網膜下に送達するための持続放出インプラント
本発明は、眼の治療、具体的には眼の障害及び疾患を有する哺乳動物の眼の治療のための持続放出インプラント及び方法に関する。本明細書中に記載されるインプラント及び方法を用いることによって、1以上の生物活性剤の送達が、所望の治療部位、具体的には脈絡膜及び網膜に局在化され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「網膜疾患を治療及び/又は予防するための生物活性剤を網膜下に投与するための脈絡膜及び網膜用の持続送達装置並びに方法」と題する、2005年4月8日出願の米国仮出願シリアル第60/669,701号の利益を主張し、これは、参照により本明細書中に全体として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、眼、具体的には、眼の障害又は疾患を有する哺乳動物の眼を治療するための持続放出インプラント及び方法に関する。より具体的には、本発明は、1以上のインプラントの使用によって、網膜下に1以上の生物活性剤を投与するためのインプラント及び方法に関する。本明細書中に記載したインプラント及び方法を使用することによって、1以上の生物活性剤の送達は、所望の治療部位、具体的には、脈絡膜及び網膜に位置することができる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
哺乳動物の眼の視力を脅かす障害又は疾患が多数存在し、限定されないが、網膜、網膜色素上皮(RPE:retinal pigment epithelium)及び脈絡膜の疾患が含まれる。このような視力を脅かす疾患には、例えば、眼球の新生血管形成、眼球の炎症及び網膜の変性が含まれる。これらの疾患状態の具体例は、糖尿病性網膜症、慢性緑内障、網膜剥離、鎌状赤血球網膜症、加齢性黄斑変性症、網膜新生血管形成、網膜下新生血管形成;虹彩ルベオーシス炎症性疾患、慢性後部及び汎ブドウ膜炎、新生物、網膜芽腫、偽網膜膠腫、血管新生緑内障;併用した硝子体茎切除及び水晶体切除後に生じる新生血管形成、血管疾患、網膜虚血、脈絡膜血管機能不全、脈絡膜血栓症、視神経の新生血管形成、糖尿病性黄斑浮腫、類嚢胞黄斑部浮腫、黄斑浮腫、網膜色素変性症、網膜静脈閉塞、増殖性硝子体網膜症、網膜色素線条、及び網膜動脈閉塞、並びに眼の穿通又は眼外傷による新生血管形成を含む。
【0004】
例えば、加齢性黄斑変性症(AMD:age−related macular degeneration)は、米国において、50歳以上の白人における不可逆的であって重篤な中心視の喪失の主要な原因である。1990年の米国の国勢調査によると、65歳を超えるおよそ750,000人が、AMDによる一方又は両方の眼における重篤な視力障害と推定されている。また、AMD症例の数は、1970年の270万人から2030年までに750万人に増加することが予測されている。
【0005】
概略でAMD症例の80%が、新生血管状態を伴わず、効果的な治療がない。新生血管形成を伴う残りの症例については、現在利用できる治療は次善である。おろらく、最も良く知られた療法は、光線力学療法(PDT:photodynamic therapy)であるが、しかしながら、この療法は、眼科及び財政投資共同体の療法において重要な意向を受けている一方で、新生血管のAMD症例のたった約20パーセントに有用である。さらに、この特定の療法は、簡単でかつ費用のかからない処置ではない。この手法は、一般的に、少なくとも2年間、3ヶ月ごとに繰り返すことが必要であり、およそ概算して総費用12,250ドルかかる。
【0006】
数多くの血管形成阻害剤が、現在、AMDの治療用に調査されている。例えば、サリドマイドは、強力な血管形成阻害剤であることが知られている。しかしながら、その全身性副作用には、末梢性ニューロパシー、中枢神経系抑制、及び胎児毒性が含まれる。さらに、これらの全身性副作用は、網膜下の新生血管形成の治療に対して患者に投与される投与量を制限している。老齢患者における血管形成の全身性阻害はまた、中枢神経の阻止並びに心虚血事象における役割を有する側副循環の進行に干渉し得る。
【0007】
多くの技術又は方法論は、広範な眼の障害又は疾患を治療するために、下記に記載される哺乳動物の眼を構成する種々の組織又は構造に薬物を送達するように開発されている。しかしながら、所望の治療効果又は医療効果を達成するために哺乳動物の眼、とりわけ網膜及び/又は脈絡膜に薬物、タンパク質等を送達することは、やりがいのあることが示され、その大部分は、眼及びその成分の配置、精巧さ及び/又は振る舞いによる。眼の組織への薬物の送達に関する種々の従来の方法又は技術の簡単な説明及びそれらの欠点を下記に記載する。
【0008】
眼以外の部位での薬物の経口摂取又は薬物の注入は、薬物を全身に与える:しかしながら、このような全身投与は、特異的に眼に対して薬物の効果的なレベルを提供しない。網膜、後部管、及び視神経を含む多くの眼科疾患では、薬物の十分なレベルが、投与の経口又は非経口経路によって達成及び維持され得ない。このように、更なるしかも繰り返えされる薬物の投与は、薬物の所望の又は十分なレベルに到達するために必要であろう。しかしながら、このような薬物のこのような更なるしかも繰り返される投与は、望ましくない全身性の毒性を生じるかもしれない。
【0009】
眼科状態はまた、液体又は軟膏形態で眼に直接的に適用される薬物を用いて治療されている。しかしながら、この投与経路(即ち、局所投与)は、眼の表面に関する問題、及び例えば、結膜炎のような眼の角膜及び全部に関する疾患を治療するのに最も有効である。さらに、局所的の眼への液滴は、眼から鼻涙管を通って全身循環へと排出され、さらに、薬剤を希釈し、そして、望ましくない全身性の副作用の危険に晒す。さらに、局所的な眼の液滴における薬物の送達はまた、薬物が角膜又は強膜を容易に横切ることができず、硝子体、網膜、又は他の網膜下の構造、例えば、網膜色素上皮(「RPE」)又は脈絡膜の血管系に提供することができないため、利用が制限され、及び/又は非常に不安定であり、したがって、局所送達用に容易に調合されない。しかも、データはまた、最大85%の局所的に適用される薬剤が眼のまばたきの機構/反射によって除去されることは珍しいことではないことを示す。
【0010】
局所的な挿入による眼への薬物の直接的な送達はまた試みられている;しかしながら、この方法は好ましくない。このような局所的な挿入は、患者自らの投与を要求し、つまり、眼への挿入及び除去の教育を必要とする。その結果として、この技術は、年齢に関したように見えるある種の眼の疾患(例えば、年齢に関連した黄斑変性症)に特に影響を受け易い高齢者の患者に対して問題となり得るある程度の手先の器用さを要求する。また、多くの場合、このような局所的挿入は、眼の刺激を引き起こすかもしれず、このような挿入は、まぶたの弛緩による不注意により喪失しやすい。さらに、これらの装置は、角膜及び前房にのみ薬物源を提供し、つまり、局所的な眼の液滴又は軟膏に優る有意な薬理学的な利点を提供しない。つまり、このような装置は、硝子体及び眼の後部に位置した組織への有効な薬物源を提供するための限定された効用を有する。
【0011】
結果として、後区又は眼底における眼の障害若しくは疾患を治療するための最良の方法は、薬物の硝子体内送達を伴う。硝子体内送達のためのこのような技術の1つは、米国特許第5,770,589号に記載されるように、硝子体へ直接的に薬物若しくは薬物を含有するマイクロスフェアの眼球内注射によるか、又は硝子体に薬物を含有する装置若しくはカプセルを位置することによって達成される。薬物の硝子体内注射は、高濃度で眼の後区に薬物を送達する効果的な手段であるが、即座の浄化及び組織毒性のような欠点がないわけではない。
【0012】
さらに、多くの治療薬は、網膜を横切って容易に分散することができないこともまた周知である。つまり、投与され、そして硝子体で維持される投薬量は、網膜境界を横切って拡散し得る量、並びに薬物が硝子体内で有効な量でどのように保持されるのかを配慮しなければならない。例えば、トリアムシノロンの注射後3日間、硝子体に存在する1%未満のトリアムシノロンが、網膜、色素上皮、及び強膜を含む他の組織と関連することが動物試験から観察されている。境界を横切る薬物送達の相対的効果に加えて、いくつかの治療を用いた硝子体内への直接的な注入技術を使用した場合、合併症又は副作用が観察されている。
【0013】
例えば、トリアムシノロンのようなコルチコステロイドとして分類される化合物は、角膜の新生血管形成のようないくつかの形態の新生血管形成を効果的に治療することができる。これらの化合物は、直接的な注入によって後区の新生血管形成を治療するために使用された場合、これらの化合物は、多くの患者に望ましくない副作用を引き起こすことが観察された。観察された悪影響又は望ましくない副作用は、眼圧上昇、及び白内障の形成又はその発症の加速を含んでいた。眼圧の上昇は、患者において他ならぬ心配事である。さらに、正常な眼圧の患者においてコルチコステロイドの使用は、眼組織に障害をもたらす圧力上昇を引き起こすであろう。コルチコステロイドを用いた療法は、長期であることがしばしばであるため、その療法に起因する眼圧の長期の上昇の結果として、眼組織への重大な損傷に関する可能性が存在する。
【0014】
その結果、硝子体内送達の領域における努力はまた、持続放出インプラント、カプセル又は他のこのような装置を位置することによる送達、あるいは、硝子内と連絡し、そして含有した薬物の硝子体内に経時的な放出を提供するように設定された機構による送達を含んでいる。このような放出制御装置の例は、米国特許第6,217,895号;第5,773,019号;第5,378,475号、及び米国特許出願公開第2,002/0061327号に記載されている。
【0015】
本明細書中に記載された技術/機器の共通の特徴は、インプラント、カプセル又は他のこのような装置が眼を通して挿入され、硝子体内に位置され得るように、外科的切開が手法の開始時になされることが必要である。これらの方法及び技術はまた、硝子体の材料の喪失を防ぎ、創縫合治癒を促進するように、切開を塞ぎ又は閉じる手法の完了に続く縫合の使用に関わってもよい。当業者に既知であるように、後区又は硝子体の容積及び圧力を維持するためには、眼の形状及び光学配置を維持することが必要である。このような治療の進行は、期間及び費用、並びに角膜潰瘍、白内障形成、眼内感染、及び/又はこれらの手法に伴う硝子体の脱出の現実的な危険性を増加させる。
【0016】
ドナー細胞、より具体的にはドナー網膜細胞を網膜下の空隙に移植する機器及び方法論は、米国特許第5,273,530号及び第5,409,457号に説明されている。その中には、機器はまた注入され又は硝子体から材料を取り出すために使用することができることも記載されている。記載された方法論によれば、この機器は、眼の周囲に沿って伸長する挿入経路に沿って眼球孔に挿入することができ、網膜又は網膜下の領域に隣接した先端を置くように、形成され、そして特定の大きさに合わせられる。次に、この先端がどれだけ移動するかに応じて、先端が網膜下領域又は硝子体内に残るので、医学的指示において、一般的に先端を移動させる。先端の過度の挿入を防ぐために、先端が眼内に挿入しえる距離を制限するように先端にカラーが提供される。
【0017】
眼の網膜下領域への移植片として、正常な平面構造内で網膜細胞、上皮及び脈絡膜の網膜下の移植のための機器は、米国特許出願公開2002/0055724に説明されている。記載された機器は、角膜横断外科アプローチ又は脈絡膜及び強膜横断外科アプローチのいずれかを用いて眼の開口内に挿入される。この技術によれば、機器は、移植片が挿入し得るように網膜を離れて網膜下を進行する。米国特許第5,273,530号に記されるように、経角膜又は経強膜経路を用いた眼の前部又前区の穿通は、角膜潰瘍の危険性を生じる。また、いずれかのアプローチを用いて、手法の開始で外科的切開がなされ、それにより、機器を挿入することができ、そして、硝子体材料(即ち、房水)の喪失を防ぐために、切開を塞ぎ又は閉鎖する手法の完了後に縫合が使用される。
【0018】
薬剤の放出制御のための生分解性多孔質薬物送達装置は、米国特許第5,516,522号に記載される。この装置は、内面と外面、及び第一と第二末端を有する中空管を具備する。薬剤は、管の通路を通って制御可能な放出のための中空管内に満たされる。中空管内に薬物が満たされる前に、第一端は熱融着され、中空管に薬物が満たされた後に、第二端が熱融着される。液体の注入可能な状態で体内に注入される熱可塑性又は熱硬化性ポリマーで構成される生分解性ポリマー組成物が、米国特許第5,324,519号及び第5,599,552号に記載される。これらの組成物は、骨又は神経成長障害のような障害及び疾患を予防及び治療するために、そして、身体機能(例えば、避妊)を変えるために使用される。米国特許第5,599,552号は、さらに、骨及び神経細胞のような細胞及び組織の再生を増強し、あるいは組織又は臓器への生物学的に活性な物質の送達のための組成物を用いることを記載する。
【0019】
それ故、眼の障害及び疾患を治療する現在利用可能な方法を用いた多くの難点がある。例えば、これらの後区の眼疾患の場合、局所又は経口投与のような薬物送達の従来経路は、疾患部位に到達しない。結果として、眼底疾患を治療する現在の方法は、眼内注入又は硝子体内インプラントを介して眼の硝子体腔に直接薬物を導入することを伴う。眼の自然な循環プロセスは、硝子体チャンバーに直接注入される溶液を急速にに取り除く。その後、このアプローチは、しばしば、緑内障及び白内障形成のような合併症と関連した頻繁の高い多くの投与注入を必要とする。さらに、高分子量の分子(>70kD)は、網膜色素上皮及び網膜毛細血管の密接結合複合体を実質的に横切ることができない。微粒子注入は、従来の注入の持続放出能力を改善するが、これは、なお眼内還流を介して薬剤の広範な放出を解決しない。ステロイドの場合、この分布は、緑内障及び白内障のような逆効果をもたらすことが知られる。さらに、眼の自然な循環プロセスは、僅かに前から後への眼循環を有し、疾患が進行中である場合、眼の底でより低い薬物濃度の原因となる。
【0020】
このように、眼の治療、特に「網膜及び/又は脈絡膜の障害又は疾患」の治療に、所望の治療部位に直接的に治療媒体を送達することによって、安全であり有効な方法を提供することが望まれるであろう。特に、眼の他の組織においてこのような作用を最小限にしながら、網膜及び/又は脈絡膜で治療媒体の局在化された持続送達を提供することが期待されるであろう。外傷を最小限にし、流体物切開の必要性を除く方法を提供することが望まれるであろう。さらに、治療に必要とされる治療薬の投与量を効果的に低下させる方法を提供することが望まれるであろう。さらに、治療薬の硝子体内送達に関連した副作用を低減させ、ましてや取り除く方法を提供することが望まれるであろう。さらに、治療部位に巨大分子量の薬物及びタンパク質を効果的及び効率的に送達する方法を提供することが望まれるであろう。
【発明の開示】
【0021】
発明の概要
一側面において、本発明は、哺乳動物の眼に1以上の生物活性剤を網膜下に送達するための持続放出インプラントを提供する。本発明のインプラントは、1以上の固体の生体適合性ポリマー及び1以上の生物活性剤を含む。インプラントは、同じ治療効果を達成するために、全身、局所、及び全臓器の送達システムによって送達される量より実質的に少ない量で1以上の生物活性剤を網膜下に送達される。
【0022】
いくつかの態様において、ポリマーマトリックス及び1以上の生物活性剤は、単独で、インプラントを形成する。他の態様では、インプラントは、生体適合性ポリマーマトリックス及び1以上の生物活性剤を含むコーティング層で少なくとも部分的に覆われている外表面を有する生体適合性コアを含む。いくつかの態様では、コーティング層は、コアの全外表面を覆う。他の態様では、コーティング層は、コアの外表面の1以上の部分を覆い、コアの外表面の1以上の部分を被覆しないままである。いくつかの態様では、コーティング層は、その端の一方又は両方で先細くされ又は矢羽根が付けられている。いくつかの態様では、コアの少なくとも遠位端及び近位端は、コーティング層で覆われ、そして、コーティング層は先細くされ又は矢羽根が付けられている。
【0023】
インプラントのポリマーマトリックスに有用なポリマーは、生体適合性ポリマーであり、生体安定性(即ち、非分解性)又は生分解性であってもよい。生体安定性ポリマーの例には、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン)、ポリイソブチレン、アクリル系ポリマー、ハロゲン化ビニルポリマー、ポリビニルエーテル、ポリビニルメチルエーテル、ポリハロゲン化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族化合物、ポリビニルエステル(例えば、ポリ(アルキル(メト)アクリレート)、例えば、ポリ((メチル)メタクリレート)又はポリ((ブチル)メタクリレート)、ポリビニルアミド、ポリアミド、ポリカプロラクタム、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン・トリアセテート、酢酸セルロース、酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、及び上記ポリマーの共重合体(例えばポリエチレンビニルアセテート)及び混和物が含まれる。生分解性ポリマーの例には、ポリ(L−乳酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシ酪酸塩)、ポリ(ヒドロキシ酪酸塩−co−吉草酸塩)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D,L乳酸)、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリ(リン酸エステル)、ポリリン酸エステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリエステル、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、及び上記ポリマーの共重合体及び混和物が含まれる。生分解性材料、例えば、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デキストラン、多糖、スターチコラーゲン、クロムガット、及びヒアルロン酸はまた使用されてもよい。
【0024】
非重合性生体適合性材料はまた、本発明のインプラントのコアを形成することができる。実施例は、チタン−ニッケル合金ワイヤ、チタン合金、ニッケル−コバルトベース合金、ステンレススチール、コバルト−クロミウム合金、及び生分解性マグネシウム合金を含む。典型的な態様では、コアは、商業的に利用可能な最小の直径(例えば、約10μm〜約200μm)を有するチタンニッケルワイヤーであり、それによって、インプラントが含有してもよい生物活性剤の量を最大にする。いくつかの態様では、コア材料及びコアの厚さは、所望の堅さ及び柔軟性を有するインプラントを提供するように選択される。
【0025】
いくつかの態様では、インプラントコアの外表面領域は、生体適合性ポリマーマトリックス及び1以上の生物活性剤を含むコーティング層で部分的に又は完全に覆われ、そして、コーティング層は、1以上の生物活性剤の放出速度の特徴(例えば、溶出速度)を修飾する1以上の生体適合性ポリマーを含む1以上の追加のコーティング層で部分的に又は全体として被覆される。追加のコーティング層に使用されてもよい生体適合性ポリマーの例には、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエステル、クロムガット、ポリオルトエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン酢酸ビニル又はポリ(ブチルメタクリレート)が含まれる。典型的な態様では、コーティング層は、ポリ(カプロラクトン)を含む。
【0026】
いつかの態様では、コアの外部表面は、生体適合性ポリマーマトリックス及び1以上の生物活性剤を含むコーティング層を用いてその全長の部分に沿って被覆され、そして、インプラントは、さらに、握られ、外科器具と連結され、又はインプラントが眼に挿入されていた期間後に装置の容易な取り出しのために使用されてもよいハンドリング部分(例えば、長さにして約10mm以下の被覆していない領域)を提供する被覆していないコアの長さを含む。
【0027】
本発明のインプラントによって送達されてもよい生物活性剤の例には、薬物、薬剤、抗生物質、抗菌剤、抗増殖剤、神経保護剤、抗炎症剤(ステロイド性及び非ステロイド性)、増殖因子、神経栄養因子、血管新生阻害剤、血栓溶解剤又は遺伝子が含まれる。より具体的には、1以上の生物活性剤は、トロンビン阻害剤;抗血栓剤;血栓溶解剤;線維素溶解薬;血管痙攣阻害剤;カルシウムチャネル遮断剤;血管拡張剤;血圧降下剤;抗菌剤、抗真菌剤、及び抗ウイルス剤;表面糖タンパク質受容体の阻害剤;抗血小板薬;抗有糸分裂剤;微小管阻害剤;抗分泌薬;活性阻害剤;リモデリング阻害剤;アンチセンスヌクレオチド;代謝拮抗物質;血管新生阻害剤を含む抗増殖剤;抗癌性化学療法薬;抗炎症剤;非ステロイド性抗炎症剤;抗アレルギー剤;抗増殖剤;充血除去剤;縮瞳薬及び抗抗コリンエステラーゼ;抗腫瘍剤;免疫学的薬物;ホルモン剤;免疫抑制剤、成長ホルモン拮抗剤、増殖因子;血管新生阻害剤;ドーパミン作動剤;放射線療法剤;ペプチド;タンパク質;酵素;細胞外マトリックス成分;ACE阻害剤;フリーラジカル捕捉剤;キレート剤;抗酸化剤;抗重合剤;光線力学療法剤;遺伝子治療剤;及び、他の治療薬、例えば、プロスタグランジン、抗プロスタグランジン、プロスタグランジン前駆体、及びそれらの組合せから選択されてもよい。典型的な態様では、インプラントは、生分解性ポリ(カプロラクトン)を含むポリマーマトリックスにコルチコステロイドのトリアムシノロンアセトニドを含む。
【0028】
本発明のインプラントは、典型的には、眼の機能への干渉並びに眼の不快及び損傷を最小限にするために設計される。いくつかの態様において、インプラントは、棒状又はフィラメント状の形態である。いくつかの態様において、インプラントは、勾配であるか、先細であるか、又は尖っている遠位端を有してもよい。その代わりに、インプラントは、平滑である又は丸くなっている遠位端を有してもよい。
【0029】
いくつかの態様では、インプラントは、約1000μm未満である全径を有し、他の態様では、約900μm未満であり、他の態様では、約800μm未満であり、他の態様では、約700μm未満であり、他の態様では、約600μm未満であり、他の態様では、約500μm未満であり、他の態様では、約400μm未満であり、他の態様では、約300μm未満であり、他の態様では、約200μm未満であり、他の態様では、約100μm未満であり、他の態様では、約50μm未満である。いくつかの態様では、インプラントの全径は、約200μm〜約500μmの範囲である。
【0030】
いくつかの態様では、本発明のインプラントは、約5mm未満の長さを有し、他の態様では、約4.5mm未満であり、他の態様では、約4mm未満であり、他の態様では、約3.5mm未満であり、他の態様では、約3.0mm未満であり、他の態様では、約2.9mm未満であり、他の態様では、約2.8mm未満であり、他の態様では、約2.7mm未満であり、他の態様では、約2.6mm未満であり、他の態様では、約2.5mm未満であり、他の態様では、約2.4mm未満であり、他の態様では、約2.3mm未満であり、他の態様では、約2.2mm未満であり、他の態様では、約2.1mm未満であり、他の態様では、約2mm未満である。いくつかの態様では、インプラントの長さは、約2.25mm〜約2.75mmの範囲である。
【0031】
いくつかの態様では、本発明のインプラントは、少なくとも約0.0001μg/日の生物活性剤の溶出速度を有し、他の態様では、少なくとも0.001μg/日、他の態様では、少なくとも約0.01μg/日、他の態様では、少なくとも約0.1μg/日、他の態様では、少なくとも約1μg/日、他の態様では、少なくとも約10μg/日、他の態様では、約100μg/日、及び、他の態様では、少なくとも約1000μg/日である。
【0032】
いくつかの態様では、本発明のインプラントは、全臓器への送達系が送達するのと比較して、同じ治療効果を達成するために、約2〜約1,000,000倍未満の生物活性剤を送達することができる。さらに、いくつかの態様では、インプラントは、全身性又は局所性送達系が送達するのと比較して、同じ治療効果を達成するために、約2〜約1,000,000倍未満の生物活性剤を送達することができる。
【0033】
いくつかの態様において、本発明のインプラントは、治療効果を与えるために要求されるものと比較して約90%未満の過剰な生物活性剤で、1以上の生物活性剤を溶出することによって治療効果を提供し、治療効果を提供するために必要とされるものと比較して、他の態様では、約80%未満過剰であり、他の態様では、約70%未満過剰であり、他の態様では、約60%未満過剰であり、他の態様では、約50%未満過剰であり、他の態様では、約40%未満過剰であり、他の態様では、約30%未満過剰であり、他の態様では、約20%未満過剰であり、他の態様では、約10%未満過剰であり、他の態様では、約5%未満過剰であり、他の態様では、約1%未満過剰である。
【0034】
別の側面では、本発明は、眼への少なくとも1つの生物活性剤の持続送達用のインプラントを加工する方法を提供し、ここで、この装置は、網膜下に移植され、前記方法は、低温プロセスを用いて1以上のポリマーと1以上の生物活性剤を組み合わせてインプラントを形成し、ここで、インプラントは、1以上の生物活性剤が治療効果を提供するのに必要とされるのと実質的に同じ投薬量で送達されるように加工されることを含む。
【0035】
いくつかの態様において、この方法は、(a)溶媒に1以上のポリマーを溶解させ、複合流体を形成する工程;(b)少なくとも1つの生物活性剤を複合流体に添加し、1以上の生物活性剤の均一な溶液及び/又は1以上の生物活性剤の分散相を有する溶液を生産する工程;(c)場合により、この溶液を固体形態に乾燥する工程;(d)場合により、ポリマー(又は複数)のちょうど融点以下の温度まで固体形態を加熱する工程;及び、(e)(b)の溶液又は固体状態(c)からインプラント装置を形成する工程を含む。いくつかの態様では、複合流体は、固体形態まで乾燥される。これらの態様において、固体形態は、典型的には、形成工程(即ち、工程(e))の間、ポリマー(又は複数)のちょうど融点以下の温度まで加熱される。例えば、この過程は、約100℃未満の温度で実行されてもよい。いくつかの態様では、インプラント装置を形成する工程は、溶解−押出し−引き伸ばしによって実行される。他の態様では、工程(b)の溶液は、固体形態に乾燥されない。これらの態様において、加熱は、溶液中に溶媒が存在するため、形成工程(即ち、工程(e))の間に要求されなくてもよい。代表的な溶媒は、クロロホルム、THF、又は適した溶解性パラメータを有する任意の他の有機炭化水素を含む。
【0036】
別の側面では、本発明は、眼内に本発明のインプラントを挿入することによって眼の後区に生物活性剤を投与し、そして、1以上の生物活性剤が送達されるのを可能にする方法を提供する。別の側面では、本発明は、眼の障害及び/又は疾患の治療及び/又は予防の方法を提供し、眼内に本発明に従って装置を移植すること;及び、所望の網膜治療部位に1以上の生物活性剤を送達されるのを可能にすることを含む。
【0037】
いくつかの態様では、インプラントは、脈絡膜上方であるが神経線維層下方で1以上の組織層に配置される。いくつかの態様では、2以上のインプラントは、2以上のインプラントが1以上の治療部位に1以上の生物活性剤を同時に溶出するように眼の網膜下に移植される。
【0038】
いくつかの態様において、インプラントは、眼内に移植を達成するために眼の構造を突き通し及び/又は貫通することができる。例えば、インプラントは、突き通し又は貫通を促進するために、勾配であるか、先細であるか、又は尖っている遠位端を有してもよい。いくつかの態様では、器具は、眼内にインプラントを挿入するために使用される。いくつかの態様では、インプラントは、眼内にインプラントを挿入するために、握られるか又は外科用器具と連結されてもよい1以上の被覆していない部分を含む。
【0039】
本発明のいくつかの態様では、インプラントは、インプラント又はさらに多くのインプラントと治療されるべき組織領域又は層との間の距離に基づいて送達するための生物活性剤の特定の濃度を提供するように眼に挿入される。
【0040】
いくつかの態様では、粘性のある流体物、ハイドロゲル又は他の固体若しくは半固体の材料を網膜下の空隙に投与し、インプラントが在中するであろう空隙を作ることが望まれ得る。
【0041】
本発明によれば、1以上の生物活性剤は、治療される眼の部分(即ち、治療部位)にのみ実質的に送達される。いくつかの態様では、インプラントによって溶出される少なくとも5%の生物活性剤は、治療される眼の部分に送達され、他の態様では、少なくとも10%であり、他の態様では、少なくとも20%であり、他の態様では、少なくとも30%であり、他の態様では、少なくとも40%であり、他の態様では、少なくとも50%であり、他の態様では、少なくとも60%であり、他の態様では、少なくとも70%であり、他の態様では、少なくとも80%であり、及び、他の態様では、少なくとも90%である。
【0042】
さらに、本発明のインプラント及び方法は、かなりの量の1以上の生物活性剤が健康なな組織に送達されないように1以上の生物活性剤を送達することができる。いくつかの態様では、インプラントによって溶出される95%未満の1以上の生物活性剤は、健康な組織に送達され、他の態様では、90%未満であり、他の態様では、80%未満であり、他の態様では、70%未満であり、他の態様では、60%未満であり、他の態様では、50%未満であり、他の態様では、40%未満であり、他の態様では、30%未満であり、他の態様では、20%未満であり、他の態様では、10%未満であり、及び、他の態様では、5%未満が健康な組織に送達される。
【0043】
本発明は、1以上の生物活性剤を治療部位に送達するために直接的なアプローチを提供し、それによって効果的な治療に必要な投薬量を減少する。さらに、このような方法は、生物活性剤の硝子体内への送達と関連した副作用を減少することができる。本発明は、さらに、巨大分子量の薬物及びタンパク質を治療部位の送達のために改善された経路を提供する。
【0044】
本発明の他の側面、態様、及び利点は、下記に検討されるように、当業者に容易に明確となるであろう。実感されるように、本発明は、本発明から逸脱することなしに他の及び異なった態様を可能にする。つまり、下記の説明、並びに添付のいずれかの図面は、事実上、例証されるものとしてみなされ、限定されない。
【0045】
本発明は、下記の定義を参照して、最も明確に理解される:
本明細書中で使用されるとき:
眼の「水性」は、眼の十分な房水を意味することが理解されるであろう。
【0046】
「生体適合性」は、重大な異物応答(例えば、免疫、炎症、血液凝固等の応答)を発揮することなく受容者によって受け入れられ、そして受容者において機能する材料の能力を意味する。例えば、本発明の1以上のポリマーマトリックス材料に関連して使用される場合、生体適合性は、受容者において意図された方法で受け入れられ、及び機能するポリマーマトリックス材料(又は複数のポリマーマトリックス材料)の能力を意味する。したがって、インプラントは、生体の生物学的流体物及び/又は組織と接触して、生体に正味の有益な効果をもって機能し又は存在することができる場合、「生体適合性」として特徴付けることができる。
【0047】
「複合流体物」は、化学的及び/又は熱の熱力学的機構を介して流体状態であり;原子よりははるかに大きな分子又は構造の長さスケールの成分相を有し、そして、安定化剤、溶媒和物、添加物及びさらに治療薬のような付加的な成分相を含んでもよい高分子性液体又は溶解物を意味すると理解されるであろう。この流体状態では、この「複合流体物」は、さらに、偽塑性、ニュートン式又は非ニュートン式流動学によって特徴付けられる。
【0048】
「臓器」は、特定の機能を提供するために協同して機能する組織の集合物を意味することが理解されるであろう。例えば、網膜、脈絡膜、レンズ、及び視覚器官を作る他の関連した構造のような組織の集合物である。
【0049】
「外科手術によるろ過胞」は、小ゲージのニードルシリンジ又は注入システムによって作られる局所的な網膜流体物の剥離を意味するものとして理解されるであろう。
「持続放出インプラント」は、制御される方法で長期間、1以上の生物活性剤を放出するように設計・用意される数多くのインプラントのいずれかを意味することが理解されるであろう。
【0050】
「網膜下の空隙」は、網膜色素上皮細胞と眼の光受容細胞との間の空間を意味することが理解されるであろう。
「治療的に有効な量」は、患者において所望の効果(疾患等の病状の治療又は疼痛の緩和)を生じる単独で若しくは他の基質と一緒である生物活性剤の量を意味する。治療期間中、このような量は、治療されるべき特定の状態、状態の重症度、年齢、身体的状態、大きさ及び体重を含む個々の患者のパラメータ、治療期間、使用される特定の生物活性剤の性質、併用療法(必要に応じて)、同様に医師の知識及び経験の範囲の要因に依存するであろう。通常の知識を有する医師又は獣医師は、状態を治療し及び/又は状態の進行を妨げるのに必要な生物活性剤の有効量を容易に決定し、処方することができる。
【0051】
「硝子体」は、哺乳動物の眼の硝子質又は硝子体の空洞を意味することが利用されるであろう。
本発明の性質及び所望の目的のより十分に理解するために、付随する図面と併せて記載される下記の詳細な説明に言及し、同様の参照文字は、いくつかの概説の至るところで対応する部分を意味する。
【0052】
発明の詳細な説明
下記に記載した本発明の態様は、包括的であって、下記の詳細な説明に開示された厳密な形態に発明を制限することを意図しない。むしろ、本態様は、当業者が本発明の原理及び実施を承認し、理解することができるように選択され、記載される。
【0053】
本発明は、哺乳動物の網膜下の空隙内へ1以上の生物活性剤の持続送達を提供する網膜下薬物送達システム、並びにこのような送達システムを用いた哺乳動物の網膜下の空隙内へ生物活性剤の投与又は送達方法を提供する。本発明はまた、送達システムを作る方法、特に、1以上の生物活性剤を送達するために使用されるインプラントを作る方法を提供する。本薬物送達システム及び方法は、網膜疾患のための現在の装置及び治療方法の制限を克服する。
【0054】
本発明の態様では、網膜下薬物送達システムは、所望の治療位置で眼内に配置することができるインプラントを含む。特に、インプラントは、1以上の生物活性剤を含む生体適合性ポリマーマトリックスを含む。いくつかの態様では、インプラントの生体適合性ポリマーマトリックスは、生分解性であるかまたは生体吸収性である。
【0055】
一態様では、1以上の生物活性剤だけを含有するポリマーマトリックスがインプラントを形成する。これは、1以上の生物活性剤を含むポリマーマトリックスが実質的に全てのインプラントを形成するが、他の少量の材料もまた、インプラントの形成に使用される加工技術及び安定化技術に起因してインプラントに含有されてもよいことを意味することが理解されるべきである。図14に言及すると、インプラント10は、1以上の生物活性剤を含有するポリマーマトリックス12を含む。インプラント10は、図14に示されるように、長さ「l」及び直径「d」を有する。インプラント10は、遠位端14及び近位端16を有する。インプラントの遠位端若しくは近位端(又は両方)は、先細く、丸く、勾配があり、平滑であってもよく、あるいは他の所望の端形態を有してもよい。図14の態様では、インプラント10は、勾配のある遠位端14を有し、平滑な近位端16を有する。
【0056】
別の態様では、インプラントは、ポリマーマトリックス−生物活性材料(即ち、1以上の生物活性剤を含むポリマーマトリックス)のコーティング層で被覆される生体適合性コアを含む。図10〜11に言及すると、コアを有するタイプのインプラントの一態様が示される。インプラント20は、近位端27及び遠位端29、ポリマーマトリックス−生物活性材料を含むコーティング層24を有するコア22を含む。図10〜11の態様では、ポリマーマトリックス−生物活性材料のコーティング層は、コア22の全長の全体を被覆される。ポリマーマトリックス−生物活性材料のコーティング層24は、近位移動部分26、遠位移動部分28、中心部30を含む。この態様では、近位移動部分26及び遠位移動部分28は、矢羽根が付されている(即ち、傾斜移動部分)。
【0057】
別の態様では、図12〜13に示されるように、インプラント40は、近位端42及び遠位端45を有するコア42を含む。ポリマーマトリックス−生物活性材料のコーティング層44は、コア42の長さ「l」の一部が被覆され、結果として部分46が被覆され、部分48は被覆されない。被覆されてない部分48は、操作する際にコーティング層44に任意の潜在的損傷を防ぐために、インプラントが外科用器具を握りるかまたは連結させてもよい操作部分(例えば、マイクロ手術用器具)を提供するのに有用であってもよい。一態様では、インプラント装置の被覆されていない部分は、フォローアップ外科手術において容易な回復のために網膜周囲に残すことができる。図12〜13の態様では、被覆した部分46の近位移動部分50及び遠位移動部分52は、矢羽根が付されている(即ち、傾斜移動部分)。理論にとらわれずに、インプラントの遠位及び近位端に矢羽根を付すことは、均一性、再現性の処置、及び移植の容易さを増すかもしれない。
【0058】
コアの形成に使用される大きさ、形状及び材料は、所望の特徴を提供するように選択することができる。例えば、より細いコアは、より少ない堅さを提供し、より厚いコーティング層を可能にするために使用されてもよく、それによって、インプラント中の生物活性剤の溶液を最大にする。さらに、コアを形成する材料は、所望の堅さ又は柔軟性を提供するように選択することができる。さらになお、コア材料は、コアに付着するコーティング層の能力を促進するように選択されてもよい。加えて、コアの表面は、コアへのポリマー層の付着をさらに改善するように下塗りされ、粗くし、又は化学的に修飾されてもよい。
【0059】
いくつかの態様では、インプラントは、生物活性剤の放出速度特性を修飾するポリマー材料の層をさらに含むことができる。例えば、ポリ(カーボネート)の薄層は、インプラント上に被覆することができる。このようなポリ(カーボネート)層はまた、分解速度を調節するバリア、移植前の環境的分解からの生物活性剤の保護を提供することができ、あるいは薬物の放出時間点を遅延することができる。
【0060】
ポリマーマトリックスに有用な生体適合性ポリマーは、生体安定性(即ち、生分解性でない)であるか又は生分解性であってもよい。生体安定性ポリマーの例には、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン)、ポリイソブチレン、アクリル系ポリマー、ハロゲン化ビニル系ポリマー、ポリビニルエーテル、ポリビニルメチルエーテル、ポリハロゲン化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族化合物、ポリ((メチル)メタクリレート)又はポリ((ブチル)メタクリレート)のようなポリビニルエステル(例えば、ポリ(アルキル(メト)アクリレート)、ポリビニルアミド、ポリアミド、ポリカプロラクタム、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン・トリアセテート、酢酸セルロース、酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロース・エーテル、カルボキシメチルセルロース、並びに上記ポリマーの共重合体(例えば、ポリエチレン酢酸ビニル)及び混和物が含まれる。
【0061】
生分解性ポリマーの例には、ポリ(L−乳酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシ酪酸塩)、ポリ(ヒドロキシ酪酸塩−co−吉草酸塩)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D,L乳酸)、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリ(リン酸エステル)、ポリリン酸エステル・ウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリエステル、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレン・オキサレート、ポリホスファゼン並びに上記ポリマーの共重合体及び混和物が含まれる。フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デキストラン、多糖、スターチコラーゲン、クロムガット、及びヒアルロン酸のような生分解性材料もまた使用することができる。
【0062】
ポリマーの選択は、例えば、インプラントによって送達されるべき生物活性剤を含むインプラントの所望の特性、並びに生物活性剤の送達速度及び送達期間に依存してもよい。
いくつかの態様では、生体適合性ポリマーは、全体として又は部分的に、カプロラクトンモノマーユニットの繰り返し(例えば、ポリ(カプロラクトン)又はその共重合体)を含む。ポリ(カプロラクトン)は、網膜組織によって十分に許容され、炎症反応又は合併症を誘発することなしに生物活性剤を送達することができることがわかっている。例えば、図4〜6の態様では、ポリ(カプロラクトン)は、炎症反応又は合併症を誘発することなしに少なくとも4週間、ステロイドを溶出することができる。このように、一態様では、インプラントは、生分解性ポリ(カプロラクトン)ポリマーマトリックスを用いて形成される。一態様では、インプラントは、棒状の形態であり、生物分解性ポリ(カプロラクトン)ポリマーマトリックスにコルチコステロイド・トリアムシノロンアセトニドを含む。このような態様は、場合により、コアを含んでもよい。
【0063】
いくつかの態様では、生体適合性ポリマーは、(a)ポリ(アルキル(メト)アクリレート)、芳香族ポリ(メト)アクリレート、及びその混合物から選択される第1ポリマー;並びに、(b)ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)共重合体を含む第2ポリマーを含む。適した第1ポリマー及び第2ポリマーは従来の有機合成を用いて製造することができ、及び/又は種々の供給源から商業的に利用可能である。好ましくは、このようなポリマーは、被覆組成物におけるインビボでの使用に適した形態で提供されるか、あるいは当業者に利用可能な従来法によって所望の程度(例えば、不純物の除去による)までこのような使用のために精製される。
【0064】
