説明

継手用シール装置およびこれを備えた流体継手

【課題】 シール装置が異なるものであった管継手とブロック継手とにおいて、これらのシール装置の共通化を実現して、補修用の部品の保管・管理の手間を減少させた継手用シール装置およびこれを備えた管継手を提供する。
【解決手段】 リテーナ12内周に、ガスケット13外周面が嵌め入れられる大径内周面17aと、大径内周面17aよりも小径の小径内周面18aと、小径内周面17aと大径内周面18aとの境界部分にあってガスケット13の軸方向一方への移動を阻止する段差面19とが設けられている。リテーナ12の大径内周面18aに、ガスケット13の軸方向他方への移動を阻止する小径弾性リング13が嵌め入れられ、リテーナ12の外周に、リテーナ12を継手部材に保持させるための大径弾性リング14が嵌め入れられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガスケットが塑性変形することでシール性を得る継手で使用されるシール装置、およびこのシール装置を備えた流体継手に関する。
【背景技術】
【0002】
流体継手として、互いに連通する流体通路を有している第1および第2の継手部材と、両継手部材の突き合わせ端面間に介在させられる環状ガスケットとを備えており、ガスケットが塑性変形することでシール性を得るものは、よく知られている。
【0003】
このような流体継手としては、特許文献1に記載されているような配管接続のための継手(この発明において、「管継手」と称す)が一般的であったが、特許文献2に示されているような流体制御装置において使用されるもの(この発明において、「ブロック継手」と称す)も増加しつつある。通常、管継手のシール装置は、両継手部材の端面形状が所定形状とされるとともに、別部品として、ガスケットおよびリテーナを有しており、ブロック継手のシール装置は、両継手部材の端面形状が管継手のものとは異なる形状とされるとともに、別部品として、ガスケット、リテーナおよびガイドリングを有している。
【特許文献1】特開平11−6585号公報
【特許文献2】特開平11−280967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の流体継手において、管継手とブロック継手とは、用途が相違していることから、そのシール装置も異なる構成でそれぞれ別個に改良が図られており、これらのシール装置を共通化するということは、全く考えられていなかった。
【0005】
シール構成部品は、補修用の部品として、すぐに使用できるように保管しておく必要があるが、従来は、管継手用とブロック継手用とでそれぞれ別の部品を準備しておくことが必要であり、その保管・管理の手間が大きいものとなっていた。
【0006】
この発明の目的は、シール装置が異なるものであった管継手とブロック継手とにおいて、これらのシール装置の共通化を実現して、補修用の部品の保管・管理の手間を減少させた継手用シール装置およびこれを備えた流体継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による継手用シール装置は、互いに連通する流体通路を有している第1および第2の継手部材の突き合わせ部分に設けられるシール装置であって、両継手部材の突き合わせ端面間に介在させられる環状ガスケットと、ガスケットを保持するとともに、両端部が各継手部材の突き合わせ端面に設けられた環状リテーナ収納凹所にそれぞれ嵌められる環状リテーナとを有しており、リテーナ内周に、ガスケット外周面が嵌め入れられる大径内周面と、大径内周面よりも小径の小径内周面と、小径内周面と大径内周面との境界部分にあってガスケットの軸方向一方への移動を阻止する段差面とが設けられており、リテーナの大径内周面に、ガスケットの軸方向他方への移動を阻止する小径弾性リングが嵌め入れられ、リテーナの外周に、リテーナを継手部材に保持させるための大径弾性リングが嵌め入れられていることを特徴とするものである。
【0008】
