説明

緊張力伝達部材、緊張力伝達構造および緊張力伝達構造の形成方法

【課題】コンクリート構造物の角部などにおいて、直交する位置に近接させて配置しても互いに干渉することがない緊張力伝達部材およびこの部材を含む緊張力伝達構造を提供する。
【解決手段】緊張力伝達部材(リブキャストアンカー10)は、その外周の径方向外方に突出した当て止め突起部11を有しており、リブキャストアンカー10の外周に補助筋20を配置して、アンカー10にPC鋼材30の緊張力が作用したときに、補助筋20に設けられた嵌め込み部21c,22cの側面が、当て止め突起部11の定着具側とは反対側の側面に当て止めされるように構成される。また、緊張力伝達構造は、上述のリブキャストアンカー10と補助筋20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物において、PC鋼材の緊張力をコンクリート構造物に伝達する緊張力伝達部材とこの部材を使用した緊張力伝達構造に関するものである。また、本発明は、上記緊張力伝達構造の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PC鋼材の緊張力をコンクリート構造物に伝達することでコンクリート構造物にプレストレスを付与する定着構造として、ウェッジとアンカーディスクとアンカープレートとを備える定着構造が知られている。ウェッジは、緊張されたPC鋼材を把持する部材であり、アンカーディスクは、ウェッジが嵌め込まれる嵌合孔を有する部材である。また、アンカープレートは、アンカーディスクとコンクリート構造物に当接される部材である。上記のような構成を備えることにより、PC鋼材を定着する定着具であるウェッジとアンカーディスクから受圧したPC鋼材の緊張力をアンカープレートによりコンクリート構造物に伝達させることができる。このとき、PC鋼材の緊張力は、アンカープレートが当接するコンクリート表面からコンクリートに伝達される。
【0003】
その他、コンクリート構造物に埋設されてコンクリートの内部にもPC鋼材の緊張力を分散させて伝達させるリブキャストアンカーと呼ばれる緊張力伝達部材もある。
【0004】
図6は、特許文献1に記載のリブキャストアンカー100を使用して形成した定着構造の部分断面図を示す。コンクリート構造物の内部には、シース122と、シース122に連続して形成されるトランペットシース121と、トランペットシース121の端部にネジ嵌合されるリブキャストアンカー100とが配置される。これらの部材により形成されるコンクリート構造物を貫通する貫通孔に複数のPC鋼材200が挿通される(図6では、代表して、PC鋼材を一本だけ図示する)。挿通されたPC鋼材200は、緊張され、その端部をウェッジ111により把持される。また、ウェッジ111は、アンカーディスク112に嵌め込まれ、このアンカーディスク112は、リブキャストアンカー100の一端側に当て止めされる。リブキャストアンカー100は、アンカーディスク112から受圧したPC鋼材200の緊張力をコンクリート構造物に分散させて伝達させる。また、リブキャストアンカー100の外周には、径方向外方に延びる突起(リブ)101,102が設けられており、この突起101,102により効率よくPC鋼材200の緊張力をコンクリート構造物に分散させて伝達させている。
【0005】
ところで、リブキャストアンカー周辺のコンクリート構造物には、PC鋼材の緊張力が伝達されたことにより割裂応力が作用する。そのため、リブキャストアンカーを設けたコンクリート構造物では、コンクリートに伝達されるPC鋼材の緊張力が大きくなると、割裂応力が増大して、コンクリートに割裂が生じる虞がある。そこで、コンクリートの割裂を防止するために、構造物の骨格となる主筋以外に、リブキャストアンカーの近傍に補強筋が配置されていることが多い。このような補強筋として、スパイラル筋や、グリッド筋などが利用されている。
【0006】
スパイラル筋は、鋼棒を螺旋状に成形した補強筋である。スパイラル筋は、代表的には、特許文献1に記載のように、リブキャストアンカーの中心軸と同軸状に配置される。このような配置により、スパイラル筋が割裂応力を螺旋の内部に拘束して、コンクリートに割裂が生じることを防止している。
【0007】
一方、グリッド筋は、鋼棒を格子状に配置した補強筋である。グリッド筋は、代表的には、特許文献2に記載のような2つのM字状のグリッド部材を互いに直交するように配置することで格子状に形成される。このようなグリッド筋は、コンクリート構造物の骨格となる主筋などに溶接あるいは結束などにより固定される。そして、固定したグリッド筋の格子の目にPC鋼材を挿通させた後、PC鋼材の定着部を形成する。
【0008】
【特許文献1】特開2001−323600号公報
