説明

継足し用治具装置

【課題】ラック7、8を一直線状に並べて継足す際、簡単な操作で素早く突状前歯12、突状後歯13および中間突状歯14をラック7、8に強く係合させて確実に噛合させる継足し用治具装置9を提供する。
【解決手段】把持本体11の突状前歯12、突状後歯13および中間突状歯14の各突出方向Eとラック7、8の高さ方向Hとが同一面G内に位置するので、ラック7、8を継足す際に、把持本体11をラック歯7a、8aの歯底7d、8dに対して垂直方向に押付ける簡単な操作で突状前歯12、突状後歯13および中間突状歯14をラック7、8に強く係合させて確実に噛合させ、ラック7、8を一定のピッチ間隔Tで素早く一直線状に並べることができ、作業性に優れて使い勝手がよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のラックを一直線状に並べて継足す際に用いる継足し用治具装置に係り、とりわけ、ラックを簡単な操作で素早く継ぎ足せるように改良した継足し用治具装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラックとピニオンとを組合せた作動機構は、「ラックアンドピニオン式ステアリング」や「ラックまたはギアの構造」として知られている(例えば特許文献1、2参照)。特許文献1は、ばねを付勢手段として設け、作動機構の作動時にラックとピニオン間の距離が変動すると、ラックの変位をラックガイドの回動により吸収し、ラックガイドの摩擦量を低減している。
特許文献2におけるギアは、歯先面よりも低い位置まで弾性部材を設け、ギアがラックに噛み合う時、ギアが弾性部材を介してラックの歯に噛み合うように構成し、異音や振動の発生を抑制している。
【0003】
また、特許文献3に記載のラックがロボットの走行、ストッカー搬送や洗浄ライン搬送など長いストロークに適用された場合、図7(a)に示すように、複数から成る単体のラックを一直線状に並べて使用することが知られている。
この場合に用いる継足し用治具50は、把持本体50Aの一側面に複数のピン51a〜51dをラック52、53の歯筋方向Qに沿って立設している。図7(b)に示すように、ピン51a〜51dをラック52、53が有するラック歯51e〜51hに噛合させることにより、ラック52、53を一直線状で所定のピッチ間隔となるように並べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−34354号公報
【特許文献2】特開2000−65176号公報
【特許文献3】特開平10−184842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図7に示す継足し用治具50では、ピン51a〜51dが把持本体50Aに片持ち状態に保持されるので、ラック52、53を一直線状に並べて継足す際、把持本体50Aを把持してピン51a〜51dがラック歯51e〜51hに強く当接する方向Rpに操作する必要がある。
すなわち、ピン51a〜51dがラック歯51e〜51hに圧接する方向の回転モーメントWが生じるように把持本体50Aを回転付勢する必要があり、ピン51a〜51dをラック歯51e〜51hに強く係合させる操作が煩わしく、両者を素早くかつ確実に噛合させることが難しくなり、使い勝手が悪いという不都合がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的はラックを一直線状に並べて継足す際、簡単な操作で突状前歯、突状後歯および中間突状歯をラック歯に素早くかつ確実に噛合させることができ、作業性に優れて使い勝手のよい継足し用治具装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1について)
継足し用治具装置は、ピニオンに噛合する複数のラックを長手方向に沿って一直線状に並べて継足す際に用いられる。板状の把持本体は、複数のラックのうち、隣接する一方のラックが有するラック歯に噛合する突状前歯と他方のラックが有するラック歯に噛合する突状後歯から成る少なくとも二個の突状歯を設けている。