この継手用シール装置は、リテーナにガスケットを保持させ、さらに、小径弾性リングおよび大径弾性リングをリテーナに嵌め合わせた組立て状態で使用される。この継手用シール装置は、管継手(ねじ手段として袋ナットまたはボルトを使用)およびブロック継手(ねじ手段としてボルトを使用)のどちらにも使用することができる。第1および第2の継手部材の突き合わせ部分は、同じ形状とされ、ガスケットを保持したリテーナは、第1および第2の継手部材のどちらにも装着することができるようになされる。
【0009】
ガスケットは、例えば、ニッケル合金製、ステンレス鋼製などとされ、リテーナは、例えば、ステンレス鋼製とされる。
【0010】
リテーナは、例えば、ガスケットの外径に対応する内径を有する薄肉部と、内径が薄肉部よりも小さくかつ外径が薄肉部よりも大きい厚肉部とからなる一体品とされ、薄肉部の内周面(大径内周面)と厚肉部の内周面(小径内周面)との境界部分が、ガスケットの軸方向一方への移動を阻止する段差面とされる。ガスケットは、内径および外径がともに段差のない円筒面とされてもよいが、好ましくは、大径部と、大径部と内径が同じで外径が小さい小径部とからなる一体品とされ、その大径部がリテーナの薄肉部内径に、その小径部がリテーナの厚肉部内径にそれぞれ嵌め入れられるようになされる。
【0011】
弾性リングとしては、金属製の円形リングの一部が切除されたC状をなしかつ断面が円形のスナップリングを使用することができるが、これに限定されるものではなく、Oリングなどの弾性を有する種々のリング状部材を使用することができる。
【0012】
リテーナの大径内周面およびリテーナの外周には、大径および小径の弾性リングを嵌め入れるための環状溝がそれぞれ形成されていることが好ましい。リテーナの大径内周面の環状溝は、小径弾性リングのガスケットの移動阻止機能を確保するために、小径弾性リングがリテーナの大径内周面から径方向内方に突出可能なように形成される。リテーナの外周の環状溝は、リテーナが継手部材に装着されたときに大径弾性リングがその溝内に収まることが可能な形状とされる。
【0013】
リテーナは、リテーナ収納凹所の外径に対応する大径外周面と、これより小径の小径外周面とを有しており、大径外周面に環状溝が形成され、この環状溝に大径弾性リングが嵌め入れられていることが好ましい。この場合、継手の組立てに際しては、リテーナの厚肉部が、いずれか一方の継手部材に嵌め合わせられ、この際、リテーナの大径外周面がこの継手部材のリテーナ収納凹所にちょうど嵌まり合うことで、互いの同心が確保され、この後、他方の継手部材を一方の継手部材に突き合わせることにより、リテーナの小径外周面がこの継手部材のリテーナ収納凹所にゆるく嵌まり合うことで、継手部材同士の径方向のずれが修正される。
【0014】
通常、継手部材には、ねじ手段が締め付けられた際に、ガスケットに最初に当接してこれを変形させる例えば断面円弧状のガスケット押さえ環状突起が形成される。これに対応して、ガスケットは、例えば、断面方形または略方形の円板(ガスケットの両面が軸方向に対して直角な平坦面)の中央に円形の通路を設けたものとされるが、これに限定されるものではない。例えば、ガスケットに、継手部材の環状突起に対応する環状凹部が形成されてもよく、また、ガスケットに環状突起を設けて、継手部材の突き合わせ端面を平坦面としてもよい。
【0015】
ねじ手段は種々の構成が可能であり、例えば、第1および第2の継手部材のいずれか一方におねじ部が形成され、継手部材のおねじ部にねじ合わされた袋ナットによって、両継手部材が結合されてもよく、第1および第2の継手部材がいずれもおねじ部が形成されていないスリーブとされ、別体とされたおねじ部材と袋ナットとによって、両継手部材が結合されてもよい。また、継手部材同士は、一方にボルト挿通孔が、他方にめねじ部が形成されたものとされ、ボルトによって結合されるようにしてもよい。
【0016】
上記の継手用シール装置を備えた流体継手としては、1対の管状継手部材と、ねじ手段としての袋ナットと、シール装置とを備えた流体継手であって、継手部材の円筒状本体の突き合わせ端部近傍から径方向外方にのびるフランジ部と、フランジ部の外周縁部から軸方向外方にのびる大径円筒部とからなり、リテーナの各端部が嵌められるリテーナ収納凹所を円筒状本体の突き合わせ端部との間に形成するリテーナ収納凹所形成用環状リング部が各継手部材に形成されていることを特徴とするものとされることがある。
【0017】