【特許文献2】特開2002−97745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述した補強筋をリブキャストアンカーに配置した場合、以下のような問題点があった。
【0010】
[1] スパイラル筋の場合
スパイラル筋を使用した場合、例えば、コンクリート構造物の梁と梁とをつなぐ角部において、それぞれの梁に設けられる定着構造の配置が問題となることがあった。上述した角部では、一方の梁に配置したリブキャストアンカーと、他方の梁に配置したリブキャストアンカーとを、梁の厚さ方向にずらして、直交するように配置する。このとき、図6に示すようにスパイラル筋が設けられていることにより、リブキャストアンカーの長手方向に外径の大きな領域が長くなるので、両アンカーをずらす距離を大きくしなければならない。例えば、図6のスパイラル筋130の位置で、直交するアンカーを交差するように配置した場合、梁の厚さ方向にアンカーをずらす距離を大きくしなければならないため、梁の厚さ方向にコンクリート構造物が厚くなる。一方、スパイラル筋の干渉を避けるようにシースの外周側の位置で、シース同士が交差するようにアンカーを直交させた場合、シースの交差点からコンクリート表面までの距離が長くなるので、梁の幅方向にコンクリート構造物が厚くなる。そのため、コンクリート構造物の角部では、梁の厚みを増設する必要があり、工期が遅れたり、施工コストが上昇するなどの問題点があった。
【0011】
[2] グリッド筋の場合
グリッド筋を使用する場合、グリッド筋をコンクリート構造物の鉄筋などに固定する作業を行なわなければならず、この作業が煩雑であった。グリッド筋は、リブキャストアンカーに挿通されるPC鋼材の軸方向に直交するように配置されることで、コンクリート構造物を効果的に補強することができる。しかし、グリッド筋は、コンクリートの打設や、施工時の振動などにより、傾いたりずれたりし易い。そのため、リブキャストアンカーに対するグリッド筋の配置状態を維持するために、グリッド筋を予めコンクリート構造物の主筋などに固定する作業を行なわなければならない。
【0012】
また、グリッド筋を配置するときは、グリッド筋の格子の目にPC鋼材が挿通された状態にしなければならないため、PC鋼材を挿通させるリブキャストアンカーをコンクリート構造物の型枠の内部に配置した後にグリッド筋を配設することが難しい。これは、一般的に、格子の目がアンカーの定着具側の外径よりも小さいため、アンカーの端部から嵌め込むことができないからである。仮に、格子の目がアンカーの外径よりも大きい場合でも、格子の目が大きくなればグリッド筋自体も大きくなるため、グリッド筋をアンカーの端部から嵌め込むときに、グリッド筋が型枠内に配置される主筋などの他の鉄筋と干渉してしまう。このように、定着構造の組み付け手順に制限ができ、この組み付け手順を誤った場合、容易に定着構造を再構築することができなかった。なお、スパイラル筋の場合もグリッド筋の場合とほぼ同様の理由により組み付け手順が制限される。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主目的は、コンクリート構造物の角部などにおいて、直交する位置に近接させて配置することができ、且つ、定着構造を容易に形成できる緊張力伝達部材およびこの部材を含む緊張力伝達構造を提供することにある。
【0014】
また、本発明の別の目的は、組み付け手順を気にすることなく容易に緊張力伝達構造を形成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、筒状の緊張力伝達部材の外周から嵌め込むことができる補助筋を用いることにより上記の目的を達成する。
【0016】
本発明は、コンクリート構造物に埋設され、PC鋼材の定着具からPC鋼材の緊張力を受圧してコンクリート構造物に伝達させる筒状の緊張力伝達部材である。緊張力伝達部材は、その外周に径方向外方に突出する当て止め突起部を有し、この当て止め突起部が、緊張力伝達部材の径方向外方に延びる補助筋を緊張力伝達部材の外周に配置したときに、補助筋の側面の少なくとも一部を、当て止め突起部の定着具側とは反対側の側面に当て止め可能なように形成されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上述した緊張力伝達部材と補助筋とを備える緊張力伝達構造である。補助筋は、緊張力伝達部材の外周に、緊張力伝達部材の径方向外方に延びるように取り付けられて、緊張力伝達部材を介して受圧したPC鋼材の緊張力をコンクリート構造物に伝達させる部材である。また、補助筋は、対向する二つの挟持部とこの挟持部をつなぐ屈曲部からなる嵌め込み部を有する。そして、この嵌め込み部の側面が、緊張力伝達部材の当て止め突起部の定着具側とは反対側に当て止めされるように配置されてなること特徴とする。
