説明

継電器

【課題】接点部電磁反発力による可動接点と固定接点間の開離をより確実に防止可能にする。
【解決手段】磁石26と対向する対向板部231を可動子23に設け、対向板部231を流れる電流と磁石26の磁束によって発生するローレンツ力が、可動接点25と固定接点14とを当接させる向きになるように構成し、可動子23の外表面のうち板厚方向に対して垂直な面を板厚垂直面とし、磁石26の外表面のうち磁極側の端面を磁極端面としたとき、磁極端面26bを対向板部231における板厚垂直面231aに対して平行に対向させることにより、対向板部231を流れる全ての電流は、磁場内の磁束密度が大である領域を流れるため、大きなローレンツ力を発生させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動接点と固定接点とを接離させて電気回路を開閉する継電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の継電器は、固定接点を有する固定接点保持部材を位置決め固定し、可動接点が装着された1つの可動子を移動させて、可動接点と固定接点とを接離させることにより、電気回路を開閉するようになっている。より詳細には、コイルの電磁力により吸引される可動部材、固定接点と可動接点とが当接する向きに可動子を付勢する接圧ばね、固定接点と可動接点とが離れる向きに可動部材を介して可動子を付勢する復帰ばね等を備えている。
【0003】
そして、コイルに通電されると、電磁力により可動部材は可動子から遠ざかる向きに駆動され、可動子が接圧ばねに付勢されて移動して固定接点と可動接点とが当接するとともに、可動部材と可動子とが離れるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3321963号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の継電器は、可動接点と固定接点の接触部において、可動接点と固定接点とが対向する部位で電流が逆向きに流れることにより電磁反発力が発生する(以下、この電磁反発力を接点部電磁反発力という)。その接点部電磁反発力は、可動接点と固定接点間を開離させるように作用する。そこで、接点部電磁反発力により可動接点と固定接点間が開離しないように、接圧ばねのばね力を設定している。
【0006】
しかしながら、流れる電流が多くなるほど接点部電磁反発力も大きくなるため、電流値が増加すればそれに応じて接圧ばねのばね力を大きくすることになる。その結果、接圧ばねの体格が大きくなり、ひいては電磁継電器の体格が大きくなってしまうという問題が発生する。
【0007】
そこで、本出願人は、特願2010−165098(以下先願例という)にて、接点部電磁反発力に対抗する向きのローレンツ力により可動接点と固定接点間の開離を発生し難くした継電器を提案している。
【0008】
具体的には、先願例では、図8に示すように、可動接点25を有する板状の可動子23の側面(すなわち外周縁部)に対向させて、磁石26を配置している。磁石26のNS極を結ぶ線は可動子の移動方向(図8において紙面垂直方向)に対して垂直になっている。可動子23のうち可動接点近傍(すなわち、磁石26の近傍)を流れる電流の向きは、磁石のNS極を結ぶ線に対して略垂直であり、且つ可動子23の移動方向に対して垂直になっている。これにより、可動接点25と固定接点が当接して可動子23内を電流が流れる際には、接点部電磁反発力に対抗する向きのローレンツ力を可動子23に作用させるようにしている。
【0009】
ここで、ローレンツ力は、電流密度や磁束密度が大きくなるほど大となる。しかしながら、先願例のように磁石26を可動子23の側面に対向させた構成では、可動接点近傍では電流は磁石に近い側(図8のJ部近傍)よりも磁石から離れた側(図8のK部近傍)を主に流れるため、換言すると、磁束密度が大である磁石に近い側(J部近傍)の電流密度は小さいため、十分なローレンツ力が発生しない。このため、接点部電磁反発力が大きくなる大電流通電時に、可動接点と固定接点間の開離が発生する虞があった。
【0010】
本発明は上記点に鑑みて、接点部電磁反発力による可動接点と固定接点間の開離をより確実に防止可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、可動接点(25)を有する板状の可動子(23)の移動により可動接点と固定接点(14)とを接離させて電気回路を開閉する継電器において、可動子に近接して配置された磁石(26)を備え、可動子は、可動接点と固定接点とが当接した状態のときに磁石と対向する対向板部(231、235、236、237、238)を備え、可動子の外表面のうち板厚方向に対して垂直な面を板厚垂直面とし、磁石の外表面のうち磁極側の端面を磁極端面としたとき、磁石は、NS極を結ぶ線が可動子の移動方向に対して垂直であり、磁極端面が対向板部の板厚垂直面に対して平行であり、可動接点と固定接点とが当接した状態のときに磁極端面が板厚垂直面に対向するように配置され、対向板部を流れる電流と磁石の磁束によって発生するローレンツ力が、可動接点と固定接点とを当接させる向きになるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