突状歯の突出方向とラックの高さ方向とが同一面内に位置するように設定されており、突状歯がラック歯に噛み合うことにより、継足し合うラック間に対向するように存するラック歯同士のピッチ間隔を所定の位置に規制する。
【0008】
請求項1における把持本体の突状前歯および突状後歯の各突出方向とラックの高さ方向とが、同一面内に位置するようになっている。
このため、隣接するラックを継足す際に、把持本体をラック歯の歯底に対して垂直方向に押込む簡単な操作で突状歯をラック歯に素早くかつ確実に噛み合わせ、継足しするラック歯間のピッチ間隔を所定の位置に規制することができる。
これにより、短時間で複数のラックを一定のピッチ間隔で一直線状に並べることができる。この結果、ピンがラック歯に圧接する方向の回転モーメントが生じるように把持本体を回転付勢する従来と異なって、把持本体の操作が円滑で容易になり、作業性に優れて使い勝手がよくなる。
【0009】
(請求項2について)
把持本体は、突状前歯と突状後歯との間に形成された中間突状歯を有し、突状前歯、突状後歯および中間突状歯の各突出方向はラックの高さ方向と同一面内に位置するように設定されており、中間突状歯が、継足し合うラック間に対向するように存するラック歯同士に噛み合って位置決めする。
請求項2では、中間突状歯が継足し合うラック同士を位置決めする役割を果たすので、継足し合うラック同士の位置調整を行う必要がなくなり、単一操作で継足し作業が終了して作業性が格段に向上する。
【0010】
(請求項3について)
把持本体は、ラックの長手方向に沿う両側面に当接して、隣接するラックが一直線状に並ぶように位置調整する調整板を有する。
請求項3では、簡素な構造の調整板により、把持本体を安定させ、ラックの傾きに注意を払うことなく、ラックに対する調整板の安定した押込み操作が可能となる。
【0011】
(請求項4について)
把持本体の両側面に形成され、ラックの長手方向と交差する方向に指向する蟻溝を有し、調整板は蟻溝に対して摺動可能となるように嵌め込まれた蟻ほぞを有する。
請求項4では、把持本体の蟻溝に調整板の蟻ほぞを摺動可能に嵌め込むことにより、調整板が把持本体に取付けられるので、簡素な構造でコスト的に有利である。
【0012】
(請求項5について)
把持本体と調整板との間において、ラックに対して近接方向で調整板を付勢してラックに密着させるための弾性部材を用いることにより、把持本体よりも厚みの大きなラックの両側面に調整板が当接するようにしている。
請求項5では、ラックが把持本体よりも厚みの大きな場合、調整板が弾性部材を弾性変形させるので、調整板がラックの両側面に当接するようになる。
このため、弾性部材を用いることで、把持本体よりも厚みの大きなラックに調整板を適用することができるようになり汎用性が広がる。
【0013】
(請求項6について)
把持本体の突状前歯、突状後歯および中間突状歯の各両側面において、ラックの両側面に対して当接する当接板部が延設されている。
請求項6では、突状前歯、突状後歯および中間突状歯の各両側面に当接板部を設けるという簡素な構造で、隣接するラックを一直線状に並べて継足すことができる。しかも、ラック歯に対する突状前歯、突状後歯および中間突状歯の噛み合いを視覚的に確認し、ラック歯のピッチ間隔を所定どおり確実に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)はラック、ピン・ピニオンおよび継足し用治具装置の分解斜視図(実施例1)、(b)はラックに用いた継足し用治具装置を示す斜視図である(実施例1)。
【図2】(a)はラックおよび継足し用治具装置の分解斜視図(実施例2)、(b)はラックに用いた継足し用治具装置の側面図である(実施例2)。
【図3】(a)はラックおよび継足し用治具装置の分解斜視図(実施例3)、(b)はラックに用いた継足し用治具装置の側面図である(実施例3)。
【図4】(a)はラックおよび継足し用治具装置の分解斜視図(実施例4)、(b)はラックに用いた継足し用治具装置を一部破断して示す側面図である(実施例4)。
【図5】(a)はラックに用いた継足し用治具装置の側面図(実施例5)、(b)はラックに用いた継足し用治具装置を一部破断して示す側面図(実施例6)、(c)はラックに用いた継足し用治具装置の側面図である(実施例7)。