好ましくは、第1ポリマーは、1以上の所望の特性、例えば、第2ポリマー及び生物活性剤(又は複数)との適合性、疎水性、耐久性、生物活性剤の放出特性、生体適合性、分子量、及び商業的な利用可能性を提供する。好ましくは、第1ポリマーは、ポリ(アルキル(メト)アクリレート)、芳香族ポリ(メト)アクリレート、又はポリ(アルキル(メト)アクリレート)及び芳香族ポリ(メト)アクリレートの組合せを含む。
【0065】
適したポリ(アルキル(メト)アクリレート)の例には、ポリ(n−ブチルメタクリレート)が含まれる。好ましい一態様では、高分子性被覆組成物は、ポリ(n−ブチルメタクリレート)(「pBMA」)及び第2ポリマーとしてポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)共重合体(「pEVA」)を含む。この組成物は、被覆組成物の約0.05重量%〜約70重量%の範囲の絶対的なポリマー濃度で有用であることがわかっている。本明細書中で使用されるとき、「絶対的なポリマー濃度」は、被覆組成物における第1ポリマー及び第2ポリマーの組み合わせた全濃度を意味する。一態様では、被覆組成物は、重量平均分子量が約100キロダルトン(kD)〜約1000kDの範囲であるポリ(アルキル(メト)アクリレート)(例えば、ポリ(n−ブチルメタクリレート)など)、及び酢酸ビニル含量がpEVA共重合体の約10重量%〜約90重量%の範囲であるpEVA共重合体を含む。別の態様では、ポリマー組成物は、分子量が約200kD〜約500kDの範囲であるポリ(アルキル(メト)アクリレート)(例えば、ポリ(n−ブチルメタクリレート)など)、及び酢酸ビニル含量が約30重量%〜約34重量%の範囲であるpEVA共重合体を含む。この態様の高分子被覆組成物中の生物活性剤(又は複数)の濃度は、最終的な被覆組成物の重量を基準として約0.01%〜約90%の範囲であり得る。
【0066】
本明細書中で使用されるとき、「重量平均分子量」又はMwは、分子量を測定する絶対的な方法であり、特に、ポリマー調製の分子量を測定するのに有用である。重量平均分子量(Mw)は、下式:
【化1】
(式中、Nは、Mの分子量をもつ試料中のポリマーの分子数を表し、Σiは調製物中の全てのNiMi(種)の和である)
によって定義することができる。Mwは、光散乱又は超遠心分離などの一般的な技術を用いて測定することができる。ポリマー調製物の分子量を定義するために使用されるMw及び他の用語の検討は、例えば、Allcock,H.R.及びLampe,F.W.,Contemporary Polymer Chemistry;pg271(1990)に見出すことができる。
【0067】
芳香族ポリ(メト)アクリレートを含む被覆組成物は、ある種の態様において予期せぬ利点を提供し得る。このような利点は、例えば、他の特性の所望の組み合わせを維持しながら、他の被覆物(例えば、ポリ(アルキル(メト)アクリレート)ポリマー)とは異なる特徴(異なる溶解特性など)を有する被覆を提供するための能力を提供する。特別の理論にとらわれずに、本発明のアルキルポリ(メト)アクリレートよりはむしろ芳香族化合物によって提供される溶解性の増加(特に、より極性溶媒において)は、ポリ(アルキル(メト)アクリレート)の使用に通常好ましいものと比べて、それ自身より極性であるポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)(例えば、有意に大きな酢酸ビニル含量を有するもの)の使用を許可する。
【0068】
適した芳香族ポリ(メト)アクリレートの例には、ポリ(アリール(メト)アクリレート)、ポリ(アラルキル(メト)アクリレート)、及びポリ(アリールオキシアルキル(メト)アクリレート)、特に、6〜16個の炭素原子を有するアリール基及び約50kD〜約900kDの範囲の重量平均分子量を有するものが含まれる。好ましい芳香族ポリ(メト)アクリレートには、少なくとも1つの炭素鎖及び少なくとも1つの芳香族環がアクリル系基(典型的にはエステル)と組み合わされる化合物が含まれる。例えば、ポリ(アラルキル(メト)アクリレート)又はポリ(アリールアルキル(メト)アクリレート)は、芳香族部分をも含有するアルコール由来の芳香族エステルから製造することができる。
【0069】
ポリ(アリール(メト)アクリレート)の例には、ポリ(9−アントラセニルメタクリレート)、ポリ(クロロフェニルアクリレート)、ポリ(メタクリルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン)、ポリ(メタクリルオキシベンゾトリアゾール)、ポリ(ナフチルアクリレート)、ポリ(ナフチルメタクリレート)、ポリ(4−ニトロフェニルアクリレート)、ポリ(ペンタクロロフェニルアクリレート)、ポリ(ペンタブロモフェニルアクリレート)、ポリ(ペンタフルオロフェニルアクリレート)、ポリ(ペンタクロロフェニルメタクリレート)、ポリ(ペンタブロモフェニルメタクリレート)、ポリ(ペンタフルオロフェニルメタクリレート)、ポリ(フェニルアクリレート)、及びポリ(フェニルメタクリレート)が含まれる。
【0070】
ポリ(アラルキル(メト)アクリレート)には、ポリ(ベンジルアクリレート)、ポリ(ベンジルメタクリレート)、ポリ(2−フェネチルアクリレート)、ポリ(2−フェネチルメタクリレート)、及びポリ(1−ピレニルメチルメタクリレート)が含まれる。
【0071】
ポリ(アリールオキシアルキル(メト)アクリレート)の例には、ポリ(フェノキシエチルアクリレート)、ポリ(フェノキシエチルメタクリレート)、種々のポリエチレングリコール分子量を有するポリ(エチレングリコールフェニルエーテルアクリレート)及びポリ(エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート)が含まれる。
【0072】
高分子性被覆組成物の第2ポリマーは、好ましくは、1以上の所望の特性、例えば、特に第1ポリマーと混合して使用した場合の第1ポリマー及び生物活性剤との適合性、疎水性、耐久性、生物活性剤放出特性、生体適合性、分子量、及び商業的利用性を提供する。
【0073】
適した第2ポリマーの例には、pEVA共重合体の約10重量%〜約90重量%の範囲で、又はpEVA共重合体の約20重量%〜約60重量%の範囲で、又はpEVA共重合体の約30重量%〜約34重量%の範囲で酢酸ビニル共重合体を有するポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)が商業的に利用可能でありこれらに含まれる。より低い割合の酢酸ビニルを有するポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)共重合体は、典型的な溶媒、例えば、THF、トルエン等にますます不溶となり得る。第2ポリマーは、ビーズ、ペレット、顆粒等の形態で商業的に得ることができる。
【0074】
コアの外部表面への塗布に関して、被覆組成物は、溶媒、この溶媒に溶解した第1ポリマー及び第2ポリマー、及びポリマー/溶媒溶液に分散した1以上の生物活性剤を含んでもよい。この溶媒は、好ましくは、ポリマーが真溶液を形成するものである。1以上の生物活性剤は、溶媒に溶解し得て、又は溶媒中に分散を形成してもよい。使用に際して、これらの態様は、被覆組成物を装置に塗布する前に、使用者側でいかなる混合をも必要としない。いくつかの態様では、被覆組成物は、1つの組成物に装置を提供し得る一部系を提供することができる。例えば、米国特許第6,214,901号は、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)の使用を例証する。THFがふさわしく、時としてある種の被覆組成物に好ましい一方で、他の溶媒が本発明に従って使用することができ、同様に、例えば、アルコール(例えば、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等)、アルカン(例えば、ヘキサン及びシクロヘキサン等のハロゲン化又は非ハロゲン化アルカン)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド)、エーテル(例えば、ジオキソラン)、ケトン(例えば、メチルケトン)、芳香族化合物(例えば、トルエン及びキシレン)、アセトニトリル、及びエステル(例えば、酢酸エチル)を含む。
【0075】
被覆組成物から形成されるコーティング層は、生体適合性である。さらに、この層は、好ましくは、ポリマーの広域の絶対濃度及び相対濃度の両方で有用である。コーティング層の物理的な特性(例えば、固持性、耐久性、柔軟性及び拡張性)は、典型的には、広範囲のポリマー濃度で適しているであろう。さらに、種々の生物活性剤の放出速度を制御する能力は、好ましくは、ポリマー及び/又は生物活性剤(又は複数)の絶対及び/又は相対濃度の変化によって操作され得る。
【0076】
いくつかの態様において、ポリマーマトリックスは、第1ポリマー及び第2ポリマーを含む生分解性組成物を含む。このような混和物は、2005年12月22日に出願された“Biodegradable Coating Composition Comprising Blends”と題する米国特許出願シリアル第11/317,212号に記載される。報告された生分解性組成物は、(a)ポリアルキレングリコールテレフタレート及び芳香族ポリエステルの共重合体である第1生分解性ポリマー;及び、(b)第2生分解性ポリマーの混和物を含む。第2生分解性ポリマーは、第1生分解性ポリマーと比較してゆっくりとした生物活性剤の放出速度を有するように選択される。
【0077】
いくつかの態様では、ポリアルキレングリコールテレフタレートは、ポリエチレングリコールテレフタレート、ポリプロピレングリコールテレフタレート、ポリブチレングリコールテレフタレート、及びこれらの組み合わせから選択される。いくつかの態様では、ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びこれらの組み合わせから選択される。例えば、第1ポリマーは、70〜80%のポリエチレングリコールテレフタレート及び5〜20%のポリブチレンテレフタレートの相対的な量でポリエチレングリコールテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートの共重合体であってもよい。
【0078】
第2生分解性ポリマーは、乳酸、グリコール酸、カプロラクトン、エチレングリコール、及びエチレンオキシホスフェートから選択されるモノマー由来のポリマーを含む。例えば、第2生分解性ポリマーは、2種以上のポリ(エステル−アミド)ポリマーの混和物を含んでもよい。いくつかの態様では、第2生分解性ポリマーは、第1生分解性ポリマーと比較して疎水的である。
【0079】
いくつかの態様では、ポリマーマトリックスは、“Biodegradable Controlled Release Bioactive Agent Delivery Device”と題する国際公開WO2006/023130に記載される材料などの生分解性又は再吸収性材料を含む。この出願は、本発明に従ってポリマーマトリックスとして利用することができるポリカーボネート種を含む種々の生分解性ポリマーを記載する。いくつかの態様では、生分解性材料は、式:
【化2】
(式中、
R1は、−CH=CH−又は(−CH2−)jであり、ここで、jは、ゼロ又は1〜8の整数であり;
R2は、最大18個の炭素原子を含有し、場合により、少なくとも1つのエーテル結合を含有する直鎖及び分岐のアルキル及びアルキルアリール基(例えば、エチル、ブチル、ヘキシル、及びオクチル基から選択される直鎖のアルキル基)、及び共重合体に共有結合した生物学的又は医薬として活性な化合物の誘導体から選択され;
各々のR3は、独立して、1〜4個の炭素原子を含有するアルキレン基(例えば、エチレン)から選択され;
yは、5〜約3000(例えば、20〜200)の間であり;および
fは、共重合体中のアルキレンオキシドのパーセントモル分率であり、約1〜99モルパーセント(例えば、5〜95モルパーセント)の範囲である)
を有するランダムブロック共重合体を含む。
【0080】
いくつかの態様では、ポリマーマトリックスはハイドロゲルを含む。ハイドロゲルの例には、WO02/17884(Henninkら)に記載のデキストランベースのハイドロゲルが含まれる。
【0081】
いくつかの例では、非重合性生体適合性材料は、本発明のインプラントのコアを形成する。例には、チタン−ニッケル合金ワイヤ(例えば、ニチノール、Nitinol Devices and Components、Freemont CAより商業的に利用可能である)、チタン合金、ニッケル−コバルトベース合金、ステンレススチール、コバルト−クロミウム合金、及び生分解性マグネシウム合金が含まれる。コア材料は、本明細書中に提供される例に限定されず、インプラント装置に使用されるいずれかの従来の材料であり得ると理解されるべきである。
【0082】
インプラントのコアの断面形状は、いずれかの所望の形状であってもよく、典型的には環状である。コアの最大の断面径(例えば、直径)は、典型的には、約200μm未満であり、いくつかの態様では、約10μm〜約200μmである。典型的な態様では、コアは、チタン−ニッケルワイヤを含む。特定の態様では、コアは、80μm以下の直径を有するチタン−ニッケルワイヤであり、それによって、インプラントのための構造をなお提供しながら、充填することができる生物活性剤の容積を最大限にする。
【0083】
別の側面では、本発明は、移植可能な装置を製造するための方法を提供する。いくつかの態様では、この方法は、(a)溶媒に1以上のポリマーを溶解させて複合流体を形成する工程;(b)複合流体に少なくとも1つの生物活性剤を添加して1以上の生物活性剤の均一な溶液及び/又は1以上の生物活性剤の分散相を有する溶液を製造する工程;(c)場合により、複合流体を固体に乾燥させる工程;(d)場合により、固体を加熱してポリマー(又は複数)の融点直下の温度まで加熱する工程;および、(e)(b)の溶液又は(c)の固体からインプラント装置を形成する工程を含む。
【0084】
いくつかの態様では、移植可能な装置を製造する方法は、インプラントを形成するために低温プロセス(例えば、約20℃〜約100℃、より好ましくは約50℃〜約90℃)の使用を含む。一態様では、この方法は、溶媒中でポリマー及び1以上の生物活性剤を均一に混合し、乾燥させ、及び製造した固体をインプラント形状中に融解−押出し−引き伸ばしを含むプロセスを含む。より具体的には、方法は、(a)適した溶媒溶液に1以上のポリマーを溶解させて複合流体を製造すること;(b)1以上の生物活性剤を複合流体に添加して1以上の生物活性剤の均一な溶液及び/又は1以上の生物活性剤の分散相を有する溶液を生産すること;(c)溶液を固体まで乾燥させ;ポリマーの融点以下の温度(例えば、融点より約1℃〜約5℃低い)まで固体を加熱すること;(d)この半固体でインプラント装置を形成すること;及び、(e)伸ばしたインプラントに引き伸ばし、所定の長さで切断することによってインプラントを所望の形状に成形することを含む。場合により、インプラントを曲げて湾曲を付加することができる。いくつかの態様では、複合体流体は、固体まで乾燥させない。これらの態様では、複合流体に溶媒が存在するので、形成工程中の加熱は必要なくてもよい。
【0085】
インプラント装置を形成し、所望の形状にインプラントを成形する工程は、固体により装置を形成し成形するために種々の従来法によって達成することができる。例えば、固体を融解−押出し−引き伸ばし(張力の適用)によって処理され、所望の形状及び厚さに固体を形成してもよい。その長さは、任意の従来の切断ツールを用いて装置を切断することによって変更することができる。インプラントの遠位及び/近位端は、切断、サンディング、及び先細くし、丸くし、勾配をつけ、及び他の所望の形状を形成するための他の方法によって成形することができる。
【0086】
いくつかの例では、インプラントは、更なる又は連続の撹拌条件下で、一晩、沸点以下の温度でクロロホルム中にポリ(カプロラクトン)を溶解させ;製造される調合物に応じて、好ましくは1:99〜70:30(生物活性剤重量:ポリマー重量)の範囲の比で生物活性剤を溶液に添加し;溶液が半透明であるか又は分散された後、更なる又は撹拌条件下で溶媒を蒸発させ;充填したポリマーの固体を押出装置に移し;高分子温度が融点に達するがそれを超えないように、ポリ(カプロラクトン)の分子量(Mn=3,000〜120,000)に依存して、約50℃〜約90℃まで押出装置を加熱し;押出装置が所望の融点下温度に到達したとき、所望の形状に固体を引き伸ばし;引き伸ばされたインプラントの温度を下げた後、所望の挿入長さにインプラントを成形することによって加工される。
【0087】
インプラントがコアを含む場合、インプラントは、例えば、コア材料の外表面の少なくとも一部にわたって1以上のポリマー、及び1以上の生物活性剤を含む被覆組成物を適用することによって加工されてもよい。被覆組成物は、任意の適した方法を用いてコアの外表面に適用することができる。例えば、コア組成物は、ディッピング、噴霧、及びコア組成物を基質に適用するための他の方法によって適用してよい。特定材料上での使用のためのコア組成物の適合は、当業者によって評価することができる。
【0088】
いくつかの実施例では、被覆組成物は、被覆組成物が超音波処理によって粉砕される精密被覆システム(即ち、超音波被覆システム)を用いてコアに塗布される。典型的な超音波被覆システム及び方法は、米国出願公開第2004/0062875号(Chappaら);および、2005年4月8日に出願された“Medical Devices and Methods for Producing Same”と題する米国出願シリアル第11/102,465号に記載される。いくつかの態様では、被覆されるべきコア(例えば、TiNiワイヤ)は、その縦軸について装置を回転することができるピン万力、又は類似装置に積層される。この装置は回転し、超音波噴霧ヘッドは回転コアに対して前後に通過する。
【0089】
超音波被覆システムは、被覆ヘッドから離れて移動するので、下方に狭まる噴霧流を生じることができる。図15を参照すると、拡張が開始する前、焦点64(又は最小の噴霧流径の点)を通過する前の被覆ヘッド62から離れて移動するので、噴霧流60は狭まる。ある態様では、焦点は、約0.5mm〜約1.0mmの断面直径を有する。対照的に、他のタイプの噴霧システムは、多くの場合、それが噴霧ヘッドを離れるにつれて、径が連続的に拡張する噴霧流を生じる。図16を参照すると、噴霧流70は、被覆ヘッド72から離れるにつれて連続して広くなる。
【0090】
超音波被覆システムは、非常な精度を伴ってコアを被覆するために使用することができ、特に、その場合、被覆されるべきコアは、噴霧流の焦点又は近傍に配置される。これは、噴霧流が、焦点又は近傍で相対的に小さな断面積を有するためであり、噴霧流が焦点の外側にある噴霧の相対的に少量の液滴を有するためである。噴霧流が相対的に小さな断面積を有すると、より広いコア領域が被覆を用いて被覆されるべきである場合、被覆されるべきコアと比較した噴霧流の位置が移動されなければならない。
【0091】
ある態様において、超音波噴霧ヘッドは、回転コア中を格子様パターンで前後に移動する。一例として、典型的な格子様パターン80は、図17に示される。格子様パターンは、ポイント83で開始し、ポイント85で終了する。格子様パターンは、一連の横軸の曲線82及び縦軸の運動84を有する。縦軸の運動84の長さに応じて、任意数の横軸の曲線は、所定のコーティング層の長さを覆うために使用することができる。本発明の態様では、格子様パターン80は、3〜100個の間の横軸の曲線82を含む。本発明の態様では、格子様パターン80は、3〜100個の間の縦軸の運動84を含む。現に図18を参照すると、格子様パターン80は、遠位端87及び近位端89を有する典型的なコア材料86の全体に載せられ、コア材料86が、格子様パターン80と比較してどのように被覆されるものなのかを説明する。
【0092】
縦軸の運動の長さは、被覆されるべき装置の表面に出くわすと、噴霧パターンの断面径を含む種々の因子に応じて変化することができる。縦軸の運動は、所望量よりも大きく、格子様パターンが各通路上の同じ場所から得られる場合、被覆表面がでこぼこになってもよい。縦軸の動きのサイズに関する特定の制限は、噴霧パターンの直径及び噴霧パターンの種々の部分の関連する噴霧密度を含む多くの因子に依存するであろう。
【0093】
いくつかの態様では、超音波被覆ヘッドは、コア上に被服層を置くために、格子パターンを複数回(即ち、複数の経路)辿る。各経路上で、ある量のコーティング層が置かれる。このように、超音波被覆ヘッドによってなされた正確な数の通路は、所望の全被覆厚に基づいて変化することができる。いくつかの態様では、コーティング層の量は、約10μgと約1000μgの間の乾燥重量を含む。他の態様では、コーティング層の量は約50μgと約300μgとの間の乾燥重量を含む。
【0094】
いくつかの態様では、同じ縦軸の出発位置は、超音波被覆ヘッドの各経路のためのコアと比較して使用される。例えば、各通路に対して、超音波被覆ヘッドは、同じ縦軸点で開始し、同じパターンに従うものである。他の態様では、超音波被覆ヘッドの縦軸開始点は、各追加の経路を用いて変化してもよい。図19を参照すると、第一経路の第一の横軸曲線は、ポイント100で開始してもよい。次に、第2の経路の第1の横軸曲線は、出発ポイント100から距離101で埋め合わされるオフセット102で開始してもよい。同様に、第3の経路及び第4の経路の第1の横軸曲線は、それぞれ、ポイント104及び106で開始する。矢印108の方向で開始位置を移動するこの技術は、被覆がその十分な厚さまで増加する距離を伸長するために使用することができ、それにより、コーティング層の移動部分の傾斜を制御する。一例として、連続する経路との間のオフセット距離は0.5mmであり得る。これは、一般的に、0.5mm未満、例えば、0.2mmの連続経路間のオフセットを用いて適用されるコーティング層と比較して低い傾斜を有するより長い移動部分をもたらすものである。移動部分の傾斜は、インプラントが被覆の剥離又は喪失の原因となるかもしれない応力(例えば、摩擦応力)を受けるであろう場合、望ましくは低くてもよい(例えば、約1.0未満)。移動部分の傾斜は、インプラント上のコーティング層の量を最小限にすることが望まれる場合、望ましくは高くてもよい(例えば、約1.0を超える)。コーティング層の近位及び遠位の移動部分は、同じであるかまたは異なっている傾斜を有してもよい。例えば、いくつかの態様では、遠位の移動部分は、近位の移動部分より小さい傾斜を有する。
【0095】
いくつかの態様では、コーティング層は、少なくとも2つの層を含み、各層は、同じ組成物を含み、あるいは異なった組成物を含む。このような一態様では、生物活性剤単独、又は1以上のポリマー(第1ポリマー及び/又は第2ポリマー)を伴う生物活性剤のいずれかを含む第1の層が塗布され、その後、1以上の追加の層が塗布され、それぞれ、生物活性剤の有無を問わない。これらの異なる層は、順に、ある種の所望の特性を有する全体の放出プロフィールを提供するために得られる組成物被覆で協力することができ、高分子量を有する生物活性剤を用いた使用に特に好ましい。本発明によれば、被覆の個々の層の組成物は、要望どおり、1以上の生物活性剤、第1ポリマー、及び/又は第2ポリマーの任意の1以上を含むことができる。
【0096】
好ましくは、被覆組成物は、1以上の用途においてインプラントのコアに塗布される。被覆組成物を体部に塗布する方法は、典型的には、装置の形状及び他のプロセス考察のような因子によって支配される。その後、被覆された組成物は、溶媒の蒸発によって乾燥することができる。乾燥プロセスは、任意の適した温度(例えば、室温又は高温)で行うことができ、場合により、真空の支援を必要とする。
【0097】
いくつかの好ましい態様では、被覆組成物は、調節された相対湿度の条件下でコアに塗布される。本明細書中で使用されるとき、「相対湿度」は、所定の空気温度での水蒸気圧(又は水蒸気含量)と飽和蒸気圧(又は最大上記含量)との比である。空気中の飽和水蒸気圧は、空気温度と一緒に変化する:温度が高くなると、それは、より多くの水蒸気圧を保持することができる。飽和した場合、空気中の相対湿度は、100%相対湿度となる。本発明のいくつかの態様によれば、被覆組成物は、周囲湿度と比較して、増加又は減少した相対湿度の条件下でコアに適用することができる。
【0098】
本発明によれば、湿度は、被覆組成物を調製するとき、及び/又は体部に被覆組成物を塗布するときを含む任意の適したやり方で調節することができる。例えば、湿度は、被覆組成物を調製するときに調節される場合、被覆組成物の水含量は、被覆組成物が体部に塗布される前後で調整することができる。湿度が被覆組成物を塗布するときに調節される場合、被覆組成物は、周囲湿度とは異なる相対湿度を提供するように適合される密閉チャンバー又は領域で体部に塗布することができる。一般的に、上昇した湿度の条件下で被覆組成物を塗布することは、典型的には、生物活性剤の放出を加速するであろうし、一方、減少する湿度レベルの条件下で被覆組成物を塗布することは、生物活性剤の放出を減速するであろうことが見出されている。本発明において意図されるように、周囲湿度でなされ、生物活性剤の対応する放出制御と相関し、それを提供することが決定されれば、「調節された」湿度であると考えることができる。
【0099】
さらに、とりわけ、最終的な被覆組成物を提供するための調節された送達装置の体部へ複数の被覆組成物を被覆する場合、得られる被覆組成物に対して所望の放出プロフィールを提供するために、異なる方法(例えば、被覆組成物の水含量を調整するのと比較して調節された環境を用いること)、及び/又は異なるレベルで湿度を調節することができる。前述したように、被覆組成物は、例えば、生物活性剤のみ(又は、1つの若しくは両方のポリマーを含む生物活性剤)を有する初期層を含み、被覆組成物の複数の個々の工程又は層を用いて提供することができ、生物活性剤、第1ポリマー、及び/又は第2ポリマーの適した組合せを含有する1以上の追加の層に被覆され、組合せの結果は、本発明の被覆組成物を提供することである。
【0100】
それ故、好ましい態様では、本発明は、制御された送達装置からの生物活性剤の放出を再現可能に調節する能力を提供する。
【0101】
いくつかの態様では、複数の被覆組成物及び対応する被覆工程は、それぞれ、その対応する放出プロフィールを用いて所望の層の組合せを提供するために、それ自身調節された湿度(所望な場合)それぞれを用いて採用することができる。当業者は、インビボでの種々の効果を達成するために、これらの種々の層の組合せ効果を使用し、最適化することができる方法を承認するであろう。
【0102】
インプラントは、眼に容易に挿入することができる任意の幾何学的形状及びサイズであり得る。さらに、挿入されれば、インプラントは、眼の機能と干渉しないような大きさ及び/又は形状になるべきであり、眼への不必要な不快感又は損傷を引き起こすべきではない。いくつかの態様では、インプラントは、棒状又はフィラメント状の形状である。しかしながら、装置の形状は、フィラメント又は棒状に限定されないが、むしろ、眼への挿入に適した任意の他の形状(例えば、曲線を描いた又はC形体の装置、コイル、薄膜、リボン、折り畳み式ディスク、ペレット等)で提供されてもよい。いくつかの態様では、インプラントは、眼内への挿入を促進するように設計される。例えば、インプラントの遠位端は、眼への挿入及び/又は貫通を促進するように、勾配があり、先細く、又は尖っていてもよい。その代わりに、遠位端は、平滑であり又は丸くなっていてもよく、装置は、眼の切開を通じて挿入されてもよい。尖った遠位端を有するインプラントを提供することは、眼への貫通及び挿入を促進するかもしれない一方で、インプラントを使用者が配置する課題を潜在的に多くさせることになり、最終的な安定な位置で網膜下の空隙にそれ自身を順応させるというよりはむしろ、複数の網膜組織層を横切るインプラントに後継してもよい(例えば、図2〜3を参照されたい)。しかしながら、これらの潜在的な結果は、これらの因子が配慮される挿入技術の使用によって、あるいは、平滑又は丸い遠位端を有するインプラントの提供によって克服することができる。インプラントは、網膜の大きな外傷及び流体物の切開なしに生物活性剤(又は複数)の持続送達を提供するように設計される。
【0103】
いくつかの態様では、インプラントの外径は、網膜剥離及び出血の出現を最小にするために約1000μm以下である。他の態様では、インプラントの外径は、900μm以下であり、他の態様では800μm以下であり、他の態様では700μm以下であり、他の態様では600μm以下であり、他の態様では500μm以下であり、他の態様では400μm以下であり、他の態様では300μm以下であり、他の態様では200μm以下である。いくつかの態様では、インプラントの直径は、約200μm〜500μmの範囲である。
【0104】
いくつかの態様では、インプラントの長さは、約5mm未満であり、他の態様では4.5mm未満であり、他の態様では4.0mm未満であり、他の態様では3.5mm未満である。特定の態様では、インプラントは、長さが、複数の組織層を横切らない眼内に最終的な安定位置になる追加の利点を提供することが見出されるように、長さにして約3mm未満である。しかしながら、複数の組織層の横断の切開を最小限にするように、特別の注意を払って挿入することができる3mmより長いインプラントを提供することが可能である。インプラントの柔軟性によって、最終的に挿入されて安定位置に適合することができる。なお更なる態様では、インプラントの長さは2.9mm以下であり、他の態様では2.8mm以下であり、他の態様では2.7mm以下であり、他の態様では2.6mm以下であり、他の態様では2.5mm以下であり、他の態様では2.4mm以下であり、他の態様では2.3mm以下であり、他の態様では2.2mm以下であり、他の態様では2.1mm以下であり、他の態様では2.0mm以下である。いくつかの態様では、インプラントの長さは、約2.00mm〜約3.00mmの範囲である。
【0105】
インプラントの直径が小さくなるほど、装置の挿入及び操作がより困難になり、インプラントにカプセル化することができる生物活性剤(又は複数)の量が限定される。このような因子は、インプラントのサイズを決定するのに配慮される。いくつかの態様では、インプラントは、網膜下の空隙内に導くことができるマイクロ外科用器具によって掴むのに十分な堅さであり、このように、インプラントは、適宜、設計される。同様に、インプラントの長さが短くなるほど、装置の挿入及び操作は、より困難になり、インプラント中にカプセル化することができる生物活性剤(又は複数)の量が減少する。それ故、これらの因子は、インプラントのサイズの決定において配慮される。一態様では、装置の断面積は、好ましくは、最大196250μm2である。
【0106】
いくつかの態様では、インプラントは、「そのまま」眼に直接挿入される。他の態様では、インプラント挿入装置(例えば、インプラントが眼に装填され挿入される管状装置)は、網膜下の空隙内にインプラントの挿入を促進するために使用されてもよい。このような挿入装置は、眼内へのインプラントを装填し、配置するための微小鉗子及び同様の装置を使用する必要性を省略することができる。
【0107】
本明細書中で使用されるとき、「生物活性剤」は、生物学的組織の生理学に影響を与える物質を意味する。本発明に従って有用な生物学的物質は、インプラント部位への適用に所望の治療的特性を有する任意の物質を実質的に含む。本明細書の記載のために、「生物活性剤」に触れるが、単数用語の使用が意図される複数の生物活性剤の適応を限定せず、任意の数の生物活性剤が本明細書中の教示を用いて提供することができることは理解される。
【0108】
生物活性剤は、限定されないが、薬物、医薬、抗生物質、抗菌剤、増殖抑制剤、神経保護剤、抗炎症剤(ステロイド性及び非ステロイド性)、増殖因子、神経栄養因子、血管形成抑制剤、血栓溶解剤又は遺伝子を含む。
【0109】
典型的な生物活性剤は、限定されないが、トロンビン阻害剤;抗血栓剤;血栓溶解剤;線維素溶解薬;血管けいれん抑制剤;カルシウムチャネル遮断剤;血管拡張剤;血圧降下剤;抗菌剤、例えば、抗生物質(テトラサイクリン、クロロテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、セファレキシン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、リファンピシン、シプロフロキサシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、ゲルダナマイシン、エリスロマイシン、ペニシリン、スルホンアミド、スルファジアジン、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフイソキサゾール、ニトロフラゾン、プロピオン酸ナトリウム)、抗真菌剤(例えば、アンフォテリシンB及びミコナゾール)、及び抗ウイルス剤(例えば、イドクスウリジン・トリフルオロチミジン、アシクロビル、ガンシクロビル、インターフェロン);表面糖タンパク質受容体の阻害剤;抗血小板薬;抗有糸分裂剤;微小管阻害剤;分泌抑制剤;活性阻害剤;リモデリング阻害剤;アンチセンスヌクレオチド;代謝拮抗物質;抗増殖剤(抗血管形成剤を含む);抗癌化学療法剤;抗炎症剤(例えば、ハイドロコルチゾン、酢酸ハイドロコルチゾン、デキサメタゾン21−リン酸塩、フルオシノロン、メドリゾン、メチルプレドニソロン、プレドニソロン21−リン酸塩、酢酸プレドニソロン、フルオロメタロン、ベータメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド);非ステロイド性抗炎症剤(例えば、サリチル酸塩、インドメタシン、イブプロフェン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、ピロキシカム);抗アレルギー剤(例えば、クロモ糖化ナトリウム、アンタゾリン、メタピリリン、クロルフェニラミン、セトリジン、ピリラミン、プロフェンピリダミン);抗増殖剤(例えば、1,3−シスレチノイン酸);充血除去剤(例えば、フェニレフリン、ナファゾリン、テトラヒドラゾリン);縮瞳剤及びコリンエステラーゼ抑制剤(例えば、ピロカルピン、サリチル酸塩、カルバコール、塩化アセチルコリン、フィゾスチグミン、エセリン、フルオロリン酸ジイソプロピル、ヨウ化ホスホリン、臭化デメカリウム)、免疫学的薬物(例えば、ワクチン及び免疫刺激剤);ホルモン剤(例えば、エストロゲン、エストラジオール、プロゲスタチオナール、プロゲステロン、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、ペプチド及びバソプレッシン視床下部放出因子);免疫抑制剤、成長ホルモン拮抗剤、増殖因子(例えば、上皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、形質転換増殖因子ベータ、ソマトトロピン、フィブロネクチン);血管形成阻害剤(例えば、アンギオスタチン、酢酸アネコルテイブ、トロンボスポンジン、抗VEGF抗体);ドーパミン作動薬;放射線療法薬;ペプチド;タンパク質;酵素:細胞外マトリックス成分;ACE阻害剤;フリーラジカルスカベンジャー;キレート剤;抗酸化剤;ポリメラーゼ阻害剤;光線力学療法;遺伝子治療薬;及び他の治療薬、例えば、プロスタグランジン、プロスタグランジン抑制剤、プロスタグランジン前駆体等を含む。
【0110】
抗増殖剤は、細胞の増殖を阻害する、当業者に既知の任意の多くの化合物、物質、治療媒体又は薬物を含む。このような化合物、物質、治療媒体又は薬物は、限定されないが、5−フルオロウラシル、タキソール、ラパマイシン、マイトマイシンC及びシスプラチンを含む。
【0111】
神経保護剤は、神経組織に破壊性又は毒性効果を発揮する性質である神経毒性から守り又は保護する、当業者に既知の任意の多くの化合物、物質、治療媒体又は薬物を含む。このような化合物、物質、治療媒体又は薬物には、限定されないが、ルベゾールが含まれる。
【0112】
抗炎症剤は、ステロイド性又は非ステロイド性であって、炎症過程を妨げ又は抑制する性質を有するものとして一般的に特徴付けられる、当業者に既知の任意の多くの化合物、物質、治療媒体又は薬物を含む。非ステロイド性炎症剤又は化合物は、プロスタグランジンの合成と干渉する方法によって、鎮痛性、解熱性及び抗炎症性を共有する薬物類を含む。このような非ステロイド性抗炎症剤は、限定されないが、インドメタシン、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム及びナブメトンを含む。
【0113】
本発明の方法論における使用に意図されるこのような抗炎症性ステロイドは、米国特許第5,770,589号に記載されるものを含む。例示的な態様では、本発明の方法論における使用に意図される抗炎症性ステロイドは、トリアムシノロンアセトニド(ジェネリック名)である。本発明の方法論における使用に意図されるコルチコステロイドは、例えば、トリアムシノロン、デキサメタゾン、フルオシノロン、コルチゾン、プレドニソロン、フルメトロン、及びそれらの誘導体を含む(同様に、米国特許第5,770,589号を参照されたい)。
【0114】
当業者に既知であるように、増殖因子は、細胞増殖を促進する物質を意味するものとして元々は使用された総称であり、現在、増殖刺激因子(マイトジェン)として機能する分子を記載するために漠然と使用されるが、同様に、増殖阻害剤(負の増殖因子と呼ばれることがある)、細胞移動、即ち、走化性物質として機能し、または主要細胞の細胞移動若しくは侵入を阻害する因子、細胞の分化した機能を調節する因子、アポトーシスに関与する因子、血管形成に関与する因子、又は増殖及び分化に影響を与えずに細胞の生存を促進する因子として使用される。本発明では、このような増床因子は、限定されないが、色素上皮由来因子及び塩基性線維芽細胞増殖因子を含む。
【0115】
当業者に既知であるように、神経栄養因子は、ニューロン生存及び軸索成長を増加することができ、神経系におけるシナプス発生及び可塑性を制御する増殖因子及びサイトカインを説明するために使用される一般用語である。本発明において、このような増殖因子には、限定されないが、毛様体神経栄養因子及び脳由来の神経栄養因子が含まれる。
【0116】
抗血管形成剤は、毛細血管を含む血管の成長及び生成を阻害する、当業者に既知の多くの化合物、試薬、治療媒体又は薬物のいずれかを含む。このような化合物、試薬、治療媒体又は薬物には、限定されないが、酢酸アネコルタブ及び抗VEGF抗体が含まれる。
【0117】
血栓溶解剤は、当業者に既知であり、血栓(blot clot)を溶解し、又は血栓を溶解若しくは分解する多くの化合物、試薬、治療媒体又は薬物のいずれかを含む。このような血栓溶解剤には、限定されないが、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、即ち、TPA及びウロキナーゼが含まれる。
【0118】
インプラント内の生物活性剤組成物は、要望通り追加の柔軟性又は剛性を提供するようにマトリックスを形成するために使用されるポリマーの物理的性質を修飾するように付加的に選択することができる。このような選択は、当業者によって容易に達成することができ、使用されるポリマー及び所望の変更を与えることができる。
【0119】
いくつかの態様では、インプラントは、少なくとも0.0001μg/日、他の態様では少なくとも0.001μg/日、他の態様では少なくとも0.01μg/日、他の態様では少なくとも0.1μg/日、他の態様では少なくとも1μg/日、他の態様では少なくとも10μg/日、他の態様では少なくとも100μg/日、及び他の態様では少なくとも1000μg/日の生物活性剤溶出速度を有する。溶出速度は変化することができ、治療される眼の状態、選択される生物活性剤(又は複数)、及び治療される状態の重症度の各タイプに応じてカスタマイズすることができる。一般的に、インプラントの機械的完全性を維持しながら、装填している全生物活性剤(又は複数)を最大にすることが望まれる。
【0120】
本発明のインプラントは有意な利点を提供することができ、それは、それらが、所望の治療部位(即ち、治療される眼の部分)で直接的な挿入、移植及び生物活性剤の送達用に設計されているためである。いくつかの態様では、インプラントは、脈絡膜及び網膜の障害又は疾患の治療用に設計される。例えば、インプラントは、治療される組織の部分に正確に生物活性剤を送達するように、脈絡膜、網膜又は網膜下の空隙に直接的に挿入され、移植される。このような局在化した送達は効率的であり、治療される眼の部分にのみ実質的に生物活性剤を送達し、健康な組織にいかなる有意な量の生物活性剤を送達しない。本明細書中で使用されるとき、用語「治療される眼の部分にのみ実質的に送達される」とは、インプラントによって送達される少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは全部の生物活性剤が治療される眼の部分に送達されることを意味すると理解される。本明細書中で使用されるとき、用語「健康な組織にいかなる有意な量の生物活性剤を送達しない」とは、インプラントによって送達される全生物活性剤の95%未満、より好ましくは90%未満、より好ましくは80%未満、より好ましくは70%未満、より好ましくは60%未満、より好ましくは50%未満、より好ましくは40%未満、より好ましくは30%未満、より好ましくは20%未満、より好ましくは15%未満、より好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、より好ましくは4%未満、より好ましくは3%未満、より好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満が健康な組織に送達されることを意味すると理解される。
【0121】