【0018】
本発明の構成によれば、緊張力伝達部材の外周の位置に補助筋が設けられており、従来のスパイラル筋を設けた場合よりも、緊張力伝達構造の長手方向に、外形の大きい領域が短くなる。そのため、例えば、コンクリート構造物の梁と梁とをつなぐ角部などにおいて、一方の緊張力伝達部材の外周に設けられた補助筋が、この緊張力伝達部材と直交する他方の緊張力伝達部材の配置位置と干渉し難くなる。
【0019】
また、本発明の構成によれば、筒状の緊張力伝達部材の外周に補助筋の嵌め込み部を嵌め込むだけで緊張力伝達部材に補助筋を取り付けることができる。この補助筋は、緊張力伝達部材の外周に嵌め込まれることで、その位置が保持されるので、緊張力伝達部材に対して傾いたりし難い。
【0020】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0021】
上述した緊張力伝達部材の当て止め突起部は、後述する補助筋を当て止めする機能を有している。また、この当て止め突起部は、コンクリートを支圧する機能も有している。突起部の代表的な形状としては、緊張力伝達部材の軸方向と直交する面上に配される環状突起である。その他、前述の面上に分散されて配置される複数の突起であってもかまわない。
【0022】
この突起部のうち、補助筋に当接する側面は、補助筋を当て止めしやすい形状であることが好ましい。例えば、緊張力伝達部材の軸方向と直交する平面部を有することが好ましい。その他、突起部の外端が補助筋側に傾いた面を有するようにしても良い。このようになすことにより、補助筋が当て止めされたときに、補助筋が当て止め突起部から外れ難くなる。
【0023】
緊張力伝達部材の外周には、当て止め突起部の他に、別の突起部を設けてもかまわない。例えば、当て止め突起部よりも補助筋側に押さえ突起部を設けて、この押さえ突起部と当て止め突起部との間で、補助筋を挟み込むような構成とすることが挙げられる。このような構成により、当て止め突起部と押さえ突起部とで挟み込まれた補助筋の動きが抑制されるので、取り付けた補助筋が緊張力伝達部材から外れ難くなる。また、押さえ突起部のうち、補助筋側とは反対側の面は、コンクリートを支圧して、PC鋼材の緊張力を分散させる機能を有する。
【0024】
一方、補助筋には、対向する二つの挟持部とこの二つの挟持部をつなぐ屈曲部からなる嵌め込み部が形成されている。この補助筋は、薄型状のものである。この補助筋を緊張力伝達部材に取り付けるときは、嵌め込み部の開口している部分を緊張力伝達部材の外周に嵌め込むようにすれば良い。このとき、嵌め込み部のうち、少なくとも挟持部の側面が緊張力伝達部材の当て止め突起部に当て止めされることにより、補助筋は、緊張力伝達部材からPC鋼材の緊張力を受圧する。そして、補助筋は、当て止めにより受圧した、PC鋼材の緊張力をコンクリート構造物に伝達する。
【0025】
補助筋は、緊張力伝達部材を挟んで対称に緊張力伝達部材の外周を囲む補強部を有していても良い。補強部が緊張力伝達部材の外周を囲むように配置されていることにより、コンクリート構造物に生じた割裂応力を補強部で囲まれた領域の内部に拘束することができるので、コンクリートを補強することができる。なお、この補強部は、上述した嵌め込み部から連続して形成されるようにする。
【0026】
ここで、二つの挟持部の少なくとも一部の幅が、補助筋を配置する位置における緊張力伝達部材の外径と同じか、または、狭くなるように形成することもできる。例えば、嵌め込み部が直線からなる場合、2つの挟持部をつなぐ屈曲部の半径を小さくして挟持部の幅を狭くする。その他、挟持部を円弧部と円弧部の両端から延びる直線部とで構成し、対向する2つの挟持部の円弧部をつなげた仮想円が、筒状の緊張力伝達部材の外形とほぼ一致するようにしても良い。このような構成により、嵌め込み部(挟持部)が、緊張力伝達部材の外周を挟持するようにすることができるので、補助筋の位置決めを容易に行なうことができ、且つ、補助筋を緊張力伝達部材から外れ難くすることができる。但し、嵌め込み部の幅が、緊張力伝達部材の直径よりも大きい場合であっても、後述するように、補助筋を格子状に配置すれば、この補助筋の格子の部分で緊張力伝達部材の外周を囲むようにして補助筋を外れ難くすることができる。これにより、補助筋の位置決めを容易に行なうことができ、且つ、補助筋を緊張力伝達部材から外れ難くすることができる。
【0027】
補助筋の全体形状としては、嵌め込み部を有していれば特に限定されない。例えば、補助筋の全体形状を3つの屈曲部を有するM字状とすることが挙げられる。この場合、M字状補助筋の3つの屈曲部のうち、中央の屈曲部とこの屈曲部から延びる直線状の挟持部からなるU字状の部分を設け、このU字状の部分を嵌め込み部とすれば良い。この場合、U字状の嵌め込み部以外の部分が、コンクリートの割裂応力を拘束する補強部になる。