1対の管状継手部材を備えた従来の管継手には、リテーナ収納凹所はなく、リテーナは、その(継手部材保持部の)内周面が管状継手部材の外周に保持されるようになっている。これに対し、この発明による流体継手では、リテーナ収納凹所を形成するための大径円筒部が各管状継手部材の突き合わせ端部に設けられて、リテーナは、その外周面が管状継手部材のリテーナ収納凹所外周面に保持される。リテーナ、ガスケット、小径弾性リングおよび大径弾性リングの構成については、上記のシール装置と同じ構成とされる。1対の管状継手部材を備えた流体継手(すなわち管継手)の構成をこのようにすることで、管継手のシール装置とブロック継手のシール装置とを共通化することができる。
【0018】
また、上記の継手用シール装置を備えた流体継手としては、1対の継手部材と、ねじ手段としてのボルトと、請求項1または2の継手用シール装置とを備えた流体継手であって、継手部材の一方は、スリーブおよびスリーブとは別体のフランジ部材からなり、スリーブの突き合わせ端部に、スリーブ本体の突き合わせ端部近傍から径方向外方にのびるフランジ部およびフランジ部の外周縁部から軸方向外方にのびる大径円筒部からなり、リテーナの各端部が嵌められるリテーナ収納凹所をスリーブ本体の突き合わせ端部との間に形成するリテーナ収納凹所形成用環状リング部が一体に形成されており、フランジ部材は、突き合わせ面がスリーブのリテーナ収納凹所形成用環状リング部の突き合わせ面と面一とされる孔あき板状部および孔あき板状部の反突き合わせ面側に形成されてスリーブのリテーナ収納凹所形成用環状リング部の反突き合わせ面に当接させられる環状内方突出部からなり、フランジ部材の孔あき板状部を軸方向に貫通するボルトが他方の継手部材にねじ込まれることで継手部材同士が結合されることを特徴とするものとされることがある。
【0019】
ここで、他方の継手部材は、ブロック状継手部材とされることがあり、また、スリーブおよびスリーブとは別体のフランジ部材からなる管状継手部材とされることがある。
【0020】
このような流体継手では、スリーブとフランジ部材とが別体とされていることで、ボルト締付けに伴うトルクは、フランジ部材が負担して、スリーブにはほとんど回転力が掛からないものとなっており、また、スリーブは、シール装置を構成していることから、シール機能を確保する必要がある一方、フランジ部材は、シール性に影響を及ぼさないことから、例えば、スリーブをSUS316LM製、フランジ部材SUS304製というように別材質のものにすることが可能であり、高いシール性を確保した上で、コストの低減が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
この発明の継手用シール装置によると、両継手部材の突き合わせ端面間に介在させられる環状ガスケットと、ガスケットを保持するとともに、両端部が各継手部材の突き合わせ端面に設けられた環状リテーナ収納凹所にそれぞれ嵌められる環状リテーナとを有しており、リテーナ内周に、ガスケット外周面が嵌め入れられる大径内周面と、大径内周面よりも小径の小径内周面と、小径内周面と大径内周面との境界部分にあってガスケットの軸方向一方への移動を阻止する段差面とが設けられており、リテーナの大径内周面に、ガスケットの軸方向他方への移動を阻止する小径弾性リングが嵌め入れられ、リテーナの外周に、リテーナを継手部材に保持させるための大径弾性リングが嵌め入れられているので、管継手およびブロック継手の両方に共通して使用することができ、補修用の部品の保管・管理の手間を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0023】
この発明による継手用シール装置(10)は、図1および図2に示すように、環状ガスケット(11)と、ガスケット(11)を保持する環状リテーナ(12)と、リテーナ(12)内周に嵌められた小径弾性リング(13)と、リテーナ(12)外周に嵌められた大径弾性リング(14)とを備えている。
【0024】
ガスケット(11)は、塑性変形することでシール性を奏するもので、大径部(15)と、大径部(15)と内径が同じで外径が小さい小径部(16)とからなる。
【0025】