これは、眼の疾患及び障害の治療に従来使用されている全身的、局所的、及び全臓器への送達機構とは対照的であり、このような機構は、治療部位に治療的に有効な量の生物活性剤を送達するように、全身的、局所的、経口的又は臓器全体に非常に多くの投薬量の生物活性剤の投与を必要とする。例えば、網膜障害を治療するために治療的に有効な投薬量の生物活性剤を投与するために、約1000〜1,000,000倍の治療的に有効な量の投薬量が全身的又は経口的な投与に必要であるかもしれない。これは生物活性剤の不必要な浪費に起因するだけでなく、このような大量の生物活性剤の送達から不必要な毒性及び/又は副作用を引き起こし得る。ある場合では、全身的、経口的及び全臓器の毒性は、非常に重大であるため、治療的投薬量はこれらの従来の投与法によって達成されない場合がある。さらにこのような送達システムは、このような生物活性剤の投与を必要としない生体の組織及び部分に生物活性剤を送達する。一般的に、例えば、このような送達システムは、眼の疾患部分及び疾患でない部分に生物活性剤を送達する。同様に、全臓器への送達システムはまた非効率であり、治療部位への治療有効量の試薬を提供するような生物活性剤の実質的に多くの投薬量の送達を必要とする。本明細書中で使用されるとき、「局所的な経口送達システム」は、治療される臓器によって一般的に生物活性剤を送達する送達システムを意味すると理解される。このように、例えば、網膜疾患を治療するために使用される局所的、全視覚器官/眼器官の送達システムは、このような臓器の疾患部位よりはむしろ所望の臓器(眼)への生物活性剤を送達するものである。このようなシステムの欠点は、全視覚器官/眼器官が、たとえ器官の疾患部分(例えば、網膜)が実際には治療を必要とするとしても、治療濃度の薬物を受けることである。それにもかかわらず、このような局所的臓器送達システムは、網膜の疾患組織及び眼の健康組織を含む眼全体に生物活性剤を送達する。さらに、このようなシステムは、望まれる治療部位からは幾分離れた眼の部分に生物活性剤を送達する。結果として、臓器(眼全体)に投与しなければならない生物活性剤の量は、生物活性剤が望まれる眼組織に直接かつそれのみに送達されたならば障害又は疾患を治療するために必要であろう治療有効量を超える場合がある。例えば、網膜障害を治療するための治療有効量を投与するために、約100〜1000倍の治療有効な投薬量を、全臓器送達システムを用いて投与されなければならない。このような投与を必要としない臓器部分への生物活性剤の投与は、望ましくない毒性又は副作用を引き起こす場合がある。例えば、網膜障害を有するが、他は健康である眼への生物活性剤の送達は、潜在的に白内障、眼圧上昇、及び硝子体内に沈殿した薬物による視力障害を引き起こす可能性がある。眼の網膜及び脈絡膜の治療は詳細に検討されてきたが、インプラントは、他の眼の部位に特異的な障害の治療に同様に使用することができる。
【0122】
本インプラントは、全臓器送達システムよりも効果的であるため、それらは、全臓器送達システムより不連続な形状を有する。特に、全臓器送達システムは、疾患部位で同様の治療薬物濃度を達成するために多量の生物活性剤を保持し送達することを要求するが、それらは、保持し送達することができる生物活性剤の量を最大にするように設計される。このように、例えば、より大きなインプラント及び/又は複雑な形状(例えば、コロイド状又は曲線プロフィール)を有するインプラントは、生物活性剤を保持するためにより大きな表面積及び/又はより大きな内容積を提供するために必要である。本インプラントは、このような多量の生物活性剤を保持する必要がなく、それ故、必要に応じて必要であるとしても、より大きな及び/又はより複雑な形状である必要はない。
【0123】
本発明はまた、所望の治療部位、特に脈絡膜及び網膜に1以上の生物活性剤を投与することによって眼の障害及び/又は疾患、特に網膜/脈絡膜障害又は疾患を治療及び予防する方法を特徴とする。特に、この方法は、眼内に生物活性剤を移植することによって、治療部位に1以上の生物活性剤を投与することを提供する。一態様では、本発明のインプラントは、所望の治療部位に生物活性剤の持続送達を提供するために眼内に挿入される。このような方法は、主な外傷または網膜の流体物切開の必要性がなく、治療部位の網膜下に生物活性剤の局部的な持続送達を提供する。
【0124】
好ましい方法では、インプラントは、脈絡膜上方であって神経線維層下方の1以上の層に位置される。さらに、必要に応じて、2以上のインプラントは、疾患部位を潜在的に取り囲むように同時に移植されてもよい。さらに、インプラントは、持続放出薬物送達システムとして、及び眼内への移植を達成するために眼構造を自分で孔を開け及び/又は貫通することができる体部として作用することが望まれる。しかしながら、インプラントが挿入される眼内に切開を与えることもまた可能である。
【0125】
インプラントを挿入するための1つの方法は、標準的な扁平部硝子体茎切除を実行し、扁平部硝子体茎切除を介して網膜下の空隙にインプラントを挿入することを含む。特に、患者は、はじめに、例えば、塩酸ケタミン及び塩酸キシアジンの筋内注射で麻酔される。次に、瞳孔は、フェニレフリン及びトロピカミドで拡張される。次に、側頭上部及び鼻上部の四分円で角膜周囲切開がなされる。注入パイプラインは、鼻上部の強膜切開を介して挿入され、硝子体カッターは側頭上部の強膜切開を介して挿入される。次に、硝子体カッター及び注入パイプを使用して、2ポートのコア硝子体茎切除を実行することができる。手術用顕微鏡によって提供される照明は、手術に十分である。眼内の顕微鏡を用いた鉗子を用いて、インプラントは、小さな自動スタートの網膜切開を介して網膜下空隙に挿入される。インプラントは、勾配のある尖った先端を有していてもよく、それによって、網膜下の空隙への挿入を促進する。インプラントは、その位置に留まり、鉗子が眼から引き出される。網膜裂孔を密封するためにレーザー網膜復位を適用する必要はない。輸液ラインは取り除かれ、強膜切開及び結膜開口を閉じる。
【0126】
生物活性剤濃度は、インプラントと組織層との間の距離の関数であり、したがって、インプラントの配置は、溶出源の円又は球の半径に対する特定の投薬量/距離の関係を有する生物活性剤の特定の濃度を提供するようにカスタマイズし得ることがさらに判明している。一連のインプラントは、投薬量をさらにカスタマイズするように併用され得ることが判明している。例えば、2以上のインプラントの球又は円の半径の投薬量/距離の関係が重複する場合、異なる生物活性剤濃度の1以上のゾーンを達成することができる。
【0127】
全部でないにしても、大部分の眼疾患及び障害は、3種の徴候:(1)血管形成、(2)炎症、及び(3)変性の1以上と関連する。特定の障害の徴候に基づいて、当業者は、治療投薬濃度で3つの群から任意の適した生物活性剤を投与することができる。下記は、いくつかの眼疾患及び障害、並びにその治療形態を説明する。しかしながら、下記は、例示を目的とするものであって、眼疾患又は障害の治療のための特定の技術又は生物活性剤に本発明の方法論を限定することを意図しないことは認識されるべきである。
【0128】
例えば、糖尿病性網膜症は、血管形成によって特徴付けられる。本発明は、網膜下の空隙に1以上の抗血管形成因子を送達することによって、糖尿病性網膜症を治療することを意図する。網膜下の空隙にも1以上の神経栄養因子を同時送達することが望まれる。
【0129】
ブドウ膜炎は、炎症を伴う。本発明は、網膜下の空隙に1以上の抗炎症因子を挿入し又は配置することによってブドウ膜炎を治療することを意図する。
【0130】
網膜色素変性は、比較すると、網膜変性によって特徴付けられる。本発明は、網膜下の空隙に1以上の神経栄養因子を挿入し又は配置することによって網膜色素変性を治療することを意図する。
【0131】
加齢黄斑変性は、血管形成及び網膜変性の両方に関係し、限定されないが、乾性加齢黄班変性、滲出性加齢黄班変性、及び近視性変性を含む。本発明は、1以上の神経栄養因子及び/又は抗血管形成因子を網膜下の空隙に挿入し又は配置することによって障害を治療することを意図する。より具体的には、この方法論は、網膜下の空隙にコルチコステロイドの挿入又は配置を意図する。
【0132】
緑内障は、眼圧の増加及び網膜神経節細胞の喪失によって特徴付けられる。本発明で意図される緑内障の治療は、興奮毒性損傷から細胞を保護する1以上の神経保護剤の送達を含む。このような試薬は、N−メチル−D−アスパラギン酸塩(NMDA)拮抗剤、サイトカイン、及び神経栄養因子を含む。
【0133】
本発明は、本発明の理解に役立つことが意図される下記の実施例を参照してさらに説明されるが、その制限として構築されてはいない。
【実施例】
【0134】
実施例
実施例1:
使用した材料:
ポリ(カプロラクトン)(平均Mw80,000、[−O(CH2)5CO−]n、メルトインデックス125℃/0.3MPa、Sigma Aldrich Biochemicals、ミズーリ州セントルイス)
トリアムシノロンアセトニド(TA)(純度99%、Mn434.5、C24H31FO6、Sigma Aldrich Biochemicals、ミズーリ州セントルイス)
プレドニソロン(純度99%、C21H28O5、Mn360.5、Sigma Aldrich Biochemicals、ミズーリ州セントルイス)
クロロホルム(純度99.8%、CHCl3、A.C.S.試薬、Sigma Aldrich Chemicals)
エーテル(純度99%、Mn74.12、(C5H5)2O、A.C.S.試薬、Sigma Aldrich Chemicals)
平衡塩類溶液(無菌、防腐剤不含、Sigma Aldrich Biochemicals、ミズーリ州セントルイス)
【0135】
省略形:
PCL:ポリ(カプロラクトン)生分解性インプラント
TA:トリアムシノロン
PCL/TA:生分解性トリアムシノロン装填ポリ(カプロラクトン)インプラント
【0136】
インプラント製造:
実施例で使用されるインプラントを下記の通り調製した:PCLは、連続撹拌条件下で一晩35℃クロロホルム中に溶解させた。次に、トリアムシノロンアセトニド(TA)は、70:30、60:40又は50:50のポリマー/薬物重量比(wP/wD)で溶液に添加される。溶液が均一になると、蒸発トレイ上に注がれ、そのままドラフト中で72時間凝固させる。TAを装填したPCLの白色の固形状の鞘は密閉カラム中で巻かれ、10mLシリンジに密封した。シリンジを水浴中で80℃まで加熱し、均一な熱分配を確認し、薬物又はポリマーを損傷するであろう局所的な高温を防ぐ。ポリマーは、融解状態では十分ではなかったが、温度は、押し出されるのに十分な粘度状態までこの半結晶性の密閉し密封された巨大分子のポリマーの移動を開始するには十分に高かった。加えて、ポリマー内の薬物結晶体は、このプロセスとPCLのみのインプラント押出しとを比較した場合、「流動増加」可塑剤として作用することが分かった。
【0137】
一度シリンジが80℃に達すると、水浴から素早く取り出し、1cmの材料をそこから押し出した。押し出された材料は、その後、張力を与えることによって、フィラメントに引き伸ばした。70:30、60:40又は50:50のwP/wD製剤については、約150μmのインプラント径は、それぞれ約20、15及び10cmに引き伸ばされた長さによって達成され、一方で、約300μmのインプラント径は、それぞれ約10、15及び5cmに引き伸ばされた長さによって達成される。最も高い薬物装填(50:50のwP/wD)を有する製剤は、加工中、頻繁に破壊した。引き伸ばされたインプラントは迅速に冷却し、その後、所望の挿入長に顕微鏡下で切断することができる。
【0138】
薬物を含まないインプラントはまた、PCLペレットをシリンジに直接挿入し、それらを80℃まで加熱し、次に、前述したのと同じ方法で押出して引き伸ばすことによって調製した。
【0139】
6匹の色素沈着したウサギは、基準時及び移植後4週で蛍光眼底血管造影、眼底撮影、光コヒーレンス・トモグラフィー(Zeiss Model3000、ドイツ)を受けた。ウサギは、下記の群:
1群:PCLのみのインプラントを有する2匹のウサギ(PCL、ウサギ1及び2);
2群:PCL/TA60:40(wP/wD)インプラントを有する4匹のウサギ(ウサギ3〜6)
に再分割した。
【0140】
両群は、標準的な扁平部硝子体茎切除、網膜下の空隙への薬物送達装置の挿入を受けた。簡単には、動物は0.3mLのケタミンヒドロクロリド(100mg/mL;Fort Dodge Lab.,Iowa)及び0.1mLの塩酸キシラジン(100mg/mL;Miles Inc.USA)/kg体重の筋内注射で麻酔した。各2.5%フェニルエフリン及び1%トロピカミドの1滴で瞳孔を拡張した。3mmの角膜周囲切開は、右眼の側頭上部及び鼻上部の四分円で行った。強膜切開は、側頭上部及び鼻上部の四分円の角膜輪部の1〜2mm後部の20ゲージの微小硝子体網膜ブレードで作製した。輸液ラインは、鼻上部の強膜切開を介して挿入され、縫合され、硝子体カッター(Bausch & Lomb,USA)は、側頭上部の強膜切開を介して挿入した。硝子体カッター及び輸液ラインは、2ポートコア硝子体茎切除を介して挿入した。手術用顕微鏡(Zeiss、ドイツ)によって提供される照明は、手術に十分である。
【0141】
眼内顕微鏡用鉗子(Bausch & Lomb,USA)を用いて、インプラントは、小さな自己密閉網膜切開を介して網膜下の空隙に挿入された。インプラントの勾配のある先端は、網膜を介した容易な挿入を可能にした。インプラントは、適所に残され、鉗子は眼から引き抜かれた。網膜裂孔を密封するためにレーザー網膜復位を適用する必要はない。輸液ラインは取り除かれ、Vycril 7−0(Ethicon,USA)を用いて強膜切開及び結膜開口を閉じる。4週間、全てのウサギは眼底検査を受け、次に、ペントバルビタールナトリウム(Anpro Pharmaceuticals,Oyster Bay,NY)の心腔内注射を用いて麻酔下で屠殺した。
【0142】
溶出、薬物押出及び組織学:
インビトロ溶出
インビトロ薬物溶出特性に関して、薬物装填PCLインプラントを表1に従って調製した。
【0143】
【表1】
【0144】
各インプラントは、10mLの1%ウシ血清アルブミン(BSA)/平衡塩溶液(BSS)を含有する15mLのキャップしたチューブに設置した。チューブを振とう水浴(100rpm)で37℃でインキュベートした。2、4、8、24、72、168、336、504及び672時間の各時間増分で、インプラントをBSS/BSA溶液から取り出し、新しい10mlのBSS/BSAに設置した。
【0145】
最終期間後、インプラントをBSS/BSA溶液から取り出し、残存するTAの押出しを完了するために2mLのエーテルを含有するチューブに設置した。エーテル(2mL)及び50μLの内部標準(プレドニソロン2mg/ml)を残ったBSS/BSA溶液に添加した。各溶液を2分間ボルテックスを行い、次に、3分間、10,000rpmで遠心分離し、エーテルとBSS/BSA相を分別した。上部層のエーテル相をガラスシリンジを用いて取り出し、ドラフト中で溶媒蒸発のために2mLのキャップしたマイクロチューブに添加した。蒸発が完了後、1mLの60%メタノールをマイクロチューブに添加し、ボルテックスを行った。次に、分析のために溶液を1mLのガラスセルの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)バイアルに移した。
【0146】
インビトロでの溶出
2匹のウサギ(PCL/TA60:40インプラント)をインビトロの薬物溶出の分析のために使用した。ウサギを麻酔して水分(約0.3mL)及び血液をリチウムヘパリン管(2ml)に回収した。次に、ウサギを安楽死させ、眼を摘出した。移植した装置及び周辺組織(強膜、脈絡膜、網膜、レンズ、及び硝子体)を解剖し、2mLのマイクロチューブに分別した。個々の組織を計量し、次に、0.5mL BSS中で超音波(50%パワーで1〜2パルス/秒)によってホモジナイズした。完了後に、試料を50μLの内部標準(プレドニソロン2mg/ml)を満たし、ボルテックスを行った。エーテル(0.5mL)を添加し、ボルテックスを行い、10,000rpmで10分間遠心分離して、組織試料からTAを抽出した。インビボでの試験について前述したように、上部のエーテル層を取り出し、溶媒を蒸発させ、溶媒をメタノールで置換するために、新しい2mLのマイクロチューブに設置した。
【0147】
515ポンプ、2996フォトダイオードアレイ検出器及び717プラスオートサンプラーを装備したミレニアム高速液体クロマトグラフ(Waters Corp.、USA)は、インビトロ及びインビボでの試料を処理するためにこの試験で使用した。高速液体クロマトグラフィ(HPLC)と一緒に提供されるミレニアムソフトウェアは、クロマトグラフィーのピークの積分のために使用した。溶媒をインラインの脱気剤に連結した。Nova−Pak C18カラム(3.9×150mm)及びNova−Packガードカラム(Waters Corp.,USA)固定相及び60%メタノールの等張移動相からなる逆相HPLCシステムに試料を注入した。TA及びプレドニソロンのピークは、1mL/分の流速で溶出させ、245nmで検出した。並行な50μLのプレドニソロンを同じHPLC条件下でクロマトグラフィーを行い、TAの溶出効率を測定した。さらに、同時クロマトグラフィー技術を採用して、両化合物の同定を有効にした。TA濃度の計算は、ピーク領域及びプレドニソロンの回収率に基づいている。HPLC条件は、良好な分解力でトリアムシノロンとプレドニソロンのピークを分別した。プレドニソロンの保持時間は、3.46分であり、一方、トリアムシノロンの保持時間は5.2分であった。
【0148】
組織学
残りの4匹のウサギ(2匹はPCLのみのインプラントを有し;2匹はPCL/TA60:40インプラントを有する)の眼を摘出し、24時間、4%パラホルムアルデヒドで固定し、次に、さらに24時間、ボーイン固定した。次に、標本をパラフィンに包埋し、切片を作製し、標準的な実験室条件下でヘマトキシリンとエオシン(H&E)で染色した。
【0149】
結果:
1、2、3及び4週でスリットランプを用いた臨床試験及び間接検眼鏡検査は、網膜下の流体、浸出液、フォローアップ時点のいずれかでの装置周辺の出血又は線維の蓄積を検出できなかったことを示した。眼底検査は、代表的なウサギに関して図1に示すように、炎症及び移動の徴候なしに、インプラントはその位置を維持していることを示した。蛍光血管造影は、図1〜2に示されるように、代表的なウサギについてのいずれかのフォローアップ時点で、血管漏れ、プール、網膜色素上皮(RPE)異常、又は線維は示さなかった。光コヒーレンス・トモグラフィーは、図3に示すように、全てのウサギの眼の網膜下の空隙にインプラントの首尾よい置換を示した。
【0150】
様々なインプラント径(150μm対320μm)のトポグラフィー効果はまた、インプラントの部位で網膜厚の比較的な増加によって図3に見ることができる。インプラント径の増加からは異常は報告されなかった。インプラント径の増加は、僅かに多くの厳しい外科手法及び細胞崩壊のより大きな領域をもたらしただけであった。
【0151】
様々なポリマー−薬物比及び配置に関するBSS/BSA(1%)溶液中へのインビトロ溶出速度は、図4〜6に示される。一般的に、溶出速度は、初期の崩壊相とそれに続く後期の一次相を示した。特定の理論にとらわれずに、初期の早期急速放出相は、表面の薬物結晶が媒体中のインプラントの網膜下への吸収に起因し、ポリマーコアからの分散を優先する。この初期の破裂は、局所的な治療投薬量が急速に達成されることが望まれる場合には、特に有用であるかもしれない。異なったポリマー薬物比のそれぞれについて、インプラント径又は薬物:ポリマー比の増加は、溶出される薬物の量の増加をもたらす。理論にとらわれることなしに、これは、薬物の含有量の増加及び/又は表面領域の溶離に起因すると信じられる。より大きな(約300μm)のインプラントについて、PCL/TA70:30〜50:50由来の製剤中の薬物の比の増加はまた、薬物溶出速度を増加させ、一方、薬物のダンピング効果は、薬物比が高く(PCL/TA50:50)、かつインプラント径が小さい場合に発生する。この後者の例では、全薬物放出は、初期の破裂中に発生し、網膜下組織によるTA吸収速度は、おそらく制限因子である。各試験の最初の数時間、全ての溶出プロフィールの近い重なりはまた、溶出の最初の段階での制限工程となるTA吸収速度であることを示した。ポリ(カプロラクトン)は、酵素核酸に疎水性であり、不浸透性である;したがって、膨張、バルク分散又は分解は、生体環境ではなさそうである。特定の理論にとらわれないで、初期の表面から表面下事象の後に発生するTA溶出プロフィールは、TA結晶が生体に積極的に吸収されると、多孔質薬物の境界層が形成し、コアに向ってより深く移動するという結果になると信じられる。結果として、薬物装填が低くなると、薬物吸収中のポリマーの多孔率が小さくなり、TA溶出速度が低くなる。
【0152】
代表的な視像の図7に示される網膜切開のサイズは、100μm未満である。移植したインプラントの例示的な組織学を図8に示す。しかしながら、より小さなサイズの網膜切開は、カスタムな移植ツールの使用で可能となる。
【0153】
初期のインプラントと比較すると、外科後4週間で取り出されたインプラントは、初期のインプラントより、幾分線維質なポリマー微細構造であった。ある研究では、一度、全薬物がインビトロの溶出試験で装置から押出されると、薄片状の線維質/多孔質のポリマー微細構造だけが残った。このポリマーで選択される分子数は、商業的に利用可能な範囲の高程度(Mw80,000)であった。PCLは、Mwの低下によって分解し、そのため、より長期間の分解時間がこの高いMwで期待される。ポリマー分解がフォローアップ期間中に開始されたという徴候はなかった。
【0154】
組織学は、インプラントが、薬物の装填の有無にかかわらず、図8に示されるように、自然には線維状であるようには思われない1又は2の細胞層によってカプセル化されていることを示した。インプラント上方の神経線維層(神経節軸)はそのままであるように見え、一方、インプラント位置の真上の支持細胞は、PCLだけのインプラントでは明らかに存在せず、TA/PCLを移植した眼では幾分崩壊し薄くなっている。Bruchメンバーはそのままであるようだが、インプラントに近接した外部核及びRPE層の細線化及び崩壊の証拠があった。炎症応答の欠如により、PCLは、この組織領域と優れた適合性を示し、観察された細胞変化のバルクは、移植中の機械的な損傷に起因すると考えられる。これらの外部の細胞層の栄養源を妨げる効果などの他の因子はまた、これらの細胞変化に役割を果たすかもしれない。
【0155】
PCLは、皮下に移植されたウサギにおいて無作為な加水分解的鎖切断によって分解される。初期には、鎖切断反応が広まると、分子量の進行的な低下によって分解が明らかになる。しかしながら、PCLの物理的な重量は、分子量が5000になるまで変化せず、即ち、分解の第一段階において重量の喪失はないこともまた示された(Pitt CG.Poly ε caprolactone and its copolymers,In Chassin M Langer R,editors,Biodegradable polymers as drug delivery systems,New York:Dekker;1990.p71−119)。このように、小さなPCL断片の食作用及び代謝は、分解過程の最終段階まで開始しないだろう。さらに、PCLは、1ヶ月のフォローアップ期間で優れた生体適合性を示した。
【0156】
PCL/TA薬物送達システムは、図24及び25に示されるように、PCL単独のインプラントよりも、RPE層の崩壊が小さく、インプラントの近接領域における組織層の細線化が小さいことを示した。しかしながら、これがステロイドの抗炎症効果に原因があるのか又は外科的手法及び配置における可変性に起因しているだけなのか結論付けるのは困難である。インプラントが内在する網膜細胞層崩壊領域は、幅が約300μmであり、長さが2000μmに広がった。神経線維層はインプラント上にそのまま残存するが、網膜切開の部位で崩壊することが分かった。このように、非常な焦点領域の視覚喪失だけが期待され、レーザーフォトコアギュレーション療法よりも確かに小さい浸襲性である。
【0157】
HPLCは、後部組織試料におけるインプラント後4週でTAの存在を確かめた(図9)。TAは、前部構造又は血液において検出されなかった。TAについてのHPLCピークは、図9に示されるグラフ上に記される。存在する追加のピークは、内部標準のプレドニソロンを示す。
【0158】
この初期の調査に基づいて、PCLは、少なくとも1ヶ月のTA溶出能力を有することを示した。組織中の薬物濃度は、後眼部に局在していることを示した。組織学は、PCLの存在から炎症応答を示さなかった。挿入による小さな機械的損傷が観察され、細胞層及び構造における変化の主要な原因であると信じられる。PCLカプセル化はまた明らかであり、移植された材料について期待されている。
【0159】
PCT/US2006/021006
図を支援する説明
図1は、移植後4週で、本発明の一態様に従う移植されたポリ(カーボネート)/トリアムシノロンアセトニド(PCL/TA)インプラントの代表的な眼底写真を示す。
図2は、移植後4週で、本発明の一態様に従う移植されたPCL/TAインプラントの代表的な蛍光眼底血管造影を示す。
図3は、移植後4週で、本発明の態様に従う2種のポリ(カプロラクトン)(PCL)インプラントに関する移植部位周辺の網膜の厚さの代表的な光学コヒーレンストモグラフィーを示す。網膜表面(μm)は、X軸上に表され、網膜の厚さ(μm)は、Y軸上に表される。
【0160】
図4は、本発明の一態様に従う70:30のPCL/TAインプラントに関する代表的なインビトロの累積溶出データを示す。グラフ中、時間(日)は、X軸上に表され、一方、トリアムシノロン(TA、μg)の濃度は、Y軸上に表される。
図5は、本発明の一態様に従う60:40のPCL/TAインプラントに関する代表的なインビトロの累積溶出データを示す。グラフ中、時間(日)は、X軸上に表され、一方、トリアムシノロン(TA、μg)の濃度は、Y軸上に表される。
図6は、本発明の一態様に従う50:50のPCL/TAインプラントに関する代表的なインビトロの累積溶出データを示す。グラフ中、時間(日)は、X軸上に表され、一方、トリアムシノロン(TA、μg)の濃度は、Y軸上に表される。
【0161】
図7は、移植4週後、本発明の態様に従う網膜下のPCL/TAインプラントの代表的な視像及び頻度を示し、(7A)は視神経位置を示し;(7B)はインプラント位置を示し;(7C)及び(7D)は網膜切開の部位を示し;(7E)は外部の強膜表面であり;(7F)はマイクロ鉗子を挿入中のインプラントの近位末端に対する損傷領域の輪郭を描く。
図8は、移植4週後、本発明の一態様に従う150μmのPCL網膜下インプラント(薬物なし)の組織学(H&E染色)を示し、(8A)はデバイス位置を示し;(B)はRPEを示し;(8C)は神経線維層を示し;(8D)は脈絡膜を示し;(8E)は強膜を示す。
図9は、本発明の一態様に従う4週の網膜下移植(PCL/TA 60:40)後のトリアムシノロンアセトニド(TA)の代表的なインビボでの定量検出を示す。
【0162】
実施例2:
すべての手順は、実験動物の治療及び使用に関するガイドライン、USDA動物福祉規則(CFR 1985)及び人道的な実験動物の治療及び使用に関する公共ヘルスサービス政策(1996)、並びに調査、試験、教育又は実演目的のための獣医動物の使用を統治する機関政策に順守する。
【0163】
7匹の色素沈着したウサギ(J1−J7)は、標準的な扁平部硝子体茎切除、及び網膜下の空隙への薬物装置送達の挿入を受けた。動物は、0.3mLの塩酸ケタミン(100mg/mL;Fort Dodge Lab.,Fort Dodge,Iowa)及び0.1mLの塩酸キシラジン(100mg/mL;Miles Inc,Shawnee Mission,Kan)/kg体重の筋内注射で麻酔した。2.5%フェニルエフリン及び1%トロピカミドをそれぞれ1滴で瞳孔を拡大した。3mmの角膜周囲切開は、右眼の側頭上部及び鼻上部で行った。強膜切除は、こめかみ上部及び鼻上部の四分円にある角膜輪部の1〜2mm後部で20ゲージの微細硝子体網膜ブレードで行った。注入パイプラインは、鼻上部の強膜切開を通して挿入し、硝子体カッター(Bausch & Lomb,St Louis,USA)は、側頭上部の強膜切開を介して挿入した。硝子体カッター及び注入パイプは、2ポートのコア硝子体切除を行うために使用した。手術用顕微鏡(Zeiss,Germany)によって提供される照明は、手術には十分であった。眼内顕微鏡用鉗子(Bausch & Lomb,St Louise,USA)を用いて、薬物送達インプラントは網膜下の空隙に挿入され、小さな網膜切除を行った。インプラントの勾配のある形状の先端は、網膜下の空隙への挿入を促進した。インプラントは、その位置で放置し、鉗子を眼から引き出した。網膜裂孔を密封するためにレーザー網膜復位を適用しなかった。輸液ラインは取り除かれ、Vycril 7−0(Ethicon,USA)を用いて強膜切除及び結膜開口を閉じた。
【0164】
表2は、ある種の実験上の変化を概要する。表3は、得られた実験結果を要約する。
【0165】
【表2】
【0166】
【表3】
【0167】
コメント:
スリットランプ及び間接検眼鏡を用いた臨床試験は、フォローアップ期間でTiNi合金、被覆されたポリマー薬物/TiNi合金コア、PCL/TA、及びPCLインプラントの存在からいずれも悪い炎症応答は示さなかった。
【0168】
レンズ接触は、ウサギJ3移植で起こり、白内障形成は、術後1週間からその先で報告された。術後の最初の週で、ウサギJ3に存在する硝子体混濁及び白内障は、初期のデータ収集は解釈するのが難しいとされた。病因不明の硝子体混濁は、術後1週間のウサギJ7に存在するが、2週間までに完全に減少した。
【0169】
蛍光血管造影は、術後2日のウサギJ1及びウサギJ2において血管漏出があることを示した。ウサギJ1は、組織学的データのために、術後2日で屠殺した。漏出は、術後1週でウサギJ2において正常レベルに戻った。血管漏出は、初期の工数低減曲線で、複数の網膜切除試行によって持続したインプラント外傷のレベルからウサギJ1において予期された。血管漏出は、術後1〜2週で、ウサギJ3、J4、J5、J6及びJ7で観察されなかった。
【0170】
ウサギJ7に移植された被覆されたポリマー薬物/TiNi合金コアは、約2.25mmの長さに切断した。特定の形状は、複数の網膜組織層を横断して最終の静止位置を避けることを見出した。これより僅かに大きく、この長さ未満であり、約3mmの所望の上限範囲である類似の形状はまた、複数の網膜組織層を横断する最終の静止位置を避けるであろう。インプラントは、長さにしてより短くなるので、適した挿入及び配置に関してインプラントを操作することがより困難になるかもしれず、さらには、挿入に含有してもよい治療薬/試薬の量が制限されてもよい。
【0171】
実施例3:
使用される材料及び省略形:
コア:
NIT:80μmのエッチング処理されたニチノールワイヤ、Nitinol Devices and Componetns(Freemont CA)から市販されている。
生物活性剤:
RAP:ラパマイシン、LC Laboratories,Woburn MAから市販されている。
【0172】
ポリマー:
pEVA:ポリエチレン酢酸ビニル共重合体(33%wt.酢酸ビニル及び67%wt.ポリエチレン)、Aldrich Chemical Co.から市販されている。
pBMA:ポリ(n−ブチルメタクリレート)、Aldrich Chemical Co.から市販されている。
溶媒:
CHCl3:クロロホルム溶媒、Burdick & Jacksonから市販される。
【0173】
インプラント調製:
被覆用液調製:
被覆溶液は、まずCHCl3溶媒のアリコートに25.0部のpEVA及び25.0部のpBMAを添加することによって調製した。pEVAを溶解するために、成分を約1時間30℃〜40℃まで加熱した。pEVA及びpBMAをCHCl3に溶解後、得られたポリマー/溶媒溶液を室温まで冷却した。次に、50部のRAPをポリマー/溶媒溶液に添加し、RAPを約30分間室温でポリマー/溶媒溶液中でRAPを撹拌した。得られた被覆溶液を10μmのポリプロピレンフィルター(Gelman Sciences pall membrane Part No.61756)を用いてろ過した。最終の被覆溶液は、約40mg/mlの固体(即ち、pEVA、pBMA、及びRAP)を含有した。
【0174】
被覆手順:
NITワイヤをはさみで長さにして約1cmごとに切断した。このワイヤの長さは、イソプロピルアルコールで湿らせたワイプ(Tex WipeによるAlpha Wipe)を用いて汚れを落とした。次に、各ワイヤの長さは、微量天秤(Metler−ToledoのタイプUMX2)を用いて±0.003μgまで計量した。
【0175】
超音波スプレーヘッド(Sono−Tek、Milton,NY)及び被覆溶液用のシリンジポンプシステムからなる超音波コーター装置を用いて被覆用液をNITワイヤ上に噴霧した。円筒状のピン万力は、NITワイヤの末端を保持するために使用した。NITワイヤは、スプレーの焦点で(即ち、スプレーヘッドから約2〜3mm)スプレーと直角に維持し、約200rpmで回転させた。スプレーヘッドは、被覆組成物を塗布するためにNITワイヤ全体に対して縦軸に移動させた。図57に示される格子様パターンは、0.1mmの縦軸方向の動きを伴う被覆に使用した。被覆は、室温(約20℃〜22℃)で一晩、溶媒を蒸発させることによって乾燥させた。得られた被覆は、全長が約3.0mmであり、約300μmの均一な厚さを有する約2.0mmの長さである部分、中心部分の各側面上に移行厚を有する約0.5mmの長さの2つの部分を含む。乾燥後、被覆したNITワイヤは、微量天秤(Metler−ToledoのタイプUMX2)を用いて±0.003μgまで計量した。インプラントの被覆重量は、被覆ワイヤの最終重量から未被覆のワイヤの重量を差し引いて計算した。各インプラント中のRAPの全量は、被覆中のRAPの重量パーセントを表す0.50を被覆重量に掛けることによって計算した。インプラントのポリマー被覆におけるRAPの全量は、26〜89μgの範囲であった(表4を参照されたい)。
【0176】
ウサギに移植する前に、インプラントを約2.3〜3.04mmの長さに切断した(表4を参照されたい)。
【0177】
移植:
眼及び視覚研究における動物の使用に関するARVO陳述に従って実験を行った。
6匹のダッチ種の色素沈着したウサギは、塩酸ケタミン(100mg/mL;Fort Dodge Labs,Fort Dodge,IA)及び塩酸キシラジン(100mg/mL;Miles,Inc.,Shawnee Mission,KS)の4:1の混合物の1〜1.5mLを筋内注射によって一般的な麻酔をした。
【0178】
全てのウサギにおいて、右眼だけを外科手術した。散瞳は、局所の1%トロピカミド及び2.5%フェニルエフリンを用いて達成した。上部四分円に制限された結膜の角膜周囲切開後、20ゲージの微細硝子体網膜ブレードを用いて角膜輪部の約1mm後部に刺切を行った。3匹のウサギ(RS1、RS3及びRS4)では、硝子体切除を行わなかった。硝子体網膜の微小鉗子は、インプラントの端を握るために使用され、強膜切除を介して後部のチャンバーに導入した。円盤状及び脈管状アーケードより数mm小さいインプラントの先端が網膜に穴を開けるために使用された。次に、鉗子は、この網膜切除を介して網膜下の空隙にインプラントをスライドさせるために使用した。
【0179】
3匹のウサギ(RS3、RS5、及びRS6)では、インプラント挿入前に硝子体切除を行った。これらの眼では、1つの強膜切開は、頭側及び別の鼻上部に行った。注入カニューレは、鼻上の強膜切開を介して挿入し、所定の位置で縫合した。硝子体カッターは、頭側の強膜切開を介して導入した。コアの硝子体切開の完了後、網膜切開装置を眼から取り出した。網膜切除した2匹のウサギ(RS5及びRS6)では、円盤状及び脈管状アーケードより数mm小さい25ゲージの針が網膜に穴を開けるために使用され、約0.1mLの平衡塩溶液を網膜下の空隙に注入することによって小さな網膜下のろ過胞を生じるために使用した。次に、微小鉗子を用いて、この位置で網膜下の空隙に網膜切除を介してインプラントを挿入した。ウサギの1匹(RS3)では、網膜下のろ過胞は生じなかった;むしろ、インプラントは、上述した方法による網膜切開後に網膜の真下に直接挿入した。
【0180】
全てのラットでは、インプラントが挿入された後に装置を眼から取り出し、強膜切開を7−0 Vicryl縫合(Johnson and Johnson,Piscataway,NJ)で閉じた。結膜は、二次的意向によって閉じたままであった。ゲンタマイシン(40mg/mL溶液0.2mL)の結膜下注射を実行した。
【0181】
モニタリング及び評価:
間接的な検眼鏡試験、眼底撮影、蛍光血管造影、及び光学コヒーレンストモグラフィーは、術後の1、2、及び4週で各ウサギの右眼で実行した。4週後、試験を完了し、ウサギをペントバルビタールナトリウム(Anpro Pharmaceuticals,Arcadia,CA)の心臓内注射で安楽死させた。各ウサギの右眼は除核され、4%のパラホルムアルデヒド中に24時間置いた。次に、眼をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水中に移し、さらに切開するまで4℃で保存し、その時、後部ポールで網膜−脈絡膜−強膜複合体の2cm×2cmのブロックに区切った。これをパラフィンに包埋し、切片にし、標準的な方法を用いてヘマトキシリン及びエオシンで染色した。
【0182】
移植結果:
インプラントは、3匹のウサギでは網膜下の空隙に移植され、1匹のウサギではRPE下の空隙に移植された(表4)。4個の眼(RS1−RS4)では、インプラントの移植前には網膜下の流体のろ過胞は生じなかった。これらのケースでは、1つの網膜下の移植(RS1)、1つのRPE下の移植(RS3)、及び移植時に2つの失敗した試みがあった。2つのケース(RS5及びRS6)では、網膜下の流体のろ過胞は、インプラント配置前に生じた。これらの両方の例では、インプラントは、容易に網膜下の空隙に挿入された。
【0183】
移植領域全体で硝子体の有無は、手法の容易さを決定する因子であることが分かった。硝子体切除が行われていないケースの1つ(RS1)では、外科医は、網膜下の空隙にインプラントを挿入することができ、インプラントは鉗子を取り出すときに所定の位置に残す。しかしながら、2匹のウサギ(RS2及びRS4)はともにインプラント移植前に硝子体切除を受けておらず、試みた移植中に複数の網膜切除の作製のため、外科処置時に屠殺した。これら2つの場合では、硝子体は、インプラントに付着し、移植鉗子が引き抜かれる際に網膜下の空隙から出口にそれを引き起こすことによって良好な移植を妨げた。それに反して、硝子体切除が移植前に実行された場合(RS3、RS5、及びRS6)、インプラントを離し、装置の位置を邪魔することなしに鉗子を引き抜くことが可能であった。
【0184】
ウサギの眼におけるインプラントの寛容:
全ての計画されたフォローアップ試験は、移植を受けた4匹のウサギのうち3匹(RS1、RS3、及びRS5)に関して1ヶ月に亘って完了した。1匹のウサギ(RS6)では、後部癒着が1〜2週で発生し、それで散瞳が2及び4週でフォローアップ試験で達成しなかった。結論として、蛍光血管造影(FA)及び光学コヒーレンストモグラフィー(OCT)試験は、これらの検査で実行されなかった。インプラントを受けた4個の眼のいずれにも網膜剥離は起こらなかった。
【0185】
3匹のウサギ(RS1、RS3、及びRS5)では、フォローアップ試験において炎症又は毒性の徴候は検出されなかった。さらに、インプラントは、それらの初期の移植部位から移動しなかった。RS1では、装置移植前に網膜下の流体のろ過胞は生じておらず、1週で、手術による少量の残った網膜下の出血は、蛍光血管造影上の閉塞を引き起こすインプラントに隣接して存在したままであった。これは、時間の経過とともに解決され、それにより、網膜下の出血からの少ない閉塞は、2週で認識し、4週ではなかった。そうでなければ、血管造影図は装置によって閉塞したことだけを示した。OCTはまた、装置の網膜下の位置を確認にした。近接した網膜又はRPEに対する萎縮又は損傷の証拠がなかった。RS5では、網膜下の流体のろ過胞は、正しい網膜下の装置の配置を支援するように生じ、任意の時間点で認識される網膜下の出血はなかった。蛍光造影は、外科処置中、器具接触の部位である装置の下の直線状の低蛍光斑を示した。さらに、軽度の低色素沈着は、装置周辺に観察することができ、これは、網膜下のろ過胞が生じた領域に対応している。
【0186】
RS6では、1及び2週での試験は、移植部位でインプラントは安定であること示し、近接する組織は正常に見えた。軽度の前部チャンバー内炎症及び後部癒着は2週までに発生し、それによって、散瞳は損傷され、撮影が困難であった。間接的な検眼鏡検査は、後部チャンバー内炎症の証拠を示さなかった。
【0187】
RS3では、装置はRPEの真下に移植され、インプラントはまた、安定な位置のままであり、近接領域のいずれの視覚可能な異常は起こらなかった。インプラントは、試験で直接視覚化されなかったが、血管造影はそれによって閉塞を示し、OCTはその位置を裏付けるように見えた。
【0188】
組織学的結果:
インプラントが網膜下に移植された眼では、移植部位の後部ポールの断面は、装置を覆っている光受容体の喪失を示した。近接する構造は正常であるように見えた。
【0189】
【表4】
【0190】
実施例4:
材料及び省略形:
コア材料:
NIT:80μmのエッチング処理されたニチノールワイヤ、Nitinol Devices and Componetns(Fremont CA)から入手できる。
PMMA:ポリ(メタクリル酸メチル)ポリマー、Biogeneral Inc.(San Diego、CA)から入手される。
CG:クロムガット、Ethicon(Somerville,NJ)から入手される。
【0191】
ポリマー:
pEVA:ポリエチレン酢酸ビニル共重合体(33%wt.酢酸ビニル及び67%wt.ポリエチレン)、Aldrich Chemical Co.から市販される。
pBMA:ポリ(n−メタクリル酸ブチル)、Aldrich Chemical Co.から市販される。
【0192】
溶媒:
CHCl3:クロロホルム溶媒、Burdick & Jacksonから市販される。
THF:テトラヒドロフラン溶媒、Burdich & Jacksonから市販される。
生物活性剤:
RAP:ラパマイシン、LC Laboratories,Woburn MAから市販される。
TA:トリアムシノロンアセトニド、Pfizer Center Source,Kalamazoo,MIから市販される。
【0193】
インプラント調製:
TA被覆溶液調製(被覆溶液1):
被覆溶液は、まずTHF溶媒のアリコートに22.5部のpEVA及び27.5部のpBMAを添加することによって調製した。pEVAを溶解するために、成分を約1時間30℃〜40℃まで加熱した。pEVA及びpBMAをTHFに溶解した後、得られたポリマー/溶媒溶液を室温まで冷却した。次に、50部のTAをポリマー/溶媒溶液に添加し、TAを約30分間室温で、ポリマー/溶媒溶液中で撹拌し、被覆溶液を形成した。得られた被覆溶液は、10μmのポリプロピレンフィルター(Gelman Sciences pall membrane Part No.61756)を用いてろ過した。最終の被覆溶液は、約60mg/mlの固体(即ち、pEVA、pBMA、及びTA)を含有した。
【0194】
RAP被覆溶液調製(被覆溶液2):
被覆溶液は、まずCHCl3溶媒のアリコートに10部のpEVA及び30部のpBMAを添加することによって調製した。pEVAを溶解するために、成分を約1時間30℃〜40℃まで加熱した。pEVA及びpBMAをCHCl3に溶解した後、得られたポリマー/溶媒溶液を室温まで冷却した。次に、60部のRAPをポリマー/溶媒溶液に添加し、RAPを約30分間室温で、ポリマー/溶媒溶液中で撹拌し、被覆溶液を形成した。得られた被覆溶液は、10μmのポリプロピレンフィルター(Gelman Sciences pall membrane Part No.61756)を用いてろ過した。最終の被覆溶液は、約40mg/mlの固体(即ち、pEVA、pBMA、及びRAP)を含有した。