【図6】(a)はラックに用いた継足し用治具装置の斜視図、(b)はラックに用いた継足し用治具装置の側面図である(実施例8)。
【図7】(a)は継足し用治具とラックとの分解斜視図(従来技術)、(b)はラックに用いた継足し用治具の正面図(従来技術)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の継足し用治具装置では、所定のピッチ間隔を保ちながら複数のラックを簡単な操作で一直線状に並べて継足す構成を各実施例により具体化する。
【実施例】
【0016】
〔実施例1〕
図1に基づいて本発明の実施例1を説明する。以後の説明において、特に断らない限り、各部材の位置および方向の特定は、各実施例を通して対応する図面の左右および上下方向に従う。
図1(a)に示す継足し用のラック7、8は互いに連結されるもので、ロングストロークのロボット走行や洗浄ライン搬送をはじめ各種の工作機械(図示せず)のように、長距離の輸送が必要とされる場合に使用される。この場合のラック7、8には、例えば円盤3、4の間に複数のピン5を設けたピン・ピニオン6が駆動用のピニオンとして用いられる。
【0017】
継足し用のラック7、8は所定の長さに設定されており、上部のピッチ線Pに沿ってラック歯7a、8aを一定のピッチ間隔Tで形成している。実施例1では、便宜上の観点から二個のラック7、8を示すが、ラックは複数個であり、ストロークの長尺化や使用状況などに応じて三個以上のラックが用いられる。
継足し用治具装置9は、板状の把持本体11と、把持本体11の左右端部に形成され、互いに同一方向に突出する突状前歯12および突状後歯13を突状歯として有する。把持本体11における突状前歯12と突状後歯13との中間位置には、中間突状歯14が突状前歯12および突状後歯13と同一方向に突出形成されている。
把持本体11における突状前歯12、突状後歯13および中間突状歯14の各突出方向Eとラック7、8の高さ方向Hとが、同一面G内に位置するように設定されている。
【0018】
突状前歯12、突状後歯13および中間突状歯14の各厚み寸法Mは、ラック歯7a、8aのピッチ間隔Tに応じた大きさに設定されている。突状前歯12の突出端部12a、突状後歯13の突出端部13aおよび中間突状歯14の突出端部14aは、ラック歯7a、8aの歯面に応じた形状になっており、円弧状の曲面部を有する。
突出端部12a、14a同士が左右に対応する面間距離J1は、突出端部14a、13a同士が左右に対応する面間距離J2に等しく設定されており、ラック歯7a、8aが有するピッチ間隔Tの整数倍となっている。把持本体11の厚み寸法R1は、ラック7、8の厚み寸法R2に応じた大きさに設定されている。
【0019】
隣接するラック7、8同士を連結するには、例えば細長梁状の基準直材15に沿ってラック7の一端部7bとラック8の一端部8bとを相互に近接させ、ラック歯7aの半歯面7cとラック歯8aの半歯面8cとを対向させる。
ついで、図1(b)に示すように、把持本体11を持ち、高さ方向Hに沿ってラック7、8の歯底7d、8dへ垂直方向に押し込む。これにより、中間突状歯14の突出端部14aが半歯面7c、8cに強く係合して噛合するとともに、突出端部12a(13a)がラック歯7a(8a)に強く係合して噛合する。これに伴い、ラック7、8は、半歯面7c、8cを一定のピッチ間隔Tに調整して、長手方向Nに沿って一直線状に並んで継足しされる。
【0020】
上記構成では、把持本体11の突状前歯12、突状後歯13および中間突状歯14の各突出方向Eとラック7、8の高さ方向Hとが、同一面G内に位置するようになっている。 このため、ラック7、8を継足す際に、把持本体11をラック歯7a、8aの歯底7d、8dに対して垂直方向に押し込む簡単な操作で突状前歯12、突状後歯13および中間突状歯14をラック歯7a、8a、半歯面7c、8cに素早くかつ確実に噛み合わせ、ラック歯7a、8a相互のピッチ間隔Tを所定どおり規制することができる。
【0021】
これにより、短時間で複数のラック7、8を一定のピッチ間隔Tで一直線状に並べることができる。この結果、ピンがラック歯に圧接する方向の回転モーメントが生じるように把持本体を回転付勢する従来と異なって、把持本体11の操作が円滑で容易になり、作業性に優れて使い勝手がよくなる。