【0028】
このようなM字状の補助筋の寸法や機械的特性は、コンクリート構造物の設計に応じて適宜選択すれば良い。例えば、断面円形または異形の鋼棒を屈曲させることで形成すれば良い。その際、M字の3つの屈曲部のうち、中央の屈曲部の内径は、鋼棒の直径の3〜4倍程度が好適である。一般的に、コンクリート構造物に割裂などの不具合が生じないようにするためには、直径が、10〜16mm、引張強度が290N/mm2〜1300N/mm2程度の鋼棒で補助筋を作製すれば良い。
【0029】
その他、補助筋は、上述したM字状の部材を2つ組み合わせて格子状の補助筋を形成することが挙げられる。具体的には、2つのM字状の部材を互いに直交するように配置して格子状とすれば良い。この場合、2つのM字状部材は、溶接で接合したり、鋼線や結束バンドなどにより接合すれば良い。この格子状に形成した補助筋の中心側の領域(補助筋の「井」型の領域)は、主としてコンクリートを支圧する働きをし、補助筋の外周側の領域(補助筋の「ロ」型の領域)は、主として、コンクリートに発生する割裂応力を拘束する働きをする。なお、M字状部材の接合は、緊張力伝達部材の外周側からこれらM字状部材を嵌め込んだ後に行なうようにすると良い。
【0030】
また、本発明方法は、コンクリート構造物に埋設され、PC鋼材の定着具からPC鋼材の緊張力を受圧してコンクリート構造物に伝達させる筒状の緊張力伝達部材を用いる緊張力伝達構造の形成方法である。前記緊張力伝達部材は、その径方向外方に突出する当て止め突起部を有し、この緊張力伝達部材の外周から嵌め込み部を有する補助筋を取り付け、その嵌め込み部の側面の少なくとも一部が、当て止め突起部の定着具側とは反対側の側面で当て止めされるようにすることを特徴とする。
【0031】
この方法における緊張力伝達部材としては、すでに説明した本発明の緊張力伝達部材を使用すると良い。また、同様に補助筋も、すでに説明した補助筋を使用すると良い。
【0032】
この緊張力伝達構造の形成方法によれば、緊張力伝達部材の外周から補助筋を嵌め込むだけで緊張力伝達部材に補助筋を取り付けることができるので、非常に簡単に緊張力伝達構造を形成することができる。
【0033】
補助筋の取り付け(嵌め込み)は、緊張力伝達部材をコンクリート構造物の型枠に配置する前に緊張力伝達部材に予め取り付けることもできるし、型枠に配置した後に取り付けることもできる。好ましくは、補助筋の嵌め込みは、緊張力伝達部材の型枠への配置後に行う。具体的には、コンクリート構造物の強度を保持するための主筋と肋筋を配置した後に、主筋と肋筋とでできた鉄筋籠の内部に緊張力伝達部材を配置する。そして、緊張力伝達部材の外周に鉄筋籠の隙間から補助筋を嵌め込む。補助筋の嵌め込み前に、緊張力伝達部材の配置を行うことで、緊張力伝達部材の径方向に寸法が大きくなることがないので、緊張力伝達部材の配置が容易である。このように、補助筋を後付けできるのは、補助筋に嵌め込み部があるからである。
【発明の効果】
【0034】
本発明の緊張力伝達部材および緊張力伝達構造によれば、コンクリート構造物に伝達されるPC鋼材の緊張力を分散させることができるので、効果的にコンクリート構造物の損傷(例えば、コンクリート表面の割裂など)を抑制することができる。しかも、本発明に使用する補助筋は、緊張力伝達部材の外周に嵌め込むだけで、その位置を保持することができるので、PC鋼材の定着構造を容易に形成することができる。
【0035】
また、コンクリートの割裂を防止する補助筋が、緊張力伝達部材の位置に設けられているので、この伝達部材の長手方向に外径の大きい領域を短くすることができる。そのため、コンクリート構造物の角部などにおいて、緊張力伝達部材と補助筋からなる2つの緊張力伝達構造を直交するように近接させて配置させることができる。即ち、上述した角部において、直交配置される2つの緊張力伝達構造の間の距離を、従来の構造を使用した場合よりも短くすることができ、コンクリート構造物を増築するなどの手間をなくすことができる。
【0036】
本発明の緊張力伝達構造の形成方法によれば、緊張力伝達部材を型枠内に配置した後であっても、コンクリート構造物の損傷を抑制する補助筋を緊張力伝達部材に取り付けることができる。そのため、定着構造の組み付け手順の自由度が高くなるので、緊張力伝達構造を含む定着構造を容易に形成することができる。また、補助筋を取り付けていない緊張力伝達部材の外径は、補助筋を取り付けた伝達部材のそれよりも小さいため、型枠内に配置し易く、コンクリート構造物の施工が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、ポストテンション方式のプレストレストコンクリート構造物における本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。まず初めに、本発明の緊張力伝達構造を使用した定着構造の全体構成を、次いで、緊張力伝達構造の各構成部材を説明する。最後に、この定着構造の形成方法を説明する。