【0195】
pBMA被覆溶液調製(コア溶液3):
被覆溶液は、まずCHCl3溶媒のアリコートにpBMAを添加することによって調製した。pBMAを溶解するために、成分を約3時間室温で撹拌した。得られた被覆溶液は、10μmのポリプロピレンフィルター(Gelman Sciences pall membrane Part No.61756)を用いてろ過した。最終の被覆溶液は、約10mg/mlのpBMAを含有した。
【0196】
被覆手順:
コア材料は、はさみで長さにして約1cmごとに切断した。イソプロピルアルコールに浸したワイプ(Tex WipeのAlpha Wipe)を用いてコアの汚れを落とした。次に、各コアは、微量天秤(Metler−ToledoのタイプUMX2)を用いて±0.003μgまで計量した。
【0197】
超音波スプレーヘッド(Sono−Tek、Milton,NY)及び被覆溶液用のシリンジポンプシステムからなる超音波コーター装置を用いて被覆用液をコアの長さ上に噴霧した。円筒状のピン万力は、コアの末端を支えるために使用した。コアは、スプレーの焦点で(即ち、スプレーヘッドから約2〜3mm)スプレーと直角に維持し、約200rpmで回転させた。スプレーヘッドは、被覆組成物を塗布するためにコア全体に対して縦軸に移動させた。図57に示される格子様パターンは、0.1mmの縦軸方向の動きを伴う被覆に使用した。被覆は、室温(約20℃〜22℃)で一晩、溶媒を蒸発させることによって乾燥させた。RAP徐放製剤については、CHCl3(被覆溶液3)に溶解したpBMAからなる追加の被覆が、乾燥したRAP/pEVA/pBMA被覆全体に噴霧された。被覆は、室温(約20℃〜22℃)で一晩溶媒を蒸発させることによって乾燥させた。得られたインプラントは、微量天秤(Metler−ToledoのタイプUMX2)を用いて±0.003まで計量した。
【0198】
TAを含むインプラント(被覆溶液1から調製される)は、全長が約2mmであり、約250μmの均一な厚さを有する約1mmの長さの中心部分、その中心部分の各側面上に移行厚を有する約0.5mmの長さの2つの部分を含む。
【0199】
RAPを含むインプラント(被覆溶液2及び被覆溶液3(RAP徐放)から調製される)は、全長が約2.5mmであり、約350μmの均一な厚さを有する約1.5mmの長さの中心部分、その中心部分の各側面上に移行厚を有する約0.5mmの長さの2つの部分を含む。
【0200】
インプラントは、長さが約1mmの非被覆のコア材料の尾部を含み、眼の外科用器具と連結するための操作領域を提供する。これはまた、移植中の基盤の溶出部分に対していずれかの損傷を防いだ。
移植前に、インプラントは、エチレンオキシドガスによって滅菌した。
【0201】
移植:
参加した全ての研究者は、実験動物の治療及び使用に関するガイドライン、人道的な実験動物の治療及び使用に関するOPRR公衆衛生局政策(1986年改訂)、米国動物保護法(修正)、調査、試験、教育又は実演目的のための獣医動物の使用を支配する視覚及び眼科学における研究期間及び協会(ARVO)に順守した。
【0202】
塩酸シクロペントレート1%(Bausch & Lomb、Rochester,NY)及び塩酸フェニルエフリン5%(Bausch & Lomb)の各1滴を用いて移植前に瞳孔を完全に拡張した。0.3mLの塩酸ケタミン(100mg/mL;Fort Dodge,Labs,Fort Dodge,IA)及び0.1mLの塩酸キシラジン(100mg/mL;Miles,Inc.,Pittsburgh,PA)/kg体重の筋内注射によってウサギを麻酔した。眼周囲の外科プレップは、1:10に希釈した食塩水中のポビドンヨードを用いて領域を消毒することによって実行した。眼の表面は、1:20に希釈した食塩水中のポビドンヨードを用いてプレップした。ウサギを手術用顕微鏡下に配置し、布で覆った。ワイヤ眼瞼検鏡を配置した。
【0203】
3mmの角膜周囲切開は、右眼の側頭上部及び鼻上部の四分円で行った。強膜切開は、20ゲージの微小硝子体網膜ブレードを用いて、側頭上部及び鼻上部の四分円に角膜輪部の1〜2mm後部で行った。輸液ラインは、鼻上部の強膜を介して挿入され、縫合し、硝子体カッターを側頭上部の強膜を介して挿入した。2ポートのコア硝子体切除は、手術用顕微鏡(Carl Zeiss Ophthalmic Systems,Inc.)によって提供された照明で行った。眼内顕微鏡用鉗子は、表5によって示されるように、網膜下の空隙に薬物送達インプラントを挿入するために使用した。羽根状及び半剛体構造のインプラントは、容易な挿入を可能にした。インプラントを所定の位置に残した状態で、鉗子を眼から引き抜いた。網膜裂孔を密封するためにレーザー網膜復位を適用しなかった。輸液ラインは取り除かれ、Vycril 7−0(Ethicon)を用いて強膜切開及び結膜開口を閉じた。外科手術の終わりに、抗生物質、40mg/mlのゲンタマイシン0.1cc(Phoenix Scientific,St.Joseph,MO)及び2mg/mlのデキサメタゾン0.1cc(Phoenix Scientific)の結膜下注射は、外科処置部位から遠ざけて投与した。エリスロマイシン抗生物質軟膏(Eli Lilly & Co.,Indianapolis.IN)は、処置後2日間、処置した眼に毎日塗布した。Buprenex(Reckitt Benckiser,Richmond VA)は、2日間、毎日与えた。Harlan High Fiber Rabbit Diet #2031は毎日与えた。水を適宜与え、自動給水システムを介して送達させた。実験番号、研究員、動物数、試験コード、性別、及び受領日を示したカードによって区別したぶら下げたステンレススチールケージに動物を個別に入れた。光サイクルは、自動タイマー(12時間明るく、12時間暗い)を用いて調節した。
【0204】
間接的な検眼鏡検査及び20ジオプターレンズ(Vantage Indirect Ophthalmoscope,Keeler Ltd.,Windsor,England)を用いて完全な眼科検査は、基準、術後1、2、及び4週間で行った。各試験前に、0.3mLの塩酸ケタミン(100mg/mL)及び0.1mLの塩酸キシラジン(100mg/mL)/kg体重の筋内注射で動物を麻酔した。塩酸シクロペントレート1%(Bausch & Lomb)及び塩酸フェニルエフリン5%(Bausch &Lomb)の各1滴を用いて瞳孔を完全に拡張した。検鏡をウサギの眼の眼瞼を分けるために使用した。臨床試験は、巨視的な表面の評価から後部及び前部構造の詳細な間接的眼科用顕微鏡試験へと進めた。眼底撮影(VISUPAC/System 451を有するZeiss FF 450plus IR Fundus Camera)及び光学コヒーレンストモグラフィー(OCT III、Carl Zeiss Ophthalmic Systems,Inc.)を使用して、各ケース及び任意の特定の所見を立証した。結膜は、赤み、結膜浮腫、薄層化、損傷、線維成長、及び排出について視覚的に調べた。角膜は、新血管形成、潰瘍及び浮腫の徴候について調べた。白内障形成についてレンズを検査し、移植中に起ったかもしれないいずれかのレンズ接触についてさらに評価した。前部チャンバー内の任意の紅班又は細胞の存在あるいは瞳孔形状の変化はまた認識された。虹彩は、充血、虹彩ルベオーシス、隆起及び癒着について調べた。硝子体は、出血及び炎症性残骸について調べた。網膜は、任意の損傷、裂傷、剥離又は出血について調べた。インプラントの任意の押出し又は移動はまた評価された。
【0205】
結果:
網膜下薬物送達インプラントは、表5によれば、20/24のウサギの右眼(OD)に外科的に移植した。インプラントの設計及び形状は、いくつかのプロトタイプの試験を通じて最適化した。網膜における貫通の最適な長さは、2.75mmであった。これより長い貫通の長さは、出血の合併症の増加をもたらす。24匹のウサギのうち4匹は、外科処置の初期で屠殺した:3匹は、流体プールから網膜剥離をもたらす輸液ラインの流速装置に関する外科的合併症のためであり、1匹は、鈍器の外傷によって引き起こされた制御不能な網膜出血のためである。尾部は、標準的な眼内微小鉗子で上手くつかめるようにインプラントのデザインに含めた。外科的処置は、3人の硝子体網膜の外科医によって実行し、期間が相対的に短く、各外科的処置は、麻酔が効き始めた時点から15分未満継続した。眼内レンズ接触は、6匹のウサギで発生し、レンズ切除は、鉗子に対する視覚通路を明確にするために、6匹のうち4匹において実質的に実行した。焦点白内障は、レンズ切除を受けなかった2匹のウサギで発症した。ウサギ及びヒトの眼は、いくつかの重要な構造的特徴を共有するが、ウサギのレンズは、実質的により大きなサイズであり、後部位置のために避けるにはより困難である。
【0206】
手術後のフォローアップのいずれの時点でもウサギを屠殺しなかった。全ては、試験期間中、全般的に良好な健康状態であった。1、2及び4週のフォローアップ臨床試験は、対照群及びトリアムシノロンアセトニドインプラント群の両方において良好なインプラントの生体適合性、重篤な外科的合併症がないことを反映した。術後1日、全ての眼は、外科処置及び縫合から僅かな結膜の赤みを示した。術後1週までに、結膜の赤みは、4匹の動物を除いて全てにおいて消失した。術後2週までに、結膜の赤みは、全ての動物において消失した。術後1週までに、1匹のウサギは、角膜血管新生及び脚による過剰な引っかきが原因の浮腫を発症した。術後1週までに、3匹のウサギは、脚による過剰な引っかきが原因の角膜浮腫を発症した。全てのケースは、潤滑剤、予防的抗生物質軟膏剤及び引っかき防止頸部ギプスによって術後2週までに解決した。永続的な角膜の引っかき又は不透明性は生じなかった。これらのウサギは、外科処置中にレンズ切除を受け、したがって、追加の外傷を受けた。結膜の浮腫、薄層化、線維性組織成長又は結膜病変の徴候はなかった。1、2、及び4週での臨床試験は、フォローアップのいずれかの時点で装置周辺に検出可能な網膜下流体、浸出液又は線維症の蓄積は示さなかった。局在化した網膜出血は、おそらくは移植中の網膜色素の上皮に対する損傷から外科処置の完了時に5匹のウサギにおいて認識された。これは、この試験の完了によって3匹のウサギに対して退行した。眼底検査は、網膜切除、ある場合には装置外傷からの外科的手法の間に認識したもの以外には網膜裂傷は示さなかった。眼底写真は、炎症又は増殖の徴候を示さず、インプラントがその位置で維持したことを示した。光学コヒーレンストモグラフィーは、全てのウサギの眼の網膜下の空隙にインプラントの良好な配置を示した。
【0207】
図20に示した単一のTiNiコアの網膜下インプラントは、図21に示した二重の外科的インプラントと対比された。外科手術準備では、疾患部位周辺への一連の薬物送達装置の移植は、その増殖の調節に有害であることを証明することができた。図22は、PMMAコア移植を示す。PMMAのようなポリマーは、コンタクトレンズ及び眼内レンズにおけるそれらの使用を伴う眼科産業において長期の歴史があり、金属インプラントよりは良く受け入れられるかもしれない。クロムガットコアインプラントはまた、良好であることが明らかにされた。ここで、この概念は、握るための尾部を用いて装置を移植し、次に、尾部を長期間生体吸収させることである。外科手術のスケジュールにより、このウサギは、実際には、生体吸収可能なクロムガットの縫合材料の炎症反応及び優れた生体適合性の徴候を示さず、45日後に屠殺した。クロムガットコアは、45日後でさえ、生体吸収の徴候を示さなかった。縫合糸として使用した場合、クロムガットは、90日以内に全体的に生体吸収されることが期待されるが;しかし、本出願人の結果は、この網膜下適用により低い生分解性率を有するかもしれないことを示唆する。
【0208】
表5に示される悪い外科的徴候、特に試験群においては、レンズへの器具外傷、及び眼圧を維持する輸液ライン装置に対する流速調節の喪失によって引き起こされる。臨床徴候の結果を表6に提示する。網膜指示以外で、全ての悪い臨床的所見(硝子体および前部チャンバー)は、ラパマイシン移植群において見られた。ウサギ13及び15は、硝子体炎症性残骸及び虹彩癒着があった。ウサギ14は、前部チャンバーに細胞を有し(結果として、増殖へと導かれる)、異常な瞳孔形状を有した。ウサギ16は、角膜浮腫及び角膜潰瘍があった。ウサギ17では、角膜浮腫、角膜潰瘍及び角膜血管新生があった。ウサギ18は、異常な瞳孔形状、虹彩癒着及び硝子体炎症性残骸があった。これらの臨床徴候は、ラパマイシンが、現在の投薬量でウサギの眼に対して毒性であるかもしれないことを示唆する。網膜徴候は、組織にに対する鉗子による外傷と関連し、特定のインプラント群に特異的ではなかった。
【0209】
この試験の完了時点で、全てのインプラントは、首尾よく取り出された。網膜下の空隙からのインプラントの除去は無傷であった。一度、動物は麻酔され、外科処置の準備がされると、5分未満でインプラントを取り出した(図23)。除去を妨げる付着した組織はなかった。さらに、インプラントは損なわれておらず、カプセル化されているようでなかった。インプラントの尾部は、周辺に残され、除去過程を促進した。薬物装填インプラントの表面微細構造及び半透明の変化が見られ、薬物溶出として微小孔の形成と関連する。薬物を含まないインプラントは、これらのタイプの材料から期待されるように、この試験全体で外見は変化しなかった。ラパマイシン薬物群を除いて、全てのウサギは、装置の良好な生体適合性の徴候である炎症反応の兆候及び一般的な健康の変化がない状態で屠殺した。
【0210】
実施例は、眼内注射又は硝子体内インプラントによる眼の硝子体チャンバーへ直接薬物を導入する代わりに網膜下の薬物送達プラットフォームの使用を首尾よく示した。対照群及びトリアムシノロンインプラントは、良好な生体適合性及び有効性を示し、ラパマイシン装填インプラントは、この投薬量で毒性の徴候を示した。インプラントの除去は、複雑な手法でない。インプラントは構造的に無傷であり、薬物装填されたものについては、表面は、薬物が溶出するにつれて多孔性を生じ始めた。
【0211】
【表5】
【0212】
【表6】
【0213】
図を支援する説明
図20は、移植4週でのトリアムシノロンアセトニドを装填した1つのTiNiコア網膜下インプラントの代表的な眼底写真及び光学コヒーレンストモグラフィーを示し、(20A)は視神経を指し;(20B)は網膜下インプラントを指し;(20C)は網膜切除の部位を示し;(20D)は網膜周辺に位置するインプラント尾部を指し;(20E)は光学コヒーレンストモグラフィーを用いたインプラントの断面の深さ位置を指し;(20F)はRPE及び神経線維層を示し;(20G)はインプラントを取り囲む局所的な網膜剥離であり;(20H)は脈絡膜である。
【0214】
図21は、移植1週でのトリアムシノロンアセトニドを装填した二重のTiNiコア網膜下インプラントの代表的な眼底写真及び光学コヒーレンストモグラフィーを示し、(21A)は視神経を指し;(21B)及び(21C)は網膜下インプラントを指し;(21D)は網膜剥離部位を示し;(21E)は網膜周辺に位置するインプラント尾部を指し;(21F)及び(21G)は光学コヒーレンストモグラフィーを用いたインプラントの断面の深さの位置を指し;(21H)はRPE及び神経線維層を示し;(21I)は脈絡である。
【0215】
図22は、移植1週でのラパマイシンを装填したPMMAコア網膜下インプラントの代表的な眼底写真であり、(22A)は視神経を指し;(22B)は網膜下インプラントを指し;(22C)は網膜切除の部位を示し;(22D)は網膜周辺に位置するインプラント尾部を指す。
【0216】
図23は、代表的なインプラントの回復外科手術を示し、(23A)は結膜切開を示し;(23B)は強膜切除を示し;(23C)は外科用微小鉗子を示し;(23D)はインプラントを取り出すために硝子体から網膜に伸長する微小鉗子を示し;(23E)はインプラントの尾部を握る微小鉗子を示し;(23F)は取り出されたインプラントを示す。
【0217】
本発明の他の態様は、本明細書の考慮に応じて、又は本明細書中に開示された発明の実施から当業者には明確であろう。本明細書中に記載した原理及び態様に対する様々な省略、修飾、及び変更は、添付の請求の範囲によって指示される発明の真の範囲及び精神から逸脱することなしに当業者によってなされてもよい。本明細書中に引用される全ての特許、特許文献及び刊行物は、個別に援用されているかのように参照により援用される。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】図1は、移植後4週で、本発明の一態様に従って移植されたポリ(カプロラクトン)/トリアムシノロンアセトニド(PCL/TA)インプラントの代表的な眼底写真を示す。
【図2】図2は、移植後4週で、本発明の一態様に従って移植されたPCL/TAインプラントの代表的な蛍光眼底血管造影を示す。
【図3】図3は、移植後4週で、本発明の態様に従って2種のポリ(カプロラクトン)(PCL)に関する移植部位周辺の網膜の厚さの代表的な光学コヒーレンストモグラフィーを示す。網膜表面(μm)は、X軸上に表され、網膜の厚さ(μm)は、Y軸上に表される。
【図4】図4は、本発明の一態様に従って70:30のPCL/TAインプラントに関する代表的なインビトロの累積溶出データを示す。グラフ中、時間(日)は、X軸上に表され、一方、トリアムシノロン(TA、μg)の濃度は、Y軸上に表される。
【図5】図5は、本発明の一態様に従って60:40のPCL/TAインプラントに関する代表的なインビトロの累積溶出データを示す。グラフ中、時間(日)は、X軸上に表され、一方、トリアムシノロン(TA、μg)の濃度は、Y軸上に表される。
【図6】図6は、本発明の一態様に従って50:50のPCL/TAインプラントに関する代表的なインビトロの累積溶出データを示す。グラフ中、時間(日)は、X軸上に表され、一方、トリアムシノロン(TA、μg)の濃度は、Y軸上に表される。
【図7】図7は、移植4週後、本発明の態様に従って網膜下のPCL/TAインプラントの代表的な視像及び頻度を示し、(7A)は視神経の位置を示し;(7B)はインプラントの位置を示し;(7C)及び(7D)は網膜切除部位を示し;(7E)は外部の強膜表面であり;(7E)は微小鉗子を挿入中のインプラントの近位末端に対する損傷領域の輪郭を描く。
【図8】図8は、移植4週後、本発明の一態様に従って150μmのPCL網膜下インプラント(薬物なし)の組織学(H&E染色)を示し、(8A)はデバイスの位置を指し;(B)はRPEを示し;(8C)は神経線維層を示し;(8D)は脈絡膜を示し;(8E)は強膜を示す。
【図9】図9は、本発明の一態様に従って4週の網膜下移植(PCL/TA 60:40)後のトリアムシノロンアセトニド(TA)の代表的なインビボでの定量検出を示す。
【図10】図10は、図11の網膜下インプラントの代表的な縦軸方向の断面図を示す。
【図11】図11は、本発明の一態様に従って網膜下インプラントの側面の代表的な説明図を示す。
【図12】図12は、図13の網膜下インプラントの代表的な縦軸方向の断面図を示す。
【図13】図13は、本発明の一態様に従って網膜下インプラントの側面の代表的な説明図を示す。
【図14】図14は、本発明の一態様に従って網膜下インプラントの代表的な説明図を示す。
【図15】図15は、焦点を通過するスプレーストリームの代表的な概略図である。
【図16】図16は、スプレーヘッドから遠くへ移動するにつれて継続して拡張するスプレイストリームの代表的な概略図である。
【図17】図17は、本発明のコーティングインプラントに有用なグリッド様コーティングパターンの代表的な概略図である。
【図18】図18は、コア材料全体に重ねた格子様コーティングパターンの代表的な概略図である。
【図19】図19は、コア材料全体に重ねた一連の第1の横木の代表的な概略図である。
【図20】図20は、移植4週で、トリアムシノロンアセトニドで装填した単一のTiNiコアの網膜下インプラントの代表的な眼底写真及び光学コヒーレンストモグラフィーを示し、(20A)は視神経を示し;(20B)は網膜下インプラントを示し;(20C)は網膜切除部位を示し;(20D)は網膜周辺に位置されるインプラント尾部を示し;(20E)は、光学コヒーレンストモグラフィーを用いたインプラントの断面の深さ位置を示し;(20F)は、RPE及び神経線維層を示し;(20G)はインプラントを取り囲む局所的網膜剥離であり;そして、(20H)は脈絡膜である。
【図21】図21は、移植1週で、トリアムシノロンアセトニドで装填した単一のTiNiコアの網膜下インプラントの代表的な眼底写真及び光学コヒーレンストモグラフィーを示し、(21A)は視神経を示し;(21B)及び(21C)は網膜下インプラントを示し;(21D)は網膜切除部位を示し;(21E)は網膜周辺に位置されるインプラント尾部を示し;(21F)及び(21G)は、光学コヒーレンストモグラフィーを用いたインプラントの断面の深さ位置を示し;(21H)はRPE及び神経線維層を示し;そして、(21I)は脈絡膜である。
【図22】図22は、移植1週間で、ラパマイシンで充填したPMMAコア網膜下インプラントの代表的な眼底写真を示し、(22A)は視神経を示し;(22B)は網膜下インプラントを示し;(22C)は網膜切除部位を示し;そして、(22D)は網膜周辺に位置されるインプラント尾部を示す。
【図23】図23は、代表的なインプラント回復外科手術を示し、(23A)は結膜切開を示し;(23B)は強膜切開を示し;(23C)は外科用微小鉗子を示し;(23D)はインプラントを取り出すために硝子体を通って網膜まで伸長する微小鉗子を示し;(23E)はインプラントの尾部を握る微笑鉗子を示し;そして、(23F)は取り出したインプラントを示す。
【技術分野】
【0001】
本出願は、「網膜疾患を治療及び/又は予防するための生物活性剤を網膜下に投与するための脈絡膜及び網膜用の持続送達装置並びに方法」と題する、2005年4月8日出願の米国仮出願シリアル第60/669,701号の利益を主張し、これは、参照により本明細書中に全体として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、眼、具体的には、眼の障害又は疾患を有する哺乳動物の眼を治療するための持続放出インプラント及び方法に関する。より具体的には、本発明は、1以上のインプラントの使用によって、網膜下に1以上の生物活性剤を投与するためのインプラント及び方法に関する。本明細書中に記載したインプラント及び方法を使用することによって、1以上の生物活性剤の送達は、所望の治療部位、具体的には、脈絡膜及び網膜に位置することができる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
哺乳動物の眼の視力を脅かす障害又は疾患が多数存在し、限定されないが、網膜、網膜色素上皮(RPE:retinal pigment epithelium)及び脈絡膜の疾患が含まれる。このような視力を脅かす疾患には、例えば、眼球の新生血管形成、眼球の炎症及び網膜の変性が含まれる。これらの疾患状態の具体例は、糖尿病性網膜症、慢性緑内障、網膜剥離、鎌状赤血球網膜症、加齢性黄斑変性症、網膜新生血管形成、網膜下新生血管形成;虹彩ルベオーシス炎症性疾患、慢性後部及び汎ブドウ膜炎、新生物、網膜芽腫、偽網膜膠腫、血管新生緑内障;併用した硝子体茎切除及び水晶体切除後に生じる新生血管形成、血管疾患、網膜虚血、脈絡膜血管機能不全、脈絡膜血栓症、視神経の新生血管形成、糖尿病性黄斑浮腫、類嚢胞黄斑部浮腫、黄斑浮腫、網膜色素変性症、網膜静脈閉塞、増殖性硝子体網膜症、網膜色素線条、及び網膜動脈閉塞、並びに眼の穿通又は眼外傷による新生血管形成を含む。
【0004】
例えば、加齢性黄斑変性症(AMD:age−related macular degeneration)は、米国において、50歳以上の白人における不可逆的であって重篤な中心視の喪失の主要な原因である。1990年の米国の国勢調査によると、65歳を超えるおよそ750,000人が、AMDによる一方又は両方の眼における重篤な視力障害と推定されている。また、AMD症例の数は、1970年の270万人から2030年までに750万人に増加することが予測されている。
【0005】
概略でAMD症例の80%が、新生血管状態を伴わず、効果的な治療がない。新生血管形成を伴う残りの症例については、現在利用できる治療は次善である。おろらく、最も良く知られた療法は、光線力学療法(PDT:photodynamic therapy)であるが、しかしながら、この療法は、眼科及び財政投資共同体の療法において重要な意向を受けている一方で、新生血管のAMD症例のたった約20パーセントに有用である。さらに、この特定の療法は、簡単でかつ費用のかからない処置ではない。この手法は、一般的に、少なくとも2年間、3ヶ月ごとに繰り返すことが必要であり、およそ概算して総費用12,250ドルかかる。
【0006】
数多くの血管形成阻害剤が、現在、AMDの治療用に調査されている。例えば、サリドマイドは、強力な血管形成阻害剤であることが知られている。しかしながら、その全身性副作用には、末梢性ニューロパシー、中枢神経系抑制、及び胎児毒性が含まれる。さらに、これらの全身性副作用は、網膜下の新生血管形成の治療に対して患者に投与される投与量を制限している。老齢患者における血管形成の全身性阻害はまた、中枢神経の阻止並びに心虚血事象における役割を有する側副循環の進行に干渉し得る。
【0007】
多くの技術又は方法論は、広範な眼の障害又は疾患を治療するために、下記に記載される哺乳動物の眼を構成する種々の組織又は構造に薬物を送達するように開発されている。しかしながら、所望の治療効果又は医療効果を達成するために哺乳動物の眼、とりわけ網膜及び/又は脈絡膜に薬物、タンパク質等を送達することは、やりがいのあることが示され、その大部分は、眼及びその成分の配置、精巧さ及び/又は振る舞いによる。眼の組織への薬物の送達に関する種々の従来の方法又は技術の簡単な説明及びそれらの欠点を下記に記載する。
【0008】
眼以外の部位での薬物の経口摂取又は薬物の注入は、薬物を全身に与える:しかしながら、このような全身投与は、特異的に眼に対して薬物の効果的なレベルを提供しない。網膜、後部管、及び視神経を含む多くの眼科疾患では、薬物の十分なレベルが、投与の経口又は非経口経路によって達成及び維持され得ない。このように、更なるしかも繰り返えされる薬物の投与は、薬物の所望の又は十分なレベルに到達するために必要であろう。しかしながら、このような薬物のこのような更なるしかも繰り返される投与は、望ましくない全身性の毒性を生じるかもしれない。
【0009】
眼科状態はまた、液体又は軟膏形態で眼に直接的に適用される薬物を用いて治療されている。しかしながら、この投与経路(即ち、局所投与)は、眼の表面に関する問題、及び例えば、結膜炎のような眼の角膜及び全部に関する疾患を治療するのに最も有効である。さらに、局所的の眼への液滴は、眼から鼻涙管を通って全身循環へと排出され、さらに、薬剤を希釈し、そして、望ましくない全身性の副作用の危険に晒す。さらに、局所的な眼の液滴における薬物の送達はまた、薬物が角膜又は強膜を容易に横切ることができず、硝子体、網膜、又は他の網膜下の構造、例えば、網膜色素上皮(「RPE」)又は脈絡膜の血管系に提供することができないため、利用が制限され、及び/又は非常に不安定であり、したがって、局所送達用に容易に調合されない。しかも、データはまた、最大85%の局所的に適用される薬剤が眼のまばたきの機構/反射によって除去されることは珍しいことではないことを示す。
【0010】
局所的な挿入による眼への薬物の直接的な送達はまた試みられている;しかしながら、この方法は好ましくない。このような局所的な挿入は、患者自らの投与を要求し、つまり、眼への挿入及び除去の教育を必要とする。その結果として、この技術は、年齢に関したように見えるある種の眼の疾患(例えば、年齢に関連した黄斑変性症)に特に影響を受け易い高齢者の患者に対して問題となり得るある程度の手先の器用さを要求する。また、多くの場合、このような局所的挿入は、眼の刺激を引き起こすかもしれず、このような挿入は、まぶたの弛緩による不注意により喪失しやすい。さらに、これらの装置は、角膜及び前房にのみ薬物源を提供し、つまり、局所的な眼の液滴又は軟膏に優る有意な薬理学的な利点を提供しない。つまり、このような装置は、硝子体及び眼の後部に位置した組織への有効な薬物源を提供するための限定された効用を有する。
【0011】
結果として、後区又は眼底における眼の障害若しくは疾患を治療するための最良の方法は、薬物の硝子体内送達を伴う。硝子体内送達のためのこのような技術の1つは、米国特許第5,770,589号に記載されるように、硝子体へ直接的に薬物若しくは薬物を含有するマイクロスフェアの眼球内注射によるか、又は硝子体に薬物を含有する装置若しくはカプセルを位置することによって達成される。薬物の硝子体内注射は、高濃度で眼の後区に薬物を送達する効果的な手段であるが、即座の浄化及び組織毒性のような欠点がないわけではない。
【0012】
さらに、多くの治療薬は、網膜を横切って容易に分散することができないこともまた周知である。つまり、投与され、そして硝子体で維持される投薬量は、網膜境界を横切って拡散し得る量、並びに薬物が硝子体内で有効な量でどのように保持されるのかを配慮しなければならない。例えば、トリアムシノロンの注射後3日間、硝子体に存在する1%未満のトリアムシノロンが、網膜、色素上皮、及び強膜を含む他の組織と関連することが動物試験から観察されている。境界を横切る薬物送達の相対的効果に加えて、いくつかの治療を用いた硝子体内への直接的な注入技術を使用した場合、合併症又は副作用が観察されている。
【0013】
例えば、トリアムシノロンのようなコルチコステロイドとして分類される化合物は、角膜の新生血管形成のようないくつかの形態の新生血管形成を効果的に治療することができる。これらの化合物は、直接的な注入によって後区の新生血管形成を治療するために使用された場合、これらの化合物は、多くの患者に望ましくない副作用を引き起こすことが観察された。観察された悪影響又は望ましくない副作用は、眼圧上昇、及び白内障の形成又はその発症の加速を含んでいた。眼圧の上昇は、患者において他ならぬ心配事である。さらに、正常な眼圧の患者においてコルチコステロイドの使用は、眼組織に障害をもたらす圧力上昇を引き起こすであろう。コルチコステロイドを用いた療法は、長期であることがしばしばであるため、その療法に起因する眼圧の長期の上昇の結果として、眼組織への重大な損傷に関する可能性が存在する。
【0014】
その結果、硝子体内送達の領域における努力はまた、持続放出インプラント、カプセル又は他のこのような装置を位置することによる送達、あるいは、硝子内と連絡し、そして含有した薬物の硝子体内に経時的な放出を提供するように設定された機構による送達を含んでいる。このような放出制御装置の例は、米国特許第6,217,895号;第5,773,019号;第5,378,475号、及び米国特許出願公開第2,002/0061327号に記載されている。
【0015】
本明細書中に記載された技術/機器の共通の特徴は、インプラント、カプセル又は他のこのような装置が眼を通して挿入され、硝子体内に位置され得るように、外科的切開が手法の開始時になされることが必要である。これらの方法及び技術はまた、硝子体の材料の喪失を防ぎ、創縫合治癒を促進するように、切開を塞ぎ又は閉じる手法の完了に続く縫合の使用に関わってもよい。当業者に既知であるように、後区又は硝子体の容積及び圧力を維持するためには、眼の形状及び光学配置を維持することが必要である。このような治療の進行は、期間及び費用、並びに角膜潰瘍、白内障形成、眼内感染、及び/又はこれらの手法に伴う硝子体の脱出の現実的な危険性を増加させる。
【0016】
ドナー細胞、より具体的にはドナー網膜細胞を網膜下の空隙に移植する機器及び方法論は、米国特許第5,273,530号及び第5,409,457号に説明されている。その中には、機器はまた注入され又は硝子体から材料を取り出すために使用することができることも記載されている。記載された方法論によれば、この機器は、眼の周囲に沿って伸長する挿入経路に沿って眼球孔に挿入することができ、網膜又は網膜下の領域に隣接した先端を置くように、形成され、そして特定の大きさに合わせられる。次に、この先端がどれだけ移動するかに応じて、先端が網膜下領域又は硝子体内に残るので、医学的指示において、一般的に先端を移動させる。先端の過度の挿入を防ぐために、先端が眼内に挿入しえる距離を制限するように先端にカラーが提供される。
【0017】
眼の網膜下領域への移植片として、正常な平面構造内で網膜細胞、上皮及び脈絡膜の網膜下の移植のための機器は、米国特許出願公開2002/0055724に説明されている。記載された機器は、角膜横断外科アプローチ又は脈絡膜及び強膜横断外科アプローチのいずれかを用いて眼の開口内に挿入される。この技術によれば、機器は、移植片が挿入し得るように網膜を離れて網膜下を進行する。米国特許第5,273,530号に記されるように、経角膜又は経強膜経路を用いた眼の前部又前区の穿通は、角膜潰瘍の危険性を生じる。また、いずれかのアプローチを用いて、手法の開始で外科的切開がなされ、それにより、機器を挿入することができ、そして、硝子体材料(即ち、房水)の喪失を防ぐために、切開を塞ぎ又は閉鎖する手法の完了後に縫合が使用される。
【0018】
薬剤の放出制御のための生分解性多孔質薬物送達装置は、米国特許第5,516,522号に記載される。この装置は、内面と外面、及び第一と第二末端を有する中空管を具備する。薬剤は、管の通路を通って制御可能な放出のための中空管内に満たされる。中空管内に薬物が満たされる前に、第一端は熱融着され、中空管に薬物が満たされた後に、第二端が熱融着される。液体の注入可能な状態で体内に注入される熱可塑性又は熱硬化性ポリマーで構成される生分解性ポリマー組成物が、米国特許第5,324,519号及び第5,599,552号に記載される。これらの組成物は、骨又は神経成長障害のような障害及び疾患を予防及び治療するために、そして、身体機能(例えば、避妊)を変えるために使用される。米国特許第5,599,552号は、さらに、骨及び神経細胞のような細胞及び組織の再生を増強し、あるいは組織又は臓器への生物学的に活性な物質の送達のための組成物を用いることを記載する。
【0019】
それ故、眼の障害及び疾患を治療する現在利用可能な方法を用いた多くの難点がある。例えば、これらの後区の眼疾患の場合、局所又は経口投与のような薬物送達の従来経路は、疾患部位に到達しない。結果として、眼底疾患を治療する現在の方法は、眼内注入又は硝子体内インプラントを介して眼の硝子体腔に直接薬物を導入することを伴う。眼の自然な循環プロセスは、硝子体チャンバーに直接注入される溶液を急速にに取り除く。その後、このアプローチは、しばしば、緑内障及び白内障形成のような合併症と関連した頻繁の高い多くの投与注入を必要とする。さらに、高分子量の分子(>70kD)は、網膜色素上皮及び網膜毛細血管の密接結合複合体を実質的に横切ることができない。微粒子注入は、従来の注入の持続放出能力を改善するが、これは、なお眼内還流を介して薬剤の広範な放出を解決しない。ステロイドの場合、この分布は、緑内障及び白内障のような逆効果をもたらすことが知られる。さらに、眼の自然な循環プロセスは、僅かに前から後への眼循環を有し、疾患が進行中である場合、眼の底でより低い薬物濃度の原因となる。
【0020】
このように、眼の治療、特に「網膜及び/又は脈絡膜の障害又は疾患」の治療に、所望の治療部位に直接的に治療媒体を送達することによって、安全であり有効な方法を提供することが望まれるであろう。特に、眼の他の組織においてこのような作用を最小限にしながら、網膜及び/又は脈絡膜で治療媒体の局在化された持続送達を提供することが期待されるであろう。外傷を最小限にし、流体物切開の必要性を除く方法を提供することが望まれるであろう。さらに、治療に必要とされる治療薬の投与量を効果的に低下させる方法を提供することが望まれるであろう。さらに、治療薬の硝子体内送達に関連した副作用を低減させ、ましてや取り除く方法を提供することが望まれるであろう。さらに、治療部位に巨大分子量の薬物及びタンパク質を効果的及び効率的に送達する方法を提供することが望まれるであろう。
【発明の開示】
【0021】
発明の概要
一側面において、本発明は、哺乳動物の眼に1以上の生物活性剤を網膜下に送達するための持続放出インプラントを提供する。本発明のインプラントは、1以上の固体の生体適合性ポリマー及び1以上の生物活性剤を含む。インプラントは、同じ治療効果を達成するために、全身、局所、及び全臓器の送達システムによって送達される量より実質的に少ない量で1以上の生物活性剤を網膜下に送達される。
【0022】
いくつかの態様において、ポリマーマトリックス及び1以上の生物活性剤は、単独で、インプラントを形成する。他の態様では、インプラントは、生体適合性ポリマーマトリックス及び1以上の生物活性剤を含むコーティング層で少なくとも部分的に覆われている外表面を有する生体適合性コアを含む。いくつかの態様では、コーティング層は、コアの全外表面を覆う。他の態様では、コーティング層は、コアの外表面の1以上の部分を覆い、コアの外表面の1以上の部分を被覆しないままである。いくつかの態様では、コーティング層は、その端の一方又は両方で先細くされ又は矢羽根が付けられている。いくつかの態様では、コアの少なくとも遠位端及び近位端は、コーティング層で覆われ、そして、コーティング層は先細くされ又は矢羽根が付けられている。
【0023】
インプラントのポリマーマトリックスに有用なポリマーは、生体適合性ポリマーであり、生体安定性(即ち、非分解性)又は生分解性であってもよい。生体安定性ポリマーの例には、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン)、ポリイソブチレン、アクリル系ポリマー、ハロゲン化ビニルポリマー、ポリビニルエーテル、ポリビニルメチルエーテル、ポリハロゲン化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族化合物、ポリビニルエステル(例えば、ポリ(アルキル(メト)アクリレート)、例えば、ポリ((メチル)メタクリレート)又はポリ((ブチル)メタクリレート)、ポリビニルアミド、ポリアミド、ポリカプロラクタム、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン・トリアセテート、酢酸セルロース、酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、及び上記ポリマーの共重合体(例えばポリエチレンビニルアセテート)及び混和物が含まれる。生分解性ポリマーの例には、ポリ(L−乳酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシ酪酸塩)、ポリ(ヒドロキシ酪酸塩−co−吉草酸塩)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D,L乳酸)、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリ(リン酸エステル)、ポリリン酸エステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリエステル、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、及び上記ポリマーの共重合体及び混和物が含まれる。生分解性材料、例えば、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デキストラン、多糖、スターチコラーゲン、クロムガット、及びヒアルロン酸はまた使用されてもよい。
【0024】
非重合性生体適合性材料はまた、本発明のインプラントのコアを形成することができる。実施例は、チタン−ニッケル合金ワイヤ、チタン合金、ニッケル−コバルトベース合金、ステンレススチール、コバルト−クロミウム合金、及び生分解性マグネシウム合金を含む。典型的な態様では、コアは、商業的に利用可能な最小の直径(例えば、約10μm〜約200μm)を有するチタンニッケルワイヤーであり、それによって、インプラントが含有してもよい生物活性剤の量を最大にする。いくつかの態様では、コア材料及びコアの厚さは、所望の堅さ及び柔軟性を有するインプラントを提供するように選択される。
【0025】
いくつかの態様では、インプラントコアの外表面領域は、生体適合性ポリマーマトリックス及び1以上の生物活性剤を含むコーティング層で部分的に又は完全に覆われ、そして、コーティング層は、1以上の生物活性剤の放出速度の特徴(例えば、溶出速度)を修飾する1以上の生体適合性ポリマーを含む1以上の追加のコーティング層で部分的に又は全体として被覆される。追加のコーティング層に使用されてもよい生体適合性ポリマーの例には、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエステル、クロムガット、ポリオルトエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン酢酸ビニル又はポリ(ブチルメタクリレート)が含まれる。典型的な態様では、コーティング層は、ポリ(カプロラクトン)を含む。
【0026】
いつかの態様では、コアの外部表面は、生体適合性ポリマーマトリックス及び1以上の生物活性剤を含むコーティング層を用いてその全長の部分に沿って被覆され、そして、インプラントは、さらに、握られ、外科器具と連結され、又はインプラントが眼に挿入されていた期間後に装置の容易な取り出しのために使用されてもよいハンドリング部分(例えば、長さにして約10mm以下の被覆していない領域)を提供する被覆していないコアの長さを含む。
【0027】
本発明のインプラントによって送達されてもよい生物活性剤の例には、薬物、薬剤、抗生物質、抗菌剤、抗増殖剤、神経保護剤、抗炎症剤(ステロイド性及び非ステロイド性)、増殖因子、神経栄養因子、血管新生阻害剤、血栓溶解剤又は遺伝子が含まれる。より具体的には、1以上の生物活性剤は、トロンビン阻害剤;抗血栓剤;血栓溶解剤;線維素溶解薬;血管痙攣阻害剤;カルシウムチャネル遮断剤;血管拡張剤;血圧降下剤;抗菌剤、抗真菌剤、及び抗ウイルス剤;表面糖タンパク質受容体の阻害剤;抗血小板薬;抗有糸分裂剤;微小管阻害剤;抗分泌薬;活性阻害剤;リモデリング阻害剤;アンチセンスヌクレオチド;代謝拮抗物質;血管新生阻害剤を含む抗増殖剤;抗癌性化学療法薬;抗炎症剤;非ステロイド性抗炎症剤;抗アレルギー剤;抗増殖剤;充血除去剤;縮瞳薬及び抗抗コリンエステラーゼ;抗腫瘍剤;免疫学的薬物;ホルモン剤;免疫抑制剤、成長ホルモン拮抗剤、増殖因子;血管新生阻害剤;ドーパミン作動剤;放射線療法剤;ペプチド;タンパク質;酵素;細胞外マトリックス成分;ACE阻害剤;フリーラジカル捕捉剤;キレート剤;抗酸化剤;抗重合剤;光線力学療法剤;遺伝子治療剤;及び、他の治療薬、例えば、プロスタグランジン、抗プロスタグランジン、プロスタグランジン前駆体、及びそれらの組合せから選択されてもよい。典型的な態様では、インプラントは、生分解性ポリ(カプロラクトン)を含むポリマーマトリックスにコルチコステロイドのトリアムシノロンアセトニドを含む。
【0028】