これによると、磁極端面を対向板部(231、235、236、237、238)における板厚垂直面に対して平行に対向させて配置したことにより、対向板部を流れる全ての電流は、磁場内の磁束密度が大である領域を流れるため、大きなローレンツ力を発生させることができ、接点部電磁反発力による可動接点(25)と固定接点(14)間の開離をより確実に防止することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の継電器において、可動子(23)は、板材を折り曲げて形成することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明のように、請求項2に記載の継電器において、可動子(23)は、可動接点(25)が固定された接点取付板部(230)を備え、対向板部(231、235、236、237、238)を、接点取付板部に対して垂直にすることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明のように、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の継電器において、可動接点(25)、磁石(26)および対向板部(231)をそれぞれ2つ設け、2つの可動接点の並び方向を可動接点並び方向としたとき、2つの可動接点、2つの磁石および2つの対向板部を可動接点並び方向に沿って直列に配置し、2つの可動接点、2つの磁石および2つの対向板部のうち、2つの可動接点を可動接点並び方向の最も内側に配置し、2つの磁石を可動接点並び方向の最も外側に配置することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の継電器において、対向板部(231)を流れる電流の方向を対向板部電流方向としたとき、可動子(23)は、可動接点(25)が固定されるとともに、可動子の移動方向に対して垂直な接点取付板部(230)と、接点取付板部における対向板部電流方向の一端側から可動子の移動方向に延びる中継板部(232)とを備え、対向板部は、中継板部における磁石(26)に近い側の端部から対向板部電流方向に延びていることを特徴とする。
【0017】
これによると、対向板部(231)を流れる電流の向きが可動子(23)の移動方向に対して垂直になるような可動子を得ることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明のように、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の継電器において、可動接点(25)を2つ設け、2つの可動接点の並び方向を可動接点並び方向としたとき、対向板部(236、237、238)を可動接点並び方向に延ばし、磁石(26)を可動接点並び方向に対して垂直方向に配置することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明のように、請求項6に記載の継電器において、対向板部(237)を1つ設け、2つの可動接点(25)および1つの対向板部を、可動接点並び方向に沿って直列に配置するとともに、2つの可動接点を対向板部の両端側に配置することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の継電器において、磁石(26)は、2つ設けられ、対向板部(237)を挟むように配置されていることを特徴とする。
【0021】
これによると、対向板部(237)を流れる電流は2つの磁石(26)の磁場内を流れるため、大きなローレンツ力を発生させることができる。
【0022】
請求項9に記載の発明では、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の継電器において、通電時に電磁力を発生するコイルと、コイルの電磁力により吸引される可動部材(19、21、22)と、固定接点(14)と可動接点(25)とが当接する向きに可動子(23)を付勢する接圧ばね(24)とを備え、コイルの電磁力により可動部材が吸引されたときには、可動部材が可動子から離れる向きに移動するとともに、可動子が接圧ばねに付勢されて固定接点と可動接点とが当接するように構成されていることを特徴とする。
【0023】
これによると、大きなローレンツ力を発生させて、接点部電磁反発力による可動接点(25)と固定接点(14)間の開離を防止することができるため、接圧ばね(24)のばね力を小さく設定することが可能になり、接圧ばねの小型化、ひいては継電器の小型化を図ることができる。
【0024】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る継電器を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1の可動子23および永久磁石26を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る継電器を示す平面図である。