リテーナ(12)は、ガスケット(11)の大径部(15)の外径に対応する内径を有する薄肉部(17)と、ガスケット(11)の小径部(16)の外径に対応する内径を有する厚肉部(18)とからなる。
【0026】
ガスケット(11)は、その大径部(15)がリテーナ(12)の薄肉部(17)内径に、その小径部(16)がリテーナ(12)の厚肉部(18)内径にそれぞれ嵌め入れられている。リテーナ(12)の薄肉部(17)の内周面(大径内周面)(17a)と厚肉部(18)の内周面(小径内周面)(18a)との境界部分は、ガスケット(11)の軸方向一方(図1の下方)への移動を阻止する段差面(19)とされている。薄肉部(17)の外周面(小径外周面)(17b)の径は、厚肉部(18)の外周面(大径外周面)(18b)の径よりも若干小さいものとされている。
【0027】
リテーナ(12)の大径内周面(17a)には、小径弾性リング(13)が嵌め入れられるV字状の環状溝(21)が形成されており、この環状溝(21)に小径弾性リング(13)が嵌め入れられていることで、ガスケット(11)の軸方向他方(図1の上方)への移動が阻止されている。また、リテーナ(12)の大径外周面(18b)には、U字状の環状溝(22)が形成されており、この環状溝(22)に大径弾性リング(14)が嵌め入れられている。
【0028】
各弾性リング(13)(14)は、断面円形の金属製線材がC状に形成されたスナップリングと称されているもので、径方向の弾性を有している。
【0029】
リテーナ(12)の大径内周面(17a)の環状溝(21)に嵌め入れられている小径弾性リング(13)は、フリーの状態で、その外径が大径内周面(17a)の内径よりも大きく、自身が径方向に拡大しようとする弾性力によって、環状溝(21)に保持されている。小径弾性リング(13)とガスケット(11)との間には、若干の軸方向の隙間が形成されており、小径弾性リング(13)は、通常時には、ガスケット(11)と接触することはなく、ガスケット(11)の位置決めは、リテーナ(12)の内周にある段差面(19)で行われている。
【0030】
リテーナ(12)の大径外周面(18b)の環状溝(22)に嵌め入れられている大径弾性リング(14)は、フリーの状態で、その外径がリテーナ(12)の大径外周面(18b)の径よりもわずかに大きいものとされている。環状溝(22)の深さは、大径弾性リング(14)が径方向内方に押し込まれた場合にその全体を収容できる大きさとされている。
【0031】
この継手用シール装置(10)は、リテーナ(12)に着脱可能にガスケット(11)を保持させ、さらに、小径弾性リング(13)および大径弾性リング(14)をリテーナ(12)に着脱可能に嵌め合わせた組立て状態で使用される。
【0032】
上記のように構成された継手用シール装置(10)は、ブロック継手および管継手の両方で使用可能なものとなっている。
【0033】
図3は、上記継手用シール装置(10)をブロック継手に適用したものである。
【0034】
図3(a)(b)に示すように、ブロック継手(1)は、互いに連通する流体通路(31a)(32a)を有している第1および第2のブロック状継手部材(31)(32)と、継手部材(31)(32)同士を結合するねじ手段としてのボルト(33)と、上記のシール装置(10)とを備えている。
【0035】
図3(b)に示すように、各継手部材(31)(32)の突き合わせ端面に、流体通路(31a)(32a)開口を囲むリテーナ収納凹所(34)(35)が設けられ、各リテーナ収納凹所(34)(35)の内周側に、ガスケット押さえ部(36)(37)が設けられている。リテーナ収納凹所(34)(35)およびガスケット押さえ部(36)(37)は、互いに同心で、第1継手部材(31)と第2継手部材(32)とで同一形状となるように形成されている。ガスケット(11)の内径と両継手部材(31)(32)の内径(流体通路(31a)(32a)の径およびガスケット押さえ部(36)(37)の内周面の径)とは、互いに等しくなされている。
【0036】