本発明のインプラントは、典型的には、眼の機能への干渉並びに眼の不快及び損傷を最小限にするために設計される。いくつかの態様において、インプラントは、棒状又はフィラメント状の形態である。いくつかの態様において、インプラントは、勾配であるか、先細であるか、又は尖っている遠位端を有してもよい。その代わりに、インプラントは、平滑である又は丸くなっている遠位端を有してもよい。
【0029】
いくつかの態様では、インプラントは、約1000μm未満である全径を有し、他の態様では、約900μm未満であり、他の態様では、約800μm未満であり、他の態様では、約700μm未満であり、他の態様では、約600μm未満であり、他の態様では、約500μm未満であり、他の態様では、約400μm未満であり、他の態様では、約300μm未満であり、他の態様では、約200μm未満であり、他の態様では、約100μm未満であり、他の態様では、約50μm未満である。いくつかの態様では、インプラントの全径は、約200μm〜約500μmの範囲である。
【0030】
いくつかの態様では、本発明のインプラントは、約5mm未満の長さを有し、他の態様では、約4.5mm未満であり、他の態様では、約4mm未満であり、他の態様では、約3.5mm未満であり、他の態様では、約3.0mm未満であり、他の態様では、約2.9mm未満であり、他の態様では、約2.8mm未満であり、他の態様では、約2.7mm未満であり、他の態様では、約2.6mm未満であり、他の態様では、約2.5mm未満であり、他の態様では、約2.4mm未満であり、他の態様では、約2.3mm未満であり、他の態様では、約2.2mm未満であり、他の態様では、約2.1mm未満であり、他の態様では、約2mm未満である。いくつかの態様では、インプラントの長さは、約2.25mm〜約2.75mmの範囲である。
【0031】
いくつかの態様では、本発明のインプラントは、少なくとも約0.0001μg/日の生物活性剤の溶出速度を有し、他の態様では、少なくとも0.001μg/日、他の態様では、少なくとも約0.01μg/日、他の態様では、少なくとも約0.1μg/日、他の態様では、少なくとも約1μg/日、他の態様では、少なくとも約10μg/日、他の態様では、約100μg/日、及び、他の態様では、少なくとも約1000μg/日である。
【0032】
いくつかの態様では、本発明のインプラントは、全臓器への送達系が送達するのと比較して、同じ治療効果を達成するために、約2〜約1,000,000倍未満の生物活性剤を送達することができる。さらに、いくつかの態様では、インプラントは、全身性又は局所性送達系が送達するのと比較して、同じ治療効果を達成するために、約2〜約1,000,000倍未満の生物活性剤を送達することができる。
【0033】
いくつかの態様において、本発明のインプラントは、治療効果を与えるために要求されるものと比較して約90%未満の過剰な生物活性剤で、1以上の生物活性剤を溶出することによって治療効果を提供し、治療効果を提供するために必要とされるものと比較して、他の態様では、約80%未満過剰であり、他の態様では、約70%未満過剰であり、他の態様では、約60%未満過剰であり、他の態様では、約50%未満過剰であり、他の態様では、約40%未満過剰であり、他の態様では、約30%未満過剰であり、他の態様では、約20%未満過剰であり、他の態様では、約10%未満過剰であり、他の態様では、約5%未満過剰であり、他の態様では、約1%未満過剰である。
【0034】
別の側面では、本発明は、眼への少なくとも1つの生物活性剤の持続送達用のインプラントを加工する方法を提供し、ここで、この装置は、網膜下に移植され、前記方法は、低温プロセスを用いて1以上のポリマーと1以上の生物活性剤を組み合わせてインプラントを形成し、ここで、インプラントは、1以上の生物活性剤が治療効果を提供するのに必要とされるのと実質的に同じ投薬量で送達されるように加工されることを含む。
【0035】
いくつかの態様において、この方法は、(a)溶媒に1以上のポリマーを溶解させ、複合流体を形成する工程;(b)少なくとも1つの生物活性剤を複合流体に添加し、1以上の生物活性剤の均一な溶液及び/又は1以上の生物活性剤の分散相を有する溶液を生産する工程;(c)場合により、この溶液を固体形態に乾燥する工程;(d)場合により、ポリマー(又は複数)のちょうど融点以下の温度まで固体形態を加熱する工程;及び、(e)(b)の溶液又は固体状態(c)からインプラント装置を形成する工程を含む。いくつかの態様では、複合流体は、固体形態まで乾燥される。これらの態様において、固体形態は、典型的には、形成工程(即ち、工程(e))の間、ポリマー(又は複数)のちょうど融点以下の温度まで加熱される。例えば、この過程は、約100℃未満の温度で実行されてもよい。いくつかの態様では、インプラント装置を形成する工程は、溶解−押出し−引き伸ばしによって実行される。他の態様では、工程(b)の溶液は、固体形態に乾燥されない。これらの態様において、加熱は、溶液中に溶媒が存在するため、形成工程(即ち、工程(e))の間に要求されなくてもよい。代表的な溶媒は、クロロホルム、THF、又は適した溶解性パラメータを有する任意の他の有機炭化水素を含む。
【0036】
別の側面では、本発明は、眼内に本発明のインプラントを挿入することによって眼の後区に生物活性剤を投与し、そして、1以上の生物活性剤が送達されるのを可能にする方法を提供する。別の側面では、本発明は、眼の障害及び/又は疾患の治療及び/又は予防の方法を提供し、眼内に本発明に従って装置を移植すること;及び、所望の網膜治療部位に1以上の生物活性剤を送達されるのを可能にすることを含む。
【0037】
いくつかの態様では、インプラントは、脈絡膜上方であるが神経線維層下方で1以上の組織層に配置される。いくつかの態様では、2以上のインプラントは、2以上のインプラントが1以上の治療部位に1以上の生物活性剤を同時に溶出するように眼の網膜下に移植される。
【0038】
いくつかの態様において、インプラントは、眼内に移植を達成するために眼の構造を突き通し及び/又は貫通することができる。例えば、インプラントは、突き通し又は貫通を促進するために、勾配であるか、先細であるか、又は尖っている遠位端を有してもよい。いくつかの態様では、器具は、眼内にインプラントを挿入するために使用される。いくつかの態様では、インプラントは、眼内にインプラントを挿入するために、握られるか又は外科用器具と連結されてもよい1以上の被覆していない部分を含む。
【0039】
本発明のいくつかの態様では、インプラントは、インプラント又はさらに多くのインプラントと治療されるべき組織領域又は層との間の距離に基づいて送達するための生物活性剤の特定の濃度を提供するように眼に挿入される。
【0040】
いくつかの態様では、粘性のある流体物、ハイドロゲル又は他の固体若しくは半固体の材料を網膜下の空隙に投与し、インプラントが在中するであろう空隙を作ることが望まれ得る。
【0041】
本発明によれば、1以上の生物活性剤は、治療される眼の部分(即ち、治療部位)にのみ実質的に送達される。いくつかの態様では、インプラントによって溶出される少なくとも5%の生物活性剤は、治療される眼の部分に送達され、他の態様では、少なくとも10%であり、他の態様では、少なくとも20%であり、他の態様では、少なくとも30%であり、他の態様では、少なくとも40%であり、他の態様では、少なくとも50%であり、他の態様では、少なくとも60%であり、他の態様では、少なくとも70%であり、他の態様では、少なくとも80%であり、及び、他の態様では、少なくとも90%である。
【0042】
さらに、本発明のインプラント及び方法は、かなりの量の1以上の生物活性剤が健康なな組織に送達されないように1以上の生物活性剤を送達することができる。いくつかの態様では、インプラントによって溶出される95%未満の1以上の生物活性剤は、健康な組織に送達され、他の態様では、90%未満であり、他の態様では、80%未満であり、他の態様では、70%未満であり、他の態様では、60%未満であり、他の態様では、50%未満であり、他の態様では、40%未満であり、他の態様では、30%未満であり、他の態様では、20%未満であり、他の態様では、10%未満であり、及び、他の態様では、5%未満が健康な組織に送達される。
【0043】
本発明は、1以上の生物活性剤を治療部位に送達するために直接的なアプローチを提供し、それによって効果的な治療に必要な投薬量を減少する。さらに、このような方法は、生物活性剤の硝子体内への送達と関連した副作用を減少することができる。本発明は、さらに、巨大分子量の薬物及びタンパク質を治療部位の送達のために改善された経路を提供する。
【0044】
本発明の他の側面、態様、及び利点は、下記に検討されるように、当業者に容易に明確となるであろう。実感されるように、本発明は、本発明から逸脱することなしに他の及び異なった態様を可能にする。つまり、下記の説明、並びに添付のいずれかの図面は、事実上、例証されるものとしてみなされ、限定されない。
【0045】
本発明は、下記の定義を参照して、最も明確に理解される:
本明細書中で使用されるとき:
眼の「水性」は、眼の十分な房水を意味することが理解されるであろう。
【0046】
「生体適合性」は、重大な異物応答(例えば、免疫、炎症、血液凝固等の応答)を発揮することなく受容者によって受け入れられ、そして受容者において機能する材料の能力を意味する。例えば、本発明の1以上のポリマーマトリックス材料に関連して使用される場合、生体適合性は、受容者において意図された方法で受け入れられ、及び機能するポリマーマトリックス材料(又は複数のポリマーマトリックス材料)の能力を意味する。したがって、インプラントは、生体の生物学的流体物及び/又は組織と接触して、生体に正味の有益な効果をもって機能し又は存在することができる場合、「生体適合性」として特徴付けることができる。
【0047】
「複合流体物」は、化学的及び/又は熱の熱力学的機構を介して流体状態であり;原子よりははるかに大きな分子又は構造の長さスケールの成分相を有し、そして、安定化剤、溶媒和物、添加物及びさらに治療薬のような付加的な成分相を含んでもよい高分子性液体又は溶解物を意味すると理解されるであろう。この流体状態では、この「複合流体物」は、さらに、偽塑性、ニュートン式又は非ニュートン式流動学によって特徴付けられる。
【0048】
「臓器」は、特定の機能を提供するために協同して機能する組織の集合物を意味することが理解されるであろう。例えば、網膜、脈絡膜、レンズ、及び視覚器官を作る他の関連した構造のような組織の集合物である。
【0049】
「外科手術によるろ過胞」は、小ゲージのニードルシリンジ又は注入システムによって作られる局所的な網膜流体物の剥離を意味するものとして理解されるであろう。
「持続放出インプラント」は、制御される方法で長期間、1以上の生物活性剤を放出するように設計・用意される数多くのインプラントのいずれかを意味することが理解されるであろう。
【0050】
「網膜下の空隙」は、網膜色素上皮細胞と眼の光受容細胞との間の空間を意味することが理解されるであろう。
「治療的に有効な量」は、患者において所望の効果(疾患等の病状の治療又は疼痛の緩和)を生じる単独で若しくは他の基質と一緒である生物活性剤の量を意味する。治療期間中、このような量は、治療されるべき特定の状態、状態の重症度、年齢、身体的状態、大きさ及び体重を含む個々の患者のパラメータ、治療期間、使用される特定の生物活性剤の性質、併用療法(必要に応じて)、同様に医師の知識及び経験の範囲の要因に依存するであろう。通常の知識を有する医師又は獣医師は、状態を治療し及び/又は状態の進行を妨げるのに必要な生物活性剤の有効量を容易に決定し、処方することができる。
【0051】
「硝子体」は、哺乳動物の眼の硝子質又は硝子体の空洞を意味することが利用されるであろう。
本発明の性質及び所望の目的のより十分に理解するために、付随する図面と併せて記載される下記の詳細な説明に言及し、同様の参照文字は、いくつかの概説の至るところで対応する部分を意味する。
【0052】
発明の詳細な説明
下記に記載した本発明の態様は、包括的であって、下記の詳細な説明に開示された厳密な形態に発明を制限することを意図しない。むしろ、本態様は、当業者が本発明の原理及び実施を承認し、理解することができるように選択され、記載される。
【0053】
本発明は、哺乳動物の網膜下の空隙内へ1以上の生物活性剤の持続送達を提供する網膜下薬物送達システム、並びにこのような送達システムを用いた哺乳動物の網膜下の空隙内へ生物活性剤の投与又は送達方法を提供する。本発明はまた、送達システムを作る方法、特に、1以上の生物活性剤を送達するために使用されるインプラントを作る方法を提供する。本薬物送達システム及び方法は、網膜疾患のための現在の装置及び治療方法の制限を克服する。
【0054】
本発明の態様では、網膜下薬物送達システムは、所望の治療位置で眼内に配置することができるインプラントを含む。特に、インプラントは、1以上の生物活性剤を含む生体適合性ポリマーマトリックスを含む。いくつかの態様では、インプラントの生体適合性ポリマーマトリックスは、生分解性であるかまたは生体吸収性である。
【0055】
一態様では、1以上の生物活性剤だけを含有するポリマーマトリックスがインプラントを形成する。これは、1以上の生物活性剤を含むポリマーマトリックスが実質的に全てのインプラントを形成するが、他の少量の材料もまた、インプラントの形成に使用される加工技術及び安定化技術に起因してインプラントに含有されてもよいことを意味することが理解されるべきである。図14に言及すると、インプラント10は、1以上の生物活性剤を含有するポリマーマトリックス12を含む。インプラント10は、図14に示されるように、長さ「l」及び直径「d」を有する。インプラント10は、遠位端14及び近位端16を有する。インプラントの遠位端若しくは近位端(又は両方)は、先細く、丸く、勾配があり、平滑であってもよく、あるいは他の所望の端形態を有してもよい。図14の態様では、インプラント10は、勾配のある遠位端14を有し、平滑な近位端16を有する。
【0056】
別の態様では、インプラントは、ポリマーマトリックス−生物活性材料(即ち、1以上の生物活性剤を含むポリマーマトリックス)のコーティング層で被覆される生体適合性コアを含む。図10〜11に言及すると、コアを有するタイプのインプラントの一態様が示される。インプラント20は、近位端27及び遠位端29、ポリマーマトリックス−生物活性材料を含むコーティング層24を有するコア22を含む。図10〜11の態様では、ポリマーマトリックス−生物活性材料のコーティング層は、コア22の全長の全体を被覆される。ポリマーマトリックス−生物活性材料のコーティング層24は、近位移動部分26、遠位移動部分28、中心部30を含む。この態様では、近位移動部分26及び遠位移動部分28は、矢羽根が付されている(即ち、傾斜移動部分)。
【0057】
別の態様では、図12〜13に示されるように、インプラント40は、近位端42及び遠位端45を有するコア42を含む。ポリマーマトリックス−生物活性材料のコーティング層44は、コア42の長さ「l」の一部が被覆され、結果として部分46が被覆され、部分48は被覆されない。被覆されてない部分48は、操作する際にコーティング層44に任意の潜在的損傷を防ぐために、インプラントが外科用器具を握りるかまたは連結させてもよい操作部分(例えば、マイクロ手術用器具)を提供するのに有用であってもよい。一態様では、インプラント装置の被覆されていない部分は、フォローアップ外科手術において容易な回復のために網膜周囲に残すことができる。図12〜13の態様では、被覆した部分46の近位移動部分50及び遠位移動部分52は、矢羽根が付されている(即ち、傾斜移動部分)。理論にとらわれずに、インプラントの遠位及び近位端に矢羽根を付すことは、均一性、再現性の処置、及び移植の容易さを増すかもしれない。
【0058】
コアの形成に使用される大きさ、形状及び材料は、所望の特徴を提供するように選択することができる。例えば、より細いコアは、より少ない堅さを提供し、より厚いコーティング層を可能にするために使用されてもよく、それによって、インプラント中の生物活性剤の溶液を最大にする。さらに、コアを形成する材料は、所望の堅さ又は柔軟性を提供するように選択することができる。さらになお、コア材料は、コアに付着するコーティング層の能力を促進するように選択されてもよい。加えて、コアの表面は、コアへのポリマー層の付着をさらに改善するように下塗りされ、粗くし、又は化学的に修飾されてもよい。
【0059】
いくつかの態様では、インプラントは、生物活性剤の放出速度特性を修飾するポリマー材料の層をさらに含むことができる。例えば、ポリ(カーボネート)の薄層は、インプラント上に被覆することができる。このようなポリ(カーボネート)層はまた、分解速度を調節するバリア、移植前の環境的分解からの生物活性剤の保護を提供することができ、あるいは薬物の放出時間点を遅延することができる。
【0060】
ポリマーマトリックスに有用な生体適合性ポリマーは、生体安定性(即ち、生分解性でない)であるか又は生分解性であってもよい。生体安定性ポリマーの例には、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン)、ポリイソブチレン、アクリル系ポリマー、ハロゲン化ビニル系ポリマー、ポリビニルエーテル、ポリビニルメチルエーテル、ポリハロゲン化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族化合物、ポリ((メチル)メタクリレート)又はポリ((ブチル)メタクリレート)のようなポリビニルエステル(例えば、ポリ(アルキル(メト)アクリレート)、ポリビニルアミド、ポリアミド、ポリカプロラクタム、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン・トリアセテート、酢酸セルロース、酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロース・エーテル、カルボキシメチルセルロース、並びに上記ポリマーの共重合体(例えば、ポリエチレン酢酸ビニル)及び混和物が含まれる。
【0061】
生分解性ポリマーの例には、ポリ(L−乳酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシ酪酸塩)、ポリ(ヒドロキシ酪酸塩−co−吉草酸塩)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D,L乳酸)、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリ(リン酸エステル)、ポリリン酸エステル・ウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリエステル、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレン・オキサレート、ポリホスファゼン並びに上記ポリマーの共重合体及び混和物が含まれる。フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デキストラン、多糖、スターチコラーゲン、クロムガット、及びヒアルロン酸のような生分解性材料もまた使用することができる。
【0062】
ポリマーの選択は、例えば、インプラントによって送達されるべき生物活性剤を含むインプラントの所望の特性、並びに生物活性剤の送達速度及び送達期間に依存してもよい。
いくつかの態様では、生体適合性ポリマーは、全体として又は部分的に、カプロラクトンモノマーユニットの繰り返し(例えば、ポリ(カプロラクトン)又はその共重合体)を含む。ポリ(カプロラクトン)は、網膜組織によって十分に許容され、炎症反応又は合併症を誘発することなしに生物活性剤を送達することができることがわかっている。例えば、図4〜6の態様では、ポリ(カプロラクトン)は、炎症反応又は合併症を誘発することなしに少なくとも4週間、ステロイドを溶出することができる。このように、一態様では、インプラントは、生分解性ポリ(カプロラクトン)ポリマーマトリックスを用いて形成される。一態様では、インプラントは、棒状の形態であり、生物分解性ポリ(カプロラクトン)ポリマーマトリックスにコルチコステロイド・トリアムシノロンアセトニドを含む。このような態様は、場合により、コアを含んでもよい。
【0063】
いくつかの態様では、生体適合性ポリマーは、(a)ポリ(アルキル(メト)アクリレート)、芳香族ポリ(メト)アクリレート、及びその混合物から選択される第1ポリマー;並びに、(b)ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)共重合体を含む第2ポリマーを含む。適した第1ポリマー及び第2ポリマーは従来の有機合成を用いて製造することができ、及び/又は種々の供給源から商業的に利用可能である。好ましくは、このようなポリマーは、被覆組成物におけるインビボでの使用に適した形態で提供されるか、あるいは当業者に利用可能な従来法によって所望の程度(例えば、不純物の除去による)までこのような使用のために精製される。
【0064】
好ましくは、第1ポリマーは、1以上の所望の特性、例えば、第2ポリマー及び生物活性剤(又は複数)との適合性、疎水性、耐久性、生物活性剤の放出特性、生体適合性、分子量、及び商業的な利用可能性を提供する。好ましくは、第1ポリマーは、ポリ(アルキル(メト)アクリレート)、芳香族ポリ(メト)アクリレート、又はポリ(アルキル(メト)アクリレート)及び芳香族ポリ(メト)アクリレートの組合せを含む。
【0065】
適したポリ(アルキル(メト)アクリレート)の例には、ポリ(n−ブチルメタクリレート)が含まれる。好ましい一態様では、高分子性被覆組成物は、ポリ(n−ブチルメタクリレート)(「pBMA」)及び第2ポリマーとしてポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)共重合体(「pEVA」)を含む。この組成物は、被覆組成物の約0.05重量%〜約70重量%の範囲の絶対的なポリマー濃度で有用であることがわかっている。本明細書中で使用されるとき、「絶対的なポリマー濃度」は、被覆組成物における第1ポリマー及び第2ポリマーの組み合わせた全濃度を意味する。一態様では、被覆組成物は、重量平均分子量が約100キロダルトン(kD)〜約1000kDの範囲であるポリ(アルキル(メト)アクリレート)(例えば、ポリ(n−ブチルメタクリレート)など)、及び酢酸ビニル含量がpEVA共重合体の約10重量%〜約90重量%の範囲であるpEVA共重合体を含む。別の態様では、ポリマー組成物は、分子量が約200kD〜約500kDの範囲であるポリ(アルキル(メト)アクリレート)(例えば、ポリ(n−ブチルメタクリレート)など)、及び酢酸ビニル含量が約30重量%〜約34重量%の範囲であるpEVA共重合体を含む。この態様の高分子被覆組成物中の生物活性剤(又は複数)の濃度は、最終的な被覆組成物の重量を基準として約0.01%〜約90%の範囲であり得る。
【0066】
本明細書中で使用されるとき、「重量平均分子量」又はMwは、分子量を測定する絶対的な方法であり、特に、ポリマー調製の分子量を測定するのに有用である。重量平均分子量(Mw)は、下式:
【化1】
(式中、Nは、Mの分子量をもつ試料中のポリマーの分子数を表し、Σiは調製物中の全てのNiMi(種)の和である)
によって定義することができる。Mwは、光散乱又は超遠心分離などの一般的な技術を用いて測定することができる。ポリマー調製物の分子量を定義するために使用されるMw及び他の用語の検討は、例えば、Allcock,H.R.及びLampe,F.W.,Contemporary Polymer Chemistry;pg271(1990)に見出すことができる。
【0067】
芳香族ポリ(メト)アクリレートを含む被覆組成物は、ある種の態様において予期せぬ利点を提供し得る。このような利点は、例えば、他の特性の所望の組み合わせを維持しながら、他の被覆物(例えば、ポリ(アルキル(メト)アクリレート)ポリマー)とは異なる特徴(異なる溶解特性など)を有する被覆を提供するための能力を提供する。特別の理論にとらわれずに、本発明のアルキルポリ(メト)アクリレートよりはむしろ芳香族化合物によって提供される溶解性の増加(特に、より極性溶媒において)は、ポリ(アルキル(メト)アクリレート)の使用に通常好ましいものと比べて、それ自身より極性であるポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)(例えば、有意に大きな酢酸ビニル含量を有するもの)の使用を許可する。
【0068】
適した芳香族ポリ(メト)アクリレートの例には、ポリ(アリール(メト)アクリレート)、ポリ(アラルキル(メト)アクリレート)、及びポリ(アリールオキシアルキル(メト)アクリレート)、特に、6〜16個の炭素原子を有するアリール基及び約50kD〜約900kDの範囲の重量平均分子量を有するものが含まれる。好ましい芳香族ポリ(メト)アクリレートには、少なくとも1つの炭素鎖及び少なくとも1つの芳香族環がアクリル系基(典型的にはエステル)と組み合わされる化合物が含まれる。例えば、ポリ(アラルキル(メト)アクリレート)又はポリ(アリールアルキル(メト)アクリレート)は、芳香族部分をも含有するアルコール由来の芳香族エステルから製造することができる。
【0069】
ポリ(アリール(メト)アクリレート)の例には、ポリ(9−アントラセニルメタクリレート)、ポリ(クロロフェニルアクリレート)、ポリ(メタクリルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン)、ポリ(メタクリルオキシベンゾトリアゾール)、ポリ(ナフチルアクリレート)、ポリ(ナフチルメタクリレート)、ポリ(4−ニトロフェニルアクリレート)、ポリ(ペンタクロロフェニルアクリレート)、ポリ(ペンタブロモフェニルアクリレート)、ポリ(ペンタフルオロフェニルアクリレート)、ポリ(ペンタクロロフェニルメタクリレート)、ポリ(ペンタブロモフェニルメタクリレート)、ポリ(ペンタフルオロフェニルメタクリレート)、ポリ(フェニルアクリレート)、及びポリ(フェニルメタクリレート)が含まれる。
【0070】
ポリ(アラルキル(メト)アクリレート)には、ポリ(ベンジルアクリレート)、ポリ(ベンジルメタクリレート)、ポリ(2−フェネチルアクリレート)、ポリ(2−フェネチルメタクリレート)、及びポリ(1−ピレニルメチルメタクリレート)が含まれる。
【0071】
ポリ(アリールオキシアルキル(メト)アクリレート)の例には、ポリ(フェノキシエチルアクリレート)、ポリ(フェノキシエチルメタクリレート)、種々のポリエチレングリコール分子量を有するポリ(エチレングリコールフェニルエーテルアクリレート)及びポリ(エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート)が含まれる。
【0072】
高分子性被覆組成物の第2ポリマーは、好ましくは、1以上の所望の特性、例えば、特に第1ポリマーと混合して使用した場合の第1ポリマー及び生物活性剤との適合性、疎水性、耐久性、生物活性剤放出特性、生体適合性、分子量、及び商業的利用性を提供する。
【0073】
適した第2ポリマーの例には、pEVA共重合体の約10重量%〜約90重量%の範囲で、又はpEVA共重合体の約20重量%〜約60重量%の範囲で、又はpEVA共重合体の約30重量%〜約34重量%の範囲で酢酸ビニル共重合体を有するポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)が商業的に利用可能でありこれらに含まれる。より低い割合の酢酸ビニルを有するポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)共重合体は、典型的な溶媒、例えば、THF、トルエン等にますます不溶となり得る。第2ポリマーは、ビーズ、ペレット、顆粒等の形態で商業的に得ることができる。
【0074】
コアの外部表面への塗布に関して、被覆組成物は、溶媒、この溶媒に溶解した第1ポリマー及び第2ポリマー、及びポリマー/溶媒溶液に分散した1以上の生物活性剤を含んでもよい。この溶媒は、好ましくは、ポリマーが真溶液を形成するものである。1以上の生物活性剤は、溶媒に溶解し得て、又は溶媒中に分散を形成してもよい。使用に際して、これらの態様は、被覆組成物を装置に塗布する前に、使用者側でいかなる混合をも必要としない。いくつかの態様では、被覆組成物は、1つの組成物に装置を提供し得る一部系を提供することができる。例えば、米国特許第6,214,901号は、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)の使用を例証する。THFがふさわしく、時としてある種の被覆組成物に好ましい一方で、他の溶媒が本発明に従って使用することができ、同様に、例えば、アルコール(例えば、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等)、アルカン(例えば、ヘキサン及びシクロヘキサン等のハロゲン化又は非ハロゲン化アルカン)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド)、エーテル(例えば、ジオキソラン)、ケトン(例えば、メチルケトン)、芳香族化合物(例えば、トルエン及びキシレン)、アセトニトリル、及びエステル(例えば、酢酸エチル)を含む。
【0075】
被覆組成物から形成されるコーティング層は、生体適合性である。さらに、この層は、好ましくは、ポリマーの広域の絶対濃度及び相対濃度の両方で有用である。コーティング層の物理的な特性(例えば、固持性、耐久性、柔軟性及び拡張性)は、典型的には、広範囲のポリマー濃度で適しているであろう。さらに、種々の生物活性剤の放出速度を制御する能力は、好ましくは、ポリマー及び/又は生物活性剤(又は複数)の絶対及び/又は相対濃度の変化によって操作され得る。
【0076】
いくつかの態様において、ポリマーマトリックスは、第1ポリマー及び第2ポリマーを含む生分解性組成物を含む。このような混和物は、2005年12月22日に出願された“Biodegradable Coating Composition Comprising Blends”と題する米国特許出願シリアル第11/317,212号に記載される。報告された生分解性組成物は、(a)ポリアルキレングリコールテレフタレート及び芳香族ポリエステルの共重合体である第1生分解性ポリマー;及び、(b)第2生分解性ポリマーの混和物を含む。第2生分解性ポリマーは、第1生分解性ポリマーと比較してゆっくりとした生物活性剤の放出速度を有するように選択される。
【0077】
いくつかの態様では、ポリアルキレングリコールテレフタレートは、ポリエチレングリコールテレフタレート、ポリプロピレングリコールテレフタレート、ポリブチレングリコールテレフタレート、及びこれらの組み合わせから選択される。いくつかの態様では、ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びこれらの組み合わせから選択される。例えば、第1ポリマーは、70〜80%のポリエチレングリコールテレフタレート及び5〜20%のポリブチレンテレフタレートの相対的な量でポリエチレングリコールテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートの共重合体であってもよい。
【0078】
第2生分解性ポリマーは、乳酸、グリコール酸、カプロラクトン、エチレングリコール、及びエチレンオキシホスフェートから選択されるモノマー由来のポリマーを含む。例えば、第2生分解性ポリマーは、2種以上のポリ(エステル−アミド)ポリマーの混和物を含んでもよい。いくつかの態様では、第2生分解性ポリマーは、第1生分解性ポリマーと比較して疎水的である。
【0079】
いくつかの態様では、ポリマーマトリックスは、“Biodegradable Controlled Release Bioactive Agent Delivery Device”と題する国際公開WO2006/023130に記載される材料などの生分解性又は再吸収性材料を含む。この出願は、本発明に従ってポリマーマトリックスとして利用することができるポリカーボネート種を含む種々の生分解性ポリマーを記載する。いくつかの態様では、生分解性材料は、式:
【化2】
(式中、
R1は、−CH=CH−又は(−CH2−)jであり、ここで、jは、ゼロ又は1〜8の整数であり;
R2は、最大18個の炭素原子を含有し、場合により、少なくとも1つのエーテル結合を含有する直鎖及び分岐のアルキル及びアルキルアリール基(例えば、エチル、ブチル、ヘキシル、及びオクチル基から選択される直鎖のアルキル基)、及び共重合体に共有結合した生物学的又は医薬として活性な化合物の誘導体から選択され;
各々のR3は、独立して、1〜4個の炭素原子を含有するアルキレン基(例えば、エチレン)から選択され;
yは、5〜約3000(例えば、20〜200)の間であり;および
fは、共重合体中のアルキレンオキシドのパーセントモル分率であり、約1〜99モルパーセント(例えば、5〜95モルパーセント)の範囲である)
を有するランダムブロック共重合体を含む。
【0080】
いくつかの態様では、ポリマーマトリックスはハイドロゲルを含む。ハイドロゲルの例には、WO02/17884(Henninkら)に記載のデキストランベースのハイドロゲルが含まれる。
【0081】
いくつかの例では、非重合性生体適合性材料は、本発明のインプラントのコアを形成する。例には、チタン−ニッケル合金ワイヤ(例えば、ニチノール、Nitinol Devices and Components、Freemont CAより商業的に利用可能である)、チタン合金、ニッケル−コバルトベース合金、ステンレススチール、コバルト−クロミウム合金、及び生分解性マグネシウム合金が含まれる。コア材料は、本明細書中に提供される例に限定されず、インプラント装置に使用されるいずれかの従来の材料であり得ると理解されるべきである。
【0082】
インプラントのコアの断面形状は、いずれかの所望の形状であってもよく、典型的には環状である。コアの最大の断面径(例えば、直径)は、典型的には、約200μm未満であり、いくつかの態様では、約10μm〜約200μmである。典型的な態様では、コアは、チタン−ニッケルワイヤを含む。特定の態様では、コアは、80μm以下の直径を有するチタン−ニッケルワイヤであり、それによって、インプラントのための構造をなお提供しながら、充填することができる生物活性剤の容積を最大限にする。
【0083】
別の側面では、本発明は、移植可能な装置を製造するための方法を提供する。いくつかの態様では、この方法は、(a)溶媒に1以上のポリマーを溶解させて複合流体を形成する工程;(b)複合流体に少なくとも1つの生物活性剤を添加して1以上の生物活性剤の均一な溶液及び/又は1以上の生物活性剤の分散相を有する溶液を製造する工程;(c)場合により、複合流体を固体に乾燥させる工程;(d)場合により、固体を加熱してポリマー(又は複数)の融点直下の温度まで加熱する工程;および、(e)(b)の溶液又は(c)の固体からインプラント装置を形成する工程を含む。
【0084】
いくつかの態様では、移植可能な装置を製造する方法は、インプラントを形成するために低温プロセス(例えば、約20℃〜約100℃、より好ましくは約50℃〜約90℃)の使用を含む。一態様では、この方法は、溶媒中でポリマー及び1以上の生物活性剤を均一に混合し、乾燥させ、及び製造した固体をインプラント形状中に融解−押出し−引き伸ばしを含むプロセスを含む。より具体的には、方法は、(a)適した溶媒溶液に1以上のポリマーを溶解させて複合流体を製造すること;(b)1以上の生物活性剤を複合流体に添加して1以上の生物活性剤の均一な溶液及び/又は1以上の生物活性剤の分散相を有する溶液を生産すること;(c)溶液を固体まで乾燥させ;ポリマーの融点以下の温度(例えば、融点より約1℃〜約5℃低い)まで固体を加熱すること;(d)この半固体でインプラント装置を形成すること;及び、(e)伸ばしたインプラントに引き伸ばし、所定の長さで切断することによってインプラントを所望の形状に成形することを含む。場合により、インプラントを曲げて湾曲を付加することができる。いくつかの態様では、複合体流体は、固体まで乾燥させない。これらの態様では、複合流体に溶媒が存在するので、形成工程中の加熱は必要なくてもよい。
【0085】
インプラント装置を形成し、所望の形状にインプラントを成形する工程は、固体により装置を形成し成形するために種々の従来法によって達成することができる。例えば、固体を融解−押出し−引き伸ばし(張力の適用)によって処理され、所望の形状及び厚さに固体を形成してもよい。その長さは、任意の従来の切断ツールを用いて装置を切断することによって変更することができる。インプラントの遠位及び/近位端は、切断、サンディング、及び先細くし、丸くし、勾配をつけ、及び他の所望の形状を形成するための他の方法によって成形することができる。
【0086】
いくつかの例では、インプラントは、更なる又は連続の撹拌条件下で、一晩、沸点以下の温度でクロロホルム中にポリ(カプロラクトン)を溶解させ;製造される調合物に応じて、好ましくは1:99〜70:30(生物活性剤重量:ポリマー重量)の範囲の比で生物活性剤を溶液に添加し;溶液が半透明であるか又は分散された後、更なる又は撹拌条件下で溶媒を蒸発させ;充填したポリマーの固体を押出装置に移し;高分子温度が融点に達するがそれを超えないように、ポリ(カプロラクトン)の分子量(Mn=3,000〜120,000)に依存して、約50℃〜約90℃まで押出装置を加熱し;押出装置が所望の融点下温度に到達したとき、所望の形状に固体を引き伸ばし;引き伸ばされたインプラントの温度を下げた後、所望の挿入長さにインプラントを成形することによって加工される。
【0087】
インプラントがコアを含む場合、インプラントは、例えば、コア材料の外表面の少なくとも一部にわたって1以上のポリマー、及び1以上の生物活性剤を含む被覆組成物を適用することによって加工されてもよい。被覆組成物は、任意の適した方法を用いてコアの外表面に適用することができる。例えば、コア組成物は、ディッピング、噴霧、及びコア組成物を基質に適用するための他の方法によって適用してよい。特定材料上での使用のためのコア組成物の適合は、当業者によって評価することができる。
【0088】
いくつかの実施例では、被覆組成物は、被覆組成物が超音波処理によって粉砕される精密被覆システム(即ち、超音波被覆システム)を用いてコアに塗布される。典型的な超音波被覆システム及び方法は、米国出願公開第2004/0062875号(Chappaら);および、2005年4月8日に出願された“Medical Devices and Methods for Producing Same”と題する米国出願シリアル第11/102,465号に記載される。いくつかの態様では、被覆されるべきコア(例えば、TiNiワイヤ)は、その縦軸について装置を回転することができるピン万力、又は類似装置に積層される。この装置は回転し、超音波噴霧ヘッドは回転コアに対して前後に通過する。
【0089】
超音波被覆システムは、被覆ヘッドから離れて移動するので、下方に狭まる噴霧流を生じることができる。図15を参照すると、拡張が開始する前、焦点64(又は最小の噴霧流径の点)を通過する前の被覆ヘッド62から離れて移動するので、噴霧流60は狭まる。ある態様では、焦点は、約0.5mm〜約1.0mmの断面直径を有する。対照的に、他のタイプの噴霧システムは、多くの場合、それが噴霧ヘッドを離れるにつれて、径が連続的に拡張する噴霧流を生じる。図16を参照すると、噴霧流70は、被覆ヘッド72から離れるにつれて連続して広くなる。
【0090】
超音波被覆システムは、非常な精度を伴ってコアを被覆するために使用することができ、特に、その場合、被覆されるべきコアは、噴霧流の焦点又は近傍に配置される。これは、噴霧流が、焦点又は近傍で相対的に小さな断面積を有するためであり、噴霧流が焦点の外側にある噴霧の相対的に少量の液滴を有するためである。噴霧流が相対的に小さな断面積を有すると、より広いコア領域が被覆を用いて被覆されるべきである場合、被覆されるべきコアと比較した噴霧流の位置が移動されなければならない。
【0091】
ある態様において、超音波噴霧ヘッドは、回転コア中を格子様パターンで前後に移動する。一例として、典型的な格子様パターン80は、図17に示される。格子様パターンは、ポイント83で開始し、ポイント85で終了する。格子様パターンは、一連の横軸の曲線82及び縦軸の運動84を有する。縦軸の運動84の長さに応じて、任意数の横軸の曲線は、所定のコーティング層の長さを覆うために使用することができる。本発明の態様では、格子様パターン80は、3〜100個の間の横軸の曲線82を含む。本発明の態様では、格子様パターン80は、3〜100個の間の縦軸の運動84を含む。現に図18を参照すると、格子様パターン80は、遠位端87及び近位端89を有する典型的なコア材料86の全体に載せられ、コア材料86が、格子様パターン80と比較してどのように被覆されるものなのかを説明する。
【0092】
縦軸の運動の長さは、被覆されるべき装置の表面に出くわすと、噴霧パターンの断面径を含む種々の因子に応じて変化することができる。縦軸の運動は、所望量よりも大きく、格子様パターンが各通路上の同じ場所から得られる場合、被覆表面がでこぼこになってもよい。縦軸の動きのサイズに関する特定の制限は、噴霧パターンの直径及び噴霧パターンの種々の部分の関連する噴霧密度を含む多くの因子に依存するであろう。
【0093】
いくつかの態様では、超音波被覆ヘッドは、コア上に被服層を置くために、格子パターンを複数回(即ち、複数の経路)辿る。各経路上で、ある量のコーティング層が置かれる。このように、超音波被覆ヘッドによってなされた正確な数の通路は、所望の全被覆厚に基づいて変化することができる。いくつかの態様では、コーティング層の量は、約10μgと約1000μgの間の乾燥重量を含む。他の態様では、コーティング層の量は約50μgと約300μgとの間の乾燥重量を含む。
【0094】
いくつかの態様では、同じ縦軸の出発位置は、超音波被覆ヘッドの各経路のためのコアと比較して使用される。例えば、各通路に対して、超音波被覆ヘッドは、同じ縦軸点で開始し、同じパターンに従うものである。他の態様では、超音波被覆ヘッドの縦軸開始点は、各追加の経路を用いて変化してもよい。図19を参照すると、第一経路の第一の横軸曲線は、ポイント100で開始してもよい。次に、第2の経路の第1の横軸曲線は、出発ポイント100から距離101で埋め合わされるオフセット102で開始してもよい。同様に、第3の経路及び第4の経路の第1の横軸曲線は、それぞれ、ポイント104及び106で開始する。矢印108の方向で開始位置を移動するこの技術は、被覆がその十分な厚さまで増加する距離を伸長するために使用することができ、それにより、コーティング層の移動部分の傾斜を制御する。一例として、連続する経路との間のオフセット距離は0.5mmであり得る。これは、一般的に、0.5mm未満、例えば、0.2mmの連続経路間のオフセットを用いて適用されるコーティング層と比較して低い傾斜を有するより長い移動部分をもたらすものである。移動部分の傾斜は、インプラントが被覆の剥離又は喪失の原因となるかもしれない応力(例えば、摩擦応力)を受けるであろう場合、望ましくは低くてもよい(例えば、約1.0未満)。移動部分の傾斜は、インプラント上のコーティング層の量を最小限にすることが望まれる場合、望ましくは高くてもよい(例えば、約1.0を超える)。コーティング層の近位及び遠位の移動部分は、同じであるかまたは異なっている傾斜を有してもよい。例えば、いくつかの態様では、遠位の移動部分は、近位の移動部分より小さい傾斜を有する。