【図5】第2実施形態に係る継電器の変形例を示す可動子23および永久磁石26の図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る継電器における可動子23および永久磁石26の図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る継電器における可動子23および永久磁石26の図である。
【図8】先願例の継電器を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0027】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る継電器を示す平面図であり、図2のカバー12を外した状態を示している。図2は図1のA−A線に沿う断面図、図3(a)は図1の可動子23および永久磁石26の平面図、図3(b)は正面図、図3(c)は図3(a)のB−B線に沿う断面図である。
【0028】
図1、図2に示すように、本実施形態に係る継電器は、略直方体で内部に収容空間10を有する樹脂製のベース11を備え、収容空間10の一端側開口部を塞ぐようにして樹脂製のカバー12がベース11に結合されている。
【0029】
ベース11には、導電金属製の2つの固定接点保持部材13が固定されている。固定接点保持部材13は、一端側が収容空間10内に位置し、他端側が外部空間に突出している。なお、以下の説明では必要に応じて一方を第1固定接点保持部材13a、他方を第2固定接点保持部材13bという。
【0030】
固定接点保持部材13における収容空間10側の端部には、導電金属製の固定接点14がかしめ固定されている。固定接点保持部材13における外部空間側には、外部ハーネス(図示せず)と接続される負荷回路端子131が形成されている。そして、第1固定接点保持部材13aの負荷回路端子131は、外部ハーネスを介して電源(図示せず)に接続され、第2固定接点保持部材13bの負荷回路端子131は、外部ハーネスを介して電気負荷(図示せず)に接続される。
【0031】
通電時に電磁力を発生する円筒状のコイル15が、収容空間10の他端側開口部を塞ぐようにしてベース11に結合されている。このコイル15は、外部ハーネスを介してECU(図示せず)に接続されており、その外部ハーネスを介してコイル15に通電されるようになっている。
【0032】
ベース11とコイル15との間には、磁性体金属材料よりなる鍔付き円筒状のプレート16が配置されており、コイル15の反ベース側および外周側には、磁性体金属材料よりなるヨーク17が配置されている。プレート16およびヨーク17はベース11に固定されている。
【0033】
コイル15の内周側空間には、磁性体金属材料よりなる固定コア18が配置され、固定コア18はヨーク17に保持されている。
【0034】
コイル15の内周側空間内において、固定コア18に対向する位置には、磁性体金属製の可動コア19が配置されている。可動コア19はプレート16に摺動自在に保持されている。
【0035】
また、固定コア18と可動コア19との間には、可動コア19を反固定コア側に付勢する復帰ばね20が配置されている。そして、コイル通電時には、可動コア19は復帰ばね20に抗して固定コア18側に吸引される。
【0036】
なお、プレート16、ヨーク17、固定コア18、および可動コア19は、コイル15により誘起された磁束の磁路を構成する。
【0037】
可動コア19には、金属製のシャフト21が貫通して固定されている。シャフト21の一端は反固定コア側に向かって延びており、このシャフト21の一端側の端部には、電気絶縁性に富む樹脂よりなる絶縁碍子22が嵌合して固定されている。なお、可動コア19、シャフト21、および絶縁碍子22は、本発明の可動部材を構成する。
【0038】
収容空間10には、導電金属製の板状の可動子23が配置されている。この可動子23とカバー12との間には、可動子23を固定接点保持部材13側に付勢する接圧ばね24が配置されている。
【0039】
可動子23には、固定接点14に対向する位置に導電金属製の可動接点25がかしめ固定されている。そして、可動コア19等が電磁力により固定コア18側に駆動されたときには、固定接点14と可動接点25とが当接するようになっている。
【0040】
可動子23の外周側方には、2つの永久磁石26が可動子23に近接して配置されている。本実施形態では、永久磁石26は、可動子23側がS極であり、反可動子側がN極である。
【0041】
次に、可動子23および永久磁石26の詳細な構成や配置等について、図3に基づいて説明する。
【0042】
なお、図3中の矢印Cは、可動子23内の電流の流れを示している。また、図3中の矢印Dは、磁束の向きを示している。
【0043】
ここで、本明細書では、以下、可動子23の外表面のうち板厚方向に対して垂直な面を板厚垂直面といい、永久磁石26の外表面のうち磁極側の端面を磁極端面という。因みに、永久磁石26においては、N極側の端面26a、およびS極側の端面26bが、磁極端面である。また、2つの可動接点25の並び方向を可動接点並び方向という。