リテーナ(12)の厚肉部(18)の外周面(大径外周面)(18b)の径は、リテーナ収納凹所(34)(35)の外周面の径に対応しており、リテーナ(12)の厚肉部(18)は、図3(b)の下方に示されている第2継手部材(32)のリテーナ収納凹所(35)内に嵌め入れられて、大径弾性リング(14)によって第2継手部材(32)からの脱落が防止されている。リテーナ(12)の薄肉部(17)の外周面(小径外周面)(17b)の径は、厚肉部(18)の外周面(大径外周面)(18b)の径よりも若干小さいものとされていることにより、第1継手部材(31)のリテーナ収納凹所(34)内にゆるく嵌め入れられている。
【0037】
このブロック継手(1)によると、リテーナ(12)は、第1および第2の継手部材(31)(32)のどちらでも保持でき、継手部材(31)(32)の突き合わせ端面形状を区別せずに組み立てることができる。ブロック継手(1)の組立てに際しては、シール装置(10)のリテーナ(12)の厚肉部(18)が、いずれか一方の継手部材(図示した例では図の下方の第2継手部材)(32)に嵌め合わせられ、この際、リテーナ(12)の大径外周面(18b)が第2継手部材(32)のリテーナ収納凹所(35)にちょうど嵌まり合うことで、互いの同心が確保される。そして、この後に、他方の継手部材(図示した例では図の上方の第1継手部材)(31)を第2継手部材(32)に突き合わせると、リテーナ(12)の小径外周面(17b)が第1継手部材(31)のリテーナ収納凹所(34)にゆるく嵌まり合うことで、継手部材(31)(32)同士の径方向のずれが修正される。
【0038】
なお、図3(b)に示す各ガスケット押さえ部(36)(37)は、その内周面の径と各継手部材(31)(32)の内径とが等しくなされて、各ガスケット押さえ部(36)(37)の径方向外方および内方には軸方向に直交する面が存在していないが、図4に示すように、各ガスケット押さえ部(38)(39)の径方向外方に、それぞれ軸方向に直交する面(38a)(39a)が設けられ、各ガスケット押さえ部(38)(39)の径方向内方に、それぞれ軸方向に直交する面(38b)(39b)が設けられているようにしてもよい。
【0039】
図5は、上記継手用シール装置(10)を管継手に適用したものである。
【0040】
図5(a)(b)に示すように、管継手(2)は、互いに連通する流体通路(41a)(42a)を有している第1および第2の管状継手部材(41)(42)と、継手部材(41)(42)同士を結合するねじ手段(43)と、上記のシール装置(10)とを備えている。
【0041】
各継手部材(41)(42)の端部には、上記のブロック継手(1)のガスケット押さえ部(36)(37)と同じ形状のガスケット押さえ部(46)(47)が継手部材(41)(42)の円筒状本体(41b)(42b)の延長上に形成されているとともに、上記のブロック継手(1)のリテーナ収納凹所(34)(35)と同じ形状のリテーナ収納凹所(44)(45)を形成するリテーナ収納凹所形成用環状リング部(48)(49)がガスケット押さえ部(46)(47)の径方向外方に形成されている。
【0042】
リテーナ収納凹所形成用環状リング部(48)(49)は、継手部材(41)(42)の円筒状本体(41b)(42b)の端部近傍から径方向外方にのびるフランジ部(48a)(49a)と、フランジ部(48a)(49a)の外周縁部から軸方向外方にのびる大径円筒部(48b)(49b)とからなる。
【0043】
ねじ手段(43)は、図の右方の第2継手部材(42)に嵌められて第2継手部材(42)のフランジ部(49a)の右面に右方から突き合わされたおねじ部材(50)と、図の左方の第1継手部材(41)に嵌められておねじ部材(50)に左方からねじ合わされており、第1継手部材(41)のフランジ部(48a)の左面に頂壁(51a)がスラストベアリング(52)を介して左方から突き合わされた袋ナット(51)とからなる。
【0044】
各継手部材(41)(42)のガスケット押さえ部(46)(47)およびリテーナ収納凹所(44)(45)は、軸方向寸法および径方向寸法がブロック継手(1)のガスケット押さえ部(36)(37)およびリテーナ収納凹所(34)(35)とそれぞれ同じとされており、これによって、ブロック継手(1)で使用されているシール装置(10)を変更することなくこの管継手(2)に使用することができる。
【0045】