【0095】
いくつかの態様では、コーティング層は、少なくとも2つの層を含み、各層は、同じ組成物を含み、あるいは異なった組成物を含む。このような一態様では、生物活性剤単独、又は1以上のポリマー(第1ポリマー及び/又は第2ポリマー)を伴う生物活性剤のいずれかを含む第1の層が塗布され、その後、1以上の追加の層が塗布され、それぞれ、生物活性剤の有無を問わない。これらの異なる層は、順に、ある種の所望の特性を有する全体の放出プロフィールを提供するために得られる組成物被覆で協力することができ、高分子量を有する生物活性剤を用いた使用に特に好ましい。本発明によれば、被覆の個々の層の組成物は、要望どおり、1以上の生物活性剤、第1ポリマー、及び/又は第2ポリマーの任意の1以上を含むことができる。
【0096】
好ましくは、被覆組成物は、1以上の用途においてインプラントのコアに塗布される。被覆組成物を体部に塗布する方法は、典型的には、装置の形状及び他のプロセス考察のような因子によって支配される。その後、被覆された組成物は、溶媒の蒸発によって乾燥することができる。乾燥プロセスは、任意の適した温度(例えば、室温又は高温)で行うことができ、場合により、真空の支援を必要とする。
【0097】
いくつかの好ましい態様では、被覆組成物は、調節された相対湿度の条件下でコアに塗布される。本明細書中で使用されるとき、「相対湿度」は、所定の空気温度での水蒸気圧(又は水蒸気含量)と飽和蒸気圧(又は最大上記含量)との比である。空気中の飽和水蒸気圧は、空気温度と一緒に変化する:温度が高くなると、それは、より多くの水蒸気圧を保持することができる。飽和した場合、空気中の相対湿度は、100%相対湿度となる。本発明のいくつかの態様によれば、被覆組成物は、周囲湿度と比較して、増加又は減少した相対湿度の条件下でコアに適用することができる。
【0098】
本発明によれば、湿度は、被覆組成物を調製するとき、及び/又は体部に被覆組成物を塗布するときを含む任意の適したやり方で調節することができる。例えば、湿度は、被覆組成物を調製するときに調節される場合、被覆組成物の水含量は、被覆組成物が体部に塗布される前後で調整することができる。湿度が被覆組成物を塗布するときに調節される場合、被覆組成物は、周囲湿度とは異なる相対湿度を提供するように適合される密閉チャンバー又は領域で体部に塗布することができる。一般的に、上昇した湿度の条件下で被覆組成物を塗布することは、典型的には、生物活性剤の放出を加速するであろうし、一方、減少する湿度レベルの条件下で被覆組成物を塗布することは、生物活性剤の放出を減速するであろうことが見出されている。本発明において意図されるように、周囲湿度でなされ、生物活性剤の対応する放出制御と相関し、それを提供することが決定されれば、「調節された」湿度であると考えることができる。
【0099】
さらに、とりわけ、最終的な被覆組成物を提供するための調節された送達装置の体部へ複数の被覆組成物を被覆する場合、得られる被覆組成物に対して所望の放出プロフィールを提供するために、異なる方法(例えば、被覆組成物の水含量を調整するのと比較して調節された環境を用いること)、及び/又は異なるレベルで湿度を調節することができる。前述したように、被覆組成物は、例えば、生物活性剤のみ(又は、1つの若しくは両方のポリマーを含む生物活性剤)を有する初期層を含み、被覆組成物の複数の個々の工程又は層を用いて提供することができ、生物活性剤、第1ポリマー、及び/又は第2ポリマーの適した組合せを含有する1以上の追加の層に被覆され、組合せの結果は、本発明の被覆組成物を提供することである。
【0100】
それ故、好ましい態様では、本発明は、制御された送達装置からの生物活性剤の放出を再現可能に調節する能力を提供する。
【0101】
いくつかの態様では、複数の被覆組成物及び対応する被覆工程は、それぞれ、その対応する放出プロフィールを用いて所望の層の組合せを提供するために、それ自身調節された湿度(所望な場合)それぞれを用いて採用することができる。当業者は、インビボでの種々の効果を達成するために、これらの種々の層の組合せ効果を使用し、最適化することができる方法を承認するであろう。
【0102】
インプラントは、眼に容易に挿入することができる任意の幾何学的形状及びサイズであり得る。さらに、挿入されれば、インプラントは、眼の機能と干渉しないような大きさ及び/又は形状になるべきであり、眼への不必要な不快感又は損傷を引き起こすべきではない。いくつかの態様では、インプラントは、棒状又はフィラメント状の形状である。しかしながら、装置の形状は、フィラメント又は棒状に限定されないが、むしろ、眼への挿入に適した任意の他の形状(例えば、曲線を描いた又はC形体の装置、コイル、薄膜、リボン、折り畳み式ディスク、ペレット等)で提供されてもよい。いくつかの態様では、インプラントは、眼内への挿入を促進するように設計される。例えば、インプラントの遠位端は、眼への挿入及び/又は貫通を促進するように、勾配があり、先細く、又は尖っていてもよい。その代わりに、遠位端は、平滑であり又は丸くなっていてもよく、装置は、眼の切開を通じて挿入されてもよい。尖った遠位端を有するインプラントを提供することは、眼への貫通及び挿入を促進するかもしれない一方で、インプラントを使用者が配置する課題を潜在的に多くさせることになり、最終的な安定な位置で網膜下の空隙にそれ自身を順応させるというよりはむしろ、複数の網膜組織層を横切るインプラントに後継してもよい(例えば、図2〜3を参照されたい)。しかしながら、これらの潜在的な結果は、これらの因子が配慮される挿入技術の使用によって、あるいは、平滑又は丸い遠位端を有するインプラントの提供によって克服することができる。インプラントは、網膜の大きな外傷及び流体物の切開なしに生物活性剤(又は複数)の持続送達を提供するように設計される。
【0103】
いくつかの態様では、インプラントの外径は、網膜剥離及び出血の出現を最小にするために約1000μm以下である。他の態様では、インプラントの外径は、900μm以下であり、他の態様では800μm以下であり、他の態様では700μm以下であり、他の態様では600μm以下であり、他の態様では500μm以下であり、他の態様では400μm以下であり、他の態様では300μm以下であり、他の態様では200μm以下である。いくつかの態様では、インプラントの直径は、約200μm〜500μmの範囲である。
【0104】
いくつかの態様では、インプラントの長さは、約5mm未満であり、他の態様では4.5mm未満であり、他の態様では4.0mm未満であり、他の態様では3.5mm未満である。特定の態様では、インプラントは、長さが、複数の組織層を横切らない眼内に最終的な安定位置になる追加の利点を提供することが見出されるように、長さにして約3mm未満である。しかしながら、複数の組織層の横断の切開を最小限にするように、特別の注意を払って挿入することができる3mmより長いインプラントを提供することが可能である。インプラントの柔軟性によって、最終的に挿入されて安定位置に適合することができる。なお更なる態様では、インプラントの長さは2.9mm以下であり、他の態様では2.8mm以下であり、他の態様では2.7mm以下であり、他の態様では2.6mm以下であり、他の態様では2.5mm以下であり、他の態様では2.4mm以下であり、他の態様では2.3mm以下であり、他の態様では2.2mm以下であり、他の態様では2.1mm以下であり、他の態様では2.0mm以下である。いくつかの態様では、インプラントの長さは、約2.00mm〜約3.00mmの範囲である。
【0105】
インプラントの直径が小さくなるほど、装置の挿入及び操作がより困難になり、インプラントにカプセル化することができる生物活性剤(又は複数)の量が限定される。このような因子は、インプラントのサイズを決定するのに配慮される。いくつかの態様では、インプラントは、網膜下の空隙内に導くことができるマイクロ外科用器具によって掴むのに十分な堅さであり、このように、インプラントは、適宜、設計される。同様に、インプラントの長さが短くなるほど、装置の挿入及び操作は、より困難になり、インプラント中にカプセル化することができる生物活性剤(又は複数)の量が減少する。それ故、これらの因子は、インプラントのサイズの決定において配慮される。一態様では、装置の断面積は、好ましくは、最大196250μm2である。
【0106】
いくつかの態様では、インプラントは、「そのまま」眼に直接挿入される。他の態様では、インプラント挿入装置(例えば、インプラントが眼に装填され挿入される管状装置)は、網膜下の空隙内にインプラントの挿入を促進するために使用されてもよい。このような挿入装置は、眼内へのインプラントを装填し、配置するための微小鉗子及び同様の装置を使用する必要性を省略することができる。
【0107】
本明細書中で使用されるとき、「生物活性剤」は、生物学的組織の生理学に影響を与える物質を意味する。本発明に従って有用な生物学的物質は、インプラント部位への適用に所望の治療的特性を有する任意の物質を実質的に含む。本明細書の記載のために、「生物活性剤」に触れるが、単数用語の使用が意図される複数の生物活性剤の適応を限定せず、任意の数の生物活性剤が本明細書中の教示を用いて提供することができることは理解される。
【0108】
生物活性剤は、限定されないが、薬物、医薬、抗生物質、抗菌剤、増殖抑制剤、神経保護剤、抗炎症剤(ステロイド性及び非ステロイド性)、増殖因子、神経栄養因子、血管形成抑制剤、血栓溶解剤又は遺伝子を含む。
【0109】
典型的な生物活性剤は、限定されないが、トロンビン阻害剤;抗血栓剤;血栓溶解剤;線維素溶解薬;血管けいれん抑制剤;カルシウムチャネル遮断剤;血管拡張剤;血圧降下剤;抗菌剤、例えば、抗生物質(テトラサイクリン、クロロテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、セファレキシン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、リファンピシン、シプロフロキサシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、ゲルダナマイシン、エリスロマイシン、ペニシリン、スルホンアミド、スルファジアジン、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフイソキサゾール、ニトロフラゾン、プロピオン酸ナトリウム)、抗真菌剤(例えば、アンフォテリシンB及びミコナゾール)、及び抗ウイルス剤(例えば、イドクスウリジン・トリフルオロチミジン、アシクロビル、ガンシクロビル、インターフェロン);表面糖タンパク質受容体の阻害剤;抗血小板薬;抗有糸分裂剤;微小管阻害剤;分泌抑制剤;活性阻害剤;リモデリング阻害剤;アンチセンスヌクレオチド;代謝拮抗物質;抗増殖剤(抗血管形成剤を含む);抗癌化学療法剤;抗炎症剤(例えば、ハイドロコルチゾン、酢酸ハイドロコルチゾン、デキサメタゾン21−リン酸塩、フルオシノロン、メドリゾン、メチルプレドニソロン、プレドニソロン21−リン酸塩、酢酸プレドニソロン、フルオロメタロン、ベータメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド);非ステロイド性抗炎症剤(例えば、サリチル酸塩、インドメタシン、イブプロフェン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、ピロキシカム);抗アレルギー剤(例えば、クロモ糖化ナトリウム、アンタゾリン、メタピリリン、クロルフェニラミン、セトリジン、ピリラミン、プロフェンピリダミン);抗増殖剤(例えば、1,3−シスレチノイン酸);充血除去剤(例えば、フェニレフリン、ナファゾリン、テトラヒドラゾリン);縮瞳剤及びコリンエステラーゼ抑制剤(例えば、ピロカルピン、サリチル酸塩、カルバコール、塩化アセチルコリン、フィゾスチグミン、エセリン、フルオロリン酸ジイソプロピル、ヨウ化ホスホリン、臭化デメカリウム)、免疫学的薬物(例えば、ワクチン及び免疫刺激剤);ホルモン剤(例えば、エストロゲン、エストラジオール、プロゲスタチオナール、プロゲステロン、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、ペプチド及びバソプレッシン視床下部放出因子);免疫抑制剤、成長ホルモン拮抗剤、増殖因子(例えば、上皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、形質転換増殖因子ベータ、ソマトトロピン、フィブロネクチン);血管形成阻害剤(例えば、アンギオスタチン、酢酸アネコルテイブ、トロンボスポンジン、抗VEGF抗体);ドーパミン作動薬;放射線療法薬;ペプチド;タンパク質;酵素:細胞外マトリックス成分;ACE阻害剤;フリーラジカルスカベンジャー;キレート剤;抗酸化剤;ポリメラーゼ阻害剤;光線力学療法;遺伝子治療薬;及び他の治療薬、例えば、プロスタグランジン、プロスタグランジン抑制剤、プロスタグランジン前駆体等を含む。
【0110】
抗増殖剤は、細胞の増殖を阻害する、当業者に既知の任意の多くの化合物、物質、治療媒体又は薬物を含む。このような化合物、物質、治療媒体又は薬物は、限定されないが、5−フルオロウラシル、タキソール、ラパマイシン、マイトマイシンC及びシスプラチンを含む。
【0111】
神経保護剤は、神経組織に破壊性又は毒性効果を発揮する性質である神経毒性から守り又は保護する、当業者に既知の任意の多くの化合物、物質、治療媒体又は薬物を含む。このような化合物、物質、治療媒体又は薬物には、限定されないが、ルベゾールが含まれる。
【0112】
抗炎症剤は、ステロイド性又は非ステロイド性であって、炎症過程を妨げ又は抑制する性質を有するものとして一般的に特徴付けられる、当業者に既知の任意の多くの化合物、物質、治療媒体又は薬物を含む。非ステロイド性炎症剤又は化合物は、プロスタグランジンの合成と干渉する方法によって、鎮痛性、解熱性及び抗炎症性を共有する薬物類を含む。このような非ステロイド性抗炎症剤は、限定されないが、インドメタシン、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム及びナブメトンを含む。
【0113】
本発明の方法論における使用に意図されるこのような抗炎症性ステロイドは、米国特許第5,770,589号に記載されるものを含む。例示的な態様では、本発明の方法論における使用に意図される抗炎症性ステロイドは、トリアムシノロンアセトニド(ジェネリック名)である。本発明の方法論における使用に意図されるコルチコステロイドは、例えば、トリアムシノロン、デキサメタゾン、フルオシノロン、コルチゾン、プレドニソロン、フルメトロン、及びそれらの誘導体を含む(同様に、米国特許第5,770,589号を参照されたい)。
【0114】
当業者に既知であるように、増殖因子は、細胞増殖を促進する物質を意味するものとして元々は使用された総称であり、現在、増殖刺激因子(マイトジェン)として機能する分子を記載するために漠然と使用されるが、同様に、増殖阻害剤(負の増殖因子と呼ばれることがある)、細胞移動、即ち、走化性物質として機能し、または主要細胞の細胞移動若しくは侵入を阻害する因子、細胞の分化した機能を調節する因子、アポトーシスに関与する因子、血管形成に関与する因子、又は増殖及び分化に影響を与えずに細胞の生存を促進する因子として使用される。本発明では、このような増床因子は、限定されないが、色素上皮由来因子及び塩基性線維芽細胞増殖因子を含む。
【0115】
当業者に既知であるように、神経栄養因子は、ニューロン生存及び軸索成長を増加することができ、神経系におけるシナプス発生及び可塑性を制御する増殖因子及びサイトカインを説明するために使用される一般用語である。本発明において、このような増殖因子には、限定されないが、毛様体神経栄養因子及び脳由来の神経栄養因子が含まれる。
【0116】
抗血管形成剤は、毛細血管を含む血管の成長及び生成を阻害する、当業者に既知の多くの化合物、試薬、治療媒体又は薬物のいずれかを含む。このような化合物、試薬、治療媒体又は薬物には、限定されないが、酢酸アネコルタブ及び抗VEGF抗体が含まれる。
【0117】
血栓溶解剤は、当業者に既知であり、血栓(blot clot)を溶解し、又は血栓を溶解若しくは分解する多くの化合物、試薬、治療媒体又は薬物のいずれかを含む。このような血栓溶解剤には、限定されないが、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、即ち、TPA及びウロキナーゼが含まれる。
【0118】
インプラント内の生物活性剤組成物は、要望通り追加の柔軟性又は剛性を提供するようにマトリックスを形成するために使用されるポリマーの物理的性質を修飾するように付加的に選択することができる。このような選択は、当業者によって容易に達成することができ、使用されるポリマー及び所望の変更を与えることができる。
【0119】
いくつかの態様では、インプラントは、少なくとも0.0001μg/日、他の態様では少なくとも0.001μg/日、他の態様では少なくとも0.01μg/日、他の態様では少なくとも0.1μg/日、他の態様では少なくとも1μg/日、他の態様では少なくとも10μg/日、他の態様では少なくとも100μg/日、及び他の態様では少なくとも1000μg/日の生物活性剤溶出速度を有する。溶出速度は変化することができ、治療される眼の状態、選択される生物活性剤(又は複数)、及び治療される状態の重症度の各タイプに応じてカスタマイズすることができる。一般的に、インプラントの機械的完全性を維持しながら、装填している全生物活性剤(又は複数)を最大にすることが望まれる。
【0120】
本発明のインプラントは有意な利点を提供することができ、それは、それらが、所望の治療部位(即ち、治療される眼の部分)で直接的な挿入、移植及び生物活性剤の送達用に設計されているためである。いくつかの態様では、インプラントは、脈絡膜及び網膜の障害又は疾患の治療用に設計される。例えば、インプラントは、治療される組織の部分に正確に生物活性剤を送達するように、脈絡膜、網膜又は網膜下の空隙に直接的に挿入され、移植される。このような局在化した送達は効率的であり、治療される眼の部分にのみ実質的に生物活性剤を送達し、健康な組織にいかなる有意な量の生物活性剤を送達しない。本明細書中で使用されるとき、用語「治療される眼の部分にのみ実質的に送達される」とは、インプラントによって送達される少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは全部の生物活性剤が治療される眼の部分に送達されることを意味すると理解される。本明細書中で使用されるとき、用語「健康な組織にいかなる有意な量の生物活性剤を送達しない」とは、インプラントによって送達される全生物活性剤の95%未満、より好ましくは90%未満、より好ましくは80%未満、より好ましくは70%未満、より好ましくは60%未満、より好ましくは50%未満、より好ましくは40%未満、より好ましくは30%未満、より好ましくは20%未満、より好ましくは15%未満、より好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、より好ましくは4%未満、より好ましくは3%未満、より好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満が健康な組織に送達されることを意味すると理解される。
【0121】
これは、眼の疾患及び障害の治療に従来使用されている全身的、局所的、及び全臓器への送達機構とは対照的であり、このような機構は、治療部位に治療的に有効な量の生物活性剤を送達するように、全身的、局所的、経口的又は臓器全体に非常に多くの投薬量の生物活性剤の投与を必要とする。例えば、網膜障害を治療するために治療的に有効な投薬量の生物活性剤を投与するために、約1000〜1,000,000倍の治療的に有効な量の投薬量が全身的又は経口的な投与に必要であるかもしれない。これは生物活性剤の不必要な浪費に起因するだけでなく、このような大量の生物活性剤の送達から不必要な毒性及び/又は副作用を引き起こし得る。ある場合では、全身的、経口的及び全臓器の毒性は、非常に重大であるため、治療的投薬量はこれらの従来の投与法によって達成されない場合がある。さらにこのような送達システムは、このような生物活性剤の投与を必要としない生体の組織及び部分に生物活性剤を送達する。一般的に、例えば、このような送達システムは、眼の疾患部分及び疾患でない部分に生物活性剤を送達する。同様に、全臓器への送達システムはまた非効率であり、治療部位への治療有効量の試薬を提供するような生物活性剤の実質的に多くの投薬量の送達を必要とする。本明細書中で使用されるとき、「局所的な経口送達システム」は、治療される臓器によって一般的に生物活性剤を送達する送達システムを意味すると理解される。このように、例えば、網膜疾患を治療するために使用される局所的、全視覚器官/眼器官の送達システムは、このような臓器の疾患部位よりはむしろ所望の臓器(眼)への生物活性剤を送達するものである。このようなシステムの欠点は、全視覚器官/眼器官が、たとえ器官の疾患部分(例えば、網膜)が実際には治療を必要とするとしても、治療濃度の薬物を受けることである。それにもかかわらず、このような局所的臓器送達システムは、網膜の疾患組織及び眼の健康組織を含む眼全体に生物活性剤を送達する。さらに、このようなシステムは、望まれる治療部位からは幾分離れた眼の部分に生物活性剤を送達する。結果として、臓器(眼全体)に投与しなければならない生物活性剤の量は、生物活性剤が望まれる眼組織に直接かつそれのみに送達されたならば障害又は疾患を治療するために必要であろう治療有効量を超える場合がある。例えば、網膜障害を治療するための治療有効量を投与するために、約100〜1000倍の治療有効な投薬量を、全臓器送達システムを用いて投与されなければならない。このような投与を必要としない臓器部分への生物活性剤の投与は、望ましくない毒性又は副作用を引き起こす場合がある。例えば、網膜障害を有するが、他は健康である眼への生物活性剤の送達は、潜在的に白内障、眼圧上昇、及び硝子体内に沈殿した薬物による視力障害を引き起こす可能性がある。眼の網膜及び脈絡膜の治療は詳細に検討されてきたが、インプラントは、他の眼の部位に特異的な障害の治療に同様に使用することができる。
【0122】
本インプラントは、全臓器送達システムよりも効果的であるため、それらは、全臓器送達システムより不連続な形状を有する。特に、全臓器送達システムは、疾患部位で同様の治療薬物濃度を達成するために多量の生物活性剤を保持し送達することを要求するが、それらは、保持し送達することができる生物活性剤の量を最大にするように設計される。このように、例えば、より大きなインプラント及び/又は複雑な形状(例えば、コロイド状又は曲線プロフィール)を有するインプラントは、生物活性剤を保持するためにより大きな表面積及び/又はより大きな内容積を提供するために必要である。本インプラントは、このような多量の生物活性剤を保持する必要がなく、それ故、必要に応じて必要であるとしても、より大きな及び/又はより複雑な形状である必要はない。
【0123】
本発明はまた、所望の治療部位、特に脈絡膜及び網膜に1以上の生物活性剤を投与することによって眼の障害及び/又は疾患、特に網膜/脈絡膜障害又は疾患を治療及び予防する方法を特徴とする。特に、この方法は、眼内に生物活性剤を移植することによって、治療部位に1以上の生物活性剤を投与することを提供する。一態様では、本発明のインプラントは、所望の治療部位に生物活性剤の持続送達を提供するために眼内に挿入される。このような方法は、主な外傷または網膜の流体物切開の必要性がなく、治療部位の網膜下に生物活性剤の局部的な持続送達を提供する。
【0124】
好ましい方法では、インプラントは、脈絡膜上方であって神経線維層下方の1以上の層に位置される。さらに、必要に応じて、2以上のインプラントは、疾患部位を潜在的に取り囲むように同時に移植されてもよい。さらに、インプラントは、持続放出薬物送達システムとして、及び眼内への移植を達成するために眼構造を自分で孔を開け及び/又は貫通することができる体部として作用することが望まれる。しかしながら、インプラントが挿入される眼内に切開を与えることもまた可能である。
【0125】
インプラントを挿入するための1つの方法は、標準的な扁平部硝子体茎切除を実行し、扁平部硝子体茎切除を介して網膜下の空隙にインプラントを挿入することを含む。特に、患者は、はじめに、例えば、塩酸ケタミン及び塩酸キシアジンの筋内注射で麻酔される。次に、瞳孔は、フェニレフリン及びトロピカミドで拡張される。次に、側頭上部及び鼻上部の四分円で角膜周囲切開がなされる。注入パイプラインは、鼻上部の強膜切開を介して挿入され、硝子体カッターは側頭上部の強膜切開を介して挿入される。次に、硝子体カッター及び注入パイプを使用して、2ポートのコア硝子体茎切除を実行することができる。手術用顕微鏡によって提供される照明は、手術に十分である。眼内の顕微鏡を用いた鉗子を用いて、インプラントは、小さな自動スタートの網膜切開を介して網膜下空隙に挿入される。インプラントは、勾配のある尖った先端を有していてもよく、それによって、網膜下の空隙への挿入を促進する。インプラントは、その位置に留まり、鉗子が眼から引き出される。網膜裂孔を密封するためにレーザー網膜復位を適用する必要はない。輸液ラインは取り除かれ、強膜切開及び結膜開口を閉じる。
【0126】
生物活性剤濃度は、インプラントと組織層との間の距離の関数であり、したがって、インプラントの配置は、溶出源の円又は球の半径に対する特定の投薬量/距離の関係を有する生物活性剤の特定の濃度を提供するようにカスタマイズし得ることがさらに判明している。一連のインプラントは、投薬量をさらにカスタマイズするように併用され得ることが判明している。例えば、2以上のインプラントの球又は円の半径の投薬量/距離の関係が重複する場合、異なる生物活性剤濃度の1以上のゾーンを達成することができる。
【0127】
全部でないにしても、大部分の眼疾患及び障害は、3種の徴候:(1)血管形成、(2)炎症、及び(3)変性の1以上と関連する。特定の障害の徴候に基づいて、当業者は、治療投薬濃度で3つの群から任意の適した生物活性剤を投与することができる。下記は、いくつかの眼疾患及び障害、並びにその治療形態を説明する。しかしながら、下記は、例示を目的とするものであって、眼疾患又は障害の治療のための特定の技術又は生物活性剤に本発明の方法論を限定することを意図しないことは認識されるべきである。
【0128】
例えば、糖尿病性網膜症は、血管形成によって特徴付けられる。本発明は、網膜下の空隙に1以上の抗血管形成因子を送達することによって、糖尿病性網膜症を治療することを意図する。網膜下の空隙にも1以上の神経栄養因子を同時送達することが望まれる。
【0129】
ブドウ膜炎は、炎症を伴う。本発明は、網膜下の空隙に1以上の抗炎症因子を挿入し又は配置することによってブドウ膜炎を治療することを意図する。
【0130】
網膜色素変性は、比較すると、網膜変性によって特徴付けられる。本発明は、網膜下の空隙に1以上の神経栄養因子を挿入し又は配置することによって網膜色素変性を治療することを意図する。
【0131】
加齢黄斑変性は、血管形成及び網膜変性の両方に関係し、限定されないが、乾性加齢黄班変性、滲出性加齢黄班変性、及び近視性変性を含む。本発明は、1以上の神経栄養因子及び/又は抗血管形成因子を網膜下の空隙に挿入し又は配置することによって障害を治療することを意図する。より具体的には、この方法論は、網膜下の空隙にコルチコステロイドの挿入又は配置を意図する。
【0132】
緑内障は、眼圧の増加及び網膜神経節細胞の喪失によって特徴付けられる。本発明で意図される緑内障の治療は、興奮毒性損傷から細胞を保護する1以上の神経保護剤の送達を含む。このような試薬は、N−メチル−D−アスパラギン酸塩(NMDA)拮抗剤、サイトカイン、及び神経栄養因子を含む。
【0133】
本発明は、本発明の理解に役立つことが意図される下記の実施例を参照してさらに説明されるが、その制限として構築されてはいない。
【実施例】
【0134】
実施例
実施例1:
使用した材料:
ポリ(カプロラクトン)(平均Mw80,000、[−O(CH2)5CO−]n、メルトインデックス125℃/0.3MPa、Sigma Aldrich Biochemicals、ミズーリ州セントルイス)
トリアムシノロンアセトニド(TA)(純度99%、Mn434.5、C24H31FO6、Sigma Aldrich Biochemicals、ミズーリ州セントルイス)
プレドニソロン(純度99%、C21H28O5、Mn360.5、Sigma Aldrich Biochemicals、ミズーリ州セントルイス)
クロロホルム(純度99.8%、CHCl3、A.C.S.試薬、Sigma Aldrich Chemicals)
エーテル(純度99%、Mn74.12、(C5H5)2O、A.C.S.試薬、Sigma Aldrich Chemicals)
平衡塩類溶液(無菌、防腐剤不含、Sigma Aldrich Biochemicals、ミズーリ州セントルイス)
【0135】
省略形:
PCL:ポリ(カプロラクトン)生分解性インプラント
TA:トリアムシノロン
PCL/TA:生分解性トリアムシノロン装填ポリ(カプロラクトン)インプラント
【0136】
インプラント製造:
実施例で使用されるインプラントを下記の通り調製した:PCLは、連続撹拌条件下で一晩35℃クロロホルム中に溶解させた。次に、トリアムシノロンアセトニド(TA)は、70:30、60:40又は50:50のポリマー/薬物重量比(wP/wD)で溶液に添加される。溶液が均一になると、蒸発トレイ上に注がれ、そのままドラフト中で72時間凝固させる。TAを装填したPCLの白色の固形状の鞘は密閉カラム中で巻かれ、10mLシリンジに密封した。シリンジを水浴中で80℃まで加熱し、均一な熱分配を確認し、薬物又はポリマーを損傷するであろう局所的な高温を防ぐ。ポリマーは、融解状態では十分ではなかったが、温度は、押し出されるのに十分な粘度状態までこの半結晶性の密閉し密封された巨大分子のポリマーの移動を開始するには十分に高かった。加えて、ポリマー内の薬物結晶体は、このプロセスとPCLのみのインプラント押出しとを比較した場合、「流動増加」可塑剤として作用することが分かった。
【0137】
一度シリンジが80℃に達すると、水浴から素早く取り出し、1cmの材料をそこから押し出した。押し出された材料は、その後、張力を与えることによって、フィラメントに引き伸ばした。70:30、60:40又は50:50のwP/wD製剤については、約150μmのインプラント径は、それぞれ約20、15及び10cmに引き伸ばされた長さによって達成され、一方で、約300μmのインプラント径は、それぞれ約10、15及び5cmに引き伸ばされた長さによって達成される。最も高い薬物装填(50:50のwP/wD)を有する製剤は、加工中、頻繁に破壊した。引き伸ばされたインプラントは迅速に冷却し、その後、所望の挿入長に顕微鏡下で切断することができる。
【0138】
薬物を含まないインプラントはまた、PCLペレットをシリンジに直接挿入し、それらを80℃まで加熱し、次に、前述したのと同じ方法で押出して引き伸ばすことによって調製した。
【0139】
6匹の色素沈着したウサギは、基準時及び移植後4週で蛍光眼底血管造影、眼底撮影、光コヒーレンス・トモグラフィー(Zeiss Model3000、ドイツ)を受けた。ウサギは、下記の群:
1群:PCLのみのインプラントを有する2匹のウサギ(PCL、ウサギ1及び2);
2群:PCL/TA60:40(wP/wD)インプラントを有する4匹のウサギ(ウサギ3〜6)
に再分割した。
【0140】
両群は、標準的な扁平部硝子体茎切除、網膜下の空隙への薬物送達装置の挿入を受けた。簡単には、動物は0.3mLのケタミンヒドロクロリド(100mg/mL;Fort Dodge Lab.,Iowa)及び0.1mLの塩酸キシラジン(100mg/mL;Miles Inc.USA)/kg体重の筋内注射で麻酔した。各2.5%フェニルエフリン及び1%トロピカミドの1滴で瞳孔を拡張した。3mmの角膜周囲切開は、右眼の側頭上部及び鼻上部の四分円で行った。強膜切開は、側頭上部及び鼻上部の四分円の角膜輪部の1〜2mm後部の20ゲージの微小硝子体網膜ブレードで作製した。輸液ラインは、鼻上部の強膜切開を介して挿入され、縫合され、硝子体カッター(Bausch & Lomb,USA)は、側頭上部の強膜切開を介して挿入した。硝子体カッター及び輸液ラインは、2ポートコア硝子体茎切除を介して挿入した。手術用顕微鏡(Zeiss、ドイツ)によって提供される照明は、手術に十分である。
【0141】
眼内顕微鏡用鉗子(Bausch & Lomb,USA)を用いて、インプラントは、小さな自己密閉網膜切開を介して網膜下の空隙に挿入された。インプラントの勾配のある先端は、網膜を介した容易な挿入を可能にした。インプラントは、適所に残され、鉗子は眼から引き抜かれた。網膜裂孔を密封するためにレーザー網膜復位を適用する必要はない。輸液ラインは取り除かれ、Vycril 7−0(Ethicon,USA)を用いて強膜切開及び結膜開口を閉じる。4週間、全てのウサギは眼底検査を受け、次に、ペントバルビタールナトリウム(Anpro Pharmaceuticals,Oyster Bay,NY)の心腔内注射を用いて麻酔下で屠殺した。
【0142】
溶出、薬物押出及び組織学:
インビトロ溶出
インビトロ薬物溶出特性に関して、薬物装填PCLインプラントを表1に従って調製した。
【0143】
【表1】
【0144】
各インプラントは、10mLの1%ウシ血清アルブミン(BSA)/平衡塩溶液(BSS)を含有する15mLのキャップしたチューブに設置した。チューブを振とう水浴(100rpm)で37℃でインキュベートした。2、4、8、24、72、168、336、504及び672時間の各時間増分で、インプラントをBSS/BSA溶液から取り出し、新しい10mlのBSS/BSAに設置した。
【0145】
最終期間後、インプラントをBSS/BSA溶液から取り出し、残存するTAの押出しを完了するために2mLのエーテルを含有するチューブに設置した。エーテル(2mL)及び50μLの内部標準(プレドニソロン2mg/ml)を残ったBSS/BSA溶液に添加した。各溶液を2分間ボルテックスを行い、次に、3分間、10,000rpmで遠心分離し、エーテルとBSS/BSA相を分別した。上部層のエーテル相をガラスシリンジを用いて取り出し、ドラフト中で溶媒蒸発のために2mLのキャップしたマイクロチューブに添加した。蒸発が完了後、1mLの60%メタノールをマイクロチューブに添加し、ボルテックスを行った。次に、分析のために溶液を1mLのガラスセルの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)バイアルに移した。
【0146】
インビトロでの溶出
2匹のウサギ(PCL/TA60:40インプラント)をインビトロの薬物溶出の分析のために使用した。ウサギを麻酔して水分(約0.3mL)及び血液をリチウムヘパリン管(2ml)に回収した。次に、ウサギを安楽死させ、眼を摘出した。移植した装置及び周辺組織(強膜、脈絡膜、網膜、レンズ、及び硝子体)を解剖し、2mLのマイクロチューブに分別した。個々の組織を計量し、次に、0.5mL BSS中で超音波(50%パワーで1〜2パルス/秒)によってホモジナイズした。完了後に、試料を50μLの内部標準(プレドニソロン2mg/ml)を満たし、ボルテックスを行った。エーテル(0.5mL)を添加し、ボルテックスを行い、10,000rpmで10分間遠心分離して、組織試料からTAを抽出した。インビボでの試験について前述したように、上部のエーテル層を取り出し、溶媒を蒸発させ、溶媒をメタノールで置換するために、新しい2mLのマイクロチューブに設置した。
【0147】
515ポンプ、2996フォトダイオードアレイ検出器及び717プラスオートサンプラーを装備したミレニアム高速液体クロマトグラフ(Waters Corp.、USA)は、インビトロ及びインビボでの試料を処理するためにこの試験で使用した。高速液体クロマトグラフィ(HPLC)と一緒に提供されるミレニアムソフトウェアは、クロマトグラフィーのピークの積分のために使用した。溶媒をインラインの脱気剤に連結した。Nova−Pak C18カラム(3.9×150mm)及びNova−Packガードカラム(Waters Corp.,USA)固定相及び60%メタノールの等張移動相からなる逆相HPLCシステムに試料を注入した。TA及びプレドニソロンのピークは、1mL/分の流速で溶出させ、245nmで検出した。並行な50μLのプレドニソロンを同じHPLC条件下でクロマトグラフィーを行い、TAの溶出効率を測定した。さらに、同時クロマトグラフィー技術を採用して、両化合物の同定を有効にした。TA濃度の計算は、ピーク領域及びプレドニソロンの回収率に基づいている。HPLC条件は、良好な分解力でトリアムシノロンとプレドニソロンのピークを分別した。プレドニソロンの保持時間は、3.46分であり、一方、トリアムシノロンの保持時間は5.2分であった。
【0148】
組織学
残りの4匹のウサギ(2匹はPCLのみのインプラントを有し;2匹はPCL/TA60:40インプラントを有する)の眼を摘出し、24時間、4%パラホルムアルデヒドで固定し、次に、さらに24時間、ボーイン固定した。次に、標本をパラフィンに包埋し、切片を作製し、標準的な実験室条件下でヘマトキシリンとエオシン(H&E)で染色した。
【0149】
結果:
1、2、3及び4週でスリットランプを用いた臨床試験及び間接検眼鏡検査は、網膜下の流体、浸出液、フォローアップ時点のいずれかでの装置周辺の出血又は線維の蓄積を検出できなかったことを示した。眼底検査は、代表的なウサギに関して図1に示すように、炎症及び移動の徴候なしに、インプラントはその位置を維持していることを示した。蛍光血管造影は、図1〜2に示されるように、代表的なウサギについてのいずれかのフォローアップ時点で、血管漏れ、プール、網膜色素上皮(RPE)異常、又は線維は示さなかった。光コヒーレンス・トモグラフィーは、図3に示すように、全てのウサギの眼の網膜下の空隙にインプラントの首尾よい置換を示した。
【0150】
様々なインプラント径(150μm対320μm)のトポグラフィー効果はまた、インプラントの部位で網膜厚の比較的な増加によって図3に見ることができる。インプラント径の増加からは異常は報告されなかった。インプラント径の増加は、僅かに多くの厳しい外科手法及び細胞崩壊のより大きな領域をもたらしただけであった。
【0151】
様々なポリマー−薬物比及び配置に関するBSS/BSA(1%)溶液中へのインビトロ溶出速度は、図4〜6に示される。一般的に、溶出速度は、初期の崩壊相とそれに続く後期の一次相を示した。特定の理論にとらわれずに、初期の早期急速放出相は、表面の薬物結晶が媒体中のインプラントの網膜下への吸収に起因し、ポリマーコアからの分散を優先する。この初期の破裂は、局所的な治療投薬量が急速に達成されることが望まれる場合には、特に有用であるかもしれない。異なったポリマー薬物比のそれぞれについて、インプラント径又は薬物:ポリマー比の増加は、溶出される薬物の量の増加をもたらす。理論にとらわれることなしに、これは、薬物の含有量の増加及び/又は表面領域の溶離に起因すると信じられる。より大きな(約300μm)のインプラントについて、PCL/TA70:30〜50:50由来の製剤中の薬物の比の増加はまた、薬物溶出速度を増加させ、一方、薬物のダンピング効果は、薬物比が高く(PCL/TA50:50)、かつインプラント径が小さい場合に発生する。この後者の例では、全薬物放出は、初期の破裂中に発生し、網膜下組織によるTA吸収速度は、おそらく制限因子である。各試験の最初の数時間、全ての溶出プロフィールの近い重なりはまた、溶出の最初の段階での制限工程となるTA吸収速度であることを示した。ポリ(カプロラクトン)は、酵素核酸に疎水性であり、不浸透性である;したがって、膨張、バルク分散又は分解は、生体環境ではなさそうである。特定の理論にとらわれないで、初期の表面から表面下事象の後に発生するTA溶出プロフィールは、TA結晶が生体に積極的に吸収されると、多孔質薬物の境界層が形成し、コアに向ってより深く移動するという結果になると信じられる。結果として、薬物装填が低くなると、薬物吸収中のポリマーの多孔率が小さくなり、TA溶出速度が低くなる。
【0152】
代表的な視像の図7に示される網膜切開のサイズは、100μm未満である。移植したインプラントの例示的な組織学を図8に示す。しかしながら、より小さなサイズの網膜切開は、カスタムな移植ツールの使用で可能となる。
【0153】
初期のインプラントと比較すると、外科後4週間で取り出されたインプラントは、初期のインプラントより、幾分線維質なポリマー微細構造であった。ある研究では、一度、全薬物がインビトロの溶出試験で装置から押出されると、薄片状の線維質/多孔質のポリマー微細構造だけが残った。このポリマーで選択される分子数は、商業的に利用可能な範囲の高程度(Mw80,000)であった。PCLは、Mwの低下によって分解し、そのため、より長期間の分解時間がこの高いMwで期待される。ポリマー分解がフォローアップ期間中に開始されたという徴候はなかった。
【0154】
組織学は、インプラントが、薬物の装填の有無にかかわらず、図8に示されるように、自然には線維状であるようには思われない1又は2の細胞層によってカプセル化されていることを示した。インプラント上方の神経線維層(神経節軸)はそのままであるように見え、一方、インプラント位置の真上の支持細胞は、PCLだけのインプラントでは明らかに存在せず、TA/PCLを移植した眼では幾分崩壊し薄くなっている。Bruchメンバーはそのままであるようだが、インプラントに近接した外部核及びRPE層の細線化及び崩壊の証拠があった。炎症応答の欠如により、PCLは、この組織領域と優れた適合性を示し、観察された細胞変化のバルクは、移植中の機械的な損傷に起因すると考えられる。これらの外部の細胞層の栄養源を妨げる効果などの他の因子はまた、これらの細胞変化に役割を果たすかもしれない。
【0155】
PCLは、皮下に移植されたウサギにおいて無作為な加水分解的鎖切断によって分解される。初期には、鎖切断反応が広まると、分子量の進行的な低下によって分解が明らかになる。しかしながら、PCLの物理的な重量は、分子量が5000になるまで変化せず、即ち、分解の第一段階において重量の喪失はないこともまた示された(Pitt CG.Poly ε caprolactone and its copolymers,In Chassin M Langer R,editors,Biodegradable polymers as drug delivery systems,New York:Dekker;1990.p71−119)。このように、小さなPCL断片の食作用及び代謝は、分解過程の最終段階まで開始しないだろう。さらに、PCLは、1ヶ月のフォローアップ期間で優れた生体適合性を示した。