【0044】
可動子23は、板材を折り曲げて形成されており、可動接点25が固定された2つの接点取付板部230、可動接点並び方向の最も外側に位置する2つの外側板部231、接点取付板部230と外側板部231とを繋ぐ2つの中継板部232、2つの外側板部231を繋ぐ1つの連結板部233、接圧ばね24を受ける1つのばね受け板部234を備えている。なお、図3(a)のように平面視したときの可動子23の形状は、直線Eを対称の軸とする線対称である。また、本実施形態における外側板部231は、本発明の対向板部に相当する。
【0045】
接点取付板部230は、その板厚垂直面が、可動子23の移動方向(図3(a)において紙面垂直方向)に対して垂直になっている。
【0046】
外側板部231を流れる電流の流れ方向を外側板部電流方向(図3(a)において紙面上下方向)としたとき、中継板部232は、接点取付板部230における外側板部電流方向の一端側から可動子23の移動方向に延びている。
【0047】
外側板部231は、中継板部232における永久磁石26に近い側の端部から外側板部電流方向に延びており、接点取付板部230に対して垂直になっている。また、外側板部231を流れる電流の向きは、永久磁石26のNS極を結ぶ線および可動子23の移動方向に対してともに垂直になるように設定されている。因みに、外側板部231においては、永久磁石26に対向する面231a、および反永久磁石側の面231bが、板厚垂直面である。
【0048】
連結板部233は、2つの外側板部231における反中継板部側の端部同士を繋いでいる。また、ばね受け板部234は、連結板部233における長手方向中間部に位置し、その板厚垂直面が可動子23の移動方向に対して垂直になっている。
【0049】
2つの可動接点25、2つの永久磁石26および2つの外側板部231は、可動接点並び方向に沿って直列に配置されている。より詳細には、2つの可動接点25、2つの永久磁石26および2つの外側板部231のうち、2つの可動接点25が可動接点並び方向の最も内側に配置され、2つの永久磁石26が可動接点並び方向の最も外側に配置されている。
【0050】
永久磁石26は、可動子23に近接して配置されており、より詳細には、可動子23のうち外側板部231に最も近接している。そして、永久磁石26は、NS極を結ぶ線(図3(a)において紙面左右方向)が可動子23の移動方向に対して垂直になるように配置されるとともに、S極側の磁極端面26bが外側板部231における板厚垂直面231aに対して平行に且つ対向して配置されている。
【0051】
また、外側板部231を流れる電流と永久磁石26の磁束によって発生するローレンツ力が、可動接点25と固定接点14とを当接させる向きになるように、外側板部231を流れる電流の向きや永久磁石26の磁束の向きが設定されている。
【0052】
なお、可動接点25と固定接点14とが当接した状態のときには、外側板部231における板厚垂直面231aのほぼ全域が、永久磁石26における磁極端面26bと対向している。一方、可動接点25と固定接点14とが開離した状態のときには、上記のローレンツ力は必要ではないため、外側板部231における板厚垂直面231aと永久磁石26における磁極端面26bは対向していなくてもよい(図2参照)。
【0053】
次に、本実施形態に係る継電器の作動を説明する。まず、コイル15に通電すると、可動コア19、シャフト21、および絶縁碍子22が、電磁力により復帰ばね20に抗して固定コア18側に吸引され、可動子23は接圧ばね24に付勢されて可動コア19等に追従して移動する。これにより、可動接点25が対向する固定接点14に当接し、2つの負荷回路端子131間が導通し、可動子23等を介して電流が流れる。因みに、可動接点25が固定接点14に当接した後、さらに可動コア19等が固定コア18側に向かって移動し、絶縁碍子22と可動子23は離れる。
【0054】
2つの負荷回路端子131間が導通して可動子23に電流が流れる状態では、可動子23にローレンツ力が作用する。そのローレンツ力は、可動接点25と固定接点14とを当接させる向きの力となるため、すなわち接点部電磁反発力に対抗する力となるため、接点部電磁反発力による可動接点25と固定接点14間の開離が発生し難くなる。
【0055】
ここで、永久磁石26における磁極端面26bが、外側板部231における板厚垂直面231aに対して平行に且つ対向して近接配置されているため、外側板部231を流れる全ての電流は、磁場内の磁束密度が大である領域を流れることになる。したがって、大きなローレンツ力を発生させることができ、接点部電磁反発力による可動接点25と固定接点14間の開離をより確実に防止することができる。
【0056】
一方、コイル15への通電が遮断されると、復帰ばね20により接圧ばね24に抗して可動コア19等や可動子23が反固定コア側に付勢される。これにより、可動接点25が固定接点14から離され、2つの負荷回路端子131間が遮断される。
【0057】