この管継手(2)によると、リテーナ(12)は、第1および第2の継手部材(41)(42)のどちらでも保持でき、継手部材(41)(42)の突き合わせ端面形状を区別せずに組み立てることができる。管継手(2)の組立てに際しては、シール装置(10)のリテーナ(12)の厚肉部(18)が、いずれか一方の継手部材(図示した例では図の右方の第2継手部材)(42)に嵌め合わせられ、この際、リテーナ(12)の大径外周面(18b)が第2継手部材(42)のリテーナ収納凹所(45)にちょうど嵌まり合うことで、互いの同心が確保される。そして、この後に、他方の継手部材(図示した例では図の左方の第1継手部材)(41)を第2継手部材(42)に突き合わせると、リテーナ(12)の小径外周面(17b)が第1継手部材(41)のリテーナ収納凹所(44)にゆるく嵌まり合うことで、継手部材(41)(42)同士の径方向のずれが修正される。
【0046】
なお、図5に示す各ガスケット押さえ部(46)(47)は、その径方向外方および内方に軸方向に直交する面が設けられているが、これに限定されるものではなく、径方向外方および/または内方に存在している軸方向に直交する面をなくして、突起形状を大きくするようにしてもよい。
【0047】
上記継手用シール装置(10)は、さらに、図6に示した流体継手においても使用可能である。
【0048】
図6において、シール装置(10)は、ブロック状継手部材(61)と管状継手部材(62)との突き合わせ部分に設けられている。ブロック状継手部材(61)には、開閉弁(66)が取り付けられるとともに、開閉弁(66)に通じる流体通路(61a)(61b)が形成されている。
【0049】
ブロック状継手部材(61)には、ブロック継手(1)用のガスケット押さえ部(36)およびリテーナ収納凹所(34)が設けられている(詳細構造は図3参照)。
【0050】
管状継手部材(62)は、スリーブ(64)およびスリーブ(64)とは別体のフランジ部材(65)からなる。
【0051】
スリーブ(64)は、ブロック状継手部材(61)の一方の流体通路(61b)に通じる流体通路(64a)を有している。スリーブ(64)の突き合わせ端部には、管継手(2)用のガスケット押さえ部(46)と、リテーナ収納凹所(44)をスリーブ本体の突き合わせ端部との間に形成するリテーナ収納凹所形成用環状リング部(48)とが一体に設けられている(詳細構造は図5参照)。
【0052】
フランジ部材(65)は、スリーブ(64)の突き合わせ端部の外周に嵌め合わされており、突き合わせ面がスリーブ(64)のリテーナ収納凹所形成用環状リング部(48)の突き合わせ面と面一とされる孔あき方形板状部(65a)と、孔あき方形板状部(65a)の反突き合わせ面側に形成されてスリーブ(64)のリテーナ収納凹所形成用環状リング部(48)の反突き合わせ面に軸方向から当接させられる環状内方突出部(65b)とからなる。
【0053】
ブロック状継手部材(61)と管状継手部材(62)とを結合するねじ手段としては、ブロック継手(1)用のボルト(63)が使用されており、フランジ部材(65)の孔あき方形板状部(65a)を軸方向に貫通するボルト(63)がブロック状継手部材(61)にねじ込まれることで継手部材(61)(62)同士が結合されている。
【0054】
図6に示した流体継手によると、ブロック状継手部材(61)と管状継手部材(62)とが、溶接を不要としてかつブロック継手(1)および管継手(2)に共通のシール装置(10)を使用して接続されているので、流体継手の組立てをより簡単で容易なものとすることができる。
【0055】
また、図6に示した流体継手によると、ボルト(63)締付けに伴うトルクは、フランジ部材(65)が負担して、スリーブ(64)にはほとんど回転力が掛からないものとなっており、ボルト(63)締付けに伴うシール性の悪化が防止されている。ここで、スリーブ(64)は、シール装置(10)を構成していることから、その機能を確保するために、例えば、SUS316LM製とされており、フランジ部材(65)は、シール性に影響を及ぼさないことから、例えばSUS304のような別材質のものとされている。
【0056】