【0156】
PCL/TA薬物送達システムは、図24及び25に示されるように、PCL単独のインプラントよりも、RPE層の崩壊が小さく、インプラントの近接領域における組織層の細線化が小さいことを示した。しかしながら、これがステロイドの抗炎症効果に原因があるのか又は外科的手法及び配置における可変性に起因しているだけなのか結論付けるのは困難である。インプラントが内在する網膜細胞層崩壊領域は、幅が約300μmであり、長さが2000μmに広がった。神経線維層はインプラント上にそのまま残存するが、網膜切開の部位で崩壊することが分かった。このように、非常な焦点領域の視覚喪失だけが期待され、レーザーフォトコアギュレーション療法よりも確かに小さい浸襲性である。
【0157】
HPLCは、後部組織試料におけるインプラント後4週でTAの存在を確かめた(図9)。TAは、前部構造又は血液において検出されなかった。TAについてのHPLCピークは、図9に示されるグラフ上に記される。存在する追加のピークは、内部標準のプレドニソロンを示す。
【0158】
この初期の調査に基づいて、PCLは、少なくとも1ヶ月のTA溶出能力を有することを示した。組織中の薬物濃度は、後眼部に局在していることを示した。組織学は、PCLの存在から炎症応答を示さなかった。挿入による小さな機械的損傷が観察され、細胞層及び構造における変化の主要な原因であると信じられる。PCLカプセル化はまた明らかであり、移植された材料について期待されている。
【0159】
PCT/US2006/021006
図を支援する説明
図1は、移植後4週で、本発明の一態様に従う移植されたポリ(カーボネート)/トリアムシノロンアセトニド(PCL/TA)インプラントの代表的な眼底写真を示す。
図2は、移植後4週で、本発明の一態様に従う移植されたPCL/TAインプラントの代表的な蛍光眼底血管造影を示す。
図3は、移植後4週で、本発明の態様に従う2種のポリ(カプロラクトン)(PCL)インプラントに関する移植部位周辺の網膜の厚さの代表的な光学コヒーレンストモグラフィーを示す。網膜表面(μm)は、X軸上に表され、網膜の厚さ(μm)は、Y軸上に表される。
【0160】
図4は、本発明の一態様に従う70:30のPCL/TAインプラントに関する代表的なインビトロの累積溶出データを示す。グラフ中、時間(日)は、X軸上に表され、一方、トリアムシノロン(TA、μg)の濃度は、Y軸上に表される。
図5は、本発明の一態様に従う60:40のPCL/TAインプラントに関する代表的なインビトロの累積溶出データを示す。グラフ中、時間(日)は、X軸上に表され、一方、トリアムシノロン(TA、μg)の濃度は、Y軸上に表される。
図6は、本発明の一態様に従う50:50のPCL/TAインプラントに関する代表的なインビトロの累積溶出データを示す。グラフ中、時間(日)は、X軸上に表され、一方、トリアムシノロン(TA、μg)の濃度は、Y軸上に表される。
【0161】
図7は、移植4週後、本発明の態様に従う網膜下のPCL/TAインプラントの代表的な視像及び頻度を示し、(7A)は視神経位置を示し;(7B)はインプラント位置を示し;(7C)及び(7D)は網膜切開の部位を示し;(7E)は外部の強膜表面であり;(7F)はマイクロ鉗子を挿入中のインプラントの近位末端に対する損傷領域の輪郭を描く。
図8は、移植4週後、本発明の一態様に従う150μmのPCL網膜下インプラント(薬物なし)の組織学(H&E染色)を示し、(8A)はデバイス位置を示し;(B)はRPEを示し;(8C)は神経線維層を示し;(8D)は脈絡膜を示し;(8E)は強膜を示す。
図9は、本発明の一態様に従う4週の網膜下移植(PCL/TA 60:40)後のトリアムシノロンアセトニド(TA)の代表的なインビボでの定量検出を示す。
【0162】
実施例2:
すべての手順は、実験動物の治療及び使用に関するガイドライン、USDA動物福祉規則(CFR 1985)及び人道的な実験動物の治療及び使用に関する公共ヘルスサービス政策(1996)、並びに調査、試験、教育又は実演目的のための獣医動物の使用を統治する機関政策に順守する。
【0163】
7匹の色素沈着したウサギ(J1−J7)は、標準的な扁平部硝子体茎切除、及び網膜下の空隙への薬物装置送達の挿入を受けた。動物は、0.3mLの塩酸ケタミン(100mg/mL;Fort Dodge Lab.,Fort Dodge,Iowa)及び0.1mLの塩酸キシラジン(100mg/mL;Miles Inc,Shawnee Mission,Kan)/kg体重の筋内注射で麻酔した。2.5%フェニルエフリン及び1%トロピカミドをそれぞれ1滴で瞳孔を拡大した。3mmの角膜周囲切開は、右眼の側頭上部及び鼻上部で行った。強膜切除は、こめかみ上部及び鼻上部の四分円にある角膜輪部の1〜2mm後部で20ゲージの微細硝子体網膜ブレードで行った。注入パイプラインは、鼻上部の強膜切開を通して挿入し、硝子体カッター(Bausch & Lomb,St Louis,USA)は、側頭上部の強膜切開を介して挿入した。硝子体カッター及び注入パイプは、2ポートのコア硝子体切除を行うために使用した。手術用顕微鏡(Zeiss,Germany)によって提供される照明は、手術には十分であった。眼内顕微鏡用鉗子(Bausch & Lomb,St Louise,USA)を用いて、薬物送達インプラントは網膜下の空隙に挿入され、小さな網膜切除を行った。インプラントの勾配のある形状の先端は、網膜下の空隙への挿入を促進した。インプラントは、その位置で放置し、鉗子を眼から引き出した。網膜裂孔を密封するためにレーザー網膜復位を適用しなかった。輸液ラインは取り除かれ、Vycril 7−0(Ethicon,USA)を用いて強膜切除及び結膜開口を閉じた。
【0164】
表2は、ある種の実験上の変化を概要する。表3は、得られた実験結果を要約する。
【0165】
【表2】
【0166】
【表3】
【0167】
コメント:
スリットランプ及び間接検眼鏡を用いた臨床試験は、フォローアップ期間でTiNi合金、被覆されたポリマー薬物/TiNi合金コア、PCL/TA、及びPCLインプラントの存在からいずれも悪い炎症応答は示さなかった。
【0168】
レンズ接触は、ウサギJ3移植で起こり、白内障形成は、術後1週間からその先で報告された。術後の最初の週で、ウサギJ3に存在する硝子体混濁及び白内障は、初期のデータ収集は解釈するのが難しいとされた。病因不明の硝子体混濁は、術後1週間のウサギJ7に存在するが、2週間までに完全に減少した。
【0169】
蛍光血管造影は、術後2日のウサギJ1及びウサギJ2において血管漏出があることを示した。ウサギJ1は、組織学的データのために、術後2日で屠殺した。漏出は、術後1週でウサギJ2において正常レベルに戻った。血管漏出は、初期の工数低減曲線で、複数の網膜切除試行によって持続したインプラント外傷のレベルからウサギJ1において予期された。血管漏出は、術後1〜2週で、ウサギJ3、J4、J5、J6及びJ7で観察されなかった。
【0170】
ウサギJ7に移植された被覆されたポリマー薬物/TiNi合金コアは、約2.25mmの長さに切断した。特定の形状は、複数の網膜組織層を横断して最終の静止位置を避けることを見出した。これより僅かに大きく、この長さ未満であり、約3mmの所望の上限範囲である類似の形状はまた、複数の網膜組織層を横断する最終の静止位置を避けるであろう。インプラントは、長さにしてより短くなるので、適した挿入及び配置に関してインプラントを操作することがより困難になるかもしれず、さらには、挿入に含有してもよい治療薬/試薬の量が制限されてもよい。
【0171】
実施例3:
使用される材料及び省略形:
コア:
NIT:80μmのエッチング処理されたニチノールワイヤ、Nitinol Devices and Componetns(Freemont CA)から市販されている。
生物活性剤:
RAP:ラパマイシン、LC Laboratories,Woburn MAから市販されている。
【0172】
ポリマー:
pEVA:ポリエチレン酢酸ビニル共重合体(33%wt.酢酸ビニル及び67%wt.ポリエチレン)、Aldrich Chemical Co.から市販されている。
pBMA:ポリ(n−ブチルメタクリレート)、Aldrich Chemical Co.から市販されている。
溶媒:
CHCl3:クロロホルム溶媒、Burdick & Jacksonから市販される。
【0173】
インプラント調製:
被覆用液調製:
被覆溶液は、まずCHCl3溶媒のアリコートに25.0部のpEVA及び25.0部のpBMAを添加することによって調製した。pEVAを溶解するために、成分を約1時間30℃〜40℃まで加熱した。pEVA及びpBMAをCHCl3に溶解後、得られたポリマー/溶媒溶液を室温まで冷却した。次に、50部のRAPをポリマー/溶媒溶液に添加し、RAPを約30分間室温でポリマー/溶媒溶液中でRAPを撹拌した。得られた被覆溶液を10μmのポリプロピレンフィルター(Gelman Sciences pall membrane Part No.61756)を用いてろ過した。最終の被覆溶液は、約40mg/mlの固体(即ち、pEVA、pBMA、及びRAP)を含有した。
【0174】
被覆手順:
NITワイヤをはさみで長さにして約1cmごとに切断した。このワイヤの長さは、イソプロピルアルコールで湿らせたワイプ(Tex WipeによるAlpha Wipe)を用いて汚れを落とした。次に、各ワイヤの長さは、微量天秤(Metler−ToledoのタイプUMX2)を用いて±0.003μgまで計量した。
【0175】
超音波スプレーヘッド(Sono−Tek、Milton,NY)及び被覆溶液用のシリンジポンプシステムからなる超音波コーター装置を用いて被覆用液をNITワイヤ上に噴霧した。円筒状のピン万力は、NITワイヤの末端を保持するために使用した。NITワイヤは、スプレーの焦点で(即ち、スプレーヘッドから約2〜3mm)スプレーと直角に維持し、約200rpmで回転させた。スプレーヘッドは、被覆組成物を塗布するためにNITワイヤ全体に対して縦軸に移動させた。図57に示される格子様パターンは、0.1mmの縦軸方向の動きを伴う被覆に使用した。被覆は、室温(約20℃〜22℃)で一晩、溶媒を蒸発させることによって乾燥させた。得られた被覆は、全長が約3.0mmであり、約300μmの均一な厚さを有する約2.0mmの長さである部分、中心部分の各側面上に移行厚を有する約0.5mmの長さの2つの部分を含む。乾燥後、被覆したNITワイヤは、微量天秤(Metler−ToledoのタイプUMX2)を用いて±0.003μgまで計量した。インプラントの被覆重量は、被覆ワイヤの最終重量から未被覆のワイヤの重量を差し引いて計算した。各インプラント中のRAPの全量は、被覆中のRAPの重量パーセントを表す0.50を被覆重量に掛けることによって計算した。インプラントのポリマー被覆におけるRAPの全量は、26〜89μgの範囲であった(表4を参照されたい)。
【0176】
ウサギに移植する前に、インプラントを約2.3〜3.04mmの長さに切断した(表4を参照されたい)。
【0177】
移植:
眼及び視覚研究における動物の使用に関するARVO陳述に従って実験を行った。
6匹のダッチ種の色素沈着したウサギは、塩酸ケタミン(100mg/mL;Fort Dodge Labs,Fort Dodge,IA)及び塩酸キシラジン(100mg/mL;Miles,Inc.,Shawnee Mission,KS)の4:1の混合物の1〜1.5mLを筋内注射によって一般的な麻酔をした。
【0178】
全てのウサギにおいて、右眼だけを外科手術した。散瞳は、局所の1%トロピカミド及び2.5%フェニルエフリンを用いて達成した。上部四分円に制限された結膜の角膜周囲切開後、20ゲージの微細硝子体網膜ブレードを用いて角膜輪部の約1mm後部に刺切を行った。3匹のウサギ(RS1、RS3及びRS4)では、硝子体切除を行わなかった。硝子体網膜の微小鉗子は、インプラントの端を握るために使用され、強膜切除を介して後部のチャンバーに導入した。円盤状及び脈管状アーケードより数mm小さいインプラントの先端が網膜に穴を開けるために使用された。次に、鉗子は、この網膜切除を介して網膜下の空隙にインプラントをスライドさせるために使用した。
【0179】
3匹のウサギ(RS3、RS5、及びRS6)では、インプラント挿入前に硝子体切除を行った。これらの眼では、1つの強膜切開は、頭側及び別の鼻上部に行った。注入カニューレは、鼻上の強膜切開を介して挿入し、所定の位置で縫合した。硝子体カッターは、頭側の強膜切開を介して導入した。コアの硝子体切開の完了後、網膜切開装置を眼から取り出した。網膜切除した2匹のウサギ(RS5及びRS6)では、円盤状及び脈管状アーケードより数mm小さい25ゲージの針が網膜に穴を開けるために使用され、約0.1mLの平衡塩溶液を網膜下の空隙に注入することによって小さな網膜下のろ過胞を生じるために使用した。次に、微小鉗子を用いて、この位置で網膜下の空隙に網膜切除を介してインプラントを挿入した。ウサギの1匹(RS3)では、網膜下のろ過胞は生じなかった;むしろ、インプラントは、上述した方法による網膜切開後に網膜の真下に直接挿入した。
【0180】
全てのラットでは、インプラントが挿入された後に装置を眼から取り出し、強膜切開を7−0 Vicryl縫合(Johnson and Johnson,Piscataway,NJ)で閉じた。結膜は、二次的意向によって閉じたままであった。ゲンタマイシン(40mg/mL溶液0.2mL)の結膜下注射を実行した。
【0181】
モニタリング及び評価:
間接的な検眼鏡試験、眼底撮影、蛍光血管造影、及び光学コヒーレンストモグラフィーは、術後の1、2、及び4週で各ウサギの右眼で実行した。4週後、試験を完了し、ウサギをペントバルビタールナトリウム(Anpro Pharmaceuticals,Arcadia,CA)の心臓内注射で安楽死させた。各ウサギの右眼は除核され、4%のパラホルムアルデヒド中に24時間置いた。次に、眼をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水中に移し、さらに切開するまで4℃で保存し、その時、後部ポールで網膜−脈絡膜−強膜複合体の2cm×2cmのブロックに区切った。これをパラフィンに包埋し、切片にし、標準的な方法を用いてヘマトキシリン及びエオシンで染色した。
【0182】
移植結果:
インプラントは、3匹のウサギでは網膜下の空隙に移植され、1匹のウサギではRPE下の空隙に移植された(表4)。4個の眼(RS1−RS4)では、インプラントの移植前には網膜下の流体のろ過胞は生じなかった。これらのケースでは、1つの網膜下の移植(RS1)、1つのRPE下の移植(RS3)、及び移植時に2つの失敗した試みがあった。2つのケース(RS5及びRS6)では、網膜下の流体のろ過胞は、インプラント配置前に生じた。これらの両方の例では、インプラントは、容易に網膜下の空隙に挿入された。
【0183】
移植領域全体で硝子体の有無は、手法の容易さを決定する因子であることが分かった。硝子体切除が行われていないケースの1つ(RS1)では、外科医は、網膜下の空隙にインプラントを挿入することができ、インプラントは鉗子を取り出すときに所定の位置に残す。しかしながら、2匹のウサギ(RS2及びRS4)はともにインプラント移植前に硝子体切除を受けておらず、試みた移植中に複数の網膜切除の作製のため、外科処置時に屠殺した。これら2つの場合では、硝子体は、インプラントに付着し、移植鉗子が引き抜かれる際に網膜下の空隙から出口にそれを引き起こすことによって良好な移植を妨げた。それに反して、硝子体切除が移植前に実行された場合(RS3、RS5、及びRS6)、インプラントを離し、装置の位置を邪魔することなしに鉗子を引き抜くことが可能であった。
【0184】
ウサギの眼におけるインプラントの寛容:
全ての計画されたフォローアップ試験は、移植を受けた4匹のウサギのうち3匹(RS1、RS3、及びRS5)に関して1ヶ月に亘って完了した。1匹のウサギ(RS6)では、後部癒着が1〜2週で発生し、それで散瞳が2及び4週でフォローアップ試験で達成しなかった。結論として、蛍光血管造影(FA)及び光学コヒーレンストモグラフィー(OCT)試験は、これらの検査で実行されなかった。インプラントを受けた4個の眼のいずれにも網膜剥離は起こらなかった。
【0185】
3匹のウサギ(RS1、RS3、及びRS5)では、フォローアップ試験において炎症又は毒性の徴候は検出されなかった。さらに、インプラントは、それらの初期の移植部位から移動しなかった。RS1では、装置移植前に網膜下の流体のろ過胞は生じておらず、1週で、手術による少量の残った網膜下の出血は、蛍光血管造影上の閉塞を引き起こすインプラントに隣接して存在したままであった。これは、時間の経過とともに解決され、それにより、網膜下の出血からの少ない閉塞は、2週で認識し、4週ではなかった。そうでなければ、血管造影図は装置によって閉塞したことだけを示した。OCTはまた、装置の網膜下の位置を確認にした。近接した網膜又はRPEに対する萎縮又は損傷の証拠がなかった。RS5では、網膜下の流体のろ過胞は、正しい網膜下の装置の配置を支援するように生じ、任意の時間点で認識される網膜下の出血はなかった。蛍光造影は、外科処置中、器具接触の部位である装置の下の直線状の低蛍光斑を示した。さらに、軽度の低色素沈着は、装置周辺に観察することができ、これは、網膜下のろ過胞が生じた領域に対応している。
【0186】
RS6では、1及び2週での試験は、移植部位でインプラントは安定であること示し、近接する組織は正常に見えた。軽度の前部チャンバー内炎症及び後部癒着は2週までに発生し、それによって、散瞳は損傷され、撮影が困難であった。間接的な検眼鏡検査は、後部チャンバー内炎症の証拠を示さなかった。
【0187】
RS3では、装置はRPEの真下に移植され、インプラントはまた、安定な位置のままであり、近接領域のいずれの視覚可能な異常は起こらなかった。インプラントは、試験で直接視覚化されなかったが、血管造影はそれによって閉塞を示し、OCTはその位置を裏付けるように見えた。
【0188】
組織学的結果:
インプラントが網膜下に移植された眼では、移植部位の後部ポールの断面は、装置を覆っている光受容体の喪失を示した。近接する構造は正常であるように見えた。
【0189】
【表4】
【0190】
実施例4:
材料及び省略形:
コア材料:
NIT:80μmのエッチング処理されたニチノールワイヤ、Nitinol Devices and Componetns(Fremont CA)から入手できる。
PMMA:ポリ(メタクリル酸メチル)ポリマー、Biogeneral Inc.(San Diego、CA)から入手される。
CG:クロムガット、Ethicon(Somerville,NJ)から入手される。
【0191】
ポリマー:
pEVA:ポリエチレン酢酸ビニル共重合体(33%wt.酢酸ビニル及び67%wt.ポリエチレン)、Aldrich Chemical Co.から市販される。
pBMA:ポリ(n−メタクリル酸ブチル)、Aldrich Chemical Co.から市販される。
【0192】
溶媒:
CHCl3:クロロホルム溶媒、Burdick & Jacksonから市販される。
THF:テトラヒドロフラン溶媒、Burdich & Jacksonから市販される。
生物活性剤:
RAP:ラパマイシン、LC Laboratories,Woburn MAから市販される。
TA:トリアムシノロンアセトニド、Pfizer Center Source,Kalamazoo,MIから市販される。
【0193】
インプラント調製:
TA被覆溶液調製(被覆溶液1):
被覆溶液は、まずTHF溶媒のアリコートに22.5部のpEVA及び27.5部のpBMAを添加することによって調製した。pEVAを溶解するために、成分を約1時間30℃〜40℃まで加熱した。pEVA及びpBMAをTHFに溶解した後、得られたポリマー/溶媒溶液を室温まで冷却した。次に、50部のTAをポリマー/溶媒溶液に添加し、TAを約30分間室温で、ポリマー/溶媒溶液中で撹拌し、被覆溶液を形成した。得られた被覆溶液は、10μmのポリプロピレンフィルター(Gelman Sciences pall membrane Part No.61756)を用いてろ過した。最終の被覆溶液は、約60mg/mlの固体(即ち、pEVA、pBMA、及びTA)を含有した。
【0194】
RAP被覆溶液調製(被覆溶液2):
被覆溶液は、まずCHCl3溶媒のアリコートに10部のpEVA及び30部のpBMAを添加することによって調製した。pEVAを溶解するために、成分を約1時間30℃〜40℃まで加熱した。pEVA及びpBMAをCHCl3に溶解した後、得られたポリマー/溶媒溶液を室温まで冷却した。次に、60部のRAPをポリマー/溶媒溶液に添加し、RAPを約30分間室温で、ポリマー/溶媒溶液中で撹拌し、被覆溶液を形成した。得られた被覆溶液は、10μmのポリプロピレンフィルター(Gelman Sciences pall membrane Part No.61756)を用いてろ過した。最終の被覆溶液は、約40mg/mlの固体(即ち、pEVA、pBMA、及びRAP)を含有した。
【0195】
pBMA被覆溶液調製(コア溶液3):
被覆溶液は、まずCHCl3溶媒のアリコートにpBMAを添加することによって調製した。pBMAを溶解するために、成分を約3時間室温で撹拌した。得られた被覆溶液は、10μmのポリプロピレンフィルター(Gelman Sciences pall membrane Part No.61756)を用いてろ過した。最終の被覆溶液は、約10mg/mlのpBMAを含有した。
【0196】
被覆手順:
コア材料は、はさみで長さにして約1cmごとに切断した。イソプロピルアルコールに浸したワイプ(Tex WipeのAlpha Wipe)を用いてコアの汚れを落とした。次に、各コアは、微量天秤(Metler−ToledoのタイプUMX2)を用いて±0.003μgまで計量した。
【0197】
超音波スプレーヘッド(Sono−Tek、Milton,NY)及び被覆溶液用のシリンジポンプシステムからなる超音波コーター装置を用いて被覆用液をコアの長さ上に噴霧した。円筒状のピン万力は、コアの末端を支えるために使用した。コアは、スプレーの焦点で(即ち、スプレーヘッドから約2〜3mm)スプレーと直角に維持し、約200rpmで回転させた。スプレーヘッドは、被覆組成物を塗布するためにコア全体に対して縦軸に移動させた。図57に示される格子様パターンは、0.1mmの縦軸方向の動きを伴う被覆に使用した。被覆は、室温(約20℃〜22℃)で一晩、溶媒を蒸発させることによって乾燥させた。RAP徐放製剤については、CHCl3(被覆溶液3)に溶解したpBMAからなる追加の被覆が、乾燥したRAP/pEVA/pBMA被覆全体に噴霧された。被覆は、室温(約20℃〜22℃)で一晩溶媒を蒸発させることによって乾燥させた。得られたインプラントは、微量天秤(Metler−ToledoのタイプUMX2)を用いて±0.003まで計量した。
【0198】
TAを含むインプラント(被覆溶液1から調製される)は、全長が約2mmであり、約250μmの均一な厚さを有する約1mmの長さの中心部分、その中心部分の各側面上に移行厚を有する約0.5mmの長さの2つの部分を含む。
【0199】
RAPを含むインプラント(被覆溶液2及び被覆溶液3(RAP徐放)から調製される)は、全長が約2.5mmであり、約350μmの均一な厚さを有する約1.5mmの長さの中心部分、その中心部分の各側面上に移行厚を有する約0.5mmの長さの2つの部分を含む。
【0200】
インプラントは、長さが約1mmの非被覆のコア材料の尾部を含み、眼の外科用器具と連結するための操作領域を提供する。これはまた、移植中の基盤の溶出部分に対していずれかの損傷を防いだ。
移植前に、インプラントは、エチレンオキシドガスによって滅菌した。
【0201】
移植:
参加した全ての研究者は、実験動物の治療及び使用に関するガイドライン、人道的な実験動物の治療及び使用に関するOPRR公衆衛生局政策(1986年改訂)、米国動物保護法(修正)、調査、試験、教育又は実演目的のための獣医動物の使用を支配する視覚及び眼科学における研究期間及び協会(ARVO)に順守した。
【0202】
塩酸シクロペントレート1%(Bausch & Lomb、Rochester,NY)及び塩酸フェニルエフリン5%(Bausch & Lomb)の各1滴を用いて移植前に瞳孔を完全に拡張した。0.3mLの塩酸ケタミン(100mg/mL;Fort Dodge,Labs,Fort Dodge,IA)及び0.1mLの塩酸キシラジン(100mg/mL;Miles,Inc.,Pittsburgh,PA)/kg体重の筋内注射によってウサギを麻酔した。眼周囲の外科プレップは、1:10に希釈した食塩水中のポビドンヨードを用いて領域を消毒することによって実行した。眼の表面は、1:20に希釈した食塩水中のポビドンヨードを用いてプレップした。ウサギを手術用顕微鏡下に配置し、布で覆った。ワイヤ眼瞼検鏡を配置した。
【0203】
3mmの角膜周囲切開は、右眼の側頭上部及び鼻上部の四分円で行った。強膜切開は、20ゲージの微小硝子体網膜ブレードを用いて、側頭上部及び鼻上部の四分円に角膜輪部の1〜2mm後部で行った。輸液ラインは、鼻上部の強膜を介して挿入され、縫合し、硝子体カッターを側頭上部の強膜を介して挿入した。2ポートのコア硝子体切除は、手術用顕微鏡(Carl Zeiss Ophthalmic Systems,Inc.)によって提供された照明で行った。眼内顕微鏡用鉗子は、表5によって示されるように、網膜下の空隙に薬物送達インプラントを挿入するために使用した。羽根状及び半剛体構造のインプラントは、容易な挿入を可能にした。インプラントを所定の位置に残した状態で、鉗子を眼から引き抜いた。網膜裂孔を密封するためにレーザー網膜復位を適用しなかった。輸液ラインは取り除かれ、Vycril 7−0(Ethicon)を用いて強膜切開及び結膜開口を閉じた。外科手術の終わりに、抗生物質、40mg/mlのゲンタマイシン0.1cc(Phoenix Scientific,St.Joseph,MO)及び2mg/mlのデキサメタゾン0.1cc(Phoenix Scientific)の結膜下注射は、外科処置部位から遠ざけて投与した。エリスロマイシン抗生物質軟膏(Eli Lilly & Co.,Indianapolis.IN)は、処置後2日間、処置した眼に毎日塗布した。Buprenex(Reckitt Benckiser,Richmond VA)は、2日間、毎日与えた。Harlan High Fiber Rabbit Diet #2031は毎日与えた。水を適宜与え、自動給水システムを介して送達させた。実験番号、研究員、動物数、試験コード、性別、及び受領日を示したカードによって区別したぶら下げたステンレススチールケージに動物を個別に入れた。光サイクルは、自動タイマー(12時間明るく、12時間暗い)を用いて調節した。
【0204】
間接的な検眼鏡検査及び20ジオプターレンズ(Vantage Indirect Ophthalmoscope,Keeler Ltd.,Windsor,England)を用いて完全な眼科検査は、基準、術後1、2、及び4週間で行った。各試験前に、0.3mLの塩酸ケタミン(100mg/mL)及び0.1mLの塩酸キシラジン(100mg/mL)/kg体重の筋内注射で動物を麻酔した。塩酸シクロペントレート1%(Bausch & Lomb)及び塩酸フェニルエフリン5%(Bausch &Lomb)の各1滴を用いて瞳孔を完全に拡張した。検鏡をウサギの眼の眼瞼を分けるために使用した。臨床試験は、巨視的な表面の評価から後部及び前部構造の詳細な間接的眼科用顕微鏡試験へと進めた。眼底撮影(VISUPAC/System 451を有するZeiss FF 450plus IR Fundus Camera)及び光学コヒーレンストモグラフィー(OCT III、Carl Zeiss Ophthalmic Systems,Inc.)を使用して、各ケース及び任意の特定の所見を立証した。結膜は、赤み、結膜浮腫、薄層化、損傷、線維成長、及び排出について視覚的に調べた。角膜は、新血管形成、潰瘍及び浮腫の徴候について調べた。白内障形成についてレンズを検査し、移植中に起ったかもしれないいずれかのレンズ接触についてさらに評価した。前部チャンバー内の任意の紅班又は細胞の存在あるいは瞳孔形状の変化はまた認識された。虹彩は、充血、虹彩ルベオーシス、隆起及び癒着について調べた。硝子体は、出血及び炎症性残骸について調べた。網膜は、任意の損傷、裂傷、剥離又は出血について調べた。インプラントの任意の押出し又は移動はまた評価された。
【0205】
結果:
網膜下薬物送達インプラントは、表5によれば、20/24のウサギの右眼(OD)に外科的に移植した。インプラントの設計及び形状は、いくつかのプロトタイプの試験を通じて最適化した。網膜における貫通の最適な長さは、2.75mmであった。これより長い貫通の長さは、出血の合併症の増加をもたらす。24匹のウサギのうち4匹は、外科処置の初期で屠殺した:3匹は、流体プールから網膜剥離をもたらす輸液ラインの流速装置に関する外科的合併症のためであり、1匹は、鈍器の外傷によって引き起こされた制御不能な網膜出血のためである。尾部は、標準的な眼内微小鉗子で上手くつかめるようにインプラントのデザインに含めた。外科的処置は、3人の硝子体網膜の外科医によって実行し、期間が相対的に短く、各外科的処置は、麻酔が効き始めた時点から15分未満継続した。眼内レンズ接触は、6匹のウサギで発生し、レンズ切除は、鉗子に対する視覚通路を明確にするために、6匹のうち4匹において実質的に実行した。焦点白内障は、レンズ切除を受けなかった2匹のウサギで発症した。ウサギ及びヒトの眼は、いくつかの重要な構造的特徴を共有するが、ウサギのレンズは、実質的により大きなサイズであり、後部位置のために避けるにはより困難である。
【0206】
手術後のフォローアップのいずれの時点でもウサギを屠殺しなかった。全ては、試験期間中、全般的に良好な健康状態であった。1、2及び4週のフォローアップ臨床試験は、対照群及びトリアムシノロンアセトニドインプラント群の両方において良好なインプラントの生体適合性、重篤な外科的合併症がないことを反映した。術後1日、全ての眼は、外科処置及び縫合から僅かな結膜の赤みを示した。術後1週までに、結膜の赤みは、4匹の動物を除いて全てにおいて消失した。術後2週までに、結膜の赤みは、全ての動物において消失した。術後1週までに、1匹のウサギは、角膜血管新生及び脚による過剰な引っかきが原因の浮腫を発症した。術後1週までに、3匹のウサギは、脚による過剰な引っかきが原因の角膜浮腫を発症した。全てのケースは、潤滑剤、予防的抗生物質軟膏剤及び引っかき防止頸部ギプスによって術後2週までに解決した。永続的な角膜の引っかき又は不透明性は生じなかった。これらのウサギは、外科処置中にレンズ切除を受け、したがって、追加の外傷を受けた。結膜の浮腫、薄層化、線維性組織成長又は結膜病変の徴候はなかった。1、2、及び4週での臨床試験は、フォローアップのいずれかの時点で装置周辺に検出可能な網膜下流体、浸出液又は線維症の蓄積は示さなかった。局在化した網膜出血は、おそらくは移植中の網膜色素の上皮に対する損傷から外科処置の完了時に5匹のウサギにおいて認識された。これは、この試験の完了によって3匹のウサギに対して退行した。眼底検査は、網膜切除、ある場合には装置外傷からの外科的手法の間に認識したもの以外には網膜裂傷は示さなかった。眼底写真は、炎症又は増殖の徴候を示さず、インプラントがその位置で維持したことを示した。光学コヒーレンストモグラフィーは、全てのウサギの眼の網膜下の空隙にインプラントの良好な配置を示した。
【0207】
図20に示した単一のTiNiコアの網膜下インプラントは、図21に示した二重の外科的インプラントと対比された。外科手術準備では、疾患部位周辺への一連の薬物送達装置の移植は、その増殖の調節に有害であることを証明することができた。図22は、PMMAコア移植を示す。PMMAのようなポリマーは、コンタクトレンズ及び眼内レンズにおけるそれらの使用を伴う眼科産業において長期の歴史があり、金属インプラントよりは良く受け入れられるかもしれない。クロムガットコアインプラントはまた、良好であることが明らかにされた。ここで、この概念は、握るための尾部を用いて装置を移植し、次に、尾部を長期間生体吸収させることである。外科手術のスケジュールにより、このウサギは、実際には、生体吸収可能なクロムガットの縫合材料の炎症反応及び優れた生体適合性の徴候を示さず、45日後に屠殺した。クロムガットコアは、45日後でさえ、生体吸収の徴候を示さなかった。縫合糸として使用した場合、クロムガットは、90日以内に全体的に生体吸収されることが期待されるが;しかし、本出願人の結果は、この網膜下適用により低い生分解性率を有するかもしれないことを示唆する。
【0208】
表5に示される悪い外科的徴候、特に試験群においては、レンズへの器具外傷、及び眼圧を維持する輸液ライン装置に対する流速調節の喪失によって引き起こされる。臨床徴候の結果を表6に提示する。網膜指示以外で、全ての悪い臨床的所見(硝子体および前部チャンバー)は、ラパマイシン移植群において見られた。ウサギ13及び15は、硝子体炎症性残骸及び虹彩癒着があった。ウサギ14は、前部チャンバーに細胞を有し(結果として、増殖へと導かれる)、異常な瞳孔形状を有した。ウサギ16は、角膜浮腫及び角膜潰瘍があった。ウサギ17では、角膜浮腫、角膜潰瘍及び角膜血管新生があった。ウサギ18は、異常な瞳孔形状、虹彩癒着及び硝子体炎症性残骸があった。これらの臨床徴候は、ラパマイシンが、現在の投薬量でウサギの眼に対して毒性であるかもしれないことを示唆する。網膜徴候は、組織にに対する鉗子による外傷と関連し、特定のインプラント群に特異的ではなかった。
【0209】
この試験の完了時点で、全てのインプラントは、首尾よく取り出された。網膜下の空隙からのインプラントの除去は無傷であった。一度、動物は麻酔され、外科処置の準備がされると、5分未満でインプラントを取り出した(図23)。除去を妨げる付着した組織はなかった。さらに、インプラントは損なわれておらず、カプセル化されているようでなかった。インプラントの尾部は、周辺に残され、除去過程を促進した。薬物装填インプラントの表面微細構造及び半透明の変化が見られ、薬物溶出として微小孔の形成と関連する。薬物を含まないインプラントは、これらのタイプの材料から期待されるように、この試験全体で外見は変化しなかった。ラパマイシン薬物群を除いて、全てのウサギは、装置の良好な生体適合性の徴候である炎症反応の兆候及び一般的な健康の変化がない状態で屠殺した。
【0210】
実施例は、眼内注射又は硝子体内インプラントによる眼の硝子体チャンバーへ直接薬物を導入する代わりに網膜下の薬物送達プラットフォームの使用を首尾よく示した。対照群及びトリアムシノロンインプラントは、良好な生体適合性及び有効性を示し、ラパマイシン装填インプラントは、この投薬量で毒性の徴候を示した。インプラントの除去は、複雑な手法でない。インプラントは構造的に無傷であり、薬物装填されたものについては、表面は、薬物が溶出するにつれて多孔性を生じ始めた。
【0211】
【表5】
【0212】
【表6】
【0213】
図を支援する説明
図20は、移植4週でのトリアムシノロンアセトニドを装填した1つのTiNiコア網膜下インプラントの代表的な眼底写真及び光学コヒーレンストモグラフィーを示し、(20A)は視神経を指し;(20B)は網膜下インプラントを指し;(20C)は網膜切除の部位を示し;(20D)は網膜周辺に位置するインプラント尾部を指し;(20E)は光学コヒーレンストモグラフィーを用いたインプラントの断面の深さ位置を指し;(20F)はRPE及び神経線維層を示し;(20G)はインプラントを取り囲む局所的な網膜剥離であり;(20H)は脈絡膜である。
【0214】
図21は、移植1週でのトリアムシノロンアセトニドを装填した二重のTiNiコア網膜下インプラントの代表的な眼底写真及び光学コヒーレンストモグラフィーを示し、(21A)は視神経を指し;(21B)及び(21C)は網膜下インプラントを指し;(21D)は網膜剥離部位を示し;(21E)は網膜周辺に位置するインプラント尾部を指し;(21F)及び(21G)は光学コヒーレンストモグラフィーを用いたインプラントの断面の深さの位置を指し;(21H)はRPE及び神経線維層を示し;(21I)は脈絡である。
【0215】
図22は、移植1週でのラパマイシンを装填したPMMAコア網膜下インプラントの代表的な眼底写真であり、(22A)は視神経を指し;(22B)は網膜下インプラントを指し;(22C)は網膜切除の部位を示し;(22D)は網膜周辺に位置するインプラント尾部を指す。
【0216】
図23は、代表的なインプラントの回復外科手術を示し、(23A)は結膜切開を示し;(23B)は強膜切除を示し;(23C)は外科用微小鉗子を示し;(23D)はインプラントを取り出すために硝子体から網膜に伸長する微小鉗子を示し;(23E)はインプラントの尾部を握る微小鉗子を示し;(23F)は取り出されたインプラントを示す。
【0217】
本発明の他の態様は、本明細書の考慮に応じて、又は本明細書中に開示された発明の実施から当業者には明確であろう。本明細書中に記載した原理及び態様に対する様々な省略、修飾、及び変更は、添付の請求の範囲によって指示される発明の真の範囲及び精神から逸脱することなしに当業者によってなされてもよい。本明細書中に引用される全ての特許、特許文献及び刊行物は、個別に援用されているかのように参照により援用される。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】図1は、移植後4週で、本発明の一態様に従って移植されたポリ(カプロラクトン)/トリアムシノロンアセトニド(PCL/TA)インプラントの代表的な眼底写真を示す。
【図2】図2は、移植後4週で、本発明の一態様に従って移植されたPCL/TAインプラントの代表的な蛍光眼底血管造影を示す。
【図3】図3は、移植後4週で、本発明の態様に従って2種のポリ(カプロラクトン)(PCL)に関する移植部位周辺の網膜の厚さの代表的な光学コヒーレンストモグラフィーを示す。網膜表面(μm)は、X軸上に表され、網膜の厚さ(μm)は、Y軸上に表される。
【図4】図4は、本発明の一態様に従って70:30のPCL/TAインプラントに関する代表的なインビトロの累積溶出データを示す。グラフ中、時間(日)は、X軸上に表され、一方、トリアムシノロン(TA、μg)の濃度は、Y軸上に表される。
【図5】図5は、本発明の一態様に従って60:40のPCL/TAインプラントに関する代表的なインビトロの累積溶出データを示す。グラフ中、時間(日)は、X軸上に表され、一方、トリアムシノロン(TA、μg)の濃度は、Y軸上に表される。
【図6】図6は、本発明の一態様に従って50:50のPCL/TAインプラントに関する代表的なインビトロの累積溶出データを示す。グラフ中、時間(日)は、X軸上に表され、一方、トリアムシノロン(TA、μg)の濃度は、Y軸上に表される。
【図7】図7は、移植4週後、本発明の態様に従って網膜下のPCL/TAインプラントの代表的な視像及び頻度を示し、(7A)は視神経の位置を示し;(7B)はインプラントの位置を示し;(7C)及び(7D)は網膜切除部位を示し;(7E)は外部の強膜表面であり;(7E)は微小鉗子を挿入中のインプラントの近位末端に対する損傷領域の輪郭を描く。
【図8】図8は、移植4週後、本発明の一態様に従って150μmのPCL網膜下インプラント(薬物なし)の組織学(H&E染色)を示し、(8A)はデバイスの位置を指し;(B)はRPEを示し;(8C)は神経線維層を示し;(8D)は脈絡膜を示し;(8E)は強膜を示す。
【図9】図9は、本発明の一態様に従って4週の網膜下移植(PCL/TA 60:40)後のトリアムシノロンアセトニド(TA)の代表的なインビボでの定量検出を示す。
【図10】図10は、図11の網膜下インプラントの代表的な縦軸方向の断面図を示す。
【図11】図11は、本発明の一態様に従って網膜下インプラントの側面の代表的な説明図を示す。
【図12】図12は、図13の網膜下インプラントの代表的な縦軸方向の断面図を示す。
【図13】図13は、本発明の一態様に従って網膜下インプラントの側面の代表的な説明図を示す。
【図14】図14は、本発明の一態様に従って網膜下インプラントの代表的な説明図を示す。
【図15】図15は、焦点を通過するスプレーストリームの代表的な概略図である。
【図16】図16は、スプレーヘッドから遠くへ移動するにつれて継続して拡張するスプレイストリームの代表的な概略図である。
【図17】図17は、本発明のコーティングインプラントに有用なグリッド様コーティングパターンの代表的な概略図である。
【図18】図18は、コア材料全体に重ねた格子様コーティングパターンの代表的な概略図である。
【図19】図19は、コア材料全体に重ねた一連の第1の横木の代表的な概略図である。
【図20】図20は、移植4週で、トリアムシノロンアセトニドで装填した単一のTiNiコアの網膜下インプラントの代表的な眼底写真及び光学コヒーレンストモグラフィーを示し、(20A)は視神経を示し;(20B)は網膜下インプラントを示し;(20C)は網膜切除部位を示し;(20D)は網膜周辺に位置されるインプラント尾部を示し;(20E)は、光学コヒーレンストモグラフィーを用いたインプラントの断面の深さ位置を示し;(20F)は、RPE及び神経線維層を示し;(20G)はインプラントを取り囲む局所的網膜剥離であり;そして、(20H)は脈絡膜である。
【図21】図21は、移植1週で、トリアムシノロンアセトニドで装填した単一のTiNiコアの網膜下インプラントの代表的な眼底写真及び光学コヒーレンストモグラフィーを示し、(21A)は視神経を示し;(21B)及び(21C)は網膜下インプラントを示し;(21D)は網膜切除部位を示し;(21E)は網膜周辺に位置されるインプラント尾部を示し;(21F)及び(21G)は、光学コヒーレンストモグラフィーを用いたインプラントの断面の深さ位置を示し;(21H)はRPE及び神経線維層を示し;そして、(21I)は脈絡膜である。
【図22】図22は、移植1週間で、ラパマイシンで充填したPMMAコア網膜下インプラントの代表的な眼底写真を示し、(22A)は視神経を示し;(22B)は網膜下インプラントを示し;(22C)は網膜切除部位を示し;そして、(22D)は網膜周辺に位置されるインプラント尾部を示す。
【図23】図23は、代表的なインプラント回復外科手術を示し、(23A)は結膜切開を示し;(23B)は強膜切開を示し;(23C)は外科用微小鉗子を示し;(23D)はインプラントを取り出すために硝子体を通って網膜まで伸長する微小鉗子を示し;(23E)はインプラントの尾部を握る微笑鉗子を示し;そして、(23F)は取り出したインプラントを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脈絡膜、網膜、脈絡膜上方の1以上の組織層、及び神経線維層を有する眼の網膜下領域に配置するために設定される持続放出インプラントであって、下記:
ある長さ及び外部の表面領域を有する生体適合性コア;及び