このとき、第1可動接点25が第1固定接点14から離れる際に発生するアークに対して永久磁石26によりローレンツ力が作用し、このローレンツ力によりアークが引き伸ばされてアークが遮断される。
【0058】
本実施形態によると、大きなローレンツ力を発生させて、接点部電磁反発力による可動接点25と固定接点14間の開離をより確実に防止することができる。また、それに伴い、接圧ばね24のばね力を小さく設定することが可能になり、接圧ばね24の小型化、ひいては継電器の小型化を図ることができる。
【0059】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図4は本発明の第2実施形態に係る継電器を示す平面図であり、カバーを外した状態を示している。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0060】
図4に示すように、本実施形態では、第1固定接点保持部材13aの位置が変更されており、より詳細には、第1固定接点保持部材13aの負荷回路端子131と、第2固定接点保持部材13bの負荷回路端子131は、ベース11の対角位置にて外部に突出している。
【0061】
また、この第1固定接点保持部材13aの位置変更に対応して、可動子23の形状が変更されており、図4のように平面視したときの可動子23の形状は、点Fを中心とする点対称の形状に変更されている。
【0062】
具体的には、連結板部は、第1固定接点保持部材13aに近い側の第1連結板部235と、第2固定接点保持部材13bに近い側の第2連結板部236とに分割されている。そして、第1連結板部235および第2連結板部236の一端側は外側板部231に連結されており、第1連結板部235の他端側と第2連結板部236の他端側がばね受け板部234にて連結されている。
【0063】
この可動子23の形状変更により、第1固定接点保持部材13aに近い側の外側板部231における電流の流れ向きCが変わるため、第1固定接点保持部材13aに近い側の永久磁石26におけるN極側の磁極端面26aを外側板部231に対向させて、第1固定接点保持部材13aに近い側の永久磁石26の磁束の向きDを変更している。
【0064】
これにより、第1固定接点保持部材13aに近い側の外側板部231を流れる電流と第1固定接点保持部材13aに近い側の永久磁石26の磁束によって発生するローレンツ力が、可動接点25と固定接点14とを当接させる向きになる。
【0065】
そして、本実施形態においては、永久磁石26における磁極端面26a、26bが、外側板部231における板厚垂直面231aに対して平行に且つ対向して近接配置されているため、外側板部231を流れる全ての電流は、磁場内の磁束密度が大である領域を流れることになる。したがって、大きなローレンツ力を発生させることができ、接点部電磁反発力による可動接点25と固定接点14間の開離をより確実に防止することができる。
【0066】
ここで、図5(a)は本実施形態に係る継電器の変形例を示す可動子23および永久磁石26の平面図、図5(b)は図5(a)のG−G線に沿う断面図である。
【0067】
本実施形態においては、2つの永久磁石26および2つの外側板部231を可動接点並び方向に沿って直列に配置し、永久磁石26と外側板部231とを対向させたが、図5に示す変型例のように、永久磁石26を可動接点並び方向に対して垂直方向に配置し、永久磁石26と第1連結板部235および第2連結板部236とを対向させてもよい。
【0068】
より詳細には、永久磁石26は、NS極を結ぶ線(図5(a)において紙面上下方向)が可動子23の移動方向に対して垂直になるように配置される。また、第1連結板部235とこの第1連結板部235に対向する永久磁石26の磁極端面26aとが、平行且つ対向している。さらに、第2連結板部236とこの第2連結板部236に対向する永久磁石26の磁極端面26bとが、平行且つ対向している。なお、この変形例においては、第1連結板部235および第2連結板部236が、本発明の対向板部に相当する。
【0069】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。図6(a)は本発明の第3実施形態に係る継電器における可動子23および永久磁石26の平面図、図6(b)は図6(a)のH−H線に沿う断面図である。
【0070】
本実施形態は、可動子23の構成および永久磁石26の位置を変更したもので、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0071】
図6に示すように、可動子23は、可動接点25が固定された2つの接点取付板部230が、1つの連結板部237によって連結されている。2つの可動接点25、2つの接点取付板部230および連結板部237は、可動接点並び方向に沿って直列に配置されるとともに、2つの可動接点25および2つの接点取付板部230が、連結板部237の両端側に配置されている。
【0072】
連結板部237は、その板厚垂直面が、可動子23の移動方向(図6(a)において紙面垂直方向)および可動接点並び方向に対してともに平行になっている。なお、本実施形態における連結板部237は、本発明の対向板部に相当する。