【0038】
[全体構成]
図1は、コンクリート構造物に設けられるPC鋼材(本例では、PCケーブル)の定着構造を示す概略構成図である。また、図2は、図1の概略構成図から主筋と肋筋を省略し、定着構造の一部を断面で表した部分断面図である。図1、2に示すように、主筋2と肋筋3で補強されたコンクリート構造物1には、シース42と、シース42に連続して設けられるトランペットシース41と、トランペットシース41にネジ嵌合されるリブキャストアンカー(緊張力伝達部材)10が埋設されている。これらの部材により、コンクリート構造物を貫通する一本の貫通孔が形成される。この貫通孔には、7本の素線を撚り合せた撚り線の外周を樹脂被覆した9本のPCケーブル30が挿通されている(図2においては、PCケーブルは、代表して一本だけ図示する)。各PCケーブル30は緊張された状態で、ウェッジ31により把持される。そして、緊張されたPCケーブル30の緊張力は、PCケーブル30を把持するウェッジ31、ウェッジ31を嵌め込む嵌合孔を有するアンカーディスク32、アンカーディスク32に当接されるリブキャストアンカー10を介してコンクリート構造物1に伝達される。
【0039】
本実施の形態の定着構造では、リブキャストアンカー10と、このアンカー10の外周に設けられる補助筋20により、PCケーブル30の緊張力をコンクリート構造物1に分散させて伝達させることができる。また、補助筋20が設けられていることにより、コンクリート構造物1に伝達される緊張力を広範囲に分散させることができるので、コンクリートに亀裂などが生じ難くなる。以下、図1および図2に加えて、図3および図4も参照して、リブキャストアンカーと補助筋をより詳細に説明する。
【0040】
[リブキャストアンカー]
本例のリブキャストアンカー10は、一端が太径で、他端が細径の筒状体であり、太径側には、箱抜き部16が連続して形成されている。箱抜き部16は、コンクリート構造物の表面側に位置するように構造物に埋設される。
【0041】
リブキャストアンカー10の細径側の外周には、当て止め突起部11と、押さえ突起部12とが設けられている。当て止め突起部11は、主として、後述する補助筋20がリブキャストアンカー10の長手方向に移動することを抑制するものである。また、当て止め突起部11は、リブキャストアンカー10の軸方向に直交する面を有する環状突起である。直交する面を有することにより、補助筋20を当て止めすることが容易になるので、補助筋20がアンカーディスク32側(箱抜き部16側)に移動することを効果的に抑制することができる。一方、押さえ突起部12は、当て止め突起部11よりもトランペットシース41側に設けられた環状の突起である。押さえ突起部12により、補助筋20の位置決めが容易になる。また、押さえ突起部12は、リブキャストアンカー10の径方向外方に突出しているため、PCケーブル30の緊張力を効果的にコンクリート構造物1に分散させて伝達させることができる。
【0042】
リブキャストアンカー10の内部には、PCケーブル30を挿通する挿通孔15が設けられている(図3を参照)。挿通孔15の径は、太径側が大きく、細径側が小さい。また、太径側の内径は、アンカーディスク32の外径よりも大きく形成されており、アンカーディスク32がPCケーブル30の緊張力を受圧したときに、アンカーディスク32の端面がリブキャストアンカー10の端面に当て止めされるようになっている。
【0043】
リブキャストアンカー10の細径側の内周面には、雌ネジが設けられており、トランペットシース41の外周面に設けられる雄ネジをネジ嵌合させることができるようになっている。ネジ嵌合によりトランペットシース41とリブキャストアンカー10とを連結させることができる。
【0044】
一方、リブキャストアンカー10の太径側には箱抜き部16が設けられている。箱向き部16は、その内部にアンカーディスク32を収納することができる円筒状の部分である。この箱抜き部16にモルタルなどを充填させることにより、コンクリート構造物1の表面にアンカーディスク32等が突出しないようにすることができる。
【0045】
箱抜き部16の外周縁部には、U字型の切り欠き16fが設けられている。この切り欠き16fは、図示しない型枠にリブキャストアンカー10を連結させるための連結ボルトを挿通させるための部分である。
【0046】
