備えており、ストッパ部54の形状において実施形態の拡開部材40と異なるものとされている。
【0050】
この拡開部材50におけるストッパ部54,54は、拡開部材本体41の長手方向に沿った一対の面における後端から軸線Oに直交する方向に向かってそれぞれ矩形に張り出すように形成されており、ストッパ部54,54の端部同士の距離は、長手寸法L2と同等か僅かに小さい程度とされている。
【0051】
したがって、実施形態と同様、拡開部材50を一対の係合部材20,20間に挿入する際には、ストッパ部54,54が係合部材20,20に当接することにより拡開部材40の移動が規制され、拡開部材50の位置決めを容易に行なうことが可能となる。
また、拡開部材50の回転により係合部材20,20が離間した際には、ストッパ部54の最大直径が長手寸法L2以下とされているため、該ストッパ部54が係合部材20,20に当接することはなく容易に押し出すことができる。
【0052】
また、上記実施形態及び変形例の拡開部材40,50における拡開部材本体41は、軸線Oに直交する断面視において略矩形状をなしているが、これに限定されることはなく、断面視において外周面43が短手寸法L1と長手寸法L2とを有している限り、他の形状、例えば断面視楕円形状等であってもよい。これによっても、短手寸法L1の両端面を係合部材20,20に対向するように拡開部材本体41を挿入し、拡開部材40を回転させて長手寸法L2の両端面を係合部材20,20に対向させることによって、容易に係合部材20,20を拡開させて離間させることができる。
【符号の説明】
【0053】
1A セグメント
1B セグメント
3 雄型継手
6 主桁板
7 孔部
8 袋ナット
9 接合棒
10 雄ねじ部
11 基部
12 係合凹部
13 頭部
13b 壁面
14 主桁板
15 孔部
16 ハウジング
18 切欠部
20 係合部材
21 板バネ
31 ガイド部材
31a 中央部
31b 端部
31c 端部
39 キャップ
39a 蛇腹部
40 拡開部材
41 拡開部材本体
42 凹孔
43 外周面
44 ストッパ部
44a 外周縁部
50 拡開部材
54 ストッパ部
L1 短手寸法
L2 長手寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄型継手と雌型継手を係合して雄型継手を有する部材と雌型継手を有する部材とを互いに接合する継手構造であって、
前記雄型継手は、先端側に設けた頭部の基端側に係合凹部を設けた雄型継手本体を備え、
前記雌型継手は、
前記雄型継手本体が挿入されるハウジングと、
該ハウジング内に設けられていて、対向する位置に一対の切欠部を有するガイド部材と、
各前記切欠部内にそれぞれ進退可能に設けられていて、前記雄型継手本体の係合凹部に係合可能な矩形平板状の係合部材と、
該係合部材を前記切欠部内に押圧する方向に付勢する付勢部材と、
前記一対の係合部材の間に設けられていて、これら一対の係合部材を付勢部材の付勢力に抗して互いに平行に離間させた状態とする拡開部材とを備え、
前記ハウジング内に前記雄型継手本体を挿入する際に、前記雄型継手本体の頭部が前記一対の係合部材の間から前記拡開部材を押し出して、前記係合凹部に係合部材を係合させるようにしたことを特徴とする継手構造。
【請求項2】
前記拡開部材が、
前記一対の係合部材の間に挿入されて該挿入方向に沿った軸線回りに回転されることで、前記一対の係合部材同士を押し広げて互いに離間させた状態としていることを特徴とする請求項1に記載の継手構造。
【請求項3】
前記拡開部材が、前記挿入方向に一様に延在して前記一対の係合部材に当接する外周面を有しており、
該外周面の断面視形状が、短手寸法と長手寸法とを有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の継手構造。
【請求項4】
前記外周面の断面視形状における短手寸法と長手寸法の遷移領域にR面取りが施されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の継手構造。
【請求項5】
前記短手寸法が、最接近した前記一対の係合部材同士の間隔以下とされ、
前記長手寸法が、前記雄型継手本体の頭部の直径以上とされていることを特徴とする請求項2に記載の継手構造。
【請求項6】
前記拡開部材の後端に設けられ、
最接近した前記一対の係合部材の間に前記拡開部材が挿入された際に、前記係合部材に対して前記挿入方向から当接可能とされるとともに、前記一対の係合部材が離間した際に、前記係合部材に当接不能とされるストッパ部が設けられたことを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−127307(P2011−127307A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285379(P2009−285379)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【Fターム(参考)】