【0073】
永久磁石26は、連結板部237に対向し且つ近接しており、連結板部237を挟むようにして配置されている。
【0074】
そして、連結板部237を流れる電流と永久磁石26の磁束によって発生するローレンツ力が、可動接点25と固定接点14とを当接させる向きになるように、連結板部237を流れる電流の向きや永久磁石26の磁束の向きが設定されている。
【0075】
具体的には、永久磁石26は、NS極を結ぶ線(図6(a)において紙面上下方向)が可動子23の移動方向に対して垂直になるように配置されている。また、一方の永久磁石26は、N極側の磁極端面26aが連結板部237における板厚垂直面に対して平行に且つ対向して配置され、他方の永久磁石26は、S極側の磁極端面26bが連結板部237における板厚垂直面に対して平行に且つ対向して配置されている。
【0076】
そして、本実施形態においては、永久磁石26における磁極端面26a、26bが、連結板部237における板厚垂直面に対して平行に且つ対向して近接配置されているため、連結板部237を流れる全ての電流は、磁場内の磁束密度が大である領域を流れることになる。したがって、大きなローレンツ力を発生させることができ、接点部電磁反発力による可動接点25と固定接点14間の開離をより確実に防止することができる。
【0077】
また、連結板部237は2つの永久磁石26に挟まれていて、連結板部237を流れる電流は2つの永久磁石26の磁場内を流れるため、大きなローレンツ力を発生させることができる。
【0078】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。図7(a)は本発明の第4実施形態に係る継電器における可動子23および永久磁石26の平面図、図7(b)は正面図である。
【0079】
本実施形態は、可動子23の構成および永久磁石26の位置を変更したもので、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0080】
図7に示すように、可動子23は、可動接点25が固定された2つの接点取付板部230が、可動接点並び方向に沿って長く延びる1つの連結板部238によって連結されている。
【0081】
そして、2つの接点取付板部230は、連結板部238における長手方向の両端側に配置されている。また、連結板部238は、2つの接点取付板部230における可動接点並び方向の最外部位置まで延びている。
【0082】
連結板部238は、その板厚垂直面が、可動子23の移動方向(図7(a)において紙面垂直方向)および可動接点並び方向に対してともに平行になっている。なお、本実施形態における連結板部238は、本発明の対向板部に相当する。
【0083】
永久磁石26は、連結板部238に対向し且つ近接しており、連結板部238における一方の板厚垂直面側のみに配置されている。
【0084】
そして、連結板部238を流れる電流と永久磁石26の磁束によって発生するローレンツ力が、可動接点25と固定接点14とを当接させる向きになるように、連結板部238を流れる電流の向きや永久磁石26の磁束の向きが設定されている。
【0085】
具体的には、永久磁石26は、NS極を結ぶ線(図7(a)において紙面上下方向)が可動子23の移動方向に対して垂直になるように配置されるとともに、S極側の磁極端面26bが連結板部238における板厚垂直面に対して平行に且つ対向して配置されている。
【0086】
そして、本実施形態においては、永久磁石26における磁極端面26bが、連結板部238における板厚垂直面に対して平行に且つ対向して近接配置されているため、連結板部238を流れる全ての電流は、磁場内の磁束密度が大である領域を流れることになる。したがって、大きなローレンツ力を発生させることができ、接点部電磁反発力による可動接点25と固定接点14間の開離をより確実に防止することができる。
【0087】
また、可動子23は、その形状がシンプルであるため作りやすい。また、連結板部238は、2つの接点取付板部230における可動接点並び方向の最外部位置まで延びているため、大きな永久磁石26を採用しやすくなり、大きなローレンツ力を発生させることができる。
【0088】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、コイル15の電磁力により可動コア19等を固定コア18側に吸引するようにしたが、コイル15以外の駆動手段によって可動コア19等を固定コア18側に駆動するようにしてもよい。
【0089】
また、上記各実施形態では、固定接点保持部材13に、別部材の固定接点14をかしめ固定したが、固定接点保持部材13に、可動子23側に向かって突出する突起部を例えばプレス加工にて形成し、その突起部を固定接点としてもよい。
【0090】
同様に、上記各実施形態では、可動子23に、別部材の可動接点25をかしめ固定したが、可動子23に、固定接点保持部材13側に向かって突出する突起部を例えばプレス加工にて形成し、その突起部を可動接点としてもよい。
【0091】