なお、コンクリート構造物の角部以外の箇所で、直交する2つのリブキャストアンカーの間の距離を十分確保することができる場合などには、スパイラル筋を使用してコンクリート構造物の補強を行なっても良い。本実施の形態のリブキャストアンカー10の外周には、スパイラル筋のガイドとなる貫通孔13と半円溝14が形成されており、コンクリートの割裂防止のためにスパイラル筋を使用するか、または、本発明の補助筋を使用するかを適宜選択することができる。スパイラル筋を使用する場合、スパイラル筋を貫通孔13に貫通させると共に、半円溝14上に支持させることで、リブキャストアンカー10とスパイラル筋とを同軸に配置することができる。
【0047】
[補助筋]
リブキャストアンカー10の外周には、M字状の第一補助筋21と第二補助筋22とを、M字が互いに直交するように配置して構成される補助筋20が設けられている(図4を参照)。このようになすことにより、補助筋20は、鋼線が格子状に配置された、いわゆるグリッド筋と同様の形状となる。本実施の形態では、第一補助筋21(第二補助筋22)をリブキャストアンカー10の外周に嵌め込んだ後、第二補助筋22(第一補助筋21)を最初に嵌め込んだ第一補助筋21(第二補助筋22)と直交するように配置した。両者は、リブキャストアンカー10の外周に嵌め込んだ後、溶接により接合した。ここで、格子状に形成した補助筋20の中心側の領域(補助筋20の「井」型の領域)は、主として、コンクリートを支圧する働きをし、補助筋20の外周側の領域(補助筋20の「ロ」型の領域)は、主として、コンクリートに発生する割裂応力を拘束する働きをする。
【0048】
上述した第一補助筋21(第二補助筋22)は、図に示すように、その全体形状がM字状の部材である。M字の部材にある3つの屈曲部のうち、中央の屈曲部を含むU字状の領域が嵌め込み部21c(22c)であり、U字の端部から左右の屈曲部を含んで延びる領域が補強部21p(22p)である。第一補助筋21と第二補助筋22の嵌め込み部21c,22cは、リブキャストアンカー10の外周に嵌め込まれる部分であり、上述した補助筋20の中心側の領域(補助筋20の「井」型の領域)を形成する部分である。嵌め込み部21c,22cを有することにより、第一補助筋21と第二補助筋22をリブキャストアンカー10の外周側から容易に嵌め込むことができる。一方、補強部21p,22pは、上述した補助筋20の外周側の領域(補助筋20の「ロ」型の領域)を構成する。
【0049】
補助筋を構成する第一補助筋と第二補助筋の形状は、図5に示すような形状であっても良い。このM字状の第一補助筋61(第二補助筋62)は、3つの屈曲部のうち、中央の屈曲部の位置が、残りの2つの屈曲部寄りに形成されている。この補助筋60をリブキャストアンカーに取り付けるときは、第一補助筋61と第二補助筋62の嵌め込み部61c,62cの屈曲部にリブキャストアンカーが当接するまで嵌め込み部61c,62cを押し込む。このようになすことにより、この第一補助筋61と第二補助筋62とを直交させて補助筋60を形成したときに、補助筋の中央の位置にリブキャストアンカーを容易に配置することができる。
【0050】
本実施の形態の構成を有することにより、コンクリート構造物1の角部などにおいて、リブキャストアンカー10を近接して配置させることができる。具体的には、本実施の形態を示す図1(A)、図2(A)では、紙面の左右方向に延びるリブキャストアンカー10の近傍に、紙面前後方向に延びるシース50が配置されている。このシース50の延長線上には、紙面左右に延びるリブキャストアンカー10と直交するように他のリブキャストアンカーが設けられている。ここで、従来のようにスパイラル筋を設けようとしても、スパイラル筋の配置位置と図のシース50の位置が重複するため、スパイラル筋を設けることはできない。一方、本実施の形態では、図1(A)、図2(A)から明らかなように、リブキャストアンカー10の外周に設けられた補助筋20は、シース50の配置を阻害しない。
【0051】
以上、説明したリブキャストアンカーと補助筋を使用して定着構造を形成する手順を説明する。
【0052】
[1] 型枠内に主筋を配置する
図1に示すように、図示しない型枠内に主筋2を配置する。また、主筋2を取り囲むように肋筋3を配置する。肋筋3は、主筋2の軸方向に所定の間隔を空けて設けられている。この主筋2と肋筋3とにより、所定の強度を有するコンクリート構造物1とすることができる。
【0053】
[2] 主筋でできた鉄筋籠の内部に定着構造を形成する部材を配置する
前述の主筋2でできた鉄筋籠の内部にシース42、トランペットシース41、リブキャストアンカー10を一連長となるように配置する。
【0054】
[3] 補助筋を配置する