とりわけ、中間突状歯14が、隣接するラック7、8の近接する相互の半歯面7c、8cに噛み合うため、隣接するラック7、8同士を単一操作により位置決めすることができる。すなわち、中間突状歯14が継足し合うラック7、8同士を位置決めする役割を果たすので、継足し合うラック7、8同士の位置調整を行う必要がなくなり、単一操作で継足し作業が終了して作業性が格段に向上する。
【0022】
〔実施例2〕
図2は本発明の実施例2を示す。実施例2が実施例1と異なるところは、基準直材15の代わりに、把持本体11の両側面に取付ける丈長な調整板16、17を設けたことである(図2参照)。
把持本体11は左右方向に貫通孔11aを有し、調整板16、17も左右方向の貫通孔11aに対応する取付穴16a、17aを形成している。
ボルト18aを調整板16の取付穴16a、把持本体11の貫通孔11aおよび調整板17の取付穴17aに通し、ナット19aに対して締付ける。
【0023】
これにより、調整板16、17の上部16b、17bが把持本体11に取付けられるとともに、下部16c、17cがラック7、8の両側面に当接し、ラック7、8が一直線状に並ぶように位置調整される。調整板16、17の各下端部に、内方に傾斜する面取り状の案内部16d、17dを形成し、調整板16、17をラック7、8の上端7e、8eに対して押込み方向にスライドさせ易くしている。
実施例2では、簡素な構造の調整板16、17により、把持本体11を安定させ、ラック7、8の傾きに注意を払うことなく、ラック7、8に対する調整板16、17の安定した押込み操作が可能となる。
【0024】
〔実施例3〕
図3は本発明の実施例3を示す。実施例3が実施例2と異なるところは、ボルト18aとナット19aの代わりに、蟻溝18と蟻ほぞ19を設けたことである。
把持本体11の両側面には、左右方向の蟻溝18がラック7、8の長手方向Nと交差する方向、例えば垂直方向に指向するように形成されている。調整板16、17の左右方向には、蟻溝18に対して摺動可能となるように嵌め込まれる蟻ほぞ19が形成されている(図3参照)。
【0025】
実施例3では、把持本体11の蟻溝18に調整板16、17の蟻ほぞ19を摺動可能に嵌め込むことにより、調整板16、17が把持本体11に取付けられるので、簡素な構造でコスト的に有利である。
実施例3においては、蟻溝18を把持本体11に設け、蟻ほぞ19を調整板16、17に設けたが、逆に蟻溝18を調整板16、17に設け、蟻ほぞ19を把持本体11に設けてもよい。
【0026】
〔実施例4〕
図4は本発明の実施例4を示す。実施例4が実施例2と異なるところは、ボルト18aとナット19aの代わりに、圧縮コイルスプリング20と引張コイルスプリング21を弾性部材として設けたことである。
把持本体11の両側面には、上部左右方向の穴部22および下部左右方向の穴部23が形成されている。圧縮コイルスプリング20の一端部は、上部左右方向の穴部22に収容固定され、他端部は調整板16(17)の内面に固定されている。引張コイルスプリング21の一端部は、下部左右方向の穴部23に収容固定され、他端部は調整板16(17)の内面に固定されている(図4参照)。
【0027】
すなわち、把持本体11と調整板16(17)との間において、ラック7、8に対して遠方側に圧縮コイルスプリング20を配し、ラック7、8に対して近接側に引張コイルスプリング21を配している。
実施例4では、ラック7、8の厚み寸法R2が把持本体11の厚み寸法R1よりも大きな場合、調整板16、17が圧縮コイルスプリング20を圧縮変形させるとともに、引張コイルスプリング21を引張変形させるので、調整板16、17がラック11の両側面に当接するようになる。
このため、圧縮コイルスプリング20および引張コイルスプリング21を用いることで、把持本体11よりも厚みの大きなラック7、8に調整板16、17を適用できるようになり汎用性が広がる。
【0028】
〔実施例5〕
図5(a)は本発明の実施例5を示す。実施例5が実施例4と異なるところは、圧縮コイルスプリング20および引張コイルスプリング21の代わりに螺子棒20A、21Aを設け、上部左右方向の穴部22および下部左右方向の穴部23の代わりに貫通孔22A、23Aを設けたことである。