上記各実施形態は、実施可能な範囲で任意に組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0092】
14 固定接点
23 可動子
25 可動接点
26 磁石
231 対向板部
236 対向板部
237 対向板部
238 対向板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動接点(25)を有する板状の可動子(23)の移動により前記可動接点と固定接点(14)とを接離させて電気回路を開閉する継電器において、
前記可動子に近接して配置された磁石(26)を備え、
前記可動子は、前記可動接点と前記固定接点とが当接した状態のときに前記磁石と対向する対向板部(231、235、236、237、238)を備え、
前記可動子の外表面のうち板厚方向に対して垂直な面を板厚垂直面とし、前記磁石の外表面のうち磁極側の端面を磁極端面としたとき、
前記磁石は、NS極を結ぶ線が前記可動子の移動方向に対して垂直であり、前記磁極端面が前記対向板部の前記板厚垂直面に対して平行であり、前記可動接点と前記固定接点とが当接した状態のときに前記磁極端面が前記板厚垂直面に対向するように配置され、
前記対向板部を流れる電流と前記磁石の磁束によって発生するローレンツ力が、前記可動接点と前記固定接点とを当接させる向きになるように構成されていることを特徴とする継電器。
【請求項2】
前記可動子(23)は、板材を折り曲げて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の継電器。
【請求項3】
前記可動子(23)は、前記可動接点(25)が固定された接点取付板部(230)を備え、
前記対向板部(231、235、236、237、238)は、前記接点取付板部に対して垂直になっていることを特徴とする請求項2に記載の継電器。
【請求項4】
前記可動接点(25)、前記磁石(26)および前記対向板部(231)はそれぞれ2つ設けられ、
2つの前記可動接点の並び方向を可動接点並び方向としたとき、
2つの前記可動接点、2つの前記磁石および2つの前記対向板部は、前記可動接点並び方向に沿って直列に配置され、
2つの前記可動接点、2つの前記磁石および2つの前記対向板部のうち、2つの前記可動接点が前記可動接点並び方向の最も内側に配置され、2つの前記磁石が前記可動接点並び方向の最も外側に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の継電器。
【請求項5】
前記対向板部(231)を流れる電流の方向を対向板部電流方向としたとき、
前記可動子(23)は、前記可動接点(25)が固定されるとともに、前記可動子の移動方向に対して垂直な接点取付板部(230)と、前記接点取付板部における前記対向板部電流方向の一端側から前記可動子の移動方向に延びる中継板部(232)とを備え、
前記対向板部は、前記中継板部における前記磁石(26)に近い側の端部から前記対向板部電流方向に延びていることを特徴とする請求項4に記載の継電器。
【請求項6】
前記可動接点(25)は2つ設けられ、
2つの前記可動接点の並び方向を可動接点並び方向としたとき、
前記対向板部(236、237、238)は、前記可動接点並び方向に延びており、
前記磁石(26)は、前記可動接点並び方向に対して垂直方向に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の継電器。
【請求項7】
前記対向板部(237)は1つ設けられ、
2つの前記可動接点(25)および1つの前記対向板部は、前記可動接点並び方向に沿って直列に配置されるとともに、2つの前記可動接点が前記対向板部の両端側に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の継電器。
【請求項8】
前記磁石(26)は、2つ設けられ、前記対向板部(237)を挟むように配置されていることを特徴とする請求項7に記載の継電器。
【請求項9】
通電時に電磁力を発生するコイルと、
前記コイルの電磁力により吸引される可動部材(19、21、22)と、
前記固定接点(14)と前記可動接点(25)とが当接する向きに前記可動子(23)を付勢する接圧ばね(24)とを備え、
前記コイルの電磁力により前記可動部材が吸引されたときには、前記可動部材が前記可動子から離れる向きに移動するとともに、前記可動子が前記接圧ばねに付勢されて前記固定接点と前記可動接点とが当接するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の継電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−256482(P2012−256482A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128273(P2011−128273)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(390001812)アンデン株式会社 (97)