図6に示したブロック状継手部材(61)に、流体の入口または出口用としてさらに出入口部を追加する場合には、図7に示すように、図6と同様の管状継手部材(62)(フランジタイプの管継手)を使用してもよく、図8に示すように、図5に類似の管状継手部材(袋ナットタイプの管継手)を使用してもよい。また、図6に示したフランジタイプの管状継手部材(62)は、これを1対使用することで、図5に示した袋ナットタイプの管継手に代えて使用することもできる。以下の説明においては、図5および図6に示したものと同じ構成には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0057】
図7において、ブロック状継手部材(61)には、左方に開口しかつ開閉弁(66)に通じている流体通路(61a)が延長されて、開閉弁(66)に通じかつ右方に開口する流体通路(61c)が形成されている。そして、ブロック状継手部材(61)の右面に、図6に示したものと同じ管状継手部材(62)が取り付けられることで、外部との接続に使用される出入口部が形成されている。
【0058】
図8において、ブロック状継手部材(61)には、左方に開口しかつ開閉弁(66)に通じている流体通路(61a)が延長されて、開閉弁(66)に通じかつ右方にのびる流体通路(61c)が形成されている。そして、ブロック状継手部材(61)の右面に、右方にのびる流体通路(61c)に連なってさらに右方にのびる流体通路(71a)を有する管状の右方突出部(71)が設けられている。この右方突出部(71)は、図5に示した第2継手部材(42)とおねじ部材(50)とが一体とされた形状とされており、この右方突出部(71)に、図5に示した第1継手部材(41)が袋ナット(51)を介して取り付けられることで、外部との接続に使用される出入口部が形成されている。
【0059】
図9において、図6に示した管状継手部材(62)とこれに類似のもう一方の管状継手部材(81)とが使用されて、これらの継手部材(62)(81)同士が上記と同じシール装置(10)を介して突き合わされることで、管継手が形成されている。もう一方の管状継手部材(81)は、スリーブ(64)およびフランジ部材(82)からなる点で、図6に示した管状継手部材(62)と同じであり、図6に示した管状継手部材(62)では、フランジ部材(65)にねじ挿通孔(65c)が形成されているのに対し、フランジ部材(82)にめねじ(82a)が形成されている点だけが相違している。
【0060】
なお、上記において、フランジ部材(65)は、孔あき方形板状部(65a)および環状内方突出部(65b)からなるとしたが、孔あき方形板状部(65a)(方形の板に円形の孔を設けたもの)を孔あき円形板状部(円形の板に円形の孔を設けたもの)としてももちろんよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、この発明によるシール装置の1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図2は、同分解斜視図である。
【図3】図3は、この発明による継手用シール装置の第1の適用例であるブロック継手を示す図で、(a)は縦断面図、(b)はその要部の拡大縦断面図である。
【図4】図4は、図3に示した継手用シール装置の変形例を示す要部の拡大縦断面図である。
【図5】図5は、この発明による継手用シール装置の第2の適用例である管継手(この発明による流体継手の1例)を示す図で、(a)は縦断面図、(b)はその要部の拡大縦断面図である。
【図6】図6は、この発明による継手用シール装置の第3の適用例である流体継手(この発明による流体継手の他の例)を示す図で、(a)は平面図、(b)は垂直断面図である。
【図7】図7は、この発明による継手用シール装置の第4の適用例である流体継手(この発明による流体継手のさらに他の例)を示す垂直断面図である。
【図8】図8は、この発明による継手用シール装置の第5の適用例である流体継手(この発明による流体継手のさらに他の例)を示す垂直断面図である。
【図9】図9は、この発明による継手用シール装置の第6の適用例である管継手(この発明による流体継手のさらに他の例)を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0062】
(2) 管継手(流体継手)