調整板16、17には、上部の貫通孔22Aに対応する挿通孔16A、17Aおよび下部の貫通孔23Aに対応する挿通孔16B、17Bが設けられている。
【0029】
螺子棒20Aは、挿通孔16A、貫通孔22Aおよび挿通孔17Aに挿通されており、螺子棒21Aは、挿通孔16B、貫通孔23Aおよび挿通孔17Bに挿通されている。
螺子棒20Aの左右両端部には、圧縮コイルスプリング20Cを介してナット20Bが螺合され、螺子棒21Aの左右両端部には、圧縮コイルスプリング21Cを介してナット21Bが螺合されている。螺子棒20Aに対するナット20Bの螺進退により、圧縮コイルスプリング20Cの付勢力が調整され、螺子棒21Aに対するナット21Bの螺進退により、圧縮コイルスプリング21Cの付勢力が調整される。
圧縮コイルスプリング20C、21Cは弾性部材として機能し、図5(a)に矢印Y1、Y2で示すように、調整板16、17をラック7、8の両側面に密着状態で当接させるように付勢している。実施例5でも、実施例4と同様な効果が得られる。
【0030】
〔実施例6〕
図5(b)は本発明の実施例6を示す。実施例6が実施例5と異なるところは、圧縮コイルスプリング20C、21Cの代わりにワッシャ20D、21Dを設け、調整板16、17をポリウレタンやゴムなどの合成樹脂により形成したことである。
螺子棒20A、21Aに対するナット20B、21Bの締付け量により、ラック7、8の両側面に対する調整板16、17の弾接力を調整することができる{図5(b)の矢印K1、K2参照}。実施例6でも、実施例4と同様な効果が得られる。
【0031】
なお、合成樹脂には、一般のプラスチック材料が適用でき、ポリウレタンやゴムの他にポリアセタール、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)あるいはシンジオタクチックポリスチレン(SPS)などを適用してもよい。
【0032】
〔実施例7〕
図5(c)は本発明の実施例7を示す。実施例7が実施例5と異なるところは、螺子棒20A、21A、圧縮コイルスプリング20C、21Cおよびナット20B、21Bを省略し、調整板16、17を矩形の板ばねにより形成したことである。
調整板16は、把持本体11に上下のスペーサ16D、16Eを介して固定され、調整板17は、把持本体11に上下のスペーサ17D、17Eを介して固定されている。
【0033】
スペーサ16D、16E(17D、17E)の長さUを調節することにより、ラック7、8の両側面に対する調整板16、17の弾接力を調整することができる{図5(c)の矢印V1、V2参照}。調整板16、17の各下端部は、外方に拡開する案内部16f、17fを形成し、ラック7、8に対する押込み操作を容易にしている。実施例7でも、実施例4と同様な効果が得られる。
【0034】
〔実施例8〕
図6は本発明の実施例8を示す。実施例8が実施例1と異なるところは、基準直材15の代わりに、把持本体11の突状前歯12、突状後歯13および中間突状歯14の各両側面に、ラック7、8の両側面に対して当接する当接板部24、25、26を延設したことである(図6参照)。
【0035】
実施例8では、突状前歯12、突状後歯13および中間突状歯14の各両側面に当接板部24、25、26を設けるという簡素な構造で、ラック7、8を一直線状に並べて継足すことができる。しかも、ラック7、8に対する突状前歯12、突状後歯13および中間突状歯14の噛み合いを視覚的に確認し、ラック7、8のピッチ間隔Tを所定どおり確実に調整することができる。
【0036】
〔変形例〕
(a)実施例1〜8では、把持本体11に突状前歯12、突状後歯13および中間突状歯14を設けたが、中間突状歯14を省略し、突状前歯12と突状後歯13だけ設けてもよい。また、突状前歯12と突状後歯13との間に、中間突状歯14の代わりに複数の突状歯を設けてもよい。
(b)実施例1〜8における把持本体11に、二個の突状歯(突状前歯12、突状後歯13)を設けたが、突状歯は三個、四個あるいはそれ以上であってもよい。
【0037】