リブキャストアンカー10の外周に第一補助筋21を配置する。第一補助筋21の配置の際は、鉄筋籠の隙間から第一補助筋21を差し入れて、第一補助筋21の嵌め込み部21cをリブキャストアンカー10の外周から嵌め込む。次いで、M字状の第一補助筋21に直交するようにリブキャストアンカー10の外周側から第二補助筋22を嵌め込む。そして、第一補助筋21と第二補助筋22を鋼線により結束する。このとき、第一補助筋21と第二補助筋22とからなる補助筋20は、リブキャストアンカー10の当て止め突起部11と押さえ突起部12との間に配置され、且つ、第一補助筋21の側面が、当て止め突起部11の側面に当て止めされるようにしている。
【0055】
[4] コンクリートを打設する
型枠内にコンクリートを打設する。本実施の形態のコンクリート構造物1は、ポストテンション方式であるので、コンクリートが硬化するまでPCケーブル30の緊張を行なわない。
【0056】
[5] 定着部の形成
コンクリートの硬化後、シース42、トランペットシース41、リブキャストアンカー10によりコンクリート構造物1の内部に形成された貫通孔にPCケーブル30を挿通する。そして、PCケーブル30の図示しない一端側(図1,2の紙面右側)をウェッジとアンカーディスクにより固定した後、PCケーブル30を緊張する。そして、PCケーブル30の他端側(同図の紙面左側)で定着構造を形成する。定着構造は、PCケーブル30を把持するウェッジ31と、ウェッジ31が嵌め込まれる嵌合孔を有するアンカーディスク32と、リブキャストアンカー10とにより形成される。
【0057】
[6] 仕上げ
PCケーブル30を緊張した状態で定着した後、リブキャストアンカー10、トランペットシース41、シース42とで形成されたPCケーブル30の貫通孔の内部にグラウトを充填する。また、リブキャストアンカー10の箱抜き部16にモルタルを充填して、コンクリート構造物1の表面に凹凸がないようにした。
【0058】
<試験例>
次に実施の形態に示した定着構造を有するコンクリート構造物の健全性を評価する試験を実施した。試験方法は、旧建設省通達住宅指導発令第404号に示される試験方法に従って実施した。具体的には、構築したコンクリート構造物に圧縮荷重を付与し、コンクリートの表面に生じたひび割れの長さを測定することでコンクリート構造物の健全性を評価した。
【0059】
≪試験の概要≫
実施の形態と同様の構成を有する試験構造体を作製した。この試験構造体は、コンクリートの割裂を防止するために補助筋を用いたものである。一方、補助筋の代わりにスパイラル筋を用いた比較構造体を作製した。これらの試験構造体、比較構造体の緊張力伝達構造には、9本のPCケーブルが挿通されている。このPCケーブルは、7本の鋼線を撚り合せた撚り線に樹脂被覆したものを使用した。PCケーブルの寸法および性能は以下の通りである。
一本のPCケーブルの外径 φ15.2mm
九本のPCケーブルを合計した許容引張荷重 1698.3kN
九本のPCケーブルを合計した規格降伏荷重 1998.0kN
九本のPCケーブルを合計した規格引張荷重 2349.0kN
【0060】
上記のPCケーブルを配置したコンクリート構造物を圧縮し、構造物の表面に発生するひび割れの幅を測定した。コンクリート構造物に対する荷重の付与には、この構造物以外の部材に一端を当て止めしたジャッキを使用した。また、構造物における荷重を加える位置は、リブキャストアンカーの端面とした。圧縮は以下のように行なった。
[1] 許容引張荷重の110%の荷重で圧縮した
[2] 規格降伏荷重で圧縮した
[3] コンクリート構造物が破壊されるまで圧縮した
(このときの荷重は、規格引張荷重の100%で、載荷継続中)
【0061】
上記[1]〜[3]の条件のもと、試験構造体、比較構造体におけるコンクリート構造物の表面のひび割れ幅を確認した。まず、[1]では、試験構造体、比較構造体ともにひび割れ幅は、0.1mm以下であった。また、[2]では、試験構造体、比較構造体ともにひび割れ幅は、0.2mm以下であった。これは、上述した発令第404号の基準を満足するものであった。さらに、[3]の荷重をかけてコンクリート構造物が破壊された後、ブロックを解体し、試験構造体のリブキャストアンカーと補助筋を取り出した。また、比較構造体のリブキャストアンカーとスパイラル筋も取り出した。これら試験構造体と比較構造体から取り出したリブキャストアンカー、補助筋およびスパイラル筋に、有害な変形、例えば、不可逆的な屈曲などの変形が生じていないことを確認した。
【0062】