前記コアの外部表面領域の少なくとも一部を覆って適用されるポリマーマトリックス及び生物活性剤を含む生体適合性コーティング層
を含む前記持続放出インプラント。
【請求項2】
脈絡層上方であるが、眼の神経線維層の下方にある1以上の組織層に位置されるように設定される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
コーティング層が生体適合性コアの全長を覆って適用される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
コーティング層が、生体適合性コアの長さの一部を覆って適用され、生体適合性コアの長さの1以上の部分が被覆されないようにしておく、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
コーティング層が、中心部分、近位移動部分、及び遠位移動部分を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
少なくとも1つの近位移動部分又は遠位移動部分に矢羽根が付されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
近位移動部分及び遠位移動部分の両方に矢羽根が付されている、請求項6に記載のインプラント。
【請求項8】
生体適合性コア又は生体適合性コーティング層が生体安定性ポリマーである、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
生体安定性ポリマーが、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、アクリル系ポリマー、ハロゲン化ビニル系ポリマー、ポリビニルエーテル、ポリビニルメチルエーテル、ポリハロゲン化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族化合物、ポリビニルエステル、ポリ((メチル)メタクリレート)又はポリ((ブチル)メタクリレート)のようなポリ(アルキル(メト)アクリレート)、ポリビニルアミド、ポリアミド、ポリカプロラクタム、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン・トリアセテート、酢酸セルロース、酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロース・エーテル、カルボキシメチルセルロース、それらの共重合体、及びその混和物からなる群から選択される、請求項8に記載のインプラント。
【請求項10】
生体適合性コア又は生体適合性コーティング層が、生分解性ポリマー又は生分解性材料を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項11】
生分解性ポリマーが、ポリ(L−乳酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシ酪酸塩)、ポリ(ヒドロキシ酪酸塩−co−吉草酸塩)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D,L乳酸)、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリ(リン酸エステル)、ポリリン酸エステル・ウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリエステル、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレン・オキサレート、ポリホスファゼン及び上記ポリマーの共重合体及び混和物からなる群から選択される、請求項10に記載のインプラント。
【請求項12】
生分解性材料が、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デキストラン、多糖、スターチ・コラーゲン、クロムガット、及びヒアルロン酸からなる群から選択される、請求項10に記載のインプラント。
【請求項13】
生分解性コアが、チタン−ニッケル合金ワイヤ、チタン合金、ニッケル−コバルトベース合金、ステンレススチール、コバルト−クロム合金、及び生分解性マグネシウム合金から選択される材料を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項14】
約1000μm以下である全直径を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項15】
約5mm以下の長さを有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項16】
せいぜい約200μm〜約500μmである全直径を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項17】
約2.25mm〜約2.75mmの範囲の全長を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項18】
コアが、環状である断面形状を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項19】
コアが、約200μm未満の直径を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項20】
生体適合性コーティング層が、ポリマー基材の1以上の追加のコーティング層で覆われ、それによって、ポリマー基材の1以上の追加のコーティング層がポリマーマトリックスから生物活性剤の放出速度特性を変更する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項21】
1以上の追加のコーティング層が、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエステル、クロムガット、ポリオルトエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン酢酸ビニル又はポリ(ブチルメタクリレート)を含む、請求項20に記載のインプラント。
【請求項22】
生物活性剤が、抗増殖剤、抗炎症剤、血管新生阻害剤、抗生物質、神経栄養因子又はそれらの組合せから選択される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項23】
ポリマーマトリックスが、(a)ポリアルキレングリコールテレフタレート及び芳香族ポリエステルの共重合体である第一生分解性ポリマー;及び、(b)第一生分解性ポリマーと比較して生物活性剤のより遅い放出を有するように選択される第二生分解性ポリマーの混和物を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項24】
ポリアルキレングリコールテレフタレートが、ポリエチレングリコールテレフタレート、ポリプロピレングリコールテレフタレート、ポリブチレングリコールテレフタレート、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項23に記載のインプラント。
【請求項25】
芳香族ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びそれらの組合せを含む、請求項23に記載のインプラント。
【請求項26】
第一ポリマーが、70〜80%のポリエチレングリコールテレフタレート及び5〜20%のポリブチレンテレフタレートの相対量で、ポリエチレングリコールテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートの共重合体を含む、請求項23に記載のインプラント。
【請求項27】
第二生分解性ポリマーが、乳酸、グリコール酸、カプロラクトン、エチレングリコール、及びエチルオキシホスフェートから選択されるモノマーから誘導されるポリマーを含む、請求項23に記載のインプラント。
【請求項28】
ポリマーマトリックスが、式:
【化1】
(式中、
R1は、−CH=CH−又は(−CH2−)jであり、Jは、0であるか又は1〜8の整数であり;
R2は、最大18個の炭素原子を含有し、場合により少なくとも1個のエーテル連結を含有する直鎖状及び分岐したアルキル基及びアルキルアリール基、及び共重合体に共有結合した生物学的又は医薬として活性な化合物の誘導体から選択され;
各R3は、独立して、1〜4個の炭素原子を含有するアルキレン基から選択され;
yは、5〜約3000の間であり;そして
fは、共重合体中のアルキレンオキシドのパーセントモル分率である)
を有するランダムブロック共重合体を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項29】
ポリマーマトリックスがハイドロゲルを含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項30】
脈絡膜、脈絡膜上方の1以上の組織層、及び網膜を有する眼の網膜下領域に配置するために設定される持続放出インプラントであって、1以上の生物活性剤、及び(a)ポリ(アルキル(メト)アクリレート)、芳香族ポリ(メト)アクリレート、及びそれらの混合物から選択される第一ポリマー;及び、(b)ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)共重合体を含む第二ポリマーを含むポリマーマトリックスを含む前記持続放出インプラント。
【請求項31】
近位末端、遠位末端、又は近位及び遠位末端の両方で先細になる、請求項30に記載のインプラント。
【請求項32】
眼の脈絡膜上方であるが、神経線維層下方である1以上の組織層に位置するように設定される、請求項30に記載のインプラント。
【請求項33】
約1000μm未満の全直径、かつ、約5mm未満の長さを有する、請求項30に記載のインプラント。
【請求項34】
少なくとも約0.0001μg/日の生物活性剤の溶出速度を有する、請求項30に記載のインプラント。
【請求項35】
インプラントから溶出される少なくとも5%の生物活性剤が網膜に送達される、請求項30に記載のインプラント。
【請求項36】
第一ポリマーがポリ(アルキル(メト)アクリレート)を含む、請求項30に記載のインプラント。
【請求項37】
ポリ(アルキル(メト)アクリレート)がポリ(n−ブチルメタクリレート)を含む、請求項36に記載のインプラント。
【請求項38】
第一ポリマーが芳香族ポリ(メト)アクリレートを含む、請求項30に記載のインプラント。
【請求項39】
芳香族ポリ(メト)アクリレートが、ポリ(アリール(メト)アクリレート)、ポリ(アラルキル(メト)アクリレート)、ポリ(アリールオキシアルキル(メト)アクリレート)又はそれらの混合物を含む、請求項38に記載のインプラント。
【請求項40】
ポリ(アリール(メト)アクリレート)が、ポリ(9−アントラセニルメタクリレート)、ポリ(クロロフェニルアクリレート)、ポリ(メタクリルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン)、ポリ(メタクリルオキシベンゾトリアゾール)、ポリ(ナフチルアクリレート)、ポリ(ナフチルメタクリレート)、ポリ(4−ニトロフェニルアクリレート)、ポリ(ペンタクロロフェニルアクリレート)、ポリ(ペンタブロモフェニルアクリレート)、ポリ(ペンタフルオロフェニルアクリレート)、ポリ(ペンタクロロフェニルメタクリレート)、ポリ(ペンタブロモフェニルメタクリレート)、ポリ(ペンタフルオロフェニルメタクリレート)、ポリ(フェニルアクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、及びそれらの混合物を含む、請求項39に記載のインプラント。
【請求項41】
ポリ(アラルキル(メト)アクリレート)が、ポリ(ベンジルアクリレート)、ポリ(ベンジルメタクリレート)、ポリ(2−フェネチルアクリレート)、ポリ(2−フェネチルメタクリレート)、ポリ(1−ピレニルメチルメタクリレート)、及びそれらの混合物を含む、請求項39に記載のインプラント。
【請求項42】
ポリ(アリールオキシアルキル(メト)アクリレート)が、ポリ(フェノキシエチルアクリレート)、ポリ(フェノキシエチルメタクリレート)、ポリ(エチレングリコールフェニルエーテルアクリレート)、ポリ(エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート)、及びそれらの混合物を含む、請求項39に記載のインプラント。
【請求項43】
ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)共重合体が、該共重合体の約10%wt〜約90%wtの範囲の濃度の酢酸ビニルを有する、請求項30に記載のインプラント。
【請求項44】
第一ポリマーが、100kD〜約1000kDの重量平均分子量を有するポリ(n−ブチルメタクリレート)を含み、第二のポリマーが、前記共重合体の約10%wt〜約90%wtの範囲で酢酸ビニル含有量を有するポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)を含む、請求項30に記載のインプラント。
【請求項45】
ポリマーマトリックス及び1以上の生物活性剤が、コア表面上にコーティング層として提供される、コアをさらに含む請求項30に記載のインプラント。
【請求項46】
被覆がコア表面の一部に提供される、請求項45に記載のインプラント。
【請求項47】
被覆がコアの中間部に提供される、請求項45に記載のインプラント。
【請求項48】
被覆が近位移動部分、遠位移動部分、又は近位及び遠位移動部分の両方を含む、請求項45に記載のインプラント。
【請求項49】
コアが、非分解性材料で加工される、請求項45に記載のインプラント。
【請求項50】
非分解性材料が、チタン合金、ニッケル−コバルトベース合金、ステンレススチール、コバルト−クロム合金、及び生分解性マグネシウム合金から選択される、請求項49に記載のインプラント。
【請求項51】
非分解性材料が、ポリ(メチルメタクリレート)及びシリコーンから選択される1以上のポリマーを含む、請求項49に記載のインプラント。
【請求項52】
コアが、生分解性材料で加工される、請求項45に記載のインプラント。
【請求項53】
生分解性材料が、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、外科用ガット、ポリ乳酸、ポリグリコネート、ポリグラクチン、及びポリグレカプロンから選択される、請求項52に記載のインプラント。
【請求項54】
生物活性剤が、抗増殖剤、抗炎症剤、血管新生阻害剤、抗生物質、神経栄養因子又はこれらの2以上の任意の組合せから選択される、請求項30に記載のインプラント。
【請求項55】
1以上の生物活性剤を眼に持続送達させるためのインプラントを製造する方法であって、ここで、インプラントが網膜下に移植され、下記:
(a)溶媒に1以上のポリマーを溶解し、複合流体を形成する工程;
(b)1以上の生物活性剤を前記複合流体に添加し、1以上の生物活性剤の均一な溶液を生産するか又は1以上の生物活性剤が分散した層を含む溶液を生産する工程;
(c)溶液を乾燥させ、固体を形成する工程;
(d)1以上のポリマーの融点以下の温度まで固体を加熱し、半固体を形成する工程;及び
(e)工程(c)の固体を材料としてインプラント装置を形成する工程
を含む前記方法。
【請求項56】
工程(e)が溶解−押出し−引き伸ばしを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
ポリマーが生分解性ポリ(カプロラクトン)である、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
生分解性ポリマーが、全体として又は部分的に、カプロラクトンモノマーの繰り返し単位で構成される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
温度が約100℃未満である、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
1以上の生物活性剤が、抗増殖剤、抗炎症剤、血管新生阻害剤、抗生物質、神経栄養因子又はそれらの組合せから選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項61】
請求項55の方法によって製造されるインプラント。
【請求項62】
近位末端、遠位末端、又は近位及び遠位末端の両方で先細になる、請求項61に記載のインプラント。
【請求項63】
眼の脈絡膜上方であるが、神経線維層下方である1以上の組織層に配置するように設定される、請求項61に記載のインプラント。
【請求項64】
約1000μm未満の全直径、かつ、約5mm未満の長さを有する、請求項61に記載のインプラント。
【請求項65】
少なくとも約0.0001μg/日の生物活性剤の溶出速度を有する、請求項55に記載のインプラント。
【請求項66】
インプラントが溶出する生物活性剤の量が、治療効果を提供するのに必要な量と比べて、せいぜい90%超過の生物活性剤である、請求項55に記載の方法。
【請求項67】
脈絡膜、網膜、脈絡膜上方の組織層、及び神経線維層を有する眼の障害又は疾患を治療又は予防する方法であって、下記:
(a)網膜下方で眼に請求項1に記載のインプラントを移植する工程;及び
(b)治療されるべき眼の部分に1以上の生物活性剤を送達するために1以上の生物活性剤の溶出を可能にする工程
を含む前記方法。
【請求項68】
インプラントが、脈絡膜上方であるが神経線維層下方である組織層に配置される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
網膜下方で眼に第二インプラントをさらに移植することを含み、2つのインプラントが眼に同時に位置される、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
インプラントが、移植を達成するために眼に突き通すか又は貫通することができる、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
眼の中にインプラントを挿入するための器具を用いることをさらに含む、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
インプラントを眼に挿入するための外科用器具を用いて、インプラントを握るか又は連結するためのインプラントの未被覆部分を用いることをさらに含む、請求項67に記載の方法。
【請求項73】
インプラントによって溶出される少なくとも5%の1以上の生物活性剤が、治療されるべき眼の部分にだけ実質的に送達される、請求項67に記載の方法。
【請求項74】
インプラントによって溶出される95%未満の1以上の生物活性剤が、健康な組織に送達される、請求項67に記載の方法。
【請求項75】
脈絡膜、網膜、脈絡膜上方の組織層、及び神経線維層を有する眼の障害又は疾患を治療又は予防する方法であって、下記:
(a)網膜下方で眼に請求項30に記載のインプラントを移植する工程;及び
(b)治療されるべき眼の部分に1以上の生物活性剤を送達するために1以上の生物活性剤の溶出を可能にする工程
を含む前記方法。
【請求項76】
インプラントが、脈絡膜上方であるが神経線維層下方である組織層に配置される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
網膜下方で眼に第二インプラントをさらに移植することを含み、2つのインプラントが眼に同時に位置される、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
インプラントが、移植を達成するために目に突き通すか又は貫通することができる、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
眼の中にインプラントを挿入するための器具を用いることをさらに含む、請求項75に記載の方法。
【請求項80】
インプラントを眼に挿入するための外科用器具を用いて、インプラントを握るか又は連結するためのインプラントの未被覆部分を用いることをさらに含む、請求項75に記載の方法。
【請求項81】
インプラントによって溶出される少なくとも5%の1以上の生物活性剤が、治療されるべき眼の部分にだけ実質的に送達される、請求項75に記載の方法。
【請求項82】
インプラントによって溶出される95%未満の1以上の生物活性剤が、健康な組織に送達される、請求項75に記載の方法。
【請求項1】
脈絡膜、網膜、脈絡膜上方の1以上の組織層、及び神経線維層を有する眼の網膜下領域に配置するために設定される持続放出インプラントであって、下記:
ある長さ及び外部の表面領域を有する生体適合性コア;及び
前記コアの外部表面領域の少なくとも一部を覆って適用されるポリマーマトリックス及び生物活性剤を含む生体適合性コーティング層
を含む前記持続放出インプラント。
【請求項2】
脈絡層上方であるが、眼の神経線維層の下方にある1以上の組織層に位置されるように設定される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
コーティング層が生体適合性コアの全長を覆って適用される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
コーティング層が、生体適合性コアの長さの一部を覆って適用され、生体適合性コアの長さの1以上の部分が被覆されないようにしておく、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
コーティング層が、中心部分、近位移動部分、及び遠位移動部分を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
少なくとも1つの近位移動部分又は遠位移動部分に矢羽根が付されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
近位移動部分及び遠位移動部分の両方に矢羽根が付されている、請求項6に記載のインプラント。
【請求項8】
生体適合性コア又は生体適合性コーティング層が生体安定性ポリマーである、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
生体安定性ポリマーが、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、アクリル系ポリマー、ハロゲン化ビニル系ポリマー、ポリビニルエーテル、ポリビニルメチルエーテル、ポリハロゲン化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族化合物、ポリビニルエステル、ポリ((メチル)メタクリレート)又はポリ((ブチル)メタクリレート)のようなポリ(アルキル(メト)アクリレート)、ポリビニルアミド、ポリアミド、ポリカプロラクタム、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン・トリアセテート、酢酸セルロース、酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロース・エーテル、カルボキシメチルセルロース、それらの共重合体、及びその混和物からなる群から選択される、請求項8に記載のインプラント。
【請求項10】
生体適合性コア又は生体適合性コーティング層が、生分解性ポリマー又は生分解性材料を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項11】
生分解性ポリマーが、ポリ(L−乳酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシ酪酸塩)、ポリ(ヒドロキシ酪酸塩−co−吉草酸塩)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D,L乳酸)、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリ(リン酸エステル)、ポリリン酸エステル・ウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリエステル、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレン・オキサレート、ポリホスファゼン及び上記ポリマーの共重合体及び混和物からなる群から選択される、請求項10に記載のインプラント。
【請求項12】
生分解性材料が、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デキストラン、多糖、スターチ・コラーゲン、クロムガット、及びヒアルロン酸からなる群から選択される、請求項10に記載のインプラント。
【請求項13】
生分解性コアが、チタン−ニッケル合金ワイヤ、チタン合金、ニッケル−コバルトベース合金、ステンレススチール、コバルト−クロム合金、及び生分解性マグネシウム合金から選択される材料を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項14】
約1000μm以下である全直径を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項15】
約5mm以下の長さを有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項16】
せいぜい約200μm〜約500μmである全直径を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項17】
約2.25mm〜約2.75mmの範囲の全長を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項18】
コアが、環状である断面形状を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項19】
コアが、約200μm未満の直径を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項20】
生体適合性コーティング層が、ポリマー基材の1以上の追加のコーティング層で覆われ、それによって、ポリマー基材の1以上の追加のコーティング層がポリマーマトリックスから生物活性剤の放出速度特性を変更する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項21】
1以上の追加のコーティング層が、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエステル、クロムガット、ポリオルトエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン酢酸ビニル又はポリ(ブチルメタクリレート)を含む、請求項20に記載のインプラント。
【請求項22】
生物活性剤が、抗増殖剤、抗炎症剤、血管新生阻害剤、抗生物質、神経栄養因子又はそれらの組合せから選択される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項23】
ポリマーマトリックスが、(a)ポリアルキレングリコールテレフタレート及び芳香族ポリエステルの共重合体である第一生分解性ポリマー;及び、(b)第一生分解性ポリマーと比較して生物活性剤のより遅い放出を有するように選択される第二生分解性ポリマーの混和物を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項24】
ポリアルキレングリコールテレフタレートが、ポリエチレングリコールテレフタレート、ポリプロピレングリコールテレフタレート、ポリブチレングリコールテレフタレート、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項23に記載のインプラント。
【請求項25】
芳香族ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びそれらの組合せを含む、請求項23に記載のインプラント。
【請求項26】
第一ポリマーが、70〜80%のポリエチレングリコールテレフタレート及び5〜20%のポリブチレンテレフタレートの相対量で、ポリエチレングリコールテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートの共重合体を含む、請求項23に記載のインプラント。
【請求項27】
第二生分解性ポリマーが、乳酸、グリコール酸、カプロラクトン、エチレングリコール、及びエチルオキシホスフェートから選択されるモノマーから誘導されるポリマーを含む、請求項23に記載のインプラント。
【請求項28】
ポリマーマトリックスが、式:
【化1】
(式中、
R1は、−CH=CH−又は(−CH2−)jであり、Jは、0であるか又は1〜8の整数であり;
R2は、最大18個の炭素原子を含有し、場合により少なくとも1個のエーテル連結を含有する直鎖状及び分岐したアルキル基及びアルキルアリール基、及び共重合体に共有結合した生物学的又は医薬として活性な化合物の誘導体から選択され;
各R3は、独立して、1〜4個の炭素原子を含有するアルキレン基から選択され;
yは、5〜約3000の間であり;そして
fは、共重合体中のアルキレンオキシドのパーセントモル分率である)
を有するランダムブロック共重合体を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項29】
ポリマーマトリックスがハイドロゲルを含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項30】
脈絡膜、脈絡膜上方の1以上の組織層、及び網膜を有する眼の網膜下領域に配置するために設定される持続放出インプラントであって、1以上の生物活性剤、及び(a)ポリ(アルキル(メト)アクリレート)、芳香族ポリ(メト)アクリレート、及びそれらの混合物から選択される第一ポリマー;及び、(b)ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)共重合体を含む第二ポリマーを含むポリマーマトリックスを含む前記持続放出インプラント。
【請求項31】
近位末端、遠位末端、又は近位及び遠位末端の両方で先細になる、請求項30に記載のインプラント。
【請求項32】
眼の脈絡膜上方であるが、神経線維層下方である1以上の組織層に位置するように設定される、請求項30に記載のインプラント。
【請求項33】
約1000μm未満の全直径、かつ、約5mm未満の長さを有する、請求項30に記載のインプラント。
【請求項34】
少なくとも約0.0001μg/日の生物活性剤の溶出速度を有する、請求項30に記載のインプラント。
【請求項35】
インプラントから溶出される少なくとも5%の生物活性剤が網膜に送達される、請求項30に記載のインプラント。
【請求項36】
第一ポリマーがポリ(アルキル(メト)アクリレート)を含む、請求項30に記載のインプラント。
【請求項37】
ポリ(アルキル(メト)アクリレート)がポリ(n−ブチルメタクリレート)を含む、請求項36に記載のインプラント。
【請求項38】
第一ポリマーが芳香族ポリ(メト)アクリレートを含む、請求項30に記載のインプラント。
【請求項39】
芳香族ポリ(メト)アクリレートが、ポリ(アリール(メト)アクリレート)、ポリ(アラルキル(メト)アクリレート)、ポリ(アリールオキシアルキル(メト)アクリレート)又はそれらの混合物を含む、請求項38に記載のインプラント。
【請求項40】
ポリ(アリール(メト)アクリレート)が、ポリ(9−アントラセニルメタクリレート)、ポリ(クロロフェニルアクリレート)、ポリ(メタクリルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン)、ポリ(メタクリルオキシベンゾトリアゾール)、ポリ(ナフチルアクリレート)、ポリ(ナフチルメタクリレート)、ポリ(4−ニトロフェニルアクリレート)、ポリ(ペンタクロロフェニルアクリレート)、ポリ(ペンタブロモフェニルアクリレート)、ポリ(ペンタフルオロフェニルアクリレート)、ポリ(ペンタクロロフェニルメタクリレート)、ポリ(ペンタブロモフェニルメタクリレート)、ポリ(ペンタフルオロフェニルメタクリレート)、ポリ(フェニルアクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、及びそれらの混合物を含む、請求項39に記載のインプラント。
【請求項41】
ポリ(アラルキル(メト)アクリレート)が、ポリ(ベンジルアクリレート)、ポリ(ベンジルメタクリレート)、ポリ(2−フェネチルアクリレート)、ポリ(2−フェネチルメタクリレート)、ポリ(1−ピレニルメチルメタクリレート)、及びそれらの混合物を含む、請求項39に記載のインプラント。
【請求項42】
ポリ(アリールオキシアルキル(メト)アクリレート)が、ポリ(フェノキシエチルアクリレート)、ポリ(フェノキシエチルメタクリレート)、ポリ(エチレングリコールフェニルエーテルアクリレート)、ポリ(エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート)、及びそれらの混合物を含む、請求項39に記載のインプラント。
【請求項43】
ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)共重合体が、該共重合体の約10%wt〜約90%wtの範囲の濃度の酢酸ビニルを有する、請求項30に記載のインプラント。
【請求項44】
第一ポリマーが、100kD〜約1000kDの重量平均分子量を有するポリ(n−ブチルメタクリレート)を含み、第二のポリマーが、前記共重合体の約10%wt〜約90%wtの範囲で酢酸ビニル含有量を有するポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)を含む、請求項30に記載のインプラント。
【請求項45】
ポリマーマトリックス及び1以上の生物活性剤が、コア表面上にコーティング層として提供される、コアをさらに含む請求項30に記載のインプラント。
【請求項46】
被覆がコア表面の一部に提供される、請求項45に記載のインプラント。
【請求項47】
被覆がコアの中間部に提供される、請求項45に記載のインプラント。
【請求項48】
被覆が近位移動部分、遠位移動部分、又は近位及び遠位移動部分の両方を含む、請求項45に記載のインプラント。
【請求項49】
コアが、非分解性材料で加工される、請求項45に記載のインプラント。
【請求項50】
非分解性材料が、チタン合金、ニッケル−コバルトベース合金、ステンレススチール、コバルト−クロム合金、及び生分解性マグネシウム合金から選択される、請求項49に記載のインプラント。
【請求項51】
非分解性材料が、ポリ(メチルメタクリレート)及びシリコーンから選択される1以上のポリマーを含む、請求項49に記載のインプラント。
【請求項52】
コアが、生分解性材料で加工される、請求項45に記載のインプラント。
【請求項53】
生分解性材料が、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、外科用ガット、ポリ乳酸、ポリグリコネート、ポリグラクチン、及びポリグレカプロンから選択される、請求項52に記載のインプラント。
【請求項54】
生物活性剤が、抗増殖剤、抗炎症剤、血管新生阻害剤、抗生物質、神経栄養因子又はこれらの2以上の任意の組合せから選択される、請求項30に記載のインプラント。
【請求項55】
1以上の生物活性剤を眼に持続送達させるためのインプラントを製造する方法であって、ここで、インプラントが網膜下に移植され、下記:
(a)溶媒に1以上のポリマーを溶解し、複合流体を形成する工程;
(b)1以上の生物活性剤を前記複合流体に添加し、1以上の生物活性剤の均一な溶液を生産するか又は1以上の生物活性剤が分散した層を含む溶液を生産する工程;
(c)溶液を乾燥させ、固体を形成する工程;
(d)1以上のポリマーの融点以下の温度まで固体を加熱し、半固体を形成する工程;及び
(e)工程(c)の固体を材料としてインプラント装置を形成する工程
を含む前記方法。
【請求項56】
工程(e)が溶解−押出し−引き伸ばしを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
ポリマーが生分解性ポリ(カプロラクトン)である、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
生分解性ポリマーが、全体として又は部分的に、カプロラクトンモノマーの繰り返し単位で構成される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
温度が約100℃未満である、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
1以上の生物活性剤が、抗増殖剤、抗炎症剤、血管新生阻害剤、抗生物質、神経栄養因子又はそれらの組合せから選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項61】
請求項55の方法によって製造されるインプラント。
【請求項62】
近位末端、遠位末端、又は近位及び遠位末端の両方で先細になる、請求項61に記載のインプラント。
【請求項63】
眼の脈絡膜上方であるが、神経線維層下方である1以上の組織層に配置するように設定される、請求項61に記載のインプラント。
【請求項64】
約1000μm未満の全直径、かつ、約5mm未満の長さを有する、請求項61に記載のインプラント。
【請求項65】
少なくとも約0.0001μg/日の生物活性剤の溶出速度を有する、請求項55に記載のインプラント。
【請求項66】
インプラントが溶出する生物活性剤の量が、治療効果を提供するのに必要な量と比べて、せいぜい90%超過の生物活性剤である、請求項55に記載の方法。
【請求項67】
脈絡膜、網膜、脈絡膜上方の組織層、及び神経線維層を有する眼の障害又は疾患を治療又は予防する方法であって、下記:
(a)網膜下方で眼に請求項1に記載のインプラントを移植する工程;及び
(b)治療されるべき眼の部分に1以上の生物活性剤を送達するために1以上の生物活性剤の溶出を可能にする工程
を含む前記方法。
【請求項68】
インプラントが、脈絡膜上方であるが神経線維層下方である組織層に配置される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
網膜下方で眼に第二インプラントをさらに移植することを含み、2つのインプラントが眼に同時に位置される、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
インプラントが、移植を達成するために眼に突き通すか又は貫通することができる、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
眼の中にインプラントを挿入するための器具を用いることをさらに含む、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
インプラントを眼に挿入するための外科用器具を用いて、インプラントを握るか又は連結するためのインプラントの未被覆部分を用いることをさらに含む、請求項67に記載の方法。
【請求項73】
インプラントによって溶出される少なくとも5%の1以上の生物活性剤が、治療されるべき眼の部分にだけ実質的に送達される、請求項67に記載の方法。
【請求項74】
インプラントによって溶出される95%未満の1以上の生物活性剤が、健康な組織に送達される、請求項67に記載の方法。
【請求項75】
脈絡膜、網膜、脈絡膜上方の組織層、及び神経線維層を有する眼の障害又は疾患を治療又は予防する方法であって、下記:
(a)網膜下方で眼に請求項30に記載のインプラントを移植する工程;及び
(b)治療されるべき眼の部分に1以上の生物活性剤を送達するために1以上の生物活性剤の溶出を可能にする工程
を含む前記方法。
【請求項76】
インプラントが、脈絡膜上方であるが神経線維層下方である組織層に配置される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
網膜下方で眼に第二インプラントをさらに移植することを含み、2つのインプラントが眼に同時に位置される、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
インプラントが、移植を達成するために目に突き通すか又は貫通することができる、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
眼の中にインプラントを挿入するための器具を用いることをさらに含む、請求項75に記載の方法。
【請求項80】
インプラントを眼に挿入するための外科用器具を用いて、インプラントを握るか又は連結するためのインプラントの未被覆部分を用いることをさらに含む、請求項75に記載の方法。
【請求項81】
インプラントによって溶出される少なくとも5%の1以上の生物活性剤が、治療されるべき眼の部分にだけ実質的に送達される、請求項75に記載の方法。
【請求項82】
インプラントによって溶出される95%未満の1以上の生物活性剤が、健康な組織に送達される、請求項75に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
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【図9】
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【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2008−535847(P2008−535847A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505535(P2008−505535)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/012894
【国際公開番号】WO2006/110487
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(506112683)サーモディクス,インコーポレイティド (50)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/012894
【国際公開番号】WO2006/110487
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(506112683)サーモディクス,インコーポレイティド (50)
【Fターム(参考)】
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