(c)突状前歯12、突状後歯13および中間突状歯14の各突出端部12a、13a、14aを磁性体により形成し、ラック歯7a、8b、半歯面7c、8cに対して吸着するように磁化してもよい。
(d)実施例8における当接板部24、25、26の各延設寸法Lは、ラック7、8の両側面に当接する長さであればよいが、ラック7、8の下端部7f、8fに到るまで作業性に合わせて長尺化してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の継足し治具装置では、複数のラックを継足す際に、把持本体をラック歯の歯底に対して垂直方向に押し込む簡単な操作で突状前歯、突状後歯および中間突状歯をラックに素早くかつ確実に噛み合わせ、短時間で複数のラックを一定のピッチ間隔で一直線状に並べることができる。これにより、ラックの継足し作業に、高い性能や効率化を求める需要者を喚起し、関連部品の流通を介して機械産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
6 ピン・ピニオン(ピニオン)
7、8 ラック
7a、8b ラック歯
7d、8d ラック歯の歯底
9 継足し用治具装置
11 把持本体
12 突状前歯(突状歯)
13 突状後歯(突状歯)
14 中間突状歯
16、17 調整板
18 蟻溝
19 蟻ほぞ
20、20C、21C 圧縮コイルスプリング(弾性部材)
21 引張コイルスプリング(弾性部材)
24〜26 当接板部
H ラックの高さ方向
T ラック歯のピッチ間隔
G 同一面
R1 把持本体の厚み寸法
R2 ラックの厚み寸法
N ラックの長手方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピニオンに噛合する複数のラックを長手方向に沿って一直線状に並べて継足す際に用いる継足し用治具装置であって、
前記複数のラックのうち、隣接する一方のラックが有するラック歯に噛合する突状前歯と他方のラックが有するラック歯に噛合する突状後歯から成る少なくとも二個の突状歯を備えた板状の把持本体を具備し、
前記突状歯の突出方向と前記ラックの高さ方向とが同一面内に位置するように設定されており、前記突状歯が前記ラック歯に噛み合うことにより、継足し合う前記ラック間に対向するように存する前記ラック歯同士のピッチ間隔を所定の位置に規制することを特徴とする継足し用治具装置。
【請求項2】
前記把持本体は、前記突状前歯と前記突状後歯との間に形成された中間突状歯を有し、前記突状前歯、前記突状後歯および前記中間突状歯の各突出方向は前記ラックの高さ方向と同一面内に位置するように設定されており、前記中間突状歯が、継足し合う前記ラック間に対向するように存する前記ラック歯同士に噛み合って位置決めすることを特徴とする請求項1に記載の継足し用治具装置。
【請求項3】
前記把持本体は、前記ラックの長手方向に沿う両側面に当接して、隣接する前記ラックが一直線状に並ぶように位置調整する調整板を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の継足し用治具装置。
【請求項4】
前記把持本体の両側面に形成され、前記ラックの長手方向と交差する方向に指向する蟻溝を有し、前記調整板は前記蟻溝に対して摺動可能となるように嵌め込まれた蟻ほぞを有することを特徴とする請求項3に記載の継足し用治具装置。
【請求項5】
前記把持本体と前記調整板との間において、前記ラックに対して近接方向で前記調整板を付勢して前記ラックに密着させるための弾性部材を用いることにより、前記把持本体よりも厚みの大きな前記ラックの両側面に前記調整板が当接するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の継足し用治具装置。
【請求項6】
前記把持本体の前記突状前歯、前記突状後歯および前記中間突状歯の各両側面において、前記ラックの両側面に対して当接する当接板部が延設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の継足し用治具装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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