以上のことから、本発明の緊張力伝達部材を使用したコンクリート構造物の健全性が確認された。また、本発明の緊張力伝達部材を使用したコンクリート構造物は、従来のスパイラル筋を使用したコンクリート構造物と比較して遜色ない強度を有することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明緊張力伝達部材は、コンクリート構造物の定着構造に好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、本実施の形態に記載のリブキャストアンカーを使用したコンクリート構造物の概略構成図であって、(A)は側面図、(B)は正面図を示す。
【図2】図2は、本実施の形態に記載のリブキャストアンカーを使用したコンクリート構造物の部分断面図であって、(A)は側面図、(B)は正面図を示す。この図では、主筋および肋筋を図示していない。
【図3】図3は、本発明のリブキャストアンカーの部分断面図であって、(A)は、正面図、(B)は側面図を示す。
【図4】図4は、本発明の補助筋を示す図であって、(A)は正面図、(B)は側面図を示す。
【図5】図5は、本発明の別の補助筋を示す正面図である。
【図6】図6は、従来のリブキャストアンカーを使用したコンクリート構造物の概略構成図であって、特に、スパイラル筋を使用したものを示す。
【符号の説明】
【0065】
1 コンクリート構造物 2 主筋 3 肋筋
10 リブキャストアンカー
11 当て止め突起部 12 押さえ突起部 13 貫通孔 14 半円溝
15 挿通孔 16 箱抜き部 16f 切り欠き
20,60 補助筋
21,61 第一補助筋 21c,61c 嵌め込み部 21p 補強部
22,62 第二補助筋 22c,62c 嵌め込み部 22p 補強部
30 PCケーブル 31 ウェッジ 32 アンカーディスク
41 トランペットシース 42 シース 50 シース
100 リブキャストアンカー 101,102 突起
111 ウェッジ 112 アンカーディスク
121 トランペットシース 122 シース
130 スパイラル筋 200 PC鋼材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物に埋設され、PC鋼材の定着具からPC鋼材の緊張力を受圧してコンクリート構造物に伝達させる筒状の緊張力伝達部材であって、
緊張力伝達部材は、その外周に径方向外方に突出する当て止め突起部を有し、
当て止め突起部は、緊張力伝達部材の径方向外方に延びる補助筋を緊張力伝達部材の外周に配置したときに、補助筋の側面の少なくとも一部を、当て止め突起部の定着具側とは反対側の側面で当て止め可能なように形成されていることを特徴とする緊張力伝達部材。
【請求項2】
コンクリート構造物に埋設され、PC鋼材の定着具からPC鋼材の緊張力を受圧してコンクリート構造物に伝達させる筒状の緊張力伝達部材と、
緊張力伝達部材の外周に、緊張力伝達部材の径方向外方に延びるように取り付けられて、緊張力伝達部材を介して受圧したPC鋼材の緊張力をコンクリート構造物に伝達させる補助筋とを備え、
緊張力伝達部材は、その径方向外方に突出する当て止め突起部を有し、
補助筋は、対向する二つの挟持部とこの二つの挟持部をつなぐ屈曲部からなる嵌め込み部を有しており、
嵌め込み部の側面が、当て止め突起部の定着具側とは反対側の側面で当て止めされるように配置されてなることを特徴とする緊張力伝達構造。
【請求項3】
二つの挟持部の少なくとも一部の幅が、補助筋を配置する位置における筒状の緊張力伝達部材の外径と同じか、または、狭いことを特徴とする請求項2に記載の緊張力伝達構造。
【請求項4】
補助筋は、3つの屈曲部を有するM字状の部材であり、3つの屈曲部のうち、中央の屈曲部とこの屈曲部から延びる直線状の挟持部からなるU字状の部分が嵌め込み部であることを特徴とする請求項2または3に記載の緊張力伝達構造。
【請求項5】
補助筋は、2つのM字状の部材からなり、このM字状の部材を互いに直交するように配置してなることを特徴とする請求項4に記載の緊張力伝達構造。
【請求項6】
コンクリート構造物に埋設され、PC鋼材の定着具からPC鋼材の緊張力を受圧してコンクリート構造物に伝達させる筒状の緊張力伝達部材を用いる緊張力伝達構造の形成方法であって、
前記緊張力伝達部材は、その径方向外方に突出する当て止め突起部を有し、
この緊張力伝達部材の外周から嵌め込み部を有する補助筋を取り付け、
その嵌め込み部の側面の少なくとも一部が、当て止め突起部の定着具側とは反対側の側面で当て止めされるようにすることを特徴とする緊張力伝達構造の形成方法。
【請求項7】
緊張力伝達部材をコンクリート構造物の主筋と肋筋とでできた鉄筋籠の内部に配置した後、鉄筋籠の隙間から補助筋を配置することを特徴とする請求項6に記載の緊張力伝達構造の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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