(10) シール装置
(11) ガスケット
(12) リテーナ
(13) 小径弾性リング
(14) 大径弾性リング
(17a) 薄肉部内周面(大径内周面)
(17b) 薄肉部外周面(小径外周面)
(18a) 厚肉部内周面(小径内周面)
(18b) 厚肉部外周面(大径外周面)
(19) 段差面
(34)(35) リテーナ収納凹所
(41)(42) 管状継手部材
(41a)(42a) 流体通路
(41b)(42b) 円筒状本体
(44)(45) リテーナ収納凹所
(48)(49) リテーナ収納凹所形成用環状リング部
(48a)(49a) フランジ部
(48b)(49b) 大径円筒部
(51) 袋ナット
(61) ブロック状継手部材
(61b) 流体通路
(62) 管状継手部材
(63) ボルト
(64) スリーブ
(64a) 流体通路
(65) フランジ部材
(65a) 孔あき板状部
(65b) 環状内方突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連通する流体通路を有している第1および第2の継手部材の突き合わせ部分に設けられるシール装置であって、
両継手部材の突き合わせ端面間に介在させられる環状ガスケットと、ガスケットを保持するとともに、両端部が各継手部材の突き合わせ端面に設けられた環状リテーナ収納凹所にそれぞれ嵌められる環状リテーナとを有しており、リテーナ内周に、ガスケット外周面が嵌め入れられる大径内周面と、大径内周面よりも小径の小径内周面と、小径内周面と大径内周面との境界部分にあってガスケットの軸方向一方への移動を阻止する段差面とが設けられており、リテーナの大径内周面に、ガスケットの軸方向他方への移動を阻止する小径弾性リングが嵌め入れられ、リテーナの外周に、リテーナを継手部材に保持させるための大径弾性リングが嵌め入れられていることを特徴とする継手用シール装置。
【請求項2】
リテーナは、リテーナ収納凹所の外径に対応する大径外周面と、これより小径の小径外周面とを有しており、大径外周面に環状溝が形成され、この環状溝に大径弾性リングが嵌め入れられていることを特徴とする請求項1の継手用シール装置。
【請求項3】
1対の管状継手部材と、ねじ手段としての袋ナットと、請求項1または2の継手用シール装置とを備えた流体継手であって、
継手部材の円筒状本体の突き合わせ端部近傍から径方向外方にのびるフランジ部と、フランジ部の外周縁部から軸方向外方にのびる大径円筒部とからなり、リテーナの各端部が嵌められるリテーナ収納凹所を円筒状本体の突き合わせ端部との間に形成するリテーナ収納凹所形成用環状リング部が各継手部材に形成されていることを特徴とする継手。
【請求項4】
1対の継手部材と、ねじ手段としてのボルトと、請求項1または2の継手用シール装置とを備えた流体継手であって、
継手部材の一方は、スリーブおよびスリーブとは別体のフランジ部材からなり、スリーブの突き合わせ端部に、スリーブ本体の突き合わせ端部近傍から径方向外方にのびるフランジ部およびフランジ部の外周縁部から軸方向外方にのびる大径円筒部からなり、リテーナの各端部が嵌められるリテーナ収納凹所をスリーブ本体の突き合わせ端部との間に形成するリテーナ収納凹所形成用環状リング部が一体に形成されており、フランジ部材は、突き合わせ面がスリーブのリテーナ収納凹所形成用環状リング部の突き合わせ面と面一とされる孔あき板状部および孔あき板状部の反突き合わせ面側に形成されてスリーブのリテーナ収納凹所形成用環状リング部の反突き合わせ面に当接させられる環状内方突出部からなり、フランジ部材の孔あき板状部を軸方向に貫通するボルトが他方の継手部材にねじ込まれることで継手部材同士が結合されることを特徴とする継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−96329(P2010−96329A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269917(P2008−269917)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(390033857)株式会社フジキン (148)
【Fターム(参考)】